移動体の追従方法
【課題】従来の移動体の追従方法は、現在の追従目標物体、またはその経路を目標として追従移動を行っており、結果として、目標追従物体の背後を追従することであった。
【解決手段】本発明の移動体の追従方法は、追従目標物体1の位置を検出し、検出した位置を包含する3次元領域を求め、求めた3次元領域の所定の位置を目標として移動体2を移動させ、追従目標物体1に追従させることができ、追従目標物体1から一定領域離れた位置に移動体2が位置することで、追従目標物体1と安全かつ適切な位置関係を保つことができる。
【解決手段】本発明の移動体の追従方法は、追従目標物体1の位置を検出し、検出した位置を包含する3次元領域を求め、求めた3次元領域の所定の位置を目標として移動体2を移動させ、追従目標物体1に追従させることができ、追従目標物体1から一定領域離れた位置に移動体2が位置することで、追従目標物体1と安全かつ適切な位置関係を保つことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の追従方法に関し、特に、追従目標物体に追従する移動体の追従方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動カートや自律走行自動車などに代表される移動体の追従目標物体への追従方法では、先導する追従目標物体との相対位置を、例えば超音波の受送信や赤外線LEDの点滅画像などの無線デバイスを使って測定し、その位置情報の差分により追従目標物体の速度ベクトルを算出し、予測することにより追従を行うものがある(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0003】
従来技術について、図10、図11、図12を用いて説明する。図10は特許文献1記載の従来例1、および非特許文献1記載の従来例2の移動体の構成を示した図であり、図11は従来例1の移動体の追従方法を示した図であり、図12は従来例2の移動体の追従方法を示した図である。
【0004】
上記の移動体は、図10で示すように、追従目標物体101を追従移動する移動体102であり、車輪などの移動機構102aと、追従目標物体101との相対的な位置関係を測定する測定装置102bと、測定装置102bからの測定値を用いて追従経路を算出、予測する計算装置102cと、計算装置102cの算出結果に基づいて、移動機構102aを制御する制御装置102dから構成されている。
【0005】
ここで、追従目標物体101と移動体102とのとの相対的な位置関係を測定する測定装置102bを用いて、従来例1では、追従目標物体101に取り付けられた超音波と電波の送受信装置を用い、超音波、および電波の送受信を行うことにより追従目標物体101と移動体102との距離の測定を行っている。
【0006】
また、従来例2では、LEDの発光標識を画像で取得し、現在取得した標識の位置と前回取得した位置から移動距離の測定を行っている。
【0007】
上記の図10で説明した移動体の移動方法の従来例1を図11で説明する。図11に示すように移動体102は、追従目標物体101とは線分103で示された位置関係にあり、追従目標物体101が速度Vhで移動しているとする。このとき移動体102が移動体102から見た追従目標物体101の方向と同じ方向に速度Vrとなるように、また場合によっては、追従目標物体101と移動体102との距離が一定になるように、移動体102の移動を制御することで追従移動を行っている。
【0008】
また、上記の図10で説明した移動体の移動方法の従来例2を図12で説明する。図12に示すように移動体102は、追従目標物体101の測定点Ohp0とOhp1を結ぶ直線Lh0、追従目標物体101の測定点Ohp1とOhp2結ぶ直線Lh1の角度差をdθとしたとき、次の時間に追従目標物体101が、直線Lh1からdθずれた直線Lh2上を、測定点Ohp0とOhp1、測定点Ohp1とOhp2の位置情報より算出した速度の平均速度Vで移動し、測定点Ohp2を測定してから時間T後に、予測点Sに存在すると予測する。移動体102は、時間T後に、追従目標物体101の移動予測点Sから直線Lh2と平行に一定距離L離れた移動体102の目標移動直線Lprに下ろした垂線の足の位置に移動するように制御することで追従移動を行っている。
【特許文献1】特開平6−274223号公報
【非特許文献1】大矢晃久、南雲陽介、宗片匠 著 「人間と共に移動する生活支援ロボット−動作モードとインタラクション機能−」計測自動制御学会第3回システムインテグレーション部門講演会(SI2002)講演論文集(I)、 2002. 12(pp. 171−172 )
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来技術を適応する場合、以下のような課題がある。
【0010】
従来例1では、現在の追従目標物体、または、その経路を目標として追従移動を行っており、結果として、追従目標物体の背後を追従することになる。そのため、追従目標物体が突然停止した場合、移動体の制動が遅れ、制動能力によっては、衝突するおそれがある。
【0011】
また従来例2では、追従目標物体の経路と平行に一定距離離れた経路を追従しているため、特許文献1に記載された従来技術の課題を解決しているが、位置情報の差分より速度成分と方向成分を持つ速度ベクトルを算出しているため、位置情報のバラつきが速度ベクトルの方向成分の算出に大きく影響し、追従する方向と反対に方向成分を算出するなど、方向成分が大きく振れる恐れがある。
【0012】
また位置情報のバラつきを低減させるため、データの平滑化を行った場合、追従目標物体の移動予測に遅れが生じることで、常に追従目標物体に対して速度ベクトルの算出や移動実行が遅れるため、移動体の速度ベクトルの速度成分がバラつき、急激な変化を伴うだけでなく、速度ベクトルの方向成分が遅れるため、方向成分が大きく振れ、また、方向修正時にさらに遅れを生じるおそれがある。
【0013】
方向成分が大きく振れることによって、追従目標物体の追従が困難になるだけではなく、移動体の移動機構にも負荷を与えることや、移動体の暴走などの事故に繋がる可能性が懸念される。
【0014】
例えば従来例1において、移動体は、追従目標物体の真後ろに位置し、追従目標物体の方向に移動を行っている。ここで、追従目標物体が突然停止した場合、移動体の制動動作が遅れ、その制動能力によっては、前方に存在する追従目標物体に衝突する可能性がある。
【0015】
また従来例2において、図13のように、時刻T0、T1、T2の追従目標物体の測定位置をそれぞれOhp0、Ohp1、Ohp2、その位置情報のバラつきを示す測定誤差範囲をそれぞれE0、E1、E2、誤差を含んだ位置情報をOhp’0、Ohp’1、Ohp’2とした場合、Lh2の予測に用いるラインLhx(x=0、1)が大きくバラつきの影響を受け、Lh’x(x=0、1)となるため、Lh’2を算出してしまい、目標とするラインLrpと大きく異なるバラつきの影響を受けたラインLrp’から目標移動座標を算出してしまう。このように、測定した位置情報のバラつきのため、速度ベクトルの方向成分が大きく振れ、移動体の移動経路が安定しない可能性がある。
【0016】
また従来例2において、図14のように、位置情報のバラつきを低減させるため、データの平滑化を行うと、追従目標物体101の移動予測に遅れが生じることで、移動体は、常に追従目標物体101の速度ベクトルVh’xに対して、移動体の速度ベクトルVr’xの速度成分がバラつき、急激な変化を伴うだけでなく、移動体の速度ベクトルVr’xの方向成分が遅れるため、方向成分が大きく振れ、また方向修正時にさらに遅れを生じるおそれがある。
【0017】
本発明は、このような問題点を解決し、安全かつ適切な追従目標物体への追従を実現した移動体の追従方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の移動体の追従方法は、追従目標物体の位置を検出し、前記検出した位置を包含する3次元領域を求め、前記求めた3次元領域の所定の位置を目標として移動体を移動させ、前記追従目標物体に追従させることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の移動体の追従方法は、追従目標物体の位置を検出し、前記検出した位置を中心とする半径R1の球を求め、前記追従目標物体を追従する移動体を通り、前記求めた球への接線を算出し、前記算出された接線の経路で前記移動体を移動させ、前記追従目標物体に追従させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の移動体の追従方法によれば、追従目標物体の位置を包含する3次元領域の所定の位置を目標として移動体を移動させることにより、追従目標物体から一定領域離れた位置に移動体が位置し、追従目標物体と安全かつ適切な位置関係を保つことが可能となり、移動体の位置情報のばらつきを防ぐことが可能となる。
【0021】
また、追従目標物体の位置を中心とする半径R1の球を求め、移動体を通り、前記求めた球への接線を算出し、算出された接線の経路で移動体を移動させることにより、移動体の移動目標位置の算出が容易となり、また、追従目標物体の位置情報にバラつきが生じた場合においても、算出された接線の経路で移動させるので、移動体の速度ベクトルの方向成分の振れを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明を行う。
【0023】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施形態は、追従目標物体の位置を検出し、検出した位置を包含する3次元領域を求め、求めた3次元領域の所定の位置を目標として移動体を移動させ、追従目標物体に追従させる方法である。以下に3次元領域の一例として追従目標物体を中心とする球、または円を用いて説明する。
【0024】
まず、本発明の第1の実施形態における移動体の構成を図1に示す。また、本発明の第1の実施形態における移動体の追従方法について、図2に示す。
【0025】
図1において、1は追従目標物体、2は移動体を示す。移動体2は、移動体2を少なくとも移動するための移動機構2aと、追従目標物体1を検出する検出装置2bと、追従目標物体1の位置を測定する第1測定装置2c、移動体2の位置や速度を測定する第2の測定装置2dと、前記測定装置2c、2dより移動体2の目標座標を算出する算出装置2eと、その算出装置2eで算出された目標座標Po1(Xp1、Yp1、Zo1)の方向に移動するように移動機構2aの制御を行う制御装置2fとを具備する。
【0026】
ここで、追従目標物体1を検出する検出装置2bは、第1測定装置2cに含まれる場合もある。また第1測定装置2cにより追従目標物体1の絶対座標上の位置Oh1(Xh1、Yh1、Zo1)を測定する。さらに、第2測定装置2dにより移動体2の絶対座標上の位置Or1(Xr1、Yr1、Zo1)、および、速度Vrを測定する。例えば、第2測定装置2dとして、デッドレコニングなどの内部センサによって移動体2の絶対座標上の位置Or1を測定することもできる。
【0027】
また、第1測定装置2cについては、超音波センサやカメラなどの無線デバイスやリード線などの有線デバイスを用いて追従目標物体1との相対位置を測定し、測定装置2dとの測定結果より追従目標物体1の絶対座標上の位置Oh1を測定することができる。さらに、移動機構2aについては、車輪やプロペラなどを用いて3次元空間を移動することができる。
【0028】
次に、本実施形態の移動体の追従方法の概要について説明する。図2は、図1の平面Xhr−Yhr(Z=Zo1)上にある追従目標物体1の座標が移動した場合を示した図である。追従目標物体1は、速度Vhで移動するものとする。この追従目標物体1に対して、本実施形態における移動体2は、追従目標物体1の位置Oh1を中心とした半径R1の球を求め、移動体2の位置Or1を通る前記球の接線Lrと前記球の接点のいずれか1点を目標座標Po1(Xp1、Yp1、Zo1)とした時、目標座標Po1の方向に速度Vrで移動するものである。
【0029】
図3は、平面Xhr−Yhr(Z=Zo1)上に目標座標Po1を設定した例を示したものである。半径R1については、追従目標物体1と移動体2との距離Mを用いて、次の数1に示す範囲内で任意に設定できるものとする。
【0030】
【数1】
【0031】
前記球の接線Lrと前記球の接点のいずれか1点である目標座標Po1を定める方法について図4に示す。例えば、第1測定装置2cに、追従目標物体1の位置情報から移動方向を算出する機能を追加し、算出された追従目標物体1の移動方向の単位ベクトルaとの内積が最小になる単位ベクトルbの成分のみを持つ接線Lrを求め、前記球との接点を移動体2の目標座標Po1に定めてもよい。
【0032】
また、複数個の単位ベクトルbが求められる場合は、移動体2の算出装置2eによってランダムに選択してもよい。さらに、追従目標物体1が人であった場合には、その人の好みや要求に合わせた位置関係で、追従目標物体1の周囲の位置(例えば、追従目標物体1の上側、下側、左側、右側など)の選択であってもかまわない。その場合、前記球の接点である移動体2の目標座標Po1は、追従目標物体1の移動に伴い、選択された追従目標物体1の周囲のある位置が連続した範囲で、移動体2の算出装置2eによって選択されてもよい。
【0033】
ただし、図5に示すように、移動体2の目標座標Po1が、移動体2が進行不可能な領域Sに存在した場合(例えば、移動体2の目標座標Po1が地面下に設定した場合、移動体2は、進行することが不可能である場合)移動体2の目標座標Po1を変更せずに、移動体2が進行可能な範囲Lo(例えば、移動体2が移動可能である地面)に沿って追従してもよい。または進行可能な範囲で、移動体2の目標座標Po1を再選択してもよい。この場合、求めた球への接線Lrの目標座標Po1を可変させてもよい。
【0034】
次に、移動体2の移動速度の制御方法について説明する。例えば、移動体2の直進速度Vrと回転速度ωとする。また、移動体2と目標座標との距離m、移動体2の進行方向と目標座標のずれをθとするとき、次の数2に示す式で算出される速度となるように移動機構2aの制御を行う。
【0035】
【数2】
【0036】
ここで、G1、G2は任意のゲインである。
【0037】
以上のような制御式により、移動体2は目標座標の方向に移動し、追従目標物体1に対して追従移動を行う。
【0038】
さらに、予め移動体2が停止する範囲を移動体2と目標座標との距離mや移動体2と追従目標物体1の距離Mの範囲で設定してもよい。
【0039】
また前述の移動方法では、追従目標物体1の直線移動の場合について説明したが、追従目標物体1の移動経路が曲線を描く場合においても、同様のことが説明できる。
【0040】
また、図6に移動体2の移動軌跡を示す。時刻T0、T1、T2の追従目標物体1の測定位置をそれぞれOh10、Oh11、Oh12とした場合、移動体2は、それぞれの時刻の目標座標Po10、Po11、Po12へと移動するため、移動体2の移動軌跡はそれぞれOr10、Or11、Or12となる。したがって、移動体2は、追従目標物体1に対して追従移動を行う。
【0041】
また、図7は追従目標物体1の位置がセンサ系のバラつきによって、微小時間に変化した場合を示す。追従目標物体1の位置Oh1の測定値にバラつきがあるため、目標座標Po1もバラつきの影響を受ける。ここで、バラついた追従目標物体1の位置をOh1’、バラつきの影響を受けた目標座標をPo1’とする。しかしながら、移動体2と目標座標の距離mに対して、バラつきの幅nが小さい場合、移動体2は、回転運動を生じるが、そのズレが微小のため、目標座標Po1の方向に移動する。
【0042】
前記説明したように、本発明は、従来法に比べて、センサ系などによる位置情報のバラつきの影響を低減することができるため、必要以上に、位置情報を平滑化する必要がない。
【0043】
次に、追従目標物体1の移動の拘束条件が図2の場合と異なる例を示す。
【0044】
図8では、追従目標物体1の移動が平面上に拘束されない場合を示す。追従目標物体1と移動体2の絶対座標上のそれぞれの位置Oh2(Xr2、Yr2、Zr2)とOr2(Xh2、Yh2、Zh2)の任意の同一平面Xhpr−Yhpr上に目標座標Po2(Xp2、Yp2、Zp2)を設定すれば、移動体2の移動方法は図2の場合と同様となる。
【0045】
また、図9では、追従目標物体1の移動が平面X−Y上に拘束され、かつ、追従目標物体1の位置Oh3と、移動体2の位置Or3の絶対座標上の高さが異なる場合を示す。平面X−Yと平行、かつ、移動体2の位置Or3(Xr3、Yr3、Zo3)を通る平面Xr−Yr上において、追従目標物体1の絶対座標上の位置Oh3(Xh3、Yh3、Zh3)を中心軸とする半径R2の円と移動体2の位置Or3(Xr3、Yr3、Zo3)を通る直線との接点のいずれか1点Po3(Xp3、Yp3、Zo3)を目標座標に設定すれば、移動体2の移動方法は図2の場合と同様となる。
【0046】
また、図1において、移動体2に、追従目標物体1や移動体2の周辺環境の状況を検出する検出装置2bを具備し、この検出装置2bからの検出情報に基づいて算出装置2eにおいて、追従目標物体1を中心とする球、または、円の半径を変更し、追従目標物体1と移動体2との位置関係を変更してもよい。
【0047】
ここで、追従目標物体1や移動体2の周辺環境の状況を検出する検出装置2bとして、例えば、超音波や赤外線などを用い、検出装置2bを障害物センサとして機能させることにより障害物の接近状況を検出し、障害物を回避するために追従位置を変更してもよい。また、カメラやレーザレンジセンサなどにより周囲の障害物の数を検出し、障害物の数の多さによって追従目標物体1を中心とする球、または、円の半径を変化させ混雑時に邪魔にならないようにしてもよい。
【0048】
また検出装置2bを前記の機能とともに追従目標物体1の状態を検出する装置として兼用し、追従目標物体1の速度に応じて位置関係を変化させてよい。
【0049】
次に、移動体2の位置および経路の変更例を説明する。障害物の検知によって位置関係を変更する場合、追従目標物体1を追従する移動体2が追従経路前方に障害物を発見したため、追従目標物体1の後方に隠れるように追従目標物体1を中心とする球、または、円の半径を小さくして障害物を回避し、障害物を通り過ぎたところで元の半径に戻す。
【0050】
また周囲の混雑度合いにより位置関係を変更する場合、移動体2の周囲には通行人等の環境が存在するものとし、ここで、混雑していない環境の場合には、追従目標物体1を中心とする球、または、円の半径を大きくとって追従する移動体2が通行人によって混雑してくると前記の半径を小さくなるように位置関係を変更させて、通行人との接触などの発生確率を減らす。また、混雑が解消されると元のように半径を大きくして追従する。
【0051】
なお、このときの混雑度は移動体2の周囲一定範囲内の通行人等の環境物体の数でもよいし、環境の占める割合などによって定義される。
【0052】
なお、追従目標物体1と移動体2は、ある一定の大きさを持っていることにより、追従目標物体1と移動体2との位置関係において、両者が衝突しないためには、追従目標物体1を中心とする球、または円の半径は、「追従目標物体1の最大幅の半分」と「移動体2の最大幅の半分との和」よりも大きくすることが必要である。
【0053】
また、追従目標物体1の速度により位置関係を変更する場合について説明する。追従目標物体1の速度が小さい場合は、移動体2は前記の半径を小さく維持して追従を行うが、追従目標物体1の速度が大きくなると前記の半径を大きくとり追従を行い、追従目標物体1の急激な速度変化による衝突の発生確率を減少させる。
【0054】
以上のことから、本実施形態によれば、追従目標物体1に対し移動体2が追従移動する際に、追従目標物体1の移動速度を取得せず、追従移動することができるため、例えば、追従目標物体1の移動予測や移動体2の複雑な移動経路を算出せずに、容易に追従移動することができ、また、追従目標物体1、および、移動体2の位置検出センサ系にバラつきがあり、取得した位置情報にバラつきがある場合において、その影響を低減でき、位置データの平滑化の必要性が低くすることができる。これによって、計算量の負荷の低減することでき、より追従性の高い最適な移動体2の追従移動を実現することができる。また、環境に合わせて最適な追従位置での追従を行うことができるため、例えば、障害物に対して柔軟に回避を行ったり、周囲の混雑度に合わせて前記の半径を調節したり、追従目標物体1の速度に応じて前記の半径を調節したり、また、追従目標物体1が人であった場合には、その人の好みや要求に合わせた位置関係での追従を行うことができる。これによって、移動体2の置かれた状況において最適な追従を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の移動体の追従方法によれば、本実施形態によれば、追従目標物体に移動体が追従移動する際に、移動速度を取得し、追従目標物体の移動予測や移動体の複雑な移動経路を算出せずに、安全に、かつ、容易に追従移動することができるため、家庭、ホテル、ゴルフ場、工場、空港などの生活環境の中の自動カートや搬送ロボットだけでなく、自動車、船舶、飛行機などの移動手段などにも、適応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施形態における移動体の構成を示す図
【図2】本発明の第1の実施形態における移動体の移動方法を示す図
【図3】本発明の第1の実施形態における移動体の移動方法を示す図
【図4】本発明の第1の実施形態における移動体の移動方法を示す図
【図5】本発明の第1の実施形態における移動体の移動方法を示す図
【図6】本発明の第1の実施形態における移動体の移動軌跡を示す図
【図7】本発明の第1の実施形態における追従目標物体の位置情報がバラついた場合を示す図
【図8】本発明の第1の実施形態における追従目標物体1の移動が平面上に拘束されない場合を示す図
【図9】本発明の第1の実施形態における追従目標物体1の移動が平面X−Y上に拘束され、かつ、追従目標物体1と移動体2の絶対座標上の高さが異なる場合を示す図
【図10】従来例1、および従来例2の移動体の構成を示す図
【図11】従来例1の移動体の移動方法を示す図
【図12】従来例2の移動体の移動方法を示す図
【図13】従来例1における追従目標物体の位置情報にバラつきが生じた場合の課題を説明するための図
【図14】従来例2における追従目標物体の位置情報を平滑化した場合の課題を説明するための図
【符号の説明】
【0057】
1 追従目標物体
2 移動体
2a 移動機構
2b 検出装置
2c 第1測定装置
2d 第2測定装置
2e 算出装置
2f 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の追従方法に関し、特に、追従目標物体に追従する移動体の追従方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動カートや自律走行自動車などに代表される移動体の追従目標物体への追従方法では、先導する追従目標物体との相対位置を、例えば超音波の受送信や赤外線LEDの点滅画像などの無線デバイスを使って測定し、その位置情報の差分により追従目標物体の速度ベクトルを算出し、予測することにより追従を行うものがある(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0003】
従来技術について、図10、図11、図12を用いて説明する。図10は特許文献1記載の従来例1、および非特許文献1記載の従来例2の移動体の構成を示した図であり、図11は従来例1の移動体の追従方法を示した図であり、図12は従来例2の移動体の追従方法を示した図である。
【0004】
上記の移動体は、図10で示すように、追従目標物体101を追従移動する移動体102であり、車輪などの移動機構102aと、追従目標物体101との相対的な位置関係を測定する測定装置102bと、測定装置102bからの測定値を用いて追従経路を算出、予測する計算装置102cと、計算装置102cの算出結果に基づいて、移動機構102aを制御する制御装置102dから構成されている。
【0005】
ここで、追従目標物体101と移動体102とのとの相対的な位置関係を測定する測定装置102bを用いて、従来例1では、追従目標物体101に取り付けられた超音波と電波の送受信装置を用い、超音波、および電波の送受信を行うことにより追従目標物体101と移動体102との距離の測定を行っている。
【0006】
また、従来例2では、LEDの発光標識を画像で取得し、現在取得した標識の位置と前回取得した位置から移動距離の測定を行っている。
【0007】
上記の図10で説明した移動体の移動方法の従来例1を図11で説明する。図11に示すように移動体102は、追従目標物体101とは線分103で示された位置関係にあり、追従目標物体101が速度Vhで移動しているとする。このとき移動体102が移動体102から見た追従目標物体101の方向と同じ方向に速度Vrとなるように、また場合によっては、追従目標物体101と移動体102との距離が一定になるように、移動体102の移動を制御することで追従移動を行っている。
【0008】
また、上記の図10で説明した移動体の移動方法の従来例2を図12で説明する。図12に示すように移動体102は、追従目標物体101の測定点Ohp0とOhp1を結ぶ直線Lh0、追従目標物体101の測定点Ohp1とOhp2結ぶ直線Lh1の角度差をdθとしたとき、次の時間に追従目標物体101が、直線Lh1からdθずれた直線Lh2上を、測定点Ohp0とOhp1、測定点Ohp1とOhp2の位置情報より算出した速度の平均速度Vで移動し、測定点Ohp2を測定してから時間T後に、予測点Sに存在すると予測する。移動体102は、時間T後に、追従目標物体101の移動予測点Sから直線Lh2と平行に一定距離L離れた移動体102の目標移動直線Lprに下ろした垂線の足の位置に移動するように制御することで追従移動を行っている。
【特許文献1】特開平6−274223号公報
【非特許文献1】大矢晃久、南雲陽介、宗片匠 著 「人間と共に移動する生活支援ロボット−動作モードとインタラクション機能−」計測自動制御学会第3回システムインテグレーション部門講演会(SI2002)講演論文集(I)、 2002. 12(pp. 171−172 )
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来技術を適応する場合、以下のような課題がある。
【0010】
従来例1では、現在の追従目標物体、または、その経路を目標として追従移動を行っており、結果として、追従目標物体の背後を追従することになる。そのため、追従目標物体が突然停止した場合、移動体の制動が遅れ、制動能力によっては、衝突するおそれがある。
【0011】
また従来例2では、追従目標物体の経路と平行に一定距離離れた経路を追従しているため、特許文献1に記載された従来技術の課題を解決しているが、位置情報の差分より速度成分と方向成分を持つ速度ベクトルを算出しているため、位置情報のバラつきが速度ベクトルの方向成分の算出に大きく影響し、追従する方向と反対に方向成分を算出するなど、方向成分が大きく振れる恐れがある。
【0012】
また位置情報のバラつきを低減させるため、データの平滑化を行った場合、追従目標物体の移動予測に遅れが生じることで、常に追従目標物体に対して速度ベクトルの算出や移動実行が遅れるため、移動体の速度ベクトルの速度成分がバラつき、急激な変化を伴うだけでなく、速度ベクトルの方向成分が遅れるため、方向成分が大きく振れ、また、方向修正時にさらに遅れを生じるおそれがある。
【0013】
方向成分が大きく振れることによって、追従目標物体の追従が困難になるだけではなく、移動体の移動機構にも負荷を与えることや、移動体の暴走などの事故に繋がる可能性が懸念される。
【0014】
例えば従来例1において、移動体は、追従目標物体の真後ろに位置し、追従目標物体の方向に移動を行っている。ここで、追従目標物体が突然停止した場合、移動体の制動動作が遅れ、その制動能力によっては、前方に存在する追従目標物体に衝突する可能性がある。
【0015】
また従来例2において、図13のように、時刻T0、T1、T2の追従目標物体の測定位置をそれぞれOhp0、Ohp1、Ohp2、その位置情報のバラつきを示す測定誤差範囲をそれぞれE0、E1、E2、誤差を含んだ位置情報をOhp’0、Ohp’1、Ohp’2とした場合、Lh2の予測に用いるラインLhx(x=0、1)が大きくバラつきの影響を受け、Lh’x(x=0、1)となるため、Lh’2を算出してしまい、目標とするラインLrpと大きく異なるバラつきの影響を受けたラインLrp’から目標移動座標を算出してしまう。このように、測定した位置情報のバラつきのため、速度ベクトルの方向成分が大きく振れ、移動体の移動経路が安定しない可能性がある。
【0016】
また従来例2において、図14のように、位置情報のバラつきを低減させるため、データの平滑化を行うと、追従目標物体101の移動予測に遅れが生じることで、移動体は、常に追従目標物体101の速度ベクトルVh’xに対して、移動体の速度ベクトルVr’xの速度成分がバラつき、急激な変化を伴うだけでなく、移動体の速度ベクトルVr’xの方向成分が遅れるため、方向成分が大きく振れ、また方向修正時にさらに遅れを生じるおそれがある。
【0017】
本発明は、このような問題点を解決し、安全かつ適切な追従目標物体への追従を実現した移動体の追従方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の移動体の追従方法は、追従目標物体の位置を検出し、前記検出した位置を包含する3次元領域を求め、前記求めた3次元領域の所定の位置を目標として移動体を移動させ、前記追従目標物体に追従させることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の移動体の追従方法は、追従目標物体の位置を検出し、前記検出した位置を中心とする半径R1の球を求め、前記追従目標物体を追従する移動体を通り、前記求めた球への接線を算出し、前記算出された接線の経路で前記移動体を移動させ、前記追従目標物体に追従させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の移動体の追従方法によれば、追従目標物体の位置を包含する3次元領域の所定の位置を目標として移動体を移動させることにより、追従目標物体から一定領域離れた位置に移動体が位置し、追従目標物体と安全かつ適切な位置関係を保つことが可能となり、移動体の位置情報のばらつきを防ぐことが可能となる。
【0021】
また、追従目標物体の位置を中心とする半径R1の球を求め、移動体を通り、前記求めた球への接線を算出し、算出された接線の経路で移動体を移動させることにより、移動体の移動目標位置の算出が容易となり、また、追従目標物体の位置情報にバラつきが生じた場合においても、算出された接線の経路で移動させるので、移動体の速度ベクトルの方向成分の振れを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明を行う。
【0023】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施形態は、追従目標物体の位置を検出し、検出した位置を包含する3次元領域を求め、求めた3次元領域の所定の位置を目標として移動体を移動させ、追従目標物体に追従させる方法である。以下に3次元領域の一例として追従目標物体を中心とする球、または円を用いて説明する。
【0024】
まず、本発明の第1の実施形態における移動体の構成を図1に示す。また、本発明の第1の実施形態における移動体の追従方法について、図2に示す。
【0025】
図1において、1は追従目標物体、2は移動体を示す。移動体2は、移動体2を少なくとも移動するための移動機構2aと、追従目標物体1を検出する検出装置2bと、追従目標物体1の位置を測定する第1測定装置2c、移動体2の位置や速度を測定する第2の測定装置2dと、前記測定装置2c、2dより移動体2の目標座標を算出する算出装置2eと、その算出装置2eで算出された目標座標Po1(Xp1、Yp1、Zo1)の方向に移動するように移動機構2aの制御を行う制御装置2fとを具備する。
【0026】
ここで、追従目標物体1を検出する検出装置2bは、第1測定装置2cに含まれる場合もある。また第1測定装置2cにより追従目標物体1の絶対座標上の位置Oh1(Xh1、Yh1、Zo1)を測定する。さらに、第2測定装置2dにより移動体2の絶対座標上の位置Or1(Xr1、Yr1、Zo1)、および、速度Vrを測定する。例えば、第2測定装置2dとして、デッドレコニングなどの内部センサによって移動体2の絶対座標上の位置Or1を測定することもできる。
【0027】
また、第1測定装置2cについては、超音波センサやカメラなどの無線デバイスやリード線などの有線デバイスを用いて追従目標物体1との相対位置を測定し、測定装置2dとの測定結果より追従目標物体1の絶対座標上の位置Oh1を測定することができる。さらに、移動機構2aについては、車輪やプロペラなどを用いて3次元空間を移動することができる。
【0028】
次に、本実施形態の移動体の追従方法の概要について説明する。図2は、図1の平面Xhr−Yhr(Z=Zo1)上にある追従目標物体1の座標が移動した場合を示した図である。追従目標物体1は、速度Vhで移動するものとする。この追従目標物体1に対して、本実施形態における移動体2は、追従目標物体1の位置Oh1を中心とした半径R1の球を求め、移動体2の位置Or1を通る前記球の接線Lrと前記球の接点のいずれか1点を目標座標Po1(Xp1、Yp1、Zo1)とした時、目標座標Po1の方向に速度Vrで移動するものである。
【0029】
図3は、平面Xhr−Yhr(Z=Zo1)上に目標座標Po1を設定した例を示したものである。半径R1については、追従目標物体1と移動体2との距離Mを用いて、次の数1に示す範囲内で任意に設定できるものとする。
【0030】
【数1】
【0031】
前記球の接線Lrと前記球の接点のいずれか1点である目標座標Po1を定める方法について図4に示す。例えば、第1測定装置2cに、追従目標物体1の位置情報から移動方向を算出する機能を追加し、算出された追従目標物体1の移動方向の単位ベクトルaとの内積が最小になる単位ベクトルbの成分のみを持つ接線Lrを求め、前記球との接点を移動体2の目標座標Po1に定めてもよい。
【0032】
また、複数個の単位ベクトルbが求められる場合は、移動体2の算出装置2eによってランダムに選択してもよい。さらに、追従目標物体1が人であった場合には、その人の好みや要求に合わせた位置関係で、追従目標物体1の周囲の位置(例えば、追従目標物体1の上側、下側、左側、右側など)の選択であってもかまわない。その場合、前記球の接点である移動体2の目標座標Po1は、追従目標物体1の移動に伴い、選択された追従目標物体1の周囲のある位置が連続した範囲で、移動体2の算出装置2eによって選択されてもよい。
【0033】
ただし、図5に示すように、移動体2の目標座標Po1が、移動体2が進行不可能な領域Sに存在した場合(例えば、移動体2の目標座標Po1が地面下に設定した場合、移動体2は、進行することが不可能である場合)移動体2の目標座標Po1を変更せずに、移動体2が進行可能な範囲Lo(例えば、移動体2が移動可能である地面)に沿って追従してもよい。または進行可能な範囲で、移動体2の目標座標Po1を再選択してもよい。この場合、求めた球への接線Lrの目標座標Po1を可変させてもよい。
【0034】
次に、移動体2の移動速度の制御方法について説明する。例えば、移動体2の直進速度Vrと回転速度ωとする。また、移動体2と目標座標との距離m、移動体2の進行方向と目標座標のずれをθとするとき、次の数2に示す式で算出される速度となるように移動機構2aの制御を行う。
【0035】
【数2】
【0036】
ここで、G1、G2は任意のゲインである。
【0037】
以上のような制御式により、移動体2は目標座標の方向に移動し、追従目標物体1に対して追従移動を行う。
【0038】
さらに、予め移動体2が停止する範囲を移動体2と目標座標との距離mや移動体2と追従目標物体1の距離Mの範囲で設定してもよい。
【0039】
また前述の移動方法では、追従目標物体1の直線移動の場合について説明したが、追従目標物体1の移動経路が曲線を描く場合においても、同様のことが説明できる。
【0040】
また、図6に移動体2の移動軌跡を示す。時刻T0、T1、T2の追従目標物体1の測定位置をそれぞれOh10、Oh11、Oh12とした場合、移動体2は、それぞれの時刻の目標座標Po10、Po11、Po12へと移動するため、移動体2の移動軌跡はそれぞれOr10、Or11、Or12となる。したがって、移動体2は、追従目標物体1に対して追従移動を行う。
【0041】
また、図7は追従目標物体1の位置がセンサ系のバラつきによって、微小時間に変化した場合を示す。追従目標物体1の位置Oh1の測定値にバラつきがあるため、目標座標Po1もバラつきの影響を受ける。ここで、バラついた追従目標物体1の位置をOh1’、バラつきの影響を受けた目標座標をPo1’とする。しかしながら、移動体2と目標座標の距離mに対して、バラつきの幅nが小さい場合、移動体2は、回転運動を生じるが、そのズレが微小のため、目標座標Po1の方向に移動する。
【0042】
前記説明したように、本発明は、従来法に比べて、センサ系などによる位置情報のバラつきの影響を低減することができるため、必要以上に、位置情報を平滑化する必要がない。
【0043】
次に、追従目標物体1の移動の拘束条件が図2の場合と異なる例を示す。
【0044】
図8では、追従目標物体1の移動が平面上に拘束されない場合を示す。追従目標物体1と移動体2の絶対座標上のそれぞれの位置Oh2(Xr2、Yr2、Zr2)とOr2(Xh2、Yh2、Zh2)の任意の同一平面Xhpr−Yhpr上に目標座標Po2(Xp2、Yp2、Zp2)を設定すれば、移動体2の移動方法は図2の場合と同様となる。
【0045】
また、図9では、追従目標物体1の移動が平面X−Y上に拘束され、かつ、追従目標物体1の位置Oh3と、移動体2の位置Or3の絶対座標上の高さが異なる場合を示す。平面X−Yと平行、かつ、移動体2の位置Or3(Xr3、Yr3、Zo3)を通る平面Xr−Yr上において、追従目標物体1の絶対座標上の位置Oh3(Xh3、Yh3、Zh3)を中心軸とする半径R2の円と移動体2の位置Or3(Xr3、Yr3、Zo3)を通る直線との接点のいずれか1点Po3(Xp3、Yp3、Zo3)を目標座標に設定すれば、移動体2の移動方法は図2の場合と同様となる。
【0046】
また、図1において、移動体2に、追従目標物体1や移動体2の周辺環境の状況を検出する検出装置2bを具備し、この検出装置2bからの検出情報に基づいて算出装置2eにおいて、追従目標物体1を中心とする球、または、円の半径を変更し、追従目標物体1と移動体2との位置関係を変更してもよい。
【0047】
ここで、追従目標物体1や移動体2の周辺環境の状況を検出する検出装置2bとして、例えば、超音波や赤外線などを用い、検出装置2bを障害物センサとして機能させることにより障害物の接近状況を検出し、障害物を回避するために追従位置を変更してもよい。また、カメラやレーザレンジセンサなどにより周囲の障害物の数を検出し、障害物の数の多さによって追従目標物体1を中心とする球、または、円の半径を変化させ混雑時に邪魔にならないようにしてもよい。
【0048】
また検出装置2bを前記の機能とともに追従目標物体1の状態を検出する装置として兼用し、追従目標物体1の速度に応じて位置関係を変化させてよい。
【0049】
次に、移動体2の位置および経路の変更例を説明する。障害物の検知によって位置関係を変更する場合、追従目標物体1を追従する移動体2が追従経路前方に障害物を発見したため、追従目標物体1の後方に隠れるように追従目標物体1を中心とする球、または、円の半径を小さくして障害物を回避し、障害物を通り過ぎたところで元の半径に戻す。
【0050】
また周囲の混雑度合いにより位置関係を変更する場合、移動体2の周囲には通行人等の環境が存在するものとし、ここで、混雑していない環境の場合には、追従目標物体1を中心とする球、または、円の半径を大きくとって追従する移動体2が通行人によって混雑してくると前記の半径を小さくなるように位置関係を変更させて、通行人との接触などの発生確率を減らす。また、混雑が解消されると元のように半径を大きくして追従する。
【0051】
なお、このときの混雑度は移動体2の周囲一定範囲内の通行人等の環境物体の数でもよいし、環境の占める割合などによって定義される。
【0052】
なお、追従目標物体1と移動体2は、ある一定の大きさを持っていることにより、追従目標物体1と移動体2との位置関係において、両者が衝突しないためには、追従目標物体1を中心とする球、または円の半径は、「追従目標物体1の最大幅の半分」と「移動体2の最大幅の半分との和」よりも大きくすることが必要である。
【0053】
また、追従目標物体1の速度により位置関係を変更する場合について説明する。追従目標物体1の速度が小さい場合は、移動体2は前記の半径を小さく維持して追従を行うが、追従目標物体1の速度が大きくなると前記の半径を大きくとり追従を行い、追従目標物体1の急激な速度変化による衝突の発生確率を減少させる。
【0054】
以上のことから、本実施形態によれば、追従目標物体1に対し移動体2が追従移動する際に、追従目標物体1の移動速度を取得せず、追従移動することができるため、例えば、追従目標物体1の移動予測や移動体2の複雑な移動経路を算出せずに、容易に追従移動することができ、また、追従目標物体1、および、移動体2の位置検出センサ系にバラつきがあり、取得した位置情報にバラつきがある場合において、その影響を低減でき、位置データの平滑化の必要性が低くすることができる。これによって、計算量の負荷の低減することでき、より追従性の高い最適な移動体2の追従移動を実現することができる。また、環境に合わせて最適な追従位置での追従を行うことができるため、例えば、障害物に対して柔軟に回避を行ったり、周囲の混雑度に合わせて前記の半径を調節したり、追従目標物体1の速度に応じて前記の半径を調節したり、また、追従目標物体1が人であった場合には、その人の好みや要求に合わせた位置関係での追従を行うことができる。これによって、移動体2の置かれた状況において最適な追従を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の移動体の追従方法によれば、本実施形態によれば、追従目標物体に移動体が追従移動する際に、移動速度を取得し、追従目標物体の移動予測や移動体の複雑な移動経路を算出せずに、安全に、かつ、容易に追従移動することができるため、家庭、ホテル、ゴルフ場、工場、空港などの生活環境の中の自動カートや搬送ロボットだけでなく、自動車、船舶、飛行機などの移動手段などにも、適応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施形態における移動体の構成を示す図
【図2】本発明の第1の実施形態における移動体の移動方法を示す図
【図3】本発明の第1の実施形態における移動体の移動方法を示す図
【図4】本発明の第1の実施形態における移動体の移動方法を示す図
【図5】本発明の第1の実施形態における移動体の移動方法を示す図
【図6】本発明の第1の実施形態における移動体の移動軌跡を示す図
【図7】本発明の第1の実施形態における追従目標物体の位置情報がバラついた場合を示す図
【図8】本発明の第1の実施形態における追従目標物体1の移動が平面上に拘束されない場合を示す図
【図9】本発明の第1の実施形態における追従目標物体1の移動が平面X−Y上に拘束され、かつ、追従目標物体1と移動体2の絶対座標上の高さが異なる場合を示す図
【図10】従来例1、および従来例2の移動体の構成を示す図
【図11】従来例1の移動体の移動方法を示す図
【図12】従来例2の移動体の移動方法を示す図
【図13】従来例1における追従目標物体の位置情報にバラつきが生じた場合の課題を説明するための図
【図14】従来例2における追従目標物体の位置情報を平滑化した場合の課題を説明するための図
【符号の説明】
【0057】
1 追従目標物体
2 移動体
2a 移動機構
2b 検出装置
2c 第1測定装置
2d 第2測定装置
2e 算出装置
2f 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
追従目標物体の位置を検出し、
前記検出した位置を包含する3次元領域を求め、
前記求めた3次元領域の所定の位置を目標として移動体を移動させ、前記追従目標物体に追従させることを特徴とする移動体の追従方法。
【請求項2】
追従目標物体の位置を検出し、
前記検出した位置を中心とする半径R1の球を求め、
前記追従目標物体を追従する移動体を通り、前記求めた球への接線を算出し、
前記算出された接線の経路で前記移動体を移動させ、前記追従目標物体に追従させることを特徴とする移動体の追従方法。
【請求項3】
前記検出した位置を中心とする球は、
半径R1を「0<R1≦追従目標物体と移動体との距離」であることを特徴とする請求項2に記載の移動体の追従方法。
【請求項4】
前記移動体が前記追従目標物体に追従する経路上に障害物を検知した場合、
前記求めた球の半径R1を可変させることを特徴とする請求項3に記載の移動体の追従方法。
【請求項5】
前記移動体が前記追従目標物体に追従する経路上に障害物を検知した場合、
前記求めた球への接線の目標位置を可変させることを特徴とする請求項2に記載の移動体の追従方法。
【請求項6】
追従目標物体の位置を検出し、
前記検出した位置を通る重力方向の直線を中心軸とし、
前記中心軸上に中心を持つ半径R2の円を求め、
前記追従目標物体を追従する移動体を通り、前記求めた円への接線を算出し、
前記算出された接線の経路で前記移動体を移動させ、前記追従目標物体に追従させることを特徴とする移動体の追従方法。
【請求項7】
前記中心軸に中心を持つ円は、
前記移動体と重力方向に対して垂直となる同一の平面上にあり、
半径R2を「0<R2≦追従目標物体と移動体との距離」であることを特徴とする請求項6に記載の移動体の追従方法。
【請求項8】
前記移動体が前記追従目標物体に追従する経路上に障害物を検知した場合、
前記求めた円の半径R2を可変させることを特徴とする請求項7に記載の移動体の追従方法。
【請求項1】
追従目標物体の位置を検出し、
前記検出した位置を包含する3次元領域を求め、
前記求めた3次元領域の所定の位置を目標として移動体を移動させ、前記追従目標物体に追従させることを特徴とする移動体の追従方法。
【請求項2】
追従目標物体の位置を検出し、
前記検出した位置を中心とする半径R1の球を求め、
前記追従目標物体を追従する移動体を通り、前記求めた球への接線を算出し、
前記算出された接線の経路で前記移動体を移動させ、前記追従目標物体に追従させることを特徴とする移動体の追従方法。
【請求項3】
前記検出した位置を中心とする球は、
半径R1を「0<R1≦追従目標物体と移動体との距離」であることを特徴とする請求項2に記載の移動体の追従方法。
【請求項4】
前記移動体が前記追従目標物体に追従する経路上に障害物を検知した場合、
前記求めた球の半径R1を可変させることを特徴とする請求項3に記載の移動体の追従方法。
【請求項5】
前記移動体が前記追従目標物体に追従する経路上に障害物を検知した場合、
前記求めた球への接線の目標位置を可変させることを特徴とする請求項2に記載の移動体の追従方法。
【請求項6】
追従目標物体の位置を検出し、
前記検出した位置を通る重力方向の直線を中心軸とし、
前記中心軸上に中心を持つ半径R2の円を求め、
前記追従目標物体を追従する移動体を通り、前記求めた円への接線を算出し、
前記算出された接線の経路で前記移動体を移動させ、前記追従目標物体に追従させることを特徴とする移動体の追従方法。
【請求項7】
前記中心軸に中心を持つ円は、
前記移動体と重力方向に対して垂直となる同一の平面上にあり、
半径R2を「0<R2≦追従目標物体と移動体との距離」であることを特徴とする請求項6に記載の移動体の追従方法。
【請求項8】
前記移動体が前記追従目標物体に追従する経路上に障害物を検知した場合、
前記求めた円の半径R2を可変させることを特徴とする請求項7に記載の移動体の追従方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−213367(P2007−213367A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33363(P2006−33363)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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