説明

石炭火力発電システム

【課題】排ガス中の余剰窒素を有効利用し、微粉炭機で石炭を乾燥するのに要するエネルギーを低減することができる石炭ガス化複合発電システムを提供する。
【解決手段】石炭供給設備2より供給された石炭をガス化して石炭ガス化ガスを生成する石炭ガス化炉3と、石炭ガス化ガスを燃焼して発電機の動力を得るガスタービン5と、ガスタービン5から排出された排ガスより酸素及び窒素を分離する空気分離装置8とを備え、石炭ガス化炉3に、排ガス中の二酸化炭素及び空気分離装置8の酸素がガス化剤として供給されるように構成し、空気分離装置8から分離された窒素を用いて石炭供給設備2の石炭を乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭火力発電システムに関し、特に、石炭ガス化発電システムやOxy-fuel型の発電システムなど、二酸化炭素を回収する石炭火力発電システムにおいて、空気分離装置で発生する余剰窒素を有効利用する場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
石炭は世界の広い地域に存在し、可採埋蔵量が多く、価格が安定しているため、供給安定性が高く発熱量あたりの価格が低廉である。かかる石炭を燃料とする火力発電の一つの方式として、石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated Coal Gasfication Combined Cycle)システムが知られている。石炭ガス化複合発電システムでは、石炭を不完全燃焼させて得られた石炭ガス化ガスを燃料としてガスタービンを駆動して電力を得ると共に、ガスタービンの排気熱を回収して蒸気を発生させ、発生した蒸気により蒸気タービンを駆動して電力を得ている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
石炭ガス化複合発電システムの一例には、ガスタービンから排出される排ガスから二酸化炭素を回収し、その一部を石炭と共に石炭ガス化炉にガス化剤として供給するものがある。また、石炭ガス化複合発電システムには、空気から酸素や窒素を分離する空気分離装置が設置されており、空気分離装置で得られた酸素も石炭ガス化炉に供給される。二酸化炭素は、石炭のガス化を促進する作用があるので、空気、酸素濃度を高めた空気、または酸素で石炭をガス化することに比べ、二酸化炭素を供給するようにした石炭ガス化炉では、回収二酸化炭素の純度が大幅に向上する。
【0004】
また、昨今地球温暖化対策の一つとして、発電所などから発生する二酸化炭素を分離、回収し貯留するCCS(Carbon Capture and Storage)が世界各国で検討されている。上述の石炭ガス化複合発電システムはCCSを実現するものとして有望視されている。すなわち、排ガスは高濃度の二酸化炭素となるため、該二酸化炭素を石炭ガス化炉に供給すれば、従来のPre-combustionシステム(IGCCにおいて生成ガスから二酸化炭素を分離するCCSシステム)で行われる二酸化炭素分離工程が不要となり、二酸化炭素排出量を低減できるからである。さらに、その分離工程が不要となることで設備、運転コストが大幅に低減されるとともに、二酸化炭素回収後も40%以上の高い発電効率が維持されると期待されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
このように、石炭ガス化複合発電システムでは、排ガスから回収された二酸化炭素は、石炭のガス化のために有効利用される一方で、空気分離装置で発生する余剰窒素は、有効利用されていないのが現状である。特に、クローズド型のガスタービンを採用する場合では、窒素は大量に発生するため、余剰の窒素の有効利用を図ることは重要な課題となっている。
【0006】
例えば、石炭ガス化炉において、二酸化炭素は供給せずに酸素を供給してガス化を行う場合では、窒素酸化物対策を行うために、ガスタービンの前で石炭ガス化ガス(生成ガス)中に空気分離装置で発生する余剰窒素を供給することは可能である。
【0007】
しかし、この例と同様に、二酸化炭素をガス化剤として用いる石炭ガス化炉に余剰窒素を供給すると、二酸化炭素の濃度が相対的に低下し、回収二酸化炭素の純度が低下してしまう。このため、石炭ガス化炉でのガス化に余剰窒素を利用することは、好ましくない。
【0008】
また、石炭ガス化複合発電システムには、石炭を粉砕して石炭ガス化炉に供給する微粉炭機が設けられている。石炭は、表面に水分が付着しているため、微粉炭機では、石炭を粉砕すると共に、高温の空気で石炭を乾燥させている。この乾燥のため、多くのエネルギーが必要となるので、石炭ガス化複合発電システム全体のエネルギー効率が下がる要因となっている。
【0009】
なお、このような問題は、石炭ガス化複合発電システムに限らず、微粉砕した石炭を燃焼する発電システム一般に存在する。例えば、CCSの他の手法であるOxy-fuelを用いたCCS対応石炭火力発電システムでも同様である。Oxy-fuelを用いたCCS対応火力発電システムは、微粉砕した石炭をボイラで燃焼し、ボイラから排出された排ガス中の二酸化炭素の一部をボイラに供給すると共に、残余の二酸化炭素を圧縮して地層などに隔離する設備を有する。
【0010】
現時点ではOxy-fuelを用いた石炭火力発電システムでは、空気分離装置で発生する余剰窒素を放風廃棄するもようである。また、既に稼働中の酸素吹き石炭ガス化プラントにおいても、相当量の余剰窒素が放風廃棄されているもようであり、余剰窒素は有効利用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005―171148号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】“Development of oxy-fuel IGCC system with CO2 recirculation for CO2 capture”, Oki.Y.,et al, Proceeding of10th International Conference on Greenhouse Gas Control Technology,2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような事情に鑑み、空気分離装置で発生する余剰窒素を有効利用し、微粉炭機で石炭を乾燥するのに要するエネルギーを低減することができる石炭火力発電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための第1の態様は、石炭供給設備より供給された石炭を用いて発電する発電手段と、空気から酸素及び窒素を分離し、石炭の燃焼又は石炭のガス化のために酸素を発電手段に供給する空気分離装置と、前記空気分離装置で発生した窒素を用いて前記石炭供給設備の石炭を乾燥させる乾燥手段とを備えることを特徴とする石炭火力発電システムにある。
【0015】
かかる第1の態様では、空気分離装置で発生する余剰窒素を石炭供給設備に供給し、その窒素を石炭の乾燥に用いるので、空気分離装置で大量に生じた窒素の有効利用を図ることができる。また、大量に生じた余剰の窒素で石炭が乾燥されるので、石炭の乾燥のために必要なエネルギーを低減することができ、石炭火力発電システム全体の効率を向上することができる。
【0016】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する石炭火力発電システムにおいて、前記石炭供給設備は、コンベアにより搬送された石炭を貯蔵する石炭バンカと、石炭バンカの下部に配設された計量給炭機を介して石炭が供給される微粉炭機とから構成され、前記乾燥手段は、石炭が前記微粉炭機に供給される前に該石炭を前記窒素で乾燥させるように構成されていることを特徴とする石炭火力発電システムにある。
【0017】
かかる第2の態様では、微粉炭機で石炭を粉砕する前に石炭を乾燥するので、微粉炭機で必要となる石炭の乾燥のためのエネルギーを低減することができる。
【0018】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載する石炭火力発電システムにおいて、前記乾燥手段は、前記コンベアに搬送される石炭を前記窒素で乾燥するように構成されていることを特徴とする石炭火力発電システムにある。
【0019】
かかる第3の態様では、コンベアに搬送される石炭を空気分離装置からの窒素で乾燥させることができる。
【0020】
本発明の第4の態様は、第2又は第3の態様に記載する石炭火力発電システムにおいて、前記乾燥手段は、前記コンベアと前記石炭バンカとの間に配設された石炭バンカ室に貯蔵された石炭を前記窒素で乾燥するように構成されていることを特徴とする石炭火力発電システムにある。
【0021】
かかる第4の態様では、石炭バンカに投入される前の石炭を余剰の窒素で乾燥させることができる。
【0022】
本発明の第5の態様は、第2〜第4の何れか一つの態様に記載する石炭火力発電システムにおいて、前記乾燥手段は、前記石炭バンカと前記微粉炭機との間に石炭が供給される流動床乾燥機を設置し、該流動床乾燥機に前記窒素を供給するように構成されていることを特徴とする石炭火力発電システムにある。
【0023】
かかる第5の態様では、微粉炭機の前段階で予備的に石炭が流動床乾燥機で乾燥されるので、微粉炭機で石炭の乾燥に要するエネルギーを低減することができ、また、空気分離装置からの窒素を有効利用することができる。
【0024】
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載する石炭火力発電システムにおいて、前記流動床乾燥機に供給される窒素を加熱する熱交換器を備えることを特徴とする石炭火力発電システムにある。
【0025】
かかる第6の態様では、より高温の窒素が流動床乾燥機に供給されることで、石炭は、より乾燥し、微粉炭機で石炭の乾燥に要するエネルギーをさらに低減することができる。
【0026】
本発明の第7の態様は、第2〜第4の何れか一つの態様に記載する石炭火力発電システムにおいて、前記乾燥手段は、前記石炭バンカと前記微粉炭機との間に石炭が供給されるロータリーキルン型乾燥機を設置し、該ロータリーキルン型乾燥機に前記窒素を供給するように構成されていることを特徴とする石炭火力発電システムにある。
【0027】
かかる第7の態様では、ロータリーキルン型乾燥機の円筒体の回転で石炭が転がり、石炭の表面全体が窒素雰囲気に晒されることになるので、石炭の表面全体を万遍なく乾燥させることができる。
【0028】
本発明の第8の態様は、第7の態様に記載する石炭火力発電システムにおいて、前記ロータリーキルン型乾燥機は、外熱式であることを特徴とする石炭火力発電システムにある。
【0029】
かかる第8の態様では、ロータリーキルン型乾燥機内部の石炭は、加熱されるため、石炭をより一層乾燥させることができる。
【0030】
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載する石炭火力発電システムにおいて、外熱式の前記ロータリーキルン型乾燥機に供給される窒素を、排ガスの残存酸素処理炉で発生する熱で予熱する加熱手段を備えることを特徴とする石炭火力発電システムにある。
【0031】
かかる第9の態様では、より高温の窒素がロータリーキルン型乾燥機に供給されることで、石炭は、より乾燥し、微粉炭機で石炭の乾燥に要するエネルギーをさらに低減することができる。
【0032】
本発明の第10の態様は、第1〜第9の何れか一つの態様に記載する石炭火力発電システムにおいて、前記発電手段は、石炭をガス化して石炭ガス化ガスを生成する石炭ガス化炉と、前記石炭ガス化ガスを燃焼して発電機の動力を得るガスタービンとを備え、前記石炭ガス化炉に、前記排ガス中の二酸化炭素及び前記空気分離装置の酸素がガス化剤として供給されるように構成されていることを特徴とする石炭火力発電システムにある。
【0033】
かかる第10の態様では、余剰窒素を石炭の乾燥に有効利用すると共に、余剰窒素を石炭ガス化炉に投入しないので、石炭ガス化炉内の二酸化炭素濃度が維持され、炭素転換率及び回収二酸化炭素純度が低下してしまうことを回避できる。
【0034】
本発明の第11の態様は、第10の態様に記載する石炭火力発電システムにおいて、前記発電手段は、前記排ガスの熱を回収して得られた蒸気を膨張することで発電機の動力を得る蒸気タービンとをさらに備えることを特徴とする石炭火力発電システムにある。
【0035】
かかる第11の態様では、ガスタービンの発電動力に加えて、蒸気タービンの発電動力を用いて発電することができ、より効率の高い発電を行うことができる。
【0036】
本発明の第12の態様は、第1〜第9の何れか一つの態様に記載する石炭火力発電システムにおいて、前記発電手段は、石炭を燃焼するボイラと、該ボイラで生じた熱により得られた蒸気を膨張することで発電機の動力を得る蒸気タービンとを備え、ボイラからの排ガスに含まれる二酸化炭素を回収し、該二酸化炭素の一部をボイラに供給すると共に残余の二酸化炭素を貯留するように構成されていることを特徴とする石炭火力発電システムにある。
【0037】
かかる第12の態様では、いわゆるOxy-fuel型の石炭火力発電システムにおいて、空気分離装置で発生する余剰窒素を用い、各種乾燥手段で石炭の乾燥を促進できる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、空気分離装置で発生する余剰窒素を有効利用し、微粉炭機で石炭を乾燥するのに要するエネルギーを低減することができる石炭火力発電システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る石炭火力発電システムの一例である石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。
【図2】実施形態1に係る石炭供給設備と乾燥手段の概略構成図である。
【図3】実施形態2に係る石炭供給設備と乾燥手段の概略構成図である。
【図4】実施形態3に係る石炭供給設備と乾燥手段の概略構成図である。
【図5】実施形態3に係る石炭供給設備と乾燥手段の概略構成図である。
【図6】実施形態4に係る石炭供給設備と乾燥手段の概略構成図である。
【図7】実施形態4に係る石炭供給設備と乾燥手段の概略構成図である。
【図8】実施形態5に係る石炭火力発電システムにおける石炭供給設備と乾燥手段の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態に係る石炭ガス化発電システムの一例である石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。
【0041】
図示するように、石炭ガス化複合発電システム1は、石炭を石炭ガス化炉に供給する石炭供給設備2を備えている。石炭供給設備2は、詳細は後述するが、貯蔵した石炭を微粉炭機で粉砕し、石炭ガス化炉3に供給する設備である。
【0042】
石炭供給設備2で粉砕された石炭は、石炭ガス化炉3に供給される。石炭ガス化炉3には、系内からの二酸化炭素、すなわち、ガスタービン5で仕事を終え、排熱回収ボイラ6で熱交換された排ガスから分離された二酸化炭素が供給されるようになっている。また、石炭ガス化炉3には、空気分離装置8で原料空気から分離された酸素も供給されるようになっている。
【0043】
これらの二酸化炭素と、酸素は、石炭のガス化剤として機能する。石炭ガス化炉3では、石炭がガス化剤と反応することで石炭ガス化ガスが生成される。二酸化炭素及び酸素で石炭をガス化することで、二酸化炭素のガス化促進効果により、空気、酸素濃度を高めた空気、または酸素で石炭をガス化することに比べ、炭素転換率が大幅に向上する。
【0044】
石炭ガス化ガスには、一酸化炭素や水素ガスなどの可燃成分が含まれ、また、水溶性不純物、凝縮性不純物、粒子状不純物、及びガス状不純物が含まれている。石炭ガス化炉3で生成された石炭ガス化ガスは、除塵手段(特に図示せず)により除塵され、熱交換器(特に図示せず)で所定温度に調整され、ガス精製設備4に供給される。
【0045】
ガス精製設備4としては、石炭ガス化ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法や、湿式法により石炭ガス化ガスの不純物を除去するものが用いられる。上述の各種不純物を除去できるものであれば特に構成は限定されないが、例えば、ガス精製設備4として、ハロゲン化物除去装置、脱硫装置、アンモニア除去装置、水銀除去装置などの不純物除去装置を用いることができる。
【0046】
ガス精製設備4に石炭ガス化ガスが送られると、各種の不純物除去装置により不純物が除去されて精製され、燃料ガスが得られる。
【0047】
ガスタービン5には、ガス精製設備4で精製された燃料ガスが供給される。詳細には、特に図示しないが燃焼器、圧縮機がガスタービン5に接続されており、燃焼器に燃料ガスが送られる。さらに燃焼器には、空気分離装置8で製造された高濃度の酸素が送られ、燃料ガスが燃焼される。また、排熱回収ボイラ6で熱回収された排ガス中の二酸化炭素は圧縮機で圧縮され、燃焼器に投入されるようになっている。燃焼器での燃焼により生じた燃焼ガスは、ガスタービン5に送られ、ガスタービン5は燃焼ガスの膨張で発電機を駆動する動力を得る。
【0048】
ガスタービン5で仕事を終えた排ガスは排熱回収ボイラ6に送られる。排熱回収ボイラ6は、排ガスの熱回収を行い、この熱で生じた蒸気を蒸気タービン7に供給する。
【0049】
蒸気タービン7は、排熱回収ボイラ6から供給された蒸気の膨張で発電機を駆動する動力を得る。上述した圧縮機、ガスタービン5、蒸気タービン7及び発電機(特に図示せず)は、同軸状態で接続されている。直列に接続されたガスタービン5及び蒸気タービン7の動力により発電機が駆動され、ガスタービン5と蒸気タービン7による複合発電が行われる。
【0050】
排熱回収ボイラ6で熱回収された排ガスは、二酸化炭素が分離され、その一部はガスタービン5や石炭ガス化炉3に送られる。また、残余の二酸化炭素は、外部に搬送され、地層などに貯留される。
【0051】
空気分離装置8は、極低温の冷媒で原料空気を冷却し、排ガス中に含まれる窒素、酸素、アルゴン等の各種ガスの沸点に応じて、それらのガスを分離するものである。詳細には、原料空気は、吸着器で水分が除去されて、空気分離装置8で冷却される。このため、空気分離装置8から得られた窒素(沸点−196℃)には、沸点が異なる水分(沸点100℃)は含まれず、乾燥した大量の窒素が得られる。
【0052】
空気分離装置8で分離された酸素は、上述したように、石炭ガス化炉3やガスタービン5(燃焼器)に送られる。さらに、空気分離装置8から分離した窒素は、石炭供給設備2に供給され、窒素の有効利用が図られている。
【0053】
図2を用いて、窒素を有効利用するための石炭供給設備について説明する。図示するように、石炭供給設備2は、コンベア10で搬送された石炭を一時的に貯蔵するバンカ室11及び石炭バンカ12と、石炭バンカ12の下部に配設された計量給炭機13と、微粉炭機14とから構成されている。
【0054】
コンベア10は、上方に設置されたバンカ室11に石炭を搬送するために上方に傾斜して設置されており、コンベア10の周囲には、コンベア10を覆うカバー15が設けられている。バンカ室11に貯蔵された石炭は、石炭バンカ12を介して計量給炭機13に払い出される。計量給炭機13は、石炭を計量しながら所定量の石炭を微粉炭機14に供給するものである。
【0055】
微粉炭機14は、計量給炭機13から供給された石炭が供給されると共に、乾燥用の高温の空気が供給されるようになっている。微粉炭機14は、この石炭を粉砕すると共に、乾燥用の空気で石炭を乾燥する。微粉炭機14で粉砕、乾燥された石炭は、気流搬送で石炭ガス化炉3に供給される。
【0056】
このような構成の石炭供給設備2には、空気分離装置8(図1参照)から分離された窒素を用いて、石炭を乾燥させる乾燥手段が設けられている。具体的には、乾燥手段は、石炭を搬送するコンベア10とそのコンベア10を覆うカバー15との間の空間に、空気分離装置8からの窒素を投入することにより構成されている。
【0057】
上述したように、空気分離装置8から得られる窒素は、水分が殆ど含まれず、乾燥しているので、コンベア10で搬送される石炭に付着した水分は蒸発しやすくなり、石炭の乾燥を促進できる。
【0058】
このように微粉炭機14に供給される前の段階で、窒素により石炭を乾燥することで、微粉炭機14において、石炭の乾燥用の空気を加熱するのに要するエネルギーを低減することができる。
【0059】
以上に説明したように、本実施形態に係る石炭ガス化複合発電システム1は、空気分離装置8で発生する余剰窒素を石炭供給設備2に供給し、その窒素を石炭の乾燥に用いるので、空気分離装置8で大量に生じた窒素の有効利用を図ることができる。また、微粉炭機14で石炭を粉砕する前に石炭を乾燥するので、微粉炭機14で必要となる石炭の乾燥のためのエネルギーを低減することができ、石炭ガス化複合発電システム1全体の効率を向上することができる。
【0060】
また、余剰窒素を石炭ガス化炉3に投入しないので、石炭ガス化炉3内の二酸化炭素濃度が維持され、炭素転換率及び二酸化炭素純度が低下してしまうことを回避できる。
【0061】
〈実施形態2〉
実施形態1では、石炭供給設備2のコンベア10とカバー15との間の空間に、空気分離装置8からの窒素を投入する乾燥手段について説明したが、窒素の投入箇所は、これに限られない。以下、乾燥手段の種々の態様について説明する。
【0062】
図3は、実施形態2に係る石炭供給設備と乾燥手段の概略構成図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0063】
図示するように、本実施形態の乾燥手段は、バンカ室11の一部に、外部と連通する投入口16を設け、空気分離装置8からの窒素を投入口16に供給するように構成されている。このように、バンカ室11に窒素が供給されることで、石炭バンカ12に投入される前の石炭を乾燥させることができる。これにより、実施形態1と同様に、微粉炭機14で石炭の乾燥に要するエネルギーを低減することができる。
【0064】
〈実施形態3〉
微粉炭機14の前に石炭の乾燥させる乾燥手段として、流動床乾燥機を用いることができる。図4は、実施形態3に係る石炭供給設備と乾燥手段の概略構成図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0065】
図示するように、流動床乾燥機17は、石炭バンカ12と微粉炭機14との間に設置されている。石炭バンカ12から給炭され、計量給炭機13で計量された石炭は、流動床乾燥機17に所定量供給される。
【0066】
また、流動床乾燥機17には、石炭の下方から石炭に吹き付けられる高温の空気と一緒に、空気分離装置8から供給された窒素が供給されように構成されている。すなわち、流動床乾燥機17では、空気分離装置8からの窒素も石炭の乾燥に用いている。
【0067】
このように、微粉炭機14の前段階で予備的に石炭が流動床乾燥機17で乾燥されるので、微粉炭機14で石炭の乾燥に要するエネルギーを低減することができ、また、空気分離装置8からの窒素を有効利用することができる。
【0068】
さらに、図5に示すように、空気分離装置8から流動床乾燥機17に供給する窒素を、熱交換機18により加熱してもよい。この場合においては、より高温の窒素が流動床乾燥機17に供給されることで、石炭は、より乾燥し、微粉炭機14で石炭の乾燥に要するエネルギーをさらに低減することができる。
【0069】
なお、熱交換機18の熱源は特に限定はないが、石炭ガス化複合発電システム1の系内で生じた熱を用いることで、系全体の熱効率を向上することができる。
【0070】
〈実施形態4〉
微粉炭機14の前に石炭の乾燥させる乾燥手段として、ロータリーキルン型乾燥機を用いることができる。図6は、実施形態4に係る石炭供給設備と乾燥手段の概略構成図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0071】
図示するように、ロータリーキルン型乾燥機19は、傾斜した円筒体を回転させながら、その中に処理対象物である石炭を流通させ、石炭に所定の温度、時間で加熱するものである。また、ロータリーキルン型乾燥機19にはロードセルを設置することなどにより計量機能を持たせておく。
【0072】
ロータリーキルン型乾燥機19は、石炭バンカ12と微粉炭機14との間に設置されている。すなわち、石炭バンカ12から給炭された石炭は、ロータリーキルン型乾燥機19により計量され、微粉炭機14に供給される。
【0073】
そして、ロータリーキルン型乾燥機19には、空気分離装置8からの窒素が内部に供給されるようになっている。このため、ロータリーキルン型乾燥機19内部では、乾燥した雰囲気の下で石炭が加熱されて乾燥される。
【0074】
このように、微粉炭機14の前段階で予備的に石炭がロータリーキルン型乾燥機19で乾燥されるので、微粉炭機14で石炭の乾燥に要するエネルギーを低減することができ、また、空気分離装置8からの窒素を有効利用することができる。
【0075】
また、上述したロータリーキルン型乾燥機19は、いわゆる外熱式のロータリーキルン型乾燥機19であり、乾燥した窒素雰囲気の下で石炭を加熱したが、必ずしも加熱する必要はない。すなわち、石炭がロータリーキルン型乾燥機19に投炭され、回転する円筒体内部を流通しながら出口から排出されるまでの間に、空気分離装置8から供給された窒素雰囲気に晒すだけでもよい。
【0076】
この場合においては、ロータリーキルン型乾燥機19の円筒体の回転で石炭が転がり、石炭の表面全体が窒素雰囲気に晒されることになるので、石炭の表面全体を万遍なく乾燥させることができる。
【0077】
さらに、図7に示すように、空気分離装置8からロータリーキルン型乾燥機19に供給する窒素を、ガスタービン5(図1参照)の排ガスに含まれる残存酸素処理炉(特に図示せず)で発生する熱で加熱してもよい。この場合においては、より高温の窒素がロータリーキルン型乾燥機19に供給されることで、石炭は、より乾燥し、微粉炭機14で石炭の乾燥に要するエネルギーをさらに低減することができる。
【0078】
なお、ロータリーキルン型乾燥機19に供給する窒素の熱源は、上述の残存酸素処理炉の熱に限定されない。
【0079】
〈実施形態5〉
実施形態1〜実施形態4では、石炭火力発電システムの一例として、石炭ガス化複合発電システムを例に挙げたが、本発明は、いわゆるOxy-fuel型の石炭火力発電システムにも適用することができる。
【0080】
図8は、実施形態5に係る石炭火力発電システムにおける石炭供給設備と乾燥手段の概略構成図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0081】
本実施形態に係る石炭火力発電システムの発電手段は、石炭を燃焼するボイラ20と、ボイラ20で生じた熱により得られた蒸気を膨張することで発電機の動力を得る蒸気タービン(特に図示せず)とを備えている。
【0082】
また、空気分離装置8(特に図示せず)は、実施形態1と同様に原料空気から酸素を分離し、その酸素をボイラ20に供給している。
【0083】
ボイラ20で発生した排ガス中の二酸化炭素は回収され、一部は、ボイラ20に供給され、残余は外部に搬送され、地層等に貯留されるように構成されている。
【0084】
このような構成のOxy-fuel型の石炭火力発電システムにおいても、空気分離装置8で発生した余剰窒素を石炭供給設備2に供給し、石炭の乾燥を促進させることができる。具体的には、実施形態1〜実施形態4で説明したような各種乾燥手段を適用することで石炭を余剰窒素で乾燥させる。
【0085】
図8に乾燥手段の一例を示す。すなわち、実施形態1と同様に、石炭を搬送するコンベア10と該コンベア10の周囲を覆うカバー15との間の空間に、空気分離装置8からの窒素を投入するようにした。もちろん、実施形態2〜実施形態4で説明した乾燥手段を用いてもよい。
【0086】
このような構成の石炭火力発電システムにおいても、二酸化炭素の排出を抑えると共に、空気分離装置8で発生した余剰窒素で石炭供給設備2の石炭の乾燥を促進でき、微粉炭機14で石炭の乾燥に要するエネルギーを低減することができる。
【0087】
〈他の実施形態〉
以上に説明した実施形態1〜実施形態5では、乾燥手段は、石炭供給設備2の各所に一つ設けられていたが、複合的であってもよい。すなわち、実施形態1〜実施形態5で説明した各乾燥手段を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
また、実施形態1〜実施形態4では、石炭ガス化発電システムとして石炭ガス化複合発電システム1を例に挙げたが、必ずしもこのような態様に限らず、例えば、蒸気タービン7を設けずにガスタービン5のみで発電を行うものであってもよい。要するに、本発明は、石炭ガス化複合発電システムに限らず、石炭ガス化ガスを燃焼してガスタービンを駆動し、その排ガス中の二酸化炭素を石炭のガス化に利用する発電システムに適用することができる。
【0089】
さらに、乾燥手段を設ける態様は、実施形態1〜5に説明した場合に限定されず、微粉炭機14に供給される前の段階で、石炭を空気分離装置8からの窒素を用いて乾燥させるようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、石炭から石炭ガス化ガスを生成し、石炭ガス化ガスを燃焼してガスタービンを駆動し、その排ガス中の二酸化炭素を石炭のガス化に利用する発電システムで利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 石炭ガス化複合発電システム
2 石炭供給設備
3 石炭ガス化炉
4 ガス精製設備
5 ガスタービン
6 排熱回収ボイラ
7 蒸気タービン
8 空気分離装置
10 コンベア
11 バンカ室
12 石炭バンカ
13 計量給炭機
14 微粉炭機
15 カバー
16 投入口
17 流動床乾燥機
18 熱交換機
19 ロータリーキルン型乾燥機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭供給設備より供給された石炭を用いて発電する発電手段と、
空気から酸素及び窒素を分離し、石炭の燃焼又は石炭のガス化のために酸素を発電手段に供給する空気分離装置と、
前記空気分離装置で発生した窒素を用いて前記石炭供給設備の石炭を乾燥させる乾燥手段とを備える
ことを特徴とする石炭火力発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載する石炭火力発電システムにおいて、
前記石炭供給設備は、コンベアにより搬送された石炭を貯蔵する石炭バンカと、石炭バンカの下部に配設された計量給炭機を介して石炭が供給される微粉炭機とから構成され、
前記乾燥手段は、石炭が前記微粉炭機に供給される前に該石炭を前記窒素で乾燥させるように構成されている
ことを特徴とする石炭火力発電システム。
【請求項3】
請求項2に記載する石炭火力発電システムにおいて、
前記乾燥手段は、前記コンベアに搬送される石炭を前記窒素で乾燥するように構成されている
ことを特徴とする石炭火力発電システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載する石炭火力発電システムにおいて、
前記乾燥手段は、前記コンベアと前記石炭バンカとの間に配設された石炭バンカ室に貯蔵された石炭を前記窒素で乾燥するように構成されている
ことを特徴とする石炭火力発電システム。
【請求項5】
請求項2〜請求項4の何れか一項に記載する石炭火力発電システムにおいて、
前記乾燥手段は、前記石炭バンカと前記微粉炭機との間に石炭が供給される流動床乾燥機を設置し、該流動床乾燥機に前記窒素を供給するように構成されている
ことを特徴とする石炭火力発電システム。
【請求項6】
請求項5に記載する石炭火力発電システムにおいて、
前記流動床乾燥機に供給される窒素を加熱する熱交換器を備える
ことを特徴とする石炭火力発電システム。
【請求項7】
請求項2〜請求項4の何れか一項に記載する石炭火力発電システムにおいて、
前記乾燥手段は、前記石炭バンカと前記微粉炭機との間に石炭が供給されるロータリーキルン型乾燥機を設置し、該ロータリーキルン型乾燥機に前記窒素を供給するように構成されている
ことを特徴とする石炭火力発電システム。
【請求項8】
請求項7に記載する石炭火力発電システムにおいて、
前記ロータリーキルン型乾燥機は、外熱式である
ことを特徴とする石炭火力発電システム。
【請求項9】
請求項8に記載する石炭火力発電システムにおいて、
外熱式の前記ロータリーキルン型乾燥機に供給される窒素を、排ガスの残存酸素処理炉で発生する熱で予熱する加熱手段を備える
ことを特徴とする石炭火力発電システム。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れか一項に記載する石炭火力発電システムにおいて、
前記発電手段は、石炭をガス化して石炭ガス化ガスを生成する石炭ガス化炉と、前記石炭ガス化ガスを燃焼して発電機の動力を得るガスタービンとを備え、
前記石炭ガス化炉に、前記排ガス中の二酸化炭素及び前記空気分離装置の酸素がガス化剤として供給されるように構成されている
ことを特徴とする石炭火力発電システム。
【請求項11】
請求項10に記載する石炭火力発電システムにおいて、
前記発電手段は、前記排ガスの熱を回収して得られた蒸気を膨張することで発電機の動力を得る蒸気タービンとをさらに備える
ことを特徴とする石炭火力発電システム。
【請求項12】
請求項1〜請求項9の何れか一項に記載する石炭火力発電システムにおいて、
前記発電手段は、石炭を燃焼するボイラと、該ボイラで生じた熱により得られた蒸気を膨張することで発電機の動力を得る蒸気タービンとを備え、
ボイラからの排ガスに含まれる二酸化炭素を回収し、該二酸化炭素の一部をボイラに供給すると共に残余の二酸化炭素を貯留するように構成されている
ことを特徴とする石炭火力発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−87974(P2012−87974A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234084(P2010−234084)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】