空気入りタイヤの製造方法
【課題】空気入りタイヤの転がり抵抗を低減する構造を提供すること。
【解決手段】円筒形状の環状構造体10と、環状構造体10の外側に、環状構造体10の周方向に沿って設けられてトレッド部となる未加硫のゴム層11Gと、ゴムで被覆された繊維を有し、環状構造体10と未加硫のゴム層11Gとを含む円筒形状の構造体2の幅方向両側に少なくとも設けられるカーカス部12と、を含む空気入りタイヤのグリーンタイヤ1Gを、加硫金型20の内部に配置する。加硫金型20は、環状構造体の幅方向内側の位置でサイドプレート20Sa、20Sbとセクター20Cとが分割されている。次に、サイドプレート20Sa、20Sbを閉じた後、セクター20Cを閉じる前に、グリーンタイヤ1Gの内部のブラダー21を昇圧させる。そして、セクター20Cを閉じて加硫を開始する。
【解決手段】円筒形状の環状構造体10と、環状構造体10の外側に、環状構造体10の周方向に沿って設けられてトレッド部となる未加硫のゴム層11Gと、ゴムで被覆された繊維を有し、環状構造体10と未加硫のゴム層11Gとを含む円筒形状の構造体2の幅方向両側に少なくとも設けられるカーカス部12と、を含む空気入りタイヤのグリーンタイヤ1Gを、加硫金型20の内部に配置する。加硫金型20は、環状構造体の幅方向内側の位置でサイドプレート20Sa、20Sbとセクター20Cとが分割されている。次に、サイドプレート20Sa、20Sbを閉じた後、セクター20Cを閉じる前に、グリーンタイヤ1Gの内部のブラダー21を昇圧させる。そして、セクター20Cを閉じて加硫を開始する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの製造方法及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの転がり抵抗を低減することは、自動車の燃費を改善するために有用である。タイヤの転がり抵抗を低減するため、例えばシリカ配合のゴムをトレッドに適用する等の技術がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】土井昭政、「タイヤにおける最近の技術動向」、日本ゴム協会誌、1998年9月 Vol.71、p.588−594
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載されている空気入りタイヤの転がり抵抗を低減する手法は、材料に改良を加えるものであるが、空気入りタイヤの構造を変更することによって転がり抵抗を低減できる可能性もある。本発明は、構造を変更することによって転がり抵抗を低減した空気入りタイヤを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、円筒形状の環状構造体と、前記環状構造体の外側に、前記環状構造体の周方向に沿って設けられてトレッド部となる未加硫のゴム層と、ゴムで被覆された繊維を有し、前記環状構造体と前記未加硫のゴム層とを含む円筒形状の構造体の幅方向両側に少なくとも設けられるカーカス部と、を含む空気入りタイヤのグリーンタイヤを、前記環状構造体の幅方向内側の位置でサイドプレートとセクターとが分割された加硫金型の内部に配置する手順と、前記サイドプレートを閉じた後、前記セクターを閉じる前に、前記グリーンタイヤの内部のブラダーを昇圧させる手順と、前記セクターを閉じて加硫を開始する手順と、を含むことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法である。
【0006】
本発明において、前記環状構造体は前記未加硫のゴム層に埋設されており、前記未加硫のゴム層の径方向外側における表面に露出しないことが好ましい。
【0007】
本発明において、前記空気入りタイヤは、幅方向外側における前記環状構造体の端部から幅方向外側に向かって15mmまでの領域において、前記空気入りタイヤを所定の空気圧としたときの前記トレッド部の子午断面における輪郭形状は、前記空気入りタイヤの内側に向かって凹む円弧を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、構造を変更することによって転がり抵抗を低減した空気入りタイヤを製造する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本実施形態に係るタイヤの子午断面図である。
【図2−1】図2−1は、本実施形態に係るタイヤが有する環状構造体の斜視図である。
【図2−2】図2−2は、本実施形態に係るタイヤが有する環状構造体の平面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係るタイヤが有するカーカス部の拡大図である。
【図4】図4は、環状構造体とゴム層との子午断面図である。
【図5】図5は、本実施形態の変形例に係るタイヤを示す子午断面図である。
【図6】図6は、従来の加硫金型を用いて本実施形態及びその変形例に係るタイヤを製造する例を示す図である。
【図7】図7は、本実施形態に係る加硫金型を用いて本実施形態及びその変形例に係るタイヤを製造する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0011】
空気入りタイヤ(以下、必要に応じてタイヤという)の転がり抵抗を低減するため、タイヤの偏心変形を極限まで高めると、タイヤと路面との接地面積が小さくなり接地圧が増加する。その結果、トレッド部の変形による粘弾性エネルギ損失が大きくなり、転がり抵抗が増加する。本発明者らは、この点に注目し、タイヤと路面との接地面積を確保し、かつ偏心変形を維持することによって、転がり抵抗を低減し、かつ操安性を向上させることを試みた。偏心変形とは、タイヤのトレッドリング(クラウン領域のこと)が円形を保ったまま垂直に変位する一次モードの変形である。タイヤと路面との接地面積を確保し、かつ偏心変形を維持するため、本実施形態に係るタイヤは、例えば、金属の薄板で製造される円筒形状の環状構造体の外側に、前記環状構造体の周方向に向かってゴム層を設け、このゴム層をトレッド部として設置させる構造とする。
【0012】
図1は、本実施形態に係るタイヤの子午断面図である。図2−1は、本実施形態に係るタイヤが有する環状構造体の斜視図である。図2−2は、本実施形態に係るタイヤが有する環状構造体の平面図である。図3は、本実施形態に係るタイヤが有するカーカス部の拡大図である。図1に示すように、タイヤ1は、環状の構造体である。前記環状の構造体の中心を通る軸がタイヤ1の中心軸(Y軸)となる。タイヤ1は、使用時において、内部に空気が充填される。
【0013】
タイヤ1は、中心軸(Y軸)を回転軸として回転する。Y軸は、タイヤ1の中心軸かつ回転軸である。タイヤ1の中心軸(回転軸)であるY軸に直交し、かつタイヤ1が接地する路面と平行な軸をX軸、Y軸とX軸とに直交する軸をZ軸とする。Y軸と平行な方向がタイヤ1の幅方向である。Y軸を通り、かつY軸に直交する方向がタイヤ1の径方向である。また、Y軸を中心とする周方向が空気入りタイヤ1の周方向(図1の矢印CRで示す方向)である。
【0014】
図1に示すように、タイヤ1は、円筒形状の環状構造体10と、ゴム層11と、カーカス部12と、を含む。環状構造体10は、円筒形状の部材である。ゴム層11は、環状構造体10の径方向外側における表面10soに、環状構造体10の周方向に向かって設けられることで、タイヤ1のトレッド部となる。カーカス部12は、図3に示すように、ゴム12Rで被覆された繊維12Fを有する。本実施形態において、図1に示すように、カーカス部12は、環状構造体10の径方向内側を通って、両方のビード部13間を連結している。すなわち、カーカス部12は、両方のビード部13、13間で連続している。なお、カーカス部12は、環状構造体10の幅方向における両側に設けられて、両方のビード部13、13間で連続していなくてもよい。このように、カーカス部12は、図3に示すように、少なくとも環状構造体10とゴム層11とを含む円筒形状の構造体2の中心軸(Y軸)と平行な方向(すなわち幅方向)における両側に設けられていればよい。
【0015】
タイヤ1は、構造体2の子午断面において、ゴム層11の外側11so(タイヤ1のトレッド面)と、環状構造体10の径方向外側における表面10soとが、トレッド面に形成された溝Sの部分を除いて同様の形状であり、平行(公差、誤差を含む)であることがより好ましい。
【0016】
図2−1、図2−2に示す環状構造体10は、金属の構造体である。すなわち、環状構造体10は、金属材料で造られている。環状構造体10に用いる金属材料は、引張強度が450N/m2以上2500N/m2以下であることが好ましく、600N/m2以上2400N/m2以下であることがより好ましく、さらには、800N/m2以上2300N/m2以下が好ましい。環状構造体10は、引張強度がこのような範囲であれば、充分な強度及び剛性を確保できるとともに、必要な靱性を確保できる。環状構造体10に用いることができる金属材料は、引張強度が前述した範囲であればよいが、ばね鋼、高張力鋼、ステンレス鋼又はチタン(チタン合金を含む)を用いることが好ましい。これらのうち、ステンレス鋼は耐食性が高く、また、前述した引張強度の範囲のものを得やすいので好ましい。
【0017】
環状構造体10の引張強度(MPa)と厚み(mm)との積を耐圧パラメータとする。耐圧パラメータは、タイヤ1に充填される気体(例えば、空気又は窒素等)の内圧に対する耐性の尺度となるパラメータである。耐圧パラメータは、200以上1700以下、250以上1600以下とすることが好ましい。この範囲であれば、タイヤ1の使用圧力の上限を確保し、安全性を十分に確保することができる。また、前記範囲であれば、環状構造体10の厚みを増加させず、また、破断強度の高い材料を用いる必要がないので、量産に好適である。環状構造体10の厚みを増加させる必要がないため、環状構造体10は繰り返し曲げの耐久性を確保できる。また、破断強度の高い材料を用いる必要がないことから、低コストで環状構造体10及びタイヤ1を製造できる。乗用車用タイヤ(PCタイヤ)として、耐圧パラメータは、200以上1000以下が好ましく、250以上950以下がより好ましい。小型トラック用タイヤ(LTタイヤ)として、耐圧パラメータは、300以上1200以下が好ましく、350以上1100以下がより好ましい。トラック/バス用タイヤ(TBタイヤ)として、耐圧パラメータは、500以上1700以下が好ましく、600以上1600以下がより好ましい。
【0018】
環状構造体10をステンレス鋼で製造する場合、JIS G4303の分類における、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼を用いることが好ましい。これらのステンレス鋼を用いることにより、引張強度及び靱性が優れた環状構造体10とすることができる。また、前述したステンレス鋼のうち、特に、析出硬化ステンレス鋼(SUS631、SUS632J1)を用いるとより好ましい。
【0019】
環状構造体10は、内周面と外周とを貫通する複数の貫通孔を有していてもよい。環状構造体10の径方向外側と径方向内側との少なくとも一方にはゴム層11が取り付けられる。ゴム層11は、環状構造体10と化学的な結合により環状構造体に取り付けられる。貫通孔は、環状構造体10とゴム層11との物理的な結合を強化する作用がある。このため、貫通孔を有する環状構造体10は、化学的及び物理的な作用(アンカー効果)によりゴム層11との結合強度が向上するので、ゴム層11と確実に固定される。その結果、タイヤ1の耐久性が向上する。
【0020】
貫通孔は、1つの断面積が0.1mm2以上100mm2以下であることが好ましく、より好ましくは0.12mm2以上80mm2以下、さらに好ましくは0.15mm2以上70mm2以下である。このような範囲であれば、カーカス部12の凹凸を抑制し、かつ、接着による結合、すなわち、化学的な結合も十分に利用することができる。さらに、上述した範囲であれば、上述した物理的作用、すなわち、アンカー効果が最も効果的に発生する。これらの作用により、環状構造体10とゴム層11との結合を強化することができる。
【0021】
環状構造体10が貫通孔を有する場合、その形状は問わないが、円形か楕円形が好ましい。また、貫通孔は、等価直径4×A/C(Cは貫通孔の周長、Aは貫通孔の開口面積)を0.5mm以上10mm以下とすることが好ましい。貫通孔は、形状が円形かつ直径は1.0mm以上8.0mm以下がより好ましい。このような範囲であれば、物理的及び化学的結合を有効に利用できるので、環状構造体10とゴム層11とはより強固に結合される。なお、後述するように、貫通孔の等価直径又は直径は、すべて同一でなくてもよい。
【0022】
貫通孔の面積の総和は、環状構造体10の径方向外側の表面積に対して0.5%以上30%が好ましく、より好ましくは1.0%以上20%以下、さらに好ましくは1.5%以上15%以下である。このような範囲であれば、物理的及び化学的結合を有効に利用しつつ、環状構造体10の強度も確保できる。その結果、環状構造体10とゴム層11とはより強固に結合されるとともに、環状構造体10に必要な剛性を確保できる。なお、貫通孔の間隔は不等間隔であってもよいし、等間隔であってもよい。このようにすることで、タイヤ1の接地形状の制御することもできる。
【0023】
環状構造体10は、長方形形状の板材又は複数の貫通孔が穿孔された長方形形状の板材の短辺投同士を突き合わせて溶接することにより製造することができる。このようにすれば、比較的簡単に環状構造体10を製造することができる。また、環状構造体10の製造方法はこれに限定されるものではない。例えば、円柱の外周部に複数の穴を形成した後、円柱の内部を削り出すことにより、環状構造体10を製造してもよい。
【0024】
環状構造体10の径方向外側における表面10soとゴム層11の内側11siとは互いに接触している。本実施形態において、環状構造体10とゴム層11とは、例えば接着剤によって固定されている。このような構造により、環状構造体10とゴム層11との間で相互に力を伝達できる。環状構造体10とゴム層11とを固定する手段は、接着剤に限定されるものではない。また、環状構造体10は、ゴム層の径方向外側には露出しないことが好ましい。このようにすれば、環状構造体10とゴム層11とをより確実に固定できる。さらに、環状構造体10は、ゴム層11内に埋設されていてもよい。このようにしても、環状構造体10とゴム層11とをより確実に固定できる。
【0025】
ゴム層11は、合成ゴムや天然ゴム又はこれらを混合したゴム材料と、当該ゴム材料に補強材として添加される炭素やSiO2等を含む。ゴム層11は、無端のベルト状の構造体である。図1に示すように、本実施形態において、ゴム層11は、外側11soに複数の溝(主溝)Sを有している。ゴム層11は、溝Sの他にもラグ溝を有していてもよい。
【0026】
カーカス部12は、タイヤ1に空気を充填した際に、環状構造体10とともに圧力容器としての役目を果たす強度メンバーである。カーカス部12及び環状構造体10は、内部に充填された空気の内圧によってタイヤ1に作用する荷重を支え、走行中にタイヤ1が受ける動的荷重に耐える。本実施形態において、タイヤ1のカーカス部12は、内側にインナーライナー14を有する。インナーライナー14によって、タイヤ1の内部に充填された空気の漏洩を抑制する。両方のカーカス部12は、径方向内側に、それぞれビード部13を有する。ビード部13は、タイヤ1が取り付けられるホイールのリムと嵌合する。なお、カーカス部12は、ホイールのリムと機械的に結合していてもよい。
【0027】
図4は、環状構造体とゴム層との子午断面図である。環状構造体10の弾性率は、70GPa以上250GPa以下が好ましく、80GPa以上230GPa以下とすることがより好ましい。また。環状構造体10の厚みtmは、0.1mm以上0.8mm以下とすることが好ましい。この範囲であれば、耐圧性能を確保しつつ、繰り返し曲げの耐久性を確保できる。環状構造体10の弾性率と厚みtmとの積(剛性パラメータという)は、10以上500以下とすることが好ましく、15以上400以下とすることがより好ましい。
【0028】
剛性パラメータを上記の範囲とすることにより、環状構造体10は、子午断面内の剛性が大きくなる。このため、タイヤ1に空気を充填したとき、及びタイヤ1が路面に接地したときにおいては、環状構造体10によってトレッド部となるゴム層11の子午断面内における変形が抑制される。その結果、タイヤ1は、前記変形にともなう粘弾性エネルギの損失が抑制される。また、剛性パラメータを上記の範囲とすることにより、環状構造体10は、径方向における剛性は小さくなる。このため、タイヤ1は、従来の空気入りタイヤと同様に、路面との接地部でトレッド部が柔軟に変形する。このような機能により、タイヤ1は、接地部における局所的な歪み及び応力の集中を回避しながら偏心変形するので、接地部における歪みを分散させることができる。その結果、タイヤ1は、接地部におけるゴム層11の局所的な変形が抑制されるので、接地面積が確保され、転がり抵抗が低減される。
【0029】
さらに、タイヤ1は、環状構造体10の面内剛性が大きく、またゴム層11の接地面積を確保できるので、周方向における接地長さを確保できる。このため、タイヤ1は、舵角が入力されたときに発生する横力が大きくなる。その結果、タイヤ1は、大きなコーナリングパワーを得ることができる。また、環状構造体10を金属で製造した場合、タイヤ1の内部に充填された空気は環状構造体10をほとんど透過しない。その結果、タイヤ1の空気圧の管理が容易になるという利点もある。このため、長期にわたり、タイヤ1に空気を充填しないような使用態様に対しても、タイヤ1の空気圧低下を抑制できる。
【0030】
環状構造体10の径方向外側における表面10soと、ゴム層11の外側11soとの距離tr(ゴム層11の厚み)は、3mm以上20mm以下であることが好ましい。距離trをこのような範囲とすることで、乗り心地を確保しつつ、コーナリング時におけるゴム層11の過度な変形を抑制できる。環状構造体10の中心軸(Y軸)と平行な方向、すなわち幅方向における環状構造体10の寸法(環状構造体幅)Wmは、図1に示す中心軸(Y軸)と平行な方向におけるタイヤ1の総幅(JATMA規定リム幅のホイールに組んで300kPaの空気を充填した状態)Wの50%(W×0.5)以上95%(W×0.95)以下とすることが好ましい。WmがW×0.5よりも小さい場合、環状構造体10の子午断面内における剛性が不足する結果、タイヤ幅に対して偏心変形を維持する領域が減少する。その結果、転がり抵抗を低減させる効果及びコーナリングパワーも減少してしまうおそれがある。また、WmがW×0.95を超えると、接地時においてトレッド部が環状構造体10を中心軸(Y軸)方向に座屈変形させ、環状構造体10の変形を招くおそれがある。W×0.5≦Wm≦W×0.95とすることで、転がり抵抗を低減させつつコーナリングパワーを維持し、さらに、環状構造体10の変形も抑制できる。
【0031】
タイヤ1は、図1に示す子午断面において、ゴム層11の外側11so、すなわちトレッド面のプロファイルは、溝Sの部分を除き、環状構造体10の径方向外側における表面10soと同様の形状であることが好ましい。このような構造により、タイヤ1の接地時や転動時においては、トレッド部となるゴム層11と、環状構造体10とは略同様に変形する。その結果、タイヤ1は、ゴム層11の変形が少なくなるので、粘弾性エネルギの損失はより小さくなり、転がり抵抗もより小さくなる。
【0032】
ゴム層11の外側11soと、環状構造体10の径方向外側における表面10soとが、タイヤ1の径方向外側に向かって突出したり、径方向内側に向かって突出したりすると、タイヤ1の接地部における圧力分布が不均一となる。その結果、接地部には局所的な歪み及び応力の集中が発生し、接地部においてゴム層11が局所的に変形するおそれがある。本実施形態において、タイヤ1は、図3に示すように、ゴム層11の外側11so(タイヤ1のトレッド面)と、環状構造体10の径方向外側における表面10soとは同様の形状(好ましくは平行)であり、さらに、ゴム層11及び環状構造体10(すなわち、構造体2)の中心軸(Y軸)と平行(公差、誤差を含む)であることが好ましい。このような構造により、タイヤ1の接地部を略平坦にすることができる。そして、タイヤ1は、接地部における圧力分布が均一になるので、接地部の局所的な歪み及び応力の集中が抑制され、接地部におけるゴム層11の局所的な変形が抑制される。その結果、タイヤ1は、粘弾性エネルギの損失は小さくなるので、転がり抵抗も小さくなる。また、タイヤは、接地部におけるゴム層11の局所的な変形が抑制されるので、接地面積を確保でき、同時に周方向の接地長さを確保できる。このため、タイヤ1は、コーナリングパワーも確保できる。
【0033】
本実施形態においては、子午断面におけるゴム層11の形状は、ゴム層11の外側11soと環状構造体10の径方向外側における表面10soとがこれらの中心軸(Y軸)と平行であれば、特に形状は限定されない。例えば、子午断面におけるゴム層11の形状は、台形や平行四辺形であってもよい。子午断面におけるゴム層11の形状が台形である場合、台形の上底と下底とのいずれがゴム層11の外側11soであってもよい。いずれの場合であっても、環状構造体10の部分のみ、タイヤ1のトレッド面のプロファイル(溝の部分を除く)と平行であればよい。
【0034】
図5は、本実施形態の変形例に係るタイヤを示す子午断面図である。タイヤ1Aのトレッド面の形状は、子午断面において、幅方向外側(より具体的には、ゴム層11の接地面とタイヤ1のサイド部SSとの間)が、タイヤ1の内側に向かって凹んでいる。すなわち、タイヤ1は、幅方向外側において、幅方向内側よりもゴム層11の厚みが小さくなっている。タイヤ1のトレッド面の形状及びゴム層11を上述したようにすることで、転がり抵抗を低減しつつコーナリングパワーを確保することができる。
【0035】
タイヤ1は、幅方向外側における環状構造体10の端部10tから幅方向外側に向かって15mmまでの領域において、タイヤ1を所定の空気圧としたときのトレッド部の子午断面における輪郭形状は、タイヤ1の内側に向かって凹む円弧15を有する。円弧15は、タイヤ1の径方向外側かつ幅方向外側に中心を有する。円弧の曲率半径は、3mm以上150mm以下が好ましく、さらには5mm以上100mm以下がより好ましく、8mm以上70mm以下が最も好ましい。このようにすることで、環状構造体10の幅方向外側における端部のゴムの量が適切になるので、よりコーナリングパワーを確保することができる。前記所定の空気圧は、JATMA規定リム幅のホイールにタイヤ1Aを組んだときにおける空気圧であり、300kPaである。
【0036】
図6は、従来の加硫金型を用いて本実施形態及びその変形例に係るタイヤを製造する例を示す図である。図7は、本実施形態に係る加硫金型を用いて本実施形態及びその変形例に係るタイヤを製造する例を示す図である。これまでのような、角度をつけてスチールワイヤーを並列に配置し、ゴムで被覆したものを積層したタイヤは、加硫中にタイヤ内側から加硫ブラダーが膨張しながら接触することで、タイヤ自体も数%膨張して外側の加硫金型に押し当てられる。このため、圧力及び熱が作用して加硫が進行する。しかし、本実施形態に係るタイヤ1、1Aが有する環状構造体10は、引張(膨張)方向の弾性率が極めて高いため、ブラダーの圧力によってタイヤ自体の膨張する程度が小さい。そのため、これまでのタイヤが加硫金型の寸法に対して小さい周長でグリーンタイヤを成形するのに対して、本実施形態に係るタイヤは、それより大きい寸法(加硫金型の寸法に近い寸法)でグリーンタイヤ1Gが成形される。
【0037】
薄板円筒形の環状構造体10を用いたタイヤ1、1Aを製造する際に、環状構造体10にリフトが作用しないため、図6に示すように、従来のタイヤよりも大きい寸法(外周長)のグリーンタイヤ1Gを成形して加硫する。図6に示す、従来の加硫金型120を用いた場合、サイドプレート120Sa、120Sbが閉じられた後、セクター120Cが閉まるときに環状構造体10が径方向にバックリングするおそれがあった。すなわち、加硫金型120にグリーンタイヤ1Gが投入された後に、セクター120Cが閉まる際、セクター120Cの溝を形成する部分(すなわち突起)がグリーンタイヤ1Gのトレッド部に接触し、そのままトレッド部を内側へ必要以上に押してしまう。これは、ゴム流れが追いつかないためである。その結果、環状構造体10が径方向にバックリングしてしまうおそれがあった。
【0038】
その対策として、セクター120Cが閉まる前にブラダー121を昇圧するという方法があるが、その場合には、加硫前のグリーンタイヤ1Gに圧力を与える。本実施形態に係るタイヤ1、1Aは、サイドプレート120Sa、120Sbが閉じているため、ブラダー121の圧力Pbに対して反力Prを発生する。また、環状構造体10は弾性率が高い円筒であるため、自らの周方向の引張剛性によって反力Prを発生する。しかし、グリーンタイヤ1Gのバットレス部BBにおいては反力Prが得られないため、未加硫状態のグリーンタイヤ1Gは圧力Pbに耐えられずに吹き抜けが発生することがある。
【0039】
そこで、本実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法は、図7に示すような、セクター20Cとサイドプレート20Sa、20Sbとの割り位置を適切な位置に変更した加硫金型20を用いて、セクター20Cを閉める前にブラダー21を昇圧する。例えば、サイドプレート20Sa、20Sbが閉じてからセクター20Cが閉じるまでの間に、ブラダー21の圧力を0.2MPa〜2.0MPa、好ましくは0.3MPa〜1.0MPaに上昇させる。このようにすることで、加硫時における環状構造体10のバックリング及びグリーンタイヤ1Gのバットレス部BBからの吹き抜けを回避できる。
【0040】
加硫金型20は、セクター20Cと、それぞれ上下に配置されるサイドプレート20Sa、20Sbとを有する。セクター20Cは、それぞれ周方向に向かって複数に分割されている。サイドプレート20Sa、20Sbは、連続したドーナツ状の円盤である。セクター20Cとサイドプレート20Sa、20Sbとの割り位置SPは、グリーンタイヤ1Gが有する環状構造体10の幅方向内側の位置とする。このようにすることで、グリーンタイヤ1Gがブラダー21からの圧力を受けた場合、バットレス部BBにおいても、サイドプレート20Sa、20Sbから反力Prが得られるので、吹き抜けを回避できる。
【0041】
セクター20Cとサイドプレート20Sa、20Sbとの割り位置SPは、環状構造体10の幅方向外側における端部10tから環状構造体幅Wmの70%以上100%以下の位置とすることが好ましく、さらには、環状構造体幅Wmの80%以上99.5%以下の位置とすることが好ましい。このようにすれば、サイドプレート20Sa、20Sbから反力Prを確実に得られるので、ブラダー21の圧力Pbによる吹き抜けを確実に回避できる。
【0042】
本実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法は、まず、円筒形状の環状構造体10と、環状構造体10の外側に、環状構造体10の周方向に沿って設けられてトレッド部となる未加硫のゴム層11Gと、ゴムで被覆された繊維を有し、環状構造体10と未加硫のゴム層11Gとを含む円筒形状の構造体2Gの幅方向両側に少なくとも設けられるカーカス部12と、を含む空気入りタイヤのグリーンタイヤ1Gを、加硫金型20の内部に配置する。加硫金型20は、環状構造体の幅方向内側の位置でサイドプレート20Sa、20Sbとセクター20Cとが分割されている。
【0043】
環状構造体10は、未加硫のゴム層11Gの径方向外側には露出しないことが好ましい。このようにすれば、加硫によって、環状構造体10と未加硫のゴム層11Gとをより確実に固定でき、タイヤ1、1Aの環状構造体10とゴム層11とがより確実に固定される。さらに、環状構造体10は、未加硫のゴム層11G内に埋設されていてもよい。このようにしても、環状構造体10と未加硫のゴム層11G及びゴム層11とをより確実に固定できる。
【0044】
次に、サイドプレート20Sa、20Sbを閉じた後、セクター20Cを閉じる前に、グリーンタイヤ1Gの内部のブラダー21を昇圧させる。そして、セクター20Cを閉じて加硫を開始する。このようにすることで、本実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法は、加硫時における環状構造体10のバックリング及びグリーンタイヤ1Gのバットレス部BBからの吹き抜けを回避できる。このように、本実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法は、構造を変更することによって転がり抵抗を低減したタイヤ1、1Aを製造することができる。
【0045】
図5に示すタイヤ1Aは、転がり抵抗を低減しつつ、コーナリングパワーを確保するために、環状構造体10の幅方向外側の付近でゴム層11の厚みを薄くしている。このようなタイヤ1Aの製造においては、本実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法が特に効果的である。なお、編み入りブラダーでショルダー部、バットレス部の膨らみを防止したり、剛性中子を用いて加硫したりしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1、1A 空気入りタイヤ(タイヤ)
1G グリーンタイヤ
2、2G 構造体
10 環状構造体
10t 端部
11 ゴム層
11G 未加硫のゴム層
12 カーカス部
13 ビード部
14 インナーライナー
15 円弧
20、120 加硫金型
20Sa、20Sb、120Sa、120Sb サイドプレート
20C、120C セクター
21、121 ブラダー
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの製造方法及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの転がり抵抗を低減することは、自動車の燃費を改善するために有用である。タイヤの転がり抵抗を低減するため、例えばシリカ配合のゴムをトレッドに適用する等の技術がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】土井昭政、「タイヤにおける最近の技術動向」、日本ゴム協会誌、1998年9月 Vol.71、p.588−594
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載されている空気入りタイヤの転がり抵抗を低減する手法は、材料に改良を加えるものであるが、空気入りタイヤの構造を変更することによって転がり抵抗を低減できる可能性もある。本発明は、構造を変更することによって転がり抵抗を低減した空気入りタイヤを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、円筒形状の環状構造体と、前記環状構造体の外側に、前記環状構造体の周方向に沿って設けられてトレッド部となる未加硫のゴム層と、ゴムで被覆された繊維を有し、前記環状構造体と前記未加硫のゴム層とを含む円筒形状の構造体の幅方向両側に少なくとも設けられるカーカス部と、を含む空気入りタイヤのグリーンタイヤを、前記環状構造体の幅方向内側の位置でサイドプレートとセクターとが分割された加硫金型の内部に配置する手順と、前記サイドプレートを閉じた後、前記セクターを閉じる前に、前記グリーンタイヤの内部のブラダーを昇圧させる手順と、前記セクターを閉じて加硫を開始する手順と、を含むことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法である。
【0006】
本発明において、前記環状構造体は前記未加硫のゴム層に埋設されており、前記未加硫のゴム層の径方向外側における表面に露出しないことが好ましい。
【0007】
本発明において、前記空気入りタイヤは、幅方向外側における前記環状構造体の端部から幅方向外側に向かって15mmまでの領域において、前記空気入りタイヤを所定の空気圧としたときの前記トレッド部の子午断面における輪郭形状は、前記空気入りタイヤの内側に向かって凹む円弧を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、構造を変更することによって転がり抵抗を低減した空気入りタイヤを製造する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本実施形態に係るタイヤの子午断面図である。
【図2−1】図2−1は、本実施形態に係るタイヤが有する環状構造体の斜視図である。
【図2−2】図2−2は、本実施形態に係るタイヤが有する環状構造体の平面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係るタイヤが有するカーカス部の拡大図である。
【図4】図4は、環状構造体とゴム層との子午断面図である。
【図5】図5は、本実施形態の変形例に係るタイヤを示す子午断面図である。
【図6】図6は、従来の加硫金型を用いて本実施形態及びその変形例に係るタイヤを製造する例を示す図である。
【図7】図7は、本実施形態に係る加硫金型を用いて本実施形態及びその変形例に係るタイヤを製造する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0011】
空気入りタイヤ(以下、必要に応じてタイヤという)の転がり抵抗を低減するため、タイヤの偏心変形を極限まで高めると、タイヤと路面との接地面積が小さくなり接地圧が増加する。その結果、トレッド部の変形による粘弾性エネルギ損失が大きくなり、転がり抵抗が増加する。本発明者らは、この点に注目し、タイヤと路面との接地面積を確保し、かつ偏心変形を維持することによって、転がり抵抗を低減し、かつ操安性を向上させることを試みた。偏心変形とは、タイヤのトレッドリング(クラウン領域のこと)が円形を保ったまま垂直に変位する一次モードの変形である。タイヤと路面との接地面積を確保し、かつ偏心変形を維持するため、本実施形態に係るタイヤは、例えば、金属の薄板で製造される円筒形状の環状構造体の外側に、前記環状構造体の周方向に向かってゴム層を設け、このゴム層をトレッド部として設置させる構造とする。
【0012】
図1は、本実施形態に係るタイヤの子午断面図である。図2−1は、本実施形態に係るタイヤが有する環状構造体の斜視図である。図2−2は、本実施形態に係るタイヤが有する環状構造体の平面図である。図3は、本実施形態に係るタイヤが有するカーカス部の拡大図である。図1に示すように、タイヤ1は、環状の構造体である。前記環状の構造体の中心を通る軸がタイヤ1の中心軸(Y軸)となる。タイヤ1は、使用時において、内部に空気が充填される。
【0013】
タイヤ1は、中心軸(Y軸)を回転軸として回転する。Y軸は、タイヤ1の中心軸かつ回転軸である。タイヤ1の中心軸(回転軸)であるY軸に直交し、かつタイヤ1が接地する路面と平行な軸をX軸、Y軸とX軸とに直交する軸をZ軸とする。Y軸と平行な方向がタイヤ1の幅方向である。Y軸を通り、かつY軸に直交する方向がタイヤ1の径方向である。また、Y軸を中心とする周方向が空気入りタイヤ1の周方向(図1の矢印CRで示す方向)である。
【0014】
図1に示すように、タイヤ1は、円筒形状の環状構造体10と、ゴム層11と、カーカス部12と、を含む。環状構造体10は、円筒形状の部材である。ゴム層11は、環状構造体10の径方向外側における表面10soに、環状構造体10の周方向に向かって設けられることで、タイヤ1のトレッド部となる。カーカス部12は、図3に示すように、ゴム12Rで被覆された繊維12Fを有する。本実施形態において、図1に示すように、カーカス部12は、環状構造体10の径方向内側を通って、両方のビード部13間を連結している。すなわち、カーカス部12は、両方のビード部13、13間で連続している。なお、カーカス部12は、環状構造体10の幅方向における両側に設けられて、両方のビード部13、13間で連続していなくてもよい。このように、カーカス部12は、図3に示すように、少なくとも環状構造体10とゴム層11とを含む円筒形状の構造体2の中心軸(Y軸)と平行な方向(すなわち幅方向)における両側に設けられていればよい。
【0015】
タイヤ1は、構造体2の子午断面において、ゴム層11の外側11so(タイヤ1のトレッド面)と、環状構造体10の径方向外側における表面10soとが、トレッド面に形成された溝Sの部分を除いて同様の形状であり、平行(公差、誤差を含む)であることがより好ましい。
【0016】
図2−1、図2−2に示す環状構造体10は、金属の構造体である。すなわち、環状構造体10は、金属材料で造られている。環状構造体10に用いる金属材料は、引張強度が450N/m2以上2500N/m2以下であることが好ましく、600N/m2以上2400N/m2以下であることがより好ましく、さらには、800N/m2以上2300N/m2以下が好ましい。環状構造体10は、引張強度がこのような範囲であれば、充分な強度及び剛性を確保できるとともに、必要な靱性を確保できる。環状構造体10に用いることができる金属材料は、引張強度が前述した範囲であればよいが、ばね鋼、高張力鋼、ステンレス鋼又はチタン(チタン合金を含む)を用いることが好ましい。これらのうち、ステンレス鋼は耐食性が高く、また、前述した引張強度の範囲のものを得やすいので好ましい。
【0017】
環状構造体10の引張強度(MPa)と厚み(mm)との積を耐圧パラメータとする。耐圧パラメータは、タイヤ1に充填される気体(例えば、空気又は窒素等)の内圧に対する耐性の尺度となるパラメータである。耐圧パラメータは、200以上1700以下、250以上1600以下とすることが好ましい。この範囲であれば、タイヤ1の使用圧力の上限を確保し、安全性を十分に確保することができる。また、前記範囲であれば、環状構造体10の厚みを増加させず、また、破断強度の高い材料を用いる必要がないので、量産に好適である。環状構造体10の厚みを増加させる必要がないため、環状構造体10は繰り返し曲げの耐久性を確保できる。また、破断強度の高い材料を用いる必要がないことから、低コストで環状構造体10及びタイヤ1を製造できる。乗用車用タイヤ(PCタイヤ)として、耐圧パラメータは、200以上1000以下が好ましく、250以上950以下がより好ましい。小型トラック用タイヤ(LTタイヤ)として、耐圧パラメータは、300以上1200以下が好ましく、350以上1100以下がより好ましい。トラック/バス用タイヤ(TBタイヤ)として、耐圧パラメータは、500以上1700以下が好ましく、600以上1600以下がより好ましい。
【0018】
環状構造体10をステンレス鋼で製造する場合、JIS G4303の分類における、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼を用いることが好ましい。これらのステンレス鋼を用いることにより、引張強度及び靱性が優れた環状構造体10とすることができる。また、前述したステンレス鋼のうち、特に、析出硬化ステンレス鋼(SUS631、SUS632J1)を用いるとより好ましい。
【0019】
環状構造体10は、内周面と外周とを貫通する複数の貫通孔を有していてもよい。環状構造体10の径方向外側と径方向内側との少なくとも一方にはゴム層11が取り付けられる。ゴム層11は、環状構造体10と化学的な結合により環状構造体に取り付けられる。貫通孔は、環状構造体10とゴム層11との物理的な結合を強化する作用がある。このため、貫通孔を有する環状構造体10は、化学的及び物理的な作用(アンカー効果)によりゴム層11との結合強度が向上するので、ゴム層11と確実に固定される。その結果、タイヤ1の耐久性が向上する。
【0020】
貫通孔は、1つの断面積が0.1mm2以上100mm2以下であることが好ましく、より好ましくは0.12mm2以上80mm2以下、さらに好ましくは0.15mm2以上70mm2以下である。このような範囲であれば、カーカス部12の凹凸を抑制し、かつ、接着による結合、すなわち、化学的な結合も十分に利用することができる。さらに、上述した範囲であれば、上述した物理的作用、すなわち、アンカー効果が最も効果的に発生する。これらの作用により、環状構造体10とゴム層11との結合を強化することができる。
【0021】
環状構造体10が貫通孔を有する場合、その形状は問わないが、円形か楕円形が好ましい。また、貫通孔は、等価直径4×A/C(Cは貫通孔の周長、Aは貫通孔の開口面積)を0.5mm以上10mm以下とすることが好ましい。貫通孔は、形状が円形かつ直径は1.0mm以上8.0mm以下がより好ましい。このような範囲であれば、物理的及び化学的結合を有効に利用できるので、環状構造体10とゴム層11とはより強固に結合される。なお、後述するように、貫通孔の等価直径又は直径は、すべて同一でなくてもよい。
【0022】
貫通孔の面積の総和は、環状構造体10の径方向外側の表面積に対して0.5%以上30%が好ましく、より好ましくは1.0%以上20%以下、さらに好ましくは1.5%以上15%以下である。このような範囲であれば、物理的及び化学的結合を有効に利用しつつ、環状構造体10の強度も確保できる。その結果、環状構造体10とゴム層11とはより強固に結合されるとともに、環状構造体10に必要な剛性を確保できる。なお、貫通孔の間隔は不等間隔であってもよいし、等間隔であってもよい。このようにすることで、タイヤ1の接地形状の制御することもできる。
【0023】
環状構造体10は、長方形形状の板材又は複数の貫通孔が穿孔された長方形形状の板材の短辺投同士を突き合わせて溶接することにより製造することができる。このようにすれば、比較的簡単に環状構造体10を製造することができる。また、環状構造体10の製造方法はこれに限定されるものではない。例えば、円柱の外周部に複数の穴を形成した後、円柱の内部を削り出すことにより、環状構造体10を製造してもよい。
【0024】
環状構造体10の径方向外側における表面10soとゴム層11の内側11siとは互いに接触している。本実施形態において、環状構造体10とゴム層11とは、例えば接着剤によって固定されている。このような構造により、環状構造体10とゴム層11との間で相互に力を伝達できる。環状構造体10とゴム層11とを固定する手段は、接着剤に限定されるものではない。また、環状構造体10は、ゴム層の径方向外側には露出しないことが好ましい。このようにすれば、環状構造体10とゴム層11とをより確実に固定できる。さらに、環状構造体10は、ゴム層11内に埋設されていてもよい。このようにしても、環状構造体10とゴム層11とをより確実に固定できる。
【0025】
ゴム層11は、合成ゴムや天然ゴム又はこれらを混合したゴム材料と、当該ゴム材料に補強材として添加される炭素やSiO2等を含む。ゴム層11は、無端のベルト状の構造体である。図1に示すように、本実施形態において、ゴム層11は、外側11soに複数の溝(主溝)Sを有している。ゴム層11は、溝Sの他にもラグ溝を有していてもよい。
【0026】
カーカス部12は、タイヤ1に空気を充填した際に、環状構造体10とともに圧力容器としての役目を果たす強度メンバーである。カーカス部12及び環状構造体10は、内部に充填された空気の内圧によってタイヤ1に作用する荷重を支え、走行中にタイヤ1が受ける動的荷重に耐える。本実施形態において、タイヤ1のカーカス部12は、内側にインナーライナー14を有する。インナーライナー14によって、タイヤ1の内部に充填された空気の漏洩を抑制する。両方のカーカス部12は、径方向内側に、それぞれビード部13を有する。ビード部13は、タイヤ1が取り付けられるホイールのリムと嵌合する。なお、カーカス部12は、ホイールのリムと機械的に結合していてもよい。
【0027】
図4は、環状構造体とゴム層との子午断面図である。環状構造体10の弾性率は、70GPa以上250GPa以下が好ましく、80GPa以上230GPa以下とすることがより好ましい。また。環状構造体10の厚みtmは、0.1mm以上0.8mm以下とすることが好ましい。この範囲であれば、耐圧性能を確保しつつ、繰り返し曲げの耐久性を確保できる。環状構造体10の弾性率と厚みtmとの積(剛性パラメータという)は、10以上500以下とすることが好ましく、15以上400以下とすることがより好ましい。
【0028】
剛性パラメータを上記の範囲とすることにより、環状構造体10は、子午断面内の剛性が大きくなる。このため、タイヤ1に空気を充填したとき、及びタイヤ1が路面に接地したときにおいては、環状構造体10によってトレッド部となるゴム層11の子午断面内における変形が抑制される。その結果、タイヤ1は、前記変形にともなう粘弾性エネルギの損失が抑制される。また、剛性パラメータを上記の範囲とすることにより、環状構造体10は、径方向における剛性は小さくなる。このため、タイヤ1は、従来の空気入りタイヤと同様に、路面との接地部でトレッド部が柔軟に変形する。このような機能により、タイヤ1は、接地部における局所的な歪み及び応力の集中を回避しながら偏心変形するので、接地部における歪みを分散させることができる。その結果、タイヤ1は、接地部におけるゴム層11の局所的な変形が抑制されるので、接地面積が確保され、転がり抵抗が低減される。
【0029】
さらに、タイヤ1は、環状構造体10の面内剛性が大きく、またゴム層11の接地面積を確保できるので、周方向における接地長さを確保できる。このため、タイヤ1は、舵角が入力されたときに発生する横力が大きくなる。その結果、タイヤ1は、大きなコーナリングパワーを得ることができる。また、環状構造体10を金属で製造した場合、タイヤ1の内部に充填された空気は環状構造体10をほとんど透過しない。その結果、タイヤ1の空気圧の管理が容易になるという利点もある。このため、長期にわたり、タイヤ1に空気を充填しないような使用態様に対しても、タイヤ1の空気圧低下を抑制できる。
【0030】
環状構造体10の径方向外側における表面10soと、ゴム層11の外側11soとの距離tr(ゴム層11の厚み)は、3mm以上20mm以下であることが好ましい。距離trをこのような範囲とすることで、乗り心地を確保しつつ、コーナリング時におけるゴム層11の過度な変形を抑制できる。環状構造体10の中心軸(Y軸)と平行な方向、すなわち幅方向における環状構造体10の寸法(環状構造体幅)Wmは、図1に示す中心軸(Y軸)と平行な方向におけるタイヤ1の総幅(JATMA規定リム幅のホイールに組んで300kPaの空気を充填した状態)Wの50%(W×0.5)以上95%(W×0.95)以下とすることが好ましい。WmがW×0.5よりも小さい場合、環状構造体10の子午断面内における剛性が不足する結果、タイヤ幅に対して偏心変形を維持する領域が減少する。その結果、転がり抵抗を低減させる効果及びコーナリングパワーも減少してしまうおそれがある。また、WmがW×0.95を超えると、接地時においてトレッド部が環状構造体10を中心軸(Y軸)方向に座屈変形させ、環状構造体10の変形を招くおそれがある。W×0.5≦Wm≦W×0.95とすることで、転がり抵抗を低減させつつコーナリングパワーを維持し、さらに、環状構造体10の変形も抑制できる。
【0031】
タイヤ1は、図1に示す子午断面において、ゴム層11の外側11so、すなわちトレッド面のプロファイルは、溝Sの部分を除き、環状構造体10の径方向外側における表面10soと同様の形状であることが好ましい。このような構造により、タイヤ1の接地時や転動時においては、トレッド部となるゴム層11と、環状構造体10とは略同様に変形する。その結果、タイヤ1は、ゴム層11の変形が少なくなるので、粘弾性エネルギの損失はより小さくなり、転がり抵抗もより小さくなる。
【0032】
ゴム層11の外側11soと、環状構造体10の径方向外側における表面10soとが、タイヤ1の径方向外側に向かって突出したり、径方向内側に向かって突出したりすると、タイヤ1の接地部における圧力分布が不均一となる。その結果、接地部には局所的な歪み及び応力の集中が発生し、接地部においてゴム層11が局所的に変形するおそれがある。本実施形態において、タイヤ1は、図3に示すように、ゴム層11の外側11so(タイヤ1のトレッド面)と、環状構造体10の径方向外側における表面10soとは同様の形状(好ましくは平行)であり、さらに、ゴム層11及び環状構造体10(すなわち、構造体2)の中心軸(Y軸)と平行(公差、誤差を含む)であることが好ましい。このような構造により、タイヤ1の接地部を略平坦にすることができる。そして、タイヤ1は、接地部における圧力分布が均一になるので、接地部の局所的な歪み及び応力の集中が抑制され、接地部におけるゴム層11の局所的な変形が抑制される。その結果、タイヤ1は、粘弾性エネルギの損失は小さくなるので、転がり抵抗も小さくなる。また、タイヤは、接地部におけるゴム層11の局所的な変形が抑制されるので、接地面積を確保でき、同時に周方向の接地長さを確保できる。このため、タイヤ1は、コーナリングパワーも確保できる。
【0033】
本実施形態においては、子午断面におけるゴム層11の形状は、ゴム層11の外側11soと環状構造体10の径方向外側における表面10soとがこれらの中心軸(Y軸)と平行であれば、特に形状は限定されない。例えば、子午断面におけるゴム層11の形状は、台形や平行四辺形であってもよい。子午断面におけるゴム層11の形状が台形である場合、台形の上底と下底とのいずれがゴム層11の外側11soであってもよい。いずれの場合であっても、環状構造体10の部分のみ、タイヤ1のトレッド面のプロファイル(溝の部分を除く)と平行であればよい。
【0034】
図5は、本実施形態の変形例に係るタイヤを示す子午断面図である。タイヤ1Aのトレッド面の形状は、子午断面において、幅方向外側(より具体的には、ゴム層11の接地面とタイヤ1のサイド部SSとの間)が、タイヤ1の内側に向かって凹んでいる。すなわち、タイヤ1は、幅方向外側において、幅方向内側よりもゴム層11の厚みが小さくなっている。タイヤ1のトレッド面の形状及びゴム層11を上述したようにすることで、転がり抵抗を低減しつつコーナリングパワーを確保することができる。
【0035】
タイヤ1は、幅方向外側における環状構造体10の端部10tから幅方向外側に向かって15mmまでの領域において、タイヤ1を所定の空気圧としたときのトレッド部の子午断面における輪郭形状は、タイヤ1の内側に向かって凹む円弧15を有する。円弧15は、タイヤ1の径方向外側かつ幅方向外側に中心を有する。円弧の曲率半径は、3mm以上150mm以下が好ましく、さらには5mm以上100mm以下がより好ましく、8mm以上70mm以下が最も好ましい。このようにすることで、環状構造体10の幅方向外側における端部のゴムの量が適切になるので、よりコーナリングパワーを確保することができる。前記所定の空気圧は、JATMA規定リム幅のホイールにタイヤ1Aを組んだときにおける空気圧であり、300kPaである。
【0036】
図6は、従来の加硫金型を用いて本実施形態及びその変形例に係るタイヤを製造する例を示す図である。図7は、本実施形態に係る加硫金型を用いて本実施形態及びその変形例に係るタイヤを製造する例を示す図である。これまでのような、角度をつけてスチールワイヤーを並列に配置し、ゴムで被覆したものを積層したタイヤは、加硫中にタイヤ内側から加硫ブラダーが膨張しながら接触することで、タイヤ自体も数%膨張して外側の加硫金型に押し当てられる。このため、圧力及び熱が作用して加硫が進行する。しかし、本実施形態に係るタイヤ1、1Aが有する環状構造体10は、引張(膨張)方向の弾性率が極めて高いため、ブラダーの圧力によってタイヤ自体の膨張する程度が小さい。そのため、これまでのタイヤが加硫金型の寸法に対して小さい周長でグリーンタイヤを成形するのに対して、本実施形態に係るタイヤは、それより大きい寸法(加硫金型の寸法に近い寸法)でグリーンタイヤ1Gが成形される。
【0037】
薄板円筒形の環状構造体10を用いたタイヤ1、1Aを製造する際に、環状構造体10にリフトが作用しないため、図6に示すように、従来のタイヤよりも大きい寸法(外周長)のグリーンタイヤ1Gを成形して加硫する。図6に示す、従来の加硫金型120を用いた場合、サイドプレート120Sa、120Sbが閉じられた後、セクター120Cが閉まるときに環状構造体10が径方向にバックリングするおそれがあった。すなわち、加硫金型120にグリーンタイヤ1Gが投入された後に、セクター120Cが閉まる際、セクター120Cの溝を形成する部分(すなわち突起)がグリーンタイヤ1Gのトレッド部に接触し、そのままトレッド部を内側へ必要以上に押してしまう。これは、ゴム流れが追いつかないためである。その結果、環状構造体10が径方向にバックリングしてしまうおそれがあった。
【0038】
その対策として、セクター120Cが閉まる前にブラダー121を昇圧するという方法があるが、その場合には、加硫前のグリーンタイヤ1Gに圧力を与える。本実施形態に係るタイヤ1、1Aは、サイドプレート120Sa、120Sbが閉じているため、ブラダー121の圧力Pbに対して反力Prを発生する。また、環状構造体10は弾性率が高い円筒であるため、自らの周方向の引張剛性によって反力Prを発生する。しかし、グリーンタイヤ1Gのバットレス部BBにおいては反力Prが得られないため、未加硫状態のグリーンタイヤ1Gは圧力Pbに耐えられずに吹き抜けが発生することがある。
【0039】
そこで、本実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法は、図7に示すような、セクター20Cとサイドプレート20Sa、20Sbとの割り位置を適切な位置に変更した加硫金型20を用いて、セクター20Cを閉める前にブラダー21を昇圧する。例えば、サイドプレート20Sa、20Sbが閉じてからセクター20Cが閉じるまでの間に、ブラダー21の圧力を0.2MPa〜2.0MPa、好ましくは0.3MPa〜1.0MPaに上昇させる。このようにすることで、加硫時における環状構造体10のバックリング及びグリーンタイヤ1Gのバットレス部BBからの吹き抜けを回避できる。
【0040】
加硫金型20は、セクター20Cと、それぞれ上下に配置されるサイドプレート20Sa、20Sbとを有する。セクター20Cは、それぞれ周方向に向かって複数に分割されている。サイドプレート20Sa、20Sbは、連続したドーナツ状の円盤である。セクター20Cとサイドプレート20Sa、20Sbとの割り位置SPは、グリーンタイヤ1Gが有する環状構造体10の幅方向内側の位置とする。このようにすることで、グリーンタイヤ1Gがブラダー21からの圧力を受けた場合、バットレス部BBにおいても、サイドプレート20Sa、20Sbから反力Prが得られるので、吹き抜けを回避できる。
【0041】
セクター20Cとサイドプレート20Sa、20Sbとの割り位置SPは、環状構造体10の幅方向外側における端部10tから環状構造体幅Wmの70%以上100%以下の位置とすることが好ましく、さらには、環状構造体幅Wmの80%以上99.5%以下の位置とすることが好ましい。このようにすれば、サイドプレート20Sa、20Sbから反力Prを確実に得られるので、ブラダー21の圧力Pbによる吹き抜けを確実に回避できる。
【0042】
本実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法は、まず、円筒形状の環状構造体10と、環状構造体10の外側に、環状構造体10の周方向に沿って設けられてトレッド部となる未加硫のゴム層11Gと、ゴムで被覆された繊維を有し、環状構造体10と未加硫のゴム層11Gとを含む円筒形状の構造体2Gの幅方向両側に少なくとも設けられるカーカス部12と、を含む空気入りタイヤのグリーンタイヤ1Gを、加硫金型20の内部に配置する。加硫金型20は、環状構造体の幅方向内側の位置でサイドプレート20Sa、20Sbとセクター20Cとが分割されている。
【0043】
環状構造体10は、未加硫のゴム層11Gの径方向外側には露出しないことが好ましい。このようにすれば、加硫によって、環状構造体10と未加硫のゴム層11Gとをより確実に固定でき、タイヤ1、1Aの環状構造体10とゴム層11とがより確実に固定される。さらに、環状構造体10は、未加硫のゴム層11G内に埋設されていてもよい。このようにしても、環状構造体10と未加硫のゴム層11G及びゴム層11とをより確実に固定できる。
【0044】
次に、サイドプレート20Sa、20Sbを閉じた後、セクター20Cを閉じる前に、グリーンタイヤ1Gの内部のブラダー21を昇圧させる。そして、セクター20Cを閉じて加硫を開始する。このようにすることで、本実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法は、加硫時における環状構造体10のバックリング及びグリーンタイヤ1Gのバットレス部BBからの吹き抜けを回避できる。このように、本実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法は、構造を変更することによって転がり抵抗を低減したタイヤ1、1Aを製造することができる。
【0045】
図5に示すタイヤ1Aは、転がり抵抗を低減しつつ、コーナリングパワーを確保するために、環状構造体10の幅方向外側の付近でゴム層11の厚みを薄くしている。このようなタイヤ1Aの製造においては、本実施形態に係る空気入りタイヤの製造方法が特に効果的である。なお、編み入りブラダーでショルダー部、バットレス部の膨らみを防止したり、剛性中子を用いて加硫したりしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1、1A 空気入りタイヤ(タイヤ)
1G グリーンタイヤ
2、2G 構造体
10 環状構造体
10t 端部
11 ゴム層
11G 未加硫のゴム層
12 カーカス部
13 ビード部
14 インナーライナー
15 円弧
20、120 加硫金型
20Sa、20Sb、120Sa、120Sb サイドプレート
20C、120C セクター
21、121 ブラダー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の環状構造体と、前記環状構造体の外側に、前記環状構造体の周方向に沿って設けられてトレッド部となる未加硫のゴム層と、ゴムで被覆された繊維を有し、前記環状構造体と前記未加硫のゴム層とを含む円筒形状の構造体の幅方向両側に少なくとも設けられるカーカス部と、を含む空気入りタイヤのグリーンタイヤを、前記環状構造体の幅方向内側の位置でサイドプレートとセクターとが分割された加硫金型の内部に配置する手順と、
前記サイドプレートを閉じた後、前記セクターを閉じる前に、前記グリーンタイヤの内部のブラダーを昇圧させる手順と、
前記セクターを閉じて加硫を開始する手順と、
を含むことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記環状構造体は前記未加硫のゴム層に埋設されており、前記未加硫のゴム層の径方向外側における表面に露出しない請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記空気入りタイヤは、
幅方向外側における前記環状構造体の端部から幅方向外側に向かって15mmまでの領域において、前記空気入りタイヤを所定の空気圧としたときの前記トレッド部の子午断面における輪郭形状は、前記空気入りタイヤの内側に向かって凹む円弧を有する請求項1又は2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項1】
円筒形状の環状構造体と、前記環状構造体の外側に、前記環状構造体の周方向に沿って設けられてトレッド部となる未加硫のゴム層と、ゴムで被覆された繊維を有し、前記環状構造体と前記未加硫のゴム層とを含む円筒形状の構造体の幅方向両側に少なくとも設けられるカーカス部と、を含む空気入りタイヤのグリーンタイヤを、前記環状構造体の幅方向内側の位置でサイドプレートとセクターとが分割された加硫金型の内部に配置する手順と、
前記サイドプレートを閉じた後、前記セクターを閉じる前に、前記グリーンタイヤの内部のブラダーを昇圧させる手順と、
前記セクターを閉じて加硫を開始する手順と、
を含むことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記環状構造体は前記未加硫のゴム層に埋設されており、前記未加硫のゴム層の径方向外側における表面に露出しない請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記空気入りタイヤは、
幅方向外側における前記環状構造体の端部から幅方向外側に向かって15mmまでの領域において、前記空気入りタイヤを所定の空気圧としたときの前記トレッド部の子午断面における輪郭形状は、前記空気入りタイヤの内側に向かって凹む円弧を有する請求項1又は2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【図1】
【図2−1】
【図2−2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2−1】
【図2−2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2012−245706(P2012−245706A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119671(P2011−119671)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]