秤量チップ及びそれを用いた検査方法
【課題】単純な構成により,簡単な操作のみで液体を高精度で秤量することができるようにした秤量チップ及びそれを用いた検査方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る秤量チップは、チップ本体と、チップ本体に形成された第1の流路と、第1の流路に一方の端部が連通する第2の流路と、第2の流路の他端に連通する第3の流路とを有し、第2の流路開口部近傍の第1の流路の周長をL1とし、断面積をS1とし、第2の流路の、第1の流路に開口する第1開口部周長をL2とし、断面積をS2としたとき、(L1/S1)<(L2/S2)であり、第2の流路の第1開口部に少なくとも一部に段差が設けられており、且つ、第2の流路における、第3の流路に開口する第2開口部に少なくとも一部に段差が設けられている。
【解決手段】本発明に係る秤量チップは、チップ本体と、チップ本体に形成された第1の流路と、第1の流路に一方の端部が連通する第2の流路と、第2の流路の他端に連通する第3の流路とを有し、第2の流路開口部近傍の第1の流路の周長をL1とし、断面積をS1とし、第2の流路の、第1の流路に開口する第1開口部周長をL2とし、断面積をS2としたとき、(L1/S1)<(L2/S2)であり、第2の流路の第1開口部に少なくとも一部に段差が設けられており、且つ、第2の流路における、第3の流路に開口する第2開口部に少なくとも一部に段差が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種サンプルを用いた分析や化学反応を行う際などに用いるのに微量液体秤取構造を有する秤量チップ及びこれを用いる検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微量の液体を秤量する手法としては、例えば下記特許文献1から3のものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2002−357616号公報
【特許文献2】特開2004−157097号公報
【特許文献3】特開2004−163104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1から3では、液体が連続的に流れるマイクロチップ内に複数の流路構造を設けることによって、マイクロチップ内で液体を微量かつ定量的に扱うことが可能であるが、そのための複数の構成と液体操作に必要な送液システムが必要となる。また文献1の構成では、秤量部の両端から液体がにじみ出てしまう等の問題があり、高精度の秤量ができない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、単純な構成により,簡単な操作のみで液体を高精度で秤量することができるようにした秤量チップ及びそれを用いた検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記構成によって達成される。
(1) 被検査液を秤量する秤量チップであって、チップ本体と、前記チップ本体に形成された第1の流路と、前記第1の流路に一方の端部が連通する第2の流路と、前記第2の流路の他端の端部が連通する第3の流路とを有し、前記第1の流路の、前記第2の流路開口部近傍の周長をL1とし、断面積をS1とし、前記第2の流路の、前記第1の流路に開口する第1開口部の周長をL2とし、断面積をS2としたとき、(L1/S1)<(L2/S2)であり、前記第2の流路の前記第1開口部に少なくとも一部に段差が設けられており、且つ、前記第2の流路における、第3の流路に開口する第2開口部に少なくとも一部に段差が設けられていることを特徴とする秤量チップ。
(2) 前記第1開口部の段差が設けられている周長が、前記第1の開口部の周長L2の1/2以上であることを特徴とする上記(1)に記載の秤量チップ。
(3) 前記第2開口部の段差が設けられている周長が、前記第2の開口部の周長の1/2以上であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の秤量チップ。
(4) 前記第3の流路に前記被検査液に反応する反応部材が設けられていることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の秤量チップ。
(5) 前記第2の流路に前記被検査液に反応する反応部材が設けられていることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の秤量チップ。
(6) 前記被検査液が、血液、尿等の体液であることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の秤量チップ。
(7) 前記被検査液が食品であることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の秤量チップ。
(8) 前記被検査液が、環境関連物質であることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の秤量チップ。
(9) 上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の秤量チップを用いて、被検査液の検査を行うことを特徴とする検査方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、単純な構成により,簡単な操作のみで液体を高精度で秤量できるようにした秤量チップ及びそれを用いた検査方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本発明に係る秤量チップの第1実施形態を示す図である。図2は、第1実施形態の断面図である。図3は、図2のX−X矢視方向に見た状態を示す図である。図4は、第1実施形態の秤量チップの動作状態を示す図である。図5は、図4の秤量チップの状態を示す断面図である。図6は、第1実施形態の秤量チップの動作状態を示す図である。図7は、図6の秤量チップの状態を示す断面図である。図8は、第1実施形態の秤量チップの動作状態を示す図である。図9は、図8の秤量チップの状態を示す断面図である。
【0009】
本実施形態の秤量チップ10は、チップ本体11を有している。チップ本体11は、3つのチップ基板材11a,11b,11cとを貼り合わせて構成されている。
【0010】
チップ本体11には、希釈液L1と血液L2とが投入され、両液を攪拌する攪拌ポート12と、残液を吸収する吸収ポート13とが形成されている。
【0011】
攪拌ポート12の底部には、投入された希釈液L1と血液L2と攪拌するため、回転自在に設けられた棒形状の攪拌部材18が設けられている。攪拌部材18が、図1中の矢印で示すように回転することで、希釈液L1と血液L2とが攪拌されて被検査液L3が生成される。
【0012】
吸収ポート13には、残液を毛細管力によって吸収する残液吸収部材19が設けられている。
【0013】
攪拌ポート12と吸収ポート13との間には第1の流路14が設けられている。本実施形態において、第1の流路14は、チップ本体11のチップ基板材11bに形成されている。
【0014】
チップ基板材11bには、第1の流路14に連通する複数(本実施形態では2つ)の第2の流路15が形成されている。第2の流路15はそれぞれ、一方の端部が第1の流路14に連通し、且つ、他方の端部がチップ基板材11cに形成された第3の流路11dに連通するように形成されている。また、第2の流路15は、略円筒形状の開口で、第1の流路14側の第1開口部15aが第3の流路11d側の第2開口部15bよりも大径になるように形成されている。本実施形態では、第2の流路15が、所定の量の被検査液を秤量する秤量キャピラリとして機能する。第2の流路15と、該第2の流路15に対応する第3の流路11dの数は、検査の回数や種類に応じて適宜変更することができる。
【0015】
第3の流路11dにおいて、第2の流路15の第2開口部15bに対向する位置に反応部材16が設けられている。反応部材16は、例えば、発色反応スライドを使用することができる。
【0016】
チップの基板材は無機材質でも良いし、有機材質でもいいである。基板に使用される無機材質の例を挙げれば金属、シリコン、テフロン(登録商標)、ガラス、セラミックスなどである。有機材質はプラスチック、ゴムなどである。
【0017】
プラスチックの例としては、COP、PS、PC、PMMA、PE、PET、PP等を挙げることができる。ゴムの例としては、天然ゴム、合成ゴム、シリコンゴム、PDMS等を挙げることができる。シリコン含有物質としては、ガラス、石英、シリコンウエファー等のアモルファスシリコン、ポリメチルシロキサンなどのシリコーンが挙げられる。特に好ましい例としては、PMMA、COP、PS、PC、PET、PDMS、ガラス、シリコンウエファー等を挙げることができる。
【0018】
チップの内表面の親、疎水化処理が好ましい。水性検体の場合は親水化処理、油性検体の場合、疎水化処理が必要である。親疎水化処理法として、従来の表面処理方法が適用できる。大きく分けて、化学的表面処理法と物理的表面処理法がある。化学的表面処理法としては、薬品処理、カップリング剤による処理、蒸気処理、グラフト化、電気化学的方法、添加剤による表面改質などがある。物理的表面処理法としては、UV照射、電子線処理、イオンビーム照射、低温プラズマ処理、CASING処理、グロー、コロナ放電処理、酸素プラズマなどの方法がある。
【0019】
秤量チップの秤量範囲は必要に応じ、秤量キャピラリ(つまり、第2の流路15)の寸法を変えることによって調節できる。秤量範囲は、好ましくは0.05〜50μLであり、より好ましくは0.1〜10μLであり、さらに好ましくは0.5〜5μLである。
【0020】
次に、本実施形態の秤量チップの動作を説明する。
先ず、図1に示すように、攪拌ポート12に希釈液L1及び血液L2を投入し、攪拌部材18によって両液を攪拌して、被検査液L3を生成する。
【0021】
次に、第3の流路11dの出口をオープンにすると、図4及び図5に示すように、毛細管力より攪拌ポート12に貯留された被検査液L3が第1の流路14を吸収ポート13側に向って流動し始める。このとき、吸収ポート13は、遮蔽部材17によって遮蔽されている。そして、第1の流路14を流動する被検査液L3の一部が第2の流路15に所定の量だけ貯留保持される。
【0022】
吸収ポート13の遮蔽部材17を取り除くと、毛細管力より図6及び図7に示すように、第1の流路14内に残留した被検査液L3が吸収ポート13内に導かれ、残液吸収部材19に毛細管力によって吸収される。このとき、第2の流路15には所定の量の被検査液L3が保持される。この時、吸収ポート13に図示しない減圧手段を接続して第1の流路14内を減圧しても良い。
【0023】
図8及び図9に示すように、第3の流路11dの出口をそれぞれ減圧することで、第2の流路15に保持された被検査液L3が反応部材16に点着される。被検査液L3が点着された反応部材16には発色反応が起こり、反応部材16の吸光度測定を行う。
【0024】
なお、本実施形態において、反応部材16への被検査液L3の点着は、減圧方式としたが、上流側からの加圧方式としてもよい。
【0025】
本実施形態の秤量チップ10は、第1の流路14の、第2の流路15に開口する第1開口部15a近傍の周長をL1とし、断面積をS1とし、第2の流路15の、第1開口部15aの周長をL2とし、断面積をS2としたとき、(L1/S1)<(L2/S2)となる。ここで、上記の式は、一般的には、ある量の流体を容器に保持させた場合に、容器底部に形成された開口から漏れ出ることなく、容器に収容された状態を維持できる耐圧力(ラプラス圧と呼ばれている)の関係を示している。本発明においては、液体が同じ被検査液L3であるため、流体の表面張力はともに等しくなる。つまり、流体の表面張力をγとした場合、(L1・γ/S1)<(L2・γ/S2)が成立し、γがともに同じであるため省略すると、(L1/S1)<(L2/S2)となる。第1実施形態の場合、この条件が満足されていない場合、流路14内の残留した液L3を取り除く際、開口部近傍で液ぎれが発生してしまい、L3を完全に取り除くことができない。
【0026】
また、図1に示すように、本実施形態の秤量チップ10は、第1開口部15aには少なくとも一部に段差が設けられている。具体的には、秤量チップ10の上面視(図1の正面視)において、第1開口部15aは、その周縁部が第1の流路14の両側内壁からそれぞれg1,g2の隙間だけ離れて開口するように、形成されている。ここで、第1開口部15aと該第1開口部15a周囲の第1の流路14の底面との境界が段差となる。第1開口部15aの段差が設けられている周長が、第1開口部15aの全周長L2の1/2以上であることが好ましい。この実施例の場合、両者は等しく1となる。
【0027】
図2及び3に示すように、第2の流路15の第2開口部15bは、チップ基板材11bから第3の流路11d内に突出する円筒状の突起部11eに形成されている。第2開口部15bは突起部11eの周縁部11fから隙間g3(=g4)離れて開口している。ここで、第2開口部15bと突起部11eとの境界部が段差となる。第2開口部15bの段差が設けられている周長が、第2開口部全周長の1/2以上であることが好ましい。この実施例の場合、両者は等しく1となる。
【0028】
なお、本実施形態において、第1開口部15aの直径D1は、0.5mm〜1.5mmとし、第2開口部15bの直径d1は、0.2mm〜0.5mmとした。
【0029】
本実施形態のように、第1開口部15aに段差を設けることで、第1の流路14に残留した被検査液L3を吸収ポート13側へ移動させて残液吸収部材19に吸収させる際に、第2の流路15に保持された被検査液L3の一部が第1の流路14を移動する被検査液Lに伴なわれて所定の量から目減りしてしまうことを防止することができる。また、第2開口部15bに段差を設けることで、第2の流路15の被検査液L3は第2開口部の外に滲み出ることなく、確実に保持させることができ、正確な秤量が可能になる。
【0030】
次に、本発明に係る秤量チップの第2実施形態を説明する。図10は、第2実施形態の秤量チップの構成を示す図である。図11は、図10の秤量チップのB−B方向の断面図である。図12は、図10の秤量チップのA−A方向の断面図である。図13は、図11の矢印C部分の拡大図である。図14は、図12のE−E方向の断面図である。図15及び図16は、第2実施形態の秤量チップの動作を説明する図である。なお、以下に説明する実施形態において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。
【0031】
秤量チップ20は、チップ本体21を備えている。チップ本体21は、チップ基板材21aと21bとを貼り合わせて構成されている。
【0032】
チップ本体21には、攪拌ポート22と、吸収ポート23とが形成されている。また、チップ基板材21bには第1の流路24が形成されており、該第1の流路24の一方の端部が攪拌ポート22に連通し、他方の端部が吸収ポート23に連通している。
【0033】
攪拌ポート22には、投入された希釈液L1と血液L2とを攪拌するため、棒形状の攪拌部材28が回転自在に設けられている。また、吸収ポート23には、残液吸収部材29が設けられている。
【0034】
チップ本体21には、複数(本実施形態では2つ)のエア抜きポート31が形成されている。各エア抜きポート31と第1の流路24との間には、秤量機能を有する第2の流路25が形成されている。第2の流路25はそれぞれ、チップ本体21の上面視(図10の正面視)において略矩形状を有する空間である。
【0035】
各第2の流路25の一方の端部には、第1の流路24に開口する第1開口部25aが形成され、他方の端部には、エア抜きポート31に開口する第2開口部25bが形成されている。本実施形態において、各エア抜きポート31が第3の流路として機能する。第2の流路25,エア抜きポート31の数は特に限定されず、検査の回数や種類に応じて適宜変更することができる。
【0036】
各第2の流路25の底部には、反応部材26が設けられている。反応部材26は、上記実施形態と同様のものを使用することができ、例えば、発色反応スライドである。
【0037】
検査時以外のときなど、被検査液を流動させないときには、各エア抜きポート31,吸収ポート23の開口部分には遮蔽部材27a,27b,27cが取り付けられている。
【0038】
図13に示すように、第2の流路25の第1開口部25aは、第1の流路24の底面(図13においてチップ基板材21bの上面)から上方に隙間g5だけ離間した位置で開口している。こうすれば、第1開口部25aの左右及び下方の周縁部が段差となるため、第2の流路25に一旦保持された被検査液L3が、第1の流路24を流動する被検査液Lに伴なわれて流出してしまうことを防止することができる。さらに、第1開口部25aの上辺が第1の流路24の上面(図13においてチップ基板材21aの下面)から下方に離間した位置で開口している構成とすることがより好ましい。こうすれば、第2の流路25に貯留された被検査液L3をより一層確実に保持させることができる。
【0039】
ここで、第1開口部25aの段差が設けられている周長が、第1開口部の全周長の1/2以上であることが好ましい。ここで、例えば第1開口部25aを、一辺D2の正方形とすると、段差が設けられている周長は、3×D2、第1開口部の全周長は4×D2となる。
【0040】
図14に示すように、第2の流路25の第2開口部25bは、エア抜きポート(第3の流路)31の底面(図14においてチップ基板材21bの上面)から上方に隙間g6だけ離間した位置で開口している。こうすれば、第2開口部25bの左右及び上下の周縁部が段差となるため、被検査液L3は第2開口部の外ににじみ出ることなく、確実に保持させることができる。
【0041】
ここで、第2開口部25bの段差が設けられている周長が、第2開口部の全周長の1/2以上であることが好ましい。本実施形態では、第2開口部25bが一辺d2の正方形であり、段差が設けられている周長がd2×4であり、全周長と等しい。こうすれば、第2の流路25に貯留する被検査液L3がエア抜きポート31側へにじみ出ることなく、確実に保持させることができる。
【0042】
本実施形態の秤量チップ20は、第1の流路24の、第2の流路25開口近傍部25aの周長をL1とし、断面積をS1とし、第2の流路25の、第1開口部周長をL2とし、断面積をS2としたとき、(L1/S1)<(L2/S2)となる。第1開口部及び第2開口部の直径は上記実施形態と同じとしてよい。
【0043】
次に、本実施形態の秤量チップの動作を説明する。
最初に、図10に示すように各エア抜きポート31を遮蔽部材27a,27bで閉じ、また、吸収ポート23を遮蔽部材27cで閉じた状態とする。そして、攪拌ポート22に希釈液L1と血液L2とを投入し、攪拌部材28を駆動することで、2液をスターラ攪拌して混合させることで、被検査液L3を生成する。
【0044】
図15に示すように、攪拌ポート22の出口を開くと、被検査液L3が第1の流路24を流動し、秤量機能を有する各第2の流路25に毛細管現象により導入される。次に、図16に示すように、吸収ポート23を開放すると、第1の流路24に残留する被検査液L3が吸収ポート23側に移動し、残液吸収部材29の毛細管力によって全て吸収される。こうして、第2の流路25のみに被検査液L3が所定の量だけ保持される。
【0045】
第2の流路25に保持された被検査液L3は、各第2の流路25に設けられた反応部材26と発色反応を起こす。このとき、反応部材26の吸光度を測定することによって特定の物質の濃度を分析する。
【0046】
本実施形態の秤量チップ20の構成では、被検査液L3を第2の流路25で秤量した後、搬送動作が必要ないため、液残りがなく、秤量精度は第2の流路25の寸法精度に依存するため、高精度なマイクロチップ作成により高精度な秤量ができる。
【0047】
次に、本発明に係る秤量チップの第3実施形態を説明する。図17は、第3実施形態の秤量チップの構成を示す図である。図18は、図17の秤量チップのH−H方向の断面図である。図19は、図17の秤量チップのF−F方向の断面図である。図20は、図18の矢印I部分の拡大図である。図21は、図19の秤量チップのJ−J方向の断面図である。図22は、第3実施形態の秤量チップの動作の状態を説明する図である。なお、以下に説明する実施形態において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。
【0048】
秤量チップ40は、チップ本体41を備えている。チップ本体41は、チップ基板材41aと41bとを貼り合わせて構成されている。
【0049】
チップ本体41には、攪拌ポート42と、吸収ポート43とが形成されている。また、チップ基板材41bには第1の流路44が形成されており、該第1の流路44の一方の端部が攪拌ポート42に連通し、他方の端部が吸収ポート43に連通している。
【0050】
攪拌ポート42には、投入された希釈液L1と血液L2とを攪拌するため、棒形状の攪拌部材48が回転自在に設けられている。また、吸収ポート43には、残液吸収部材49が設けられている。
【0051】
チップ本体41には、複数(本実施形態では2つ)のエア抜きポート51a,51bが形成されている。各エア抜きポート51a,51bと第1の流路44との間には、秤量機能を有する第2の流路45が形成されている。
【0052】
各第2の流路45の一方の端部には、第1の流路44に開口する第1開口部45aが形成され、他方の端部には、エア抜きポート51a又は51bに開口する第2開口部45bが形成されている。本実施形態において、各エア抜きポート51a,51bが第3の流路として機能する。
さらに、図19に示すように、本実施形態の秤量チップ40において、各エア抜きポート51a,51bの底部には反応部材46が設けられている。このため、各エア抜きポート51a,51bが点着部としても機能する。なお、第2の流路45,エア抜きポート51a,51bの数は特に限定されず、検査の回数や種類に応じて適宜変更することができる。反応部材46は、上記実施形態と同様のものを使用することができ、例えば、発色反応スライドである。
【0053】
検査時以外のときなど、被検査液を流動させないときには、各エア抜きポート51a,51b,吸収ポート43の開口部分のそれぞれには、遮蔽部材47a,47b,47cが取り付けられている。
【0054】
図20に示すように、第2の流路45の第1開口部45aは、第1の流路44の底面(図20においてチップ基板材41bの上面)から上方に隙間g7だけ離間した位置で開口している。こうすれば、第1開口部45aの左右及び下方の周縁部が段差となるため、第2の流路45に一旦保持された被検査液L3が、第1の流路44を流動する被検査液Lに伴なわれて流出してしまうことを防止することができる。さらに、第1開口部45aの上辺が第1の流路44の上面(図20においてチップ基板材41aの下面)から下方に離間した位置で開口している構成とすることがより好ましい。こうすれば、第2の流路45に貯留された被検査液L3をより一層確実に保持させることができる。
【0055】
ここで、第1開口部45aの段差が設けられている周長が、第1開口部全周長の1/2以上であることが好ましい。ここで、例えば第1開口部45aを、一辺D3の正方形とすると、段差が設けられている周長は3×D3、第1開口部全周長は4×D3となる。
【0056】
図21に示すように、第2の流路45の第2開口部45bは、エア抜きポート(第3の流路)51aの底面に配置された反応部材46の上面から上方に隙間g8だけ離間した位置で開口している。こうすれば、第2開口部45bの左右及び上下の周縁部が段差となるため、第2の流路45に貯留する被検査液L3がエア抜きポート側へにじみ出ることなく、確実に保持させることができ、正確な秤量が可能となる。
【0057】
ここで、第2開口部45bの段差が設けられている周長が、第2開口部全周長の1/2以上であることが好ましい。本実施形態では、第2開口部45bが一辺d3の正方形であり、その周長がd3×4である。段差が設けられている周長はd3×4である。こうすれば、第2の流路45に貯留する被検査液L3がエア抜きポート51a,51b側へにじみ出ることなく、確実に保持させることができ、正確な秤量が可能となる。
【0058】
本実施形態の秤量チップ40は、第1の流路44の、第2の流路45に開口する第1開口部45a近傍の周長をL1とし、断面積をS1とし、第2の流路45の、第1開口部45aの周長をL2とし、断面積をS2としたとき、(L1/S1)<(L2/S2)となる。このため、第1の流路44から残液を処理する際に、第2の流路45に保持されている被検査液L3が逆流して第1の流路44に流出してしまうことを防止できる。なお、第1開口部及び第2開口部の直径は上記実施形態と同じとしてよい。
【0059】
また、図23(a)から(c)に示すように、本実施形態の秤量チップ40は、秤量後に被検査液を搬送する際に第2の流路45内での液残りを最小にするために、第2の流路の底面の角部をR形状とすることが望ましい。図23(a)に示すように、第2の流路45の底面角部のみをR形状とした構成とすることで、液残りを抑制することができる。また、図23(b)に示すように、底面全体をR形状とした構成とすることで、液残りをより一層確実に抑制することができる。また、図23(c)に示すように、底面のみでなく、上面(図23(c)においてチップ基板材41aの下側面)もR形状とすることで、第2の流路45を断面視において略円形にした構成としてもよい。また、上記第2実施形態においても本実施形態と同様に、秤量機能を有する第2の流路25,45の底面をR形状とすることが望ましい。
【0060】
次に、本実施形態の秤量チップの動作を説明する。
最初に、図17に示すように各エア抜きポート51a,51bを遮蔽部材47a,47bで閉じ、また、吸収ポート43を遮蔽部材47cで閉じた状態とする。そして、攪拌ポート42に希釈液L1と血液L2とを投入し、攪拌部材48を駆動することで、2液をスターラ攪拌して混合させることで、被検査液L3を生成する。
【0061】
図22(a)に示すように、攪拌ポート42の出口を開くと、被検査液L3が第1の流路44を流動し、秤量キャピラリとして機能する各第2の流路45に毛細管現象により導入される。次に、図22(b)に示すように、吸収ポート43を開放すると、第1の流路44に残留する被検査液L3が吸収ポート43側に移動し、残液吸収部材49の毛細管力によって全て吸収される。こうして、第2の流路45のみに被検査液L3が所定の量だけ保持される。
【0062】
次に、図22(c)に示すように、エア抜きポート51aのみを減圧すると、該エア抜きポート51aに連通する第2の流路45に保持された被検査液L3がエア抜きポート51aに導入される。また、図22(d)に示すように、エア抜きポート51bを減圧すると、該エア抜きポート51bに連通する第2の流路45に保持された被検査液L3がエア抜きポート51bに導入される。なお、エア抜きポート51a,51bを同時に減圧して、点着を行ってもよい。
【0063】
エア抜きポート51a,51bに導入された被検査液L3は、各エア抜きポート51a,51bに設けられた反応部材46と発色反応を起こす。このとき、反応部材46の吸光度を測定することによって特定の物質の濃度を分析する。
【0064】
本実施形態の秤量チップ40の構成では、図19に示すように、連絡キャピラリとして機能する第1の流路44と秤量キャピラリとして機能する第2の流路45との上面が同一平面(チップ基板材41aと41bとの境界面)上にあり、第2の流路45の深さT2が、第1の流路44の深さT1より浅いことが望ましい。
【0065】
また、本実施形態の秤量チップ40は、断面耐圧(周長×液体の表面張力÷断面積)が第1の流路44の断面耐圧よりも大きい。つまり、以下の式が成り立つ。
2(W2+T2)・γ/(W2・T2)>2(W1+T1)・γ/(W1・T1)
【0066】
なお、本実施形態では、減圧によって被検査液を点着させる方式としたが、上流側から加圧することで、点着させる方式とすることができる。
【0067】
さらに、図19に示すように、本実施形態の秤量チップ40は、第2の流路45の底面(図19における右側側面)が、エア抜きポート51a,51bの反応部材46の上面(図19における左側側面)と同一平面に位置しないように構成されている。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例、比較例を挙げて本発明の秤量チップを詳しく説明する。本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
最初に、実施例1として、上記第1実施形態の秤量チップの構成を有する丸キャピラリ秤量チップを使用して精度を評価した。
先ず、血液1μLと希釈液20μLを攪拌ポート12に入れる。吸収ポート13と出口を閉じるまま、スターラで攪拌する。均一になった後、出口をOPENにすると被検査液L3が毛細管現象により連絡キャピラリ(第1の流路14)を通り、複数の丸キャピラリ(第2の流路15)に導入される。次に吸収ポート13をOPENにすると液が残液吸収部材19(液吸収パット)に進み、丸キャピラリに導入・秤量された液以外の残液を吸収パットの毛細管力によりすべて吸収する。これで混合液の秤量、分離が完成した。秤量された液を加圧或いは減圧でマイクロチューブに取り出して1mLにメスアップした。分光光度計によって吸光度を測定し、検量線から、体積に換算する。N=20で評価した結果、本発明の丸キャピラリー秤量チップの秤量・搬送精度はCV 0.5%と高精度の秤量・搬送が実現できた。
【0069】
また、前記と同じ操作で、丸キャピラリで秤量された血液希釈液を出口から減圧することにより下部にあるHbA1cスライドに点着する。発色反応が起こり、分光光度計(MCPD-2000(大塚電子))によって反射光の吸光度を測定する。N=10で評価した結果、発色精度はCV 2.2%であった。
【0070】
(実施例2)
上記第2実施形態の秤量チップ20の構成を有するセル秤量チップを使用して精度を評価した。
血液1μLと希釈液20μLを攪拌ポート22に入れる。吸収ポート23と出口を閉じるまま、スターラで攪拌する。均一になった後、出口をOPENにすると混合液が毛細管現象により連絡キャピラリ(第1の流路24)を通り、その流路から直角方向に延びた複数個の菱形または楕円形セル形状の秤量セル(第2の流路25)に導入される。次に吸収ポート23をOPENにすると液が残液吸収部材29(液吸収パット)に進み、秤量セルに導入・秤量された液以外の残液を吸収パットの毛細管力によりすべて吸収する。これで混合液の秤量、分離が完成した。秤量された液はすぐに下部にあるHbA1cスライドに展開する。発色反応が起こり、分光光度計(MCPD-2000(大塚電子))によって反射光の吸光度を測定する。N=10で評価した結果、発色精度はCV 2.0%であった。
【0071】
(実施例3)
上記第3実施形態の秤量チップの構成を有するキャピラリ秤量チップを使用して精度を評価した。
血液1μLと希釈液20μLを攪拌ポート42に入れる。吸収ポート43と出口を閉じるまま、スターラで攪拌する。均一になった後、出口をOPENにすると混合液が毛細管現象により連絡キャピラリ(第1の流路44)を通り、その流路から直角方向に延びた複数個の秤量キャピラリ(第2の流路45)に導入される。次に、吸収ポート43をOPENにすると液が残液吸収部材49(液吸収パット)に進み、秤量キャピラリに導入・秤量された液以外の残液を吸収パットの毛細管力によりすべて吸収する。これで混合液の秤量、分離が完成した。秤量された液はすぐに出口に底面にあるHbA1cスライドに展開する。発色反応が起こり、分光光度計(MCPD-2000(大塚電子))によって反射光の吸光度を測定する。N=10で評価した結果、発色精度はCV 2.8%であった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る秤量チップの第1実施形態を示す図である。
【図2】第1実施形態の断面図である。
【図3】図2のX−X矢視方向に見た状態を示す図である。
【図4】第1実施形態の秤量チップの動作状態を示す図である。
【図5】図4の秤量チップの状態を示す断面図である。
【図6】第1実施形態の秤量チップの動作状態を示す図である。
【図7】図6の秤量チップの状態を示す断面図である。
【図8】第1実施形態の秤量チップの動作状態を示す図である。
【図9】図8の秤量チップの状態を示す断面図である。
【図10】第2実施形態の秤量チップの構成を示す図である。
【図11】図10の秤量チップのB−B方向の断面図である。
【図12】図10の秤量チップのA−A方向の断面図である。
【図13】図11の矢印C部分の拡大図である。
【図14】図12のE−E方向の断面図である。
【図15】第2実施形態の秤量チップの動作を説明する図である。
【図16】第2実施形態の秤量チップの動作を説明する図である。
【図17】第3実施形態の秤量チップの構成を示す図である。
【図18】図17の秤量チップのH−H方向の断面図である。
【図19】図17の秤量チップのF−F方向の断面図である。
【図20】図18の矢印I部分の拡大図である。
【図21】図19の秤量チップのJ−J方向の断面図である。
【図22】第3実施形態の秤量チップの動作の状態を説明する図である。
【図23】第2の流路の底面の形状の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
10,20,40 秤量チップ
12,22,42 攪拌ポート
13,23,43 吸収ポート
14,24,44 第1の流路
15,25,45 第2の流路
15a,25a,45a 第1開口部
15b,25b,45b 第2開口部
16,26,46 反応部材
L1 希釈液
L2 血液
L3 被検査液
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種サンプルを用いた分析や化学反応を行う際などに用いるのに微量液体秤取構造を有する秤量チップ及びこれを用いる検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微量の液体を秤量する手法としては、例えば下記特許文献1から3のものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2002−357616号公報
【特許文献2】特開2004−157097号公報
【特許文献3】特開2004−163104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1から3では、液体が連続的に流れるマイクロチップ内に複数の流路構造を設けることによって、マイクロチップ内で液体を微量かつ定量的に扱うことが可能であるが、そのための複数の構成と液体操作に必要な送液システムが必要となる。また文献1の構成では、秤量部の両端から液体がにじみ出てしまう等の問題があり、高精度の秤量ができない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、単純な構成により,簡単な操作のみで液体を高精度で秤量することができるようにした秤量チップ及びそれを用いた検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記構成によって達成される。
(1) 被検査液を秤量する秤量チップであって、チップ本体と、前記チップ本体に形成された第1の流路と、前記第1の流路に一方の端部が連通する第2の流路と、前記第2の流路の他端の端部が連通する第3の流路とを有し、前記第1の流路の、前記第2の流路開口部近傍の周長をL1とし、断面積をS1とし、前記第2の流路の、前記第1の流路に開口する第1開口部の周長をL2とし、断面積をS2としたとき、(L1/S1)<(L2/S2)であり、前記第2の流路の前記第1開口部に少なくとも一部に段差が設けられており、且つ、前記第2の流路における、第3の流路に開口する第2開口部に少なくとも一部に段差が設けられていることを特徴とする秤量チップ。
(2) 前記第1開口部の段差が設けられている周長が、前記第1の開口部の周長L2の1/2以上であることを特徴とする上記(1)に記載の秤量チップ。
(3) 前記第2開口部の段差が設けられている周長が、前記第2の開口部の周長の1/2以上であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の秤量チップ。
(4) 前記第3の流路に前記被検査液に反応する反応部材が設けられていることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の秤量チップ。
(5) 前記第2の流路に前記被検査液に反応する反応部材が設けられていることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の秤量チップ。
(6) 前記被検査液が、血液、尿等の体液であることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の秤量チップ。
(7) 前記被検査液が食品であることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の秤量チップ。
(8) 前記被検査液が、環境関連物質であることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の秤量チップ。
(9) 上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の秤量チップを用いて、被検査液の検査を行うことを特徴とする検査方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、単純な構成により,簡単な操作のみで液体を高精度で秤量できるようにした秤量チップ及びそれを用いた検査方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本発明に係る秤量チップの第1実施形態を示す図である。図2は、第1実施形態の断面図である。図3は、図2のX−X矢視方向に見た状態を示す図である。図4は、第1実施形態の秤量チップの動作状態を示す図である。図5は、図4の秤量チップの状態を示す断面図である。図6は、第1実施形態の秤量チップの動作状態を示す図である。図7は、図6の秤量チップの状態を示す断面図である。図8は、第1実施形態の秤量チップの動作状態を示す図である。図9は、図8の秤量チップの状態を示す断面図である。
【0009】
本実施形態の秤量チップ10は、チップ本体11を有している。チップ本体11は、3つのチップ基板材11a,11b,11cとを貼り合わせて構成されている。
【0010】
チップ本体11には、希釈液L1と血液L2とが投入され、両液を攪拌する攪拌ポート12と、残液を吸収する吸収ポート13とが形成されている。
【0011】
攪拌ポート12の底部には、投入された希釈液L1と血液L2と攪拌するため、回転自在に設けられた棒形状の攪拌部材18が設けられている。攪拌部材18が、図1中の矢印で示すように回転することで、希釈液L1と血液L2とが攪拌されて被検査液L3が生成される。
【0012】
吸収ポート13には、残液を毛細管力によって吸収する残液吸収部材19が設けられている。
【0013】
攪拌ポート12と吸収ポート13との間には第1の流路14が設けられている。本実施形態において、第1の流路14は、チップ本体11のチップ基板材11bに形成されている。
【0014】
チップ基板材11bには、第1の流路14に連通する複数(本実施形態では2つ)の第2の流路15が形成されている。第2の流路15はそれぞれ、一方の端部が第1の流路14に連通し、且つ、他方の端部がチップ基板材11cに形成された第3の流路11dに連通するように形成されている。また、第2の流路15は、略円筒形状の開口で、第1の流路14側の第1開口部15aが第3の流路11d側の第2開口部15bよりも大径になるように形成されている。本実施形態では、第2の流路15が、所定の量の被検査液を秤量する秤量キャピラリとして機能する。第2の流路15と、該第2の流路15に対応する第3の流路11dの数は、検査の回数や種類に応じて適宜変更することができる。
【0015】
第3の流路11dにおいて、第2の流路15の第2開口部15bに対向する位置に反応部材16が設けられている。反応部材16は、例えば、発色反応スライドを使用することができる。
【0016】
チップの基板材は無機材質でも良いし、有機材質でもいいである。基板に使用される無機材質の例を挙げれば金属、シリコン、テフロン(登録商標)、ガラス、セラミックスなどである。有機材質はプラスチック、ゴムなどである。
【0017】
プラスチックの例としては、COP、PS、PC、PMMA、PE、PET、PP等を挙げることができる。ゴムの例としては、天然ゴム、合成ゴム、シリコンゴム、PDMS等を挙げることができる。シリコン含有物質としては、ガラス、石英、シリコンウエファー等のアモルファスシリコン、ポリメチルシロキサンなどのシリコーンが挙げられる。特に好ましい例としては、PMMA、COP、PS、PC、PET、PDMS、ガラス、シリコンウエファー等を挙げることができる。
【0018】
チップの内表面の親、疎水化処理が好ましい。水性検体の場合は親水化処理、油性検体の場合、疎水化処理が必要である。親疎水化処理法として、従来の表面処理方法が適用できる。大きく分けて、化学的表面処理法と物理的表面処理法がある。化学的表面処理法としては、薬品処理、カップリング剤による処理、蒸気処理、グラフト化、電気化学的方法、添加剤による表面改質などがある。物理的表面処理法としては、UV照射、電子線処理、イオンビーム照射、低温プラズマ処理、CASING処理、グロー、コロナ放電処理、酸素プラズマなどの方法がある。
【0019】
秤量チップの秤量範囲は必要に応じ、秤量キャピラリ(つまり、第2の流路15)の寸法を変えることによって調節できる。秤量範囲は、好ましくは0.05〜50μLであり、より好ましくは0.1〜10μLであり、さらに好ましくは0.5〜5μLである。
【0020】
次に、本実施形態の秤量チップの動作を説明する。
先ず、図1に示すように、攪拌ポート12に希釈液L1及び血液L2を投入し、攪拌部材18によって両液を攪拌して、被検査液L3を生成する。
【0021】
次に、第3の流路11dの出口をオープンにすると、図4及び図5に示すように、毛細管力より攪拌ポート12に貯留された被検査液L3が第1の流路14を吸収ポート13側に向って流動し始める。このとき、吸収ポート13は、遮蔽部材17によって遮蔽されている。そして、第1の流路14を流動する被検査液L3の一部が第2の流路15に所定の量だけ貯留保持される。
【0022】
吸収ポート13の遮蔽部材17を取り除くと、毛細管力より図6及び図7に示すように、第1の流路14内に残留した被検査液L3が吸収ポート13内に導かれ、残液吸収部材19に毛細管力によって吸収される。このとき、第2の流路15には所定の量の被検査液L3が保持される。この時、吸収ポート13に図示しない減圧手段を接続して第1の流路14内を減圧しても良い。
【0023】
図8及び図9に示すように、第3の流路11dの出口をそれぞれ減圧することで、第2の流路15に保持された被検査液L3が反応部材16に点着される。被検査液L3が点着された反応部材16には発色反応が起こり、反応部材16の吸光度測定を行う。
【0024】
なお、本実施形態において、反応部材16への被検査液L3の点着は、減圧方式としたが、上流側からの加圧方式としてもよい。
【0025】
本実施形態の秤量チップ10は、第1の流路14の、第2の流路15に開口する第1開口部15a近傍の周長をL1とし、断面積をS1とし、第2の流路15の、第1開口部15aの周長をL2とし、断面積をS2としたとき、(L1/S1)<(L2/S2)となる。ここで、上記の式は、一般的には、ある量の流体を容器に保持させた場合に、容器底部に形成された開口から漏れ出ることなく、容器に収容された状態を維持できる耐圧力(ラプラス圧と呼ばれている)の関係を示している。本発明においては、液体が同じ被検査液L3であるため、流体の表面張力はともに等しくなる。つまり、流体の表面張力をγとした場合、(L1・γ/S1)<(L2・γ/S2)が成立し、γがともに同じであるため省略すると、(L1/S1)<(L2/S2)となる。第1実施形態の場合、この条件が満足されていない場合、流路14内の残留した液L3を取り除く際、開口部近傍で液ぎれが発生してしまい、L3を完全に取り除くことができない。
【0026】
また、図1に示すように、本実施形態の秤量チップ10は、第1開口部15aには少なくとも一部に段差が設けられている。具体的には、秤量チップ10の上面視(図1の正面視)において、第1開口部15aは、その周縁部が第1の流路14の両側内壁からそれぞれg1,g2の隙間だけ離れて開口するように、形成されている。ここで、第1開口部15aと該第1開口部15a周囲の第1の流路14の底面との境界が段差となる。第1開口部15aの段差が設けられている周長が、第1開口部15aの全周長L2の1/2以上であることが好ましい。この実施例の場合、両者は等しく1となる。
【0027】
図2及び3に示すように、第2の流路15の第2開口部15bは、チップ基板材11bから第3の流路11d内に突出する円筒状の突起部11eに形成されている。第2開口部15bは突起部11eの周縁部11fから隙間g3(=g4)離れて開口している。ここで、第2開口部15bと突起部11eとの境界部が段差となる。第2開口部15bの段差が設けられている周長が、第2開口部全周長の1/2以上であることが好ましい。この実施例の場合、両者は等しく1となる。
【0028】
なお、本実施形態において、第1開口部15aの直径D1は、0.5mm〜1.5mmとし、第2開口部15bの直径d1は、0.2mm〜0.5mmとした。
【0029】
本実施形態のように、第1開口部15aに段差を設けることで、第1の流路14に残留した被検査液L3を吸収ポート13側へ移動させて残液吸収部材19に吸収させる際に、第2の流路15に保持された被検査液L3の一部が第1の流路14を移動する被検査液Lに伴なわれて所定の量から目減りしてしまうことを防止することができる。また、第2開口部15bに段差を設けることで、第2の流路15の被検査液L3は第2開口部の外に滲み出ることなく、確実に保持させることができ、正確な秤量が可能になる。
【0030】
次に、本発明に係る秤量チップの第2実施形態を説明する。図10は、第2実施形態の秤量チップの構成を示す図である。図11は、図10の秤量チップのB−B方向の断面図である。図12は、図10の秤量チップのA−A方向の断面図である。図13は、図11の矢印C部分の拡大図である。図14は、図12のE−E方向の断面図である。図15及び図16は、第2実施形態の秤量チップの動作を説明する図である。なお、以下に説明する実施形態において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。
【0031】
秤量チップ20は、チップ本体21を備えている。チップ本体21は、チップ基板材21aと21bとを貼り合わせて構成されている。
【0032】
チップ本体21には、攪拌ポート22と、吸収ポート23とが形成されている。また、チップ基板材21bには第1の流路24が形成されており、該第1の流路24の一方の端部が攪拌ポート22に連通し、他方の端部が吸収ポート23に連通している。
【0033】
攪拌ポート22には、投入された希釈液L1と血液L2とを攪拌するため、棒形状の攪拌部材28が回転自在に設けられている。また、吸収ポート23には、残液吸収部材29が設けられている。
【0034】
チップ本体21には、複数(本実施形態では2つ)のエア抜きポート31が形成されている。各エア抜きポート31と第1の流路24との間には、秤量機能を有する第2の流路25が形成されている。第2の流路25はそれぞれ、チップ本体21の上面視(図10の正面視)において略矩形状を有する空間である。
【0035】
各第2の流路25の一方の端部には、第1の流路24に開口する第1開口部25aが形成され、他方の端部には、エア抜きポート31に開口する第2開口部25bが形成されている。本実施形態において、各エア抜きポート31が第3の流路として機能する。第2の流路25,エア抜きポート31の数は特に限定されず、検査の回数や種類に応じて適宜変更することができる。
【0036】
各第2の流路25の底部には、反応部材26が設けられている。反応部材26は、上記実施形態と同様のものを使用することができ、例えば、発色反応スライドである。
【0037】
検査時以外のときなど、被検査液を流動させないときには、各エア抜きポート31,吸収ポート23の開口部分には遮蔽部材27a,27b,27cが取り付けられている。
【0038】
図13に示すように、第2の流路25の第1開口部25aは、第1の流路24の底面(図13においてチップ基板材21bの上面)から上方に隙間g5だけ離間した位置で開口している。こうすれば、第1開口部25aの左右及び下方の周縁部が段差となるため、第2の流路25に一旦保持された被検査液L3が、第1の流路24を流動する被検査液Lに伴なわれて流出してしまうことを防止することができる。さらに、第1開口部25aの上辺が第1の流路24の上面(図13においてチップ基板材21aの下面)から下方に離間した位置で開口している構成とすることがより好ましい。こうすれば、第2の流路25に貯留された被検査液L3をより一層確実に保持させることができる。
【0039】
ここで、第1開口部25aの段差が設けられている周長が、第1開口部の全周長の1/2以上であることが好ましい。ここで、例えば第1開口部25aを、一辺D2の正方形とすると、段差が設けられている周長は、3×D2、第1開口部の全周長は4×D2となる。
【0040】
図14に示すように、第2の流路25の第2開口部25bは、エア抜きポート(第3の流路)31の底面(図14においてチップ基板材21bの上面)から上方に隙間g6だけ離間した位置で開口している。こうすれば、第2開口部25bの左右及び上下の周縁部が段差となるため、被検査液L3は第2開口部の外ににじみ出ることなく、確実に保持させることができる。
【0041】
ここで、第2開口部25bの段差が設けられている周長が、第2開口部の全周長の1/2以上であることが好ましい。本実施形態では、第2開口部25bが一辺d2の正方形であり、段差が設けられている周長がd2×4であり、全周長と等しい。こうすれば、第2の流路25に貯留する被検査液L3がエア抜きポート31側へにじみ出ることなく、確実に保持させることができる。
【0042】
本実施形態の秤量チップ20は、第1の流路24の、第2の流路25開口近傍部25aの周長をL1とし、断面積をS1とし、第2の流路25の、第1開口部周長をL2とし、断面積をS2としたとき、(L1/S1)<(L2/S2)となる。第1開口部及び第2開口部の直径は上記実施形態と同じとしてよい。
【0043】
次に、本実施形態の秤量チップの動作を説明する。
最初に、図10に示すように各エア抜きポート31を遮蔽部材27a,27bで閉じ、また、吸収ポート23を遮蔽部材27cで閉じた状態とする。そして、攪拌ポート22に希釈液L1と血液L2とを投入し、攪拌部材28を駆動することで、2液をスターラ攪拌して混合させることで、被検査液L3を生成する。
【0044】
図15に示すように、攪拌ポート22の出口を開くと、被検査液L3が第1の流路24を流動し、秤量機能を有する各第2の流路25に毛細管現象により導入される。次に、図16に示すように、吸収ポート23を開放すると、第1の流路24に残留する被検査液L3が吸収ポート23側に移動し、残液吸収部材29の毛細管力によって全て吸収される。こうして、第2の流路25のみに被検査液L3が所定の量だけ保持される。
【0045】
第2の流路25に保持された被検査液L3は、各第2の流路25に設けられた反応部材26と発色反応を起こす。このとき、反応部材26の吸光度を測定することによって特定の物質の濃度を分析する。
【0046】
本実施形態の秤量チップ20の構成では、被検査液L3を第2の流路25で秤量した後、搬送動作が必要ないため、液残りがなく、秤量精度は第2の流路25の寸法精度に依存するため、高精度なマイクロチップ作成により高精度な秤量ができる。
【0047】
次に、本発明に係る秤量チップの第3実施形態を説明する。図17は、第3実施形態の秤量チップの構成を示す図である。図18は、図17の秤量チップのH−H方向の断面図である。図19は、図17の秤量チップのF−F方向の断面図である。図20は、図18の矢印I部分の拡大図である。図21は、図19の秤量チップのJ−J方向の断面図である。図22は、第3実施形態の秤量チップの動作の状態を説明する図である。なお、以下に説明する実施形態において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。
【0048】
秤量チップ40は、チップ本体41を備えている。チップ本体41は、チップ基板材41aと41bとを貼り合わせて構成されている。
【0049】
チップ本体41には、攪拌ポート42と、吸収ポート43とが形成されている。また、チップ基板材41bには第1の流路44が形成されており、該第1の流路44の一方の端部が攪拌ポート42に連通し、他方の端部が吸収ポート43に連通している。
【0050】
攪拌ポート42には、投入された希釈液L1と血液L2とを攪拌するため、棒形状の攪拌部材48が回転自在に設けられている。また、吸収ポート43には、残液吸収部材49が設けられている。
【0051】
チップ本体41には、複数(本実施形態では2つ)のエア抜きポート51a,51bが形成されている。各エア抜きポート51a,51bと第1の流路44との間には、秤量機能を有する第2の流路45が形成されている。
【0052】
各第2の流路45の一方の端部には、第1の流路44に開口する第1開口部45aが形成され、他方の端部には、エア抜きポート51a又は51bに開口する第2開口部45bが形成されている。本実施形態において、各エア抜きポート51a,51bが第3の流路として機能する。
さらに、図19に示すように、本実施形態の秤量チップ40において、各エア抜きポート51a,51bの底部には反応部材46が設けられている。このため、各エア抜きポート51a,51bが点着部としても機能する。なお、第2の流路45,エア抜きポート51a,51bの数は特に限定されず、検査の回数や種類に応じて適宜変更することができる。反応部材46は、上記実施形態と同様のものを使用することができ、例えば、発色反応スライドである。
【0053】
検査時以外のときなど、被検査液を流動させないときには、各エア抜きポート51a,51b,吸収ポート43の開口部分のそれぞれには、遮蔽部材47a,47b,47cが取り付けられている。
【0054】
図20に示すように、第2の流路45の第1開口部45aは、第1の流路44の底面(図20においてチップ基板材41bの上面)から上方に隙間g7だけ離間した位置で開口している。こうすれば、第1開口部45aの左右及び下方の周縁部が段差となるため、第2の流路45に一旦保持された被検査液L3が、第1の流路44を流動する被検査液Lに伴なわれて流出してしまうことを防止することができる。さらに、第1開口部45aの上辺が第1の流路44の上面(図20においてチップ基板材41aの下面)から下方に離間した位置で開口している構成とすることがより好ましい。こうすれば、第2の流路45に貯留された被検査液L3をより一層確実に保持させることができる。
【0055】
ここで、第1開口部45aの段差が設けられている周長が、第1開口部全周長の1/2以上であることが好ましい。ここで、例えば第1開口部45aを、一辺D3の正方形とすると、段差が設けられている周長は3×D3、第1開口部全周長は4×D3となる。
【0056】
図21に示すように、第2の流路45の第2開口部45bは、エア抜きポート(第3の流路)51aの底面に配置された反応部材46の上面から上方に隙間g8だけ離間した位置で開口している。こうすれば、第2開口部45bの左右及び上下の周縁部が段差となるため、第2の流路45に貯留する被検査液L3がエア抜きポート側へにじみ出ることなく、確実に保持させることができ、正確な秤量が可能となる。
【0057】
ここで、第2開口部45bの段差が設けられている周長が、第2開口部全周長の1/2以上であることが好ましい。本実施形態では、第2開口部45bが一辺d3の正方形であり、その周長がd3×4である。段差が設けられている周長はd3×4である。こうすれば、第2の流路45に貯留する被検査液L3がエア抜きポート51a,51b側へにじみ出ることなく、確実に保持させることができ、正確な秤量が可能となる。
【0058】
本実施形態の秤量チップ40は、第1の流路44の、第2の流路45に開口する第1開口部45a近傍の周長をL1とし、断面積をS1とし、第2の流路45の、第1開口部45aの周長をL2とし、断面積をS2としたとき、(L1/S1)<(L2/S2)となる。このため、第1の流路44から残液を処理する際に、第2の流路45に保持されている被検査液L3が逆流して第1の流路44に流出してしまうことを防止できる。なお、第1開口部及び第2開口部の直径は上記実施形態と同じとしてよい。
【0059】
また、図23(a)から(c)に示すように、本実施形態の秤量チップ40は、秤量後に被検査液を搬送する際に第2の流路45内での液残りを最小にするために、第2の流路の底面の角部をR形状とすることが望ましい。図23(a)に示すように、第2の流路45の底面角部のみをR形状とした構成とすることで、液残りを抑制することができる。また、図23(b)に示すように、底面全体をR形状とした構成とすることで、液残りをより一層確実に抑制することができる。また、図23(c)に示すように、底面のみでなく、上面(図23(c)においてチップ基板材41aの下側面)もR形状とすることで、第2の流路45を断面視において略円形にした構成としてもよい。また、上記第2実施形態においても本実施形態と同様に、秤量機能を有する第2の流路25,45の底面をR形状とすることが望ましい。
【0060】
次に、本実施形態の秤量チップの動作を説明する。
最初に、図17に示すように各エア抜きポート51a,51bを遮蔽部材47a,47bで閉じ、また、吸収ポート43を遮蔽部材47cで閉じた状態とする。そして、攪拌ポート42に希釈液L1と血液L2とを投入し、攪拌部材48を駆動することで、2液をスターラ攪拌して混合させることで、被検査液L3を生成する。
【0061】
図22(a)に示すように、攪拌ポート42の出口を開くと、被検査液L3が第1の流路44を流動し、秤量キャピラリとして機能する各第2の流路45に毛細管現象により導入される。次に、図22(b)に示すように、吸収ポート43を開放すると、第1の流路44に残留する被検査液L3が吸収ポート43側に移動し、残液吸収部材49の毛細管力によって全て吸収される。こうして、第2の流路45のみに被検査液L3が所定の量だけ保持される。
【0062】
次に、図22(c)に示すように、エア抜きポート51aのみを減圧すると、該エア抜きポート51aに連通する第2の流路45に保持された被検査液L3がエア抜きポート51aに導入される。また、図22(d)に示すように、エア抜きポート51bを減圧すると、該エア抜きポート51bに連通する第2の流路45に保持された被検査液L3がエア抜きポート51bに導入される。なお、エア抜きポート51a,51bを同時に減圧して、点着を行ってもよい。
【0063】
エア抜きポート51a,51bに導入された被検査液L3は、各エア抜きポート51a,51bに設けられた反応部材46と発色反応を起こす。このとき、反応部材46の吸光度を測定することによって特定の物質の濃度を分析する。
【0064】
本実施形態の秤量チップ40の構成では、図19に示すように、連絡キャピラリとして機能する第1の流路44と秤量キャピラリとして機能する第2の流路45との上面が同一平面(チップ基板材41aと41bとの境界面)上にあり、第2の流路45の深さT2が、第1の流路44の深さT1より浅いことが望ましい。
【0065】
また、本実施形態の秤量チップ40は、断面耐圧(周長×液体の表面張力÷断面積)が第1の流路44の断面耐圧よりも大きい。つまり、以下の式が成り立つ。
2(W2+T2)・γ/(W2・T2)>2(W1+T1)・γ/(W1・T1)
【0066】
なお、本実施形態では、減圧によって被検査液を点着させる方式としたが、上流側から加圧することで、点着させる方式とすることができる。
【0067】
さらに、図19に示すように、本実施形態の秤量チップ40は、第2の流路45の底面(図19における右側側面)が、エア抜きポート51a,51bの反応部材46の上面(図19における左側側面)と同一平面に位置しないように構成されている。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例、比較例を挙げて本発明の秤量チップを詳しく説明する。本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
最初に、実施例1として、上記第1実施形態の秤量チップの構成を有する丸キャピラリ秤量チップを使用して精度を評価した。
先ず、血液1μLと希釈液20μLを攪拌ポート12に入れる。吸収ポート13と出口を閉じるまま、スターラで攪拌する。均一になった後、出口をOPENにすると被検査液L3が毛細管現象により連絡キャピラリ(第1の流路14)を通り、複数の丸キャピラリ(第2の流路15)に導入される。次に吸収ポート13をOPENにすると液が残液吸収部材19(液吸収パット)に進み、丸キャピラリに導入・秤量された液以外の残液を吸収パットの毛細管力によりすべて吸収する。これで混合液の秤量、分離が完成した。秤量された液を加圧或いは減圧でマイクロチューブに取り出して1mLにメスアップした。分光光度計によって吸光度を測定し、検量線から、体積に換算する。N=20で評価した結果、本発明の丸キャピラリー秤量チップの秤量・搬送精度はCV 0.5%と高精度の秤量・搬送が実現できた。
【0069】
また、前記と同じ操作で、丸キャピラリで秤量された血液希釈液を出口から減圧することにより下部にあるHbA1cスライドに点着する。発色反応が起こり、分光光度計(MCPD-2000(大塚電子))によって反射光の吸光度を測定する。N=10で評価した結果、発色精度はCV 2.2%であった。
【0070】
(実施例2)
上記第2実施形態の秤量チップ20の構成を有するセル秤量チップを使用して精度を評価した。
血液1μLと希釈液20μLを攪拌ポート22に入れる。吸収ポート23と出口を閉じるまま、スターラで攪拌する。均一になった後、出口をOPENにすると混合液が毛細管現象により連絡キャピラリ(第1の流路24)を通り、その流路から直角方向に延びた複数個の菱形または楕円形セル形状の秤量セル(第2の流路25)に導入される。次に吸収ポート23をOPENにすると液が残液吸収部材29(液吸収パット)に進み、秤量セルに導入・秤量された液以外の残液を吸収パットの毛細管力によりすべて吸収する。これで混合液の秤量、分離が完成した。秤量された液はすぐに下部にあるHbA1cスライドに展開する。発色反応が起こり、分光光度計(MCPD-2000(大塚電子))によって反射光の吸光度を測定する。N=10で評価した結果、発色精度はCV 2.0%であった。
【0071】
(実施例3)
上記第3実施形態の秤量チップの構成を有するキャピラリ秤量チップを使用して精度を評価した。
血液1μLと希釈液20μLを攪拌ポート42に入れる。吸収ポート43と出口を閉じるまま、スターラで攪拌する。均一になった後、出口をOPENにすると混合液が毛細管現象により連絡キャピラリ(第1の流路44)を通り、その流路から直角方向に延びた複数個の秤量キャピラリ(第2の流路45)に導入される。次に、吸収ポート43をOPENにすると液が残液吸収部材49(液吸収パット)に進み、秤量キャピラリに導入・秤量された液以外の残液を吸収パットの毛細管力によりすべて吸収する。これで混合液の秤量、分離が完成した。秤量された液はすぐに出口に底面にあるHbA1cスライドに展開する。発色反応が起こり、分光光度計(MCPD-2000(大塚電子))によって反射光の吸光度を測定する。N=10で評価した結果、発色精度はCV 2.8%であった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る秤量チップの第1実施形態を示す図である。
【図2】第1実施形態の断面図である。
【図3】図2のX−X矢視方向に見た状態を示す図である。
【図4】第1実施形態の秤量チップの動作状態を示す図である。
【図5】図4の秤量チップの状態を示す断面図である。
【図6】第1実施形態の秤量チップの動作状態を示す図である。
【図7】図6の秤量チップの状態を示す断面図である。
【図8】第1実施形態の秤量チップの動作状態を示す図である。
【図9】図8の秤量チップの状態を示す断面図である。
【図10】第2実施形態の秤量チップの構成を示す図である。
【図11】図10の秤量チップのB−B方向の断面図である。
【図12】図10の秤量チップのA−A方向の断面図である。
【図13】図11の矢印C部分の拡大図である。
【図14】図12のE−E方向の断面図である。
【図15】第2実施形態の秤量チップの動作を説明する図である。
【図16】第2実施形態の秤量チップの動作を説明する図である。
【図17】第3実施形態の秤量チップの構成を示す図である。
【図18】図17の秤量チップのH−H方向の断面図である。
【図19】図17の秤量チップのF−F方向の断面図である。
【図20】図18の矢印I部分の拡大図である。
【図21】図19の秤量チップのJ−J方向の断面図である。
【図22】第3実施形態の秤量チップの動作の状態を説明する図である。
【図23】第2の流路の底面の形状の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
10,20,40 秤量チップ
12,22,42 攪拌ポート
13,23,43 吸収ポート
14,24,44 第1の流路
15,25,45 第2の流路
15a,25a,45a 第1開口部
15b,25b,45b 第2開口部
16,26,46 反応部材
L1 希釈液
L2 血液
L3 被検査液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査液を秤量する秤量チップであって、
チップ本体と、
前記チップ本体に形成された第1の流路と、
前記第1の流路に一方の端部が連通する第2の流路と、
前記第2の流路の他端に連通する第3の流路とを有し、
前記第2の流路開口部近傍の前記第1の流路の周長をL1とし、断面積をS1とし、前記第2の流路の、前記第1の流路に開口する第1開口部周長をL2とし、断面積をS2としたとき、(L1/S1)<(L2/S2)であり、
前記第2の流路の前記第1開口部に少なくとも一部に段差が設けられており、且つ、前記第2の流路における、第3の流路に開口する第2開口部に少なくとも一部に段差が設けられていることを特徴とする秤量チップ。
【請求項2】
前記第1開口部の段差が設けられている周長が、前記第2の流路の第1開口部周長L2の1/2以上であることを特徴とする請求項1に記載の秤量チップ。
【請求項3】
前記第2開口部の段差が設けられている周長が、前記2開口部の周長の1/2以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の秤量チップ。
【請求項4】
前記第3の流路に前記被検査液に反応する反応部材が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の秤量チップ。
【請求項5】
前記第2の流路に前記被検査液に反応する反応部材が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の秤量チップ。
【請求項6】
前記被検査液が、血液、尿等の体液であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の秤量チップ。
【請求項7】
前記被検査液が食品であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の秤量チップ。
【請求項8】
前記被検査液が、環境関連物質であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の秤量チップ。
【請求項9】
上記請求項1から8のいずれか1つに記載の秤量チップを用いて、被検査液の検査を行うことを特徴とする検査方法。
【請求項1】
被検査液を秤量する秤量チップであって、
チップ本体と、
前記チップ本体に形成された第1の流路と、
前記第1の流路に一方の端部が連通する第2の流路と、
前記第2の流路の他端に連通する第3の流路とを有し、
前記第2の流路開口部近傍の前記第1の流路の周長をL1とし、断面積をS1とし、前記第2の流路の、前記第1の流路に開口する第1開口部周長をL2とし、断面積をS2としたとき、(L1/S1)<(L2/S2)であり、
前記第2の流路の前記第1開口部に少なくとも一部に段差が設けられており、且つ、前記第2の流路における、第3の流路に開口する第2開口部に少なくとも一部に段差が設けられていることを特徴とする秤量チップ。
【請求項2】
前記第1開口部の段差が設けられている周長が、前記第2の流路の第1開口部周長L2の1/2以上であることを特徴とする請求項1に記載の秤量チップ。
【請求項3】
前記第2開口部の段差が設けられている周長が、前記2開口部の周長の1/2以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の秤量チップ。
【請求項4】
前記第3の流路に前記被検査液に反応する反応部材が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の秤量チップ。
【請求項5】
前記第2の流路に前記被検査液に反応する反応部材が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の秤量チップ。
【請求項6】
前記被検査液が、血液、尿等の体液であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の秤量チップ。
【請求項7】
前記被検査液が食品であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の秤量チップ。
【請求項8】
前記被検査液が、環境関連物質であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の秤量チップ。
【請求項9】
上記請求項1から8のいずれか1つに記載の秤量チップを用いて、被検査液の検査を行うことを特徴とする検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2007−101240(P2007−101240A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288452(P2005−288452)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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