説明

積層フィルム

【課題】耐屈曲性を有するガスバリア性フィルムとして好適な新規な積層フィルムの提供。
【解決手段】基材と、前記基材の少なくとも片方の表面上に形成された少なくとも1層の薄膜層とを備える積層フィルムであって、前記薄膜層のうちの少なくとも1層が、炭素を含む酸化物を含有し、且つ、該層の膜厚方向における該層の表面からの距離と、炭素を含む酸化物の原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、下記条件(i)〜(ii):
(i)前記炭素分布曲線が実質的に連続である。
(ii)前記炭素分布曲線が極値を有する。
を全て満たし、前記酸化物が、半導体元素、半金属元素及び金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素(ただし、珪素を除く)の酸化物であることを特徴とする積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を用いたフレキシブル照明、有機薄膜太陽電池、液晶ディスプレイ、医薬品の包装容器等に好適に用いることができる積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
積層フィルムは、飲食品、化粧品、洗剤といった物品の充填包装に適する包装用容器として、特にガスバリア性フィルムが好適に用いることができる。近年、プラスチックフィルム等の基材フィルムの一方の表面上に、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウムといった無機酸化物の薄膜を成膜してなるガスバリア性フィルムが提案されている。
【0003】
このように無機酸化物の薄膜をプラスチック基材の表面上に成膜する方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD)、熱化学気相成長法(熱CVD法)、プラズマ化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD)が知られている。
また、このような成膜方法を用いた積層フィルムとして、例えば、特許文献1には、有機EL素子の保護膜として、炭素含有窒化シリコン(SiN)で形成され、炭素量が連続的に変化しているガスバリア性フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−273094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のようなガスバリア性フィルムは、屈曲させた場合に酸素ガスや水蒸気に対するガスバリア性が低下するという問題点があり、フレキシブル液晶ディスプレイのように耐屈曲性が要求されるガスバリア性フィルムとしては、フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性の点で必ずしも十分なものではなかった。そこで、ガスバリアをはじめ、種々の用途に適用し得る新規な積層フィルムの開発が求められていた。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、耐屈曲性を有するガスバリア性フィルムとして好適な新規な積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、
本発明は、基材と、前記基材の少なくとも片方の表面上に形成された少なくとも1層の薄膜層とを備える積層フィルムであって、
前記薄膜層のうちの少なくとも1層が、炭素を含む酸化物を含有し、且つ、該層の膜厚方向における該層の表面からの距離と、炭素を含む酸化物の原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、下記条件(i)〜(ii):
(i)前記炭素分布曲線が実質的に連続である。
(ii)前記炭素分布曲線が極値を有する。
を全て満たし、
前記酸化物が、半導体元素、半金属元素及び金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素(ただし、珪素を除く)の酸化物であることを特徴とする積層フィルムを提供する。
本発明の積層フィルムにおいては、前記半導体元素及び半金属元素が、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)及びビスマス(Bi)から選ばれる1種以上の元素であり、前記金属元素が、周期律表の第1族のアルカリ金属元素、第2族のアルカリ土類金属元素、第3族から第11族までの遷移金属元素(ただし、テクネチウム(Tc)を除く)、第12族の亜鉛族元素(亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg))、第13族の典型金属元素であるアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)及びタリウム(Tl)、並びに第14族の典型金属元素であるスズ(Sn)及び鉛(Pb)から選ばれる1種以上の元素であることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、前記金属元素が、アルミニウムであることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、前記金属元素が、チタンであることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、前記金属元素が、アルミニウム及びチタンであることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、前記薄膜層がアルミニウムの酸化物を含有し、アルミニウムを含有する成膜ガスを用いるプラズマ化学気相成長法により形成された層であることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、前記薄膜層がチタンの酸化物を含有し、チタンを含有する成膜ガスを用いるプラズマ化学気相成長法により形成された層であることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、前記薄膜層がアルミニウムの酸化物及びチタンの酸化物を含有し、アルミニウム及びチタンを含有する成膜ガスを用いるプラズマ化学気相成長法により形成された層であることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、前記炭素分布曲線が有する極値が、極大値及び極小値であることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、前記炭素分布曲線における極大値の最大値と、極小値の最小値との差が5%以上であることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、前記薄膜層において、該層の膜厚方向における該層の表面からの距離と、金属原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する金属原子の量の比率(金属の原子比)との関係を示す金属分布曲線において、前記金属分布曲線の最大値と最小値との差が5%以下であるであることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、前記薄膜層がアルミニウムを含有し、有機アルミニウム化合物のガス、アルミニウムと酸素の化合物ガス、及びアルミニウム含有物ガスからなる群より選ばれる1種以上のガスを含む成膜ガスを用いて、プラズマ化学気相成長法により形成された層であることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、前記薄膜層がチタンを含有し、有機チタン化合物のガス、チタンと酸素の化合物ガス、及びチタン含有物ガスからなる群より選ばれる1種以上のガスを含む成膜ガスを用いて、プラズマ化学気相成長法により形成された層であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐屈曲性を有するガスバリア性フィルムとして好適な新規な積層フィルムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の積層フィルムを製造するのに好適な製造装置の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の積層フィルムは、基材と、前記基材の少なくとも片方の表面上に形成された少なくとも1層の薄膜層とを備える積層フィルムであって、
前記薄膜層のうちの少なくとも1層が、炭素を含む酸化物を含有し、且つ、該層の膜厚方向における該層の表面からの距離と、炭素を含む酸化物の原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、下記条件(i)〜(ii):
(i)前記炭素分布曲線が実質的に連続である。
(ii)前記炭素分布曲線が極値を有する。
を全て満たし、
前記酸化物が、半導体元素、半金属元素及び金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素(ただし、珪素を除く)の酸化物であることを特徴とする。
【0011】
本発明に用いる基材としては、無色透明な樹脂からなるフィルム又はシートが挙げられる。このような基材に用いる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル系樹脂;アセタール系樹脂;ポリイミド系樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、耐熱性及び線膨張率が高く、製造コストが低いという観点から、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、PET、PENが特に好ましい。また、これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0012】
前記基材の厚みは、本発明の積層フィルムを製造する際の安定性を考慮して適宜に設定することができる。前記基材の厚みとしては、真空中においてもフィルムの搬送が可能であるという観点から、5〜500μmの範囲であることが好ましい。さらに、プラズマCVD法により本発明にかかる薄膜層を形成する場合には、前記基材を通して放電しつつ本発明にかかる薄膜層を形成することから、前記基材の厚みが50〜200μmの範囲であることがより好ましく、50〜100μmの範囲であることが特に好ましい。
【0013】
また、前記基材には、後述する薄膜層との密着性の観点から、基材の表面を清浄するための表面活性処理を施すことが好ましい。このような表面活性処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理が挙げられる。
【0014】
本発明にかかる薄膜層は、前記基材の少なくとも片面に形成される層である。そして、本発明の積層フィルムにおいては、前記薄膜層のうちの少なくとも1層が、炭素を含む酸化物を含有する層であることが必要である。そして、前記酸化物は、半導体元素、半金属元素及び金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素(ただし、珪素を除く)の酸化物である。
前記半導体元素、半金属元素、金属元素は、それぞれ一種が単独で含有されていてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されていてもよい。
【0015】
前記半導体元素及び半金属元素としては、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、ビスマス(Bi)が例示できる。
前記金属元素としては、周期律表の第1族のアルカリ金属元素;第2族のアルカリ土類金属元素;第3族から第11族までの遷移金属元素(ただし、テクネチウム(Tc)を除く);第12族の亜鉛族元素(亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg));第13族の典型金属元素であるアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)及びタリウム(Tl);第14族の典型金属元素であるスズ(Sn)及び鉛(Pb)が例示できる。そして、これらの中でも、アルミニウム、チタンが好ましく、これらが単独で又は共に酸化物として含有されることが好ましい。
【0016】
また、本発明においては、前記薄膜層のうちの少なくとも1層が上記条件(i)〜(ii)を満たす。すなわち、このような薄膜層は、該層の膜厚方向における該層の表面からの距離と、炭素を含む酸化物の原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、(i)前記炭素分布曲線が実質的に連続であること、(ii)前記炭素分布曲線が極値を有すること、を満たすことが必要となる。これにより、積層フィルムは、十分なガスバリア性を有するとともに、フィルムを屈曲させた場合において、ガスバリア性の低下を顕著に抑制する効果が得られる。
【0017】
なお、本発明において極値とは、薄膜層の膜厚方向における薄膜層の表面からの距離に対する元素の原子比の極大値又は極小値のことをいう。また、本発明において極大値とは、薄膜層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比の値が増加から減少に変わる点であって且つその点の元素の原子比の値よりも、該点から薄膜層の膜厚方向における薄膜層の表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上減少する点のことをいう。さらに、本発明において極小値とは、薄膜層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比の値が減少から増加に変わる点であり、且つその点の元素の原子比の値よりも、該点から薄膜層の膜厚方向における薄膜層の表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上増加する点のことをいう。
【0018】
このような薄膜層においては、前記炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有することが好ましく、少なくとも3つの極値を有することがより好ましい。このようにすることで、屈曲させた場合における積層フィルムのガスバリア性がより向上する。
さらに、前記炭素分布曲線は、極大値及び極小値を共に有することが好ましい。極大値を有し、炭素の含有量が高い領域が存在することにより、積層フィルムはより優れた柔軟性を有する。また、極小値を有し、酸化物の含有量が高い領域が存在することにより、より優れたガスバリア性を有する。そして、極大値の最大値と、極小値の最小値との差が5%以上であることが好ましい。このようにすることで、屈曲させた場合における積層フィルムのガスバリア性がより向上する。
【0019】
また、前記薄膜層が金属原子の酸化物を含有する場合、該層の膜厚方向における該層の表面からの距離と、金属原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する金属原子の量の比率(金属の原子比)との関係を示す金属分布曲線は、極値を有していてもよく、有していなくてもよいが、ほぼ一定の分布を有することが好ましい。そして、該金属分布曲線の最大値と最小値との差が5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることが特に好ましい。このような条件を満たすことで、ガスバリア性がさらに向上するとともに、フィルムを屈曲させた場合においても、ガスバリア性の低下を抑制する一層高い効果が得られる。
【0020】
前記薄膜層が、半金属原子の酸化物を含有する場合、該層の膜厚方向における該層の表面からの距離と、半金属原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する半金属原子の量の比率(半金属の原子比)との関係を示す半金属分布曲線は、前記金属分布曲線と同様であることが好ましい。このようにすることで、金属原子の酸化物を含有する場合と同様の効果が得られる。
そして、前記薄膜層が、半導体原子の酸化物を含有する場合、該層の膜厚方向における該層の表面からの距離と、半導体原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する半導体原子の量の比率(半導体の原子比)との関係を示す半導体分布曲線も、前記金属分布曲線と同様であることが好ましい。このようにすることで、金属原子の酸化物を含有する場合と同様の効果が得られる。
【0021】
また、前記薄膜層においては、該層の膜厚方向における該層の表面からの距離と、炭素を含む酸化物の原子の合計量に対する酸素原子の量の比率(酸素の原子比)との関係を示す酸素分布曲線を作成できる。そして、該層の膜厚方向における該層の表面からの距離と、炭素を含む酸化物の原子の合計量に対する酸素原子及び炭素原子の合計量の比率(酸素及び炭素の総原子比)との関係を示す分布曲線も作成でき、該分布曲線は、ほぼ一定の分布を有することが好ましい。そして、前記酸素分布曲線は、極値を有することが好ましい。
【0022】
前記炭素分布曲線、酸素分布曲線、半導体分布曲線、半金属分布曲線、及び金属分布曲線は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は膜厚方向における前記薄膜層の膜厚方向における前記薄膜層の表面からの距離に概ね相関することから、「薄膜層の膜厚方向における薄膜層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出される薄膜層の表面からの距離を採用することができる。また、このようなXPSデプスプロファイル測定に際して採用するスパッタ法としては、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、そのエッチング速度(エッチングレート)を0.05nm/sec(SiO熱酸化膜換算値)とすることが好ましい。
【0023】
また、本発明においては、膜面全体において均一で且つ優れたガスバリア性を有する薄膜層を形成するという観点から、前記薄膜層が膜面方向(薄膜層の表面に平行な方向)において実質的に一様であることが好ましい。本明細書において、薄膜層が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定により薄膜層の膜面の任意の2箇所の測定箇所について前記炭素分布曲線を作成した場合に、その任意の2箇所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が、互いに同じであるかもしくは5at%以内の差であることをいう。
【0024】
さらに、本発明においては、前記炭素分布曲線は実質的に連続である。本明細書において、炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことを意味し、具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出される前記薄膜層のうちの少なくとも1層の膜厚方向における該層の表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素の原子比(C、単位:at%)との関係において、下記数式(F1):
|dC/dx|≦ 1 ・・・(F1)
で表される条件を満たすことをいう。
【0025】
前記炭素分布曲線は実質的に連続であることで、不連続な場合に存在する界面等に起因する薄膜の剥離等が抑制され、さらに、柔軟性に優れる領域とガスバリア性に優れる領域とが連続的に変化することにより、屈曲等によるクラックが発生し難く、且つガスバリア性が高いという、ガスバリア膜としての特性に極めて優れたものとなる。
【0026】
前記薄膜層においては、少なくとも一つの炭素原子が、半導体原子、半金属原子及び金属原子からなる群より選ばれる1種以上の原子(ただし、珪素原子を除く)と直接結合していることが好ましい。そして、半導体原子、半金属原子及び金属原子からなる群より選ばれる1種以上の原子(ただし、珪素原子を除く)と直接結合している炭素原子は、水素原子とも直接結合していることが好ましい。これにより、ガスバリア性がさらに向上するとともに、フィルムを屈曲させた場合においても、ガスバリア性の低下を抑制する一層高い効果が得られる。
【0027】
本発明の積層フィルムは、上記条件(i)〜(ii)を満たす薄膜層を少なくとも1層備えることが必要であるが、そのような条件を満たす層を2層以上備えていてもよい。さらに、このような薄膜層を2層以上備える場合には、複数の薄膜層の材質は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、このような薄膜層を2層以上備える場合には、このような薄膜層は前記基材の一方の表面上に形成されていてもよく、前記基材の両方の表面上に形成されていてもよい。また、このような複数の薄膜層としては、ガスバリア性を必ずしも有しない薄膜層を含んでいてもよい。
【0028】
また、前記薄膜層の厚みは、5〜3000nmの範囲であることが好ましく、10〜2000nmの範囲であることより好ましく、100〜1000nmの範囲であることが特に好ましい。薄膜層の厚みが前記下限値以上であることで、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性が一層向上する。また、前記上限値以下であることで、屈曲させた場合のガスバリア性の低下を抑制する一層高い効果が得られる。
【0029】
また、本発明の積層フィルムが、複数の薄膜層を有する場合には、これら薄膜層の厚みの合計値は、通常、10〜10000nmであることが好ましく、10〜5000nmであることがより好ましく、100〜3000nmであることが特に好ましく、200〜2000nmであることが最も好ましい。薄膜層の厚みの合計値が前記下限値以上であることにより、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性が一層向上する。また、前記上限値以下であることで、屈曲させた場合のガスバリア性の低下を抑制する一層高い効果が得られる。
【0030】
本発明の積層フィルムは、前記基材及び前記薄膜層を備えるものであるが、必要に応じて、更にプライマーコート層、ヒートシール性樹脂層、接着剤層等を備えていてもよい。このようなプライマーコート層は、前記基材及び前記薄膜層との接着性を向上させることが可能な公知のプライマーコート剤を用いて形成することができる。また、このようなヒートシール性樹脂層は、適宜公知のヒートシール性樹脂を用いて形成することができる。さらに、このような接着剤層は、適宜公知の接着剤を用いて形成することができ、このような接着剤層により複数のガスバリア性積層フィルム同士を接着させてもよい。
【0031】
また、本発明の積層フィルムは、前記薄膜層がプラズマ化学気相成長法により形成された層であることが好ましい。このようなプラズマ化学気相成長法により形成された薄膜層としては、前記基材を一対の成膜ロール上に配置し、前記一対の成膜ロール間に放電してプラズマを発生させるプラズマ化学気相成長法により形成された層であることがより好ましい。また、このようにして一対の成膜ロール間に放電する際には、前記一対の成膜ロールの極性を交互に反転させることが好ましい。更に、このようなプラズマ化学気相成長法に用いる成膜ガスとしては、上記の炭素を含む酸化物を形成できるものであればよく、例えば、酸素と、さらに前記半導体元素、半金属元素及び金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素(ただし、珪素を除く)を含むものが好ましい。そして、例えば、前記金属元素の酸化物を含有する薄膜層の場合であれば、前記成膜ガスは、有機金属化合物のガス、金属元素と酸素の化合物ガス、及びこれらに該当しない金属元素含有物ガスからなる群より選ばれる1種以上のガスを含む成膜ガスであることが好ましい。そして、この場合の金属元素は、アルミニウム及びチタンのいずれか一方又は両方であることが好ましい。前記半導体元素の酸化物又は半金属元素の酸化物を含有する薄膜層の場合も、元素の種類が異なること以外は、同様の成膜ガスが好ましい。
【0032】
さらに、成膜ガス中の酸素の含有量は、例えば、前記半導体元素、半金属元素及び金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素(ただし、珪素を除く)を含むガスなどの、上記の炭素を含む酸化物を形成するためのガスの全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。また、本発明の積層フィルムにおいては、前記薄膜層が連続的な成膜プロセスにより形成された層であることが好ましい。なお、このようなプラズマ化学気相成長法を利用して薄膜層を形成する方法は、後述の本発明の積層フィルムを製造する方法において説明する。
【0033】
次に、本発明の積層フィルムを製造する方法について説明する。本発明の積層フィルムは、前記基材の表面上に前記薄膜層を形成させることにより製造することができる。このような本発明にかかる薄膜層を前記基材の表面上に形成させる方法としては、ガスバリア性の観点から、プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD)を採用することが好ましい。
【0034】
また、前記プラズマ化学気相成長法においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ロールの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、一対の成膜ロールを用い、その一対の成膜ロールのそれぞれに前記基材を配置して、一対の成膜ロール間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。このようにして、一対の成膜ロールを用い、その一対の成膜ロール上に基材を配置して、かかる一対の成膜ロール間に放電することにより、成膜時に一方の成膜ロール上に存在する基材の表面部分を成膜しつつ、もう一方の成膜ロール上に存在する基材の表面部分も同時に成膜することが可能となって効率よく薄膜を製造できるばかりか、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となり、効率よく上記条件(i)〜(ii)を全て満たす層を形成することが可能となる。また、本発明の積層フィルムは、生産性の観点から、ロールツーロール方式で前記基材の表面上に前記薄膜層を形成させることが好ましい。また、このようなプラズマ化学気相成長法により積層フィルムを製造する際に用いることが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の成膜ロールと、プラスマ電源とを備え且つ前記一対の成膜ロール間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、例えば、図1に示す製造装置を用いた場合には、プラズマ化学気相成長法を利用しながらロールツーロール方式で製造することも可能となる。
【0035】
以下、図1を参照しながら、本発明の積層フィルムを製造する方法についてより詳細に説明する。なお、図1は、本発明の積層フィルムを製造するのに好適に利用することが可能な製造装置の一例を示す模式図である。また、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0036】
図1に示す製造装置は、送り出しロール11と、搬送ロール21、22、23、24と、成膜ロール31、32と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、成膜ロール31及び32の内部に設置された磁場発生装置61、62と、巻取りロール71とを備えている。また、このような製造装置においては、少なくとも成膜ロール31、32と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、磁場発生装置61、62とが図示を省略した真空チャンバー内に配置されている。更に、このような製造装置において前記真空チャンバーは、図示を省略した真空ポンプに接続されており、かかる真空ポンプにより真空チャンバー内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
【0037】
このような製造装置においては、一対の成膜ロール(成膜ロール31と成膜ロール32)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ロールがそれぞれプラズマ発生用電源51に接続されている。そのため、このような製造装置においては、プラズマ発生用電源51により電力を供給することにより、成膜ロール31と成膜ロール32との間の空間に放電することが可能であり、これにより成膜ロール31と成膜ロール32との間の空間にプラズマを発生させることができる。なお、このように、成膜ロール31と成膜ロール32を電極としても利用する場合には、電極としても利用可能なようにその材質や設計を適宜変更すればよい。また、このような製造装置においては、一対の成膜ロール(成膜ロール31及び32)は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ロール(成膜ロール31及び32)を配置することにより、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので、前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となる。そして、このような製造装置によれば、CVD法によりフィルム100の表面上に薄膜層を形成することが可能であり、成膜ロール31上においてフィルム100の表面上に膜成分を堆積させつつ、更に成膜ロール32上においてもフィルム100の表面上に膜成分を堆積させることもできるため、フィルム100の表面上に前記薄膜層を効率よく形成することができる。
【0038】
また、成膜ロール31及び成膜ロール32の内部には、成膜ロールが回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置61及び62がそれぞれ設けられている。
【0039】
さらに、成膜ロール31及び成膜ロール32としては適宜公知のロールを用いることができる。このような成膜ロール31及び32としては、より効率よく薄膜を形成せしめるという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このような成膜ロール31及び32の直径としては、放電条件、チャンバーのスペース等の観点から、5〜100cmの範囲とすることが好ましい。
【0040】
また、このような製造装置においては、フィルム100の表面がそれぞれ対向するように、一対の成膜ロール(成膜ロール31と成膜ロール32)上に、フィルム100が配置されている。このようにしてフィルム100を配置することにより、成膜ロール31と成膜ロール32との間に放電を行ってプラズマを発生させる際に、一対の成膜ロール間に存在するフィルム100のそれぞれの表面を同時に成膜することが可能となる。すなわち、このような製造装置によれば、CVD法により、成膜ロール31上にてフィルム100の表面上に膜成分を堆積させ、更に成膜ロール32上にて膜成分を堆積させることができるため、フィルム100の表面上に前記薄膜層を効率よく形成することが可能となる。
【0041】
また、このような製造装置に用いる送り出しロール11及び搬送ロール21、22、23、24としては適宜公知のロールを用いることができる。また、巻取りロール71としても、薄膜層を形成したフィルム100を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のロールを用いることができる。
【0042】
また、ガス供給管41としては原料ガス等を所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。さらに、プラズマ発生用電源51としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源51は、これに接続された成膜ロール31と成膜ロール32に電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源51としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、前記一対の成膜ロールの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源51としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、印加電力を100W〜10kWとすることができ且つ交流の周波数を50Hz〜500kHzとすることが可能なものであることがより好ましい。また、磁場発生装置61、62としては適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。さらに、フィルム100としては、前記本発明に用いる基材の他に、前記薄膜層を予め形成させたものを用いることができる。このように、フィルム100として前記薄膜層を予め形成させたものを用いることにより、前記薄膜層の厚みを厚くすることも可能である。
【0043】
このような図1に示す製造装置を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、真空チャンバー内の圧力、成膜ロールの直径、並びに、フィルムの搬送速度を適宜調整することにより、本発明の積層フィルムを製造することができる。すなわち、図1に示す製造装置を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバー内に供給しつつ、一対の成膜ロール(成膜ロール31及び32)間に放電を発生させることにより、前記成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ロール31上のフィルム100の表面上並びに成膜ロール32上のフィルム100の表面上に、前記薄膜層がプラズマCVD法により形成される。なお、このような成膜に際しては、フィルム100が送り出しロール11や成膜ロール31等により、それぞれ搬送されることにより、ロールツーロール方式の連続的な成膜プロセスによりフィルム100の表面上に前記薄膜層が形成される。
【0044】
このような薄膜層の形成に用いる前記成膜ガス中の原料ガスとしては、形成する薄膜層の材質に応じて適宜選択して使用することができる。例えば、前記半導体元素、半金属元素又は金属元素(ただし、珪素を除く)の酸化物を含有する薄膜層を形成する場合には、原料ガスとしてこれら元素を含有する化合物のガスを使用すれば良い。
【0045】
例えば、アルミニウムの酸化物を含有する薄膜層を形成する場合には、原料ガスとして有機アルミニウム化合物のガスであれば、好ましいものとして、アルミニウムアルコキシドのガスが挙げられる。そして、この時のアルミニウムアルコキシドとしては、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウム等が例示でき、これらの中でも気化し易い点から、トリイソプロポキシアルミニウム(アルミニウムトリイソプロポキシド)が特に好ましい。
【0046】
また、例えば、チタンの酸化物を含有する薄膜層を形成する場合には、原料ガスとして有機チタン化合物のガスであれば、好ましいものとして、チタンアルコキシドのガスが挙げられる。そして、この時のチタンアルコキシドとしては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン等が例示でき、これらの中でも気化し易い点から、テトライソプロポキシチタン(チタンテトライソプロポキシド)が特に好ましい。
【0047】
そして、例えば、アルミニウムの酸化物及びチタンの酸化物を含有する薄膜層を形成する場合には、原料ガスとして、前記有機アルミニウム化合物等の原料ガスと、前記有機チタン化合物等の原料ガスとの混合ガスを用いればよい。
【0048】
また、前記成膜ガスとしては、前記原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、前記原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
【0049】
前記成膜ガスとしては、前記原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、前記成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス;水素を用いることができる。
【0050】
このような成膜ガスが原料ガスと反応ガスを含有する場合には、原料ガスと反応ガスの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にし過ぎてしまうと、上記条件(i)〜(ii)を全て満たす薄膜が得られなくなってしまう。この場合には、形成される薄膜層によって、優れたバリア性や耐屈曲性を得ることができなくなる。
具体的には、例えば、原料ガスとしてトリイソプロポキシアルミニウム(アルミニウムトリイソプロポキシド)を用いる場合、反応式は下記式(I):
Al[OCH(CH+27/2・O→1/2・Al+9CO+21/2・HO (I)
となるので、トリイソプロポキシアルミニウムのモル量(流量)に対して、酸素のモル量(流量)は、27/2(=13.5)倍以下にする必要がある。
同様に、例えば、原料ガスとして、テトライソプロポキシチタン(チタンテトライソプロポキシド)を用いる場合、反応式は下記式(II):
Ti[OCH(CH+18O→TiO+12CO+14HO (II)
となるので、テトライソプロポキシチタンのモル量(流量)に対して、酸素のモル量(流量)は、18倍以下にする必要がある。
【0051】
また、真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.1Pa〜50Paの範囲とすることが好ましい。
【0052】
また、このようなプラズマCVD法において、成膜ロール31及び32間に放電するために、プラズマ発生用電源51に接続された電極ドラム(本実施形態においては成膜ロール31及び32に設置されている。)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり、一概に言えるものでないが、0.1〜10kWの範囲とすることが好ましい。このような印加電力が前記下限未満ではパーティクルが発生し易くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると成膜時に発生する熱量が多くなり、成膜時の基材表面の温度が上昇してしまい、基材が熱負けして成膜時に皺が発生してしまったり、ひどい場合には熱でフィルムが溶けて、裸の成膜ロール間に大電流の放電が発生して成膜ロール自体を傷めてしまう可能性が生じる。
【0053】
フィルム100の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.1〜100m/minの範囲とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲とすることがより好ましい。ライン速度が前記下限未満では、フィルムに熱に起因する皺が生しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、形成された薄膜層の厚みが薄くなる傾向にある。
【0054】
一方、例えば、図1に示す製造装置において、成膜ロール内の磁場発生装置が設けられていない装置を使用した場合には、前記炭素分布曲線は極値を有さず、この場合、ガスバリア性及び柔軟性がともに不十分な薄膜層となってしまう。そして、薄膜層全体が一様となり、高いガスバリア性と耐屈曲性とを兼ね備えた薄膜層とすることはできない。
【0055】
本発明の積層フィルムは、耐屈曲性を有するガスバリア性フィルムとして好適であるが、例えば、各種保護フィルム等、その他幅広い用途にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を用いたフレキシブル照明、有機薄膜太陽電池、液晶ディスプレイ、医薬品の包装容器等に利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
11・・・送り出しロール、21、22、23、24・・・搬送ロール、31、32・・・成膜ロール、41・・・ガス供給管、51・・・プラズマ発生用電源、61、62・・・磁場発生装置、71・・・巻取りロール、100・・・フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも片方の表面上に形成された少なくとも1層の薄膜層とを備える積層フィルムであって、
前記薄膜層のうちの少なくとも1層が、炭素を含む酸化物を含有し、且つ、該層の膜厚方向における該層の表面からの距離と、炭素を含む酸化物の原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、下記条件(i)〜(ii):
(i)前記炭素分布曲線が実質的に連続である。
(ii)前記炭素分布曲線が極値を有する。
を全て満たし、
前記酸化物が、半導体元素、半金属元素及び金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素(ただし、珪素を除く)の酸化物であることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
前記半導体元素及び半金属元素が、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)及びビスマス(Bi)から選ばれる1種以上の元素であり、
前記金属元素が、周期律表の第1族のアルカリ金属元素、第2族のアルカリ土類金属元素、第3族から第11族までの遷移金属元素(ただし、テクネチウム(Tc)を除く)、第12族の亜鉛族元素(亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg))、第13族の典型金属元素であるアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)及びタリウム(Tl)、並びに第14族の典型金属元素であるスズ(Sn)及び鉛(Pb)から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記金属元素が、アルミニウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記金属元素が、チタンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記金属元素が、アルミニウム及びチタンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記薄膜層がアルミニウムの酸化物を含有し、アルミニウムを含有する成膜ガスを用いるプラズマ化学気相成長法により形成された層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記薄膜層がチタンの酸化物を含有し、チタンを含有する成膜ガスを用いるプラズマ化学気相成長法により形成された層であることを特徴とする請求項1、2又は4に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記薄膜層がアルミニウムの酸化物及びチタンの酸化物を含有し、アルミニウム及びチタンを含有する成膜ガスを用いるプラズマ化学気相成長法により形成された層であることを特徴とする請求項1、2又は5に記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記炭素分布曲線が有する極値が、極大値及び極小値であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記炭素分布曲線における極大値の最大値と、極小値の最小値との差が5%以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項11】
前記薄膜層が金属原子の酸化物を含有し、前記薄膜層において、該層の膜厚方向における該層の表面からの距離と、金属原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する金属原子の量の比率(金属の原子比)との関係を示す金属分布曲線において、前記金属分布曲線の最大値と最小値との差が5%以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項12】
前記薄膜層がアルミニウムを含有し、有機アルミニウム化合物のガス、アルミニウムと酸素の化合物ガス、及びアルミニウム含有物ガスからなる群より選ばれる1種以上のガスを含む成膜ガスを用いて、プラズマ化学気相成長法により形成された層であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項13】
前記薄膜層がチタンを含有し、有機チタン化合物のガス、チタンと酸素の化合物ガス、及びチタン含有物ガスからなる群より選ばれる1種以上のガスを含む成膜ガスを用いて、プラズマ化学気相成長法により形成された層であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の積層フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−81635(P2012−81635A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228931(P2010−228931)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】