説明

研磨布固定用両面粘着テープ

【課題】特にアルカリに対する耐性に優れ、かつ、使用後には定盤から糊残りなく剥離できる定盤固定用粘着剤層を有する研磨布固定用両面粘着テープを提供する。
【解決手段】アルカリ性溶液を用いた研磨工程において、研磨布を研磨機の定盤に固定するための研磨布固定用両面粘着テープであって、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に形成された研磨布固定用粘着剤層と、該基材フィルムの他方の面に形成された感圧アクリル粘着剤からなる定盤固定用粘着剤層とからなり、前記定盤固定用粘着剤層は、pH13.0の水酸化ナトリウム水溶液に30℃、170時間浸漬した後の重量増加率が10重量%未満であり、かつ、一辺20mmの平面正方形状の試験片を用いて、JIS−Z0237に規定する保持力試験を、23℃、1kgf、1時間の条件で行って得られる剥離長さが0.5mm以下である研磨布固定用両面粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にアルカリに対する耐性に優れ、かつ、使用後には定盤から糊残りなく剥離できる定盤固定用粘着剤層を有する研磨布固定用両面粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体ウエハを所定の厚さにまで研磨する工程においては、研磨機の定盤に固定された研磨布を用いて研磨が行われる。研磨布を研磨機の定盤に固定するためには、通常、両面テープが使用される。このような研磨布固定用両面粘着テープには、研磨中に研磨布が剥離しない程度に充分な接着力を有するとともに、使用後には定盤から糊残りなく剥離できることが求められる。
【0003】
特許文献1には、プラスチックフィルムの一方の面にニトリルゴム系粘着剤からなる接着剤層を設け、他方の面に再剥離性の粘着剤層を設けてなる研磨パッド固定用両面テープが記載されている。そして、ニトリルゴム系粘着剤層からなる接着剤層側を研磨布に接着し、再剥離性の粘着剤層側を定盤に接着して使用することが記載されている。特許文献1の実施例では、再剥離性の粘着剤層を構成する粘着剤として、アクリル酸と、アクリル酸ブチルと、酢酸ビニルとを共重合させた重合体を使用している。そして、実施例で得られた両面接着テープは、両面をアクリル粘着剤とした場合に比べて、酸化セリウム微粉末の20%溶液に50℃で5日間浸漬した後も高い粘着力を維持できることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、プラスチックフィルム支持体の一方の面にアクリル系ポリマーを主成分とする粘着剤層と該接着剤層上にポリエステル又はポリウレタンからなる熱活性接着剤層が積層一体化された層を設け、他方の面に再剥離性の粘着剤層を設けてなる研磨材固定用両面接着テープが記載されている。そして、熱活性接着剤層を研磨材に接着させて使用することが記載されている。特許文献2の実施例では、熱活性接着剤層を設けた両面テープは、両面ともアクリル粘着剤層を用いた場合と比べて、水酸化カリウムでpH10に調整した50℃の水溶液に5日間浸漬した場合にも、高い粘着力が維持できることが記載されている。
【0005】
しかしながら、近年、半導体ウエハ等を研磨する際に強酸性のスラリー液や強アルカリ性のスラリー液を使用するところ、特許文献1及び2に記載された研磨材固定用両面テープでは、定盤側の粘着剤層が酸やアルカリの影響で劣化しやすく、研磨中に剥離してしまうことがあるという問題があった。仮に特許文献1及び2に記載されている研磨布固定側の粘着剤層を定盤側にも使用した場合には、酸やアルカリに対する耐性は優れる。しかしながら、このような接着剤層を用いた場合には、使用後に定盤から剥離することができなくなる。
【0006】
耐アルカリ性に優れた接着剤としては、例えば特許文献3に、スチレンと、環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルと、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、エチレン性二重結合を有するカルボン酸とを共重合したポリマーを主成分とする接着剤組成物が記載されている。特許文献3には、このようなポリマーの塗布膜を2.38質量%のTMAH水溶液に浸漬させても溶解しなかったことが記載されている。しかしながら、特許文献3に記載された耐アルカリ性に優れた接着剤を研磨布固定用両面粘着テープの定盤固定用粘着剤層に使用した場合には、使用した研磨パッドを交換する際に、接着層を溶解し取り除くために剥離液が必要となり、容易に再剥離することができない。
酸やアルカリに対する耐性に優れ、かつ、使用後には定盤から糊残りなく剥離できる定盤固定用粘着剤層を有する研磨布固定用両面粘着テープが求められていた。
【特許文献1】特開平6−145611号公報
【特許文献2】特開平6−172721号公報
【特許文献3】特開2008−063461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特にアルカリに対する耐性に優れ、かつ、使用後には定盤から糊残りなく剥離できる定盤固定用粘着剤層を有する研磨布固定用両面粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アルカリ性溶液を用いた研磨工程において、研磨布を研磨機の定盤に固定するための研磨布固定用両面粘着テープであって、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に形成された研磨布固定用粘着剤層と、該基材フィルムの他方の面に形成された感圧アクリル粘着剤からなる定盤固定用粘着剤層とからなり、前記定盤固定用粘着剤層は、pH13.0の水酸化ナトリウム水溶液に30℃、170時間浸漬した後の重量増加率が10重量%未満であり、かつ、一辺20mmの平面正方形状の試験片を用いて、JIS−Z0237に規定する保持力試験を、23℃、1kgf、1時間の条件で行って得られる剥離長さが0.5mm以下である研磨布固定用両面粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の研磨布固定用両面粘着テープ(以下、単に「両面テープ」ともいう。)は、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に形成された研磨布固定用粘着剤層と、該基材フィルムの他方の面に形成された感圧アクリル粘着剤からなる定盤固定用粘着剤層とからなる。
【0010】
上記基材フィルムとしては特に限定されず、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等からなる合成樹脂フィルムや、ポリウレタン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂等からなる発泡シート等が挙げられる。なかでも、平坦であり、厚みのぶれが小さく、一定の強度を有することから、ポリエステル系樹脂からなる合成樹脂フィルムが好適である。
【0011】
上記基材フィルムの厚みとしては特に限定されないが、非発泡体である場合には、好ましい下限は15μm、好ましい上限は300μmである。上記非発泡体である基材フィルムの厚みが15μm未満であると、両面テープを研磨機の定盤から剥離させる際に基材フィルムが破断して綺麗に剥離させることができないことがあり、300μmを超えると、研磨布と両面テープとを積層一体化させる際の圧着圧力の調整が困難となり、研磨布と研磨布用粘着剤層との接着強度が低下することがある。上記非発泡体である基材フィルムの厚みのより好ましい下限は20μm、より好ましい上限は200μmである。
上記基材フィルムが発泡体である場合には、厚みの好ましい下限は50μm、好ましい上限は3000μmであり、より好ましい下限は100μm、より好ましい上限は2000μmである。
【0012】
上記定盤固定用粘着剤層は、感圧アクリル粘着剤からなる。感圧アクリル粘着剤を用いることにより、使用後に本発明の両面テープを定盤から剥離しやすくなる。また、研磨パッドの位置調整もしやすくなる。更に、該感圧アクリル粘着剤層はCMP研磨等で用いられるアルカリスラリー液の浸透性が低いことから、アルカリ条件での研磨において粘着力低下が起こりにくい。
【0013】
上記感圧アクリル粘着剤は、凝集力に優れ、かつ、アルカリ性の薬液による分解が起こりにくいものが好適である。
上記感圧アクリル粘着剤は、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種に由来する成分と、エチレン性二重結合を含むアミン誘導体、エチレン性二重結合を含むアミド誘導体、及び、エチレン性二重結合を含むニトリル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種に由来する成分とを含む(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を主成分とすることが好ましい。
なお、本明細書において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0014】
上記鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、下記一般式(1)で表されるもの等が好適である。
【0015】
【化1】

【0016】
式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基を表す。
【0017】
上記鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−イソブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、アルカリ水溶液の浸透が低く、かつエステル加水分解を受けにくいことから、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルが好適である。
【0018】
上記脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルは、下記一般式(2)で表されるもの等が好適である。
【0019】
【化2】

【0020】
式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、脂肪族環を有する炭素数5〜15の有機基を表す。
【0021】
上記脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、アルカリ水溶液の浸透が低く、かつエステル加水分解を受けにくいことから、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが好適である。
【0022】
上記芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルは、下記一般式(3)で表されるもの等が好適である。
【0023】
【化3】

【0024】
式(3)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、芳香族環を有する炭素数6〜16の有機基を表す。
【0025】
上記芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル構成単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体において、上記鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種に由来する成分の含有量の好ましい下限は70重量%、好ましい上限は99重量%である。上記鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種に由来する成分の含有量が70重量%未満であると、粘着力が低くなり研磨時のはがれの原因となることがあり、99重量%を超えると、凝集力が失われたり、架橋反応が起こりにくくなったりして、目的の保持力が得られなかったり、研磨パッドを剥がす際に定盤に糊残りが発生する原因となることがある。上記鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種に由来する成分の含有量のより好ましい下限は75重量%、より好ましい上限は98重量%である。
【0027】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、(メタ)アクリル酸に由来する成分を含有しないことが好ましい。一般的な感圧アクリル粘着剤は、凝集力を付与する目的で、(メタ)アクリル酸に由来する成分を含有する。しかしながら、(メタ)アクリル酸に由来する成分を含有すると、定盤固定用粘着剤層へのアルカリスラリー液の浸透性が高くなったり、加水分解が起こりやすくなったりして、耐薬品性が低下する。
本発明に用いる(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体においては、上記エチレン性二重結合を含むアミン誘導体に由来する成分、上記エチレン性二重結合を含むニトリル誘導体に由来する成分、上記エチレン性二重結合を含むアミド誘導体に由来する成分が、(メタ)アクリル酸に由来する成分に代わって、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体に凝集力を付与する役割を有する。これにより、高い凝集力と耐アルカリ性とを両立することができる。
【0028】
上記エチレン性二重結合を含むアミン誘導体は、下記一般式(4)で表されるもの等が好適である。
【0029】
【化4】

【0030】
式(4)中、Rは、酸素原子を含んでもよい、(メタ)アクリロイル基又はビニル基を有する炭素数2〜20の有機基を表し、R、R10は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。
【0031】
上記エチレン性二重結合を含むアミン誘導体としては、例えば、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記エチレン性二重結合を含むニトリル誘導体は、下記一般式(5)で表されるもの等が好適である。
【0033】
【化5】

【0034】
式(5)中、R11は、酸素原子を含んでもよい、(メタ)アクリロイル基又はビニル基を有する炭素数2〜20の有機基を表し、nは1〜4の整数を表す。
【0035】
上記エチレン性二重結合を含むニトリル誘導体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0036】
上記エチレン性二重結合を含むアミド誘導体は、下記一般式(6)で表されるもの等が好適である。
【0037】
【化6】

【0038】
式(6)中、R12は、酸素原子を含んでもよい、(メタ)アクリロイル基又はビニル基を有する炭素数2〜20の有機基を表し、oは1〜4の整数を表す。
【0039】
上記エチレン性二重結合を含むアミド誘導体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体において、上記エチレン性二重結合を含むアミン誘導体、エチレン性二重結合を含むアミド誘導体、及び、エチレン性二重結合を含むニトリル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種に由来する成分の含有量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は15重量%である。上記エチレン性二重結合を含むアミン誘導体、エチレン性二重結合を含むアミド誘導体、及び、エチレン性二重結合を含むニトリル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種に由来する成分の含有量が1重量%未満であると、感圧アクリル粘着剤の凝集力が低下し保持力が悪化することがあり、15重量%を超えると、粘着力が低下し定盤に対する接着力が悪化することがある。上記エチレン性二重結合を含むアミン誘導体、エチレン性二重結合を含むアミド誘導体、及び、エチレン性二重結合を含むニトリル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種に由来する成分の含有量のより好ましい下限は2重量%、より好ましい上限は12重量%である。
【0041】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、共重合可能な他のビニルモノマーに由来する成分を含有してもよい。
上記他のビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0042】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、アルカリスラリー液の浸透が起こりにくい範囲であれば、凝集力を向上させる目的でエチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体に由来する成分を含有してもよい。
上記エチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸や、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸や、これらの無水物等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が好適である。
【0043】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体において、上記エチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体に由来する成分の含有量の好ましい上限は3重量%である。上記エチレン性二重結合を有するカルボン酸誘導体に由来する成分の含有量が3重量%を超えると、耐アルカリ性が低下することがある。
【0044】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の重量平均分子量の好ましい下限は20万、好ましい上限は50万である。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の重量平均分子量が20万未満であると、凝集力が低下し再剥離性の際に凝集破壊し糊残りとなることがあり、50万を超えると、接着力が低下し、研磨時のはがれの原因となることがある。
なお、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算分子量として測定された値を意味する。具体的には、例えば、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体をテトラヒドロフラン(THF)により100倍希釈して得られた希釈液をフィルターで濾過し、得られた濾液を、カラム(例えば、Water社の商品名「2690 Separations Model」等)を用いてGPC法により測定することができる。
【0045】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体を製造する方法としては、例えば、上記鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種と、上記エチレン性二重結合を含むアミン誘導体、エチレン性二重結合を含むアミド誘導体、及び、エチレン性二重結合を含むニトリル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種と、必要に応じて配合するその他のモノマーとを含有するモノマー混合物を、重合開始剤の存在下にてラジカル反応させる方法等が挙げられる。重合方法としては特に限定されず、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の従来公知の方法を用いることができる。
【0046】
上記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシピバレートが好適である。
【0047】
上記定盤固定用粘着剤層は、更に、粘着付与樹脂を含有してもよい。上記粘着付与樹脂としては特に限定されず、例えば、キシレン樹脂、フェノール樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
上記定盤固定用粘着剤層は、更に、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体を架橋させる架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤を含有することにより、粘着剤層を構成する樹脂の主鎖間に架橋構造を形成することができる。上記架橋剤の種類や量を適宜調整することによって、上記定盤固定用粘着剤層のゲル分率を後述する所望の範囲に調整することが容易になる。
上記架橋剤としては特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、耐熱性及び耐久性等の性能を発現しやすいことから、イソシアネート系架橋剤が好適である。
【0049】
上記架橋剤の配合量は、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.2重量部、好ましい上限が4重量部である。上記架橋剤の配合量が0.2重量部未満であると、感圧アクリル粘着剤の架橋が不充分となり再剥離の際に凝集破壊することがあり、4重量部を超えると、感圧アクリル粘着剤の粘着力やタックが低下することがある。上記架橋剤の配合量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は2.5重量部である。
【0050】
上記定盤固定用粘着剤層は、必要に応じて、着色剤、充てん剤、老化防止剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0051】
上記定盤固定用粘着剤層は、ゲル分率の好ましい下限が30%、好ましい上限が80%である。ゲル分率が30%未満であると、上記定盤固定用粘着剤層の凝集力が劣り、再剥離の際に凝集破壊することがあり、80%を超えると、粘着力やタックが低下することがある。上記定盤固定用粘着剤層のゲル分率のより好ましい下限は40%である。
【0052】
なお、上記ゲル分率は、下記の方法により測定することができる。
本発明の粘着テープを50mm×25mmの平面長方形状に裁断し、該両面テープから定盤固定用粘着剤層を削り取って試験片を作製する。得られた試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、200メッシュのステンレスメッシュを介して試験片を酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。そして、乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式を用いてゲル分率を算出する。なお、両面テープには、後述のような離型フィルムは積層されていないものとする。
ゲル分率(重量%)=100×W/W
(ここで、Wは浸漬前の試験片の重量を表し、Wは浸漬し乾燥した後の試験片の重量を表す。)
【0053】
上記定盤固定用粘着剤層の厚みとしては特に限定されないが、好ましい下限は20μm、好ましい上限は70μmである。上記定盤固定用粘着剤層の厚みが20μm未満であると、粘着力が劣り、剥離しやすいことがあり、70μmを超えると、保持力が低下し、研磨中に剥がれが生じることがある。
【0054】
上記定盤固定用粘着剤層は、pH13.0の水酸化ナトリウム水溶液に30℃、170時間浸漬した後の重量増加率が10重量%未満である。上記重量増加率が10重量%を超えると、定盤固定用粘着剤層にアルカリスラリー液が染み込みやすくなり、定盤固定用粘着剤層の化学的分解が起こりやすくなり、研磨中に剥離しやすくなる。より好ましくは、上記重量増加率が7重量%未満である。
なお、上記重量増加率は、下記式で求められることができる
重量増加率(重量%)=100×(W−W)/W
(ここで、Wは浸漬前の試験片の重量を表し、Wは浸漬後の試験片の重量を表す。)
【0055】
上記定盤固定用粘着剤層は、一辺20mmの平面正方形状の試験片を用いて、JIS−Z0237に規定する保持力試験を、23℃、1kgf、1時間の条件で行って得られる剥離長さが0.5mm以下である。上記剥離長さが0.5mmを超えると、凝集力が小さすぎて研磨工程時に負荷として掛かるせん断に対する応力が弱く、接着面においてずれが発生し、研磨パッドの平坦性が低下し研磨精度に悪影響が生じる。また、このような状態で研磨使用を続けると最終的には研磨パッドの剥離が発生してしまう場合がある。
【0056】
上記定盤固定用粘着剤層は、100mm×25mmの試験片を用いて、pH13.0の水酸化ナトリウム水溶液に30℃、24時間浸漬した後に、JIS−Z0237に準拠して測定した、SUSに対する180°粘着力の好ましい下限が10.0N/25mm、好ましい上限が23.0N/25mmである。アルカリ処理後のSUSに対する180°粘着力が10.0N/25mm未満であると、研磨中に定盤から剥離してしまうことがあり、23.0N/25mmを超えると、使用後に剥離することが困難となることがある。
【0057】
上記研磨布固定用粘着剤層を構成する粘着剤としては特に限定されず、上記定盤固定用粘着剤層と同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記研磨布固定用粘着剤層には、上記定盤固定用粘着剤層のように使用後の剥離性が求められないことから、粘着力の強い粘着剤を種々選択して使用することができる。また、感圧タイプに限られず、ホットメルト型等の感熱タイプも使用することができる。
上記研磨布固定用粘着剤層を構成する粘着剤としては、具体的には例えば、ゴム系粘着剤、アクリル粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。なかでも、強固に接着できることから、ゴム系粘着剤又はアクリル粘着剤が好適である。
【0058】
上記研磨布固定用粘着剤層に用いるアクリル粘着剤としては、(メタ)アクリル酸ブチル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルを含有する共重合体と、粘着付与樹脂とを含有するものが好ましい。
【0059】
上記共重合体中における上記(メタ)アクリル酸ブチルの配合量は、全共重合成分の合計100重量部中における好ましい下限が10重量部、好ましい上限が50重量部である。上記(メタ)アクリル酸ブチルの配合量が10重量部未満であると、得られる研磨布固定用粘着剤層が耐熱性に劣るものとなることがあり、50重量部を超えると、得られる研磨布固定用粘着剤層が固くなって、研磨布のうねりに追従できなくなることがある。
【0060】
上記共重合体中における上記(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルの配合量は、全共重合成分の合計100重量部における好ましい下限が50重量部、好ましい上限が80重量部である。上記(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルの配合量が50重量部未満であると、得られる研磨布固定用粘着剤層が固くなって、研磨布のうねりに追従できなくなることがあり、80重量部を超えると、得られる研磨布固定用粘着剤層が耐熱性に劣るものとなることがある。
【0061】
上記粘着付与樹脂としては特に限定されず、例えば、キシレン樹脂、フェノール樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、キシレン樹脂が好ましく、キシレン樹脂のアルキルフェノール反応物がより好ましい。
上記キシレン樹脂のアルキルフェノール反応物の市販品としては、例えば、フドー社製の「ニカノールTシリーズ」等が挙げられる。
【0062】
上記研磨布固定用粘着剤層の厚みとしては特に限定されないが、好ましい下限は30μm、好ましい上限は100μmである。上記研磨布固定用粘着剤層の厚みが30μm未満であると、粘着力が不充分となり、研磨中に研磨布が剥離してしまうことがあり、100μmを超えると、凝集力が低下してしまうことがある。上記研磨布固定用粘着剤層の厚みのより好ましい下限は40μm、より好ましい上限は80μmであり、更に好ましい下限は50μm、更に好ましい上限は70μmである。
【0063】
上記研磨布固定用粘着剤層は、JIS−Z0237に準拠して測定されたステンレス板に対する180°ピール力の好ましい下限が10N/25mmである。上記180°ピール力が10N/25mm未満であると、研磨中に研磨布が剥離してしまうことがある。上記180°ピール力のより好ましい下限は、15N/25mmである。
【0064】
本発明の両面テープの製造方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
まず、一方の粘着剤に溶剤を加えて粘着剤溶液を作製して、この粘着剤溶液を基材の表面に塗布し、粘着剤溶液中の溶剤を完全に乾燥除去して粘着剤層を形成する。次に、形成された粘着剤層の上に離型フィルムをその離型処理面が粘着剤層に対向した状態に重ね合わせる。
次いで、上記離型フィルムとは別の離型フィルムを用意し、この離型フィルムの離型処理面に他方の粘着剤の溶液を塗布し、粘着剤溶液中の溶剤を完全に乾燥除去することにより、離型フィルムの表面に粘着剤層が形成された積層フィルムを作製する。
得られた積層フィルムを上記粘着剤層が形成された基材の裏面に、粘着剤層が基材の裏面に対向した状態に重ね合わせて積層体を作製する。
そして、上記積層体をゴムローラなどによって加圧することによって、基材の両面に粘着剤層が積層一体化され、かつ、粘着剤層の表面に離型フィルムが剥離可能に積層されてなる両面テープを得ることができる。
【0065】
また、同様の要領で積層フィルムを2組作製し、これらの積層フィルムを基材の両面のそれぞれに、積層フィルムの粘着剤層を基材に対向させた状態に重ね合わせて積層体を作製し、この積層体をゴムローラなどによって加圧することによって、基材の両面に粘着剤層が積層一体化され、かつ、粘着剤層の表面に離型フィルムが剥離可能に積層されてなる両面テープを製造してもよい。
【発明の効果】
【0066】
本発明によれば、特にアルカリに対する耐性に優れ、かつ、使用後には定盤から糊残りなく剥離できる定盤固定用粘着剤層を有する研磨布固定用両面粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器にアクリル酸−2−エチルヘキシル89.7重量部、メタクリル酸ジメチルアミノメチル10重量部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル0.3重量部、及び、酢酸エチル80重量部を加え、窒素置換した後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤としてラウロイルパーオキシド0.1重量部を添加した。70℃、5時間還流させて、固形分55%の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(a)の溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(a)について、カラムとしてWater社製「2690 Separations Model」を用いてGPC法により重量平均分子量を測定したところ、30万であった。
【0069】
得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(a)溶液に、固形分100重量部に対して、酢酸エチル(不二化学薬品社製)125重量部、イソシアネート系架橋剤(積水フーラー社製「硬化剤 UA」)1.0重量部を添加し、攪拌して、アクリル粘着剤溶液(A)を得た。
【0070】
厚み23μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの表面に、得られたアクリル粘着剤溶液(A)を塗布し、100℃で5分間乾燥させることにより、厚さ30μmの定盤固定用粘着剤層(1a)を形成した。形成された定盤固定用粘着剤層(1a)上に、離型処理が施された厚み50μmのPETフィルムをその離型処理面が定盤固定用粘着剤層(1a)に対向するように重ね合わせた。
一方、別の離型処理が施された厚み50μmのPETフィルムを用意し、このPETフィルムの離型処理面にアクリル粘着剤溶液(A)を塗布し、100℃で5分間乾燥させることにより、厚み50μmの研磨布固定用粘着剤層(1b)を形成した。
【0071】
研磨布固定用粘着剤層(1b)が形成されたPETフィルムを、定盤固定用粘着剤層(1a)が形成されたPETフィルムの裏面に、研磨布固定用粘着剤層が対向するように重ね合わせて積層体を作製した。この積層体上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラを一往復させた後、23℃で7日間養生することにより、基材の両面に定盤固定用粘着剤(1a)層と研磨布固定用粘着剤層(1b)とが積層一体化された両面テープ(1)を得た。
【0072】
(実施例2)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器に、アクリル酸−2−エチルヘキシル69.7重量部、メタクリル酸ベンジル20重量部、アクリロニトリル10重量部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル0.3重量部、及び、酢酸エチル80重量部を加え、窒素置換した後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤としてラウロイルパーオキシド0.1重量部を添加した。70℃、5時間還流させて、固形分55%の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(b)の溶液を得た。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(b)について、上述の方法で重量平均分子量を測定したところ、36万であった。
【0073】
得られたアクリル酸エステル系樹脂溶液(b)に、固形分100重量部に対して、酢酸エチル(和光純薬工業社製)125部、イソシアネート系架橋剤(積水フーラー社製「硬化剤 UA」)を1.0重量部添加、攪拌して、アクリル粘着剤溶液(B)を得た。
【0074】
得られたアクリル粘着剤溶液(B)を用いた以外は実施例1と同様にして、基材の両面に定盤固定用粘着剤(2a)層と研磨布固定用粘着剤層(2b)とが積層一体化された両面テープ(2)を得た。
【0075】
(実施例3)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器に、アクリル酸−2−エチルヘキシル69.7重量部、メタクリル酸シクロヘキシル18重量部、アクリルアミド12重量部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル0.3重量部、及び、酢酸エチル80重量部を加え、窒素置換した後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤としてラウロイルパーオキシド0.1重量部を添加した。70℃、5時間還流させて、固形分55%の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(c)の溶液を得た。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(c)について、上述の方法で重量平均分子量を測定したところ、35万であった。
【0076】
得られたアクリル酸エステル系樹脂溶液(c)に、固形分100重量部に対して、酢酸エチル(和光純薬工業社製)125部、イソシアネート系架橋剤(積水フーラー社製「硬化剤 UA」)を1.0重量部添加、攪拌して、アクリル粘着剤溶液(C)を得た。
【0077】
得られたアクリル粘着剤溶液(C)を用いた以外は実施例1と同様にして、基材の両面に定盤固定用粘着剤(3a)層と研磨布固定用粘着剤層(3b)とが積層一体化された両面テープ(3)を得た。
【0078】
(実施例4)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器に、アクリル酸−2−エチルヘキシル91.7重量部、アクリル酸8重量部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル0.3重量部、及び、酢酸エチル80重量部を加え、窒素置換した後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤としてラウロイルパーオキシド0.1重量部を添加した。70℃、5時間還流させて、固形分55%の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(d)の溶液を得た。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(d)について、上述の方法で重量平均分子量を測定したところ、32万であった。
【0079】
得られたアクリル酸エステル系樹脂溶液(d)に、固形分100重量部に対して、酢酸エチル(和光純薬工業社製)125部、イソシアネート系架橋剤(積水フーラー社製「硬化剤 UA」)を1.0重量部添加、攪拌して、アクリル粘着剤溶液(D)を得た。
【0080】
得られたアクリル粘着剤溶液(D)を用いた以外は実施例1と同様にして、基材の両面に定盤固定用粘着剤(4a)層と研磨布固定用粘着剤層(4b)とが積層一体化された両面テープ(4)を得た。
【0081】
(比較例1)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器に、アクリル酸−2−エチルヘキシル99.7重量部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル0.3重量部、及び、酢酸エチル80重量部を加え、窒素置換した後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤としてラウロイルパーオキシド0.1重量部を添加した。70℃、5時間還流させて、固形分55%の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(e)の溶液を得た。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(e)について、上述の方法で重量平均分子量を測定したところ、31万であった。
【0082】
得られたアクリル酸エステル系樹脂溶液(e)に、固形分100重量部に対して、酢酸エチル(和光純薬工業社製)125部、イソシアネート系架橋剤(積水フーラー社製「硬化剤 UA」)を1.0重量部添加、攪拌して、アクリル粘着剤溶液(E)を得た。
【0083】
得られたアクリル粘着剤溶液(E)を用いた以外は実施例1と同様にして、基材の両面に定盤固定用粘着剤(5a)層と研磨布固定用粘着剤層(5b)とが積層一体化された両面テープ(5)を得た。
【0084】
(比較例2)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器に、アクリル酸−2−エチルヘキシル30重量部、アクリル酸−n−ブチル49.7重量部、アクリル酸20重量部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル0.3重量部、及び、酢酸エチル80重量部を加え、窒素置換した後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤としてラウロイルパーオキシド0.1重量部を添加した。70℃、5時間還流させて、固形分55%の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(f)の溶液を得た。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(f)について、上述の方法で重量平均分子量を測定したところ、33万であった。
【0085】
得られたアクリル酸エステル系樹脂溶液(f)に、固形分100重量部に対して、酢酸エチル(和光純薬工業社製)125部、イソシアネート系架橋剤(積水フーラー社製「硬化剤 UA」)を1.0重量部添加、攪拌して、アクリル粘着剤溶液(F)を得た。
【0086】
得られたアクリル粘着剤溶液(F)を用いた以外は実施例1と同様にして、基材の両面に定盤固定用粘着剤(6a)層と研磨布固定用粘着剤層(6b)とが積層一体化された両面テープ(6)を得た。
【0087】
(評価)
実施例1〜4及び比較例1、2で得られた両面テープについて以下の評価を行った。
結果を表1に示した。
【0088】
(1)アルカリ浸漬後重量増加率
両面テープを縦50mm×横50mmの試験片に切り出した後、粘着面上に設けた離型フィルムのポリエチレンテレフタレートフィルムを両面とも剥離し、浸漬前の粘着テープの重量を測定した。その後、30℃の0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液中に粘着面が容器に触れないよう浸漬させ、170時間放置した。所定時間経過後、両面テープを水酸化ナトリウム水溶液中から取り出し、表面に付着した水を圧縮空気で除去した後、浸漬後の粘着テープの重量を測定した。その後、酢酸エチルを用いて両面の粘着剤を完全に除去し基材の重量を測定し、以下の式より重量増加率を算出した。
重量増加率(重量%)=100×(W−W)/(W−W
(W:基材の重量、W:浸漬前の試験片の重量、W:浸漬後の試験片の重量)
【0089】
(2)アルカリ浸漬後180°ピール力
両面テープの研磨布用粘着剤層上に38μm厚みのポリエチレンテレフタレートフィルムを裏打ちし、縦100mm×横25mmの平面長方形状の試験片を切り出した。この試験片の定盤固定用粘着剤層をステンレス板上に重ね合わせて2kgのローラで押圧し、試験片をステンレス板上に貼着してから温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて30分間放置した。次いで、試験片を貼り付けしたステンレス板を30℃の0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬させ、24時間放置した。その後、ステンレス板を取り出して軽く水洗した後、圧縮空気で付着した水を除去し、引張試験機を用いてJIS−Z0237に準拠して粘着力を測定した。
【0090】
(3)保持力
粘着テープの研磨布用粘着剤層上に38μm厚みのポリエチレンテレフタレートフィルムを裏打ちし、一辺20mmの平面正方形状の試験片を切り出した。この試験片の定盤固定用粘着剤層ををステンレス板上に貼着させた後、40℃、60分間養生させた。
次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルムの下面に試験片が水平に位置した状態となるように配設し、試験片の長さ方向の端部に1kgfの荷重を垂直方向に付加し、試験片に荷重を付加してから、1時間後の剥離長さをルーペを用いて測定した。
【0091】
(4)研磨中はがれの有無
得られた両面テープの、研磨布固定用粘着剤層に研磨布を積層し、ゴムロールを用いて貼り合せた。これを、研磨布側からゴムロールを押し当てることにより、研磨装置の定盤に固定した。
ガラス板を被研磨試験体とし、研磨スラリーとしてCabot Microelectronics社製SS25を用い、研磨圧力49.0kPa、回転数100rpmで5分間研磨パッドを稼動させた。その後、両面テープと定盤の界面について、剥離状態を目視観察した。上述操作を10回行った結果、10回中、1回も剥がれがなかった場合を「○」と、10回中、1回も剥がれがなかったものの、浮きが発生した場合を「△」と、10回中、1回以上剥がれが見られた場合を「×」と評価した。
【0092】
(5)再剥離性
(4)に記載した研磨中はがれの有無の評価後、定盤から粘着テープを剥離した後に定盤上に粘着剤が残っているか否か確認した。粘着剤残りが認められなかった場合を「○」と、粘着剤残りが認められた場合を「×」と評価した。
【0093】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、特にアルカリに対する耐性に優れ、かつ、使用後には定盤から糊残りなく剥離できる定盤固定用粘着剤層を有する研磨布固定用両面粘着テープを提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性溶液を用いた研磨工程において、研磨布を研磨機の定盤に固定するための研磨布固定用両面粘着テープであって、
基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に形成された研磨布固定用粘着剤層と、該基材フィルムの他方の面に形成された感圧アクリル粘着剤からなる定盤固定用粘着剤層とからなり、
前記定盤固定用粘着剤層は、pH13.0の水酸化ナトリウム水溶液に30℃、170時間浸漬した後の重量増加率が10重量%未満であり、かつ、一辺20mmの平面正方形状の試験片を用いて、JIS−Z0237に規定する保持力試験を、23℃、1kgf、1時間の条件で行って得られる剥離長さが0.5mm以下である
ことを特徴とする研磨布固定用両面粘着テープ。
【請求項2】
定盤固定用粘着剤層は、100mm×25mmの試験片を用いて、pH13.0の水酸化ナトリウム水溶液に30℃、24時間浸漬した後に、JIS−Z0237に準拠して測定した、SUSに対する180°粘着力が10.0〜23.0N/25mmであることを特徴とする請求項1記載の研磨布固定用両面粘着テープ。
【請求項3】
定盤固定用粘着剤層を構成する感圧アクリル粘着剤は、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種に由来する成分と、エチレン性二重結合を含むアミン誘導体、エチレン性二重結合を含むアミド誘導体、及び、エチレン性二重結合を含むニトリル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種に由来する成分とを含む(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を主成分とすることを特徴とする請求項1又は2記載の研磨布固定用両面粘着テープ。
【請求項4】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種に由来する成分の含有量が70〜99重量%、エチレン性二重結合を含むアミン誘導体、エチレン性二重結合を含むアミド誘導体、及び、エチレン性二重結合を含むニトリル誘導体からなる群より選択されるいずれか1種に由来する成分の含有量が1〜15重量%であることを特徴とする請求項3記載の研磨布固定用両面粘着テープ。
【請求項5】
鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする請求項3又は4記載の研磨布固定用両面粘着テープ。
【化1】

式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基を表す。
【請求項6】
脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルは、下記一般式(2)で表されるものであることを特徴とする請求項3、4又は5記載の研磨布固定用両面粘着テープ。
【化2】

式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、脂肪族環を有する炭素数5〜15の有機基を表す。
【請求項7】
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルは、下記一般式(3)で表されるものであることを特徴とする請求項3、4、5又は6記載の研磨布固定用両面粘着テープ。
【化3】

式(3)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、芳香族環を有する炭素数6〜16の有機基を表す。
【請求項8】
エチレン性二重結合を含むアミン誘導体は、下記一般式(4)で表されるものであることを特徴とする請求項3、4、5、6又は7記載の研磨布固定用両面粘着テープ。
【化4】

式(4)中、Rは、酸素原子を含んでもよい、(メタ)アクリロイル基又はビニル基を有する炭素数2〜20の有機基を表し、R、R10は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。
【請求項9】
エチレン性二重結合を含むニトリル誘導体は、下記一般式(5)で表されるものであることを特徴とする請求項3、4、5、6、7又は8記載の研磨布固定用両面粘着テープ。
【化5】

式(5)中、R11は、酸素原子を含んでもよい、(メタ)アクリロイル基又はビニル基を有する炭素数2〜20の有機基を表し、nは1〜4の整数を表す。
【請求項10】
エチレン性二重結合を含むアミド誘導体は、下記一般式(6)で表されるものであることを特徴とする請求項3、4、5、6、7、8又は9記載の研磨布固定用両面粘着テープ。
【化6】

式(6)中、R12は、酸素原子を含んでもよい、(メタ)アクリロイル基又はビニル基を有する炭素数2〜20の有機基を表し、oは1〜4の整数を表す。


【公開番号】特開2010−77301(P2010−77301A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247990(P2008−247990)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】