説明

硬化性樹脂組成物

【課題】 硬化前の粘度が低いため取り扱い性に優れ、かつ樹脂強度及び耐熱性が高い硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】 エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂及びメラミン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化性樹脂(A)を含むマトリックス中に、熱可塑性樹脂(B)を含むドメインが微粒子状に分散してなる海島構造を有する硬化性樹脂組成物であって、前記硬化性樹脂(A)の硬化後には前記マトリックス及びドメインが相溶して均一化することを特徴とする硬化性樹脂組成物であって、前記硬化性樹脂(A)がエポキシ樹脂であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、繊維強化複合材料に使用される硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱や光で硬化する各種の硬化性樹脂が、構造体や接着剤等様々な分野で広く利用されている。これらの硬化性樹脂のうちエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂及びメラミン樹脂は、硬化前は粘度が低く取り扱いやすいが、熱可塑性樹脂と比較して硬化後に十分な樹脂強度が得られないという課題があった。そこで、この課題を改良する目的で、硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を組み合わせた硬化性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1の硬化性樹脂組成物は、硬化後の樹脂強度は改良されているものの、硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の均一化のために溶媒を用いているためボイドが発生しやすく、構造体等の厚い成型体を作成するのには不適であった。そこで、このような問題を改良したものとして、熱可塑性樹脂をあらかじめ微粒子状に加工し、これを硬化性樹脂中に溶解させるという方法が提案されている(特許文献2)。しかしながら、この方法では熱可塑性樹脂を溶解させた後の樹脂粘度が高くなってしまうため、100℃以下の温度では流動性が悪く取り扱いにくいという問題があった。このように従来の硬化性樹脂組成物には、取り扱い性と樹脂強度を両立できるものがなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−148346号公報
【特許文献2】特開2007−284545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、硬化前の粘度が低いため取り扱い性に優れ、かつ硬化後の樹脂強度が高い硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂及びメラミン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化性樹脂(A)を含むマトリックス中に、熱可塑性樹脂(B)を含むドメインが微粒子状に分散してなる海島構造を有する硬化性樹脂組成物であって、前記硬化性樹脂(A)の硬化後には前記マトリックス及びドメインが相溶して均一化することを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化前の粘度が低く、取り扱い性に優れ、かつ硬化後の樹脂強度及び耐熱性に優れる、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における硬化性樹脂(A)とは、熱、光、放射線又は水等によって重合を開始して3次元構造を形成して硬化し、硬化後には加熱してもほとんど軟化しない樹脂のことである。硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂(A1)、不飽和ポリエステル樹脂(A2)、ビニルエステル樹脂(A3)、フェノール樹脂(A4)、ユリア樹脂(A5)及びメラミン樹脂(A6)が挙げられる。
【0008】
エポキシ樹脂(A1)としては、グリシジルエーテル(A11)、グリシジルエステル(A12)、ジグリシジルアミン(A13)及び脂環式ジエポキシド(A14)等の1分子中に1個又は2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。
【0009】
グリシジルエーテル(A11)としては、2価フェノール類のジグリシジルエーテル(A111)1価アルコールのグリシジルエーテル(A112)及び2価アルコールのジグリシジルエーテル(A113)が挙げられる。
【0010】
(A111)としては、炭素数6〜30の2価フェノール類とエピクロルヒドリンとの縮合物(重縮合物を含む)で両末端がジグリシジルエーテルであるもの等が挙げられる。炭素数6〜30の2価フェノール類としては、ビスフェノール(ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールS及びハロゲン化ビスフェノールA等)、カテキン、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシビフェニル、オクタクロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、テトラメチルビフェニル及び9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フロオレン等が挙げられる。
【0011】
(A112)としては、炭素数1〜30の1価アルコールとエピクロルヒドリンとの縮合物(重縮合物を含む)で末端がグリシジルエーテルであるもの等が挙げられる。炭素数1〜30の1価アルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ステアリルアルコール、イコシルアルコール、ベヘニルアルコール、テトラコシルアルコール及びトリアコンチルアルコール等が挙げられる。
【0012】
(A113)としては、炭素数2〜100の2価アルコールとエピクロルヒドリンとの縮合物(重縮合物を含む)で末端がジグリシジルエーテルであるもの等が挙げられる。炭素数2〜100の2価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、数平均分子量(以下、Mnと略記する。)が106〜1932のポリエチレングリコール、Mn=134〜5818のポリプロピレングリコール、Mn=162〜1818のポリテトラメチレンエーテルグリコール及びビスフェノールAの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド(1〜21モル)付加物等が挙げられる。
【0013】
ジグリシジルエステル(A12)としては、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸のジグリシジルエステル(A121)、及び炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸のジグリシジルエステル(A122)等が含まれる。
【0014】
(A121)としては、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸とエピクロルヒドリンとの縮合物(重縮合物を含む)であって、グリシジル基を2個有するもの等が挙げられる。炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フェニルマロン酸、ホモフタル酸、フェニルコハク酸、フェニルグルタル酸、フェニルアジピン酸、ビフェニルジカルボン酸及びナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0015】
(A122)としては、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸とエピクロルヒドリンとの縮合物(重縮合物を含む)であって、グリシジル基を2個有するもの等が挙げられる。炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンニ酸、テトラデカンニ酸、ヘキサデカンニ酸、オクタデカンニ酸及びイコサンニ酸等が挙げられる。
【0016】
ジグリシジルアミン(A13)としては、炭素数6〜20で、2〜4個の活性水素原子をもつ芳香族アミンとエピクロルヒドリンとの反応で得られるN−グリシジル化物(N,N−ジグリシジルアニリン及びN,N−ジグリシジルトルイジン等)等が挙げられる。炭素数6〜20で、2〜4個の活性水素原子をもつ芳香族アミンとしては、アニリン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン及びトルイジン等が挙げられる。
【0017】
脂環式ジエポキシド(A14)としては、炭素数6〜50で、エポキシ基を2つ有する脂環式エポキシド[ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエーテル、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート及びビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)ブチルアミン等]が挙げられる。
【0018】
不飽和ポリエステル樹脂(A2)としては、α,β−不飽和ジカルボン酸を含む酸成分とアルコールとを反応させて得られる不飽和ポリエステルを、重合性不飽和単量体に溶解したものが挙げられる。α,β−不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等及びこれらの酸無水物等の誘導体等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。また、必要に応じてα,β−不飽和ジカルボン酸以外の酸性分としてフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の飽和ジカルボン酸及びこれらの酸無水物等の誘導体をα,β−不飽和ジカルボン酸と併用してもよい。アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族グリコール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド(1〜100モル)付加物、キシレングリコール等の芳香族ジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等が挙げられ、これらの2種以上を併用してもよい。(A2)の具体例としては、例えば、フマル酸又はマレイン酸とビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下、EOと略記する。)付加物との縮合物、フマル酸又はマレイン酸とビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、POと略記する。)付加物との縮合物及びフマル酸又はマレイン酸とビスフェノールAのEO及びPO付加物(EO及びPOの付加は、ランダムでもブロックでもよい)との縮合物等が含まれ、これらの縮合物は必要に応じてスチレン等のモノマーに溶解したものでもよい。(A2)で市販されているものとしては、「リゴラックシリーズ」[昭和高分子(株)製]等が挙げられる。
【0019】
ビニルエステル樹脂(A3)としては、前記エポキシ樹脂とα,β−不飽和モノカルボン酸とをエステル化させることで得られるエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。α,β−不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、チグリン酸及び桂皮酸等が挙げられ、これらの2種以上を併用してもよい。(A3)の具体例としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(メタ)アクリレート変性物[ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ基と(メタ)アクリル酸のカルボキシル基とが反応して得られる末端(メタ)アクリレート変性樹脂等]等が含まれ、これらの変性物は必要に応じてスチレン等のモノマーに溶解したものでもよい。(A3)で市販されているものとしては、「リポキシシリーズ」[昭和高分子(株)製]等が挙げられる。
【0020】
フェノール樹脂(A4)としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、カシュー油、リグニン、レゾルシン及びカテコール等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びフルフラール等のアルデヒド類との縮合により得られる樹脂が挙げられ、ノボラック樹脂やレゾール樹脂等が挙げられる。ノボラック樹脂は、シュウ酸等の酸触媒存在下で、フェノールとホルムアルデヒドとを同量又はフェノール過剰の条件で反応させることで得られる。レゾール樹脂は、水酸化ナトリウム、アンモニア又は有機アミン等の塩基触媒の存在下で、フェノールとホルムアルデヒドとを同量又はホルムアルデヒド過剰の条件で反応させることにより得られる。(A4)で市販されているものとしては、「スミライトレジンシリーズ」[住友ベークライト(株)製]等が挙げられる。
【0021】
ユリア樹脂(A5)としては、尿素とホルムアルデヒドとの縮合によって得られる樹脂が挙げられる。市販されているものとしては、「UA−144」[(株)サンベーク製]等が挙げられる。
【0022】
メラミン樹脂(A6)としては、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合により得られる樹脂が挙げられる。市販されているものとしては、「ニカラックシリーズ」[(株)三和ケミカル製]等が挙げられる。
【0023】
硬化性樹脂(A)としては、(A1)〜(A5)の2種以上を併用して用いることができる。(A1)〜(A5)のうち、硬化後の強度の観点から、好ましくはエポキシ樹脂(A1)、不飽和ポリエステル樹脂(A2)及びビニルエステル樹脂(A3)であり、更に好ましくはエポキシ樹脂(A1)であり、特に好ましくはジグリシジルエーテル(A11)であり、最も好ましくは2価フェノール類のジグリシジルエーテル(A111)である。
【0024】
本発明における熱可塑性樹脂(B)とは、ガラス転移温度又は融点まで加熱することにより軟化し、冷却すると再び固化し、軟化と固化を繰り返すことができる樹脂のことであり、具体的には、汎用プラスチック(B1)、エンジニアリングプラスチック(B2)及びスーパーエンジニアリングプラスチック(B3)等が挙げられる。
【0025】
汎用プラスチック(B1)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル/スチレン共重合体)及びアクリル樹脂{(メタ)アクリルエステル重合体}等が挙げられる。
【0026】
エンジニアリングプラスチック(B2)としては、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0027】
スーパーエンジニアリングプラスチック(B3)としては、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド及びポリアミドイミド等が挙げられる。
【0028】
熱可塑性樹脂(B)としては、(B1)〜(B3)のうちの2種以上を併用して用いることができる。(B1)〜(B3)のうち強度の観点から、好ましくはエンジニアリングプラスチック(B2)及びスーパーエンジニアリングプラスチック(B3)であり、更に好ましくはポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド及びポリアミドイミドからなる群より選ばれる1種以上であり、特に好ましくはポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン及びポリエーテルスルホンであり、最も好ましくはポリエーテルスルホンである。
【0029】
本発明における(B)の荷重たわみ温度は、耐熱性の観点から、好ましくは120〜300℃であり、更に好ましくは130〜300℃である。本発明における荷重たわみ温度とは、合成樹脂の耐熱性を表す数値であり、荷重たわみ温度が高いほど、合成樹脂の耐熱性が高いことを表す。なお、荷重たわみ温度は、合成樹脂に荷重を与えた状態で温度を上げていき、たわみの大きさが一定の値になる時の温度を測定するものであり、例えば「HDTテスターS−3M」[(株)東洋精機製作所製]等を用いて、JIS K7191(2007)の方法で測定することができる。本発明における(B)の荷重たわみ温度を120〜300℃とするには、(B)のMnを1,000〜500,000にするとよい。荷重たわみ温度を上げるにはMnを高くし、下げるにはMnを低くする。
【0030】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)及び(B)以外に、更に、硬化剤(C)及び/又は添加剤(D)等を含有してもよい。硬化剤(C)は、(A)がエポキシ樹脂の場合に使用するものであり、従来からエポキシ樹脂の硬化剤として使用されているものであればいずれも使用することができる。硬化剤(C)としては、ポリアミン系硬化剤(C1)、酸無水物系硬化剤(C2)、フェノール系硬化剤(C3)、ポリチオール系硬化剤(C4)、イミダゾール類(C5)、3級アミン類(C6)、オニウム塩類(C7)、ジシアンジアミド及びトリフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0031】
ポリアミン系硬化剤(C1)としては、脂肪族ポリアミン(C11)、脂環式ポリアミン(C12)及び芳香族ポリアミン(C13)等が挙げられる。脂肪族ポリアミン(C11)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン及びキシレンジアミン等が挙げられる。脂環式ポリアミン(C12)としては、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ノルボルネンジアミン及び1,2−ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。芳香族ポリアミン(C13)としては、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。
【0032】
酸無水物系硬化剤(C2)としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸及びドデセニル無水コハク酸等が挙げられる。
【0033】
フェノール系硬化剤(C3)としては、フェノールノボラック、キシリレンノボラック、ビスフェノールAノボラック及びトリフェニルメタンノボラック等が挙げられる。
【0034】
ポリチオール系硬化剤(C4)としては、(A111)又は(A112)と硫化水素との反応物等が挙げられる。
【0035】
イミダゾール類(C5)としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール及び1−(2−シアノエチル)−2−エチル−メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0036】
3級アミン類(C6)としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン及び1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等が挙げられる。
【0037】
オニウム塩類(C7)としては、テトラブチルホスホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩及び芳香族ヨードニウム塩等が挙げられる。
【0038】
硬化剤(C)のうち、強度及び取り扱い性の観点から、好ましくは芳香族ポリアミン系硬化剤(C13)、フェノール系硬化剤(C3)、イミダゾール類(C4)及びジシアンジアミドであり、更に好ましくはジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−メチルイミダゾール及びジシアンジアミドである。
【0039】
添加剤(D)としては、以下のものが挙げられる。
分散剤;ポリ(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数4〜30)エステル[重量平均分子量(以下、Mwと略記する。)1,000〜200,000]、ポリ(メタ)アクリル酸ポリアルキレン(炭素数2又は3)オキサイド(アルキレンオキサイドの付加モル数:1〜30)エステル(Mw=1,000〜200,000)、高級アルコール(炭素数6〜22)のポリアルキレン(炭素数2又は3)オキサイド(アルキレンオキサイドの付加モル数:1〜30)、多価アルコール(例えばエチレングリコール)のポリアルキレン(炭素数2又は3)オキサイド(アルキレンオキサイドの付加モル数:1〜50)、アルキルフェノール(炭素数10〜20)、スチレン化フェノール(炭素数14〜62)、スチレン化クミルフェノール及びスチレン化クレゾール(炭素数15〜61)のアルキレン(炭素数2又は3)オキサイド付加物(Mw=500〜5,000)等。
粘度調整剤;ポリオール[Mn=400未満の低分子ポリオール、Mn=400〜5,000の高分子ポリオール、親水基含有低分子(Mn=400未満)ポリオール等]。
防腐剤;安息香酸類、サリチル酸類、ソルビン酸類、第4級アンモニウム塩類及びイミダゾール類等。
酸化防止剤;フェノール類(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等)、チオジプロピオネート類(ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート等)及びホスファイト類(トリフェニルホスファイト等)等。
【0040】
本発明における海島構造とは、本発明の硬化性樹脂組成物中で異なる2種の相が相分離構造を有するものであり、連続相であるマトリックス(海)中に不連続相であるドメイン(島)が平均粒子径0.1μm以上、好ましくは0.2〜10μmの大きさで分散した状態であることを意味する。
【0041】
硬化剤(C)及び/又は添加剤(D)は、マトリックス中に含有しても、又はドメイン中に含有してもよく、両方に含有してもよい。通常は、硬化剤(C)はマトリックス中に含有し、添加剤(D)はドメイン中に含有する。更に、ドメイン中には、海島構造をとる限りは、適量の硬化性樹脂(A)を含有してもよい。ドメイン中の硬化性樹脂(A)の含有量(重量%)は、海島構造のとりやすさの観点から、ドメイン中に好ましくは70重量%以下であり、更に好ましくは10〜60重量%である。
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物において、硬化性樹脂組成物の全重量に基づく(A)〜(D)のそれぞれの好ましい含有量(重量%)は以下の通りである。硬化性樹脂(A)は、硬化性樹脂組成物の粘度及び硬化後の強度の観点から、好ましくは10〜90重量%であり、更に好ましくは30〜85重量%である。熱可塑性樹脂(B)は、硬化性樹脂組成物の粘度及び硬化後の強度の観点から、好ましくは10〜90重量%であり、更に好ましくは15〜70重量%である。硬化剤(C)は、硬化後の強度の観点から、好ましくは0〜45重量%であり、更に好ましくは0〜35重量%である。なお、硬化剤(C)は、硬化性樹脂(A)100重量部に対しては、好ましくは0〜50重量部であり、更に好ましくは0〜30重量部である。添加剤(D)は、硬化性樹脂組成物の粘度及び硬化後の強度の観点から、好ましくは0〜30重量%であり、更に好ましくは0〜10重量%である。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物の全体における硬化性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の重量比率[(A)/(B)]は、硬化性樹脂組成物の粘度及び硬化後の強度の観点から、好ましくは10/90〜90/10であり、更に好ましくは30/70〜85/15であり、特に好ましくは50/50〜80/20である。
【0044】
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
(1):硬化性樹脂(A)及び微粒子状の熱可塑性樹脂(B)、並びに必要により硬化剤(C)及び/又は添加剤(D)を一括して容器に仕込み、攪拌混合する方法。
(2):ドメインを構成する成分として予め熱可塑性樹脂(B)と硬化性樹脂(A)の混合物からなる微粒子を作製しておき、硬化性樹脂(A)及び前記微粒子、並びに必要により硬化剤(C)及び/又は添加剤(D)を一括して容器に仕込み、攪拌混合する方法。
(3):マトリックスを構成する成分として予め硬化性樹脂(A)と硬化剤(C)の混合物を作製しておき、前記混合物及び前記硬化性樹脂(B)若しくは前記微粒子、並びに必要により硬化剤(C)及び/又は添加剤(D)を一括して容器に仕込み、攪拌混合する方法。
(4):前記(1)〜(3)の方法において、各成分を一括ではなくて、マトリックスを形成すべき成分の中に、その他の成分を順次仕込みながら攪拌混合する方法。
これらの方法のうち、ドメインの微粒子化及び硬化性樹脂組成物の粘度の観点から、好ましくは(2)〜(4)の方法であり、更に好ましくは(2)又は(4)の方法である。
【0045】
硬化性樹脂組成物の製造における攪拌混合は、原料を攪拌混合装置に投入順序に特に制限なく仕込み、特に原料を溶融させる必要はないが、仕込んだ原料の粘度が高い時には、20〜50℃に加温して均一に混合することが好ましい。攪拌混合装置としては、攪拌羽根(羽根形状:カイ型及び三段パドル等)付き混合槽、ナウターミキサー、リボンミキサー、コニカルブレンダー、モルタルミキサー、ヘンシェルミキサー、バッチ混練機{バンバリー[Farrel(株)製]及びニーダー等}、連続混練機{FCM[Farrel(株)製]、LCM[(株)神戸製鋼所製]及びCIM[(株)日本製鋼所製]等}、単軸押出機及び二軸押出機等が挙げられる。
【0046】
前記(2)の方法における、ドメインを構成する成分として予め熱可塑性樹脂(B)と硬化性樹脂(A)の混合物からなる微粒子を作製する方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
(a):熱可塑性樹脂(B)及び硬化性樹脂(A)を配合し、撹拌下に40〜200℃に加温して混合し、均一に相溶させた後、冷却してビーズミル等の粉砕機で粉砕する方法。
(b):熱可塑性樹脂(B)及び硬化性樹脂(A)を配合し、撹拌下に40〜200℃に加温して混合し、均一に相溶させた後、該混合物を水性媒体に分散し、水性媒体を溜去して微粒子を得る方法。
混合物を水性媒体に分散する際には分散剤を使用してもよい。分散剤としては前述の添加剤(D)として例示したもの等が挙げられる。水性媒体への分散の方法としては、混合装置を用いた分散方法が挙げられ、混合装置としては、攪拌羽根(羽根形状:カイ型及び三段パドル等)付き混合槽、ナウターミキサー、リボンミキサー、コニカルブレンダー、モルタルミキサー、万能混合機[万能混合攪拌機5DM−L、(株)三英製作所]及びヘンシェルミキサー等が挙げられる。水性媒体としては、水、親水性有機溶媒及びこれらの混合物が挙げられる。親水性有機溶媒としては、炭素数1〜4の低級アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノール等)、炭素数3〜6のケトン(アセトン、エチルメチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)、炭素数2〜6のグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール等)、前記炭素数2〜6のグリコールのモノアルキル(炭素数1〜2)エーテル、ジメチルホルムアミド及び炭素数3〜5の酢酸アルキルエステル(酢酸メチル及び酢酸エチル等)等が挙げられる。これらのうち、安全性等の観点から、好ましくは水並びに親水性有機溶媒及び水との混合溶媒であり、更に好ましくは水である。
【0047】
前記(3)の方法における、マトリックスを構成する成分として予め硬化性樹脂(A)と硬化剤(C)の混合物を作製する方法としては、硬化性樹脂(A)と硬化剤(C)を、攪拌混合装置に投入順序に特に制限なく仕込み、特に原料を溶融させる必要はないが、仕込んだ原料の粘度が高い時には、20〜50℃に加温して均一に混合することが好ましい。
攪拌混合装置としては、前述の硬化性樹脂組成物の製造方法で挙げた装置と同様のものが挙げられる。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるドメインの平均粒子径は、硬化性樹脂樹脂組成物の硬化前の粘度及び分散安定性の観点から、好ましくは0.2〜10μmであり、更に好ましくは0.2〜5μmである。なお、ドメインの平均粒子径は、市販の粒度分布測定装置{例えば、レーザー回折式粒度分布測定器LA−750[堀場製作所(株)製]}を用いて測定することができる。
【0049】
本発明の硬化性樹脂組成物における、マトリックス中の硬化性樹脂(A)の含有量(重量%)は、硬化性樹脂組成物の粘度及び硬化後の強度の観点から、好ましくは40〜100重量%であり、更に好ましくは50〜95重量%であり、ドメイン中の硬化性樹脂(A)の含有量(重量%)は、海島構造の形成しやすさ及び硬化後の強度の観点から、好ましくは0〜70重量%であり、更に好ましくは10〜60重量%である。
【0050】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるドメイン中の熱可塑性樹脂(B)の含有量(重量%)は、海島構造の形成しやすさ及び硬化後の強度の観点から、好ましくは30〜100重量%であり、更に好ましくは40〜90重量%である。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化後にはマトリックス及びドメインが相溶して均一化する。硬化の条件は、加熱による方法や電子線、紫外線等のエネルギー線による方法、あるいはこれらの併用法等が挙げられるが、硬化後の樹脂強度の観点から、好ましくは80〜180℃の熱をかけて硬化させる方法である。
【0052】
本発明においてマトリックス及びドメインが相溶して均一化するとは、マトリックス中に微粒子状に分散していたドメインの平均粒子径が、硬化後に0.1μm未満であれば相溶して均一化していると判断する。硬化後のドメインの平均粒子径は、硬化後の硬化性樹脂組成物を所定の大きさに切り取ったものを、前記粒度分布測定装置の測定セルに入れて測定することができる。
【0053】
本発明の硬化性樹脂組成物の80℃での粘度は、取り扱い性の観点から好ましくは0.1〜10Pa・sであり、更に好ましくは0.2〜5Pa・sである。なお、粘度の測定は、JIS K7117−1:1999(ISO2555:1990に対応)に準拠して、ブルックフィールド型粘度計(BL型)により測定することができる。
【0054】
本発明の繊維強化複合材料用プレプリグは、本発明の硬化性樹脂組成物と繊維とを含有してなるものであり、繊維としては、繊維強化複合材料の強度の観点から、好ましくはアラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維及びスラッグ繊維であり、更に好ましくは炭素繊維である。また、繊維は2種以上を併用してもよい。
【0055】
前記繊維は、取り扱い性をよくするために、本発明の硬化性樹脂組成物を組み合わせる前に、前記繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維を、公知の集束剤で処理して、繊維束にするのが好ましい(繊維3,000〜3万本程度を束ねた繊維束)。また、これらの繊維束は織物、編み物、不織布(フェルト、マット及びペーパー等)、チョップドファイバー及びミルドファイバー等の繊維加工品に加工してもよい。
【0056】
本発明の繊維強化複合材料用プレプリグを作製する方法としては、公知の方法を用いることができる。具体的には、(1)ナイフコーター等により樹脂組成物を離型紙上に塗布してフィルム化し、繊維束又は繊維加工品に硬化性樹脂組成物のフィルムを重ねて加熱加圧して含浸させる方法、(2)繊維束又は繊維加工品を、硬化性樹脂組成物を有機溶媒に溶解させたものに浸漬し、有機溶媒を溜去する方法、(3)スプレーコーター等を用いて直接硬化性樹脂組成物を繊維束又は繊維加工品に吹き付ける方法、等が挙げられる。
【0057】
本発明の繊維強化複合材料用プレプリグにおいて、硬化性樹脂組成物と繊維との重量比(硬化性樹脂組成物/繊維)は、繊維強化複合材料の強度の観点から、好ましくは10/90〜90/10であり、更に好ましくは20/80〜70/30であり、特に好ましくは30/70〜60/40である。
【0058】
本発明の繊維強化複合材料成形体は、本発明の硬化性樹脂組成物と繊維とを組み合わせて得られた繊維強化複合材料用プレプリグを成形及び/又は硬化させることにより得られる。硬化方法としては、加熱による方法や電子線、紫外線等のエネルギー線による方法、あるいはこれらの併用法が挙げられる。成形する装置としては、公知のオートクレーブやプレス機及びRTM等の装置が挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に記載がない限り、部は重量部、%は重量%を示す。
【0060】
<マトリックス中に分散したドメインの平均粒子径の測定>
マトリックス中に分散したドメインの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定器「LA−750」[堀場製作所(株)製]を用いてドメインのメジアン径を測定し平均粒子径とした。
【0061】
<硬化性樹脂組成物の粘度の測定>
硬化性樹脂組成物の粘度の測定は、以下の条件で2回測定した値の平均値とした。
機種:BL型粘度計[東機産業(株)製]
測定温度:80℃、ローターNo.3、回転数30rpm
【0062】
<樹脂硬化物の引っ張り強度及び引っ張り伸びの測定>
樹脂硬化物の引っ張り強度及び引っ張り伸びは、オートグラフAGS−500D[島津製作所(株)製]を用いて、JIS K7113(1995)の方法で測定した。引っ張り強度及び引っ張り伸びの数値が大きいほど樹脂硬化物の強度が高いことを示す。
【0063】
<樹脂硬化物の荷重たわみ温度の測定>
樹脂硬化物の荷重たわみ温度は、「HDTテスターS−3M」[(株)東洋精機製作所製] を用いて、JIS K7191(2007)の方法で測定した。荷重たわみ温度の数値が大きいほど樹脂硬化物の耐熱性が良好であることを示す。
【0064】
<製造例1>
ドメイン用の微粒子(P−1)の製造;
撹拌機及び温度計を備えたガラス容器に、熱可塑性樹脂(B)としてのポリエーテルスルホン「スミカエクセル4100P」[荷重たわみ温度=210℃、住友化学(株)製]30部及び硬化性樹脂(A)としてのビスフェノールA型エポキシ樹脂「JER828」[ジャパンエポキシレジン(株)製]30部を仕込み、180℃に加温後1時間攪拌し、均一に相溶させた。得られた樹脂の溶融混合物を150℃で離形紙上に取り出し、室温まで冷却した後、ブロック状に粉砕し、−10℃まで冷却後、ジェットミル「ポケットジェットJr」[(株)栗本鉄工所製]で微粉砕して、ドメイン用の微粒子(P−1)を得た。(P−1)の平均粒子径は3.5μmであった。
【0065】
<製造例2>
ドメイン用の微粒子(P−2)の製造;
撹拌機及び温度計を備えたガラス容器に、前記ポリエーテルスルホン「スミカエクセル4100P」30部、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂「JER828」30部及びジメチルホルムアミド60部を仕込み、100℃に加温後1時間攪拌し、均一に相溶させ透明な樹脂溶液を得た。別のガラス容器に水1000部及びポリカルボン酸型分散剤「キャリボンB」[三洋化成工業(株)製]1部を仕込み溶解させ、常温で攪拌下、1時間かけて前記樹脂溶液120部を滴下した。次いで50℃まで加温後、減圧下水及びジメチルホルムアミドを溜去し、ドメイン用の微粒子(P−2)を得た。(P−2)の平均粒子径は0.5μmであった。
【0066】
<製造例3>
ドメイン用の微粒子(P−3)の製造;
ポリエーテルスルホン「スミカエクセル4100P」をポリフェニレンスルフィド「DIC−PPS FZ−2100」[荷重たわみ温度=138℃、DIC(株)製]に変更したこと以外は製造例1と同様にして、ドメイン用の微粒子(P−3)を得た。(P−3)の平均粒子径は9.5μmであった。
【0067】
<製造例4>
ドメイン用の微粒子(P−4)の製造;
ポリエーテルスルホン「スミカエクセル4100P」をポリスルホン「P−1700」[荷重たわみ温度=175℃、帝人アモコ(株)製]に変更したこと以外は製造例1と同様にして、ドメイン用の微粒子(P−4)を得た。(P−4)の平均粒子径は6.2μmであった。
【0068】
<製造例5>
ドメイン用の微粒子(P−5)の製造;
ポリエーテルスルホン「スミカエクセル4100P」90部のみをジェットミル「ポケットジェットJr」で粉砕し、ドメイン用の微粒子(P−5)を得た。(P−5)の平均粒子径は7.9μmであった。
【0069】
<実施例1>
硬化性樹脂(A)としてのビスフェノールA型エポキシ樹脂「JER828」38部、硬化剤(C)としての1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール「2E4MZ−CN」[四国化成(株)製]2部、及び製造例1で作製した微粒子(P−1)60部を攪拌羽根付きガラス製混合槽に仕込み、室温で30分間混合し、硬化性樹脂組成物(S−1)100部を得た。(S−1)中のドメインの平均粒子径は3.7μmであり、(S−1)の80℃での粘度は1.1Pa・sであった。(S−1)を真空中で脱泡した後、2mm厚のテトラフルオロエチレン製スペーサーにより、厚み2mmになるように設定したモールド中で130℃で8時間硬化させ、厚さ2mmの樹脂硬化物を作製した。また同様にして4及び10mm厚の樹脂硬化物を作製した。2mm厚の樹脂硬化物で引っ張り強度及び引っ張り伸びを測定し、4mm厚の硬化物で荷重たわみ温度を測定し、10mm厚の硬化物で樹脂硬化物中のドメインの平均粒子径を測定した。
【0070】
<実施例2>
(P−1)を(P−2)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物(S−2)を得た。(S−2)中のドメインの平均粒子径は0.6μmであり、(S−2)の80℃での粘度は1.9Pa・sであった。また、実施例1と同様にして樹脂硬化物を作製し、樹脂硬化物の引っ張り強度、引っ張り伸び及び荷重たわみ温度並びに樹脂硬化物中のドメインの平均粒子径を測定した。
【0071】
<実施例3>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂「JER828」15部、硬化剤としてのジアミノジフェニルメタン24部、及び「2E4MZ−CN」1部並びに製造例2で作製した微粒子(P−2)60部を攪拌羽根付きガラス製混合槽に仕込み、室温で30分間混合し、硬化性樹脂組成物(S−3)100部を得た。(S−3)中のドメインの平均粒子径は0.6μmであり、(S−3)の80℃での粘度は2.7Pa・sであった。また、実施例1と同様にして樹脂硬化物を作製し、樹脂硬化物の引っ張り強度、引っ張り伸び及び荷重たわみ温度並びに樹脂硬化物中のドメインの平均粒子径を測定した。
【0072】
<実施例4>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂「JER828」38部を不飽和ポリエステル樹脂「リゴラック158BQT」[昭和高分子(株)製]40部に変更し、硬化剤を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物(S−4)を得た。(S−4)中のドメインの平均粒子径は0.6μmであり、(S−4)の80℃での粘度は0.3Pa・sであった。また、実施例1と同様にして樹脂硬化物を作製し、樹脂硬化物の引っ張り強度、引っ張り伸び及び荷重たわみ温度並びに樹脂硬化物中のドメインの平均粒子径を測定した。
【0073】
<実施例5>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂「JER828」38部をビニルエステル樹脂「リポキシR802」[昭和高分子(株)製]40部に変更し、硬化剤を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物(S−5)を得た。(S−5)中のドメインの平均粒子径は0.7μmであり、(S−5)の80℃での粘度は0.2Pa・sであった。また、実施例1と同様にして樹脂硬化物を作製し、樹脂硬化物の引っ張り強度、引っ張り伸び及び荷重たわみ温度並びに樹脂硬化物中のドメインの平均粒子径を測定した。
【0074】
<実施例6>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂「JER828」38部をフェノール樹脂「ショウノールBRL−240」[昭和高分子(株)製]30部及び「FRH−50」[昭和高分子(株)製]10部に変更し、硬化剤を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物(S−6)を得た。(S−6)中のドメインの平均粒子径は0.6μmであり、(S−6)の80℃での粘度は1.2Pa・sであった。また、実施例1と同様にして樹脂硬化物を作製し、樹脂硬化物の引っ張り強度、引っ張り伸び及び荷重たわみ温度並びに樹脂硬化物中のドメインの平均粒子径を測定した。
【0075】
<実施例7>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂「JER828」38部をユリア樹脂「UA−144」[(株)サンベーク製]40部に変更し、硬化剤を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物(S−7)を得た。(S−7)中のドメインの平均粒子径は0.7μmであり、(S−7)の80℃での粘度は0.8Pa・sであった。また実施例1と同様にして樹脂硬化物を作製し、樹脂硬化物の引っ張り強度、引っ張り伸び及び荷重たわみ温度並びに樹脂硬化物中のドメインの平均粒子径を測定した。
【0076】
<実施例8>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂「JER828」38部をメラミン樹脂「ニカラックMW−30」[(株)三和ケミカル製]40部に変更し、硬化剤を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物(S−8)を得た。(S−8)中のドメインの平均粒子径は0.7μmであり、(S−8)の80℃での粘度は1.3Pa・sであった。また、実施例1と同様にして樹脂硬化物を作製し、樹脂硬化物の引っ張り強度、引っ張り伸び及び荷重たわみ温度並びに樹脂硬化物中のドメインの平均粒子径を測定した。
【0077】
<実施例9>
(P−1)を(P−3)に変更したこと以外は実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物(S−9)を得た。(S−9)中のドメインの平均粒子径は9.8μmであり、(S−9)の80℃での粘度は1.1Pa・sであった。また、実施例1と同様にして樹脂硬化物を作製し、樹脂硬化物の引っ張り強度、引っ張り伸び及び荷重たわみ温度並びに樹脂硬化物中のドメインの平均粒子径を測定した。
【0078】
<実施例10>
(P−1)を(P−4)に変更したこと以外は実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物(S−10)を得た。(S−10)中のドメインの平均粒子径は6.6μmであり、(S−10)の80℃での粘度は1.0Pa・sであった。また、実施例1と同様にして樹脂硬化物を作製し、樹脂硬化物の引っ張り強度、引っ張り伸び及び荷重たわみ温度並びに樹脂硬化物中のドメインの平均粒子径を測定した。
【0079】
<実施例11>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂「JER828」の部数38部を78部に、(P−2)の部数60部を20部にしたこと以外は実施例2と同様にして硬化性樹脂組成物(S−11)を得た。(S−11)中のドメインの平均粒子径は0.6μmであり、(S−11)の80℃での粘度は1.1Pa・sであった。また、実施例1と同様にして樹脂硬化物を作製し、樹脂硬化物の引っ張り強度、引っ張り伸び及び荷重たわみ温度並びに樹脂硬化物中のドメインの平均粒子径を測定した。
【0080】
<実施例12>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂「JER828」の部数38部を9部に、硬化剤「2E4MZ−CN」の部数2部を1部に、(P−1)60部を(P−5)90部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物(S−12)を得た。(S−12)中のドメインの平均粒子径は8.4μmであり、(S−12)の80℃での粘度は9.7Pa・sであった。また、実施例1と同様にして樹脂硬化物を作製し、樹脂硬化物の引っ張り強度、引っ張り伸び及び荷重たわみ温度並びに樹脂硬化物中のドメインの平均粒子径を測定した。
【0081】
<比較例1>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂「JER828」97部及び硬化剤「2E4MZ−CN」3部を攪拌羽根付きガラス製混合槽に仕込み、室温で30分間混合して硬化性樹脂組成物(S’−1)100部を得た。(S’−1)の80℃での粘度は0.3Pa・sであった。また、実施例1と同様にして樹脂硬化物を作製し、樹脂硬化物の引っ張り強度、引っ張り伸び及び荷重たわみ温度並びに樹脂硬化物中のドメインの平均粒子径を測定した。
【0082】
<比較例2>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂「JER828」68部及びポリエーテルスルホン「スミカエクセル4100P」30部を180℃でビーカー中で30分間混合し、混合、均一化した後、更に100℃で硬化剤「2E4MZ−CN」2部を加え100℃で3分間混合して硬化性樹脂組成物(S’−2)を得た。(S’−2)中のドメインの平均粒子径は0.1μm未満であり、ドメインがマトリックス中に相溶していた。また(S’−2)の80℃での粘度は極めて高く、流動性がないため測定不能だった。また、実施例1と同様にして樹脂硬化物を作製し、樹脂硬化物の引っ張り強度、引っ張り伸び及び荷重たわみ温度並びに樹脂硬化物中のドメインの平均粒子径を測定した。
【0083】
<実施例13>
繊維強化複合材料成形体の作製;
(S−2)をナイフコーター[(株)小平製作所製]を用いて離型紙上に0.1mm厚で塗布し、(S−2)のシートを2枚作製した。得られた(S−2)のシートで炭素繊維束(繊度800tex、フィラメント数12,000本)を上下から挟み、80℃でプレスして繊維強化複合材料用プレプリグを作製した[硬化性樹脂組成物/炭素繊維(重量比率)=40/60]。得られたプレプリグ10枚を重ねて、2mm厚のポリテトラフルオロエチレン製スペーサーにより、厚み2mmになるように設定したモールド中で130℃で8時間硬化させ、2mm厚の繊維強化複合材料成形体(X−1)を作製し、(X−1)の引っ張り強度、伸び及び荷重たわみ温度を測定した。
【0084】
<比較例3>
比較の繊維強化複合材料成形体の作製;
(S−2)を(S’−1)に変更したこと以外は実施例13と同様にして比較の繊維強化複合材料成形体(X’−1)を作製し、(X’−1)の引っ張り強度、引っ張り伸び及び荷重たわみ温度を測定した。
【0085】
<比較例4>
比較の繊維強化複合材料成形体の作製;
(S−2)を(S’−2)に変更して実施例13と同様にして繊維強化複合材料用プレプリグを作製しようとしたが、(S’−2)の流動性がないために、炭素繊維束への含浸ができず、繊維強化複合材料成形体(X’−2)を作製することができなかった。
【0086】
(S−1)〜(S−12)、(S’−1)及び(S’−2)の硬化性樹脂組成物中のドメインの平均粒子径及び80℃での粘度の測定結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
(S−1)〜(S−12)、(S’−1)及び(S’−2)の硬化性樹脂組成物の硬化後の引っ張り強度、引っ張り伸び、荷重たわみ温度及びドメインの平均粒子径の測定結果を表2に示す。なお、前述のように、硬化後のドメインの平均粒子径の測定結果が0.1μm未満の場合は「硬化後にマトリックス及びドメインが相溶して均一化している」ものと見なす。
【0089】
【表2】

【0090】
(X−1)、(X’−1)及び(X’−2)の引っ張り強度、引っ張り伸び及び荷重たわみ温度の測定結果を表3に示す。
【0091】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の硬化性樹脂組成物は、使用温度での粘度が低いため取り扱いがしやすく、かつ硬化後の樹脂強度が高く、耐熱性に優れているため、特に、繊維強化プラスチック用のマトリックス樹脂として好適である。また本発明の繊維強化複合材料成形体は、各種の土木・建築用材料、輸送機用材料、スポーツ用品材料及び発電装置用材料等として好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂及びメラミン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化性樹脂(A)を含むマトリックス中に、熱可塑性樹脂(B)を含むドメインが微粒子状に分散してなる海島構造を有する硬化性樹脂組成物であって、前記硬化性樹脂(A)の硬化後には前記マトリックス及びドメインが相溶して均一化することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記硬化性樹脂(A)がエポキシ樹脂である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂(B)が、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド及びポリアミドイミドからなる群より選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂(B)の荷重たわみ温度が120〜300℃である請求項3記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ドメインの平均粒子径が0.2〜10μmである請求項1〜4いずれか記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記硬化性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の重量比率[(A)/(B)]が、10/90〜90/10である請求項1〜5いずれか記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の硬化性樹脂組成物、並びにアラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維及びスラッグ繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維を含有してなる繊維強化複合材料用プレプリグ。
【請求項8】
請求項7記載のプレプリグを成形及び硬化してなる繊維強化複合材料成形体。

【公開番号】特開2010−189587(P2010−189587A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37328(P2009−37328)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】