説明

積層プリフォームの成形方法

【課題】 本発明は、2軸延伸ブローによる積層壜体における層間剥離の問題を抑制することを課題とするものであり、層間剥離が効果的に抑制された合成樹脂製積層壜体、さらにはこのような積層壜体の成形に用いられる積層プリフォームの成形方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 複数の溶融樹脂を積層する多重ノズル部において、主材樹脂を所定時間、所定の圧力若しくは速度で基体層を形成する円環状の流路に供給すると共に、この所定時間範囲内の一定時間、中間層樹脂を、中間層を形成する円環状の流路に断続的に供給することにより、中心軸方向に複数、並列状に、基体層が連結した周帯状連結部を形成し、また、中間層を形成する流路で中間層樹脂を周方向に分断することにより周方向に複数、並列状に縦帯状連結部を形成し、これら周帯状連結部と縦帯状連結部により中間層が縦横に分断された積層構造を有する積層プリフォームを成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置を用いた2軸延伸ブロー成形用の試験管状の積層プリフォームの成形方法、特に中間層を周方向と中心軸方向に分断した積層構造有する積層プリフォームの成形方法に関する。

【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)樹脂製等の2軸延伸ブロー成形による壜体は、飲料用、食品用、化粧料等のさまざまな分野に使用されている。特にガスバリア性を必要とする用途では、主材樹脂であるPET樹脂に中間層としてナイロン系樹脂やエチレンビニルアルコール共重合樹脂等のガスバリア性樹脂を積層した壜体が用いられている。
【0003】
特許文献1にはこのようなガスバリア性樹脂を積層した2軸延伸ブロー成形による積層壜体、その一次成形品である試験管状の積層プリフォームの成形方法について記載されている。図11、12にこのような壜体とプリフォームの代表例的な例を示す。
図11に示す壜体601は口筒部602、ネックリング603、円筒状の胴部605、そして底部606を有し、口筒部602の上端部と底部606を除く高さ領域ではPET樹脂製の基体層である外層611と内層612の間にガスバリア性樹脂であるナイロン樹脂製の中間層613を積層している。
【0004】
この壜体601は図12に示すプリフォーム501を2軸延伸ブロー成形して成形することができるが、このプリフォーム501は口筒部502、ネックリング503、円筒状の胴部505、そして底部506を有し、口筒部502と底部506を除く高さ領域ではPET樹脂製の基体層である外層511と内層512の間にガスバリア性樹脂であるナイロン樹脂製の中間層513を積層したものである。
【特許文献1】特開平1−254539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記のように主材樹脂であるPET樹脂層に中間層としてナイロン樹脂等のガスバリア性樹脂を積層した2軸延伸ブロー壜体ではPET樹脂層とガスバリア性樹脂層は密着しているものの、多くの場合接着しているわけではない。このため、たとえば炭酸飲料等の内部が加圧状態となる用途では、使用前内部が加圧状態である際には問題ないが、キャップを外した際、急激な圧力の変化に起因する大きな剪断力の作用により両層が剥離することがある。
このように一旦両層が剥離してしまうと、もう一度密着することはなく、剥離界面で光が散乱あるいは反射して剥離していることが外側からも認められ、外観を損ねてしまうと云う問題が生じる。
また2軸延伸ブロー成形後の収縮過程においても、中間層と外層あるいは内層との収縮量の違いにより、層間剥離が発生すると云う問題もある。
【0006】
本発明は、2軸延伸ブローによる積層壜体における上記のような層間剥離の問題を抑制することを課題とするものであり、層間剥離が効果的に抑制された合成樹脂製積層壜体、さらにはこのような積層壜体の成形に用いられる積層プリフォームの成形方法を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決する本発明の、積層プリフォームに係る主たる成形方法は次のようなものである。
射出成形装置を用いた2軸延伸ブロー成形用の試験管状の積層プリフォームの成形方法であって、
成形するプリフォームは、基体層、及び所定の高さ領域で前記基体層の間に中間層を有すると共に、前記所定の高さ領域で、周状及び中心軸方向に複数、並列状に基体層が連結した周帯状連結部と縦帯状連結部を有し、中間層がこれら周帯状連結部と縦帯状連結部により周方向と中心軸方向に分断した積層構造有をするものであり、
基体層を形成する主材樹脂と中間層を形成する中間層樹脂を積層する多重ノズル部を有する射出成形装置を用い、
前記ノズル部において、所定時間、所定の圧力若しくは速度で主材樹脂を基体層を形成する円環状の流路に供給し、
また、前記所定時間範囲内の一定時間、同時に他の供給部から断続的に中間層樹脂を、中間層を形成する円環状の流路に供給すると共に、この流路内で中間層樹脂を周方向に分断し、
この中間層樹脂を、軸方向及び周方向に分断した状態で主材樹脂の間に合流させて積層溶融樹脂流体を形成し、
この積層溶融樹脂流体を金型キャビティに充填する。
【0008】
上記成形方法よれば、主材樹脂を基体層を形成する流路に供給する所定時間範囲内の一定時間、同時に中間層樹脂を中間層を形成する中流路に供給すると云う方法は、所謂、同時射出法と称されるものであり、中流路への中間層樹脂の供給開始時間と供給停止時間を適宜設定することにより、プリフォームの所定の高さ領域に中間層を積層することができる。
【0009】
さらに、この一定時間において断続的に中間層を形成する中間層樹脂を中流路に供給することにより、中間層樹脂の供給を停止した時間帯では流動してきた主材樹脂を周状に直接積層させることができ、その結果、射出成形される積層プリフォームには、周状に断続回数に応じた個数、並列状に基体層が連結した周帯状連結部を形成することができる。
【0010】
一方、中間層を形成する円環状の流路内で中間層樹脂を周方向に分断し、中間層をこのように周方向に分断した状態で基体層の間に積層させることにより、中間層が分断した部分では基体層が連結し、射出成形される積層プリフォームには、中心軸方向にこの遮断縦リブ片の配設個数に応じた個数、並列状に、基体層が連結した縦帯状連結部を形成することができ、
上記周帯状連結部と合せて、所定の高さ領域で、周状及び中心軸方向に複数、並列状に基体層が連結した周帯状連結部と縦帯状連結部を有し、中間層がこれら周帯状連結部と縦帯状連結部により周方向と中心軸方向に分断した積層構造有する積層プリフォームを成形することが可能となる。
【0011】
そして、このような積層プリフォームを2軸延伸ブロー成形することにより、この積層プリフォームの中間層の積層構造に対応して、所定の高さ領域で、周状及び中心軸方向に複数、並列状に基体層が連結した周帯状連結部と縦帯状連結部を有し、中間層が周帯状連結部と縦帯状連結部により周方向と中心軸方向、すなわち縦横に分断した積層構造有する積層壜体を得ることができる。
【0012】
そしてまた、このような積層構造を有する壜体にあっては、主材樹脂製の基体層が連結した周帯状連結部と縦帯状連結部により、中間層を縦横に分断した積層状態とするこができ、基体層と中間層間に作用する剪断力の作用は、左右両端を縦帯状連結部により拘束された状態で作用することになり、その分、成形収縮や、壜体内の圧力変化等に起因する層間剥離の発生を効果的に抑制することができる。
【0013】
なお、上記射出成形装置の構成によれば、多重ノズル内で中間層の両側に基体層を積層すると云う要件を満足する中で、適宜供給部を追加したり、多重ノズルにおいて円環状の流路を追加することにより、基体層と中間層からなる積層プリフォームの積層構造は、さまざまな態様とすることがでる。
たとえば2種3層(基体層/中間層/基体層)、2種5層(基体層/中間層/基体層R/中間層/基体層)、3種4層(基体層/中間層A/中間層B/基体層)、3種4層(基体層/基体層R/中間層/基体層)、3種5層(基体層/中間層A/基体層/中間層B/基体層)、3種5層(基体層/中間層/基体層R/中間層/基体層)等の積層構造とすることができる。
また、中間層が複数形成される場合にも、それぞれの中間層の両側に位置する基体層をノズル内で連結して周帯状連結部や縦帯状連結部を形成することができる。
なお上記説明で中間層Aと中間層Bはこれら中間層が異なる樹脂製であることを示し、基体層Rは主材樹脂のリサイクル品を使用した層であることを示している
【0014】
本発明の合成樹脂製積層壜体に係る他の構成は、上記主たる構成に加えて、
使用する射出成形装置を、
少なくとも、主材樹脂と中間層を形成する中間層樹脂を供給する2ケの樹脂供給部と、この主材樹脂と中間層樹脂を積層する多重ノズル部と、プリフォームを形成する金型を有し、
多重ノズル部が、
少なくとも、主材樹脂による基体層を形成する円環状の内流路及び外流路と、これら内流路と外流路の間に位置し中間層樹脂による中間層を形成する円環状の中流路の3ケの層形成流路を有し、
これら少なくとも3ケの層形成流路の下流側に、各層形成流路を流動する溶融樹脂が合流する合流点を介して合流路を配設し、
中間層樹脂が流動する中流路の所定位置から合流点に至る範囲に、周方向に複数、並列状に、中流路を横断する遮断縦リブ片を配設し、この遮断縦リブ片により中流路を周方向に複数の流路に分断する
構成を有するものとし、
このような射出成形装置を用い、
供給部から所定時間、所定の圧力若しくは速度で基体層を形成する主材樹脂を内流路と外流路に供給し、
また、前記所定時間範囲内の一定時間、同時に他の供給部から断続的に中間層を形成する中間層樹脂を中流路に供給し、
この中流路内で中間層樹脂を遮断縦リブ片により周方向に分断し、合流点で前記中間層樹脂を、軸方向及び周方向に分断した状態で内流路と外流路からの主材樹脂の間に流動させて、合流路内で積層溶融樹脂流体を形成し、
この積層溶融樹脂流体を金型キャビティに充填する、
と云うものである。
【0015】
上記構成は、射出成形装置の詳細な構造に係るものであり、
特に、使用する射出成形装置のノズル部において、中流路の所定位置から合流点に至る範囲に周方向に並列状に配設した複数の遮断縦リブ片により、この中流路を流動する円環状の中間層樹脂を周方向に分断することができ、そして中間層を周方向に分断した状態で基体層の間に積層させることができ、中間層が分断した部分では基体層が連結し、射出成形される積層プリフォームには、中心軸方向にこの遮断縦リブ片の配設個数に応じた個数、並列状に、基体層が連結した縦帯状連結部を形成することができる。
【0016】
本発明の合成樹脂製積層壜体に係るさらに他の構成は、上記主たる構成に加えて、口筒部及び底部を除いた部分を所定の高さ領域とする、と云うものである。
【0017】
中間層を積層する高さ領域、あるいは縦帯状連結部の、本数あるいは横幅等の形成態様は壜体の使用目的、ガスバリア性等の中間層に基づく機能、さらにはプリフォーム、あるいはこのプリフォームを一次成形品とする壜体の成形性(生産性)を考慮して適宜決めることができ、中間層を積層する高さ領域を壜体の全高さ範囲とすることもできる。
ここで、口筒部は、2軸延伸ブロー成形により延伸されていない部分であり、また底部は十分に延伸されていない部分で、中間層を積層することにより変形が発生し易すいので、上記構成のように口筒部と底部は中間層が積層しない領域とすることにより、口筒部におけるキャップによるシール性、あるいは底部において壜体の起立性が損なわれると云う問題を効果的に防ぐことができる。
【0018】
本発明のさらに他の成形方法は、上記主たる方法に加えてプリフォームを主材樹脂と中間層を形成するガスバリア性樹脂からなる2種3層の積層構造を有するものとする、と云うものである。
【0019】
上記構成は、中間層をガスバリア性樹脂製として壜体のガスバリア性を向上させるための構成であり、代表的には、たとえばPET/MXD−6等のナイロン系樹脂/PET、PET/EVOH/PET、PP/EVOH/PPガスバリア性樹脂、PLA/PGA/PLA等の層構成がある。
(上記層構成の記載でEVOHはエチレンビニルアルコール共重合体、PPはポリプロピレン樹脂、PLAはポリ乳酸、PGAはポリグリコール酸を表す。)
【0020】
また、ガスバリア性樹脂製の中間層のバリア性をさらに向上するために、ガスバリア性樹脂に酸素スカベンジャー、酸素吸収剤を混合分散したり、MXD−6ナイロン樹脂に層状ケイ酸塩を分散してナノコンポジット系材料とすることもできる。
また、水分に対するバリア性樹脂としては環状ポリオレフィン系樹脂製の中間層が有効である。

【発明の効果】
【0021】
本発明の積層プリフォームに係る成形方法は上記した方法であり、以下に示す効果を奏する。
すなわち、中間層樹脂を、中間層を形成する流路に断続的に供給することにより、中間層樹脂の供給を停止した時間帯では合流点で、基体層を形成する主材樹脂を周状に連結させることができ、その結果、射出成形される積層プリフォームには、周状に断続回数に応じた個数、並列状に基体層が連結した周帯状連結部を形成することができる。
【0022】
一方、中間層樹脂が流動する円環状の流路において、この中間層を周方向に分断し、そしてこの中間層を周方向に分断した状態で基体層の間に積層させることにより、中間層が分断した部分で基体層を連結させることができ、射出成形される積層プリフォームには、中心軸方向にこの遮断縦リブ片の配設個数に応じた個数、並列状に、基体層が連結した縦帯状連結部を形成することができ、
所定の高さ領域で、周状及び中心軸方向に複数、並列状に基体層が連結した周帯状連結部と縦帯状連結部を有し、中間層がこれら周帯状連結部と縦帯状連結部により周方向と中心軸方向に分断した特殊な積層構造を有する積層プリフォームを成形することができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の積層プリフォームの成形方法について実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1、2は中間層を縦横に分断した状態で積層した壜体の一例を示すものであり、図1(a)は正面図、図1(b)は軸方向での中間層の積層態様を示す縦断面図、図2は図1中のA−A線に沿って示す平断面図である。
この壜体201はPET樹脂を主材樹脂とし、炭酸成分を含む飲料向けに使用される、所謂、耐圧PETボトルで、壜体201は口筒部202、ネックリング203、肩部204、円筒状の胴部205、複数の脚を突出して所謂ペタロイド状の形状とした底部206から成っている。
【0024】
この壜体201の所定の高さ領域h2(この例ではネックリング203の下端直下から底部206の上端部直上に至る高さ領域)では、図1(b)、図2に示されるように主材樹脂であるPET樹脂製の基体層である外層211と内層212の間にガスバリア性樹脂であるポリキシリレンジアミンアジパミド(MXD6ナイロン)樹脂製の中間層213を積層した積層構造を有する。
【0025】
ここで、所定の高さ領域h2において中間層213は、図1(b)に見られるように、基体層である外層211と内層212を連結して壜体201の、軸方向に複数(本実施例では5本)、並列状に形成される周帯状連結部214pにより、中間層213が軸方向に分断されている。
さらに、中間層213は、図2に見られるように、基体層である外層211と内層212を連結して壜体201の、周方向に複数(本実施例では16本)、並列状に、軸方向に沿って縦方向に延設される縦帯状連結部214aにより周方向に分断されている。
【0026】
そして、図1(a)の正面図に見られるように、中間層213は隣接する周帯状連結部214pと、隣接する縦帯状連結部214aにより4辺を囲われるようにして矩形状に分断した状態で外層211と内層212の間に積層している。
なお、上端部に位置する中間層213と下端部に位置する中間層213はそれぞれ、その上端あるいは下端を、中間層213が積層されていないネックリング203を含む口筒部202、あるいは底部206に接している。
なお、図1の正面図では中間層213が積層されている領域をわかり易いようにクロスハッチングにより示しているが、実際には中間層213と外層211あるいは内層212は密着状態にあり、外観上は透明な壜体である。
【0027】
ここで、従来のこの種の耐圧積層PETボトルでは、飲料を飲むにあたってキャップを取り外すと、壜体内部の圧力の急激な低下に伴なって、胴壁が急激に陥没変形し、この急激な変形に伴なって中間層213と外層211あるいは内層212の層間に剪断力が作用し、ナイロン樹脂製の中間層213とPET樹脂製の外層211あるいは内層212は密着しているものの接着はしていないので、層間剥離が発生し、この剥離部分における光の散乱あるいは反射等により外からも剥離していることが認識され、外観が損なわれてしまう。
【0028】
一方、本実施例の積層壜体201では、中間層213を軸方向と周方向に分断する周帯状連結部214pと縦帯状連結部214aの作用効果が発揮され、上記のような圧力の急激な低下によっても層間剥離を効果的に抑制することができ、外観を良好に、透明な状態で維持することができる。
なお、周帯状連結部214pと縦帯状連結部214aによる上記のような層間剥離を抑制する作用効果は、外層(基体層)211/中間層213/内層(基体層)212と云う積層構造が隣接する周帯状連結部214pや隣接する縦帯状連結部214a間と云う短いスパン間で変形するので、これら連結部により区画される、中間層213が積層した小さな領域では変形の大きさが限定されるため、層間に作用する剪断力が抑制されるためと推察される。
【0029】
次に、図3、4は上記した積層壜体201の2軸延伸ブロー成形に使用する一次成形品であると共に、後述する本発明の成形方法により成形される積層プリフォームを示すものであり、図3は部分縦断した正面図、図4は図3中のB−B線に沿って示す平断面図である。
この積層プリフォーム101はPET樹脂を主材料といた試験管状の形状をしたものであり、口筒部102、ネックリング103、円筒状の胴部105、底部106から成っている。
【0030】
そして、このプリフォーム101の積層構造を見ると、
所定の高さ領域h1(本実施例ではネックリング103の下端直下から底部106の上端部直上に至る高さ領域)では、図4の平断面図に示されるように主材樹脂であるPET樹脂製の基体層である外層111と内層112の間にガスバリア性樹脂であるポリキシリレンジアミンアジパミド(MXD6ナイロン)樹脂製の中間層113を積層した積層構造を有する。
【0031】
そして、この中間層113は、図3中の縦断面部分で示されるように、基体層である外層111と内層112を連結してプリフォーム101の、軸方向に複数(本実施例では5本)、並列状に、周帯状連結部114pにより軸方向に分断されていると共に、図4に見られるように、外層111と内層112を連結してプリフォーム101の、周方向に複数(本実施例では16本)、並列状に、軸方向に沿って縦方向に延設される縦帯状連結部114aにより周方向に分断されている。
【0032】
次に、上記した周帯状連結部114pと縦帯状連結部114aにより軸方向と周方向に中間層113を分断した積層構造を有する積層プリフォーム101の成方法についてその実施の形態を説明する。
図5〜図7は本発明の成形方法で使用する射出成形装置の一実施例で、その要部を概略的に示すものであり、図5は多重ノズル部11の一例を示す断面図で下流側に金型1を取り付けた状態を示し、図6は図1の多重ノズル部11の上流側にホットランナーブロック21を組付けた状態を示す断面図であり、図7は図6中のC−C線に沿って示す多重ノズル部11の平断面図である。
【0033】
この、射出成形装置は2種類の異なる樹脂を個別に溶融状態で供給する樹脂供給部A、Bと、2種の溶融樹脂を積層する多重ノズル部11と、プリフォームを形成する金型1を有する。
このうち、多重ノズル部11は基体層である内層と外層を形成する円環状の内流路15および外流路17と、中間層を形成する円環状の中流路16の3ケの層形成流路が配設されており、これら3ケの層形成流路の下流側に、各層形成流路を流動する樹脂が合流する合流点18を介して円筒状の合流路19を配設している。
【0034】
そして、中流路16の所定位置から合流点18に至る範囲に、この中流路16を周方向に複数の流路に分断するように、中流路16を横断する遮断縦リブ片16Rを周方向に複数、並列状に(本実施例では16ケ)配設している。
図7の平断面図によりこの遮断縦リブ片16Rを周方向に複数、並列状に配設した状態をみることができるが、中流路16を横断するように周方向に等中心角度で16ケの遮断縦リブ片16Rが配設されている。
【0035】
さらに詳述すると、図7に示されるように円環状の内流路15、中流路16、外流路17は、同軸心状に内側から外側に向けて配設されるシャットオフピン20、リングマンドレル24c、24d、24eにより形成されており、
遮断縦リブ片16Rはリングマンドレル24cに、周壁を貫通状に形成される貫通スリット24csを挿通して、先端面を外側のリングマンドレル24dの内周面に当接させた状態で中流路16を横断するようにセットされ、この円環状の中流路16を周方向に複数の縦帯状の流路に分断している。
【0036】
次に、上記射出成形装置を使用した、図3、4に示される積層プリフォーム101に係る、本発明の成形方法における工程を説明する。
樹脂供給部Aから供給される主材樹脂であるPET樹脂を供給口22a、ホットランナーである流路23aを経て、そして樹脂供給部Bから供給される中間層樹脂であるナイロン樹脂を供給口22b、流路23bを経て、予め設定されたタイミングで多重ノズル部11に供給し、この多重ノズル部11内でこれら2種(3層)の樹脂を合流させて金型1のキャビティ1a内に充填する。(図6参照)
【0037】
上記樹脂供給部A、Bには、例えばスクリュー式の押出機、あるいは押出機の先端に付設されたプランジャを有したアキュムレータ等の装置が使用される。
【0038】
そして、主材樹脂は流路23aに連通する導入路12aを通って2つのマニホールド14a1、14a2によりそれぞれ円環状の内流路15および外流路17に分配供給される。
また、中間層樹脂は流路23bに連通する導入路12bを通ってマニホールド14bより円環状の中流路16に供給される。
【0039】
そして、合流点18で中流路16からの中間層樹脂を内流路15と外流路17から流入する主材樹脂の間に流動させて、合流路19内で一定の時間範囲に亘って主材樹脂の間に中間層樹脂を同軸心状の中間層とした円柱状の多層溶融樹脂流体を形成し、金型1のキャビティ1a内に射出し、充填する。
ここで、中流路16内で円環状に形成された中間層樹脂は、下流側に周方向に複数、並列状に配設される遮断縦リブ片16Rにより周方向に分断され、この分断された状態で主材樹脂の間に積層され、図3、4に示される積層プリフォーム101の縦帯状連結部114aが形成される。
【0040】
次に、図8は図3に示されるプリフォーム101を成形するための、主材樹脂および中間層樹脂の射出パターンの一例であり、横軸を時間軸、縦軸を射出速度として概略的に示したものである。この射出パターンは所謂、同時射出成形の一つのパタンーンであるが、この例では中間層樹脂の射出の開始と停止を所定の時間間隔で繰り返し(本実施例では6回繰り返している)、中間層113を形成する中間層樹脂を断続的に中流路16に供給するようにしている。
【0041】
図9はこの射出パターンによる金型キャビティ1a内における樹脂の流動を示した説明図である。
図9(a)は射出パターンのE時点直前での状態であり、主材樹脂のみが充填された状態を示す、E時点で断続的な中間層樹脂の射出が開始し、E〜F時点間では中間層樹脂が、主材樹脂の間に、上述したように遮断縦リブ片16Rにより周方向に分断されると共に、図8に示した射出パターンにより軸方向にも分断した状態で積層して、金型キャビティ1aに充填する(図8(b)参照)。
次に、F時点ではバリア樹脂の射出が終了し、再び主材樹脂のみの充填となり、射出工程を終了(図9(c)参照)し、積層プリフォーム101が成形されるが、図8の射出パターンに沿った工程により、図3に示される積層プリフォーム101の周帯状連結部114pが形成される。
【0042】
そして、この周帯状連結部114pと遮断縦リブ片16Rによる縦帯状連結部114aとにより、図3、4に示したような中間層113がこれら周帯状連結部114pと縦帯状連結部114aにより縦横に分断された積層構造を有する積層プリフォーム101を得ることができる。
【0043】
なお、図8の射出パターンに沿って中間層樹脂の供給の開始と停止を、予め決めた所定の時間に高精度に、かつ瞬間的に実施するためには、特に停止時に瞬時に中間層を切るためには、中間層樹脂の供給部Bにおいて、スクリューを瞬時に後退させる、所謂プルバックと云う方法が有効である。
【0044】
以上、実施例に沿って、本発明の積層プリフォームの成形方法の実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
たとえば、本発明の成形方法による積層プリフォームは上記実施例のように2種3層のものに限定されるものではなく、最終的な製品としてのブロー成形壜体の使用目的に応じてさまざまな積層構造とすることができる。
図10は本発明の成形方法によって得られる最終製品である積層壜体の積層構造の他の例を、図2同様の平断面図で示すものであり、(a)、(b)、(c)3つの積層構造を示しており、これら(a)、(b)、(c)はそれぞれ次のような積層構造である。
(a)外側から基体層211/中間層213/リサイクル樹脂を使用した基体層211R/中間層213/基体層211の3種5層である。
(b)外側から基体層211/中間層213A/基体層211/他の中間層213B/基体層211の3種5層である。
(c)は外側から基体層211/中間層213A/他の中間層213B/基体層211の3種4層である。
なお、これら積層構造では、中間層はいずれも両側に積層する基体層が連結した周帯状連結部114pと縦帯状連結部114aにより分断されている。
【0045】
また、上記実施例では周帯状連結部114pを5ケ、縦帯状連結部114aの本数を16ケ形成するようにしたが、これら連結部の形成個数、幅等の形成態様は積層壜体の使用目的、ガスバリア性等の中間層に基づく機能、さらにはプリフォーム、あるいはこのプリフォームを一次成形品とする壜体の成形性(生産性)等を考慮して適宜、決めることができる。
【0046】
また上記実施例では壜体201において周帯状連結部214pについても、縦帯状連結部214aについても、その形成間隔を一定間隔にするようにしているが、必ずしも一定間隔にする必要はなく、層間剥離の発生のし易さ等を考慮してある領域では形成間隔を狭くする等、適宜調整することができる。
また上記例では丸形壜体の例を説明したが、角形壜体とすることもでき、この場合はその形状が等方ではないので、複数の縦帯状連結部の形成位置を上記実施例のように等中心角度にではなく、層間剥離の発生しやすい角度位置を考慮し決めることもできる。
【0047】
また、上記実施例では主体樹脂をPET樹脂、中間層樹脂をナイロン樹脂製としたが、壜体の使用目的や、成形性、そして中間層に期待する機能を考慮して、さまざまな合成樹脂の組み合わせとすることができる。

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の成形方法による積層プリフォームを2軸延伸ブロー成形することにより、周帯状連結部と縦帯状連結部により中間層を縦横に分断した積層構造を有する壜体を容易に得ることができ、またこのような壜体によれば、成形収縮や、壜体内の圧力変化等に起因する中間層と外層あるいは内層との層間剥離を効果的に抑制することができ、炭酸飲料等の分野での幅広い使用展開が期待される。

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】(a)は中間層を縦横に分断した状態で積層した壜体の一例を示す正面図、(b)は軸方向での中間層の積層態様を示す縦断面図である。
【図2】図1中のA−A線に沿って示す平断面図である。
【図3】本発明の成形方法により成形される積層プリフォームを示す部分縦断正面図である。
【図4】図3中のB−B線に沿って示す平断面図である。
【図5】本発明の成形方法に使用する射出成形装置の多重ノズルの一例を示す断面図である。
【図6】図5の多重ノズル部にホットランナーブロックを組付けた状態を示す断面図である。
【図7】図6中のC−C線に沿って示す多重ノズル部の平断面図である。
【図8】図3のプリフォームを成形するための射出パターンの一例を示す説明図である。
【図9】図8の射出パターンによる金型キャビティへの溶融樹脂の充填過程を示す説明図である。
【図10】本発明の成形方法に係る壜体の積層構造の他の例を示す、平断面である。
【図11】積層壜体の従来例を示す正面図である。
【図12】積層プリフォームの従来例を示す部分縦断正面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 ;金型
1a;キャビティ
11;多重ノズル部
12a;(主材樹脂)導入路
12b;(中間層樹脂)導入路
14a1、14a2、14b;マニホールド
15;内流路
16;中流路
16R;遮断縦リブ片
17;外流路
18;合流点
19;合流路
20;シャットオフピン
21;ホットランナーブロック
22a;(主材樹脂)供給口
22b;(中間層樹脂)供給口
23a;流路
23b;流路
24c、24d、24e;リングマンドレル
24cs;貫通スリット
A ;樹脂供給部(主材樹脂用)
B ;樹脂供給部(中間層樹脂用)
101、501;プリフォーム
102、502;口筒部
103、503;ネックリング
105、505;胴部
106、506;底部
111、511;外層(基体層)
112、512;内層(基体層)
113、513;中間層
114p;周帯状連結部
114a;縦帯状連結部
h1;高さ領域
201,601;壜体
202、602;口筒部
203、603;ネックリング
204、604;肩部
205、605;胴部
206、606;底部
211、611;外層(基体層)
212、612;内層(基体層)
213、613;中間層
214p;周帯状連結部
214a;縦帯状連結部
h2;高さ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形装置を用いた2軸延伸ブロー成形用の試験管状の積層プリフォームの成形方法であって、前記積層プリフォーム(101)は、基体層、及び所定の高さ領域で前記基体層の間に中間層(113)を有すると共に、前記所定の高さ領域(h1)で、周状及び中心軸方向に複数、並列状に基体層が連結した周帯状連結部(114p)と縦帯状連結部(114a)を有し、前記中間層(113)が周帯状連結部(114p)と縦帯状連結部(114a)により周方向と中心軸方向に分断した積層構造を有するものであり、前記基体層を形成する主材樹脂と前記中間層(113)を形成する中間層樹脂を積層する多重ノズル部(11)を有する射出成形装置を用い、前記ノズル部(11)において、所定時間、所定の圧力若しくは速度で前記主材樹脂を基体層を形成する円環状の流路に供給し、また、前記所定時間範囲内の一定時間、同時に他の供給部から断続的に中間層樹脂を、中間層を形成する円環状の流路に供給すると共に、該流路内で中間層樹脂を周方向に分断し、該中間層樹脂を、軸方向及び周方向に分断した状態で主材樹脂の間に合流させて積層溶融樹脂流体を形成し、該積層溶融樹脂流体を金型キャビティ(1a)に充填することを特徴とする積層プリフォームの成形方法。
【請求項2】
使用する射出成形装置を、少なくとも、主材樹脂と中間層を形成する中間層樹脂を供給する2ケの樹脂供給部と、該主材樹脂と中間層樹脂を積層する多重ノズル部(11)と、プリフォームを形成する金型(1)を有し、前記多重ノズル部(11)が、少なくとも、主材樹脂による基体層を形成する円環状の内流路(15)及び外流路(17)と、該内流路(15)と外流路(17)の間に位置し中間層樹脂による中間層を形成する円環状の中流路(16)の3ケの層形成流路を有し、該少なくとも3ケの層形成流路の下流側に、各層形成流路を流動する溶融樹脂が合流する合流点(18)を介して合流路(19)を配設し、前記中間層樹脂が流動する中流路(16)の所定位置から合流点(18)に至る範囲に、周方向に複数、並列状に、該中流路(16)を横断する遮断縦リブ片(16R)を配設し、該遮断縦リブ片(16R)により中流路(16)を周方向に複数の流路に分断する構成を有するものとし、前記射出成形装置を用い、前記供給部から所定時間、所定の圧力若しくは速度で基体層を形成する主材樹脂を内流路(15)と外流路(17)に供給し、また、前記所定時間範囲内の一定時間、同時に他の供給部から断続的に中間層を形成する中間層樹脂を中流路(16)に供給し、該中流路(16)内で中間層樹脂を前記遮断縦リブ片(16R)により周方向に分断し、合流点(18)で前記中間層樹脂を、軸方向及び周方向に分断した状態で内流路(15)と外流路(17)からの主材樹脂の間に流動させて、合流路(19)内で積層溶融樹脂流体を形成し、該積層溶融樹脂流体を金型キャビティ(1a)に充填することを特徴とする請求項1記載の積層プリフォームの成形方法。
【請求項3】
プリフォーム(101)において口筒部(102)及び底部(106)を除いた部分を所定の高さ領域(h1)とした請求項1または2記載の積層プリフォームの成形方法。
【請求項4】
プリフォーム(101)を主材樹脂と中間層(113)を形成するガスバリア性樹脂からなる2種3層の積層構造を有するものとした請求項1、2または3記載の積層プリフォームの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−12606(P2010−12606A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171870(P2008−171870)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】