説明

研磨装置及び研磨方法、基板及び電子機器の製造方法

【課題】高い研磨精度を有してワークの両面を同時に研磨する研磨装置及び研磨方法を提供する。
【解決手段】ワークWの両面Wa及びWbを同時に研磨する研磨装置100において、それぞれがワークWに接触する研磨面142a,162aを有して互いに反対方向に回転する一対の定盤140,160と、一対の定盤140,160の回転数を各々検出する一対の検出部148,168と、一対の定盤140,160の間でワークWを加圧する加圧部170と、定盤140,160にスラリーを供給するスラリー供給部175と、研磨面142a,162aとワークWとの間の摩擦力が閾値を超えたと判断した場合に、加圧部170が加える荷重、定盤140,160の回転数、スラリー供給部175が供給するスラリーの少なくとも一つを減少する制御部180と、を有することを特徴とする研磨装置100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、研磨装置及び研磨方法に係り、特に、ワークの両面を同時に研磨する研磨装置及び研磨方法に関する。本発明は、例えば、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing又はPlanarization:CMP)装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
メムス(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)の一例であるメムスセンサは、製造においてセンシング機能を有するメムスチップの両側にガラス基板を接合して真空環境に維持する必要がある。このために、ガラス基板のメムスチップ側には厳しい平坦度が要求される。また、ガラス基板の表裏面を区別しない方が製造上便宜である。このため、各ガラス基板の表裏面を同一の平坦度で研磨する需要がある。
【0003】
研磨工程は、表面粗さRa1μm〜200nm程度で粗くラップする仕上げ(ラフラッピング)工程と、表面粗さRa数nm高精度に研磨する超仕上げ工程とを有する。特許文献1は、超仕上げ工程にCMP装置を使用することを提案している。従来のCMP装置でガラス基板の両面を研磨するには、ガラス基板の片面を研磨した後で、一旦ガラス基板を取り外して反転し、再度装着して研磨する必要があった。
【特許文献1】特開2000−305069号公報
【特許文献2】特開平1−92063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CMPにおいて片面ずつワークを研磨するよりも両面同時に研磨した方が、スループットが向上するために好ましい。この場合、仕上げ工程に対しては、特許文献2に開示されているように、両面研磨装置が提案されている。そこで、本発明者らは、CMP工程に両面研磨を適用することについて検討した。
【0005】
仕上げ工程でもCMP工程でもワークは研磨中に定盤に搭載されたパッドに接触する。また、特許文献2によれば、両面研磨を行う場合、ワークを治具(本出願ではこれを「キャリア」と呼ぶ。)の収納部に所定の嵌め合いで嵌め込んでから研磨装置に搭載する。
【0006】
研磨が進むにつれてワークの被研磨面の平坦度が上がり、パッド面(研磨面)との密着性、即ち、摩擦力が増加する。しかし、上下の定盤は逆方向に回転するため、摩擦力と嵌め合いのためにワークがキャリアの収納部内で振動してキャリアと衝突して端部が欠けたり、塵埃を発生したりする。そして、その塵埃は、パッド面とワークの被研磨面との間に入り込んでワークを傷つけ、平坦度を低下させる。このため、高精度の研磨を行うためには塵埃の発生を防止し、塵埃が発生してしまった場合には早期に除去又はワークを保護する必要である。
【0007】
本発明は、高い研磨精度を有してワークの両面を同時に研磨する研磨装置及び研磨方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての研磨装置は、ワークの両面を同時に研磨する研磨装置に使用され、前記ワークを収納する収納穴を有するキャリアにおいて、前記研磨装置の一対の研磨面に対向する両面の少なくとも一方に凹凸を有することを特徴とする。かかるキャリアによれば凹凸が塵埃をワーク面上から除去し易くする。前記凹凸は、例えば、前記収納穴の外側に設けられ、前記収納穴よりも小さく、前記両面を貫通する複数の貫通孔、又は、前記両面の少なくとも一方に設けられた溝である。前記溝は、直線的及び/又は曲線的に延びてもよいし、前記キャリアの中心から延びてもよい。また、上述のキャリアを有することを特徴とする研磨装置も本発明の一側面を構成する。
【0009】
本発明の別の側面としての研磨装置は、ワークの両面を同時に研磨する研磨装置において、それぞれが前記ワークに接触する研磨面を有して互いに反対方向に回転する一対の定盤と、前記一対の定盤の回転数を各々検出する一対の検出部と、前記一対の定盤の間で前記ワークを加圧する加圧部と、前記定盤にスラリーを供給するスラリー供給部と、前記研磨面と前記ワークとの間の摩擦力が閾値を超えたと判断した場合に、前記加圧部が加える荷重、前記定盤の回転数、前記スラリー供給部が供給するスラリーの少なくとも一つを減少する制御部と、を有することを特徴とする。かかる制御部は、摩擦力が閾値を超えた場合に研磨力を低減するのでそれ以上ワークが研磨されて振動することを未然に防止又は低減することができる。
【0010】
前記制御部は、前記摩擦力が前記閾値を超えたと判断した場合に、前記加圧部が加える荷重又は前記一対の定盤の少なくとも一方の回転数を0にしてもよい。または、前記制御部は、前記摩擦力が前記閾値を超えたと判断した場合に、前記定盤の回転数を維持した状態で前記加圧部が加える荷重を0よりも大きい別の荷重に減少し、前記別の荷重に減少してから所定時間が経過後に前記一対の定盤の回転を停止すると共に前記加圧部が加える荷重を0にしてもよい。若しくは、前記制御部は、前記研磨面と前記ワークとの間の摩擦力が閾値を超えたと判断した場合に、前記加圧部による荷重を維持した状態で前記一対の定盤の回転数の少なくとも一方を0よりも大きい別の回転数に減少し、前記別の回転数に減少してから所定時間が経過後に前記一対の定盤の回転を停止すると共に前記加圧部が加える荷重を0にしてもよい。いずれの方法によってもワークがそれ以上研磨されて振動をすることを未然に防止又は低減することができる。また、所定期間により、両定盤による研磨量差を低減又は除去することができる。
【0011】
前記研磨装置は、前記一対の定盤の一方を駆動する駆動部と、前記駆動部によって前記一対の定盤の一方の回転軸に加えられる駆動力を前記一対の定盤の他方の回転軸に反転して伝達する伝達機構と、を更に有し、前記制御部は、前記一対の検出部から取得した前記一対の定盤の回転数が設定された関係になるように前記伝達機構の伝達比率と前記駆動部に供給する電流を制御してもよい。あるいは、前記研磨装置は、各々前記一対の定盤の対応する一つを駆動する一対の駆動部を更に有し、前記制御部は、前記一対の検出部から取得した前記一対の定盤の回転数が設定された関係になるように前記一対の駆動部に供給する電流を制御してもよい。これにより、制御部は、両定盤の研磨量を制御することができる。前記設定された関係は、例えば、前記一対の定盤の回転数が等しい関係、又は、前記一対の定盤のうち、重力方向の上側の定盤の回転数が下側の定盤の回転数よりも高い関係である。
【0012】
前記制御部は、前記駆動部に供給する電流に基づいて前記研磨面と前記ワークとの間の摩擦力が閾値を超えたかどうかを判断してもよいし、前記研磨装置は、前記研磨面と前記ワークとの間の摩擦力を検出するトルクセンサを更に有し、前記制御部は、前記トルクセンサの出力に基づいて前記研磨面と前記ワークとの間の摩擦力が閾値を超えたかどうかを判断してもよい。
【0013】
前記研磨装置は、各々一対の研磨面の対応する一つの温度を測定する一対の温度測定部と、各々一対の研磨面の対応する一つを冷却する一対の冷却部と、を更に有し、前記制御部は、前記一対の温度測定部の測定結果に基づいて前記一対の研磨面の温度が設定された関係になるように前記一対の冷却部を制御してもよい。これにより、制御部は、両定盤の研磨量を制御することができる。前記設定された関係は、例えば、前記一対の研磨面の温度が等しい関係、又は、前記設定された関係は、前記一対の研磨面のうち、重力方向の上側の研磨面の温度が下側の研磨面の温度よりも高い関係である。
【0014】
前記研磨装置は、前記研磨面にスラリーを供給するスラリー供給部と、前記ワークの研磨時間を測定するタイマと、を更に有し、前記制御部は、前記タイマが測定した前記研磨時間に基づいて前記スラリー供給部が供給する前記スラリーの供給量を制御してもよい。これにより、制御部は、両定盤の研磨量を制御することができる。
【0015】
前記研磨装置は、前記ワークを研磨する研磨面上に凹凸を有するパッドを更に有してもよい。かかるパッドの凹凸により、塵埃をワーク上から除去することができる。
【0016】
前記研磨装置は、化学機械研磨によって前記ワークを研磨してもよい。高精度な平坦化が要求されるCMPにおいて特に塵埃の防止や除去は必要であるからである。
【0017】
本発明の別の側面としての基板の製造方法は、基板を作成するステップと、前記基板に加工を施すステップと、を有する基板の製造方法において、前記作成ステップは、ワークをラップする仕上げステップと、前記ワークを化学機械研磨する超仕上げステップと、を有し、前記仕上げステップ及び前記超仕上げステップの少なくとも一方は、上述の研磨方法又は研磨装置を使用することを特徴とする。
【0018】
本発明の別の側面としての基板の製造方法は、前記基板を平坦化するステップを更に有する基板の製造方法において、前記作成ステップ及び前記平坦化ステップの少なくとも一方は、ワークをラップする仕上げステップと、前記ワークを化学機械研磨する超仕上げステップと、を有し、前記仕上げステップ及び前記超仕上げステップの少なくとも一方は上述の研磨方法又は研磨装置を使用することを特徴とする。これによって、基板の製造において塵埃の発生や除去を通じて高精度な研磨を提供することができる。
【0019】
本発明の別の側面としての電子機器の製造方法は、上述の基板の製造方法によって基板を製造するステップと、電子部品を製造するステップと、前記基板と前記電子部品から電子機器を製造するステップと、を有することを特徴とする。かかる電子機器の製造方法も、上述の基板の製造方法と同様の作用を奏することができる。
【0020】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高い研磨精度を有してワークの両面を同時に研磨する研磨装置及び研磨方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施例の研磨装置100について説明する。ここで、図1は、研磨装置100の概略斜視図である。研磨装置100は、ワークWの両面を同時に化学機械研磨する研磨装置であるが、本発明の研磨装置100はCMP装置以外の研磨装置、例えば、仕上げ用の研磨装置にも適用可能である。
【0023】
ワークWは、本実施例では、研磨対象である基板である。基板は、ガラス基板、シリコン基板、セラミック基板(積層基板を含む)、その他の単結晶材料からなる基板を含む。典型的な基板の形状は、円板形状、ウェハであれば円板形状にオリフラのついたもの、矩形板状形状である。基板の径又は長さは、通常、数十mm〜300mm程度である。基板の厚さは、通常、数百μm〜数十mmである。
【0024】
半導体基板には、シリコン基板や石英基板が使用される。メムス基板も半導体基板に含まれるが、シリコン基板、ガラス基板、その他の非導電材料からなる基板が多く使用される。基板は、ガラスフォトマスク基板であってもよい。セラミック基板には、配線基板としてのセラミック積層基板や磁気ヘッド基板(例えば、アルチック(AlTiC)基板)を含む。配線基板としては、その他、樹脂積層基板がある。磁気記録媒体基板としては、アルミニウム基板やガラス基板が使用される。ジャイロデバイス、加速度デバイス、弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)デバイスや光学結晶材には、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムなどの単結晶基板が使用される。
【0025】
研磨装置100は、キャリア110と、固定部材と、モータ(駆動部)130と、下定盤140と、タコジェネレータ(検出部)148と、ギアボックス(伝達機構)150と、外輪歯車158(図16に図示)と、上定盤160と、タコジェネレータ(検出部)168と、シリンダ(加圧部)170と、スラリー供給部175と、制御部180とを有する。
【0026】
図2は、3つのワークWを収納するキャリア110の分解斜視図である。図2に示すワークWは半導体基板であり、オリフラWoが形成されている。キャリア110は、ステンレス鋼(SUS)から構成される基部111から構成される。基部111は、円板形状を有し、上面112aと底面112bと、収納穴113と、外周面に設けられてキャリア110を遊星歯車として機能させる歯118とを有する。
【0027】
図1では研磨装置100は一のキャリア110を装着しているが、研磨装置100に装着されるキャリア110の数は限定されない。但し、複数のキャリア110が研磨装置100に装着される場合には一定の角度間隔で装着されることが好ましい。本実施例では4枚のキャリア110を搭載しているが、各図は便宜上そのうちの一部を示している。
【0028】
上面112aと底面112bは後述するパッド162及び142のパッド面(研磨面)162a及び142aに対向する。ワークWの底面Waは底面112bから突出し、ワークWの上面Wbは上面112aから突出し、それぞれの突出量は等しい。
【0029】
収納穴113は、貫通孔であり、ワークWを収納する。収納穴113は、キャリア110の両面(即ち、上面112a側と底面112b側)からワークWを露出する。収納穴113の数は限定されないが、本実施例では、120°間隔で回転対称に3つ配置されている。収納穴113は、上面112aと底面112bとを貫通する。各収納穴113は、略円板形状を有し、オリフラWoに対応した平面部113aを有する。なお、本実施例においては、収納穴113は、ワークWを収納する空間に接続された空間も含む概念である。
【0030】
研磨装置100は、塵埃又は微粒子による損傷からワークWを保護するために、様々な構成を採用している。第1の保護手段は、塵埃の発生を防止する手段である。第2の保護手段は、発生した塵埃からワークWを保護する手段である。まず、研磨装置100は、ワークWが基部111の収納穴113内で振動してキャリア110と衝突することを防止する手段として固定部材を設けている。固定部材は、収納穴113に配置されたワークWに接触してワークWを固定する機能を有する。固定部材はキャリア110の収納穴113に配置される。
【0031】
図3は、図2に示すキャリア110において固定部材が接着剤120である実施例の概略斜視図である。本実施例の接着剤120はアルコワックスである。接着剤120は、収納穴113においてキャリア110とワークWとの間を接着する。ワークWの中心と収納穴113の対応する中心とが一致すれば、ワークWを収納穴113に収納するとワークWの周囲に一定幅の隙間Jが形成される。
【0032】
固定部材は接着剤120に限定されず、収納穴113においてワークWに弾性力を加える弾性部材であってもよい。
【0033】
図4(a)は、キャリア110の変形例としてのキャリア110Aの平面図である。図4(b)は、図4(a)の点線で囲ったK部の部分拡大平面図である。図4(a)及び図4(b)に示すように、各収納穴113Aは、図2に示す収納穴113に凹部114が接続された形状を有する。そして、図4(a)及び図4(b)においては、弾性部材は、凹部114に係合又は部分的に挿入されたワイヤーリング120Aである。
【0034】
キャリア110Aは基部111Aと収納穴113Aを有する。本実施例では各収納穴113Aに対して一つの凹部114が接続されてそこに一つのワイヤーリング120Aが挿入されているが、収納穴113Aに複数の凹部114が接続されて各々にワイヤーリング120Aが挿入されてもよい。このように、各収納穴113Aに設けられるワイヤーリング120Aの数は一つに限定されない。各ワイヤーリング120Aは、上から見ると環状形状を有するが、楕円形状などその形状は限定されない。各ワイヤーリング120Aの紙面に垂直な方向の厚さはキャリア110Aの厚さと同一かそれよりも若干小さい。
【0035】
各凹部114は、各ワークWのオリフラWoに対向する平面部113aの中央に形成される。各凹部114は、各ワイヤーリング120Aがそこから分離しないような略円柱形状を有する空間である。もっとも凹部114の位置や寸法は限定されない。
【0036】
各ワイヤーリング120Aは各凹部114から外側に突出する。ワイヤーリング120Aの、平面部113aからの突出部121は、キャリア110Aの基部111AとワークWとの間の隙間Jに位置し、ワークWと接触して、ワークWを径方向RA外側に押圧する。
【0037】
この結果、ワークWはワイヤーリング120Aの突出部121によって径方向RAに弾性力が印加され、ワークWのオリフラWoと反対側の径方向RAの端部はキャリア110Aに押圧される。これにより、ワークWは収納穴113A内で固定される。本実施例では、ワークWは一端がワイヤーリング120Aに他端がキャリア110Aに接触して固定されるが、複数のワイヤーリング120Aを対称に配置してワイヤーリング120AのみによってワークWを固定してもよい。
【0038】
図5は、キャリア110の変形例としてのキャリア110Bと、ワークWと、固定部材の更に別の変形例としての弾性部材120Bの分解斜視図である。図5に示すように、弾性部材120Bは、収納穴113Bに対して共通に設けられた一の弾性部材である。
【0039】
キャリア110Bの基部111Bは、一つの収納穴113Bを有する。図5に示す収納穴113Bは、3つの円が部分的に交わったような形状を有し、弾性部材120Bはその3つの円が交わった部分(以下、「合流部115」と呼ぶ。)に配置される。このように弾性部材120Bは収納穴113Bに配置される。
【0040】
弾性部材120Bは、薄板三角柱の各頂点が面取りされた形状を有し、キャリア110B中央の合流部115に嵌められている。弾性部材120Bの紙面に垂直な方向の厚さはキャリア110Bの厚さと同一かそれよりも若干小さい。
【0041】
合流部115においては、キャリア110Bの3つの凸部115aが内側に向かって突出し、各凸部115aは弾性部材120Bの各面取り部122に接触してこれを押圧する。弾性部材120Bはゴムなどの弾性材料から構成され、3つの押圧部123を介して3つのワークWのオリフラWoに接触してこれを押圧する。各押圧部123は、ワークWのオリフラWoと平行で面接触する平面部であり、図2に示す平面部113aに対応する。但し、図2に示す平面部113aよりも径方向外側に隙間Jを埋めるように突出している。突出量は隙間Jの幅よりも若干大きく設定されている。
【0042】
この結果、ワークWは、弾性部材120Bの押圧部123によって径方向RA外側に付勢されて、ワークWのオリフラWoと反対側の径方向RAの端部Wcがキャリア110Bに押圧される。これにより、ワークWは収納穴113B内で固定される。本実施例では、ワークWは一端(即ち、オリフラWo)が弾性部材120Bに他端(即ち、端部Wc)がキャリア110Bの収納穴113を規定する輪郭面113bの一部113bに接触して固定される。しかし、代替的に、ワークWをキャリア110Bと接触させる代わりに、別の弾性部材がキャリア110の一部113bの位置において隙間Jを埋めるように内側に突出させてもよい。これにより、かかる別の男性部材は、ワークWのオリフラWoと反対側の径方向RAの端部Wcに接触及び押圧するようになり、ワークWはキャリア110Bと接触しなくなる。
【0043】
上述の実施例においては、固定部材はワークWに接触して収納穴113内でワークWを固定する。固定部材によって、ワークWは収納穴113内で振動しない。なお、キャリア110の高さ方向をZ方向とし、Z方向に垂直な平面をXY平面とすれば、ワークWの収納穴113内における振動とはXY平面における振動である。ワークWが振動しないのでキャリア110と衝突し、塵埃が発生することを防止することができる。
【0044】
別の実施例においては、研磨装置100は、収納穴113に配置されたワークWとキャリア110の間に位置する弾性部材を有し、ワークWは収納穴113内で振動又は移動してもよいし、しなくてもよい。ワークWが収納穴113内で振動又は移動したとしても、弾性部材がワークWをキャリア110との接触から保護するからである。
【0045】
弾性部材がワークWとキャリア110の間の隙間Jと同じ幅を有すればワークWには初期状態では付勢力は働かないが、隙間Jが弾性部材で埋められるのでワークWを収納穴113内で固定される。ワークWは、研磨面との摩擦力が加わっていずれかの方向に変位した場合に弾性部材により付勢力を受ける。ワークWは弾性部材によってキャリア110と接触しないのでワーク端部の欠けやそれによる塵埃の発生を防止することができる。
【0046】
弾性部材がワークWとキャリア110の間の隙間Jよりも大きな幅を有すれば弾性部材が収納穴113に装着された場合にワークWには初期状態で付勢力が働き、収納穴113内で固定される力が強くなる。ワークWは弾性部材によってキャリア110と接触しないのでワーク端部の欠けやそれによる塵埃の発生を防止することができる。例えば、ワークWの周りに隙間Jよりも幅の広い輪ゴムを巻いて収納穴113に挿入するなどである。
【0047】
弾性部材がワークWとキャリア110の間の隙間Jよりも小さい幅を有すればワークWには初期状態では付勢力は働かず、隙間Jは依然として存在するのでワークWは収納穴113内で移動可能となる。但し、移動してもキャリア110には衝突しないので衝突によるワーク端部の欠けや塵埃の発生を防止することができる。
【0048】
図6は、弾性部材120Cがキャリア110Cの収納穴113を規定するキャリア110の輪郭面113bの一部に固定された分解斜視図である。弾性部材120Cは、例えば、円柱形状を有し、輪郭面113bの3箇所に120°間隔で配置されて輪郭面113bに固定される。固定は、接着であってもよいし、輪郭面113bに図4に示す凹部114と同様の凹部を形成してそこに嵌め込んでもよい。
【0049】
弾性部材120Cの形状、数、間隔、寸法はワークWが収納穴113に収納可能である限り限定されない。弾性部材120Cは、キャリア110と一体であってもよい。例えば、弾性部材120Cは、四角柱や三角柱形状を有して所定間隔で配置される。あるいは、弾性部材120Cは細幅の中空円筒形状を有してもよい。本実施例では、Z方向から見た弾性部材120Cの幅は、図3に示す隙間Jの幅以下に設定される。
【0050】
しかし、これではキャリア110とワークWが固定されなくなり、後述する図23(d)に示す位置関係を維持できなくなるおそれがある。このため、例えば、ワークWの外周側面Wcに面内方向に向かう3つの穴Wcを設け、3つの弾性部材120Cを円錐形状にして穴Wcに挿入する構造であってもよい。この結果、ワークWは一定幅の隙間Jが周囲に形成されるように収納穴113に配置されると付勢力を受けないが、いずれかの方向に移動すると弾性部材120Cの円錐側面にワークWの外周側面Wcが接触する。
【0051】
図7は、弾性部材120Dを外周側面Wcの少なくとも一部に固定したワークWとキャリア110の分解斜視図である。弾性部材120Dは、例えば、円柱形状を有し、ワークWの外周側面Wcの3箇所に120°間隔で配置される。固定は、例えば、接着や弾性力である。図7は図6と弾性部材と穴の関係をワークWとキャリア110との間で逆にしている。各弾性部材120Dは、キャリア110の輪郭面113bに設けられた穴113bに挿入される。
【0052】
塵埃を事後的にワークWの両面Wa及びWbから除去してもよい。以下の実施例は、研磨中に発生した塵埃をキャリア110と研磨面との間からできるだけ早く除去する手段として、キャリア110の両面112a及び112bの少なくとも一方の面に形成される凹凸を利用している。まず、凹凸が溝として形成される実施例について説明する。
【0053】
図8は、ワークWを収納したキャリア110Dの斜視図である。キャリア110Dは、上面112aに塵埃を除去する複数の溝116を有し、溝116を有する以外は図2に示すキャリア110と同一の外形を有する。なお、図8は、図3に示す接着剤120は省略している。複数の溝116は全て一方向(Y方向)に延びている。
【0054】
図9は、キャリア110Eの平面図である。キャリア110Eは、上面112aに塵埃を除去する複数の溝116A及び116Bを有し、溝116A及び116Bを有する以外は図2に示すキャリア110と同一の外形を有する。複数の溝116Aは全て一方向(X方向)に延びており、複数の溝116Bは全て一方向(Y方向)に延びている。XY方向は直交している。各溝116A及び116Bは同一形状を有するが、異なる形状を有してもよい。
【0055】
図10は、キャリア110Fの平面図である。キャリア110Fは、上面112aに塵埃を除去する複数の溝116Cを有し、溝116Cを有する以外は図2に示すキャリア110と同一の外形を有する。複数の溝116Cは一定角度θ=30°間隔でキャリア110Fの中心111aから径方向RAに延びている。溝116Cが配置される角度間隔は30°に限定されず、また、一定角度で中心111a周りに分布しなくてもよい。更には、溝116Cが延びる中心はキャリア110Fの中心からずれていてもよい。
【0056】
図11は、キャリア110Gの平面図である。キャリア110Gは、上面112aに塵埃を除去する複数の溝116Cと116Dを有し、溝116C及び116Dを有する以外は図2に示すキャリア110と同一の外形を有する。溝116Dは、キャリア110の中心111aから一定距離の位置において、各溝116Cから分岐した一対の溝として構成される。分岐の方向は限定されないが、図11においては、分岐する側で隣接する溝116Cと平行な方向である。また、分岐点は一つに限定されないし、分岐した溝が更に分岐してもよい。
【0057】
以上のように、直線状に伸びる溝の方向は、直交座標系で一方向又は二方向に延びてもよいし、極座標系でキャリア110の中心111aあるいはその他の位置から一定の角度間隔又は不定期な角度間隔で径方向に延びてもよいし、途中で分岐してもよい。
【0058】
図12は、キャリア110Hの平面図である。キャリア110Hは、上面112aに塵埃を除去する複数の溝116Eを有し、溝116Eを有する以外は図2に示すキャリア110と同一の外形を有する。複数の溝116Eはキャリア110Hの中心111aの周りに径方向RAに一定間隔で同心円状に延びている。但し、同心円の間隔は一定でなくてもよいし、各同心円の寸法が異なってもよい。
【0059】
図13は、キャリア110Iの平面図である。キャリア110Iは、上面112aに塵埃を除去する溝116Fを有し、溝116Fを有する以外は図2に示すキャリア110と同一の外形を有する。複数の溝116Fはキャリア110Iの中心111aから螺旋状に延びている。本実施例では、螺旋はキャリア110Iの中心111aから時計回りに延びているが、反時計回りに延びてもよい。
【0060】
図14は、キャリア110Jの平面図である。キャリア110Jは、上面112aに塵埃を除去する溝116Gを有し、溝116Gを有する以外は図2に示すキャリア110と同一の外形を有する。複数の溝116Gはキャリア110Jの中心111aから渦状に延びている。本実施例では、渦はキャリア110Jの中心111aから時計回りに延びているが、反時計回りに延びてもよい。渦の間隔は一定でもよいし、一定でなくてもよい。
【0061】
以上のように、曲線状に伸びる溝の方向は、同心円状でもよいし螺旋状でも渦状でもよい。更には、二次曲線、楕円、その他の曲線状に延びてもよい。
【0062】
図15は、キャリア110Kの平面図である。キャリア110Kは、上面112aに塵埃を除去する溝116Cと116Fを有する。このように、図8乃至図15に示す溝116乃至116Gは自由に組み合わせ可能である。
【0063】
各溝116乃至116Gの幅と深さは数十nmで二等辺三角形の断面形状を有する。このように、各溝116乃至116Gは、断面V字形状を有するV字溝として形成されているが、その断面形状は限定されない。本実施例は、溝116乃至116Gを、キャリア110D乃至110Kの重力方向の上側の上面112aにのみ形成しているが、キャリア110D乃至110Kの底面112bに更に形成してもよいし、底面112bにのみ形成してもよい。
【0064】
キャリア110の両面112a及び112bの少なくとも一方の面に形成される凹凸は上述の溝でもよいが、貫通孔でもよい。図16は、キャリア110Lの平面図である。キャリア110Lは、上面112aと112bを貫通する複数の貫通孔117を有する。貫通孔117は、XY方向に一定間隔で二次元的に配置されているが、同心円状に配置されてもよいし、螺旋状、渦状に配置されてもよい。各貫通孔117は、数十nmの径を有する。貫通孔117は、塵埃を通過させて除去する。
【0065】
キャリア110の両面112a及び112bの少なくとも一方の面に形成される凹凸は、その他、両面112a及び112b上に形成される複数の突起であってもよい。
【0066】
再び図1に戻って、モータ130は、ベルト、プーリーなどの伝達機構135を介して、(DC)タコジェネレータ148を介して下定盤140を回転駆動する。タコジェネレータ148は、下定盤140の回転軸の周りに設けられ、下定盤140の回転数に対応するアナログ電圧を制御部180に出力する。
【0067】
以下、図17を参照して、ギアボックス150の原理について説明する。ここで、図17は、ギアボックス150の概略断面図である。ギアボックス150は、シャフト141の回転方向を反転させてシャフト161に伝達する。ギアボックス150は、下定盤140の回転軸であるシャフト141の周りに固定される共に上定盤160の回転軸であるシャフト161の周りにも固定される。ギアボックス150は図17にギアボックス150の原理について説明する。但し、シャフト141の回転方向を反転させてシャフト161に伝達することができる限り、ギアボックス150の構造は図17に示す構造に限定されない。
【0068】
ギアボックス150は、筐体151a及び151bと、一対の傘歯車(ベベルギア)152及び153と、3つの傘歯車を有する。なお、作図の便宜上、図17は、3つの傘歯車のうちの2つを154及び155として示し、残りの一つを省略している。
【0069】
筐体151aは、筐体151aと151bとの間に位置し、シャフト141と161が挿入される穴と、3つの傘歯車のシャフトの一端が挿入される穴を有する。なお、図17は、便宜上、筐体151aを透過して示している。筐体151bは、Z方向上側から見ると、環状を有し、3つの傘歯車のシャフトの他端が挿入される穴を有する。3つの傘歯車のシャフトの両端は筐体151a及び151bに固定されて回転しない。
【0070】
傘歯車152は、下定盤140の回転軸であるシャフト141の周りに固定されてシャフト141と共に回転する。シャフト141はモータ130による駆動力が伝達されるシャフトである。3つの傘歯車は傘歯車152に係合し、120°間隔で配置される。図17は、3つの傘歯車のうちの傘歯車154とそのシャフト154a、傘歯車155とそのシャフト155aを示している。上述したように、シャフト154a及び155aは筐体151a及び151bに固定されている。傘歯車153は3つの傘歯車に係合し、上定盤160の回転軸であるシャフト161の周りに固定されてシャフト161と共に回転する。
【0071】
傘歯車152がZ方向上向きから見て時計回りに回転すると、その手前側の側面は、図17に示すように、左方向に回転する。すると、傘歯車154の手前側の側面は、図17に示すように、下方向に回転する。これに応答して、傘歯車153の手前側の側面は、図17に示すように、右方向に回転する。同様に、傘歯車155の手前側の側面は、図17に示すように、上方向に回転する。これに応答して、傘歯車153の手前側の側面は、図17に示すように、右方向に回転する。結局、傘歯車152と153が回転する方向は逆方向となり、シャフト141に加わる駆動力は反転してシャフト161に伝達される。
【0072】
なお、図17は、反転駆動を説明する便宜上、3つの傘歯車154及び155の歯数を同一にしているが、実際には、3つの傘歯車の歯数を異ならせて選択的に傘歯車152に接触させるように構成されている。3つの傘歯車のうちいずれを傘歯車152と接触させるかは制御部180が制御することができる。この結果、ギアボックス150のギア比を変更することができる。
【0073】
この結果、モータ130の駆動力はギアボックス150を介して上定盤160に伝達され、上定盤160は下定盤140とは反対方向に回転する。タコジェネレータ168、上定盤160の回転軸の周りに設けられ、上定盤160の回転数に対応するアナログ電圧を制御部180に出力する。
【0074】
図18に示すように、下定盤140は、研磨面(パッド面)142aを有するパッド142がキャリア110側に搭載されている。上定盤160は、研磨面(パッド面)162aを有するパッド162がキャリア110側に搭載されている。
【0075】
塵埃が発生した場合に、これを事後的に除去する手段として、パッド142は、研磨中に発生した塵埃をキャリア110と研磨面との間からできるだけ早く除去する凹凸143をパッド面142aに設けている。凹凸143は、図8乃至図16に示す溝、貫通孔その他の凹凸を適用することができる。
【0076】
パッド142とパッド162は、ウレタンなどの軟らかい材質から構成され、それらは同一構造を有する。
【0077】
図19(a)は、太陽歯車156と、キャリア110と、外輪歯車158と、第1及び第2の防塵機構200及び240を示す概略断面図である。
【0078】
太陽歯車156は、本実施例では、ギアボックス150の下の下定盤140のシャフト141の周りに設けられ、シャフト141と共に回転する。但し、別の実施例では、太陽歯車156は、ギアボックス150の上の上定盤160のシャフト161の周りに設けられ、シャフト161と共に回転する。太陽歯車156は、歯156aを有する。
【0079】
キャリア110の外周には歯118が設けられており、かかる歯118はキャリア110を遊星歯車として機能させる。太陽歯車156の歯156aはキャリア110の歯118と係合する。外輪歯車158は歯158aを有し、かかる歯158aはキャリア110の歯118と係合する。太陽歯車156、遊星歯車としてのキャリア110、外輪歯車158は遊星歯車機構を構成する。
【0080】
遊星歯車機構は、太陽歯車(Sun Gear)の周りを一又は複数の遊星歯車(Planetary Gear)が自転しつつ公転する構造を有する減速又は増速機構である。遊星歯車機構は、少ない段数で大きな速度比が得られ、大きなトルクを伝達でき、入出力軸を同軸に配置できるなどの特徴を有する。
【0081】
図1に示す研磨装置100では、太陽歯車としてのギアボックス150は回転し、その周りを遊星歯車としてのキャリア110が自転しながら公転し、外輪歯車158は固定される。
【0082】
第1の防塵機構200は、太陽歯車156の歯156aとキャリア110の歯118との係合によって発生する塵埃がワークWとパッド面(研磨面)142a及び162aのそれぞれとの間に侵入することを防止する。
【0083】
図19(b)は、第1防塵機構200と第2の防塵機構240の概観斜視図である。
【0084】
第1の防塵機構200は、第1のブロック210と、ワイパー(第1の弾性部材)220と、流体供給ノズル230とを有する。
【0085】
第1のブロック210は、環状形状を有し、シャフト161の周りにシャフト161に対して静止するように配置される。但し、第1のブロック210がシャフト161に対して静止するか上定盤160と共に回転するかは選択的である。第1のブロック210は、凸部212a及び212bと、溝212cと、凸部215と、内周面216と、外周面217とを有する。
【0086】
凸部212a及び212bは同じ高さを有するが、流体FがワークW上に進入しないように太陽歯車156から見て外側の凸部212bの方が内側の凸部212aよりも高く構成されてもよい。溝212cには一定間隔で貫通孔213が形成されている。貫通孔213は流体Fをキャリア110に供給(滴下や吹き付け)するのに使用される。凸部215は歯156aの近傍に配置される。内周面216と外周面217は上から見るとシャフト141と同心円状に形成される。
【0087】
ワイパー220は、太陽歯車156の歯156aとキャリア110の中心111aとの間において、第1のブロック210の外周面217の下部に周方向Mに亘ってシャフト141と同心円状に取り付けられている。ワイパー220は、ゴムなどの弾性材料から構成され、キャリア110の上面112aに接触位置112aにおいて接触する。接触位置112aは、Z方向上側から見ると、太陽歯車156(又は太陽歯車156と接触するキャリア110の歯118)とキャリア110の収納穴113との間に位置する。ワイパー220は、キャリア110の歯118と太陽歯車156の歯156aとの係合によって発生する塵埃がキャリア110の上面112aの接触位置112aよりもキャリア110の内側に移動することを防止する。
【0088】
流体供給ノズル230は、液体(水など)や気体(空気など)などの流体Fを第1のブロック210の溝212cに供給する管である。流体Fが液体であれば、貫通孔213から流体Fがキャリア110の上面112a上に滴下されて塵埃を洗い流す。流体Fが気体であれば、貫通孔213から流体Fがキャリア110の上面112a上に吹き付けられて塵埃を吹き飛ばす。
【0089】
流体供給ノズル230は、第1のブロック210と同様に、シャフト161の周りにシャフト161に対して静止するように配置される。流体供給ノズル230が回転しないので、その一端を、例えば、水道の蛇口に接続することも容易になる。
【0090】
必要があれば、シャフト161と同心円上に複数の流体供給ノズル230が配置される。流体供給ノズル230と貫通孔213は、キャリア110の歯118とワイパー220との間に流体Fを供給する第1の流体供給部を構成する。
【0091】
第2の防塵機構240は、キャリア110の歯118と外輪歯車158の歯158aとの係合によって発生する塵埃がワークWとパッド面(研磨面)142a及び162aのそれぞれとの間に侵入することを防止する。
【0092】
第2の防塵機構240は、第2のブロック250と、ワイパー(第2の弾性部材)260と、流体供給ノズル270とを有する。
【0093】
第2のブロック250は、環状形状を有し、シャフト161の周りにシャフト161に対して静止するように配置される。但し、第2のブロック250がシャフト161に対して静止するか上定盤160と共に回転するかは選択的である。第2のブロック250は、凸部252a及び252bと、溝252cと、凸部255と、内周面256と、外周面257とを有する。
【0094】
凸部252a及び252bは同じ高さを有するが、流体FがワークW上に進入しないように太陽歯車156から見て内側の凸部252aの方が外側の凸部252bよりも高く構成されてもよい。溝252cには一定間隔で貫通孔253が形成されている。貫通孔253は流体Fをキャリア110に供給(滴下又は吹き付け)するのに使用される。凸部255は歯158aの近傍に配置される。内周面256と外周面257は上から見るとシャフト141と同心円状に形成される。
【0095】
ワイパー260は、外輪歯車158の歯158aとキャリア110の中心111aとの間において、第2のブロック250の内周面256の下部に周方向Mに亘ってシャフト141と同心円状に取り付けられている。ワイパー260は、ゴムなどの弾性材料から構成され、キャリア110の上面112aに接触位置112aにおいて接触する。接触位置112aは、Z方向上側から見ると、外輪歯車158(又は外輪歯車158と接触するキャリア110の歯118)とキャリア110の収納穴113との間に位置する。ワイパー260は、キャリア110の歯118と外輪歯車158の歯158aとの係合によって発生する塵埃がキャリア110の上面112aの接触位置112aよりもキャリア110の内側に移動することを防止する。本実施例では、接触位置112aと112aは、キャリア110の中心111aからの距離がそれぞれ等しい。
【0096】
流体供給ノズル270は、流体Fを第2のブロック250の溝252cに供給する管である。流体Fが液体であれば、貫通孔253から流体Fがキャリア110の上面112a上に滴下されて塵埃を洗い流す。流体Fが気体であれば、貫通孔253から流体Fがキャリア110の上面112a上に吹き付けられて塵埃を吹き飛ばす。
【0097】
流体供給ノズル270は、第2のブロック250と同様に、シャフト161の周りにシャフト161に対して静止するように配置される。流体供給ノズル270が回転しないので、その一端を、例えば、水道の蛇口に接続することも容易になる。
【0098】
必要があれば、シャフト161と同心円上に複数の流体供給ノズル270が配置される。流体供給ノズル270と貫通孔253は、キャリア110の歯118とワイパー220との間に流体Fを供給する第2の流体供給部を構成する。
【0099】
このように、第1及び第2の防塵機構200及び240は、遊星歯車機構において発生する塵埃からワークWを保護する。
【0100】
再び図1に戻って、シリンダ170は、上下定盤140及び160の間でワークWに荷重又は加圧力を加えるエアシリンダである。スラリー供給部175は、スラリー(研磨剤)を上定盤160の上面160aに滴下する。上定盤160及びパッド162にはそれを貫通するように複数のZ方向に延びる貫通孔163が設けられており、スラリーSは貫通孔163を介してパッド162の研磨面に供給される。その後、スラリーSは下定盤140のパッド142に落下してその研磨面142aに供給される。本実施例のスラリーSは酸化セリウム系のスラリーである。なお、本実施例の研磨装置100がラッピング装置である場合には、スラリーSは水溶液に研磨粒子が拡散したものである。
【0101】
制御部180は、モータ130、ギアボックス150、タコジェネレータ148及び168、シリンダ170、及び、スラリー供給部175に接続される。また、制御部180は、タコジェネレータ148及び168の出力に応じてモータ130に流す駆動電流、ギアボックス150のギア比、シリンダ170が加える荷重、スラリー供給部175が供給するスラリーの供給量を制御する。
【0102】
制御部180は、CPUやMPUを含み、また、本実施例の研磨方法に必要なプログラムやデータを格納するメモリ182と、時間を計数するタイマ184を含んでいる。
【0103】
以下、図20乃至図24を参照して、研磨装置100を含む研磨システム300とその動作について説明する。ここで、図20は、研磨システム300の概略ブロック図である。研磨システム300は、組立部310、ローダ320と、研磨装置100と、ロボットアーム330と、直後洗浄装置340と、アンローダ350と、ストッカ360と、本洗浄装置370とを有する。
【0104】
組立部310は、ワークWをキャリア110に搭載し、固定部材を介してワークWをキャリア110内の収納穴113に固定する。ローダ320は、ワークWが収納されたキャリア110を研磨装置100に装着する。ロボットアーム330は、研磨後に、研磨装置100からキャリア110を取り外し、直後洗浄装置340にキャリア110を搭載する。直後洗浄装置340は、研磨直後のキャリア110を大まかに洗浄する。アンローダ350は、直後洗浄(又は仮洗浄)後に、直後洗浄装置340から本洗浄装置370に搬送する。
【0105】
ストッカ360は、本洗浄前にワークWが乾燥しないように、純水又は水溶液にキャリア110を収納する。本洗浄装置370は、直後洗浄装置340によって簡単に洗浄されたキャリア110を本格的に洗浄する。本洗浄装置370は、弗酸、超臨界流体、超音波洗浄などを使用する。
【0106】
以下、図21を参照して、研磨システム300による研磨方法について説明する。ここで、図21は、研磨システム300の動作を説明するためのフローチャートである。
【0107】
まず、研磨準備を行う(ステップ1100)。ステップ1100の研磨準備は固定部材が図3に示す接着剤120として構成された例について説明する。図22は、図21に示すステップ1100の詳細を説明するためのフローチャートである。図23(a)乃至図23(d)は、図22の各工程を示す概略断面図である。
【0108】
まず、図23(a)に示すように、キャリア110の底面112bに収納穴113を露出するスペーサ10を接触させる(ステップ1102)。スペーサ10とキャリア110は両者が位置決めされた状態で(例えば、図23(a)に示す両者の端部が一致した状態で)接触される。必要があれば、両者は仮止めされてもよい。また、好ましくは、リング部材18を設け、リング部材18の内部にスペーサ10とキャリア110を挿入することによってZ方向に垂直な方向で位置決めしてもよい。更に、スペーサ10の代わりに、スペーサ10と同様の段差を有する図24に示すような容器を使用してもよい。本実施例では、かかる容器も含めて「スペーサ」と呼ぶものとする。
【0109】
スペーサ10は、キャリア110と同一の外形(例えば、径N)を有し、キャリア110と同様に基部11と貫通穴13をする。貫通穴13は収納穴113とほぼ同一形状で収納穴よりも若干大きい。スペーサ10は、厚さhを有し、厚さhを有するキャリア110とは異なる。通常はh<hである。厚さhは、後述するように、ワークWがキャリア110の底面112bから突出する長さである。
【0110】
なお、スペーサ10Aは、スペーサ10の基部11に対応する段差部11Aを含む基部11Aを有する。スペーサ10Aは、キャリア110の外形に略等しい径N、厚さhの収納部15と、貫通穴13と同一の寸法を有する凹部13Aとを有する。また、リング部材18に相当し、V×Vの寸法を有する壁部11Aも有する。これにより、キャリア110のスペーサ10Aに対する位置決めが容易になる。
【0111】
ステップ1102においては、スペーサ10の貫通穴13を下からV方向から見るとキャリア110の収納穴113がスペーサ10に形成された貫通穴13から完全に見えるように、換言すれば、収納穴113がスペーサ10の基部11によって遮蔽されないように配置される。スペーサ10Aにおいても収納穴113がスペーサ10Aの段差部11Aによって遮蔽されないように配置される。
【0112】
なお、スペーサ10の形状はこれに限定されず、厚さhを有し、少なくとも全ての収納穴113を露出する貫通穴を有すれば外形はキャリア110と同一でなくてもよい。
【0113】
次に、図23(b)に示すように、この状態で、キャリア110の収納穴113にワークWを挿入し、ワークWの底面Waとスペーサ10の底面10aが同一平面Uを構成するようにすると共に、ワークWの上面Wb側がキャリア110よりも突出するように配置する(ステップ1104)。スペーサ10Aの場合には凹部13Aの底面と段差部11Aの点線で示す底面は同一平面を構成するため、ワークWを凹部13Aに部分的に収納すればこの条件は満足される。
【0114】
ワークWがキャリア110の上面112aよりも突出する長さはhであり、底面112bから突出する長さと等しい。これは、本実施例では、ワークWの両面Wa及びWbのZ方向の研磨量を同一に見込んでいるからである。
【0115】
ステップ1104は、例えば、水平台に図23(a)に示す構造体を載置し、上からワークWをキャリア110の収納穴113に挿入することによって形成することができる。本実施例では水平台はホットプレートである。あるいはスペーサ10Aを加熱してもよい。図23(b)は、便宜上、一のワークWのみを示している。なお、図23(b)に示す状態は、ワークWをキャリア110の収納穴113に挿入した後でスペーサ10をキャリア110の一面に接触させて形成してもよい。あるいは、ワークWをキャリア110の収納穴113に挿入した後でスペーサ10Aにキャリア110を収納することによって形成してもよい。
【0116】
次に、ワークWの反対面(即ち、上面Wb)側においてワークWとキャリア110との隙間Jの少なくとも一部に接着剤120を塗布する(ステップ1106)。ここで、「隙間Jの少なくとも一部」とは、隙間Jの全周に亘って接着剤120を充填しなくても足りる趣旨である。
【0117】
ディスペンサ20で接着剤120を塗布する場合、図23(c)に示すように、接着剤120が正確に隙間J内のみに配置されなくてもよく、一部がワークWの上面Wb上にかかっていてもよい。接着剤120は軟らかいので研磨によって除去されるからである。なお、図23(c)に示す接着剤120の量や位置は例示である。
【0118】
上述したように、本実施例の接着剤120はアルコワックスである。接着剤120を図23(b)に示す構造体の平面Uが図示しないホットプレートの上面になるように配置して接着剤120を滴下すると、接着剤120はホットプレートで加熱されるために隙間Jに毛管現象で浸透する。そして、接着剤120は常温に戻ると固化する。接着剤120が液状になるため、本実施例では、図23(c)に示すような隆起がワークWの上面Wbに形成されることはあまりない。なお、貫通穴13にあるワークWとスペーサ10の基部11又は凹部13AにあるワークWとスペーサ10Aの段差部11Aとの間は隙間Jよりも離れているため接着剤120によって接着されない。
【0119】
次に、図23(c)に示す構造体のキャリア110からスペーサ10を分離する(ステップ1108)。この状態を図23(d)に示す。
【0120】
ステップ1102乃至1108は組立部310において行われる。
【0121】
次に、ローダ320が、ワークWが上面112a及び底面112bから突出したキャリア110を研磨装置100に装着する(ステップ1110)。
【0122】
本実施例のように、ワークWとキャリア110とを固定することは、従来の両面研磨ラッピング装置には見られない特徴である。従来の両面ラッピング装置では通常は図23(b)に示すようなスペーサ10は使用されず、ワークWとキャリア110との間の隙間Jも接着されない。このため、ワークWを収納したキャリア110がラッピング装置に搭載されると、キャリア110の一方の側(例えば、上面112a側)のみからワークWが突出し、ワークWの底面Waとキャリア110の底面112bは同一平面を構成することになる。
【0123】
両面ラッピング装置においては、上下の研磨面を有するパッドは金属製やセラミック製から構成される。このため、ラッピング装置の定盤はハード定盤と呼ばれる場合もある。ハード定盤が上下からワークWを押圧する時にワークWとキャリア110が固定されずにキャリア110が移動可能な構成であるとワークWのみを研磨することができる。従って、図23(d)に示す構造体を形成する必要がない。
【0124】
一方、CMP装置においては、上下の研磨面を有するパッドは軟らかいウレタンなどの材料から構成される。このため、ラッピング装置の定盤はソフト定盤と呼ばれる場合もある。ソフト定盤が上下からワークWを押圧する場合、ワークWの底面Waとキャリア110の底面112bが同一平面を構成すると、ワークWのみならずキャリア110を研磨し、また、吸着するおそれがある。このため、図23(d)に示す構造が有効である。図23(d)に示す構造は両面CMP装置にも両面ラッピング装置にも適用可能な構造である。
【0125】
次に、研磨装置100による研磨を行う(ステップ1200)。図25は、図21に示すステップ1200の詳細を説明するためのフローチャートであり、図26は、そのタイミングチャートである。図26において、縦軸は下定盤140の回転数(rpm)、シリンダ170が加える荷重(kgf)、摩擦力(kgf)である。横軸は時間である。但し、本実施例では、縦軸の摩擦力(kgf)は、摩擦力を表す電流値(A)で代用している。
【0126】
まず、制御部180は、スラリー供給部175からスラリーSを上定盤160の上面に供給を開始する(ステップ1202)。スラリーSの供給量は、予めシミュレーション又は実験によって適量が求められてメモリ182に格納されており、制御部180は格納された供給量のスラリーSを滴下するようにスラリー供給部175を制御する。
【0127】
スラリー供給部175によるスラリーSの供給量が増加すると上定盤160と下定盤140による研磨量が等しい割合だけ増加する。このため、研磨量を全体として大きくする場合に制御部180はスラリーSの供給量を増加する。また、研磨量を全体として小さくする場合に制御部180はスラリーSの供給量を減少する。即ち、本実施例では、上定盤160と下定盤140による研磨量に差があるときにスラリー供給部175による供給量制御ではこの差を解消することができない。
【0128】
また、ステップ1202と同時に、制御部180は、モータ130に電流を供給して下定盤140を回転する(ステップ1204)。
【0129】
次に、制御部180は、下定盤140の回転数が5rpmであるかどうかを判断する(ステップ1206)。制御部180は、下定盤140の回転数を表すタコジェネレータ148の出力と、メモリ182に格納された5rpmの値を比較することによってステップ1206の判断を行う。なお、5rpmは低速回転の単なる例示であり、本発明はこの回転数に限定されるものではない。
【0130】
次に、制御部180は、下定盤140の回転数が5rpmであると判断すると(ステップ1206)、下定盤140の回転数が一定になるようにモータ130に供給する電流を制御する(ステップ1208)。
【0131】
ワークWが研磨されるにつれてワークWの被研磨面(即ち、底面Waと上面Wb)は平坦になっていき、研磨面(パッド面)との密着性とそれに伴う摩擦力が増加する。このため、モータ130に供給する電流値が一定であると回転数は徐々に減少する。従って、ステップ1208においては、制御部180は、タコジェネレータ148の出力が一定となるようにモータ130に供給する電流値を徐々に増加する。制御部180は、下定盤140の回転数が5rpmになるまでかかる制御を継続する。
【0132】
次に、制御部180は、上定盤160の回転数が5rpmであるかどうかを判断する(ステップ1210)。制御部180は、上定盤160の回転数を表すタコジェネレータ168の出力と、メモリ182に格納された5rpmの値を比較することによってステップ1210の判断を行う。
【0133】
本実施例では、上下の研磨面は同一の研磨能力を有するから、回転数を同一にしないと上下の研磨面で研磨量に差が生じてしまう。このため、制御部180は、上定盤160の回転数が5rpmではないと判断した場合には(ステップ1210)、ギアボックス150を制御してギア比(伝達比率)を変更する(ステップ1212)。その後、処理はステップ1208と1210の間に帰還する。
【0134】
一方、制御部180は、上定盤160の回転数が5rpmであると判断した場合には(ステップ1210)、シリンダ170による荷重を緩やかに増加する(ステップ1214)。
【0135】
次に、制御部180は、シリンダ170による荷重が3kgfであるかどうかを判断する(ステップ1216)。制御部180は、シリンダ170による荷重が3kgfであると判断すると(ステップ1216)、モータ130に流す電流を増加して下定盤140の回転数を増加する(ステップ1218)。制御部180は、シリンダ170による荷重が3kgfではあると判断するまでかかる制御を継続する。
【0136】
次に、制御部180は、下定盤140の回転数が30rpmであるかどうかを判断する(ステップ1220)。制御部180は、下定盤140の回転数を表すタコジェネレータ148の出力と、メモリ182に格納された30rpmの値を比較することによってステップ1220の判断を行う。なお、30rpmは通常の研磨時の速度の単なる例示であり、本発明はかかる回転数に限定されない。
【0137】
制御部180は、下定盤140の回転数が30rpmであると判断すると(ステップ1220)、下定盤140の回転数が一定になるようにモータ130に供給する電流を制御する(ステップ1222)。
【0138】
ワークWが研磨されるにつれてワークWの被研磨面(即ち、底面Waと上面Wb)は平坦になっていき、研磨面(パッド面)との密着性とそれに伴う摩擦力が増加する。このため、モータ130に供給する電流値が一定であると回転数は徐々に減少する。従って、ステップ1222においては、制御部180は、タコジェネレータ148の出力が一定となるようにモータ130に供給する電流値を徐々に増加する。制御部180は、下定盤140の回転数は30rpmでないと判断した場合には(ステップ1220)、ステップ1220に帰還する。
【0139】
次に、制御部180は、上定盤160の回転数が30rpmであるかどうかを判断する(ステップ1224)。制御部180は、上定盤160の回転数を表すタコジェネレータ168の出力と、メモリ182に格納された30rpmの値を比較することによってステップ1224の判断を行う。
【0140】
本実施例では、上下の研磨面142a及び162aは同一の研磨能力を有するから、回転数を同一にしないと上下の研磨面142a及び162aで研磨量に差が生じてしまう。このため、制御部180は、上定盤160の回転数が30rpmではないと判断した場合には(ステップ1224)、ギアボックス150を制御してギア比を変更する(ステップ1226)。その後、処理はステップ1224に帰還する。
【0141】
一方、制御部180は、上定盤160の回転数が30rpmであると判断した場合には(ステップ1224)、シリンダ170による荷重を急激に増加する(ステップ1228)。
【0142】
次に、制御部180は、シリンダ170による荷重が30kgfであるかどうかを判断する(ステップ1230)。制御部180は、シリンダ170による荷重が30kgfであると判断すると(ステップ1230)、シリンダ170による荷重を維持する(ステップ1232)。制御部180は、シリンダ170による荷重が30kgfであると判断するまでこの制御を継続する。これにより、ワークWの両面WaとWbの(本格的な)研磨が同時になされる。
【0143】
次に、制御部180は、モータ130に供給する電流値が閾値を超えたかどうかを判断する(ステップ1234)。上述したように、研磨が進むにつれてワークWと研磨面との間の摩擦力は上昇し、モータ130に供給される電流値は上昇する。このため、モータ130に供給される電流値は摩擦力を表している。閾値は予めメモリ182に格納されている。閾値は、摩擦力が上昇することによりワークWが収納穴113内で振動し、その影響が無視できなくなる臨界点よりも下に設定される。制御部180は、モータ130に供給される電流値を監視することによってワークWが振動してキャリア110と衝突して塵埃を発生することを防止することができる。
【0144】
電流値の代わりに、制御部180はトルクセンサ190a及び190bを使用してもよい。トルクセンサ190aは、例えば、パッド142の適当な位置に貼り付けられて、パッド142とワークWの底面Waとの間の摩擦力を直接的に検出する。トルクセンサ190bは、例えば、パッド162の適当な位置に貼り付けられて、パッド162とワークWの上面Wbとの間の摩擦力を検出する。但し、本実施例では、電流値を監視しているのでトルクセンサ190a及び190b歯不要である。
【0145】
制御部180は、摩擦力(即ち、モータ130に供給される電流値又はトルクセンサの出力値)が閾値を超えたと判断すると(ステップ1234)、シリンダ170による荷重を急激に低下する(ステップ1236)。但し、荷重を0にはしない。制御部180は、摩擦力が閾値を超えるまでかかる制御を継続する。
【0146】
ステップ1234で下定盤140のパッド142のパッド面142aとワークWの底面Waとの間の摩擦力が閾値を超えたということは、ワークWの底面Waの表面粗さが目標範囲内に入ったことを意味する。しかし、定盤140及び160間で研磨量に差が発生する場合がある。この場合には、ワークWの底面Waの表面粗さが目標範囲内に入っていてもワークWの上面Wbの表面粗さWbが目標範囲内に入っていないおそれがある。
【0147】
そこで、制御部180は、シリンダ170による荷重が10kgfであるかどうかを判断する(ステップ1238)。「10kgf」は、研磨が可能であるがワークWが振動して破損しない荷重範囲から選択される。かかる荷重範囲は、実験又はシミュレーションから取得することができる。本実施例では、かかる荷重範囲は約10kgf乃至約15kgfである。
【0148】
制御部180は、シリンダ170による荷重が10kgfであると判断すると(ステップ1238)、上下定盤140及び160の回転数を変更せずに所定時間Hが経過するまでこの状態を維持する(ステップ1240、1242)。所定時間Hは、予めシミュレーション又は実験により求められてメモリ182に格納されており、所定時間はタイマ184が計数する。この結果、ワークWの上下定盤140と140との間の研磨量の差を解消することができる。即ち、ワークWの底面Waの表面粗さが既に目標範囲に入っているため、所定時間Hにおいて、ワークWの上面Wbの表面粗さが既に目標範囲に入る。制御部180はシリンダ170による荷重が10kgfであると判断するまでかかる処理を継続する。
【0149】
本実施例では、荷重を変更しているが、ギア比を変更して上下定盤140及び160の回転数を変更してもよい。あるいは、後述するように、上定盤160にもモータを取り付けた場合にはモータに流す電流を制御してその回転数を変更してもよい。
【0150】
制御部180は、所定時間Hが経過したと判断すると(ステップ1242)、モータ130に供給する電流を急激に0にすると共に(ステップ1244)、シリンダ170による荷重を急激に0にする(ステップ1246)。本実施例によれば、塵埃を発生せずに、ワークWの両面Wa及びWbの表面粗さがRa5nm以下に研磨することができる。
【0151】
なお、図25において、〔1〕、〔2〕、〔3〕はそれぞれ例示的に1分、2分、3分を表している。制御部180は、タイマ184を参照して、ステップ1216までが1分で終了しない場合にはエラーメッセージを図示しない表示部に表示してもよい。同様に、制御部180は、タイマ184を参照して、ステップ1234までがその後の2分で終了しない場合にはエラーメッセージを図示しない表示部に表示してもよい。更に、制御部180は、タイマ184を参照して、ステップ1246までがその後の3分で終了しない場合にはエラーメッセージを図示しない表示部に表示してもよい。この場合、制御部180は、次回のスラリーSの供給量を調節するなどして対応する。
【0152】
ステップ1210、1212、1224、1226では、下定盤140と上定盤160の回転数が同一になるようにギアボックス150のギア比を制御している。しかし、両面研磨においては、たとえ、上下定盤140及び160の回転数とパッド142及び162の構造を同一にしても、重力などの環境要因で恒常的に研磨量差が同じ傾向で発生する場合がある。例えば、重力により、荷重やスラリー量が下定盤140における研磨と上定盤160における研磨とで不均衡に働く場合である。
【0153】
予めシミュレーションや実験により、研磨量差が分かっていればその差に比例した回転数差を上下定盤140及び160に設定してもよい。例えば、下定盤140のパッド142による研磨量が上定盤160のパッド162による研磨量よりも大きい場合には、下定盤140の回転数Rを上定盤160の回転数Rよりも小さくするなどである(R<R)。但し、両面研磨では、一方の研磨面を研磨して他方の研磨面を研磨しないことはできないため、ある時刻で両面研磨を同時に終了した場合に両面の研磨量が等しくなることが必要である。このため、単位時間当たりの研磨量が上下定盤140及び160の間で等しくなるようにRとRを設定することが好ましい。
【0154】
図26では、摩擦力が閾値を超えた場合に、制御部180は両定盤の回転数を維持したままシリンダ170による荷重を下げている。しかし、別の実施例では、制御部180は、荷重を一定にして定盤の回転数、及び/又は、ギアボックス150のギア比、及び/又はスラリー供給部175によるスラリーSの供給量を変更してもよい。更に、所定時間Hは必ず設けられるものではなく、両定盤140及び160による研磨量の差が小さければ設けられない場合もある。あるいは、両定盤140及び160による研磨量が大きい場合でも各部の調節によって予め研磨量差を解消してもよい。例えば、研磨量が2倍異なる場合、ギア比を1:2に設定したり、一対の研磨面の温度を異ならせたりなどして研磨量差を予め解消するようにしてもよい。
【0155】
また、図1に示す研磨装置100は、モータ130を下定盤140及び上定盤160の駆動に共通に使用しているが、各定盤にモータを設けてもよい。図27は、研磨装置100Aのブロック図である。図27において、図1と同一の部材には同一の参照符号を付して説明は省略する。
【0156】
研磨装置100Aは、タコジェネレータ168に伝達機構135Aを介してモータ130Aが接続されている。モータ130Aはモータ130と同一の構造を有し、伝達機構135Aは伝達機構135と同一の構造を有する。シャフト141は、ギアボックス150を有さず、シャフト141に加わる駆動力をシャフト161に伝達しないため、制御部180はギア比を制御しない。但し、シャフト141の外周に太陽歯車156が設けられている。上定盤160はモータ130Aのみから駆動力を受ける。
【0157】
研磨装置100Aは、制御部180に接続されている一対の温度測定部192a及び190bと、制御部180に接続されている一対の冷却部195aと195bとを有する。
【0158】
温度測定部192aは研磨面142aの温度を測定する。但し、下定盤140又はパッド142の温度を測定し、その測定結果に必要な演算を加えて若しくは加えないで研磨面142aの温度を取得してもよい。温度測定部192bは研磨面142aの温度を測定する。但し、上定盤160又はパッド162の温度を測定し、その測定結果に必要な演算を加えて若しくは加えないで研磨面162aの温度を取得してもよい。冷却部195aは研磨面142aを冷却し、冷却部195bは研磨面142aを冷却する。
【0159】
制御部180は、一対の温度測定部192a及び190bの測定結果に基づいて一対の冷却部195a及び195bのそれぞれによる冷却を制御する。研磨量は研磨面の温度に依存する。例えば、27°に制御された研磨面の研磨量は25°に制御された研磨面の研磨量よりも大きい。このため、研磨時には研磨面の温度が変化しないように制御される。
【0160】
図25に示すフローチャートのように、上下の研磨面で研磨状態が等しいとみなせる場合には、一対の温度測定部192a及び190bが測定する温度が等しくなるように制御部180は一対の冷却部195aと195bによる冷却を制御する。
【0161】
一方、予めシミュレーションや実験により、両研磨面における研磨量差が分かっていればその差に比例した温度差を上下定盤140及び160に設定してもよい。例えば、下定盤140のパッド142による研磨量が上定盤160のパッド162による研磨量よりも大きい場合には、下定盤140の研磨面142aの温度Tを上定盤160の研磨面162aの温度Tよりも小さくするなどである(T<T)。但し、両面研磨では一方の研磨面を研磨して他方の研磨面を研磨しないことはできないため、ある時刻で両面研磨を同時に終了した場合に両面の研磨量が等しくなることが必要である。このため、単位時間当たりの研磨量が上下定盤140及び160の間で等しくなるようにTとTが設定することが好ましい。
【0162】
研磨装置100Aにおいては、図26に示すグラフに上定盤160の回転数と摩擦力を表す線が加わる。モータ130及び130Aに供給される電流値は摩擦力を表すから、制御部180は、各摩擦力が閾値を超えたかどうかを判断し、超えたと判断した場合には超えた方の定盤の回転数をゼロにする。もちろん、上述のように、制御部180は、温度や荷重を制御してもよい。
【0163】
研磨が終了すると、ロボットアーム330が、研磨装置100から直後洗浄装置340にキャリア110を搬送し装着する。その後、直後洗浄装置340が直後洗浄を行う(ステップ1300)。直後洗浄装置340は、スラリーSの代わりに純水を使用する以外は、研磨装置100と同様な構造を有する装置である。このため、研磨装置100からキャリア110を取り外して直後洗浄装置340に装着するだけでワークWの直後洗浄が行えて便宜である。
【0164】
直後洗浄が終了すると、アンローダ350が、直後洗浄装置340からストッカ360に搬送し、その後、本洗浄装置370がストッカ360をそのまま使用して、又は、ストッカ360から別の容器にキャリア110を移し替えて洗浄する(ステップ1400)。本洗浄装置370は、弗酸を貯水した水槽にキャリア110を装着するだけでワークWの本洗浄が行える。弗酸の代わりに、超臨界流体、超音波洗浄などを使用してもよい。キャリア110を搬送するだけでキャリア110からワークWを取り外す必要がないので作業性が向上する。
【0165】
以下、図28乃至図31を参照して電子部品の製造方法について説明する。ここでは、メムスセンサ(電子機器)の製造方法について説明する。図28は、メムスセンサ400の概略断面図である。メムスセンサ400は、回路基板410と、一対のガラス基板420a及び420bと、メムスチップ(電子部品)430と、配線部440及び442を有する。
【0166】
メムスセンサ400は、メムスチップ430の両側に一対のガラス基板420a及び420bを接合しており、ガラス基板420a及び420bのメムスチップ430に対向する面421a及び421bにはRa5nm程度の平坦度が要求される。この時、ガラス基板420a及び420bのメムスチップ430に対向する面421a及び421bにのみ平坦化加工を施すことも考えられるが、ガラス基板420a及び420bの表裏面を区別しない方が製造は容易となる。そして、ガラス基板420a及び420bの両面を平坦化する場合、両面同時に平坦化する方がスループットが向上するために好ましい。このため、本実施例では、上述のワークWは、ガラス基板420a及び420bである。ガラス基板420aと420bは同一であってもよいし異なってもよい。
【0167】
図29は、メムスセンサ400の製造方法を説明するためのフローチャートである。なお、ステップ2100乃至2300の時間的先後は問わない。
【0168】
まず、回路基板410を周知の技術を利用して製造する(ステップ2100)。回路基板410は配線パターン412を表面に有する。
【0169】
次に、ガラス基板420a及び420bを製造する(ステップ2200)。図30は、ステップ2200の詳細を説明するためのフローチャートである。図31は、ステップ2210の詳細を説明するためのフローチャートで、図32は、ステップ2230の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0170】
まず、ガラス基板420a及び420bの基体422を作成する(ステップ2210)。基体422は円板形状を有し、両面が平坦化されているものであり、ガラス基板420a及び420bに共通のものである。基体422の作成においては、まず、母材(インゴット)から基体422用のブロックを切り出して所望の形状(四角形、円形などに)成形する(ステップ2212)。次に、基体422の両面に仕上げ加工(ラッピング)を施す(ステップ2214)。次に、基体422の両面に超仕上げ加工を施す(ステップ2216)。これにより、両面が表面粗さRa5nmに平坦化された基体422が形成される。基体422は、単に、円板形状を有するガラス基板である。
【0171】
次に、基体422を(三次元)加工する(ステップ2220)。本実施例では、基体422に、配線用の複数の貫通孔424を形成すると共に貫通孔424に導電体426を充填する。ステップ2220においては、貫通孔424の形成により、バリが発生し、導電体426の充填により、オーバーシュートにより残留物が両面に残る。この結果、基体422の両面の平坦度は損なわれる。
【0172】
次に、加工された基体422を平坦化する(ステップ2230)。まず、基体422の両面に仕上げ加工(ラッピング)を施す(ステップ2232)。次に、基体422の両面に超仕上げ加工を施す(ステップ2234)。これにより、両面が表面粗さRa5nmに平坦化される。なお、ガラス基板の代わりにシリコン基板を使用する場合にはステップ2230が省略される場合がある。
【0173】
次に、基体422の表面にも配線部428を形成する。貫通孔424の位置や導電体426及び428の位置によってガラス基板420aと420bは異なる場合がある。以上の工程により、一対の平坦なガラス基板420a及び420bが形成される。
【0174】
次に、図33に示すメムスチップ430を製造する(ステップ2300)。メムスチップ430は、重り432と、梁434と、壁部432と、配線部438と、を有する。図28は図33におけるAA断面に対応する。
【0175】
次に、メムスセンサ400を製造する(ステップ2400)。ここでは、一対のガラス基板420a及び420bの導電体426とメムスチップ430の配線部438とを接続する。また、メムスチップ430の壁部432の両側に一対のガラス基板420a及び420bを陽極接合してメムスチップ430を真空封止する。
【0176】
上述の研磨方法や研磨装置はステップ2214、2216、2232、2234のいずれかに適用することができる。基板の製造において塵埃の発生や除去を通じて高精度な研磨を提供することができ、高精度な研磨処理を提供することができる。
【0177】
もちろん上述の研磨方法や研磨装置を適用する工程は、基板の種類によっても異なる。例えば、パターンドメディアなどの磁気記録媒体の場合には磁性体埋め込み後の平坦化工程、セラミック基板(積層基板)においては配線を積み上げ焼結した後の仕上げ工程に適用可能である。
【0178】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で様々な変形及び変更が可能である。
【0179】
本発明は更に以下の事項を開示する。
【0180】
(付記1) ワークの両面を同時に研磨する研磨装置において、
それぞれが前記ワークに接触する研磨面を有して互いに反対方向に回転する一対の定盤と、
前記一対の定盤の回転数を各々検出する一対の検出部と、
前記一対の定盤の間で前記ワークを加圧する加圧部と、
前記定盤にスラリーを供給するスラリー供給部と、
前記研磨面と前記ワークとの間の摩擦力が閾値を超えたと判断した場合に、前記加圧部が加える荷重、前記定盤の回転数、前記スラリー供給部が供給するスラリーの少なくとも一つを減少する制御部と、
を有することを特徴とする研磨装置。(1)
(付記2) 前記制御部は、前記摩擦力が前記閾値を超えたと判断した場合に、前記加圧部が加える荷重又は前記一対の定盤の少なくとも一方の回転数を0にすることを特徴とする付記1に記載の研磨装置。
【0181】
(付記3) 前記制御部は、前記摩擦力が前記閾値を超えたと判断した場合に、前記定盤の回転数を維持した状態で前記加圧部が加える荷重を0よりも大きい別の荷重に減少し、前記別の荷重に減少してから所定時間が経過後に前記一対の定盤の回転を停止すると共に前記加圧部が加える荷重を0にすることを特徴とする付記1に記載の研磨装置。
【0182】
(付記4) 前記制御部は、前記研磨面と前記ワークとの間の摩擦力が閾値を超えたと判断した場合に、前記加圧部による荷重を維持した状態で前記一対の定盤の回転数の少なくとも一方を0よりも大きい別の回転数に減少し、前記別の回転数に減少してから所定時間が経過後に前記一対の定盤の回転を停止すると共に前記加圧部が加える荷重を0にすることを特徴とする付記1に記載の研磨装置。
【0183】
(付記5) 前記一対の定盤の一方を駆動する駆動部と、
前記駆動部によって前記一対の定盤の一方の回転軸に加えられる駆動力を前記一対の定盤の他方の回転軸に反転して伝達する伝達機構と、
を更に有し、
前記制御部は、前記一対の検出部から取得した前記一対の定盤の回転数が設定された関係になるように前記伝達機構の伝達比率と前記駆動部に供給する電流を制御することを特徴とする付記1乃至4のうちいずれか一項に記載の研磨装置。(2)
(付記6) 各々前記一対の定盤の対応する一つを駆動する一対の駆動部を更に有し、
前記制御部は、前記一対の検出部から取得した前記一対の定盤の回転数が設定された関係になるように前記一対の駆動部に供給する電流を制御することを特徴とする付記1乃至4のうちいずれか一項に記載の研磨装置。(3)
(付記7) 前記設定された関係は、前記一対の定盤の回転数が等しい関係であることを特徴とする付記5又は6に記載の研磨装置。
【0184】
(付記8) 前記設定された関係は、前記一対の定盤のうち、重力方向の上側の定盤の回転数が下側の定盤の回転数よりも高い関係であることを特徴とする付記5又は6に記載の研磨装置。
【0185】
(付記9) 前記制御部は、前記駆動部に供給する電流に基づいて前記研磨面と前記ワークとの間の摩擦力が閾値を超えたかどうかを判断することを特徴とする付記1乃至8のうちいずれか一項に記載の研磨装置。
【0186】
(付記10) 前記研磨面と前記ワークとの間の摩擦力を検出するトルクセンサを更に有し、
前記制御部は、前記トルクセンサの出力に基づいて前記研磨面と前記ワークとの間の摩擦力が閾値を超えたかどうかを判断することを特徴とする付記1乃至8のうちいずれか一項に記載の研磨装置。(4)
(付記11) 各々一対の研磨面の対応する一つの温度を測定する一対の温度測定部と、
各々一対の研磨面の対応する一つを冷却する一対の冷却部と、
を更に有し、
前記制御部は、前記一対の温度測定部の測定結果に基づいて前記一対の研磨面の温度が設定された関係になるように前記一対の冷却部を制御することを特徴とする付記1乃至10のうちいずれか一項に記載の研磨装置。
【0187】
(付記12) 前記設定された関係は、前記一対の研磨面の温度が等しい関係であることを特徴とする付記11に記載の研磨装置。
【0188】
(付記13) 前記設定された関係は、前記一対の研磨面のうち、重力方向の上側の研磨面の温度が下側の研磨面の温度よりも高い関係であることを特徴とする付記11に記載の研磨装置。
【0189】
(付記14) 前記研磨面にスラリーを供給するスラリー供給部と、
前記ワークの研磨時間を測定するタイマと、
を更に有し、
前記制御部は、前記タイマが測定した前記研磨時間に基づいて前記スラリー供給部が供給する前記スラリーの供給量を制御することを特徴とする付記1乃至13のうちいずれか一項に記載の研磨装置。
【0190】
(付記15) 前記ワークを研磨する研磨面上に凹凸を有するパッドを更に有することを特徴とする付記1乃至14のうちいずれか一項に記載の研磨装置。(5)
(付記16) 前記研磨装置は、化学機械研磨によって前記ワークを研磨することを特徴とする付記1乃至15のうちいずれか一項に記載の研磨装置。(6)
(付記17) ワークの両面を同時に研磨する研磨方法において、
それぞれが前記ワークに接触する研磨面を有して互いに反対方向に回転する一対の定盤の間で前記ワークに加わる荷重を維持した状態で、前記研磨面と前記ワークとの間の摩擦力が閾値を超えたかどうかを判断するステップと、
前記判断ステップが前記摩擦力が前記閾値を越えたと判断した場合に、前記荷重、前記定盤の回転数、及び、前記定盤へのスラリーの供給量の少なくとも一つを減少するステップと、
を有することを特徴とする研磨方法。(7)
(付記18) 前記判断ステップが前記摩擦力が前記閾値を超えたと判断した場合に、前記減少ステップは、前記荷重又は前記一対の定盤の少なくとも一方の回転数を0にすることを特徴とする付記17に記載の研磨方法。
【0191】
(付記19) 前記減少ステップは、
前記荷重を0よりも大きい別の荷重に設定するステップと、
前記一対の定盤の回転数を維持した状態で、前記設定ステップ後に所定時間が経過したかどうかを判断するステップと、
前記所定時間が経過したと判断した場合に、前記荷重と前記一対の定盤の回転数を共に0にするステップと、
を更に有することを特徴とする付記17に記載の研磨方法。
【0192】
(付記20) 化学機械研磨によって前記ワークを研磨することを特徴とする付記17乃至19のうちいずれか一項に記載の研磨方法。
【0193】
(付記21) 基板を作成するステップと、前記基板に加工を施すステップと、を有する基板の製造方法において、
前記作成ステップは、ワークをラップする仕上げステップと、前記ワークを化学機械研磨する超仕上げステップと、を有し、
前記仕上げステップ及び前記超仕上げステップの少なくとも一方は、付記17乃至20のうちいずれか一項に記載の研磨方法を使用することを特徴とする製造方法。
【0194】
(付記22) 基板を作成するステップと、前記基板を加工するステップと、前記基板を平坦化するステップとを有する基板の製造方法において、
前記作成ステップ及び前記平坦化ステップの少なくとも一方は、ワークをラップする仕上げステップと、前記ワークを化学機械研磨する超仕上げステップと、を有し、
前記仕上げステップ及び前記超仕上げステップの少なくとも一方は、付記17乃至20に記載の研磨方法を使用することを特徴とする基板の製造方法。
【0195】
(付記23) 基板を作成するステップと、前記基板に加工を施すステップと、を有する基板の製造方法において、
前記作成ステップは、ワークをラップする仕上げステップと、前記ワークを化学機械研磨する超仕上げステップと、を有し、
前記仕上げステップ及び前記超仕上げステップの少なくとも一方は、付記1乃至16のうちいずれか一項に記載の研磨装置を使用することを特徴とする製造方法。(8)
(付記24) 基板を作成するステップと、前記基板を加工するステップと、前記基板を平坦化するステップとを有する基板の製造方法において、
前記作成ステップ及び前記平坦化ステップの少なくとも一方は、ワークをラップする仕上げステップと、前記ワークを化学機械研磨する超仕上げステップと、を有し、
前記仕上げステップ及び前記超仕上げステップの少なくとも一方は、付記1乃至16のうちいずれか一項に記載の研磨装置を使用することを特徴とする基板の製造方法。(9)
(付記25) 付記21乃至24のうちいずれか一項に記載の基板の製造方法によって基板を製造するステップと、
電子部品を製造するステップと、
前記基板と前記電子部品から電子機器を製造するステップと、
を有することを特徴とする電子機器の製造方法。(10)
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】本発明の一実施例の研磨装置の概略ブロック図である。
【図2】図1に示す研磨装置に装着されるキャリアとワークの分解斜視図である。
【図3】図2に示すキャリアの収納穴にワークを接着する接着剤を示す概略斜視図である。
【図4】図2に示すキャリアの変形例の収納穴にワークを固定するワイヤーリングを示す概略斜視図である。
【図5】図2に示すキャリアの変形例の収納穴にワークを固定する付勢部材を示す概略斜視図である。
【図6】図2に示すキャリアの収納穴にワークを固定する弾性部材を示す概略斜視図である。
【図7】図2に示すキャリアの収納穴にワークを固定する別の弾性部材を示す概略斜視図である。
【図8】図2に示すキャリアに形成可能な溝の一例を示す概略斜視図である。
【図9】図2に示すキャリアに形成可能な溝の更に別の例を示す概略斜視図である。
【図10】図2に示すキャリアに形成される溝の更に別の例を示す概略斜視図である。
【図11】図10に示す溝の変形例の概略斜視図である。
【図12】図2に示すキャリアに形成可能な溝の別の例を示す概略斜視図である。
【図13】図2に示すキャリアに形成可能な溝の別の例を示す概略斜視図である。
【図14】図2に示すキャリアに形成可能な溝の別の例を示す概略斜視図である。
【図15】図10と図13に示す溝を有するキャリアの概略斜視図である。
【図16】図2に示すキャリアに形成可能な貫通孔の一例を示す概略斜視図である。
【図17】図1に示す研磨装置のギアボックスの一例を示す概略部分断面図である。
【図18】図1に示す下定盤のパッドに形成される凹凸例を示す概略斜視図である。
【図19】図19(a)及び図19(b)は、図1に示す研磨装置のキャリア、太陽歯車、外輪歯車に適用される第1及び第2の防塵機構の概略断面図及び概略斜視図である。
【図20】図1に示す研磨装置を含む研磨システムの概略ブロック図である。
【図21】図20に示す研磨システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図22】図21に示すステップ1100の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図23】図22に示す各工程の状態を示す概略断面図である。
【図24】図23に示すスペーサの変形例の概略断面図である。
【図25】図16に示すステップ1200の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図26】図19に示す各工程の状態を説明するためのタイミングチャートである。
【図27】図1に示す研磨装置の変形例の概略ブロック図である。
【図28】メムスセンサの概略断面図である。
【図29】図28に示すメムスセンサの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図30】図29に示すステップ2200の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図31】図30に示すステップ2210の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図32】図30に示すステップ2230の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図33】図28に示すメムスチップの斜視図である。
【符号の説明】
【0197】
100、100A 研磨装置
110−110L キャリア
113−113B 収納穴
140、160 上下定盤
142、162 パッド
142a、162a パッド面(研磨面)
148、168 タコジェネレータ(検出部)
150 ギアボックス
170 シリンダ(加圧部)
200、240 第1、第2の防塵機構
210、250 第1、第2のブロック
220、260 ワイパー(第1、第2の弾性部材)
400 メムスセンサ(電子機器)
420 ガラス基板
430 メムスチップ(電子部品)
W ワーク

















【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの両面を同時に研磨する研磨装置において、
それぞれが前記ワークに接触する研磨面を有して互いに反対方向に回転する一対の定盤と、
前記一対の定盤の回転数を各々検出する一対の検出部と、
前記一対の定盤の間で前記ワークを加圧する加圧部と、
前記定盤にスラリーを供給するスラリー供給部と、
前記研磨面と前記ワークとの間の摩擦力が閾値を超えたと判断した場合に、前記加圧部が加える荷重、前記定盤の回転数、前記スラリー供給部が供給するスラリーの少なくとも一つを減少する制御部と、
を有することを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記一対の定盤の一方を駆動する駆動部と、
前記駆動部によって前記一対の定盤の一方の回転軸に加えられる駆動力を前記一対の定盤の他方の回転軸に反転して伝達する伝達機構と、
を更に有し、
前記制御部は、前記一対の検出部から取得した前記一対の定盤の回転数が設定された関係になるように前記伝達機構の伝達比率と前記駆動部に供給する電流を制御することを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
各々前記一対の定盤の対応する一つを駆動する一対の駆動部を更に有し、
前記制御部は、前記一対の検出部から取得した前記一対の定盤の回転数が設定された関係になるように前記一対の駆動部に供給する電流を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記研磨面と前記ワークとの間の摩擦力を検出するトルクセンサを更に有し、
前記制御部は、前記トルクセンサの出力に基づいて前記研磨面と前記ワークとの間の摩擦力が閾値を超えたかどうかを判断することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記ワークを研磨する研磨面上に凹凸を有するパッドを更に有することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記研磨装置は、化学機械研磨によって前記ワークを研磨することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項7】
ワークの両面を同時に研磨する研磨方法において、
それぞれが前記ワークに接触する研磨面を有して互いに反対方向に回転する一対の定盤の間で前記ワークに加わる荷重を維持した状態で、前記研磨面と前記ワークとの間の摩擦力が閾値を超えたかどうかを判断するステップと、
前記判断ステップが前記摩擦力が前記閾値を越えたと判断した場合に、前記荷重、前記定盤の回転数、及び、前記定盤へのスラリーの供給量の少なくとも一つを減少するステップと、
を有することを特徴とする研磨方法。
【請求項8】
基板を作成するステップと、前記基板に加工を施すステップと、を有する基板の製造方法において、
前記作成ステップは、ワークをラップする仕上げステップと、前記ワークを化学機械研磨する超仕上げステップと、を有し、
前記仕上げステップ及び前記超仕上げステップの少なくとも一方は、請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の研磨装置を使用することを特徴とする製造方法。
【請求項9】
基板を作成するステップと、前記基板を加工するステップと、前記基板を平坦化するステップとを有する基板の製造方法において、
前記作成ステップ及び前記平坦化ステップの少なくとも一方は、ワークをラップする仕上げステップと、前記ワークを化学機械研磨する超仕上げステップと、を有し、
前記仕上げステップ及び前記超仕上げステップの少なくとも一方は、請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の研磨装置を使用することを特徴とする基板の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の基板の製造方法によって基板を製造するステップと、
電子部品を製造するステップと、
前記基板と前記電子部品から電子機器を製造するステップと、
を有することを特徴とする電子機器の製造方法。


【図10】
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【図21】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2009−39826(P2009−39826A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208396(P2007−208396)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】