説明

砥石成形方法、砥石車製作方法、研削方法および研削装置

【課題】 切刃の円周振れを伴わないダイヤモンド砥石を提供する。
【解決手段】 ホイールベース2の端面に角柱ダイヤモンドチップが並び、これらチップにより砥石本体3が形成される砥石車1を次ぎの手順で製作する。まず、先端が平坦な複数のチップを周方向に隙間なく並べてこれらチップをホイールベース2に固着することにより砥石本体3を構成し、この砥石本体3の先端(砥石面4)に、前記回転中心から法線状に延び、かつ周方向に等ピッチで並ぶ複数の溝を形成する。そして、砥石本体3の内周面を回転中心と同心の円に沿って内面研削することにより、砥石面4の内周縁に周方向に等間隔で並ぶ切刃を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置に用いられる砥石車の砥石成形方法および砥石車製作方法、加えて研削装置における研削方法、および研削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンウエハ等の脆性材料の表面研削としてダイヤモンド砥石(カップ型の砥石車)を使った延性モード研削が知られているが、従来のダイヤモンド砥石は、微細なダイヤモンド砥粒をレジノイド系、あるいはビトリファイド系などの結合剤と混合して焼結したものが一般的であり、良好な延性モード研削を行う上で必ずしも十分ではなかった。これは、砥石面における砥粒の密度や砥粒の突出量にバラツキが多いことが最大の理由である。
【0003】
そこで、近年では、複数の角柱ダイヤモンドチップを周方向に一定間隔で並べて固着し、必要に応じて各チップの先端(砥石面)に溝を形成するなどしたダイヤモンド砥石が提案されている(例えば、特許文献1)。このダイヤモンド砥石によれば、上記のような従来のダイヤモンド砥石に比べると、砥粒の密度や突出量が均一になるため、延性モード研削を従来に比べて適切に行い得ると考えられる。
【特許文献1】特開平11−156728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1のダイヤモンド砥石では、角柱ダイヤモンドがベースに対して円周上に正しく並んでいない場合も考えられ、このような場合には、角柱ダイヤモンド同士の切刃の並びが不揃い、すなわち回転半径方向にずれた配置となり(以下、円周振れという)、ワークに対する各切刃の切込み間隔が不規則となるなどして安定した延性モード研削を実施することが困難となる。
【0005】
また、特許文献1のように先端面が振れ取り加工された砥石であっても、砥石軸に固定すると、砥石取付け面の平面度等の影響で砥石に端面振れを生じ、ワークに対する各切刃の砥石軸方向の切込み間隔が不規則となり、延性モード研削の妨げとなる。
【0006】
従って、特許文献1のようなダイヤモンド砥石を用いて延性モード研削を適切に実施するには、円周振れを伴うことなく周方向に適切に切刃が並び、かつ端面振れがないダイヤモンド砥石を用いて作業を進めることが必要となるが、そのようなダイヤモンド砥石を製作する方法等については特許文献1には一切開示されていない。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、円周振れおよび端面振れを伴わないダイヤモンド砥石を提供することによりシリコンウエハ等の脆性材料の延性モード研削をより安定して実施できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る砥石成形方法は、砥石母材の片面に、円周に沿って複数のダイヤモンドチップが突出した状態で並べられ、これらチップの突出先端により円環状の砥石面が形成されるとともにこの砥石面の内周又は外周のエッジにより切刃が形成される砥石車の前記切刃の成形方法であって、前記チップを研削することにより前記切刃を成形する工程において、前記砥石車を回転駆動し、かつ切刃を成形するためのツルーイング用砥石車を回転駆動しながら、円周に沿って並んだ前記各チップの内周面又は外周面に前記ツルーイング用砥石車を接触させることにより、各チップの前記内周面又は外周面を、砥石車の回転中心と同心の円に沿って研削するようにしたものである。
【0009】
請求項2に係る砥石車製作方法は、砥石母材の片面に、円周に沿って複数のダイヤモンドチップが突出した状態で並べられ、これらチップの突出先端により円環状の砥石面が形成されるとともにこの砥石面の内周又は外周のエッジにより切刃が形成される砥石車の製作方法であって、複数のダイヤモンドチップを円周に沿って隙間なく並べた状態でこれらチップを砥石母材に固着することにより各チップの突出先端からなる円環状の砥石面を形成する工程と、この砥石面に、回転中心から法線状に延び、かつ周方向に等ピッチで並ぶ複数の溝を形成する工程と、円周に沿って並んだ前記チップの内周面又は外周面を前記回転中心と同心の円に沿って研削する周面研削、および前記砥石面の平面研削を行うことにより、前記砥石面の内周縁又は外周縁に周方向に等間隔で並ぶ複数の前記切刃を成形する工程と、を有するものである。
【0010】
請求項3に係る研削方法は、共に回転駆動される砥石軸と主軸とを有し、前記砥石軸に固定される加工用砥石車を前記主軸に固定されるワークに対して相対的に切込み送りすることにより前記ワークを研削する研削装置における研削方法であって、砥石母材の片面に、その回転中心周りに円周に沿って複数のダイヤモンドチップが突出した状態で並べられることにより各チップの突出先端からなる円環状の砥石面が形成され、さらにこの砥石面に前記回転中心から法線状に延び、かつ周方向に等ピッチで並ぶ複数の溝が形成された砥石車構成用部材を前記砥石軸に固定し、前記研削装置に設けられるツルーイング用砥石車を使って前記砥石車構成用部材のチップ列の内周面又は外周面を前記回転中心と同心の円に沿って研削する周面研削、および前記砥石面の平面研削を行うことにより、前記砥石面の内周縁又は外周縁に周方向に等間隔で並ぶ複数の切刃を成形して前記加工用砥石車を製作し、この加工用砥石車をそのまま回転駆動して前記主軸に固定されたワークを研削加工するようにしたものである。
【0011】
また、請求項4に係る研削方法は、請求項3に記載の研削方法において、ワークの研削加工後、ツルーイング用砥石車を使って前記加工用砥石車のチップ列の内周面又は外周面を前記回転中心と同心の円に沿って研削する周面研削、および前記砥石面の平面研削を行うことにより前記切刃を再生させるようにしたものである。
【0012】
請求項5に係る研削装置は、共に回転駆動される砥石軸と主軸とを有し、前記砥石軸に固定される加工用砥石車を前記主軸に固定されるワークに対して相対的に切込み送りすることにより前記ワークを研削する研削装置において、前記砥石軸に固定されてこの砥石軸と一体に回転可能に設けられる砥石車構成用部材と、この砥石車構成用部材に対して相対的に移動可能に設けられ、かつ回転駆動されるツルーイング用砥石車とを備え、前記砥石車構成用部材は、砥石母材の片面に、その回転中心周りに円周に沿って複数のダイヤモンドチップが突出した状態で並べられることにより各チップの突出先端からなる円環状の砥石面が形成され、さらにこの砥石面に前記回転中心から法線状に延び、かつ周方向に等ピッチで並ぶ複数の溝が形成されるものであって、前記ツルーイング用砥石車は、前記砥石車構成用部材のチップ列の内周面又は外周面を前記回転中心と同心の円に沿って研削する周面研削、および前記砥石面の平面研削を行うことにより、前記砥石面の内周縁又は外周縁に周方向に等間隔で並ぶ切刃を成形して前記加工用砥石車を製作するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る砥石成形方法、および請求項2に係る砥石車製作方法によると、切刃を成形する工程において、円周に沿って並んだチップの内周面又は外周面を、砥石の回転中心と同心の円に沿って研削するため、成形される切刃が確実に同一円周上に配列されることとなる。つまり、円周振れを伴うことがなくなる。従って、この方法により切刃が成形された砥石車を用いることにより、シリコンウエハ等の脆性材料の延性モード研削をより適切に、かつ安定して実施することができるようになる。
【0014】
また、請求項3に係る研削方法によると、ダイヤモンドチップが並んだ砥石車構成用部材を砥石軸に固定し、研削装置上に設けられるツルーイング用砥石車を使って前記チップを研削することにより切刃を成形し(加工用砥石車を製作し)、その加工用砥石車をそのまま使ってワークを研削するので、当該研削加工については、各切刃が確実に回転中心と同心円上に並んだ加工用砥石車を使ってワークを研削することができる。従って、砥石軸に対する砥石の組付け誤差の影響を受けることなくシリコンウエハ等の延性モード研削を適切に、かつ安定して実施することができるようになる。特に、請求項4に係る方法によると、ワークの研削加工後、切刃を適切に再生させることができるため、継続的に安定した延性モード研削を実施することができる。
【0015】
さらに、請求項5に係る研削装置によると、研削加工時には、まずツルーイング用石車により砥石車構成用部材に保持されている各チップが研削され、これにより加工用砥石車が製作される。そして、この加工用砥石車がそのまま駆動されることによりワークの研削加工が行われる。従って、上記の研削方法を良好に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〈砥石車製作方法・砥石成形方法〉
本発明に係る砥石車製作方法・砥石成形方法を説明するに前に、まず、この方法に基づいて製作される砥石車について説明し、その後、具体的な方法について説明する。
【0017】
図1は砥石車を概略的に示している。この図に示すように、砥石車1は、円筒状のホイールベース2(砥石母材)の端面(図1(a)では右端面)に円環状の砥石本体3を備えたカップ型の砥石車で、工作機械の砥石軸に固定されることにより該砥石軸と一体に回転駆動される。
【0018】
ベース2は、金属材料からなり、ベース2の内側の部分には当該砥石車1を研削装置の砥石軸に固定するための複数のボルト孔2aが周方向に一定間隔で設けられている。
【0019】
砥石本体3は、全体がダイヤモンドから構成されており、後述するように複数のダイヤモンドチップがホイールベース2に対して固定されることにより構成されている。
【0020】
砥石本体3は、ホイールベース2の中心(砥石車1の回転中心)と同心円上に設けられており、砥石面4(ワークを研削する面)には、図2(a)に示すように、その全周に亘って等間隔の凹凸が形成されている。各凸部5の先端は平坦、かつ互いに面一に形成されており、これによって図2(b)に示すように、砥石面4の内周縁に、各凸部5のエッジからなる切刃5a(内刃)が周方向に等間隔で一列に並んでいる。
【0021】
この砥石車1は、(1)チップ固定工程、(2)溝成形工程、(3)切刃成形工程を経て製作される。
【0022】
チップ固定工程は、ホイールベース2に対して先端が平坦な複数の四角柱ダイヤモンドチップをその周方向に隙間なく並べて固定する工程で、当実施形態では電着法によりホイールベース2に対して各ダイヤモンドチップを固定している。
【0023】
溝成形工程は、円環状に固定されたダイヤモンドチップの先端(砥石面4)に、ホイールベース2の中心から法線状に延びる溝を周方向に等間隔で形成することにより上記の凹凸(凸部5)を成形する工程である。溝加工はレーザ、マイクロ波あるいはイオンビーム等により実施可能であるが、当実施形態ではレーザ加工により溝を形成している。
【0024】
切刃成形工程は、ホイールベース2に並んだダイヤモンドチップの内周面と先端面(砥石面4)を研削することにより前記切刃5aを成形する工程である。具体的には、ホイールベース2を回転駆動しながらダイヤモンドチップの内周面をその回転中心と同心の円に沿って研削する内面研削工程と、砥石面4を研削する端面研削工程とからなり、必要に応じてこれらの工程を繰り返し実施することにより、砥石面4の内周縁に、上記凸部5のエッジからなる切刃5aを成形する。
【0025】
上記のような方法により製作された砥石車1によると、切刃成形工程においてホイールベース2を回転させながらダイヤモンドチップの内周面をその回転中心と同心の円に沿って内面研削するため、全ての切刃5aが同一円周上に等間隔でずれなく配列されることとなる。つまり、円周振れを伴わない良好な切刃5aを成形することができる。
【0026】
従って、このような切刃5aをもつ砥石車1によると、後にも説明するように、各切刃5aが砥石車1の径方向に振れることなくワークWに対して一定の間隔で規則的に切込むこととなり、その結果、シリコンウエハ等のワークWの延性モード研削を適切、かつ安定して行うことができるようになる。
【0027】
〈研削装置・研削方法〉
次に、本発明に係る研削装置および研削方法について説明する。先ず、研削装置の具体的な構成について説明する。
【0028】
図3及び図4は、本発明に係る研削装置の要部を断面図で概略的に示している。この図に示す研削装置はいわゆる平面研削盤であって、互いに対向する砥石ヘッド10と主軸ヘッド20とを備えている。これらのヘッド10,20は図外の基台上に支持されている。
【0029】
砥石ヘッド10は、モータにより回転駆動される砥石軸12を有している。砥石軸12の先端(同図では右端)には、砥石車構成用部材11が固定されており、これにより砥石車構成用部材11が砥石軸12と一体にその軸回りに回転駆動されるようになっている。
【0030】
砥石車構成用部材11は、未完成状態の砥石車1、具体的には上述した砥石製作の工程におい溝加工工程までを終えた砥石車である。砥石車構成用部材11は、同図に示すように砥石軸12の端面にホイールベース2を突き当てた状態でボルト止めされ、これにより砥石軸12に対して芯出しされた状態で固定されている。
【0031】
前記砥石ヘッド10は、送りモータにより駆動される可動テーブル上に設置されており、基台に対して可動テーブルと一体に砥石軸12の軸方向に移動するようになっている。
【0032】
一方、主軸ヘッド20は、砥石ヘッド10に対して前記砥石軸12の軸方向に対向して設けられている。
【0033】
主軸ヘッド20は、モータにより回転駆動される主軸22を有している。主軸22は、前記砥石軸12に対して一定寸法だけ上方にオフセットされており、その先端(同図では左端)には、ワークWを保持するチャック24が固定されている。このチャック24は、いわゆるバキュームチャックからなり、同図に示すようにワークW(当実施形態ではシリコンウエハ)の裏面を負圧吸着することによりワークWの被研削面を砥石ヘッド10に対向させた状態で保持するようになっている。
【0034】
主軸ヘッド20の側方にはツルーイング装置30が配設されている。このツルーイング装置30は、ワークWの加工前に前記砥石車構成用部材11を研削することにより最終的に当該部材11を砥石車1として完成させるとともに、ワークWの加工の合間に砥石車1の切刃5aを形直し(ツルーイング)するものである。
【0035】
ツルーイング装置30は、モータ44により砥石軸12と平行な軸回りに回転駆動される平型又はカップ型の砥石車42(以下、ツルーイング用砥石車42という)と、この砥石軸42を砥石軸12の軸方向およびこれと直交する方向に移動させる移動機構とを備えている。
【0036】
移動機構は、詳しく図示していないが、前記主軸ヘッド20を保持する保持部23に固定される支持フレーム32と、このフレーム32に支持され、モータ34の駆動により該フレーム32に対して砥石軸12と直交する方向に相対的に移動する第1可動テーブル36と、この第1可動テーブル36に支持され、モータ38の駆動により該フレームに対して砥石軸12の軸方向に相対的に移動する第2可動テーブル40とを有している。そして、前記ツルーイング用砥石車42がモータ44と共に第2可動テーブル40に搭載されている。これによりモータ34,38による各可動テーブル36,40の駆動に応じて砥石車42が上記各方向に移動するようになっている。
【0037】
次に、この研削装置を用いたワークWの研削方法について説明する。
【0038】
〈砥石車1の製作工程〉
まず、ワークWの研削加工を行う前段階として、ツルーイング装置30により砥石車構成用部材11を研削することにより砥石車1を製作する。すなわち、上述した砥石車1の製作工程のうち、切刃成形工程の加工を砥石軸12に固定された砥石車構成用部材11に対して施すことにより装置上で砥石車1を完成させる。
【0039】
具体的には、砥石軸12およびツルーイング用砥石車42を回転駆動しながら、送りモータの駆動により砥石車構成用部材11を砥石軸12の軸方向に前進させるとともに、モータ34等の駆動によりツルーイング用砥石車42を移動させ、ホイールベース2に並んだダイヤモンドチップ(砥石本体3)の内側にツルーイング用砥石車42を挿入する。そして、図4の二点鎖線、および図5に示すように、ツルーイング用砥石車42の外周面をダイヤモンドチップに押付け、砥石本体3の内周面を回転中心(砥石軸12の中心)と同心の円に沿って研削する(内面研削工程)。
【0040】
次いで、ツルーイング用砥石車42を移動させ、図6に示すように、ダイヤモンドチップ(砥石本体3)の先端面、つまり砥石面4にツルーイング用砥石車42の端面を押付けて当該砥石面4(凸部5の先端面)を平面研削する(端面研削工程)。
【0041】
そして、必要に応じて、これら内面研削工程と端面研削工程とを繰り返し行うことにより、回転中心と同心の円上に、その周方向に等間隔で切刃5aが一列に並ぶ前記砥石車1を製作する(完成させる)。
【0042】
〈ワークWの研削加工工程〉
砥石車1の製作が完了すると、砥石車1を一旦後退させるとともに、ツルーイング用砥石車42を所定の退避位置に移動させ、さらに砥石軸12及び主軸22を停止させた後、この状態でワークWをチャック24に負圧吸着させる。
【0043】
そして、砥石軸12を回転駆動し、かつ、主軸22と一体にワークWを回転駆動しながら、送りモータの駆動により砥石ヘッド10を砥石軸12の軸方向に前進させて砥石車1をワークWに押付ける。これによりワークWの表面を研削する。このとき、図4に矢印で示すように砥石車1とワークWとを同一方向(同図では反時計回り)にそれぞれ一定の速度で回転駆動する。このようにすると砥石車1の各切刃5aが回転中心と同心の円上に、その周方向に等間隔で一列に並んでいる結果、図7に概略的に示すように、各切刃5aが砥石車1の径方向に振れることなくワークWに対して一定の間隔で規則的に切込むこととなり、その結果、ワークWの延性モード研削が安定して行われることとなる。なお、図7中、実線矢印はそれぞれ砥石車1およびワークWの回転方向を示している。
【0044】
〈ツルーイング工程〉
ワークWの研削加工が終了すると、必要に応じて、次ぎのワークWの研削加工までの間に砥石車1のツルーイングを行う。
【0045】
砥石車1のツルーイングは、上述した〈砥石車1の製作工程〉と同様の作業を行う。すなわち、加工用砥石車1を回転駆動し、かつツルーイング用砥石車42を回転駆動しながら、砥石本体3の内周面にツルーイング用砥石車42の外周面を押付けて該砥石本体3を内面研削する(図5参照)。さらにツルーイング用砥石車42を移動させ、砥石面4にツルーイング用砥石車42の端面を押付けて当該砥石面4を平面研削する(図6参照)。
【0046】
そして、必要に応じてこれら内面研削と端面研削とを繰り返し行うことにより、前記切刃5aをツルーイングする。
【0047】
以上のような研削装置(方法)によると、ワークWを研削する砥石車として、上記のように回転中心と同心の円上に、その周方向に等間隔でずれなく切刃5aが配列された砥石車1、つまり円周振れを伴わない切刃5aをもつ砥石車1を用いてワークWの研削を行うことができるため、従来に比べてワークWの延性モード研削を適正、かつ安定して行うことができる。すなわち、砥石車として、ダイヤモンドチップを周方向に並べて切刃を形成したものを使って延性モード研削を適正、かつ安定して行うには、各切刃が砥石車の径方向に振れることなくワークに対して一定の間隔で規則的に切込むことが必要となるが、従来のこの種の砥石車では、切刃が回転半径方向に不揃いとなる円周振れを伴っている場合も多く、そのため、ワークに対する各切刃の切込み間隔にバラツキ等が生じ易く、延性モード研削を適正、かつ安定して行うことは必ずしも容易ではない。これに対して上記実施形態の砥石車1では、上記のように各切刃5aは砥石車1の回転中心と同心の円上に、その周方向に等間隔でずれなく配列されているので、各切刃5aは径方向に振れることなくワークWに対して一定の間隔で規則的に切込むこととなる。従って、ワークWの延性モード研削を従来に比べてより適正に、かつ安定して行うことができる。
【0048】
特に、この装置(方法)では、砥石車1の製作段階にある砥石車構成用部材11(切刃成型工程前の砥石車1)を砥石軸12に固定し、この砥石車構成用部材11に対して切刃成型工程の加工を施して切刃5aを成形することにより装置上で砥石車1を完成させ、この砥石車1をそのまま使って研削加工を行うため、切刃5aの配列の信頼性が高く、上記のような延性モード研削をより一層適切に、かつ安定して実施できる。すなわち、例えば各切刃が円周振れを伴わない砥石車であっても、砥石軸への固定時に芯出しが精度良く行われていない場合には研削加工時に各切刃が偏心してワークに対する各切刃の切込みが適正に行われず、その場合には、延性モード研削の適切な実施が難しくなる。これに対して、上記実施形態によれば、砥石軸12に固定した砥石車構成用部材11を砥石軸12と一体に回転駆動しながら、この砥石車構成用部材11のダイヤモンドチップ(砥石本体3)に対して内面研削および端面研削を施すことにより切刃5aを成形し、このようにして製作した砥石車1をそのまま使ってワークWを研削するので、研削加工に用いられる砥石車1の各切刃5aは確実に回転中心と同心円上に、その周方向に等間隔で一列に並んだものとなり、砥石軸12に対する砥石車1の組付け誤差が事実上解消される。また、切刃5aの製作に際し、装置上で砥石面4にツルーイング用砥石車42の端面を押付けて当該砥石面4(凸部5の先端面)を平面研削するので、従来のようないわゆる端面振れが解消され、ワークに対する各切刃5aの砥石軸方向の切込みが規則良く行われる。従って、延性モード研削をより一層適切に、かつ安定して実施することができる。
【0049】
なお、以上の実施形態では、図7に実線矢印で示すようにワークWを反時計回りに回転駆動しながらワークWの研削加工を行うため、砥石車1については砥石面4の内周側に切刃5aを設けているが、図7に破線で示すようにワークWを時計回りに回転駆動しながらワークWの研削加工を行う場合には、砥石車1については砥石面4の外周面側に切刃5aを設けるようにすればよい。この場合、上述した砥石車製作方法、砥石成形方法および研削方法(砥石車1の製作工程)については、円周状に並んだダイヤモンドチップ(砥石本体3)の内周面を内面研削する代わりに、ダイヤモンドチップの外周面を円筒研削するようにすればよい。
【0050】
また、実施形態では、ホイールベース2に対してダイヤモンドチップを周方向に隙間無く固定し、これにレーザによる溝加工を施して凸部5を形成することにより前記切刃5aを設けるようにしているが、例えば、独立した角柱ダイヤモンドを一定間隔でホイールベース2に固定することにより、これら独立したチップの先端エッジにより切刃5aを設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る砥石成形方法を用いて製作される砥石車を示す概略図である((a)は断面図、(b)は平面図である)。
【図2】砥石車の断面拡大図である((a)は砥石車の縦断面図、(b)は(a)のA−A線断面図である)。
【図3】本発明に係る研削装置を示す断面略図である。
【図4】研削装置を示す図3のB矢視図である。
【図5】ツルーイング装置により砥石車構成用部材(砥石車)の砥石本体に対して内面研削が行われている状態を示す断面略図である。
【図6】ツルーイング装置により砥石車構成用部材(砥石車)の砥石本体に対して端面研削が行われている状態を示す断面略図である。
【図7】研削加工時の切刃(砥石車)とワークとの関係を示す模式図である。
【符号の説明】
【0052】
1 砥石車
2 ホイールベース
3 砥石本体
4 砥石面
5 凸部
5a 切刃
10 砥石ヘッド
11砥石車構成用部材
12 砥石軸
20 主軸ヘッド
22 主軸
24 チャック
30 ツルーイング装置
42 ツルーイング用砥石車
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥石母材の片面に、円周に沿って複数のダイヤモンドチップが突出した状態で並べられ、これらチップの突出先端により円環状の砥石面が形成されるとともにこの砥石面の内周又は外周のエッジにより切刃が形成される砥石車の前記切刃の成形方法であって、
前記チップを研削することにより前記切刃を成形する工程において、前記砥石車を回転駆動し、かつ切刃を成形するためのツルーイング用砥石車を回転駆動しながら、円周に沿って並んだ前記各チップの内周面又は外周面に前記ツルーイング用砥石車を接触させることにより、各チップの前記内周面又は外周面を、砥石車の回転中心と同心の円に沿って研削することを特徴とする砥石成形方法。
【請求項2】
砥石母材の片面に、円周に沿って複数のダイヤモンドチップが突出した状態で並べられ、これらチップの突出先端により円環状の砥石面が形成されるとともにこの砥石面の内周又は外周のエッジにより切刃が形成される砥石車の製作方法であって、
複数のダイヤモンドチップを円周に沿って隙間なく並べた状態でこれらチップを砥石母材に固着することにより各チップの突出先端からなる円環状の砥石面を形成する工程と、
この砥石面に、回転中心から法線状に延び、かつ周方向に等ピッチで並ぶ複数の溝を形成する工程と、
円周に沿って並んだ前記チップの内周面又は外周面を前記回転中心と同心の円に沿って研削する周面研削、および前記砥石面の平面研削を行うことにより、前記砥石面の内周縁又は外周縁に周方向に等間隔で並ぶ複数の前記切刃を成形する工程と、
を有することを特徴とする砥石車製作方法。
【請求項3】
共に回転駆動される砥石軸と主軸とを有し、前記砥石軸に固定される加工用砥石車を前記主軸に固定されるワークに対して相対的に切込み送りすることにより前記ワークを研削する研削装置における研削方法であって、
砥石母材の片面に、その回転中心周りに円周に沿って複数のダイヤモンドチップが突出した状態で並べられることにより各チップの突出先端からなる円環状の砥石面が形成され、さらにこの砥石面に前記回転中心から法線状に延び、かつ周方向に等ピッチで並ぶ複数の溝が形成された砥石車構成用部材を前記砥石軸に固定し、
前記研削装置に設けられるツルーイング用砥石車を使って前記砥石車構成用部材のチップ列の内周面又は外周面を前記回転中心と同心の円に沿って研削する周面研削、および前記砥石面の平面研削を行うことにより、前記砥石面の内周縁又は外周縁に周方向に等間隔で並ぶ複数の切刃を成形して前記加工用砥石車を製作し、
この加工用砥石車をそのまま回転駆動して前記主軸に固定されたワークを研削加工することを特徴とする研削方法。
【請求項4】
請求項3に記載の研削方法において、
ワークの研削加工後、ツルーイング用砥石車を使って前記加工用砥石車のチップ列の内周面又は外周面を前記回転中心と同心の円に沿って研削する周面研削、および前記砥石面の平面研削を行うことにより前記切刃を再生させることを特徴とする研削方法。
【請求項5】
共に回転駆動される砥石軸と主軸とを有し、前記砥石軸に固定される加工用砥石車を前記主軸に固定されるワークに対して相対的に切込み送りすることにより前記ワークを研削する研削装置において、
前記砥石軸に固定されてこの砥石軸と一体に回転可能に設けられる砥石車構成用部材と、
この砥石車構成用部材に対して相対的に移動可能に設けられ、かつ回転駆動されるツルーイング用砥石車とを備え、
前記砥石車構成用部材は、砥石母材の片面に、その回転中心周りに円周に沿って複数のダイヤモンドチップが突出した状態で並べられることにより各チップの突出先端からなる円環状の砥石面が形成され、さらにこの砥石面に前記回転中心から法線状に延び、かつ周方向に等ピッチで並ぶ複数の溝が形成されるものであって、
前記ツルーイング用砥石車は、前記砥石車構成用部材のチップ列の内周面又は外周面を前記回転中心と同心の円に沿って研削する周面研削、および前記砥石面の平面研削を行うことにより、前記砥石面の内周縁又は外周縁に周方向に等間隔で並ぶ切刃を成形して前記加工用砥石車を製作することを特徴とする研削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−346762(P2006−346762A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172521(P2005−172521)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(391003668)トーヨーエイテック株式会社 (145)
【出願人】(000151357)株式会社東京ダイヤモンド工具製作所 (2)
【Fターム(参考)】