説明

石英ガラスの光学部材、この光学部材の製造方法そしてそれの利用

【課題】直線偏光のUVレーザー放射での使用に好適であって、異方性密度変化により生じるコンパクションと複屈折とに対して最適化されている光学部材を提供する。この光学部材は作動波長が250nm以下である浸漬型リソグラフィのプロジェクションレンズシステムに使用するに適している。
【解決手段】石英ガラスは以下の特性の組合せを示す。本質的に酸素欠陥のないガラス構造、60wtppm以下のヒドロキシル基の平均含有量、10wtppm以下のフッ素の平均含有量、そして1wtppm以下の塩素の平均含有量。
この光学部材の製造方法は次の工程を備えている。還元条件の下でSiOスート体をつくり、乾燥する工程、そして石英ガラス構造の酸素欠陥と反応する反応物でその乾燥したスート体をガラス化前にもしくはガラス化中に処理する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動波長が250nm以下である浸漬型リソグラフィのプロジェクションレンズシステムに使用する石英ガラスの光学部材に係るものである。
【0002】
さらに、本発明はそのような光学部材の製造方法に係るものであり、そしてそれの利用にも係るものである。
【背景技術】
【0003】
石英ガラスからつくられる光学部材は、大規模集積回路を基板につくるマイクロリソグラフイック露光・投射システムにおける高エネルギー紫外線レーザーの伝播に利用される。新しいマイクロリソグラフイック投射システムはエキシマレーザーで作動し、このエキシマレーザーは248nm(KrFレーザー)もしくは193nm(ArFレーザー)の波長の高エネルギーのUVパルス放射を放出する。一般に望まれることとして、照明システムの対象面の領域につくられる光分布は、露光しようとしている基板上の対象面に対して共役関係にあるプロジェクションレンズシステムの像面にできるだけ均質で、角度を保って、そしてできるだけ高い解像力で送られなければならない。
【0004】
光路につくられる角スペクトルの各変化はレンズの瞳孔において強度分布の歪となり、これは非対称照明となって、像を造る性能を低下させる。
【0005】
これに関連して石英ガラスの複屈折は重大な役割を演ずる。何故ならばそれが石英ガラスの光学部材の造影忠実度を損なうからである。作ろうとしている光学部材に使用するブランクの不均一な冷却中に複屈折がつくられたり、もしくはUV放射でそれは誘起されて構造欠陥を生じ密度変化となる。
【0006】
UV放射により生じる異方牲密度変化は、所謂「浸漬型リソグラフィ」技術に従って作動しているプロジェクションシステムにおいて特に顕著である。浸漬型リソグラフィでは、像面で露光されようとしている基板と、レンズシステムの最後段の光学部材との間の間隙に空気よりも屈折率の高い液体を充填している。空気に比してその液体の高い屈折率が、全体に、プロジェクションレンズシステムの大きな開口数に作用して、それによりシステムの解像力を改善する。
【0007】
DE102 10 899A1は浸漬技術を基礎にしたマイクロリソグラフィに使用の屈折プロジェクションレンズシステムを開示しており、このシステムは光学特性の異なる幾つかのレンズ群から成っている。作動波長が193nmのためのレンズ材料としては合成石英ガラスが推奨されており、作動波長が157nmに対してはフッ化カルシュームがレンズ材料として推奨されている。システムの最後のレンズと基板との間の間隙の幅は8.4mmであり、そして屈折率が1.47と言われている脱イオン水である浸漬液を充填している。プロジェクションレンズシステムの最後のレンズの石英ガラスについてはそれ以上述べられてはいない。
【0008】
「浸漬型リソグラフィ」は偏波に敏感である。直線偏光レーザー放射を使用するとき最良の結果が得られ、そして他の場合、標準、完全もしくは部分的円形偏波レーザー放射ではそうはならない。直線偏光UV放射は石英ガラスに異方性の密度変化を生じさせ、そのことが円形偏波放射の下ではいかなる変化も示さないであろう範囲にも応力複屈折を生じさせる。
【0009】
異方性密度変化の作用をなくす手段が未公開のドイツ特許出願DE 10 2004 017 031に説明されており、それはドイツ特許法§3(2)の意味で本願に関っている。しかしながら、そのドイツ特許出願では教示されていない事項が異方性密度変化に大きく影響することが判明した。
【0010】
作動波長が193nmぐらいのマイクロリソグラフィのプロジェクションレンズシステムに使用する光学部材の石英ガラスブランクもDE 101 59 961C2に説明されている。この既知の光学部材は、本質的に酸素欠陥のないガラス構造、そして0.1×1016分子/cmないし4.0×1016分子/cmの範囲内の水素、125wtppmないし450wtppmの範囲のヒドロキシル基、5×1016分子/cm以下のSiH基を含有する石英ガラスから成っている。
【0011】
この光学部材は比較的高いヒドロキシル基の含有を示し、作動波長が250nm以下で浸漬型リソグラフィのプロジェクションレンズシステムに使用するにある程度適している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、直線偏光のUVレーザー放射での使用に好適であって、異方性密度変化により生じるコンパクション(compaction)と複屈折とに対して最適化されている光学部材を提供することである。さらに、本発明の目的はそのような光学部材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
光学的要素について言えば、本発明の目的は
本質的に酸素欠陥のないガラス構造、
1×1016分子/cmと1×1017分子/cmとの間の範囲の平均水素含有量、
5×1016分子/cm以下のSiH基の平均含有量、
60wtppm以下のヒドロキシル基の平均含有量、
10wtppm以下のフッ素の平均含有量、
1wtppm以下の塩素の平均含有量、そして
1040℃以上の仮想温度
の諸特性の組合せを示す石英ガラスの光学部材の実施によって達成される。
【0014】
上記の特性は光学部材が使用される全域に亘り一定であり、そして示されている構成成分は均一に分布しているのが理想的である。上に述べたものは、光学部材の光学的に使用される範囲(「CA(開放口)域」もしくは「光学的に使用される部分」とも言われる)内での特性の平均値を指している。
【0015】
実質的に酸素欠陥のないガラス構造とは本文では、酸素欠陥と酸素過剰部位の濃度がシェルビー(Shelby)法の検出限界以下であるガラス構造体を言うものと理解されたい。この検出法は「ヒドロキシルのない石英ガラスとの水素反応」(ジェイ.アプライド・フイジックス、51巻、第5(1980年5月)2589−2593頁)に示されている。定量的にこの方法は、石英ガラスのグラム当たり1017を越えないガラス構造内の酸素欠陥もしくは酸素過剰部位を検出する。
【0016】
ラマン測定法により水素含有分(H含有分)を測定する。これはコチムチェンコ等が最初に提唱している(「ラマン散乱法とマス・スペクトロメトリ法を利用して石英ガラスに溶解した水素含有分を決定」、ザーナル プリクラドイ スペクトロスコピー、46巻、第6、1987年6月、987−991参照)。
【0017】
SiH基の含有分はラマンスペクトロスコピーにより測定する。シェルビーの「ヒドロキシルのない石英ガラスと水素との反応」(ジェイ.アプライド フイジックス 51巻、第5(1980年5月)、2589−2593頁)に記載のように、Si-O-Si + H2
→ Si-H + Si-OHで示される化学反応に基づいて較正する。
【0018】
ディ.エム.ドッド等の方法(溶解石英内のOHの光学的測定;1966年、3911頁)によるIR吸収の測定からヒドロキシル基の含有分(OH含有分)を求める。
【0019】
仮想温度は石英ガラス固有の網状構造の特徴を表すパラメーターである。約606cm−1の波長でのラマン散乱強度測定により仮想温度を決定する標準測定法が、シーエイチ フライダラー等の「異なる熱履歴と化学量論組成を持つ溶融石英におけるUV誘起の210nm吸収帯」ジヤーナル ノンクリスタル ソリッド 159(1993)145−143頁に記載されている。
【0020】
DE10 2004 017 031に記載の石英ガラスを得るには、既知のVAD法によりSiClを火炎加水分解してSiOスート体をつくって、そのSiOスート体を塩素含有雰囲気内で1200℃の温度で脱水し、そして真空中(10−2ミリバール)で約1750℃の温度でガラス化し透明な石英ガラスブランクを得る。
【0021】
石英ガラスの網状構造のヒドロキシル基と容易に塩素が置き換わって、それの含有分を比較的容易に減少させてこの種の脱水処理により非常に小さい値にすることができる。しかしながらこの処理において、塩素はガラス網状構造に入りこみ、それがUV放射レジスタンス(耐性)に影響する。他のハロゲン族元素とそれらの化合物による脱水にも同じ状況が観察される。他方、60wtppm以下の値へのヒドロキシル基含有物の、純粋に物理的な、化学的には説明のつかない減少を起こさせるが、それには高温での長期処理期間を必要とする。酸素欠陥につながっていくガラス構造と欠陥創生の再配列が生じることがあると言うことが判明し、それの一つの理由は除去されたOH基に直接取って代わるものがないということであるのかもしれない。このようにしてつくられた酸素欠陥は石英ガラスのUV放射レジスタンス(耐性)を害う。それ故、問題は、実質的にハロゲン含有分のない十分に乾燥したSiOスート体をつくることにあり、それのガラス構造には全く酸素欠陥はないか、あっても僅かな酸素欠陥を示す。それの計測は以下に本発明の方法を参照して詳述する。
【0022】
それ故本発明の要素の石英ガラスとDE10 2004 017 031から知られる石英ガラスとの違いは、60wtppm以下の低いヒドロキシル基含有量であるにもかかわらず、それのガラス構造には実質的に酸素欠陥はなく、そして同時にハロゲン含有量も低いことである。この石英ガラスの塩素含有量は1wtppm以下である。
【0023】
上に述べた特性の石英ガラスからつくった光学部材は、直線偏光のUVレーザー放射と使用しても異方性密度変化は小さい。
【0024】
上に説明したことは別として、この効果は石英ガラスの比較的低いヒドロキシル基含有とそれの比較的高い仮想温度とに起因すると言える。他方、1000℃と1500℃との間の温度範囲から急速に冷却された(高い仮想温度の)石英ガラスは、緩慢に冷却された(低い仮想温度の)石英ガラスよりも低い比容積を、従って高い固有密度を有することが知られている。「アール・ブルックナー二酸化ケイ素;エンサイクロペディア・オヴ・アプライドフィジックス,18巻(1997)、101−131頁」によれば、そのことは合成石英ガラスの異常性によるのであり、その場合は1000℃と1500℃との間の範囲における比容積の変化は負の温度係数を有する、すなわち石英ガラスの比容積はこの温度範囲では、温度減少につれて増加し、換言すれば前記の温度範囲から急速に冷却されて、そして高い仮想温度を持つ石英ガラスは緩慢に冷却されて、そして低い仮想温度を持つ石英ガラスよりも高い密度を示すのである。
【0025】
高い仮想温度のため高くなった石英ガラスの密度は、全体にガラス構造の「期待された」コンパクションのように作用する。これについてはUV放射時にはそのコンパクションの網状構造が局所的な異方性密度変化の作用を減殺する。
【0026】
高められた粘性率とは別に、低いOH含有分は異方性の密度変化の阻止に関して別の重要な様相を呈する。密度変化はヒドロキシル基の再配列により達成されると考えられ、この再配列機構はヒドロキシル基が得られるほど、それだけ一層作用しがちであり、そしてそれだけ一層容易に生じる。それ故、石英ガラスの低いヒドロキシル基の含有分と大きくなった密度(高い仮想温度)とがガラス構造の鋭敏牲を局所的な異方性密度変化にする。
【0027】
かくして、本発明の石英ガラス要素は既知の石英ガラス質よりもよくUV放射に耐えられ、それは190nmと250nmとの間の波長を持つ直線偏光のUV放射の伝播に利用するのに特に適している。
【0028】
石英ガラスの仮想温度が1080℃以上であると特に有利であることが判った。
【0029】
石英ガラスの仮想温度が高ければ高いほど、それの密度はそれだけ高くなり、そして全体に石英ガラスの「期待された」コンパクションの上述の効果は一層はっきりし、そして直線偏光のUV放射による局所的な異方性と等方牲の密度増加に対する抵抗牲はよりはっきりする。非常に高い仮想温度(>1200℃)ではこのポジティブな効果は、熱的につくられはなはだしく大きい応力複屈折によって害われる。
【0030】
石英ガラスの高い粘性については、石英ガラスのヒドロキシル基の含有量が10wt ppmと30wt ppmとの間である光学部材の実施例が優先する。
【0031】
低いヒドロキシル基含有量は高い粘性を生じる。それに伴う局所的な等方牲密度変化に対する振舞いの改善は、スート法によりつくられた石英ガラスの典型である、ヒドロキシル基の含有分が125wtppm以下の石英ガラスがコンパクションされがちであるということを上述のDE101 59 961で考えられていた限りでは、驚くべきである。
【0032】
比較的低いヒドロキシル基の含有分の粘性増加効果は、完全にもしくは部分的に高いフッ素含有によりなくすことができる。Si‐OH基と同様に、Si‐F基はUV放射を受けると容易に再配列され、それによって密度変化を生じるとも考えられる。それ故、本発明の光学部材のための石英ガラスは5wtppm以下のフッ素含有分を有するが好ましい。
【0033】
さらに、石英ガラスの平均水素含有分が5×1016分子/cm以下、好ましくは2×1016分子/cmと5×1016分子/cmとの間であるときに有利であることが判っている。
【0034】
水素含有分が高ければ高いほど、それだけUV放射のときの欠陥治癒効果は大きくなる。他方、水素含有分はSiH基の生成に寄与する。従って、
H2 + Si-O-Si → SiH + SiOH
で表わされる反応により高い水素含有分ではSiHを生成するリスクが増大するという事実から水素含有分の上限は決まる。
【0035】
方法について言えば、上述の目的は以下の工程を備えている方法により本発明に従って達成される。
● SiOスート体をつくる工程、
● ヒドロキシル基の平均含有量が60wtppm以下となるような仕方で少なくとも1150℃の温度で、真空もしくは不活性ガスの雰囲気で、還元状態で前記のスート体を乾燥する工程、
● 石英ガラス構造の酸素欠陥と反応する反応物でその乾燥したスート体を処理する工程、
● スート体をガラス化してシリンダ形石英ガラスブランクをつくる工程、
● 石英ガラスブランクをアニールして、つくろうとしている光学部材の輪郭よりも大きくなっている、仮想温度が1040℃以上、好ましくは1080℃以上の石英ガラスシリンダをつくる工程、
● 当該石英ガラスシリンダの表面域の軸方向の余分の大きさの部分を取除く工程、そして
500℃以下の温度で水素含有雰囲気内で加熱することにより水素を当該石英ガラスシリンダに充填して、平均水素含有量を1×1016分子/cmないし1×1017分子/cmの範囲内とする工程
【0036】
「直接ガラス化」は、450から1200wtppmのOH含有分を有する石英ガラスを普通生成し、数wtppmと300wtppm間のむしろ低いOH含有分が「スート法」に従ってつくられた石英ガラスの典型である。それ故、本発明の光学部材のための石英ガラスは「スート法」によりつくられるのが好ましい。この方法では、脱水処理により所定値へ簡単な仕方でヒドロキシル基含有量を調整できる中間製品としてSiOスート体がつくられる。
【0037】
脱水処理では真空もしくは不活性ガスの雰囲気でそして還元条件で少なくとも1150℃の温度でスート体を乾燥させ平均ヒドロキシル基含有量が60wtppm以下にする。この熱脱水処理のお蔭で、ヒドロキシル基の置換中スート体へのハロゲンの過剰注入は回避される。他方、還元条件での長期の熱処理は酸素欠陥をつくる。除去されたOH基に代る適当な代替物が直接得られないからである。酸素欠陥が石英ガラスのUV放射抵抗牲を害う。
【0038】
本発明に従ってのスート体の事後処理は酸素欠陥を少なくする。この処理においては乾燥させたスート体は石英ガラス構造の酸素欠陥と反応する反応物質で処理される。この反応のための活性エネルギーがつくられて、スート体はその使われた反応物によって異なる適当な高温まで加熱される。
【0039】
事後処理はスート体のガラス化の前もしくはガラス化と一緒に行うことができる。ガラス化後得られる石英ガラスのヒドロキシル基の含有量は、60wtppm以下であり、そのブランクには酸素欠陥はなく、SiH基と水素もない(これら成分のすべての含有量は検出限界以下)。
【0040】
次に石英ガラスブランクはアニールされ、この際仮想温度は1040℃、好ましくは1080℃以上に調整するよう注意を払う。石英ガラスブランクを所望の仮想温度の範囲内の温度に保つようにする手段によりその構造バランスのセッティングまで所定の仮想温度を保持することができ、それから急速に冷やすか、もしくは設定すべき仮想温度以上の温度から十分急速に冷却する。一方では所望の高い仮想温度が保たれるように、他方では応力複屈折が生じないように注意しなければならない。一方の前提条件(高い仮想温度)を考慮して冷却速度の下限を決め、他方の前提条件(低い応力複屈折)を考慮して以下に詳述するように対応する下限を決める。
【0041】
比較的高い仮想温度のセッティングのために得られる石英ガラスでは、それの一層急速な冷却周辺部に他よりも顕著な残存応力が見られる。それ故、つくろうとしている光学部材の輪郭を包囲する余分に大きくしてある部分をシリンダの両面から除去する。この余分に大きくなっている部分(もしくはそれの一部)を先に取除いているのでその後で水素を石英ガラスに充填するのが短縮され、その充填は1×1016分子/cmから1×1017分子/cmの範囲の平均水素含有量となるに必要な時間行われる。
【0042】
UV放射によりつくられる石英ガラス内の欠陥に対して水素が治療効果を有することは知られている。本発明の方法において水素含有量は、例えばスート体の上述の真空処理のためかなりの程度まで減少させられる。それ故、その後で石英ガラスに水素を充填する。SiH基の生成をなくすため500℃以下の温度で水素充填を行う。石英ガラス内のSiH基は望ましいものではない。高エネルギーのUV放射を照射するとSiH基からいわゆるE’センターと原始水素とが形成されるからである。このE’センターとは210nmの波長を大きく吸収し、そしてその隣接するUV波長範囲においても不都合なことに吸収が認められる。熱力学的な条件のためSiH基は水素の存在で高温(500℃―800℃)で多くつくられ、そして石英ガラスの比較的低いOH含有分はそのバランスをSiH生成の方にずらしていく。
【0043】
熱脱水処理中つくられる酸素欠陥を飽和させる反応物としてフッ素及び又は酸素を使用するのが好ましい。
【0044】
事後処理は先行する脱水処理を行った加熱装置以外の加熱装置内で行うことができ、それは酸素及び又はフッ素の存在に構造的に適しているものであって、例えば加熱室の内側には黒鉛部分はないようにしている。酸素は石英ガラスと相対して全く不活性の振舞いを呈する。他方、存在する酸素欠陥とのフッ素の反応が要する活性エネルギーは低く、かくしてスート体の熱負荷は低くなる。
【0045】
ヒドロキシル基を除去するのに反応物は使用されないし、数が比較的少ない酸素欠陥を飽和させる反応物だけ使用するので、反応物の量は少ない。これについては、2×1015cm−3以下の酸素欠陥を含有するように処理中にスート体へ供給される反応物の量を決めておくと特に有利であることが判っている。スート体の乾燥は少なくとも1200℃の温度で実施するのが好ましい。
【0046】
ヒドロキシル基を排除してその含有が60wtppm以下にするのに必要な処理時間を高温が短縮する。
【0047】
乾燥中ヒドロキシル基の平均含有分が10wtppm と30wtppmとの間の範囲とされると特に有利であることが判明している。
【0048】
乾燥後のスート体のヒドロキシル基の含有分が低ければ低いほど、ガラス化後のできた石英ガラスのヒドロキシル基の含有分は少なく、そして異方性密度変化により生じる複屈折は少なくなり、そして直線偏光UVレーザ放射で使用中に石英ガラスが経験する複屈折は少なくなる。その少なくなる下限は、純粋に物理的な方法に基づく脱水処理が石英ガラスの品質に不利な影響を与える過大に高い温度や処理時間を必要とすると言う事実によって決まる。
【0049】
石英ガラスブランクのアニールは主として応力をなくすのに役立ち、所望の仮想温度を調整するのに役立ち、かくしてコンパクション耐性ガラス構造とし、そしてそれは以下の工程を備えているのが好ましい。
● つくろうとする石英ガラス要素の仮想温度よりも少なくとも50℃高い第1の高いアニール温度に少なくとも4時間の第1保持期間中石英ガラスブランクを保ち、
● つくろうとする石英ガラス要素の仮想温度の上下+/−20℃の範囲の第2の低いアニール温度に第1の低い冷却速度で冷却し、
● 第2の保持期間中その低いアニール温度を保ち、そして
● 800℃以下、好ましくは400℃以下の所定の最終温度へ少なくとも毎時25℃の第2の高い冷却速度で冷却する。
【0050】
UV放射による局所的コンパクションと直線偏光UV放射による異方性密度変化とを減殺する比較的密な網状構造をつくりだすと仮想温度も高くなるということが判っている。上述の好ましいアニールプログラムは仮想温度よりも明確に高い(>50℃)温度に加熱すること、つくろうとしている仮想温度付近の温度に冷却すること、それからその低温以下ではガラス構造に本質的変化はもう起こらないと予想できる低温へ石英ガラスを比較的急速に冷却することを含んでいる。
【0051】
これは比較的短期のアニール方法であり、それは応力複屈折に関する欠点をもっているかもしれないけれども、時間の節約を別にしても、UV放射による局所的コンパクションに関して高い安定性という利点を有しており、それは高温で比較的短かい処理期間であるため成分の外方拡散と不純物拡散による汚染によって生じる非均質性の生成を回避できる。
【0052】
第1の冷却速度を毎時1℃と毎時10℃の間にセットすると、特に毎時3℃と5℃の間が好ましいのであるが、特にコンパクトな網状構造が得られる。
【0053】
コンパクトなガラス構造体について言えば、第2の冷却速度を毎時25℃と毎時80℃との間にセットすると、特に毎時40℃が好ましいのであるが、有利であることが判っている。
【0054】
冷却プロセスが速ければ速いほど、時間の節約、拡散効果の低減そして「前もってコンパクトにされた」ガラス構造の振舞いについての上述の利点は一層大きくなる。
【0055】
石英ガラスは再度弛緩する機会が与えられる。石英ガラスブランク内の温度分布は均一化され、そして応力複屈折に至る温度勾配はなくなる。
【0056】
こういうことで第1の保持時間は50時間を超えないのが好ましい。ガラス構造を所定の仮想温度に近くセットするために長いアニール時間は必要ないことが判っている。
【0057】
石英ガラスに0と1バールとの間の圧力の水素を充填するのが有利である。
【0058】
圧力を増大すると水素充填を加速し、密度にも影響して局所的な異方性と等方牲の密度変化を生じ難くするコンパクトな構造とする。SiH基の形成を少なくする仕方では400℃以下の温度、好ましくは350℃以下の温度で石英ガラスに水素を充填するのが好ましい。
【0059】
同じ理由で好ましいことは、石英ガラスの水素充填では平均水素含有量は5×1016分子/cm以下、好ましくは2×1016分子/cmと5×1016分子/cmとの間のとする。
【0060】
本発明の光学石英ガラス要素もしくは本発明の方法によりつくられた光学部材は波長の短いUV放射で照射したとき局所的な異方性と等方牲の密度変化に低感度であるという特徴を持っている。そのためそれは、190nmと250nmとの間の波長の紫外線の、パルス化された直線偏光のUVレーザーを伝播する目的の浸漬型リソグラフィの自動露出器械の投射システムに光学部材として使用するのが好ましい。
【0061】
その石英ガラス要素はこの波長のUSレーザー放射に対して、もしそれが600μJ/cm以下の、好ましくは150μJ/cm以下のエネルギー密度を持ち、そして50ns以上の、好ましくは150ns以上のパルス幅を有するのであれば、特に安定している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下に添付図を参照して実施例を詳述する。
【0063】
試料調製:試料S1
既知のOVD法によりSiCl4の火炎加水分解によってスート体をつくる。真空中で黒鉛の加熱要素を持つ加熱炉で1200℃の温度でスート体を脱水する。加熱炉内の黒鉛は還元条件をつくる。50時間後脱水処理完了時にはスート体のヒドロキシル基の含有量は約48wtppmである。スート体の石英ガラスは1.7×1016cm−3程度の酸素欠陥を含む。上述のシェルビー法はそのような低濃度を計量するには不適当である。それ故、酸素欠陥は伝播損失を介して間接的に決定する。レーザー照射の下で酸素欠陥を2つのいわゆるE’センターに分離することにより伝播損失が生じ、それは波長210nmでの典型的な吸収を示している。
【0064】
それから乾燥したスート体をドーピング炉に入れて、その中で、酸素20%、残りは不活性ガスから成る雰囲気内で20時間1100℃の温度で処理する。この処理は、存在する酸素欠陥を飽和させ、そして検出限界以下まで除去するように行われる。
【0065】
それから、乾燥され、そして事後処理されたスート体を(10−2ミリバールの)真空で約1750℃の温度で燒結炉内でガラス化し透明な石英ガラスブランクを得る。次にこのブランクは、熱機械的に均質化すること(捩じり)と石英ガラスシリンダの成形とにより均質化される。その後、石英ガラスシリンダのヒドロキシル基含有分は約48wtppmでありつづける。
【0066】
機械的な応力と複屈折とをなくすため、そしてコンパクション耐牲ガラス構造をつくるため石英ガラスシリンダはアニール処理を受け、このアニール処理は短いことが特徴となっている。ここで石英ガラスは空気中で1130℃で、8保持時間かけて加熱され、それから冷却速度毎時4℃で1050℃へ冷却され、この温度に4時間保たれる。石英ガラスシリンダは毎時50℃と言う高い冷却速度で300℃へ冷却され、それから炉はオフとされて、石英ガラスは炉の自由冷却に任される。
【0067】
このように処理された石英ガラスシリンダの外直径は350ミリであり、厚みは60ミリである。石英ガラスの平均仮想温度は1055℃である。多分1050℃からの急速な冷却のため、特にそれの周辺部分で比較的強い応力複屈折を呈する。光学部材の輪郭に対して大きくなっている部分、すなわち3ミリの厚みが次の処理工程前に石英ガラスシリンダの面から除去される。
【0068】
それから、石英ガラスは純粋な水素雰囲気内で380℃に最初、314時間1バールの絶対圧力で保持され、次に、0バールの水素部分圧で393時間この温度に保持され、それから79時間、0.1バールの絶対圧力で保持される。
【0069】
その後得られた石英ガラスシリンダには塩素、酸素欠陥そしてSiH基が実質的にはなくなっており(5×1016分子/cmと言う検出限界以下)、そしてそれの特徴とするところは280ミリの直径内で(CA領域)平均水素含有分は3×1016分子/cmであり、ヒドロキシル基含有分は48wtppmであり、そして平均仮想温度は1055℃である。フッ素含有分は5wtppmである。
【0070】
試料調製:試料S2
別の石英ガラスシリンダを、試料S1を参照して上に説明したようにして、つくったが、次の点では違っていた。
● 真空内で黒鉛の加熱要素を持つ加熱炉内で1200℃の温度でスート体を脱水し、この脱水処理は100時間後には完了した。その後、スート体のヒドロキシル基の含有分は約30wt ppmである。スート体の石英ガラスは3×1016分子/cm程度の酸素欠陥を含んでいる。
● それから乾燥スート体をドーピング炉に入れ、そしてその中でフッ素雰囲気内で20時間24℃の温度で処理する。この処理は、既存の酸素欠陥を飽和させ、そして検出限界以下まで除去するように行われる。
【0071】
それからスート体はガラス化され、そして試料S1を参照して説明したようにさらに処理を受ける。その結果できた石英ガラスシリンダには塩素、酸素欠陥そしてSiH基がなく(5×1016分子/cmと言う検出限界以下)、そして直径280ミリ(CA領域)以内で平均水素含有分は約3×1016分子/cmであり、ヒドロキシル基含有分は30wtppmであり、そして平均仮想温度は1075℃である。フッ素処理にもかかわらずフッ素含有分は5wtppmである。
【0072】
測定試料S1とS2とはこうしてつくった石英ガラスシリンダからできていて、波長193nmの直線偏光UVエキシマレーザー放射での照射に対する石英ガラスの抵抗性を測定するためのものである。
【0073】
比較試料S3、F1、F2、F3、SiH1そしてSiH2
比較試料S3、F1、F2、F3、SiH1そしてSiH2(これらの典型的な特徴は以下に説明する)は同じ測定を受けた。
● 試料S3は標準スート法に従ってつくられた石英ガラスであり、その標準スート法は例えばDE101 59 962に詳しく説明されている。約250wtppmから350wtppmのヒドロキシル基含有量がそのような石英ガラスの品質の典型である。
● 石英ガラス試料F1からF3はフッ素含有分が少なくとも200wtppmと言う市販の石英ガラスの品質を呈し、その石英ガラスは上に説明したように、低温度で水素を毎度充填された。
● 比較試料SiH1とSiH2とは実質的にS3に一致するが、水素含有分は初めは高く、それから1000℃ぐらいの温度で水素を充填され、その結果SiHの生成は高められている。
【0074】
測定結果
既述のドイツ特許出願DE10 2004 017 031で説明したが、異なる石英ガラス質に透過UV放射ドーズを加えるとそれらの異方性密度変化により誘起する複屈折(nm/cm)はUV放射ドーズの透過につれてほぼ線形に増加することが観察されている。そのドーズは、UV放射のエネルギー密度(μ/cm)とパルス数の積により表わされる。この積の特性直線の傾斜は、直線偏光UV放射に対するその石英ガラスの(密度の異方性変化に関しての)感度の測度である。
【0075】
ここで試料S3のヒドロキシル基含有量は300wtppmであるが、ヒドロキシル基含有量は別にしても、フッ素含有量も異なる多数の石英試料について同じ試験を行った。その試験の結果を図1に要約して示す。上に述べた積の特性直線の傾斜(感度)はy軸にプロットされており、そして試料のOH含有量(wtppm)はx軸にプロットされている。
【0076】
明らかに理解されるように、傾斜「DBZ/ドーズ」(感度)は試料のOH含有量と共に強調して目盛られている。これが意味していることは、波長193nmの直線偏光のレーザー光で照射したときの異方性密度変化に関して、石英ガラス試料の感度はOH含有量の増加につれて、増大するということである。試料F1(フッ素含有量>10000wtppm)、F2(フッ素含有量=200wtppm)、そしてF3(フッ素含有量=800wtppm)はそれぞれフッ素含有量が比較的高いことを特徴としており、(これらの試料なしで)計算した補償曲線(破線)から上の方に逸れている。それ故、それらは、ヒドロキシル基含有量だけと言うので予想されたであろう直線偏光UV放射に対して高い感度を示す。
【0077】
フッ素と塩素とが少ない石英ガラス試料S1(OH含有量は48wtppm)とS2(OH含有量は30wtppm)の対応する放射抵抗牲は優れているとみなすことができる。
【0078】
図2は波面収差を示している。二つの異なる石英ガラス試料S1とS3(試料S1とこれと比較し得る、ヒドロキシル基含有量が300wtppmの試料S3とは、それぞれ同じ1040℃の仮想温度を有する)を照射するときのパルス数により変わってくるが、ΔnL/L(ppb)の距離に基づく屈折率の変化として波面収差は示されている。これらの試料は波長が193nmで、パルス幅が25nsで、エネルギー密度が48μJ/cmである直線偏光のUV輻射へ露光され、それにより生じた波面収差は時々測定された。
【0079】
それから見ることができるように、ヒドロキシル基含有量の多い試料S3における増加パルス数での波面収差はヒドロキシル基含有量の少ない試料S1よりも明確に大きいレベルにある。このことが示していることは、直線偏光輻射に因る密度変化の異方性部分はそれぞれの石英ガラスのヒドロキシル基の含有量によって変わってくるということである。
【0080】
図2に示すようなパルス数によって波面収差が変わってくるということは、UV輻射に対する石英ガラスのコンパクション感度を特徴づけている測度によって石英ガラスの質毎に説明できる。
【0081】
図3のy軸上にそのような絶対測度Mkがプロットされ、これに対しx軸上では石英ガラスのヒドロキシル基含有量(wtppm)がプロットされている。ヒドロキシル基含有量に対してコンパクション感度(Mk)がほぼ線形に変化している。はずれているF1とF2、そしてSiH1とSiH2はそれぞれ上に述べたフッ素含有量の多い石英ガラス試料と、SI-H含有量が1.7×1017分子/cmと(SiH1)の石英ガラス試料と、SI-H含有量が2×1017分子/cm(SiH2)の石英ガラス試料を示している。これらの石英ガラスの質は本発明の石英ガラス試料S1とS2と比較して高いコンパクション感度を示している。
【0082】
試料S1とS2の石英ガラスからつくった光学部材は、波長が190nmと250nmとの間である紫外線の、直線偏光UVレーザーパルス放射を伝播するため浸漬型リソグラフィの自動露光器械の投射システムに特に適している。
【0083】
透過レーザー光のパルス幅に対して放射ダメージがどのように変わってくるかを調べる最初の試験では、(25nsのパルス幅と比較して)パルス幅が50nsの広いパルスを高いエネルギー密度もしくは大きいパルス数で透過させても本発明の石英ガラス要素を使用できることを示した。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】石英ガラスのヒドロキシル基の含有量に対する、異方性の密度変化を通るUV放射がつくる複屈折の変化を示す図である。
【図2】石英ガラスのヒドロキシル基含有量が変化する場合UV放射のパルス数に対するUV放射がつくる屈折率の変化を示す図である。
【図3】石英ガラスのヒドロキシル基含有量に対するUV放射がつくる屈折率の変化の様子を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動波長が250nm以下である浸漬型リソグラフィのプロジェクションレンズシステムに使用する石英ガラスの光学部材において、当該石英ガラスは、
本質的に酸素欠陥のないガラス構造、
1×1016分子/cmと1×1017分子/cmとの間の範囲の平均水素含有量、
5×1016分子/cm以下のSiH基の平均含有量、
60wtppm以下のヒドロキシル基の平均含有量、
10wtppm以下のフッ素の平均含有量、
1wtppm以下の塩素の平均含有量、そして
1040℃以上の仮想温度
の諸特性の組合せを示すことを特徴とした石英ガラスの光学部材。
【請求項2】
石英ガラスは1080℃以上の仮想温度を有する請求項1に記載の石英ガラスの光学部材。
【請求項3】
石英ガラスは10wtppm以上、30wtppm以下のヒドロキシル基の含有量を有する請求項1もしくは2に記載の石英ガラスの光学部材。
【請求項4】
石英ガラスは5wtppm以下のフッ素の含有量を有する請求項1ないし3のいずれかに記載の石英ガラスの光学部材。
【請求項5】
石英ガラスの平均水素含有量は5×1016分子/cm以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の石英ガラスの光学部材。
【請求項6】
作動波長が250nm以下である浸漬型リソグラフィのプロジェクションレンズシステムに使用する石英ガラスの光学部材の製造方法において、
SiOスート体をつくる工程、
ヒドロキシル基の平均含有量が60wtppm以下となるような仕方で少なくとも1150℃の温度で、真空もしくは不活性ガスの雰囲気内で、還元状態で前記のスート体を乾燥する工程、
石英ガラス構造の酸素欠陥と反応する反応物でその乾燥したスート体を処理する工程、
スート体をガラス化してシリンダ形石英ガラスブランクをつくる工程、
石英ガラスブランクをアニールして、つくろうとしている光学部材の輪郭よりも大きくなっている、仮想温度が1040℃以上の石英ガラスシリンダをつくる工程、
当該石英ガラスシリンダの表面域の軸方向の余分の大きさの部分を取除く工程、そして
500℃以下の温度で水素含有雰囲気内で加熱することにより水素を当該石英ガラスシリンダに充填して、平均水素含有量を1×1016分子/cmないし1×1017分子/cmの範囲内とする工程
を備えることを特徴とする石英ガラスの光学部材の製造方法。
【請求項7】
加熱脱水処理中に生じた酸素欠陥を飽和させる反応物としてフッ素及び/又は酸素を使用する請求項6に記載の石英ガラスの光学部材の製造方法。
【請求項8】
処理中にスート体へ加えられる反応物の量は、2×1015分子/cm以下の酸素欠陥の密度が石英ガラスブランクに得られるように決められている請求項6又は7に記載の石英ガラスの光学部材の製造方法。
【請求項9】
少なくとも1200℃の温度でスート体を乾燥する請求項6ないし8のいずれかに記載の石英ガラスの光学部材の製造方法。
【請求項10】
乾燥中ヒドロキシル基の平均含有量が10wtppmと30wtppmの間の範囲にされる請求項6ないし9のいずれかに記載の石英ガラスの光学部材の製造方法。
【請求項11】
石英ガラスブランクのアニールが、
設定しようとする石英ガラス要素の仮想温度より少なくとも50℃高い第1の高いアニール温度に少なくとも4時間の第1保持期間中石英ガラスを保つ工程、
設定しようとする石英ガラス要素の仮想温度付近で+/−20℃の間の範囲の第2の低いアニール温度へ第1の低い冷却速度で冷却する工程、
当該低いアニール温度を第2の保持期間中保つ工程、そして
少なくとも25℃/時間である第2の高い冷却速度で800℃以下の所定の最終温度へ冷却する工程
を備えている請求項6ないし10のいずれかに記載の石英ガラスの光学部材の製造方法。
【請求項12】
第1の冷却速度が1℃/時間と10℃/時間との間の速度に決められている請求項11に記載の石英ガラスの光学部材の製造方法。
【請求項13】
第2の冷却速度が25℃/時間と80℃/時間との間の速度に決められている請求項11もしくは12に記載の石英ガラスの光学部材の製造方法。
【請求項14】
第2の保持期間は1時間と16時間との間である請求項6ないし13のいずれかに記載の石英ガラスの光学部材の製造方法。
【請求項15】
第1の保持期間は50時間以上は続かない請求項11ないし14のいずれかに記載の石英ガラスの光学部材の製造方法。
【請求項16】
0と1バールの間の圧力で水素を石英ガラスブランクに充填する請求項6ないし15のいずれかに記載の石英ガラスの光学部材の製造方法。
【請求項17】
400℃以下の温度で水素を石英ガラスブランクに充填する請求項6ないし15のいずれかに記載の石英ガラスの光学部材の製造方法。
【請求項18】
石英ガラスシリンダの充填が、5×1016分子/cm以下の範囲の平均水素含有量を生じる請求項6ないし17のいずれかに記載の石英ガラスの光学部材の製造方法。
【請求項19】
波長が190nmと250nmとの間の紫外線、直線偏光したUVレーザーパルス放射を伝播するための浸漬型リソグラフィの自動露光器械のプロジェクションシステムにおける請求項6ないし18に記載の方法によって製作した石英ガラスの光学部材の利用。
【請求項20】
レーザー放射のエネルギー密度が600μJ/cm以下である請求項19に記載の利用。
【請求項21】
レーザー放射のパルス幅の時間が50ns以上である請求項19もしくは20に記載の利用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−298754(P2006−298754A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112974(P2006−112974)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(503342524)ヘレウス クワルツグラス ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (13)
【出願人】(000190138)信越石英株式会社 (183)
【Fターム(参考)】