説明

石英ガラスルツボとその製造方法および用途

【課題】シリコン単結晶引上げの高温使用下において機械的強度に優れ、引き上げ初期の有転位発生がほとんど無く、かつ単結晶化率の高い石英ガラスルツボを提供する。
【手段】シリコン単結晶引き上げに用いる石英ガラスルツボであって、ルツボ底部を除くルツボ直胴部に、ルツボ内層とルツボ外層によって結晶化促進層を挟み込んだ構造を形成し、ルツボ底部には結晶化促進層を設けないことを特徴とし、例えば、結晶化促進層を有する部分が、ルツボ上端部から直胴部長さの5%以上の範囲であり、結晶化促進成分としてアルミニウム、またはアルカリ土類金属を50〜500ppm含有し、結晶化促進層の厚さが1mm以上である石英ガラスルツボ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石英ガラスルツボ、特にシリコン単結晶引き上げに用いる石英ガラスルツボに関し、より詳しくは、シリコン単結晶引上げの高温使用下において機械的強度に優れ、引き上げ初期の有転位発生がほとんど無く、かつ単結晶化率の高い石英ガラスルツボに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶の引き上げにおいて一般に石英ガラスルツボが使用されている。この石英ガラスルツボについては、シリコン単結晶収率を高めるために従来から多くの改善をなされている。例えば、最も一般的に使用されているな石英ガラスルツボは、ルツボ内表面が実質的に気泡を含まない透明石英ガラス層によって形成され、一方、外表面側は気泡を多く含んだ不透明石英ガラス層によって形成された二重構造のルツボである(特許文献1および2)。この石英ガラスルツボは、ルツボ内表面に気泡を殆ど含まないので、気泡の破裂による転位発生がないと云う利点を有するが、シリコン単結晶引き上げ中に、内表面の透明ガラス層にブラウンリングと呼ばれる酸素欠乏型のリング状クリストバライト結晶が形成され、高温使用時のルツボの変形に由来する上記リングの剥離によって単結晶化率が低下することが懸念された。
【0003】
その対策として、ルツボ内表面にバリウムやアルミニウムなどの石英の結晶化を促進する成分(結晶化促進剤と云う)を塗布して、引き上げ昇温時に、ルツボ内面に均一な石英結晶層を形成し、ブラウンリングの発生を防ぐとともに、結晶層の形成によってルツボの高温強度を上げた石英ガラスルツボ(特許文献3および4)や、ルツボの気泡層に結晶化促進剤を含有させた石英ルツボ(特許文献5)、シリコン融液に接触するルツボ内層に結晶化促進剤を分布させた、あるいはルツボ外壁のバルク層に結晶化促進剤を分布させた石英ガラスルツボ(特許文献6)が知られている。また、ルツボの高温強度を上げる手段として、石英ガラスルツボの外面全体にアルミニウム含有量の高い原料石英粉を使用して高温粘度を高めた石英ガラスルツボが提案されている(特許文献7)。
【0004】
ところが、ルツボ内表面に結晶化促進剤を塗布して結晶層を形成した石英ガラスルツボは結晶化促進剤がシリコン融液に混入するために引き上げ初期の有転位化が多く発生し、しかも、上記結晶層が不均一であったり、あるいは剥離しやすいなどの問題を生じる場合がある。また、ルツボ内層に結晶化促進剤を含有させたものも、これを内表面に塗布したものよりはシリコン融液に対する結晶化促進剤の混入量が少ないものの混入を避けることはできない。
【0005】
一方、ルツボ外層(気泡層)に結晶化促進剤を含有させたものは、外層が結晶化してルツボの強度は一応向上するが、ルツボ内表面を結晶化する効果は乏しい。
また、石英ルツボ外表面部分に結晶化促進剤であるアルミニウムの含有量が高い原料石英粉を用いたルツボは、このルツボを支えるカーボン製の容器(サセプタ−)にルツボ外表面が接触するため、カーボンサセプターがアルミニウムによって汚染され、サセプタ−の消耗が激しくなり、また石英ガラスルツボの外表面全体が結晶化するため、引き上げ終了時にルツボ底部に残ったシリコン残液が凝固する際、ルツボ内表面と外表面の熱膨張率が大きく異なり、ルツボ底部が割れて湯漏れを発生させる虞がある。さらに、上記熱膨張率が大きく違うためにルツボに亀裂が発生しやすく、アルミニウムによる炉内汚染が拡大する懸念がある。
【0006】
さらに、ルツボ外層と内層の間に結晶化促進剤含有層が挟み込まれた構造の石英ガラスルツボが知られている(特許文献8)。しかし、従来知られているものは結晶化促進剤含有層がルツボ直胴部から底部までルツボ全体に設けられており、この含有層は結晶化促進剤を含むために、両側のルツボ外層および内層と熱膨張率が異なり、従って、ルツボ底部まで結晶化促進剤含有層を設けると、ルツボ底部には溶融シリコンが残るので、ルツボ使用終了時の熱歪みによってルツボ底部に亀裂が生じ、湯漏れを招く問題がある。
【特許文献1】特開平01−197381号公報
【特許文献2】特開平01−197382号公報
【特許文献3】特開平09−110590号公報
【特許文献4】特開平08−2932号公報
【特許文献5】特開平11−171571号公報
【特許文献6】特開2003−95678号公報
【特許文献7】特開2000−247778号公報
【特許文献8】特開平11−171684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の上記問題を解決したものであって、シリコン単結晶引上げの高温使用下において、ルツボ周壁の結晶化を促して機械的強度を高める一方、引上げ初期の結晶転位を実質的に発生させず、かつカーボンサセプターの汚染を生じることのない石英ガラスルツボを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)シリコン単結晶引き上げに用いる石英ガラスルツボであって、ルツボ底部を除くルツボ直胴部に、ルツボ内層とルツボ外層の間に結晶化促進成分を含む層(結晶化促進層)を挟み込んだ構造を形成し、ルツボ底部には結晶化促進層を設けないことを特徴とする石英ガラスルツボ。
(2)結晶化促進層を有する部分が、ルツボ底部を除き、ルツボ上端部から直胴部長さの5%以上の範囲である上記(1)に記載する石英ガラスルツボ。
(3)結晶化促進層の厚さが1mm以上であり、この結晶化促進層の両側に厚さ2mm以上の石英ガラス層を有し、かつルツボ内表面が厚さ0.5mm以上の透明石英ガラス層によって形成されている上記(1)または(2)の石英ガラスルツボ。
(4)結晶化促進成分としてアルミニウムまたはアルカリ土類金属を50〜500ppm含有する上記(1)〜(3)の何れかに記載する石英ガラスルツボ。
(5)ルツボ底部を除くルツボ直胴部の石英ガラス層内部に結晶化促進層を挟み込んだ構造を有し、かつ基準加熱条件下でのルツボ各部位の膨張率が何れも8%以下であって、ルツボ各部位相互の膨張率差が5.5%以下である上記(1)〜(4)の何れかに記載する石英ガラスルツボ。
(6)回転モールドの内表面に堆積した石英粉を加熱溶融して石英ガラスルツボを製造する方法において、ルツボ直胴部を形成する石英粉層の内部に結晶化促進成分を含む石英粉層部分を形成し、これらの石英粉層を一体に加熱溶融しガラス化することによって、ルツボ底部を除くルツボ直胴部の石英ガラス層内部に結晶化促進層を挟み込んだ構造を形成することを特徴とする石英ガラスルツボの製造方法。
(7)上記(6)の製造方法において、ルツボ直胴部の石英粉層内部に結晶化促進成分を含む石英粉層部分を形成し、これらの石英粉層を1800℃以上で5分以上加熱し、かつ加熱時の少なくとも一部の時間にヘリウムガス、水素ガス、または水蒸気を導入して石英粉をガラス化し、さらに石英粉層を吸引減圧してルツボ壁厚方向の気泡含有率を0.05%以上〜0.8%以下に調整する石英ガラスルツボの製造方法。
(8)シリコン単結晶引き上げ工程において、上記(1)〜(5)の何れかに記載する石英ガラスルツボを用い、結晶化促進層の石英ガラスの結晶化を促す方法。
【0009】
〔具体的な説明〕
本発明の石英ガラスルツボは、シリコン単結晶引き上げに用いる石英ガラスルツボであって、ルツボ底部を除くルツボ直胴部に、ルツボ内層とルツボ外層の間に結晶化促進成分を含む層(結晶化促進層)を挟み込んだ構造を有し、ルツボ底部には結晶化促進層を設けないことを特徴とする石英ガラスルツボである。
【0010】
従来の石英ガラスルツボについて、シリコン単結晶引き上げ初期に、有転位が多発する原因を追求したところ、一般的な原因のほかに、シリコン融液面より上側に位置するルツボ直胴部の周壁が変形し、あるいは内側に傾斜することが大きく影響していることが判明した。このガラス層を結晶化すれば高温下での強度が向上し、熱変形や内倒れを防止することができ、有転位の発生を抑制することができる。
【0011】
この結晶化方法として、従来、バリウム等のアルカリ土類金属をガラス層表面に塗布し、高温下の熱拡散によってガラス層を結晶化する手段が知られているが、ルツボ内表面にバリウム等を塗布すれば引上げ初期にバリウム等がシリコン融液に溶出してむしろ有転位を多発させることになる。一方、ルツボ外表面にバリウム等を塗布すれば、この塗布面がカーボンサセプターに接触するのでサセプターの汚染を招く。
【0012】
本発明の石英ガラスルツボは、ルツボ底部を除くルツボ直胴部の石英ガラス層の内部に結晶化促進成分を含む石英ガラス層(結晶化促進層)を挟み込んだ構造を形成することによって、この部分の結晶化を促して高温下での強度を高め、ルツボ周壁の熱変形や内倒れを防止する。一方、結晶化促進層はルツボの内層(内表面側石英ガラス部分)と外層(外表面側石英ガラス部分)に挟まれているのでシリコン融液に接触せず、従って、結晶化促進成分がシリコン融液に溶出せず、またカーボンサセプターにも接触しないのでサセプターの汚染も生じない。
【0013】
結晶化促進層を設ける範囲は、図1に示すように、ルツボ10の底部2を除く、ルツボ直胴部1であり、ルツボ底部2には結晶化促進層3を設けない。具体的には、例えば、ルツボ底部2を除き、ルツボ上端4から直胴部長さLの5%以上の範囲である。一般的には、ルツボ上端4からルツボ底部に至る湾曲部分5の手前までの範囲であれば良く、概ねルツボ上端4からシリコン融液の残留液面レベル6までの範囲であれば良い。
【0014】
ルツボの湾曲部分5を含むルツボ底部2には結晶化促進層3を設けない。結晶化促進層をルツボ底部まで形成すると、引き上げ終了時に熱歪みによって亀裂を生じ、湯漏れの危険性を招く。
【0015】
結晶化促進成分としては、アルミニウムやアルカリ土類金属などが用いられる。結晶化促進成分の含有量は50〜500ppmが適当であり、結晶化促進層の厚さは1mm以上が好ましい。結晶化促進成分の含有量が50ppmより少ないと結晶化促進層の石英ガラスの結晶化が不十分になる。また、結晶化促進層の厚さが1mmより薄いと、この部分の結晶化が進んでも、両側のルツボ内層および外層が高温下で軟化した場合に、これらを十分に支えられず、形状不良の発生を十分に防止することができない。なお、結晶化促進成分の含有量が500ppmより多いと、ルツボ使用時の熱拡散によってアルカリ土類金属などがルツボ表面に拡散してシリコン融液に混入する懸念がある。
【0016】
結晶化促進層を挟みこむ両側のルツボ内層および外層の厚さは2mm以上、好ましくは3mm以上が適当である。ルツボ内層および外層の厚さがこれより薄いと高温下でアルカリ土類金属などがこれらの石英ガラス層を通過して熱拡散する虞がある。
【0017】
本発明の結晶化促進層を挟み込んだ構造を有する石英ガラスルツボは、さらに、基準加熱条件下でのルツボ各部位の膨張率が何れも8%以下であってルツボ各部位相互の膨張率差が5.5%以下であるものが好ましい。このような熱膨張を抑制した構造を有するものは長期の引上げによる熱負荷を受けても、ガラス層や結晶化層の亀裂や剥離を発生させずに高い単結晶化率を達成することができる。なお、基準加熱条件とは、1500℃で、アルゴン雰囲気20torr下、10時間加熱することを云う。
【0018】
基準加熱条件下でのルツボ各部位の膨張率が8%よりも大きいと、結晶層の膨張率は比較的小さいので、ガラス層と結晶層との間に亀裂が生じ易くなる。なお、この膨張率は7.5%以下がより好ましく、7%以下がさらに好ましい。また、ルツボ各部位相互の膨張率差が5.5%よりも大きいと、熱膨張による歪が拡大し、やはり結晶層が剥離しやすくなる。従って、ルツボ各部位の膨張率差は5.5%以下が適当である。なお、この膨張率差は5%以下がより好ましい。
【0019】
本発明の上記石英ガラスルツボは、回転モールドの内表面に堆積した石英粉を加熱溶融して石英ガラスルツボを製造する方法において、ルツボ直胴部を形成する石英粉層の内部に結晶化促進成分を含む石英粉層部分を形成し、この石英粉層を一体に加熱溶融してガラス化すると共に直ちに冷却する方法によって製造することができる。具体的には、例えば、ルツボ外層を形成する通常の石英粉を回転モールドの内表面に堆積し、ルツボ底部は通常の石英粉をそのまま堆積する一方、ルツボ直胴部には通常の石英粉の上に50〜500ppm程度の結晶化促進成分を含む石英粉を堆積し、さらにその上側にルツボ内層を形成する石英粉を堆積し、これらをアーク加熱して一体に溶融し、ガラス化した後に冷却する。なお、加熱溶融時にモールド側から石英粉堆積層を減圧することによって、ルツボ内表面部分が実質的に気泡を含まない透明石英ガラス層を形成することができる。
【0020】
上記製造工程において、モールド内表面に堆積した石英粉を1800℃前後に加熱してガラス化するが、加熱溶融時間は概ね20分前後であり、ガラス化後に直ちに室温下で冷却することによって、アルミニウムやバリウムなどによる結晶化は進行しない。なお、シリコン単結晶の引き上げは、シリコン融液のチャージ量に応じて、シリコンの溶融温度下で数十時間から百時間前後の長時間行われるので、ルツボ製造時より格段に大きな熱負荷を受ける。この熱負荷によって結晶化促進層の石英ガラスの結晶化が促され、高温下でのルツボの強度が向上する。
【0021】
また、基準加熱条件下でのルツボ各部位の膨張率が何れも8%以下であってルツボ各部位相互の膨張率差が5.5%以下である石英ガラスルツボは、上記回転モールド法においてモールド内表面に堆積した石英粉を一体に加熱溶融してガラス化する際に、かつ加熱時の少なくとも一部の時間にヘリウムガス、水素ガス、または水蒸気を導入して石英粉をガラス化すると共に、石英粉層を吸引減圧してルツボ壁厚方向の気泡含有率を0.05%以上〜0.8%以下に調整することによって製造することができる。
【0022】
石英粉層の加熱温度が1800℃より低く、かつ加熱時間が5分未満では、溶融雰囲気にヘリウムガス、水素ガス、または水蒸気を導入して石英粉をガラス化する際に、石英粉層内の空気と上記ガスとの置換が不十分になり、またルツボ壁厚方向の気泡含有率が0.8%を上回ると気泡の膨張が大きくなり、何れの場合にもルツボ壁厚の膨張率を目標以下に抑制することができない。なお、ルツボ外壁部分は気泡による熱拡散効果を得るため0.05%程度の気泡を含有するものが好ましい。
【0023】
本発明の上記石英ガラスルツボは、回転モールドの内表面に溶融石英粉を堆積して石英ガラスルツボを製造する方法によっても製造することができる。なお、本発明は、シリコン単結晶引き上げ工程において、上記石英ガラスルツボを用い、ルツボ直胴部に含まれる結晶化促進成分によって該ルツボ直胴部の石英ガラスの結晶化を促す方法を含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明の石英ガラスルツボは、ルツボ底部を除くルツボ直胴部に、アルミニウム等の結晶化促進成分を含む層を挟み込んだ構造を有するので、シリコン単結晶引き上げ時に、アルミニウム等によってその部分の結晶化が進み、高温下でのルツボ強度が向上するので、ルツボ使用時に、ルツボ直胴部の変形や内倒れが生じない。従って、シリコン単結晶率を高めることができる。
【0025】
また、結晶化促進層は石英ガラス層内部に挟み込まれており、ルツボ表面に結晶化促進成分を塗布するものではないので、シリコン融液あるいはカーボンサセプターにアルミニウムやバリウム等の結晶化促進成分が接触せず、これらの溶出による汚染を生じない。さらに、結晶化促進層はルツボ低部には設けられていないので、引き上げ終了時の熱歪みによる亀裂を生じる危険性がなく、湯漏れを生じない。
【0026】
さらに好ましくは、基準加熱条件下でのルツボ各部位の膨張率が何れも8%以下であってルツボ各部位相互の膨張率差が5.5%以下であるので、ルツボ底部に限らず、ルツボ全体についても熱歪みによる亀裂や剥離を生じる懸念がなく、長時間安全に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に示す。なお、試験試料として何れも口径24インチ、直胴部長さ300mm、ルツボの内表面から外表面までの全壁厚10mmの石英ガラスルツボを用い、各石英ガラスルツボにシリコン融液を高さ300mmまで満たし、1500℃でシリコン単結晶を引き上げた(引き上げ時間100hr)。沈み込み量は引き上げ後のルツボ高さの減少量である。
【実施例1】
【0028】
表1に示す結晶化促進層を有する石英ガラスルツボについて、シリコン単結晶引き上げ後のルツボ状態を調べた。この結果を表1にまとめて示した。なお、各ルツボの状態は以下のとおりである。
【0029】
本発明試料A1〜A5は何れも、引き上げ使用時に結晶化促進層が結晶化するのでルツボの強度が増し、ルツボ上部の内倒れがなく、沈み込み量も僅かである。また、両側のルツボ内層および外層にはアルミニウムが拡散しておらず、結晶化による外表面の失透および内表面のアルミニウム汚染は生じていない。
【0030】
比較試料B1:引き上げ時に、外周側の石英ガラス層表面までアルミニウムが拡散し、外表面の一部が結晶化して失透している。このため、引き上げ終了後の冷却時に外表面に亀裂が生じ、湯漏れによる汚染が発生する虞がある。
比較試料B2:引き上げ時に、ルツボ内表面までアルミニウムが拡散して汚染されているため、引き上げ中にルツボ内表面が部分的に失透し、シリコン単結晶化率(Si収率)が低い。
比較試料B3:アルミニウム含有量が30ppmと低いため、結晶化促進層が十分に結晶化せず、壁部の強度が十分に向上しない。このため、引き上げ時にルツボ上部の変形や内倒れを生じ、シリコン収率が低い。
比較試料B4:垂直方向の幅がルツボ直胴部長さの5%未満であるために、壁部の強度が十分に向上しない。このため、引き上げ時にルツボ上部の変形や内倒れを生じ、シリコン収率が低い。
【0031】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る石英ガラスルツボの断面図
【符号の説明】
【0033】
1−ルツボ直胴部、2−ルツボ底部、3−結晶化促進層、4−ルツボ上端、5−湾曲部、6−残留液面レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン単結晶引き上げに用いる石英ガラスルツボであって、ルツボ底部を除くルツボ直胴部に、ルツボ内層とルツボ外層の間に結晶化促進成分を含む層(結晶化促進層)を挟み込んだ構造を形成し、ルツボ底部には結晶化促進層を設けないことを特徴とする石英ガラスルツボ。
【請求項2】
結晶化促進層を有する部分が、ルツボ底部を除き、ルツボ上端部から直胴部長さの5%以上の範囲である請求項1に記載する石英ガラスルツボ。
【請求項3】
結晶化促進層の厚さが1mm以上であり、この結晶化促進層の両側に厚さ2mm以上の石英ガラス層を有し、かつルツボ内表面が厚さ0.5mm以上の透明石英ガラス層によって形成されている請求項1または2の石英ガラスルツボ。
【請求項4】
結晶化促進成分としてアルミニウムまたはアルカリ土類金属を50〜500ppm含有する請求項1〜3の何れかに記載する石英ガラスルツボ。
【請求項5】
ルツボ底部を除くルツボ直胴部の石英ガラス層内部に結晶化促進層を挟み込んだ構造を有し、かつ基準加熱条件下でのルツボ各部位の膨張率が何れも8%以下であって、ルツボ各部位相互の膨張率差が5.5%以下である請求項1〜4の何れかに記載する石英ガラスルツボ。
【請求項6】
回転モールドの内表面に堆積した石英粉を加熱溶融して石英ガラスルツボを製造する方法において、ルツボ直胴部を形成する石英粉層の内部に結晶化促進成分を含む石英粉層部分を形成し、これらの石英粉層を一体に加熱溶融しガラス化することによって、ルツボ底部を除くルツボ直胴部の石英ガラス層内部に結晶化促進層を挟み込んだ構造を形成することを特徴とする石英ガラスルツボの製造方法。
【請求項7】
請求項6の製造方法において、ルツボ直胴部の石英粉層内部に結晶化促進成分を含む石英粉層部分を形成し、これらの石英粉層を1800℃以上で5分以上加熱し、かつ加熱時の少なくとも一部の時間にヘリウムガス、水素ガス、または水蒸気を導入して石英粉をガラス化し、さらに石英粉層を吸引減圧してルツボ壁厚方向の気泡含有率を0.05%以上〜0.8%以下に調整する石英ガラスルツボの製造方法。
【請求項8】
シリコン単結晶引き上げ工程において、請求項1〜5の何れかに記載する石英ガラスルツボを用い、結晶化促進層の石英ガラスの結晶化を促す方法。



【図1】
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【公開番号】特開2006−124235(P2006−124235A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315202(P2004−315202)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(592176044)ジャパンスーパークォーツ株式会社 (90)
【Fターム(参考)】