説明

積層型電池モジュールおよびこれに用いられる電池

【課題】密閉確保用部材や外部短絡防止用部材を省いて電池モジュールの体積および重量を低減することが可能で、かつ種々の仕様の機器に柔軟に対応可能な電池モジュールを提供する。
【解決手段】積層型電池モジュール(B)を構成する電池(C)のケーシング(9)を、導電性の板材から形成された正極端子部材(3)および負極端子部材(5)と、両端子部材(3,5)間に介在し、かつ当該ケーシング(9)の外周部を形成する、絶縁性材料からなる枠部材(7)と、前記枠部材(7)と前記正極端子部材(3)との間、および前記枠部材(7)と前記負極端子部材(5)との間にそれぞれ介在するシール部材(31)とで構成し、前記枠部材(7)の外周部に貫通孔(37)を複数設け、前記貫通孔に積層方向に挿通された連結部材(1)によって複数の前記単位電池(C)が連結することにより、電池モジュール(B)を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単位電池を積層して構成される積層型電池モジュール、および、この積層型電池モジュールを構成する単位電池の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーやCO削減への配慮から、風力発電や太陽光発電のような自然エネルギーを利用した発電設備で使用する電力平準化用の二次電池が開発されている。また、同様に環境問題対策として、自動車や電車などの車両に搭載する二次電池が開発されている。車両に二次電池を搭載した場合には、ブレーキ時の回生電力をこの搭載電池に蓄えておき、車両の動力源として使用することができるので、車両運行のエネルギー効率を高めるとともに、COの排出量を削減することができる。
【0003】
上記のような車両用の電池には、従来の携帯機器等に用いられるものに比べて、高電圧および高エネルギー容量が要求されるため、複数個の電池を組み合わせて構成した電池モジュールを使用することが一般的である。複数の電池を組み合わせて電池モジュールとして用いるための単位電池の構造として、例えば、対向配置された正・負極それぞれの端子部材を兼ねる2つの蓋状の部材間に、絶縁性材料からなる矩形の枠部材を介在させて電池のケーシングを形成し、電極体および電解液を収納するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような構造を有する電池を使用すれば、隣接する電池の一方の正極端子部材と他方の負極端子部材とが互いに接触するように複数の電池を積層させるだけで、複数の角形電池を直列に接続することができるので、電池モジュールの構造を簡単にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/125544号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記電池の密閉は、主として、複数個の電池を積層した電池モジュール全体を積層方向に締め付けるための、板状部材や固定用部材によって確保されている。また、2つの蓋状部材の側部が対向方向に折り曲げられて、枠部材の外周部の一部を覆っているので、蓋状部材間で外部短絡が起こるのを防止するために、電池の積層体を絶縁用部材で覆う必要がある。電池のケーシング構造を改良することにより、これらの密閉確保用部材および外部短絡防止用部材を省くことができれば、電池モジュールの体積および重量を大幅に低減することが可能となる。
【0006】
また、電池モジュールが使用される機器の仕様に応じて、電池モジュールを構成する電池の積層数を変更することにより電池モジュールの寸法や出力電圧を変更する場合、上記の従来の電池モジュールでは、密閉確保用部材や外部短絡防止用部材など多くの部品の設計を変更する必要があり、柔軟な対応が困難であった。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題を解決するために、組立てが容易な構造を有しながら、従来の電池モジュール構造に必要とされた密閉確保用部材や外部短絡防止用部材を省いて電池モジュールの体積および重量を低減することが可能で、かつ種々の仕様の機器に柔軟に対応可能な電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を達成するために、本発明に係る積層型電池モジュール用電池は、複数の電池を積層してなる積層型電池モジュールを構成する電池であって、セパレータを介して互いに対向する正極および負極を含む電極体を電解液とともに収納するケーシングを備えており、当該ケーシングが、導電性の板材から形成され、電池の外部に露出する部分が正極端子として機能し、電池の内部に向く面が正極集電面として機能する正極端子部材と、導電性の板材から形成され、前記正極端子部材に対向して配置されて、電池の外部に露出する部分が負極端子面として機能し、電池の内部に向く面が負極集電面として機能する負極端子部材と、前記正極端子部材および負極端子部材の間に介在し、かつ当該ケーシングの外周部を形成する、絶縁性材料からなる枠部材と、前記枠部材と前記正極端子部材との間、および前記枠部材と前記負極端子部材との間にそれぞれ介在するシール部材とを有しており、前記枠部材の外周部に、前記正極端子部材と負極端子部材とが対向する方向に貫通する貫通孔が複数設けられている。
【0009】
また、本発明に係る電池モジュールは、上記の電池を単位電池として、複数の該単位電池を、隣接し合う単位電池の一方の前記正極端子部材と他方の負極端子部材とが対向する方向に積層してなる積層型電池モジュールであって、積層された複数の単位電池の各々に設けられた前記貫通孔に積層方向に挿通された連結部材によって複数の前記単位電池が連結されている。
【0010】
この構成によれば、正極及び負極端子部材と枠部材との間にシール部材を設けているので、各単位電池の枠部材に設けられた貫通孔に挿通された、連結ボルトのような長尺の連結部材のみによって電池モジュールを構成することが可能になり、電池の密閉性確保のための締め付け用部材を追加する必要がない。また、単位電池のケーシングの外周部が絶縁性材料によって形成されているので、さらなる絶縁用部材で覆う必要がない。したがって、電池モジュールが大幅に小型化、軽量化できる。さらに、電池モジュールにおける単位電池の積層数を変更する場合、連結部材の長さ寸法のみを変更すればよいので、多様な機器に対して柔軟に仕様変更することが可能となる。
【0011】
本発明の一実施形態に係る電池において、前記正極端子部材が、平板状の正極端子面部と、この正極端子面部に突設された、互いに平行に延びる複数の正極側突条部とを有しており、前記負極端子部材が、平板状の負極端子面部と、この正極端子面部に突設された、互いに平行に延びる複数の負極側突条部とを有していることが好ましい。また、この電池を用いる積層型電池モジュールにおいて、隣接する一方の単位電池の前記正極端子面部および前記正極側突条部と、他方の単位電池の前記負極端子面部および前記負極側突条部とによって冷却用空気の通路が形成されていることが好ましい。このように構成することにより、積層される単位電池間に冷却空気用通路を別途設ける必要がないので、電池モジュールのさらなる小型化、軽量化を図りつつ、電池モジュール内部を効率的に冷却することができる。
【0012】
また、本発明の一実施形態に係る電池において、前記枠部材の、前記突条部の延設方向における一端部に、前記対向方向に貫通する開口が設けられていることが好ましい。また、この電池を用いる積層型電池モジュールにおいて、積層方向に並ぶ各開口によって形成された空間が、前記冷却用空気通路に連通する空気導入路を形成していることが好ましい。この構成によれば、冷却用空気の導入路を確保するための部材を電池モジュール内に別途設ける必要がないので、電池モジュールのさらなる小型化、軽量化を図りつつ、電池モジュール内部を効率的に冷却することができる。
【0013】
また、本発明の一実施形態に係る電池において、前記電極体が、前記セパレータを介して互いに対向するシート状の前記正極と前記負極とを捲回してなる円筒形状を有して、その軸心方向が前記対向方向に沿うように配置されており、前記電極体の軸心方向の一端部から前記正極が突出して前記正極集電面に接触し、前記電極体の軸心方向の他端部から前記負極が突出して前記負極集電面に接触していてもよい。このように構成することにより、電極体の、両端子部材間の対向方向に対する機械的強度が増すので、両端子部材を対向方向に強く押し付けることができる。したがって、電極体と各端子部材との接触抵抗を低減して、電池の内部抵抗を下げることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係る積層型電池モジュールによれば、単位電池の密閉性を向上させ、かつ、外部短絡の発生しにくいケーシング構造とすることにより、従来の電池モジュール構造に必要とされた密閉確保用部材や外部短絡防止用部材を省いて電池モジュールの体積および重量を低減することが可能であるので、電池モジュールの大幅な小型化および軽量化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る積層型電池モジュールの構造を示す図であり、(a)が平面図、(b)が部分破断側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る単位電池を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る電池に使用される電極体の構造を示す図であり、(a)が縦断面図、(b)が平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る電池に使用される正極端子部材を示す正面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る電池に使用される枠部材を示す正面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る電池に使用される正極端子部材および負極端子部材の形状の例を示す平面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る電池に使用される枠部材を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る電池モジュールに使用される端板を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係る電池モジュールBの構造を示す。この電池モジュールBは、例えば、電車のような車両に搭載されるものであって、角形電池である単位電池(以下単に「電池」という。)Cを、電池Cの厚み方向に複数個(この実施形態では30個)積層し、連結部材である長尺の連結ボルト1および連結ナット2によってこれらの単位電池Cを互いに連結することにより構成している。電池モジュールBの構造については、後に詳述する。
【0018】
図2は、電池Cの構造を示す断面図である。電池Cは、水酸化ニッケルを主要な正極活物質とし、水素吸蔵合金を主要な負極活物質とし、アルカリ系水溶液を電解液とするニッケル水素二次電池として構成されており、互いに対向するように配置された正極端子部材3および負極端子部材5と、両端子部材3,5間に介在する、絶縁性材料からなるほぼ矩形の枠部材7とによって、電池Cの角形のケーシング9が構成されている。なお、以下の説明において、両端子部材3,5が対向する方向を単に対向方向Xと呼ぶ。さらに、矩形の枠部材7の互いに対向する2組の辺の一方の対向方向を横方向Yと呼び、これに直交する他方の対向方向を縦方向Zと呼ぶ。
【0019】
同図に示すように、ケーシング9の内方には、セパレータを介して互いに対向する正極13および負極15を含む電極体17が、電解液とともに収容されている。電極体17は、図3に示すように円筒状に形成されており、その軸心が対向方向Xに沿うように配置されている。図3(a)に示すように、電極体17は、正極活物質を含むシート状の正極13と、負極活物質を含むシート状の負極15と、これら正極13、負極15間に介在する2枚のシート状の第1セパレータ19、第2セパレータ21とを備える。両セパレータ19,21は、正極13、負極15間を電気絶縁するとともに、各セパレータ19,21に含まれる電解液を介してイオンを伝導させる。
【0020】
正極13、第1セパレータ19、負極15および第2セパレータ21は、この順に密着するように重ね合わされた状態から、図3(b)に示すように、電極体17の最外周層が第2セパレータ21になるように渦巻き状に捲回されている。すなわち、第1セパレータ19と第2セパレータ21とが、電極体17の径方向内側に向かって正極13と負極15との間に形成される複数の層間に交互に介在する。
【0021】
また、電極体17の軸心方向の一端部(図3(a)の上端部)において、負極15の一端部15aが突出しており、電極体17の軸心方向の他端部(図3(a)の下端部)において、正極13の一端部13aが突出している。一方、正極13の他方の端部13bおよび負極15の他方の端部15bは、それぞれ、これらセパレータ19、21から突出しないように配置されている。これら端部13b、15bを、セパレータ19,21の端部を折り曲げることによりセパレータ19,21で覆ってもよい。なお、正極13の配置と負極15の配置とは入れ替えてもよい。
【0022】
したがって、図2に示すように、正極13の端部13aは、正極端子部材3の電池内部に向く面に接触している。つまり、正極端子部材3の電池内部に向く面は、正極側の集電面として機能する。これにより、正極端子部材3の電池外部に露出する部分が、電池Cから電流を取り出す際の正極側の端子として機能する。同様に、負極端子部材5の電池内部に向く面は、負極側の集電面として機能し、電池外部に露出する部分は、負極側の端子として機能する。なお、正極13の端部13aは、正極端子部材3の集電面に対して、単に圧接されていてもよく、または、溶接、接着もしくはかしめ等によって接合されていてもよい。負極側についても同様である。
【0023】
電極体17は、上記の円筒状構造に限らず、例えば、正極13と負極15とがプリーツ状のセパレータを介して交互に積層されて対向するプリーツ構造を有するものであってよい。しかし、本実施形態のように構成することにより、電極体17の、対向方向Xに対する機械的強度が増すので、両端子部材3,5を対向方向Xに強く押し付けることができる。したがって、電極体17と各端子部材3,5との接触抵抗を低減して、電池Cの内部抵抗を下げることが可能となる。
【0024】
正極端子部材3は、平板状の正極端子面部3aと、正極端子面部3aの一方の主面側に突出する複数の正極側突条部3bとを有する。本実施形態では、各正極側突条部3bは、正極端子部材3に一体的に突設された立壁として形成されている。正極端子部材3の正面図である図4に示すように、複数の正極側突条部3bは、正極端子面部3aの縦方向Zの一端から他端まで、互いに平行に延びており、横方向Yに等間隔に配置されている。図2に示すように、負極端子部材5は、正極端子部材3とほぼ同様の構造を有しており、平板状の負極端子面部5aと、負極端子面部5aの一方の主面側に突出する複数の負極側突条部5bとを有する。
【0025】
複数の電池Cが積層された状態で、互いに隣接する2つの電池Cのうちの、一方の電池Cの正極端子部材3の突条部3bと、他方の電池Cの負極端子部材5の突条部5bとは、冷却空気を通過させるための冷却通路25を形成する。より詳細には、各電池Cの正極側突条部3bの正極端子面部3aからの高さ寸法と、負極側突条部5bの負極端子面部5aからの高さ寸法とはほぼ同一に設定されており、かつ、一方の電池Cの各突条部3bの横方向Yの位置は、他方の電池Cの各突条部5bの横方向位置からずれるように設定されている。したがって、一方の電池Cにおける正極端子部材3の突条部3bの先端3baは、他方の電池Cにおける負極端子部材5の端子面部5aに接触し、他方の電池Cにおける負極端子部材5の突条部5bの先端5baは、一方の電池Cにおける正極端子部材3の端子面部3aに接触し、両突条部3b、5b間に形成された空間が、冷却通路25となる。なお、本実施形態において、一方の電池Cの各突条部3bの横方向Yの位置は、他方の電池Cの隣接する2つの突条部5b,5bのほぼ中央位置となるように設定されており、各冷却通路25はほぼ同一の流路断面積を有している。
【0026】
このように、正極端子部材3の正極側突条部3bと、負極端子部材5の負極側突条部5bとが互いに干渉せずに所定の位置に交互に配置されるように、正極端子部材3および負極端子部材5の一側面には、図4に示すように、誤配置防止用突起27が設けられており(図4では正極端子部材3のみ図示)、枠部材7を示す正面図である図5に示すように、枠部材7における、誤配置防止用突起27に対応する位置には、誤配置防止用凹所29が設けられている。
【0027】
なお、本実施形態では、複数の正極側突条部3bおよび複数の負極側突条部5bを、それぞれ横方向Yに等間隔に配置したが、これら突条部3b,5bの配置間隔は適宜変更してよい。また、正極側突条部3b、負極側突条部5bとして、本実施形態のように、正極側端子面部3aに一体に突設された立壁として形成することが、部品数を低減して電池C全体を軽量化する点からは好ましいが、この例に限らず、例えば図6に示すように、平板状の正極端子面部3aとは別体に、板状の金属板を山形(図6(a))や台形(図6(b))に形成して正極側突条部3bを作製し、これら正極端子面部3aと正極側突条部3bとを組み合わせて正極端子部材3として用いてもよい。負極端子部材5についても同様である。なお、この場合は、両突条部3b、5b間に形成された空間のほかに、正極端子面部3aと正極側突上部3bとの間に形成された空間、および負極端子面部5aと負極側突上部5bとの間に形成された空間も冷却通路25として機能する。
【0028】
正極端子部材3および負極端子部材5は、本実施形態では、ニッケルめっきを施した鋼板によって形成されている。これら端子部材3,5は、金属のような導電性を有していればどのようなものを用いてもよく、例えばアルミニウムを使用することができるが、耐電解液性(本実施形態では耐アルカリ性)を有していることがより好ましい。耐電解液性を付与するために、端子部材3,5の少なくとも電解液に触れる部分にニッケルめっきを施すことが好ましい。電解液に触れない部分、例えば冷却通路25を形成する各突条部3b、5bには、ニッケルめっきではなく、例えばクロムめっきを施してもよい。
【0029】
また、図2に示すように、枠部材7の、対向方向Xの両端部における内周部には、正極端子部材3および負極端子部材5を受けるための凹部7a、7bが形成されている。したがって、これら凹部7a,7bに正極端子部材3および負極端子部材5の各端子面部3a,5aが配置された状態で、正極端子部材3および負極端子部材5は、縦方向Zおよび横方向Yにおいて、枠部材7の内側に位置する。換言すれば、枠部材7の外周部7cは、ケーシング9の外周部を形成している。
【0030】
さらに、各凹部7a、7bには、枠部材7と各端子部材3,5との間をシールするための各シール部材31を収容する、対向方向Xに凹む収容溝33が設けられている。各収容溝33は、図5に示すように、枠部材7の全周に渡って延びている。本実施形態では、この収容溝33に、シール部材31として、弾性材料からなる環状のOリング(図2)が収容されている。このOリングを構成する材料としては、例えば、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)が好ましい。また、Oリングのみならず、封止補助剤として、例えばアスファルトピッチを併用することにより、ケーシング9をより確実にシールすることができる。なお、シール部材31を形成する材料としては、EPDMのほかにも、例えば、ネオプレンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム等のエラストマーを使用することができる。また、封止補助剤としては、アスファルトピッチのほかに、例えば、フッ素系撥水剤を使用することができる。
【0031】
枠部材7の矩形の開口の4つの角部の各近傍には、対向方向Xに貫通する貫通孔37が設けられている。なお、この貫通孔37は、後述するように、図1の複数の電池Cを連結する連結ボルト1を挿通させるための孔であり、その形状、数および配置は、電池C同士の連結を行うことが可能な範囲で適宜変更してよい。
【0032】
図7に斜視図で示すように、枠部材7における、凹部7a(7b)の縦方向Zの外側には、それぞれ、対向方向Xに凹む連通凹部7d,7eが設けられている。さらに、枠部材7の、前記冷却通路25(図2)の延設方向(この例では縦方向Z)の一端部(この例では連通凹部7e側)には、対向方向Xに貫通する開口39が設けられている。電池Cを冷却するための空気は、これら連通凹部7d,7eおよび開口39を介して冷却通路25に出入りする。なお、図5に示すように、この開口39の横方向Y(つまり、複数の冷却通路25の並び方向)の最長部分の両端は、横方向Yの両端に位置する冷却通路25よりも外側に位置するように設定されている。
【0033】
さらに、枠部材7の一辺(この例では上辺)には、ケーシング9の内部と外部を連通させる連通路を形成する管状の連通管41が2つ設けられている。本実施形態の例では、2つの連通管41,41は、対向方向Xにほぼ直交する方向(この例では横方向Y)に互いに異なる位置に配置されている。電池の組立て時には、この連通管41は注液口として使用される。また、枠部材7の一辺(この例では上辺)上の、対向方向Xにほぼ直交する方向(この例では横方向Y)にさらに異なる位置に、ほぼ対向方向Xに沿って延設されるケーブル類を拘束するための配線拘束部43が一体的に形成されている。
【0034】
枠部材7を形成する素材は、機械的強度、耐熱性、および耐電解液性に優れる絶縁性材料で形成されることが好ましく、本実施形態では、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂を使用している。
【0035】
次に、図1に示す、単位電池Cを用いて構成した電池モジュールB全体の構造について説明する。本実施形態における電池モジュールBにおいて、複数の単位電池Cは、隣接する単位電池Cの一方の正極端子部材3と、他方電池Cの負極端子部材5とが互いに対向するように積層されている。
【0036】
このように積層された複数の単位電池Cは、各単位電池Cの枠部材7に設けられた貫通孔37に、前記連結ボルト1を電池Cの積層方向(すなわち対向方向X)に挿通し、連結ボルト1の先端(この例では両端)に連結ナット2を螺合させて、これら単位電池Cを積層方向に締め付けることにより、互いに連結されている。
【0037】
このように複数の電池Cが積層された状態で、隣接する電池C,C間には、上述のように冷却通路25が形成され、また、冷却通路25の下方に、積層方向に並ぶ枠部材7の各開口39によって形成された空間が、冷却通路25に連通する空気導入路49を形成している。このように、電池Cを構成する部材を利用して冷却通路25や空気導入路49を形成することにより、積層される単位電池C間に冷却空気用通路を別途設けたり、冷却用空気の導入路を確保するための部材を設けたりする必要がないので、電池モジュールBのさらなる小型化、軽量化を図りつつ、電池モジュールBの内部を効率的に冷却することができる。
【0038】
複数の単位電池Cからなる電池積層体の両端には、それぞれ、平板状の導電性材料からなる集電板51,51が配置されており、さらにその外側に、絶縁性材料からなる端板53,53が配置されている。各集電板51のほぼ中央位置には、円柱状のモジュール端子体55が突設されている。モジュール端子体55は、例えば、円柱状の金属部材を溶接により板状の集電板本体に接合した後、中心部分にタップ加工を施すことにより形成される。一方、端板53の、モジュール端子体55に対応する位置には、モジュール端子体55を挿通させて電池モジュールBの外部に露出させるための端子挿通孔57が設けられている。
【0039】
また、図8に示すように、端板53には、電池モジュールBの内部に冷却用空気を送るための送風機61と、送風機61からの空気を前記空気導入路49に導入する空気導入ダクト63が設けられている。送風機61は、端板53上の端子挿通孔57のやや下方に設けられて、冷却用空気を下方に送出するように設置されている。空気導入ダクト63は、送風機61のやや下方の、空気導入路49に対応する上下方向位置に設けられており、上方の送風機61から下向きに送られてきた空気を取り入れて、空気導入路49へ導入する。
【0040】
さらに、図1(a)に示すように、各電池Cに設けられた2つの連通管41,41は、それぞれ、異なる側に隣接する電池Cの連通管41と、可撓性の連通部材である連結管67を介して順次接続されている。このように構成することにより、例えば、末端の電池Cの一方の連通管41を圧力監視用の圧力計や圧力調整弁等を接続することにより、電池モジュールB全体の内圧、すなわち各電池Cの内圧の平均値を監視および調整することが可能になる。
【0041】
上述のように、極端子部材および負極端子部材5は、それぞれ、単位電池Cの正極側端子および負極側端子として機能する。この場合、図1に示すように複数の単位電池Cを積層して電池モジュールBとして使用する際に、隣接する単位電池Cの一方の正極端子部材3と他方の負極端子部材5を重ねて接触させることにより、これら2つの単位電池Cを直列に接続することができる。したがって、追加の接続部材が不要であり、電池モジュールBの小型化、軽量化、および組立作業の簡素化が可能となる。
【0042】
上記で説明した実施形態に係る電池Cによれば、正極端子部材3及び負極端子部材5と枠部材7との間にシール部材31を設けているので、各単位電池Cの枠部材7に設けられた貫通孔37に挿通された、連結ボルト1のような長尺の連結部材のみによって電池モジュールBを構成することが可能になり、電池Cの密閉性確保のための締め付け用部材を追加する必要がない。また、単位電池Cのケーシング9の外周部が絶縁性材料によって形成されているので、さらなる絶縁用部材で覆う必要がない。したがって、電池モジュールBが大幅に小型化、軽量化できる。さらに、使用される機器の設置スペースや出力電圧に適合させるために、電池モジュールBにおける単位電池Cの積層数を変更する場合、連結部材の長さ寸法のみを変更すればよいので、多様な機器に対して柔軟に仕様変更することが可能となる。
【0043】
なお、本実施形態においては、単位電池Cをニッケル水素二次電池として構成したが、本発明は、これに限らず、各種一次電池および二次電池、例えば、ニッケルカドミウム電池やリチウムイオン電池などに適用することが可能である。また、ケーシング9の形状は角形に限らず、例えば円筒形状であっても本発明を適用することができる。
【0044】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1 連結ボルト(連結部材)
2 連結ナット
3 正極端子部材
3a 正極端子面部
3b 正極側突条部
5 負極端子部材
5a 負極端子面部
5b 負極側突条部
7 枠部材
9 ケーシング
13 正極
15 負極
17 電極体
19 第1セパレータ
21 第2セパレータ
25 冷却通路
31 シール部材
37 貫通孔
49 空気導入通路
C 電池
X 正極端子部材と負極端子部材の対向方向
Y 電池の横方向
Z 電池の縦方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池を積層してなる積層型電池モジュールを構成する電池であって、セパレータを介して互いに対向する正極および負極を含む電極体を電解液とともに収納するケーシングを備えており、
当該ケーシングが、
導電性の板材から形成され、電池の外部に露出する部分が正極端子として機能し、電池の内部に向く面が正極集電面として機能する正極端子部材と、
導電性の板材から形成され、前記正極端子部材に対向して配置されて、電池の外部に露出する部分が負極端子面として機能し、電池の内部に向く面が負極集電面として機能する負極端子部材と、
前記正極端子部材および負極端子部材の間に介在し、かつ当該ケーシングの外周部を形成する、絶縁性材料からなる枠部材と、
前記枠部材と前記正極端子部材との間、および前記枠部材と前記負極端子部材との間にそれぞれ介在するシール部材と、
を有しており、
前記枠部材の外周部に、前記正極端子部材と負極端子部材とが対向する方向に貫通する貫通孔が複数設けられている、
積層型電池モジュール用電池。
【請求項2】
請求項1において、前記正極端子部材が、平板状の正極端子面部と、この正極端子面部に突設された、互いに平行に延びる複数の正極側突条部とを有しており、前記負極端子部材が、平板状の負極端子面部と、この正極端子面部に突設された、互いに平行に延びる複数の負極側突条部とを有している積層型電池モジュール用電池。
【請求項3】
請求項2において、前記枠部材の、前記突条部の延設方向における一端部に、前記対向方向に貫通する開口が設けられている積層型電池モジュール用電池。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、前記電極体が、前記セパレータを介して互いに対向するシート状の前記正極と前記負極とを捲回してなる円筒形状を有して、その軸心方向が前記対向方向に沿うように配置されており、前記電極体の軸心方向の一端部から前記正極が突出して前記正極集電面に接触し、前記電極体の軸心方向の他端部から前記負極が突出して前記負極集電面に接触している積層型電池モジュール用電池。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電池を単位電池として、複数の該単位電池を、隣接し合う単位電池の一方の前記正極端子部材と他方の負極端子部材とが対向する方向に積層してなる積層型電池モジュールであって、
積層された複数の単位電池の各々に設けられた前記貫通孔に積層方向に挿通された連結部材によって複数の前記単位電池が連結されている、
積層型電池モジュール。
【請求項6】
請求項5において、各単位電池は、請求項2に記載の正極端子部材および負極端子部材を有しており、隣接する一方の単位電池の前記正極端子面部および前記正極側突条部と、他方の単位電池の前記負極端子面部および前記負極側突条部とによって冷却用空気の通路が形成されている積層型電池モジュール。
【請求項7】
請求項6において、各単位電池の前記枠部材には、請求項3に記載の開口が設けられており、積層方向に並ぶ各開口によって形成された空間が、前記冷却用空気通路に連通する空気導入路を形成している積層型電池モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−114832(P2013−114832A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258545(P2011−258545)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】