説明

積層体、それに用いる樹脂シート及び該積層体の用途

【課題】2枚の硬質平面板(一方の平面板には内側に段差を有する)を樹脂シートを介して貼合してなる積層体で、ラミローラーの方向性に依存した気泡を効果的に減少させた積層体。
【解決手段】硬質平面板同士が2枚の樹脂シートを介して貼合されてなる積層体であって、前記硬質平面板の一方は、内側に特定高さの長方形の額縁状凸部段差を有しており、前記樹脂シートのうちの一方の樹脂シート(1)と、もう一方の樹脂シート(2)が特定の形状を有し、樹脂シート(1)を額縁状凸部段差を有する面に直接ラミネートしたのち、樹脂シート(2)を樹脂シート(1)面のラミネート方向と直交する方向に、直接ラミネートした積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、それに用いる樹脂シート及び該積層体の用途に関する。さらに詳しくは、2枚の硬質平面板(一方の平面板には内側に段差を有する)を特定の形状を有する2枚の樹脂シートを介してそれぞれ特定の方向に貼合することにより、ラミローラーの方向性に依存した気泡を効果的に減少させ、該樹脂シートの厚みも薄くし得る積層体、特に携帯電話やモバイル機器などの携帯情報端末機器やテレビの画面表示に用いられる内部部材に使用することができる積層体、該積層体に用いられる前記樹脂シート、並びに前記積層体を部材として用いてなる携帯情報端末機器及び静電容量方式タッチパネル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モバイル機器やディスプレイの表示体と保護板を接合するためには、両面テープを用いた額縁状の貼合が一般的であった。しかしながらこの手法では、ディスプレイと保護板との間のエアーギャップ層由来の内部散乱により、画質が低下するとの問題があった。その解決手法として、粘着剤やアクリル樹脂でエアーギャップ層を埋めることで内部反射を低減し、画質を向上させる手法が提案されている。
また近年では、内部電極を外部から隠蔽するためのベゼルをなくし、表示体表面をフラット形状にした“デザイン”が好まれている。この場合、黒化粧印刷をしたフィルムを表面に貼付する手法が取られるが、ガラスの質感を活かしたデザインとするため、額縁印刷したガラスを表示体に貼り合わせる手法が提案されている。
【0003】
しかしながら、ガラスのような剛性の高い平面板と、LCDやPDPモジュールなどの平面とを貼り合わせる際、一部のみ高さの異なる黒額縁印刷が存在すると、気泡なく貼り合わせをすることが困難となる。
また、単純に段差の高さと比較して、膜厚の厚い粘着剤(樹脂層)を用いることでも貼合できるが、抜き加工精度が低下し、端部からの粘着剤の染み出しなどが発生し、歩留まり低下が懸念される。そこで、粘着剤の膜厚200μm以下で、段差のある平面板を貼合する手法が望まれている。
一方、平面板と平面板を貼合する場合、2枚の板を数mmの間隔を置いて保持し、一方の短辺から長辺方向に向かって貼合ローラーを走らせて貼合を行う手法が一般的である。しかしながらこの手法の場合、長辺側の段差には追従しやすいが、短辺側は追従しにくく、粘着剤を厚くする方法でしか対応することができなかった。
【0004】
一方、携帯情報端末機器として、抵抗膜方式、静電容量方式、電磁誘導方式、赤外線方式等のタッチパネルを搭載したものが既に多く上市されているが、その中でも静電容量方式タッチパネルは、2点検出(マルチタッチ)が可能であり、近年のモバイル製品のアプリケーションに対して有効である。静電容量方式タッチパネルは、表面の静電容量の変化を検出する方式であるため、均一な電場が要求される。通常、薄型化、軽量化、貼合時の気泡混入対策にはフィルム方式が有効であるが、均一な電場を形成するためにはガラスなどの平滑な面が有効となる。そのため、静電容量方式タッチパネルでは、平面板同士の貼合が要求される。
【0005】
従来の携帯情報端末機器の内部部材同士を貼合する方法として、特許文献1にはポリウレタンフィルムからなる芯材の両面に粘着剤を用いた両面粘着テープが提案されている。
しかし、特許文献1の両面粘着テープでは、平面板と変形可能なフィルムを貼合する場合は、多少の段差があっても気泡を残すことなく貼付できるが、平面板同士を貼付する場合、つまり変形不可能な面同士の貼合の場合には、気泡を追い出しながら貼合することができないため、貼付面に気泡が混入し、さらに段差に完全に追従することは困難であった。
【0006】
これに対し、特許文献2には動的粘弾スペクトルの損失正接が0.6〜1.5であり、かつ80℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以上である粘着剤層を有する両面粘着シートが提案されている。
特許文献2の両面粘着シートは、表面保護パネルを画像表示パネルに貼付した際に混入する気泡を、オートクレーブ処理によって除去することができ、さらにその後加熱促進を行っても前記気泡が復活せず、新たな気泡も発生しない。
また、特許文献3には、25℃におけるtanδが0.5以上である第1層と25℃におけるtanδが0.5未満である第2層及び25℃におけるtanδが0.5以上である第3層からなるディスプレイ用耐衝撃フィルムが提案されている。
特許文献3のディスプレイ用耐衝撃フィルムにおいても、貼合時に発生した気泡を加熱加圧処理により消泡することができ、経時的に気泡が再発することもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−346032号公報
【特許文献2】特開2008−231358号公報
【特許文献3】特開2009−300506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし前記特許文献2に記載の両面粘着シートや前記特許文献3に記載のディスプレイ用耐衝撃フィルムを、平坦なガラスパネルではなく、段差を有する面に貼付した場合には、オートクレーブ処理後に経時的に気泡が発生することが本発明者らによって確認されている。
本発明は、このような状況下になされたもので、2枚の硬質平面板(一方の平面板には内側に段差を有する)を樹脂シートを介して貼合してなる積層体であって、ラミローラーの方向性に依存した気泡を効果的に減少させると共に、該樹脂シートの厚みも薄くし得る積層体、この積層体の形成に用いられる樹脂シート及び前記積層体の用途を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、前記樹脂シートとして、特定の形状を有する樹脂シート(1)及び樹脂シート(2)の2枚の樹脂シートを用い、まず樹脂シート(1)を額縁状凸部段差を有する面に直接ラミネートしたのち、樹脂シート(2)を樹脂シート(1)面のラミネート方向と直交する方向に、直接ラミネートすることにより、前記の特性を有する積層体が容易に得られること、そしてこの積層体は、携帯情報端末機器及び静電容量方式タッチパネル装置の部材として有用であることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、
[1]硬質平面板同士が2枚の樹脂シートを介して貼合されてなる積層体であって、前記硬質平面板の一方は、内側に高さが0.003〜0.050mmの長方形の額縁状凸部段差を有しており、額縁状凸部段差の外周の一方の辺の長さ(以下、一方の辺と平行な方向をX方向とする)をA(mm)、一方の辺と直交する他方の辺の長さ(以下、他方の辺と平行な方向をY方向とする)をB(mm)、額縁状凸部段差の内周のX方向の長さをa(mm)、Y方向の長さをb(mm)、額縁状凸部段差の高さをc(mm)としたとき、前記樹脂シートのうち一方の樹脂シート(1)のX方向の長さx1(mm)とY方向の長さy1(mm)と膜厚z1(mm)が
0.95×a≦x1<1.05×a(mm)かつ
b≦y1≦B(mm)かつ
c≦z1<100(mm)の関係を満たし、
もう一方の樹脂シート(2)のX方向の長さx2(mm)とY方向の長さy2(mm)と膜厚z2(mm)が
a≦x2≦A(mm)かつ
b−(2×z1)≦y2<1.05×{b−(2×z1)}(mm)かつ
c≦z2(mm)の関係を満たし、
樹脂シート(1)と樹脂シート(2)を積層したときの総厚みz1+2が、2×c≦z1+2≦200(mm)の関係を満たし、樹脂シート(1)を額縁状凸部段差が有する面に直接、Y方向にラミネートした後、樹脂シート(2)を樹脂シート(1)面に直接、X方向にラミネートしたことを特徴とする積層体、
[2]硬質平面板の段差が、印刷層による段差である上記[1]項に記載の積層体、
[3]携帯情報端末機器の画面表示に用いられる上記[1]又は[2]項に記載の積層体、
[4]上記[1]〜[3]項のいずれかに記載の積層体に用いられることを特徴とする樹脂シート、
[5]上記[1]〜[3]項のいずれかに記載の積層体を部材として用いたことを特徴とする携帯情報端末機器、及び
[6]上記[1]〜[3]項のいずれかに記載の積層体を部材として用いたことを特徴とする静電容量方式タッチパネル装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2枚の硬質平面板(一方の平面板には内側に段差を有する)を特定の形状を有する樹脂シートを介して貼合することにより、ラミローラーの方向性に依存した気泡を効果的に減少させ、かつ該樹脂シートの厚みも薄くし得る積層体、特に携帯電話やモバイル機器などの携帯情報端末機器やテレビの画面表示に用いられる内部部材に使用することができる積層体、該積層体に用いられる前記樹脂シート、並びに前記積層体を部材として用いてなる携帯情報端末機器及び静電容量方式タッチパネル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の積層体を構成する各部材の寸法、並びに樹脂シート(1)及び(2)のラミネート方向を示す説明図である。
【図2】本発明の積層体において、印刷段差のY方向の辺側から見た場合の印刷段差と樹脂シート(1)と樹脂シート(2)との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の積層体について説明する。
本発明の積層体は、硬質平面板同士が2枚の樹脂シートを介して貼合されてなる積層体であって、前記硬質平面板の一方は、内側に高さが0.003〜0.050mmの長方形の額縁状凸部段差を有しており、額縁状凸部段差の外周の一方の辺の長さ(以下、一方の辺と平行な方向をX方向とする)をA(mm)、一方の辺と直交する他方の辺の長さ(以下、他方の辺と平行な方向をY方向とする)をB(mm)、額縁状凸部段差の内周のX方向の長さをa(mm)、Y方向の長さをb(mm)、額縁状凸部段差の高さをc(mm)としたとき、前記樹脂シート(1)及び樹脂シート(2)が、それぞれ以下に示す関係式を満たし、かつ樹脂シート(1)と樹脂シート(2)を積層したときの総厚みが下記の関係式を満たすと共に、樹脂シート(1)を額縁状凸部段差が有する面に直接、Y方向へラミネートした後、樹脂シート(2)を樹脂シート(1)面に直接、X方向にラミネートしたことを特徴とする。
【0014】
[硬質平面板]
本発明の積層体は、硬質平面板同士が、後述する2枚の樹脂シートを介して貼合されたものであり、前記硬質平面板の一方は、内側に高さ0.003〜0.050mm、好ましくは0.005〜0.035mm、より好ましくは0.007〜0.025mmの段差を有している。
硬質平面板の材質としては、通常透明なガラス板が用いられる。このガラス板としては、例えばソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英などからなるものを用いることができる。
上記硬質平面板の厚みは、当該積層体の用途にもよるが、通常0.08〜5mm程度、好ましくは0.2〜4mm程度、特に好ましくは0.4〜3mmである。
硬質平面板における前記段差は、通常平面板に対して、紫外線硬化型インクなどを用いて額縁状に加飾印刷層を設けることにより形成される。
図1には、加飾印刷により設けられた長方形の額縁状凸部段差(以下、印刷段差と称することがある。)を有する硬質平面板の一例の斜視図が記載されている。
この斜視図で示されるように、印刷段差の外周のX方向をA(mm)、Y方向の長さをB(mm)、印刷段差の内周のX方向の長さをa(mm)、Y方向の長さをb(mm)、段差の高さをc(mm)とする。
なお、額縁状凸部段差の形状を長方形と表記しているが、本願における長方形とは正方形をも含む概念である。
【0015】
[樹脂シート(1)]
本発明の積層体に用いられる樹脂シート(1)は、2枚の硬質平面板(一方の平面板には内側に前記の段差を有する)を貼合して積層体を作製する際に、段差を有する面に直接ラミネートする部材である。
当該樹脂シート(1)のX方向の長さをx1(mm)、Y方向の長さをy1(mm)、膜厚をz1(mm)とした場合、前述した本発明の効果を奏するためには、下記の関係式(a)、(b)及び(c)
0.95×a≦x1<1.05×a(mm)・・・(a)
b≦y1≦B(mm) ・・・(b)
c≦z1<100(mm) ・・・(c)
をいずれも満たすことが必要である。
前記関係式(a)においては、a≦x1≦1.02×a(mm)であることが好ましい。貼合機の精度には誤差があるため、x1とaが同じ長さであるよりはx1がaよりも大きい方が良い。ただし、貼合する際は、額縁の両側を合わせて1.05倍を超えてくると、気泡が混入してしまう。
前記関係式(b)において、y1<bの場合、印刷段差と樹脂シートの間に隙間が生じるため、良好な視認性を得られない。またB<y1の場合は、樹脂シートが額縁からはみ出てしまい、積層体を使用する後の工程で支障が出る。
また、前記関係式(c)においては、1.1×c≦z1≦80(mm)であることが好ましい。z1がcより低いと、結局額縁に囲まれた部分の厚みが、額縁よりも薄くなり、ラミネート時に気泡が混入する。またz1が100mm以上であると、抜き加工精度の低下や端部からの粘着剤の染み出しの問題がある。
【0016】
[樹脂シート(2)]
本発明の積層体に用いられる樹脂シート(2)は、2枚の硬質平面板(一方の平面板には内側に前記の段差を有する)を貼合して積層体を作製する際に、先に段差を有する面にラミネートされた樹脂シート(1)面に直接ラミネートされる部材である。
当該樹脂シート(2)のX方向長さをx2(mm)、Y方向長さをy2(mm)、膜厚をz2(mm)とした場合、下記の関係式(d)、(e)及び(f)
a≦x2≦A(mm) ・・・(d)
b−(2×z1)≦y2<1.05y×{b−(2×z1)}(mm)・・・(e)
c≦z2(mm) ・・・(f)
をいずれも満たすことが必要である。
前記関係式(d)において、x2<aの場合、ディスプレイのビューエリアを樹脂層で満たすことができず、視認性が著しく低下する。
前記関係式(e)において、y2がb−(2×z1)よりも狭いと、印刷段差を完全に埋めることができず、1.05×{b−(2×z1)}以上であると、ディスプレイを貼合する際、気泡を取り込んでしまうため、十分な効果が得られない。
また、前記関係式(f)において、z2<cであると印刷段差を完全に埋めることができない。
【0017】
本発明の積層体においては、硬質平面板同士を、樹脂シート(1)及び樹脂シート(2)を介して貼合するに際し、まず、樹脂シート(1)を額縁状凸部段差が有する面に直接、額縁状印刷のY方向へラミネートしたのち、樹脂シート(2)を、前記樹脂シート(1)面に直接、額縁状印刷のX方向にラミネートすることが必要である。これにより樹脂シートの変形を打ち消し合い、簡便に気泡なく貼合することができる。
樹脂シートの総厚:z1+2は、2×c≦z1+2≦200(mm)であることが必須であり、3×c≦z1+2≦150(mm)が好ましい。2×c(mm)を下回ると、平面板同士の貼合適性が低下する。また200mmを超えると抜き加工精度が低下し、端部からの粘着剤の染み出しなどが発生して、歩留まり低下が懸念される。
また2枚の樹脂シートは着色されていても良い。2枚は同じ色でもよいし、別の色でもよい。別の色にした場合、その組み合わせによって積層体を透過する光の波長(例えば近赤外線など)と色を制御することができ、特にPDP用途で有用である。
【0018】
本発明の積層体における樹脂シート(1)、(2)の材質は特に限定されないが、例えばアクリル系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。中でも耐候性に優れ、かつ貯蔵弾性率と平面板への粘着力制御が容易であるアクリル系樹脂が特に好ましい。
(アクリル系樹脂)
アクリル系樹脂に特に制限はないが、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が好ましい。
この(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、必要に応じて用いられる架橋性官能基含有エチレン性単量体や他の単量体との共重合体を好ましく挙げることができる。
【0019】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル>
エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
<架橋性官能基含有エチレン単量体>
必要に応じて用いられる架橋性官能基含有エチレン性単量体としては、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を分子内に有するエチレン性単量体であり、好ましくはヒドロキシ基含有エチレン性不飽和化合物、カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物が用いられる。このような架橋性官能基含有エチレン性単量体の具体的な例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等のヒドロキシ基含有アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物が挙げられる。上記の架橋性官能基含有エチレン性単量体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
<他の単量体>
必要に応じて用いられる他の単量体としては、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレートなどの脂環式基含有アクリル酸エステル;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどのN,N−ジアルキル置換アクリルアミド類などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
(アクリル系樹脂シートの作製)
まず、前述した(メタ)アクリル酸エステル、及び必要に応じて用いられる架橋性官能基含有エチレン性単量体や他の単量体を、それぞれ所定の割合で用い、従来公知の方法に従って共重合を行い、重量平均分子量が、好ましくは50万〜150万程度、より好ましくは60万〜130万程度の(メタ)アクリル酸エステル系重合体を製造する。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
次に、樹脂層(A)及び樹脂層(B)作製用の樹脂組成物溶液(A)及び(B)を調製する。なお、樹脂組成物溶液(A)及び(B)は同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。この樹脂組成物溶液(A)及び(B)は、前記で得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、必要に応じて用いられる架橋剤や他の添加剤、例えば粘着付与剤、顔料、染料、フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤などとの混合物に、適当な溶媒を加えて、塗工に適した濃度にすることにより、調製することができる。
【0023】
<架橋剤>
必要に応じて用いられる架橋剤としては、従来アクリル系樹脂において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が、架橋性官能基としてヒドロキシル基を有する場合には、ポリイソシアネート化合物が好ましく、一方カルボキシル基を有する場合には、金属キレート化合物が好ましい。
【0024】
≪ポリイソシアネート化合物≫
ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。上記ポリイソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
≪金属キレート化合物≫
架橋剤として用いられる金属キレート化合物には、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズなどのキレート化合物があるが、性能の点からアルミニウムキレート化合物が好ましい。
アルミニウムキレート化合物としては、例えばジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノ−N−ラウロイル−β−アラネートモノラウリルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(イソブチルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(2−エチルヘキシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(ドデシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(オレイルアセトアセテート)キレートなどが挙げられる。上記金属キレート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明の積層体は、2枚の硬質平面板(一方の平面板には内側に段差を有する)を2枚の樹脂シートを介して貼合してなる積層体であって、前記2枚の硬質平面板を2枚の樹脂シートを介して貼合する際に生じるラミローラーの方向性に依存した気泡を効果的に減少させると共に、該樹脂シートの厚みも薄くすることができ、例えば携帯情報端末機器の画面表示や、テレビの画面表示などに使用される内部部材として好適に用いられる。
【0027】
本発明はまた、前述した本発明の積層体に用いる樹脂シート、及び該樹脂シートを2枚の剥離フィルムで挟持してなる剥離フィルム付き樹脂シートをも提供する。
本発明はさらに、当該積層体を部材として用いてなる、携帯情報端末機器及び静電容量方式タッチパネル装置を提供する。
携帯情報端末機器としては、抵抗膜方式、静電容量方式、電磁誘導方式、赤外線方式等のタッチパネルを搭載したものなどがある。
また、静電容量方式タッチパネルは、表面の静電容量の変化を検出する方式であるため、均一な電場が要求される。均一な電場を形成するためにはガラスなどの平滑な面が有効となり、そのため、静電容量方式タッチパネルでは、硬質平面板同士の貼合が要求されることから当該積層体が有効となる。
【実施例】
【0028】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例における気泡の有無と視認性は下記の方法に従って評価した。
<樹脂シートの膜厚>
得られた樹脂シートの剥離フィルムを取り除いて、JIS K 7130に準じて、定圧厚さ測定器[テクロック社製、製品名「PG−02」]で測定した。
<気泡の有無>
ガラス板[NSGプレシジョン社製、製品名「コーニングガラス イーグルXG」、縦90mm×横50mm×厚み0.5mm]の表面に、紫外線硬化型インク[帝国インキ社製、製品名「POS−911墨」]で、額縁状(外形、縦90mm×横50mm、幅10mm)の印刷を塗布厚み15μmとなるようにスクリーン印刷にて行い、紫外線を照射(80W/cmメタルハライドランプ2灯、ランプ高さ15cm、ベルトスピード10〜15m/分)して硬化し、印刷による段差を有するガラス板を作製した。
印刷段差付きガラスに、ラミネーターを用いて樹脂シート(1)をY方向にラミネートして貼付し、重剥離フィルムを剥離した後、樹脂シート(2)をX方向にラミネートして貼付した。次いでガラス板を貼合した後、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、30分)を行った。額縁印刷の内側を目視観察し、気泡が消失していれば○、残っていれば×とした。
印刷段差付きガラスは印刷段差の外周のX方向をA=90mm、Y方向をB=50mm、印刷段差の内周のX方向をa=70mm、Y方向をb=42mmとし、額縁印刷状段差c(mm)を変更したものを使用した。
<視認性>
気泡の有無を確認したサンプルにおいて、額縁印刷の内側を目視観察し、印刷段差の内側エリアを樹脂シートで完全に覆うことができていれば○、印刷段差の内側エリアを樹脂シートで完全に覆いきれなければ×とした。
【0029】
調製例1 樹脂組成物溶解液1の調製
アクリル系共重合体(ブチルアクリレート単位79質量%、メチルアクリレート単位20質量%、4−ヒドロキシブチルアクリレート単位1質量%、重量平均分子量90万、固形分30質量%)の酢酸エチル溶液100質量部に対し、イソシアネート系架橋剤[綜研化学社製、製品名「TD−75」、固形分濃度75質量%]0.05質量部を加えて、メチルエチルケトンで希釈し、固形分濃度30質量%の樹脂組成物溶解液1を調製した。
【0030】
実施例1〜5及び比較例1〜7
剥離フィルム[リンテック社製、「SP−PET38T103−1」]に、樹脂組成物溶解液1を乾燥後の膜厚が第1表中のz1(mm)とz2(mm)となるようにそれぞれ塗布し、100℃、1分間で乾燥した後、剥離フィルム[リンテック社製、「SP−PET381031H」]をラミネートして膜厚がz1(mm)の樹脂シート(1)のロールサンプルと膜厚がz2(mm)の樹脂シート(2)のロールサンプルを得た。その後、X方向の長さとY方向の長さが第1表中のx1(mm)とy1(mm)、x2(mm)とy2(mm)となるようにそれぞれ裁断し、樹脂シート(1)と樹脂シート(2)を得た。
気泡の有無と視認性の評価結果を第1表に示す。
【0031】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の積層体は、2枚の硬質平面板(一方の平面板には内側に段差を有する)を特定の形状を有する2枚の樹脂シートを介して、それぞれ特定の方向に貼合することにより、ラミローラーの方向性に依存した気泡を効果的に減少させ、該樹脂シートの厚みも薄くし得る積層体であって、視認性にも優れ、特に携帯電話やモバイル機器などの形態情報端末機器やテレビの画面表示に用いられる内部部材に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質平面板同士が2枚の樹脂シートを介して貼合されてなる積層体であって、前記硬質平面板の一方は、内側に高さが0.003〜0.050mmの長方形の額縁状凸部段差を有しており、額縁状凸部段差の外周の一方の辺の長さ(以下、一方の辺と平行な方向をX方向とする)をA(mm)、一方の辺と直交する他方の辺の長さ(以下、他方の辺と平行な方向をY方向とする)をB(mm)、額縁状凸部段差の内周のX方向の長さをa(mm)、Y方向の長さをb(mm)、額縁状凸部段差の高さをc(mm)としたとき、前記樹脂シートのうち一方の樹脂シート(1)のX方向の長さx1(mm)とY方向の長さy1(mm)と膜厚z1(mm)が
0.95×a≦x1<1.05×a(mm)かつ
b≦y1≦B(mm)かつ
c≦z1<100(mm)の関係を満たし、
もう一方の樹脂シート(2)のX方向の長さx2(mm)とY方向の長さy2(mm)と膜厚z2(mm)が
a≦x2≦A(mm)かつ
b−(2×z1)≦y2<1.05×{b−(2×z1)}(mm)かつ
c≦z2(mm)の関係を満たし、
樹脂シート(1)と樹脂シート(2)を積層したときの総厚みz1+2が、2×c≦z1+2≦200(mm)の関係を満たし、樹脂シート(1)を額縁状凸部段差が有する面に直接、Y方向にラミネートした後、樹脂シート(2)を樹脂シート(1)面に直接、X方向にラミネートしたことを特徴とする積層体。
【請求項2】
硬質平面板の段差が、印刷層による段差である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
携帯情報端末機器の画面表示に用いられる請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の積層体に用いられることを特徴とする樹脂シート。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の積層体を部材として用いたことを特徴とする携帯情報端末機器。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の積層体を部材として用いたことを特徴とする静電容量方式タッチパネル装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−251502(P2011−251502A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128531(P2010−128531)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】