説明

神経系疾患及び癌における非定型プロテインキナーゼCアイソフォーム

本発明は、変化したaPKC機能と、アルツハイマー病(AD)及び神経芽細胞腫などの神経系疾患及び癌との間の関連性を確立する。神経系疾患及び癌における診断、薬剤スクリーニング及び遺伝子治療において、aPKCを使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において述べる発明は、国立老化研究所(契約番号1020171−1−006672)及び国立衛生研究所(契約番号1018109−1−21883)からの補助金を受けている。政府は本発明にある種の権益を有する。
【0002】
本発明は、神経系疾患におけるプロテインキナーゼCの非定型アイソフォーム(aPKC)及び遺伝子産物の細胞内での誤った局在(mislocalization)におけるそれらの役割に関する。特に、本発明は、アルツハイマー病(AD)及びパーキンソン病(PD)などの神経変性疾患ではaPKCアイソフォームが変化しているという発見に関する。本発明はさらに、神経及び精神障害に関する診断、薬剤スクリーニング及び遺伝子治療を含む治療におけるaPKCの使用を対象とする。
【0003】
本発明はまた、癌におけるプロテインキナーゼCの非定型アイソフォーム及びそれらの役割に関する。特に、本発明は、数多くの癌において非定型PKCζ遺伝子が共通して変化しているという発見に関する。本発明はさらに、癌に関する診断、治療及び治療の開発におけるaPKCの使用を対象とする。
【背景技術】
【0004】
プロテインキナーゼC(PKC)は、3つのクラス:通常、新規及び非定型に分類される9個の遺伝子に由来するアイソザイムの不均質なファミリーから成る。非定型クラスのアイソフォーム(aPKC)、例えばPKCζ(PKCζI/II)及びPKCι/λ、は、PKCの古典的な活性化因子であるカルシウム及びジアシルグリセロール(DAG)に対する非感受性によって通常及び新規クラスと区別される(Newton,2003,Biochem J,361−71)。par3及びpar6遺伝子によってコードされるタンパク質と共に、aPKCは細胞極性において決定的な役割を果たすことが示されている(Ohno,2001,Curr Opin Cell Biol,13(5):641−48)。最近になって、par3及びpar6遺伝子はまた、細胞軸索の形成においても役割を果たすことが示された(Shiら、2003,Cell,112(1):63−75)。par3、par6及びaPKCタンパク質のいずれかの機能の喪失は細胞極性の破壊をもたらしうる。
【0005】
さらに、シナプス可塑性、学習及び記憶におけるaPKCの役割も確立されている(Sacktorら、1993、Proc Natl Acad Sci USA 90:8342−46;Ostenら、1996、Neurosci Letter 221:37−40;Drierら、2002、Nat Neurosci 5:316−24;Lingら、2002、Neurosci 5:295−96)。記憶についての広く検討されているモデルである長期増強(LTP)において、aPKCは2つの異なる時期に重要な役割を果たす。完全長aPKC形態はLTP誘導期に活性化されるが、PKMζ(すなわちPKCζII)と称される切断型のaPKCは、LTPの維持期に活性化される。PKMζは、自己阻害調節ドメインを欠くことを除いて、PKCζIIと同じである(Hernandezら、2003、J Biol Chem 278,40305−16及びHiraiら、2003、Neurosci Lett 348,151−54)。PKCアイソフォームはすべて、理論上PKM形態(すなわちPKCの切断又は独立触媒ドメイン)を有しうるが、正常脳において一貫して認められる唯一のPKM形態はPKMζである(Scktorら、1993)。最近の研究は、PKMζが長期増強(LTP)の維持にとって必要且つ十分であることを示した(Lingら)。さらに、PKMζの発現は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)でのにおい回避作業において記憶を延長させる(Drierら)。それ故、記憶におけるPKMζの役割は広く分岐した種において保存されていると思われる。この概念と一致して、PKMζ mRNAのヒト形態が特定されている(Hernandezら)。
【0006】
アルツハイマー病(AD)は、記憶及び認知機能の進行性障害を特徴とする神経変性疾患である。神経シグナル伝達経路の不均衡がADの病因に関係付けられてきた(Shimohamaら、1990、J Neural Transm Suppl 30:69−78)。いくつかの試験は、AD患者の脳組織におけるプロテインキナーゼC(PKC)機能の異常を明らかにしている(Coleら、1988、Brain Res 452:165−174;Clarkら、1991、Lab Invest 64,35−44;Horsburghら、1991、J Neurochem 56:1121−1129;Masliahら、1990、J Neurosci 10:2113−24;Masliahら、1991、J Neurosci 11:2759−2767;Saitohら、1990、Adv Exp Med Biol 265:301−10;Saitohら、1993、Acad Sci 695:34−41;Shimohamaら、1993、Neurology 43:1407−1413;Laniusら、1997、Brain Res 764:75−80;Wangら、1994、Neurobiol Aging 15:293−298)。
【0007】
顕微鏡的には、ADの2つの主要な特徴は、老人斑(SP)を含むβ−アミロイド(Aβ)及び神経原線維変化(NFT)を含むタウの存在である。血管内のアミロイド沈着と定義されるアミロイド血管症も様々な程度で起こる。他の変化は、顆粒空胞変性(GVD)及び平野小体形成を含む。
【0008】
NFTは、主として、微小管関連タウタンパク質の過剰リン酸化形態から成る対らせん状フィラメント(PHF)で構成される異常構造である(Bueeら、2000、Brain Res Brain Res Rev 33,95−130)。タウの分布は大部分が軸索に限定され、そこで主として微小管(MT)を安定化し、MTの重合を促進するように機能する。NFTを含むニューロンでは、しかしながら、タウ関連PHFが細胞質及び樹状突起全体で認められる。NFTの他の成分は、微小管関連タンパク質2(MAP2)及びユビキチンを含む。「ゴーストタングル(ghost tangle、濃縮体の影)」はNFTの一種であり、そこでは周囲のニューロンが完全に変性している。ゴーストタングルは、細胞死の後に蓄積するAβの沈着を含みうる。PHFはまた、老人斑の周囲のジストロフィー性神経突起ならびに他の神経突起にも存在し、それらはニューロピルスレッドと呼ばれる。
【0009】
ADに加えて、少なくとも20の異なる疾患がタウに基づく神経原線維病理を特徴として有し、集合的にタウタンパク質異常疾患として知られる(Leeら、2001、Annu Rev Neurosci 24,1121−59)。この群は、AD、ピック病(PiD)、第17番染色体に連鎖したパーキンソン症候群を伴う前頭側頭型痴呆(FTDP−17)、進行性核上性麻痺(PSP)及び大脳皮質基底核変性症(CBD)を含む。様々なタウタンパク質異常疾患において認められるタングルの間にはかなりの異質性が存在する。例えば、ADにおけるNFTは主として直径8〜20nmのPHFから成る;ADでは一部にくびれのない線維も見られる。これに対し、FTDP−17のタングルはねじれてくびれがなく、一対のらせん状ではない。それにかかわらず、これらの疾患すべてにおいてタウタンパク質は過剰リン酸化している。
【0010】
タングルは多くの他の疾患で現われるので、タウに基づくタングル形成はADにおける一次病理事象ではないと論じられてきた。この見かけ上の特異性の欠如は、NFTが開始事象ではなく多くの病態生理学的過程の最終エンドポイントであることを示唆する。この見解に反して、多数のFTDP−17家系においてタウ遺伝子自体の突然変異がAβ蓄積なしにタウ機能障害及び変性を導きうることが発見された(Leeら、2001)。
【0011】
NFTは段階的に発現する(Braakら、1994、Acta Neuropathol 87,554−67)。NFTの最初期形態はプレNFTであり、PHFが形成し始めているが、完全なタングルはまだ発現していない。その次が、細胞質が過剰リン酸化されたタウで満たされる、細胞内段階である。最終段階は「細胞外」NFTであり、この段階では細胞死が起こり、膜と細胞小器官は消失しているが、細胞骨格残部は残存する。最終段階は「ゴースト」タングルとも称される。リン特異的タウ抗体を使用して、タウリン酸化のパターンが3つの異なる段階で変化することが発見された(Augustinackら、2002、Acta Neuropathol(Berl) 103,26−35)。理論的には、タウ上のいずれの残基が最初にリン酸化されるのかがわかれば、タウリン酸化の原因となるキナーゼを特定するより高い可能性が得られる。T153、S262及びT231が、リン酸化段階になるタウ内の最初の残基の一部であることが明らかにされた(Augustinackら、2002)。
【0012】
広汎な研究にもかかわらず、ADにおいてタウをリン酸化する特定のキナーゼは明確には特定されていない(Bueeら、2000)。最も長いタウタンパク質アイソフォームは79個の可能なセリン及びトレオニンを含み、ADではそれらのうち少なくとも30個のリン酸化が起こる。数多くのキナーゼがインビトロでタウをリン酸化することが示されているが、主要な候補キナーゼはインビボでタウをリン酸化することが示された。これらは、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(GSK3β)及びサイクリン依存性キナーゼ5(cdk5)である。どちらも、プロリン残基の直前のセリン/トレオニン残基を選択するプロリン特異的キナーゼの群の成員である。AD脳からの異常タウは、後曳プロリンを伴う及び伴わない過剰リン酸化セリン及びトレオニン残基の混合物を含む。実際に、研究者達は、プロリン特異的及び非プロリン特異的プロテインキナーゼでありうる、種々の部位でタウをリン酸化する多数のキナーゼを主張してきた。
【0013】
通常のPKCαアイソフォームは細胞骨格タウタンパク質をリン酸化することができる。これはPKCαの完全長形態ではなく、タウを選択的にリン酸化することができる切断されたPKMα形態の酵素である(Cressmanら、1995、M.FEBS Letter 367,223−27)。脳において一貫して認められる唯一のPKMアイソフォームはPKMζである(Naikら、2000、J Comp Neurol.,426(2):243−58)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、初めて、PKMζがタウを直接リン酸化することを示す。この理由から、aPKCの上昇はNFT形成を生じさせる。さらに、aPKCは、タウをリン酸化することが広く知られているキナーゼ、GSK3βをリン酸化して、GSK3βの不活性化を導く(Lavoieら、1999、J Biol Chem 274,28279−85)。この理由から、aPKC活性の低下はGSK3β活性の負の調節を排除することになり、間接的にNFT形成を引き起こす。本発明は、どちらも細胞極性の既知の調節因子である、apkc及びgsk3bが複合体内に存在することを提供する。これら2つのキナーゼのシグナル伝達又は活性の変化は、細胞内及び細胞外画分における遺伝子産物の誤局在ならびに遺伝子産物の翻訳後修飾異常及び神経機能障害及び癌を含むその後の病態を導く。
【0015】
癌の病因は均一ではなく、組織型に大きく依存するが、当業者の間では、ヒト癌細胞は著しく高い遺伝子突然変異率(遺伝的不安定性)を示すというコンセンサスがある。突然変異は、染色体異常(例えば欠失、挿入、増幅、突然変異及び再編成)及び点突然変異として現われうる。そのようなゲノム変化の影響は多様である;しかしこれらの変化の一部は癌発症への直接の寄与因子である。癌は段階的に発現する。初期はより良性であり、良好な予後を伴う傾向がある。これに対し、末期ほどより悪性であり、より広い範囲に転移する傾向がある。末期癌は、より多くの染色体変化が蓄積する傾向がある。本発明は、肝を診断し、病期分類し、治療し、治療法を開発するためにaPKC遺伝子及びそれらのRNA又はタンパク質産物における変化を利用する。
【0016】
癌の発症に関連する染色体変化の一例は、1番染色体の短腕(1p)の欠失である。1p染色体の欠失は極めて多様な癌において認められてきた。固形腫瘍の半数以上が染色体1pの欠失に結びつくと推定されている。腫瘍において1p染色体の状態を判定するための現在の方法は、蛍光インサイチュ−ハイブリダイゼーション(FISH)を含む。光度に感受性であるが、FISHは、病理検査室では常用されておらず、コスト高で時間がかかるという事実を含む、数多くの欠点がある。本発明は、抗血清などの、PKCζ遺伝子に対するプローブを使用して、腫瘍において1p染色体の状態を判定するための新しい方法を提供する。抗血清に基づく方法は、病理検査室において常套的に使用されており、確実且つ安価である。この理由から、PKCζ遺伝子状態は癌の状態を判定する上でFISHよりもはるかに優れている。
【0017】
PKCζ遺伝子は1番染色の短腕上に位置する(1p36.33)。この遺伝子は、末端小粒から約200万塩基対の比較的短い距離に存在する。末端小粒へのPKCζ遺伝子の近接性は、理論上、染色体欠失及び再編成を受けやすくする。癌におけるaPKCの存在又は不在は癌の診断及び病期分類のために有用であることが本発明によって明らかにされる。
【0018】
1p染色体の欠失の影響は腫瘍型に依存して異なる。例えば、乏突起神経膠腫における1pの欠失は良好な予後の指標である。これに対し、神経芽細胞腫における1p染色体の欠失は好ましくないとみなされる。本発明によって明らかにされるように、当業者は今や、PKCζに特異的なプローブを使用して1p染色体の状態を判定することができる。そのようなプローブの例は、抗血清、aPKCに相補的なDNA又はRNA配列、あるいはPCRプライマーを含む。PKCζの存在又は不在は腫瘍の種、病期又は悪性度を判定する上で有効である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、aPKCの上昇又は低下が細胞における病的変化の発現を導き、神経系機能障害及び癌を導きうることを明らかにする。本発明により、aPKCシグナル伝達の変化がアルツハイマー病(AD)などの神経系疾患の病因に寄与すると考えられる。従って、NFTにおけるaPKCの局在及びaPKCシグナル伝達の分断がタウリン酸化を引き起こすという事実は、aPKCの変化が神経系疾患の病因に関与することを裏付ける。本発明は、それ故、神経系疾患を治療することを目的としてaPKC活性を調節するために有用な合理的薬剤設計の新規標的としてaPKCを提供する。本発明はさらに、神経系疾患の診断のための方法を提供する。
【0020】
具体的には、例えばショウジョウバエ(Drosophila)において、長期増強(LTP)及び記憶形成の維持におけるキー分子であるPKMζはNFTと共局在することが本発明によって発見された。従って、PKMζシグナル伝達の分断は、ADなどの神経系疾患の病因に寄与する。ヒト脳におけるPKMζタンパク質の存在も本発明によって明らかにされる。
【0021】
本発明によれば、本発明の1つの局面は、プロテインキナーゼC(aPKC)の非定型アイソフォーム、例えばPKMζ、及びADなどの神経系疾患におけるそれらの役割の特定である。
【0022】
本発明のもう1つの局面は、ADなどの神経系疾患を診断するための方法を提供する。本発明によれば、aPKC特異的プローブを使用して、被験者において神経機能障害又は神経系疾患を診断するための方法が提供される。本発明の診断方法は、
a.被験者からの試料、例えば組織生検、脳脊髄液(CSF)又は血液試料、をaPKC特異的プローブと接触させること、
b.前記プローブの前記試料への結合を検出して、試料中のaPKCの量、局在又は活性を測定すること、
c.対照試料をaPKC特異的プローブと接触させること、
d.前記対照試料、例えば組織生検、CSF又は血液試料、への前記プローブの結合を検出して、対照試料中のaPKCの量、局在又は活性を測定すること、及び
e.工程bにおけるaPKCの量、局在又は活性を工程dにおけるaPKCの量、局在又は活性と比較して、工程bにおけるaPKCの量、局在又は活性が工程dにおけるaPKCの量、局在又は活性と異なる場合は、前記被験者において神経系疾患が存在すること
の工程を含む。
【0023】
本発明のさらにもう1つの局面は、aPKCの量又は活性を調節するために有用な薬剤又は分子化合物をスクリーニングするための方法を提供する。本発明によれば、細胞とaPKC特異的プローブを使用して、分子化合物、例えばペプチド及び低分子、をスクリーニングするための方法が提供される。そのような方法は、
a.aPKC遺伝子が発現される細胞を提供すること、
b.前記細胞におけるaPKCの量、局在又は活性の変化を誘導するのに十分な時間、細胞を候補化合物と共にインキュベートすること、
c.前記候補化合物の不在下で、工程bにおけるように細胞をインキュベートすること、
d.工程b及び工程cからの細胞を等量のaPKC特異的プローブと接触させること、
e.前記細胞への前記プローブの結合を検出して、工程b及び工程cからの細胞におけるaPKCの量、局在又は活性を測定すること、及び
f.前記細胞におけるaPKCの量、局在又は活性を比較して、工程bからの細胞におけるaPKCの量、局在又は活性が工程cからの細胞におけるaPKCの量、局在又は活性と異なる場合、前記候補化合物を、aPKCを調節する化合物として特定すること
を含む。
【0024】
脳疾患の治療における使用のための分子化合物をスクリーニングするための1つの選択的方法は、細胞又は動物、例えばマウス、において非定型PKC配列を含む遺伝因子を過剰発現又は欠失させること、及び前記細胞又は動物を非定型PKC活性又はレベルに関して検定することを含む。
【0025】
本発明のさらなる局面では、aPKCと基質を使用して、aPKCの量、局在又は活性を調節するために有用な薬剤又は分子化合物をスクリーニングするためのインビトロ無細胞法を提供する。そのような方法は、
a. aPKCを第一容器において、アデノシン三リン酸(ATP)、好ましくは放射標識されたATP、aPKCの基質、例えばタウタンパク質、及び候補化合物と共に、第一容器内のaPKCの量又は活性の変化を誘導するのに十分な時間インキュベートすること、
b.aPKCを第二容器において、ATP、好ましくは放射標識されたATP、及び前記aPKCの基質、例えばタウタンパク質と共に、第二容器内のaPKCの量又は活性の変化を誘導するのに十分な時間インキュベートすること、
c.第一容器及び第二容器における基質内へのリン酸の取込みの量を定量すること、及び
d.第一容器と第二容器における取込みの量を比較して、第一容器と第二容器における取込みの量の差が、候補化合物がaPKCの量、局在又は活性を調節する化合物として特定されることを指示すること
を含む。
【0026】
この方法の変法は、基質内へのリン酸の取込みを定量するためにリン特異的抗血清を使用することを含む。
【0027】
本発明のさらなる局面では、神経障害を治療及び/又は予防するための、遺伝子治療を含む方法が提供される。本発明によれば、aPKC、例えばPKMζ、に対応する配列(又はaPKCのアンチセンス配列)と発現ベクターを用いる、神経機能障害を治療及び/又は予防するための方法が提供される。前記方法は、
a.aPKC配列、例えばPKMζ、を発現ベクターに挿入すること、及び
b.前記ベクターを被験者、例えば患者、に投与すること、
それによってベクターが神経機能障害を治療及び/又は予防すること
の工程を含む。
【0028】
本発明の方法は、タウタンパク質のリン酸化及びNFTとの共局在などの異常aPKC活性によって特徴付けられる様々な神経障害の治療及び/又は予防において使用することができる。そのようなタウ関連線維状凝集物は、例えばアルツハイマー病(AD)、ピック病(PiD)、進行性核上性麻痺(PSP)及び大脳皮質基底核変性症(CBD)、パーキンソン病(PD)、の神経病理学的指標である。
【0029】
本発明のさらなる局面では、神経障害、例えばAD、の検出、治療及び/又は予防のための、PKMζに対する抗体を提供する。
【0030】
それ故、本発明の1つの目的は、アルツハイマー病などの神経障害を検出、治療及び/又は予防することである。
【0031】
本発明のさらなる局面は、神経機能障害の動物モデルとして有用である、aPKCを持たないノックアウトマウスあるいは野生型又は突然変異型aPKCを過剰発現するマウスなどの、トランスジェニック動物を作製するための方法を提供する。前記方法は、
a.例えば当業者に既知のノックアウト手法を使用して動物においてaPKC遺伝子を欠失させることにより、変化したaPKCの量、局在又は活性を有するトランスジェニック動物を作製すること、
b.工程aからのトランスジェニック動物を候補治療法で処置すること、
c.工程aからのトランスジェニック動物を対照治療法で処置すること、
d.工程b及びcからのトランスジェニック動物を生化学的又は行動上の変化に関して検定すること、及び
e.工程b及び工程cからのトランスジェニック動物のアッセイの結果を比較し、その差が神経機能障害を緩和する上での前記候補治療法の効果を指示すること
を含む。
【0032】
前記方法の変法は、単独で又は神経変性に関連する遺伝子、例えばスーパーオキシドジスムターゼ、タウ、β−アミロイド、α−シヌクレイン及びアポリポタンパク質E、内で突然変異又は多型を発現する1又はそれ以上の癌遺伝子と組み合わせて、トランスジェニック動物において野生型又は突然変異型aPKCを過剰発現させることを含む。
【0033】
本発明のさらなる局面は、aPKC遺伝子、例えばPKMζI/II及びPKCι/λ、のDNA配列、及びプロモーター領域、エンハンサー領域及び負の調節領域を含む、これらの遺伝子の発現を調節する領域における突然変異又は多型に関するDNAの遺伝子スクリーニングを含む。そのようなスクリーニングのための方法は、
a.被験者の試料からDNAを単離すること、
b.工程aからのDNAのaPKC遺伝子又はその調節領域を塩基配列決定すること、及び
c.工程bからのDNA配列を、工程bで塩基配列決定したDNAと同じ領域であるが突然変異を含まない既知の正常DNA配列である標準DNA配列と比較し、工程bからのDNA配列と標準配列の相違が神経又は精神障害に対する遺伝的感受性を指示すること
を含む。
【0034】
本発明の特定局面は、上記方法のすべてに関して既知のaPKC相互作用タンパク質の使用を対象とする。
【0035】
さらなる局面では、本発明は、PD、多系統萎縮症(MSA)及びレビー小体型痴呆(DLB)で見られるα−シヌクレイン及びADや正常加齢におけるβ−アミロイドを含む、他の異常タンパク質凝集の治療を対象とする。
【0036】
もう1つの局面では、本発明は、神経芽細胞腫などの様々な形態の癌を診断するための方法を提供する。本発明によれば、腫瘍の診断及び/又は病期分類のための方法が提供される。本発明の診断方法は、
a.aPKC特異的プローブ、好ましくはPKCζ特異的プローブを、被験者からの腫瘍試料、例えばヒト生検試料、と接触させること、
b.腫瘍試料へのプローブの結合を検出して、前記腫瘍試料中のaPKCのレベル、量又は活性を定量すること、
c.aPKC特異的プローブを対照試料と接触させること、
d.対照試料へのプローブの結合を検出して、対照試料中のaPKCのレベル、量又は活性を定量すること、及び
e.工程bにおけるaPKCのレベル、量又は活性を工程dにおけるaPKCのレベル、量又は活性と比較して、aPKCのレベル、量又は活性の差が腫瘍のタイプ及び病期分類を指示すること
の工程を含む。
【0037】
本発明のさらにもう1つの局面は、癌、例えば神経芽細胞腫、を治療及び/又は予防するための薬剤スクリーニングの方法を提供する。本発明によれば、分子化合物、例えばペプチド及び低分子、をスクリーニングするための方法が提供される。
【0038】
本発明のさらにもう1つの局面は、遺伝子治療で癌を治療するための方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明は、プロテインキナーゼCの非定型アイソフォーム(aPKC)及び細胞成分の細胞内局在と誤局在へのそれらの関与、特にヒト疾患、例えばアルツハイマー病(AD)及び癌、へのそれらの関与を対象とする。
【0040】
「活性」とは、酵素が、リン酸を基質分子に転移する能力ならびに分子を凝集させる能力を含む、他の物質において化学的変化を誘導するための触媒として働く能力を意味する。ここで使用する「aPKCの活性」又は「aPKC活性」は、例えばaPKCの阻害、神経原線維変化(NFT)又は平野小体(HB)とaPKCの共局在及びaPKCによるタウタンパク質のリン酸化を含む。ここで使用する「活性」はまた、酵素のレベル、量又は局在も指示しうる。
【0041】
「対照」とは、正常被験者又は未変化化学物質、あるいはその正常な状態の被験者又は化学物質を意味する。「対照」はまた、例えば「陽性対照」の場合は、既知の性質を有する化学物質を指示しうる。それ故、「対照」は、正常値である標準範囲との比較として言及されうる。
【0042】
PKC遺伝子ファミリーは、多様な細胞機能を有する少なくとも10個の異なるアイソフォームから成る(Newton,2003)。PKCアイソフォームのすべてが理論上は端を切断されたPKM形態を有しうるが、脳で一貫して認められる唯一のPKM形態は、PKCファミリーの非定型成員(aPKC)であるPKMζである(Sacktorら)。特に、ショウジョウバエでの長期増強(LTP)及び記憶形成の維持におけるキー分子であるPKMζは、NFTと共局在することが本発明人によって発見された。従って、PKMζシグナル伝達の分断は、ADなどの神経障害の病因に寄与すると考えられる。
【0043】
「PKMζシグナル伝達の分断」とは、キナーゼ又はそのエフェクター、基質及び関連分子のレベル、局在又は活性の上昇又は低下を意味する。
【0044】
ここで使用する「調節すること」又は「調節する」は、阻害すること又は阻害する、及び活性化すること又は活性化する、をも包含する。
【0045】
本発明によれば、aPKC機能の変化は細胞骨格タウタンパク質の過剰リン酸化を導きうる。図1参照。同じく本発明によれば、aPKCはNFTと共局在する。図2参照。
【0046】
MT結合領域の周囲に集まる部位でのタウのリン酸化は、MTへのタウの結合を阻害する。実際に、ADの脳及びNFTで認められるタウは、ヒト成人の脳では通常リン酸化されない多くの部位で過剰リン酸化されている。本発明は、タウのリン酸化はMTからのその解離及び細胞質における蓄積を引き起こし、それが次にタウ凝集物の形成、そして最終的にはNFTを導きうると認識する。
【0047】
本発明によれば、NFTへのaPKCの局在及びaPKCがタウをリン酸化する能力は、ADなどの神経系疾患ではaPKCが変化していることを確認する。従って、aPKC、特にPKMζとNFTの共局在は、aPKCがタウリン酸化に関与することを強く示唆する。それ故、本発明は、aPKC、特にPKMζの活性を利用して、ADなどの神経障害の診断、薬剤スクリーニング及び治療のために有用な組成物及び方法を提供する。
【0048】
「精神障害」は、ヒト及び動物の行動に関する精神の疾患を指す。「神経障害」は、神経系の疾患を指す。「神経変性疾患」は、神経系におけるニューロンの進行性変性によって特徴付けられる疾患を指す。
【0049】
従って、本発明は、後天性てんかん性失語症、急性播種性脳脊髄炎、副腎白質ジストロフィー、脳梁発育不全、失認、エカルディ(Aicardi)症候群、アレグザンダー(Alexander)病、アルパーズ(Alpers)病、交代性片麻痺、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、無脳症、アンジェルマン(Angelman)症候群、血管腫症、無酸素症、失語症、失行症、クモ膜嚢胞、クモ膜炎、アーノルド−キアリ(Arnold−Chiari)奇形、動静脈奇形、アスペルガー症候群、毛細血管拡張性運動失調症、注意欠陥多動性障害、自閉症、自律神経機能障害、背痛、バッテン(Batten)病、ベーチェット病、ベル麻痺、良性特発性眼瞼痙攣、良性限局性筋萎縮症、良性頭蓋内高血圧症、ビンスワンガー(Binswanger)病、眼瞼痙攣、ブロッホ−サルツバーガー(Bloch−Sulzberger)症候群、腕神経叢損傷、脳膿瘍、脳損傷、脳腫瘍、脊髄腫瘍、ブラウン−セカール症候群、カナバン(Canavan)病、手根管症候群、灼熱痛、中心性疼痛症候群、橋中央ミエリン溶解、頭部障害、脳動脈瘤、脳動脈硬化症、脳萎縮症、脳性巨人症、脳性麻痺、シャルコー−マリー−ツース病、キアリ奇形、舞踏病、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、慢性疼痛、慢性局所痛症候群、コフィン−ローリー症候群、遷延性植物状態を含む昏睡、先天性両側顔面神経麻痺、大脳皮質基底核変性症、頭蓋動脈炎、頭蓋骨癒合症、クロイツフェルト−ヤコブ病、蓄積外傷疾患、クッシング症候群、巨大細胞性封入体症(CIBD)、サイトメガロウイルス感染、ダンシングアイズ−ダンシングフィート症候群(Dancing eyes−dancing feet syndrome)、ダンディ−ウォーカー(Dandy−Walker)症候群、ドーソン(Dawson)病、ド・モルシェ(De Morsier)症候群、デジェリン−クルンプケ(Dejerine−Klumpke)麻痺、痴呆、皮膚筋炎、糖尿病性神経障害、広汎性硬化症、自律神経障害、書字障害、失読症、失調症、早期乳児てんかん性脳症、トルコ鞍空虚症候群、脳炎、脳ヘルニア、脳三叉神経領域血管腫症、てんかん、エルプ(Erb’s)麻痺、本態性振戦、ファブリー(Fabry’s)病、ファール(Fahr’s)症候群、失神、家族性痙性麻痺、熱性痙攣、フィッシャー症候群、フリートライヒ(Friedreich’s)運動失調、ゴシェ(Gaucher’s)病、ゲルストマン(Gerstmann’s)症候群、巨細胞性動脈炎、巨細胞性封入病、球様細胞白質萎縮症、ギラン−バレー(Guillain−Barre)症候群、HTLV−1関連脊髄症、ハレルフォルデン−シュパッツ(Hallervorden−Spatz)病、頭部損傷、頭痛、片側顔面攣縮、遺伝性痙性対麻痺、遺伝性多発神経炎性失調、耳帯状疱疹、帯状疱疹、平山症候群、全前脳症、ハンチントン病、内水頭症、水頭症、副腎皮質機能亢進症、低酸素症、免疫介在性脳脊髄炎、封入体筋炎、色素失調症、乳児フィタン酸蓄積症、乳児レフサム(Refsum)病、乳児痙攣、炎症性筋障害、頭蓋内嚢胞、頭蓋内圧亢進、ジュベール(Joubert)症候群、キーンズ−セイアー(Kearns−Sayre)症候群、ケネディ(Kennedy)病、Kinsbourne症候群、クリペル−フェーユ(Klippel Feil)症候群、クラッベ(Krabbe)病、クーゲルベルク−ヴェランデル(Kugelberg−Welander)病、クール(Kuru)、ラフォラ(Lafora)病、ランバート−イートン(Lambert−Eaton)筋無力症症候群、ランドー−クレッフナー(Landau−Kleffner)症候群、外側髄(ヴァレンベルク(Wallenberg))症候群、学習障害、リー(Leigh’s)病、レノックス−ガストー(Lennox−Gastaut)症候群、レッシュ−ナイハン(Lesch−Nyhan)症候群、白質萎縮症、レビー小体型痴呆、脳回欠損、閉じ込め症候群、ルー・ゲーリグ(Lou Gehrig’s)病、腰椎椎間板症、ライム病−神経系後遺症、マチャド−ジョセフ(Machado−Joseph)病、大脳症、巨大脳髄症、メルカーソン−ローゼンタール(Melkersson−Rosenthal)症候群、メニエール(Menieres)病、髄膜炎、メンケズ(Menkes)病、異染性白質萎縮症、小頭症、片頭痛、ミラー−フィッシャー症候群、小卒中、ミトコンドリア筋障害、メービウス(Mobius)症候群、単肢筋萎縮症、運動ニューロン病、もやもや病、ムコ多糖体症、多発脳梗塞性痴呆、多病巣性運動性神経障害、多発性硬化症、体位性低血圧を伴う多系統萎縮症、筋ジストロフィー、重症筋無力症、ミエリン破壊性広汎性硬化症、乳児の間代性筋痙攣脳症、間代性筋痙攣、筋障害、先天性筋強直症、ナルコレプシー、神経線維腫症、神経弛緩薬性悪性症候群、AIDSの神経系症状発現、狼瘡の神経系後遺症、ライム病の神経系後遺症、神経筋強直症、神経セロイド・リポフスチン症、ニューロン遊走異常、ニーマン−ピック(Niemann−Pick)病、オサリバン−マックレオド(O’Sullivan−McLeod)症候群、後頭神経痛、潜在性脊椎管列癒合異常(Occult Spinal Dysraphism Sequence)、大田原症候群、オリーブ橋小脳萎縮、眼球クローヌス間代性筋痙攣、視神経炎、起立性低血圧、過剰使用症候群、慢性疼痛、知覚異常、パーキンソン病、先天性パラミオトニア、腫瘍随伴性疾患、発作性発病、パリー−ロンベルク(Parry Romberg)症候群、ペリツェーウス−メルツバッヒャー(Pelizaeus−Merzbacher)病、周期性四肢麻痺、末梢神経障害、遷延性植物状態、広汎性発達障害、光性くしゃみ反射、フィタン酸蓄積症、ピック(Pick’s)病、神経圧迫(Pinched Nerve)、下垂体腫瘍、多発性筋炎、孔脳症、ポリオ後症候群、帯状疱疹後神経痛、感染後脳脊髄炎、体位性低血圧、プラーダー−ヴィリ(Prader−Willi)症候群、原発性側索硬化症、プリオン病、進行性片側顔面萎縮症、進行性多病巣性白質脳症、進行性硬化性ポリオジストロフィー、進行性核上性麻痺、偽脳腫瘍、ラムジー−ハント(Ramsay−Hunt)症候群、I型ラムジー−ハント症候群、II型ラムジー−ハント症候群、ラスムッセン(Rasmussen’s)脳炎、反射性交感神経性ジストロフィー症候群、乳児レフサム(Refsum)病、レフサム病、反復運動性疾患、反復性ストレス障害、下肢静止不能症候群、レトロウイルス関連脊髄症、レット(Rett)症候群、ライ(Reye’s)症候群、聖ウィトゥス(Saint Vitus)舞踏病、ザントホフ(Sandhoff)病、シンドラー(Schilder’s)病、裂脳症、中隔視神経異形成、揺さぶられっ子症候群、帯状疱疹、シャイ−ドレーガー(Shy−Drager)症候群、シェーグレン(Sjogren’s)症候群、睡眠時無呼吸、ソートー(Soto’s)症候群、痙縮、二分脊椎、脊髄損傷、脊髄腫瘍、脊髄性筋萎縮症、スティッフ−パーソン(Stiff−Person)症候群、脳梗塞、スタージ−ウェーバー(Sturge−Weber)症候群、亜急性硬化性汎脳炎、皮質下動脈硬化性脳症、シドナム(Sydenham)舞踏病、失神、脊髄空洞症、遅発性運動障害、テイ−サックス(Tay−Sachs)病、側頭動脈炎、脊髄係留症候群、トムゼン(Thomsen)病、胸郭出口症候群、疼痛性チック、トッド(Todd’s)麻痺、ツレット(Tourette)症候群、一過性脳虚血発作、伝染性海綿状脳症、横断性脊髄炎、外傷性脳損傷、振戦、三叉神経痛、熱帯痙性不全対麻痺、結節硬化症、側頭動脈炎を含む脈管炎、フォン・ヒッペル−リンダウ(Von Hippel−Lindau)病(VHL)、ヴァレンベルク(Wallenberg’s)症候群、ヴェルドニッヒ−ホフマン(Werdnig−Hoffinan)病、ウェスト(West)症候群、むち打ち、ウィリアムズ(Williams)症候群、ウィルソン(Wilson’s)病、ツェルヴェーガー(Zellweger)症候群、を含むがこれらに限定されない、神経系疾患の検出、診断、治療、予防又は予後において使用することができる。
【0050】
本発明はまた、加齢、アルツハイマー病(家族性、散発性)、筋萎縮性側索硬化症/グアム島のパーキンソン症痴呆複合、嗜銀性顆粒性疾患、イギリス型アミロイド血管症、大脳皮質基底核変性症、ボクサー痴呆/自傷行為を伴う自閉症、ダウン症候群、第17番染色体に連鎖するパーキンソン症候群を伴う前頭側頭型痴呆、ゲルシュトマン−シュトロイスラー−シャインカー(Gerstmann−Straussler−Scheinker)病、ハレンフォルデン−シュパッツ(Hallenvorden−Spatz)病、封入体筋炎、多系統萎縮症、筋緊張性ジストロフィー、ニーマン−ピック(Niemann−Pick)病C型、グアドループ島の痴呆を伴うパーキンソン病、ピック(Pick’s)病、タングル及び石灰化を伴う初老期痴呆、プリオンタンパク性脳アミロイド血管障害、進行性核上麻痺、脳炎後パーキンソン症候群、亜急性硬化性汎脳炎、タングルオンリー型(Tanle only)痴呆などの、タウパシー(すなわちタウタンパク質に基づく病理を含む障害)の検出、診断、治療、予防又は予後においても使用することができる。
【0051】
また、学術的問題(Academic Problem)、文化変容の問題(acculturation problem)、急性ストレス障害、特定不能の適応障害、不安を伴う適応障害、抑うつ気分を伴う適応障害、行為障害を伴う適応障害、混合性不安及び抑うつ気分を伴う適応障害、情動と行為の混合性障害を伴う適応障害、成人の反社会的行動、特定不能の薬物の有害作用、加齢に関連する認知低下、恐慌性障害の病歴のない広場恐怖症、アルコール乱用、アルコール依存、アルコール中毒、アルコール中毒性せん妄、アルコール離脱症状、アルコール離脱性せん妄、アルコール誘発性不安障害、アルコール誘発性気分障害、アルコール誘発性持続性健忘性障害、アルコール誘発性持続痴呆、妄想を伴うアルコール誘発性精神病性障害、幻覚を伴うアルコール誘発性精神病性障害、アルコール誘発性性機能障害、アルコール誘発性睡眠障害、特定不能のアルコール関連障害、健忘性障害、特定不能の健忘性障害、アンフェタミン乱用、アンフェタミン依存、アンフェタミン中毒、アンフェタミン中毒性せん妄、アンフェタミン離脱症状、アンフェタミン誘発性不安障害、アンフェタミン誘発性気分障害、妄想を伴うアンフェタミン精神障害、幻覚を伴うアンフェタミン誘発性精神病性障害、アンフェタミン誘発性性機能障害、アンフェタミン誘発性睡眠障害、特定不能のアンフェタミン関連障害、神経性食欲不振、反社会的人格異常、不安障害、特定不能の不安障害、アスペルガー障害、合併型注意欠陥/多動性障害、多動性−衝動性優位型注意欠陥多動性障害、注意力障害優位型注意欠陥多動性障害、自閉症、回避性人格障害、死別反応、特定不能の双極性障害、最も新しいエピソードがうつ病で、完全緩解中のI型双極性障害、最も新しいエピソードがうつ病で、部分緩解中のI型双極性障害、最も新しいエピソードがうつ病の軽度I型双極性障害、最も新しいエピソードがうつ病の中等度I型双極性障害、最も新しいエピソードがうつ病で、精神病症状を伴う重度I型双極性障害、最も新しいエピソードがうつ病で、精神病症状を伴わない重度I型双極性障害、最も新しいエピソードがうつ病で、特定不能のI型双極性障害、最も新しいエピソードが軽躁病のI型双極性障害、最も新しいエピソードが躁病で、完全緩解中のI型双極性障害、最も新しいエピソードが躁病で、部分緩解中のI型双極性障害、最も新しいエピソードが躁病の軽度I型双極性障害、最も新しいエピソードが躁病の中等度I型双極性障害、最も新しいエピソードが躁病で、精神病症状を伴う重度I型双極性障害、最も新しいエピソードが躁病で、精神病症状を伴わない重度I型双極性障害、最も新しいエピソードが躁病で、特定不能のI型双極性障害、最も新しいエピソードが混合型で、完全緩解中のI型双極性障害、最も新しいエピソードが混合型で、部分緩解中のI型双極性障害、最も新しいエピソードが混合型の軽度I型双極性障害、最も新しいエピソードが混合型の中等度I型双極性障害、最も新しいエピソードが混合型で、精神病症状を伴う重度I型双極性障害、最も新しいエピソードが混合型で、精神病症状を伴わない重度I型双極性障害、最も新しいエピソードが混合型で、特定不能のI型双極性障害、最も新しいエピソードが特定不能のI型双極性障害、単一躁病エピソードで、完全緩解中のI型双極性障害、単一躁病エピソードで、部分緩解中のI型双極性障害、単一躁病エピソードの軽度I型双極性障害、単一躁病エピソードの中等度I型双極性障害、単一躁病エピソードで、精神病症状を伴う重度I型双極性障害、単一躁病エピソードで、精神病症状を伴わない重度I型双極性障害、単一躁病エピソードで、特定不能のI型双極性障害、II型双極性障害、身体醜形障害、境界知的機能、境界型人格障害、呼吸関連睡眠障害、短期精神病性障害、神経性大食症、カフェイン中毒、カフェイン誘発性不安障害、カフェイン誘発性睡眠障害、特定不能のカフェイン関連性障害、大麻乱用、大麻依存、大麻中毒、大麻中毒性せん妄、大麻誘発性不安障害、妄想を伴う大麻誘発性精神病性障害、幻覚を伴う大麻誘発性精神病性障害、特定不能の大麻関連性障害、緊張病性障害、小児又は青年期反社会的行動、小児期崩壊性障害、慢性運動性又は音声チック障害、概日リズム性睡眠障害、コカイン乱用、コカイン依存、コカイン中毒、コカイン中毒性せん妄、コカイン離脱症状、コカイン誘発性不安障害、コカイン誘発性気分障害、妄想を伴うコカイン誘発性精神病性障害、幻覚を伴うコカイン誘発性精神病性障害、コカイン誘発性性機能障害、コカイン誘発性睡眠障害、特定不能のコカイン関連性障害、特定不能の認知障害、特定不能の言語障害、行為障害、転換性障害、循環病、[一般身体疾患を示すこと]によるせん妄、特定不能のせん妄、妄想性障害、クロイツフェルト−ヤコブ病による痴呆、頭部外傷による痴呆、HIV疾患による痴呆、ハンチントン病による痴呆、パーキンソン病による痴呆、ピック病による痴呆、[一般身体疾患を示すこと]による痴呆、特定不能の痴呆、早期発症で合併症のないアルツハイマー型痴呆、早期発症でせん妄を伴うアルツハイマー型痴呆、早期発症で妄想を伴うアルツハイマー型痴呆、早期発症で抑うつ気分を伴うアルツハイマー型痴呆、晩期発症で合併症のないアルツハイマー型痴呆、晩期発症でせん妄を伴うアルツハイマー型痴呆、晩期発症で妄想を伴うアルツハイマー型痴呆、晩期発症で抑うつ気分を伴うアルツハイマー型痴呆、依存性人格障害、離人症性障害、特定不能の抑うつ性障害、発達性強調運動障害、第2軸に関する延期された診断(Diagnosis Deferred on Axis II)、第1軸に関する延期された診断または状態、特定不能の乳児期、小児期又は青年期の障害、書字表出障害、特定不能の崩壊性行動障害、解離性健忘、特定不能の解離性障害、解離性遁走、解離性同一性障害、性交疼痛(一般身体疾患によるものでない)、特定不能の睡眠不全、気分変調性障害、特定不能の摂食障害、便秘及び溢流尿失禁を伴う大便失禁、便秘及び溢流尿失禁を伴わない大便失禁、遺尿症(一般身体疾患によるものでない)、露出症、表出性言語障害、特定不能の虚偽性障害、合併型心理的及び身体的徴候及び症状を伴う虚偽性障害、身体的徴候及び症状優位型虚偽性障害、心理的徴候及び症状優位型虚偽性障害、乳児期又は幼児期の摂食障害、女性の性交疼痛、女性の性的欲求低下障害、女性オルガズム障害、女性の性的興奮障害、フェチシズム、窃触症、青年期又は成人における性同一性障害、小児における性同一性障害、特定不能の性同一性障害、全般性不安障害、幻覚薬乱用、幻覚薬依存、幻覚薬中毒、幻覚薬中毒性せん妄、幻覚薬性持続性認知障害、幻覚薬誘発性不安障害、幻覚薬誘発性気分障害、妄想を伴う幻覚薬誘発性精神病性障害、幻覚を伴う幻覚薬誘発性精神病性障害、特定不能の幻覚薬関連性障害、演技性人格障害、過眠症、性的欲求低下障害、心気症、同一性の問題、特定不能の衝動調節障害、吸入剤乱用、吸入剤依存、吸入剤中毒、吸入剤中毒性せん妄、吸入剤誘発性不安障害、吸入剤誘発性気分障害、吸入剤誘発性持続性痴呆、妄想を伴う吸入剤誘発性精神病性障害、幻覚を伴う吸入剤誘発性精神病性障害、特定不能の吸入剤関連性障害、不眠症、間欠性爆発性障害、盗癖、特定不能の学習障害、再発性で、完全緩解中の大うつ病性障害、再発性で、部分緩解中の大うつ病性障害、再発性で、軽度の大うつ病性障害、再発性で、中等度の大うつ病性障害、再発性で、精神病症状を伴う重度の大うつ病性障害、再発性で、精神病症状を伴わない重度の大うつ病性障害、再発性で、特定不能の大うつ病性障害、単一エピソードで、完全緩解中の大うつ病性障害、単一エピソードで、
部分緩解中の大うつ病性障害、単一エピソードで、軽度の大うつ病性障害、単一エピソードで、中等度の大うつ病性障害、単一エピソードで、精神病症状を伴う重度の大うつ病性障害、単一エピソードで、精神病症状を伴わない重度の大うつ病性障害、単一エピソードで、特定不能の大うつ病性障害、男性性交疼痛、男性勃起障害、男性の性的欲求低下障害、男性オルガズム障害、仮病、算数障害、特定不能の薬物誘発性運動障害、薬物誘発性姿勢振戦、特定不能の精神障害、重症度特定不能の精神遅滞、軽度精神遅滞、受容−表出混合言語障害、中等度精神遅滞、気分障害、特定不能の気分障害、自己愛性人格障害、ナルコレプシー、小児の養育放棄、(注意の対象が被害者に向けられている場合の)小児の養育放棄、神経弛緩薬性悪性症候群、神経弛緩薬誘発性急性静座不能、神経弛緩薬誘発性急性失調症、神経弛緩薬誘発性パーキンソン症候群、神経弛緩薬誘発性遅発性ジスキネジー、ニコチン依存、ニコチン離脱症状、特定不能のニコチン関連障害、第2軸での診断なし、第1軸での診断又は状態なしの悪夢障害、治療への順守不良、強迫性障害、強迫性人格障害、職業的問題、オピオイド乱用、オピオイド依存、オピオイド中毒、オピオイド中毒性せん妄、オピオイド離脱症状、オピオイド誘発性気分障害、妄想を伴うオピオイド誘発性精神病性障害、幻覚を伴うオピオイド誘発性精神病性障害、オピオイド誘発性性機能障害、オピオイド誘発性睡眠障害、特定不能のオピオイド関連性障害、反抗挑戦性障害、他の(又は未知の)物質乱用、他の(又は未知の)物質依存、他の(又は未知の)物質中毒、他の(又は未知の)物質離脱症状、他の(又は未知の)物質誘発性不安障害、他の(又は未知の)物質誘発性せん妄、他の(又は未知の)物質誘発性気分障害、他の(又は未知の)物質誘発性持続性健忘性障害、他の(又は未知の)物質誘発性持続性痴呆、妄想を伴う他の(又は未知の)物質誘発性精神病性障害、幻覚を伴う他の(又は未知の)物質誘発性精神病性障害、他の(又は未知の)物質誘発性性機能障害、他の(又は未知の)物質誘発性睡眠障害、特定不能の他の(又は未知の)物質関連性障害、他の女性性機能不全、他の男性性機能不全、心理的因子と一般身体疾患の両方に関連する疼痛性障害、心理的因子に関連する疼痛性障害、広場恐怖症を伴う恐慌性障害、広場恐怖症を伴わない恐慌性障害、妄想性人格障害、特定不能の性欲倒錯、特定不能の錯眠、親子関係の問題、配偶者関係の問題、病的賭博、小児性愛、人格変化、特定不能の人格障害、広汎発達障害、人生の局面(phase of life)の問題、フェンシクリジン乱用、フェンシクリジン依存、フェンシクリジン中毒、フェンシクリジン中毒性せん妄、フェンシクリジン誘発性不安障害、フェンシクリジン誘発性気分障害、妄想を伴うフェンシクリジン誘発性精神病性障害、幻覚を伴うフェンシクリジン誘発性精神病性障害、特定不能のフェンシクリジン関連性障害、音韻性障害、成人の身体的虐待、(注意の対象が被害者に向けられている場合の)成人の身体的虐待、小児の身体的虐待、注意の対象が被害者に向けられている場合の)小児の身体的虐待、異食症、多物質依存、心的外傷後ストレス障害、早漏、原発性過眠症、原発性不眠症、最重度精神遅滞、妄想を伴う精神病性障害、幻覚を伴う精神病性障害、特定不能の精神病性障害、放火癖、乳児期又は幼児期の反応性愛着障害、読字障害、特定不能の関係上の問題(Relational Problem)、精神障害又は一般身体疾患に関連する関係上の問題、宗教的又は形而上的問題、レット障害、反芻性障害、分裂感情障害、分裂病質性人格障害、緊張型分裂病、解体型分裂病、妄想型精神分裂病、残遺分裂病、分類不能型精神分裂病、分裂病様障害、分裂病型人格障害、鎮静薬、催眠薬又は抗不安薬乱用、鎮静薬、催眠薬又は抗不安薬依存、鎮静薬、催眠薬又は抗不安薬中毒、鎮静薬、催眠薬又は抗不安薬中毒性せん妄、鎮静薬、催眠薬又は抗不安薬離脱症状、鎮静薬、催眠薬又は抗不安薬誘発性不安障害、鎮静薬、催眠薬又は抗不安薬誘発性気分障害、鎮静薬、催眠薬又は抗不安薬誘発性持続性健忘性障害、鎮静薬、催眠薬又は抗不安薬誘発性持続性痴呆、妄想を伴う鎮静薬、催眠薬又は抗不安薬誘発性精神病性障害、幻覚を伴う鎮静薬、催眠薬又は抗不安薬誘発性精神病性障害、鎮静薬、催眠薬又は抗不安薬誘発性性機能障害、鎮静薬、催眠薬又は抗不安薬誘発性睡眠障害、特定不能の鎮静薬、催眠薬又は抗不安薬関連性障害、選択的無言症、分離不安障害、重度精神遅滞、成人の性的虐待、(注意の対象が被害者に向けられている場合の)成人の性的虐待、小児の性的虐待、(注意の対象が被害者に向けられている場合の)小児の性的虐待、性嫌悪障害、特定不能の性的障害、特定不能の性機能不全、性的マゾヒスム、性的サディズム、共有精神病障害、子孫関係の問題、過眠症型、不眠症型、混合型、錯眠型睡眠障害、夜驚症、無遊病、社会恐怖症、身体化障害、特定不能の身体表現性障害、特定恐怖症、常同運動障害、構音障害、特定不能のチック障害、ツレット障害、一過性チック障害、服装倒錯的フェチシズム、抜毛癖、分類不能の身体表現性障害、特定不能の精神障害(非精神病性)、膣痙(一般身体疾患によるものでない)、合併症のない血管性痴呆、せん妄を伴う血管性痴呆、妄想を伴う血管性痴呆、抑うつ気分を伴う血管性痴呆、窃視症を含む、精神障害の検出、診断、治療、予防又は予後のための使用も本発明に包含される。
【0052】
「標識」、「標識された」又は「検出可能に標識された」は、例えば指標化アビジンなどの断片成分の結合によって検出できるビオチンのような成分のポリペプチドへの放射標識化合物の組込み又は結合による、検出可能なマーカーの組込みを指す。ポリペプチド、核酸、炭水化物及び生物学的又は有機分子を標識する方法は当技術分野において既知である。そのような標識は、放射能、蛍光、色、化学発光又は当技術分野において既知の又は今後開発される他の読み出し情報などの、様々な読み出し情報を有しうる。読み出し情報は、β−ガラクトシダーゼ、β−ラクタマーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼなどの酵素活性;H、14C、35S、125I又は131I)などの放射性同位元素;グリーン蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光タンパク質;あるいはFITC、ローダミン及びランタニドなどの他の蛍光標識に基づきうる。該当する場合は、これらの標識はレポーター遺伝子の発現の産物でありえ、前記の語は当技術分野において理解されている通りである。レポーター遺伝子の例は、β−ラクタマーゼ、(1998年4月21日発行のTsienらの米国特許第5,741,657号)及びグリーン蛍光タンパク質(1998年7月7日発行のTsienらの米国特許第5,777,079号;1998年9月8日発行のCormackらの米国特許第5,804,387号)である。
【0053】
「被験化学物質」又は「被験化合物」又は「候補化合物」は、推定上の調節因子である、本発明の少なくとも1つの方法によって試験される化学物質、組成物又は抽出物を指す。被験化学物質は、無機、有機又は生体分子などの、いかなる化学組成物でもありうる。生体分子は、細胞中に認められる又は少なくとも一部が細胞によって生産される生物由来の分子でありえ、ポリペプチド、核酸、脂質、炭水化物又はそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。被験化学物質は、通常は、対象とする標的に結合しないことが知られている。ここで使用する「化合物を特定すること」又は「薬剤をスクリーニングすること」は、候補化合物の推定上の調節又は治療機能を判定する工程を指す。
【0054】
「対照被験化学物質」又は「対照化合物」は、標的に結合することが知られている化学物質を指す(例えば既知のアゴニスト、アンタゴニスト、部分的アゴニスト又は逆アゴニスト)。被験化学物質は、典型的には、アッセイにおけるシグナルの特異性を判定するために標的の機能を変化させる対照条件として混合物に添加される化学物質を含まない。そのような対照化学物質又は条件は、(1)タンパク質構造を非特異的に又は実質的に破壊する(例えば尿素又はグアニジウムなどの変性剤、ジチオトレイトール及びβ−メルカプトエタノールなどのスルフヒドリル試薬)、(2)一般に細胞代謝を阻害する(例えばミトコンドリア脱共役剤)及び(3)タンパク質の静電的又は疎水的相互作用を非特異的に破壊する(例えば高い塩濃度あるいは疎水的又は静電的相互作用を非特異的に破壊するのに十分な濃度の界面活性剤)、化学物質を包含する。「被験化学物質」又は「候補化合物」の語はまた、典型的には、被験者への毒性の故に特定適応症のための治療的使用に適さないことが知られている化学物質を含まない。通常は、様々なあらかじめ定められた濃度の被験化学物質を、それらの活性を判定するために使用する。被験化学物質の分子量が既知である場合は、以下の範囲:約0.001μmol〜約10mmol、好ましくは約0.01μmol〜約1mmol、より好ましくは約0.1μmol〜約100μmol、の濃度が使用できる。抽出物を被験化学物質として使用するときは、使用する被験化学物質の濃度を重量対容量ベースで表わすことができる。これらの状況下で、以下の範囲:約0.001μg/ml〜約1mg/ml、好ましくは約0.01μg/ml〜約100μg/ml、より好ましくは約0.1μg/ml〜約10μg/ml、の濃度が使用できる。
【0055】
「高分子」は、タンパク質、核酸又は多糖類などの、100万ダルトン以上の分子質量を有する分子を指す。
【0056】
ここで使用するとき「治療すること」又は「治療」は、神経変性又は神経細胞死を阻止すること、疾患状態の症状を防ぐ又は軽減するように神経成長を促進又は刺激することを含むが、これらに限定されない、ADなどの疾患状態の発症(すなわち臨床症状発現)後の臨床症状を改善、抑制、緩和又は排除することを意味する。そのような治療は、化学療法剤又は被験化合物などの化学物質及び/又は電気パルス(エレクトロイノベーションなど)、磁場又は放射線(放射線治療など)などの非化学物質治療(例えばBuonannoら、Nucleic Acids Res.20:539−544(1992)参照)を含みうる。有効な又は成功裏の治療は臨床的に観察可能な改善を提供する。
【0057】
「候補治療方法」とは、被験者への候補化合物の投与、又は被験者の環境、食事、行動の変更を意味する。「対照治療方法」とは、いかなる治療又は変更も加えずに維持される被験者の自然の状況又は状態、あるいは既知の基準又は性質を有する治療方法を実施することを意味する。
【0058】
「予防する」、「予防すること」又は「予防」とは、例えばADなどの、神経疾患の症状が治療によって改善、抑制、緩和又は排除された後、前記疾患の症状の再発及び/又は悪化及び/又は進行の可能性を低下、軽減又は排除することを意味する。
【0059】
「特異的結合成員」は、沈殿析出のような、互いに非特異的に会合するのではなく互いに特異的に結合することができる2又はそれ以上の成分の群の成員を指す。特異的結合成員の例は、抗原−抗体、受容体−リガンド及び核酸−核酸対を含むが、これらに限定されない。
【0060】
第一特異的結合成員と少なくとも1つの他の特異的結合成員の結合に関して「特異的」、「特異的に」、「特異的に結合する」又は「特異的結合」は、選択的であり、非特異的ではない結合を指す。好ましくは、特異的結合反応は特異的結合成員に関してユニークであるが、必ずしもそうでなくてもよい。
【0061】
「検出可能に結合する」又は「検出可能結合」は、検出することができる、1つの特異的結合成員と少なくとも1つの他の特異的結合成員の特異的結合を指す。例えば、1つの特異的結合成員を、検出可能な標識の存在が特異的結合事象を指示するように、検出可能に標識することができる。そのような検出可能結合の検出限界は、使用する検出可能標識及び使用する検出方法又は装置に関係する。
【0062】
「抗体」は、あらゆるクラス又はサブクラスの免疫グロブリン、その部分又はその活性フラグメントを指し、但しその場合、抗体の活性フラグメントはその特異的結合能力を保持する。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又はそれらの混合物でありうる。
【0063】
「プローブ」とは、標識されるか又はマークされた、試料中のもう1つ別の物質を検出又は特定するために使用される、DNA配列のフラグメントなどの物質、好ましくは生体分子を意味する。プローブの一例は、特定遺伝子に選択的に結合し、放射性同位元素又は蛍光マーカーで標識されており、それ故単離又は特定することができる生体分子、あるいは標識して他の核酸の混合物からの相補的分子にハイブリダイズするために使用できる核酸の鎖でありうる。ここで使用する「プローブ」の語はまた、何らかの方法で(例えば放射能によって、蛍光によって又は免疫学的に)標識して、研究者が対象とする一定のDNA又はRNA配列にハイブリダイズすることによってそれを発見し、マークするために使用される、既知のヌクレオチド配列を有する一本鎖核酸分子も言及しうる。本発明において使用するプローブの特定例は抗aPKC抗血清である。
【0064】
「aPKC特異的プローブ」において使用されるような「特異的プローブ」は、aPKC遺伝子又は遺伝子産物に特異的に結合するプローブを指す。好ましくは、そのような特異的結合は検出可能結合である。
【0065】
「組織」は、当技術分野において既知である細胞の集合を指す。細胞の「培養」は、当技術分野において既知である細胞の集合であり、細胞のクローン集団又は細胞の混合集団でありうる。「腫瘍組織」は、少なくとも1つの腫瘍に由来する少なくとも1つの細胞を含む細胞の集合である。
【0066】
「組織抽出物」は、組織及び/又は組織中の細胞の少なくとも1つの細胞成分がもはやその自然の状態又は環境にはないように処理された、組織の少なくとも1つのソースから誘導される標本を指す。例えば、組織抽出物は、当技術分野で既知の方法を用いて組織を破壊することによって作製できる。
【0067】
「試料」は、例えば細胞、又は細胞からの細胞抽出物、組織、生検試料、組織抽出物、を含む物理的試料を包含する。試料は、被験者又は動物又はその部分などの生物学的ソースから、又は細胞培養からでありうる。生物学的ソースからの試料は、正常又は異常生物(新生物のような、ある状態又は疾患状態に罹患している生物など)又はその部分からでありえ、及び健常又は異常(疾患性又は新生物性など)液体、組織又は器官を含む、いかなる液体、組織又は器官からであってもよい。被験者又は動物からの試料は、被験者又は動物から入手した状態のまま、切片化、骨髄標本の場合のような吸引などによって加工して、あるいは試料からの細胞を一次又は連続細胞培養又は細胞系統としてインビトロで維持できるように培養して、本発明において使用することができる。例えば、本発明における試料は、組織生検、脳脊髄液(CSF)、又は血液試料などの体液でありうる。特に、「腫瘍試料」は、少なくとも1つの腫瘍に由来する少なくとも1つの細胞を含む試料である。
【0068】
「診断すること」又は「診断」は、被験者が、神経系疾患又は癌などの疾患又は状態を含むかどうかの判定を指す。「診断すること」はまた、ある癌を他の癌から区別することを指す。
【0069】
「予後判定」又は「予後」とは、癌などの疾患又は状態の経過の判定又は予測を意味する。疾患又は状態の経過は、例えば平均余命又は生活の質に基づいて予後判定することができる。予後判定は、1又はそれ以上の治療を伴う又は伴わない、疾患又は状態の時間経過の判定を含む。治療を考慮する場合は、予後判定は、癌などの疾患または状態のための治療の効果を予後判定すること、又は悪性度を予後判定することを包含する。
【0070】
「対照試料」は、当技術分野において既知であり、個々のアッセイのために適切である、陽性又は陰性対照として働く試料を指す。対照は、アッセイと同時に実施するか又は事前又は事後に実施することができる。アッセイの有効性を判定するためにアッセイの結果を対照と比較することができる。対照はまた、アッセイの結果が半定量的又は定量的性質を持ちうるように、標準曲線を作成するためにも使用できる。標準範囲、すなわち既知の正常値の範囲も対照として使用できる。
【0071】
「標準DNA」又は「標準DNA配列」とは、その配列が既知で正常であり、すなわちいかなる突然変異も含まず、及び比較、検定又は分析するDNA分子と同じ領域を種のゲノム内に含む場合の、DNA配列を意味する。
【0072】
「プロモーター」又は「プロモーター領域」とは、コード配列又は対象遺伝子の発現を制御する核酸配列を意味する。「発現を制御する」とは、RNAポリメラーゼ及び/又は正しい部位で転写を開始するために必要な他の因子についての認識部位を提供することによってRNA(例えばmRNA又は非コード転写産物)の生産を制御することを意味する。プロモーター又はプロモーター領域は、通常、コード配列の上流(5’側)に位置する。本発明によって考慮されるように、プロモーター又はプロモーター領域は、様々な調節配列への連結、ランダムな又は制御された突然変異誘発、及びエンハンサー配列の付加又は複製によって誘導されるプロモーターの変異型を包含しうる。
【0073】
「導入遺伝子」とは、その核酸配列が形質転換される細胞又は生物にとって非天然である核酸配列を意味する。「導入遺伝子」はまた、指定組換えによる非天然核酸配列の挿入によって修飾された生物の天然遺伝子の成分の部分を包含する。
【0074】
本発明は、プロテインキナーゼCの非定型アイソフォーム(aPKC)、例えばPKMζの量、局在及び活性の特定、及びアルツハイマー病(AD)などの神経系の疾患におけるそれらの役割を対象とする。
【0075】
従って、本発明の1つの実施形態はADの診断を対象とする。本発明によれば、aPKC特異的プローブを使用して、被験者において神経機能障害又は神経系疾患を診断するための方法が提供される。本発明の診断方法は、
a.被験者からの試料、例えば組織生検、脳脊髄液(CSF)又は血液試料、をaPKC特異的プローブと接触させること、
b.前記試料への前記プローブの結合を検出して、試料中のaPKCの量、局在又は活性を測定すること、
c.対照試料をaPKC特異的プローブと接触させること、
d.前記対照試料、例えば組織生検、CSF又は血液試料、への前記プローブの結合を検出して、対照試料中のaPKCの量、局在又は活性を測定すること、及び
e.工程bにおけるaPKCの量、局在又は活性を工程dにおけるaPKCの量、局在又は活性と比較して、工程bにおけるaPKCの量、局在又は活性が工程dにおけるaPKCの量、局在又は活性と異なる場合は、前記被験者において神経系疾患が存在すること
の工程を含む。
【0076】
本発明によれば、抗体又は核酸の形態のaPKCアイソフォームに対するプローブを使用して、従来の手法(Maniatisら、J.Molecular Cloning,a laboratory manual,1987;Ausubel,F.M.,Current Protocols in Molecular Biology,1987)を通して被験者からの組織におけるaPKCの変化を検出し、それによって個体がADなどの神経疾患を有しているかどうか又は神経疾患を発現する可能性が高いかどうかを確認することができる。これらのプローブは、死後剖検組織、脳生検組織又は他の何らかの組織、組織抽出物又は体液(例えば血液)に関して使用できる。本発明によれば、好ましいプローブは、実施例11で述べるアンチセンスプローブである。同じく本発明によれば、aPKCにおける突然変異についての遺伝子分析を使用して、従来の手法(Ausubel,F.M.,Current Protocols in Molecular Biology,1987)を通して被験者からの組織におけるaPKCの変化を検出し、それによって個体が神経疾患を有しているかどうか又は神経疾患を発現する可能性が高いかどうかを確認することができる。
【0077】
それ故、ADなどの神経疾患を、その疾患を治療及び/又は予防するために初期段階で検出することが本発明の1つの目的である。
【0078】
本発明のもう1つの実施形態は、aPKCの量又は活性を調節するために有用な薬剤又は分子化合物をスクリーニングするための方法を対象とする。本発明によれば、細胞とaPKC特異的プローブを使用して、分子化合物、例えばペプチド及び低分子、をスクリーニングするための方法が提供される。そのような方法は、
a.aPKC遺伝子が発現される細胞を提供すること、
b.前記細胞におけるaPKCの量、局在又は活性の変化を誘導するのに十分な時間、細胞を候補化合物と共にインキュベートすること、
c.前記候補化合物の不在下で、工程bにおけるように細胞をインキュベートすること、
d.工程b及び工程cからの細胞を等量のaPKC特異的プローブと接触させること、
e.前記細胞への前記プローブの結合を検出して、工程b及び工程cからの細胞におけるaPKCの量、局在又は活性を測定すること、及び
f.前記細胞におけるaPKCの量、局在又は活性を比較して、工程bからの細胞におけるaPKCの量、局在又は活性が工程cからの細胞におけるaPKCの量、局在又は活性と異なる場合、前記候補化合物を、aPKCを調節する化合物として特定すること
を含む。
【0079】
脳疾患の治療における使用のための分子化合物をスクリーニングするための1つの選択的方法は、細胞又は動物、例えばマウス、において非定型PKC配列を含む遺伝因子を過剰発現又は欠失させること、及び前記細胞又は動物を非定型PKC活性又はレベルに関して検定することを含む。
【0080】
本発明によれば、aPKCアイソフォームは、AD及び他の神経障害を治療及び/又は予防するための薬剤設計の合理的標的として使用される。薬剤がタンパク質の活性に影響を及ぼす能力を試験するために現在使用可能な数多くの方法が存在する(Enna,S.J.,Current Protocols in Pharmacology,1998)。本発明は、aPKCは神経疾患において鍵となる役割を果たすこと及びaPKCの変化は有用な薬剤をスクリーニングするために使用できることの発見を対象とする。
【0081】
本発明によれば、好ましい化合物は、塩化ケレリスリン(chelerythrine)(aPKC阻害因子)、ζ阻害性ペプチド(ZIP)又は選択的aPKC阻害因子である。ZIPの一例は、ミリストイル化PKCζ偽基質ペプチド、すなわちMyr−SIYRRGARRWRKLY(配列番号10)である。Standaertら、1999、J.Biol.Chem.274(20):14074−78参照。
【0082】
本発明によれば、当業者に既知の方法及び関連試薬を用いることによってaPKCを調節する薬剤をスクリーニングすることができる。そのような3つの慣例的方法がインビボ及びインビトロ系の両方で開発されている。第一は、バキュロウイルス系において組換え発現させたPKMζを使用するキナーゼアッセイである。第二は、免疫蛍光を利用する細胞培養系である。第三は、培養細胞にトランスフェクトした組換えaPKCを使用することである。Ausubel,F.M.,Current Protocols in Molecular Biology,1987参照。
【0083】
本発明によれば、PKMζを含むaPKCは、非慣例的ATP結合部位モチーフGXGXXA(配列番号8)[式中、Gはアミノ酸グリシンであり、Xは何らかのアミノ酸である]を含む。aPKCのこの特殊な特徴は、これらの分子を標的する薬剤が、ATP結合部位の指標モチーフGXGXXG(配列番号9)を有する他のキナーゼ又は他のPKCアイソフォームに比べて有害副作用を有する可能性をより低くする。
【0084】
本発明の特定実施形態では、aPKCと基質を使用して、aPKCの量、局在又は活性を調節するために有用な薬剤又は分子化合物をスクリーニングするためのインビトロ無細胞法が提供される。そのような方法は、
a. aPKCを第一容器において、アデノシン三リン酸(ATP)、好ましくは放射標識されたATP、aPKCの基質、例えばタウタンパク質、及び候補化合物と共に、前記第一容器内のaPKCの量又は活性の変化を誘導するのに十分な時間インキュベートすること、
b.aPKCを第二容器において、ATP、好ましくは放射標識されたATP、及び前記aPKCの基質、例えばタウタンパク質と共に、前記第二容器内のaPKCの量又は活性の変化を誘導するのに十分な時間インキュベートすること、
c.第一容器及び第二容器における基質内へのリン酸の取込みの量を定量すること、及び
d.第一容器と第二容器における取込みの量を比較して、第一容器と第二容器における取込みの量の差が、候補化合物がaPKCの量、局在又は活性を調節する化合物として特定されることの指標であること
を含む。
【0085】
この方法の変法は、基質内へのリン酸の取込みを定量するためにリン特異的抗血清を使用することを含む。
【0086】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、神経障害を治療及び/又は予防するための、遺伝子治療を含む方法を対象とする。本発明によれば、aPKC、例えばPKMζ、に対応する配列(又はaPKCのアンチセンス配列)と発現ベクターを用いる、神経機能障害を治療及び/又は予防するための方法が提供される。前記方法は、
a.aPKC配列、例えばPKMζ、を発現ベクターに挿入すること、及び
b.前記ベクターを被験者、例えば患者、に投与すること、
それによってベクターが神経機能障害を治療及び/又は予防すること
の工程を含む。
【0087】
本発明の方法は、タウタンパク質のリン酸化及びNFTとの共局在などの異常aPKC活性によって特徴付けられる様々な神経障害の治療及び/又は予防において使用することができる。そのようなタウ関連線維状凝集物は、例えばアルツハイマー病(AD)、ピック病(PiD)、進行性核上性麻痺(PSP)及び大脳皮質基底核変性症(CBD)、パーキンソン病(PD)、の神経病理学的指標である。
【0088】
本発明によれば、AD及び他の神経障害においてはaPKC機能が変化する。それ故、本発明によれば、aPKC及び突然変異形態、例えばキナーゼの不活性化形態、を、AD及び他の神経障害を治療及び/又は予防するために導入することができる。遺伝子治療を使用して、aPKCcDNA、好ましくはPKMζcDNA配列又は突然変異型aPKC配列を、これらの疾患を治療するために導入することができる。
【0089】
そのような配列は、好ましくは発現ベクターにおいて提供される。本発明における使用のための発現ベクターは、非ウイルス(例えばプラスミドベクター)、レトロウイルス、アデノウイルス、単純疱疹ウイルス、アデノ関連ウイルス、ポリオウイルス及びワクシニアウイルスなどの、適切な遺伝子治療ベクターを含む。レトロウイルスベクターの例は、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺癌ウイルス(MuMTV)及びラウス肉腫ウイルス(RSV)由来の組換えベクターを含むが、これらに限定されない。遺伝子治療の多数の教示が当業者に入手可能である(Anderson,W.F.,Science,288:627−629,2000l;Anderson,W.F.,Science,226:401−409,1984;Anderson,W.F.,Science,256:808−813,1993;Friedmann,T.,Science,244:1275−1281,1989)。好ましいベクターは、単純疱疹ウイルスベクター(Kellyらの米国特許第5,673,344号)及びアデノウイルスベクター(Barkatsら、Prog Neurobiol,55:333−341,1998)などの神経向性ベクターを含む。
【0090】
さらなる実施形態では、本発明は、神経障害、例えばAD、の検出、治療及び/又は予防のための、PKMζに対する抗体を提供する。
【0091】
本発明はさらに、神経障害、例えばAD、の検出、治療及び/又は予防のための、PKMζに対する抗体を提供する。当業者は、そのようなモノクローナル又はポリクローナル抗体を作製するために周知の手法及び市販の手段のいずれかを使用することができる(Harlowら、Using Antibodies:A Laboratory Manual,1999)。ひとたび抗体が得られれば、そのような抗体が特異的活性を示すかどうかを判定するためにアッセイにおいてそのような抗体を試験することができる。
【0092】
本発明のさらなる実施形態は、神経機能障害の動物モデルとして有用である、aPKCを持たないノックアウトマウスあるいは野生型又は突然変異型aPKCを過剰発現するマウスなどの、トランスジェニック動物を作製するための方法を提供する。前記方法は、
a.例えば当業者に既知のノックアウト手法を使用して動物においてaPKC遺伝子を欠失させることにより、変化したaPKCの量、局在又は活性を有するトランスジェニック動物を作製すること、
b.工程aからのトランスジェニック動物を候補治療法で処置すること、
c.工程aからのトランスジェニック動物を対照治療法で処置すること、
d.工程b及びcからのトランスジェニック動物を生化学的又は行動上の変化に関して検定すること、及び
e.工程b及び工程cからのトランスジェニック動物のアッセイの結果を比較し、その差が神経機能障害を緩和する上での前記候補治療法の効果を指示すること
を含む。
【0093】
前記方法の変法は、単独で又は神経変性に関連する遺伝子、例えばスーパーオキシドジスムターゼ、タウ、β−アミロイド、α−シヌクレイン及びアポリポタンパク質E、内で突然変異又は多型を発現する1又はそれ以上の癌遺伝子と組み合わせて、トランスジェニック動物において野生型又は突然変異型aPKCを過剰発現させることを含む。
【0094】
本発明のさらなる実施形態は、aPKC遺伝子、例えばPKMζI/II及びPKCι/λ、のDNA配列、及びプロモーター領域、エンハンサー領域及び負の調節領域を含む、これらの遺伝子の発現を調節する領域における突然変異又は多型に関するDNAの遺伝子スクリーニングを対象とする。そのようなスクリーニングのための方法は、
a.被験者の試料からDNAを単離すること、
b.工程aからのDNAのaPKC遺伝子又はその調節領域を塩基配列決定すること、及び
c.工程bからのDNA配列を、工程bで塩基配列決定したDNAと同じ領域であるが突然変異を含まない既知の正常DNA配列である標準DNA配列と比較し、工程bからのDNA配列と標準配列の相違が神経又は精神障害に対する遺伝的感受性を指示すること
を含む。
【0095】
本発明の特定実施形態は、上記方法のすべてに関して既知のaPKC相互作用タンパク質の使用を対象とする。
【0096】
本発明はまた、PD、多系統萎縮症(MSA)及びレビー小体型痴呆(DLB)で見られるα−シヌクレイン及びADや正常加齢におけるβ−アミロイドを含む、他の異常タンパク質凝集の診断及び治療を対象とする。
【0097】
本発明によれば、PKCι/λ(aPKCの2つの成員のうちの1つ)などのaPKCタンパク質の異常凝集は神経変性疾患を引き起こしうる。様々なタウタンパク質異常疾患及びα−シヌクレイン異常疾患においてPKCι/λタンパク質が分布することは本発明の発見である。具体的には、免疫細胞化学を用いて、本発明は、抗PKCι/λ抗体がアルツハイマー病(AD)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)及びピック病(PiD)におけるタウ陽性構造;特発性パーキンソン病及びレビー小体型痴呆におけるα−シヌクレイン陽性レビー小体、及び多系統萎縮症におけるグリア封入体;CBD及びPiDにおけるαB−クリスタリン含有の風船状腫大ニューロン(ballooned neuron);及びAD、PiD及び高齢者でのアクチンに富む平野小体を標識しうることを明らかにする。実施例12参照。
【0098】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、本発明は、神経芽細胞腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、リンパ腫(骨髄腫)、白血病(急性骨髄球性白血病(AML)を含む)、黒色腫、扁平上皮癌、肝細胞癌、上皮小体腫瘍、褐色細胞腫、傍神経節腫、血管内リンパ腫症、乳癌、肝癌、肺癌、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、及び結腸直腸癌及び膵癌を含む消化器系の癌などの、様々な形態の癌を診断するための方法を提供する。本発明によれば、腫瘍の診断及び/又は病期分類のための方法が提供される。本発明の診断方法は、
a.aPKC特異的プローブ、好ましくはPKCζ特異的プローブを、被験者からの腫瘍試料、例えばヒト生検試料、と接触させること、
b.腫瘍試料へのプローブの結合を検出して、前記腫瘍試料中のaPKCのレベル、量又は活性を定量すること、
c.aPKC特異的プローブを対照試料と接触させること、
d.対照試料へのプローブの結合を検出して、対照試料中のaPKCのレベル、量又は活性を定量すること、及び
e.工程bにおけるaPKCのレベル、量又は活性を工程dにおけるaPKCのレベル、量又は活性と比較して、aPKCのレベル、量又は活性の差が腫瘍のタイプ及び病期分類を指示すること
の工程を含む。
【0099】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、癌、例えば神経芽細胞腫、を治療及び/又は予防するための薬剤スクリーニングの方法を提供する。本発明によれば、分子化合物、例えばペプチド及び低分子、をスクリーニングするための方法が提供される。
【0100】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、遺伝子治療で癌を治療するための方法を提供する。
【0101】
本発明によれば、発現ベクター又は抗体などの、ここで提供する治療組成物は、経口、眼、鼻、局所、経皮、非経口(例えば静脈内、腹腔内、皮内、皮下又は筋肉内)、頭蓋内、大脳内、髄腔内、膣内、子宮内又は直腸経路を含むがこれらに限定されない、標準経路によって治療される被験者に投与することができる。治療される状態に依存して、ある経路が他の経路よりも好ましいと考えられるが、それは当業者によって決定されうる。例えば、標的領域が、眼又は顔面組織の神経状態のような局所適用によって容易に処置しうる組織又は器官を含むときは、局所又は皮膚経路を選択することができる。ある種の状態については、血液−脳関門によって生じる問題を回避するために、損傷組織又は細胞の付近への直接注入又は外科的移植が好ましい。直接注入又は移植による中枢神経系(CNS)への送達の成功が実証されている(Ottoら、J Neurosci Res,22:83−91,1989;Goodmanら、Goodman & Gilman’s the Pharmacological Basis of Therapeutics,2001;Williamsら、Proc Natl Acad Sci USA,83:9231−35,1986)。
【0102】
本発明によれば、最良の治療効果を達成するためには、好ましくはできるだけ早く、例えばNFTによって生じる神経細胞損傷又は神経細胞死後に、治療成分をその必要のある被験者に投与する。投与する量は被験者及び投与経路によって異なるが、疾患又は障害を治療又は予防する濃度を達成するのに十分であるか又は前記aPKC活性を正常レベルに維持するのに十分であるべきである。「正常レベル」とは、生体分子又は化合物が自然な方法で機能するか又は生成し、観察しうる又は科学的に検出可能な異常又は欠損を有さないレベルを意味する。例えば、人体又はその器官又は組織におけるaPKCの正常レベルは、人体又はその器官又は組織における全タンパク質の約0.005%〜約0.05%であり、好ましくは前記器官はヒトの脳である。本発明の特定実施形態では、ZIP又はケレリスリンを所望組織中に約100nM〜約10μM投与することができる。
【0103】
本発明を以下の非制限的実施例によってさらに説明する。この実施例は本発明の好ましい実施形態を明らかにするために含まれるものである。実施例において開示する手法は発明人が本発明の実施において良好に機能することを発見した手法であることは当業者に認識される。しかし、当業者は、本発明の開示に照らして、開示される特定実施形態に多くの変更を加えることができ、及びさらに本発明の精神及び範囲から逸脱することなく同様又は類似の結果を入手することができ、それ故記述する又は付属の図面に示すすべての事柄は制限的な意味ではなく例示と解釈されるべきであることを認識する。ここで引用するすべての参考文献は、参照して明白にここに組み込まれる。
【実施例1】
【0104】
PKCアイソザイム抗血清の生産
免疫原として使用したペプチドは、Quality Controlled Biochemicals(Hopkinton,MA)によって合成され、PKCζのアミノ末端(ζ−N1、TDPKMDRSGGRVRLKC、配列番号1)、触媒ドメイン(ζ−C2、TLPPFQPQITDDYGLC、配列番号2)又はカルボキシル末端(ζ−C1、EYINPLLLSAEESV、配列番号3)に対応した。さらに、結合のために各々の配列に末端システイン残基を付加した。前記ペプチドを、製造者の指示に従ってマレイミド活性化ウシ血清アルブミン(BSA,Pierce,Rockford,イリノイ州)に結合した。ペプチド複合体をTitermax(CytRx Corp.,Norcross,GA)と混合し、1〜3週齢の雌性ニュージーランドウサギに筋肉内注射した。4週間隔で3回の追加投与後、免疫ペプチドを製造者の指示に従って複合しておいたSulpholinkゲルカラム(Pierce,Rockford,イリノイ州)でアフィニティー精製した。ι/λに対する抗血清は、ι/λ触媒ドメインに対して作製したマウスモノクローナル抗体である(Transduction Laboratories,Lexington,ケンタッキー州)。
【実施例2】
【0105】
AD脳のウエスタンブロット
神経病理学的に確認されたADの4症例と神経疾患のない個人からの対照3例に由来する剖検脳組織からの新鮮凍結組織を、プロテアーゼ阻害因子(50mM HEPES、pH7.5、5mM EDTA、5mM EGTA、5mM 2−メルカプトエタノール0.1mMフッ化フェニルメチルスルホニル、アプロチニン(17カリクレイン単位/ml)、5mMベンズアミド、0.1mMロイペプチン及びホスファターゼ阻害因子(50mM NaF、40mM β−グリセロールリン酸塩、10mMピロリン酸塩)を含む緩衝液中で均質化した。Pierceアッセイによってタンパク質濃度を測定した。試料緩衝液を添加し、試料を10分間煮沸した。全タンパク質15μgをSDS−PAGEに供し、ニトロセルロース膜に移して、特異的抗PKCζ及び抗PKCι/λ抗体でプローブし、高感度化学発光(Amersham Biosciences,Freiburg,ドイツ)によって視覚化した。
【実施例3】
【0106】
病理染色
パラフィン包埋組織から8μ切片を切り出した。すべての切片を使用前に脱パラフィンし、再水和した。ヘマトキシリン−エオシン染色のために、切片をGillsヘマトキシリン中で5分間インキュベートし、水を2回交換して洗浄し、その後ブルーイング液に10回浸して、再び洗浄した。次に、切片をエオシンY中で4分間インキュベートし、脱水して、カバーガラスでおおった。Sevier−Mungerの銀染色のために、スライドを60℃の硝酸銀溶液(20%)中で15分間インキュベートした。スライドを洗浄し、清浄な乾燥染色広口ビンに入れた。次にスライドをアンモニア銀溶液中で5〜30分間発色させた。水を3回交換して切片を洗浄し、5%チオ硫酸ナトリウム中で2分間インキュベートした。最後に、スライドを水で洗い、脱水して、カバーガラスでおおった。
【実施例4】
【0107】
抗原回復
抗原回復のために、脱パラフィンし、再水和したスライドを10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中に沈めて、マイクロ波を適用した。次に加熱した蒸留水を含む第二容器にスライドを移し、放置して冷却した。スライドをPBS中で5分間洗浄した。一部のスライドは、クエン酸処理の前にギ酸で3分間処理した。
【実施例5】
【0108】
免疫組織化学染色
スライドを3%過酸化水素で10分間処理し、PBS中で5分間洗浄して、4%正常ウマ血清中で20分間遮断した。次に恒湿室において回転装置の台上で一晩、組織を一次抗体中でインキュベートした。その翌日、PBSを2回交換して各々10分間ずつスライドを洗浄し、ビオチニル化二次抗体(1:200)中で30分間インキュベートした。次に、PBSを2回交換して各々5分間ずつスライドを再び洗浄し、その後R.T.U.ABC試薬(Vector Laboratories)中で30分間インキュベートして、再びPBSを2回交換して各々10分間ずつ洗浄した。次に組織をDAB溶液中で発色させ、水道水で洗浄して、ヘマトキシリンで対比染色し、脱水して、カバーガラスでおおった。
【実施例6】
【0109】
PKMζタンパク質はヒト脳内に存在する
抗血清の特異性を確認し、ヒトにおけるPKMζタンパク質を実証するために、ヒト脳試料のホモジネートに関するウエスタンブロット法を実施した(図3)。Rush Alzheimer’s Disease Center(シカゴ,イリノイ)から新鮮凍結組織を入手した(表1)。AD(4.75時間)と対照(4.00時間)症例についての平均PMIは同じであった。AD(69.5歳)症例の平均年齢は対照(86.7歳)よりも低かった。すべての患者に関して診断を病理学的に確認した。
【表1】

【0110】
PKCι抗体は、試験したすべての領域において〜79kDの1つのバンドを示した。〜50kDの弱い小さなバンドが認められ、小量のPKMιの存在を示唆した。両方の非定型形態を検出する、C末端抗体、ζ−C1は、〜55、〜79、及び〜160kDの3つのバンドを検出した。これらのバンドはそれぞれ、aPKM、aPKC及び未特定バンドを表わす。aPKCバンドは小脳において最も強く、他のすべての領域では弱かった。ιとは交叉反応しないが、PKCζ及びPKMζの両方と反応する、ζ特異的抗体、ζ−C2は、〜55kDと〜79kDの主要バンド及び〜60kDの小さなバンドを検出した。〜79kDバンドはPKCζであり、小脳にのみ存在した。55kDと60kDバンドは試験したすべての領域で見られた。調節ドメインを有するζ形態とだけ反応する、N末端抗体、ζ−N1は、〜45kDの1つの強い未特定バンドを示した。この抗体ではPKM又はPKC形態は見られなかった。
【実施例7】
【0111】
ADの上側頭皮質においてはPKCγ及びPKCι/λは低下するが、PKMζは低下しない
aPKCのレベルの変化が存在するかどうかを判定するために、AD(n=4)及び対照(n=3)に由来する上側頭皮質から調製した全タンパク質ホモジネートに関して、ウエスタンブロットのデンシトメトリー分析を実施した。PKCγを比較のために含めた。PKCγは、対照(0.79±0.34)よりもAD試料(0.30±0.07)において有意に低く(p=0.031)、63%の低下であった。対照(1.15±0.08)と比べてAD(0.86±0.08)では、より小さいが統計的に有意のPKCιの低下が存在し、25%の低下であった。これに対し、PKMζは、AD(0.69±0.39)と対照(0.63±0.22)において有意差がなかった。図4参照。
【実施例8】
【0112】
ADの尾状核においてはPKCι/λは上昇するが、PKMζあるいはPKCγは上昇しない
比較のために、尾状核に関してウエスタンブロットを実施した。PKCγは、対照(1.24±0.10)と比較してAD試料(1.44±0.15)では有意に変化しなかった。AD(0.86±0.08)では対照(1.15±0.08)と比べてより小さいが統計的に有意のPKCι(p=0.006)の低下が存在し、25%の低下であった。これに対し、PKMζはAD(0.69±0.39)と対照(0.63±0.22)において有意差がなかった。図5参照。
【実施例9】
【0113】
ヒト脳におけるaPKCの局在
ヒト脳においてaPKCを局在決定するために、対照症例(n=2)からのパラフィン包埋切片に関して免疫組織化学を実施した。
【表2】

【0114】
ζ−C1による染色は錘体細胞の神経細胞形質において明白であり、近位樹状突起へと伸びていた(図6B)。神経核染色は存在しなかった。
【0115】
染色は神経膠細胞においても認められた。海馬CA−4領域における星状細胞の細胞質及び核はζ−C1で強く染まり、aPKCの存在を指示した(図7B)。星状細胞におけるPKCι/λの免疫反応性も皮質において認められた(図7A)。ζ−C2は星状細胞を染色しなかった。
【0116】
脳室上衣細胞もζ−C1で染色された(図8)。ζ−C2及びι/λに関しても同様の結果が見られ、この細胞型におけるζ及びι/λの両方の形態の存在を指示した。
【実施例10】
【0117】
PKMζは神経原線維変化及び平野小体と共局在する
ADにおけるaPKCの分布の変化を調べるために、神経病理学的に確認されたADを有する患者(n=4)からの海馬の切片をaPKC抗体で染色した。ニューロピルでの高い染色にもかかわらず、NFTではごくわずかなι/λ免疫反応性しか存在しなかった(図9、右上)。これに対し、ζ−C1及びζ−C2の両方がNFTと強く反応した(図9、右中央及び左)。銀染色は、この領域におけるSP及びNFTの存在を確認する。ニューロピルスレッド、ジストロフィー性神経突起及びSPは標識できなかった。ニューロピルスレッドとジストロフィー性神経突起はいずれもPHFを含むので、エピトープを顕在化するために切片をクエン酸塩とギ酸で前処理した。健在化後にζ−C1で染色したとき、ジストロフィー性神経突起及びニューロピルスレッドにおける免疫反応性が見られた。同じ領域内の非隣接切片からの銀染色はSPの存在を確認した。
【0118】
ζ−C1、ζ−C2及びι/λにより、HBにおいて強い染色が見られた。H&Eで、HBの存在が確認された。図11参照。
【実施例11】
【0119】
PKMζの分布は独立ζ触媒ドメインをコードするユニーク脳RNAの分布と相関する
PKCζの非常に低いレベルにもかかわらず前脳においてPKMζが豊富であることについての1つの説明は、PKMζがPKCζのタンパク質分解産物ではないということである。ζ遺伝子は2組のRNA:完全長PKCζmRNA及びζ’と称されるRNAを産生する(図12A)。ζ’RNAの3’末端は、PKCζmRNAにおけるものと同じである、部分的ζ調節ドメイン及びその完全なヒンジ及び触媒ドメインから成る(図12A)。ζ’RNAの5’末端は、しかしながら、ζ調節ドメインの翻訳を開始するためのAUGを欠くユニーク配列である。ζ配列のオープンリーディングフレーム(ORF)についての最初のAUGはそのヒンジ内で始まる(図12A)。それ故、ζ’RNAはPKMζを発現することができる。ζRNAの分布が種々のζタンパク質と相関するかどうかを判定するために、PKCζmRNA及びζ’の発現をRT−PCR、RNアーゼ保護実験及びノーザンブロット分析によって分析した(図12A〜12C)。
【0120】
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)のために、ラット組織から単離した全RNAを使用して、First Strand cDNA Synthesis KitのためのSuperScript Preamplification System(Gibco Invitrogen,Grand Island,ニューヨーク州)でcDNAを合成した。cDNA200ngを最終容量100μlのPCR反応において使用した。94℃、30秒間、60℃、1分間及び72℃、1分間をサイクルパラメータとする34サイクル、及び72℃、10分間の最終工程で増幅した。PKCζ及びPKMζcDNAの増幅に関して、特異的正プライマーは、それぞれ、F5’−CCATGCCCAGCAGGACCACC−3’(配列番号12)及びF5’−CCTTCTATTAGATGCCTGCTCTCC−3’(配列番号13)であり、逆プライマーは、両方に関してR5’−TGAAGGAAGGTCTACACCATCGTTC−3’(配列番号14)であった。対照として、GAPDHプライマー、F5’−ACATGGTCTACATGTTCC−3’(配列番号15)及びR5’−CAGATCCACAACGGAATAC−3’(配列番号16)を使用した。
【0121】
2つのζRNAを区別する特異的正プライマーを使用したRT−PCR分析は、PKMζの分布と一致して、ζ’は脳において豊富に発現するが、非神経組織では発現しないことを示した(図12A)。より高い数のPCRサイクルによってのみ、小量のζ’RNAが腎臓において検出できた(データは示していない)。これに対し、PKCζmRNAは腎臓、肺、精巣及び小脳において発現されたが、新皮質又は海馬では発現されなかった(図12A)。この分布はPKCζの発現と相関する。
【0122】
RNアーゼ保護実験によるこれらの所見を、PKCζmRNAの345ヌクレオチドフラグメント及びζ’RNAの202ヌクレオチドフラグメントを保護するアンチセンスプローブを用いて数量化した(図12B)。RT−PCRを確認して、ζ’RNAのRNアーゼ保護産物は脳においてだけ認められ、一方PKCζmRNAの保護産物は腎臓、肺、精巣及び小脳で認められたが、新皮質又は海馬では認められなかった(図12B)。PKCζmRNA及びζ’RNAの相対レベルを、ハウスキーピングラット酸性リボソームタンパク質(RARP、図12B、中央及び下部)についてのmRNAと比較することによって検討した。脳におけるζ’RNAの発現は、検討したいずれの組織におけるPKCζmRNAの発現よりも高かった。
【0123】
ノーザンブロットのために、ラット組織からの全RNA(30μg)を電気泳動し、ニトロセルロースに移して、洗浄し、UV架橋した。ラットcDNAをEcoRI−SphI及びKpnI−EcoRIで消化して、PKCζ及びPKMζについてのそれぞれ457bp及び227bpの特異的フラグメントを得た。Stratageneランダム八量体プロトコール(Stratagene Cloning Systems,La Jolla,カリフォルニア州)を用いて前記フラグメントを32Pで放射標識した。Stratagene QuickHyb Hybridizationについての指示に従ってハイブリダイゼーション条件を実施した。−70℃でのフィルム露光によって又はPhophorImager(Molecular Dynamics Storm 860ゲル及びブロット画像化システム、Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,ニュージャージー州)によってブロットを現像した。種々の脳領域及び腎臓におけるζ’RNA及びPKCζmRNAの大きさを、それらのユニーク5’末端に特異的なプローブを使用してノーザンブロットによって測定した(図12C)。ζ’RNAは、脳において2.3kb及び4.7kb種として発現されたが、腎臓では発現されなかった(図12C)。PKCζmRNAは、腎臓及び小脳において2.5kb及び小さな4.8kb種として発現されたが、新皮質又は海馬では発現されなかった(図12C)。これらの大きさは以前に報告されたものと同様であった。
【実施例12】
【0124】
神経学的に正常な個人の脳又は神経変性疾患を有する患者の脳のいずれであるかに関わらず、すべての脳において、PKCι/λ抗体は、皮質、皮質下灰白質、脳幹及び小脳において神経細胞体及びニューロピルの広汎な弱い微細顆粒状標識を示した(図14a)。前記抗体は、上衣細胞及び脈絡叢上皮細胞を一貫して標識したが、神経膠細胞は免疫陰性であった(データは示していない)。
【0125】
ADにおいて、PKCι/λ抗体は、海馬錐体細胞及び新皮質ニューロンにおいてNFTのサブセットを(図14b)、ならびに海馬のCA1において大部分の平野小体(図14c)を強く標識した。PKCι/λ陽性NFTは一般に、古典的火炎形形状を示した。興味深いことに、「初期」核周囲タングルも標識されたが、より進んだ「ゴースト」又は「細胞外」タングルは標識されなかった。海馬ニューロンにおけるニューロピルスレッド、アミロイド斑及び顆粒空胞体は一般に免疫陰性であった。
【0126】
PKCι/λ抗体は、PiDの海馬歯状回及び新皮質のニューロンにおいてピック小体を一様に標識し、時としてピック細胞を標識した(図14d)。PSPの症例では、前記抗体は、視床下核、中脳路核、下オリーブ核及び小脳歯状核においてグロボースタングル及び房飾星状細胞を標識した(図14e〜14f)。CBDでは、大脳皮質における風船状腫大ニューロン、タウ免疫反応性星状細胞封入体、ならびに基底核におけるニューロン及びグリア封入体が免疫要請であった(図14g〜14h)。
【0127】
α−シヌクレイン異常疾患では、PKCι/λ抗体は、黒質で認められるすべての古典的レビー小体ならびに大脳皮質におけるレビー小体の大半、及びPD及びDLBにおける扁桃を強く標識した(図14i〜14j)。扁桃、海馬のCA2/3又は中脳におけるレビー神経突起はまれにしか標識されなかった。PKCι/λ抗体はまた、MSAにおいて一部のグリアα−シヌクレイン陽性封入体を標識した(図14k)。一次抗体の欠如は、これらの構造のいずれについても免疫標識を生じなかった(図14l)。
【実施例13】
【0128】
PKCζ及びPKCι/λ遺伝子において一塩基多型が同定された(それぞれ配列番号:6及び7)。ゲノムブラウザ(UCSC,カリフォルニア州)を用いて配列を入手し、クローン重複からのSNPs及びランダム読取りからのSNPsに関して検討した。PKCζ及びPKCι/λ遺伝子において特定されたSNPsを配列内に太字で示している。参考として、エクソンを大文字で示している。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】PKCζが細胞骨格タウタンパク質をリン酸化することを示す。タウへの放射性リン酸の取込みを示すオートラジオグラムのレーン1は、タウが、キナーゼの不在下で、ほとんどリン酸取り込みを示さないことを明らかにする。レーン2及び4は、タウの不在下ではリン酸化が起こらないことを示す。レーン3は、タウをPKCζと共にインキュベートするとき、リン酸がタウに取り込まれることを明らかにする。GSK3βはタウをリン酸化できることが周知であるので、レーン5を対照として含めた。図1Bは、神経芽細胞腫細胞へのPKMζとGSK3βのコトランスフェクションがタウのリン酸化を低下させることを示す。完全長ヒトタウでトランスフェクトした神経芽細胞腫細胞(IMR−32)からのタンパク質抽出物及び指示されている構築物に関するウエスタンブロットをリン特異的抗タウ(p396)抗血清でプローブした。レーン1は、GSK3βのコトランスフェクションがp396上のタウの著明な度合のリン酸化をもたらすことを示す。レーン2は、EGFP単独でのコトランスフェクションはリン酸化されたタウの増加を生じないことを示す。レーン3は、EGFP標識キナーゼ不活性突然変異型のPKMζ(EGFP−PKMζ−KI、K281W)によるトランスフェクションもタウリン酸化の上昇をもたらさないことを示す。レーン4は、GSK3βとEGFP標識PKMζのトランスフェクションはGSK3β単独よりも低いタウリン酸化を生じることを示す(レーン1との比較)。レーン5は、EGFP標識PKMζはタウをリン酸化することができるが(レーン2及び3との比較)、GSK3βほどではないことを示す(レーン1との比較)。レーン6は、GSK3βとEGFP−PKMζ−KIのコトランスフェクションも低いタウリン酸化を生じることを示す(レーン1との比較)。
【図2】aPKCがNFTと共局在することを示す。すべての既知のPKC遺伝子産物に対する特異的抗血清を使用して、免疫組織化学は、PKCζとPKCι/λだけがNFT内に存在することを明らかにする。銀染色はこの組織におけるNFTの存在を確認しており、一次抗血清を欠如するとNFTを標識することができない。
【図3】図3Aは、海馬、尾状核、小脳及び上側頭皮質におけるaPKC抗体の反応性を示すウエスタンブロットを例示する。試験したすべての領域においてPKMζは55kDバンドとして認められた。PKCι/λは、試験したすべての領域において72kDバンドとして認められた。完全長PKCζは小脳においてのみ認められた。図3Bは、死後ラット脳組織におけるaPKCの安定性を示す。PKCζ及びPKCι/λの触媒ドメインに特異的な抗血清による定量的ウエスタンブロットを用いて、aPKCの総レベルを測定した。
【図4】ADの上側頭皮質においてPKCγとPKCι/λは低下するが、PKMζは低下しないことを示す。図4A:代表的対照とAD症例からの全タンパク質ホモジネートに関する代表的ウエスタンブロット。図4B:平均と標準偏差を示すヒストグラム。*は統計的有意性を表わす。
【図5】ADの尾状核においてPKCι/λは上昇するが、PKMζ又はPKCγは上昇しないことを示す。図5A:代表的対照とAD症例からの全タンパク質ホモジネートに関する代表的ウエスタンブロット。図5B:平均と標準偏差を示すヒストグラム。*は統計的有意性を表わす。
【図6】ヒト大脳海馬傍回におけるaPKCの局在を示す。ζ−C1(図6B)。一次抗体なしの対照(図6A)。神経細胞形質及び近位樹状突起においてaPKC染色が見られる。神経核染色は認められなかった。縮尺バー=100μm。
【図7】ヒト神経膠星状細胞におけるaPKCの局在を示す。星状細胞は大脳皮質において抗PKCι/λで強く染色された(図7A)。ζ−C1は海馬のCA−4において星状細胞と反応した(図7B)。縮尺バー=200μm。挿入図は高倍率の星状細胞を示す。縮尺バー=25μm。
【図8】上衣神経膠におけるaPKCの局在を示す。ζ−C1は上衣神経膠と反応した(図8B)。一次抗体なしの対照(図8A)。バー=100μm。
【図9】aPKCがニューロピルスレッド及び異栄養神経突起と共局在することを示す。図9A:ADの症例からのパラフィン包埋海馬皮質のz−C2を使用した免疫組織化学染色。図9B:非隣接切片からの銀染色。大きな矢印はSPを示す;小さな矢印はニューロピルスレッドを示す。バー=100μm。
【図10】aPKCが海馬のCA−1領域において平野小体(HB)と共局在することを示す。矢印は、ヘマトキシリンとエオシンで染色したときHBが明るい好酸性杆状構造として認められることを示す(H&E、図10A)。HBは、aPKC抗体、ζ−C1(図10D)、ζ−C2(図10B)及びι/λ(図10C)のすべてに関して認められる。バー=100μm。
【図11】PKMζの分布がユニークな脳特異的ζRNAと相関することを示す。図11A:特異的プライマーを用いた逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)は、PKMζmRNAは脳においてのみ豊富であり、PKCζmRNAは多くの他の組織において豊富であることを明らかにする。図11B:RNアーゼ保護実験は、種々の組織におけるPKMζmRNA及びPKCζmRNAのレベルを明らかにする。図11C:種々の組織におけるPKMζmRNA及びPKCζmRNAのレベルを定量するためのノーザンブロット。
【図12】分離した一次海馬ニューロン培養の高カリウムによる処理が、MAP2(赤色)に比べてPKMζ(緑色)の高レベルを生じさせることを示す。図12A:未処理対照培養は低レベルのPKMζを有する。図12B:高カリウムによる刺激はPKMζの上昇を生じさせる。
【図13】神経芽細胞腫細胞(IMR−32細胞系)におけるPKCζI/IIの発現の欠如を示すウエスタンブロットである。レーン1は、抗PKCι/λ抗血清でプローブしたときラット脳溶解産物が約72kDのバンドを示すことを明らかにする。IMR−32細胞(レーン2)及び褐色細胞腫細胞(レーン3)の溶解産物は、特異的抗PKCι/λ抗血清でプローブしたとき、やはりPKCι/λを示す。これに対し、IMR32及びPC12細胞を特異的抗PKCζI/II抗血清でプローブしたとき、IMR32細胞はバンドを有さないが(レーン6)、PC12細胞を多数のバンドを示す(レーン7)。IMR−32細胞をPKCζIIでトランスフェクトしたとき、2つのバンドの対が約80kDaでPKCζIIに関して検出された(レーン5)。これに対し、EGFP単独でトランスフェクトしたIMR−32細胞の溶解産物は、抗PKCζIIでプローブしたときバンドを含まなかった(レーン4)。
【図14】タウタンパク質異常疾患及びα−シヌクレイン異常疾患とPKCι/λの結びつきを示す。PKCι/λ抗体は、対照症例では著明でない海馬ニューロン及びニューロピルの細胞形質を弱く標識した(図14a)が、AD症例ではNFT(図14b)及び平野小体(図14d)を強く標識した。前記抗体はまた、PiDではピック体(図14d)及びピック細胞、PSPにおいてはグロボース(globose)タングル(図14e)及び房飾グリア細胞(図14f)、及びCBDでは風船状腫大ニューロン(図14b)及び星状細胞(図14h)を標識した。α−シヌクレイン異常疾患では、前記抗体は着色黒質ニューロンにおいて古典的レビー小体(図14i)及び扁桃においてレビー体(図14j)を、及びPD及びDLBでは皮質を強く標識した。MSAでは、グリア封入体も免疫反応性であった(図14k)。一次抗体を欠くと、これらの黒質レビー小体(矢印)などの封入体の染色を生じなかった(図14l)。
【配列表】



















































































【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、被験者において神経系疾患を診断するための方法。
a.被験者からの試料をaPKC特異的プローブと接触させること、
b.前記プローブの前記試料への結合を検出して、前記試料中の前記aPKCの活性を測定すること、
c.対照試料を前記aPKC特異的プローブと接触させること、
d.前記プローブの前記対照試料への結合を検出して、前記対照試料中の前記aPKCの活性を測定すること、及び
e.工程bにおける前記aPKCの活性を工程dにおける前記aPKCの活性と比較して、工程bにおける前記aPKCの活性が工程dにおける前記aPKCの活性と異なる場合は、前記被験者において神経系疾患が存在すること。
【請求項2】
前記プローブに結合した標識を定量することによって工程dを実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疾患が神経変性、神経又は精神障害である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プローブが抗体又は核酸配列である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試料がヒト組織又は組織抽出物又は体液である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組織が死後剖検組織又は脳生検組織である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記神経系疾患が、アルツハイマー病(AD)、ピック病(PiD)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、パーキンソン病(PD)及び多系統萎縮症(MSA)から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
以下の工程を含む、aPKCの活性を調節するために有用な化合物を特定する方法。
a.aPKC遺伝子が発現される細胞を提供すること、
b.前記細胞におけるaPKCの活性の変化を誘導するのに十分な時間、前記細胞を候補化合物と共にインキュベートすること、
c.前記候補化合物の不在下又は対照化合物の存在下で、工程bにおけるように前記細胞をインキュベートすること、
d.工程b及び工程cからの前記細胞を等量のaPKC特異的プローブと接触させること、
e.前記細胞への前記プローブの結合を検出して、工程b及び工程cからの前記細胞における前記aPKCの活性を測定すること、
f.前記細胞における前記aPKCの活性を比較して、工程bからの前記細胞における前記aPKCの活性が工程cからの前記細胞における前記aPKCの活性と異なる場合、前記候補化合物はaPKCを調節すること。
【請求項9】
前記化合物がペプチド、低分子又は高分子である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
以下の工程を含む、aPKCの活性を調節するために有用な化合物を特定するインビトロでの方法。
a.aPKC遺伝子が発現される細胞を提供すること、
b.aPKCを第一容器において、放射標識されたアデノシン三リン酸(ATP)、前記aPKCの基質及び候補化合物と共に、前記細胞におけるaPKCの活性の変化を誘導するのに十分な時間インキュベートすること、
c.前記aPKCを第二容器において、放射標識されたATP及び前記aPKCの前記基質と共に、前記細胞におけるaPKCの活性の変化を誘導するのに十分な時間インキュベートすること、
d.前記第一容器及び前記第二容器における前記基質内への放射標識リン酸の取込みの量を定量すること、
e.前記第一容器と前記第二容器における取込みの量を比較して、前記第一容器と前記第二容器における取込みの量の差が、前記候補化合物がaPKC活性を調節する化合物として特定されることを指示すること。
【請求項11】
前記基質がタウタンパク質又はGSK3βである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
以下の工程を含む、被験者において神経系疾患を治療するための方法。
a.aPKC配列を発現ベクターに挿入すること、及び
b.工程aからの前記ベクターを被験者に投与すること。
【請求項13】
以下の工程を含む、被験者において神経系疾患を予防するための方法。
a.aPKC配列を発現ベクターに挿入すること、及び
b.工程aからの前記ベクターを被験者に投与すること。
【請求項14】
前記発現ベクターを、脳室内、静脈内、吸入、経皮又は経口経路によって投与する、請求項12−13に記載の方法。
【請求項15】
投与する用量が、前記aPKC活性を正常レベルに維持するのに十分である、請求項12−13に記載の方法。
【請求項16】
前記正常レベルが、前記被験者からの試料中の全タンパク質の約0.005%〜約0.05%の前記aPKCの量である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が遺伝子治療を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記疾患が異常aPKC活性によって特徴付けられる、請求項1、13−14のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記異常aPKC活性が、タウタンパク質のリン酸化及び神経原線維変化(NFT)との共局在を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記疾患が、アルツハイマー病(AD)、ピック病(PiD)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、パーキンソン病(PD)及び多系統萎縮症(MSA)から成る群より選択される、請求項1、13−14のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記aPKCがPKMζである、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
aPKC分子のアイソフォームに結合する抗体又はその機能性誘導体。
【請求項23】
前記aPKCがPKMζである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
以下の工程を含む、被験者の神経系疾患を治療するための方法。
a.PKMζに対する抗体を作製すること、及び
b.前記抗体又はその機能性フラグメントを被験者に投与すること。
【請求項25】
以下の工程を含む、神経機能障害の動物モデルを作製するための方法。
a.変化したaPKCの量、局在又は活性を有するトランスジェニック動物を作製すること、
b.工程aからの前記トランスジェニック動物を候補化合物で処置すること、
c.工程aからの前記トランスジェニック動物を対照化合物で処置すること、
d.工程b及びcからの前記トランスジェニック動物を生化学的又は行動上の変化に関して検定すること、及び
e.工程dからの結果を比較し、その差が神経機能障害の治療における前記候補化合物の効果を指示すること。
【請求項26】
前記トランスジェニック動物がaPKCを持たないノックアウトマウスである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記トランスジェニック動物がaPKCを過剰発現するマウスである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記aPKCが野生型又は突然変異型aPKCである、請求項25〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記生化学的変化がタウのリン酸化である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記行動上の変化が記憶障害である、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
以下の工程を含む、aPKC遺伝子のDNA配列及びこれらの遺伝子の発現を調節する領域における突然変異又は多型に関して、DNAをスクリーニングするための方法。
a.被験者の試料からDNAを単離すること、
b.前記DNAを塩基配列決定すること、及び
c.前記配列を標準DNA配列と比較し、前記被験者に由来するDNA配列と標準配列の相違が神経又は精神障害に対する遺伝的感受性を指示すること。
【請求項32】
前記配列上の一塩基多型(SNPs)を前記標準DNA配列上のSNPsと比較することによって工程cを実施する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記標準DNA配列が、配列番号6に示すPKCイオタ/ラムダのヒトゲノム配列である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記標準DNA配列が、配列番号7に示すPKCゼータのヒトゲノム配列である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
以下の工程を含む、癌を診断するための方法。
a.被験者からの腫瘍試料をaPKC特異的プローブと接触させること、
b.前記腫瘍試料への前記プローブの結合を検出して、前記腫瘍試料中の前記aPKCの活性を定量すること、
c.対照試料を前記aPKC特異的プローブと接触させること、
d.前記プローブの前記対照試料への結合を検出して、前記対照試料中の前記aPKCの活性を定量すること、及び
e.工程bにおける前記aPKCの活性を工程dにおける前記aPKCの活性と比較して、前記aPKCの活性の差が癌のタイプ又は病期分類を指示すること。
【請求項36】
前記癌が、神経芽細胞腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、リンパ腫(骨髄腫)、白血病、黒色腫、扁平上皮癌、肝細胞癌、上皮小体腫瘍、褐色細胞腫、傍神経節腫、血管内リンパ腫症、乳癌、肝癌、肺癌、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、結腸直腸癌及び膵癌から成る群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記方法が遺伝子治療を含む、請求項35−36に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2006−504434(P2006−504434A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550506(P2004−550506)
【出願日】平成15年11月3日(2003.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/035231
【国際公開番号】WO2004/041212
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(505161275)
【出願人】(505161286)
【出願人】(505161297)
【出願人】(505161301)
【出願人】(505161312)
【Fターム(参考)】