説明

硬質皮膜および硬質皮膜形成用スパッタリングターゲット材

【課題】 従来の硬質皮膜であるTiN皮膜やTiAlN皮膜よりも耐摩耗性に優れた硬質皮膜およびその形成用スパッタリングターゲット材を提供する。
【解決手段】[1](Zr1-a-b ,Hfa ,Mb )(C1-x x )からなる硬質皮膜(但し、MはW,Moの1種以上)であって、0≦1−a−b、0≦a、0.03≦b≦0.35、0≦x≦1を満たすことを特徴とする硬質皮膜、[2](Zr1-a-b-c ,Hfa ,Mb ,Dc )(C1-x x )からなる硬質皮膜(但し、DはSi,Bの1種以上)であって、0≦1−a−b、0≦a、0.03≦b≦0.35、0.03≦c≦0.3、0≦x≦1を満たすことを特徴とする硬質皮膜等。なお、上記式において、aはHfの原子比、bはMの原子比、cはDの原子比、xはNの原子比を示すものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬質皮膜および硬質皮膜形成用スパッタリングターゲット材に関する技術分野に属するものであり、特には、高温潤滑性、耐摩耗性に優れ、チップ、ドリル、エンドミル等の切削工具や金型等の塑性加工用冶具の耐摩耗性および耐酸化性を向上させることのできる硬質皮膜、及び、該硬質皮膜の製造過程で蒸発源として使用されるスパッタリングターゲット材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から超硬合金、サーメットや高速度工具鋼を基材とする切削工具の耐摩耗性を向上させることを目的に、TiNやTiCN、TiAlN等の硬質皮膜をコーティングすることが行われている。特に、特許第2644710号公報に開示されるようなTiとAlの複合窒化皮膜が、優れた耐摩耗性を示すことから、前記チタンの窒化物や炭化物、炭窒化物等からなる皮膜に代わって、高速切削用や焼き入れ鋼等の高硬度材切削用の切削工具に適用されつつある。しかしながら、近年の被削材高硬度化や切削速度の高速度化に伴い、更に耐摩耗性の高められた硬質皮膜が求められている。
【0003】
特開2004−100004号公報には、(Tia,Wb)(Cx,Ny)zで表した場合、それぞれのモル比率が、0.6≦a≦0.94、0.06≦b≦0.4、a+b=1、0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.9、x+y=1、zは金属元素の合計に対する非金属元素の合計のモル比率を示し、0.8≦z≦1である皮膜が開示されている。例示として、(Ti,W)C、(Ti,W,Nb)C、(Ti,W,Ta)C、(Ti,W,Ta,Nb)C、(Ti,W,Al)C、(Ti,W,Si)C、(Ti,W)(C,N)、(Ti,W,Nb)(C,N)、(Ti,W,Ta)(C,N)、(Ti,W,Ta,Nb)(C,N)、(Ti,W,Al)(C,N)、(Ti,W,Si)(C,N)、(Ti,W)N、(Ti,W,Nb)N、(Ti,W,Ta)N、(Ti,W,Ta,Nb)N、(Ti,W,Al)N、(Ti,W,Si)Nが示されている。また、(Tia,Wb,Mc)(Cx,Ny)zで表され、MはAl,Si,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,およびMoから選ばれた少なくとも1種の元素を示し、それぞれのモル比率が、0.6≦a≦0.94、0.06≦b≦0.4、0<c≦0.1、a+b+c=1、0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.9、x+y=1、zは金属元素Ti、W、Mの合計に対する非金属元素C,Nの合計のモル比率を示し、0.8≦z≦1であると好ましいとする皮膜が記載されている。特に超硬合金基材または被膜にAl,Si,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,およびMoから選ばれた少なくとも1種の元素が含まれている場合が例示されている。ただし、このW含有皮膜はTiNあるいはTiCNと超硬基材の密着性を改善する中間層として使用されており、当該層の機械的特性や潤滑性に関しては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2644710号公報
【特許文献2】特開2004−100004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、従来の硬質皮膜であるTiN皮膜やTiAlN皮膜よりも耐摩耗性に優れた硬質皮膜およびその形成用スパッタリングターゲット材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。本発明によれば上記目的を達成することができる。
【0007】
このようにして完成され上記目的を達成することができた本発明は、硬質皮膜およびその形成用スパッタリングターゲット材に係わり、請求項1〜3記載の硬質皮膜(第1〜3発明に係る硬質皮膜)、請求項4記載の硬質皮膜形成用スパッタリングターゲット材(第4発明に係る硬質皮膜形成用スパッタリングターゲット材)であり、それは次のような構成としたものである。
【0008】
すなわち、請求項1記載の硬質皮膜は、(Zr1-a-b ,Hfa ,Mb )(C1-x x )からなる硬質皮膜であって、下記の式(1A)〜(4A)を満たすことを特徴とする硬質皮膜である〔第1発明〕。
0≦1−a−b ------------------------- 式(1A)
0≦a ----------------------------- 式(2A)
0.03≦b≦0.35 ----------------- 式(3A)
0≦x≦1 ----------------------------- 式(4A)
但し、上記(Zr1-a-b ,Hfa ,Mb )(C1-x x )において、MはW,Moの1種以上であり、上記式(1A)〜(4A)において、aはHfの原子比、bはMの原子比、xはNの原子比を示すものである。
【0009】
【0010】
請求項2記載の硬質皮膜は、(Zr1-a-b-c ,Hfa ,Mb ,Dc )(C1-x x )からなる硬質皮膜であって、下記の式(1C)〜(5C)を満たすことを特徴とする硬質皮膜である〔第2発明〕。
0≦1−a−b ------------------------- 式(1C)
0≦a ----------------------------- 式(2C)
0.03≦b≦0.35 ----------------- 式(3C)
0.03≦c≦0.3 ------------------- 式(4C)
0≦x≦1 ----------------------------- 式(5C)
但し、上記(Zr1-a-b-c ,Hfa ,Mb ,Dc )(C1-x x )において、MはW,Moの1種以上、DはSi,Bの1種以上であり、上記式(1C)〜(5C)において、aはHfの原子比、bはMの原子比、cはDの原子比、xはNの原子比を示すものである。
【0011】
請求項3記載の硬質皮膜は、下記の硬質皮膜A1、硬質皮膜A2の1種以上と下記の硬質皮膜B1、硬質皮膜B2、硬質皮膜B3の1種以上とが合計で2層以上交互に積層された硬質皮膜であって、前記硬質皮膜A1、硬質皮膜A2の1種以上の膜厚が200nm以下であり、前記硬質皮膜B1、硬質皮膜B2、硬質皮膜B3の1種以上の膜厚が200nm以下であると共に、積層された硬質皮膜全体の平均組成として請求項1〜2のいずれかに記載の硬質皮膜の組成を満たすことを特徴とする硬質皮膜である〔第3発明〕。
硬質皮膜A1
(Zr1-a ,Hfa )(C1-x x )からなる硬質皮膜であって下記の式(1D)〜(3D)を満たす硬質皮膜。
0≦1−a --------------------- 式(1D)
0≦a≦0.4 --------------------- 式(2D)
0≦x≦1 ------------------------- 式(3D)
但し、上記式(1D)〜(3D)において、aはHfの原子比、xはNの原子比を示すものである。
硬質皮膜A2
(Zr1-a-C ,Hfa ,DC )(C1-x x )からなる硬質皮膜であって下記の式(1B)〜(3B)を満たす硬質皮膜。
0.05≦a≦0.4 ------------------- 式(1B)
0.03≦c≦0.3 ------------------- 式(2B)
0≦x≦1 ----------------------------- 式(3B)
但し、上記(Zr1-a-C ,Hfa ,DC )(C1-x x )において、DはSi,Bの1種以上であり、上記式(1B)〜(3B)において、aはHfの原子比、cはDの原子比、xはNの原子比を示すものである。
硬質皮膜B1
M(C1-x x )からなる硬質皮膜であって下記の式(1E)を満たす硬質皮膜。
0≦x≦1 ------------------------- 式(1E)
但し、上記M(C1-x x )において、MはW,Moの1種以上であり、上記式(1E)において、xはNの原子比を示すものである。
硬質皮膜B2
Si1-y-x y x からなる硬質皮膜であって下記の式(1F)〜(3F)を満たす硬質皮膜。 0≦y≦0.25 --------------------- 式(1F)
0<x≦1 --------------------------- 式(2F)
0.5≦(1−y−x)/x≦1.4 ----- 式(3F)
但し、上記式(1F)〜(3F)において、yはCの原子比、xはNの原子比を示すものである。
硬質皮膜B3
1-y-x y x からなる硬質皮膜であって下記の式(1G)〜(3G)を満たす硬質皮膜。
0≦y≦0.25 --------------------- 式(1G)
0<x≦1 --------------------------- 式(2G)
0.5≦(1−y−x)/x≦1.5 ----- 式(3G)
但し、上記式(1G)〜(3G)において、yはCの原子比、xはNの原子比を示すものである。
【0012】
請求項4記載の硬質皮膜形成用スパッタリングターゲット材は、請求項1〜2のいずれかに記載の硬質皮膜の金属元素の組成と同一の組成を有すると共に、相対密度が91%以上であることを特徴とする硬質皮膜形成用スパッタリングターゲット材である〔第4発明〕。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来の硬質皮膜であるTiN皮膜やTiAlN皮膜よりも耐摩耗性に優れた硬質皮膜が得られる。即ち、本発明に係る硬質皮膜(第1〜第3発明に係る硬質皮膜)は、従来の硬質皮膜であるTiN皮膜やTiAlN皮膜よりも、耐摩耗性に優れ、切削工具や塑性加工用冶具の硬質皮膜として好適に用いることができ、それらの耐久性の向上がはかれる。本発明に係る硬質皮膜形成用スパッタリングターゲット材によれば、本発明に係る硬質皮膜を成膜することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、前述の目的を達成すべく、鋭意検討した結果、従来より知られているTiN硬質皮膜やZrN硬質皮膜に代えて(Zr,Hf)Nなる複合皮膜とすることで、高硬度で耐摩耗性に優れる皮膜となることを見出した。HfNはTiNやZrNに比べて形成の自由エネルギーが負の大きな値となり、Hf添加により、より安定な皮膜となる。Hf添加量が原子比で0.05未満ではHf添加の効果は認められず、原子比で0.4超の添加を行っても、その効果はほとんど変わらない。また、C添加によりHfCやZrCといった高硬度の炭化物を形成し、皮膜が高硬度化すると共に、潤滑特性も向上する。ただし、Cを添加した場合、皮膜の耐酸化性が低下する傾向があることから、使用温度や目的に応じてC量を決定するとよい。
【0015】
また、Hf,Zrを含有する皮膜にW,Moを適量添加することで皮膜に高温潤滑性が具備され、切削工具などの発熱により高温になる耐摩耗用途において優れた耐摩耗性を発揮することを見いだした。WおよびMoは例えば切削時の工具と切り粉あるいは被削材との高速での摺動により発熱し、酸化物を形成する。WおよびMoの酸化物にはWO2 (融点1500℃)、WO3 (融点1470℃)およびMoO2 (融点1100℃)、MoO3 (融点795 〜801 ℃)が存在する。摺動面に形成されたこれらの酸化物の融点は、いわゆる切削時の摺動面温度に近く、その温度域では酸化物は軟質で潤滑性を示す。潤滑性を発揮するためには、W及び/又はMo(W,Moの1種以上)の添加量を原子比で0.03以上とする必要がある。W及び/又はMoの添加量が原子比で0.35を超えると、逆に、酸化の進行が著しく、酸化摩耗が生じる。W及び/又はMoの添加量は、好ましくは0.05以上0.3以下であり、より好ましくは0.07以上0.2以下である。なお、WやMoの添加により高硬度化や高温潤滑性向上が図れるために、ZrWNやHfMoNのようにZrとHfを同時に含まない状態でも効果は発揮される。
【0016】
本発明は、かかる知見に基づき完成されたものである。即ち、かかる知見に基づき本発明のベースとなる発明(以下、本発明の基礎発明)を創出し、そして、本発明を完成させた。この基礎発明に係る硬質皮膜は、(Zr1-a ,Hfa )(C1-x x )からなる硬質皮膜であって、下記の式(1) 〜(2) を満たすことを特徴とする硬質皮膜である。本発明に係る硬質皮膜は、(Zr1-a-b ,Hfa ,Mb )(C1-x x )からなる硬質皮膜(但しMはW,Moの1種以上である)であって、前述の式(1A)〜(4A)を満たすことを特徴とする硬質皮膜である〔第1発明〕。この基礎発明に係る硬質皮膜も、本発明(第1発明)に係る硬質皮膜も、従来の硬質皮膜であるTiN皮膜やTiAlN皮膜よりも、耐摩耗性に優れ、切削工具や塑性加工用冶具の硬質皮膜として好適に用いることができ、それらの耐久性の向上がはかれる。更に、本発明(第1発明)に係る硬質皮膜については、優れた高温潤滑性を具備し、切削工具などの発熱により高温になる耐摩耗用途においても優れた耐摩耗性を発揮するので、かかる用途においても好適に用いることができ、その耐久性の向上がはかれる。
0.05≦a≦0.4 ------------------- 式(1)
0≦x≦1 ----------------------------- 式(2)
但し、上記式(1) 〜(2) において、aはHfの原子比、xはNの原子比を示すものである。
【0017】
なお、第1発明に係る硬質皮膜は、〔Zr1-a-b ,Hfa ,(W,Mo)b 〕(C1-x x )からなる硬質皮膜であって、下記の式(1A)〜(4A)を満たすことを特徴とする硬質皮膜であるということもできる。
0≦1−a−b ------------------------- 式(1A)
0≦a ----------------------------- 式(2A)
W +bMo=b --------------------------式(3A-1)
0.03≦b≦0.35 ----------------- 式(3A-2)
0≦x≦1 ----------------------------- 式(4A)
但し、上記式(1A)〜(4A)において、aはHfの原子比、bW はWの原子比、bMoはMoの原子比、xはNの原子比を示すものである。
【0018】
本発明の基礎発明に係る硬質皮膜において、式(1) 、即ち、0.05≦a≦0.4(但し、a:Hfの原子比である)を満たすこととしているのは、a:0.05未満の場合にはHf添加による耐摩耗性の向上の効果がほとんど認められず、a:0.05以上の場合においてはaの増大に伴ってHf添加による耐摩耗性向上効果が増大するが、a:0.4超の場合においてはHf添加による耐摩耗性向上効果が飽和し、ほとんど変わらなくなるからである。なお、a:0.1以上であることが好ましく、更にa:0.15以上であることがより好ましい。
【0019】
なお、Cについては、前述のように、高硬度の炭化物(HfCやZrC)を形成し、皮膜が高硬度化すると共に、潤滑特性も向上するが、Cを添加した場合、皮膜の耐酸化性が低下する傾向があることから、使用温度や目的に応じてC量を決定することができる。
【0020】
第1発明に係る硬質皮膜において、式(3A)、即ち、0.03≦b≦0.35(但し、b:Mの原子比、M:W,Moの1種以上である)を満たすこととしているのは、b:0.03未満の場合にはM(W,Moの1種以上)添加による高温潤滑性の向上の効果がほとんど認められず、b:0.03以上の場合においてはbの増大に伴ってM添加による高温潤滑性向上効果が増大するが、b:0.35超の場合においては酸化の進行が著しくなって酸化摩耗が生じる恐れがあるからである。なお、かかる高温潤滑性をより高水準に増大すると共に酸化摩耗をより確実に抑制するためには、b:0.05〜0.3とすることが望ましく、更にb:0.07〜0.2とすることが望ましい。
【0021】
式(2A)、即ち、0≦a、及び、式(1A)、即ち、0≦1−a−b(但し、a:Hfの原子比、b:Mの原子比、M:W,Moの1種以上)を満たすこととしている理由について以下説明する。M(W,Moの1種以上)の添加により高硬度化や高温潤滑性向上が図れるために、ZrWNやHfMoNのようにZrとHfを同時に含まない状態でも優れた耐摩耗性を確保することができるので、a=0であってもよく、また、1−a−b(Zrの原子比)=0であってもよい。従って、0≦a、及び、0≦1−a−bとする。なお、Hfを添加することにより耐摩耗性向上の効果が得られるが、その効果はa:0.5超で飽和することから、a:0.5以下であることが好ましく、更にa:0.4以下であることがより好ましい。
【0022】
なお、Cについては、前述のように、高硬度の炭化物(HfCやZrC)を形成し、皮膜が高硬度化すると共に、潤滑特性も向上するが、Cを添加した場合、皮膜の耐酸化性が低下する傾向があることから、使用温度や目的に応じてC量を決定することができる。
【0023】
本発明の基礎発明、第1発明に係る硬質皮膜に更にSiおよび/またはB(Si,Bの1種以上)を添加することにより、皮膜の結晶粒を微細化させることができ、皮膜が高硬度化する。Si,Bの1種以上の添加量(原子比)が0.03以上でないと、上記の効果が現れない。一方、この添加量(原子比)が0.3を超えると、皮膜が非晶質化して、硬度が低下する。従って、皮膜の結晶粒を微細化させて皮膜を高硬度化するためには、Si,Bの1種以上を原子比で0.03〜0.3添加することが望ましい。
【0024】
そこで、第2発明に係る硬質皮膜は、第1発明に係る硬質皮膜に更にSi,Bの1種以上を原子比で0.03〜0.3添加した構成のものとした。また、参考発明として、本発明の基礎発明に係る硬質皮膜に更にSi,Bの1種以上を原子比で0.03〜0.3添加した構成の硬質皮膜(以下、参考発明1に係る硬質皮膜)を創出した。
【0025】
即ち、第2発明に係る硬質皮膜は、(Zr1-a-b-c ,Hfa ,Mb ,Dc )(C1-x x )からなる硬質皮膜(但しMはW,Moの1種以上であり、DはSi,Bの1種以上である)であって、前述の式(1C)〜(5C)を満たすことを特徴とするものとした。なお、参考発明1に係る硬質皮膜は、(Zr1-a-C ,Hfa ,DC )(C1-x x )からなる硬質皮膜(但しDはSi,Bの1種以上である)であって、下記式(1B)〜(3B)を満たすことを特徴とするものである。
0.05≦a≦0.4 ------------------- 式(1B)
0.03≦c≦0.3 ------------------- 式(2B)
0≦x≦1 ----------------------------- 式(3B)
但し、上記(Zr1-a-C ,Hfa ,DC )(C1-x x )において、DはSi,Bの1種以上であり、上記式(1B)〜(3B)において、aはHfの原子比、cはDの原子比、xはNの原子比を示すものである。
【0026】
第2発明に係る硬質皮膜は、第1発明に係る硬質皮膜に比較し、皮膜の結晶粒が微細であって硬度が高く、ひいては耐摩耗性に優れている。参考発明1に係る硬質皮膜は、本発明の基礎発明に係る硬質皮膜に比較し、皮膜の結晶粒が微細であって硬度が高く、ひいては耐摩耗性に優れている。
【0027】
参考発明1に係る硬質皮膜において、式(1B)を満たすこととしている理由は、本発明の基礎発明に係る硬質皮膜において式(1) を満たすこととしている理由と同様である。式(2B)、即ち、0.03≦c≦0.3(ただし、c:Dの原子比、D:Si,Bの1種以上である)を満たすこととしているのは、c:0.03未満の場合にはD(Si,Bの1種以上)添加効果、即ち、皮膜の結晶粒微細化による皮膜の高硬度化の効果がほとんど認められず、c:0.03以上の場合においてはcの増大に伴ってD添加効果が増大するが、c:0.3超の場合においては皮膜が非晶質化して硬度が低下するからである。なお、かかる皮膜の非晶質化による硬度の低下をより確実に抑制するためには、cを0.07以下にすることが望ましい。つまり、c:0.03〜0.07とすることが望ましい。
【0028】
第2発明に係る硬質皮膜において、式(3C)、式(2C)、式(1C)を満たすこととしている理由は、第1発明に係る硬質皮膜において式(3A)、式(2A)、式(1A)を満たすこととしている理由と同様である。式(4C)、即ち、0.03≦c≦0.3(但し、c:Dの原子比、D:Si,Bの1種以上である)を満たすこととしている理由は、c:0.03未満の場合にはD(Si,Bの1種以上)添加効果、即ち、皮膜の結晶粒微細化による皮膜の高硬度化の効果がほとんど認められず、c:0.03以上の場合においてはcの増大に伴ってD添加効果が増大するが、c:0.3超の場合においては皮膜が非晶質化して硬度が低下するからである。なお、かかる皮膜の非晶質化による硬度の低下をより確実に抑制するためには、cを0.07以下にすることが望ましい。つまり、c:0.03〜0.07とすることが望ましい。
【0029】
第1〜第2発明、参考発明1に係る硬質皮膜の構造としては、含有される元素が均一に分布した単層膜であっても良いし、あるいは、各々の元素分布に偏りがあっても、皮膜全体の平均組成として第1〜第2発明、参考発明1に係る硬質皮膜の組成を満たしていれば良い。積層膜でそれを実現する場合、(Zr、Hf、W、Si)N膜を例にとって考えると、(Zr、Hf)N層と(W、Si)N膜の積層膜であっても良いし、(Zr、Hf、W)NとSiN膜の積層でも良い。(Zr,Hf)(CN)膜とM(CN)、SiCNあるいはBCN膜との積層とすることにより、同等以上の特性が得られることを見出した。この積層の周期、即ち、1層当たりの皮膜の厚みに関しては、200nm超の場合は積層した皮膜の各々の特性が支配的になり、積層の効果が発揮されず、性能が低下することから、200nm以下にすることが望ましい。
【0030】
そこで、第3発明に係る硬質皮膜は、(Zr,Hf)(CN)膜および/又は(Zr,Hf,D)(CN)膜(但し、DはSi,Bの1種以上)とM(CN)膜、SiCN膜、BCN膜の1種以上との積層膜とした。
【0031】
即ち、第3発明に係る硬質皮膜は、下記の硬質皮膜A1、硬質皮膜A2の1種以上と下記の硬質皮膜B1、硬質皮膜B2、硬質皮膜B3の1種以上とが合計で2層以上交互に積層された硬質皮膜であって、前記硬質皮膜A1、硬質皮膜A2の1種以上の膜厚が200nm以下であり、前記硬質皮膜B1、硬質皮膜B2、硬質皮膜B3の1種以上の膜厚が200nm以下であると共に、積層された硬質皮膜全体の平均組成として請求項1〜2のいずれかに記載の硬質皮膜の組成を満たすことを特徴とするものとした。
【0032】
硬質皮膜A1
(Zr1-a ,Hfa )(C1-x x )からなる硬質皮膜であって下記の式(1D)〜(3D)を満たす硬質皮膜。
0≦1−a --------------------- 式(1D)
0≦a≦0.4 --------------------- 式(2D)
0≦x≦1 ------------------------- 式(3D)
但し、上記式(1D)〜(3D)において、aはHfの原子比、xはNの原子比を示すものである。
硬質皮膜A2
(Zr1-a-C ,Hfa ,DC )(C1-x x )からなる硬質皮膜であって下記の式(1B)〜(3B)を満たす硬質皮膜。
0.05≦a≦0.4 ------------------- 式(1B)
0.03≦c≦0.3 ------------------- 式(2B)
0≦x≦1 ----------------------------- 式(3B)
但し、上記(Zr1-a-C ,Hfa ,DC )(C1-x x )において、DはSi,Bの1種以上であり、上記式(1B)〜(3B)において、aはHfの原子比、cはDの原子比、xはNの原子比を示すものである。
硬質皮膜B1
M(C1-x x )からなる硬質皮膜であって下記の式(1E)を満たす硬質皮膜。
0≦x≦1 ------------------------- 式(1E)
但し、上記M(C1-x x )において、MはW,Moの1種以上であり、上記式(1E)において、xはNの原子比を示すものである。
硬質皮膜B2
Si1-y-x y x からなる硬質皮膜であって下記の式(1F)〜(3F)を満たす硬質皮膜。 0≦y≦0.25 --------------------- 式(1F)
0<x≦1 --------------------------- 式(2F)
0.5≦(1−y−x)/x≦1.4 ----- 式(3F)
但し、上記式(1F)〜(3F)において、yはCの原子比、xはNの原子比を示すものである。
硬質皮膜B3
1-y-x y x からなる硬質皮膜であって下記の式(1G)〜(3G)を満たす硬質皮膜。
0≦y≦0.25 --------------------- 式(1G)
0<x≦1 --------------------------- 式(2G)
0.5≦(1−y−x)/x≦1.5 ----- 式(3G)
但し、上記式(1G)〜(3G)において、yはCの原子比、xはNの原子比を示すものである。
【0033】
第3発明に係る硬質皮膜において、硬質皮膜A1、硬質皮膜A2の1種以上(以下、硬質皮膜Aともいう)の膜厚:200nm以下、硬質皮膜B1、硬質皮膜B2、硬質皮膜B3の1種以上(以下、硬質皮膜Bともいう)の膜厚:200nm以下としているのは、硬質皮膜Aの膜厚:200nm超、および/または、硬質皮膜Bの膜厚:200nm超とした場合、200nm超の皮膜の特性が支配的になり、積層の効果が発揮されず、性能が低下するからである。かかる点から、硬質皮膜Aの膜厚および硬質皮膜Bの膜厚は、100nm以下とすることが望ましく、更に50nm以下とすることが望ましく、20nm以下とすることは更に望ましい。
【0034】
第3発明に係る硬質皮膜において、硬質皮膜A(硬質皮膜A1、硬質皮膜A2の1種以上)と硬質皮膜B(硬質皮膜B1、硬質皮膜B2、硬質皮膜B3の1種以上)とが合計で2層以上交互に積層された硬質皮膜とは、硬質皮膜Aと硬質皮膜B1、硬質皮膜B2、硬質皮膜B3の1種とが合計で2層以上交互に積層された硬質皮膜(以下、積層膜aともいう)、硬質皮膜Aと硬質皮膜B1、硬質皮膜B2、硬質皮膜B3の2種とが合計で2層以上交互に積層された硬質皮膜(以下、積層膜bともいう)、或いは、硬質皮膜Aと硬質皮膜B1、硬質皮膜B2、硬質皮膜B3の3種とが合計で2層以上交互に積層された硬質皮膜(以下、積層膜cともいう)のことである。上記積層膜aとしては、例えば、硬質皮膜Aと硬質皮膜B1とが合計で2層以上交互に積層された硬質皮膜や、硬質皮膜Aと硬質皮膜B3とが合計で2層以上交互に積層された硬質皮膜を挙げることができる。上記積層膜bとしては、例えば、硬質皮膜A上に硬質皮膜B1が積層され、その上に硬質皮膜Aが積層され、その上に硬質皮膜B2が積層されたものや、硬質皮膜A上に硬質皮膜B1が積層され、その上に硬質皮膜Aが積層され、その上に硬質皮膜B3が積層されたもの、あるいは、硬質皮膜B1上に硬質皮膜Aが積層され、その上に硬質皮膜B3が積層されたものを挙げることができる。また、上記積層膜bとしては、例えば、硬質皮膜A上に硬質皮膜B1が積層され、その上に硬質皮膜B2が積層され(この硬質皮膜B1と硬質皮膜B2とよりなる層を、以下、硬質皮膜B1+B2層ともいう)、その上に硬質皮膜Aが積層され、その上に硬質皮膜B2(以下、単層B2ともいう)が積層されたものも挙げることができる。なお、この場合、単層B2の厚みは、当然、硬質皮膜B1、硬質皮膜B2、硬質皮膜B3の1種以上の膜厚(200nm以下であることが必要である)に相当するが、硬質皮膜B1+B2層については硬質皮膜B1+B2層の厚みが、硬質皮膜B1、硬質皮膜B2、硬質皮膜B3の1種以上の膜厚(200nm以下であることが必要である)に相当する。上記積層膜cとしては、例えば、硬質皮膜A上に硬質皮膜B1が積層され、その上に硬質皮膜Aが積層され、その上に硬質皮膜B2が積層され、その上に硬質皮膜Aが積層され、その上に硬質皮膜B3が積層されたものを挙げることができる。また、上記積層膜cとしては、例えば、硬質皮膜A上に硬質皮膜B1(以下、単層B1ともいう)が積層され、その上に硬質皮膜B2(単層B2)が積層され(この硬質皮膜B1と硬質皮膜B2とよりなる層:硬質皮膜B1+B2層)、その上に硬質皮膜Aが積層され、その上に硬質皮膜B3(以下、単層B3ともいう)が積層されたものや、硬質皮膜A上に硬質皮膜B1(単層B1)が積層され、その上に硬質皮膜B2(単層B2)が積層され(この硬質皮膜B1と硬質皮膜B2とよりなる層:硬質皮膜B1+B2層)、その上に硬質皮膜Aが積層され、その上に硬質皮膜B2(単層B2)が積層され、その上に硬質皮膜B3(単層B3)が積層されたものも挙げることができる。なお、この場合、単層B1の厚み、単層B2の厚み、単層B3の厚みの各々は、当然、硬質皮膜B1、硬質皮膜B2、硬質皮膜B3の1種以上の膜厚(200nm以下であることが必要である)に相当するが、硬質皮膜B1+B2層については硬質皮膜B1+B2層の厚みが、硬質皮膜B1、硬質皮膜B2、硬質皮膜B3の1種以上の膜厚(200nm以下であることが必要である)に相当する。
【0035】
本発明(第1〜第3発明)に係る硬質皮膜の形成に当たっては、いわゆる気相コーティング法が有効である。気相コーティング法の中でも、原料蒸発源を溶解蒸発させる電子ビーム蒸着法やホローカソードイオンプレーティング法は、融点の差により、各元素の蒸発量が異なってくることから、組成の制御が極めて困難であり、この点において本発明に係る硬質皮膜の形成には適していない。本発明に係る硬質皮膜の形成には、固体の蒸発源を使用し、かつ、蒸発源と形成された皮膜の組成変動が少ないスパッタリング法あるいはカソード型アークイオンプレーティング(以下、AIP)法が適している。スパッタリング法の中では、成膜対象の基材へのイオン照射量が多いアンバランストマグネトロンスパッタリング(以下、UBMS)法やハイパワーパルススパッタリング法が適している。これらの固体蒸発源を使用する成膜方法において、スパッタリング法ではスパッタリングターゲットに数百Vの高電圧を、AIP法では100A程度の高電流を各々印可することから、放電の安定性はスパッタリングターゲットの品質に大きく依存する。つまり、スパッタリングターゲットの相対密度が低く、内部に空孔などの欠陥が存在すると、空孔を起点として異常放電が生じるために、使用するスパッタリングターゲットは相対密度が高く緻密であることが求められる。スパッタリングターゲットの相対密度が91%以上である場合、異常放電を生じず、放電安定性に優れている。
【0036】
そこで、本発明に係る硬質皮膜形成用スパッタリングターゲット材は、第1〜第2発明に係る硬質皮膜の金属元素の組成と同一の組成を有すると共に、相対密度が91%以上であることを特徴とするものとした。このスパッタリングターゲット材によれば、異常放電を生じず、放電安定性に優れた状態で、第1〜第2発明に係る硬質皮膜を形成(成膜)することができ、更には、WやMo,Si,B等よりなるスパッタリングターゲット材を同時に用いることにより、第3発明に係る硬質皮膜を形成(成膜)することができる。
【0037】
上記スパッタリングターゲット材の相対密度が95%以上の場合、より確実に放電安定性に優れた状態で、本発明に係る硬質皮膜を成膜することができる。なお、スパッタリングターゲットの相対密度は、ターゲット構成相(純金属、合金)で決まる理論密度(D1 )に対して、実際のターゲットの重量と体積から求めた密度(D2 )との比率〔100×D2 /D1 (%)〕を示すものである。
【実施例】
【0038】
本発明の実施例および比較例を以下説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
〔例A〕
AIP蒸発源およびUBMS蒸発源を有する成膜装置にてZr,Hfを含有するスパッタリングターゲットを用いて組成の異なる(Zr,Hf)(CN)皮膜を形成した。
【0040】
このとき、基材としては、皮膜の結晶構造、組成、硬度の調査用および高温下での摩擦係数測定用の皮膜形成の場合には超硬合金基板を用い、切削試験用の皮膜形成の場合には超硬合金製ボールエンドミル(2枚刃、直径10mmφ)を用いた。いずれの皮膜の形成の場合にも、基板を成膜装置のチャンバー内に導入し、チャンバー内を真空引きした後、基材を約500℃まで加熱し、この後、ArイオンによるイオンクリーニングをAr圧力0.6Pa、基板バイアス電圧を−500Vとして3分間実施した。
【0041】
このイオンクリーニングの後、UBMS法の場合は、Ar−窒素あるいはAr−窒素−メタンの混合ガス中(全圧0.6Pa)にて、基板への印可バイアスを70Vとして、成膜を実施した。AIP法の場合は窒素あるいは窒素−メタンガス中(全圧力4Pa)で印可バイアス70V、アーク電流150Aとして成膜した。皮膜の厚みは、約3μmである。
【0042】
このようにして皮膜形成されたものについて、皮膜の結晶構造、組成、硬度の調査、高温下での摩擦係数の測定、切削試験を行った。
【0043】
このとき、皮膜の結晶構造は、X線回折により同定することによって調査した。皮膜中の金属元素の成分組成は、EPMAにより測定することによって調査した。皮膜の硬度については、マイクロビッカース硬度計を用いて、測定荷重25gf、測定時間15秒の条件で測定することによって調査した。高温下での摩擦係数は、相手材を熱間金型鋼(SKD61、HRC50)として、大気中で、温度800℃、摺動速度0.3m/s、垂直荷重2Nの条件で摺動させ、摺動開始後1000m(摺動距離)後に測定した。
【0044】
切削試験は、前述の超硬合金製ボールエンドミル(2枚刃、直径10mmφ)に皮膜形成されたものを用いて、下記条件で切削長50mまで行った。そして、この切削試験後のものについて、境界部逃げ面の摩耗量を測定し、これにより切削性能を評価した。なお、この摩耗量は切削工具の逃げ面の摩耗幅(摩耗した個所の幅)である(以下、同様)。
【0045】
〔切削試験条件〕
・被削材:SUS304
・切削速度:220m/分
・刃送り:0.3mm/刃
・軸切り込み:1mm
・深さ(径方向)切り込み:1mm
・切削長:50m
【0046】
上記試験(調査、測定)の結果を表1に示す。なお、表1の結晶構造の欄においてB1は結晶質であることを示すものである。
【0047】
表1からわかるように、No.1の皮膜(Ti0.5 Al0.5 N皮膜)は、高温下での摩擦係数が0.8であり、切削試験での摩耗量が65μmである(比較例)。これに対し、No.2の皮膜(TiN皮膜)は、高温下での摩擦係数が小さいが、切削試験での摩耗量が大きい(比較例)。No.3の皮膜(CrN皮膜)は、高温下での摩擦係数が更に小さくて高温潤滑性に優れているものの、硬度が低く、切削試験での摩耗量が大きくて耐摩耗性に劣っている(比較例)。
【0048】
No.4の皮膜(ZrN皮膜)、No.5の皮膜〔Hf(C0.5 0.5 )皮膜〕およびNo.6の皮膜〔(Zr0.98Hf0.02)N皮膜〕は、No.2の皮膜とNo.3の皮膜との間の特性を有するものである。即ち、No.2の皮膜と比較すると、高温下での摩擦係数が小さいが、切削試験での摩耗量が大きく、No.3の皮膜と比較すると、切削試験での摩耗量が小さいが、高温下での摩擦係数が大きい(比較例)。
【0049】
これに対し、No.7〜11の皮膜〔(Zr1-a ,Hfa )N皮膜〕(本発明の基礎発明の要件を満たす)は、高温下での摩擦係数がNo.3の皮膜の場合と同程度に小さくて高温潤滑性に優れており、No.1〜6 の皮膜に比較して切削試験での摩耗量が著しく小さくて耐摩耗性に極めて優れている(本発明の基礎発明例)。従って、総合的にみてNo.1〜6 の皮膜よりも優れている。
【0050】
No.12 〜13の皮膜〔(Zr1-a ,Hfa )N皮膜〕(a:0.4超の点で本発明の基礎発明の要件を満たさない)は、上記No.7〜11の皮膜に比較し、高温下での摩擦係数が大きく、切削試験での摩耗量が著しく大きくて耐摩耗性に極めて劣っている(比較例)。
【0051】
No.14 〜17の皮膜〔(Zr1-a ,Hfa )(C1-x x )皮膜〕(本発明の基礎発明の要件を満たす)およびNo.18 の皮膜〔(Zr1-a ,Hfa )C皮膜〕(本発明の基礎発明の要件を満たす)は、No.7〜11の皮膜よりも高温下での摩擦係数が小さくて高温潤滑性に優れており、No.7〜11の皮膜と同様に切削試験での摩耗量が著しく小さくて耐摩耗性に極めて優れている(本発明の基礎発明例)。従って、総合的にみてNo.1〜6 の皮膜よりも優れており、No.7〜11の皮膜と比べても優れている。
【0052】
〔例B〕
AIP蒸発源およびUBMS蒸発源を有する成膜装置にてZr,Hf,M(ただし、MはW,Moの1種以上)を含有するスパッタリングターゲットを用いて組成の異なる(Zr,Hf,M)(CN)皮膜を形成した。
【0053】
このとき、基材としては、皮膜の結晶構造、組成、硬度の調査用および高温下での摩擦係数測定用の皮膜形成の場合には超硬合金基板を用い、切削試験用の皮膜形成の場合には超硬合金製ボールエンドミル(2枚刃、直径10mmφ)を用いた。いずれの皮膜の形成の場合にも、基板を成膜装置のチャンバー内に導入し、チャンバー内を真空引きした後、基材を約500℃まで加熱し、この後、ArイオンによるイオンクリーニングをAr圧力0.6Pa、基板バイアス電圧を−500Vとして3分間実施した。
【0054】
このイオンクリーニングの後、UBMS法の場合は、Ar−窒素あるいはAr−窒素−メタンの混合ガス中(全圧0.6Pa)にて、基板への印可バイアスを70Vとして、成膜を実施した。AIP法の場合は窒素あるいは窒素−メタンガス中(全圧力4Pa)で印可バイアス70V、アーク電流150Aとして成膜した。皮膜の厚みは、約3μmである。
【0055】
このようにして皮膜形成されたものについて、皮膜の結晶構造、組成、硬度の調査、高温下での摩擦係数の測定、切削試験を行った。このとき、試験(調査、測定)方法は、前記〔例A〕の場合と同様である。
【0056】
上記試験(調査、測定)の結果を表2に示す。なお、表2の結晶構造の欄においてB1は結晶質であることを示すものである。
【0057】
表2からわかるように、No.4A の皮膜〔(Zr0.85,Hf0.15)N皮膜〕(本発明の基礎発明の要件を満たす)は、前記表1のNo.9の皮膜(本発明の基礎発明例)に相当する。No.5A 〜6Aの皮膜〔(Zr1-a-b ,Hfa ,Mb )N皮膜〕(b:0.03未満の点で本発明の第1発明の要件を満たさない)及びNo.12Aの皮膜〔(Zr1-a-b ,Hfa ,Mb )N皮膜〕(b:0.35超の点で本発明の第1発明の要件を満たさない)は、高温下での摩擦係数および切削試験での摩耗量が上記No.4A の皮膜の場合と同程度である。
【0058】
これに対し、No.7A 〜11A の皮膜〔(Zr1-a-b ,Hfa ,Mb )N皮膜〕(本発明の第1発明の要件を満たす)及びNo.13A〜14A の皮膜〔(Zr1-a-b ,Hfa ,Mb )N皮膜〕(本発明の第1発明の要件を満たす)並びにNo.15A〜16A の皮膜〔(Zr1-a-b ,Hfa ,Mb )(C1-x x )皮膜〕(本発明の第1発明の要件を満たす)は、高温下での摩擦係数が小さくて高温潤滑性に優れており、また、切削試験での摩耗量が小さくて耐摩耗性に優れている(本発明の第1発明例)。
【0059】
〔例C〕
AIP蒸発源およびUBMS蒸発源を有する成膜装置にてZr,Hf,M(ただし、MはW,Moの1種以上),D(ただし、DはSi,Bの1種以上)を含有するスパッタリングターゲットを用いて組成の異なる(Zr,Hf,M,D)(CN)皮膜を形成した。
【0060】
このとき、基材としては、皮膜の結晶構造、組成、硬度の調査用および高温下での摩擦係数測定用の皮膜形成の場合には超硬合金基板を用い、切削試験用の皮膜形成の場合には超硬合金製ボールエンドミル(2枚刃、直径10mmφ)を用いた。いずれの皮膜の形成の場合にも、基板を成膜装置のチャンバー内に導入し、チャンバー内を真空引きした後、基材を約500℃まで加熱し、この後、ArイオンによるイオンクリーニングをAr圧力0.6Pa、基板バイアス電圧を−500Vとして3分間実施した。
【0061】
このイオンクリーニングの後、UBMS法の場合は、Ar−窒素あるいはAr−窒素−メタンの混合ガス中(全圧0.6Pa)にて、基板への印可バイアスを70Vとして、成膜を実施した。AIP法の場合は窒素あるいは窒素−メタンガス中(全圧力4Pa)で印可バイアス70V、アーク電流150Aとして成膜した。皮膜の厚みは、約3μmである。
【0062】
このようにして皮膜形成されたものについて、皮膜の結晶構造、組成、硬度の調査、高温下での摩擦係数の測定、切削試験を行った。このとき、試験(調査、測定)方法は、前記〔例A〕の場合と同様である。
【0063】
上記試験(調査、測定)の結果を表3に示す。なお、表3の結晶構造の欄においてB1は結晶質であること、B4は非晶質であること、B1+B4は結晶質および非晶質であること(両方があること)を示すものである。
【0064】
表3からわかるように、No.5B 〜8Bの皮膜〔(Zr1-a-b-c ,Hfa ,Mb ,Dc )(C1-x x )皮膜〕(本発明の第2発明の要件を満たす)、No.11B〜13B の皮膜〔(Zr1-a-b-c ,Hfa ,Mb ,Dc )(C1-x x )皮膜〕(本発明の第2発明の要件を満たす)は、No.4B の皮膜〔(Zr1-a-b-c ,Hfa ,Mb ,Dc )(C1-x x )皮膜〕(c:0.03未満の点で本発明の第2発明の要件を満たさない)、No.9B の皮膜〔(Zr1-a-b-c ,Hfa ,Mb ,Dc )(C1-x x )皮膜〕(c:0.3超の点で本発明の第2発明の要件を満たさない)、No.10Bの皮膜〔(Zr1-a-b-c ,Hfa ,Mb ,Dc )(C1-x x )皮膜〕(c:0.03未満の点で本発明の第2発明の要件を満たさない)、No.14Bの皮膜〔(Zr1-a-b-c ,Hfa ,Mb ,Dc )(C1-x x )皮膜〕(c:0.3超の点で本発明の第2発明の要件を満たさない)に比較し、皮膜硬度が高く、切削試験での摩耗量が小さくて耐摩耗性に優れている(本発明の第2発明例)。No.17B〜33B の皮膜の中、No.18B〜21B 、24B 〜26B 、28B 〜33B の皮膜(参考発明1の要件を満たす)は、No.17B、22B 〜23B 、27B の皮膜(参考発明1の要件を満たさない)に比較し、皮膜硬度が高く、切削試験での摩耗量が小さくて耐摩耗性に優れている(参考発明1の例)。
【0065】
〔例D〕
AIP蒸発源とUBMS蒸発源を有する成膜装置を用いて、硬質皮膜A〔(Zr1-a ,Hfa )(C1-x x )皮膜〕と、硬質皮膜B1〔M(C1-x x )皮膜(但し、MはW,Moの1種以上)〕または硬質皮膜B2〔Si1-y-x y x 皮膜〕あるいは硬質皮膜B3〔B1-y-x y x 皮膜〕とを交互に積層した皮膜(積層膜)を形成した。
【0066】
このとき、基材としては、皮膜の結晶構造、組成、硬度の調査用および高温下での摩擦係数測定用の皮膜形成の場合には超硬合金基板を用い、切削試験用の皮膜形成の場合には超硬合金製ボールエンドミル(2枚刃、直径10mmφ)を用いた。いずれの皮膜の形成の場合にも、基板を成膜装置のチャンバー内に導入し、チャンバー内を真空引きした後、基材を約500℃まで加熱し、この後、ArイオンによるイオンクリーニングをAr圧力0.6Pa、基板バイアス電圧を−500Vとして3分間実施した。
【0067】
このイオンクリーニングの後、AIP蒸発源とUBMS蒸発源を同時に放電させ、基板を中央の基板ステージ上で回転させ、AIP蒸発源とUBMS蒸発源の前を交互に通過させて、硬質皮膜Aと硬質皮膜B1またはB2あるいはB3とを交互に成膜して積層させた。この場合、硬質皮膜AはAIP蒸発源より、硬質皮膜B1またはB2あるいはB3はUBMS蒸発源より形成した。成膜時にはArと窒素の混合ガス(体積%で50:50)を導入し、AIP蒸発源とUBMS蒸発源を同時に放電させた。成膜時の基板への印可バイアスは70Vとした。各硬質皮膜Aの膜厚(1層当たりの膜厚)、各硬質皮膜B1またはB2あるいはB3の膜厚(1層当たりの膜厚)は表4に示す通りである。積層された皮膜の合計厚み(積層膜の厚み)は、約3μmである。
【0068】
このようにして皮膜形成されたものについて、皮膜の結晶構造、組成、硬度の調査、高温下での摩擦係数の測定、切削試験を行った。このとき、試験(調査、測定)方法は、前記〔例A〕の場合と同様である。
【0069】
上記試験(調査、測定)の結果を表4に示す。なお、表4の結晶構造の欄においてB1は結晶質であることを示すものである。硬質皮膜Bは硬質皮膜B1またはB2あるいはB3のことである。
【0070】
表4において、No.4C 〜7C、No.11C〜18C の皮膜が硬質皮膜A(硬質皮膜A1またはA2)と硬質皮膜B(硬質皮膜B1またはB2あるいはB3)とを交互に積層した皮膜(積層膜)である。この中、No.4C 〜7Cの皮膜は、硬質皮膜A1〔(Zr0.8 ,Hf0.2 )N皮膜〕と硬質皮膜B1〔W(C0.1 0.8 )皮膜〕とを交互に積層した積層膜であり、硬質皮膜A1及び硬質皮膜B1の各膜厚がNo. によって異なる。No.11C、14C 〜18C の皮膜は、硬質皮膜A1と硬質皮膜B1とを交互に積層した積層膜であり、硬質皮膜A1あるいはB1の組成や膜厚がNo. によって異なる。No.12C〜13C の皮膜は、硬質皮膜A2と硬質皮膜B1とを交互に積層した積層膜であり、硬質皮膜A2の組成がNo. によって異なる。No.4C 〜7C、No.11C〜16C の皮膜はいずれも本発明の第3発明の要件を満たすものである。No.17Cの皮膜は硬質皮膜A1の膜厚が200nm超であり、No.18Cの皮膜は硬質皮膜B1の膜厚が200nm超であるので、いずれの皮膜も本発明の第3発明の要件を満たしていない。
【0071】
表4からわかるように、本発明の第3発明の要件を満たす皮膜(No.4C 〜7C、No.11C〜16C )は、高温下での摩擦係数が小さくて高温潤滑性に優れており、また、切削試験での摩耗量が小さくて耐摩耗性に優れている(本発明の第3発明例)。
【0072】
〔例E〕
HIP、熱間鍛造あるいは焼結法にて、Zr:0.64、Hf:0.15、W:0.15、Si:0.06(原子比)の組成を有するスパッタリングターゲット材を作製し、その相対密度を測定した。このとき、相対密度については、X線回折によるターゲットの構成相の同定を行った後、その相構成より計算できる理論密度(D1 )とアルキメデス法により求められる実ターゲットの密度(D2 )を比較し、相対密度(D3 )を導出して求めた。なお、この相対密度(D3 )は、100×D2 /D1 =D3 (%)である。HIP法では、HIP温度450〜500℃、HIP圧力1000気圧にてHIPした。熱間鍛造では、試料温度400℃にて鍛造した。焼結法では、温度800℃での焼結を行った。
【0073】
これらのターゲットを用い、UBMSあるいはAIP法にて例Aの場合と同様の条件にて放電させて成膜を行った。このようにして皮膜形成されたものについて、皮膜の硬度の調査、切削試験を行った。このとき、試験(調査、測定)方法は、前記〔例A〕の場合と同様である。
【0074】
上記試験(調査、測定)の結果を表5に示す。表5からわかるように、No.1D のターゲットは、相対密度が91%未満であり、この点で本発明の第4発明の要件を満たしていない(比較例)。このNo.1D のターゲットを用いた場合、異常放電が生じ、安定して成膜を行うことができなかった。
【0075】
これに対し、No.2D 〜No.8D のターゲットは、相対密度が91%以上であり、本発明の第4発明の要件を満たしている(本発明の第4発明例)。このNo.2D 〜No.8D のターゲットを用いた場合、異常放電を生じず、放電状態は良好であり、安定して成膜を行うことができた。これらの中、ターゲット材の相対密度が95%以上の場合(No.3D 〜No.8D )、より高水準に放電安定性に優れていた。
【0076】
上記No.2D 〜No.8D のターゲットを用いた場合、成膜された皮膜は表面粗度Raが小さくて平滑であり、硬度が高く、切削試験での摩耗量が小さくて耐摩耗性に優れている。このとき、ターゲットの相対密度が大きい場合ほど、成膜された皮膜は表面粗度Raが小さく、硬度が高く、切削試験での摩耗量が小さくて耐摩耗性に優れている。特に、ターゲット材の相対密度が95%以上の場合(No.3D 〜No.8D )、成膜された皮膜は表面粗度Raが小さく、硬度が高く、切削試験での摩耗量が小さくて耐摩耗性に優れている。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

【0081】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係る硬質皮膜は、従来の硬質皮膜であるTiN皮膜やTiAlN皮膜よりも、耐摩耗性に優れているので、切削工具や塑性加工用冶具の硬質皮膜として好適に用いることができ、それらの耐久性の向上がはかれて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Zr1-a-b ,Hfa ,Mb )(C1-x x )からなる硬質皮膜であって、下記の式(1A)〜(4A)を満たすことを特徴とする硬質皮膜。
0≦1−a−b ------------------------- 式(1A)
0≦a ----------------------------- 式(2A)
0.03≦b≦0.35 ----------------- 式(3A)
0≦x≦1 ----------------------------- 式(4A)
但し、上記(Zr1-a-b ,Hfa ,Mb )(C1-x x )において、MはW,Moの1種以上であり、上記式(1A)〜(4A)において、aはHfの原子比、bはMの原子比、xはNの原子比を示すものである。
【請求項2】
(Zr1-a-b-c ,Hfa ,Mb ,Dc )(C1-x x )からなる硬質皮膜であって、下記の式(1C)〜(5C)を満たすことを特徴とする硬質皮膜。
0≦1−a−b ------------------------- 式(1C)
0≦a ----------------------------- 式(2C)
0.03≦b≦0.35 ----------------- 式(3C)
0.03≦c≦0.3 ------------------- 式(4C)
0≦x≦1 ----------------------------- 式(5C)
但し、上記(Zr1-a-b-c ,Hfa ,Mb ,Dc )(C1-x x )において、MはW,Moの1種以上、DはSi,Bの1種以上であり、上記式(1C)〜(5C)において、aはHfの原子比、bはMの原子比、cはDの原子比、xはNの原子比を示すものである。
【請求項3】
下記の硬質皮膜A1、硬質皮膜A2の1種以上と下記の硬質皮膜B1、硬質皮膜B2、硬質皮膜B3の1種以上とが合計で2層以上交互に積層された硬質皮膜であって、前記硬質皮膜A1、硬質皮膜A2の1種以上の膜厚が200nm以下であり、前記硬質皮膜B1、硬質皮膜B2、硬質皮膜B3の1種以上の膜厚が200nm以下であると共に、積層された硬質皮膜全体の平均組成として請求項1〜2のいずれかに記載の硬質皮膜の組成を満たすことを特徴とする硬質皮膜。
硬質皮膜A1
(Zr1-a ,Hfa )(C1-x x )からなる硬質皮膜であって下記の式(1D)〜(3D)を満たす硬質皮膜。
0≦1−a --------------------- 式(1D)
0≦a≦0.4 --------------------- 式(2D)
0≦x≦1 ------------------------- 式(3D)
但し、上記式(1D)〜(3D)において、aはHfの原子比、xはNの原子比を示すものである。
硬質皮膜A2
(Zr1-a-C ,Hfa ,DC )(C1-x x )からなる硬質皮膜であって下記の式(1B)〜(3B)を満たす硬質皮膜。
0.05≦a≦0.4 ------------------- 式(1B)
0.03≦c≦0.3 ------------------- 式(2B)
0≦x≦1 ----------------------------- 式(3B)
但し、上記(Zr1-a-C ,Hfa ,DC )(C1-x x )において、DはSi,Bの1種以上であり、上記式(1B)〜(3B)において、aはHfの原子比、cはDの原子比、xはNの原子比を示すものである。
硬質皮膜B1
M(C1-x x )からなる硬質皮膜であって下記の式(1E)を満たす硬質皮膜。
0≦x≦1 ------------------------- 式(1E)
但し、上記M(C1-x x )において、MはW,Moの1種以上であり、上記式(1E)において、xはNの原子比を示すものである。
硬質皮膜B2
Si1-y-x y x からなる硬質皮膜であって下記の式(1F)〜(3F)を満たす硬質皮膜。 0≦y≦0.25 --------------------- 式(1F)
0<x≦1 --------------------------- 式(2F)
0.5≦(1−y−x)/x≦1.4 ----- 式(3F)
但し、上記式(1F)〜(3F)において、yはCの原子比、xはNの原子比を示すものである。
硬質皮膜B3
1-y-x y x からなる硬質皮膜であって下記の式(1G)〜(3G)を満たす硬質皮膜。
0≦y≦0.25 --------------------- 式(1G)
0<x≦1 --------------------------- 式(2G)
0.5≦(1−y−x)/x≦1.5 ----- 式(3G)
但し、上記式(1G)〜(3G)において、yはCの原子比、xはNの原子比を示すものである。
【請求項4】
請求項1〜2のいずれかに記載の硬質皮膜の金属元素の組成と同一の組成を有すると共に、相対密度が91%以上であることを特徴とする硬質皮膜形成用スパッタリングターゲット材。

【公開番号】特開2010−174375(P2010−174375A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22975(P2010−22975)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【分割の表示】特願2005−319863(P2005−319863)の分割
【原出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】