説明

磁気力型駆動装置、光走査装置、及び画像表示装置

【課題】可動部の振れ角が大きな磁気力型駆動装置を提供する。
【解決手段】本発明の磁気力型駆動装置は、非磁性材料で形成された可動板と、前記可動板に固定され、前記可動板の主面に直交する方向に磁化した永久磁石と、を備える可動部と、前記可動部の周縁を囲むように形成された枠体と、前記可動板と前記枠体とを接続し、前記可動部を、前記枠体に対し、前記可動板の主面と略平行な軸の回りに回転可能に支持する一対の梁部と、前記永久磁石の近傍に、前記梁部の軸方向と略直交する方向に前記永久磁石を挟んで互いに対向する第1及び第2の端部を有するヨークと、導通によって前記第1及び第2の端部に互いに異なる磁極が現れるように、前記ヨークに巻回されているコイルと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気力型駆動装置、光走査装置、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投射型ディスプレー等の画像表示装置には、一般的に、光を走査する光走査装置が用いられている。このような光走査装置には、モータ駆動のポリゴンミラーやガルバノミラー等が用いられてきた。
【0003】
一方、近年の微細加工技術の進歩に伴い、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を応用した光走査装置が大きな発展を遂げている。その中で、梁部を回転軸として光走査ミラーを往復振動させることにより光を走査する光走査装置が注目を集めている。このような光走査ミラーは、従来のモータ駆動のポリゴンミラー等と比較して、構造が簡単であり、かつ半導体プロセスによる一体形成が可能であることから、小型化や低コスト化が可能であり、また小型化により高速化が可能である等の利点を有する。
【0004】
MEMS技術による光走査ミラーは、振れ角を大きくするために、一般的に、構造体の共振周波数と駆動周波数とを一致させて駆動される(共振駆動)。
【0005】
光走査ミラーの共振周波数frは、梁部のねじり弾性係数をkとし、光走査ミラーの慣性モーメントをImとすると、以下の式(1)で与えられる。
【0006】
fr=1/(2π)・(k/Im)1/2 (1)
共振駆動における光走査ミラーの振れ角θは、光走査ミラーに加わる駆動力をTとすると、以下の式(2)で与えられる。
【0007】
θ=QT/k (2)
式(2)において、Qは系の品質係数であり、空気中での典型的な値は100程度、真空中での典型的な値は1000程度である。
【0008】
従って、共振駆動における光走査ミラーは、比較的小さな駆動力でも大きく振れさせることが可能である。
【0009】
一方、ある種の光走査装置では、上述の光走査ミラーは、構造体の共振周波数と駆動周波数とを一致させずに駆動される(非共振駆動)。
【0010】
非共振駆動における光走査ミラーの振れ角θは、以下の式(3)で与えられる。
【0011】
θ=T/k (3)
式(3)によれば、品質係数Qを援用できないため、式(2)と比較して、光走査ミラーの振れ角θが小さい。そこで、光走査ミラーの振れ角θを大きくするためには、駆動力Tを大きくするか、又は梁部のねじり弾性係数kを小さくする必要がある。しかし、式(1)から導かれるように、梁部のねじり弾性係数kを小さくすると、光走査ミラーの共振周波数frが低下する。そして、光走査ミラーの共振周波数frが非共振駆動における駆動周波数(通常60Hz)と接近することにより、光走査ミラーの振動波形に共振モードが乗ってしまう場合がある。これを避けるためには、典型的には、光走査ミラーの共振周波数frを1kHz程度以上に設定する必要がある。従って、光走査ミラーの振れ角θを大きくするためには、梁部のねじり弾性係数kを小さくすることよりも、駆動力Tを大きくすることが望ましい。
【0012】
このような非共振タイプの光走査装置として、磁気力型駆動装置を用いた光走査装置が知られている。
【0013】
例えば、特許文献1(特開2007−014130号公報)及び特許文献2(特開2008−122955号公報)には、ムービングコイル型(MC型)磁気力型駆動装置を用いた光走査装置が開示されている。これらの光走査装置は、複数の永久磁石の間に配置された光走査ミラーにコイルを搭載し、このコイルに電流を流すことによって生じるローレンツ力を利用して、光走査ミラーを駆動する。
【0014】
また、特許文献3(特開2005−169553号公報)には、ムービングマグネット型(MM型;可動磁石型)磁気力型駆動装置を用いた光走査装置が開示されている。この光走査装置は、光走査ミラーに永久磁石を搭載し、光走査ミラーの近傍に配置されたコイルに電流を流すことによって生じる磁気的相互作用を利用して、光走査ミラーを駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−014130号公報
【特許文献2】特開2008−122955号公報
【特許文献3】特開2005−169553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1及び2に記載の光走査装置では、光走査ミラーに加わる駆動力を大きくするためには、コイルに流す電流を大きくするか、あるいはコイルの巻数を大きくする必要がある。しかし、コイルに流す電流を大きくすると、コイルの発熱により、光走査ミラーの光学的な性能が劣化するという問題がある。また、コイルの巻数には光走査ミラーのサイズに応じた限界があり、例えば、1mm角程度のミラーに100ターン程度以上のコイルを搭載することは難しい。そのため、光走査ミラーに加わる駆動力を大きくすることは難しい。
【0017】
また、特許文献3に記載の光走査装置では、光走査ミラーが傾斜した状態でも永久磁石に十分な磁場を印加できるように、永久磁石の下方に配置された2つのコイルを傾斜させて配置する等の工夫がなされている。しかしながら、2つのコイルの端部の間隔が大きいために、永久磁石に印加される磁場を大きくすることは難しく、例えば100[Oe]程度以上とすることは難しい。そのため、光走査ミラーに加わる駆動力を大きくすることは難しい。
【0018】
すなわち、特許文献1ないし3に記載の磁気力型駆動装置では、駆動力を増大し、可動部の振れ角を増大することが困難であった。そして、これらの磁気力型駆動装置を用いた光走査装置では、可動部に搭載された光走査ミラーの振れ角を増大することが困難であった。また、この光走査装置を用いた画像表示装置では、光の走査範囲を拡大し、薄型化や大画面化を実現することが困難であった。
【0019】
上記課題に鑑み、本発明は、可動部の振れ角が大きな磁気力型駆動装置を提供すると共に、これを備える光走査装置及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る磁気力型駆動装置は、
非磁性材料で形成された可動板と、前記可動板に固定され、前記可動板の主面に直交する方向に磁化した永久磁石と、を備える可動部と、
前記可動部の周縁を囲むように形成された枠体と、
前記可動板と前記枠体とを接続し、前記可動部を、前記枠体に対し、前記可動板の主面と略平行な軸の回りに回転可能に支持する一対の梁部と、
前記永久磁石の近傍に、前記梁部の軸方向と略直交する方向に前記永久磁石を挟んで互いに対向する第1及び第2の端部を有するヨークと、
導通によって前記第1及び第2の端部に互いに異なる磁極が現れるように、前記ヨークに巻回されているコイルと、を有する。
【0021】
また、本発明の第2の観点に係る光走査装置は、
上述の磁気力型駆動装置と、
前記可動部に設けられ、入射した光を反射するミラーと、を備える。
【0022】
また、本発明の第3の観点に係る画像表示装置は、
変調された光束を生成する光束生成装置と、
前記光束を反射及び走査する上述の光走査装置と、を備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、可動部の振れ角が大きな磁気力型駆動装置を提供すると共に、これを備える光走査装置及び画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像表示装置を示すブロック図である。
【図2】(a)は、図1に示された光走査装置を示す上面図である。(b)は、(a)のI−I線断面図である。
【図3】(a)は、図2(b)に示された光走査装置の左偏向状態を示す断面図である。(b)は、図2(b)に示された光走査装置の右偏向状態を示す断面図である。
【図4】(a)は、本発明の第2の実施形態に係る光走査装置を示す断面図である。(b)は、(a)に示された可動板を示す上面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る光走査装置を示す断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る光走査装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
始めに、図1を参照して、第1の実施形態に係る画像表示装置1について説明する。なお、画像表示装置1は、後述する磁気力型駆動装置7(図2参照)から構成された非共振タイプの光走査装置5を備え、外部機器8から入力される画像信号S1に基づいて、変調された赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光束を生成、合成、及び走査することにより、スクリーン9に映像を表示させるものである。
【0026】
画像表示装置1は、光束生成装置10と、コリメート光学系20と、合成光学系30と、水平走査部40と、水平走査同期回路45と、垂直走査部50と、垂直走査同期回路55と、から構成されている。
【0027】
光束生成装置10は、主に、信号処理回路11と、赤色レーザ12と、緑色レーザ13と、青色レーザ14と、赤色レーザ駆動回路15と、緑色レーザ駆動回路16と、青色レーザ駆動回路17と、から構成されている。
【0028】
信号処理回路11は、外部機器8から入力される画像信号S1に応じて変調された赤色、緑色、青色の光束を生成するための赤色、緑色、青色映像信号S2R,S2G,S2Bをそれぞれ生成し、赤色、緑色、青色レーザ駆動回路15,16,17にそれぞれ出力する。また、信号処理回路11は、水平走査部40の動作と光束生成装置10の動作とを同期させるための水平同期信号SHを生成して、水平走査同期回路45に出力し、また、垂直走査部50の動作と光束生成装置10の動作とを同期させるための垂直同期信号SVを生成して、垂直走査同期回路55に出力する。
【0029】
赤色、緑色、青色レーザ駆動回路15,16,17は、それぞれ、信号処理回路11から入力される赤色、緑色、青色映像信号S2R,S2G,S2Bに応じて、赤色、緑色、青色レーザ12,13,14を駆動する。
【0030】
赤色、緑色、青色レーザ12,13,14は、例えば、半導体レーザ、高調波発生機構(SHG)付き固体レーザ等から構成されており、それぞれ、赤色、緑色、青色映像信号S2R,S2G,S2Bに応じて変調された赤色、緑色、青色の光束を生成し、コリメート光学系20に出射する。
【0031】
コリメート光学系20は、3つのコリメータレンズ21,22,23から構成されており、光束生成装置10から入射した赤色、緑色、青色の光束をそれぞれ平行光化し、合成光学系30に出射する。
【0032】
合成光学系30は、光束を波長選択的に反射又は透過する3つのダイクロイックミラー31,32,33から構成されており、コリメート光学系20から入射した赤色、緑色、青色の光束を合成し、水平走査部40の後述する光走査ミラー41に出射する。
【0033】
水平走査部40は、合成光学系30から入射した光束を水平方向に走査するための光走査ミラー41を有する共振タイプの光走査装置4と、光走査装置4を駆動するための水平走査駆動回路42と、光走査装置4の共振周波数を調整するための共振周波数調整回路43と、から構成されている。
【0034】
水平走査同期回路45は、信号処理回路11から入力された水平同期信号SHに基づいて、水平走査部40の動作が光束生成装置10の動作と同期するように、水平走査駆動回路42及び共振周波数調整回路43を制御する。
【0035】
垂直走査部50は、水平走査部40から入射した光束を垂直方向に走査するための光走査ミラー(以下、ミラー)51を有する非共振タイプの光走査装置5と、光走査装置5を駆動するための垂直走査駆動回路52と、から構成されている。
【0036】
垂直走査同期回路55は、信号処理回路11から入力された垂直同期信号SVに基づいて、垂直走査部50の動作が光束生成装置10の動作と同期するように、垂直走査駆動回路52を制御する。
【0037】
次に、図2及び図3を参照して、上述の光走査装置5について詳細に説明する。
【0038】
光走査装置5は、図2(a)及び図2(b)に示すように、入射した光を反射するための上述のミラー51と、ミラー51を駆動するための磁気力型駆動装置7と、から構成されている。
【0039】
磁気力型駆動装置7は、可動板111と、枠体112と、一対の梁部113(図2(a)参照)と、永久磁石120(図2(b)参照)と、ヨーク210と、コイル220と、から構成されている。なお、図2(b)に示すように、可動板111、永久磁石120、及びミラー51は、可動部100を構成する。また、ヨーク210及びコイル220は、駆動部200を構成する。
【0040】
図2(a)に示す可動板111、枠体112、及び一対の梁部113は、例えば単結晶シリコン基板やステンレスその他の金属基板等、適度な剛性を有する非磁性材料基板で、相互に一体に形成されている。可動板111は、所定の幅、奥行き、及び厚みを有する矩形板状に形成されている。枠体112は、可動板111の周縁を囲むように矩形枠状に形成され、図2(b)に示すように、後述するヨーク211及びヨーク212に支持されている。一対の梁部113は、可動板111の両端に互いに対向して配置され、可動板111の平面(上面及び下面)と略平行なY軸に沿って延在して可動板111と枠体112とを接続し、枠体112に対して可動板111をY軸の回りに回転可能に支持する。したがって、可動部100は、枠体112に対して梁部113の軸方向に回転可能である。
【0041】
図2(b)に示す永久磁石120は、例えばサマリウムコバルト磁石やネオジム磁石等から構成されており、可動板111と略同一の奥行きを有する矩形板状に形成され、接着剤等により可動板111の下面に固定されている。そして、永久磁石120は、矢印Mにより示すように、可動板111の平面(上面及び下面)と略垂直な方向に磁化している。
【0042】
ミラー51は、例えば銀合金やアルミニウム合金等で、可動板111と略同一の幅及び奥行きを有する矩形板状に形成されており、可動板111の上面に接着剤等により固定されている。なお、ミラー51は、例えば、スパッタ法等を用いて、可動板111の上面に薄膜状に形成されていても良い。そして、ミラー51の上面は、入射する光に対して十分な反射率を有するように、十分に平坦に形成されている。
【0043】
ヨーク210は、例えば鉄系材料、フェライト材料、又はパーマロイ材料等を含む磁性材料で形成されており、第1のヨーク部211と、第2のヨーク部212と、第3のヨーク部213と、から構成されている。第1のヨーク部211は、永久磁石120の近傍に一端部(以下、第1の端部)211aを有する。第2のヨーク部212は、永久磁石120の近傍であって、梁部113の軸方向と直交する方向に永久磁石120を挟んで第1の端部212aと対向する一端部(以下、第2の端部)212aを有し、第1のヨーク部211と対向して延在する。第3のヨーク部213は、第1のヨーク部211の他端部211bと、第2のヨーク部212の他端部212bと、を磁気的に結合している。すなわち、第1〜第3のヨーク部211〜213は、相互に磁気的に結合されて、一つの磁気回路を構成している。
【0044】
コイル220は、第3のヨーク部213に巻回されている。コイル220に電流を流すと、ヨーク210が磁化し、第1の端部211aと第2の端部212aとにそれぞれ磁極が現れる。このとき、第1の端部211aに現れる磁極は、第2の端部212aに現れる磁極に対して、異なる極性を有する。
【0045】
次に、上述の光走査装置5の動作について説明する。
【0046】
コイル220に所定方向の電流を流すと、図3(a)に示すように、第1の端部211aにS極が現れ、第2の端部212aにN極が現れる。第1の端部211aと第2の端部212aとの間に発生する磁場が永久磁石120に作用することにより、可動部100は、一対の梁部113のねじれを伴いながら、梁部113の軸方向であるY軸を中心として左に傾斜する(左偏向状態)。
【0047】
また、コイル220に上記所定方向と反対方向の電流を流すと、図3(b)に示すように、第1の端部211aにN極が現れ、第2の端部212aにS極が現れる。第1の端部211aと第2の端部212aとの間に発生する磁場が永久磁石120に作用することにより、可動部100は、一対の梁部113のねじれを伴いながら、Y軸を中心として右に傾斜する(右偏向状態)。
【0048】
なお、可動部100の慣性モーメントを低減し、可動部100の振れ角を増大するために、永久磁石120の幅は1mm程度以下に設計されていることが望ましい。また、コイル220に流す電流が所定の周波数(例えば60Hz)を有する場合に、可動部100に共振モードが励起されることを防止するため、一対の梁部113は、可動部100の共振周波数が1kHz程度となるように設計されていることが望ましい。
【0049】
上記構成の磁気力型駆動装置7によれば、ヨーク210の第1の端部211aと第2の端部212aとを、梁部113の軸方向と直交する方向に永久磁石120を挟んで対向するように配置すると共に、互いに異なる磁極を有するように磁化させることにより、従来の磁気力型駆動装置と比較して、永久磁石120に印加される磁場を増大することができる。従って、可動部100に加わる駆動力を増大し、可動部100の振れ角を増大することができる。
【0050】
また、上記構成の磁気力型駆動装置7によれば、永久磁石120を挟んで対向する第1の端部211aと第2の端部212aとの間隙を、容易に小さくすることができる。これにより、永久磁石120に印加される磁場が増大し、可動部100に加わる駆動力が増大することから、可動部100の振れ角を容易に増大することができる。また、可動部100の振れ角に余裕がある場合には、さらに、磁気力型駆動装置7を小型化することや、磁気力型駆動装置7の消費電力を抑制することもできる。
【0051】
また、上記構成の磁気力型駆動装置7によれば、第1〜第3のヨーク部211〜213を相互に磁気的に結合して、一つの磁気回路として構成し、第1のヨーク213にのみコイル220を巻回し、コイル220に流す電流の大きさ及び方向を制御することにより、可動部100を駆動することができるので、駆動部200の構成を簡易なものとすることができる。
【0052】
また、磁気力型駆動装置7の可動部100にミラー51を搭載することにより、ミラー51の振れ角が大きい、すなわち光の走査範囲が大きい光走査装置5を構成することができる。
【0053】
また、光走査装置5を備える画像表示装置1によれば、光の走査範囲が大きいことから、省スペース化(小型化、薄型化)及び大画面化等を実現することができる。
【0054】
以下、上述の第1の実施形態に係る光走査装置5について、実施例に基づいて、より詳細に説明する。
【0055】
光走査装置5の可動部100については、例えば、以下のように構成することができる。
【0056】
可動板111は、単結晶シリコンで形成し、その幅、奥行き、厚みを、それぞれ2[mm]、6[mm]、100[μm]とした。
【0057】
永久磁石120は、ネオジム磁石とし、その幅、奥行き、厚みを、それぞれ0.5[mm]、6[mm]、1[mm]とした。
【0058】
ミラー51の幅、奥行き、厚みを、それぞれ2[mm]、6[mm]、50[μm]とした。なお、ミラー51は、可動板111の上面に接着剤により固定した。
【0059】
一対の梁部113は、単結晶シリコンで形成し、その寸法は、可動部100の共振周波数が800[Hz]程度となるように、可動部100を構成する可動板111、永久磁石120、及びミラー51の寸法に従って決定した。
【0060】
また、光走査装置5の駆動部200については、例えば、以下のように構成することができる。
【0061】
ヨーク210の第1の端部211aと第2の端部212aとの間隙を、2[mm]とした。
【0062】
コイル220の巻数を200とした。また、コイル220に流す電流を200[mA]とした。
【0063】
コイル220の巻数をN、コイル220に流す電流をI[A]、ヨーク210の磁極間のギャップをg[m]とすると、ヨーク210の磁極間に発生する磁場H[A/m]は、概ね、以下の(4)式で与えられる。
【0064】
H=NI/g (4)
本実施例では、(4)式により、ヨーク210の第1の端部211aと第2の端部212aとの間に発生する磁場Hは、概ね、2×104[A/m]≒250[Oe]となる。
【0065】
また、可動部100(可動板111、永久磁石120、及びミラー51)の慣性モーメントをI、永久磁石120に印加される磁場をH(t)(簡単のため、一様とする)、可動部100の磁気モーメントをM(水平左向き)、一対の梁部113のねじり弾性係数をKθ、磁場H(t)(上向き)が鉛直方向と成す角度をθ0(時計回り)、可動部100の静止位置(水平)からの傾きをθ(t)(時計回り)とすると、可動部100の運動方程式は、以下の式(5)で与えられる。
【0066】
I・(d2/dt2)θ(t)+kθ・θ(t)
−M・H(t)・cos(θ0−θ(t))=0 (5)
本実施例では、(5)式により、可動部100の振れ角θは、概ね、±20[°]となる。従って、光の走査範囲は、概ね、±40[°]となる。
【0067】
また、本実施例では、必要となる磁場の大きさが250[Oe]程度と比較的小さいことから、コイル220の消費電力が比較的小さい。コイル220に流す電流が所定の周波数(例えば60[Hz])を有する場合、コイル220には、配線抵抗に加えてインダクタンスLに応じたインピーダンスが発生するが、本実施例では、コイル220に発生するインピーダンスは1[Ω]程度である。従って、コイル220に流す電流を200[mA]とした場合、コイル220の消費電力は、40[mW]程度と、比較的小さくなる。
【0068】
以上説明したように、本実施例によれば、ヨーク210の第1の端部211aと第2の端部212aとの間隙をmmスケールに小さくすることができるため、これらの間隙に生成される磁場が増大し、可動部100に搭載された永久磁石120とヨーク210との磁気的相互作用が増大する。従って、可動部100に加わる駆動力を増大し、可動部100に搭載されたミラー51の振れ角を増大することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る画像表示装置及び光走査装置5Aについて説明する。第2の実施形態の画像表示装置は、基本的構成については第1の実施形態の画像表示装置1と同様であるが、光走査装置5Aの構成において第1の実施形態の画像表示装置1と異なる。従って、本実施形態では、光走査装置5Aについて説明し、画像表示装置についての説明を省略する。また、第1の実施形態の光走査装置5と共通する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
図4(a)に示すように、光走査装置5Aは、主に、可動板111Aと永久磁石120とが嵌合している点において、第1の実施形態の光走査装置5と異なる。
【0070】
図4(b)に示すように、可動板111Aは、空孔部111aを有して矩形枠状に形成されている。図4(a)に示すように、永久磁石120は、可動板111Aの空孔部111aに嵌入し、接着剤等により固定されている。また、ミラー51は、永久磁石120の上面に、接着剤等により固定されている。これにより、可動板111Aと永久磁石120とミラー51とを、可動部100の重心がその回転軸であるY軸と略一致するように、配置することができる。
【0071】
上記構成の光走査装置5Aによれば、可動部100の重心をその回転軸であるY軸と略一致させることにより、可動部100の慣性モーメントを低減することができる。従って、一対の梁部113のねじり弾性係数を低減することができると共に、ミラー51の振れ角をより増大することができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る画像表示装置及び光走査装置5Bについて説明する。第3の実施形態の画像表示装置は、基本的構成については第2の実施形態の画像表示装置と同様であるが、光走査装置5Bの構成において第2の実施形態の画像表示装置と異なる。従って、本実施形態では、光走査装置5Bについて説明し、画像表示装置についての説明を省略する。また、第1及び第2の実施形態の光走査装置5,5Aと共通する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
図5に示すように、光走査装置5Bは、第1のヨーク部211にコイル220aが巻回され、第2のヨーク部212にコイル220bが巻回されている点において、第2の実施形態の光走査装置5Aと異なる。
【0073】
コイル220a及びコイル220bはそれぞれ、第1のヨーク部211及び第2のヨーク部212の幅及び奥行き方向に巻回されており、導通によって第1のヨーク部211の第1の端部211aと第2のヨーク部212の第2の端部211bとに互いに異なる磁極を形成するように構成されている。
【0074】
上記構成の光走査装置5Bによれば、コイル220a及びコイル220bが光走査装置5Bの幅及び奥行き方向に巻回されているため、光走査装置5Aと比較して、装置の厚さを薄くすることができる。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る画像表示装置及び光走査装置5Cについて説明する。第4の実施形態の画像表示装置は、基本的構成については第2の実施形態の画像表示装置と同様であるが、光走査装置5Cの構成において第2の実施形態の画像表示装置と異なる。従って、本実施形態では、光走査装置5Cについて説明し、画像表示装置についての説明を省略する。また、第1〜第3の実施形態の光走査装置5,5A,5Bと共通する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
図6に示すように、光走査装置5Cでは、ヨーク210Aの第1の端部211a及び第2の端部212aがそれぞれ、永久磁石120に向けて鋭角化されている点において、第2の実施形態の光走査装置5Aと異なる。
【0076】
なお、図6に示す光走査装置5Cでは、第1の端部211a及び第2の端部212aの両方が鋭角化されているが、第1の端部211a及び第2の端部212aのいずれか一方だけが鋭角化されていてもよい。
【0077】
上記構成の光走査装置5Cによれば、ヨーク210Aの第1の端部211a及び第2の端部212aの少なくとも一つを鋭角化することで、その端部の磁束密度を増大し、永久磁石120の磁極に印加される磁場を増大することができる。その結果、可動部100に加わる駆動力を増大し、ミラー51の振れ角をより増大することができる。
【0078】
なお、第4の実施形態では、第1の端部211a及び第2の端部212aの少なくともいずれか一方が鋭角状の断面を有して形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、永久磁石に向けて断面積が縮小されるならば、例えば、凹凸状の断面を有して形成されていたり、複数の突起を有するように形成されていたりしても良い。
【0079】
本発明は上記各実施形態及び実施例に限定されるものではなく、各実施形態及び実施例が本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更され得ることは明らかである。
【0080】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
非磁性材料で形成された可動板と、前記可動板に固定され、前記可動板の主面に直交する方向に磁化した永久磁石と、を備える可動部と、
前記可動部の周縁を囲むように形成された枠体と、
前記可動板と前記枠体とを接続し、前記可動部を、前記枠体に対し、前記可動板の主面と略平行な軸の回りに回転可能に支持する一対の梁部と、
前記永久磁石の近傍に、前記梁部の軸方向と略直交する方向に前記永久磁石を挟んで互いに対向する第1及び第2の端部を有するヨークと、
導通によって前記第1及び第2の端部に互いに異なる磁極が現れるように、前記ヨークに巻回されているコイルと、を有することを特徴とする磁気力型駆動装置。
(付記2)
付記1記載の磁気力型駆動装置において、
前記ヨークは、前記第1の端部を有する第1のヨーク部と、前記第1のヨークと前記永久磁石を挟んで対向し、前記第2の端部を有する第2のヨーク部と、前記第1のヨークと前記第2のヨークとを磁気的に結合する第3のヨークと、を有し、
前記コイルは、前記第3のヨークに巻回されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
(付記3)
付記1記載の磁気力型駆動装置において、
前記ヨークは、前記第1の端部を有する第1のヨーク部と、前記第1のヨークと前記永久磁石を挟んで対向し、前記第2の端部を有する第2のヨーク部と、前記第1のヨークと前記第2のヨークとを磁気的に結合する第3のヨークと、を有し、
前記コイルは、前記第1及び第2のヨークに巻回されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
(付記4)
付記1から3のいずれかに記載の磁気力型駆動装置において、
前記第1及び第2の端部の少なくとも一方は、前記永久磁石に向けて鋭角に形成されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
(付記5)
付記1から4のいずれかに記載の磁気力型駆動装置において、
前記第1及び第2の端部の少なくとも一方は、複数の突起を有して形成されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
(付記6)
付記1から5のいずれかに記載の磁気力型駆動装置において、
前記可動板には、前記永久磁石が配置される空孔部が形成され、
前記永久磁石は、前記可動部の重心が前記可動部の回転軸と略一致するように、前記空孔部に配置されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
(付記7)
付記1から6のいずれかに記載の磁気力型駆動装置において、
前記可動板と前記枠体と前記一対の梁部とは、単結晶シリコン基板で一体形成されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
(付記8)
付記1から6のいずれかに記載の磁気力型駆動装置において、
前記可動板と前記枠体と前記一対の梁部とは、金属基板で一体形成されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
(付記9)
付記8記載の磁気力型駆動装置において、
前記可動板と前記枠体と前記一対の梁部とは、ステンレス基板で一体形成されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
(付記10)
付記1から9のいずれかに記載の磁気力型駆動装置において、
前記永久磁石の幅は、1mm以下であることを特徴とする磁気力型駆動装置。
(付記11)
付記1から10のいずれかに記載の磁気力型駆動装置において、
前記永久磁石は、サマリウムコバルト磁石から構成されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
(付記12)
付記1から10のいずれかに記載の磁気力型駆動装置において、
前記永久磁石は、ネオジム磁石から構成されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
(付記13)
付記1から12のいずれかに記載の磁気力型駆動装置において、
前記ヨークは、鉄系材料を含んで形成されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
(付記14)
付記1から12のいずれかに記載の磁気力型駆動装置において、
前記ヨークは、フェライト材料を含んで形成されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
(付記15)
付記1から12のいずれかに記載の磁気力型駆動装置において、
前記ヨークは、パーマロイ材料を含んで形成されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
(付記16)
付記1から15のいずれかに記載の磁気力型駆動装置と、
前記第1の可動部に設けられ、入射した光を反射するミラーと、を備えることを特徴とする光走査装置。
(付記17)
付記16記載の光走査装置において、
前記ミラーは、銀合金で形成されていることを特徴とする光走査装置。
(付記18)
付記16記載の光走査装置において、
前記ミラーは、アルミニウム合金で形成されていることを特徴とする光走査装置。
(付記19)
変調された光束を生成する光束生成装置と、
前記光束を反射及び走査する付記16から18のいずれかに記載の光走査装置と、を備えることを特徴とする画像表示装置。
【符号の説明】
【0081】
1 画像表示装置
4 光走査装置
5,5A〜5C 光走査装置
7,7A〜7C 磁気力型駆動装置
8 外部機器
9 スクリーン
10 光束生成装置
11 信号処理回路
12 赤色レーザ
13 緑色レーザ
14 青色レーザ
15 赤色レーザ駆動回路
16 緑色レーザ駆動回路
17 青色レーザ駆動回路
20 コリメート光学系
21,22,23 コリメータレンズ
30 合成光学系
31,32,33 ダイクロイックミラー
40 水平走査部
41 光走査ミラー
42 水平走査駆動回路
43 共振周波数調整回路
45 水平走査同期回路
50 垂直走査部
51 光走査ミラー(ミラー)
52 垂直走査駆動回路
55 垂直走査同期回路
100 可動部
111 可動板
111a 空孔部
112 枠体
113 一対の梁部
120 永久磁石
200 駆動部
210,210A ヨーク
211 第1のヨーク部
211a 第1の端部
211b 他端部
212 第2のヨーク部
212a 第2の端部
212b 他端部
213 第3のヨーク部
220,220a,220b コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性材料で形成された可動板と、前記可動板に固定され、前記可動板の主面に直交する方向に磁化した永久磁石と、を備える可動部と、
前記可動部の周縁を囲むように形成された枠体と、
前記可動板と前記枠体とを接続し、前記可動部を、前記枠体に対し、前記可動板の主面と略平行な軸の回りに回転可能に支持する一対の梁部と、
前記永久磁石の近傍に、前記梁部の軸方向と略直交する方向に前記永久磁石を挟んで互いに対向する第1及び第2の端部を有するヨークと、
導通によって前記第1及び第2の端部に互いに異なる磁極が現れるように、前記ヨークに巻回されているコイルと、を有することを特徴とする磁気力型駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気力型駆動装置において、
前記ヨークは、前記第1の端部を有する第1のヨーク部と、前記第1のヨークと前記永久磁石を挟んで対向し、前記第2の端部を有する第2のヨーク部と、前記第1のヨークと前記第2のヨークとを磁気的に結合する第3のヨークと、を有し、
前記コイルは、前記第3のヨークに巻回されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
【請求項3】
請求項1記載の磁気力型駆動装置において、
前記ヨークは、前記第1の端部を有する第1のヨーク部と、前記第1のヨークと前記永久磁石を挟んで対向し、前記第2の端部を有する第2のヨーク部と、前記第1のヨークと前記第2のヨークとを磁気的に結合する第3のヨークと、を有し、
前記コイルは、前記第1及び第2のヨークに巻回されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気力型駆動装置において、
前記第1及び第2の端部の少なくとも一方は、前記永久磁石に向けて鋭角に形成されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の磁気力型駆動装置において、
前記第1及び第2の端部の少なくとも一方は、複数の突起を有して形成されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の磁気力型駆動装置において、
前記可動板には、前記永久磁石が配置される空孔部が形成され、
前記永久磁石は、前記可動部の重心が前記可動部の回転軸と略一致するように、前記空孔部に配置されていることを特徴とする磁気力型駆動装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の磁気力型駆動装置と、
前記可動部に設けられ、入射した光を反射するミラーと、を備えることを特徴とする光走査装置。
【請求項8】
変調された光束を生成する光束生成装置と、
前記光束を反射及び走査する請求項7に記載の光走査装置と、を備えることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−208395(P2012−208395A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75184(P2011−75184)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】