説明

空気圧縮装置

【課題】構造が簡単で、除湿行程の圧力損失を伴わず、ドレインの処理が不要であり、かつ圧縮された除熱空気を連続して供給するようにした空気圧縮装置を提供する。
【解決手段】モータ2により駆動される圧縮機1と、圧縮機1から吐出される圧縮空気の圧縮熱を、送風機4から送風する空気をもって除去する熱交換器3と、圧縮機1が吸引する乾燥空気を流す吸気路9と、吸気路9と隔壁10で仕切って隣接配置され、送風機4から送風され、熱交換器3により加熱された再生空気を流す排気路11と、圧縮機1が吸引する空気中の水分を吸着し、再生空気により水分を脱着される吸着剤を担持し、吸気路9と排気路11とに跨るように回転自在に配置された円筒状の除湿ローター5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥圧縮空気を供給する空気圧縮装置に関し、特に、乾燥空気を吸入し露点の低い圧縮空気を吐出する空気圧縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の空気圧縮装置に関するものとしては、例えば特許文献1に記載されているように、コンプレッサーによって圧縮された圧縮空気を、冷凍サイクルを利用して冷却し、圧縮空気中の水分を凝縮させて除湿する冷凍式エアドライヤが知られている。
【0003】
また、例えば特許文献2に記載されているように、水蒸気は透過しやすいが、気体は透過しにくいという性質を有する高分子からなる中空糸膜をケース内へ収容し、この中空糸膜の内側へ湿った圧縮空気をコンプレッサーから供給して、水蒸気だけを中空糸膜の外側へ透過させ、除湿された圧縮空気を送り出すようにした中空糸膜式エアドライヤが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−7540号公報
【特許文献2】特開2006−6989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、空気圧縮装置は、省エネルギー化が推進されることにより、工場等で使用される圧縮空気の供給圧力を低圧力化する傾向にある。これら供給圧力の低圧力化に伴い、空気圧縮装置における単位圧力当たりの供給空気量を増加させ低圧力化に対応させている。
しかしながら、上記特許文献1に記載されている冷凍式エアドライヤでは、供給空気量が増大することにより、露点性能が低下したり、露点性能を維持するために、冷凍機を増設させると、冷凍機を駆動させる消費電力が上昇し省エネルギー化に逆行してしまうという問題が存在する。また、除湿行程において圧縮空気の圧力損失が生じるため、コンプレッサーの動力エネルギーを無駄に消費するという問題があり、凝縮したドレインの処理機器を追加して設ける必要もある。
【0006】
このような動力エネルギーの無駄やドレインの処理機器を不要とするためには、上記特許文献2に示されているように、小型軽量であるとともに長寿命であり、しかもドレン水が発生しない等の多くの利点を有する中空糸膜式エアドライヤを利用するのが好ましいが、このようにすると、圧縮気体の除湿を連続して行うために、中空糸膜の外側を、水蒸気分圧の低い状態に保つ、真空源の電力エネルギーが必要となる。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、構造が簡単で、空気の圧縮行程前に空気の除湿をする除湿ローターの回転駆動力が主であり、処理空気量の増大による除湿用の消費電力を従来に比して低減させるとともに、除湿行程の圧力損失を伴わず、ドレインの処理が不要であり、かつ圧縮された除熱空気を連続して供給するようにした空気圧縮装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) モータにより駆動される圧縮機と、前記圧縮機から吐出される圧縮空気の圧縮熱を、送風機から送風する空気をもって除去する熱交換器と、前記圧縮機が吸引する乾燥空気を流す吸気路と、前記吸気路と隔壁で仕切って隣接配置され、前記送風機から送風され、前記熱交換器により加熱された再生空気を流す排気路と、前記圧縮機が吸引する空気中の水分を吸着し、前記再生空気により水分を脱着される吸着剤を担持し、前記吸気路と前記排気路とに跨るように回転自在に配置された円筒状の除湿ローターとを備えるものとする。
【0009】
このような構成とすると、熱交換器は、送風機から送風する空気をもって、圧縮空気の冷却と再生空気の加熱とを同時に行うことができ、除湿ローターにおける吸着剤の再生と圧縮機が吸引する乾燥空気の生成とを同時に行うことができる。
また、除湿ローターは、圧縮機が吸引する空気を除湿するとき、圧力損失がなく、ドレインも発生しないため、空気圧縮装置の構造を簡略化することができる。
【0010】
(2) 上記(1)項において、除湿ローターは、シリカゲルまたはゼオライトを主成分とする吸着剤を担持し、吸湿領域と再生領域とに仕切られ、前記吸湿領域を通過する空気中の水分を前記吸着剤に吸着させた乾燥空気を生成するとともに、前記再生領域を通過する再生空気により、前記吸着剤が吸着した水分を脱着させて、吸湿可能に再生する。
【0011】
このような構成とすると、除湿ローターは、吸湿領域により圧縮機が吸引する空気の水分を吸着させ、再生領域により吸着剤が吸着した水分を脱着させて、吸湿可能に再生することができる。
【0012】
(3) 上記(1)または(2)項において、除湿ローターは、外周の周回りにベルトを懸架し、このベルトを駆動させるロータ駆動モータにより回転する。
【0013】
このような構成とすると、除湿ローターは、ロータ駆動モータにより吸気路と排気路とに跨るように回転し、圧縮機が吸引する空気の除湿を連続して行うことができる。
【0014】
(4) 上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、圧縮機は、空気中の水分を除去した大気圧の乾燥空気を圧縮し、乾燥した圧縮空気を吐出する。
【0015】
このような構成とすると、圧縮機は、圧縮機の吸引圧力により、大気圧の乾燥空気を吸引し圧縮空気を吐出することができ、空気圧縮装置の構造を簡略化することができる。
【0016】
(5) 上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、大気圧の空気から水分を吸着し乾燥空気を生成する除湿ローターと、該除湿ローターが生成した大気圧の乾燥空気を吸引する圧縮機と、該圧縮機が吐出する圧縮空気の圧縮熱を、大気圧の空気をもって除去する熱交換器とを備える。
【0017】
このような構成とすると、大気圧の環境の中で空気の除湿および吸着剤の再生を行うことで、除湿および再生行程での圧力損失がなく、ドレインも発生しないため、空気圧縮装置の構造を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、構造が簡単で、除湿行程の圧力損失を伴わず、ドレインの処理が不要であり、かつ圧縮された除熱空気を連続して供給するようにした空気圧縮装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の空気圧縮装置の空気の流れを示すフロー図である。
【図2】本発明の空気圧縮装置の要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、空気圧縮装置は、空気を圧縮媒体とする圧縮機1と、圧縮機1を駆動するモータ2と、圧縮機1が吐出する圧縮空気の圧縮熱を除去する熱交換器3と、外気を冷却風として熱交換器3に送風する送風機4と、圧縮機1が吸引する空気を除湿する円筒状の除湿ローター5とを備えている。
【0021】
圧縮機1は、吸気口6から除湿ローター5により水分を吸着させた乾燥空気を吸引し、圧縮空気を吐出して熱交換器3に第1管路7を介して通過させる。
【0022】
熱交換器3は、第1管路7から搬送された圧縮空気を、送風機4が送風する冷却風により冷却し、圧縮熱が除却された除熱空気を圧縮空気として第2管路8へ搬送するとともに、圧縮熱により外気が加熱された再生空気を除湿ローター5へ供給する。
【0023】
除湿ローター5は、圧縮機1が吸引する乾燥空気を流す吸気路9と、この吸気路9と隔壁10で仕切って隣接配置され、送風機4から送風され、熱交換器3により加熱された再生空気を流す排気路11とに跨るように回転自在に配置され、ロータ駆動モータ12により周方向に回転駆動するように設けられている。
【0024】
例えば、除湿ローター5は、除湿ローター5の外周に懸架したベルト13を介してロータ駆動モータ12により回転駆動してもよく、除湿ローター5の外周とロータ駆動モータ12の回転軸とを近接させ歯車またはゴムのような弾性ローラにより回転駆動してもよい。
【0025】
除湿ローター5は、空気中の水分を吸着し、熱交換器3により加熱された再生空気により水分を脱着するシリカゲルまたはゼオライトを主成分とする吸着剤を担持し、周方向に回転することにより、吸着剤が水分を吸着する吸湿領域14から水分を脱着する再生領域15に移動させることができる。
【0026】
すなわち、除湿ローター5は、吸気路9に接する吸湿領域14と排気路11に接する再生領域15とに仕切られ、外気を取入れる吸気口16から流入する空気を、吸湿領域14に供給して空気の除湿を行うとともに、再生領域15を通過した再生空気を排気口17に排出することで、吸着剤を吸湿可能に再生させることができる。
【0027】
ここで、除湿ローター5に担持する吸着剤としては、シリカゲルやゼオライトが用いられる。シリカゲル及びゼオライトは、各々の細孔構成により吸湿特性が異なり、例えばゼオライトでは、水の蒸気圧が低い相対湿度で吸湿率が急激に上昇し、相対湿度が10数%以上になると吸湿率の増加割合が極めて小さくなるのに対し、シリカゲルでは、相対湿度の増加とともに吸湿率が緩やかに増加し、相対湿度の高い領域では吸湿率が著しく増加する特性を有している。
【0028】
そこで、本実施形態では、空気圧縮装置が相対湿度の高い環境に設置する場合、除湿ローター5にシリカゲルを吸着剤として担持させる。一方、空気圧縮装置が相対湿度の低いまたは比較的高温の空気環境に設置する場合は、除湿ローター5にゼオライトを吸着剤として担持させることが好ましい。
【0029】
本実施の形態では、空気圧縮装置は、吸気口16から圧縮機1の吸引力により大気圧の空気を取入れ、除湿ローター5の吸湿領域14を除湿する除湿行程と、除湿した大気圧の乾燥空気を圧縮機1の吸気管6に吸入し圧縮空気を生成する圧縮行程と、圧縮機1から吐出する露点が低下した圧縮空気を第1管路7に通過させ熱交換器3により冷却する除熱行程と、熱交換器3から第2管路8に除熱した圧縮空気を吐出する吐出行程とを含む空気の除湿サイクルを構成することができる。
【0030】
また、空気圧縮装置は、送風機4が外部から大気圧の空気を熱交換器3に冷却風として送風する冷却行程と、熱交換器3により加熱させた加熱空気により除湿ローター5の再生領域15の吸着剤を、除湿可能に再生させる再生行程と、再生領域15を通過した空気を排気口17に排気する排気行程とを含む再生サイクルを構成することができる。
【0031】
上述したように、本発明において好ましく使用される円筒状の除湿ローターとしては、実施形態に示すもの以外に、例えばセラミック繊維のような不燃性の無機繊維からなるペーパーを段ボール状に加工し、成巻もしくは積層することによりローター状に形成したハニカム構造体に吸湿特性に優れたゼオライトまたはシリカゲルを担持しているハニカムローターも、推奨される一つの形態である。
【符号の説明】
【0032】
1 圧縮機
2 モータ
3 熱交換器
4 送風機
5 除湿ローター
6 吸気管
7 第1管路
8 第2管路
9 吸気路
10 隔壁
10a隔壁
11 排気路
12 ロータ駆動モータ
13 ベルト
14 吸湿領域
15 再生領域
16 吸気口
17 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより駆動される圧縮機と、
前記圧縮機から吐出される圧縮空気の圧縮熱を、送風機から送風する空気をもって除去する熱交換器と、
前記圧縮機が吸引する乾燥空気を流す吸気路と、
前記吸気路と隔壁で仕切って隣接配置され、前記送風機から送風され、前記熱交換器により加熱された再生空気を流す排気路と、
前記圧縮機が吸引する空気中の水分を吸着し、前記再生空気により水分を脱着される吸着剤を担持し、前記吸気路と前記排気路とに跨るように回転自在に配置された円筒状の除湿ローターと
を備えることを特徴とする空気圧縮装置。
【請求項2】
除湿ローターは、シリカゲルまたはゼオライトを主成分とする吸着剤を担持し、吸湿領域と再生領域とに仕切られ、前記吸湿領域を通過する空気中の水分を前記吸着剤に吸着させた乾燥空気を生成するとともに、前記再生領域を通過する再生空気により、前記吸着剤が吸着した水分を脱着させて、吸湿可能に再生する請求項1記載の空気圧縮装置。
【請求項3】
除湿ローターは、外周の周回りにベルトを懸架し、このベルトを駆動させるロータ駆動モータにより回転する請求項1または2記載の空気圧縮装置。
【請求項4】
圧縮機は、空気中の水分を除去した大気圧の乾燥空気を圧縮し、乾燥した圧縮空気を吐出する請求項1〜3のいずれかに記載の空気圧縮装置。
【請求項5】
大気圧の空気から水分を吸着し乾燥空気を生成する除湿ローターと、該除湿ローターが生成した大気圧の乾燥空気を吸引する圧縮機と、該圧縮機が吐出する圧縮空気の圧縮熱を、大気圧の空気をもって除去する熱交換器とを備える請求項1〜4のいずれかに記載の空気圧縮装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−229641(P2012−229641A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97838(P2011−97838)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(390028495)アネスト岩田株式会社 (224)
【Fターム(参考)】