移動端末装置、それと通信を行う通信装置およびそれらを備えた通信ネットワーク
【課題】トラフィック量の変動による輻輳の発生に耐性を持つ移動端末装置を提供する。
【解決手段】ホームエージェント10は、自己と移動端末装置60,70との間の全経路における送信レートおよび受信レートを収集する。そして、ホームエージェント10は、その収集した送信レートおよび受信レートに基づいて、全経路の容量および利用可能帯域を算出する。そうすると、ホームエージェント10は、全経路のうちのいずれかの経路の容量がオーバーフローしたとき、全経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように容量がオーバーフローしている経路を通るフローを別の経路へ移動させる処理を全フローについて実行する。
【解決手段】ホームエージェント10は、自己と移動端末装置60,70との間の全経路における送信レートおよび受信レートを収集する。そして、ホームエージェント10は、その収集した送信レートおよび受信レートに基づいて、全経路の容量および利用可能帯域を算出する。そうすると、ホームエージェント10は、全経路のうちのいずれかの経路の容量がオーバーフローしたとき、全経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように容量がオーバーフローしている経路を通るフローを別の経路へ移動させる処理を全フローについて実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動端末装置、それと通信を行う通信装置およびそれらを備えた通信ネットワークに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)やWiMAX等の様々な無線通信インフラの整備に伴い、複数の無線NIC(Network Interface Controller)を搭載した携帯端末の普及が進んでいる。これらの端末では、複数のNICを同時利用し、複数の無線ネットワークに対して適切な割合でトラフィックを分配することで、単一の無線ネットワークでは得られない高い通信品質(例えば、高スループットで、かつ、低遅延の通信)を達成することが期待できる。
【0003】
同種で、かつ、通信品質の比較的安定した複数の通信リンクの集約を可能とするためのデータリンク層レベルでのトラフィック分散方式が提案されている(非特許文献1)。
【0004】
また、MIPv6に基づき、ネットワーク層レベルでの複数のIPアドレスの集約を可能とするための方式が提案されている(非特許文献2)。通常のMIPv6では、単一のホームアドレス(HoA:Home Address)に対し、単一の気付アドレス(CoA:Care−of Address)のみを対応付けることが可能である。
【0005】
一方、この方式では、MIPv6を拡張することで、単一のHoAに対し、複数のCoAを対応付けることを可能とする。これによって、複数のNICを備える端末は、NICごとに異なったCoAを取得してHoAと対応付けることで、端末のHoA宛てのトラフィックをホームエージェント(HA:Home Agent)上で、その端末のHoAに対応した複数のCoAに分配することが可能となる。
【0006】
更に、非特許文献2において提案されている方式等を基盤技術として用い、ネットワーク層レベルのトラフィック分散が実現されている(非特許文献3)。この方式では、端末が接続する複数のネットワークに対し、パケットを分配の単位として、それぞれのパケットを適切な割合で各ネットワークへ振り分けることで、単一のリンクでは得られない高いスループットを実現している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. Duncanson, “Inverse Multiplexing,” IEEE Communications Magazine, Vol. 32, No. 4, pp.34-41, 1994.
【非特許文献2】R. Wakikawa, V. Devarapalli, G. Tsirtsis, T. Ernst, and K. Nagami, “Multiple Care-of Addresses Registration,” RFC 5648, 2009.
【非特許文献3】K. Chebrolu, B. Raman, and R. R. Rao, “A Network Layer Approach to Enable TCP over Multiple Interfaces,” Wireless Networks, pp. 637-650, 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献1の方式では、ISDN回線のような同種のデータリンク層のプロトコルに基づいた複数のリンクを集約することを想定しているため、複数の通信回線事業者が提供するアクセスネットワークを跨ったようなリンクを集約することが困難である。
【0009】
また、非特許文献3の方式では、端末が持つ複数のNICに対し、パケットを分配の単位としてトラフィックの分散を行う。しかし、各ネットワークの通信品質の特性は、その通信方式のデータリンク層以下のプロトコルによって大きく異なる。例えば、WiFi網とWiMAX網では、MAC層のプロトコルとして、前者がコンテンションに基づくアクセス制御を行うのに対し、後者は、スケジューリングに基づくアクセス制御を行うため、両網のパケット送信における遅延特性は、大きく異なる。
【0010】
このような遅延特性の異なる複数のネットワークに対し、パケット単位の分配を行うと、パケットの到着順の入れ替わりが頻発し、トランスポート層以上におけるスループットの低下や遅延の増大を招くという問題がある。
【0011】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、トラフィック量の変動による輻輳の発生に耐性を持つ移動端末装置を提供することである。
【0012】
また、この発明の別の目的は、トラフィック量の変動による輻輳の発生に耐性を持つ移動端末装置と通信を行う通信装置を提供することである。
【0013】
更に、この発明の別の目的は、トラフィック量の変動による輻輳の発生に耐性を持つ移動端末装置を備えた通信ネットワークを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明の実施の形態によれば、移動端末装置は、複数の無線通信器と、制御装置とを備える。複数の無線通信器の各々は、基地局を介して通信を行う。制御装置は、ネットワーク上に設置された通信装置と複数の無線通信器との間の通信を制御する。そして、制御装置は、通信装置から基地局を介して各無線通信器まで到るネットワーク上のパスであり、かつ、通信装置から無線通信器への方向と無線通信器から通信装置への方向とを区別するパスを経路として定義し、経路上におけるトラフィックの流れをフローとして定義した場合、フローが通っている全ての経路の容量と全ての経路の利用可能帯域とを検出し、全ての経路のうちのいずれかの経路の容量がオーバーしたとき、全ての経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように、容量がオーバーした経路を通るフローを別の経路へ移動させる。
【0015】
この発明の実施の形態によれば、通信装置は、ネットワーク上に設置された通信装置であって、通信器と、制御装置とを備える。通信器は、基地局を介して通信を行う。制御装置は、移動端末装置に装備された複数の無線通信器と通信器との間の通信を制御する。複数の無線通信器の各々は、基地局を介して通信器と通信を行う。制御装置は、通信器から基地局を介して各無線通信器まで到るネットワーク上のパスであり、かつ、通信器から無線通信器への方向と無線通信器から通信器への方向とを区別するパスを経路として定義し、経路上におけるトラフィックの流れをフローとして定義した場合、フローが通っている全ての経路の容量と、全ての経路の利用可能帯域とを検出し、全ての経路のうちのいずれかの経路の容量がオーバーしたとき、全ての経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように、容量がオーバーした経路を通るフローを別の経路へ移動させる。
【0016】
更に、この発明の実施の形態によれば、通信ネットワークは、複数の移動端末装置と、通信装置と、制御装置とを備える。複数の移動端末装置の各々は、複数の無線通信器を装備している。通信装置は、ネットワーク上に設置され、基地局を介して複数の移動端末装置と通信を行う。制御装置は、複数の移動端末装置と通信装置との間の無線通信を制御する。複数の無線通信器の各々は、基地局を介して通信装置と通信を行う。制御装置は、通信装置から基地局を介して各無線通信器まで到るネットワーク上のパスであり、かつ、通信装置から無線通信器への方向と無線通信器から通信装置への方向とを区別するパスを経路として定義し、経路上におけるトラフィックの流れをフローとして定義した場合、フローが通っている全ての経路の容量と、全ての経路の利用可能帯域とを検出し、全ての経路のうちのいずれかの経路の容量がオーバーしたとき、全ての経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように、容量がオーバーした経路を通るフローを別の経路へ移動させる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の実施の形態においては、制御装置は、通信器と移動端末装置の無線通信器との間の全経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように容量がオーバーフローしている経路を通るフローを別の経路へ移動させる。その結果、通信ネットワークの利用可能帯域に最大限の余裕が生まれる。
【0018】
従って、トラフィック量の変動による輻輳の発生に対して耐性を持つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態による通信ネットワークの概略図である。
【図2】図1に示すホームエージェントの構成図である。
【図3】図1に示す移動端末装置の構成図である。
【図4】経路およびフローを説明するための図である。
【図5】経路の容量と利用可能帯域との関係を示す図である。
【図6】送信レートおよび受信レートを測定するノードを示す図である。
【図7】経路の容量のオーバーフローの概念図である。
【図8】経路の集約の概念図である。
【図9】フローの移動の要否を判定する条件を示す図である。
【図10】フローの移動の概念図である。
【図11】フロー分配アルゴリズムを示すフローチャートである。
【図12】フローを移動する全体の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0021】
図1は、この発明の実施の形態による通信ネットワークの概略図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による通信ネットワーク100は、ホームエージェント10と、ネットワーク20と、アクセスポイント30,40,50と、移動端末装置60,70と、端末装置80,90とを備える。
【0022】
ホームエージェント10は、ネットワーク20上に配置される。そして、ホームエージェント10は、ネットワーク20およびアクセスポイント30,40,50を介して移動端末装置60,70からパケットを受信し、その受信したパケットを端末装置80,90へ送信する。また、ホームエージェント10は、端末装置80,90からパケットを受信し、その受信したパケットをネットワーク20および基地局30,40,50を介して移動端末装置60,70へ送信する。
【0023】
更に、ホームエージェント10は、後述する方法によって、自己と移動端末装置60,70との間の通信を制御する。
【0024】
アクセスポイント30は、有線ケーブルによってネットワーク20に接続される。そして、アクセスポイント30は、例えば、WiFiのネットワークを形成する。アクセスポイント30は、ホームエージェント10からパケットを受信し、その受信したパケットを無線通信によって移動端末装置60へ送信する。また、アクセスポイント30は、移動端末装置60から無線通信によってパケットを受信し、その受信したパケットをホームエージェント10へ送信する。
【0025】
アクセスポイント40は、有線ケーブルによってネットワーク20に接続される。そして、アクセスポイント40は、例えば、WiFiのネットワークを形成する。アクセスポイント40は、ホームエージェント10からパケットを受信し、その受信したパケットを無線通信によって移動端末装置60または移動端末装置70へ送信する。また、アクセスポイント40は、移動端末装置60または移動端末装置70から無線通信によってパケットを受信し、その受信したパケットをホームエージェント10へ送信する。
【0026】
アクセスポイント50は、有線ケーブルによってネットワーク20に接続される。そして、アクセスポイント50は、例えば、WiMAXのネットワークを形成する。アクセスポイント50は、ホームエージェント10からパケットを受信し、その受信したパケットを無線通信によって移動端末装置70へ送信する。また、アクセスポイント50は、移動端末装置70から無線通信によってパケットを受信し、その受信したパケットをホームエージェント10へ送信する。
【0027】
移動端末装置60は、WiFi(IEEE802.11)、WiMAX(IEEE802.16)および3G(W−CDMA,CDMA 2000)等のいずれかの無線通信方式でアクセスポイント30,40と無線通信を行う。
【0028】
また、移動端末装置70は、WiFi(IEEE802.11)、WiMAX(IEEE802.16)および3G(W−CDMA,CDMA 2000)等のいずれかの無線通信方式でアクセスポイント40,50と無線通信を行う。
【0029】
端末装置80,90の各々は、有線ケーブルによってホームエージェント10に接続される。そして、端末装置80,90の各々は、移動端末装置60,70宛てのパケットをホームエージェント10へ送信し、自己宛てのパケットをホームエージェント10から受信する。
【0030】
図2は、図1に示すホームエージェント10の構成図である。図2を参照して、ホームエージェント10は、通信器11,13と、制御装置12とを含む。
【0031】
通信器11は、有線ケーブルを介してアクセスポイント30,40,50からパケットを受信し、その受信したパケットを制御装置12へ出力する。
【0032】
また、通信器11は、制御装置12からパケットを受け、その受けたパケットを有線ケーブルを介してアクセスポイント30,40,50へ送信する。
【0033】
制御装置12は、通信器11からパケットを受ける。そして、制御装置12は、その受けたパケットの送信先が端末装置80,90である場合、そのパケットを通信器13へ出力する。また、制御装置12は、その受けたパケットの送信先がホームエージェント10である場合、そのパケットを受理する。
【0034】
また、制御装置12は、通信器13からパケットを受け、その受けたパケットを通信器11へ出力する。
【0035】
更に、制御装置12は、後述する方法によって、通信器11と移動端末装置60,70との間の通信を制御する。
【0036】
通信器13は、制御装置12からパケットを受け、その受けたパケットを端末装置80,90へ送信する。また、通信器13は、端末装置80,90からパケットを受信し、その受信したパケットを制御装置12へ出力する。
【0037】
図3は、図1に示す移動端末装置60の構成図である。図3を参照して、移動端末装置60は、アンテナ61,62と、無線通信器63,64とを含む。
【0038】
無線通信器63は、WiFiの通信方式に従ってアクセスポイント30とアンテナ61を介して無線通信を行う。また、無線通信器64は、WiFiの通信方式に従ってアクセスポイント40とアンテナ62を介して無線通信を行う。
【0039】
このように、無線通信器63,64は、同じ通信方式または異なる通信方式に従ってそれぞれアクセスポイント30,40と無線通信を行う。
【0040】
なお、図1に示す移動端末装置70も、図3に示す移動端末装置60と同じ構成からなる。
【0041】
図4は、経路およびフローを説明するための図である。図4を参照して、経路r1は、ホームエージェント10の通信器11、アクセスポイント30および移動端末装置60の無線通信器63からなるパスである。
【0042】
また、経路r2は、移動端末装置60の無線通信器63、アクセスポイント30およびホームエージェント10の通信器11からなるパスである。
【0043】
更に、経路r3は、移動端末装置60の無線通信器64、アクセスポイント40およびホームエージェント10の通信器11からなるパスである。
【0044】
更に、経路r4は、ホームエージェント10の通信器11、アクセスポイント40および移動端末装置60の無線通信器64からなるパスである。
【0045】
このように、経路r1〜r4は、ホームエージェント10の通信器11と、移動端末装置60,70の無線通信器63,64との間のパスからなる。そして、経路r1〜r4は、方向が異なれば、別の経路になる。従って、この発明の実施の形態においては、経路とは、ホームエージェント10からアクセスポイント30,40,50を介して各無線通信器63,64まで到るネットワーク上のパスであり、かつ、ホームエージェント10から無線通信器63,64への方向と無線通信器63,64からホームエージェント10への方向とを区別するパスとして定義される。
【0046】
また、この発明の実施の形態においては、フローとは、経路上におけるトラフィックの流れとして定義される。
【0047】
そして、フローを識別する方法として次の2つの方法のいずれかが用いられる。まず、一つ目の方法は、送信元IPアドレス、受信先IPアドレス、送信元ポート番号、受信先ポート番号およびトランスポート層識別番号を用いてフローを識別する。もう一つの方法は、IPv6パケットに対して用いられ、送信元IPアドレス、受信先IPアドレス、およびフローラベルを用いてフローを識別する。
【0048】
更に、この発明の実施の形態においては、経路の容量とは、あるフローをある経路に流すときに、その経路を流れる他のフローが存在しない場合において、そのフローが達成可能な最大レートを言い、bps単位で表される。
【0049】
更に、この発明の実施の形態においては、利用可能帯域とは、あるフローをある経路に流すとき、その経路を流れる他のフローの受信レートに影響を与えない範囲内で、そのフローが達成可能な最大レートを言う。そして、利用可能帯域は、フローの送信レートと受信レートとを用いて後述する方法によって算出される。
【0050】
図5は、経路の容量と利用可能帯域との関係を示す図である。図5を参照して、利用可能帯域は、経路の容量から消費帯域を減算することによって算出される。
【0051】
図6は、送信レートおよび受信レートを測定するノードを示す図である。図6を参照して、ホームエージェント10から移動端末装置60の方向へ流れるフローは、ダウンリンクフローである。また、移動端末装置60からホームエージェント10の方向へ流れるフローは、アップリンクフローである。
【0052】
そして、ダウンリンクフローにおいては、ホームエージェント10の通信器11は、送信レートを測定し、移動端末装置60の無線通信器63(または無線通信器64)は、受信レートを測定する。また、アップリンクフローにおいては、移動端末装置60の無線通信器63(または無線通信器64)は、送信レートを測定し、ホームエージェント10の通信器11は、受信レートを測定する。
【0053】
この場合、送信レートおよび受信レートは、単位時間当たりのビット数(bps)で表される。
【0054】
あるフローの送信レートは、例えば、OS内部において、そのフローに属するパケットをt秒当たりにnパケット送信処理したとして、各パケットpi(i=1,2,・・・,n)のビット数をB(pi)とすると、送信レートは、(SUMni=1B(pi))/tによって表される。受信レートも、同様にして算出される。
【0055】
なお、表記SUMは、i=1,2,・・・,nについて、B(pi)の和を演算することを意味する。
【0056】
そして、移動端末装置60,70の無線通信器63(または無線通信器64)は、その測定した送信レートおよび受信レートを定期的にホームエージェント10の制御装置12へ送信する。
【0057】
ある経路rにおいて、その経路を通る全てのフローの集合をF(r)とする。また、経路rを通るフローf∈F(r)に対して、そのフローfの送信レートをS(f)とし、受信レートをR(f)とする。
【0058】
そうすると、ある経路において、その経路の容量がオーバーしていない状態とは、その経路を通る全てのフローにおいて、送信レートS(f)と等しい受信レートR(f)が達成されている状態を言う。即ち、経路rの容量がオーバーしていない状態とは、経路rについて次式が成立していることを言う。
【0059】
【数1】
【0060】
また、経路rの容量がオーバーしている状態とは、経路rについて次式が成立していることを言う。
【0061】
【数2】
【0062】
図7は、経路の容量のオーバーフローの概念図である。図7の(a)を参照して、8Mbpsの容量を有する経路を2つのフローが流れている。そして、一方のフローの送信レートが3Mbpsであり、他方のフローの送信レートが2Mbpsである。また、一方のフローの受信レートが3Mbpsであり、他方のフローの受信レートが2Mbpsである。
【0063】
従って、8Mbpsの容量を有する経路を取る2つのフローにおいて、送信レートと等しい受信レートが達成されている。即ち、経路の容量がオーバーフローしていない。
【0064】
図7の(b)を参照して、8Mbpsの容量を有する経路を2つのフローが流れている。そして、一方のフローの送信レートが7Mbpsであり、他方のフローの送信レートが4Mbpsである。また、一方のフローの受信レートが5Mbpsであり、他方のフローの受信レートが3Mbpsである。
【0065】
従って、8Mbpsの容量を有する経路を取る2つのフローにおいて、送信レートと等しい受信レートが達成されておらず、受信レートの総和(=8Mbps)が送信レートの総和(=11Mbps)よりも小さい。即ち、経路の容量がオーバーフローしている。この場合、受信レートの総和(=8Mbps)は、その経路の容量を表す。
【0066】
ホームエージェント10の制御装置12は、通信器11が測定した送信レートおよび受信レートと、移動端末装置60,70の無線通信器63,64が測定した送信レートおよび受信レートとを定期的に収集する。
【0067】
そして、ホームエージェント10の制御装置12は、その収集した送信レートおよび受信レートに基づいて、通信器11と、移動端末装置60,70の無線通信器63,64との間の全ての経路のうち少なくとも1つの経路の容量がオーバーフローしているか否かを判定する。即ち、ホームエージェント10の制御装置12は、その収集した送信レートおよび受信レートに基づいて、式(2)が成立するか否かを判定することによって、全ての経路のうち少なくとも1つの経路の容量がオーバーフローしているか否かを判定する。
【0068】
ホームエージェント10の制御装置12は、全ての経路のうち少なくとも1つの経路の容量がオーバーフローしていると判定したとき、通信器11と、移動端末装置60,70の無線通信器63,64との間の全ての経路における利用可能帯域の最小値が最大になるように、容量がオーバーフローしている経路のフローを別の経路へ移動させる。これを「フロー分配アルゴリズム」と言う。
【0069】
この場合、ホームエージェント10の制御装置12は、ある経路rにおいて式(2)が成立すれば、経路rの容量をSUMf∈F(r)R(f)と推定する。
【0070】
各経路の容量は、時間の経過とともに、その時点で最新の送信レートおよび受信レートを用いて更新される。実際の環境においては、フローの送信レートと受信レートとの測定誤差により、実際には、経路の容量がオーバーフローしていないにも拘わらず、式(2)が成立してしまう場合がある。このような場合に経路の容量の推定値が誤った値に更新されるのを防止するために、ホームエージェント10の制御装置12は、閾値Tを保持しており、次式が成立する経路においてのみ、経路の容量を更新する。
【0071】
【数3】
【0072】
なお、閾値Tは、例えば、1Mbpsに設定される。
【0073】
また、経路の容量は、式(2)が成立して初めて推定されるため、ホームエージェント10の制御装置12は、制御の初期段階においては、容量の推定が一度も行なわれない経路に関しては、初期値を与え、それを経路の容量とみなしてフロー分配アルゴリズムを実行する。経路の容量の初期値は、例えば、10Mbpsに設定される。
【0074】
図8は、経路の集約の概念図である。無線通信環境においては、ある経路の容量は、他の経路と共有されることが多い。例えば、図8に示すように、2つの移動端末装置60,70が同じアクセスポイント40に接続して通信を行う場合を想定する。
【0075】
下り方向(ホームエージェント10から移動端末装置60,70への方向)の経路に関しては、各移動端末装置60,70ごとに1つの経路が存在するため、上述した経路の容量の推定値は、各経路ごとに算出される。
【0076】
しかし、実際には、2つの移動端末装置60,70は、両方とも同じアクセスポイント40の電波範囲内に位置し、お互いに空間を共有して無線通信を行なう。その結果、例えば、WiFiによるアクセス制御の元では、2つの移動端末装置60,70は、アクセスポイント40と同時に無線通信を行なうことができず、どの瞬間においても、アクセスポイント40と通信可能であるのは、移動端末装置60,70のいずれか一方の移動端末装置である。従って、移動端末装置60と移動端末装置70とは、お互いに経路の容量を共有している状態である。
【0077】
このような状態においては、2つの経路をそれぞれ独立したものとみなして容量を推定するのは、望ましくない。
【0078】
そこで、この発明の実施の形態においては、同じアクセスポイントを通る複数の経路を集約し、その複数の経路を1つの経路とみなして容量を推定することにする。
【0079】
より具体的には、ホームエージェント10の制御装置12は、m(mは2以上の整数)個の経路ri(i=1,2,・・・,m)を集約して容量を推定する場合、集約後の経路をrとすると、rを通る全てのフローの集合をF(r)=Umi=1F(ri)とし、F(r)に対して式(2)が成立すれば、経路rの容量をSUMf∈F(r)R(f)と推定する。
【0080】
以下においては、実際に集約された経路であっても、単に経路と呼ぶ。
【0081】
フロー分配アルゴリズムについて説明する。制御対象のネットワークにおける全ての経路の集合をPとし、フロー分配アルゴリズムを実行する前の各経路r∈Pを通る全フローの集合をF(r)とする。
【0082】
ホームエージェント10の制御装置12は、全フローの送信レートおよび受信レートに基づいて、全経路Pの利用可能帯域を算出する。そして、ホームエージェント10の制御装置12は、その算出した全経路Pの利用可能帯域の最小値が最大になるように容量がオーバーフローしている経路を通るフローを別の経路へ移動させる。具体的に説明する。
【0083】
フロー分配アルゴリズムを実行する前における各経路r∈Pの容量の推定値をC(r)としたとき、利用可能帯域A(r)は、次式によって求められる。
【0084】
【数4】
【0085】
即ち、利用可能帯域A(r)は、経路rの容量の推定値C(r)から経路rを通る全てフローの送信レートの総和を差し引いた値からなる。
【0086】
なお、容量がオーバーフローしている状態では、A(r)は、負の値からなる。
【0087】
フロー分配アルゴリズムは、ある経路r∈Pを通るフローf∈F(r)を別の経路r’∈Pを通るように変更することによって、両経路r,r’における利用可能帯域A(r)の最小値が増加する場合、そのフローfを経路rから経路r’へ移動させる。
【0088】
図9は、フローの移動の要否を判定する条件を示す図である。図9の(a)を参照して、2つの経路r,r’において、利用可能帯域A(r),A(r’)がそれそれ4Mbps,1Mbpsである。
【0089】
このとき、経路r’を通るフローfを経路rを通るように変更すると、利用可能帯域A(r),A(r’)は、それぞれ、3Mbps,2Mbpsとなる(図9の(b)参照)。
【0090】
その結果、利用可能帯域の最小値は、フローの移動前には、1Mbpsであるが、フローの移動後には、2Mbpsへ増加する。
【0091】
フロー分配アルゴリズムは、各フローについて、フローを移動させることによって2つの経路r,r’の利用可能帯域A(r),A(r’)の最小値が増加する場合、フローの移動を行なう。
【0092】
ホームエージェント10の制御装置12は、上述したフロー分配アルゴリズムを容量がオーバーフローした全ての経路について実行する。その結果、ホームエージェント10の制御装置12は、通信ネットワーク100における全経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように容量がオーバーフローしている経路を通るフローを別の経路へ移動させる。
【0093】
なお、ある経路rを通るフローfを別の経路r’へ移動することは、常に実行可能であるとは限らない。即ち、フローfを経路rから経路r’へ移動可能であるとは、経路rと経路r’との方向が同じであり、かつ、フローの送信元(または受信先)の移動端末装置が経路r’上のアクセスポイントに対して接続する無線通信器を装備している場合に限られる。
【0094】
図10は、フローの移動の概念図である。図10の(a)を参照して、フローf1は、アクセスポイント30を経由して移動端末装置60へ至る経路を流れている。このフローfアクセスポイント40を経由して移動端末装置60に至る経路へ移動させることは可能である(図10の(b)参照)。
【0095】
アクセスポイント30を経由する経路rと、アクセスポイント40を経由する経路r’との方向が同じであり、フローfの受信先の移動端末装置60が経路r’上のアクセスポイント40に対して接続する無線通信器64を装備しているからである。
【0096】
しかし、移動端末装置60は、アクセスポイント50に対して接続する無線通信器を装備していないため、フローfを経路rからアクセスポイント50を経由する経路へ移動させることはできない。
【0097】
従って、ホームエージェント10の制御装置12は、上述した条件に合致する経路r’を移動可能先の経路として選択する。
【0098】
以下においては、フローfを移動可能な移動可能先の経路の集合をM(f)と表記する。
【0099】
図11は、フロー分配アルゴリズムを示すフローチャートである。図11を参照して、フロー分配アルゴリズムが開始されると、ホームエージェント10の制御装置12は、各経路r∈Pを通る全フローの集合F(r)および移動可能先の経路の集合M(f)を取得し、各経路r∈Pの容量の推定値C(r)および利用可能帯域A(r)を算出する(ステップS1)。
【0100】
そして、ホームエージェント10の制御装置12は、1つのフローfを選択し(ステップS2)、その選択したフローfが流れる経路rを選択する(ステップS3)。
【0101】
その後、ホームエージェント10の制御装置12は、経路rの移動可能先の経路r’を選択し(ステップS4)、x=min(A(r),A(r’))およびx’=min(A(r)+S(f),A(r’)−S(f))を算出する(ステップS5)。
【0102】
そうすると、ホームエージェント10の制御装置12は、x’がxよりも大きいか否かを判定する(ステップS6)。
【0103】
ステップS6において、x’がxよりも大きくないと判定されたとき、ホームエージェント10の制御装置12は、別の経路r’を選択する(ステップS7)。その後、一連の動作は、ステップS5へ戻り、ステップS6において、x’がxよりも大きいと判定されるまで、上述したステップS5〜ステップS7が繰り返し実行される。
【0104】
そして、ステップS6において、x’がxよりも大きいと判定されると、ホームエージェント10の制御装置12は、A(r)=A(r)+S(f)およびA(r’)=A(r’)−S(f)を設定する(ステップS8)。即ち、ホームエージェント10の制御装置12は、利用可能帯域A(r),A(r’)を更新する。
【0105】
そして、ホームエージェント10の制御装置12は、フローfを経路rから経路r’へ移動する(ステップS9)。
【0106】
この場合、ホームエージェント10の制御装置12は、移動するフローが下り方向であるとき、そのフローの受信先アドレス(アクセスポイントのアドレス)を変更するように通信器11を制御することによってフローを移動する。また、ホームエージェント10の制御装置12は、移動するフローが上り方向であるとき、そのフローの移動要求を移動端末装置(移動端末装置60,70のいずれか)へ送信し、移動端末装置(移動端末装置60,70のいずれか)が移動要求に従ってフローの送信元アドレスを変更することによってフローの移動が実現される。
【0107】
その後、ホームエージェント10の制御装置12は、ステップS5〜ステップS9が全てのフローF(f)に対して実行されたか否かを更に判定する(ステップS10)。
【0108】
ステップS10において、ステップS5〜ステップS9が全てのフローF(f)に対して実行されていないと判定されたとき、ホームエージェント10の制御装置12は、別のフローを選択する(ステップS11)。そして、一連の動作は、ステップS3へ戻り、ステップS11において、ステップS5〜ステップS9が全てのフローF(f)に対して実行されたと判定されるまで、ステップS3〜ステップS11が繰り返し実行される。
【0109】
そして、ステップS11において、ステップS5〜ステップS9が全てのフローF(f)に対して実行されたと判定されたとき、フロー分配アルゴリズムが終了する。
【0110】
図12は、フローを移動する全体の動作を示すタイミングチャートである。図12を参照して、ホームエージェント10は、周期J(Jは正の整数)において、移動端末装置A〜Zから各フローの送信レートおよび受信レートを受信する。
【0111】
そして、ホームエージェント10は、その受信した送信レートおよび受信レートを用いて図11に示すフロー分配アルゴリズムを実行する。この場合、上り方向のフローが移動される場合、ホームエージェント10は、そのフローの移動要求を移動端末装置(移動端末装置A〜Zのいずれか)へ送信し、移動端末装置(移動端末装置A〜Zのいずれか)が移動要求に従ってフローの送信元アドレスを変更する。また、下り方向のフローが移動される場合、ホームエージェント10は、そのフローの受信先アドレス(アクセスポイントのアドレス)を変更するように通信器11を制御する。これによって、フローが移動される。
【0112】
そして、周期Jが終了すると、周期J+1において、上述した動作が繰り返される。その後、上述した動作が周期的に繰り返される。
【0113】
このように、この発明の実施の形態においては、ホームエージェント10の制御装置12は、通信器11と移動端末装置60,70の無線通信器63,64との間の全経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように容量がオーバーフローしている経路を通るフローを別の経路へ移動させる。
【0114】
その結果、通信ネットワーク100の利用可能帯域に最大限の余裕が生まれる。従って、トラフィック量の変動による輻輳の発生に対して耐性を持つことができる。
【0115】
なお、上記においては、フロー分配アルゴリズムを実行する制御装置12は、ホームエージェント10に装備されると説明したが、この発明の実施の実施の形態においては、これに限らず、制御装置12は、移動端末装置60,70のいずれかに装備されていてもよく、一般的には、通信ネットワーク100内であれば、いずれの位置に存在してもよい。
【0116】
また、上記においては、移動端末装置60,70の各々は、2個の無線通信器63,64を備えると説明したが、この発明の実施の実施の形態においては、これに限らず、移動端末装置60,70の各々は、3個以上の無線通信器を備えていてもよい。その場合、移動端末装置60,70の各々は、同じ無線通信方式に従って無線通信を行なう複数の無線通信器を備えていてもよく、相互に異なる無線通信方式に従って無線通信を行なう複数の無線通信器を備えていれもよい。
【0117】
更に、この発明の実施の形態においては、ホームエージェント10は、「通信装置」を構成し、移動端末装置60,70は、「複数の移動端末装置」を構成する。
【0118】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0119】
この発明は、移動端末装置、それと通信を行う通信装置およびそれらを備えた通信ネットワークに適用される。
【符号の説明】
【0120】
10 ホームエージェント、11,13 通信器、12 制御装置、20 ネットワーク、30,40,50 アクセスポイント、60,70 移動端末装置、61,62 アンテナ、63,64 無線通信器、80,90 端末装置、100 通信ネットワーク。
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動端末装置、それと通信を行う通信装置およびそれらを備えた通信ネットワークに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)やWiMAX等の様々な無線通信インフラの整備に伴い、複数の無線NIC(Network Interface Controller)を搭載した携帯端末の普及が進んでいる。これらの端末では、複数のNICを同時利用し、複数の無線ネットワークに対して適切な割合でトラフィックを分配することで、単一の無線ネットワークでは得られない高い通信品質(例えば、高スループットで、かつ、低遅延の通信)を達成することが期待できる。
【0003】
同種で、かつ、通信品質の比較的安定した複数の通信リンクの集約を可能とするためのデータリンク層レベルでのトラフィック分散方式が提案されている(非特許文献1)。
【0004】
また、MIPv6に基づき、ネットワーク層レベルでの複数のIPアドレスの集約を可能とするための方式が提案されている(非特許文献2)。通常のMIPv6では、単一のホームアドレス(HoA:Home Address)に対し、単一の気付アドレス(CoA:Care−of Address)のみを対応付けることが可能である。
【0005】
一方、この方式では、MIPv6を拡張することで、単一のHoAに対し、複数のCoAを対応付けることを可能とする。これによって、複数のNICを備える端末は、NICごとに異なったCoAを取得してHoAと対応付けることで、端末のHoA宛てのトラフィックをホームエージェント(HA:Home Agent)上で、その端末のHoAに対応した複数のCoAに分配することが可能となる。
【0006】
更に、非特許文献2において提案されている方式等を基盤技術として用い、ネットワーク層レベルのトラフィック分散が実現されている(非特許文献3)。この方式では、端末が接続する複数のネットワークに対し、パケットを分配の単位として、それぞれのパケットを適切な割合で各ネットワークへ振り分けることで、単一のリンクでは得られない高いスループットを実現している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. Duncanson, “Inverse Multiplexing,” IEEE Communications Magazine, Vol. 32, No. 4, pp.34-41, 1994.
【非特許文献2】R. Wakikawa, V. Devarapalli, G. Tsirtsis, T. Ernst, and K. Nagami, “Multiple Care-of Addresses Registration,” RFC 5648, 2009.
【非特許文献3】K. Chebrolu, B. Raman, and R. R. Rao, “A Network Layer Approach to Enable TCP over Multiple Interfaces,” Wireless Networks, pp. 637-650, 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献1の方式では、ISDN回線のような同種のデータリンク層のプロトコルに基づいた複数のリンクを集約することを想定しているため、複数の通信回線事業者が提供するアクセスネットワークを跨ったようなリンクを集約することが困難である。
【0009】
また、非特許文献3の方式では、端末が持つ複数のNICに対し、パケットを分配の単位としてトラフィックの分散を行う。しかし、各ネットワークの通信品質の特性は、その通信方式のデータリンク層以下のプロトコルによって大きく異なる。例えば、WiFi網とWiMAX網では、MAC層のプロトコルとして、前者がコンテンションに基づくアクセス制御を行うのに対し、後者は、スケジューリングに基づくアクセス制御を行うため、両網のパケット送信における遅延特性は、大きく異なる。
【0010】
このような遅延特性の異なる複数のネットワークに対し、パケット単位の分配を行うと、パケットの到着順の入れ替わりが頻発し、トランスポート層以上におけるスループットの低下や遅延の増大を招くという問題がある。
【0011】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、トラフィック量の変動による輻輳の発生に耐性を持つ移動端末装置を提供することである。
【0012】
また、この発明の別の目的は、トラフィック量の変動による輻輳の発生に耐性を持つ移動端末装置と通信を行う通信装置を提供することである。
【0013】
更に、この発明の別の目的は、トラフィック量の変動による輻輳の発生に耐性を持つ移動端末装置を備えた通信ネットワークを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明の実施の形態によれば、移動端末装置は、複数の無線通信器と、制御装置とを備える。複数の無線通信器の各々は、基地局を介して通信を行う。制御装置は、ネットワーク上に設置された通信装置と複数の無線通信器との間の通信を制御する。そして、制御装置は、通信装置から基地局を介して各無線通信器まで到るネットワーク上のパスであり、かつ、通信装置から無線通信器への方向と無線通信器から通信装置への方向とを区別するパスを経路として定義し、経路上におけるトラフィックの流れをフローとして定義した場合、フローが通っている全ての経路の容量と全ての経路の利用可能帯域とを検出し、全ての経路のうちのいずれかの経路の容量がオーバーしたとき、全ての経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように、容量がオーバーした経路を通るフローを別の経路へ移動させる。
【0015】
この発明の実施の形態によれば、通信装置は、ネットワーク上に設置された通信装置であって、通信器と、制御装置とを備える。通信器は、基地局を介して通信を行う。制御装置は、移動端末装置に装備された複数の無線通信器と通信器との間の通信を制御する。複数の無線通信器の各々は、基地局を介して通信器と通信を行う。制御装置は、通信器から基地局を介して各無線通信器まで到るネットワーク上のパスであり、かつ、通信器から無線通信器への方向と無線通信器から通信器への方向とを区別するパスを経路として定義し、経路上におけるトラフィックの流れをフローとして定義した場合、フローが通っている全ての経路の容量と、全ての経路の利用可能帯域とを検出し、全ての経路のうちのいずれかの経路の容量がオーバーしたとき、全ての経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように、容量がオーバーした経路を通るフローを別の経路へ移動させる。
【0016】
更に、この発明の実施の形態によれば、通信ネットワークは、複数の移動端末装置と、通信装置と、制御装置とを備える。複数の移動端末装置の各々は、複数の無線通信器を装備している。通信装置は、ネットワーク上に設置され、基地局を介して複数の移動端末装置と通信を行う。制御装置は、複数の移動端末装置と通信装置との間の無線通信を制御する。複数の無線通信器の各々は、基地局を介して通信装置と通信を行う。制御装置は、通信装置から基地局を介して各無線通信器まで到るネットワーク上のパスであり、かつ、通信装置から無線通信器への方向と無線通信器から通信装置への方向とを区別するパスを経路として定義し、経路上におけるトラフィックの流れをフローとして定義した場合、フローが通っている全ての経路の容量と、全ての経路の利用可能帯域とを検出し、全ての経路のうちのいずれかの経路の容量がオーバーしたとき、全ての経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように、容量がオーバーした経路を通るフローを別の経路へ移動させる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の実施の形態においては、制御装置は、通信器と移動端末装置の無線通信器との間の全経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように容量がオーバーフローしている経路を通るフローを別の経路へ移動させる。その結果、通信ネットワークの利用可能帯域に最大限の余裕が生まれる。
【0018】
従って、トラフィック量の変動による輻輳の発生に対して耐性を持つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態による通信ネットワークの概略図である。
【図2】図1に示すホームエージェントの構成図である。
【図3】図1に示す移動端末装置の構成図である。
【図4】経路およびフローを説明するための図である。
【図5】経路の容量と利用可能帯域との関係を示す図である。
【図6】送信レートおよび受信レートを測定するノードを示す図である。
【図7】経路の容量のオーバーフローの概念図である。
【図8】経路の集約の概念図である。
【図9】フローの移動の要否を判定する条件を示す図である。
【図10】フローの移動の概念図である。
【図11】フロー分配アルゴリズムを示すフローチャートである。
【図12】フローを移動する全体の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0021】
図1は、この発明の実施の形態による通信ネットワークの概略図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による通信ネットワーク100は、ホームエージェント10と、ネットワーク20と、アクセスポイント30,40,50と、移動端末装置60,70と、端末装置80,90とを備える。
【0022】
ホームエージェント10は、ネットワーク20上に配置される。そして、ホームエージェント10は、ネットワーク20およびアクセスポイント30,40,50を介して移動端末装置60,70からパケットを受信し、その受信したパケットを端末装置80,90へ送信する。また、ホームエージェント10は、端末装置80,90からパケットを受信し、その受信したパケットをネットワーク20および基地局30,40,50を介して移動端末装置60,70へ送信する。
【0023】
更に、ホームエージェント10は、後述する方法によって、自己と移動端末装置60,70との間の通信を制御する。
【0024】
アクセスポイント30は、有線ケーブルによってネットワーク20に接続される。そして、アクセスポイント30は、例えば、WiFiのネットワークを形成する。アクセスポイント30は、ホームエージェント10からパケットを受信し、その受信したパケットを無線通信によって移動端末装置60へ送信する。また、アクセスポイント30は、移動端末装置60から無線通信によってパケットを受信し、その受信したパケットをホームエージェント10へ送信する。
【0025】
アクセスポイント40は、有線ケーブルによってネットワーク20に接続される。そして、アクセスポイント40は、例えば、WiFiのネットワークを形成する。アクセスポイント40は、ホームエージェント10からパケットを受信し、その受信したパケットを無線通信によって移動端末装置60または移動端末装置70へ送信する。また、アクセスポイント40は、移動端末装置60または移動端末装置70から無線通信によってパケットを受信し、その受信したパケットをホームエージェント10へ送信する。
【0026】
アクセスポイント50は、有線ケーブルによってネットワーク20に接続される。そして、アクセスポイント50は、例えば、WiMAXのネットワークを形成する。アクセスポイント50は、ホームエージェント10からパケットを受信し、その受信したパケットを無線通信によって移動端末装置70へ送信する。また、アクセスポイント50は、移動端末装置70から無線通信によってパケットを受信し、その受信したパケットをホームエージェント10へ送信する。
【0027】
移動端末装置60は、WiFi(IEEE802.11)、WiMAX(IEEE802.16)および3G(W−CDMA,CDMA 2000)等のいずれかの無線通信方式でアクセスポイント30,40と無線通信を行う。
【0028】
また、移動端末装置70は、WiFi(IEEE802.11)、WiMAX(IEEE802.16)および3G(W−CDMA,CDMA 2000)等のいずれかの無線通信方式でアクセスポイント40,50と無線通信を行う。
【0029】
端末装置80,90の各々は、有線ケーブルによってホームエージェント10に接続される。そして、端末装置80,90の各々は、移動端末装置60,70宛てのパケットをホームエージェント10へ送信し、自己宛てのパケットをホームエージェント10から受信する。
【0030】
図2は、図1に示すホームエージェント10の構成図である。図2を参照して、ホームエージェント10は、通信器11,13と、制御装置12とを含む。
【0031】
通信器11は、有線ケーブルを介してアクセスポイント30,40,50からパケットを受信し、その受信したパケットを制御装置12へ出力する。
【0032】
また、通信器11は、制御装置12からパケットを受け、その受けたパケットを有線ケーブルを介してアクセスポイント30,40,50へ送信する。
【0033】
制御装置12は、通信器11からパケットを受ける。そして、制御装置12は、その受けたパケットの送信先が端末装置80,90である場合、そのパケットを通信器13へ出力する。また、制御装置12は、その受けたパケットの送信先がホームエージェント10である場合、そのパケットを受理する。
【0034】
また、制御装置12は、通信器13からパケットを受け、その受けたパケットを通信器11へ出力する。
【0035】
更に、制御装置12は、後述する方法によって、通信器11と移動端末装置60,70との間の通信を制御する。
【0036】
通信器13は、制御装置12からパケットを受け、その受けたパケットを端末装置80,90へ送信する。また、通信器13は、端末装置80,90からパケットを受信し、その受信したパケットを制御装置12へ出力する。
【0037】
図3は、図1に示す移動端末装置60の構成図である。図3を参照して、移動端末装置60は、アンテナ61,62と、無線通信器63,64とを含む。
【0038】
無線通信器63は、WiFiの通信方式に従ってアクセスポイント30とアンテナ61を介して無線通信を行う。また、無線通信器64は、WiFiの通信方式に従ってアクセスポイント40とアンテナ62を介して無線通信を行う。
【0039】
このように、無線通信器63,64は、同じ通信方式または異なる通信方式に従ってそれぞれアクセスポイント30,40と無線通信を行う。
【0040】
なお、図1に示す移動端末装置70も、図3に示す移動端末装置60と同じ構成からなる。
【0041】
図4は、経路およびフローを説明するための図である。図4を参照して、経路r1は、ホームエージェント10の通信器11、アクセスポイント30および移動端末装置60の無線通信器63からなるパスである。
【0042】
また、経路r2は、移動端末装置60の無線通信器63、アクセスポイント30およびホームエージェント10の通信器11からなるパスである。
【0043】
更に、経路r3は、移動端末装置60の無線通信器64、アクセスポイント40およびホームエージェント10の通信器11からなるパスである。
【0044】
更に、経路r4は、ホームエージェント10の通信器11、アクセスポイント40および移動端末装置60の無線通信器64からなるパスである。
【0045】
このように、経路r1〜r4は、ホームエージェント10の通信器11と、移動端末装置60,70の無線通信器63,64との間のパスからなる。そして、経路r1〜r4は、方向が異なれば、別の経路になる。従って、この発明の実施の形態においては、経路とは、ホームエージェント10からアクセスポイント30,40,50を介して各無線通信器63,64まで到るネットワーク上のパスであり、かつ、ホームエージェント10から無線通信器63,64への方向と無線通信器63,64からホームエージェント10への方向とを区別するパスとして定義される。
【0046】
また、この発明の実施の形態においては、フローとは、経路上におけるトラフィックの流れとして定義される。
【0047】
そして、フローを識別する方法として次の2つの方法のいずれかが用いられる。まず、一つ目の方法は、送信元IPアドレス、受信先IPアドレス、送信元ポート番号、受信先ポート番号およびトランスポート層識別番号を用いてフローを識別する。もう一つの方法は、IPv6パケットに対して用いられ、送信元IPアドレス、受信先IPアドレス、およびフローラベルを用いてフローを識別する。
【0048】
更に、この発明の実施の形態においては、経路の容量とは、あるフローをある経路に流すときに、その経路を流れる他のフローが存在しない場合において、そのフローが達成可能な最大レートを言い、bps単位で表される。
【0049】
更に、この発明の実施の形態においては、利用可能帯域とは、あるフローをある経路に流すとき、その経路を流れる他のフローの受信レートに影響を与えない範囲内で、そのフローが達成可能な最大レートを言う。そして、利用可能帯域は、フローの送信レートと受信レートとを用いて後述する方法によって算出される。
【0050】
図5は、経路の容量と利用可能帯域との関係を示す図である。図5を参照して、利用可能帯域は、経路の容量から消費帯域を減算することによって算出される。
【0051】
図6は、送信レートおよび受信レートを測定するノードを示す図である。図6を参照して、ホームエージェント10から移動端末装置60の方向へ流れるフローは、ダウンリンクフローである。また、移動端末装置60からホームエージェント10の方向へ流れるフローは、アップリンクフローである。
【0052】
そして、ダウンリンクフローにおいては、ホームエージェント10の通信器11は、送信レートを測定し、移動端末装置60の無線通信器63(または無線通信器64)は、受信レートを測定する。また、アップリンクフローにおいては、移動端末装置60の無線通信器63(または無線通信器64)は、送信レートを測定し、ホームエージェント10の通信器11は、受信レートを測定する。
【0053】
この場合、送信レートおよび受信レートは、単位時間当たりのビット数(bps)で表される。
【0054】
あるフローの送信レートは、例えば、OS内部において、そのフローに属するパケットをt秒当たりにnパケット送信処理したとして、各パケットpi(i=1,2,・・・,n)のビット数をB(pi)とすると、送信レートは、(SUMni=1B(pi))/tによって表される。受信レートも、同様にして算出される。
【0055】
なお、表記SUMは、i=1,2,・・・,nについて、B(pi)の和を演算することを意味する。
【0056】
そして、移動端末装置60,70の無線通信器63(または無線通信器64)は、その測定した送信レートおよび受信レートを定期的にホームエージェント10の制御装置12へ送信する。
【0057】
ある経路rにおいて、その経路を通る全てのフローの集合をF(r)とする。また、経路rを通るフローf∈F(r)に対して、そのフローfの送信レートをS(f)とし、受信レートをR(f)とする。
【0058】
そうすると、ある経路において、その経路の容量がオーバーしていない状態とは、その経路を通る全てのフローにおいて、送信レートS(f)と等しい受信レートR(f)が達成されている状態を言う。即ち、経路rの容量がオーバーしていない状態とは、経路rについて次式が成立していることを言う。
【0059】
【数1】
【0060】
また、経路rの容量がオーバーしている状態とは、経路rについて次式が成立していることを言う。
【0061】
【数2】
【0062】
図7は、経路の容量のオーバーフローの概念図である。図7の(a)を参照して、8Mbpsの容量を有する経路を2つのフローが流れている。そして、一方のフローの送信レートが3Mbpsであり、他方のフローの送信レートが2Mbpsである。また、一方のフローの受信レートが3Mbpsであり、他方のフローの受信レートが2Mbpsである。
【0063】
従って、8Mbpsの容量を有する経路を取る2つのフローにおいて、送信レートと等しい受信レートが達成されている。即ち、経路の容量がオーバーフローしていない。
【0064】
図7の(b)を参照して、8Mbpsの容量を有する経路を2つのフローが流れている。そして、一方のフローの送信レートが7Mbpsであり、他方のフローの送信レートが4Mbpsである。また、一方のフローの受信レートが5Mbpsであり、他方のフローの受信レートが3Mbpsである。
【0065】
従って、8Mbpsの容量を有する経路を取る2つのフローにおいて、送信レートと等しい受信レートが達成されておらず、受信レートの総和(=8Mbps)が送信レートの総和(=11Mbps)よりも小さい。即ち、経路の容量がオーバーフローしている。この場合、受信レートの総和(=8Mbps)は、その経路の容量を表す。
【0066】
ホームエージェント10の制御装置12は、通信器11が測定した送信レートおよび受信レートと、移動端末装置60,70の無線通信器63,64が測定した送信レートおよび受信レートとを定期的に収集する。
【0067】
そして、ホームエージェント10の制御装置12は、その収集した送信レートおよび受信レートに基づいて、通信器11と、移動端末装置60,70の無線通信器63,64との間の全ての経路のうち少なくとも1つの経路の容量がオーバーフローしているか否かを判定する。即ち、ホームエージェント10の制御装置12は、その収集した送信レートおよび受信レートに基づいて、式(2)が成立するか否かを判定することによって、全ての経路のうち少なくとも1つの経路の容量がオーバーフローしているか否かを判定する。
【0068】
ホームエージェント10の制御装置12は、全ての経路のうち少なくとも1つの経路の容量がオーバーフローしていると判定したとき、通信器11と、移動端末装置60,70の無線通信器63,64との間の全ての経路における利用可能帯域の最小値が最大になるように、容量がオーバーフローしている経路のフローを別の経路へ移動させる。これを「フロー分配アルゴリズム」と言う。
【0069】
この場合、ホームエージェント10の制御装置12は、ある経路rにおいて式(2)が成立すれば、経路rの容量をSUMf∈F(r)R(f)と推定する。
【0070】
各経路の容量は、時間の経過とともに、その時点で最新の送信レートおよび受信レートを用いて更新される。実際の環境においては、フローの送信レートと受信レートとの測定誤差により、実際には、経路の容量がオーバーフローしていないにも拘わらず、式(2)が成立してしまう場合がある。このような場合に経路の容量の推定値が誤った値に更新されるのを防止するために、ホームエージェント10の制御装置12は、閾値Tを保持しており、次式が成立する経路においてのみ、経路の容量を更新する。
【0071】
【数3】
【0072】
なお、閾値Tは、例えば、1Mbpsに設定される。
【0073】
また、経路の容量は、式(2)が成立して初めて推定されるため、ホームエージェント10の制御装置12は、制御の初期段階においては、容量の推定が一度も行なわれない経路に関しては、初期値を与え、それを経路の容量とみなしてフロー分配アルゴリズムを実行する。経路の容量の初期値は、例えば、10Mbpsに設定される。
【0074】
図8は、経路の集約の概念図である。無線通信環境においては、ある経路の容量は、他の経路と共有されることが多い。例えば、図8に示すように、2つの移動端末装置60,70が同じアクセスポイント40に接続して通信を行う場合を想定する。
【0075】
下り方向(ホームエージェント10から移動端末装置60,70への方向)の経路に関しては、各移動端末装置60,70ごとに1つの経路が存在するため、上述した経路の容量の推定値は、各経路ごとに算出される。
【0076】
しかし、実際には、2つの移動端末装置60,70は、両方とも同じアクセスポイント40の電波範囲内に位置し、お互いに空間を共有して無線通信を行なう。その結果、例えば、WiFiによるアクセス制御の元では、2つの移動端末装置60,70は、アクセスポイント40と同時に無線通信を行なうことができず、どの瞬間においても、アクセスポイント40と通信可能であるのは、移動端末装置60,70のいずれか一方の移動端末装置である。従って、移動端末装置60と移動端末装置70とは、お互いに経路の容量を共有している状態である。
【0077】
このような状態においては、2つの経路をそれぞれ独立したものとみなして容量を推定するのは、望ましくない。
【0078】
そこで、この発明の実施の形態においては、同じアクセスポイントを通る複数の経路を集約し、その複数の経路を1つの経路とみなして容量を推定することにする。
【0079】
より具体的には、ホームエージェント10の制御装置12は、m(mは2以上の整数)個の経路ri(i=1,2,・・・,m)を集約して容量を推定する場合、集約後の経路をrとすると、rを通る全てのフローの集合をF(r)=Umi=1F(ri)とし、F(r)に対して式(2)が成立すれば、経路rの容量をSUMf∈F(r)R(f)と推定する。
【0080】
以下においては、実際に集約された経路であっても、単に経路と呼ぶ。
【0081】
フロー分配アルゴリズムについて説明する。制御対象のネットワークにおける全ての経路の集合をPとし、フロー分配アルゴリズムを実行する前の各経路r∈Pを通る全フローの集合をF(r)とする。
【0082】
ホームエージェント10の制御装置12は、全フローの送信レートおよび受信レートに基づいて、全経路Pの利用可能帯域を算出する。そして、ホームエージェント10の制御装置12は、その算出した全経路Pの利用可能帯域の最小値が最大になるように容量がオーバーフローしている経路を通るフローを別の経路へ移動させる。具体的に説明する。
【0083】
フロー分配アルゴリズムを実行する前における各経路r∈Pの容量の推定値をC(r)としたとき、利用可能帯域A(r)は、次式によって求められる。
【0084】
【数4】
【0085】
即ち、利用可能帯域A(r)は、経路rの容量の推定値C(r)から経路rを通る全てフローの送信レートの総和を差し引いた値からなる。
【0086】
なお、容量がオーバーフローしている状態では、A(r)は、負の値からなる。
【0087】
フロー分配アルゴリズムは、ある経路r∈Pを通るフローf∈F(r)を別の経路r’∈Pを通るように変更することによって、両経路r,r’における利用可能帯域A(r)の最小値が増加する場合、そのフローfを経路rから経路r’へ移動させる。
【0088】
図9は、フローの移動の要否を判定する条件を示す図である。図9の(a)を参照して、2つの経路r,r’において、利用可能帯域A(r),A(r’)がそれそれ4Mbps,1Mbpsである。
【0089】
このとき、経路r’を通るフローfを経路rを通るように変更すると、利用可能帯域A(r),A(r’)は、それぞれ、3Mbps,2Mbpsとなる(図9の(b)参照)。
【0090】
その結果、利用可能帯域の最小値は、フローの移動前には、1Mbpsであるが、フローの移動後には、2Mbpsへ増加する。
【0091】
フロー分配アルゴリズムは、各フローについて、フローを移動させることによって2つの経路r,r’の利用可能帯域A(r),A(r’)の最小値が増加する場合、フローの移動を行なう。
【0092】
ホームエージェント10の制御装置12は、上述したフロー分配アルゴリズムを容量がオーバーフローした全ての経路について実行する。その結果、ホームエージェント10の制御装置12は、通信ネットワーク100における全経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように容量がオーバーフローしている経路を通るフローを別の経路へ移動させる。
【0093】
なお、ある経路rを通るフローfを別の経路r’へ移動することは、常に実行可能であるとは限らない。即ち、フローfを経路rから経路r’へ移動可能であるとは、経路rと経路r’との方向が同じであり、かつ、フローの送信元(または受信先)の移動端末装置が経路r’上のアクセスポイントに対して接続する無線通信器を装備している場合に限られる。
【0094】
図10は、フローの移動の概念図である。図10の(a)を参照して、フローf1は、アクセスポイント30を経由して移動端末装置60へ至る経路を流れている。このフローfアクセスポイント40を経由して移動端末装置60に至る経路へ移動させることは可能である(図10の(b)参照)。
【0095】
アクセスポイント30を経由する経路rと、アクセスポイント40を経由する経路r’との方向が同じであり、フローfの受信先の移動端末装置60が経路r’上のアクセスポイント40に対して接続する無線通信器64を装備しているからである。
【0096】
しかし、移動端末装置60は、アクセスポイント50に対して接続する無線通信器を装備していないため、フローfを経路rからアクセスポイント50を経由する経路へ移動させることはできない。
【0097】
従って、ホームエージェント10の制御装置12は、上述した条件に合致する経路r’を移動可能先の経路として選択する。
【0098】
以下においては、フローfを移動可能な移動可能先の経路の集合をM(f)と表記する。
【0099】
図11は、フロー分配アルゴリズムを示すフローチャートである。図11を参照して、フロー分配アルゴリズムが開始されると、ホームエージェント10の制御装置12は、各経路r∈Pを通る全フローの集合F(r)および移動可能先の経路の集合M(f)を取得し、各経路r∈Pの容量の推定値C(r)および利用可能帯域A(r)を算出する(ステップS1)。
【0100】
そして、ホームエージェント10の制御装置12は、1つのフローfを選択し(ステップS2)、その選択したフローfが流れる経路rを選択する(ステップS3)。
【0101】
その後、ホームエージェント10の制御装置12は、経路rの移動可能先の経路r’を選択し(ステップS4)、x=min(A(r),A(r’))およびx’=min(A(r)+S(f),A(r’)−S(f))を算出する(ステップS5)。
【0102】
そうすると、ホームエージェント10の制御装置12は、x’がxよりも大きいか否かを判定する(ステップS6)。
【0103】
ステップS6において、x’がxよりも大きくないと判定されたとき、ホームエージェント10の制御装置12は、別の経路r’を選択する(ステップS7)。その後、一連の動作は、ステップS5へ戻り、ステップS6において、x’がxよりも大きいと判定されるまで、上述したステップS5〜ステップS7が繰り返し実行される。
【0104】
そして、ステップS6において、x’がxよりも大きいと判定されると、ホームエージェント10の制御装置12は、A(r)=A(r)+S(f)およびA(r’)=A(r’)−S(f)を設定する(ステップS8)。即ち、ホームエージェント10の制御装置12は、利用可能帯域A(r),A(r’)を更新する。
【0105】
そして、ホームエージェント10の制御装置12は、フローfを経路rから経路r’へ移動する(ステップS9)。
【0106】
この場合、ホームエージェント10の制御装置12は、移動するフローが下り方向であるとき、そのフローの受信先アドレス(アクセスポイントのアドレス)を変更するように通信器11を制御することによってフローを移動する。また、ホームエージェント10の制御装置12は、移動するフローが上り方向であるとき、そのフローの移動要求を移動端末装置(移動端末装置60,70のいずれか)へ送信し、移動端末装置(移動端末装置60,70のいずれか)が移動要求に従ってフローの送信元アドレスを変更することによってフローの移動が実現される。
【0107】
その後、ホームエージェント10の制御装置12は、ステップS5〜ステップS9が全てのフローF(f)に対して実行されたか否かを更に判定する(ステップS10)。
【0108】
ステップS10において、ステップS5〜ステップS9が全てのフローF(f)に対して実行されていないと判定されたとき、ホームエージェント10の制御装置12は、別のフローを選択する(ステップS11)。そして、一連の動作は、ステップS3へ戻り、ステップS11において、ステップS5〜ステップS9が全てのフローF(f)に対して実行されたと判定されるまで、ステップS3〜ステップS11が繰り返し実行される。
【0109】
そして、ステップS11において、ステップS5〜ステップS9が全てのフローF(f)に対して実行されたと判定されたとき、フロー分配アルゴリズムが終了する。
【0110】
図12は、フローを移動する全体の動作を示すタイミングチャートである。図12を参照して、ホームエージェント10は、周期J(Jは正の整数)において、移動端末装置A〜Zから各フローの送信レートおよび受信レートを受信する。
【0111】
そして、ホームエージェント10は、その受信した送信レートおよび受信レートを用いて図11に示すフロー分配アルゴリズムを実行する。この場合、上り方向のフローが移動される場合、ホームエージェント10は、そのフローの移動要求を移動端末装置(移動端末装置A〜Zのいずれか)へ送信し、移動端末装置(移動端末装置A〜Zのいずれか)が移動要求に従ってフローの送信元アドレスを変更する。また、下り方向のフローが移動される場合、ホームエージェント10は、そのフローの受信先アドレス(アクセスポイントのアドレス)を変更するように通信器11を制御する。これによって、フローが移動される。
【0112】
そして、周期Jが終了すると、周期J+1において、上述した動作が繰り返される。その後、上述した動作が周期的に繰り返される。
【0113】
このように、この発明の実施の形態においては、ホームエージェント10の制御装置12は、通信器11と移動端末装置60,70の無線通信器63,64との間の全経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように容量がオーバーフローしている経路を通るフローを別の経路へ移動させる。
【0114】
その結果、通信ネットワーク100の利用可能帯域に最大限の余裕が生まれる。従って、トラフィック量の変動による輻輳の発生に対して耐性を持つことができる。
【0115】
なお、上記においては、フロー分配アルゴリズムを実行する制御装置12は、ホームエージェント10に装備されると説明したが、この発明の実施の実施の形態においては、これに限らず、制御装置12は、移動端末装置60,70のいずれかに装備されていてもよく、一般的には、通信ネットワーク100内であれば、いずれの位置に存在してもよい。
【0116】
また、上記においては、移動端末装置60,70の各々は、2個の無線通信器63,64を備えると説明したが、この発明の実施の実施の形態においては、これに限らず、移動端末装置60,70の各々は、3個以上の無線通信器を備えていてもよい。その場合、移動端末装置60,70の各々は、同じ無線通信方式に従って無線通信を行なう複数の無線通信器を備えていてもよく、相互に異なる無線通信方式に従って無線通信を行なう複数の無線通信器を備えていれもよい。
【0117】
更に、この発明の実施の形態においては、ホームエージェント10は、「通信装置」を構成し、移動端末装置60,70は、「複数の移動端末装置」を構成する。
【0118】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0119】
この発明は、移動端末装置、それと通信を行う通信装置およびそれらを備えた通信ネットワークに適用される。
【符号の説明】
【0120】
10 ホームエージェント、11,13 通信器、12 制御装置、20 ネットワーク、30,40,50 アクセスポイント、60,70 移動端末装置、61,62 アンテナ、63,64 無線通信器、80,90 端末装置、100 通信ネットワーク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が基地局を介して通信を行う複数の無線通信器と、
ネットワーク上に設置された通信装置と前記複数の無線通信器との間の通信を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記通信装置から前記基地局を介して各無線通信器まで到るネットワーク上のパスであり、かつ、前記通信装置から前記無線通信器への方向と前記無線通信器から前記通信装置への方向とを区別するパスを経路として定義し、前記経路上におけるトラフィックの流れをフローとして定義した場合、前記フローが通っている全ての経路の容量と、前記全ての経路の利用可能帯域とを検出し、前記全ての経路のうちのいずれかの経路の容量がオーバーしたとき、前記全ての経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように、前記容量がオーバーした経路を通るフローを別の経路へ移動させる、移動端末装置。
【請求項2】
ネットワーク上に設置された通信装置であって、
基地局を介して通信を行う通信器と、
移動端末装置に装備された複数の無線通信器と前記通信器との間の通信を制御する制御装置とを備え、
前記複数の無線通信器の各々は、前記基地局を介して前記通信器と通信を行い、
前記制御装置は、前記通信器から前記基地局を介して各無線通信器まで到るネットワーク上のパスであり、かつ、前記通信器から前記無線通信器への方向と前記無線通信器から前記通信器への方向とを区別するパスを経路として定義し、前記経路上におけるトラフィックの流れをフローとして定義した場合、前記フローが通っている全ての経路の容量と、前記全ての経路の利用可能帯域とを検出し、前記全ての経路のうちのいずれかの経路の容量がオーバーしたとき、前記全ての経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように、前記容量がオーバーした経路を通るフローを別の経路へ移動させる、通信装置。
【請求項3】
各々が複数の無線通信器を装備した複数の移動端末装置と、
ネットワーク上に設置され、基地局を介して前記複数の移動端末装置と通信を行う通信装置と、
前記複数の移動端末装置と前記通信装置との間の無線通信を制御する制御装置とを備え、
前記複数の無線通信器の各々は、前記基地局を介して前記通信装置と通信を行い、
前記制御装置は、前記通信装置から前記基地局を介して各無線通信器まで到るネットワーク上のパスであり、かつ、前記通信装置から前記無線通信器への方向と前記無線通信器から前記通信装置への方向とを区別するパスを経路として定義し、前記経路上におけるトラフィックの流れをフローとして定義した場合、前記フローが通っている全ての経路の容量と、前記全ての経路の利用可能帯域とを検出し、前記全ての経路のうちのいずれかの経路の容量がオーバーしたとき、前記全ての経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように、前記容量がオーバーした経路を通るフローを別の経路へ移動させる、通信ネットワーク。
【請求項4】
前記制御装置は、前記通信装置に装備されている、請求項3に記載の通信ネットワーク。
【請求項5】
前記制御装置は、複数の無線通信器が1つの基地局を介して無線通信を行っている場合、前記通信装置と前記複数の無線通信器との間の複数の経路を1つの経路に集約し、前記全ての経路のうちのいずれかの経路の容量がオーバーしたとき、その集約した経路を用いて、前記全ての経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように、前記容量がオーバーした経路を通るフローを別の経路へ移動させる、請求項3または請求項4に記載の通信ネットワーク。
【請求項6】
前記制御装置は、各フローの送信レートおよび受信レートに基づいて、前記全ての経路の容量と、前記全ての経路の利用可能帯域とを検出し、1つの経路を通る全てのフローの送信レートの総和と前記1つの経路を通る全てのフローの受信レートの総和との差が閾値よりも大きいとき、前記1つの経路の容量を更新する更新処理を前記全ての経路について実行する、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の通信ネットワーク。
【請求項1】
各々が基地局を介して通信を行う複数の無線通信器と、
ネットワーク上に設置された通信装置と前記複数の無線通信器との間の通信を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記通信装置から前記基地局を介して各無線通信器まで到るネットワーク上のパスであり、かつ、前記通信装置から前記無線通信器への方向と前記無線通信器から前記通信装置への方向とを区別するパスを経路として定義し、前記経路上におけるトラフィックの流れをフローとして定義した場合、前記フローが通っている全ての経路の容量と、前記全ての経路の利用可能帯域とを検出し、前記全ての経路のうちのいずれかの経路の容量がオーバーしたとき、前記全ての経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように、前記容量がオーバーした経路を通るフローを別の経路へ移動させる、移動端末装置。
【請求項2】
ネットワーク上に設置された通信装置であって、
基地局を介して通信を行う通信器と、
移動端末装置に装備された複数の無線通信器と前記通信器との間の通信を制御する制御装置とを備え、
前記複数の無線通信器の各々は、前記基地局を介して前記通信器と通信を行い、
前記制御装置は、前記通信器から前記基地局を介して各無線通信器まで到るネットワーク上のパスであり、かつ、前記通信器から前記無線通信器への方向と前記無線通信器から前記通信器への方向とを区別するパスを経路として定義し、前記経路上におけるトラフィックの流れをフローとして定義した場合、前記フローが通っている全ての経路の容量と、前記全ての経路の利用可能帯域とを検出し、前記全ての経路のうちのいずれかの経路の容量がオーバーしたとき、前記全ての経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように、前記容量がオーバーした経路を通るフローを別の経路へ移動させる、通信装置。
【請求項3】
各々が複数の無線通信器を装備した複数の移動端末装置と、
ネットワーク上に設置され、基地局を介して前記複数の移動端末装置と通信を行う通信装置と、
前記複数の移動端末装置と前記通信装置との間の無線通信を制御する制御装置とを備え、
前記複数の無線通信器の各々は、前記基地局を介して前記通信装置と通信を行い、
前記制御装置は、前記通信装置から前記基地局を介して各無線通信器まで到るネットワーク上のパスであり、かつ、前記通信装置から前記無線通信器への方向と前記無線通信器から前記通信装置への方向とを区別するパスを経路として定義し、前記経路上におけるトラフィックの流れをフローとして定義した場合、前記フローが通っている全ての経路の容量と、前記全ての経路の利用可能帯域とを検出し、前記全ての経路のうちのいずれかの経路の容量がオーバーしたとき、前記全ての経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように、前記容量がオーバーした経路を通るフローを別の経路へ移動させる、通信ネットワーク。
【請求項4】
前記制御装置は、前記通信装置に装備されている、請求項3に記載の通信ネットワーク。
【請求項5】
前記制御装置は、複数の無線通信器が1つの基地局を介して無線通信を行っている場合、前記通信装置と前記複数の無線通信器との間の複数の経路を1つの経路に集約し、前記全ての経路のうちのいずれかの経路の容量がオーバーしたとき、その集約した経路を用いて、前記全ての経路の利用可能帯域の最小値が最大になるように、前記容量がオーバーした経路を通るフローを別の経路へ移動させる、請求項3または請求項4に記載の通信ネットワーク。
【請求項6】
前記制御装置は、各フローの送信レートおよび受信レートに基づいて、前記全ての経路の容量と、前記全ての経路の利用可能帯域とを検出し、1つの経路を通る全てのフローの送信レートの総和と前記1つの経路を通る全てのフローの受信レートの総和との差が閾値よりも大きいとき、前記1つの経路の容量を更新する更新処理を前記全ての経路について実行する、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の通信ネットワーク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−175563(P2012−175563A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37449(P2011−37449)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「異種無線システム動的利用による信頼性向上技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「異種無線システム動的利用による信頼性向上技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】
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