説明

研磨終点検出方法、研磨終点検出装置、および研磨装置

【課題】積層された複数の層を有する被研磨物の研磨終点を正確に検出することができる研磨終点検出方法、研磨終点検出装置、および該研磨終点検出装置を備えた研磨装置を提供する。
【解決手段】研磨中に、第1の光および第2の光をそれぞれ第1の入射角および第2の入射角で被研磨物の被研磨面に照射し、被研磨面で反射した第1の光および第2の光を偏光フィルター47を通じて受光し、受光した第1の光から被研磨面の明度および彩度を分析し、同時に、受光した第2の光から被研磨面の明度および彩度を分析し、被研磨面の明度および彩度の変化に基づいて、上層が除去されたことを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨終点検出方法、研磨終点検出装置、および研磨装置に関し、特に、積層された複数の層の研磨終点を検出する研磨終点検出方法および研磨終点検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスである集積回路は様々な工程を経て製造される。その製造工程の1つであるSTI(Shallow Trench Isolation)は、集積回路の微細化を実現する上で重要とされるプロセスである。このSTIとは、ウェハ(典型的にはシリコンウェハ)上に形成されるトランジスタなどの素子間を絶縁層によって電気的に分離する技術である。
【0003】
図1は、STIの一工程を示す断面図であり、シリコンウェハに形成された溝(トレンチ)に絶縁層であるSiO層が埋め込まれた状態を示している。図1に示すように、シリコンウェハ1の表面とSiO層2との間には、SiN層(Si)3および熱酸化膜パッド4が形成される。SiO層2は、SiN層3が露出するまでCMP(Chemical Mechanical Polishing)により研磨される。SiO層2の下地層として形成されるSiN層3はポリッシングストッパーとして機能し、CMPによってシリコンウェハ1の表面がダメージを受けてしまうことを防止する。CMP後、エッチングなどの工程によってSiN層3や熱酸化膜パッド4が除去され、シリコンウェハ1の表面を露出させる。
【0004】
SiO層2の研磨終点を検出する方法として、研磨されている表面の干渉色を監視して、この干渉色の変化から終点を検知する分光式終点検出が知られている。しかしながら、SiO層2と、その下地となっているSiN層3は、相互に近い屈折率を有しているため、干渉色が互いに似ている。このため、分光式終点検出方法では、干渉色の変化から研磨終点を検知することは難しい。
【0005】
SiO層2の研磨終点を検出する他の方法として、レーザ光を層の表面に入射させ、反射光の強度の変化から研磨終点を検知する方法がある。しかしながら、この方法には次のような欠点がある。レーザ光は単色であるため、層の厚さが変化するにしたがって、反射光が周期的に消える。これは、層の表面で反射したレーザ光と、層を通過して下地層の表面で反射したレーザ光との干渉条件が、層の厚さに依存して変化するからである。このような反射光の周期的な強度の変化は、正確な研磨終点検出を妨げる。また、一般に、ウェハの表面には回路パターンが形成されているため、指向性の高いレーザ光が、回路パターンの影響により、予期しない角度で反射することがある。その結果、反射されたレーザ光を受光することができない。
【0006】
【特許文献1】特表2003−531735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、積層された複数の層を有する被研磨物の研磨終点を正確に検出することができる研磨終点検出方法、研磨終点検出装置、および該研磨終点検出装置を備えた研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、積層された上層と下層とを有する被研磨物の研磨終点を検出する方法であって、研磨中に、第1の光および第2の光をそれぞれ第1の入射角および第2の入射角で前記被研磨物の被研磨面に照射し、前記被研磨面で反射した前記第1の光および第2の光を偏光フィルターを通じて受光し、受光した前記第1の光から前記被研磨面の明度および彩度を分析し、同時に、受光した第2の光から前記被研磨面の明度および彩度を分析し、前記被研磨面の明度および彩度の変化に基づいて、前記上層が除去されたことを検出することを特徴とする。
【0009】
ここで、本発明の原理について図2を参照して説明する。屈折率の異なる2つの物質の界面に光を照射すると、ある入射角では界面からP偏光が反射しなくなる。この入射角はブリュースター角と呼ばれており、2つの物質の屈折率から既知の公式を用いて求められる。図3は、入射角によって変化するP偏光およびS偏光の反射率を示すグラフである。図3に示すように、空気とSiOとの屈折率から導かれるブリュースター角は55.4度であり、空気とSiNの屈折率から導かれるブリュースター角は63.4度である。
【0010】
図2において、光がブリュースター角θ付近で界面に入射すると、反射光は、ほぼS偏光のみとなる(図2では、この反射光を符号100で表す)。入射した光の一部は、物質を通過して下層の表面で反射する(図2では、この反射光を符号101で表す)。反射光100と反射光101とは互いに干渉し、干渉色を構成する。
【0011】
図2に示すように、S偏光をカットする偏光フィルター102を反射光100,101の光路に置くと、ほぼS偏光のみからなる反射光100は実質的に偏光フィルター102によってカットされる。一方、反射光101のS偏光は偏光フィルター102によってカットされ、ほぼP偏光のみが通過する。この状態では、反射光100と反射光101とが干渉する成分は非常に少ないので、偏光フィルター102を通して観察される干渉色は薄く、かつ反射光は暗くなる。
【0012】
本発明の方法および装置は、この物理現象を利用して研磨終点を検出する。すなわち、本発明の研磨終点検出は、上層および下層にそれぞれ対応するブリュースター角(±10度の範囲内)で第1の光および第2の光を被研磨面に照射し、その反射光の光路に配置された偏光フィルターを通じて被研磨面の明度および彩度を監視する。そして、被研磨面の明度および彩度が急に低下または上昇した時点を検出することで、上層が除去されたと判断する。被研磨面に照射される光は、上記第1の光および第2の光を含む光であってもよい。例えば、ある程度の断面積を持つ光を、被研磨面の垂線から50度以上の角度で被研磨面に照射し、被研磨面からの反射光の所定の複数領域を、それぞれ第1の光、第2の光、・・・とすることができる。
【0013】
本発明の好ましい態様は、前記第1の入射角は、前記上層のブリュースター角±10度の範囲から選択された角度であり、前記第2の入射角は、前記下層のブリュースター角±10度の範囲から選択された角度であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1の光および第2の光の少なくとも一方から分析された前記被研磨面の明度および彩度が急激に変化したときに、前記上層が除去されたと判断することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1の光から分析された前記被研磨面の明度および彩度が、前記第2の光から分析された前記被研磨面の明度および彩度を上回ったときに、前記上層が除去されたと判断することを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記被研磨面の色を、R成分、G成分、B成分に分解し、前記R成分、G成分、B成分から、前記被研磨面の明度および彩度を定量化することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記R成分、G成分、B成分の定量化された値であるR値、G値、B値を取得し、前記R値、G値、B値の平均値、自乗平均値、分散、標準偏差、または前記R値、G値、B値のそれぞれに係数を掛けた値の合計値のいずれかであるRGB評価値を算出し、前記RGB評価値を前記被研磨面の明度として定義することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記R値、G値、B値の差分を求め、前記R値、G値、B値の差分を前記被研磨面の彩度として定義することを特徴とする。
【0015】
本発明の他の態様は、積層された上層と下層とを有する被研磨物の研磨終点を検出する装置であって、第1の光および第2の光をそれぞれ第1の入射角および第2の入射角で前記被研磨物の被研磨面に照射する投光部と、前記被研磨面で反射した前記第1の光および第2の光を受光する受光部と、前記受光部と前記被研磨面との間に配置された偏光フィルターと、前記偏光フィルターを通じて前記受光部により受光された前記第1の光および第2の光から前記被研磨面の明度および彩度を分析する処理部とを備え、前記処理部は、前記被研磨面の明度および彩度の変化に基づいて、前記上層が除去されたことを検出することを特徴とする。
【0016】
本発明の他の態様は、積層された上層と下層とを有する被研磨物の研磨装置であって、研磨面を有する研磨パッドと、前記研磨パッドと前記被研磨物とを相対移動させる相対移動機構と、研磨終点検出装置とを備え、前記研磨終点検出装置は、第1の光および第2の光をそれぞれ第1の入射角および第2の入射角で前記被研磨物の被研磨面に照射する投光部と、前記被研磨面で反射した前記第1の光および第2の光を受光する受光部と、前記受光部と前記被研磨面との間に配置された偏光フィルターと、前記偏光フィルターを通じて前記受光部により受光された前記第1の光および第2の光から前記被研磨面の明度および彩度を分析する処理部とを有し、前記処理部は、前記被研磨面の明度および彩度の変化に基づいて、前記上層が除去されたことを検出し、前記研磨パッドは、前記第1の光および第2の光を通過させる通孔を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被研磨面の明度および彩度は、研磨終点において急峻に変化するので、被研磨面の明度および彩度の変化に基づいて研磨終点を正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る研磨装置の全体構成を示す模式図である。図4に示すように、研磨装置は、研磨テーブル10と、研磨テーブル10の上面に貼付けられた研磨パッド12と、研磨対象物である基板Wを保持して研磨パッド12に押圧するトップリング14と、研磨パッド12に研磨液(スラリー)を供給する研磨液供給ノズル15とを備えている。研磨テーブル10は、その下方に配置されるモータ(図示せず)に連結されており、軸心周りに回転可能になっている。
【0019】
研磨パッド12の上面12aは、研磨対象物である基板Wが摺接される研磨面を構成している。基板Wは、図1に示すように、SiN層と、その上に形成されたSiO層とを有している。これらSiO層およびSiN層は、いずれも絶縁層である。なお、本実施形態では、上下に積層されたSiO層およびSiN層を有する基板を研磨する例について説明されるが、本発明は、SiO層およびSiN層以外の絶縁層の研磨にも適用することができる。
【0020】
トップリング14は、トップリングシャフト18を介してモータ及び昇降シリンダ(図示せず)に連結されている。これにより、トップリング14は昇降可能かつトップリングシャフト18周りに回転可能となっている。このトップリング14の下面には、基板Wが真空吸着等によって保持される。
【0021】
トップリング14の下面に保持された基板Wはトップリング14によって回転させられつつ、回転している研磨テーブル10上の研磨パッド12に押圧される。このとき、研磨液供給ノズル15から研磨パッド12の研磨面12aに研磨液が供給され、基板Wの被研磨面(下面)と研磨パッド12との間に研磨液が存在した状態で基板Wが研磨される。本実施形態においては、基板Wと研磨パッド12とを相対移動させる機構は、研磨テーブル10およびトップリング14によって構成される。
【0022】
研磨テーブル10には、その上面で開口する孔20が形成されている。また、研磨パッド12には、この孔20に対応する位置に通孔21が形成されており、孔20と通孔21とは連通している。孔20はロータリージョイント22を介して液体供給源25および排出流路26に連結されている。液体供給源25からは、透明な液体として純水が孔20に供給され、基板Wの裏面(下面)と通孔21とによって形成される空間を満たし、排出流路26を通じて排出されるようになっている。
【0023】
研磨装置は、基板Wの研磨終点を検出する研磨終点検出装置30を有している。この研磨終点検出装置30は、光(好ましくは白色光)を基板Wに照射する投光部31と、基板Wからの反射光を受光する受光部としてのCCDカメラ32とを備えている。CCDカメラ32は、基板Wの被研磨面で反射する光を受光して該被研磨面の画像を生成する撮像装置である。なお、受光部として、CMOSなどのイメージセンサを用いた撮像装置や、分光器などを用いてもよい。投光部31およびCCDカメラ32は、研磨テーブル10の内部に設置されている。研磨終点検出装置30は、CCDカメラ32によって取得された画像を分析する処理部33をさらに備えている。
【0024】
図5は研磨終点検出装置30の投光部31を示す拡大図である。図5に示すように、投光部31は、光源40と、拡散する光源40の光を平行光(互いに平行に進行する光の束)に変える第1のレンズ41と、第1のレンズ41を通過した平行光を偏光させる偏光フィルター42とを有している。この偏光フィルター42は、第1のレンズ41を通過した平行光を、P偏光とS偏光とが同程度に含まれる平行光に調整するものである。具体的には、偏光フィルター42によって、平行光は45度に偏光した光に変換される。
【0025】
投光部31は、さらに、ビームスプリッター43、反射板44、および第2のレンズ45を有する。反射板44および第2のレンズ45は、孔20(図4参照)の内部に配置されている。偏光フィルター42を通過することによって偏光された平行光の一部は、ビームスプリッター43および反射板44によってその進行方向が変えられ、第2のレンズ45を通過して研磨パッド12上の基板Wに入射する。第2のレンズ45は、平行光を基板Wの表面上の一点に収束させる収束レンズである。基板Wからの反射光は、第2のレンズ45によって再び平行光に変換され、反射板44およびビームスプリッター43を経由してCCDカメラ32によって受光される。CCDカメラ32の前には偏光フィルター47が配置されている。この偏光フィルター47は、CCDカメラ32に入射する光の偏光方向を調整することが可能であり、本実施形態では、S偏光をカットしている。
【0026】
図4に示すように、研磨テーブル10に形成された孔20の側壁の一部は透明な窓(例えば、透明アクリル)23で構成されている。この透明な窓23は、孔20を流れる純水の流出を防ぎつつ、光の進行を許容するためのものである。CCDカメラ32は処理部33に接続されており、CCDカメラ32によって取得された画像は処理部33に送信される。処理部33は画像を分析し、被研磨面の彩度と明度を定量化する。さらに、処理部33は、定量化された明度および彩度から研磨終点を検出する。処理部33は、研磨終点を検知したことを示す信号を制御部50に送信し、制御部50はこの信号を受けて研磨装置の研磨動作を停止させるようになっている。
【0027】
本実施形態では、第2のレンズ45によって基板Wの表面上の1点に収束される光の入射角の範囲は、0〜70度の範囲に設定されている。したがって、この入射角の範囲には、光が空気中からSiOに入射したときのブリュースター角である55.4度(以下、これを第1の角度θ1という)と、光が空気中からSiNに入射したときのブリュースター角である63.4度(以下、これを第2の角度θ2という)とが含まれる。すなわち、投光部31から発せられる光には、第1の角度θ1で基板Wの表面に入射する第1の光と、第2の角度θ2で基板Wの表面に入射する第2の光とが含まれる。
【0028】
上述したブリュースター角は、SiO,SiNが空気に接触している場合の値である。一方、SiO,SiNが液体に接触している場合は、ブリュースター角の値は変わる。例えば、図4に示すように、光路が水で満たされている場合は、SiOのブリュースター角θ1は47.5度であり、SiNのブリュースター角θ2は56.4度となる。
【0029】
図6は、CCDカメラ32によって取得された画像を模式的に示す図である。図6において、符号A1は、SiOのブリュースター角である第1の角度θ1に対応する第1の領域を表し、符号A2は、SiNのブリュースター角である第2の角度θ2に対応する第2の領域を表している。研磨の初期段階では、基板Wの表面にはSiO層が露出しているので、第1の領域A1では、図2を参照して説明した理由により、明度および彩度が低い(言い換えれば、グレー色に近く、かつ暗い)。一方、第2の領域A2を含む他の領域では、第1の領域A1に比べて、明度および彩度が高い(言い換えれば、色彩が豊かで、かつ明るい)。
【0030】
研磨が進行してSiO層が除去されると、第1の領域A1の明度および彩度は急に高くなる。また、SiN層が表面に露出すると、第2の領域A2では、明度および彩度が急に低くなる。処理部33は、CCDカメラ32から送られてくる画像を分析し、第1の領域A1および第2の領域A2の明度および彩度を定量化し、第1の領域A1および第2の領域A2の少なくとも一方の明度および彩度が急激に変化したことを検出することにより、研磨終点に達したと判断する。好ましくは、処理部33は、第1の領域A1の明度および彩度が、第2の領域A2の明度および彩度を上回ったときに、研磨終点に達したと判断する。
【0031】
画像の明度および彩度の定量化は次のようにして行われる。処理部33は、第1の領域(SiOのブリュースター角である第1の角度θ1に対応する領域)A1および第2の領域(SiNのブリュースター角である第2の角度θ2に対応する領域)A2でのRGBヒストグラムを作成する。図7はRGBヒストグラムを示す図である。図7に示すように、RGBヒストグラムは、色の濃度を横軸とし、頻度(すなわち、画素数)を縦軸とするグラフである。
【0032】
処理部33は、第1の領域A1および第2の領域A2の色をR(赤)成分、G(緑)成分、B(青)成分に分解し、それぞれのR成分、G成分、B成分の濃度(強さ)と、その濃度を有する画素数との関係を示すグラフをヒストグラム上に作成する。次に、R成分、G成分、B成分それぞれの重心を求め、R成分、G成分、B成分を定量化する。以下、R成分、G成分、B成分の定量化された値をそれぞれR値、G値、B値という。このR値、G値、B値は、例えばR成分、G成分、B成分のそれぞれの濃度(強さ)のピーク値、またはそれぞれのR成分、G成分、B成分の面積(すなわち、各成分を有する画素数の総和)とすることができる。
【0033】
さらに、処理部33は、R値、G値、B値の平均値(以下、RGB評価値という)を求める。このRGB評価値は、画像の明度に依存して変化する。したがって、処理部33は、RGB評価値を被処理面の明度として定義し、このRGB評価値を監視する。なお、RGB評価値として、R値、G値、B値の平均値のほかに、R値、G値、B値の自乗平均値、分散、標準偏差、または前記R値、G値、B値のそれぞれに係数を掛けた値の合計値を用いることもできる。
【0034】
処理部33は、さらに、R値、G値、B値の差分(以下、RGB差分という)を計算し、このRGB差分を、被研磨面の彩度を表す指標として定義する。具体的には、次の式を用いて彩度を計算する。
(R値−G値)+(R値−B値)+(G値−B値)
上記式によって求められるRGB差分の値は、画像の彩度に依存して変化する。より具体的には、画像の彩度が低下するとRGB差分の値は低下し、画像の彩度が上がるとRGB差分の値も上がる。このようにして、処理部33は、第1の領域A1および第2の領域A2の明度および彩度を定量化する。なお、上述したRGB差分に代えて、標準偏差を彩度の指標としてもよい。
【0035】
図8は、ブリュースター角で光が入射しているときの画像を分析して得られたRGBヒストグラムを示す図である。図8に示すように、明度および彩度が低い画像のR成分、G成分、B成分の値は全体的に低く、かつR成分、G成分、B成分の全体としての幅が狭くなる。したがって、画像の明度および彩度を示すRGB評価値およびRGB差分は低くなる。
【0036】
処理部33は、第1の領域A1のRGB評価値(すなわち明度)およびRGB差分(すなわち彩度)、および第2の領域A2のRGB評価値(すなわち明度)およびRGB差分(すなわち彩度)を研磨中に監視する。第1の領域A1および第2の領域A2のいずれか一方のRGB評価値およびRGB差分が急激に変化したときは、SiO層が除去されたか、またはSiN層が露出したことを意味する。したがって、第1の領域A1および第2の領域A2のいずれか一方のRGB評価値およびRGB差分(すなわち、明度および彩度)が急激に変化したことを検出することにより、SiO層が除去されたことを検出することができる。好ましくは、処理部33は、第1の領域A1の明度および彩度が、第2の領域A2の明度および彩度を上回ったときに、研磨終点に達したと判断する。なお、RGB評価値およびRGB差分の急激な変化は、例えば、これらRGB評価値およびRGB差分を微分し、これら微分値が所定の閾値を超えたか否かを判断することによって検出することができる。
【0037】
基板の表面の色は、膜の厚さに依存して変化することが知られている。これは、膜の表面で反射した光と、膜を透過して下地材料の表面で反射した光との干渉の度合いが膜の厚さに依存して変化するからである。また、基板の表面の色は、回路パターンによっても変わってくる。さらに、互いに近似する屈折率を有する膜は、互いに似た色を呈する。このため、色の絶対変化に基づいて研磨終点を検出することは難しい。本実施形態では、色の絶対変化を監視するのではなく、明度および彩度の相対変化を監視する。したがって、本実施形態によれば、膜の厚さ、屈折率、回路パターンの影響を受けることなく、正確な研磨終点を検出することができる。
【0038】
なお、第1の角度θ1は、SiOのブリュースター角±10度、好ましくは±5度の範囲から選択することができる。同様に、第2の角度θ2は、SiNのブリュースター角±10度、好ましくは±5度の範囲から選択することができる。角度θ1,θ2の選択幅が10度であっても、2つの光の変化(すなわち表面の明度および彩度の変化)を識別することは可能である。
【0039】
鮮明な画像を取得するためには、研磨の間は、孔20および通孔21に純水を常に流通させておくことが好ましい。これにより、純水に混入した研磨液(例えばスラリー)を純水とともに排除することができる。また、光路を純水で満たすことにより、光の屈折や散乱に起因して被研磨面の情報にノイズが混入することが防止でき、また光量の低下を防止することができる。仮に、研磨パッドに透明な窓を設けて光を通過させると、光は空気、窓、被研磨面、窓、空気をこの順で通過し、それらの界面で光の屈折や散乱が発生してしまう。本実施形態によれば、純水と基板の表面との界面のみが存在するので、光の屈折や散乱を防止することができる。
【0040】
なお、この実施形態において、孔20に隣接して排出孔を設けて、純水(透明な液体)の供給と排出をそれぞれ独立して設けられた孔を通じて行ってもよい。また、研磨液の種類によっては、研磨テーブル10に形成された孔20の下端を透明なアクリルなどで塞ぎ、その孔20および通孔21に純水を溜めておいてもよい。
【0041】
図9は、他の実施形態に係る研磨終点検出装置の一部を示す図である。なお、特に説明しない本実施形態の研磨終点検出装置および研磨装置全体の構成及び動作は、上述した実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0042】
図9に示すように、投光部60は、光(好ましくは白色光)を発する光源61と、第1の角度θ1で基板Wの被研磨面に入射する第1の光を投光する第1の投光ファイバー62Aと、第2の角度θ2で基板Wの被研磨面に入射する第2の光を投光する第2の投光ファイバー62Bとを有する。第1の投光ファイバー62Aおよび第2の投光ファイバー62Bは、いずれも光源61に接続されている。なお、第1の投光ファイバー62Aおよび第2の投光ファイバー62Bの前方に、光を45度に偏光させる偏光フィルターを設けることが好ましい。
【0043】
受光部70は、第1の光および第2の光の反射角にそれぞれ対応する角度に配置された第1の受光ファイバー71Aおよび第2の受光ファイバー71Bと、基板Wの被研磨面で反射する第1の光および第2の光を、それぞれ第1の受光ファイバー71Aおよび第2の受光ファイバー71Bを通じて受光する第1の光量検出器(受光装置)72Aおよび第2の光量検出器(受光装置)72Bとを有している。なお、受光装置として、CMOSなどのイメージセンサを用いた撮像装置や、分光器などを用いてもよい。第1の受光ファイバー71Aおよび第2の受光ファイバー71Bと基板Wとの間には、S偏光をカットする偏光フィルター47が配置されている。
【0044】
研磨テーブル10および研磨パッド12には、透明なアクリルなどで形成された光透過性を有する導管75が配置されている。この導管75の上端は、研磨面よりもやや下方に位置し、円形または矩形状の断面を有している。この導管75には、図4に示す液体供給源25および排出流路26が連結されている。第1の投光ファイバー62Aおよび第2の投光ファイバー62Bと、第1の受光ファイバー71Aおよび第2の受光ファイバー71Bは、この導管75の両側に配置されている。
【0045】
2つの光量検出器72A,72Bは、図4に示す処理部33に連結されている。処理部33は光量検出器72A,72Bによって取得された画像から、被研磨面の明度および彩度を分析する。それぞれの光量検出器72A,72Bによって取得された2つの画像は、上述した実施形態の第1の領域A1および第2の領域A2にそれぞれ相当する。したがって、2つの画像に表される被研磨面の明度および彩度を処理部33によって監視することで、上述した実施形態と同様のプロセスで研磨終点を検知することができる。
【0046】
なお、第1の実施形態のように、第1の光および第2の光を含む光を基板に照射してもよく、第2の実施形態のように、互いに独立した第1の光および第2の光を基板に照射してもよい。いずれの実施形態も本発明の技術的思想の範囲に含まれることは言うまでもない。なお、第1の光および第2の光を含む光を基板に照射する他の実施形態としては、ある程度の断面積を持つ光を基板の表面に当てて、基板からの反射光の所定の部分を第1の光、第2の光、・・・とする例が挙げられる。この場合の光の入射角は50度以上であることが好ましい。
【0047】
上述した各実施形態は、当該技術分野に属する者が本発明を実施できることを目的として説明されたものであり、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】STIの一工程を示す断面図である。
【図2】本発明の研磨終点検出の原理を説明する図である。
【図3】入射角によって変化するP偏光およびS偏光の反射率を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態に係る研磨装置の全体構成を示す模式図である。
【図5】研磨終点検出装置の投光部を示す拡大図である。
【図6】CCDカメラによって取得された画像を模式的に示す図である。
【図7】RGBヒストグラムを示す図である。
【図8】ブリュースター角で光が入射しているときの画像を分析して得られたRGBヒストグラムを示す図である。
【図9】他の実施形態に係る研磨終点検出装置の一部を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10 研磨テーブル
12 研磨パッド
14 トップリング
15 研磨液供給ノズル
18 トップリングシャフト
20 孔
21 通孔
22 ロータリージョイント
25 液体供給源
26 排出流路
30 研磨終点検出装置
31 投光部
32 CCDカメラ(受光部)
33 処理部
40 光源
41 第1のレンズ
42 偏光フィルター
43 ビームスプリッター
44 反射板
45 第2のレンズ
47 偏光フィルター
50 制御部
60 投光部
61 光源
62A 第1の投光ファイバー
62B 第2の投光ファイバー
70 受光部
71A 第1の受光ファイバー
71B 第2の受光ファイバー
72A 第1の光量検出器
72B 第2の光量検出器
75 導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された上層と下層とを有する被研磨物の研磨終点を検出する方法であって、
研磨中に、第1の光および第2の光をそれぞれ第1の入射角および第2の入射角で前記被研磨物の被研磨面に照射し、
前記被研磨面で反射した前記第1の光および第2の光を偏光フィルターを通じて受光し、
受光した前記第1の光から前記被研磨面の明度および彩度を分析し、同時に、受光した第2の光から前記被研磨面の明度および彩度を分析し、
前記被研磨面の明度および彩度の変化に基づいて、前記上層が除去されたことを検出することを特徴とする研磨終点検出方法。
【請求項2】
前記第1の入射角は、前記上層のブリュースター角±10度の範囲から選択された角度であり、前記第2の入射角は、前記下層のブリュースター角±10度の範囲から選択された角度であることを特徴とする請求項1に記載の研磨終点検出方法。
【請求項3】
前記第1の光および第2の光の少なくとも一方から分析された前記被研磨面の明度および彩度が急激に変化したときに、前記上層が除去されたと判断することを特徴とする請求項1に記載の研磨終点検出方法。
【請求項4】
前記第1の光から分析された前記被研磨面の明度および彩度が、前記第2の光から分析された前記被研磨面の明度および彩度を上回ったときに、前記上層が除去されたと判断することを特徴とする請求項1に記載の研磨終点検出方法。
【請求項5】
前記被研磨面の色を、R成分、G成分、B成分に分解し、
前記R成分、G成分、B成分から、前記被研磨面の明度および彩度を定量化することを特徴とする請求項1に記載の研磨終点検出方法。
【請求項6】
前記R成分、G成分、B成分の定量化された値であるR値、G値、B値を取得し、
前記R値、G値、B値の平均値、自乗平均値、分散、標準偏差、または前記R値、G値、B値のそれぞれに係数を掛けた値の合計値のいずれかであるRGB評価値を算出し、
前記RGB評価値を前記被研磨面の明度として定義することを特徴とする請求項5に記載の研磨終点検出方法。
【請求項7】
前記R値、G値、B値の差分を求め、
前記R値、G値、B値の差分を前記被研磨面の彩度として定義することを特徴とする請求項6に記載の研磨終点検出方法。
【請求項8】
積層された上層と下層とを有する被研磨物の研磨終点を検出する装置であって、
第1の光および第2の光をそれぞれ第1の入射角および第2の入射角で前記被研磨物の被研磨面に照射する投光部と、
前記被研磨面で反射した前記第1の光および第2の光を受光する受光部と、
前記受光部と前記被研磨面との間に配置された偏光フィルターと、
前記偏光フィルターを通じて前記受光部により受光された前記第1の光および第2の光から前記被研磨面の明度および彩度を分析する処理部とを備え、
前記処理部は、前記被研磨面の明度および彩度の変化に基づいて、前記上層が除去されたことを検出することを特徴とする研磨終点検出装置。
【請求項9】
前記第1の入射角は、前記上層のブリュースター角±10度の範囲から選択された角度であり、前記第2の入射角は、前記下層のブリュースター角±10度の範囲から選択された角度であることを特徴とする請求項8に記載の研磨終点検出装置。
【請求項10】
前記処理部は、前記第1の光および第2の光の少なくとも一方から分析された前記被研磨面の明度および彩度が急激に変化したときに、前記上層が除去されたと判断することを特徴とする請求項8に記載の研磨終点検出装置。
【請求項11】
前記処理部は、前記第1の光から分析された前記被研磨面の明度および彩度が、前記第2の光から分析された前記被研磨面の明度および彩度を上回ったときに、前記上層が除去されたと判断することを特徴とする請求項8に記載の研磨終点検出装置。
【請求項12】
前記処理部は、
前記被研磨面の色を、R成分、G成分、B成分に分解し、
前記R成分、G成分、B成分から、前記被研磨面の明度および彩度を定量化することを特徴とする請求項8に記載の研磨終点検出装置。
【請求項13】
前記処理部は、
前記R成分、G成分、B成分の定量化された値であるR値、G値、B値を取得し、
前記R値、G値、B値の平均値、自乗平均値、分散、標準偏差、または前記R値、G値、B値のそれぞれに係数を掛けた値の合計値のいずれかであるRGB評価値を算出し、
前記RGB評価値を前記被研磨面の明度として定義することを特徴とする請求項12に記載の研磨終点検出装置。
【請求項14】
前記処理部は、
前記R値、G値、B値の差分を求め、
前記R値、G値、B値の差分を前記被研磨面の彩度として定義することを特徴とする請求項13に記載の研磨終点検出装置。
【請求項15】
前記投光部は、光源と、該光源の光を前記第1の光および第2の光を含む平行光にする第1のレンズと、該平行光を被研磨面上の一点に集束させる第2のレンズとを有し、
前記受光部は、前記第2のレンズを通して平行光となった反射光を受光することを特徴とする請求項8に記載の研磨終点検出装置。
【請求項16】
前記投光部は、光源と、前記第1の光および第2の光をそれぞれ被研磨面に投光する2つの投光ファイバーとを有し、
前記受光部は、前記第1の光および第2の光の反射角にそれぞれ対応する角度に配置された2つの受光ファイバーと、前記2つの受光ファイバーにそれぞれ接続される2つの受光装置とを有することを特徴とする請求項8に記載の研磨終点検出装置。
【請求項17】
積層された上層と下層とを有する被研磨物の研磨装置であって、
研磨面を有する研磨パッドと、
前記研磨パッドと前記被研磨物とを相対移動させる相対移動機構と、
研磨終点検出装置とを備え、
前記研磨終点検出装置は、
第1の光および第2の光をそれぞれ第1の入射角および第2の入射角で前記被研磨物の被研磨面に照射する投光部と、
前記被研磨面で反射した前記第1の光および第2の光を受光する受光部と、
前記受光部と前記被研磨面との間に配置された偏光フィルターと、
前記偏光フィルターを通じて前記受光部により受光された前記第1の光および第2の光から前記被研磨面の明度および彩度を分析する処理部とを有し、
前記処理部は、前記被研磨面の明度および彩度の変化に基づいて、前記上層が除去されたことを検出し、
前記研磨パッドは、前記第1の光および第2の光を通過させる通孔を有することを特徴とする研磨装置。
【請求項18】
前記第1の入射角は、前記上層のブリュースター角±10度の範囲から選択された角度であり、前記第2の入射角は、前記下層のブリュースター角±10度の範囲から選択された角度であることを特徴とする請求項17に記載の研磨装置。
【請求項19】
前記処理部は、前記第1の光および第2の光の少なくとも一方から分析された前記被研磨面の明度および彩度が急激に変化したときに、前記上層が除去されたと判断することを特徴とする請求項17に記載の研磨装置。
【請求項20】
前記処理部は、前記第1の光から分析された前記被研磨面の明度および彩度が、前記第2の光から分析された前記被研磨面の明度および彩度を上回ったときに、前記上層が除去されたと判断することを特徴とする請求項17に記載の研磨装置。
【請求項21】
前記処理部は、
前記被研磨面の色を、R成分、G成分、B成分に分解し、
前記R成分、G成分、B成分から、前記被研磨面の明度および彩度を定量化することを特徴とする請求項17に記載の研磨装置。
【請求項22】
前記処理部は、
前記R成分、G成分、B成分の定量化された値であるR値、G値、B値を取得し、
前記R値、G値、B値の平均値、自乗平均値、分散、標準偏差、または前記R値、G値、B値のそれぞれに係数を掛けた値の合計値のいずれかであるRGB評価値を算出し、
前記RGB評価値を前記被研磨面の明度として定義することを特徴とする請求項21に記載の研磨装置。
【請求項23】
前記処理部は、
前記R値、G値、B値の差分を求め、
前記R値、G値、B値の差分を前記被研磨面の彩度として定義することを特徴とする請求項22に記載の研磨装置。
【請求項24】
前記投光部は、光源と、該光源の光を前記第1の光および第2の光を含む平行光にする第1のレンズと、該平行光を被研磨面上の一点に集束させる第2のレンズとを有し、
前記受光部は、前記第2のレンズを通して平行光となった反射光を受光することを特徴とする請求項17に記載の研磨装置。
【請求項25】
前記投光部は、光源と、前記第1の光および第2の光をそれぞれ被研磨面に投光する2つの投光ファイバーとを有し、
前記受光部は、前記第1の光および第2の光の反射角にそれぞれ対応する角度に配置された2つの受光ファイバーと、前記2つの受光ファイバーにそれぞれ接続される2つの受光装置とを有することを特徴とする請求項17に記載の研磨装置。
【請求項26】
前記通孔と前記被研磨面とにより形成された空間を液体で満たす液体供給源を有することを特徴とする請求項17に記載の研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−142969(P2009−142969A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325730(P2007−325730)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】