説明

積層型電子部品の製造方法

【課題】割れや欠けが少なく、しかも素子本体の端面から内部電極層の端部を確実に露出させて端子電極との接続が良好で、生産性に優れた積層型電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】複数の焼成後の素子本体4を準備する。複数の素子本体4を、二以上の支持体32の内面にそれぞれ形成してある熱可塑性樹脂層34の間に挟み込んで配列させる。熱可塑性樹脂34を加熱して素子本体4相互間の隙間を当該熱可塑性樹脂34で埋めて支持体32間に素子本体4を保持する。支持体32間に保持された素子本体4の露出端面4cを研磨する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品の製造方法に係り、さらに詳しくは、割れや欠けが少なく、しかも生産性に優れた積層型電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の製造方法では、内部電極層が形成してある素子本体の端面に端子電極を形成する前に、素子本体の端面から内部電極層の端部を確実に露出させて端子電極との接続を図るために、バレル研磨を行うことが知られている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、素子本体の端面から内部電極層の端部をバレル研磨により露出させようとしても、素子本体の端面に形成された内部電極層の電極端凹部に、バレル研磨による素子本体の削りかすなどが入り込み、内部電極層の端部が素子本体の端面に露出しないなどの問題がある。内部電極層の端部が素子本体の端面から完全に露出しないと、その素子本体の端面に形成される端子電極と内部電極層との接続が不完全になり、必要とする電気特性が得られないおそれがある。
【0004】
そこで、バレル研磨時間を長くして、内部電極層の端部を、素子本体の端面から完全に露出させようとすると、素子本体への負担が大きくなり、素子本体に割れや欠けが生じ、不良品が増えるおそれがある。
【特許文献1】特開2004−79919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、割れや欠けが少なく、しかも素子本体の端面から内部電極層の端部を確実に露出させて端子電極との接続が良好で、生産性に優れた積層型電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る積層型電子部品の製造方法は、
複数の焼成後の素子本体を準備する工程と、
複数の前記素子本体を、二以上の支持体にそれぞれ形成してある熱可塑性樹脂層の間に挟み込んで配列させる工程と、
前記熱可塑性樹脂を加熱して、前記素子本体相互間の隙間、および/または前記支持体と前記素子本体との隙間を、前記熱可塑性樹脂で埋めて前記支持体間に前記素子本体を保持する工程と、
前記支持体間に保持された前記素子本体の露出端面を研磨する工程と、
を有する。
【0007】
本発明に係る積層型電子部品の製造方法では、素子本体相互間の隙間を当該熱可塑性樹脂で埋めて支持体間に素子本体を保持してあるので、複数の素子本体を同時に良好に保持することができる。そのため、その状態で、素子本体の端面を研磨するために、素子本体の端面が正確に研磨され、端面を平坦化して内部電極層の端部を完全に露出することが可能になる。
【0008】
内部電極層の端部を完全に露出することができれば、素子本体の端面に形成される端子電極と内部電極層との接続が確実になり、素子本体の電気特性が向上する。たとえば静電容量のバラツキなどを低減することができる。
【0009】
しかも、研磨に際して、素子本体相互間の隙間を当該熱可塑性樹脂で埋めて支持体間に素子本体を保持してあるので、素子本体に割れや欠けが生じ難い。さらに、素子本体を支持体から取り出す際にも、素子本体に割れや欠けが生じ難い。
【0010】
好ましくは、前記支持持体の少なくとも一方の端面に対して、前記素子本体の露出端面が面一または突き出ている。さらに好ましくは、支持体の両側の端面に対して、前記素子本体の露出端面が、それぞれ面一または突き出ている。このような構成にすることで、支持体間に素子本体を保持した状態で、素子本体の両側の露出端面を、順次、または同時に研磨することができる。
【0011】
前記支持体間に前記素子本体を保持した状態で、研磨後の前記露出端面に露出している内部電極層の端部と接続する端子電極を当該露出端面に形成しても良い。素子本体相互間の隙間を当該熱可塑性樹脂で埋めて支持体間に素子本体を保持してあるので、端子電極を形成する際に、素子本体の端面から側面まで端子電極が過度に回り込むことを抑制することができ、端子電極間のショート不良などを防止することができる。
【0012】
好ましくは、前記端子電極を形成した後に、前記支持体間に前記素子本体を保持した状態で、前記素子本体の電気特性を測定する。支持体間に素子本体を保持した状態で測定を行うことで、測定時のハンドリングが容易になり、一度に多数の素子本体の測定が可能になる。
【0013】
好ましくは、前記支持体間に隣接して保持される前記素子本体同士が少なくとも一部接触している。素子本体同士が少なくとも一部接触することで、熱可塑性樹脂の加熱時に、素子本体相互間の隙間を当該熱可塑性樹脂で埋め易くなる。また、端子電極を形成する際に、素子本体の端面から側面まで端子電極が過度に回り込むことを抑制することができる。
【0014】
好ましくは、前記素子本体の角部が丸みを有している。角部の丸みは、たとえば焼成前の素子本体をバレル加工することなどで形成することができる。角部に丸みを持たせることで、仮に素子本体の端面が支持体の端面と面一であったとしても、素子本体の端面に端子電極を形成する際に、素子本体の側面まで適度に端子電極の回り込み部を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る方法により製造される積層セラミックコンデンサの概略断面図、
図2は図1に示す積層セラミックコンデンサを製造する過程で得られるグリーン積層体の要部断面図、
図3(A)は図2に示すグリーン積層体を切断して焼成後の素子本体を支持体で挟み込んだ状態を示す図、図3(B)は支持体と素子本体との位置関係を示す概略図、
図4(A)は図3(A)に示すIVA−IVA線に沿う要部断面図、図4(B)および図4(C)はそれぞれ図4(A)の変形例を示す要部断面図、
図5は素子本体の端面の研磨工程を示す概略図、
図6は研磨工程の必要性を示す要部断面図、
図7は本発明の一実施形態に係る製造方法により得られる積層セラミックコンデンサの概略斜視図である。
【0017】
まず、本発明の実施形態に係る方法により製造される積層型電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、素子本体4と、第1端子電極6と第2端子電極8とを有する。素子本体4は、第1内部電極層12および第2内部電極層13を有し、第1内側誘電体層10および第2内側誘電体層11の間に、これらの内部電極層12,13が交互に積層してある。
【0019】
素子本体4は、その積層方向の両端面に、外側誘電体層14を有する。交互に積層される一方の第1内部電極層12は、素子本体4の第1端部の外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の第2内部電極層13は、素子本体4の第2端部の外側に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある。
【0020】
第1および第2内側誘電体層10,11および外側誘電体層14の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。各内側誘電体層10,11の厚みは、特に限定されないが、数μm〜数十μmのものが一般的である。また、外側誘電体層14からなる外層部の厚みは、特に限定されないが、好ましくは10〜200μmの範囲である。
【0021】
端子電極6および8の材質も特に限定されないが、通常、Ni,Pd,Ag,Au,Cu,Pt,Rh,Ru,Ir等の少なくとも1種、又はそれらの合金を用いることができる。通常は、Cu,Cu合金、Ni又はNi合金等や、Ag,Ag−Pd合金、In−Ga合金等が使用される。端子電極6および8の厚みも特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
【0022】
積層セラミックコンデンサ2の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。積層セラミックコンデンサ2が直方体形状の場合は、通常、縦(0.2〜5.7mm)×横(0.1〜5.0mm)×厚み(0.1〜3.2mm)程度である。
【0023】
次に、本発明の一実施形態としての積層セラミックコンデンサ2の製造方法について説明する。
【0024】
まず、図2に示すグリーン積層体4aを形成する。このグリーン積層体4aを形成するために、図2に示すように、第1内部電極パターン12aが形成された第1グリーンシート10aと、第2内部電極パターン13aが形成された第2グリーンシート11aとを交互に積層し、グリーン積層体4aを形成する。
【0025】
グリーンシート10a,11aを形成するための誘電体用ペーストは、通常、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。本実施形態では、これらのペーストは、有機溶剤系ペーストであることが好ましい。
【0026】
なお、有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。
【0027】
内部電極パターン12a,13aを形成するための内部電極用ペーストは、各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。なお、内部電極用ペーストには、必要に応じて、共材としてセラミック粉末が含まれていても良い。共材は、焼成過程において導電性粉末の焼結を抑制する作用を奏する。
【0028】
グリーンシート10a,11aは、上記の誘電体用ペーストを用いたドクターブレード法などで形成される。また、グリーンシート10a,11aの各表面に内部電極パターン12a,13aを形成するには、上記の内部電極用ペーストを用いてスクリーン印刷などを行えばよい。
【0029】
グリーン積層体4aにおける第1グリーンシート10aは、最終的には図1に示す第1内側誘電体層10となる部分であり、第2グリーンシート11aは、最終的には図1に示す第2内側誘電体層11となる部分である。また、第1内部電極パターン12aは、最終的には図1に示す第1内部電極層12となる部分であり、第2内部電極パターン13aは、最終的には図1に示す第2内部電極層13となる部分である。
【0030】
図2では、図示の容易化のために、グリーン積層体4aにおける内部電極層12aおよび13aの積層数を少なく図示してあるが、数層から数百層と自由に設定することができる。
【0031】
なお、グリーン積層体4aにおける積層方向Zの厚みは、焼成後において、図1に示す素子本体4の厚みに対応する。
【0032】
図2に示すように、グリーン積層体4aにおいて、第1内部電極パターン12aと第2内部電極パターン13aとは、パターン12a,13aの長手方向X(以下、X軸とも言う)に沿って、半パターンずらしてある直線の繰り返しパターンである。
【0033】
また、パターン12a,13aの長手方向Xと積層方向Z(以下、Z軸とも言う)との双方に垂直であるY方向(以下、Y軸とも言う)に沿って見れば、第1内部電極パターン12aと第2内部電極パターン13aとは、同じピッチ長さの分離した直線パターンである。
【0034】
図2では、グリーン積層体4aと素子本体要素4bとの関係を分かりやすくするために、最終的な切断予定線30を図示してある。素子本体要素4bは、図1に示す素子本体4となる部分である。
【0035】
本実施形態では、切断予定線30に沿ってグリーン積層体4aを切断して、グリーンチップとし、そのグリーンチップを、焼成前にバレル加工し、グリーンチップの角部および稜線部に丸みを持たせる。その後に、それらのグリーンチップに脱バインダ処理および焼成処理を施し、図2に示す焼結後の素子本体4を得る。脱バインダ処理および焼成処理の諸条件は特に限定されないが、焼成温度としては、たとえば1000〜1400°Cである。なお、焼成前のバレル研磨は行わずに、焼成後の素子本体4に対してバレル研磨を行っても良い。
【0036】
図3(A)に示すように、焼結後の素子本体4は、焼成前または後のバレル研磨により、角部および稜線部に丸みを有する。これらの素子本体4は、支持体としての支持板32の内面にそれぞれ形成してある樹脂層34の間に挟み込んで一列に配列してある。支持板32は、特に限定されないが、たとえばフェライト、ポリイミド、SUSなどのように、比較的に剛性があり、100〜200℃では熱変形しない材料で構成される。
【0037】
樹脂層34は、熱可塑性樹脂で構成され、100〜200℃の温度の加熱処理で軟化する樹脂が好ましく、具体的には、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポロピレンなどの熱可塑性樹脂が好ましい。また、スパッタ処理などのように減圧チャンバ内での処理時にガスなどが発生しない樹脂であることが好ましい。
【0038】
各支持板32の内面に付着して形成してある樹脂層34の厚みt1は、素子本体4の幅寸法t0の1/2以下であり、好ましくは1/4〜1/10である。樹脂層34は、各支持板32の内面に、厚みt1の樹脂フィルムを接着あるいは溶着することで形成される。熱処理前には、樹脂層34の厚みt1は、面方向に沿って均一である。
【0039】
素子本体4は、支持板32の内面に付着してある樹脂層34の間で、図4(A)〜図4(C)に示すように、内部電極層12または13が露出する端面4cまたは4dが、支持板32の少なくとも一方の端面32aに対して、面一または突き出るように保持される。
【0040】
図4(A)に示す例では、素子本体4における内部電極層12が露出する端面4cが支持体32の一方の端面32aに対して、突き出ており、内部電極層13が露出する端面4dは、支持体32の他方の端面32bに対して面一である。また、図4(B)に示す例では、素子本体4における内部電極層12が露出する端面4cが支持体32の一方の端面32aに対して面一であると共に、内部電極層13が露出する端面4dは、支持体32の他方の端面32bに対して面一である。さらに、図4(C)に示す例では、素子本体4における内部電極層12が露出する端面4cが支持体32の一方の端面32aに対して面一であると共に、内部電極層13が露出する端面4dは、支持体32の他方の端面32bに対して引っ込んである。
【0041】
本実施形態では、複数の素子本体4を支持板32間に列方向に挟み込んだユニットを行方向に複数配列し、それらを、着脱自在な支持枠体で囲み、ひとまとめにしてある。その状態で、これらを、たとえば100〜200℃および0.1〜1.0時間の条件で熱処理する。
【0042】
このような熱処理により、支持板32の内面に形成してある樹脂層34が軟化し、素子本体4相互間の隙間、および/または支持体32と素子本体4との隙間が樹脂で埋められて支持板32間に素子本体4が固定される。なお、熱処理時には、支持板32の相互間に加圧力が加わるようにすることが好ましいが、熱処理が終了した後には、素子本体4相互間の隙間が樹脂で埋められて支持板32間に素子本体4が固定されるので、加圧は必要が無くなる。
【0043】
次に、本実施形態では、図5に示すように、素子本体4が間に取り付けられた複数の支持板32の他方の端面32bを研磨用保持板40に着脱自在に取り付け、素子本体4の端面4cを、研磨定盤44に接触させて研磨する。研磨用保持板40には、素子本体4が間に取り付けられた複数の支持板32のみが取り付けられるのでなく、支持枠体と共に、取り付けられていも良い。
【0044】
なお、研磨の際には、研磨定盤44を回転させても良いし、研磨定盤44を直線往復移動させても良い。また、研磨処理に際して、研磨用保持板40は、研磨定盤44に対して、反対方向に回転または回動しても良く、さらには公転運動をしても良い。保持板40の上面には、加圧用マイクロアクチュエータ42が装着してあっても良く、支持板32の長手方向に沿って、微妙に研磨定盤44への加圧力を調整しても良い。図5では、素子本体4の端面4cを、支持板32の端面32aから突出させて描いてあるが、素子本体4の端面4cと支持板32の端面32aとが面一でも同様にして研磨処理を行うことができる。
【0045】
研磨手段は、特に限定されず、ラッピング研磨、ポリシング研磨、エッチング研磨、サンドブラストなどが例示される。焼成後の素子本体4で研磨処理前には、素子本体4の端面4cには、図6に示すように、内部電極層12の電極端凹部39が形成される。これは、素子本体4の焼成時における内部電極層12,13と誘電体層10,11との収縮挙動の相違に基づくと考えられている。
【0046】
素子本体4の端面4cを、図5に示す研磨定盤44に接触させて研磨処理を行うことで、素子本体4の端面4cが研磨され、電極端凹部39が無くなり、内部電極層12の電極端が素子本体4の端面4cに対して面一に露出する。図4(A)〜図4(C)に示す素子本体4の他方の端面4dに対しても、上述と同様にして研磨処理を行うことができる。図4(A)および図4(B)に示す例の場合には、素子本体4を、支持板32から取り外すことなく、素子本体4の他方の端面4dの研磨処理を行うことができる。ただし、図4(C)に示す例の場合には、素子本体4を支持板32からいったん取り外し、素子本体4の他方の端面4dを支持板32の他方の端面32bに対して面一または飛び出させてから、研磨処理を行う必要がある。
【0047】
次に、本実施形態では、素子本体4を支持板32で挟み込んだ状態で、研磨処理後に、湿式法の一種であるペースト法、あるいは乾式法の一種であるスパッタリング法により、図1および図7に示す第1および第2端子電極6および8を形成する。ペースト法では、素子本体4を支持板32で挟み込んだ状態で、素子本体4の端面4c,4dに順次、図1および図7に示す第1および第2端子電極6および8となる電極ペーストを塗布し、焼き付け処理を行う。焼き付け処理時の温度条件などは、特に限定されない。その後にメッキ法で、電極ペースト膜の上にメッキ膜を積層しても良い。
【0048】
スパッタリング法で、第1および第2端子電極6および8を形成するには、図4(A)〜図4(C)に示すように、研磨処理後の素子本体4を支持板32で挟み込んだ状態で、スパッタリング用チャンバ内に、素子本体4を支持板32と共に収容し、スパッタリング処理を行う。スパッタリング時には、たとえば銅、ニッケルおよび錫の順でスパッタリングを行い、これらの三層構造の端子電極6および8を形成することができる。端子電極6および8は、スパッタリングにより同時に形成しても良いし、別々に形成しても良い。
【0049】
図3(A)に示すように、スパッタリング時には、支持板32の間に一列に配置される素子本体4の相互間の隙間には、加熱処理により樹脂層34の一部が入り込んでいるために、素子本体4の端面4cまたは4dから側面まで端子電極が過度に回り込むことを抑制することができ、端子電極間のショート不良などを防止することができる。
【0050】
また、図3(B)に示すように、素子本体4の角部36が丸みを有していることで、仮に素子本体4の端面4cが支持板32の端面32aと面一であったとしても、素子本体4の端面4cに端子電極を形成する際に、素子本体4の側面まで適度に端子電極の回り込み部を形成することができる。すなわち、図7に示すように、端子電極6および8の回り込み部Bを形成することができる。しかも、回り込み部B同士がつながって短絡不良になることもない。
【0051】
上述した例では、スパッタリングなどの乾式法で端子電極を形成する場合を例に取り説明したが、ペースト法などの湿式法で端子電極を形成する場合にも同様なことが言える。
【0052】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2の製造方法では、素子本体4相互間の隙間を樹脂層34で埋めて支持体32間に素子本体4を保持してあるので、複数の素子本体4を同時に良好に保持することができる。そのため、その状態で、素子本体4の端面4cまたは4dを研磨するために、素子本体4の端面4cが正確に研磨され、端面4cを平坦化して内部電極層12または13の端部を完全に露出することが可能になる。
【0053】
内部電極層12または13の端部を完全に露出することができれば、素子本体4の端面に形成される端子電極6または8と内部電極層12または13との接続が確実になり、素子本体4の電気特性が向上する。たとえば静電容量のバラツキなどを低減することができる。
【0054】
しかも、研磨に際して、素子本体4の相互間の隙間を樹脂層34で埋めて支持体32間に素子本体4を保持してあるので、素子本体4に割れや欠けが生じ難い。さらに、素子本体4を支持体32から取り出す際にも、素子本体4に割れや欠けが生じ難い。
【0055】
また、本実施形態では、端子電極6、8を形成した後に、支持体32間に素子本体4を保持した状態で、素子本体4の電気特性を測定する。支持体32間に素子本体4を保持した状態で測定を行うことで、測定時のハンドリングが容易になり、一度に多数の素子本体4の測定が可能になる。
【0056】
また、本実施形態では、図3(A)に示すように、支持体4間に隣接して保持される素子本体4同士が少なくとも一部接触している。素子本体4同士が少なくとも一部接触することで、樹脂層34の加熱時に、素子本体4相互間の隙間を樹脂で埋め易くなる。また、端子電極6または8を形成する際に、素子本体4の端面4cまたは4dから側面まで端子電極が過度に回り込むことを抑制することができる。
【0057】
すなわち、本実施形態に係る製造方法によれば、図7に示すように、正確な寸法精度L、W,T,Bを有する積層セラミックコンデンサ2を製造することができる。
【0058】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。たとえば、本発明の方法は、積層セラミックコンデンサに限らず、その他の積層型電子部品に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る方法により製造される積層セラミックコンデンサの概略断面図である。
【図2】図2は図1に示す積層セラミックコンデンサを製造する過程で得られるグリーン積層体の要部断面図である。
【図3】図3(A)は図2に示すグリーン積層体を切断して焼成後の素子本体を支持体で挟み込んだ状態を示す図、図3(B)は支持体と素子本体との位置関係を示す概略図、である。
【図4】図4(A)は図3(A)に示すIVA−IVA線に沿う要部断面図、図4(B)および図4(C)はそれぞれ図4(A)の変形例を示す要部断面図である。
【図5】図5は素子本体の端面の研磨工程を示す概略図である。
【図6】図6は研磨工程の必要性を示す要部断面図である。
【図7】図7は本発明の一実施形態に係る製造方法により得られる積層セラミックコンデンサの概略斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
2… 積層セラミックコンデンサ
4… 素子本体
4a… グリーン積層体
4b… 素子本体要素
4c,4d… 端面
6… 第1端子電極
8… 第2端子電極
10… 第1内側誘電体層
10a… 第1グリーンシート
11… 第2内側誘電体層
11a… 第2グリーンシート
12… 第1内部電極層
12a… 第1内部電極パターン
13… 第2内部電極層
13a… 第2内部電極パターン
30… 切断予定線
32… 支持板
32a,32b… 端面
34… 樹脂層
40… 研磨用保持板
44… 研磨定盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の焼成後の素子本体を準備する工程と、
複数の前記素子本体を、二以上の支持体にそれぞれ形成してある熱可塑性樹脂層の間に挟み込んで配列させる工程と、
前記熱可塑性樹脂を加熱して、前記素子本体相互間の隙間、および/または前記支持体と前記素子本体との隙間を、前記熱可塑性樹脂で埋めて前記支持体間に前記素子本体を保持する工程と、
前記支持体間に保持された前記素子本体の露出端面を研磨する工程と、
を有する積層型電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記支持体の少なくとも一方の端面に対して、前記素子本体の露出端面が面一または突き出ている請求項1に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記支持体間に前記素子本体を保持した状態で、研磨後の前記露出端面に露出している内部電極層の端部と接続する端子電極を当該露出端面に形成する工程をさらに有する請求項1または2に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記端子電極を形成した後に、前記支持体間に前記素子本体を保持した状態で、前記素子本体の電気特性を測定する工程を、さらに有する請求項1〜3のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記支持体間に隣接して保持される前記素子本体同士が少なくとも一部接触している請求項1〜4のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記素子本体の角部が丸みを有している請求項1〜5のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−164190(P2009−164190A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339565(P2007−339565)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】