説明

硬化性組成物、硬化組成物及びそれから誘導される物品

(a)2以上の官能基を有する1種以上の多官能性アクリレート、(b)1種以上のモノアクリレートモノマー、(c)1種以上のヘテロ原子含有ジアクリレート(ここで、ヘテロ原子はイオウ又はセレンである)及び(d)硬化剤からなる硬化性組成物が発見された。この硬化性組成物は、調光装置及びその他の光学装置に使用するのに適切な高屈折率材料の前駆体として見込みがある。加えて、新規な硬化性組成物は、ディスプレイフィルム、特に輝度向上ディスプレイフィルムを形成する際に有用となり得るコーティングを製造するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングの製造並びにディプレイフィルム、特に輝度向上フィルムの形成に有用な硬化性組成物及び硬化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
輝度向上フィルムは、ラップトップコンピューター、テレビ、投影用ディスプレイ、交通信号、照明標識、ビデオカメラなどの家庭用電化製品装置のフラットパネルディスプレイとして広範な用途がある。例えば、バックライトディスプレイの場合、輝度向上フィルムはフィルム表面上に複製されたプリズム構造を利用して、視軸(すなわち、ディスプレイに対して垂直)に沿って光を向かわせ、こうしてディスプレイのユーザーが見る光の輝度を増強すると共に、その系が所望のレベルの軸上照度を作り出すのに使用する電力を低下させることができる。通例、輝度向上フィルムは、光学的に透明であり、かつ表面微細構造といわれることもあるパターン化された表面形体を有するプラスチック材料から作成されている。かかる用途にプラスチックフィルムを利用することの利点の1つは、原則として、表面微細構造のようなフィルムの物理的形体が成形のような簡単で有効な技術を用いて作り出すことができることである。
【0003】
光学材料及びディプレイフィルムのような光学製品は、重合可能な高屈折率モノマー及びかかる高屈折率モノマーを含有する硬化性組成物のような高い屈折率の材料(通例、約1.6以上の屈折率を有する材料)から製造するのが有利である。
【0004】
有用な高屈折率モノマーとしては、例えば米国特許第4578445号に記載されているもののような臭素置換芳香族(メタ)アクリレートモノマーがある。高屈折率モノマーは、通例、周囲条件下(周囲温度)で結晶又はその他の固体形態で存在し、比較的高い融点又は軟化点を有する材料である。かかる材料は周囲温度を大きく超える融点又は軟化点を有することが多い。通例、硬化性組成物は、調光フィルムのような光学装置に加工処理するために、実質的に均質でなければならない。従って、周囲温度を大きく上回る融点を有するモノマーを含む硬化性組成物は硬化性組成物に溶解しなければならないか又は
硬化性組成物が実質的に均質になる温度までその硬化性組成物を加熱しなければならない。加工処理する間硬化性組成物を加熱することになると、そのプロセスのコストと複雑さが大幅に増大し得る。例えば、加工処理工程に使用する移送ラインを加熱する必要があり得る。移送ラインを加熱すると、そのプロセス全体のエネルギー消費が増大し、また移送ラインの故障(特に、ジョイントやバルブにおいて)のリスク及びその後の揮発性有機化合物の作業場及びその周りの環境への放出のリスクが増大し得る。均一な加熱が一貫して維持されないと、周囲温度より大幅に高い融点を有するモノマーは加工処理中に硬化性組成物内で結晶化し得、その結果移送ラインを閉塞したり又は不均一で通例使用できないので廃棄しなければならない製品が生成し得る。さらに、均一性を維持するのに充分な温度に硬化性組成物を維持すると、硬化性組成物の成分の早期の重合が起こり得る。これらの付加されたプロセス要件及びそれに伴うマイナスの結果のため、高い屈折率を有する硬化組成物を製造するコストと複雑さが増大する。
【0005】
さらに、現代のミクロ複製プロセスを用いて製造される輝度向上フィルムに使用するように設計される硬化性組成物は、通例溶媒を含まない流体でなければならない。また、その流体硬化性組成物は適当なレベルの粘度を有していなければならない。通例、ミクロ複製プロセスに使用される硬化性組成物に必要とされる粘度は25℃で約5000センチポアズ未満、好ましくは1500センチポアズ未満である。加えて、硬化性組成物から製造される硬化コーティング組成物は、輝度向上フィルムのような用途に有用であるためには、比較的高い、通例約1.6以上の屈折率、約100℃未満のガラス転移温度、適切な延性、剛性、寸法安定性及び接着強度を有していなければならない。
【特許文献1】米国特許第4578445号明細書
【特許文献2】特開平2−247212号公報
【特許文献3】特開平2−258819号公報
【特許文献4】米国特許出願第10/065981号明細書
【特許文献5】米国特許出願第10/897364号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、周囲温度で液体であり、複製された表面微細構造を有する光学フィルムの生産を始めとする多くの異なる用途の加工処理要件に対して適当な粘度を有し、かつ周囲温度又はその付近の温度で液体として加工処理することができる実質的に均質な硬化性組成物を発見することは有利であろう。かかる硬化性組成物は高屈折率輝度向上フィルムのような光学装置用の硬化組成物の生産に有用であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は、(a)2以上の官能基を有する1種以上の多官能性アクリレート、(b)1種以上のモノアクリレートモノマー、(c)イオウ及びセレンからなる群から選択されるヘテロ原子を含有する1種以上のジアクリレート及び(d)1種以上の硬化剤からなる硬化性組成物を提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は、(a)2以上の官能基を有する1種以上の多官能性アクリレート、(b)1種以上のモノアクリレートモノマー及び(c)イオウ及びセレンからなる群から選択されるヘテロ原子を含有する1種以上のジアクリレートから誘導された構造単位を含む硬化アクリレート組成物からなる光学物品を提供する。
【0009】
さらに別の態様では、本発明は、(a)2以上の官能基を有する1種以上の多官能性アクリレート、(b)1種以上のモノアクリレートモノマー及び(c)イオウ及びセレンからなる群から選択されるヘテロ原子を含有する1種以上のジアクリレートから誘導された構造単位を含んでなる硬化組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明及びその実施例を参照することによって本発明の理解を深めることができよう。本明細書及び特許請求の範囲では多くの用語を用いるが、以下の意味をもつものと定義される。
【0011】
単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。
【0012】
「適宜」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象が起こる場合と起こらない場合を包含する。
【0013】
本明細書で用いる「脂肪族基」という用語は、環状でない線状又は枝分れ原子配列からなる原子価1以上の基をいう。この原子配列は、窒素、イオウ、ケイ素、セレン及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、或いは炭素と水素だけからなるものでもよい。脂肪族基は「置換」でも「非置換」でもよい。置換脂肪族基は、1以上の置換基を含む脂肪族基と定義される。置換脂肪族基は、脂肪族基上の置換に利用可能な位置の数までの多くの置換基を有していてもよい。脂肪族基上に存在し得る置換基としては、特に限定されないが、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素のようなハロゲン原子がある。置換脂肪族基として、トリフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモエチル、ブロモトリメチレン(例えば−CHCHBrCH−)などがある。便宜上、本明細書中の用語「非置換脂肪族基」は、非置換脂肪族基を含む「環状でない線状又は枝分れ原子配列」の一部として広範囲の官能基を包含するものとして定義される。非置換脂肪族基の例としては、アリル、アミノカルボニル(すなわち−CONH)、カルボニル、ジシアノイソプロピリデン(すなわち−CHC(CN)CH−)、メチル(すなわち−CH)、メチレン(すなわち−CH−)、エチル、エチレン、ホルミル、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(すなわち−CHOH)、メルカプトメチル(すなわち−CHSH)、メチルチオ(すなわち−SCH)、メチルチオメチル(すなわち−CHSCH)、メトキシ、メトキシカルボニル、ニトロメチル(すなわち−CHNO)、チオカルボニル、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリメトキシシリルプロピル、ビニル、ビニリデンなどがある。脂肪族基は、1以上の炭素原子を含むものと定義される。C〜C10脂肪族基には、1個以上ではあるが10個以下の炭素原子を含有する置換脂肪族基及び非置換脂肪族基が包含される。
【0014】
本明細書で用いる用語「芳香族基」は、1以上の原子価を有し1以上の芳香族基を含む原子配列をいう。1以上の原子価を有し1以上の芳香族基を含む原子配列として、窒素、イオウ、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく又は炭素と水素のみからなっていてもよい。本明細書で用いる用語「芳香族基」には、特に限定されないが、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニレン及びビフェニル基が包含される。上述の通り、芳香族基は1以上の芳香族基を含有する。芳香族基は常に4n+2個の「非局在化」電子を有する環状構造であり、「n」は1以上に等しい整数であり、例えばフェニル基(n=1)、チエニル基(n=1)、フラニル基(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル基(n=2)、アントラセニル基(n=3)などである。芳香族基はまた非芳香族部分を含んでいてもよい。例えば、ベンジル基はフェニル環(芳香族基)とメチレン基(非芳香族部分)からなる芳香族基である。同様に、テトラヒドロナフチル基は非芳香族部分−(CH−と縮合した芳香族基(C)からなる芳香族基である。芳香族基は「置換」されていても「非置換」でもよい。置換芳香族基は、1以上の置換基を有する芳香族基として定義される。置換芳香族基は、芳香族基上の置換に利用可能な位置の数までの多くの置換基を有していてもよい。芳香族基上に存在し得る置換基としては、特に限定されないが、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素のようなハロゲン原子がある。置換芳香族基として、トリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−フェニルオキシ)(すなわち−OPhC(CFPhO−)、クロロメチルフェニル、3−トリフルオロビニル−2−チエニル、3−トリクロロメチルフェニル(すなわち3−CClPh−)、ブロモプロピルフェニル(すなわちBrCHCHCHPh−)などがある。便宜上、本明細書中で用語「非置換芳香族基」は、「1以上の芳香族基を含み1以上の原子価を有する原子配列」の一部として広範囲の官能基を包含するものとして定義される。非置換芳香族基の例としては、4−アリルオキシフェノキシ、アミノフェニル(すなわちHNPh−)、アミノカルボニルフェニル(すなわちNHCOPh−)、4−ベンゾイルフェニル、ジシアノイソプロピリデンビス(4−フェニルオキシ)(すなわち−OPhC(CN)PhO−)、3−メチルフェニル、メチレンビス(4−フェニルオキシ)(すなわち−OPhCHPhO−)、エチルフェニル、フェニルエテニル、3−ホルミル−2−チエニル、2−ヘキシル−5−フラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(4−フェニルオキシ)(すなわち−OPh(CHPhO−)、4−ヒドロキシメチルフェニル(すなわち4−HOCHPh−)、4−メルカプトメチルフェニル(すなわち4−HSCHPh−)、4−メチルチオフェニル(すなわち4−CHSPh−)、メトキシフェニル、メトキシカルボニルフェニルオキシ(例えばメチルサリチル)、ニトロメチルフェニル(すなわち−PhCHNO)、トリメチルシリルフェニル、t−ブチルジメチルシリルフェニル、ビニルフェニル、ビニリデンビス(フェニル)などがある。用語「C〜C10芳香族基」には、3個以上10個以下の炭素原子を含有する置換芳香族基及び非置換芳香族基が包含される。芳香族基1−イミダゾリル(C−)はC芳香族基の代表である。ベンジル基(C−)はC芳香族基の代表である。
【0015】
本明細書で用いる用語「環式脂肪族基」とは、1以上の原子価を有し、環状であるが芳香族ではない原子配列を含む基をいう。本明細書中で定義されるように、「環式脂肪族基」は芳香族基を含有しない。「環式脂肪族基」は1以上の非環状部分を含んでいてもよい。例えば、シクロヘキシルメチル基(C11CH−)は、シクロヘキシル環(環状ではあるが芳香族ではない原子配列)とメチレン基(非環状部分)からなる環式脂肪族基である。環式脂肪族基は、窒素、イオウ、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし又は炭素と水素のみからなっていてもよい。環式脂肪族基は「置換」されていても「非置換」であってもよい。置換環式脂肪族基は、1以上の置換基を含む環式脂肪族基と定義される。置換環式脂肪族基は、環式脂肪族基上の置換に利用可能な位置の数までの多くの置換基を含み得る。環式脂肪族基上に存在し得る置換基としては、特に限定されないが、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素のようなハロゲン原子がある。置換環式脂肪族基として、トリフルオロメチルシクロヘキシル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルオキシ)(すなわち−OC10C(CF10O−)、クロロメチルシクロヘキシル、3−トリフルオロビニル−2−シクロプロピル、3−トリクロロメチルシクロヘキシル(すなわち3−CCl10−)、ブロモプロピルシクロヘキシル(すなわちBrCHCHCH10−)などがある。便宜上、用語「非置換環式脂肪族基」は本明細書中で広範囲の官能基を包含するものとして定義される。非置換環式脂肪族基の例としては、4−アリルオキシシクロヘキシル、アミノシクロヘキシル(すなわちHNC10−)、アミノカルボニルシクロペンチル(すなわちNHCOC−)、4−アセチルオキシシクロヘキシル、ジシアノイソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルオキシ)(すなわち−OC10C(CN)10O−)、3−メチルシクロヘキシル、メチレンビス(4−シクロヘキシルオキシ)(すなわち−OC10CH10O−)、エチルシクロブチル、シクロプロピルエテニル、3−ホルミル−2−テトラヒドロフラニル、2−ヘキシル−5−テトラヒドロフラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(4−シクロヘキシルオキシ)(すなわち−OC10(CH10O−)、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル(すなわち4−HOCH10−)、4−メルカプトメチルシクロヘキシル(すなわち4−HSCH10−)、4−メチルチオシクロヘキシル(すなわち4−CHSC10−)、4−メトキシシクロヘキシル、2−メトキシカルボニルシクロヘキシルオキシ(2−CHOCOC10O−)、ニトロメチルシクロヘキシル(すなわちNOCH10−)、トリメチルシリルシクロヘキシル、t−ブチルジメチルシリルシクロペンチル、4−トリメトキシシリルエチルシクロヘキシル(例えば(CHO)SiCHCH10−)、ビニルシクロヘキセニル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)などがある。用語「C〜C10環式脂肪族基」には、3個以上で10個以下の炭素原子を含有する置換環式脂肪族基及び非置換環式脂肪族基が包含される。環式脂肪族基2−テトラヒドロフラニル(CO−)はC環式脂肪族基の代表である。シクロヘキシルメチル基(C11CH−)はC環式脂肪族基の代表である。
【0016】
本明細書で用いる用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称であり、例えば用語「(メタ)アクリレートモノマー」はアクリレートモノマーとメタクリレートモノマーの総称である。用語「(メタ)アクリロイルオキシ」はアクリロイルオキシ及びメタクリロイルオキシモノマー及び/又はオリゴマーの総称である。
【0017】
上述の通り、本発明は、(a)2以上の官能基を有する1種以上の多官能性アクリレート 、(b)1種以上のモノアクリレートモノマー、(c)イオウ及びセレンからなる群から選択されるヘテロ原子を含有する1種以上のジアクリレート及び(d)1種以上の硬化剤からなる硬化性組成物を提供する。
【0018】
多官能性アクリレートは2以上の官能基を有するあらゆるアクリレートであることができる。本発明の目的から、用語「官能性」はアクリレート官能基を指す。多官能性アクリレートは、単一のモノマー化学種、例えばエチレングリコールジアクリレートであり得るが、さらに1種以上のオリゴマー成分からなり得る。適切な多官能性アクリレートは、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、芳香族ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、脂肪族ジオールジ(メタ)アクリレート、芳香族ビスフェノールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、環式脂肪族ジオールジ(メタ)アクリレート、多環式ジオールジ(メタ)アクリレート、脂肪族及び芳香族ポリオールポリ(メタ)アクリレート、脂肪族及び芳香族アルキレンエーテルポリオールポリ(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びにこれらの多官能性アクリレートを1種以上含むコポリマー及びブレンドで例示される。
【0019】
多官能性アクリレートの具体例としては、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールプロポキシル化トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ポリブタジエンジアクリレート、ポリイソプレンジアクリレート、1,3−ビス(アクリロイルオキシエトキシ)イソホロンジウレタン、ビス(アクリロイルオキシエトキシ)トルエンジウレタン及びこれらの多官能性アクリレートを1種以上含む混合物からなる群から選択されるポリアクリレートがある。多官能性アクリレートのその他の非限定例としては、2,2−ビス{4−(2−アクリロイルオキシエチレンオキシ)−(3,5−ジブロモフェニル)}プロパン、2,2−ビス{4−(ω−アクリロイルオキシポリエチレンオキシ)−(3,5−ジブロモフェニル)}プロパン、2,2−ビス{4−(ω−(メタクリロイルオキシポリエチレンオキシ)フェニル}プロパン及び2,2−ビス{4−(ω−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシ)フェニル}プロパンがある。
【0020】
別の実施形態では、2以上の官能基を有する1種以上の多官能性アクリレートは次の式(I)を有する構造単位を含む。
【0021】
【化1】

式中、Wは結合、酸素原子、C〜C10脂肪族基、C〜C20環式脂肪族基又はC〜C20芳香族基であり、「a」と「b」は各々独立に1以上である。様々な実施形態では、式(I)に示した酸素原子から出る点線はヒドロキシ基及びアクリロイル基を含む様々な組合せとして終結することができる。
【0022】
さらに別の実施形態では、2以上の官能基を有する多官能性アクリレートは次の一般式(II)の物質からなる。
【0023】
【化2】

式中、Wは結合、酸素原子、C〜C10脂肪族基、C〜C20環式脂肪族基又はC〜C20芳香族基であり、「a」、「b」及び「g」は各々独立に1以上であり、各Rは各々独立に水素原子又は次式(III)を有するアクリロイル基である。
【0024】
【化3】

式中、Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基である。
【0025】
式I又は式(II)で表されるジアクリレートを含めて本明細書中に開示したジアクリレートは「2以上の官能基を有する多官能性アクリレート」と考えられる。適宜、2以上の官能基を有する多官能性アクリレートはかなりの量のオリゴマー成分を含む。一実施形態では、多官能性アクリレートは多官能性アクリレートの約25〜約75重量パーセントを構成するオリゴマー成分を含む。オリゴマー状多官能性アクリレートの非限定例を次の式(IV)に示す。
【0026】
【化4】

式中、W、「a」及び「b」は式(I)と同じ意味を有し、Rは式(II)と同じ意味を有する。
【0027】
2以上の官能基を有する多官能性アクリレートの別の例は、テトラブロモビスフェノールジグリシジルエーテルとアクリル酸の反応の反応生成物であるジ(メタ)アクリレートである(構造V参照、RはH)。テトラブロモビスフェノールジグリシジルエーテルから誘導されたジ(メタ)アクリレートの非限定例は次式(V)を有する。
【0028】
【化5】

式中、Rは式(II)で定義した通りである。本発明の硬化性組成物及び硬化組成物を製造するのに使用することができる多官能性アクリレートの具体例は、式(V)のR基が両方とも水素原子であるものである。
【0029】
一実施形態では、多官能性アクリレートを製造するには、例えば、以下の式(VI)の構造のテトラブロモビスフェノールを、グリシジルアルコールと反応させて、以下の式(VII)の構造の中間体のオリゴマー状中間生成物を生成させ、次いで中間生成物(VII)と適切な(メタ)アクリル酸無水物又は(メタ)アクリロイル塩化物との反応により、構造IIからなる多官能性アクリレートを生成させることができる。ここで、この多官能性アクリレートは2以上の官能基を有している。
【0030】
【化6】

式中、「W」は構造Iで定義されている。
【0031】
【化7】

式中、W、「a」及び「b」は式Iで定義されている。
【0032】
別の実施形態では、多官能性アクリレートは次の式(VIII)の構造で表される(エチレンオキシ)(メタ)アクリレートからなる。
【0033】
【化8】

式中、Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基であり、「W」は構造Iで定義されており、Rは各々独立に水素原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基であり、「c」及び「d」は各々独立に1以上である。
【0034】
構造VIIIを含む多官能性アクリレートは、例えば、式VIのテトラブロモビスフェノール化合物と以下の式(IX)の構造のエチレンオキシド誘導体とを反応させ、次いで得られた中間体を適切な(メタ)アクリル酸無水物又は(メタ)アクリロイル塩化物と反応させることによって製造することができる。
【0035】
【化9】

式中、Rは各々独立に水素原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基である。式IXのエポキシドを2種以上使用すると、得られる式(VIII)の多官能性アクリレートは2種以上のR基を有する。式(VIII)の多官能性アクリレートの非限定例としては、2,2−ビス{4−(ω−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシ)−(3,5−ジブロモフェニル)}プロパン、2,2−ビス{4−(ω−)アクリロイルオキシエチレンオキシ)−(3,5−ジブロモフェニル)}プロパンなどがある。
【0036】
多官能性(メタ)アクリレートのさらに別の例として、2,2−ビス(4−(2−(メタ)アクリルオキシエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス((4−(メタ)アクリルオキシ)フェニル)プロパン、アクリル酸3−(4−{1−[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]−1−メチルエチル}−2,6−ジブロモ−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルエステル、アクリル酸3−[4−(1−{4−[3−(4−{1−[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]−1−メチル−エチル}−2,6−ジブロモ−フェノキシ)−2−ヒドロキシ−プロポキシ]−3,5−ジブロモフェニル}−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモ−フェノキシ]−2−ヒドロキシ−プロピルエステルなど及びこれらの組合せがある。別の適切な多官能性アクリレートは、テトラ臭素化ビスフェノール−Aジグリシジルエーテルとアクリル酸の反応生成物から誘導された、UCB Chemicals社から入手可能なRDX 51027である。
【0037】
本発明の硬化性組成物は1種以上のモノアクリレートを含んでいる。使用されるモノアクリレートに特別な制限はない。モノアクリレートの役割は、硬化性組成物の粘度及び最終的にこの硬化性組成物から製造される硬化ポリマー組成物のガラス転移温度を制御することである。いかなる種類のモノアクリレートでも、それ自体か又は1種以上の他のモノアクリレートとの組合せで使用することができる。モノアクリレートは1以上の脂肪族、環式脂肪族又は芳香族基を含んでいてもよい。芳香族基を含むモノアクリレートは本発明の硬化性組成物の成分として特に適している。モノアクリレートは、アクリレート官能性に加えて広範囲の官能基を含むことができ、また1以上のヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、イオウ及びセレンを含んでいてもよい。
【0038】
適切なモノアクリレートモノマーとしては、脂肪族モノ(メタ)アクリレート、アリールモノ(メタ)アクリレート、環式脂肪族モノ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールアリールエーテルモノ(メタ)アクリレート、グリコール系及びビスフェノール系モノ(メタ)アクリレート、並びにグリシジル置換モノ(メタ)アクリレートがある。
【0039】
モノアクリレートの非限定例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸1−ナフチル、(メタ)アクリル酸4−フルオロフェニル、(メタ)アクリル酸4−クロロフェニル、(メタ)アクリル酸4−ブロモフェニル、(メタ)アクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸4−メトキシフェニル、(メタ)アクリル酸4−シアノフェニル、(メタ)アクリル酸4−フェニルフェニル、(メタ)アクリル酸2−ブロモベンジル、(メタ)アクリル酸2−フルオロベンジル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ブロモエチル、(メタ)アクリル酸トリクロロメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、プロピレングリコール4−ノニルフェニルエーテルアクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸N−ブチルアミノ(エチル)、α−フルオロ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸α−シアノ、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、メタクリル酸ペンタフルオロプロピル、アクリル酸1,3−ビス(チオフェニル)プロパン−2−イル、(メタ)アクリル酸1,3−ビス(フェノキシ)プロパン−2−イル、(メタ)アクリル酸1,3−ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)プロパン−2−イル、(メタ)アクリル酸1,3−ビス(2−メルカプトベンゾチアゾイル)プロパン−2−イル、(メタ)アクリル酸2−(4−クロロフェノキシ)−1−[(フェニルチオ)メチル]エチルプロパン−2−イル、(メタ)アクリル酸4−ブロモベンジル、(メタ)アクリル酸トリブロモベンジル、(メタ)アクリル酸ペンタブロモベンジル及びアクリル酸2−フェニルチオエチル、並びにこれらのモノアクリレートを1種以上含む混合物からなる群から選択されるものがある。
【0040】
本発明の一実施形態では、モノアクリレートは次式の構造(X)を有する。
【0041】
【化10】

式中、XはO又はSであり、Rは二価C〜C10脂肪族基、二価C〜C10環式脂肪族基又は二価C〜C10芳香族基であり、Rは水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基であり、ArはC−C20芳香族基である。
【0042】
一実施形態では、モノアクリレートは、以下の式(XI)の構造のアクリル酸2−(2−ベンゾチアゾリル)チオエチル及び以下の式(XII)の構造の2−(フェニルチオエチル)アクリレートからなる群から選択される1以上のものからなる。
【0043】
【化11】

構造XI及びXIIにおいて、R〜Rは独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基であり、Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基であり、「e」は0を含めた0〜4の整数であり、「f」は0を含めた0〜5の整数である。
【0044】
本発明の硬化性組成物は1種以上のヘテロ原子含有ジアクリレートを含んでおり、これは本硬化性組成物から製造された硬化組成物の屈折率を増大するのに役立つ。好ましくは、このヘテロ原子含有ジアクリレートは比較的低い粘度、すなわち25℃で約500センチポアズ以下の粘度を有する。通例、適切なヘテロ原子含有ジアクリレートは約1.5より大きい、好ましくは約1.55より大きい、さらにより好ましくは約1.60より大きい、さらに一層好ましくは約1.65より大きい屈折率を示す。すなわち、ヘテロ原子含有ジアクリレートは約1.50〜約1.65、好ましくは約1.55〜約1.65、さらにより好ましくは約1.60〜約1.65の範囲の屈折率を示す。
【0045】
また、ヘテロ原子含有ジアクリレートは硬化性組成物中で反応性希釈剤としても機能することにより、硬化性組成物の加工性を高める。
【0046】
本明細書中で定義したように、用語「ヘテロ原子含有ジアクリレート」は、本明細書中で「MPSMA」と略記するビス(メタクリロイルチオフェニル)スルフィド(CAS No.137052−23−4)のようなジチオアクリレートは含まない。
【0047】
通例、ヘテロ原子含有ジアクリレートは2つの置換又は非置換アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、この化合物は次式の構造(XIII)を有する。
【0048】
【化12】

式中、R、R及びR10は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基であり、LとL は各々独立に二価C〜C10脂肪族基、二価C〜C10環式脂肪族基又は二価C〜C10芳香族基であり、Q、Q及びQは各々独立に結合、酸素原子、カルボニル基、チオカルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、イオウ原子、セレン原子、ジスルフィド基、ジセレニド基、セレノスルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、セレノキシド基又はセレノン基であるが、Q、Q及びQの1以上はイオウ原子又はセレン原子からなり、ArとArは独立にC〜C10二価芳香族基である。
【0049】
一実施形態では、ヘテロ原子含有ジアクリレートは次式のジアクリレート(XIV)、(XV)及び(XVI)からなる群から選択される1種以上のジアクリレートからなる。
【0050】
【化13】

式中、R、R及びR10は構造XIIIで定義されている。適切なヘテロ原子含有ジアクリレートは次式の化合物XVII、XVIII及びXIXで例示される。
【0051】
【化14】

フェニレンスルフィドチオエチルジアクリレートともいわれる化合物XVIIは、高い屈折率1.62を有しており、25℃で約500センチポアズという比較的低い粘度を示すので、特に適切であると考えられる。
【0052】
本発明の硬化性組成物は硬化剤を含んでいる。硬化剤は、硬化性組成物を硬化プロセスで硬化組成物に変換するために使用する。アクリレート組成物を硬化させるプロセスは当業者に公知である。本発明の硬化性組成物はアクリレート組成物の新規な一属である。硬化プロセスは、多官能性アクリレートのアクリレート基、モノアクリレートモノマー及びヘテロ原子含有ジアクリレートの重合からなり、さらに後−重合硬化を含んでもよい。後重合硬化プロセスの非限定例としては、エポキシ基やオレフィン性基のような反応性基の架橋重合がある。硬化剤は感光性硬化剤及び感熱性硬化剤からなる群から選択される。感光性硬化剤及び感熱性硬化剤は当業者に公知である。感熱性硬化剤は「熱硬化剤」といわれることもある。各種の硬化剤が、例えば、Aldrich Chemical社のような製造供給元から市販されている。感光性硬化剤のIRGACURE及びDAROCURシリーズはCiba Specialty Chemicals社から入手可能である。通例、硬化剤は硬化性組成物の総重量に対して約0.001〜約5重量パーセントに相当する量で硬化性組成物中に存在する。
【0053】
典型的な感光性硬化剤としては、Type IとType IIの紫外(UV)光開始剤がある。Type IのUV光開始剤はベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α−ジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン及びアシルホスフィンオキシドで例示される。Type IIのUV光開始剤には、ベンゾフェノン類とアミン類及びチオキサントン類とアミン類の組合せがある。例えばチタノセン類のような可視光光開始剤も使用できる。
【0054】
感光性硬化剤の非限定例としては、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α−ジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、例えば、アシルホスフィンオキシド、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、メチルフェニルグリオキサレート、α−ヒドロキシアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチル ベンゾイルジフェニルホスフィン、2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン(IRGACURE(登録商標)369として商業的に公知)及び2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オンがある。
【0055】
光開始硬化剤の例として、さらに、IRGACURE 184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、IRGACURE 907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン)、IRGACURE 500(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンの組合せ)、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)、IRGACURE 1700(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オンの組合せ)、IRGACURE 819、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)、DAROCUR 4265(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−ホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの組合せ)がある。光開始剤はさらにDOW Chemical社からCYRACUREという商標で入手可能である。CYRACURE UVI−6974は混合トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩である。CYRACURE UVI−6990は混合トリアリールスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩である。可視光(青色光)光開始剤はdl−カンファーキノンで例示される。
【0056】
別の感光性硬化剤がSARTOMER,Incorporated,Exton,Pennsylvaniaから商標ESACURE及びSARCATとして入手可能である。例としては、ESACURE KB1(すなわちベンジルジメチルケタール)、ESACURE EB3(ベンゾインとブチルエーテルの混合物)、ESACURE TZT(トリメチルベンゾフェノンブレンド)、ESACURE KIP100F(すなわちα−ヒドロキシケトン)、ESACURE KIP150(ポリマー状ヒドロキシケトン)、ESACURE KT37(ESACURE TZTとESACURE KIP150のブレンド)、ESACURE KT046(トリフェニルホスフィンオキシド、ESACURE KIP150及びESACURE TZTからなるブレンド)、ESACURE X33(2−及び4−イソプロピルチオキサントン、エチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート及びESACURE TZTのブレンド)、SARCAT CD 1010(トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(プロピレンカーボネート中50%))、SARCAT DC 1011(トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(n−プロピレンカーボネート中50%))、SARCAT DC 1012(ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート)、並びにSARCAT K185(トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(プロピレンカーボネート中50%))がある。上記感光性硬化剤を1種以上含む混合物も使用できる。
【0057】
熱硬化剤は商業的に広く入手可能である。例えば、熱硬化剤は、商標LUPERSOL(Atofina Inc.から入手可能)、DELANOX−F、ALPEROX−F、LUCIDOL、LUPERCO及びLUPEROXとして商業的に入手可能である。適切な熱硬化剤としては、LUPERSOL DDM−9(ペルオキシドとヒドロペルオキシドの混合物)、LUPERSOL DDM−30(ペルオキシドとヒドロペルオキシドの混合物)、LUPERSOL DELTA−X−9(ペルオキシドとヒドロペルオキシドの混合物)、LUPERSOL DHD−9(ペルオキシドとヒドロペルオキシドの混合物)、LUPERSOL DFR(ペルオキシドとヒドロペルオキシドの混合物)、LUPERSOL DSW−9(ペルオキシドとヒドロペルオキシドの混合物)、LUPERSOL 224(2,4−ペンタンジオンペルオキシド)、LUPERSOL 221(ジ(n−プロピル)ペルオキシジカーボネート)、LUPERSOL 225(ジ(sec−ブチル)ペルオキシジカーボネート)、LUPERSOL 225−M75(ジ(sec−ブチル)ペルオキシジカーボネート)、LUPERSOL 225−M60(ジ(sec−ブチル)ペルオキシジカーボネート)、LUPERSOL 223(ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート)、LUPERSOL 223−M75(ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート)、LUPERSOL 223−M40(ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート)、LUPERSOL 219−M60(ジイソノナノイルペルオキシド)、LUCIDOL 98(ベンゾイルペルオキシド)、LUCIDOL 78(ベンゾイルペルオキシド)、LUCIDOL 70(ベンゾイルペルオキシド)、LUPERCO AFR−400(ベンゾイルペルオキシド)、LUPERCO AFR−250(ベンゾイルペルオキシド)、LUPERCO AFR−500(ベンゾイルペルオキシド)、LUPERCO ANS(ベンゾイルペルオキシド)、LUPERCO ANS−P(ベンゾイルペルオキシド)、LUPERCO ATC(ベンゾイルペルオキシド)、「LUPERCO」AST(ベンゾイルペルオキシド)、「LUPERCO」AA(ベンゾイルペルオキシド)、LUPERCO ACP(ベンゾイルペルオキシド)、LUPERSOL 188M75(α−クミルペルオキシネオデカノエート)、LUPERSOL 688T50(1,1−ジメチル−3−ヒドロキシ−ブチルペルオキシネオヘプタノエート)、LUPERSOL 688M50(1,1−ジメチル−3−ヒドロキシ−ブチルペルオキシネオヘプタノエート)、LUPERSOL 288M75(α−クミルペルオキシネオヘプタノエート)、LUPERSOL 546M75(t−アミルペルオキシネオデカノエート)、LUPERSOL 10(t−ブチルペルオキシネオデカノエート)、LUPERSOL 10M75(t−ブチルペルオキシネオデカノエート)、LUPERSOL 554M50(t−アミルペルオキシピバレート)、LUPERSOL 554M75(t−アミルペルオキシピバレート)、LUPERSOL 11(t−ブチルペルオキシピバレート)、LUPERSOL 665T50(1,1−ジメチル−3−ヒドロキシ−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート)、LUPERSOL 665M50(1,1−ジメチル−3−ヒドロキシ−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート)、LUPERSOL 256(2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン)、LUPERSOL 575(t−アミルペルオキシ−2−エチル−ヘキサノエート)、LUPERSOL 575P75(t−アミルペルオキシ−2−エチル−ヘキサノエート)、LUPERSOL 575M75(t−アミルペルオキシ−2−エチル−ヘキサノエート、t−ブチルペルオクトエート(t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート)、LUPERSOL PMS(t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート)、LUPERSOL PDO(t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート)、LUPERSOL 80(t−ブチルペルオキシイソブチレート)、LUPERSOL PMA(t−ブチルペルオキシマレイン酸)、LUPERCO PMA−25(t−ブチルペルオキシマレイン酸)、LUPERSOL 70(t−ブチルペルオキシアセテート)、LUPERSOL 75−M(t−ブチルペルオキシアセテート)、LUPERSOL 76−M(t−ブチルペルオキシアセテート)、LUPERSOL 555M60(t−アミルペルオキシ−アセテート)、LUPERSOL KDB(ジ−t−ブチルジペルオキシフタレート)、LUPERSOL TBIC−M75(OO−t−ブチル−O−イソプロピルモノペルオキシカーボネート)、LUPEROX 118(2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン)、LUPERSOL TBEC(OO−t−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート)、LUPERSOL TAEC(OO−t−アミル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート)、LUPEROX 500R(ジクミルペルオキシド)、LUPEROX 500T(ジクミルペルオキシド)、LUPERCO 500−40C(ジクミルペルオキシド)、LUPERCO 500−40E(ジクミルペルオキシド)、LUPERCO 500−SRK(ジクミルペルオキシド)、LUPERSOL 101(2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン)、LUPERSOL 101−XL(2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン)、LUPERCO 101−P20(2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン)、LUPERSOL 801(t−ブチルクミルペルオキシド)、LUPERCO 801−XL(t−ブチルクミルペルオキシド)、LUPEROX 802(α,α−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン)、LUPERCO 802−40KE(α,α−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン)、LUPERSOL 130(2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3)、LUPERCO 130−XL(2,5−ジメチル−2、5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン)、LUPEROX 2,5−2,5(2,5−ジヒドロ−ペルオキシ−2,5−ジメチルヘキサン)、LUPERSOL 230(n−ブチル−4,4−ジ−(t−ブチルペルオキシ)バレレート)、LUPERCO 230−XL(n−ブチル−4,4−ジ−(t−ブチルペルオキシ)バレレート)、LUPERSOL 231(1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン)、LUPERCO 231−XL(1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン)、LUPERSOL 231−P75(1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン)、LUPERCO 231−SRL(1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン)、LUPERSOL 331−80B(1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン)、LUPERCO 331−XL(1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン)、LUPERSOL 531−80B(1,1−ジ(t−アミルペルオキシ)シクロヘキサン)、LUPERSOL 531−80M(1,1−ジ(t−アミルペルオキシ)シクロヘキサン)、LUPERSOL 220−D50(2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン)、LUPERSOL 233−M75(エチル−3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート)、LUPERCO 233−XL(エチル−3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート)、LUPERSOL P−31(2,2−ジ−(t−アミルペルオキシ)プロパン)、LUPERSOL P−33(2,2−ジ−(t−アミルペルオキシ)プロパン)及びLUPERSOL 553−M75(エチル3,3−ジ(t−アミルペルオキシ)ブチレート)がある。これらの開始剤を1種以上含む混合物も使用できる。
【0058】
その他の熱的に活性化される潜在的硬化性組成物には、DuPontからVAZO 64(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)、VAZO 67(2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル))及びVAZO 88(1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル))のようなVAZOという商標で商業的に入手可能なものがある。
【0059】
本発明により提供される硬化性組成物は許容可能な反応速度で硬化し架橋して、高い光学的透明性並びに優れた延性、寸法安定性及び機械的性質(マンドレル曲げ、接着及び平坦さ)を示す硬化組成物を生成する。この硬化組成物は光学物品及び調光に使用される物品の製造に価値がある。
【0060】
本発明の一実施形態では、硬化組成物はディプレイフィルム、より具体的には、輝度向上フィルムを製造するのに有用であり、これらフィルムは様々な種類のディスプレイ装置並びに例えばバックライト照明の輝度向上ディスプレイ装置のようなフィルムの1以上のミクロ複製された層を含有する多層光学物品を製造するのに価値がある。一実施形態では、硬化組成物を含む光学物品は約840〜約860カンデラ/平方メートルの輝度を有する。
【0061】
別の実施形態では、光学物品は本発明の硬化性組成物から作成された「平坦な」フィルムであり、ASTM D1003試験法に準拠して測定されるパーセントヘイズ値は約0.7〜約1.3パーセント、別の実施形態では0.7〜約1パーセントである。平坦なフィルムは、その表面に微細構造をもたないフィルムと定義される。
【0062】
硬化組成物は通例100℃未満のガラス転移温度(T)を有する。一実施形態では、硬化組成物は、約40〜約99℃のTを有する。さらに別の実施形態では、硬化組成物は約40〜約85℃のTを有する。さらに別の実施形態では、硬化組成物は約50〜約75℃のTを有する。
【0063】
輝度向上ディスプレイ装置の一般的な非限定例としては、透過型ディスプレイ、一部透過型ディスプレイ、一次若しくは多次反射型ディスプレイ、透過反射型(transflective)ディスプレイ又は前方散乱ディスプレイがある。幾つかの実施形態では、硬化組成物から製造されるフィルムはまた、輝度向上ディプレイフィルム、ディスプレイ装置又は上述したディスプレイ装置の任意の2種以上の組合せが作動し得る光学物品にも使用できる。
【0064】
本発明の硬化組成物から製造されるフィルムはまた、反射型偏光子のような輝度を増強する受動素子、冷陰極蛍光灯用のような能動輝度向上ディスプレイなどを製造するのにも使用できる。さらに、硬化組成物はまた、各種の他の用途、例えば、フレネルレンズに用いる基板、ホログラフィー基板又は従来のレンズ、プリズム若しくはミラーと組み合わせて、現金自動預入支払機用のディスプレイ装置、投影用ディスプレイ、照明標識、交通信号などに使用することもできる。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は、本発明の硬化性組成物及びその使用方法の評価の仕方を当業者に詳細に説明するために挙げるものであり、本発明者がその発明と考えている範囲を限定するものではない。特に断らない限り、部は重量であり、温度は℃である。
【0066】
試薬は全てAldrichから購入し、さらに精製することなく使用した。生成物は全て、Bruker Avance 400MHz NMR分光計を用いてH−NMR分光法で確認した。フェニレンスルフィドチオエチルジアクリレート(「TSDEA」と略記する)は以下のようにして調製した。
【0067】
ビス[2−(ヒドロキシエチル)チオフェニル]スルフィド[TSDE]の調製
メカニカルスターラー、ウォータージャケット付き凝縮器及び窒素スパージを備えた1−リットルの丸底フラスコに、300mLのトルエンを入れた。フラスコを窒素で充分にパージし、4,4’−チオビスベンゼンチオール(75g、0.30mol)、エチレンカーボネート(54g、0.614mol)及び炭酸カリウム(1.0g、7.25×10−3mol)を入れた。添加が完了したところで反応混合物を80℃にし、泡立ちが殆ど鎮まるまで約1.5時間保った後還流した。反応混合物を3.5時間還流した。加熱を止め、反応混合物を放冷したところ、幾らか銀色の染みを有する白色粉末が溶液から析出した。この粉末のH−NMRにより、反応が完了していることが明らかになった。真空ろ過により生成物を集め、活性炭と共に熱トルエンに溶解させた。この溶液を熱いうちにシリカゲルに通してろ過して暗い染みを除き、液体を放冷した。この溶液から白色粉末を結晶化させ、真空ろ過により集めた。純粋な生成物を真空オーブンで一晩乾燥して残留トルエンを除いた。
【0068】
ビス[2−(アクリロイルオキシエチル)チオフェニル]スルフィド[TSDEA]の調製
マグネチックスターラー、添加漏斗、ウォータージャケット付き凝縮器及び窒素スパージを備えた2−リットルのフラスコに、1.5リットルのジクロロメタンを入れた。このジクロロメタンに、トリエチルアミン(100mL、0.664モル)及びTSDE(60g、0.166モル)を加えた。塩化アクリロイル(50mL、0.664モル)を添加漏斗中に入れた。この塩化アクリロイルをゆっくりフラスコに加えて発熱を制御維持した。添加が完了したら反応を15分間還流した後加熱を止めた。反応混合物を一晩撹拌した。H−NMRにより、アルコールの反応が不完全であることが明らかになった。アルコールの完全な変換が達成されるまでトリエチルアミンと塩化アクリロイルの追加の試料を加えた。反応混合物をジエチルエーテルで希釈してアミン塩酸塩を析出させ、コースフリット漏斗(course-fritted funnel)を通してろ過し、塩をジエチルエーテルで洗浄した。透明な黄色い溶液を希塩酸で三回洗浄して残留アミンを除いた。さらに三回飽和重炭酸ナトリウムで洗浄した後、脱イオン水で四回洗浄してpHを6〜8に戻した。有機層をMgSOで乾燥し、回転蒸発で溶媒を除いた。この残渣は極めて曇っていた。この残渣を熱エタノールに溶解し、得られた溶液を放冷分離してヘイズを取り除いた。残留エタノールを20mgのヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)の添加後回転蒸発により除いて実質的に無色の液体を得た。
【0069】
ビス(メタクリロイルチオフェニル)スルフィド(「MPSMA」と略記する)はSumitomo Seika Chemicals社から購入した。臭素化エポキシアクリレートRDX51027はSurface Specialities社から購入した。硬化剤IRGACURE(登録商標)819はCiba Specialities社から購入した。2−(フェニルチオ)エチルアクリレート(「PTEA」と略記する)はBiMax社から購入した。
【0070】
全ての成分を表1に示す量でブレンドすることにより硬化性組成物を調製した。重量パーセントの値は硬化性組成物を形成する全ての成分の総重量に対するものである。成分の混合物を加熱し撹拌して均質な硬化性組成物を得た。
【0071】
実施例中で使用する場合、用語「被覆したフィルム」は、硬化性組成物とフィルム基板からなる二層フィルムを示すことを意味する。用語「硬化した平坦なフィルム」は、被覆したフィルムを硬化させた得られるフィルムを意味する。以下の手順に従って、微細構造をもたない硬化した平坦なフィルムを調製した。
【0072】
0.005インチ(0.127センチメートル)の厚さのポリカーボネートフィルム基板の上に7〜20マイクロメートルの厚さの硬化組成物層を有する被覆し硬化した平坦なフィルムを、特注の積層装置及びFusion EPIC 6000UV硬化系を用いて調製した。この積層装置は、2つのゴムロール、すなわち底部可変速度駆動ロールと空気圧駆動頂部ニップロールとからなっていた。この系を用いて、ロール間に通したラミネートスタックをプレスした。この被覆した平坦なフィルムは、ほぼ0.5ミリリットルの硬化性組成物を、高度に研磨した平坦なクロムメッキ5インチ×7インチ(12.7センチメートル×17.8センチメートル)スチールプレートに、連続してプレートの先端又は前縁に移送することによって調製した。次に、一片のフィルム基板を硬化性組成物の上に載せ、得られたスタックを積層装置に送ってプレスし、硬化性組成物をクロムプレートとフィルム基板の間に均一に分配した。高めの粘度の配合物の場合、高めの圧力と低めのスピードを用い、クロムプレートを加熱して所望の厚さを得た。スタック内の硬化性組成物の光重合を行うには、そのスタックを、高出力で焦点距離2.1インチ(5.3センチメートル)を用いて10フィート/分(0.051メートル/秒)のスピードで600ワットのV−バルブの下に通して、フィルム基板最上層を通して硬化させた。その後、被覆し硬化した平坦なフィルムをクロムプレートから剥ぎ取り、ヘイズ、パーセント透過率、色、黄色度及び接着を測定するのに使用した。
【0073】
輝度を測定するための被覆し硬化した微細構造化フィルムは連続コーターを用いて作成した。すなわち、一滴の液体コーティングを、複製したい微細構造のネガを有する手段を含有するキャスティングロールとゴムロールとのニップで基板と接触させた。ニップを出た後、被覆したフィルムを(まだ微細構造化手段と接触しているうちに)紫外光に露光させて硬化させ、プリズムフィルムを得た。その後、こうして形成したプリズムフィルム(ベースフィルムと硬化組成物からなる)を微細構造化手段から剥ぎ取った。このプリズムフィルム及びこのプリズムの幾何学は、2002年12月6日に出願された「改良された視角を有する輝度向上フィルム」と題する同時係属中の米国特許出願第10/065981号(援用により、その全体が本明細書の内容の一部をなす)に記載されている。
【0074】
動的機械分析用の硬化組成物のフィルム(ベースフィルムなし)は平坦なフィルムについて記載したのと同じ方法を用いて調製した。ただし、ベースフィルム基板はポリエチレン(PE)フィルムでマスクしたポリカーボネートフィルムであった。このPEマスキングフィルムはポリカーボネートフィルムを損傷から防ぐために用いた。すなわち、液体の硬化性組成物をクロムプレート上に載せたマスクしたポリカーボネートフィルムのPE面上にコーティングとして塗布した。硬化後、ポリエチレンマスキングフィルムから引き剥がすことによって、硬化組成物の自立性フィルムを得た。
【0075】
使用した液体材料の屈折率(RI)はBausch and Lomb Abbe−3L屈折計を用いて測定した。硬化した平坦なフィルムのRIは、Metricon社のプリズムカプラーModel 2010で厚いフィルム(バルク材)の設定を用いて測定した。硬化性組成物をポリカーボネート基板上に滑らかな層として塗布した後硬化させた。この硬化した滑らかなコーティングを、屈折率整合用流体を用いることなく直接プリズムと接触させた。屈折率はプリズム/コーティング界面の臨界角を基準にして計算した。
【0076】
粘度は、CPE40又はCPE51スピンドル取付具を備えたBrookfield LVDV−II Cone/Plate Viscometerを用いて25℃で0.5ミリリットル液体硬化性組成物に対して測定した。使用したトルク範囲は、特定の円錐状取付具に対する装置の最大定格値の15〜90パーセント以内であった。粘度値はセンチポアズ(cP)で測定した。
【0077】
硬化組成物(自立性フィルム、すなわちベースフィルムなし)のガラス転移温度(T)は、周波数1.0rad/秒、歪み0.01パーセント及び温度上昇率2℃/分でテンションモードで作動するRheometrics Solids Analyzer RSA IIを用いて動的機械分析(DMA)により測定した。
【0078】
硬化した平坦なフィルムを通過する光のパーセントヘイズとパーセント透過率は、BYK−Gardner Haze−guard Plus Hazemeterを用いてASTM D1003法に準拠して決定した。
【0079】
硬化した平坦なフィルムの接着はASTM D3359法に準拠して測定した。
【0080】
硬化した平坦なフィルムの色は、Gretag Macbeth Color−Eye 7000A比色計で、L、a、b色空間、D65発光体及び正反射を含めて10度の観測者を用いて、L、a及びbを測定することにより決定した。硬化した平坦なフィルムの黄色度(YI)はGretag Macbeth Color−Eye 7000A比色計を用いて測定した。
【0081】
硬化プリズムフィルム(又は微細構造化フィルム)の輝度及び色はMicrovision SS220 Display Analysis Systemを用いて決定した。Microvision SS220、すなわちコンピューターベースの測定系はフィルムの様々な位置での軸内と軸外のデータを収集するためにゴニオメーターアセンブリと機械的位置決め機を使用する。使用した光源は長方形ガラスパネルの頂部縁部に取り付けた冷陰極蛍光灯(CCFL)からなるLG Philips 12−インチ平方フィートBLM(バックライト モジュール)であった。アルミニウムのバーとフォームをBLMの縁部の周りに束ねてCCFLの周りの熱を保った。5つの熱電対をBLMフレームに取り付け、CCFLの温度と光源への電流を4秒毎に試料として測定した。輝度の測定は、平行光学プローブを備えた回折格子分光計を利用して行った。微細構造化フィルムをバックライトモジュール上に取り付けた。13−点試験とヘミ試験(hemi test)を行うことによって、フィルムの13の特定の位置での輝度の均一性及びフィルムの中心位置における視角の範囲を得た。輝度値の平均を取った。バックライトの輝度はCCFL温度と共に変化した。輝度のこの変動を除くために、調光フィルムを取り付けた後、CCFLを放置して熱的に安定させた。次いで、温度に関して補正した輝度(L補正)を、測定輝度(L測定)及び測定温度と補正温度、すなわちそれぞれT測定とT補正から、以下の式(1)により得た。
【0082】
補正=L測定−6×(T測定−T補正) (式1)
ここで、数6は補正係数を表し、輝度はカンデラ/平方メートル(cd/m)で表され、温度は華氏である。最後に、各試料の微細構造化フィルムの温度に関して補正輝度の、標準フィルムの同様な輝度に対する比を計算して、カンデラ/平方メートル(cd/m)で表される輝度の測定値を得た。
【0083】
フィルムの平坦さは、25センチメートル×18.5センチメートルの微細構造化フィルムを、微細構造化面を上に向けて平坦な表面上に載せ、フィルム縁部の平坦な表面に対する高さを測定することによって測定した。各縁部につき2つの測定をし、その高さを平均した。各々の測定はフィルムの角からほぼ6センチメートルのところで行った。
【0084】
微細構造化フィルムの亀裂に対する抵抗性は、微細構造化フィルムの1インチ幅の細片をフィルム内の亀裂が目視で明らかになるまで異なる直径のマンドレルに巻き付けることによって測定した。フィルム細片は、細片の長い縁部がプリズム微細構造の横断面を形成するように切断した。亀裂に対する抵抗性は目に見える亀裂が生じなかった最小のマンドレル直径として表した。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

表2のデータから、実施例2の硬化性組成物から得られたフィルムが、比較例1の硬化性組成物から得られたフィルムと比較して、増大した屈折率を示す一方良好な接着と光学的透明性を維持していることが明かである。さらに、実施例1と2の硬化性組成物から得られたデータは、MPSMAの代わりにTSDEAを使用すると、比較例2の硬化性組成物から得られたフィルムと比べて、それより良好な接着、光学的性質及び機械的性質を有するフィルムが得られることを示している。MPSMAを用いて作成した輝度向上フィルムは、切断プロセスの間フィルムの縁部で高い反りと亀裂を示した。また、比較例2の輝度向上フィルムは1/2インチマンドレル上で曲げたときに亀裂を生じたが、実施例2のフィルムは亀裂を生じなかった。比較例2の輝度向上フィルムはまた実施例1よりずっと大きい反りを示した。
【0087】
本発明の好ましい実施形態を特に参照して本発明を詳細に説明してきたが、当業者には理解されるように、本発明の思想の範囲内で変更や修正をなすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2以上の官能基を有する1種以上の多官能性アクリレート、
(b)1種以上のモノアクリレートモノマー、
(c)イオウ及びセレンからなる群から選択されるヘテロ原子を含有する1種以上のジアクリレート、及び
(d)1種以上の硬化剤
を含んでなる硬化性組成物。
【請求項2】
前記1種以上の多官能性アクリレートが、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、芳香族ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、脂肪族ジオールジ(メタ)アクリレート、芳香族ビスフェノールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、環式脂肪族ジオールジ(メタ)アクリレート、多環式ジオールジ(メタ)アクリレート、脂肪族及び芳香族ポリオールポリ(メタ)アクリレート、脂肪族及び芳香族アルキレンエーテルポリオールポリ(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びにこれらの多官能性アクリレートを1種以上含むコポリマー及びブレンドからなる群から選択される、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記1種以上の多官能性アクリレートが、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールプロポキシル化トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ポリブタジエンジアクリレート、ポリイソプレンジアクリレート、1,3−ビス(アクリロイルオキシエトキシ)イソホロンジウレタン、ビス(アクリロイルオキシエトキシ)トルエンジウレタン、2,2−ビス{4−(2−アクリロイルオキシエチレンオキシ)−(3,5−ジブロモフェニル)}プロパン、2,2−ビス{4−(ω−アクリロイルオキシポリエチレンオキシ)−(3,5−ジブロモフェニル)}プロパン、2,2−ビス{4−(ω−(メタクリロイルオキシポリエチレンオキシ)フェニル}プロパン及び2,2−ビス{4−(ω−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシ)フェニル}プロパン、並びにこれらの多官能性アクリレートを1種以上含む混合物からなる群から選択される、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記1種以上のモノアクリレートが、脂肪族モノ(メタ)アクリレート、アリールモノ(メタ)アクリレート、環式脂肪族モノ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールアリールエーテルモノ(メタ)アクリレート、グリコール系及びビスフェノール系モノ(メタ)アクリレート、並びにグリシジル置換モノ(メタ)アクリレートからなる群から選択される、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記1種以上のモノアクリレートが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸1−ナフチル、(メタ)アクリル酸4−フルオロフェニル、(メタ)アクリル酸4−クロロフェニル、(メタ)アクリル酸4−ブロモフェニル、(メタ)アクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸4−メトキシフェニル、(メタ)アクリル酸4−シアノフェニル、(メタ)アクリル酸4−フェニルフェニル、(メタ)アクリル酸2−ブロモベンジル、(メタ)アクリル酸2−フルオロベンジル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ブロモエチル、(メタ)アクリル酸トリクロロメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、プロピレングリコール4−ノニルフェニルエーテルアクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸N−ブチルアミノ(エチル)、(メタ)アクリル酸α−フルオロ、(メタ)アクリル酸α−シアノ、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、メタクリル酸ペンタフルオロプロピル、アクリル酸1,3−ビス(チオフェニル)プロパン−2−イル、(メタ)アクリル酸1,3−ビス(フェノキシ)プロパン−2−イル、(メタ)アクリル酸1,3−ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)プロパン−2−イル、(メタ)アクリル酸1,3−ビス(2−メルカプトベンゾチアゾイル)プロパン−2−イル、(メタ)アクリル酸2−(4−クロロフェノキシ)−1−[(フェニルチオ)メチル]エチル、(メタ)アクリル酸4−ブロモベンジル、(メタ)アクリル酸トリブロモベンジル、(メタ)アクリル酸ペンタブロモベンジル、アクリル酸2−(2−ベンゾチアゾリル)チオエチル及びアクリル酸2−フェニルチオエチル、並びにこれらのモノアクリレートを1種以上含む混合物からなる群から選択される、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記1種以上のヘテロ原子含有ジアクリレートが次式の構造XIIIを含んでなる、請求項1記載の硬化性組成物。
【化1】

式中、R、R及びR10は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基であり、L及びLは各々独立に二価C〜C10脂肪族基、二価C〜C10環式脂肪族基又は二価C〜C10芳香族基であり、Q、Q及びQは各々独立に結合、酸素原子、カルボニル基、チオカルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、イオウ原子、セレン原子、ジスルフィド基、ジセレニド基、セレノスルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、セレノキシド基又はセレノン基であり、ここでQ、Q及びQの1以上がイオウ原子又はセレン原子であり、Ar及びArは独立にC〜C10二価芳香族基である。
【請求項7】
前記1種以上のヘテロ原子含有ジアクリレートが以下の式XIV、XV及びXVIのジアクリレートからなる、請求項6記載の硬化性組成物。
【化2】

式中、R、R及びR10は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基である。
【請求項8】
前記1種以上の硬化剤が、感光性硬化剤及び感熱性硬化剤からなる群から選択される、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記感光性硬化剤が、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、[2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン]、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、混合トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、混合トリアリールスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩、dl−カンファーキノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイン及びブチルエーテルの混合物、トリメチルベンゾフェノンブレンド、α−ヒドロキシケトン、ポリマー状ヒドロキシケトン、トリフェニルホスフィンオキシド、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、エチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、並びにこれらの感光性硬化剤を2種以上含む混合物からなる群から選択される、請求項8記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記感熱性硬化剤が、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、アゾ化合物及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項8記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記ペルオキシドが、2,4−ペンタンジオンペルオキシド、ジ(n−プロピル)ペルオキシジカーボネート、ジ(s−ブチル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジイソノナノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、α−クミルペルオキシネオデカノエート、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシ−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、α−クミルペルオキシネオヘプタノエート、t−アミルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−アミルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシ−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシ−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシマレイン酸、t−ブチルペルオキシアセテート、t−アミルペルオキシアセテート、ジ−t−ブチルジペルオキシフタレート、O,O−t−ブチル−O−イソプロピルモノペルオキシカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、O,O−t−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、O,O−t−アミル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジヒドロペルオキシ−2,5−ジメチルヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ−(t−ブチルペルオキシ)バレレート、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、エチル−3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート、2,2−ジ−(t−アミルペルオキシ)プロパン、エチル3,3−ジ(t−アミルペルオキシ)ブチレート、並びにこれらの感熱性硬化剤を1種以上含む混合物の1種以上からなる、請求項10記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記アゾ化合物が、2,2’−アゾ−ビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10記載の硬化性組成物。
【請求項13】
(a)2以上の官能基を有する1種以上の多官能性アクリレート、
(b)以下の式XI及びXIIのモノアクリレートからなる群から選択される1種以上のモノアクリレートモノマー、
(c)以下の式XIIIの1種以上のヘテロ原子含有ジアクリレート、並びに
(d)1種以上の硬化剤
を含んでなる硬化性組成物。
【化3】

式中、R及びRは独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基であり、Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基であり、「e」は0を含めた1〜4の整数であり、「f」は0を含めた1〜5の整数である。
【化4】

式中、R、R及びR10は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基であり、L及びLは各々独立に二価C〜C10脂肪族基、二価C〜C10環式脂肪族基又は二価C〜C10芳香族基であり、Q、Q及びQは各々独立に結合、酸素原子、カルボニル基、チオカルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、イオウ原子、セレン原子、ジスルフィド基、ジセレニド基、セレノスルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、セレノキシド基又はセレノン基であり、ここで、Q、Q及びQの1以上はイオウ原子又はセレン原子を含んでおり、Ar及びArは独立にC〜C10二価芳香族基である。
【請求項14】
前記2以上の官能基を有する多官能性アクリレートが次式(II)を有する物品からなる、請求項13記載の硬化性組成物。
【化5】

式中、Wは結合、酸素原子、C〜C10脂肪族基、C〜C20環式脂肪族基又はC〜C20芳香族基であり、「a」、「b」及び「g」は各々独立に1以上であり、各Rは各々独立に水素原子又は次式(III)を有するアクリロイル基である。
【化6】

式中、Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基である。
【請求項15】
前記2以上の官能基を有する多官能性アクリレートが次式(IV)を有するオリゴマー状アクリレートからなる、請求項13記載の硬化性組成物。
【化7】

式中、Wは結合、酸素原子、C〜C10脂肪族基、C〜C20環式脂肪族基又はC〜C20芳香族基であり、「a」及び「b」は各々独立に1以上であり、各Rは各々独立に原子又は次式(III)を有するアクリロイル基である。
【化8】

式中、Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基である。
【請求項16】
硬化アクリレート組成物を含んでなる光学物品であって、前記硬化組成物が、
(a)2以上の官能基を有する1種以上の多官能性アクリレート、
(b)1種以上のモノアクリレートモノマー、並びに
(c)イオウ及びセレンからなる群から選択されるヘテロ原子を含有する1種以上のジアクリレート
から誘導された構造単位を含んでなる、光学物品。
【請求項17】
ディプレイフィルムである、請求項16記載の光学物品。
【請求項18】
前記ディプレイフィルムが輝度向上フィルムである、請求項17記載の光学物品。
【請求項19】
ディプレイフィルムを含んでいる、請求項16記載の光学物品。
【請求項20】
前記硬化アクリレート組成物が約40〜約100℃の範囲のガラス温度を有する、請求項16記載の光学物品。
【請求項21】
硬化アクリレート組成物を含んでなる光学物品であって、前記硬化組成物が、
(a)式Iの1種以上の多官能性アクリレート、
(b)以下の式XI及びXIIのモノアクリレートからなる群から選択される1種以上のモノアクリレートモノマー、並びに
(c)以下の式XIV、XV又はXVIの1種以上のヘテロ原子含有ジアクリレート
から誘導された構造単位を含んでなる、光学物品。
【化9】

構造X及びXIで、R〜Rは独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基であり、Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基であり、「e」は0を含めた1〜4の整数であり、「f」は0を含めた1〜5の整数である。
【化10】

式中、R、R及びR10は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基である。
【請求項22】
(a)2以上の官能基を有する1種以上の多官能性アクリレート、
(b)1種以上のモノアクリレートモノマー、及び
(c)イオウ及びセレンからなる群から選択されるヘテロ原子を含有する1種以上のジアクリレート
から誘導された構造単位を含んでなる硬化組成物。
【請求項23】
前記1種以上の多官能性アクリレートが、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、芳香族ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、脂肪族ジオールジ(メタ)アクリレート、芳香族ビスフェノールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、環式脂肪族ジオールジ(メタ)アクリレート、多環式ジオールジ(メタ)アクリレート、脂肪族及び芳香族ポリオールポリ(メタ)アクリレート、脂肪族及び芳香族アルキレンエーテルポリオールポリ(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びにこれらの多官能性アクリレートを1種以上含むコポリマー及びブレンドからなる群から選択される、請求項22記載の硬化組成物。
【請求項24】
前記1種以上のモノアクリレートが、脂肪族モノ(メタ)アクリレート、アリールモノ(メタ)アクリレート、環式脂肪族モノ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールアリールエーテルモノ(メタ)アクリレート、グリコール系及びビスフェノール系モノ(メタ)アクリレート、並びにグリシジル置換モノ(メタ)アクリレートからなる群から選択される、請求項22記載の硬化組成物。
【請求項25】
前記1種以上のヘテロ原子含有ジアクリレートが次式XIIIを有する、請求項24記載の硬化組成物。
【化11】

式中、R、R及びR10は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基であり、L及びLは各々独立に二価C〜C10脂肪族基、二価C〜C10環式脂肪族基又は二価C〜C10芳香族基であり、Q、Q及びQは各々独立に結合、酸素原子、カルボニル基、チオカルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、イオウ原子、セレン原子、ジスルフィド基、ジセレニド基、セレノスルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、セレノキシド基又はセレノン基であり、ここで1以上のQ、Q及びQがイオウ原子又はセレン原子を含んでおり、Ar及びArは独立にC〜C10二価芳香族基である。
【請求項26】
前記1種以上のヘテロ原子含有ジアクリレートジアクリレートが次式XIV、XV又はXVIを有する、請求項25記載の硬化組成物。
【化12】

式中、R、R及びR10は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基である。
【請求項27】
(a)2以上の官能基を有し、下記構造IIの1種以上の多官能性アクリレート、
(b)以下の式XI及びXIIのモノアクリレートからなる群から選択される1種以上のモノアクリレートモノマー、並びに
(c)以下の式XIV、XV又はXVIの1種以上のヘテロ原子含有ジアクリレート
から誘導された構造単位を含んでなる、硬化組成物。
【化13】

式中、Wは結合、酸素原子、C〜C10脂肪族基、C〜C20環式脂肪族基又はC〜C20芳香族基であり、「a」、「b」及び「g」は各々独立に1以上であり、各Rは各々独立に水素原子又は次式(III)を有するアクリロイル基である。
【化14】

式中、Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基である。
【化15】

ここで、構造X及びXIにおいて、R及びRは独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基であり、Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基であり、「e」は1〜4の整数であり、「f」は1〜5の整数である。
【化16】

式中、R、R及びR10は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基又はC〜C10芳香族基である。

【公表番号】特表2008−514753(P2008−514753A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533512(P2007−533512)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/031924
【国際公開番号】WO2006/036489
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】