説明

積層フィルム及びその製造方法並びに電子デバイス及びその製造方法

【課題】支持体によって支持した樹脂フィルムに機能素子を高い精度で形成し易く、かつ、機能素子を形成した後、支持体から剥離し易い樹脂フィルム及びその製造方法並びに電子デバイス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】積層フィルム100は、両面の表面粗さが異なる第1の樹脂フィルム10と、両面の表面粗さが異なる第2の樹脂フィルム20と、を含み、第1の樹脂フィルムの表面粗さが大きい側の面と第2の樹脂フィルムの表面粗さが大きい側の面とが貼り合わされている。第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとの間に無機層として、例えば金属層が挟まれていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム及びその製造方法並びに電子デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機電界発光表示装置、液晶表示装置、X線撮像装置等の電子デバイスを製造する場合、支持基板上に電極や機能層等の機能素子を順次形成して製造される。支持基板としては、耐熱性、平坦性、光透過性、絶縁性、ガスバリア性などの観点から、一般的にガラス基板が使用されている。しかし、ガラス基板は耐衝撃性や可撓性が乏しく割れやすい。また、ガラス基板は樹脂フィルムに比べて重いため、装置の軽量化には不利である。
【0003】
一方、樹脂フィルムは、可撓性、軽量化の点でガラス基板よりも有利である。
電子機器の製造に用いる樹脂フィルムとして、例えば、ポリイミドフィルム、銅等の機能性膜、粘着層及び補強用フィルムを積層させた積層フィルムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−154293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、支持体によって支持した樹脂フィルムに機能素子を高い精度で形成し易く、かつ、機能素子を形成した後、支持体から剥離し易い樹脂フィルム及びその製造方法並びに電子デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、以下の本発明が提供される。
<1> 両面の表面粗さが異なる第1の樹脂フィルムと、両面の表面粗さが異なる第2の樹脂フィルムと、を含み、前記第1の樹脂フィルムの表面粗さが大きい側の面と前記第2の樹脂フィルムの表面粗さが大きい側の面とが貼り合わされている積層フィルム。
<2> 前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとが、それぞれの面内方向における伸縮度の最も大きい方向が互いに異なるように貼り合わされている<1>に記載の積層フィルム。
<3> 前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとの間に無機層が挟まれている<1>又は<2>に記載の積層フィルム。
<4> 前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとの間に無機層と有機層との積層膜が挟まれていることを特徴とする<1>又は<2>に記載の積層フィルム。
<5> 前記無機層が金属層である<3>又は<4>に記載の積層フィルム。
<6> 両面の表面粗さが異なる第1の樹脂フィルムが巻かれた第1のロールと、両面の表面粗さが異なる第2の樹脂フィルムが巻かれた第2のロールから、前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムをそれぞれ巻き出す工程と、前記第1のロールから巻き出された第1の樹脂フィルムの表面粗さが大きい側の面と、前記第2のロールから巻き出された前記第2の樹脂フィルムの表面粗さが大きい側の面とを貼り合わせる工程と、を含む積層フィルムの製造方法。
<7> 前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとを貼り合せる工程において、前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムを、それぞれの面内方向における伸縮度の最も大きい方向が互いに異なるように貼り合わせる<6>に記載の積層フィルムの製造方法。
<8> 前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとを貼り合せる工程において、前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとの間に無機層を挟んで前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムを貼り合せる<6>又は<7>に記載の積層フィルムの製造方法。
<9> 前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとの間に前記無機層として金属層を挟み込む<8>に記載の積層フィルムの製造方法。
<10> 支持体に剥離可能に貼り付けた<1>〜<5>のいずれか一項に記載の積層フィルムを準備する工程と、
前記支持体により支持された前記積層フィルム上に機能素子を形成する工程と、
前記機能素子を形成した後、前記積層フィルムを前記支持体から剥離する工程と、を含む電子デバイスの製造方法。
<11> 前記積層フィルムとして<5>に記載の積層フィルムを用い、前記機能素子を形成する工程において、前記積層フィルムの金属層を接地させて前記機能素子を形成する<10>に記載の電子デバイスの製造方法。
<12> <1>〜<5>のいずれかに記載の積層フィルムと、前記積層フィルム上に形成された機能素子と、を含む電子デバイス。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、支持体によって支持した樹脂フィルムに機能素子を高い精度で形成し易く、かつ、機能素子を形成した後、支持体から剥離し易い樹脂フィルム及びその製造方法並びに電子デバイス及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る積層フィルムの構成の一例を示す概略図である。
【図2】第1の実施形態に係る積層フィルムの断面を示す概略図である。
【図3】第1の実施形態に係る積層フィルムの製造方法の一例を示す概略図である。
【図4】第2の実施形態に係る積層フィルムの断面を示す概略図である。
【図5】第3の実施形態に係る積層フィルムの断面を示す概略図である。
【図6】第3の実施形態に係る積層フィルムの製造方法の一例を示す概略図である。
【図7】本発明に係る積層フィルムを用いて電子デバイスを製造する工程の一例を示す概略図である。
【図8】樹脂フィルム上に機能素子を形成する際に樹脂フィルムを支持体で支持した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明について具体的に説明する。
樹脂フィルム上に薄膜トランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス素子等の機能素子を形成場合、樹脂フィルムは可撓性を有するため、ガラス基板等の支持体により支持し、樹脂フィルム上に機能素子を形成した後、支持体から剥離する必要がある。
【0010】
樹脂フィルム(適宜「フィルム」と記す。)を製造する場合、例えば、押出ダイから有機材料の溶融膜状物を押出して冷却した後、縦横の方向に所定の倍率で延伸(二軸延伸)を行って所定の厚みを有する樹脂フィルムに成形する。そして、延伸後の樹脂フィルムを巻き取ってロール状として保管、運搬等が行われる。
このように樹脂フィルムをロール状に巻き取る場合、重なったフィルム同士が密着して擦れ等によるキズの発生を防ぐため、片面に高さが約1μm程度の凹凸を形成して易接着面とし、フィルム同士が直接密着し合うのを避ける方法がある。
【0011】
このような樹脂フィルムを用いて機能素子を形成する場合、ロールから巻き出して所定の長さに切断した樹脂フィルムをガラス等の支持基板に接着層を介して剥離可能に接着(適宜「仮着」と記す。)する。そして、支持基板に仮着されたフィルム上に、成膜、パターニングなどの表面処理をした後、支持基板から剥離するが、フィルムと支持基板との密着力が強くなり過ぎて剥離し難い場合がある。
【0012】
樹脂フィルムの表面粗さが大きい側(凹凸層が形成されている側)の面を支持基板に貼り付けると、反対側の平坦な面を貼り付ける場合よりも強く密着し、機能素子を形成した後、支持基板から剥離し難く、剥離に時間がかかって生産性の低下を招いたり、機能素子にダメージを与えるおそれがある。一方、図8に示すように、樹脂フィルム112の平坦な面を支持基板110に貼り付ければ、後に剥離し易いという利点があるが、成膜等を行う側の面に凹凸114があるため、例えば最初に平坦化のための厚い膜を形成するなどの処理が必要となる。
【0013】
そこで、本発明者は、表面粗さが大きい側の面同士を貼り合わせた積層フィルムとすれば、平坦化のための厚い膜を形成する必要がなく、素子を形成した後は支持基板から剥離することが容易となることを見出した。
【0014】
図1は本発明に係る実施形態の一例を概略的に示している。本実施形態に係る積層フィルム100は、両面の表面粗さが異なる第1の樹脂フィルム10と、両面の表面粗さが異なる第2の樹脂フィルム20と、を含み、前記第1の樹脂フィルム10の表面粗さが大きい側の面と前記第2の樹脂フィルム20の表面粗さが大きい側の面とが貼り合わされて構成されている。第1の樹脂フィルム10と第2の樹脂フィルム20との間には接着層30が設けられ、樹脂フィルム同士が剥離しないように接着されている。
このような構成の樹脂フィルムであれば、樹脂フィルムの表面に厚い平坦化膜を形成する必要はなく、支持体によって支持した状態で機能素子を高い精度で形成し易く、かつ、機能素子を形成した後、支持体から剥離し易い。
【0015】
<第1の実施形態>
図2は、第1の実施形態に係る積層フィルムの断面を概略的に示している。第1の樹脂フィルム10と第2の樹脂フィルム20はそれぞれ両面の表面粗さが異なり、第1の樹脂フィルム10の表面粗さが大きい側の面(凹凸11が形成されている面)と第2の樹脂フィルム20の表面粗さが大きい側の面(凹凸21が形成されている面)とが接着層30を介して貼り合わされている。なお、このような凹凸が形成されている面は易接着面とも呼ばれ、易接着層として凹凸を有する層を設ける場合もある。
【0016】
なお、各樹脂フィルム10,20の両面における表面粗さは、易接着層がある場合は光学顕微鏡で覗けば多くの突起物が観測され、表面粗さ計等で評価すると1μm近い突起があり、AFM(原子間力顕微鏡)等で微小領域を評価するとRaで1nm程度が測定される。例えば、積層フィルム100上に有機エレクトロルミネッセンス素子等の機能素子を形成した電子デバイスを製造する場合、一方の面をガラス基板等の支持体に仮着し、他方の面に機能素子を形成した後、支持体から剥離することになる。これらの観点から、積層フィルム100の両面となる各樹脂フィルム10,20の面(貼り合わせ面とは反対側の面)の表面粗さは、ある程度小さいことが好ましく、例えば、AFMで評価した場合Raで0.5nm以下が望ましい。
【0017】
第1の樹脂フィルム10と第2の樹脂フィルム20としては、それぞれ両面の表面粗さが異なるもの、または片面に易接着層を形成して両面の表面粗さが異なるものを用いる。樹脂フィルムを構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料、またはSi微粒子を含んだようなハイブリット材料が挙げられる。
【0018】
第1の樹脂フィルム10と第2の樹脂フィルム20は種類が異なるフィルムでもよいが、熱膨張率や伸縮倍率が異なると積層フィルム100に反りや剥離が生じる可能性もあるため、同種の樹脂フィルムを用いることが好ましい。
また、第1の樹脂フィルム10と第2の樹脂フィルム20のそれぞれの厚みは特に限定されず、同じ厚みである必要はないが、厚みが薄過ぎると貼り合せる際に伸びや破れが生じたり、積層フィルム100の強度が不十分となるおそれがある。一方、樹脂フィルム10,20が厚過ぎると可撓性が乏しくなり、積層フィルム100を用いた電子デバイスの可撓性が不十分となるおそれがある。このような観点かから、各樹脂フィルム10,20の厚みはそれぞれ、5μm以上200μm以下とすることが好ましく、積層フィルム100全体の厚みは10μm以上500μm以下とすることが好ましい。
【0019】
本実施形態に係る積層フィルム100を製造する方法は特に限定されないが、例えば、図3に示すような方法を採用することができる。
まず、両面の表面粗さが異なる第1の樹脂フィルム10が巻かれた第1のロール10Aと、両面の表面粗さが異なる第2の樹脂フィルム20が巻かれた第2のロール20Aから、第1の樹脂フィルム10と第2の樹脂フィルム20をそれぞれ巻き出す。次いで、第1のロール10Aから巻き出された第1の樹脂フィルム10の表面粗さが大きい側の面と、第2のロール20Aから巻き出された前記第2の樹脂フィルム20の表面粗さが大きい側の面とを貼り合わせる。例えば、各フィルム10,20の外側の面が内側の面よりも表面粗さが大きい場合、図3に示すように、各ロール10A,20Aから巻き出した樹脂フィルム10,20の外側の面同士を、対向配置された貼り合わせ用の一対のローラ32A,32B間を通して貼り合わせればよい。なお、樹脂フィルム同士を貼り合せる前に少なくとも一方のフィルムの貼り合わせ面には接着剤を付与する。
【0020】
接着剤としては、樹脂フィルム10,20同士を強固に貼り付け、デバイスの製造工程で使用される溶剤や水に不溶性のものが好ましい。具体的には、塗布型のエボキシ系接着が挙げられる。
接着剤を付与する方法としては、特に限定されず、例えば、スプレーコート法、キャステング法、ダイコート法、グラビアコート法、ロールコート法、カーテンコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、インクジェット法、ブレードコート法、スクリーンコート法、印刷法、転写法等を用いることができる。
【0021】
接着層30の厚みは、薄過ぎると接着力が不十分となり、厚過ぎると厚みムラが生じたり、積層フィルム100全体の可撓性が低下するおそれがある。これらの観点から、接着層30の厚みは、例えば、1μm以上3μm以下である。
【0022】
上記のような方法によれば、本実施形態に係る積層フィルム100を連続的に製造することができる。樹脂フィルム同士を貼り合わせた積層フィルム100は所定の長さに順次切断すればよい。
なお、酸素や水分の透過を抑制するため、積層フィルム100の少なくとも片面に、無機層としてSiO、SiN、SiON等の無機層を形成してもよい。
【0023】
上記方法では、各樹脂フィルム10,20を巻き出した方向(長手方向)を合せて貼り合せるが、各樹脂フィルム10,20の方向が異なるように貼り合わせてもよい。
溶融押出し法等において樹脂膜状物を縦横に延伸して製造した樹脂フィルムであっても、通常、縦横方向で伸縮倍率が異なる。樹脂フィルム上に機能素子を形成する際、成膜やエッチングによるパターニングを行うと、樹脂フィルム自体が加熱されたり、溶剤に触れる場合がある。樹脂フィルムは熱や溶剤に曝されると面内方向で収縮あるいは膨張し、特に縦横における伸縮倍率の差が大きいと、いわゆるアライメント精度の低下を招き易い。
【0024】
そこで、第1の樹脂フィルム10と第2の樹脂フィルム20とを、それぞれの面内方向における伸縮度の最も大きい方向が互いに異なるように貼り合わせれば、積層フィルム100全体での縦横の伸縮の差が抑制され、アライメント精度の向上を図ることができる。特に、各樹脂フィルム10,20の面内方向における伸縮度の最も大きい方向が直交するように貼り合わせれば、積層フィルム100としたときの縦横の伸縮差が大きく抑制される。この場合、例えば、第1の樹脂フィルム10の巻き出し方向(縦延伸方向)と第2の樹脂フィルム20の巻き出し方向(縦延伸方向)とが直交するように貼り合わせることが好ましい。
【0025】
<第2の実施形態>
図4は、第2の実施形態に係る積層フィルムの断面を概略的に示している。本実施形態の積層フィルム200では、第1の樹脂フィルム10と第2の樹脂フィルム20との間に無機層12が挟まれている。第1の樹脂フィルム10と第2の樹脂フィルム20との間に無機層12が設けられた積層フィルム200であれば、酸素や水分の透過が抑制され、積層フィルム200上に形成される機能素子を保護し、長寿命化を図ることができる。また、樹脂フィルム間に無機層12が介在していることで熱や溶剤に曝されたときに積層フィルム200の伸縮が抑制され、アライメント精度の向上を図ることができる。
【0026】
無機層12としては、酸素や水分が透過しにくく、樹脂フィルムとの密着性が高い無機材料の膜が選択される。例えば、金属層、SiO、SiN、SiON等の無機層が挙げられる。また、無機層と有機層、たとえばアクリル系有機薄膜層を交互に積層したものでもよい。なお、例えば、本実施形態に係る積層フィルム200を用いていわゆるトップエミッション型の有機EL表示装置を製造する場合は、積層フィルム200側から光を透過させる必要が無いため、無機層12はAl、Mo、Cu、Agなどの遮光性の金属層でもよい。一方、積層フィルム200側から光を透過させるボトムエミッション型の有機EL表示装置を製造する場合は、無機層12は光を透過する材質を選択すればよい。無機層12の厚みにもよるが、例えば、SiO、SiN、SiON等の無機層、または無機層と有機層との積層膜が好ましい。有機層と無機層の積層構造とすることで可撓性が向上する。
【0027】
例えば、第1の樹脂フィルム10と第2の樹脂フィルム20の少なくとも一方の樹脂フィルムの表面粗さが大きい側の面に高周波スパッタリング法などによりSiO、SiN、SiON等の無機層を形成すれば良い。図4に示す積層フィルム200では、第1の樹脂フィルム10の片面に無機層12が形成されている。
無機層12の厚みは、要求されるガスバリア性や光透過性等に応じて決めればよいが、例えば、50nm以上5μm以下である。
なお、本実施形態においても、各樹脂フィルムの面内方向における伸縮度の最も大きい方向が直交するように貼り合せることで、積層フィルム200の伸縮が一層抑制され、アライメント精度を向上させることができる。
【0028】
<第3の実施形態>
図5は、第3の実施形態に係る積層フィルムの断面を概略的に示している。本実施形態の積層フィルム300では、第1の樹脂フィルム10と第2の樹脂フィルム20との間に金属層40が挟まれている。樹脂フィルム間に金属層40が介在していることで、酸素や水分の透過を確実に防ぐことができるとともに、熱や溶剤に曝されたときに積層フィルム300の伸縮がより効果的に抑制され、アライメント精度を一層向上させることができる。
【0029】
金属層40は無機層として機能するほか、アースとして機能させることもできる。一般的に樹脂フィルムは静電気を帯び易く、樹脂フィルム上に電極端子等の機能素子を形成する際、樹脂フィルムに帯電した静電気によって絶縁膜の絶縁破壊、機能素子の特性変化がおこるおそれがある。しかし、本実施形態に係る積層フィルム300は樹脂フィルム10,20間に金属層40を有するため、機能素子を形成する工程において金属層40を接地させて機能素子を形成することで静電気による絶縁層の絶縁破壊、機能素子の特性変化を抑制することができる。例えば、端子を圧着する工程、切断する工程において上部の電極と金属層40を同電位に配置することで静電気による不安定要因が低減される。
【0030】
金属層40の厚みは、材質、要求されるガスバリア性等に応じて決めればよいが、金属層40が薄過ぎると、樹脂フィルムと貼り合せる際に破損したり、デバイスを製造する際にアースを取り難くなるおそれがある。一方、金属層40が厚過ぎると積層フィルム300の可撓性が低下したり、重量の増加を招くおそれがある。これらの観点から、金属層40の厚さは、例えば0.05μm以上5μm以下である。なお、無機層と有機層の積層膜とする場合は、それぞれの厚みが0.05〜5μm以下の膜を積層すればよい。
【0031】
本実施形態に係る積層フィルム300は、例えば、図6に示すような方法により製造することができる。第1の樹脂フィルム10が巻かれた第1のロール10Aと、第2の樹脂フィルム20が巻かれた第2のロール20Aと、金属層となる金属フィルム40が巻かれた金属フィルムロール40Aをそれぞれ用意する。そして、第1の樹脂フィルム10と第2の樹脂フィルム20を巻き出すとともに、巻き出された2枚の樹脂フィルム10,20の間に金属フィルム40が配置されるように巻き出し、これらの3枚のフィルム10,40,20を重ねて貼り合せる。なお、これらのフィルム10,40,20が接触する前に、第1の樹脂フィルム10と金属フィルム40との間、及び、第2の樹脂フィルム20と金属フィルム40との間には、それぞれ接着剤を付与する。接着剤の種類、接着剤を付与する方法、接着層の厚み等は第1の実施形態に係る積層フィルム100の製造方法で挙げたものを採用することができる。
【0032】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本発明に係る積層フィルムを用いた電子デバイスの製造方法について説明する。 本発明に係る積層フィルムを用いた電子デバイスの製造方法は、支持体に剥離可能に貼り付けた前記実施形態の積層フィルムを準備する工程と、
前記基板の前記積層フィルム上に機能素子を形成する工程と、
前記機能素子を形成した後、前記積層フィルムを前記支持体から剥離する工程と、を含む。
図7は、本発明に係る積層フィルム上に薄膜トランジスタ(TFT)及び蓄積容量を形成する工程の一例を示している。なお、機能素子としてはTFT及び蓄積容量に限定されず、製造すべき電子デバイスに応じて選択すればよい。
【0033】
まず、支持体110に剥離可能に貼り付けた積層フィルム100を準備する(図7(A))。
支持体110は、可撓性を有する積層フィルム100上に機能素子を形成する際に積層フィルム100を平坦に支持するための基板である。支持体となる支持基板110は、積層フィルム100よりも変形し難く、平坦度が高いもの、例えば、ガラス基板、セラミックス基板、シリコン基板等を用いることができる。特に、ガラス基板は安価であるため、支持基板として好適である。
積層フィルム100を支持基板110に剥離可能に貼り付ける手段としては、接着剤、両面粘着シート等が挙げられる。接着剤としては、例えばアクリル系粘着剤が挙げられ、積層フィルム100又は支持基板110の片面に接着剤を付与し、この接着剤を介して互いに貼り付ければよい。
【0034】
次に、支持体110により支持された積層フィルム100上に機能素子120を形成する(図7(B))。
【0035】
‐ゲート電極及び蓄積容量の下部電極‐
図7(B)に示すように、積層フィルム100の片面にMo等からなる導電層をスパッタリング法によって形成した後、フォトリソグラフィ法及びエッチングによってTFTのゲート電極60及び蓄積容量(キャパシタ)の下部電極70をそれぞれパターニングする。
これらの電極60,70を構成する材料としては、Moのほか、例えば、Al、Cr、Ta、Ti、Au、Ag等の金属、Al−Nd、APC等の合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物導電膜、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ−ルなどの有機導電性化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0036】
ゲート電極60及び下部電極70の形成方法としては、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から使用する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って成膜した後、フォトリソグラフィ法及びエッチング法によってパターニングを行う。あるいは、インクジェト法、リフトオフ法、シャドウマスクを用いた方法等により各電極60,70を形成してもよい。
【0037】
ゲート電極60及び下部電極70の厚さは、その構成材料にもよるが、例えば、ゲート配線の抵抗を下げ、TFTの制御信号の遅延を防ぐ観点から、10nm以上とし、ゲート電極60の上に形成される各層の段差を小さくして破断を防止する観点から、1000nm以下とする。
本実施形態に係る積層フィルム100は、両面の表面粗さが小さいため、各電極を高い精度で形成することができる。
【0038】
‐絶縁層‐
次いで、TFTのゲート絶縁膜とキャパシタの誘電体層を兼ねた絶縁層62を形成する。
絶縁層62は例えばSiO、SiN、SiON、Al、Y、Ta、HfO等の絶縁体から構成され、それらの化合物を2種以上含む絶縁層としてもよい。また、ポリイミドのような高分子絶縁体を用いてもよい。
【0039】
絶縁層62は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から使用する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って成膜する。必要に応じ、フォトリソグラフィ法、シャドウマスクを用いた方法等によって所定の形状にパターニングすればよい。
【0040】
絶縁層62の厚さは、リーク電流の抑制及び電圧耐性の向上のための厚さを有する必要がある一方、絶縁層62の厚さが大き過ぎると駆動電圧の上昇を招くことになる。絶縁層62の材質にもよるが、成膜に要する時間と電圧耐性、誘電率の観点から、絶縁層62の厚さは、例えば、無機絶縁体であれば50nm以上1000nm以下とし、高分子絶縁体であれば自己組織化膜まで考慮すると、数nm以上5μm以下とする。
【0041】
‐活性層‐
次に、活性層(チャネル層)64を形成する。活性層64は酸化物半導体のような低温で形成できる膜にすることが好ましい。従来、活性層を構成する材料としてアモルファスシリコン、多結晶シリコンが一般的であるが、これらのシリコン膜の形成には高温過程を要し、積層フィルム100が変形するおそれがある。そのため、スパッタリングによって低温成膜が可能な非晶質酸化物半導体により活性層64を形成することが好ましい。また有機物半導体のような低温で形成できるものでもよい。
【0042】
具体的には、酸化物半導体の場合、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga-O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、またIn、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。電気伝導度は、例えば、成膜中の酸素分圧により制御が可能である。有機物半導体の場合は例えばペンタセン、DNTT等が考えられる。
【0043】
IGZO系の酸化物半導体層は、キャリアが電子のn型半導体であるが、ZnO・Rh、CuGaO、SrCuのようなp型酸化物半導体を活性層64に用いてもよいし、特開2006−165529号公報に開示されている酸化物半導体を用いてもよい。
【0044】
活性層64の厚さは、ドレイン電流が十分に流れる観点と、成膜に要する時間が長くなり過ぎないようにする観点から、例えば、5nm以上150nm以下とする。
また、活性層64の電気伝導度は、チャネル層として機能させるため、10−11Scm−1以上10−7Scm−1未満であることが好ましい。
【0045】
活性層64として例えばIn、Ga、Znを含む非晶質酸化物層を形成する場合は、In、Ga、及びZnを目標の組成で含む酸化物半導体の多結晶焼結体をターゲットとして気相成膜法を用いて成膜する。気相成膜法の中でも、スパッタリング法及びパルスレーザー蒸着法(PLD法)がより好ましく、量産性の観点から、スパッタリング法が特に好ましい。
成膜後、フォトリソグラフィ法及びエッチング法によってパターニングを行う。あるいは、リフトオフ法、シャドウマスクを用いた方法等により活性層64を形成してもよい。
【0046】
‐ソース電極・ドレイン電極、及び蓄積容量の上部電極‐
ソース電極66A及びドレイン電極66Bはそれぞれ活性層64と接触するとともに、ソース・ドレイン電極同士は離間するように形成する。ゲート電極60への電圧の印加により活性層64を介してソース・ドレイン電極66A,66B間に流れる電流が制御される。また、ソース・ドレイン電極66A,66Bとともに、ドレイン電極66Bと接続するキャパシタの上部電極72を形成する。
【0047】
ソース・ドレイン電極66A,66B及び上部電極72を構成する材料としては、例えば、Al、Cu、Mo、Cr、Ta、Ti、Au、Ag等の金属、Al−Nd、Mo−Nb、APC等の合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物導電膜、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性化合物、またはこれらの積層膜、混合物が挙げられる。
【0048】
ソース・ドレイン電極66A,66B及び上部電極72の形成方法は特に限定されず、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から材料との適性を考慮して選択した方法に従って成膜した後、フォトリソグラフィ法及びエッチング法によってパターニングを行う。あるいは、リフトオフ法、シャドウマスクを用いた方法等によりソース・ドレイン電極66A,66B及び上部電極72を形成してもよい。
【0049】
例えば、ソース・ドレイン電極66A,66B及び上部電極72の材料としてITOを選択する場合には、直流あるいは高周波スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って成膜することができ、有機導電性化合物を選択する場合には湿式成膜法に従って行うことができる。
【0050】
ソース・ドレイン電極66A,66B及び上部電極72の厚さは、その構成材料などにもよるが、成膜性、導電性(低抵抗化)などの観点から、例えば10nm以上1000nm以下とする。
ソース・ドレイン電極66A,66B及び上部電極72を形成することによりTFT及びキャパシタが作製される。
【0051】
次いで、最終製品として製造する電子デバイスに応じて他の機能層を形成する。例えば層間絶縁膜68、有機EL素子等を順次形成して有機EL表示装置を製造してもよいし、あるいは、電荷収集電極、光電変換層(電荷発生層、電荷輸送層)、バイアス電極、蛍光体層などが積層された放射線撮像装置を製造してもよい。
【0052】
なお、上記実施形態では、ガラス面上にゲート電極60を形成したボトムゲート型のTFTを製造する場合について説明したが、これに限定されず、例えば、ガラス面上に活性層、ソース・ドレイン電極、絶縁層、及びゲート電極の順序で形成したトップゲート型のTFTを作製してもよい。
また、TFTは、一般的に、活性層とソース・ドレイン電極との形成順序でボトムコンタクト型とトップコンタクト型とに分けられるが、いずれの構成としてもよい。すなわち、ソース・ドレイン電極を活性層よりも先に形成して活性層の下面がソース・ドレイン電極に接触する形態(ボトムコンタクト型)としてもよいし、活性層をソース・ドレイン電極よりも先に形成して活性層の上面がソース・ドレイン電極に接触する形態(トップコンタクト型)としてもよい。
【0053】
上記のような工程を経て機能素子120を形成した後、積層フィルム100を支持体110から剥離する(図7(C))。
積層フィルム100から支持基板110を剥離する方法は特に限定されず、例えば、支持基板110と積層フィルム100との間に剥離し易くするため一部に治具を差し込んで剥離する。このとき、支持基板110に貼り合わされている積層フィルム100の面も平坦度が高いため、容易に剥離することができる。積層フィルム100に応力を加えずに支持基板110から剥離することができるため、積層フィルム100上に形成されている機能素子にダメージを与えることも防ぐことができる。
【0054】
以上、本発明について説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されない。例えば、本発明に係る積層フィルムの用途は有機EL表示装置や放射線撮像装置の製造に限定されず、液晶表示装置、プラズマ表示装置などの他の電子デバイスの製造に適用してもよい。また、有機EL表示装置の製造においても、TFTを形成するアクティブマトリクスタイプに限らず、パッシブマトリクスタイプの有機EL表示装置や、照明装置として有機EL発光装置の製造に適用してもよい。
また、放射線撮像装置を製造する場合でも、蛍光体層と有機光電変換層を備えた間接型に限らず、蛍光体層を備えた直接変換型の製造に適用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10A 第1のロール
10 第1の樹脂フィルム
12 無機層
20A 第2のロール
20 第2の樹脂フィルム
30 接着層
32A,32B ローラ
40 金属層(金属フィルム)
40A 金属フィルムロール
60 ゲート電極
62 絶縁層
64 活性層
66A ソース電極
66B ドレイン電極
68 層間絶縁膜
70 下部電極
72 上部電極
100 積層フィルム
110 支持体(支持基板)
120 機能素子
200 積層フィルム
300 積層フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面の表面粗さが異なる第1の樹脂フィルムと、
両面の表面粗さが異なる第2の樹脂フィルムと、を含み、
前記第1の樹脂フィルムの表面粗さが大きい側の面と前記第2の樹脂フィルムの表面粗さが大きい側の面とが貼り合わされている積層フィルム。
【請求項2】
前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとが、それぞれの面内方向における伸縮度の最も大きい方向が互いに異なるように貼り合わされている請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとの間に無機層が挟まれている請求項1又は請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとの間に無機層と有機層との積層膜が挟まれていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記無機層が金属層である請求項3又は請求項4に記載の積層フィルム。
【請求項6】
両面の表面粗さが異なる第1の樹脂フィルムが巻かれた第1のロールと、両面の表面粗さが異なる第2の樹脂フィルムが巻かれた第2のロールから、前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムをそれぞれ巻き出す工程と、
前記第1のロールから巻き出された第1の樹脂フィルムの表面粗さが大きい側の面と、前記第2のロールから巻き出された前記第2の樹脂フィルムの表面粗さが大きい側の面とを貼り合わせる工程と、を含む積層フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとを貼り合せる工程において、前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムを、それぞれの面内方向における伸縮度の最も大きい方向が互いに異なるように貼り合わせる請求項6に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとを貼り合せる工程において、前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとの間に無機層を挟んで前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムを貼り合せる請求項6又は請求項7に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとの間に前記無機層として金属層を挟み込む請求項8に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項10】
支持体に剥離可能に貼り付けた請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の積層フィルムを準備する工程と、
前記支持体により支持された前記積層フィルム上に機能素子を形成する工程と、
前記機能素子を形成した後、前記積層フィルムを前記支持体から剥離する工程と、を含む電子デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記積層フィルムとして請求項5に記載の積層フィルムを用い、前記機能素子を形成する工程において、前記積層フィルムの金属層を接地させて前記機能素子を形成する請求項10に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の積層フィルムと、
前記積層フィルム上に形成された機能素子と、を含む電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−207167(P2011−207167A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79405(P2010−79405)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】