磁性材料及び磁性材料の製造方法
【課題】球状シリカ系メソ多孔体の内部に磁性ナノ粒子を担持させた磁性材料であって、前記磁性ナノ粒子に強磁性を発現させることが可能な磁性材料及びその磁性材料を効率よく製造することが可能な磁性材料の製造方法を提供する。
【解決手段】平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体と、該球状シリカ系メソ多孔体の内部に担持された強磁性ナノ粒子と、を備える磁性材料。該強磁性ナノ粒子が、強磁性を有する金属の単体、CuAu型強磁性規則合金、Cu3Au型強磁性規則合金及び希土類系強磁性合金からなる群から選択される。
【解決手段】平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体と、該球状シリカ系メソ多孔体の内部に担持された強磁性ナノ粒子と、を備える磁性材料。該強磁性ナノ粒子が、強磁性を有する金属の単体、CuAu型強磁性規則合金、Cu3Au型強磁性規則合金及び希土類系強磁性合金からなる群から選択される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性材料並びに磁性材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルサイズの粒子(ナノ粒子)は、そのサイズが極めて小さいため、バルク材料とは異なる性質を示す場合がある。このようなナノ粒子の中でも特に磁性ナノ粒子は、特異な電気的、磁気的、光学的及び化学的な性質を示すものとなるため、磁性流体、バイオメディカル映像、情報記録及び各種の酸化触媒等への応用が検討されている。しかしながら、このような磁性ナノ粒子は、表面エネルギーが高く凝集し易いという問題があった。そこで、このような磁性ナノ粒子の安定性等を確保するために、不活性なマトリックス中に磁性ナノ粒子を導入した磁性材料が研究されてきた。
【0003】
例えば、メソポーラスシリカのMCM−41内に鉄酸化物を担持させた磁性材料が知られている(S.Liu et.al.,「Magnetism of iron−containing MCM−41 spheres」,Journal of Magnetism and Magnetic Materlais.2004年発行,vol.280,p31−36(非特許文献1)参照)。また、メソポーラスシリカのMCM−41やMCM−48内にナノ構造を有する鉄酸化物を備える磁性材料が知られている(M.Froba et.al.,「Investigations of Reactivity and Magnetic Properties of Nanostructured Iron Oxide within Mesoporous Silica Materials」,Anorg.Allg.Chem,2003年発行,vol.629,p1673−1682(非特許文献2)参照)。また、このような従来の磁性材料は、MCM−41又はMCM−48等のメソポーラスシリカ内に、鉄を含有する溶液を含浸させ、熱処理することで製造されていた。しかしながら、このような従来の磁性材料においては、室温での飽和磁化及び保磁力がいずれも小さく、担持された鉄酸化物粒子(磁性ナノ粒子)は強磁性を有するものではなかった。また、従来の磁性材料の製造方法においては、MCM−41やMCM−48のメソポーラスシリカを用いていたため、その細孔内に鉄を含有する溶液を含浸させることが困難であり、効率よく磁性材料を製造できなかった。また、従来の磁性材料の製造方法においては、メソポーラスシリカの細孔外に磁性ナノ粒子が析出していた。
【非特許文献1】S.Liu et.al.,「Magnetism of iron−containing MCM−41 spheres」,Journal of Magnetism and Magnetic Materlais.2004年発行,vol.280,p31−36
【非特許文献2】M.Froba et.al.,「Investigations of Reactivity and Magnetic Properties of Nanostructured Iron Oxide within Mesoporous Silica Materials」,Anorg.Allg.Chem,2003年発行,vol.629,p1673−1682
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、球状シリカ系メソ多孔体の内部に磁性ナノ粒子を担持させた磁性材料であって、前記磁性ナノ粒子に強磁性を発現させることが可能な磁性材料及びその磁性材料を効率よく製造することが可能な磁性材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、先ず、従来の磁性材料においては、MCM−41やMCM−48等のメソポーラスシリカが不定形であり、しかも細孔径が小さなものであるため、製造時においては磁性粒子の前駆体を含浸することが困難で効率よく磁性材料を製造できず、しかも製造後においてはメソポーラスシリカに担持され磁性粒子の粒径が超常磁性限界サイズよりも小さな粒子となり、強磁性を発現できないということを見出した。そこで、更に鋭意研究を重ねた結果、平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体を用い、前記球状シリカ系メソ多孔体の内部に強磁性材料からなる磁性ナノ粒子を担持させることにより、磁性ナノ粒子の前駆体を前記メソ多孔体の内部に容易に含浸させることが可能となるとともに、担持された前記磁性ナノ粒子に強磁性を発現させることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の磁性材料は、平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体と、
該球状シリカ系メソ多孔体の内部に担持された強磁性ナノ粒子と、
を備えることを特徴とするものである。
【0007】
上記本発明の磁性材料においては、前記強磁性ナノ粒子が、強磁性を有する金属の単体、CuAu型強磁性規則合金、Cu3Au型強磁性規則合金及び希土類系強磁性合金からなる群から選択される少なくとも1種からなることが好ましい。
【0008】
また、上記本発明の磁性材料においては、前記強磁性ナノ粒子が、強磁性体が超常磁性体に変化する超常磁性限界以上の粒径を有することが好ましい。
【0009】
さらに、上記本発明の磁性材料においては、前記球状シリカ系メソ多孔体が、下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下の粒子からなることが好ましい。
【0010】
また、本発明の磁性材料の製造方法は、平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体に強磁性ナノ粒子前駆体を含浸させて、前記球状シリカ系メソ多孔体中に前記強磁性ナノ粒子前駆体が導入されてなる磁性材料前駆体粒子を得る工程と、
前記磁性材料前駆体粒子を還元して、前記球状シリカ系メソ多孔体の内部に強磁性ナノ粒子が担持されてなる磁性材料を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0011】
上記本発明の磁性材料の製造方法においては、前記強磁性ナノ粒子前駆体が、水、アルコール、エーテル、アセトン及びスチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する溶媒と、前記強磁性ナノ粒子の原料となる金属化合物とを含有するものであることが好ましい。
【0012】
また、上記本発明の磁性材料の製造方法においては、前記磁性材料前駆体粒子を還元する工程が、還元剤を用いて前記磁性材料前駆体粒子を還元する工程であることが好ましい。
【0013】
さらに、上記本発明の磁性材料の製造方法においては、前記磁性材料前駆体粒子を還元する工程が、還元性ガス雰囲気下、350℃以上の温度条件で加熱焼成して前記磁性材料前駆体粒子を還元する工程であることが好ましい。
【0014】
また、上記本発明の磁性材料の製造方法においては、第一の溶媒中でシリカ原料と第一の界面活性剤とを混合し、シリカ中に前記第一の界面活性剤が導入されてなる第一の多孔体前駆体粒子を得る工程(A)と、
拡張剤を含む第二の溶媒中で、前記第一の多孔体前駆体粒子中に前記拡張剤が導入されてなる第二の多孔体前駆体粒子を得る工程(B)と、
前記第二の多孔体前駆体粒子に含まれる前記第一の界面活性剤及び前記拡張剤を除去して球状シリカ系メソ多孔体を得る工程(C)と、
を含み、且つ、
工程(A)において、前記第一の界面活性剤として下記一般式(1):
【0015】
【化1】
【0016】
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは7〜25の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライドを用い、前記第一の溶媒として水と、アルコール及び/又はエーテルとの混合溶媒を用い、前記第一の溶媒中におけるアルコール及び/又はエーテルの含有量が85容量%以下であり、前記第一の溶媒中における前記第一の界面活性剤の濃度が0.0001〜0.03mol/Lであり、前記第一の溶媒中における前記シリカ原料の濃度がSi濃度換算で0.0005〜0.03mol/Lであり、且つ、前記シリカ原料と前記第一の界面活性剤とを0〜40℃の温度条件下で混合すること、及び、
工程(B)において、前記拡張剤として下記一般式(2):
【0017】
【化2】
【0018】
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、zは17〜25の整数であって且つ前記第一の界面活性剤として選択されたアルキルアンモニウムハライドの式(1)中のmの値以上の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライド、鎖状炭化水素、環状炭化水素及びヘテロ環化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用い、前記第二の溶媒として水とアルコールとの混合溶媒を用い、前記第二の溶媒中におけるアルコールの含有量が40〜90容量%であり、前記第二の溶媒中における前記拡張剤の濃度が0.05〜10mol/Lであり、且つ、前記第二の溶媒中で前記第一の多孔体前駆体粒子を60〜150℃の温度条件下で混合すること、
という条件を満たす、前記球状シリカ系メソ多孔体を得る工程を更に含むことが好ましい。
【0019】
さらに、上記本発明の磁性材料の製造方法においては、前記球状シリカ系メソ多孔体が、下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下の粒子からなることが好ましい。
【0020】
なお、本発明の磁性材料及び磁性材料の製造方法によって、上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、各種用途に適用することが可能な磁性材料を製造するためには、メソ多孔体に担持させる磁性ナノ粒子の大きさをナノメートルサイズに維持したまま、磁性ナノ粒子の含有量を任意に制御することが重要である。また、FePt、CoPt等のような強磁性材料はバルク体では強磁性を示すが、これを小サイズ化し磁性ナノ粒子とした場合には、熱揺らぎで超常磁性に変化するため超常磁性限界以上のサイズでなければ強磁性を発現できない。そのため、メソ多孔体に担持させた磁性ナノ粒子に強磁性を発現させるためには、磁性ナノ粒子の粒径を超常磁性限界以上(FePtの場合は約3nm以上)とすることが重要である。本発明においては、中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体を用いているため、細孔内への磁性ナノ粒子前駆体の含浸が容易であり、しかも細孔壁によって磁性ナノ粒子の粒成長が抑制されるので、磁性ナノ粒子の大きさをナノメートルサイズに制御し、維持することが容易であるとともに、その細孔の大きさに対応した磁性ナノ粒子を合成できる。そのため、担持させる磁性ナノ粒子の粒径を超常磁性限界以上のサイズとすることが容易に達成でき、前記球状シリカ系メソ多孔体に担持させた状態で、磁性ナノ粒子に強磁性を発現させることが可能となるものと本発明者らは推察する。
【0021】
また、前記磁性材料を磁性フォトニック結晶、磁気温熱療法、ドラッグデリバリーシステム等の用途に応用する場合には、磁性材料の形状や特定の化合物に対する吸着性等が重要となるが、本発明においては、強磁性ナノ粒子を担持させる担体として球状シリカ系メソ多孔体を用い、高い比表面積及び吸着容量等を確保できるため、各種用途に好適な磁性材料を容易に製造できる。例えば、前記磁性材料を磁性フォトニック結晶に用いる場合には、磁性材料の形状が球状であることやその粒子径が均一であること等が要求されるが、前記式(1)で表される単分散度が10%以下の球状シリカ系メソ多孔体を好適に用いることで、その要求に容易に対応することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、球状シリカ系メソ多孔体の内部に磁性ナノ粒子を担持させた磁性材料であって、前記磁性ナノ粒子に強磁性を発現させることが可能な磁性材料及びその磁性材料を効率よく製造することが可能な磁性材料の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0024】
先ず、本発明の磁性材料について説明する。すなわち、本発明の磁性材料は、平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体と、
該球状シリカ系メソ多孔体の内部に担持された強磁性ナノ粒子と、
を備えることを特徴とするものである。
【0025】
本発明にかかる球状シリカ系メソ多孔体の平均粒径は0.01〜3μm(より好ましくは0.1〜2μm)である。このような平均粒径が0.01μm未満では、球状シリカ系メソ多孔体の合成そのものが困難となるとともに、粒子が凝集してしまう。他方、前記平均粒径が3μmを超えると、球状の粒子を合成することが困難となると同時に、球状シリカ系メソ多孔体の内部への強磁性ナノ粒子前駆体の拡散に時間がかかるため、磁性材料の製造効率が低くなる。なお、このような球状シリカ系メソ多孔体の平均粒径は、用途等に応じて適宜変更することが可能である。
【0026】
また、このような球状シリカ系メソ多孔体の中心細孔直径は2.6nm以上(より好ましくは3〜20nm)である。前記中心細孔直径が2.6nm未満の場合には、強磁性ナノ粒子前駆体の導入が困難となるとともに、球状メソポーラスシリカの内部に担持されるナノ粒子が超常磁性限界未満の粒径となって強磁性を発現しなくなるとともに外表面に強磁性ナノ粒子が生成される場合が生じる。なお、本発明にいう「中心細孔直径」とは、細孔容積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対してプロットした曲線(細孔径分布曲線)の最大ピークにおける細孔直径である。なお、細孔径分布曲線は、次に述べる方法により求めることができる。すなわち、シリカ系メソ多孔体粒子を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法あるいは重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温線を得る。この吸着等温線を用い、Cranston−Inklay法、Dollimore−Heal法、BJH法等の計算法により細孔径分布曲線を求めることができる。
【0027】
また、本発明でいう「球状」とは、同一条件下で製造された複数個(好ましくは20個以上)の粒子を、顕微鏡等で観察した場合において、各粒子の真球度の平均値が13%以下であることをいう。また、「真球度」とは、各粒子の外形の真円からのずれの程度を表す指標であって、粒子の表面に接する最小の外接円の半径(ro)に対する、外接円と粒子表面の各点との半径方向の距離の最大値(Δrmax)の割合(Δrmax×100/ro[単位:%])である。
【0028】
また、前記球状シリカ系メソ多孔体としては、下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下の粒子からなることが好ましい。このように単分散度の球状シリカ系メソ多孔体は、粒径が極めて均一であることから、磁性フォトニック結晶をはじめとした光デバイス関係に用いる材料として非常に有用である。
【0029】
また、本発明の磁性材料は、前記真球度の平均値及び前記単分散度がより小さな値となるほど、磁性フォトニック結晶等に応用する場合により高い特性が得られる傾向にある。そのため、本発明の磁性材料を磁性フォトニック結晶等に用いる場合においては、前記真球度の平均値は10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。また、前記単分散度は8%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。
【0030】
また、前記球状シリカ系メソ多孔体は、ケイ素原子が酸素原子を介して結合した骨格−Si−O−を基本とし、高度に架橋した網目構造を有している。このような球状シリカ系メソ多孔体は、ケイ素原子及び酸素原子を主成分とするものであればよく、ケイ素原子の少なくとも一部が有機基の2箇所以上で炭素−ケイ素結合を形成しているものでもよい。このような有機基としては、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、ベンゼン、シクロアルカン等の炭化水素から2以上の水素がとれて生じる2価以上の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、有機基は、アミド基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルフォン基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、ビニル基等を有するものであってもよい。
【0031】
さらに、前記球状シリカ系メソ多孔体は、本発明の磁性材料をドラッグデリバリーシステムや触媒等に用いる場合には、有機官能基が導入されているものであることが好ましい。このような有機基官能基が導入された球状シリカ系メソ多孔体を用いることで、特定の物質を効率よく吸着することが可能となり、ドラッグデリバリー等に好適な磁性材料が得られる傾向にある。また、このような有機官能基は特に制限されず、アミド基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルフォン基、カルボキシル基等であってもよい。
【0032】
また、このような球状シリカ系メソ多孔体は、細孔径分布曲線における中心細孔直径の±40%の範囲に全細孔容積の60%以上が含まれることが好ましい。このような条件を満たすシリカ系メソ多孔体粒子は、細孔の直径が非常に均一であることを意味する。また、かかる球状シリカ系メソ多孔体の比表面積については特に制限はないが、700m2/g以上であることが好ましい。比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0033】
さらに、前記球状シリカ系メソ多孔体は、そのX線回折パターンにおいて1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有することが好ましい。X線回折ピークはそのピーク角度に相当するd値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1nm以上の間隔で規則的に配列していることを意味する。
【0034】
また、球状シリカ系メソ多孔体が有する細孔は、多孔体の表面のみならず内部にも形成されている。かかる多孔体における細孔の配列状態(細孔配列構造又は構造)は特に制限されないが、2d−ヘキサゴナル構造、3d−ヘキサゴナル構造又はキュービック構造であることが好ましい。また、このような細孔配列構造は、ディスオーダの細孔配列構造を有するものであってもよい。
【0035】
ここで、多孔体がヘキサゴナルの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が六方構造であることを意味する(S.Inagaki,et al.,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,680,1993;S.Inagaki,et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.,69,1449,1996、Q.Huo,et al.,Science,268,1324,1995参照)。また、多孔体がキュービックの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が立方構造であることを意味する(J.C.Vartuli,et al.,Chem.Mater.,6,2317,1994;Q.Huo,et al.,Nature,368,317,1994参照)。また、多孔体がディスオーダの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が不規則であることを意味する(P.T.Tanev,et al.,Science,267,865,1995;S.A.Bagshaw,et al.,Science,269,1242,1995;R.Ryoo,et al.,J.Phys.Chem.,100,17718,1996参照)。また、前記キュービック構造は、Pm−3n、Im−3m又はFm−3m対称性であることが好ましい。前記対称性とは、空間群の表記法に基づいて決定されるものである。なお、このような本発明にかかる球状シリカ系メソ多孔体の製造方法については後述する。
【0036】
また、本発明にかかる強磁性ナノ粒子は、前記球状シリカ系メソ多孔体の内部に担持されたものであり且つ担持された状態で強磁性を有するものである。また、このような強磁性ナノ粒子としては、球状シリカ系メソ多孔体の細孔内に担持されたものであることがより好ましい。
【0037】
また、このような強磁性ナノ粒子としては、強磁性を有するものであればよく特に制限されないが、強磁性を有する金属の単体、CuAu型強磁性規則合金、Cu3Au型強磁性規則合金及び希土類系強磁性合金からなる群から選択される少なくとも1種からなるものがより好ましい。このような単体金属としては、Fe、Co、Ni、Gd等が挙げられる。また、前記CuAu型強磁性規則合金としては、FePt、FePd、FeNi、CoAu、CoPt等の合金が挙げられる。また、Cu3Au型強磁性規則合金としては、Co3Pt、CrPt3、Fe3Pt、FePt3、FePd3、CoPt3、Ni3Pt、Ni3Fe、Ni3Mn等の合金が挙げられる。更に、希土類系強磁性合金としては、SmCo5、Sm2Co17、Fe14Nd2B、Nd3Fe16B、Sm2Fe17N3等が挙げられる。このような強磁性ナノ粒子の材料は、磁性材料の用途等に応じて適宜変更できるものではあるが、より小さな粒子径でも強磁性の発現が可能という観点から、Co、FePd、Co3Pt、Fe14Nd2B、CoPt、FePt、SmCo5が好ましい。
【0038】
さらに、前記強磁性ナノ粒子としては、強磁性体が超常磁性体に変化する超常磁性限界(強磁性粒子として存在可能な最小径)以上の粒径を有することが好ましい。このような粒径が超常磁性限界未満では、担持させたナノ粒子が強磁性を発現しない傾向にある。このような超常磁性限界以上の粒径は、例えば、SmCo5では2.7〜2.2nm、FePtでは3.3〜2.8nm、CoPtでは3.6nm、Fe14Nd2Bでは3.7nm、Co3Ptでは4.8nm、FePdでは5nm、Coでは8nmである(IEEE Trans.Magn.,2000年発行,vol.36,p10−15.参照)。また、このような強磁性ナノ粒子の粒径の上限は特に制限されず、磁性材料の用途に応じて適宜その大きさを変更できる。また、このような強磁性ナノ粒子の形状は特に制限されないが、球状であることが好ましい。なお、前記強磁性ナノ粒子の「粒径」は、前記強磁性ナノ粒子の形状が球状ではない場合においては、その外接円の直径をいう。
【0039】
さらに、本発明の磁性材料としては、強磁性ナノ粒子が担持された球状シリカ系メソ多孔体の細孔容量が0.1cm3/g以上であることが好ましく、0.3cm3/g以上であることが好ましい。このような細孔容量が前記下限未満では、他の化合物等を磁性材料中に吸着等させることが困難となり、ドラッグデリバリーシステム等の用途に用いることができなくなる傾向にある。
【0040】
また、本発明の磁性材料の形状は特に制限されず、粉末として使用してもよく、また、必要に応じて成形して使用してもよい。このような成形手段はどのようなものでも良いが、押出成形、打錠成形、転動造粒、圧縮成形、CIP等を好適に採用できる。また、その形状は使用箇所、方法に応じて決めることができ、たとえば円柱状、破砕状、球状、ハニカム状、凹凸状、波板状等が挙げられる。また、このような本発明の磁性材料は、球状シリカ系メソ多孔体の内部に強磁性ナノ粒子を担持させた磁性材料であり、ナノ粒子に強磁性を発現させることが可能であるため、磁性フォトニック結晶、磁気温熱療法、ドラッグデリバリーシステム等の各種用途に好適に用いることができる。
【0041】
以上、本発明の磁性材料について説明したが、以下において、上記本発明の磁性材料を好適に製造することが可能な本発明の磁性材料の製造方法を説明する。
【0042】
本発明の磁性材料の製造方法は、平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体に強磁性ナノ粒子前駆体を含浸させて、前記球状シリカ系メソ多孔体中に前記強磁性ナノ粒子前駆体が導入されてなる磁性材料前駆体粒子を得る工程と、
前記磁性材料前駆体粒子を還元して、前記球状シリカ系メソ多孔体の内部に強磁性ナノ粒子が担持されてなる磁性材料を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。以下、工程ごとに説明する。
【0043】
[磁性材料前駆体粒子を得る工程]
本発明の磁性材料の製造方法においては、先ず、平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体に強磁性ナノ粒子前駆体を含浸させて、前記球状シリカ系メソ多孔体中に前記強磁性ナノ粒子前駆体が導入されてなる磁性材料前駆体粒子を得る。
【0044】
このような球状シリカ系メソ多孔体は、前述の本発明の磁性材料で説明した球状シリカ系メソ多孔体と同様のものである。
【0045】
また、前記強磁性ナノ粒子前駆体は、前記球状シリカ系メソ多孔体に含浸させ、還元した際に、前記球状シリカ系メソ多孔体の内部に強磁性ナノ粒子を担持することが可能なものであればよく、特に制限されないが、溶媒と、前記強磁性ナノ粒子の原料となる金属化合物とを含有する混合液を用いることが好ましい。なお、このような強磁性ナノ粒子前駆体は1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
このような強磁性ナノ粒子前駆体の溶媒としては特に制限されないが、水及び/又は有機溶媒からなるものが好ましく、溶媒の除去が容易であるという観点から、水、アルコール、エーテル、アセトン及びスチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する溶媒がより好ましく、水、アルコール及びアセトンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する溶媒が更に好ましく、水及び/又はアルコールからなる溶媒が特に好ましい。また、このようなアルコールとしては特に制限されるものではないが、メタノール、エタノール、プロパノールが好ましい。また、このような溶媒中における水とアルコール又はアセトンとの体積混合比は特に制限されず、各成分が混和できる条件であればよい。
【0047】
前記強磁性ナノ粒子の原料となる金属化合物としては、前記強磁性ナノ粒子を製造できるものであればよく、特に制限されないが、前記溶媒に対する溶解度の観点から、金属塩、メタロセン、メタロセン誘導体並びに金属カルボニルが好ましい。このような金属塩としては、前記強磁性ナノ粒子を製造できる金属の塩であればよく、特に制限されず、例えば、FeCl3、Fe2(SO4)3、Fe(NO3)3、(NH4)3Fe(C2O4)3、Fe(CH3COCHCOCH3)3、FeNH4(SO4)2、Fe(ClO4)3、FeCl2、FeBr2、Fe[CH3CH(OH)COO]2、CoCl2、Co(NO3)2、Co(CH3COO)2、Co(HCOO)2、Co(CH3COCHCOCH3)2、CoBr2、CoSO4、Co(CH3COCHCOCH3)3、Co(C17H33COO)2、NiSO4、NiC2O4、(NH4)Ni(SO4)2、Ni(CH3COCHCOCH3)2、Ni(C6H5COO)2、NiCl2、Ni(ClO4)3、NiBr2、Ni(NO3)2、Ni(CH3COO)2、NiSO4、CrCl3、Cr(NO3)3、(NH4)2CrO4、Cr(CH3COCHCOCH3)3、CrBr3、HAuCl4、H2PtCl6、Pt(CH3COCHCOCH3)2、Pd(OCOCH3)2、PdCl2、Pd(CH3COCHCOCH3)2、(NH4)2PdCl4、Pd(NO3)2、Sm(CH3COO)3、SmCl3、Sm(NO3)3、Sm2(C2O4)3、Sm2(SO4)3、Nd(CH3COO)3、NdCl3、Nd(NO3)3、Nd2(C2O4)3、Nd2(SO4)3、Gd(NO3)3、H2BO3等が挙げられる。
【0048】
また、前記メタロセンとは、シクロペンタジエン2分子に金属がサンドイッチされたものをいう。このような金属としては前記強磁性ナノ粒子を製造できるものであればよく、特に制限されないが、例えばFe、Co、Ni等を含むものが挙げられる。
【0049】
また、前記メタロセン誘導体とは、前述のメタロセンを構成するシクロペンタジエンに有機官能基が結合したものをいう。このようなメタロセン誘導体に含まれる有機官能基は特に制限されず、前記溶媒の種類に応じて溶媒に対する溶解度をより向上させるために最適なものを適宜選択することができる。例えば、前記溶媒としてフルフリルアルコールを用いる場合、前記メタロセン誘導体に含まれる有機官能基としては、アルデヒド基やヒドロキシプロピル基等の含酸素有機官能基が好ましい。また、前記溶媒にスチレンを用いる場合、前記メタロセン誘導体に含まれる有機官能基としては、溶解度を著しく向上させるとともにスチレンと共重合させることができるという観点からビニル基が好ましい。なお、このようなメタロセン及びメタロセン誘導体を用いた場合においては、メタロセン及びその誘導体の有機溶媒に対する溶解度が極めて大きいことから、多量の金属元素をより効率よく細孔内に導入できる傾向にある。また、このようなメタロセン及びその誘導体を用いた場合においては、所定の有機溶媒とメタロセン及びその誘導体とを重合させて用いることも可能となり、磁性材料の製造時に加熱した場合に細孔外に金属元素が飛散することをより効率よく防止できるため、外表面にナノ粒子を製造することなく細孔内に強磁性ナノ粒子をより効率よく製造できる傾向にある。
【0050】
さらに、前記金属カルボニルとしては、特に制限されず、下記一般式(3):
Mm(CO)n (3)
(Mは金属を示し、mは1〜4の整数を示し、nは1〜15の整数を示す。)
で表される金属カルボニルを用いることができる。このような一般式(3)中の金属(M)は、前記メタロセン中の金属と同様のものである。なお、このような金属化合物は1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
また、前記溶媒と前記金属化合物とを含有する混合液中における前記金属化合物の含有量としては、前記金属化合物の溶解度の範囲内であればよく特に制限されないが、前記金属化合物に由来する金属イオンの濃度が0.002〜3mol/Lとなる範囲であることがより好ましく、0.01〜2mol/Lとなる範囲であることが更に好ましい。前記金属イオンの濃度が0.002mol/L未満では、含浸の効率が低く製造効率が低下するため実用に適さない傾向にあり、3mol/Lを超えると球状シリカ系メソ多孔体の外表面(外部)に強磁性ナノ粒子が生成する傾向にある。
【0052】
また、本発明の磁性材料の製造方法においては、このような磁性材料前駆体粒子を得る工程に用いる前記球状シリカ系メソ多孔体を製造する工程として、以下に示すような球状シリカ系メソ多孔体を得る工程を更に含んでいることが好ましい。すなわち、このような球状シリカ系メソ多孔体を製造する工程は、第一の溶媒中でシリカ原料と第一の界面活性剤とを混合し、シリカ中に前記第一の界面活性剤が導入されてなる第一の多孔体前駆体粒子を得る工程(A)と、
拡張剤を含む第二の溶媒中で、前記第一の多孔体前駆体粒子中に前記拡張剤が導入されてなる第二の多孔体前駆体粒子を得る工程(B)と、
前記第二の多孔体前駆体粒子に含まれる前記第一の界面活性剤及び前記拡張剤を除去して球状シリカ系メソ多孔体を得る工程(C)と、
を含み、且つ、
工程(A)において、前記第一の界面活性剤として下記一般式(1):
【0053】
【化3】
【0054】
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは7〜25の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライドを用い、前記第一の溶媒として水と、アルコール及び/又はエーテルとの混合溶媒を用い、前記第一の溶媒中におけるアルコール及び/又はエーテルの含有量が85容量%以下であり、前記第一の溶媒中における前記第一の界面活性剤の濃度が0.0001〜0.03mol/Lであり、前記第一の溶媒中における前記シリカ原料の濃度がSi濃度換算で0.0005〜0.03mol/Lであり、且つ、前記シリカ原料と前記第一の界面活性剤とを0〜40℃の温度条件下で混合すること、及び、
工程(B)において、前記拡張剤として下記一般式(2):
【0055】
【化4】
【0056】
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、zは17〜25の整数であって且つ前記第一の界面活性剤として選択されたアルキルアンモニウムハライドの式(1)中のmの値以上の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライド、鎖状炭化水素、環状炭化水素及びヘテロ環化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用い、前記第二の溶媒として水とアルコールとの混合溶媒を用い、前記第二の溶媒中におけるアルコールの含有量が40〜90容量%であり、前記第二の溶媒中における前記拡張剤の濃度が0.05〜10mol/Lであり、且つ、前記第二の溶媒中で前記第一の多孔体前駆体粒子を60〜150℃の温度条件下で混合すること、
という条件を満たす工程である。以下において、このような球状シリカ系メソ多孔体を得る工程を、工程(A)〜(C)に分けて説明する。
【0057】
先ず、工程(A)について説明する。このような工程(A)は、第一の溶媒中でシリカ原料と第一の界面活性剤とを混合し、シリカ中に前記第一の界面活性剤が導入されてなる第一の多孔体前駆体粒子を得る工程である。
【0058】
このようなシリカ原料は、反応によりケイ素酸化物(ケイ素複合酸化物を含む)を形成することが可能なものであればよく、特に制限されるものではないが、反応効率や得られるケイ素酸化物の物性の観点から、アルコキシシラン、ケイ酸ナトリウム、層状シリケート、シリカ、又はこれらの任意の混合物を用いることが好ましく、中でもアルコキシシランを用いることがより好ましい。
【0059】
前記アルコキシシランとしては、アルコキシ基を4個有するテトラアルコキシシラン、アルコキシ基を3個有するトリアルコキシシラン、アルコキシ基を2個有するジアルコキシシランを用いることができる。このようなアルコキシ基の種類は特に制限されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のようにアルコキシ基中の炭素原子の数が比較的少ないもの(炭素数として1〜4程度のもの)が反応性の点から有利である。また、前記アルコキシシランが有するアルコキシ基が3又は2個である場合は、アルコキシシラン中のケイ素原子には有機基、水酸基等が結合していてもよく、当該有機基はアミノ基やメルカプト基等の官能基をさらに有していてもよい。このような有機基や有機官能基等を有するアルコキシシランを用いることで、得られる球状シリカ系メソ多孔体に有機基や有機官能基等を導入することができる。
【0060】
また、前記テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等が挙げられ、前記トリアルコキシシランとしては、トリメトキシシラノール、トリエトキシシラノール、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。また、前記ジアルコキシシランとしては、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン等が挙げられる。
【0061】
また、このようなアルコキシシランの中でも、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランを用いることがより好ましい。このようにして3−アミノプロピルトリメトキシシラン及び/又は3−アミノプロピルトリエトキシシランをシラン原料として用いることで、得られる球状シリカ系メソ多孔体の細孔径を効率よく拡大することができる。そのため、3−アミノプロピルトリメトキシシラン及び/又は3−アミノプロピルトリエトキシシランをシラン原料として用いることによって、前記強磁性ナノ粒子前駆体をより効率よく含浸担持することが可能な球状シリカ系メソ多孔体を製造することが可能となる。
【0062】
このようなアルコキシシランは、単独で用いることもできるが2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。また、上記のアルコキシ基を2〜4個有するアルコキシシランは、アルコキシ基を1個有するモノアルコキシシランと組み合わせて使用することも可能である。このようにして用いることのできるモノアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、3−クロロプロピルジメチルメトキシシラン等が挙げられる。
【0063】
また、前記アルコキシシランは、加水分解によりシラノール基を生じ、生じたシラノール基同士が縮合することによりケイ素酸化物が形成される。この場合において、分子中のアルコキシ基の数が多いアルコキシシランは、加水分解及び縮合で生じる結合が多くなる。したがって、アルコキシ基の多いテトラアルコキシシランをアルコキシシランとして用いることが好ましく、テトラアルコキシシランとしては、反応速度の観点からテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランを用いることが特に好ましい。
【0064】
また、前記シリカ原料として用いられるケイ酸ナトリウムとしては、メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、オルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)、二ケイ酸ナトリウム(Na2Si2O5)、四ケイ酸ナトリウム(Na2Si4O9)等が挙げられる。ケイ酸ナトリウムとしては、このような単一物質の他、水ガラス(Na2O・nSiO2、n=2〜4)等のように組成が場合により異なるものを使用することもできる。
【0065】
さらに、前記層状シリケートとしては、カネマイト(NaHSi2O5・3H2O)、二ケイ酸ナトリウム結晶(α、β、γ、δ−Na2Si2O5)、マカタイト(Na2Si4O9・5H2O)、アイアライト(Na2Si8O17・xH2O)、マガディアイト(Na2Si14O17・xH2O)、ケニヤイト(Na2Si20O41・xH2O)等が挙げられる。また、セピオライト、モンモリロナイト、バーミキュライト、雲母、カオリナイト、スメクタイト等の粘土鉱物を酸性水溶液で処理してシリカ以外の元素を除去したものも層状シリケートとして使用可能である。
【0066】
また、前記シリカ原料として用いられるシリカとしては、Ultrasil(Ultrasil社)、Cab−O−Sil(Cabot社)、HiSil(Pittsburgh Plate Glass社)等の沈降性シリカ;コロイダルシリカ;Aerosil(Degussa−Huls社)等のフュームドシリカを挙げることができる。
【0067】
さらに、このようなシリカ原料は、単独で用いることもできるが2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。但し、2種類以上のシリカ原料を用いる場合は、製造時の反応条件が複雑化することがあるため、シリカ原料は単独のものを使用することが好ましい。
【0068】
また、前記第一の界面活性剤は、下記一般式(1):
【0069】
【化5】
【0070】
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは7〜25の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライドである。
【0071】
このような一般式(1)におけるR1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基を示す。このようなアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、これらが一分子中に混在してもよいが、界面活性剤分子の対称性の観点からR1、R2及びR3は全て同一であることが好ましい。界面活性剤分子の対称性が優れる場合は、界面活性剤同士の凝集(ミセルの形成等)が容易となる傾向にある。更に、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つはメチル基であることが好ましく、R1、R2及びR3の全てがメチル基であることがより好ましい。
【0072】
さらに、一般式(1)におけるXはハロゲン原子を示し、このようなハロゲン原子の種類は特に制限されないが、入手の容易さの観点からXは塩素原子または臭素原子であることが好ましい。
【0073】
また、一般式(1)におけるmは7〜25の整数を示し、9〜21の整数であることがより好ましい。前記mが6以下であるアルキルアンモニウムハライドでは、球状の第一の多孔体前駆体粒子は得られるものの、中心細孔直径が小さくなって、工程(B)において第一の界面活性剤と第二の界面活性剤とを置換反応させることが困難となる。他方、前記mが26以上のアルキルアンモニウムハライドでは、第一の界面活性剤の疎水性相互作用が強すぎるため、層状の化合物が生成してしまい、球状の多孔体を得ることができなくなる。
【0074】
従って、上記一般式(1)で表される第一の界面活性剤としては、R1、R2、R3の全てがメチル基であり且つ炭素数8〜26の長鎖アルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムハライドであることが好ましく、中でもデシルトリメチルアンモニウムハライド、ドデシルトリメチルアンモニウムハライド、テトラデシルトリメチルアンモニウムハライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムハライド、エイコシルトリメチルアンモニウムハライド、ドコシルトリメチルアンモニウムハライドがより好ましい。
【0075】
このような第一の界面活性剤は、シリカ原料と共に溶媒中で複合体を形成する。複合体中のシリカ原料は反応によりケイ素酸化物へと変化するが、第一の界面活性剤が存在している部分ではケイ素酸化物が生成しないため、第一の界面活性剤が存在している部分に孔が形成されることになる。すなわち、第一の界面活性剤はシリカ原料中に導入されて孔形成のためのテンプレートとして機能する。また、第一の界面活性剤は1種類もしくは2種類以上を組み合わせて用いることが可能であるが、上記のように第一の界面活性剤はシリカ原料の反応生成物に孔を形成させる際のテンプレートとして働き、その種類は多孔体の孔の形状に大きな影響を与えるため、より均一な球状多孔体を得るためには、界面活性剤は1種類のみを用いることが好ましい。
【0076】
このような工程(A)において、前記シリカ原料及び前記第一の界面活性剤を混合するための第一の溶媒としては、水と、アルコール及び/又はエーテルとの混合溶媒を用いる。このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エチレングリコール、グリセリン等が挙げられ、シリカ原料の溶解性の観点からメタノールまたはエタノールが好ましい。また、前記エーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル等が挙げられ、シリカ原料の溶解性の観点から、ジエチルエーテルが好ましい。
【0077】
また、工程(A)においては、前記シリカ原料中に前記第一の界面活性剤が導入されてなる多孔体前駆体粒子を合成する際に、前記第一の溶媒中のアルコール及び/又はエーテルの含有量は85容量%以下である必要があり、アルコール及び/又はエーテルの含有量が20〜85容量%であることがより好ましく、25〜75容量%であることがより好ましい。このように比較的多量のアルコール及び/又はエーテルを含有する混合溶媒を使用することにより、均一な球状体の発生及び成長が実現され、得られる第一の多孔体前駆体粒子の粒径が高度に均一に制御されることとなる。アルコール及び/又はエーテルの含有量が85容量%を超える場合には、粒径及び粒径分布の制御が困難となり、得られる第一の多孔体前駆体粒子の粒径の均一性が低くなる。他方、アルコール及び/又はエーテルの含有量が20容量%未満の場合は、粒径及び粒径分布の制御が困難となり、得られる第一の多孔体前駆体粒子の均一性が低くなる傾向にある。
【0078】
また、工程(A)においては、前記第一の溶媒中の水と、アルコール及び/又はエーテルとの比率を変化させることにより、粒径の均一性を高水準に保持しつつ、得られる第一の多孔体前駆体粒子の粒径を容易に制御することができる。すなわち、水の比率が高い場合は多孔体が析出し易くなるために粒径が小さくなり、逆にアルコールの比率が高い場合は大きい粒径の第一の多孔体前駆体粒子を得ることができる。
【0079】
さらに、工程(A)においては、前記第一の溶媒中で前記シリカ原料及び前記第一の界面活性剤を混合して第一の多孔体前駆体粒子を得る際に、上述した第一の界面活性剤の濃度を溶液の全容量を基準として0.0001〜0.03mol/L(好ましくは、0.0003〜0.02mol/L)とし、上述したシリカ原料の濃度を溶液の全容量を基準としてSi濃度換算で0.0005〜0.03mol/L(好ましくは、0.001〜0.02mol/L)とする必要がある。工程(A)においては、このように第一の界面活性剤及びシリカ原料の濃度を厳密に制御することと、前述の第一の溶媒を使用することとが相俟って、均一な球状体の発生及び成長が実現され、得られる第一の多孔体前駆体粒子の粒径が高度に均一に制御されることとなる。
【0080】
前記第一の界面活性剤の濃度が0.0001mol/L未満の場合は、テンプレートとなるべき第一の界面活性剤の量が不足するために良好な多孔体を得ることができず、更に粒径及び粒径分布の制御が困難となって得られる第一の多孔体前駆体粒子の粒径の均一性が低くなる。他方、前記第一の界面活性剤の濃度が0.03mol/Lを超える場合は、形状が球状である多孔体を高比率で得ることができず、更に粒径及び粒径分布の制御が困難となって得られる第一の多孔体前駆体粒子の粒径の均一性が低くなる。
【0081】
また、前記シリカ原料の濃度が0.0005mol/L未満の場合は、形状が球状である多孔体を高比率で得ることができず、更に粒径及び粒径分布の制御が困難となって得られる第一の多孔体前駆体粒子の粒径の均一性が低くなる。他方、前記シリカ原料の濃度が0.03mol/Lを超える場合は、テンプレートとなるべき第一の界面活性剤の比率が不足するために良好な多孔体を得ることができず、更に粒径及び粒径分布の制御が困難となって得られる球状シリカ系メソ多孔体の粒径の均一性が低くなる。
【0082】
工程(A)において、前記シリカ原料と前記第一の界面活性剤とを混合する際には、0〜40℃の温度条件下で混合する必要があり、5〜30℃の温度条件下で混合することが好ましい。このような温度が0℃未満ではシリカ原料の反応が非常に遅くなるために粒径の均一性が低くなり、他方、40℃を超えるとシリカ原料の反応が速くなるために形状が球状である多孔体を高比率で得ることが困難となる。
【0083】
工程(A)における前記温度以外のその他の条件(反応時間等)は特に制限されず、具体的な反応条件は、用いるシリカ原料の種類等に基づいて決定することが好ましい。また、反応は攪拌状態で進行させることが好ましい。
【0084】
また、工程(A)においては、前記シリカ原料及び前記第一の界面活性剤を混合する際に、塩基性条件下で混合することが好ましい。シリカ原料は、一般に塩基性条件下においても酸性条件下においても反応が生じケイ素酸化物へと変化するが、工程(A)においては、シリカ原料と第一の界面活性剤の濃度は従来技術の方法に比較して低いものとなっているために、酸性条件下では反応がほとんど進行しない。したがって、工程(A)においては、塩基性条件下でシリカ原料を反応させることが好ましい。なお、シリカ原料は、酸性条件で反応させる場合よりも塩基性条件で反応させる場合の方がケイ素原子の反応点が増加し、耐湿性や耐熱性等の物性に優れたケイ素酸化物を得ることができるため、塩基性条件下で混合することはこの点においても有利である。
【0085】
上記第一の溶媒を塩基性にするためには、通常、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性物質を添加する。反応時の塩基性条件に関しては特に制限されないが、添加する塩基性物質のアルカリ当量を全シリカ原料中のケイ素原子モル数で除した値が0.1〜0.9となるようにすることが好ましく、0.2〜0.5となるようにすることがより好ましい。添加する塩基性物質のアルカリ当量を全シリカ原料中のケイ素原子モル数で除した値が0.1未満である場合は、収率が低下してしまう傾向があり、他方、0.9を超える場合は、多孔体の形成が困難となる傾向がある。
【0086】
工程(A)において、シリカ原料としてアルコキシシランを用いる場合は、例えば、以下のようにして第一の多孔体前駆体粒子を得ることができる。先ず、水とアルコール及び/又はエーテルの混合溶媒に対して第一の界面活性剤及び塩基性物質を添加して、第一の界面活性剤を含有する塩基性溶液を調製し、この溶液にアルコキシシランを添加する。添加されたアルコキシシランは溶液中で加水分解(又は、加水分解及び縮合)するために、添加後数秒〜数十分で白色粉末が析出する。この場合において、反応温度は0℃〜40℃である。また、溶液は攪拌することが好ましい。
【0087】
沈殿物が析出した後、0℃〜40℃(好ましくは5℃〜30℃)で1時間〜10日、溶液をさらに攪拌してシリカ原料の反応を進行させる。攪拌終了後、必要に応じて室温で一晩放置して系を安定化させ、得られた沈殿物を必要に応じてろ過及び洗浄することによって本発明にかかる第一の多孔体前駆体粒子が得られる。
【0088】
また、シリカ原料として、アルコキシシラン以外のシリカ原料(ケイ酸ナトリウム、層状シリケートまたはシリカ)を用いる場合は、シリカ原料を、第一の界面活性剤を含有する水とアルコール及び/又はエーテルの混合溶媒に添加し、シリカ原料中のケイ素原子と等モル程度になるように、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性物質をさらに添加して均一な溶液を調製する。その後、希薄酸溶液をシリカ原料中のケイ素原子に対して1/2〜3/4倍モル添加するという方法により本発明にかかる第一の多孔体前駆体粒子を作製することができる。塩基性物質は、シリカ原料中に既に形成されているSi−(O−Si)4結合の一部を切断する目的のために過剰分必要となるが、その過剰分を酸により中和する必要がある。酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸等の有機酸のいずれを用いてもよい。
【0089】
次に、工程(B)を説明する。このような工程(B)は、拡張剤(エキスパンダー)を含む第二の溶媒中で、前記第一の多孔体前駆体粒子中に前記拡張剤が導入されてなる第二の多孔体前駆体粒子を得る工程である。そして、このような工程(B)で行う水熱処理によって、細孔径の拡大が可能となる。
【0090】
このような拡張剤としては、下記一般式(2):
【0091】
【化6】
【0092】
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、zは17〜25の整数であって且つ前記第一の界面活性剤として選択されたアルキルアンモニウムハライドの式(1)中のmの値以上の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライド(第二の界面活性剤)、鎖状炭化水素、環状炭化水素及びヘテロ環化合物からなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0093】
このような一般式(2)におけるR1、R2及びR3並びにXについては、前述の一般式(1)におけるR1、R2及びR3並びにXと同義のものである。また、一般式(2)におけるzは17〜25の整数を示し、20〜25の整数でありことがより好ましく、21〜24の整数であることが更に好ましい。前記zが16以下であるアルキルアンモニウムハライドでは、工程(B)において、第一の多孔体前駆体粒子の細孔径を十分に拡大することが困難となる。他方、前記zが26以上のアルキルアンモニウムハライドでは、アルキル鎖が大きくなりすぎて、第一の界面活性剤と置換反応させてシリカ中に第二の界面活性剤を導入することが困難となる。
【0094】
また、前記一般式(2)で表されるアルキルアンモニウムハライド(第二の界面活性剤)の前記式(2)中のzの値が、前記第一の界面活性剤として選択されたアルキルアンモニウムハライドの式(1)中のmの値以上である必要がある。実際に選択されるzの値がmの値よりも小さいと、第二の界面活性剤のアルキル基の鎖長の方が第一の界面活性剤のアルキル基の鎖長よりも短くなってしまい、第一の界面活性剤の溶解度が第二の界面活性剤の溶解度よりも小さくなるため、水熱反応によっても第一の界面活性剤と第二の界面活性剤との置換反応が起こらず、細孔径の拡大が図れなくなる。
【0095】
このような一般式(2)で表されるアルキルアンモニウムハライドとしては、R1、R2、R3の全てがメチル基であり且つ炭素数21〜26の長鎖アルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムハライドであることが好ましく、中でもドコシルトリメチルアンモニウムハライド、テトラコシルトリメチルアンモニウムハライドがより好ましい。
【0096】
また、前記鎖状炭化水素としては、鎖状の炭化水素であればよく特に制限されないが、炭素数が6〜26(より好ましくは6〜12)の鎖状炭化水素が好ましい。前記鎖状炭化水素の炭素数が前記下限未満では、疎水性が小さくなり、第一の多孔体前駆体粒子の細孔内に導入され難くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶解性が低下する傾向にある。
【0097】
このような鎖状炭化水素としては、例えば、ヘキサン、メチルペンタン、ジメチルブタン、ヘプタン、メチルへキサン、ジメチルペンタン、トリメチルブタン、オクタン、メチルヘプタン、ジメチルへキサン、トリメチルペンタン、イソプロピルペンタン、ノナン、メチルオクタン、エチルヘプタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等が挙げられ、疎水性や溶解性等の観点から、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンが好ましい。
【0098】
また、前記環状炭化水素としては、その骨格に環状の炭化水素を含有するものであればよく特に制限されないが、環数が1〜3で炭素数が6〜20(より好ましくは6〜16)の環状炭化水素が好ましい。前記環状炭化水素の炭素数が前記下限未満では、疎水性が小さくなり、第一の多孔体前駆体粒子の細孔内に導入され難くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶解性が低下するため細孔径の拡大が図れなくなる傾向にある。また、前記環状炭化水素の環数が3を超えると溶解性が低下するため、細孔径の拡大が図れなくなる傾向にある。
【0099】
さらに、このような環状炭化水素としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、メチルベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、インデン、ナフタレン、テトラリン、アズレン、ビフェニレン、アセナフチレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン等が挙げられ、疎水性や溶解性の観点から、シクロヘキサン、ベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、ナフタレンが好ましい。
【0100】
また、前記ヘテロ環化合物としては、その骨格にヘテロ環を含有するものであればよく特に制限されないが、環数が1〜3で炭素数が4〜18(より好ましくは5〜12)でヘテロ原子が窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1種の原子であるヘテロ環化合物が好ましい。前記ヘテロ環化合物の炭素数が前記下限未満では、疎水性が小さくなり、第一の多孔体前駆体粒子の細孔内に導入され難くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶解性が低下するため、細孔径の拡大が図れなくなる傾向にある。また、前記ヘテロ環化合物の環数が3を超えると溶解性が低下するため、細孔径の拡大が図れなくなる傾向にある。
【0101】
このようなヘテロ環化合物としては、例えば、ピロール、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、カルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン等が挙げられ、疎水性や溶解性の観点から、ピリジン、キノリン、アクリジン、フェナントロリンが好ましい。
【0102】
工程(B)における第二の溶媒は、水とアルコールとの混合溶媒である。このようなアルコール又はエーテルは、前述の第一の溶媒に用いるものと同様のものである。
【0103】
このような工程(B)においては、前記第二の溶媒中のアルコールの含有量が40〜90容量%である必要があり、アルコールの含有量が50〜85容量%であることが好ましく、55〜75容量%であることがより好ましい。前記第二の溶媒中におけるアルコールの含有量が90容量%を超える場合には、第一の界面活性剤と第二の界面活性剤の置換反応や細孔内への鎖状炭化水素や環状炭化水素やヘテロ環化合物の導入が十分に進まなくなる。他方、前記第二の溶媒中におけるアルコールの含有量が40容量%未満の場合は、水の割合が多くなるため長いアルキル鎖を有するアルキルアンモニウムハライド、鎖状炭化水素、環状炭化水素、ヘテロ環化合物が第二の溶媒中に十分に溶解しなくなり、更に、高温の水によって、シリカネットワークの再構築が促進されて得られるシリカ多孔体の形状が変化してしまったり、多孔体前駆体粒子のシリカネットワークが崩壊したりする。
【0104】
更に、工程(B)においては、前記第二の溶媒中における前記拡張剤の濃度は、溶液の全容量を基準として0.05〜10mol/L(好ましくは0.05〜5mol/L、より好ましくは0.1〜1mol/L)とする必要がある。また、このような第二の溶媒中における前記拡張剤の濃度の上限値としては、溶液の全容量を基準として0.2mol/L以下であることが更に好ましく、0.18mol/L以下であることが特に好ましい。前記拡張剤の濃度が0.05mol/L未満の場合は、第一の界面活性剤と第二の界面活性剤の置換反応や細孔内への鎖状炭化水素や環状炭化水素やヘテロ環化合物の導入が十分に進行せず、得られる粒子の粒径や細孔構造の規則性が低下し、更には細孔径を十分に拡大することができない。他方、前記拡張剤の濃度が10mol/Lを超える場合は、粒径及び粒径分布の制御が困難となって得られる第二の多孔体前駆体粒子の粒径の均一性が低くなる。
【0105】
工程(B)において、前記第一の多孔体前駆体粒子を第二の溶媒中で混合する際には、60〜150℃の温度条件下で混合する必要があり、70〜120℃の温度条件下で混合することが好ましい。また、このような温度条件の上限の値としては100℃(更に好ましくは90℃、特に好ましくは80℃)以下であることがより好ましい。このような温度が60℃未満では多孔体前駆体粒子に含有されている第一の界面活性剤と第二の界面活性剤の置換反応や細孔内への鎖状炭化水素や環状炭化水素やヘテロ環化合物の導入が十分に進行せず、他方、150℃を超えると、粒径及び粒径分布の制御が困難となる。
【0106】
工程(B)における前記温度条件以外のその他の条件は特に制限されず、第一の多孔体前駆体粒子の種類等に基づいて適宜決定することが好ましい。また、反応は攪拌状態で進行させることが好ましい。
【0107】
工程(B)においては、例えば、以下のようにして第二の多孔体前駆体粒子を得ることができる。先ず、水とアルコールとの混合溶媒に対して第二の界面活性剤を添加して溶液を調製し、この溶液に第一の多孔体前駆体粒子を添加し、オートクレーブ等で60〜150℃に加熱し、その温度条件下において20時間〜14日程度、第一の界面活性剤と第二の界面活性剤との置換反応を進行させて第一の多孔体前駆体中に第二の界面活性剤が導入されてなる第二の多孔体前駆体粒子を得ることができる。
【0108】
次に、工程(C)について説明する。工程(C)は、前記第二の多孔体前駆体粒子に含まれる前記第一の界面活性剤及び前記拡張剤を除去して球状シリカ系メソ多孔体を得る工程である。このように界面活性剤及び拡張剤を除去する方法としては、例えば、焼成による方法、有機溶媒で処理する方法、イオン交換法等を挙げることができる。
【0109】
このような焼成による方法においては、多孔体前駆体粒子を300〜1000℃、好ましくは400〜700℃で加熱する。加熱時間は30分程度でもよいが、完全に界面活性剤を除去するには1時間以上加熱することが好ましい。また、焼成は空気中で行うことが可能であるが、多量の燃焼ガスが発生するため、窒素等の不活性ガスを導入して行ってもよい。また、有機溶媒で処理する場合は、用いた界面活性剤に対する溶解度が高い良溶媒中に多孔体前駆体粒子を浸漬して界面活性剤を抽出する。イオン交換法においては多孔体前駆体粒子を酸性溶液(少量の塩酸を含むエタノール等)に浸漬し、例えば50〜70℃で加熱しながら攪拌を行う。これにより、多孔体前駆体粒子の孔中に存在する界面活性剤が水素イオンでイオン交換される。なお、イオン交換により孔中には水素イオンが残存することになるが、水素イオンのイオン半径は十分小さいため孔の閉塞の問題は生じない。
【0110】
このような工程(A)〜(C)を含む前記球状シリカ系メソ多孔体を得る工程によって、平均粒径が0.01〜3μmである球状シリカ系メソ多孔体であって、しかも中心細孔直径が2.6nm以上という本発明にかかる球状シリカ系メソ多孔体が効率良くかつ確実に得ることができる。また、このような球状シリカ系メソ多孔体を得る工程によって、下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下の粒子からなる球状シリカ系メソ多孔体を効率良く得ることができる。なお、前記球状シリカ系メソ多孔体を得る工程においては、用いる界面活性剤が上記一般式で表される化学構造を有し、更に前述のような条件でシリカ原料を反応させるため、前記中心細孔直径を有する細孔が2次元ヘキサゴナルに配列したものが得られやすい。
【0111】
以上、本発明にかかる磁性材料前駆体粒子を得る工程について説明したが、このような磁性材料前駆体粒子を得る工程は、複数回繰り返し行ってもよい。
【0112】
[磁性材料を得る工程]
本発明の磁性材料の製造方法においては、次に、前記工程により得られた磁性材料前駆体粒子を還元して、前記球状シリカ系メソ多孔体の内部に強磁性ナノ粒子が担持されてなる磁性材料を得る。
【0113】
このような磁性材料前駆体粒子を還元する方法は特に限定されず、強磁性ナノ粒子前駆体中に1種類の金属イオンが含有されている場合には、その金属イオンを還元することができる方法であればよく、また、強磁性ナノ粒子前駆体中に2種類以上の金属イオンが共存する場合には、これらの金属からなる合金を形成することができる方法であればよい。また、このような還元方法としては、還元剤を用いて磁性材料前駆体粒子を還元する方法(いわゆる化学的還元法)又は、還元性ガス雰囲気下で加熱して磁性材料前駆体粒子を還元する方法(いわゆる焼成還元法)を採用することが好ましい。例えば、磁性材料の用途等により特定の有機基や有機官能基を導入したい場合においては、特定の有機基や有機官能基を導入された球状シリカ系メソ多孔体を用いて磁性材料前駆体粒子を得た後、その内部に導入されている有機基等を保持するために、上記化学的還元法を採用することが好ましい。
【0114】
このような化学的還元法で用いる還元剤としては、前記金属化合物に由来する金属イオンを還元することが可能な化合物であればよく、特に制限されず、公知の還元剤を適宜用いることができ、例えば、アルコール類、ポリアルコール類、H2、HCHO、S2O62−、H2PO2−、BH4−、N2H5+、H2PO3−等の化合物を挙げることができる。このような還元剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を併用して用いてもよい。
【0115】
また、前記化学的還元法においては、前記還元剤を含有する溶液に磁性材料前駆体粒子を浸漬し、攪拌を行う。このような溶液の溶媒としては特に制限されず、水又は有機溶媒(好ましくはアルコール等)を用いることができる。また、このような加熱の際の温度条件は特に制限されず、室温〜300℃程度とすることが好ましい。
【0116】
また、前記焼成還元法にいう還元性ガス雰囲気とは、還元性ガスを含有する雰囲気であればよく、特に制限されず、例えば、H2ガスを含有するArガス雰囲気や、H2ガスを含有するN2ガス雰囲気等が挙げられる。また、このような焼成還元法を採用する場合における加熱温度条件としては、前記球状シリカ系メソ多孔体に担持される強磁性ナノ粒子の種類により異なるものではあるが、350℃以上(より好ましくは350〜1000℃)とすることが好ましい。このような焼成の温度条件が350℃よりも低いと、規則結晶化が進行しないため、強磁性化されたナノ粒子を十分に形成できない傾向にある。また、加熱時間についても特に制限されず、担持させる強磁性ナノ粒子の種類に応じ、前記強磁性ナノ粒子の析出、担持させることが可能な範囲で適宜その時間を調整できる。
【0117】
また、このような還元工程において合成される強磁性ナノ粒子は、球状シリカ系メソ多孔体の細孔壁によって強磁性ナノ粒子の粒成長が抑制されるので、その大きさをナノメートルサイズに制御、維持しながら、その中心細孔直径の大きさに対応したものとなる。そして、本発明においては、合成する強磁性ナノ粒子の超常磁性限界に応じて、2.6nm以上の大きさの好適な中心細孔直径を有する球状シリカ系メソ多孔体を適宜用いることができるため、合成される強磁性ナノ粒子の粒径を容易に超常磁性限界以上のサイズに制御できる。そのため、合成された強磁性ナノ粒子は、前記球状シリカ系メソ多孔体に担持させた状態で強磁性を発現することが可能なものとなる。
【0118】
以上、本発明の磁性材料の製造方法について説明したが、本発明の磁性材料の製造方法においては、前記磁性材料前駆体粒子を得る工程と磁性材料を得る工程とを複数回繰り返し行ってもよく、これにより1種又は2種以上の強磁性ナノ粒子が導入された本発明の磁性材料を製造することが可能となる。
【実施例】
【0119】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0120】
(合成例1:第一の多孔体前駆体粒子の合成)
先ず、水946.32g及びメタノール1440gからなる混合溶媒に対して、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド(界面活性剤)11.49g(0.033mol)及び1mol/Lの水酸化ナトリウム13.68g(0.014mol)を添加し、界面活性剤の導入された混合液を得た。次に、得られた混合液に、テトラメトキシシラン(シリカ原料)7.92g(0.052mol)を添加して撹拌を続けたところ、テトラメトキシシランは完全に溶解し、約80秒後に白色粉末が析出してきた。その後、前記混合液を室温で更に8時間撹拌して、一晩(14時間)放置した後に濾過し、脱イオン水による洗浄と濾過を2回繰り返した後、熱風乾燥機で3日間乾燥し、第一の多孔体前駆体粒子を得た。
【0121】
(合成例2:球状シリカ系メソ多孔体の合成)
合成例1で得られた第一の多孔体前駆体粒子を用い、第一の多孔体前駆体粒子6.00g及びメシチレン(拡張剤)13.5gを、水180mL及びエタノール180mLからなる混合溶媒に添加し、オートクレーブで80℃の温度条件で7日間水熱処理を行い、第二の多孔体前駆体粒子を得た。次いで、得られた第二の多孔体前駆体粒子を濾過により回収し、熱風乾燥機で3日間乾燥した後、550℃の温度条件で6時間焼成することによって界面活性剤を含む有機成分を除去し、球状シリカ系メソ多孔体を得た。
【0122】
このようにして得られた球状シリカ系メソ多孔体に対して、X線回折装置(リガク社製の商品名「RINT2200」)を用いて、X線回折(XRD)測定を行ったところ、1°付近の低角側にピークが認められ、得られた球状シリカ系メソ多孔体が規則性のハニカム多孔体であることが確認された。また、前記球状シリカ系メソ多孔体のd(100)ピーク位置から求めたd(100)面間隔は6.95nmであった。更に、窒素吸脱着等温線から求めた前記球状シリカ系メソ多孔体の中心細孔直径は5.46nmであった。また、走査電子顕微鏡(SEM)観察から、粒子径の均一な球状の粒子が得られていることが確認され、任意の50個の粒子から求めた平均粒径は0.912μm、単分散度は4.3%であることが確認された。
【0123】
(合成例3:球状シリカ系メソ多孔体の合成)
メシチレン13.5gの代わりにヘキサン13.5gを用いた以外は、合成例2と同様にして球状シリカ系メソ多孔体(中心細孔直径4.55nm)を得た。
【0124】
(合成例4:球状メソポーラスシリカの合成)
オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド(界面活性剤)の代わりにテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド(界面活性剤)を用いた以外は、合成例1と同様にして多孔体前駆体粒子を得た。次に、前記多孔体前駆体粒子を550℃の温度条件で6時間焼成することによって界面活性剤を含む有機成分を除去し、球状メソポーラスシリカ(中心細孔直径1.88nm)を得た。
【0125】
(合成例5:球状メソポーラスシリカの合成)
合成例1で得られた第一の多孔体前駆体粒子を用い、第一の多孔体前駆体粒子を550℃の温度条件で6時間焼成することによって界面活性剤を含む有機成分を除去し、球状メソポーラスシリカ(中心細孔直径2.39nm)を得た。
【0126】
(実施例1)
合成例2で得られた球状シリカ系メソ多孔体(中心細孔直径5.46nm)を用い、前記球状シリカ系メソ多孔体1.20gに、40mmol/LのH2PtCl6水溶液47.6mL及び40mmol/LのFe3(NO3)3水溶液47.6mLからなる強磁性ナノ粒子前駆体溶液を含浸して、磁性材料の前駆体粒子を得た。次に、前記前駆体粒子からロータリーエバポレータで水を除去した後、これを減圧下45℃の温度条件で1日乾燥させた。次いで、乾燥後の前記前駆体粒子を還元ガス雰囲気(窒素ガス95容量%、水素ガス5容量%)下、400℃の温度条件で2時間焼成した後、更に800℃の温度条件で4時間焼成し、球状シリカ系メソ多孔体の内部にFePtのナノ粒子が担持された磁性材料を得た。
【0127】
<実施例1で得られた磁性材料の特性の評価>
実施例1で得られた磁性材料に対して、X線回折装置(リガク社製の商品名「RINT2200」)を用いてXRD測定を行った。このようにして得られたX線回折パターンを図1に示す。図1に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた磁性材料においては、fct−FePtに帰属されるブロードな回折パターンが確認された。また、粒子サイズをd111回折の半値幅からシェラーの式により求めたところ、実施例1で得られた磁性材料の粒子サイズは4.24nmであった。
【0128】
また、実施例1で得られた磁性材料の磁化率測定を行った。このような磁化率測定は、測定機として振動試料型磁力計(東英工業社製の商品名「VSM−3S−15」を用いて行った。得られた磁化曲線を図2に示す。このような磁化率測定の結果(図2)からナノ粒子の保持力を求めたところ、実施例1で得られた磁性材料においては、FePtの保磁力は3.33kOeであることが確認された。
【0129】
さらに、実施例1で得られた磁性材料の窒素吸着等温線を求めた。得られた結果を図3に示す。図3に示す窒素吸着等温線から求めた磁性材料の細孔容量は0.707cm3/gであった。このような結果から、得られた磁性材料においては、前記多孔体の内部にFePt導入した後においても十分な空間が保持されていることが確認された。
【0130】
また、実施例1で得られた磁性材料に対して電子顕微鏡による測定を行った。このような測定の結果、得られた走査電子顕微鏡(SEM)写真を図4に示し、透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図5に示す。図4に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた磁性材料においては、粒子表面上に強磁性ナノ粒子(FePt)は析出していないことが確認された。また、図5に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた磁性材料においては、前記球状シリカ系メソ多孔体の細孔内にナノ粒子が導入されていることが確認された。このような結果から、実施例1で得られた磁性材料においては、前記球状シリカ系メソ多孔体の細孔内に強磁性のナノ粒子が担持されていることが分かった。
【0131】
(実施例2)
合成例3で得られた球状シリカ系メソ多孔体(細孔径4.55nm)を用い、前記球状シリカ系メソ多孔体1.20gに、20mmol/LのH2PtCl6水溶液95.1mL及び20mmol/LのFe3(NO3)3水溶液95.1mLからなる強磁性ナノ粒子前駆体溶液を含浸して磁性材料の前駆体粒子を得た。次に、前記前駆体粒子からロータリーエバポレータで水を除去した後、これを減圧下45℃の温度条件で1日乾燥させた。次いで、乾燥後の前記前駆体粒子を還元ガス雰囲気下、800℃の温度条件で4時間焼成し、球状シリカ系メソ多孔体の内部にFePtのナノ粒子が担持された磁性材料を得た。
【0132】
<実施例2で得られた磁性材料の特性の評価>
実施例2で得られた磁性材料に対して、実施例1で得られた磁性材料の特性の評価方法と同様の方法を採用してXRD測定、磁化率測定、窒素吸着等温線の測定及び電子顕微鏡による測定を行った。実施例2で得られた磁性材料のX線回折パターンを図6に示し、磁化曲線を図7に示し、窒素吸着等温線を図8に示す。また、実施例2で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真を図9に示し、透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図10に示す。
【0133】
図6に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた磁性材料においては、fct−FePtに帰属されるブロードな回折パターンが確認された。また、粒子サイズをd111回折の半値幅からシェラーの式により求めたところ、実施例2で得られた磁性材料の粒子サイズは4.02nmであった。また、磁化率測定の結果(図7)からナノ粒子の保磁力を求めたところ、実施例2で得られた磁性材料においては、FePtの保磁力は1.82kOeであることが確認された。さらに、図8に示す窒素吸着等温線から求めた細孔容量は0.418cm3/gであった。このような結果から、得られた磁性材料においては、前記多孔体の内部にFePtを導入した後においても十分な空間が保持されていることが確認された。
【0134】
また、図9に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた磁性材料においては、粒子表面上に強磁性ナノ粒子(FePt)は析出していないことが確認された。また、図10に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた磁性材料においては、前記球状シリカ系メソ多孔体の細孔内にナノ粒子が導入されていることが確認された。このような結果から、実施例2で得られた磁性材料においては、前記球状シリカ系メソ多孔体の細孔内に強磁性のナノ粒子が担持されていることが分かった。
【0135】
(実施例3)
合成例2で得られた球状シリカ系メソ多孔体(細孔径5.46nm)を用い、前記球状シリカ系メソ多孔体1.20gに40mmol/LのH2PtCl6水溶液47.6mL及び40mmol/LのCoCl2水溶液47.6mLからなる強磁性ナノ粒子前駆体溶液を含浸して、磁性材料の前駆体粒子を得た。次に、前記前駆体粒子からロータリーエバポレータで水を除去した後、これを減圧下45℃の温度条件で1日乾燥した。次いで、乾燥後の前駆体粒子を還元ガス雰囲気下、400℃の温度条件で2時間焼成した後、更に800℃の温度条件で4時間焼成し、球状シリカ系メソ多孔体の内部にCoPtのナノ粒子が担持された磁性材料を得た。
【0136】
<実施例3で得られた磁性材料の特性の評価>
実施例3で得られた磁性材料に対して、実施例1で得られた磁性材料の特性の評価方法と同様の方法を採用してXRD測定、磁化率測定、窒素吸着等温線の測定及び電子顕微鏡による測定を行った。実施例3で得られた磁性材料のX線回折パターンを図11に示し、窒素吸着等温線を図12に示す。また、実施例3で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真を図13に示す。
【0137】
図11に示す結果からも明らかなように、実施例3で得られた磁性材料においては、CoPtに帰属されるブロードな回折パターンが確認された。また、粒子サイズをd111回折の半値幅からシェラーの式により求めたところ、実施例3で得られた磁性材料の粒子サイズは4.84nmであった。さらに、図12に示す窒素吸着等温線から求めた細孔容量は0.68cm3/gであった。このような結果から、得られた磁性材料においては、前記多孔体の内部にCoPtを導入した後においても十分な空間が保持されていることが確認された。
【0138】
また、図13に示す結果からも明らかなように、実施例3で得られた磁性材料においては、粒子表面上に強磁性ナノ粒子(CoPt)は析出していないことが確認された。また、TEM観察の結果から、実施例3で得られた磁性材料においては、前記球状シリカ系メソ多孔体の細孔内にナノ粒子が導入されていることが確認された。このような結果から、実施例3で得られた磁性材料においては、前記球状シリカ系メソ多孔体の細孔内に強磁性のナノ粒子が担持されていることが分かった。
【0139】
(比較例1)
合成例4で得られた球状メソポーラスシリカ(細孔径1.88nm)を用い、前記球状メソポーラスシリカ1.20gに、40mmol/LのH2PtCl6水溶液47.6mL及び40mmol/LのFe3(NO3)3水溶液47.6mLからなる強磁性ナノ粒子前駆体溶液を含浸して、磁性材料の前駆体粒子を得た。次に、前記前駆体粒子からロータリーエバポレータで水を除去した後、これを減圧下45℃の温度条件で1日乾燥した。次いで、乾燥後の前記前駆体粒子を還元ガス雰囲気下、400℃の温度条件で2時間焼成した後、更に800℃の温度条件で4時間焼成し、球状メソポーラスシリカの内部にFePtのナノ粒子が担持された磁性材料を得た。
【0140】
<比較例1で得られた磁性材料の特性の評価>
比較例1で得られた磁性材料に対して、実施例1で得られた磁性材料の特性の評価方法と同様の方法を採用してXRD測定、磁化率測定、窒素吸着等温線の測定及び電子顕微鏡による測定を行った。比較例1で得られた磁性材料のX線回折パターンを図14に示し、窒素吸着等温線を図15に示す。また、比較例1で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真を図16に示す。
【0141】
図14に示す結果からも明らかなように、比較例1で得られた磁性材料においては、fct−FePtに帰属されるブロードな回折パターンが確認された。なお、このような回折パターンには、同時に鋭い回折ピークも確認され、比較例1で得られた磁性材料において粒成長したFePt粒子の中に強磁性成分が含まれている可能性が示唆された。しかしながら、比較例1で用いた球状メソポーラスシリカの中心細孔直径は1.88nmであるため、細孔内に担持されたFePtのナノ粒子は超常磁性限界(FePtの超常磁性限界粒径は3.3〜2.8nm)よりも小さな粒径のものとなる。従って、図14で確認された鋭いピークは、メソポーラスシリカの外表面に析出したFePtのナノ粒子に由来するものであると認められる。
【0142】
また、図15に示す窒素吸着等温線から求めた細孔容量は0.342cm3/gであった。さらに、図16に示す結果からも明らかなように、比較例1で得られた磁性材料においては、球状メソポーラスシリカの表面上にナノ粒子が析出していることが確認された。このような結果から、中心細孔直径が2.6nm未満の球状メソポーラスシリカ(細孔径1.88nm)を用いた場合においては、球状メソポーラスシリカの外表面にも磁性ナノ粒子が析出してしまい、球状メソポーラスシリカの内部に強磁性ナノ粒子前駆体を効率よく含浸できないことが確認された。
【0143】
(比較例2)
合成例5で得られた球状メソポーラスシリカ(細孔径2.39nm)を用い、前記球状メソポーラスシリカ1.20gに、40mmol/LのH2PtCl6水溶液47.6mL及び40mmol/LのFe3(NO3)3水溶液47.6mLからなる強磁性ナノ粒子前駆体溶液を含浸して、磁性材料の前駆体粒子を得た。次に、前記前駆体粒子からロータリーエバポレータで水を除去した後、これを減圧下45℃の温度条件で1日乾燥した。次いで、乾燥後の前記前駆体粒子を還元ガス雰囲気下、400℃の温度条件で2時間焼成した後、更に800℃の温度条件で4時間焼成し、球状メソポーラスシリカの内部にFePtのナノ粒子が担持された磁性材料を得た。
【0144】
<比較例2で得られた磁性材料の特性の評価>
比較例2で得られた磁性材料に対して、実施例1で得られた磁性材料の特性の評価方法と同様の方法を採用してXRD測定、磁化率測定、窒素吸着等温線の測定及び電子顕微鏡による測定を行った。比較例2で得られた磁性材料のX線回折パターンを図17に示し、窒素吸着等温線を図18に示す。また、比較例2で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真を図19に示す。
【0145】
図17に示す結果からも明らかなように、比較例2で得られた磁性材料においては、fct−FePtに帰属されるブロードな回折パターンが確認された。なお、このような回折パターンには、同時に鋭い回折ピークも確認された。このような結果から、比較例2で得られた磁性材料において粒成長したFePt粒子の中に強磁性成分が含まれている可能性が示唆された。しかしながら、比較例2で用いた球状メソポーラスシリカの中心細孔直径は2.39nmであるため、細孔内に担持されたFePtのナノ粒子は超常磁性限界(FePtの超常磁性限界粒径は3.3〜2.8nm)よりも小さな粒径のものとなる。従って、図17で確認された鋭いピークは、メソポーラスシリカの外表面に析出したFePtのナノ粒子に由来するものであると認められる。
【0146】
また、図18に示す窒素吸着等温線から求めた細孔容量は0.479cm3/gであった。また、図19に示す結果からも明らかなように、比較例2で得られた磁性材料においては、球状メソポーラスシリカの表面上にナノ粒子が析出していることが確認された。このような結果から、中心細孔直径が2.6nm未満の球状メソポーラスシリカ(細孔径2.39nm)を用いた場合においては、球状メソポーラスシリカの外表面にも磁性ナノ粒子が析出してしまい、球状メソポーラスシリカの内部に強磁性ナノ粒子前駆体を効率よく含浸できないことが確認された。
【0147】
(比較例3)
合成例4で得られた球状メソポーラスシリカ(細孔径1.88nm)を用い、前記球状メソポーラスシリカ1.20gに、40mmol/LのH2PtCl6水溶液47.6mL及び40mmol/LのCoCl2水溶液47.6mLからなる強磁性ナノ粒子前駆体溶液を含浸して、磁性材料の前駆体粒子を得た。次に、前記前駆体粒子からロータリーエバポレータで水を除去した後、これを減圧下45℃の温度条件で1日乾燥した。次いで、乾燥後の前記前駆体粒子を還元ガス雰囲気下、400℃の温度条件で2時間焼成した後、更に800℃の温度条件で4時間焼成し、球状メソポーラスシリカの内部にCoPtのナノ粒子が担持された磁性材料を得た。
【0148】
<比較例3で得られた磁性材料の特性の評価>
比較例3で得られた磁性材料に対して、実施例1で得られた磁性材料の特性の評価方法と同様の方法を採用してXRD測定、磁化率測定、窒素吸着等温線の測定及び電子顕微鏡による測定を行った。比較例3で得られた磁性材料のX線回折パターンを図20に示し、窒素吸着等温線を図21に示す。また、比較例3で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真を図22に示す。
【0149】
図20に示す結果からも明らかなように、比較例3で得られた磁性材料においては、CoPtに帰属されるブロードな回折パターンが確認された。なお、このような回折パターンには、同時に鋭い回折ピークも確認された。このような結果から、比較例3で得られた磁性材料において粒成長したCoPt粒子が、強磁性成分である可能性が示唆された。しかしながら、比較例3で用いた球状メソポーラスシリカの中心細孔直径は1.88nmであるため、細孔内に担持されたCoPtのナノ粒子は超常磁性限界(CoPtの超常磁性限界粒径は3.6nm)よりも小さな粒径のものである。従って、図20で確認された鋭いピークは、メソポーラスシリカの外表面に析出したFePtのナノ粒子に由来するものであると認められる。
【0150】
また、図21に示す窒素吸着等温線から求めた細孔容量は0.26cm3/gであった。また、図22に示す結果からも明らかなように、比較例3で得られた磁性材料においては、球状メソポーラスシリカの表面上にナノ粒子が析出していることが確認された。このような結果から、中心細孔直径が2.6nm未満の球状メソポーラスシリカ(細孔径1.88nm)を用いた場合においては、球状メソポーラスシリカの外表面にも磁性ナノ粒子が析出してしまい、球状メソポーラスシリカの内部に強磁性ナノ粒子前駆体を効率よく含浸できないことが確認された。
【0151】
上述のような実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた磁性材料の特性評価の結果から、本発明の磁性材料の製造方法を採用した場合(実施例1〜3)においては、用いる球状シリカ系メソ多孔体の中心細孔直径が2.6nm以上であることから、球状シリカ系メソ多孔体の内部に、強磁性を有するナノ粒子を担持させることができ、効率よく本発明の磁性材料を製造できることが確認された。これに対して、中心細孔直径が2.6nm未満の球状メソポーラスシリカを用いて磁性材料を製造した場合(比較例1〜3)においては、そのメソポーラスシリカの内部に強磁性を有するナノ粒子を担持することはできず、更には外表面にナノ粒子が析出してしまうことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0152】
以上説明したように、本発明によれば、球状シリカ系メソ多孔体の内部に磁性ナノ粒子を担持させた磁性材料であって、前記磁性ナノ粒子に強磁性を発現させることが可能な磁性材料及びその磁性材料を効率よく製造することが可能な磁性材料の製造方法を提供することが可能となる。
【0153】
したがって、本発明の磁性材料は、球状シリカ系メソ多孔体の内部に担持されたナノ粒子が強磁性を有するものであるため、磁性フォトニック結晶、磁気温熱療法、ドラッグデリバリーシステム等の各種用途に用いる磁性材料として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】実施例1で得られた磁性材料のX線回折パターンを示すグラフである。
【図2】実施例1で得られた磁性材料の磁化曲線を示すグラフである。
【図3】実施例1で得られた磁性材料の窒素吸着等温線を示すグラフである。
【図4】実施例1で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5】実施例1で得られた磁性材料の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図6】実施例2で得られた磁性材料のX線回折パターンを示すグラフである。
【図7】実施例2で得られた磁性材料の磁化曲線を示すグラフである。
【図8】実施例2で得られた磁性材料の窒素吸着等温線を示すグラフである。
【図9】実施例2で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図10】実施例2で得られた磁性材料の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図11】実施例3で得られた磁性材料のX線回折パターンを示すグラフである。
【図12】実施例3で得られた磁性材料の窒素吸着等温線を示すグラフである。
【図13】実施例3で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図14】比較例1で得られた磁性材料のX線回折パターンを示すグラフである。
【図15】比較例1で得られた磁性材料の窒素吸着等温線を示すグラフである。
【図16】比較例1で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図17】比較例2で得られた磁性材料のX線回折パターンを示すグラフである。
【図18】比較例2で得られた磁性材料の窒素吸着等温線を示すグラフである。
【図19】比較例2で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図20】比較例3で得られた磁性材料のX線回折パターンを示すグラフである。
【図21】比較例3で得られた磁性材料の窒素吸着等温線を示すグラフである。
【図22】比較例3で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性材料並びに磁性材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルサイズの粒子(ナノ粒子)は、そのサイズが極めて小さいため、バルク材料とは異なる性質を示す場合がある。このようなナノ粒子の中でも特に磁性ナノ粒子は、特異な電気的、磁気的、光学的及び化学的な性質を示すものとなるため、磁性流体、バイオメディカル映像、情報記録及び各種の酸化触媒等への応用が検討されている。しかしながら、このような磁性ナノ粒子は、表面エネルギーが高く凝集し易いという問題があった。そこで、このような磁性ナノ粒子の安定性等を確保するために、不活性なマトリックス中に磁性ナノ粒子を導入した磁性材料が研究されてきた。
【0003】
例えば、メソポーラスシリカのMCM−41内に鉄酸化物を担持させた磁性材料が知られている(S.Liu et.al.,「Magnetism of iron−containing MCM−41 spheres」,Journal of Magnetism and Magnetic Materlais.2004年発行,vol.280,p31−36(非特許文献1)参照)。また、メソポーラスシリカのMCM−41やMCM−48内にナノ構造を有する鉄酸化物を備える磁性材料が知られている(M.Froba et.al.,「Investigations of Reactivity and Magnetic Properties of Nanostructured Iron Oxide within Mesoporous Silica Materials」,Anorg.Allg.Chem,2003年発行,vol.629,p1673−1682(非特許文献2)参照)。また、このような従来の磁性材料は、MCM−41又はMCM−48等のメソポーラスシリカ内に、鉄を含有する溶液を含浸させ、熱処理することで製造されていた。しかしながら、このような従来の磁性材料においては、室温での飽和磁化及び保磁力がいずれも小さく、担持された鉄酸化物粒子(磁性ナノ粒子)は強磁性を有するものではなかった。また、従来の磁性材料の製造方法においては、MCM−41やMCM−48のメソポーラスシリカを用いていたため、その細孔内に鉄を含有する溶液を含浸させることが困難であり、効率よく磁性材料を製造できなかった。また、従来の磁性材料の製造方法においては、メソポーラスシリカの細孔外に磁性ナノ粒子が析出していた。
【非特許文献1】S.Liu et.al.,「Magnetism of iron−containing MCM−41 spheres」,Journal of Magnetism and Magnetic Materlais.2004年発行,vol.280,p31−36
【非特許文献2】M.Froba et.al.,「Investigations of Reactivity and Magnetic Properties of Nanostructured Iron Oxide within Mesoporous Silica Materials」,Anorg.Allg.Chem,2003年発行,vol.629,p1673−1682
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、球状シリカ系メソ多孔体の内部に磁性ナノ粒子を担持させた磁性材料であって、前記磁性ナノ粒子に強磁性を発現させることが可能な磁性材料及びその磁性材料を効率よく製造することが可能な磁性材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、先ず、従来の磁性材料においては、MCM−41やMCM−48等のメソポーラスシリカが不定形であり、しかも細孔径が小さなものであるため、製造時においては磁性粒子の前駆体を含浸することが困難で効率よく磁性材料を製造できず、しかも製造後においてはメソポーラスシリカに担持され磁性粒子の粒径が超常磁性限界サイズよりも小さな粒子となり、強磁性を発現できないということを見出した。そこで、更に鋭意研究を重ねた結果、平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体を用い、前記球状シリカ系メソ多孔体の内部に強磁性材料からなる磁性ナノ粒子を担持させることにより、磁性ナノ粒子の前駆体を前記メソ多孔体の内部に容易に含浸させることが可能となるとともに、担持された前記磁性ナノ粒子に強磁性を発現させることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の磁性材料は、平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体と、
該球状シリカ系メソ多孔体の内部に担持された強磁性ナノ粒子と、
を備えることを特徴とするものである。
【0007】
上記本発明の磁性材料においては、前記強磁性ナノ粒子が、強磁性を有する金属の単体、CuAu型強磁性規則合金、Cu3Au型強磁性規則合金及び希土類系強磁性合金からなる群から選択される少なくとも1種からなることが好ましい。
【0008】
また、上記本発明の磁性材料においては、前記強磁性ナノ粒子が、強磁性体が超常磁性体に変化する超常磁性限界以上の粒径を有することが好ましい。
【0009】
さらに、上記本発明の磁性材料においては、前記球状シリカ系メソ多孔体が、下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下の粒子からなることが好ましい。
【0010】
また、本発明の磁性材料の製造方法は、平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体に強磁性ナノ粒子前駆体を含浸させて、前記球状シリカ系メソ多孔体中に前記強磁性ナノ粒子前駆体が導入されてなる磁性材料前駆体粒子を得る工程と、
前記磁性材料前駆体粒子を還元して、前記球状シリカ系メソ多孔体の内部に強磁性ナノ粒子が担持されてなる磁性材料を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0011】
上記本発明の磁性材料の製造方法においては、前記強磁性ナノ粒子前駆体が、水、アルコール、エーテル、アセトン及びスチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する溶媒と、前記強磁性ナノ粒子の原料となる金属化合物とを含有するものであることが好ましい。
【0012】
また、上記本発明の磁性材料の製造方法においては、前記磁性材料前駆体粒子を還元する工程が、還元剤を用いて前記磁性材料前駆体粒子を還元する工程であることが好ましい。
【0013】
さらに、上記本発明の磁性材料の製造方法においては、前記磁性材料前駆体粒子を還元する工程が、還元性ガス雰囲気下、350℃以上の温度条件で加熱焼成して前記磁性材料前駆体粒子を還元する工程であることが好ましい。
【0014】
また、上記本発明の磁性材料の製造方法においては、第一の溶媒中でシリカ原料と第一の界面活性剤とを混合し、シリカ中に前記第一の界面活性剤が導入されてなる第一の多孔体前駆体粒子を得る工程(A)と、
拡張剤を含む第二の溶媒中で、前記第一の多孔体前駆体粒子中に前記拡張剤が導入されてなる第二の多孔体前駆体粒子を得る工程(B)と、
前記第二の多孔体前駆体粒子に含まれる前記第一の界面活性剤及び前記拡張剤を除去して球状シリカ系メソ多孔体を得る工程(C)と、
を含み、且つ、
工程(A)において、前記第一の界面活性剤として下記一般式(1):
【0015】
【化1】
【0016】
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは7〜25の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライドを用い、前記第一の溶媒として水と、アルコール及び/又はエーテルとの混合溶媒を用い、前記第一の溶媒中におけるアルコール及び/又はエーテルの含有量が85容量%以下であり、前記第一の溶媒中における前記第一の界面活性剤の濃度が0.0001〜0.03mol/Lであり、前記第一の溶媒中における前記シリカ原料の濃度がSi濃度換算で0.0005〜0.03mol/Lであり、且つ、前記シリカ原料と前記第一の界面活性剤とを0〜40℃の温度条件下で混合すること、及び、
工程(B)において、前記拡張剤として下記一般式(2):
【0017】
【化2】
【0018】
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、zは17〜25の整数であって且つ前記第一の界面活性剤として選択されたアルキルアンモニウムハライドの式(1)中のmの値以上の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライド、鎖状炭化水素、環状炭化水素及びヘテロ環化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用い、前記第二の溶媒として水とアルコールとの混合溶媒を用い、前記第二の溶媒中におけるアルコールの含有量が40〜90容量%であり、前記第二の溶媒中における前記拡張剤の濃度が0.05〜10mol/Lであり、且つ、前記第二の溶媒中で前記第一の多孔体前駆体粒子を60〜150℃の温度条件下で混合すること、
という条件を満たす、前記球状シリカ系メソ多孔体を得る工程を更に含むことが好ましい。
【0019】
さらに、上記本発明の磁性材料の製造方法においては、前記球状シリカ系メソ多孔体が、下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下の粒子からなることが好ましい。
【0020】
なお、本発明の磁性材料及び磁性材料の製造方法によって、上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、各種用途に適用することが可能な磁性材料を製造するためには、メソ多孔体に担持させる磁性ナノ粒子の大きさをナノメートルサイズに維持したまま、磁性ナノ粒子の含有量を任意に制御することが重要である。また、FePt、CoPt等のような強磁性材料はバルク体では強磁性を示すが、これを小サイズ化し磁性ナノ粒子とした場合には、熱揺らぎで超常磁性に変化するため超常磁性限界以上のサイズでなければ強磁性を発現できない。そのため、メソ多孔体に担持させた磁性ナノ粒子に強磁性を発現させるためには、磁性ナノ粒子の粒径を超常磁性限界以上(FePtの場合は約3nm以上)とすることが重要である。本発明においては、中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体を用いているため、細孔内への磁性ナノ粒子前駆体の含浸が容易であり、しかも細孔壁によって磁性ナノ粒子の粒成長が抑制されるので、磁性ナノ粒子の大きさをナノメートルサイズに制御し、維持することが容易であるとともに、その細孔の大きさに対応した磁性ナノ粒子を合成できる。そのため、担持させる磁性ナノ粒子の粒径を超常磁性限界以上のサイズとすることが容易に達成でき、前記球状シリカ系メソ多孔体に担持させた状態で、磁性ナノ粒子に強磁性を発現させることが可能となるものと本発明者らは推察する。
【0021】
また、前記磁性材料を磁性フォトニック結晶、磁気温熱療法、ドラッグデリバリーシステム等の用途に応用する場合には、磁性材料の形状や特定の化合物に対する吸着性等が重要となるが、本発明においては、強磁性ナノ粒子を担持させる担体として球状シリカ系メソ多孔体を用い、高い比表面積及び吸着容量等を確保できるため、各種用途に好適な磁性材料を容易に製造できる。例えば、前記磁性材料を磁性フォトニック結晶に用いる場合には、磁性材料の形状が球状であることやその粒子径が均一であること等が要求されるが、前記式(1)で表される単分散度が10%以下の球状シリカ系メソ多孔体を好適に用いることで、その要求に容易に対応することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、球状シリカ系メソ多孔体の内部に磁性ナノ粒子を担持させた磁性材料であって、前記磁性ナノ粒子に強磁性を発現させることが可能な磁性材料及びその磁性材料を効率よく製造することが可能な磁性材料の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0024】
先ず、本発明の磁性材料について説明する。すなわち、本発明の磁性材料は、平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体と、
該球状シリカ系メソ多孔体の内部に担持された強磁性ナノ粒子と、
を備えることを特徴とするものである。
【0025】
本発明にかかる球状シリカ系メソ多孔体の平均粒径は0.01〜3μm(より好ましくは0.1〜2μm)である。このような平均粒径が0.01μm未満では、球状シリカ系メソ多孔体の合成そのものが困難となるとともに、粒子が凝集してしまう。他方、前記平均粒径が3μmを超えると、球状の粒子を合成することが困難となると同時に、球状シリカ系メソ多孔体の内部への強磁性ナノ粒子前駆体の拡散に時間がかかるため、磁性材料の製造効率が低くなる。なお、このような球状シリカ系メソ多孔体の平均粒径は、用途等に応じて適宜変更することが可能である。
【0026】
また、このような球状シリカ系メソ多孔体の中心細孔直径は2.6nm以上(より好ましくは3〜20nm)である。前記中心細孔直径が2.6nm未満の場合には、強磁性ナノ粒子前駆体の導入が困難となるとともに、球状メソポーラスシリカの内部に担持されるナノ粒子が超常磁性限界未満の粒径となって強磁性を発現しなくなるとともに外表面に強磁性ナノ粒子が生成される場合が生じる。なお、本発明にいう「中心細孔直径」とは、細孔容積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対してプロットした曲線(細孔径分布曲線)の最大ピークにおける細孔直径である。なお、細孔径分布曲線は、次に述べる方法により求めることができる。すなわち、シリカ系メソ多孔体粒子を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法あるいは重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温線を得る。この吸着等温線を用い、Cranston−Inklay法、Dollimore−Heal法、BJH法等の計算法により細孔径分布曲線を求めることができる。
【0027】
また、本発明でいう「球状」とは、同一条件下で製造された複数個(好ましくは20個以上)の粒子を、顕微鏡等で観察した場合において、各粒子の真球度の平均値が13%以下であることをいう。また、「真球度」とは、各粒子の外形の真円からのずれの程度を表す指標であって、粒子の表面に接する最小の外接円の半径(ro)に対する、外接円と粒子表面の各点との半径方向の距離の最大値(Δrmax)の割合(Δrmax×100/ro[単位:%])である。
【0028】
また、前記球状シリカ系メソ多孔体としては、下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下の粒子からなることが好ましい。このように単分散度の球状シリカ系メソ多孔体は、粒径が極めて均一であることから、磁性フォトニック結晶をはじめとした光デバイス関係に用いる材料として非常に有用である。
【0029】
また、本発明の磁性材料は、前記真球度の平均値及び前記単分散度がより小さな値となるほど、磁性フォトニック結晶等に応用する場合により高い特性が得られる傾向にある。そのため、本発明の磁性材料を磁性フォトニック結晶等に用いる場合においては、前記真球度の平均値は10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。また、前記単分散度は8%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。
【0030】
また、前記球状シリカ系メソ多孔体は、ケイ素原子が酸素原子を介して結合した骨格−Si−O−を基本とし、高度に架橋した網目構造を有している。このような球状シリカ系メソ多孔体は、ケイ素原子及び酸素原子を主成分とするものであればよく、ケイ素原子の少なくとも一部が有機基の2箇所以上で炭素−ケイ素結合を形成しているものでもよい。このような有機基としては、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、ベンゼン、シクロアルカン等の炭化水素から2以上の水素がとれて生じる2価以上の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、有機基は、アミド基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルフォン基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、ビニル基等を有するものであってもよい。
【0031】
さらに、前記球状シリカ系メソ多孔体は、本発明の磁性材料をドラッグデリバリーシステムや触媒等に用いる場合には、有機官能基が導入されているものであることが好ましい。このような有機基官能基が導入された球状シリカ系メソ多孔体を用いることで、特定の物質を効率よく吸着することが可能となり、ドラッグデリバリー等に好適な磁性材料が得られる傾向にある。また、このような有機官能基は特に制限されず、アミド基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルフォン基、カルボキシル基等であってもよい。
【0032】
また、このような球状シリカ系メソ多孔体は、細孔径分布曲線における中心細孔直径の±40%の範囲に全細孔容積の60%以上が含まれることが好ましい。このような条件を満たすシリカ系メソ多孔体粒子は、細孔の直径が非常に均一であることを意味する。また、かかる球状シリカ系メソ多孔体の比表面積については特に制限はないが、700m2/g以上であることが好ましい。比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0033】
さらに、前記球状シリカ系メソ多孔体は、そのX線回折パターンにおいて1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有することが好ましい。X線回折ピークはそのピーク角度に相当するd値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1nm以上の間隔で規則的に配列していることを意味する。
【0034】
また、球状シリカ系メソ多孔体が有する細孔は、多孔体の表面のみならず内部にも形成されている。かかる多孔体における細孔の配列状態(細孔配列構造又は構造)は特に制限されないが、2d−ヘキサゴナル構造、3d−ヘキサゴナル構造又はキュービック構造であることが好ましい。また、このような細孔配列構造は、ディスオーダの細孔配列構造を有するものであってもよい。
【0035】
ここで、多孔体がヘキサゴナルの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が六方構造であることを意味する(S.Inagaki,et al.,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,680,1993;S.Inagaki,et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.,69,1449,1996、Q.Huo,et al.,Science,268,1324,1995参照)。また、多孔体がキュービックの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が立方構造であることを意味する(J.C.Vartuli,et al.,Chem.Mater.,6,2317,1994;Q.Huo,et al.,Nature,368,317,1994参照)。また、多孔体がディスオーダの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が不規則であることを意味する(P.T.Tanev,et al.,Science,267,865,1995;S.A.Bagshaw,et al.,Science,269,1242,1995;R.Ryoo,et al.,J.Phys.Chem.,100,17718,1996参照)。また、前記キュービック構造は、Pm−3n、Im−3m又はFm−3m対称性であることが好ましい。前記対称性とは、空間群の表記法に基づいて決定されるものである。なお、このような本発明にかかる球状シリカ系メソ多孔体の製造方法については後述する。
【0036】
また、本発明にかかる強磁性ナノ粒子は、前記球状シリカ系メソ多孔体の内部に担持されたものであり且つ担持された状態で強磁性を有するものである。また、このような強磁性ナノ粒子としては、球状シリカ系メソ多孔体の細孔内に担持されたものであることがより好ましい。
【0037】
また、このような強磁性ナノ粒子としては、強磁性を有するものであればよく特に制限されないが、強磁性を有する金属の単体、CuAu型強磁性規則合金、Cu3Au型強磁性規則合金及び希土類系強磁性合金からなる群から選択される少なくとも1種からなるものがより好ましい。このような単体金属としては、Fe、Co、Ni、Gd等が挙げられる。また、前記CuAu型強磁性規則合金としては、FePt、FePd、FeNi、CoAu、CoPt等の合金が挙げられる。また、Cu3Au型強磁性規則合金としては、Co3Pt、CrPt3、Fe3Pt、FePt3、FePd3、CoPt3、Ni3Pt、Ni3Fe、Ni3Mn等の合金が挙げられる。更に、希土類系強磁性合金としては、SmCo5、Sm2Co17、Fe14Nd2B、Nd3Fe16B、Sm2Fe17N3等が挙げられる。このような強磁性ナノ粒子の材料は、磁性材料の用途等に応じて適宜変更できるものではあるが、より小さな粒子径でも強磁性の発現が可能という観点から、Co、FePd、Co3Pt、Fe14Nd2B、CoPt、FePt、SmCo5が好ましい。
【0038】
さらに、前記強磁性ナノ粒子としては、強磁性体が超常磁性体に変化する超常磁性限界(強磁性粒子として存在可能な最小径)以上の粒径を有することが好ましい。このような粒径が超常磁性限界未満では、担持させたナノ粒子が強磁性を発現しない傾向にある。このような超常磁性限界以上の粒径は、例えば、SmCo5では2.7〜2.2nm、FePtでは3.3〜2.8nm、CoPtでは3.6nm、Fe14Nd2Bでは3.7nm、Co3Ptでは4.8nm、FePdでは5nm、Coでは8nmである(IEEE Trans.Magn.,2000年発行,vol.36,p10−15.参照)。また、このような強磁性ナノ粒子の粒径の上限は特に制限されず、磁性材料の用途に応じて適宜その大きさを変更できる。また、このような強磁性ナノ粒子の形状は特に制限されないが、球状であることが好ましい。なお、前記強磁性ナノ粒子の「粒径」は、前記強磁性ナノ粒子の形状が球状ではない場合においては、その外接円の直径をいう。
【0039】
さらに、本発明の磁性材料としては、強磁性ナノ粒子が担持された球状シリカ系メソ多孔体の細孔容量が0.1cm3/g以上であることが好ましく、0.3cm3/g以上であることが好ましい。このような細孔容量が前記下限未満では、他の化合物等を磁性材料中に吸着等させることが困難となり、ドラッグデリバリーシステム等の用途に用いることができなくなる傾向にある。
【0040】
また、本発明の磁性材料の形状は特に制限されず、粉末として使用してもよく、また、必要に応じて成形して使用してもよい。このような成形手段はどのようなものでも良いが、押出成形、打錠成形、転動造粒、圧縮成形、CIP等を好適に採用できる。また、その形状は使用箇所、方法に応じて決めることができ、たとえば円柱状、破砕状、球状、ハニカム状、凹凸状、波板状等が挙げられる。また、このような本発明の磁性材料は、球状シリカ系メソ多孔体の内部に強磁性ナノ粒子を担持させた磁性材料であり、ナノ粒子に強磁性を発現させることが可能であるため、磁性フォトニック結晶、磁気温熱療法、ドラッグデリバリーシステム等の各種用途に好適に用いることができる。
【0041】
以上、本発明の磁性材料について説明したが、以下において、上記本発明の磁性材料を好適に製造することが可能な本発明の磁性材料の製造方法を説明する。
【0042】
本発明の磁性材料の製造方法は、平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体に強磁性ナノ粒子前駆体を含浸させて、前記球状シリカ系メソ多孔体中に前記強磁性ナノ粒子前駆体が導入されてなる磁性材料前駆体粒子を得る工程と、
前記磁性材料前駆体粒子を還元して、前記球状シリカ系メソ多孔体の内部に強磁性ナノ粒子が担持されてなる磁性材料を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。以下、工程ごとに説明する。
【0043】
[磁性材料前駆体粒子を得る工程]
本発明の磁性材料の製造方法においては、先ず、平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体に強磁性ナノ粒子前駆体を含浸させて、前記球状シリカ系メソ多孔体中に前記強磁性ナノ粒子前駆体が導入されてなる磁性材料前駆体粒子を得る。
【0044】
このような球状シリカ系メソ多孔体は、前述の本発明の磁性材料で説明した球状シリカ系メソ多孔体と同様のものである。
【0045】
また、前記強磁性ナノ粒子前駆体は、前記球状シリカ系メソ多孔体に含浸させ、還元した際に、前記球状シリカ系メソ多孔体の内部に強磁性ナノ粒子を担持することが可能なものであればよく、特に制限されないが、溶媒と、前記強磁性ナノ粒子の原料となる金属化合物とを含有する混合液を用いることが好ましい。なお、このような強磁性ナノ粒子前駆体は1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
このような強磁性ナノ粒子前駆体の溶媒としては特に制限されないが、水及び/又は有機溶媒からなるものが好ましく、溶媒の除去が容易であるという観点から、水、アルコール、エーテル、アセトン及びスチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する溶媒がより好ましく、水、アルコール及びアセトンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する溶媒が更に好ましく、水及び/又はアルコールからなる溶媒が特に好ましい。また、このようなアルコールとしては特に制限されるものではないが、メタノール、エタノール、プロパノールが好ましい。また、このような溶媒中における水とアルコール又はアセトンとの体積混合比は特に制限されず、各成分が混和できる条件であればよい。
【0047】
前記強磁性ナノ粒子の原料となる金属化合物としては、前記強磁性ナノ粒子を製造できるものであればよく、特に制限されないが、前記溶媒に対する溶解度の観点から、金属塩、メタロセン、メタロセン誘導体並びに金属カルボニルが好ましい。このような金属塩としては、前記強磁性ナノ粒子を製造できる金属の塩であればよく、特に制限されず、例えば、FeCl3、Fe2(SO4)3、Fe(NO3)3、(NH4)3Fe(C2O4)3、Fe(CH3COCHCOCH3)3、FeNH4(SO4)2、Fe(ClO4)3、FeCl2、FeBr2、Fe[CH3CH(OH)COO]2、CoCl2、Co(NO3)2、Co(CH3COO)2、Co(HCOO)2、Co(CH3COCHCOCH3)2、CoBr2、CoSO4、Co(CH3COCHCOCH3)3、Co(C17H33COO)2、NiSO4、NiC2O4、(NH4)Ni(SO4)2、Ni(CH3COCHCOCH3)2、Ni(C6H5COO)2、NiCl2、Ni(ClO4)3、NiBr2、Ni(NO3)2、Ni(CH3COO)2、NiSO4、CrCl3、Cr(NO3)3、(NH4)2CrO4、Cr(CH3COCHCOCH3)3、CrBr3、HAuCl4、H2PtCl6、Pt(CH3COCHCOCH3)2、Pd(OCOCH3)2、PdCl2、Pd(CH3COCHCOCH3)2、(NH4)2PdCl4、Pd(NO3)2、Sm(CH3COO)3、SmCl3、Sm(NO3)3、Sm2(C2O4)3、Sm2(SO4)3、Nd(CH3COO)3、NdCl3、Nd(NO3)3、Nd2(C2O4)3、Nd2(SO4)3、Gd(NO3)3、H2BO3等が挙げられる。
【0048】
また、前記メタロセンとは、シクロペンタジエン2分子に金属がサンドイッチされたものをいう。このような金属としては前記強磁性ナノ粒子を製造できるものであればよく、特に制限されないが、例えばFe、Co、Ni等を含むものが挙げられる。
【0049】
また、前記メタロセン誘導体とは、前述のメタロセンを構成するシクロペンタジエンに有機官能基が結合したものをいう。このようなメタロセン誘導体に含まれる有機官能基は特に制限されず、前記溶媒の種類に応じて溶媒に対する溶解度をより向上させるために最適なものを適宜選択することができる。例えば、前記溶媒としてフルフリルアルコールを用いる場合、前記メタロセン誘導体に含まれる有機官能基としては、アルデヒド基やヒドロキシプロピル基等の含酸素有機官能基が好ましい。また、前記溶媒にスチレンを用いる場合、前記メタロセン誘導体に含まれる有機官能基としては、溶解度を著しく向上させるとともにスチレンと共重合させることができるという観点からビニル基が好ましい。なお、このようなメタロセン及びメタロセン誘導体を用いた場合においては、メタロセン及びその誘導体の有機溶媒に対する溶解度が極めて大きいことから、多量の金属元素をより効率よく細孔内に導入できる傾向にある。また、このようなメタロセン及びその誘導体を用いた場合においては、所定の有機溶媒とメタロセン及びその誘導体とを重合させて用いることも可能となり、磁性材料の製造時に加熱した場合に細孔外に金属元素が飛散することをより効率よく防止できるため、外表面にナノ粒子を製造することなく細孔内に強磁性ナノ粒子をより効率よく製造できる傾向にある。
【0050】
さらに、前記金属カルボニルとしては、特に制限されず、下記一般式(3):
Mm(CO)n (3)
(Mは金属を示し、mは1〜4の整数を示し、nは1〜15の整数を示す。)
で表される金属カルボニルを用いることができる。このような一般式(3)中の金属(M)は、前記メタロセン中の金属と同様のものである。なお、このような金属化合物は1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
また、前記溶媒と前記金属化合物とを含有する混合液中における前記金属化合物の含有量としては、前記金属化合物の溶解度の範囲内であればよく特に制限されないが、前記金属化合物に由来する金属イオンの濃度が0.002〜3mol/Lとなる範囲であることがより好ましく、0.01〜2mol/Lとなる範囲であることが更に好ましい。前記金属イオンの濃度が0.002mol/L未満では、含浸の効率が低く製造効率が低下するため実用に適さない傾向にあり、3mol/Lを超えると球状シリカ系メソ多孔体の外表面(外部)に強磁性ナノ粒子が生成する傾向にある。
【0052】
また、本発明の磁性材料の製造方法においては、このような磁性材料前駆体粒子を得る工程に用いる前記球状シリカ系メソ多孔体を製造する工程として、以下に示すような球状シリカ系メソ多孔体を得る工程を更に含んでいることが好ましい。すなわち、このような球状シリカ系メソ多孔体を製造する工程は、第一の溶媒中でシリカ原料と第一の界面活性剤とを混合し、シリカ中に前記第一の界面活性剤が導入されてなる第一の多孔体前駆体粒子を得る工程(A)と、
拡張剤を含む第二の溶媒中で、前記第一の多孔体前駆体粒子中に前記拡張剤が導入されてなる第二の多孔体前駆体粒子を得る工程(B)と、
前記第二の多孔体前駆体粒子に含まれる前記第一の界面活性剤及び前記拡張剤を除去して球状シリカ系メソ多孔体を得る工程(C)と、
を含み、且つ、
工程(A)において、前記第一の界面活性剤として下記一般式(1):
【0053】
【化3】
【0054】
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは7〜25の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライドを用い、前記第一の溶媒として水と、アルコール及び/又はエーテルとの混合溶媒を用い、前記第一の溶媒中におけるアルコール及び/又はエーテルの含有量が85容量%以下であり、前記第一の溶媒中における前記第一の界面活性剤の濃度が0.0001〜0.03mol/Lであり、前記第一の溶媒中における前記シリカ原料の濃度がSi濃度換算で0.0005〜0.03mol/Lであり、且つ、前記シリカ原料と前記第一の界面活性剤とを0〜40℃の温度条件下で混合すること、及び、
工程(B)において、前記拡張剤として下記一般式(2):
【0055】
【化4】
【0056】
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、zは17〜25の整数であって且つ前記第一の界面活性剤として選択されたアルキルアンモニウムハライドの式(1)中のmの値以上の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライド、鎖状炭化水素、環状炭化水素及びヘテロ環化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用い、前記第二の溶媒として水とアルコールとの混合溶媒を用い、前記第二の溶媒中におけるアルコールの含有量が40〜90容量%であり、前記第二の溶媒中における前記拡張剤の濃度が0.05〜10mol/Lであり、且つ、前記第二の溶媒中で前記第一の多孔体前駆体粒子を60〜150℃の温度条件下で混合すること、
という条件を満たす工程である。以下において、このような球状シリカ系メソ多孔体を得る工程を、工程(A)〜(C)に分けて説明する。
【0057】
先ず、工程(A)について説明する。このような工程(A)は、第一の溶媒中でシリカ原料と第一の界面活性剤とを混合し、シリカ中に前記第一の界面活性剤が導入されてなる第一の多孔体前駆体粒子を得る工程である。
【0058】
このようなシリカ原料は、反応によりケイ素酸化物(ケイ素複合酸化物を含む)を形成することが可能なものであればよく、特に制限されるものではないが、反応効率や得られるケイ素酸化物の物性の観点から、アルコキシシラン、ケイ酸ナトリウム、層状シリケート、シリカ、又はこれらの任意の混合物を用いることが好ましく、中でもアルコキシシランを用いることがより好ましい。
【0059】
前記アルコキシシランとしては、アルコキシ基を4個有するテトラアルコキシシラン、アルコキシ基を3個有するトリアルコキシシラン、アルコキシ基を2個有するジアルコキシシランを用いることができる。このようなアルコキシ基の種類は特に制限されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のようにアルコキシ基中の炭素原子の数が比較的少ないもの(炭素数として1〜4程度のもの)が反応性の点から有利である。また、前記アルコキシシランが有するアルコキシ基が3又は2個である場合は、アルコキシシラン中のケイ素原子には有機基、水酸基等が結合していてもよく、当該有機基はアミノ基やメルカプト基等の官能基をさらに有していてもよい。このような有機基や有機官能基等を有するアルコキシシランを用いることで、得られる球状シリカ系メソ多孔体に有機基や有機官能基等を導入することができる。
【0060】
また、前記テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等が挙げられ、前記トリアルコキシシランとしては、トリメトキシシラノール、トリエトキシシラノール、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。また、前記ジアルコキシシランとしては、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン等が挙げられる。
【0061】
また、このようなアルコキシシランの中でも、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランを用いることがより好ましい。このようにして3−アミノプロピルトリメトキシシラン及び/又は3−アミノプロピルトリエトキシシランをシラン原料として用いることで、得られる球状シリカ系メソ多孔体の細孔径を効率よく拡大することができる。そのため、3−アミノプロピルトリメトキシシラン及び/又は3−アミノプロピルトリエトキシシランをシラン原料として用いることによって、前記強磁性ナノ粒子前駆体をより効率よく含浸担持することが可能な球状シリカ系メソ多孔体を製造することが可能となる。
【0062】
このようなアルコキシシランは、単独で用いることもできるが2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。また、上記のアルコキシ基を2〜4個有するアルコキシシランは、アルコキシ基を1個有するモノアルコキシシランと組み合わせて使用することも可能である。このようにして用いることのできるモノアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、3−クロロプロピルジメチルメトキシシラン等が挙げられる。
【0063】
また、前記アルコキシシランは、加水分解によりシラノール基を生じ、生じたシラノール基同士が縮合することによりケイ素酸化物が形成される。この場合において、分子中のアルコキシ基の数が多いアルコキシシランは、加水分解及び縮合で生じる結合が多くなる。したがって、アルコキシ基の多いテトラアルコキシシランをアルコキシシランとして用いることが好ましく、テトラアルコキシシランとしては、反応速度の観点からテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランを用いることが特に好ましい。
【0064】
また、前記シリカ原料として用いられるケイ酸ナトリウムとしては、メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、オルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)、二ケイ酸ナトリウム(Na2Si2O5)、四ケイ酸ナトリウム(Na2Si4O9)等が挙げられる。ケイ酸ナトリウムとしては、このような単一物質の他、水ガラス(Na2O・nSiO2、n=2〜4)等のように組成が場合により異なるものを使用することもできる。
【0065】
さらに、前記層状シリケートとしては、カネマイト(NaHSi2O5・3H2O)、二ケイ酸ナトリウム結晶(α、β、γ、δ−Na2Si2O5)、マカタイト(Na2Si4O9・5H2O)、アイアライト(Na2Si8O17・xH2O)、マガディアイト(Na2Si14O17・xH2O)、ケニヤイト(Na2Si20O41・xH2O)等が挙げられる。また、セピオライト、モンモリロナイト、バーミキュライト、雲母、カオリナイト、スメクタイト等の粘土鉱物を酸性水溶液で処理してシリカ以外の元素を除去したものも層状シリケートとして使用可能である。
【0066】
また、前記シリカ原料として用いられるシリカとしては、Ultrasil(Ultrasil社)、Cab−O−Sil(Cabot社)、HiSil(Pittsburgh Plate Glass社)等の沈降性シリカ;コロイダルシリカ;Aerosil(Degussa−Huls社)等のフュームドシリカを挙げることができる。
【0067】
さらに、このようなシリカ原料は、単独で用いることもできるが2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。但し、2種類以上のシリカ原料を用いる場合は、製造時の反応条件が複雑化することがあるため、シリカ原料は単独のものを使用することが好ましい。
【0068】
また、前記第一の界面活性剤は、下記一般式(1):
【0069】
【化5】
【0070】
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは7〜25の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライドである。
【0071】
このような一般式(1)におけるR1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基を示す。このようなアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、これらが一分子中に混在してもよいが、界面活性剤分子の対称性の観点からR1、R2及びR3は全て同一であることが好ましい。界面活性剤分子の対称性が優れる場合は、界面活性剤同士の凝集(ミセルの形成等)が容易となる傾向にある。更に、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つはメチル基であることが好ましく、R1、R2及びR3の全てがメチル基であることがより好ましい。
【0072】
さらに、一般式(1)におけるXはハロゲン原子を示し、このようなハロゲン原子の種類は特に制限されないが、入手の容易さの観点からXは塩素原子または臭素原子であることが好ましい。
【0073】
また、一般式(1)におけるmは7〜25の整数を示し、9〜21の整数であることがより好ましい。前記mが6以下であるアルキルアンモニウムハライドでは、球状の第一の多孔体前駆体粒子は得られるものの、中心細孔直径が小さくなって、工程(B)において第一の界面活性剤と第二の界面活性剤とを置換反応させることが困難となる。他方、前記mが26以上のアルキルアンモニウムハライドでは、第一の界面活性剤の疎水性相互作用が強すぎるため、層状の化合物が生成してしまい、球状の多孔体を得ることができなくなる。
【0074】
従って、上記一般式(1)で表される第一の界面活性剤としては、R1、R2、R3の全てがメチル基であり且つ炭素数8〜26の長鎖アルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムハライドであることが好ましく、中でもデシルトリメチルアンモニウムハライド、ドデシルトリメチルアンモニウムハライド、テトラデシルトリメチルアンモニウムハライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムハライド、エイコシルトリメチルアンモニウムハライド、ドコシルトリメチルアンモニウムハライドがより好ましい。
【0075】
このような第一の界面活性剤は、シリカ原料と共に溶媒中で複合体を形成する。複合体中のシリカ原料は反応によりケイ素酸化物へと変化するが、第一の界面活性剤が存在している部分ではケイ素酸化物が生成しないため、第一の界面活性剤が存在している部分に孔が形成されることになる。すなわち、第一の界面活性剤はシリカ原料中に導入されて孔形成のためのテンプレートとして機能する。また、第一の界面活性剤は1種類もしくは2種類以上を組み合わせて用いることが可能であるが、上記のように第一の界面活性剤はシリカ原料の反応生成物に孔を形成させる際のテンプレートとして働き、その種類は多孔体の孔の形状に大きな影響を与えるため、より均一な球状多孔体を得るためには、界面活性剤は1種類のみを用いることが好ましい。
【0076】
このような工程(A)において、前記シリカ原料及び前記第一の界面活性剤を混合するための第一の溶媒としては、水と、アルコール及び/又はエーテルとの混合溶媒を用いる。このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エチレングリコール、グリセリン等が挙げられ、シリカ原料の溶解性の観点からメタノールまたはエタノールが好ましい。また、前記エーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル等が挙げられ、シリカ原料の溶解性の観点から、ジエチルエーテルが好ましい。
【0077】
また、工程(A)においては、前記シリカ原料中に前記第一の界面活性剤が導入されてなる多孔体前駆体粒子を合成する際に、前記第一の溶媒中のアルコール及び/又はエーテルの含有量は85容量%以下である必要があり、アルコール及び/又はエーテルの含有量が20〜85容量%であることがより好ましく、25〜75容量%であることがより好ましい。このように比較的多量のアルコール及び/又はエーテルを含有する混合溶媒を使用することにより、均一な球状体の発生及び成長が実現され、得られる第一の多孔体前駆体粒子の粒径が高度に均一に制御されることとなる。アルコール及び/又はエーテルの含有量が85容量%を超える場合には、粒径及び粒径分布の制御が困難となり、得られる第一の多孔体前駆体粒子の粒径の均一性が低くなる。他方、アルコール及び/又はエーテルの含有量が20容量%未満の場合は、粒径及び粒径分布の制御が困難となり、得られる第一の多孔体前駆体粒子の均一性が低くなる傾向にある。
【0078】
また、工程(A)においては、前記第一の溶媒中の水と、アルコール及び/又はエーテルとの比率を変化させることにより、粒径の均一性を高水準に保持しつつ、得られる第一の多孔体前駆体粒子の粒径を容易に制御することができる。すなわち、水の比率が高い場合は多孔体が析出し易くなるために粒径が小さくなり、逆にアルコールの比率が高い場合は大きい粒径の第一の多孔体前駆体粒子を得ることができる。
【0079】
さらに、工程(A)においては、前記第一の溶媒中で前記シリカ原料及び前記第一の界面活性剤を混合して第一の多孔体前駆体粒子を得る際に、上述した第一の界面活性剤の濃度を溶液の全容量を基準として0.0001〜0.03mol/L(好ましくは、0.0003〜0.02mol/L)とし、上述したシリカ原料の濃度を溶液の全容量を基準としてSi濃度換算で0.0005〜0.03mol/L(好ましくは、0.001〜0.02mol/L)とする必要がある。工程(A)においては、このように第一の界面活性剤及びシリカ原料の濃度を厳密に制御することと、前述の第一の溶媒を使用することとが相俟って、均一な球状体の発生及び成長が実現され、得られる第一の多孔体前駆体粒子の粒径が高度に均一に制御されることとなる。
【0080】
前記第一の界面活性剤の濃度が0.0001mol/L未満の場合は、テンプレートとなるべき第一の界面活性剤の量が不足するために良好な多孔体を得ることができず、更に粒径及び粒径分布の制御が困難となって得られる第一の多孔体前駆体粒子の粒径の均一性が低くなる。他方、前記第一の界面活性剤の濃度が0.03mol/Lを超える場合は、形状が球状である多孔体を高比率で得ることができず、更に粒径及び粒径分布の制御が困難となって得られる第一の多孔体前駆体粒子の粒径の均一性が低くなる。
【0081】
また、前記シリカ原料の濃度が0.0005mol/L未満の場合は、形状が球状である多孔体を高比率で得ることができず、更に粒径及び粒径分布の制御が困難となって得られる第一の多孔体前駆体粒子の粒径の均一性が低くなる。他方、前記シリカ原料の濃度が0.03mol/Lを超える場合は、テンプレートとなるべき第一の界面活性剤の比率が不足するために良好な多孔体を得ることができず、更に粒径及び粒径分布の制御が困難となって得られる球状シリカ系メソ多孔体の粒径の均一性が低くなる。
【0082】
工程(A)において、前記シリカ原料と前記第一の界面活性剤とを混合する際には、0〜40℃の温度条件下で混合する必要があり、5〜30℃の温度条件下で混合することが好ましい。このような温度が0℃未満ではシリカ原料の反応が非常に遅くなるために粒径の均一性が低くなり、他方、40℃を超えるとシリカ原料の反応が速くなるために形状が球状である多孔体を高比率で得ることが困難となる。
【0083】
工程(A)における前記温度以外のその他の条件(反応時間等)は特に制限されず、具体的な反応条件は、用いるシリカ原料の種類等に基づいて決定することが好ましい。また、反応は攪拌状態で進行させることが好ましい。
【0084】
また、工程(A)においては、前記シリカ原料及び前記第一の界面活性剤を混合する際に、塩基性条件下で混合することが好ましい。シリカ原料は、一般に塩基性条件下においても酸性条件下においても反応が生じケイ素酸化物へと変化するが、工程(A)においては、シリカ原料と第一の界面活性剤の濃度は従来技術の方法に比較して低いものとなっているために、酸性条件下では反応がほとんど進行しない。したがって、工程(A)においては、塩基性条件下でシリカ原料を反応させることが好ましい。なお、シリカ原料は、酸性条件で反応させる場合よりも塩基性条件で反応させる場合の方がケイ素原子の反応点が増加し、耐湿性や耐熱性等の物性に優れたケイ素酸化物を得ることができるため、塩基性条件下で混合することはこの点においても有利である。
【0085】
上記第一の溶媒を塩基性にするためには、通常、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性物質を添加する。反応時の塩基性条件に関しては特に制限されないが、添加する塩基性物質のアルカリ当量を全シリカ原料中のケイ素原子モル数で除した値が0.1〜0.9となるようにすることが好ましく、0.2〜0.5となるようにすることがより好ましい。添加する塩基性物質のアルカリ当量を全シリカ原料中のケイ素原子モル数で除した値が0.1未満である場合は、収率が低下してしまう傾向があり、他方、0.9を超える場合は、多孔体の形成が困難となる傾向がある。
【0086】
工程(A)において、シリカ原料としてアルコキシシランを用いる場合は、例えば、以下のようにして第一の多孔体前駆体粒子を得ることができる。先ず、水とアルコール及び/又はエーテルの混合溶媒に対して第一の界面活性剤及び塩基性物質を添加して、第一の界面活性剤を含有する塩基性溶液を調製し、この溶液にアルコキシシランを添加する。添加されたアルコキシシランは溶液中で加水分解(又は、加水分解及び縮合)するために、添加後数秒〜数十分で白色粉末が析出する。この場合において、反応温度は0℃〜40℃である。また、溶液は攪拌することが好ましい。
【0087】
沈殿物が析出した後、0℃〜40℃(好ましくは5℃〜30℃)で1時間〜10日、溶液をさらに攪拌してシリカ原料の反応を進行させる。攪拌終了後、必要に応じて室温で一晩放置して系を安定化させ、得られた沈殿物を必要に応じてろ過及び洗浄することによって本発明にかかる第一の多孔体前駆体粒子が得られる。
【0088】
また、シリカ原料として、アルコキシシラン以外のシリカ原料(ケイ酸ナトリウム、層状シリケートまたはシリカ)を用いる場合は、シリカ原料を、第一の界面活性剤を含有する水とアルコール及び/又はエーテルの混合溶媒に添加し、シリカ原料中のケイ素原子と等モル程度になるように、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性物質をさらに添加して均一な溶液を調製する。その後、希薄酸溶液をシリカ原料中のケイ素原子に対して1/2〜3/4倍モル添加するという方法により本発明にかかる第一の多孔体前駆体粒子を作製することができる。塩基性物質は、シリカ原料中に既に形成されているSi−(O−Si)4結合の一部を切断する目的のために過剰分必要となるが、その過剰分を酸により中和する必要がある。酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸等の有機酸のいずれを用いてもよい。
【0089】
次に、工程(B)を説明する。このような工程(B)は、拡張剤(エキスパンダー)を含む第二の溶媒中で、前記第一の多孔体前駆体粒子中に前記拡張剤が導入されてなる第二の多孔体前駆体粒子を得る工程である。そして、このような工程(B)で行う水熱処理によって、細孔径の拡大が可能となる。
【0090】
このような拡張剤としては、下記一般式(2):
【0091】
【化6】
【0092】
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、zは17〜25の整数であって且つ前記第一の界面活性剤として選択されたアルキルアンモニウムハライドの式(1)中のmの値以上の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライド(第二の界面活性剤)、鎖状炭化水素、環状炭化水素及びヘテロ環化合物からなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0093】
このような一般式(2)におけるR1、R2及びR3並びにXについては、前述の一般式(1)におけるR1、R2及びR3並びにXと同義のものである。また、一般式(2)におけるzは17〜25の整数を示し、20〜25の整数でありことがより好ましく、21〜24の整数であることが更に好ましい。前記zが16以下であるアルキルアンモニウムハライドでは、工程(B)において、第一の多孔体前駆体粒子の細孔径を十分に拡大することが困難となる。他方、前記zが26以上のアルキルアンモニウムハライドでは、アルキル鎖が大きくなりすぎて、第一の界面活性剤と置換反応させてシリカ中に第二の界面活性剤を導入することが困難となる。
【0094】
また、前記一般式(2)で表されるアルキルアンモニウムハライド(第二の界面活性剤)の前記式(2)中のzの値が、前記第一の界面活性剤として選択されたアルキルアンモニウムハライドの式(1)中のmの値以上である必要がある。実際に選択されるzの値がmの値よりも小さいと、第二の界面活性剤のアルキル基の鎖長の方が第一の界面活性剤のアルキル基の鎖長よりも短くなってしまい、第一の界面活性剤の溶解度が第二の界面活性剤の溶解度よりも小さくなるため、水熱反応によっても第一の界面活性剤と第二の界面活性剤との置換反応が起こらず、細孔径の拡大が図れなくなる。
【0095】
このような一般式(2)で表されるアルキルアンモニウムハライドとしては、R1、R2、R3の全てがメチル基であり且つ炭素数21〜26の長鎖アルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムハライドであることが好ましく、中でもドコシルトリメチルアンモニウムハライド、テトラコシルトリメチルアンモニウムハライドがより好ましい。
【0096】
また、前記鎖状炭化水素としては、鎖状の炭化水素であればよく特に制限されないが、炭素数が6〜26(より好ましくは6〜12)の鎖状炭化水素が好ましい。前記鎖状炭化水素の炭素数が前記下限未満では、疎水性が小さくなり、第一の多孔体前駆体粒子の細孔内に導入され難くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶解性が低下する傾向にある。
【0097】
このような鎖状炭化水素としては、例えば、ヘキサン、メチルペンタン、ジメチルブタン、ヘプタン、メチルへキサン、ジメチルペンタン、トリメチルブタン、オクタン、メチルヘプタン、ジメチルへキサン、トリメチルペンタン、イソプロピルペンタン、ノナン、メチルオクタン、エチルヘプタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等が挙げられ、疎水性や溶解性等の観点から、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンが好ましい。
【0098】
また、前記環状炭化水素としては、その骨格に環状の炭化水素を含有するものであればよく特に制限されないが、環数が1〜3で炭素数が6〜20(より好ましくは6〜16)の環状炭化水素が好ましい。前記環状炭化水素の炭素数が前記下限未満では、疎水性が小さくなり、第一の多孔体前駆体粒子の細孔内に導入され難くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶解性が低下するため細孔径の拡大が図れなくなる傾向にある。また、前記環状炭化水素の環数が3を超えると溶解性が低下するため、細孔径の拡大が図れなくなる傾向にある。
【0099】
さらに、このような環状炭化水素としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、メチルベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、インデン、ナフタレン、テトラリン、アズレン、ビフェニレン、アセナフチレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン等が挙げられ、疎水性や溶解性の観点から、シクロヘキサン、ベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、ナフタレンが好ましい。
【0100】
また、前記ヘテロ環化合物としては、その骨格にヘテロ環を含有するものであればよく特に制限されないが、環数が1〜3で炭素数が4〜18(より好ましくは5〜12)でヘテロ原子が窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1種の原子であるヘテロ環化合物が好ましい。前記ヘテロ環化合物の炭素数が前記下限未満では、疎水性が小さくなり、第一の多孔体前駆体粒子の細孔内に導入され難くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶解性が低下するため、細孔径の拡大が図れなくなる傾向にある。また、前記ヘテロ環化合物の環数が3を超えると溶解性が低下するため、細孔径の拡大が図れなくなる傾向にある。
【0101】
このようなヘテロ環化合物としては、例えば、ピロール、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、カルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン等が挙げられ、疎水性や溶解性の観点から、ピリジン、キノリン、アクリジン、フェナントロリンが好ましい。
【0102】
工程(B)における第二の溶媒は、水とアルコールとの混合溶媒である。このようなアルコール又はエーテルは、前述の第一の溶媒に用いるものと同様のものである。
【0103】
このような工程(B)においては、前記第二の溶媒中のアルコールの含有量が40〜90容量%である必要があり、アルコールの含有量が50〜85容量%であることが好ましく、55〜75容量%であることがより好ましい。前記第二の溶媒中におけるアルコールの含有量が90容量%を超える場合には、第一の界面活性剤と第二の界面活性剤の置換反応や細孔内への鎖状炭化水素や環状炭化水素やヘテロ環化合物の導入が十分に進まなくなる。他方、前記第二の溶媒中におけるアルコールの含有量が40容量%未満の場合は、水の割合が多くなるため長いアルキル鎖を有するアルキルアンモニウムハライド、鎖状炭化水素、環状炭化水素、ヘテロ環化合物が第二の溶媒中に十分に溶解しなくなり、更に、高温の水によって、シリカネットワークの再構築が促進されて得られるシリカ多孔体の形状が変化してしまったり、多孔体前駆体粒子のシリカネットワークが崩壊したりする。
【0104】
更に、工程(B)においては、前記第二の溶媒中における前記拡張剤の濃度は、溶液の全容量を基準として0.05〜10mol/L(好ましくは0.05〜5mol/L、より好ましくは0.1〜1mol/L)とする必要がある。また、このような第二の溶媒中における前記拡張剤の濃度の上限値としては、溶液の全容量を基準として0.2mol/L以下であることが更に好ましく、0.18mol/L以下であることが特に好ましい。前記拡張剤の濃度が0.05mol/L未満の場合は、第一の界面活性剤と第二の界面活性剤の置換反応や細孔内への鎖状炭化水素や環状炭化水素やヘテロ環化合物の導入が十分に進行せず、得られる粒子の粒径や細孔構造の規則性が低下し、更には細孔径を十分に拡大することができない。他方、前記拡張剤の濃度が10mol/Lを超える場合は、粒径及び粒径分布の制御が困難となって得られる第二の多孔体前駆体粒子の粒径の均一性が低くなる。
【0105】
工程(B)において、前記第一の多孔体前駆体粒子を第二の溶媒中で混合する際には、60〜150℃の温度条件下で混合する必要があり、70〜120℃の温度条件下で混合することが好ましい。また、このような温度条件の上限の値としては100℃(更に好ましくは90℃、特に好ましくは80℃)以下であることがより好ましい。このような温度が60℃未満では多孔体前駆体粒子に含有されている第一の界面活性剤と第二の界面活性剤の置換反応や細孔内への鎖状炭化水素や環状炭化水素やヘテロ環化合物の導入が十分に進行せず、他方、150℃を超えると、粒径及び粒径分布の制御が困難となる。
【0106】
工程(B)における前記温度条件以外のその他の条件は特に制限されず、第一の多孔体前駆体粒子の種類等に基づいて適宜決定することが好ましい。また、反応は攪拌状態で進行させることが好ましい。
【0107】
工程(B)においては、例えば、以下のようにして第二の多孔体前駆体粒子を得ることができる。先ず、水とアルコールとの混合溶媒に対して第二の界面活性剤を添加して溶液を調製し、この溶液に第一の多孔体前駆体粒子を添加し、オートクレーブ等で60〜150℃に加熱し、その温度条件下において20時間〜14日程度、第一の界面活性剤と第二の界面活性剤との置換反応を進行させて第一の多孔体前駆体中に第二の界面活性剤が導入されてなる第二の多孔体前駆体粒子を得ることができる。
【0108】
次に、工程(C)について説明する。工程(C)は、前記第二の多孔体前駆体粒子に含まれる前記第一の界面活性剤及び前記拡張剤を除去して球状シリカ系メソ多孔体を得る工程である。このように界面活性剤及び拡張剤を除去する方法としては、例えば、焼成による方法、有機溶媒で処理する方法、イオン交換法等を挙げることができる。
【0109】
このような焼成による方法においては、多孔体前駆体粒子を300〜1000℃、好ましくは400〜700℃で加熱する。加熱時間は30分程度でもよいが、完全に界面活性剤を除去するには1時間以上加熱することが好ましい。また、焼成は空気中で行うことが可能であるが、多量の燃焼ガスが発生するため、窒素等の不活性ガスを導入して行ってもよい。また、有機溶媒で処理する場合は、用いた界面活性剤に対する溶解度が高い良溶媒中に多孔体前駆体粒子を浸漬して界面活性剤を抽出する。イオン交換法においては多孔体前駆体粒子を酸性溶液(少量の塩酸を含むエタノール等)に浸漬し、例えば50〜70℃で加熱しながら攪拌を行う。これにより、多孔体前駆体粒子の孔中に存在する界面活性剤が水素イオンでイオン交換される。なお、イオン交換により孔中には水素イオンが残存することになるが、水素イオンのイオン半径は十分小さいため孔の閉塞の問題は生じない。
【0110】
このような工程(A)〜(C)を含む前記球状シリカ系メソ多孔体を得る工程によって、平均粒径が0.01〜3μmである球状シリカ系メソ多孔体であって、しかも中心細孔直径が2.6nm以上という本発明にかかる球状シリカ系メソ多孔体が効率良くかつ確実に得ることができる。また、このような球状シリカ系メソ多孔体を得る工程によって、下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下の粒子からなる球状シリカ系メソ多孔体を効率良く得ることができる。なお、前記球状シリカ系メソ多孔体を得る工程においては、用いる界面活性剤が上記一般式で表される化学構造を有し、更に前述のような条件でシリカ原料を反応させるため、前記中心細孔直径を有する細孔が2次元ヘキサゴナルに配列したものが得られやすい。
【0111】
以上、本発明にかかる磁性材料前駆体粒子を得る工程について説明したが、このような磁性材料前駆体粒子を得る工程は、複数回繰り返し行ってもよい。
【0112】
[磁性材料を得る工程]
本発明の磁性材料の製造方法においては、次に、前記工程により得られた磁性材料前駆体粒子を還元して、前記球状シリカ系メソ多孔体の内部に強磁性ナノ粒子が担持されてなる磁性材料を得る。
【0113】
このような磁性材料前駆体粒子を還元する方法は特に限定されず、強磁性ナノ粒子前駆体中に1種類の金属イオンが含有されている場合には、その金属イオンを還元することができる方法であればよく、また、強磁性ナノ粒子前駆体中に2種類以上の金属イオンが共存する場合には、これらの金属からなる合金を形成することができる方法であればよい。また、このような還元方法としては、還元剤を用いて磁性材料前駆体粒子を還元する方法(いわゆる化学的還元法)又は、還元性ガス雰囲気下で加熱して磁性材料前駆体粒子を還元する方法(いわゆる焼成還元法)を採用することが好ましい。例えば、磁性材料の用途等により特定の有機基や有機官能基を導入したい場合においては、特定の有機基や有機官能基を導入された球状シリカ系メソ多孔体を用いて磁性材料前駆体粒子を得た後、その内部に導入されている有機基等を保持するために、上記化学的還元法を採用することが好ましい。
【0114】
このような化学的還元法で用いる還元剤としては、前記金属化合物に由来する金属イオンを還元することが可能な化合物であればよく、特に制限されず、公知の還元剤を適宜用いることができ、例えば、アルコール類、ポリアルコール類、H2、HCHO、S2O62−、H2PO2−、BH4−、N2H5+、H2PO3−等の化合物を挙げることができる。このような還元剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を併用して用いてもよい。
【0115】
また、前記化学的還元法においては、前記還元剤を含有する溶液に磁性材料前駆体粒子を浸漬し、攪拌を行う。このような溶液の溶媒としては特に制限されず、水又は有機溶媒(好ましくはアルコール等)を用いることができる。また、このような加熱の際の温度条件は特に制限されず、室温〜300℃程度とすることが好ましい。
【0116】
また、前記焼成還元法にいう還元性ガス雰囲気とは、還元性ガスを含有する雰囲気であればよく、特に制限されず、例えば、H2ガスを含有するArガス雰囲気や、H2ガスを含有するN2ガス雰囲気等が挙げられる。また、このような焼成還元法を採用する場合における加熱温度条件としては、前記球状シリカ系メソ多孔体に担持される強磁性ナノ粒子の種類により異なるものではあるが、350℃以上(より好ましくは350〜1000℃)とすることが好ましい。このような焼成の温度条件が350℃よりも低いと、規則結晶化が進行しないため、強磁性化されたナノ粒子を十分に形成できない傾向にある。また、加熱時間についても特に制限されず、担持させる強磁性ナノ粒子の種類に応じ、前記強磁性ナノ粒子の析出、担持させることが可能な範囲で適宜その時間を調整できる。
【0117】
また、このような還元工程において合成される強磁性ナノ粒子は、球状シリカ系メソ多孔体の細孔壁によって強磁性ナノ粒子の粒成長が抑制されるので、その大きさをナノメートルサイズに制御、維持しながら、その中心細孔直径の大きさに対応したものとなる。そして、本発明においては、合成する強磁性ナノ粒子の超常磁性限界に応じて、2.6nm以上の大きさの好適な中心細孔直径を有する球状シリカ系メソ多孔体を適宜用いることができるため、合成される強磁性ナノ粒子の粒径を容易に超常磁性限界以上のサイズに制御できる。そのため、合成された強磁性ナノ粒子は、前記球状シリカ系メソ多孔体に担持させた状態で強磁性を発現することが可能なものとなる。
【0118】
以上、本発明の磁性材料の製造方法について説明したが、本発明の磁性材料の製造方法においては、前記磁性材料前駆体粒子を得る工程と磁性材料を得る工程とを複数回繰り返し行ってもよく、これにより1種又は2種以上の強磁性ナノ粒子が導入された本発明の磁性材料を製造することが可能となる。
【実施例】
【0119】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0120】
(合成例1:第一の多孔体前駆体粒子の合成)
先ず、水946.32g及びメタノール1440gからなる混合溶媒に対して、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド(界面活性剤)11.49g(0.033mol)及び1mol/Lの水酸化ナトリウム13.68g(0.014mol)を添加し、界面活性剤の導入された混合液を得た。次に、得られた混合液に、テトラメトキシシラン(シリカ原料)7.92g(0.052mol)を添加して撹拌を続けたところ、テトラメトキシシランは完全に溶解し、約80秒後に白色粉末が析出してきた。その後、前記混合液を室温で更に8時間撹拌して、一晩(14時間)放置した後に濾過し、脱イオン水による洗浄と濾過を2回繰り返した後、熱風乾燥機で3日間乾燥し、第一の多孔体前駆体粒子を得た。
【0121】
(合成例2:球状シリカ系メソ多孔体の合成)
合成例1で得られた第一の多孔体前駆体粒子を用い、第一の多孔体前駆体粒子6.00g及びメシチレン(拡張剤)13.5gを、水180mL及びエタノール180mLからなる混合溶媒に添加し、オートクレーブで80℃の温度条件で7日間水熱処理を行い、第二の多孔体前駆体粒子を得た。次いで、得られた第二の多孔体前駆体粒子を濾過により回収し、熱風乾燥機で3日間乾燥した後、550℃の温度条件で6時間焼成することによって界面活性剤を含む有機成分を除去し、球状シリカ系メソ多孔体を得た。
【0122】
このようにして得られた球状シリカ系メソ多孔体に対して、X線回折装置(リガク社製の商品名「RINT2200」)を用いて、X線回折(XRD)測定を行ったところ、1°付近の低角側にピークが認められ、得られた球状シリカ系メソ多孔体が規則性のハニカム多孔体であることが確認された。また、前記球状シリカ系メソ多孔体のd(100)ピーク位置から求めたd(100)面間隔は6.95nmであった。更に、窒素吸脱着等温線から求めた前記球状シリカ系メソ多孔体の中心細孔直径は5.46nmであった。また、走査電子顕微鏡(SEM)観察から、粒子径の均一な球状の粒子が得られていることが確認され、任意の50個の粒子から求めた平均粒径は0.912μm、単分散度は4.3%であることが確認された。
【0123】
(合成例3:球状シリカ系メソ多孔体の合成)
メシチレン13.5gの代わりにヘキサン13.5gを用いた以外は、合成例2と同様にして球状シリカ系メソ多孔体(中心細孔直径4.55nm)を得た。
【0124】
(合成例4:球状メソポーラスシリカの合成)
オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド(界面活性剤)の代わりにテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド(界面活性剤)を用いた以外は、合成例1と同様にして多孔体前駆体粒子を得た。次に、前記多孔体前駆体粒子を550℃の温度条件で6時間焼成することによって界面活性剤を含む有機成分を除去し、球状メソポーラスシリカ(中心細孔直径1.88nm)を得た。
【0125】
(合成例5:球状メソポーラスシリカの合成)
合成例1で得られた第一の多孔体前駆体粒子を用い、第一の多孔体前駆体粒子を550℃の温度条件で6時間焼成することによって界面活性剤を含む有機成分を除去し、球状メソポーラスシリカ(中心細孔直径2.39nm)を得た。
【0126】
(実施例1)
合成例2で得られた球状シリカ系メソ多孔体(中心細孔直径5.46nm)を用い、前記球状シリカ系メソ多孔体1.20gに、40mmol/LのH2PtCl6水溶液47.6mL及び40mmol/LのFe3(NO3)3水溶液47.6mLからなる強磁性ナノ粒子前駆体溶液を含浸して、磁性材料の前駆体粒子を得た。次に、前記前駆体粒子からロータリーエバポレータで水を除去した後、これを減圧下45℃の温度条件で1日乾燥させた。次いで、乾燥後の前記前駆体粒子を還元ガス雰囲気(窒素ガス95容量%、水素ガス5容量%)下、400℃の温度条件で2時間焼成した後、更に800℃の温度条件で4時間焼成し、球状シリカ系メソ多孔体の内部にFePtのナノ粒子が担持された磁性材料を得た。
【0127】
<実施例1で得られた磁性材料の特性の評価>
実施例1で得られた磁性材料に対して、X線回折装置(リガク社製の商品名「RINT2200」)を用いてXRD測定を行った。このようにして得られたX線回折パターンを図1に示す。図1に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた磁性材料においては、fct−FePtに帰属されるブロードな回折パターンが確認された。また、粒子サイズをd111回折の半値幅からシェラーの式により求めたところ、実施例1で得られた磁性材料の粒子サイズは4.24nmであった。
【0128】
また、実施例1で得られた磁性材料の磁化率測定を行った。このような磁化率測定は、測定機として振動試料型磁力計(東英工業社製の商品名「VSM−3S−15」を用いて行った。得られた磁化曲線を図2に示す。このような磁化率測定の結果(図2)からナノ粒子の保持力を求めたところ、実施例1で得られた磁性材料においては、FePtの保磁力は3.33kOeであることが確認された。
【0129】
さらに、実施例1で得られた磁性材料の窒素吸着等温線を求めた。得られた結果を図3に示す。図3に示す窒素吸着等温線から求めた磁性材料の細孔容量は0.707cm3/gであった。このような結果から、得られた磁性材料においては、前記多孔体の内部にFePt導入した後においても十分な空間が保持されていることが確認された。
【0130】
また、実施例1で得られた磁性材料に対して電子顕微鏡による測定を行った。このような測定の結果、得られた走査電子顕微鏡(SEM)写真を図4に示し、透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図5に示す。図4に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた磁性材料においては、粒子表面上に強磁性ナノ粒子(FePt)は析出していないことが確認された。また、図5に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた磁性材料においては、前記球状シリカ系メソ多孔体の細孔内にナノ粒子が導入されていることが確認された。このような結果から、実施例1で得られた磁性材料においては、前記球状シリカ系メソ多孔体の細孔内に強磁性のナノ粒子が担持されていることが分かった。
【0131】
(実施例2)
合成例3で得られた球状シリカ系メソ多孔体(細孔径4.55nm)を用い、前記球状シリカ系メソ多孔体1.20gに、20mmol/LのH2PtCl6水溶液95.1mL及び20mmol/LのFe3(NO3)3水溶液95.1mLからなる強磁性ナノ粒子前駆体溶液を含浸して磁性材料の前駆体粒子を得た。次に、前記前駆体粒子からロータリーエバポレータで水を除去した後、これを減圧下45℃の温度条件で1日乾燥させた。次いで、乾燥後の前記前駆体粒子を還元ガス雰囲気下、800℃の温度条件で4時間焼成し、球状シリカ系メソ多孔体の内部にFePtのナノ粒子が担持された磁性材料を得た。
【0132】
<実施例2で得られた磁性材料の特性の評価>
実施例2で得られた磁性材料に対して、実施例1で得られた磁性材料の特性の評価方法と同様の方法を採用してXRD測定、磁化率測定、窒素吸着等温線の測定及び電子顕微鏡による測定を行った。実施例2で得られた磁性材料のX線回折パターンを図6に示し、磁化曲線を図7に示し、窒素吸着等温線を図8に示す。また、実施例2で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真を図9に示し、透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図10に示す。
【0133】
図6に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた磁性材料においては、fct−FePtに帰属されるブロードな回折パターンが確認された。また、粒子サイズをd111回折の半値幅からシェラーの式により求めたところ、実施例2で得られた磁性材料の粒子サイズは4.02nmであった。また、磁化率測定の結果(図7)からナノ粒子の保磁力を求めたところ、実施例2で得られた磁性材料においては、FePtの保磁力は1.82kOeであることが確認された。さらに、図8に示す窒素吸着等温線から求めた細孔容量は0.418cm3/gであった。このような結果から、得られた磁性材料においては、前記多孔体の内部にFePtを導入した後においても十分な空間が保持されていることが確認された。
【0134】
また、図9に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた磁性材料においては、粒子表面上に強磁性ナノ粒子(FePt)は析出していないことが確認された。また、図10に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた磁性材料においては、前記球状シリカ系メソ多孔体の細孔内にナノ粒子が導入されていることが確認された。このような結果から、実施例2で得られた磁性材料においては、前記球状シリカ系メソ多孔体の細孔内に強磁性のナノ粒子が担持されていることが分かった。
【0135】
(実施例3)
合成例2で得られた球状シリカ系メソ多孔体(細孔径5.46nm)を用い、前記球状シリカ系メソ多孔体1.20gに40mmol/LのH2PtCl6水溶液47.6mL及び40mmol/LのCoCl2水溶液47.6mLからなる強磁性ナノ粒子前駆体溶液を含浸して、磁性材料の前駆体粒子を得た。次に、前記前駆体粒子からロータリーエバポレータで水を除去した後、これを減圧下45℃の温度条件で1日乾燥した。次いで、乾燥後の前駆体粒子を還元ガス雰囲気下、400℃の温度条件で2時間焼成した後、更に800℃の温度条件で4時間焼成し、球状シリカ系メソ多孔体の内部にCoPtのナノ粒子が担持された磁性材料を得た。
【0136】
<実施例3で得られた磁性材料の特性の評価>
実施例3で得られた磁性材料に対して、実施例1で得られた磁性材料の特性の評価方法と同様の方法を採用してXRD測定、磁化率測定、窒素吸着等温線の測定及び電子顕微鏡による測定を行った。実施例3で得られた磁性材料のX線回折パターンを図11に示し、窒素吸着等温線を図12に示す。また、実施例3で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真を図13に示す。
【0137】
図11に示す結果からも明らかなように、実施例3で得られた磁性材料においては、CoPtに帰属されるブロードな回折パターンが確認された。また、粒子サイズをd111回折の半値幅からシェラーの式により求めたところ、実施例3で得られた磁性材料の粒子サイズは4.84nmであった。さらに、図12に示す窒素吸着等温線から求めた細孔容量は0.68cm3/gであった。このような結果から、得られた磁性材料においては、前記多孔体の内部にCoPtを導入した後においても十分な空間が保持されていることが確認された。
【0138】
また、図13に示す結果からも明らかなように、実施例3で得られた磁性材料においては、粒子表面上に強磁性ナノ粒子(CoPt)は析出していないことが確認された。また、TEM観察の結果から、実施例3で得られた磁性材料においては、前記球状シリカ系メソ多孔体の細孔内にナノ粒子が導入されていることが確認された。このような結果から、実施例3で得られた磁性材料においては、前記球状シリカ系メソ多孔体の細孔内に強磁性のナノ粒子が担持されていることが分かった。
【0139】
(比較例1)
合成例4で得られた球状メソポーラスシリカ(細孔径1.88nm)を用い、前記球状メソポーラスシリカ1.20gに、40mmol/LのH2PtCl6水溶液47.6mL及び40mmol/LのFe3(NO3)3水溶液47.6mLからなる強磁性ナノ粒子前駆体溶液を含浸して、磁性材料の前駆体粒子を得た。次に、前記前駆体粒子からロータリーエバポレータで水を除去した後、これを減圧下45℃の温度条件で1日乾燥した。次いで、乾燥後の前記前駆体粒子を還元ガス雰囲気下、400℃の温度条件で2時間焼成した後、更に800℃の温度条件で4時間焼成し、球状メソポーラスシリカの内部にFePtのナノ粒子が担持された磁性材料を得た。
【0140】
<比較例1で得られた磁性材料の特性の評価>
比較例1で得られた磁性材料に対して、実施例1で得られた磁性材料の特性の評価方法と同様の方法を採用してXRD測定、磁化率測定、窒素吸着等温線の測定及び電子顕微鏡による測定を行った。比較例1で得られた磁性材料のX線回折パターンを図14に示し、窒素吸着等温線を図15に示す。また、比較例1で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真を図16に示す。
【0141】
図14に示す結果からも明らかなように、比較例1で得られた磁性材料においては、fct−FePtに帰属されるブロードな回折パターンが確認された。なお、このような回折パターンには、同時に鋭い回折ピークも確認され、比較例1で得られた磁性材料において粒成長したFePt粒子の中に強磁性成分が含まれている可能性が示唆された。しかしながら、比較例1で用いた球状メソポーラスシリカの中心細孔直径は1.88nmであるため、細孔内に担持されたFePtのナノ粒子は超常磁性限界(FePtの超常磁性限界粒径は3.3〜2.8nm)よりも小さな粒径のものとなる。従って、図14で確認された鋭いピークは、メソポーラスシリカの外表面に析出したFePtのナノ粒子に由来するものであると認められる。
【0142】
また、図15に示す窒素吸着等温線から求めた細孔容量は0.342cm3/gであった。さらに、図16に示す結果からも明らかなように、比較例1で得られた磁性材料においては、球状メソポーラスシリカの表面上にナノ粒子が析出していることが確認された。このような結果から、中心細孔直径が2.6nm未満の球状メソポーラスシリカ(細孔径1.88nm)を用いた場合においては、球状メソポーラスシリカの外表面にも磁性ナノ粒子が析出してしまい、球状メソポーラスシリカの内部に強磁性ナノ粒子前駆体を効率よく含浸できないことが確認された。
【0143】
(比較例2)
合成例5で得られた球状メソポーラスシリカ(細孔径2.39nm)を用い、前記球状メソポーラスシリカ1.20gに、40mmol/LのH2PtCl6水溶液47.6mL及び40mmol/LのFe3(NO3)3水溶液47.6mLからなる強磁性ナノ粒子前駆体溶液を含浸して、磁性材料の前駆体粒子を得た。次に、前記前駆体粒子からロータリーエバポレータで水を除去した後、これを減圧下45℃の温度条件で1日乾燥した。次いで、乾燥後の前記前駆体粒子を還元ガス雰囲気下、400℃の温度条件で2時間焼成した後、更に800℃の温度条件で4時間焼成し、球状メソポーラスシリカの内部にFePtのナノ粒子が担持された磁性材料を得た。
【0144】
<比較例2で得られた磁性材料の特性の評価>
比較例2で得られた磁性材料に対して、実施例1で得られた磁性材料の特性の評価方法と同様の方法を採用してXRD測定、磁化率測定、窒素吸着等温線の測定及び電子顕微鏡による測定を行った。比較例2で得られた磁性材料のX線回折パターンを図17に示し、窒素吸着等温線を図18に示す。また、比較例2で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真を図19に示す。
【0145】
図17に示す結果からも明らかなように、比較例2で得られた磁性材料においては、fct−FePtに帰属されるブロードな回折パターンが確認された。なお、このような回折パターンには、同時に鋭い回折ピークも確認された。このような結果から、比較例2で得られた磁性材料において粒成長したFePt粒子の中に強磁性成分が含まれている可能性が示唆された。しかしながら、比較例2で用いた球状メソポーラスシリカの中心細孔直径は2.39nmであるため、細孔内に担持されたFePtのナノ粒子は超常磁性限界(FePtの超常磁性限界粒径は3.3〜2.8nm)よりも小さな粒径のものとなる。従って、図17で確認された鋭いピークは、メソポーラスシリカの外表面に析出したFePtのナノ粒子に由来するものであると認められる。
【0146】
また、図18に示す窒素吸着等温線から求めた細孔容量は0.479cm3/gであった。また、図19に示す結果からも明らかなように、比較例2で得られた磁性材料においては、球状メソポーラスシリカの表面上にナノ粒子が析出していることが確認された。このような結果から、中心細孔直径が2.6nm未満の球状メソポーラスシリカ(細孔径2.39nm)を用いた場合においては、球状メソポーラスシリカの外表面にも磁性ナノ粒子が析出してしまい、球状メソポーラスシリカの内部に強磁性ナノ粒子前駆体を効率よく含浸できないことが確認された。
【0147】
(比較例3)
合成例4で得られた球状メソポーラスシリカ(細孔径1.88nm)を用い、前記球状メソポーラスシリカ1.20gに、40mmol/LのH2PtCl6水溶液47.6mL及び40mmol/LのCoCl2水溶液47.6mLからなる強磁性ナノ粒子前駆体溶液を含浸して、磁性材料の前駆体粒子を得た。次に、前記前駆体粒子からロータリーエバポレータで水を除去した後、これを減圧下45℃の温度条件で1日乾燥した。次いで、乾燥後の前記前駆体粒子を還元ガス雰囲気下、400℃の温度条件で2時間焼成した後、更に800℃の温度条件で4時間焼成し、球状メソポーラスシリカの内部にCoPtのナノ粒子が担持された磁性材料を得た。
【0148】
<比較例3で得られた磁性材料の特性の評価>
比較例3で得られた磁性材料に対して、実施例1で得られた磁性材料の特性の評価方法と同様の方法を採用してXRD測定、磁化率測定、窒素吸着等温線の測定及び電子顕微鏡による測定を行った。比較例3で得られた磁性材料のX線回折パターンを図20に示し、窒素吸着等温線を図21に示す。また、比較例3で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真を図22に示す。
【0149】
図20に示す結果からも明らかなように、比較例3で得られた磁性材料においては、CoPtに帰属されるブロードな回折パターンが確認された。なお、このような回折パターンには、同時に鋭い回折ピークも確認された。このような結果から、比較例3で得られた磁性材料において粒成長したCoPt粒子が、強磁性成分である可能性が示唆された。しかしながら、比較例3で用いた球状メソポーラスシリカの中心細孔直径は1.88nmであるため、細孔内に担持されたCoPtのナノ粒子は超常磁性限界(CoPtの超常磁性限界粒径は3.6nm)よりも小さな粒径のものである。従って、図20で確認された鋭いピークは、メソポーラスシリカの外表面に析出したFePtのナノ粒子に由来するものであると認められる。
【0150】
また、図21に示す窒素吸着等温線から求めた細孔容量は0.26cm3/gであった。また、図22に示す結果からも明らかなように、比較例3で得られた磁性材料においては、球状メソポーラスシリカの表面上にナノ粒子が析出していることが確認された。このような結果から、中心細孔直径が2.6nm未満の球状メソポーラスシリカ(細孔径1.88nm)を用いた場合においては、球状メソポーラスシリカの外表面にも磁性ナノ粒子が析出してしまい、球状メソポーラスシリカの内部に強磁性ナノ粒子前駆体を効率よく含浸できないことが確認された。
【0151】
上述のような実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた磁性材料の特性評価の結果から、本発明の磁性材料の製造方法を採用した場合(実施例1〜3)においては、用いる球状シリカ系メソ多孔体の中心細孔直径が2.6nm以上であることから、球状シリカ系メソ多孔体の内部に、強磁性を有するナノ粒子を担持させることができ、効率よく本発明の磁性材料を製造できることが確認された。これに対して、中心細孔直径が2.6nm未満の球状メソポーラスシリカを用いて磁性材料を製造した場合(比較例1〜3)においては、そのメソポーラスシリカの内部に強磁性を有するナノ粒子を担持することはできず、更には外表面にナノ粒子が析出してしまうことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0152】
以上説明したように、本発明によれば、球状シリカ系メソ多孔体の内部に磁性ナノ粒子を担持させた磁性材料であって、前記磁性ナノ粒子に強磁性を発現させることが可能な磁性材料及びその磁性材料を効率よく製造することが可能な磁性材料の製造方法を提供することが可能となる。
【0153】
したがって、本発明の磁性材料は、球状シリカ系メソ多孔体の内部に担持されたナノ粒子が強磁性を有するものであるため、磁性フォトニック結晶、磁気温熱療法、ドラッグデリバリーシステム等の各種用途に用いる磁性材料として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】実施例1で得られた磁性材料のX線回折パターンを示すグラフである。
【図2】実施例1で得られた磁性材料の磁化曲線を示すグラフである。
【図3】実施例1で得られた磁性材料の窒素吸着等温線を示すグラフである。
【図4】実施例1で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5】実施例1で得られた磁性材料の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図6】実施例2で得られた磁性材料のX線回折パターンを示すグラフである。
【図7】実施例2で得られた磁性材料の磁化曲線を示すグラフである。
【図8】実施例2で得られた磁性材料の窒素吸着等温線を示すグラフである。
【図9】実施例2で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図10】実施例2で得られた磁性材料の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図11】実施例3で得られた磁性材料のX線回折パターンを示すグラフである。
【図12】実施例3で得られた磁性材料の窒素吸着等温線を示すグラフである。
【図13】実施例3で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図14】比較例1で得られた磁性材料のX線回折パターンを示すグラフである。
【図15】比較例1で得られた磁性材料の窒素吸着等温線を示すグラフである。
【図16】比較例1で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図17】比較例2で得られた磁性材料のX線回折パターンを示すグラフである。
【図18】比較例2で得られた磁性材料の窒素吸着等温線を示すグラフである。
【図19】比較例2で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図20】比較例3で得られた磁性材料のX線回折パターンを示すグラフである。
【図21】比較例3で得られた磁性材料の窒素吸着等温線を示すグラフである。
【図22】比較例3で得られた磁性材料の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体と、
該球状シリカ系メソ多孔体の内部に担持された強磁性ナノ粒子と、
を備えることを特徴とする磁性材料。
【請求項2】
前記強磁性ナノ粒子が、強磁性を有する金属の単体、CuAu型強磁性規則合金、Cu3Au型強磁性規則合金及び希土類系強磁性合金からなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1に記載の磁性材料。
【請求項3】
前記強磁性ナノ粒子が、強磁性体が超常磁性体に変化する超常磁性限界以上の粒径を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁性材料。
【請求項4】
前記球状シリカ系メソ多孔体が、下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下の粒子からなることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の磁性材料。
【請求項5】
平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体に強磁性ナノ粒子前駆体を含浸させて、前記球状シリカ系メソ多孔体中に前記強磁性ナノ粒子前駆体が導入されてなる磁性材料前駆体粒子を得る工程と、
前記磁性材料前駆体粒子を還元して、前記球状シリカ系メソ多孔体の内部に強磁性ナノ粒子が担持されてなる磁性材料を得る工程と、
を含むことを特徴とする磁性材料の製造方法。
【請求項6】
前記強磁性ナノ粒子前駆体が、水、アルコール、エーテル、アセトン及びスチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する溶媒と、前記強磁性ナノ粒子の原料となる金属化合物とを含有するものであることを特徴とする請求項5に記載の磁性材料の製造方法。
【請求項7】
前記磁性材料前駆体粒子を還元する工程が、還元剤を用いて前記磁性材料前駆体粒子を還元する工程であることを特徴とする請求項5又は6に記載の磁性材料の製造方法。
【請求項8】
前記磁性材料前駆体粒子を還元する工程が、還元性ガス雰囲気下、350℃以上の温度条件で加熱焼成して前記磁性材料前駆体粒子を還元する工程であることを特徴とする請求項5又は6に記載の磁性材料の製造方法。
【請求項9】
第一の溶媒中でシリカ原料と第一の界面活性剤とを混合し、シリカ中に前記第一の界面活性剤が導入されてなる第一の多孔体前駆体粒子を得る工程(A)と、
拡張剤を含む第二の溶媒中で、前記第一の多孔体前駆体粒子中に前記拡張剤が導入されてなる第二の多孔体前駆体粒子を得る工程(B)と、
前記第二の多孔体前駆体粒子に含まれる前記第一の界面活性剤及び前記拡張剤を除去して球状シリカ系メソ多孔体を得る工程(C)と、
を含み、且つ、
工程(A)において、前記第一の界面活性剤として下記一般式(1):
【化1】
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは7〜25の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライドを用い、前記第一の溶媒として水と、アルコール及び/又はエーテルとの混合溶媒を用い、前記第一の溶媒中におけるアルコール及び/又はエーテルの含有量が85容量%以下であり、前記第一の溶媒中における前記第一の界面活性剤の濃度が0.0001〜0.03mol/Lであり、前記第一の溶媒中における前記シリカ原料の濃度がSi濃度換算で0.0005〜0.03mol/Lであり、且つ、前記シリカ原料と前記第一の界面活性剤とを0〜40℃の温度条件下で混合すること、及び、
工程(B)において、前記拡張剤として下記一般式(2):
【化2】
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、zは17〜25の整数であって且つ前記第一の界面活性剤として選択されたアルキルアンモニウムハライドの式(1)中のmの値以上の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライド、鎖状炭化水素、環状炭化水素及びヘテロ環化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用い、前記第二の溶媒として水とアルコールとの混合溶媒を用い、前記第二の溶媒中におけるアルコールの含有量が40〜90容量%であり、前記第二の溶媒中における前記拡張剤の濃度が0.05〜10mol/Lであり、且つ、前記第二の溶媒中で前記第一の多孔体前駆体粒子を60〜150℃の温度条件下で混合すること、
という条件を満たす、前記球状シリカ系メソ多孔体を得る工程を更に含むことを特徴とする請求項5〜8のうちのいずれか一項に記載の磁性材料の製造方法。
【請求項10】
前記球状シリカ系メソ多孔体が、下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下の粒子からなることを特徴とする請求項5〜9のうちのいずれか一項に記載の磁性材料の製造方法。
【請求項1】
平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体と、
該球状シリカ系メソ多孔体の内部に担持された強磁性ナノ粒子と、
を備えることを特徴とする磁性材料。
【請求項2】
前記強磁性ナノ粒子が、強磁性を有する金属の単体、CuAu型強磁性規則合金、Cu3Au型強磁性規則合金及び希土類系強磁性合金からなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1に記載の磁性材料。
【請求項3】
前記強磁性ナノ粒子が、強磁性体が超常磁性体に変化する超常磁性限界以上の粒径を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁性材料。
【請求項4】
前記球状シリカ系メソ多孔体が、下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下の粒子からなることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の磁性材料。
【請求項5】
平均粒径が0.01〜3μmであり且つ中心細孔直径が2.6nm以上である球状シリカ系メソ多孔体に強磁性ナノ粒子前駆体を含浸させて、前記球状シリカ系メソ多孔体中に前記強磁性ナノ粒子前駆体が導入されてなる磁性材料前駆体粒子を得る工程と、
前記磁性材料前駆体粒子を還元して、前記球状シリカ系メソ多孔体の内部に強磁性ナノ粒子が担持されてなる磁性材料を得る工程と、
を含むことを特徴とする磁性材料の製造方法。
【請求項6】
前記強磁性ナノ粒子前駆体が、水、アルコール、エーテル、アセトン及びスチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する溶媒と、前記強磁性ナノ粒子の原料となる金属化合物とを含有するものであることを特徴とする請求項5に記載の磁性材料の製造方法。
【請求項7】
前記磁性材料前駆体粒子を還元する工程が、還元剤を用いて前記磁性材料前駆体粒子を還元する工程であることを特徴とする請求項5又は6に記載の磁性材料の製造方法。
【請求項8】
前記磁性材料前駆体粒子を還元する工程が、還元性ガス雰囲気下、350℃以上の温度条件で加熱焼成して前記磁性材料前駆体粒子を還元する工程であることを特徴とする請求項5又は6に記載の磁性材料の製造方法。
【請求項9】
第一の溶媒中でシリカ原料と第一の界面活性剤とを混合し、シリカ中に前記第一の界面活性剤が導入されてなる第一の多孔体前駆体粒子を得る工程(A)と、
拡張剤を含む第二の溶媒中で、前記第一の多孔体前駆体粒子中に前記拡張剤が導入されてなる第二の多孔体前駆体粒子を得る工程(B)と、
前記第二の多孔体前駆体粒子に含まれる前記第一の界面活性剤及び前記拡張剤を除去して球状シリカ系メソ多孔体を得る工程(C)と、
を含み、且つ、
工程(A)において、前記第一の界面活性剤として下記一般式(1):
【化1】
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは7〜25の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライドを用い、前記第一の溶媒として水と、アルコール及び/又はエーテルとの混合溶媒を用い、前記第一の溶媒中におけるアルコール及び/又はエーテルの含有量が85容量%以下であり、前記第一の溶媒中における前記第一の界面活性剤の濃度が0.0001〜0.03mol/Lであり、前記第一の溶媒中における前記シリカ原料の濃度がSi濃度換算で0.0005〜0.03mol/Lであり、且つ、前記シリカ原料と前記第一の界面活性剤とを0〜40℃の温度条件下で混合すること、及び、
工程(B)において、前記拡張剤として下記一般式(2):
【化2】
[式中、R1、R2及びR3は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、zは17〜25の整数であって且つ前記第一の界面活性剤として選択されたアルキルアンモニウムハライドの式(1)中のmの値以上の整数を示す。]
で表されるアルキルアンモニウムハライド、鎖状炭化水素、環状炭化水素及びヘテロ環化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用い、前記第二の溶媒として水とアルコールとの混合溶媒を用い、前記第二の溶媒中におけるアルコールの含有量が40〜90容量%であり、前記第二の溶媒中における前記拡張剤の濃度が0.05〜10mol/Lであり、且つ、前記第二の溶媒中で前記第一の多孔体前駆体粒子を60〜150℃の温度条件下で混合すること、
という条件を満たす、前記球状シリカ系メソ多孔体を得る工程を更に含むことを特徴とする請求項5〜8のうちのいずれか一項に記載の磁性材料の製造方法。
【請求項10】
前記球状シリカ系メソ多孔体が、下記式(1):
[単分散度(単位:%)]=([粒径の標準偏差]/[平均粒径])×100 (1)
で表される単分散度が10%以下の粒子からなることを特徴とする請求項5〜9のうちのいずれか一項に記載の磁性材料の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図13】
【図16】
【図19】
【図22】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図13】
【図16】
【図19】
【図22】
【公開番号】特開2008−150696(P2008−150696A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342701(P2006−342701)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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