説明

移動通信端末及びその制御方法

【課題】受信品質の低下を防止しつつ、バッテリ残量が少ない場合に動作可能時間を延長させることが可能な移動通信端末を提供する。
【解決手段】本発明に係る移動通信端末は、移動通信端末の移動速度を示す速度情報を取得する移動速度情報取得部141と、バッテリ残量を検出するバッテリ残量検出部142と、速度情報とバッテリ残量とに基づき、受信品質と消費電力とに影響を与える少なくとも1つの通信パラメータを選択するパラメータ選択部144と、選択された通信パラメータを送受信部に設定するパラメータ設定部145とを備える。パラメータ選択部144は、バッテリ残量が所定量を下回る場合、消費電力を下げるように通信パラメータを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリに蓄えられた電力を用いて動作する移動通信端末、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、移動通信端末は、無線基地局と無線信号を送受信する送受信部と、少なくとも送受信部に供給される電力を蓄えるバッテリとを備える。
【0003】
このような移動通信端末は、複数の無線基地局の中から無線信号(例えば、パイロット信号)の受信品質の最も高い無線基地局を探索(以下、「基地局サーチ」)するとともに、受信品質の最も高い無線基地局を接続先の無線基地局として選択する。
【0004】
したがって、移動通信端末において、基地局サーチを実行する頻度が高いほど受信品質を高めることが可能となるが、基地局サーチを実行する頻度が高いほど送受信部における消費電力が増える。
【0005】
また、移動通信端末の移動速度が高速である場合には受信品質が低下し易い。このため、移動通信端末の高速移動時において、基地局サーチを実行する頻度を増やす移動通信端末が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の移動通信端末によれば、高速移動時においても受信品質の低下を防止可能となる。
【特許文献1】特開2004−104265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ユーザがバッテリを充電する機会は限られており、バッテリ残量が少ない場合には、移動通信端末の消費電力を減らすことで動作可能時間を延長させることが望まれる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の移動通信端末では、バッテリ残量が少ない場合においても、移動通信端末の移動速度が上がると基地局サーチ頻度が増えるために消費電力が増え、動作可能時間が短縮されてしまう問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、受信品質の低下を防止しつつ、バッテリ残量が少ない場合に動作可能時間を延長させることが可能な移動通信端末及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の特徴は、無線信号を無線基地局と送受信する送受信部(送受信部120)と、少なくとも前記送受信部に供給される電力を蓄えるバッテリ(バッテリ130)とを有する移動通信端末(移動通信端末100)であって、前記移動通信端末の移動速度を示す速度情報を取得する速度情報取得部(移動速度情報取得部141)と、前記バッテリに蓄えられている電力の残量であるバッテリ残量を検出するバッテリ残量検出部(バッテリ残量検出部142)と、前記速度情報取得部によって取得された前記速度情報と、前記バッテリ残量検出部によって検出された前記バッテリ残量とに基づき、前記無線信号の受信品質と前記送受信部の消費電力とに影響を与える少なくとも1つの通信パラメータを選択するパラメータ選択部(パラメータ選択部144)と、前記パラメータ選択部によって選択された前記通信パラメータを前記送受信部に設定するパラメータ設定部(パラメータ設定部145)とを備え、前記パラメータ選択部は、前記バッテリ残量が所定量を下回る場合、前記消費電力を下げるように前記通信パラメータを選択することを要旨とする。
【0010】
このような移動通信端末によれば、パラメータ選択部は、バッテリ残量が所定量を下回る場合、消費電力を下げるように前記通信パラメータを選択する。したがって、受信品質の低下を防止しつつ、バッテリ残量が少ない場合に動作可能時間を延長させることが可能な移動通信端末が提供される。
【0011】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記パラメータ選択部は、前記バッテリ残量が所定量を上回る場合、前記受信品質を上げるように前記通信パラメータを選択することを要旨とする。
【0012】
このような移動通信端末によれば、バッテリ残量が多い場合には、受信品質を上げるように通信パラメータが選択されるため、受信品質の低下が防止される。
【0013】
本発明の第3の特徴は、本発明の第2の特徴に係り、前記送受信部が前記無線基地局から受信する前記無線信号の前記受信品質を測定する受信品質測定部(受信品質測定部143)をさらに備え、前記パラメータ選択部は、前記速度情報及び前記バッテリ残量に加えて、前記受信品質測定部によって測定された前記受信品質に基づいて、前記通信パラメータを選択することを要旨とする。
【0014】
このような移動通信端末によれば、速度情報及びバッテリ残量だけでなく、受信品質をも考慮して通信パラメータを選択可能となる。
【0015】
本発明の第4の特徴は、本発明の第3の特徴に係り、前記パラメータ選択部は、前記受信品質に基づいて、前記移動通信端末が前記無線基地局からの電波到達範囲外に位置する状態である圏外状態を検出し、前記速度情報に基づいて、前記移動通信端末が移動していない状態である停止状態を検出し、前記圏外状態が検出され、かつ前記停止状態が検出された場合には、前記バッテリ残量が前記所定量を上回っていても、前記消費電力を下げるように前記通信パラメータを選択することを要旨とする。
【0016】
このような移動通信端末によれば、パラメータ選択部は、圏外状態が検出され、かつ停止状態が検出された場合には、バッテリ残量が所定量を上回っていても、消費電力を下げるように通信パラメータを選択する。これにより、消費電力が無駄に消費されることが防止され、動作可能時間をより延長させることができる。
【0017】
本発明の第5の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記パラメータ選択部によって選択された前記通信パラメータをユーザに通知する通知部(表示部150)と、前記パラメータ選択部によって選択された前記通信パラメータを変更するユーザ操作を受付ける操作受付け部(入力部160)とをさらに備え、前記パラメータ設定部は、前記操作受付け部が前記ユーザ操作を受付けた場合に、前記ユーザ操作に従って前記通信パラメータを設定することを要旨とする。
【0018】
このような移動通信端末によれば、ユーザ操作に従って通信パラメータが設定可能となり、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0019】
本発明の第6の特徴は、本発明の第1〜5のいずれかの特徴に係り、前記送受信部は、複数の前記無線基地局の中から前記受信品質の最も高い無線基地局を探索する動作である基地局サーチを実行し、前記送受信部は、前記受信品質を上げるように前記通信パラメータが選択される場合、前記基地局サーチを実行する頻度を増加させ、前記消費電力を下げるように前記通信パラメータが選択される場合、前記基地局サーチを実行する頻度を減少させることを要旨とする。
【0020】
このような移動通信端末によれば、受信品質の低下を防止しつつ、バッテリ残量が少ない場合に動作可能時間を延長させることができる。
【0021】
本発明の第7の特徴は、無線信号を無線基地局と送受信する送受信部と、少なくとも前記送受信部に供給される電力を蓄えるバッテリとを有する移動通信端末を制御する制御方法であって、前記移動通信端末の移動速度を示す速度情報を取得するステップと、前記バッテリに蓄えられている電力の残量であるバッテリ残量を検出するステップと、前記取得するステップによって取得された前記速度情報と、前記検出するステップによって検出された前記バッテリ残量とに基づき、前記無線信号の受信品質と前記送受信部の消費電力とに影響を与える少なくとも1つの通信パラメータを選択するステップと、前記選択するステップによって選択された前記通信パラメータを前記送受信部に設定するステップとを備え、前記選択するステップでは、前記バッテリ残量が所定量を下回る場合、前記消費電力を下げるように前記通信パラメータが選択されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の特徴によれば、受信品質の低下を防止しつつ、バッテリ残量が少ない場合に動作可能時間を延長させることが可能な移動通信端末及びその制御方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態における図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0024】
(1)移動通信システムの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る移動体通信システム10の全体概略構成図である。図1に示すように、移動体通信システム10は、移動通信端末100、無線基地局200A,200Bを含む。
【0025】
移動通信端末100は、移動通信端末100のユーザの移動に伴って移動する。移動通信端末100が電車や自動車などの車両内に位置する場合、移動通信端末100の移動速度は、例えば0km/h〜200km/h程度となる。
【0026】
本実施形態では、移動通信端末100の移動速度が0km/h程度を停止状態、1km/h〜50km/h程度を低速(移動)、51km/h〜200km/h程度を高速(移動)と呼ぶ。
【0027】
移動通信端末100は、基地局サーチを実行し、受信品質の最も高い無線基地局を接続先の無線基地局として選択する。図1の例では、移動通信端末100は、無線基地局200Aに接続して通信している。
【0028】
移動通信端末100は、電源ON持の基地局サーチでは、移動通信端末100に予め記憶されている周波数リストを元に検索を実行する。移動通信端末100は、リスト内の周波数を補足可能であれば、補足した周波数の報知情報から周辺セル周波数を割り出して基地局サーチを実行する。周波数を補足できない場合、つまり圏外時には、リストにある全周波数を検索(以下、適宜「全波サーチ」という)する。全波サーチは、検索すべき周波数(無線チャネル)が多いほど長時間必要となる。
【0029】
なお、移動通信端末100が着信待ち受け中に基地局サーチを実行して接続先を切り替える動作は「セルリセレクション」と呼ばれる。移動通信端末100が通信中に基地局サーチを実行して接続先を切り替える動作は「ハンドオーバ」と呼ばれる。
【0030】
無線基地局200Aは、無線基地局200Aの電波到達範囲であるセルC1を形成する。同様に、無線基地局200Bは、セルC2を形成している。
【0031】
移動通信端末100は、無線基地局200Aから指定される通信パラメータ、及び移動通信端末100に予め設定されている通信パラメータに従って、待ち受け及び通信を実行する。
【0032】
(2)移動通信端末の構成
次に、図2及び図3を用いて、移動通信端末100の構成について説明する。
【0033】
(2.1)移動通信端末の概略ハードウェア構成
まず、移動通信端末100の概略ハードウェア構成について説明する。図2は、移動通信端末100の概略ハードウェア構成を示すブロック図である。
【0034】
図2に示すように、移動通信端末100は、アンテナ110、送受信部120、バッテリ130、制御部140、表示部150、入力部160、マイク170、及びスピーカ180を含む。
【0035】
送受信部120は、アンテナ110を介して、無線信号を無線基地局200Aから受信する。また、送受信部120は、アンテナ110を介して、無線信号を無線基地局200Aに送信する。
【0036】
具体的には、送受信部120は、図示を省略する送信部及び受信部を含む。送信部は、無線信号の周波数を上昇させるアップコンバータ、及び無線信号の増幅に用いられるパワーアンプを含む。受信部は、無線信号の増幅に用いられる低雑音アンプ、及び無線信号の周波数を低下させるダウンコンバータを含む。
【0037】
このように、送受信部120は、主にアナログ回路によって構成されており、移動通信端末100の消費電力の多くを占めるブロックである。すなわち、送受信部120が動作する頻度が多いほど移動通信端末100の消費電力が増えることになる。
【0038】
バッテリ130は、少なくとも送受信部120に供給される電力を蓄える。本実施形態では、バッテリ130は、移動通信端末100全体に電力を供給する。なお、バッテリ130は、充電可能なバッテリ(二次電池)に限らず、充電不可能なバッテリ(一次電池)であっても良い。
【0039】
表示部150は、各種の情報を表示するディスプレイによって構成される。入力部160は、ユーザ操作を受付ける各種のボタンなどによって構成される。マイク170は、ユーザの音声を電気信号に変換する。スピーカ180は、電気信号を音声に変換して出力する。
【0040】
制御部140は、CPU及びメモリなどによって構成される。制御部140は、送受信部120、バッテリ130、表示部150、入力部160、マイク170、及びスピーカ180を制御する。
【0041】
(2.1)移動通信端末の機能ブロック構成
次に、移動通信端末100、具体的には、制御部140の機能ブロック構成について説明する。図3は、制御部140の機能ブロック構成を示すブロック図である。
【0042】
図3に示すように、制御部140は、移動速度情報取得部141、バッテリ残量検出部142、受信品質測定部143、パラメータ選択部144、及びパラメータ設定部145を含む。
【0043】
移動速度情報取得部141は、移動通信端末100の移動速度を示す速度情報を取得する。速度情報の取得方法としては、例えば以下の(a)〜(c)のいずれかの方法が利用できる。
【0044】
(a)レイリーフェージングの変動(フェージングピッチ)から、ドップラー周波数fdを計算し、ドップラー周波数fdにより移動速度を得る方法。この場合、ドップラー周波数fdを速度情報として用いても良い。
【0045】
(b)単位時間当たりのセル移行回数をカウントし、カウント値により移動速度を得る方法。この場合、移動通信端末100にて移動速度を測定する場合に限らず、無線基地局にて移動速度を測定し、速度情報を移動通信端末100に通知してもよい。
【0046】
(c)GPS又は加速度センサなどにより移動速度を測定する周知の方法。
【0047】
バッテリ残量検出部142は、バッテリ130に蓄えられている電力の残量であるバッテリ残量を検出する。
【0048】
受信品質測定部143は、送受信部120が無線基地局から受信する無線信号の受信品質を測定する。受信品質測定部143が測定する受信品質としては、例えば、信号対雑音比(SNR)、受信電界強度(RSSI)、又はブロック誤り率(BLER)が利用できる。
【0049】
パラメータ選択部144は、移動速度情報取得部141によって取得された速度情報と、バッテリ残量検出部142によって検出されたバッテリ残量とに基づき、受信品質と送受信部120の消費電力とに影響を与える少なくとも1つの通信パラメータを選択する。なお、通信パラメータの具体例については後述する。
【0050】
本実施形態では、パラメータ選択部144は、速度情報及びバッテリ残量に加え、受信品質測定部143によって測定された受信品質に基づいて通信パラメータを選択する。
【0051】
パラメータ設定部145は、パラメータ選択部144によって選択された通信パラメータを送受信部120に設定する。
【0052】
(3)通信パラメータの具体例
次に、通信パラメータの具体例について説明する。図4は、通信パラメータの具体例を説明するための図である。
【0053】
図4に示すように、通信パラメータは、DRX周期、未知基地局サーチ間隔、S−intra、Hysteresis、Time To Triger、Reporting Range、及び全波サーチ間隔を含む。
【0054】
DRX周期は、移動通信端末100が通信中に、既知の無線基地局を探索する周期を規定する通信パラメータである。DRX周期は、無線基地局から移動通信端末100に通知され、移動通信端末100に初期設定される。
【0055】
未知基地局サーチ間隔は、移動通信端末100が通信中に、未知の無線基地局を探索する間隔を規定する通信パラメータである。未知基地局サーチ間隔は、移動通信端末100に予め設定されている。
【0056】
S−intraは、移動通信端末100が通信中に、未知の無線基地局を探索するトリガとなる通信パラメータである。具体的には、受信品質がS−intraを下回ると、移動通信端末100において未知の無線基地局が探索される。S−intraは、無線基地局から移動通信端末100に通知され、移動通信端末100に初期設定される。
【0057】
Hysteresis、Time To Triger、及びReporting Rangeは、移動通信端末100が待ち受け中に、無線基地局を探索した結果からより良好なセルに移行するトリガとなる通信パラメータである。新たに選択された無線基地局は、移動通信端末100の待ち受け先の無線基地局として選択される。Hysteresis、Time To Triger、及びReporting Rangeは、無線基地局から移動通信端末100に通知され、移動通信端末100に初期設定される。
【0058】
全波サーチ間隔は、移動通信端末100が圏外状態である場合に、受信可能な電波(周波数)を探索する全波サーチ間隔を規定する通信パラメータである。全波サーチ間隔は、無線基地局から移動通信端末100に通知され、移動通信端末100に初期設定される。
【0059】
これらの通信パラメータの値は、パラメータ選択部144によって選択(更新)される。また、パラメータ選択部144によって選択された通信パラメータの値は、パラメータ設定部145によって送受信部120に設定される。
【0060】
本実施形態では、受信品質の向上を優先するか、消費電力の削減を優先するかに応じて、通信パラメータの値が異なっている。
【0061】
例えば、DRX周期は、受信品質の向上を優先する場合には小さい値(短い周期)に設定される。これにより、受信品質の向上に寄与するが、消費電力は増える。一方、消費電力の削減を優先する場合、DRX周期は、大きい値(長い周期)に設定される。これにより、消費電力が削減されるが、受信品質の劣化に繋がる。
【0062】
(4)移動通信端末の動作
次に、図5及び図6を用いて、移動通信端末100の動作について説明する。
【0063】
(4.1)移動通信端末の概略動作
まず、移動通信端末100の概略動作、具体的には、パラメータ選択部144の動作について説明する。図5は、パラメータ選択部144の概略動作を説明するための図である。
【0064】
図5に示すように、パラメータ選択部144は、移動通信端末100の移動速度に応じて通信パラメータを選択する。具体的には、パラメータ選択部144は、移動通信端末100の移動速度が高速である場合、移動速度の変化に伴って通信パラメータの値を更新する。一方、移動通信端末100の移動速度が低速又は停止状態である場合、パラメータ選択部144は、通信パラメータの値を固定値に維持する。
【0065】
また、パラメータ選択部144は、バッテリ残量が所定量を下回る場合、つまりバッテリ残量が少ない場合、消費電力の削減を優先して通信パラメータを選択する。ここで、所定量としては、バッテリ残量の最大量の1/3程度とすることができる。一方、バッテリ残量が所定量を上回る場合には、受信品質の向上を優先して通信パラメータが選択される。
【0066】
さらに、パラメータ選択部144は、受信品質に基づいて、移動通信端末100が無線基地局からの電波到達範囲(すなわち、セル)外に位置する状態である圏外状態を検出する。例えば、受信品質を示す値を閾値と比較することで圏外状態を検出できる。パラメータ選択部144は、速度情報に基づいて、移動通信端末100の停止状態を検出する。そして、パラメータ選択部144は、圏外状態が検出され、かつ停止状態が検出された場合には、バッテリ残量が前記所定量を上回っていても、消費電力の削減を優先して通信パラメータを選択する。
【0067】
(4.2)移動通信端末の詳細動作例
次に、移動通信端末100の詳細動作例について説明する。図6は、移動通信端末100の詳細動作例を示すフローチャートである。
【0068】
ステップS101において、パラメータ設定部145は、通信パラメータの初期値(初期設定値)を送受信部120に設定する。
【0069】
ステップS102において、受信品質測定部143は、受信品質を測定する。
【0070】
ステップS103において、パラメータ選択部144は、受信品質測定部143によって測定された受信品質に基づいて、圏外状態が検出されたか否かを判定する。圏外状態が検出された場合、ステップS104に処理が進む。一方、圏外状態が検出されない場合、ステップS106に処理が進む。
【0071】
ステップS104において、移動速度情報取得部141は、速度情報を取得する。
【0072】
ステップS105において、パラメータ選択部144は、移動速度情報取得部141によって取得された速度情報に基づいて、停止状態が検出されたか否かを判定する。停止状態が検出された場合、ステップS108に処理が進む。一方、停止状態が検出されない場合、ステップS101に処理が戻る。
【0073】
ステップS106においては、バッテリ残量検出部142は、バッテリ残量を検出する。
【0074】
ステップS107において、パラメータ選択部144は、バッテリ残量検出部142によって検出されたバッテリ残量に基づいて、バッテリ残量が少ないか否かを判定する。バッテリ残量が少ないと判定された場合、ステップS108に処理が進む。一方、バッテリ残量が少なくない、つまり多いと判定された場合、ステップS109に処理が進む。
【0075】
ステップS108において、パラメータ選択部144は、消費電力の削減を優先して通信パラメータを選択する。選択された通信パラメータは、パラメータ設定部145によって送受信部120に設定される。
【0076】
ステップS109において、移動速度情報取得部141は、速度情報を取得する。
【0077】
ステップS110において、パラメータ選択部144は、移動速度情報取得部141によって取得された速度情報に基づいて、移動通信端末100の移動速度が高速であるか否かを判定する。移動通信端末100の移動速度が高速であると判定された場合、ステップS111に処理が進む。一方、移動通信端末100の移動速度が高速でない(つまり、低速)であると判定された場合、ステップS112に処理が進む。
【0078】
ステップS111において、パラメータ選択部144は、受信品質の向上を優先して通信パラメータを選択する。具体的には、移動通信端末100の移動速度に対応する通信パラメータの値を選択する。すなわち、ステップS111では、通信パラメータの値は移動速度に応じた可変値となる。選択された通信パラメータは、パラメータ設定部145によって送受信部120に設定される。
【0079】
ステップS112において、パラメータ選択部144は、受信品質の向上を優先して通信パラメータを選択する。具体的には、通信パラメータの値として予め定められた値を選択する。すなわち、ステップS112では、通信パラメータの値は固定値となる。ここで、予め定められた値としては、初期設定値を使用しても良い。初期設定値は、ネットワーク側でチューニングされた値を含む。このため、低速移動時には、初期設定値に従って通信パラメータを選択することで受信品質を有る程度良好に保つことができる。選択された通信パラメータは、パラメータ設定部145によって送受信部120に設定される。
【0080】
(5)作用・効果
パラメータ選択部144は、バッテリ残量が少ない場合に、消費電力を下げるように通信パラメータを選択する。本実施形態では、パラメータ選択部144は、バッテリ残量が少ない場合に、基地局サーチの実行頻度を減少させるように通信パラメータを選択する。
【0081】
また、パラメータ選択部144は、バッテリ残量が多い場合に、受信品質を上げるように通信パラメータを選択する。本実施形態では、パラメータ選択部144は、バッテリ残量が多い場合に、基地局サーチの実行頻度を増加させるように通信パラメータを選択する。
【0082】
したがって、バッテリ残量が少ない場合には、移動通信端末100の動作可能時間を延長させることが可能となる。また、バッテリ残量が多い場合には、受信品質の低下を防止可能となる。
【0083】
本実施形態では、パラメータ選択部144は、バッテリ残量が多く、かつ移動通信端末100の移動速度が高速である場合に、移動通信端末100の移動速度が上昇するに従って基地局サーチの実行頻度を増加させる。したがって、移動通信端末100の移動速度が高速であっても、受信品質の低下を防止可能となる。
【0084】
本実施形態では、パラメータ選択部144は、圏外状態が検出され、かつ停止状態が検出された場合には、バッテリ残量が所定量を上回っていても、消費電力を下げるように通信パラメータを選択する。具体的には、パラメータ選択部144は、圏外状態が検出され、かつ停止状態が検出された場合には、バッテリ残量が所定量を上回っていても、基地局サーチの実行頻度を減少させるように通信パラメータを選択する。
【0085】
すなわち、移動通信端末100が圏外状態であり、かつ停止状態である場合には、受信品質の改善が見込めないため、基地局サーチ(全波サーチ)の実行頻度を減少させることによって、消費電力が無駄に消費されることが防止される。既存の方法では圏外時に一定周期で全波サーチが実行されるが、本実施形態では、全波サーチの頻度を低減して消費電力を削減可能となる。このため、移動通信端末100の動作可能時間をより延長させることができる。
【0086】
(6)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0087】
例えば、表示部150が、パラメータ選択部144によって選択された通信パラメータを表示し、入力部160が、パラメータ選択部144によって選択された通信パラメータを変更するユーザ操作を受付けてもよい。この場合、表示部150は、パラメータ選択部144によって選択された通信パラメータをユーザに通知する通知部を構成する。なお、表示による通知に限らず、音声による通知であってもよい。入力部160は、通信パラメータを変更するユーザ操作を受付ける操作受付け部を構成する。
【0088】
これにより、ユーザ操作に従って通信パラメータが設定可能となり、ユーザの利便性を向上させることができる。あるいは、図7に示すように、通信パラメータの選択を全てユーザ操作により実行してもよい。図7の例では、表示部150上に、バッテリ残量を示す情報と、通信パラメータの設定の候補を示す情報(ここでは、初期設定、消費電力優先、受信品質優先)が表示されている。
【0089】
上述した実施形態では、パラメータ選択部144が、速度情報及びバッテリ残量だけでなく受信品質をも考慮して通信パラメータを選択していたが、速度情報及びバッテリ残量のみに基づいて通信パラメータを選択してもよい。あるいは、移動通信端末100の移動速度と受信品質とは相関関係を有するため、受信品質を速度情報として用いる構成も採用可能である。
【0090】
上述した実施形態では、圏外状態が検出され、かつ停止状態が検出された場合には、バッテリ残量が所定量を上回っていても、消費電力を下げるように通信パラメータが選択されていた。しかしながら、バッテリ残量が所定量を上回っている場合には、常に受信品質の向上を優先して通信パラメータが選択されてもよい。
【0091】
上述した実施形態では、図4に示した各通信パラメータの値を選択及び更新する構成について説明したが、図4に示した各通信パラメータに限らず、受信品質及び消費電力に影響を与える通信パラメータであれば、図4に示した各通信パラメータ以外の通信パラメータを選択及び更新しても良い。
【0092】
上述した実施形態では、移動通信端末100の移動状態を停止、低速、高速の3つに分けていたが、停止と移動の2つに分けてもよい。この場合、図6に示したフローチャートでは、ステップS110において移動しているか否かについて判定し、移動していると判定した場合にステップS111に処理を進める方法としても良い。
【0093】
また、移動通信端末100の移動速度が51km/h〜200km/h程度を高速(移動)としていた。しかしながら、移動通信端末100の移動速度が100km/h以上(新幹線や高速道路での移動を想定)を高速としてもよい。
【0094】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施形態に係る移動体通信システムの全体概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る移動通信端末の概略ハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る移動通信端末の制御部の機能ブロック構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る通信パラメータの具体例を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態に係るパラメータ選択部の概略動作を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態に係る移動通信端末の詳細動作例を示すフローチャートである。
【図7】その他の実施形態に係るパラメータ選択方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0096】
移動体通信システム10、移動通信端末100、無線基地局200A,200B、アンテナ110、送受信部120、バッテリ130、制御部140、移動速度情報取得部141、バッテリ残量検出部142、受信品質測定部143、パラメータ選択部144、パラメータ設定部145、表示部150、入力部160、マイク170、スピーカ180

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を無線基地局と送受信する送受信部と、
少なくとも前記送受信部に供給される電力を蓄えるバッテリと
を有する移動通信端末であって、
前記移動通信端末の移動速度を示す速度情報を取得する速度情報取得部と、
前記バッテリに蓄えられている電力の残量であるバッテリ残量を検出するバッテリ残量検出部と、
前記速度情報取得部によって取得された前記速度情報と、前記バッテリ残量検出部によって検出された前記バッテリ残量とに基づき、前記無線信号の受信品質と前記送受信部の消費電力とに影響を与える少なくとも1つの通信パラメータを選択するパラメータ選択部と、
前記パラメータ選択部によって選択された前記通信パラメータを前記送受信部に設定するパラメータ設定部と
を備え、
前記パラメータ選択部は、前記バッテリ残量が所定量を下回る場合、前記消費電力を下げるように前記通信パラメータを選択することを特徴とする移動通信端末。
【請求項2】
前記パラメータ選択部は、前記バッテリ残量が所定量を上回る場合、前記受信品質を上げるように前記通信パラメータを選択することを特徴とする請求項1に記載の移動通信端末。
【請求項3】
前記送受信部が前記無線基地局から受信する前記無線信号の前記受信品質を測定する受信品質測定部をさらに備え、
前記パラメータ選択部は、前記速度情報及び前記バッテリ残量に加えて、前記受信品質測定部によって測定された前記受信品質に基づいて、前記通信パラメータを選択することを特徴とする請求項2に記載の移動通信端末。
【請求項4】
前記パラメータ選択部は、
前記受信品質に基づいて、前記移動通信端末が前記無線基地局からの電波到達範囲外に位置する状態である圏外状態を検出し、
前記速度情報に基づいて、前記移動通信端末が移動していない状態である停止状態を検出し、
前記圏外状態が検出され、かつ前記停止状態が検出された場合には、前記バッテリ残量が前記所定量を上回っていても、前記消費電力を下げるように前記通信パラメータを選択することを特徴とする請求項3に記載の移動通信端末。
【請求項5】
前記パラメータ選択部によって選択された前記通信パラメータをユーザに通知する通知部と、
前記パラメータ選択部によって選択された前記通信パラメータを変更するユーザ操作を受付ける操作受付け部と
をさらに備え、
前記パラメータ設定部は、前記操作受付け部が前記ユーザ操作を受付けた場合に、前記ユーザ操作に従って前記通信パラメータを設定することを特徴とする請求項1に記載の移動通信端末。
【請求項6】
前記送受信部は、複数の前記無線基地局の中から前記受信品質の最も高い無線基地局を探索する動作である基地局サーチを実行し、
前記送受信部は、
前記受信品質を上げるように前記通信パラメータが選択される場合、前記基地局サーチを実行する頻度を増加させ、
前記消費電力を下げるように前記通信パラメータが選択される場合、前記基地局サーチを実行する頻度を減少させる
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の移動通信端末。
【請求項7】
無線信号を無線基地局と送受信する送受信部と、
少なくとも前記送受信部に供給される電力を蓄えるバッテリと
を有する移動通信端末を制御する制御方法であって、
前記移動通信端末の移動速度を示す速度情報を取得するステップと、
前記バッテリに蓄えられている電力の残量であるバッテリ残量を検出するステップと、
前記取得するステップによって取得された前記速度情報と、前記検出するステップによって検出された前記バッテリ残量とに基づき、前記無線信号の受信品質と前記送受信部の消費電力とに影響を与える少なくとも1つの通信パラメータを選択するステップと、
前記選択するステップによって選択された前記通信パラメータを前記送受信部に設定するステップと
を備え、
前記選択するステップでは、前記バッテリ残量が所定量を下回る場合、前記消費電力を下げるように前記通信パラメータが選択されることを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−170981(P2009−170981A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3744(P2008−3744)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】