説明

研削装置、研削装置用の研削ヘッド及び研削方法

【課題】被研削物を研削面に押し当てて研削する際、被研削物の姿勢を適切に制御し、研削精度を向上できる研削装置、研削装置用の研削ヘッド及び研削方法を提供することを目的とする。
【解決手段】被研削物を研削面に押し付けて研削する研削装置用の研削ヘッドであって、前記被研削物を表面に保持する弾性の保持手段と、前記保持手段を研削方向に沿って引っ張るための引張手段と、前記保持手段を介して前記研削面に対して前記被研削物を押し付ける押圧手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の被研削物を研削面に押し付けて研削する研削装置、その研削装置用の研削ヘッド、研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品の一つである磁気ヘッドの製造工程において、複数の磁気ヘッド素子(MR(Magneto Resistive)膜と呼ばれる。)が表面上に一列に形成されてなるローバーの被研削面(いわゆるエアベアリング面)に対していわゆるRLG(Resistance Lapping Guide)研削が行われている。RLG研削は、スライダのスロートハイトあるいはMRハイト等が適切な値になるように、MR膜の抵抗特性をダミー抵抗を用いて測定しながら行われる。
【0003】
研削される対象であるローバーとは、セラミック材料からなるウエハの表面に、磁気ヘッド素子を複数形成したものを、ダイシング工程において所定の幅で切断して得られた個々の棒状部材である。
【0004】
RLG研削では、ローバーの被研削面に対向する面に剛体からなる治具を固定し、研削用定盤の上方に配置される研削ヘッドの下面に、治具に固定されたローバーを固定する。
【0005】
次に、研削剤(スラリー)を一様に塗布した研削用定盤の上面に対して研削ヘッドを降下させ、ローバーの被研削面を研削用定盤の上面に接触させる。その後、研削用定盤を回転させ、ローバーを構成する各スライダに、押圧部材から圧力を作用させることで、ローバーを所定の厚さ、表面粗さ、及び所定の形状に研削する(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0006】
以下に、従来の磁気ヘッド研削装置について説明する。図8は、従来の磁気ヘッド研削装置の研削ヘッドの縦断面図である。
【0007】
図8に示されるように、研削ヘッド315は、ローバー317を保持するラバー319と、ラバー319が先端に貼付され、上下動可能な押圧スライダ331と、押圧スライダ331を駆動するエアアクチュエータと、を備える。
【0008】
エアアクチュエータは、不図示の電空レギュレータで制御されるエアを、継手326を介してマニホールドシリンダ327内に導入し、マニホールドシリンダ327内に保持された断面円状のピストン337を駆動する。ピストン337の駆動に応じて、板状の押圧スライダ331が不図示の研削面に対して上下方向に往復運動する。
【0009】
また、押圧スライダ331に必要な移動量を提供しうるピストン337の大きさ、特にピストン337の直径は、現状においては、各素子(スライダ)に割り当てられるローバー上の領域の大きさと比較して、かなり大きいものとなる。このため、ピストン337を3列に並設し、隣り合う押圧スライダ331を駆動するピストン337は、順次異なる列に配置(千鳥配置)することとし、押圧スライダ331各々に対して別個のピストン337を対応させている。
【0010】
【特許文献1】特開2007−232134号公報
【特許文献2】特開2002−66893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、ますます磁気ヘッドに使用される電子部品の小型化がますます進んできており、従来の必要とされた寸法精度であっても、製品の性能に影響を及ぼすことが予想されるため、より高い精度で研削することが求められる。研削の精度を向上させるためには、被研削物を研削面に対して所定の姿勢に保つことが求められる。
【0012】
しかし、被研削物を研削面に押し当てると、押圧力に応じて被研削物と研削面との間で生じる摩擦力により、研削面に対する被研削物の姿勢が崩れ、結果として所期の形状もしくは寸法に研削することが困難となることが考えられる。
【0013】
そこで、本発明は、被研削物を研削面に押し当てて研削する際、被研削物の姿勢を適切に制御し、研削精度を向上できる研削装置、研削装置用の研削ヘッド及び研削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明の研削ヘッドの第1の態様は、被研削物を研削面に押し付けて研削する研削装置用の研削ヘッドであって、前記被研削物を表面に保持する弾性の保持手段と、前記保持手段を研削方向に沿って引っ張るための引張手段と、前記保持手段を介して前記研削面に対して前記被研削物を押し付ける押圧手段と、を備える。
【0015】
本発明の研削ヘッドの第2の態様によれば、さらに、前記保持手段に掛かる張力の分布を均一化する張力分布均一化手段を備える。
【0016】
本発明の研削ヘッドの第3の態様によれば、前記張力分布均一化手段は、前記保持手段が延在する面内において揺動可能な揺動プレートである。
【0017】
本発明の研削ヘッドの第4の態様によれば、前記保持手段は、ラバーである。
【0018】
本発明の研削ヘッドの第5の態様によれば、前記保持手段は、弾性のあるプラスチックシートである。
【0019】
上記課題を解決するための本発明の研削装置の第1の態様は、上記第1乃至第5の態様のいずれかの研削ヘッドを備える。
【0020】
上記課題を解決するための本発明の研削方法の第1の態様は、被研削物を研削盤の研削面に押し付けて研削する研削方法であって、弾性の保持手段の表面に前記被研削物を保持し、前記被研削物を保持する前記保持手段を研削方向に沿って引っ張り、引っ張られた前記保持手段に保持された前記被研削物を前記研削面に対して押圧する、ことを備える。
【0021】
本発明の研削方法の第2の態様によれば、前記保持手段を研削方向に沿って引っ張る際に、前記保持手段に掛かる張力の分布を均一化させる。
本明細書において、研削方向とは、被研削物の研削面に対して相対的に移動する方向を意味する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の研削装置、研削装置用の研削ヘッド及び研削方法によれば、被研削物を保持する保持手段を研削方向に沿って引っ張ることにより、被研削物の研削面に対する姿勢を適確に制御することができる。結果として、研削精度を高めることができ、製造される電子部品の歩留まり率を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明による研削装置用の研削ヘッドの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0024】
(実施形態)
図1は研削ヘッドの正面図であり、図2は研削ヘッドの下面図である。
【0025】
本実施形態の研削ヘッド15は、電子部品を構成する素子が複数形成された被研削物であって、セラミック等からなるローバー17を研削する研削装置に用いられものである。研削ヘッド15は、主として、ローバー17を表面に保持し、弾性を有する保持手段すなわちラバー19と、研削面に対するローバー17の姿勢を制御すべくラバー19を所定方向に引っ張るための引張手段すなわち低摩擦シリンダ67と、ラバー19を介してローバー17を押圧する押圧手段すなわちスライダ31と、を備える。
【0026】
また、研削ヘッド15のヘッド本体27は、マニホールドシリンダ29を構成している。マニホールドシリンダ29内には、複数のロッド71が摺動自在に収容され、各ロッド71は、図面の表裏方向に配置されている複数のスライダ31それぞれを押圧する。
【0027】
各ロッド71には、不図示の電空レギュレータで制御されるエアが、継手26を介して供給され、ロッド71が所定量動くように構成されている。本実施形態では、スライダ31の厚さ(図1の表裏方向の長さ)を薄くし、ローバー17に対する押圧間隔を短くし、研削制御を高精細に行えるようにしている。
【0028】
また、スライダ31は、図1の表裏方向に並置され、隣り合うスライダ31の各々を押圧するロッド71が干渉しないように、スライダ31の上端31aとそれに対応するロッド71の組が千鳥配置されている。
【0029】
図1においてスライダ31の両側で、ストッパ73、75がヘッド本体27に固定され、スライダ31の鉛直方向下方への移動を制限している。
【0030】
さらに、ヘッド本体27には、図1中で右方向に延びる支持部材77の一端部が連結されている。支持部材77の他端部には、低摩擦シリンダ67が配置されている。さらに、支持部材77には、図2の左右方向に延びる一対のリニアガイド60、62が互いに平行に設けられている。
【0031】
そして、リニアガイド60、62のそれぞれに対して摺動可能に装着される一対の移動スライダ61、63が下面視略台形状のスライドプレート69に固定されている。スライドプレート69はその短辺部に、ロッド収容溝69aが刻設されており、ロッド79の端部がロッド収容溝69a内に収容され固定されている。このように、スライドプレート69とロッド79とが連結される。
【0032】
従って、低摩擦シリンダ67を作動させると、ロッド79がx方向に移動し下面視で略台形状のスライドプレート69がx方向へ移動する。なお、本実施形態の移動スライダとリニアガイドは公知の構成を用いるので詳細は割愛する。
【0033】
さらに、図1中においてスライドプレート69の下方には、ラバー19に掛かる張力の分布を均一化させる張力均一化手段である揺動プレート81が配置されている。図2に示すように揺動プレート81は下面視で略台形状である。揺動プレート81は、その一端部に突起部81aを備える。また、揺動プレート81は、その厚さ方向(図1の上下方向)に貫通する貫通孔が設けられ、その貫通孔にはスライドプレート69から鉛直方向下方(図1中)に延びる中心軸65が延在している。中心軸65は、転がり軸受82を介して貫通孔に装着されている。このように、揺動プレート81は、中心軸65の回り、すなわちラバー19の表面が延在する面内において揺動可能(図2の矢印R方向)である。
【0034】
さらに揺動プレート81の下方には保持手段を構成し、ラバー19の一端を保持する第1保持部83が固定されている。
【0035】
上記構成において、不図示の制御部からの駆動信号を低摩擦シリンダ67が受け、ロッド79がx方向に沿って進退移動すると、スライドプレート69がx方向に移動する。さらに、スライドプレート69の中心軸65に連結されている、揺動プレート81がx方向に移動する。
【0036】
さらに、ラバー19の他端を保持する第2保持部85は、スライダ31を挟んで第1保持部83に対向配置されている。第1保持部83及び第2保持部85には、略矩形のシート状ラバー19の対向する辺がそれぞれ固定されている。ラバー19を固定する方法としては、接着剤やねじ等の締結部材等が利用できる。なお、第1保持部83はねじ等の締結部材により揺動プレート81に固定されている。
【0037】
なお、上記のように、第1保持部83が固定される揺動プレート81が、スライドプレート69に対して相対回転できる構成とすると以下のような利点がある。例えば、ラバー19が第1保持部83及び第2保持部85に対して接着剤を用いて接着したときに、ラバー19が第1保持部83及び第2保持部85に対して、均一に接着されずにラバー19に撓みが生じた場合であっても、第1保持部83を第2保持部85から離れる方向に移動させると、揺動プレート81が揺動(傾斜)することによりラバー19に生じる張力分布を均一化できる。結果として、接着時に生じたラバー19の撓みの影響を排除して均一にラバー19を引っ張ることが可能となる。
【0038】
また、上記構成では第1保持部83を固定し、第2保持部85を移動する構成としたが、本発明はこの構成に限定されない。第1保持部83と第2保持部85とが互いに離れる方向に移動でき、第1保持部83と第2保持部85との間に架橋されるラバー19に引っ張り力を付与できる構成であれば良いことは言うまでもない。
【0039】
さらに、揺動プレート81は、移動可能な第1保持部83に装着されているが、揺動プレートを第2保持部85に設ける構成や、両保持部83、85に設ける構成とすることができることは言うまでもない。
【0040】
次に、研削されるローバーの姿勢を制御するメカニズムについて説明する。図3(a)は、引っ張られた状態のラバーの平面図であり、図3(b)は、引っ張られた状態のラバーの正面図であり、図4(a)は、ラバーを引っ張らずにローバーを研削した状態の模式図であり、図4(b)は、研削盤と研削ヘッドとの位置関係を示す平面図である。
【0041】
図3(a)(b)において、引張部材(図1、2に示す第1保持部83及び第2保持部85)によりラバー19を引っ張る引張方向を、矢印Tで示している。また、ローバー17の短手方向が研削方向である。研削方向とは、ローバー17の研削面17aに対して研削盤2の上面に設けられた研削面2a(図4(b)参照。)が進行する方向である。
【0042】
図4(a)の破線で示すように、ラバー19にその長手方向へ引張力を付与しない状態で、回転する研削面2aにローバー17を押圧力Pで押圧すると、ローバー17に対してF方向への摩擦力が生じ、ラバー19が撓み、ローバ−17が鉛直方向に対して傾く場合がある。従って、ローバー17を所定の寸法や形状に研削することが困難である。
【0043】
そこで、図4(a)の実線で示すように、ローバー17を保持するラバー19の引張方向Tに沿った方向と研削方向Gとを整合させると、押圧力Pにより生じる摩擦力Fにラバー19を抗させローバー17を所期の姿勢に維持できる。これは、伸びた状態のラバーをさらに伸ばすために必要な引張力に、摩擦力Fが達していないためである。すなわち、伸びた状態のラバー19をさらに引張方向Tに沿って伸ばすには、引っ張られていない初期状態のラバーを伸ばす際に必要な引張力に比較して大きな引張力が必要となる。従って、伸びた状態からさらに伸ばすために必要な引張力が付与されない限りラバー19は伸びることがなく、引張方向Tに沿って撓まないこととなる。このように、ラバー19を伸ばそうとする摩擦力Fに対するラバー19の研削方向Gに沿った撓みを抑制することで、ローバー17の姿勢を制御している。
【0044】
なお、ラバー19を引っ張る方向は、研削方向Gの矢印の向き(図3の左方向)には限定されない。すなわち、第2保持部85を固定し、第1保持部83を移動させるのみならず、第1保持部83を固定して、第2保持部を左方向に移動させたり、第1保持部83、第2保持部が互いに離れる方向(図3の左右方向)に移動させ、ラバー19に引張力を付加しても良い。
【0045】
また、引っ張られていないラバー19の短手方向S1(引張方向Tに直交する方向)や図3(b)の上下方向S2(引っ張り方向Tに直交する方向)へは、引張方向Tの引張力に比べ小さい荷重で変形(伸び縮み)させることができる。従って、スライダ31によりラバー19を介しローバー17を研削盤2の研削面2aに押圧してローバー17を研削面2aに向かって変形させることができる。
【0046】
このように、ラバー19を研削方向Gとほぼ一致する引張方向Tへ引っ張ることにより、摩擦力Fによるラバー19の撓みを抑えローバー17が傾くことを防止することができる。さらに、引張られたラバー19を用いるにも拘わらず、比較的小さい押圧力によりスライダ31による上下方向S2への円滑な移動を確保できる。
【0047】
なお、図4(b)に示すように円形(中心O)の研削盤2を用いた場合、ローバー17の研削方向は、研削盤2の研削面2aの回転方向Gとなる。従って、厳密には、研削方向Gと、ローバー17の部位によりラバー19の引張方向Tとは、一致しない。しかしながら、研削面の外径に対して、ローバーの幅寸法は相対的に小さいので、ローバー17に対するラバー19の引張方向Tと、研削方向Gと、がほぼ一致していると考えることができる。
【0048】
(保持手段の変形例)
以下に、保持シートを用いた保持手段の変形例について説明する。図5(a)は、電子部品を挟持保持した状態の保持シートの平面図である。図5(b)は、図5(a)の側面図である。
【0049】
保持シート101は、弾性がありかつ絶縁性のプラスチックシート、ポリイミドシート等からなり、薄板状の部材であるシート基材103と、電子部品である被研削物151の電極153に電気的に接続する電極接点部材109と、を備える。電極接点部材109は、シート基材103の上面103aに形成された銅等からなる電気配線111に接続している。電気配線111は、長手方向に延び、シート基材3の端部に至り、後述するようにMR抵抗等の電子部品の特性値を測定するための測定手段に接続する。
【0050】
さらに、シート基材103は、長手方向に対向(図5(a)、(b)の左右方向)して配置され、外開きの関係となる第1挟持部及び第2挟持部すなわち、第1舌片107及び第2舌片105を有する。初期状態(撓んでない状態)において、第1舌片107の先端部107cと第2舌片105の先端部105cが互いに対面する構成である。
【0051】
ここで、舌片は、舌片の周囲の切り込みを付した部分では切断されているが、残りの一部はシート基材103から切断されずに一体化されたままのシート状片である。シート基材103と舌片の切断されない部分(以下、連結部(107b)という。)は、連結されている。
【0052】
第1舌片107は、シート基材103に図5(a)における上下方向で離間配置される一対の矩形状の切り欠き119、121を設け、切り欠き119、121それぞれの一方の短辺の間(符号122参照。)を切断することにより形成され、第1舌片107は、略矩形状を呈する。さらに、第1舌片107の上面107aには、電極接点部材109が貼付されている。また、上記第1舌片107は、その連結部107b(仮想線xに沿った部分)を支点として、図5(b)の下方に撓むことができる片持ち梁形状である。すなわち、第1舌片107が下面103bから下方に突き出る構成である。
【0053】
第1舌片107の厚さは、電極接点部材109及び電気配線111の厚さ分だけ、シート基材103の他の部分より若干薄くなっている。シート基材103の長手方向において、第1舌片107に対向配置される第2舌片105は、第1舌片107とほぼ同じ寸法、形状である。但し、第2舌片105は、第1舌片107と異なり、電極接点部材を備えない。
【0054】
また、電子部品である被研削物151は、略直方体状であり、その一端面に電極部153を備える。被研削物151の電極部153と第1舌片107の電極接合部材109とが接触した状態で、撓んだ第1舌片107、第2舌片105とにより被研削物151を挟持保持する。挟持保持された被研削物151は、図5(b)の左右方向には、第1及び第2舌片107、105により規制され、上方向には、シート基材103の下面103bにより位置決めがなされる。
【0055】
第1舌片107及び第2舌片105の厚さ及び連結部(107b)から先端部(107c)までの長さは、撓んだ状態(図5(b))から初期状態(シート基板103の上面103a若しくは下面103bにほぼ平行な状態)に戻ろうとする復元力により被研削物151を保持できるように寸法付けされる。
【0056】
なお、図5(a)に示すように、第1舌片107、第2舌片105はそれぞれ、シート基材103の短手方向(図5(a)の上下方向)に2つ設ける構成としたが、本発明がこれに限定されないことは言うまでもない。例えば、被研削物151の長手方向長さ(図5(a)の上下方向長さ)に応じて、適宜舌片の数、配置、寸法を適宜変更できる。
【0057】
上記構成の保持シート101は、図1、2に示す第1保持部83及び第2保持部85に接着剤やねじ等の締結部材により固定される。そして、低摩擦シリンダ67を駆動させ、第1保持部83を第2保持部85から離れるように移動し、所定の引っ張り力を保持シート101に付与する。
【0058】
このように、研削面に押圧された被研削物151に生じる摩擦力と一致する方向に、保持シート101を引っ張ることにより、保持シート101が撓み被研削物151の姿勢が傾くことを防止できる。なお、その引っ張り方向と研削方向との関係については、図3、4に関連して説明した内容と同様であるので割愛する。
【0059】
なお、保持シート101の第1舌片107及び第2舌片105、それぞれの連結部(107b)から先端部(107c)までの長さは、保持シート101が長手方向に引っ張られた場合であっても、被加工物を挟持できるように寸法付けされることは言うまでもない。
【0060】
上記実施形態では、低摩擦シリンダ67を利用してラバー19、保持シート101を引っ張る構成としたが、本発明はこの構成に限定されることはなく、空気圧、ピエゾ素子、圧電素子等を利用し引張り動作が可能なアクチュエータを使用できることは言うまでもない。
【0061】
また、上記実施形態では、研削面を回転させる構成として説明したが、直線状に移動する研削面を利用しても良いことは言うまでもない。さらに、本発明は、研削面を被研削物に対して移動させて研削する構成に限定されず、被研削物が研削面に対して相対移動できる構成であれば良いことは言うまでもない。
【0062】
実施形態では、被研削物の姿勢を制御するために、被研削物を研削面に押圧することにより生じる摩擦力に抗するように、研削方向に引張力を付与する構成としたが、被研削物を研削面に対して所定の姿勢に維持するように制御できるものであればよく、種々の態様が利用できることは言うまでもない。例えば、ラバーを複合材料から形成し、研削方向については弾性係数が高く、研削方向の鉛直方向については弾性係数が低いような部材であれば、上述したように被研削物の姿勢を適正に制御できる。
【0063】
(磁気ヘッド研削装置)
本発明の実施の形態に係る研削ヘッドを適用した磁気ヘッド用研削装置の実施例について図6、7を参照して説明する。図6は磁気ヘッド用研削装置を示す全体正面図であり、図7は図6の平面図である。
【0064】
磁気ヘッド用研削装置は、基台1を備え、この基台1には、研削用定盤2が水平面内で回転可能に支持され、さらに、この研削用定盤2は基台1内に設けられた回転駆動源である定盤駆動用モータ4でベルト6を介して回転駆動される。なお、研削用定盤2における研削面2aは、研削工程によって被研削面上に所定のR形状(クラウン形状)を与えるべく、所定の半径を有する球面の一部を構成する略凹面状のすり鉢形状である。
【0065】
また、上下方向に離間した1対のガイドレール8が水平方向に延びるように基台1の上方で支持され、さらに、1対のガイドレール8により水平方向に摺動自在に案内される横移動スライダ10が設けられている。この横移動スライダ10には研削ヘッド取付用フレーム12が昇降自在に取付けられている。また、研削ヘッド取り付け用フレーム12には、その高さを調整するための公知の昇降駆動手段(不図示)が連結されている。
【0066】
横移動スライダ10の駆動は、例えばガイドレール8に平行なボール螺子軸にスライダ10側のボール螺子ナットを螺合し、ボール螺子軸をモータで回転駆動することで実行することができ、さらに、スライダ10及び研削ヘッド取付用フレーム12は往復直線運動を行うことができる。
【0067】
上記構成の磁気ヘッド用研削装置では、ラバー19(図1参照)の表面にローバー17(図1参照)が自己粘着性作用により固定保持され、研削面2aに押しつけられクラウン加工が行われる。加工時においては、複数のスライダ31(図1参照)各々を駆動して(移動させて)ラバー19を介してローバー17の特定部位を研削面2aに押しつけることで研削が行われる。ここで、研削量は、スライダ31からローバー17に対する押圧量及びスライダ31を研削面2aに当接させる時間を変更することにより調整できる。
【0068】
なお、スライダ31は弾性体であるラバー19を介してローバー17に変形を与えるが、スライダ31からの押圧力はその何割かがラバー19の弾性変形により減衰される。従って、スライダ31の移動量すなわちピストン71の押圧力は、ラバー19による減衰量を考慮して定めることを要する。
【0069】
なお、上記磁気ヘッド研削装置では、ラバー19を第1及び第2保持部材83、85に接着剤を用いて接着したが、真空源に連通する吸引口を第1及び第2保持部材83、85に設け、真空吸引によりラバーを保持することも可能である。
【0070】
上記磁気ヘッド研削装置では、図1、2に示す研削ヘッドを利用したが、前述した保持手段の変形例である保持シート101を使用した研削ヘッドを適用できることは言うまでもない。
【0071】
さらに、上述の磁気ヘッド用研削装置では、駆動装置によりスライダを移動させ、ラバー19を押圧する構成であったが、圧縮空気を直接ラバーに付与することにより、ラバー19に保持されたローバーを押圧する構成とすることもできる。
【0072】
また、本実施の形態では、ラバー19は一部品からなる構成としたが、その材質の剛性やローバーに対する自己粘着作用等に応じて変更でき、ラバーがローバーに当接する当接領域には、自己粘着性に優れた材料を用い、ホルダーに固定される部分には、剛性の高い材料を用いても良い。
【0073】
以上、実施形態においては、研削量の制御については特に述べていないが、本願出願人の出願である特開2001−121394に開示するように、各素子の例えばMR値等を順次測定しながら研削を行うクローズドループによる研削量の制御を行っても良い。さらに、上記実施形態においては、ローバーに対してクラウン加工を施す際の研削装置について述べているが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば、研削面3aを平坦な面とし、当該研削装置をスロートハイトの調節等に用いても良い。
【0074】
さらに、本発明は、加工物を所定の形状や寸法に研削する研削装置、研削装置用ヘッド、研削方法として説明したが、加工物の面を所定の表面粗さに加工するための研磨装置、研磨装置用ヘッド、研磨方法にも適用できることは言うまでもない。
【0075】
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施形態の研削ヘッドの正面図である。
【図2】実施形態の研削ヘッドの下面図である。
【図3】(a)は、引っ張られた状態のラバーの平面図であり、(b)は、引っ張られた状態のラバーの正面図である。
【図4】(a)は、ラバーを引っ張らずにローバーを研削した状態を示す模式図であり、(b)は、研削盤と研削ヘッドとの位置関係を示す平面図である。
【図5】(a)は、電子部品を挟持保持した状態の保持シートの平面図である。(b)は、図5(a)の側面図である。
【図6】研削装置を示す全体正面図である。
【図7】図5の研削装置の平面図である。
【図8】従来の磁気ヘッド研削装置の研削ヘッドの縦断面図である。
【符号の説明】
【0077】
3 研削用定盤
2a 研削面
15 研削ヘッド
17 ローバー
19 ラバー
67 低摩擦シリンダ
83、85 第1保持部、第2保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研削物を研削面に押し付けて研削する研削装置用の研削ヘッドであって、
前記被研削物を表面に保持する弾性の保持手段と、
前記保持手段を研削方向に沿って引っ張るための引張手段と、
前記保持手段を介して前記研削面に対して前記被研削物を押し付ける押圧手段と、を備える研削ヘッド。
【請求項2】
さらに、前記保持手段に掛かる張力の分布を均一化する張力分布均一化手段を備える請求項1に記載の研削ヘッド。
【請求項3】
前記張力分布均一化手段は、前記保持手段が延在する面内において揺動可能な揺動プレートである請求項2に記載の研削ヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の研削ヘッドを備える研削装置。
【請求項5】
被研削物を研削盤の研削面に押し付けて研削する研削方法であって、
弾性の保持手段の表面に前記被研削物を保持し、
前記被研削物を保持する前記保持手段を研削方向に沿って引っ張り、
引っ張られた前記保持手段に保持された前記被研削物を前記研削面に対して押圧する、ことを備える研削方法。
【請求項6】
前記保持手段を研削方向に沿って引っ張る際に、前記保持手段に掛かる張力の分布を均一化させる請求項5に記載の研削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−220240(P2009−220240A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69094(P2008−69094)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】