説明

窒化ガリウム系半導体レーザ素子、及び、窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法

【課題】閾値電流が低減される窒化ガリウム系半導体レーザ素子及び窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法を提供する。
【解決手段】n型クラッド層15bと、n側光ガイド層29と、活性層27と、p側光ガイド層31と、p型クラッド層23と、を備え、活性層27の発振波長は、400nm以上550nm以下であり、n型クラッド層15bは、InAlGa1−x−yN(0<x<0.05,0<y<0.20)であり、p型クラッド層23は、InAlGa1−x−yN(0≦x<0.05,0<y<0.20)であり、n側光ガイド層29及びp側光ガイド層31は、何れも、インジウムを含有し、n側光ガイド層29及びp側光ガイド層31のインジウムの組成は、何れも、2%以上6%以下であり、n型クラッド層15bの膜厚は、n型クラッド層15bの膜厚とp型クラッド層23の膜厚との合計の65%以上85%以下の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ガリウム系半導体レーザ素子、及び、窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、動作電圧の低減、外部量子効率の増大、発振閾値電流密度の低減等の特性改善を行うための430nm以上の発光波長を有する窒化物半導体レーザ素子が開示されている。この窒化物半導体レーザ素子では、窒化物半導体基板上に、n型AlGaNクラッド層、GaN層、第1のInGaN光ガイド層、発光層、第2のInGaN光ガイド層、窒化物半導体中間層、p型AlGaN層、およびp型AlGaNクラッド層がこの順に設けられる。n型AlGaNクラッド層は、3%以上5%以下のアルミニウム(Al)の組成と1.8μm以上2.5μm以下の厚さを有する。第1と第2のInGaN光ガイド層は、3%以上6%以下のインジウム(In)の組成を有する。第1の光ガイド層の厚さは、第2の光ガイド層に比べて大きくかつ120nm以上160nm以下である。p型AlGaN層は、p型AlGaNクラッド層に接しかつそのアルミニウム(Al)の組成はp型クラッド層に比べて高くて10%以上35%以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−129676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている窒化物半導体レーザ素子では、n側のInGaN光ガイド層の膜厚がp側のInGaN光ガイド層の膜厚よりも厚い。n側の光ガイド層の方がp側の光ガイド層よりも光の吸収は少ないので、閾値電流を低減するためには、p側の光ガイド層の膜厚よりもn側の光ガイド層の膜厚を厚くすることが考えられる。一方、p側の光ガイド層の膜厚よりもn側の光ガイド層の膜厚を厚くする程、活性層の位置のズレが増して活性層を通る光の割合が減少するので、逆に、閾値電流の上昇を招く。そこで、本発明の目的は、上記の事項を鑑みてなされたものであり、閾値電流が低減される窒化ガリウム系半導体レーザ素子及び窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子は、n型の窒化ガリウム系半導体のn型クラッド層と、前記n型クラッド層の上に設けられた窒化ガリウム系半導体の第1の光ガイド層と、前記第1の光ガイド層の上に設けられた窒化ガリウム系半導体の活性層と、前記活性層の上に設けられた窒化ガリウム系半導体の第2の光ガイド層と、前記第2の光ガイド層の上に設けられたp型の窒化ガリウム系半導体のp型クラッド層とを備え、前記活性層の発振波長は、400nm以上550nm以下であり、前記第1及び第2の光ガイド層は、何れも、インジウムを含有し、前記第1及び第2の光ガイド層のインジウムの組成は、何れも、2%以上6%以下であり、前記第1の光ガイド層の膜厚は、前記第1の光ガイド層の膜厚と前記第2の光ガイド層の膜厚との合計の65%以上85%以下の範囲にあり、前記第1の光ガイド層及び前記第2の光ガイド層は前記活性層に接している、ことを特徴とする。また、前記n型クラッド層は、InAlGa1−x−yN(0<x<0.05,0<y<0.20)であり、前記p型クラッド層は、InAlGa1−x−yN(0≦x<0.05,0<y<0.20)である。
【0006】
n側の光ガイド層及びp側の光ガイド層による光の吸収量の総量を低減させることによって、半導体レーザの閾値電流を低減することができる。本発明において、n側にある第1の光ガイド層の膜厚が、この第1の光ガイド層の膜厚とp側にある第2の光ガイド層の膜厚との合計の65%以上85%以下の範囲にあるので、窒化ガリウム系半導体レーザ素子に含まれるn側の光ガイド層及びp側の光ガイド層による光の吸収量の総量を低減でき、よって、窒化ガリウム系半導体レーザ素子の閾値電流を低減できることが見出された。n型半導体よりもp型半導体のほうが光の吸収係数が大きいため、n型層の割合を大きくすることで導波路全体の光の吸収量を低下させることができる。
【0007】
また、n側にある第1の光ガイド層の膜厚が、p側にある第2の光ガイド層の膜厚よりも大きい程、活性層の位置のズレが大きくなり(n側とp側とが顕著に非対称となり)、活性層を通る光の割合が減少するが、本発明のように、n側にある第1の光ガイド層の膜厚が、この第1の光ガイド層の膜厚とp側にある第2の光ガイド層の膜厚との合計の65%以上85%以下の範囲にあれば、上記のn側とp側との間の非対称性による光のロスを好適に抑制できることが見出された。
【0008】
また、クラッド層及び光ガイド層のそれぞれのインジウム(In)の組成と、発振波長と、によって、クラッド層と光ガイドとの屈折率差が変わるが、本発明に係る発振波長及びインジウム(In)の組成であれば、光のロスを好適に抑制できることが見出された。
【0009】
本発明に係る素子において、前記活性層は、単一の量子井戸層を含む単一量子井戸構造を有することができる。従って、本発明に係る素子を単一量子井戸構造に適用できる。量子井戸を有することで、発光が可能となる。井戸層数を一とすることで、井戸数が二以上の場合と比較してバリア層/井戸層のバンド障壁がなくなる分、動作電圧を低減することができる。
【0010】
本発明に係る素子において、前記活性層は、複数の量子井戸層と複数の障壁層とを含む多重量子井戸構造を有することができる。従って、本発明に係る素子を多重量子井戸構造に適用できる。量子井戸を有することで、発光が可能となる。井戸層数を複数とすることで、井戸数が一の場合と比較して屈折率の高い井戸数が増えることにより導波路の光閉じ込めが良いレーザを作製することができる。
【0011】
本発明に係る素子において、前記第1の光ガイド層と前記活性層との界面は、c軸に沿って延びる基準軸に直交する面からm軸方向に傾斜していることができる。従って、緑色を含む範囲の発光波長の光が発光可能である。この面方位を使用することで、高品質な緑色領域の発光に適した活性層を作製することが可能となる。
【0012】
本発明に係る素子において、前記第1の光ガイド層と前記活性層との界面は、前記基準軸に直交する面からm軸方向に63度以上80度未満の角度で傾斜していることができる。従って、緑色の光が発光可能である。この面方位を使用することで、高品質な緑色領域の発光に適した活性層を作製することが可能となる。
【0013】
本発明に係る素子において、窒化ガリウム系半導体の主面を有する基板を更に備え、前記主面の上に、前記n型クラッド層、前記第1の光ガイド層、前記活性層、前記第2の光ガイド層及び前記p型クラッド層が順に設けられており、前記主面は、前記基準軸に直交する面からm軸方向に63度以上80度未満の角度で傾斜していることができる。従って、緑色の光が発光可能である。この面方位を使用することで、高品質な緑色領域の発光に適した活性層を作製することが可能となる。
【0014】
本発明に係る素子において、前記活性層の発振波長は、480nm以上550nm以下であることができ、又は、前記活性層の発振波長は、510nm以上540nm以下であることができる。従って、純緑色の光(波長が概ね520nm以上535nm以下の光)が発光可能である。
【0015】
本発明に係る素子において、前記第1の光ガイド層のインジウムの組成は、2%以上5%以下であることができる。従って、第1の光ガイド層とn型クラッド層との屈折率差が得られると共に結晶の剛性も確保できる。光閉じ込めに十分なクラッド層との屈折率差を得るためには2%以上のインジウム(In)の組成が必要であり、安定してミスフィット転位が入らないようにするためにはインジウム(In)の組成を5%以下にする必要がある。
【0016】
本発明に係る素子において、前記第1の光ガイド層のインジウムの組成は、2%以上4.5%以下であることができる。従って、第1の光ガイド層とn型クラッド層との屈折率差が十分に得られると共に結晶の剛性も十分に確保できる。光閉じ込めに十分なクラッド層との屈折率差を得るためには2%以上のインジウム(In)の組成が必要であり、十分に安定してミスフィット転位が入らないようにするためにはインジウム(In)の組成を4.5%以下にする必要がある。
【0017】
本発明に係る素子において、前記第2の光ガイド層のインジウムの組成は、2%以上5%以下であることができる。従って、第2の光ガイド層とp型クラッド層との屈折率差が得られると共に結晶の剛性も確保できる。光閉じ込めに十分なクラッド層との屈折率差を得るためには2%以上のインジウム(In)の組成が必要であり、安定してミスフィット転位が入らないようにするためにはインジウム(In)の組成を5%以下にする必要がある。
【0018】
本発明に係る素子において、前記第2の光ガイド層のインジウムの組成は、2%以上4.5%以下であることができる。従って、第2の光ガイド層とp型クラッド層との屈折率差が十分に得られると共に結晶の剛性も十分に確保できる。光閉じ込めに十分なクラッド層との屈折率差を得るためには2%以上のインジウム(In)の組成が必要であり、十分に安定してミスフィット転位が入らないようにするためにはインジウム(In)の組成を4.5%以下にする必要がある。
【0019】
本発明に係る素子において、前記第1の光ガイド層および第2の光ガイド層に含まれるインジウムの総和は、インジウム組成(%)×ガイド層膜厚(nm)≦1250の範囲であることができる。この範囲であればミスフィット転位が入らないエピを得ることができる。
【0020】
本発明に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法は、n型の窒化ガリウム系半導体のn型クラッド層を形成する工程と、前記n型クラッド層の上に窒化ガリウム系半導体の第1の光ガイド層を形成する工程と、前記第1の光ガイド層の上に窒化ガリウム系半導体の活性層を形成する工程と、前記活性層の上に窒化ガリウム系半導体の第2の光ガイド層を形成する工程と、前記第2の光ガイド層の上にp型の窒化ガリウム系半導体のp型クラッド層を形成する工程と、を備え、前記活性層の発振波長は、400nm以上550nm以下であり、前記第1及び第2の光ガイド層は、何れも、インジウムを含有し、前記第1及び第2の光ガイド層のインジウムの組成は、何れも、2%以上6%以下であり、前記第1の光ガイド層の膜厚は、前記第1の光ガイド層の膜厚と前記第2の光ガイド層の膜厚との合計の65%以上85%以下の範囲にあり、前記第1の光ガイド層及び前記第2の光ガイド層は前記活性層に接している、ことを特徴とする。また、前記n型クラッド層は、InAlGa1−x−yN(0<x<0.05,0<y<0.20)であり、前記p型クラッド層は、InAlGa1−x−yN(0≦x<0.05,0<y<0.20)である。
【0021】
n側の光ガイド層及びp側の光ガイド層による光の吸収量の総量を低減させることによって、半導体レーザの閾値電流を低減することができる。本発明において、n側にある第1の光ガイド層の膜厚が、この第1の光ガイド層の膜厚とp側にある第2の光ガイド層の膜厚との合計の65%以上85%以下の範囲にあるので、窒化ガリウム系半導体レーザ素子に含まれるn側の光ガイド層及びp側の光ガイド層による光の吸収量の総量を低減でき、よって、窒化ガリウム系半導体レーザ素子の閾値電流を低減できることが見出された。n型半導体よりもp型半導体のほうが光の吸収係数が大きいため、n型層の割合を大きくすることで導波路全体の光の吸収量を低下させることができる。
【0022】
また、n側にある第1の光ガイド層の膜厚が、p側にある第2の光ガイド層の膜厚よりも大きい程、活性層の位置のズレが大きくなり(n側とp側とが顕著に非対称となり)、活性層を通る光の割合が減少するが、本発明のように、n側にある第1の光ガイド層の膜厚が、この第1の光ガイド層の膜厚とp側にある第2の光ガイド層の膜厚との合計の65%以上85%以下の範囲にあれば、上記のn側とp側との間の非対称性による光のロスを好適に抑制できることが見出された。
【0023】
また、クラッド層及び光ガイド層のそれぞれのインジウム(In)の組成と、発振波長と、によって、クラッド層と光ガイドとの屈折率差が変わるが、本発明に係る発振波長及びインジウム(In)の組成であれば、光のロスを好適に抑制できることが見出された。
【0024】
本発明に係る製造方法において、前記活性層は、単一の量子井戸層を含む単一量子井戸構造を有することができる。従って、本発明に係る素子を単一量子井戸構造に適用できる。量子井戸を有することで、発光が可能となる。井戸層数を一とすることで、井戸数が二以上の場合と比較してバリア層/井戸層のバンド障壁がなくなる分、動作電圧を低減することができる。
【0025】
本発明に係る製造方法において、前記活性層は、複数の量子井戸層と複数の障壁層とを含む多重量子井戸構造を有することができる。従って、本発明に係る素子を多重量子井戸構造に適用できる。量子井戸を有することで、発光が可能となる。井戸層数を複数とすることで、井戸数が一の場合と比較して屈折率の高い井戸数が増えることにより導波路の光閉じ込めが良いレーザを作製することができる。
【0026】
本発明に係る製造方法において、前記第1の光ガイド層と前記活性層との界面は、c軸に沿って延びる基準軸に直交する面からm軸方向に傾斜していることができる。この面方位を使用することで、高品質な緑色領域の発光に適した活性層を作製することが可能となる。
【0027】
本発明に係る製造方法において、前記第1の光ガイド層と前記活性層との界面は、前記基準軸に直交する面からm軸方向に63度以上80度未満の角度で傾斜していることができる。この面方位を使用することで、高品質な緑色領域の発光に適した活性層を作製することが可能となる。
【0028】
本発明に係る製造方法において、窒化ガリウム系半導体の主面を有する基板を準備する工程を更に備え、前記基板の主面の上に、前記n型クラッド層、前記第1の光ガイド層、前記活性層、前記第2の光ガイド層及び前記p型クラッド層が順に設けられ、前記主面は、前記基準軸に直交する面からm軸方向に63度以上80度未満の角度で傾斜していることができる。この面方位を使用することで、高品質な緑色領域の発光に適した活性層を作製することが可能となる。
【0029】
本発明に係る製造方法において、前記活性層の発振波長は、480nm以上550nm以下であることができ、又は、前記活性層の発振波長は、510nm以上540nm以下であることができる。従って、純緑色の光(波長が概ね520nm以上535nm以下の光)が発光可能である。
【0030】
本発明に係る製造方法において、前記第1の光ガイド層のインジウムの組成は、2%以上5%以下であることができる。従って、第1の光ガイド層とn型クラッド層との屈折率差が得られると共に結晶の剛性も確保できる。光閉じ込めに十分なクラッド層との屈折率差を得るためには2%以上のインジウム(In)の組成が必要であり、安定してミスフィット転位が入らないようにするためにはインジウム(In)の組成を5%以下にする必要がある。
【0031】
本発明に係る製造方法において、前記第1の光ガイド層のインジウムの組成は、2%以上4.5%以下であることができる。従って、第1の光ガイド層とn型クラッド層との屈折率差が十分に得られると共に結晶の剛性も十分に確保できる。光閉じ込めに十分なクラッド層との屈折率差を得るためには2%以上のインジウム(In)の組成が必要であり、十分に安定してミスフィット転位が入らないようにするためにはインジウム(In)の組成を4.5%以下にする必要がある。
【0032】
本発明に係る製造方法において、前記第2の光ガイド層のインジウムの組成は、2%以上5%以下であることができる。従って、第2の光ガイド層とp型クラッド層との屈折率差が得られると共に結晶の剛性も確保できる。光閉じ込めに十分なクラッド層との屈折率差を得るためには2%以上のインジウム(In)の組成が必要であり、安定してミスフィット転位が入らないようにするためにはインジウム(In)の組成を5%以下にする必要がある。
【0033】
本発明に係る製造方法において、前記第2の光ガイド層のインジウムの組成は、2%以上4.5%以下であることができる。従って、第2の光ガイド層とp型クラッド層との屈折率差が十分に得られると共に結晶の剛性も十分に確保できる。光閉じ込めに十分なクラッド層との屈折率差を得るためには2%以上のインジウム(In)の組成が必要であり、十分に安定してミスフィット転位が入らないようにするためにはインジウム(In)の組成を4.5%以下にする必要がある。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、閾値電流が低減される窒化ガリウム系半導体レーザ素子及び窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、実施形態に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子の構成を示す図である。
【図2】図2は、実施形態に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法の主要な工程を示す図である。
【図3】図3は、実施形態に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法の主要な工程における生産物を模式的に示す図である。
【図4】図4は、実施例に係るレーザダイオードの素子構造を示す図である。
【図5】図5は、実施例に係るレーザダイオードの素子構造を示す図である。
【図6】図6は、全InGaN層の膜厚に占めるn−InGaN層の膜厚の比率と、閾値電流との関係を示す図である。
【図7】図7は、n−InGaN層の膜厚と、活性層を通る光の割合及び導波路を通る光の減衰率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、可能な場合には、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1は、本実施の形態に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子の構造及び窒化ガリウム系半導体レーザ素子のためのエピタキシャル基板の構造を概略的に示す図面である。
【0037】
図1の(a)部に窒化ガリウム系半導体レーザ素子11が示され、図1の(b)部に窒化ガリウム系半導体レーザ素子11のためのエピタキシャル基板EPが示される。エピタキシャル基板EPは、窒化ガリウム系半導体レーザ素子11と同様のエピタキシャル層構造を有する。引き続く説明では、窒化ガリウム系半導体レーザ素子11を構成する半導体層を説明する。エピタキシャル基板EPは、これらの窒化ガリウム系半導体レーザ素子11を構成する半導体層に対応する半導体層(半導体膜)を含み、対応する半導体層には、窒化ガリウム系半導体レーザ素子11のための説明が適用される。
【0038】
図1を参照すると、座標系S及び結晶座標系CRが示されている。基板13の主面13aは、Z軸の方向を向いており、X方向及びY方向に延びている。X軸はa軸の方向に向いている。図1の(a)部に示されるように、窒化ガリウム系半導体レーザ素子11は、基板13と、n型窒化ガリウム系半導体領域15と、発光層17と、p型III族窒化物半導体領域19とを備える。n型窒化ガリウム系半導体領域15、発光層17及びp型III族窒化物半導体領域19は、基板13の上においてエピタキシャル成長によって形成されている。
【0039】
基板13のc面は、図1に示された面Scに沿って延びている。面Scの上では、六方晶系窒化ガリウム系半導体の結晶軸を示すための結晶座標系CR(c軸,a軸,m軸)が示されている。基板13の主面13aは、基準軸Cxに直交する面Scを基準にして、基板13の窒化ガリウム系半導体のm軸の方向に、傾斜角θで傾斜している。傾斜角θは、基板13の主面13aの法線ベクトルVNと基準軸Cxを示すc軸部ベクトルVCとの成す角度によって規定される。
【0040】
主面13aの上において、発光層17は、n型窒化ガリウム系半導体領域15とp型III族窒化物半導体領域19との間に設けられている。主面13aの上において、n型窒化ガリウム系半導体領域15、活性層17及びp型III族窒化物半導体領域19は、法線ベクトルVNの向き(Z軸方向)に順に配列されている。主面13aの上において、n型窒化ガリウム系半導体領域15に含まれているn型窒化ガリウム系半導体層15a、n型クラッド層15b及びn型窒化ガリウム系半導体層15cが法線ベクトルVNの向き(Z軸方向)に順に配列されている。
【0041】
主面13aの上において、発光層17に含まれているn側光ガイド層29、活性層27及びp側光ガイド層31が法線ベクトルVNの向き(Z軸方向)に順に配列されている。主面13aの上において、p型III族窒化物半導体領域19に含まれているp型窒化ガリウム系半導体層21,p型クラッド層23a,p型クラッド層23b,コンタクト層25a,コンタクト層25bが、法線ベクトルVNの向き(Z軸方向)に順に配列されている。なお、p型クラッド層23a及びp型クラッド層23bに替えて、単一の層からなるp型クラッド層23が設けられていてもよい。
【0042】
基板13は、導電性を有する窒化ガリウム系半導体からなる主面13aを有する。基板13の主面13aは、窒化ガリウム系半導体のc軸に沿って延びる基準軸Cxに直交する面Scから63度以上80度未満の範囲の角度で傾斜する。基板13は、主面13aを含めて、窒化ガリウム系半導体からなることができる。基板13の窒化ガリウム系半導体は、例えばGaN(窒化ガリウム),InGaN(In:インジウム),AlGaN(Al:アルミニウム)等であることができる。GaNは、二元化合物である窒化ガリウム系半導体であるので、良好な結晶品質と安定した基板主面とを提供できる。また、基板13は、例えばAlN等であることもできる。
【0043】
n型窒化ガリウム系半導体領域15は、n型の窒化ガリウム系半導体からなる。n型窒化ガリウム系半導体領域15のn型ドーパントは例えばシリコン(Si)である。n型窒化ガリウム系半導体領域15は、基板13の上に設けられる。n型窒化ガリウム系半導体領域15は、基板13の主面13aに直接接している。n型窒化ガリウム系半導体領域15は、一又は複数のn型の窒化ガリウム系半導体層を含む。この一又は複数のn型の窒化ガリウム系半導体層は、主面13aの上に設けられる。
【0044】
n型窒化ガリウム系半導体領域15は、n型窒化ガリウム系半導体層15a、n型クラッド層15b及びn型窒化ガリウム系半導体層15cを含むことができる。n型窒化ガリウム系半導体層15aは、主面13aに直接接触している。n型窒化ガリウム系半導体層15aは、例えば、n型のGaN、InGaN、AlGaN又はInAlGaN等からなることができる。n型クラッド層15bは、n型窒化ガリウム系半導体層15aの上に設けられており、n型窒化ガリウム系半導体層15aに直接接触している。n型クラッド層15bは、例えば、n型のGaN、InGaN、AlGaN又はInAlGaN等からなることができる。n型窒化ガリウム系半導体層15cは、n型クラッド層15bの上に設けられており、n型クラッド層15bに直接接触している。n型窒化ガリウム系半導体層15cは、例えば、n型のGaNからなることができる。
【0045】
発光層17は、例えば、インジウム(In)を含む窒化ガリウム系半導体からなる。発光層17は、基板13及びn型窒化ガリウム系半導体領域15の上に設けられる。発光層17は、n型窒化ガリウム系半導体領域15(特にn型窒化ガリウム系半導体層15c)に直接接している。もしくは、膜厚15nm以下のアンドープ窒化ガリウム系半導体層(バリア層)を介してn型窒化ガリウム系半導体領域15に接している。
【0046】
発光層17は、活性層27、n側光ガイド層29(第1の光ガイド層)及びp側光ガイド層31(第2の光ガイド層)を含むことができる。活性層27は、窒化ガリウム系半導体からなる。活性層27は、一又は複数の井戸層33と、複数の障壁層35とを含む。障壁層35は、井戸層33のバンドギャップより大きいバンドギャップを有する。活性層27は、単一の量子井戸層を含む単一量子井戸構造、又は、複数の量子井戸層と複数の障壁層とを含む多重量子井戸構造を有することができる。
【0047】
井戸層33及び障壁層35は、何れも、n型窒化ガリウム系半導体領域15及びn側光ガイド層29の上に設けられている。井戸層33及び障壁層35は、何れも、アンドープの窒化ガリウム系半導体であり、例えば、AlGaN、GaN、InGaN又はInAlGaN等からなる。活性層27の発光波長は、例えば400nm以上550nm以下であることができるが、480nm以上550nm以下であることができ、更に、510nm以上540nm以下であることができる。510nm以上540nm以下の発光波長の場合には純緑色が実現できる。
【0048】
n側光ガイド層29は、n型窒化ガリウム系半導体層15cの上に設けられ、n型窒化ガリウム系半導体層15cに直接接触している。n側光ガイド層29は、インジウム(In)を含有する。n側光ガイド層29は、n型ドーパントを含むn型のInGaNからなる。
【0049】
p側光ガイド層31は、活性層27に含まれる障壁層35の上に設けられ、障壁層35に直接接触している。p側光ガイド層31は、インジウム(In)を含有する。p側光ガイド層31は、アンドープのInGaNからなる。なお、p側光ガイド層31は、アンドープのInGaN層と、このアンドープのInGaN層の上に設けられたp型ドーパントを含むInGaN層とを含む二層構造を有していてもよい。
【0050】
p型III族窒化物半導体領域19は、p型の窒化ガリウム系半導体からなる。p型III族窒化物半導体領域19のp型ドーパントは例えばマグネシウム(Mg)である。なお、亜鉛(Zn)等もp型ドーパントに用いることができる。p型III族窒化物半導体領域19は、基板13、n型窒化ガリウム系半導体領域15及び発光層17の上に設けられる。p型III族窒化物半導体領域19は、発光層17に直接接している。p型III族窒化物半導体領域19は、一又は複数のp型の窒化ガリウム系半導体層を含む。p型III族窒化物半導体領域19は、例えばp型窒化ガリウム系半導体層21を含むことができる。
【0051】
p型窒化ガリウム系半導体層21は、発光層17に含まれるp側光ガイド層31の上に設けられ、p側光ガイド層31に直接接している。p型窒化ガリウム系半導体層21は、例えば、p型のGaNからなることができる。なお、p型窒化ガリウム系半導体層21とp側光ガイド層31とが直接接触している構成に替えて、p型窒化ガリウム系半導体層21とp側光ガイド層31との間に、アンドープのGaN層が設けられた構成であってもよい。p側光ガイド層31は、このアンドープのGaN層に直接接し、p型窒化ガリウム系半導体層21も、このアンドープのGaN層に直接接する。
【0052】
p型III族窒化物半導体領域19は、例えば、更に、p型クラッド層23a,p型クラッド層23b,コンタクト層25a,コンタクト層25bを含むことができる。p型クラッド層23aは、p型窒化ガリウム系半導体層21の上に設けられ、p型窒化ガリウム系半導体層21に直接接している。p型クラッド層23bは、p型クラッド層23aの上に設けられ、p型クラッド層23aに直接接している。p型クラッド層23a及びp型クラッド層23bは、例えば、p型のGaN、InGaN、AlGaN又はInAlGaN等からなることができる。なお、p型クラッド層23a及びp型クラッド層23bに替えて、単一層のp型クラッド層23が用いられてもよい。p型クラッド層23は、例えば、p型のGaN、InGaN、AlGaN又はInAlGaN等からなることができる。
【0053】
p型III族窒化物半導体領域19は、例えば、更に、コンタクト層25a及びコンタクト層25bを含むことができる。コンタクト層25aは、p型クラッド層23bの上に設けられ、p型クラッド層23bに直接接している。コンタクト層25bは、コンタクト層25aの上に設けられ、コンタクト層25aに直接接している。
【0054】
コンタクト層25aとコンタクト層25bとは、p型の同一の窒化ガリウム系半導体からなり、例えば、p型のGaNからなることができる。GaNは、二元化合物である窒化ガリウム系半導体であるので、コンタクト層25a及びコンタクト層25bがGaNからなる場合には、良好な結晶品質を提供できる。
【0055】
コンタクト層25aのp型ドーパントの濃度は、コンタクト層25bのp型ドーパントの濃度よりも低い。電極37に直接接していないコンタクト層25aのp型ドーパントの濃度が比較的低いので、結晶性が比較的良好であり、よってキャリア濃度も比較的高い。電極37に直接接しているコンタクト層25bのp型ドーパントの濃度が比較的高いので、電極37との接触JCにおける接触抵抗は低下する。コンタクト層25aのバンドギャップはp型クラッド層23bのバンドギャップよりも小さい。従って、コンタクト層25aがコンタクト層25aよりも大きいバンドギャップを有するp型クラッド層23bの上に設けられるのでコンタクト層25aを介したキャリア移動が良好となる。
【0056】
更に、窒化ガリウム系半導体レーザ素子11は、より詳細には下記の構成を有する。n側光ガイド層29と活性層27との界面J1は、c軸に沿って延びる基準軸Cxに直交する面Scからm軸方向に傾斜しており、特に、63度以上80度未満の傾斜角θで傾斜していることができる。
【0057】
基板13の主面13aの上に、n型窒化ガリウム系半導体層15a、n型クラッド層15b、n型窒化ガリウム系半導体層15c、n側光ガイド層29、活性層27、p側光ガイド層31、p型窒化ガリウム系半導体層21、p型クラッド層23a、p型クラッド層23b(又は、p型クラッド層23a及びp型クラッド層23bに替えてp型クラッド層23)、コンタクト層25a及びコンタクト層25bが順に設けられている。基板13の主面13aは、c軸に沿って延びる基準軸Cxに直交する面Scからm軸方向に63度以上80度未満の傾斜角θで傾斜している。n側光ガイド層29と活性層27との界面J1が、c軸に沿って延びる基準軸Cxに直交する面Scからm軸方向に63度以上80度未満の傾斜角θで傾斜しているので、緑色領域の発光に好適である。
【0058】
n型クラッド層15bは、InAlGa1−x−yN(0<x<0.05,0<y<0.20)であり、p型クラッド層23a、p型クラッド層23b及びp型クラッド層23は、何れも、InAlGa1−x−yN(0≦x<0.05,0<y<0.20)である。
【0059】
n側光ガイド層29及びp側光ガイド層31のインジウム(In)の組成は、何れも、2%以上6%以下であるが、2%以上5%以下であることができ、更に、2%以上4.5%以下であることができる。n側光ガイド層29及びp側光ガイド層31のインジウム(In)の組成は、高い程、n型クラッド層15b,p型クラッド層23a,p型クラッド層23b,p型クラッド層23との屈折率差が顕著となるが、結晶が脆くなる。基板13の主面13aが、c軸に沿って延びる基準軸Cxに直交する面Scからm軸方向に63度以上80度未満の傾斜角θで傾斜している場合、インジウム(In)の組成が6%を超えると転位の発生が顕著となる。n側光ガイド層29及びp側光ガイド層31と、n型クラッド層15b,p型クラッド層23a,p型クラッド層23b,p型クラッド層23との屈折率差を十分に得るために、n側光ガイド層29及びp側光ガイド層31のインジウム(In)の組成を、特に、2%以上6%以下とすることができる。従って、光ガイド層とクラッド層との屈折率差が十分に得られると共に結晶の剛性も十分に確保できる。
【0060】
n側光ガイド層29の膜厚L1は、n側光ガイド層29の膜厚L1とp側光ガイド層31の膜厚L2との合計の65%以上85%以下の範囲にある。また、n側光ガイド層29の膜厚L1とp側光ガイド層31の膜厚L2との合計は、例えば、240nm以上280nm以下とすることができ、特に、260nm程度とすることができる。
【0061】
n型窒化ガリウム系半導体領域15において、n型ドーパントは例えばシリコン(Si)であり、n型ドーパントのドーパント濃度は、5×1017cm−3程度である。n型ドーパントのドーパント濃度が、この値5×1017cm−3を下回ると、比較的大きな電気的抵抗が生じる。p型III族窒化物半導体領域19において、p型ドーパントは例えばマグネシウム(Mg)であり、p型ドーパントのドーパント濃度は、3×1018cm−3程度である。p型ドーパントのドーパント濃度が、この値3×1018cm−3を下回ると、比較的大きな電気的抵抗が生じる。
【0062】
n側光ガイド層29の吸収係数は6cm−1程度であり、p側光ガイド層31の吸収係数は1cm−1程度であり、p型窒化ガリウム系半導体層21の吸収係数は30cm−1程度である。エピ層の吸収係数は、例えば分光エリプソメトリーにより測定できる。
【0063】
p側光ガイド層31(p側光ガイド層31が、アンドープのInGaN層と、このアンドープのInGaN層の上に設けられたp型ドーパントを含むInGaN層と、を含む二層構造を有する場合には、アンドープのInGaN層)は、p型ドーパントのマグネシウム(Mg)が活性層に拡散することを防止できる。マグネシウム(Mg)の拡散防止に必要なp側光ガイド層31の膜厚L2(p側光ガイド層31が、アンドープのInGaN層と、このアンドープのInGaN層の上に設けられたp型ドーパントを含むInGaN層と、を含む二層構造を有する場合には、アンドープのInGaN層の膜厚)は0.075μm程度であり、p側光ガイド層31の膜厚L2(p側光ガイド層31が、アンドープのInGaN層と、このアンドープのInGaN層の上に設けられたp型ドーパントを含むInGaN層と、を含む二層構造を有する場合には、アンドープのInGaN層の膜厚)が、この値0.075μmを超えると、p側光ガイド層31は、比較的に高い電気的抵抗を有する。
【0064】
以上説明した構成を有する窒化ガリウム系半導体レーザ素子11では、n側の光ガイド層及びp側の光ガイド層による光の吸収量の総量を低減させることによって、窒化ガリウム系半導体レーザ素子の閾値電流を低減することができる。
【0065】
本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子11において、n側光ガイド層29の膜厚L1が、n側光ガイド層29の膜厚L1とp側光ガイド層31の膜厚L2との合計の65%以上85%以下の範囲にあるので、n側光ガイド層29及びp側光ガイド層31による光の吸収量の総量を低減でき、よって、窒化ガリウム系半導体レーザ素子11の閾値電流を低減できることが見出された。n型半導体よりもp型半導体のほうが光の吸収係数が大きいため、n型層の割合を大きくすることで導波路全体の光の吸収量を低下させることができる。なお、後述の実施例1(図4の(a)部に示す構成)では、p型半導体に含まれるMgが活性層にまで拡散することを防ぐためアンドープ層を75nm設けているが、例えばn側ガイド層とp側ガイド層の膜厚が等しい場合のガイド構造は「nドープ層129nm/活性層3nm/アンドープ層75nm/pドープ層55nm」となり、このpドープ層の膜厚を減らした(0にした)分nドープ層の膜厚を増やした構造を実施例1(図4の(a)部に示す構成)としている。これにより光の吸収量を減らすことができる。
【0066】
また、n側光ガイド層29の膜厚L1が、p側光ガイド層31の膜厚L2よりも大きい程、活性層27の位置のズレが大きくなり(n側とp側とが顕著に非対称となり)、活性層27を通る光の割合が減少するが、本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子11のように、n側光ガイド層29の膜厚L1が、n側光ガイド層29の膜厚L1とp側光ガイド層31の膜厚L2との合計の65%以上85%以下の範囲にあれば、上記のn側とp側との間の非対称性による光のロスを好適に抑制できることが見出された。
【0067】
また、クラッド層及び光ガイド層のそれぞれのインジウム(In)の組成と、発振波長と、によって、クラッド層と光ガイドとの屈折率差が変わるが、本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子11の発振波長及びインジウム(In)の組成であれば、光のロスを好適に抑制できることが見出された。
【0068】
窒化ガリウム系半導体レーザ素子11は、電極37及び絶縁膜39を更に備える。基板13、n型窒化ガリウム系半導体領域15、発光層17及びp型III族窒化物半導体領域19の上には、電極37(例えば、アノード)と、コンタクト層25bを覆う絶縁膜39とが設けられている。電極37は、コンタクト層25bの上に設けられ、絶縁膜39の開口39aを介してコンタクト層25bに直接接している。コンタクト層25bと電極37とは、開口39aを介して接触JCを成す。電極37は、例えば、Pd、Au、又は、Ni/Au(Ni及びAu)等からなる。従って、このような材料の電極37によって、コンタクト層25bと良好な接触が実現される。
【0069】
また、窒化ガリウム系半導体レーザ素子11は、電極41(例えば、カソード)を備える。電極41は、基板13の裏面13bの上に設けられ、裏面13bに直接接している。電極41は、例えば、Ti/Al等からなる。
【0070】
図1の(b)部に示すように、窒化ガリウム系半導体レーザ素子11のエピタキシャル基板EPは、窒化ガリウム系半導体レーザ素子11の上記の各半導体層に対応する半導体層(半導体膜)を含み、対応する半導体層には、窒化ガリウム系半導体レーザ素子11のための説明が当てはまる。
【0071】
図2は、本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法の主要な工程を示す図面である。図3は、本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法の主要な工程における生産物を模式的に示す図面である。図2に示される工程フローに従って、有機金属気相成長法により、発光素子の構造のエピタキシャル基板EPと窒化ガリウム系半導体レーザ素子11とを製造した。エピタキシャル成長のための原料として、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)、トリメチルアルミニウム(TMA)、アンモニア(NH)、シラン(SiH)、及び、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を用いた。
【0072】
工程S101では、窒化ガリウム系半導体からなる主面(図3の(a)部に示す主面51a)を有する基板(図3の(a)部に示す基板51)を準備する。この基板51(基板13に対応)の主面51a(主面13aに対応)の法線軸(法線軸Ax)は、窒化ガリウム系半導体のc軸に沿って延びる基準軸(基準軸Cx)に対して63度以上80度未満の範囲の傾斜角(傾斜角θに対応)を有する。基板51の主面51aは、例えば、六方晶系GaNにおけるm軸方向にc面から75度の角度で傾斜した{20−21}面であることができる。主面51aは鏡面研磨されている。
【0073】
次に、基板51の主面51aの上に以下の条件でエピタキシャル成長を行う。まず、工程S102では、基板51を成長炉10内に設置する。成長炉10内には、例えば石英フローチャネル等の石英製の治具が配置されている。必要な場合には、摂氏1050度程度の温度及び27kPa程度の炉内圧力において、NHとHを含む熱処理ガスを成長炉10に供給しながら、10分間程度、熱処理を行う。この熱処理により、主面51a等において表面改質が生じる。
【0074】
この熱処理の後に、工程S103では、基板51の主面51aの上に窒化ガリウム系半導体層をエピタキシャルに成長してエピタキシャル基板EPを形成する。雰囲気ガスは、例えば窒素及び/又は水素を含むことができる。工程S103は、下記工程S104、工程S105及び工程S110を含む。
【0075】
図3の(a)部に示すように、工程S104では、III族構成元素及びV族構成元素のための原料、及びn型ドーパントを含む原料ガス並びに雰囲気ガスを成長炉10に供給して、n型窒化ガリウム系半導体領域53(n型窒化ガリウム系半導体領域15に対応)を、基板51の主面51aの上でエピタキシャルに成長して形成する。n型窒化ガリウム系半導体領域53の主面53aの傾斜角は、基板51の主面51aの傾斜角(傾斜角θ)に対応している。
【0076】
n型窒化ガリウム系半導体領域53は、一又は複数のIII族窒化物半導体層を含むことができる。本実施形態では、例えば、以下のIII族窒化物半導体層(Siドープ窒化ガリウム系半導体層55a,Siドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層55b,Siドープ窒化ガリウム系半導体層55c)が順に成長される。
【0077】
摂氏950度程度において、例えば、TMG、NH、SiH、並びに、窒素及び/又は水素、を成長炉10に供給して、Siドープ窒化ガリウム系半導体層55a(n型窒化ガリウム系半導体層15aに対応)を成長して形成する。この場合、Siドープ窒化ガリウム系半導体層55aは、n型のGaNからなることができる。
【0078】
次いで、摂氏870度程度の基板温度で、例えば、TMG、TMI、TMA、NH、SiH及び窒素を成長炉10に供給して、Siドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層55b(n型クラッド層15bに対応)を成長して形成する。この場合、Siドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層55bは、n型のInAlGaNからなることができる。
【0079】
この後に、摂氏1050度程度において、例えば、TMG、NH、SiH、並びに、窒素及び/又は水素、を成長炉10に供給して、Siドープ窒化ガリウム系半導体層55c(n型窒化ガリウム系半導体層15cに対応)を成長して形成する。還元性を有する水素雰囲気では成長炉10内の治具や治具の付着物から酸素が脱離されやすくなる。以上のようにして、Siドープ窒化ガリウム系半導体層55a、Siドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層55b、及びSiドープ窒化ガリウム系半導体層55cが、基板51の主面51aの上に順次形成される。
【0080】
Siドープ窒化ガリウム系半導体層55aの膜厚は、1.1μm程度である。Siドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層55bの膜厚は、1.2μm程度である。Siドープ窒化ガリウム系半導体層55cの膜厚は、0.250μm程度である。
【0081】
工程S105では、図3の(b)部に示すように、発光層57(発光層17に対応)を、n型窒化ガリウム系半導体領域53の主面53aの上でエピタキシャルに成長して形成する。工程S105は、下記工程S106〜工程S109を含む。
【0082】
工程S106では、摂氏840度程度の基板温度で、例えば、TMG、TMI、NH、SiH及び窒素を成長炉10に供給して、n型の光ガイド層59a(n側光ガイド層29に対応)を主面53aの上に成長して形成する。この場合、光ガイド層59aは、インジウム(In)を含有するn型のInGaNからなることができる。光ガイド層59aの膜厚L3は、0.184μm程度である。
【0083】
次いで、工程S107及び工程S108において、活性層59b(活性層27に対応)を光ガイド層59aの上で成長して形成する。工程S107では、例えば、TMG、TMI、NH及び雰囲気ガスの窒素を成長炉10に供給して、障壁層61a(障壁層35に対応)を成長して形成する。この場合、障壁層61aは、アンドープのInGaNからなることができる。障壁層61aの厚さは、15nm程度である。
【0084】
障壁層61aの成長後に、成長を中断して、障壁層の成長温度から井戸層の成長温度に基板温度を変更する。基板温度の変更後の工程S108では、例えば、TMG、TMI、NH及び雰囲気ガスの窒素を成長炉10に供給して、井戸層61b(井戸層33に対応)を成長して形成する。この場合、井戸層61bは、アンドープのInGaNからなることができる。井戸層61bの厚さは、3nm程度である。
【0085】
必要な場合には、障壁層の成長、温度変更、井戸層の成長を繰り返すことができる。本実施形態において、活性層59bの量子井戸構造は、一層の井戸層61bを含む単一量子井戸構造、又は、複数(例えば三層)の井戸層61bを含む多重量子井戸構造、である。
【0086】
工程S109では、摂氏840度程度の基板温度で、例えば、TMG、TMI、NH及び雰囲気ガスの窒素を成長炉10に供給して、p側の光ガイド層59c(p側光ガイド層31に対応)を活性層59bの主面59b−1の上に成長して形成する。この場合、光ガイド層59cは、インジウム(In)を含有するアンドープのInGaNからなることができる。発光層57の主面57a及び活性層59bの主面59b−1の傾斜角は、何れも、基板51の主面51aの傾斜角(傾斜角θ)に対応している。光ガイド層59cの膜厚L4は、0.075μm程度である。なお、p側の光ガイド層59cは、アンドープのInGaN層と、このアンドープのInGaN層の上に設けられるp型ドーパントを含むInGaN層と、を含む二層構造を有することができる。このようにp側の光ガイド層59cが二層構造を有する場合、アンドープのInGaN層は、活性層59bの主面59b−1に接し、アンドープのInGaN層の膜厚は、0.075μm程度であり、p型ドーパントを含むInGaN層の膜厚は、0.025μm程度である。
【0087】
光ガイド層59aの膜厚L3が0.184μm程度の場合、光ガイド層59aの膜厚L3(0.184μm程度)と光ガイド層59cの膜厚L4(0.075μm程度)との合計が0.259μm程度となるので、光ガイド層59aの膜厚L3は、光ガイド層59aの膜厚L3と光ガイド層59cの膜厚L4との合計の71%程度の膜厚である。
【0088】
光ガイド層59aの膜厚L3が0.150μm程度の場合、光ガイド層59aの膜厚L3(0.150μm程度)と光ガイド層59cの膜厚L4(0.075μm程度)との合計が0.225μm程度となるので、光ガイド層59aの膜厚L3は、光ガイド層59aの膜厚L3と光ガイド層59cの膜厚L4との合計の67%程度の膜厚である。
【0089】
工程S110では、図3の(c)部に示すように、III族原料、V族原料、及びp型ドーパントを含む原料ガス並びに雰囲気ガスを成長炉10に供給して、p型III族窒化物半導体領域63(p型III族窒化物半導体領域19に対応)を、発光層57の主面57aの上でエピタキシャルに成長して形成する。p型III族窒化物半導体領域63の主面63aの傾斜角は、基板51の主面51aの傾斜角(傾斜角θ)に対応している。
【0090】
p型III族窒化物半導体領域63は、一又は複数のIII族窒化物半導体層を含むことができる。本実施例では、以下のIII族窒化物半導体層(Mgドープ窒化ガリウム系半導体層65a,Mgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65ba,Mgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65bb,Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65c,Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65d)が順に成長される。
【0091】
例えば、発光層57の成長後に、TMGの供給を停止して、基板温度を上昇する。摂氏900度程度において、例えば、TMG、NH、CpMg及び雰囲気ガスを成長炉10に供給して、Mgドープ窒化ガリウム系半導体層65a(p型窒化ガリウム系半導体層21に対応)を発光層57の主面57aの上に成長して形成する。この場合、Mgドープ窒化ガリウム系半導体層65aは、p型のGaNからなることができる。Mgドープ窒化ガリウム系半導体層65aの成長において、雰囲気ガスとして窒素が供給されることが好ましい。
【0092】
なお、Mgドープ窒化ガリウム系半導体層65aの成長の前に、アンドープのGaN層を光ガイド層59cの上(発光層57の主面57aの上)に成長してもよい。この場合、Mgドープ窒化ガリウム系半導体層65aは、このアンドープのGaN層の上に形成される。
【0093】
そして、摂氏870度程度の基板温度で、例えば、TMG、TMI、TMA、NH、CpMg及び窒素を成長炉10に供給して、Mgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65ba(p型クラッド層23aに対応)をMgドープ窒化ガリウム系半導体層65aの上で成長して形成し、そして、Mgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65baの成長後に、例えば、TMG、TMI、TMAの供給量を変更して、Mgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65bb(p型クラッド層23bに対応)をMgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65bbの上で成長して形成する。この場合、Mgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65ba及びMgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65bbは、何れも、p型のInAlGaNからなることができる。
【0094】
なお、Mgドープ窒化ガリウム系半導体層65aの成長の後に、Mgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65ba及びMgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65bbの二層のクラッド層の形成に替えて、単一層のMgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65b(p型クラッド層23に対応)をMgドープ窒化ガリウム系半導体層65aの上で成長させて形成してもよい。Mgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65bは、Mgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65ba及びMgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65bbと同様に、p型のInAlGaNからなることができる。
【0095】
Mgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65bb(又はMgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65b)の成長の後、Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65c(コンタクト層25aに対応)をMgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65bb(又はMgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65b)の上でエピタキシャルに成長して形成し、そして、Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65cを成長した後に、p型ドーパントの供給量を変更して、Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65d(コンタクト層25bに対応)をMgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65cの上でエピタキシャルに成長して形成する。
【0096】
まず、摂氏900度程度において、例えば、TMG、NH、CpMg及び雰囲気ガスを成長炉10に供給して、Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65cを成長して形成する。この場合、Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65cは、p型のGaNからなることができる。Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65cのMg濃度は、例えば、1×1019cm−3程度である。Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65cの成長が終了すると、p型ドーパント(Mg)の供給量を、例えば、1sccmから500sccmに切り替えた後に、摂氏900度程度において、例えば、TMG、NH、CpMg及び雰囲気ガスを成長炉10に供給して、Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65dを成長して形成する。この場合、Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65dは、p型のGaNからなることができる。Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65dのMg濃度は、例えば、5×1020cm−3程度である。
【0097】
Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65dの成長時に供給されるMgの供給量は、Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65cの成長時に供給されるMgの供給量より多くてもよい。この場合、p型ドーパント(Mg)の濃度は、Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65cよりもMgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65dのほうが高い。また、Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65c及びMgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65dの成長において、雰囲気ガスとして窒素が供給されることが好ましい。
【0098】
Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65c及びMgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65dの成長温度は、摂氏1000度程度の同一温度であってもよい。Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65c及びMgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65dの成長温度は、活性層59bの成長温度よりも高いことができる。Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65c及びMgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65dの成長温度と活性層59bの成長温度との差は、例えば、摂氏150度以上摂氏300度以下の範囲にあることができる。成長温度の差が当該差よりも小さいと、Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65c及びMgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65dの成長温度が低くなるために電気特性が低下する。成長温度の差が当該差よりも大きいと、活性層59bが受ける熱ダメージが増加するので発光効率が低下する。
【0099】
Mgドープ窒化ガリウム系半導体層65aの膜厚は0.200μm程度である。Mgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65baの膜厚は0.20μm程度である。Mgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65bbの膜厚は0.20μm程度である。Mgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層65bの膜厚は0.40μm程度である。Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65cの膜厚は0.040μm程度である。Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65dの膜厚は0.010μm程度である。以上説明した工程S101〜工程S110の後に、エピタキシャル基板EP1が形成される。エピタキシャル基板EP1の表面粗さは、10μm角の範囲で1nm以下の算術平均粗さを有する。
【0100】
工程S111では、エピタキシャル基板EP1の上に(特に、Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65dの上に)電極を形成する。電極の形成は以下のように行われる。例えば、Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層65dの上にNi/Au又はPd等の金属の電極(電極37に対応)を形成すると共に、エピタキシャル基板EP1の裏面にTi/Al等の金属の電極(電極41に対応)を形成する。電極の形成に先立って、エピタキシャル基板EP1を加工してリッジ構造を形成することができる。工程S111によって、エピタキシャル基板EPが形成される。そして、へき開によってエピタキシャル基板EPからレーザバーを形成し、このレーザバーの共振器端面に、誘電体多層膜(例えばSiO/TiO)からなる反射膜を成膜した後に、窒化ガリウム系半導体レーザ素子11に分離する。
【0101】
(実施例1)図4の(a)部に示される素子構造のレーザダイオード(窒化ガリウム系半導体レーザ素子11に対応)を製造した。窒化ガリウム系半導体の主面を有するGaN基板を準備し、有機金属気相成長法を用いて、このGaN基板の主面上で、窒化ガリウム系半導体のエピタキシャル積層を形成した。まず、第1のn−GaN層を、GaN基板の主面の上で1.1μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。そして、第1のn−GaN層の形成の後に、第1のn−GaN層の上に、n型クラッド層としてn−InAlGaN層(インジウム(In)の組成が0.03程度であり、アルミニウム(Al)の組成が0.14程度)を1.2μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。
【0102】
次に、n−InAlGaN層の上に、第2のn−GaN層を0.250μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。次に、第2のn−GaN層の上に、n側の光ガイド層としてn−InGaN層(インジウム(In)の組成は0.025程度)を0.184μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。
【0103】
次に、n−InGaN層の上に、活性層としてアンドープのud−InGaN層(インジウム(In)の組成は0.255程度)を3nm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。次に、活性層の上に、p側の光ガイド層としてアンドープのud−InGaN層(インジウム(In)の組成は0.025程度)を、0.075μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。次に、p側の光ガイド層としてのアンドープのud−InGaN層の上に、p−GaN層を0.200μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。
【0104】
次に、p−GaN層の上に、p型クラッド層として、第1及び第2のp−InAlGaN層を形成した。まず、p−GaN層の上に、第1のp−InAlGaN層(インジウム(In)の組成は0.03程度であり、アルミニウム(Al)の組成は0.14程度)を0.20μm程度だけエピタキシャル成長させて形成し、この後、原料の供給量を変更して、第1のp−InAlGaN層の上に、第2のp−InAlGaN層(インジウム(In)の組成は0.015程度であり、アルミニウム(Al)の組成は0.07程度)を0.20μm程度だけエピタキシャル成長させて形成した。
【0105】
次に、p型クラッド層の上(特に、第2のp−InAlGaN層の上)に、第1のp+GaN層とp型ドーパント濃度が同等以上の第2のp+GaN層から成るコンタクト層を形成した。まず、第2のp−InAlGaN層の上に、第1のp+GaN層を0.040μm程度だけエピタキシャル成長させて形成し、この後、この第1のp+GaN層の上に、この第1のp+GaN層よりもp型ドーパント濃度が高い第2のp+GaN層を0.010μm程度だけエピタキシャル成長させて形成した。以上のようにして、GaN基板の主面上で、窒化ガリウム系半導体のエピタキシャル積層を形成した。
【0106】
(実施例2)図4の(b)部に示される素子構造のレーザダイオード(窒化ガリウム系半導体レーザ素子11に対応)を製造した。窒化ガリウム系半導体の主面を有するGaN基板を準備し、有機金属気相成長法を用いて、このGaN基板の主面上で、窒化ガリウム系半導体のエピタキシャル積層を形成した。まず、第1のn−GaN層を、GaN基板の主面の上で1.1μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。そして、第1のn−GaN層の形成の後に、第1のn−GaN層の上に、n型クラッド層としてn−InAlGaN層(インジウム(In)の組成が0.02程度であり、アルミニウム(Al)の組成が0.09度)を1.2μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。
【0107】
次に、n−InAlGaN層の上に、第2のn−GaN層を0.250μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。次に、第2のn−GaN層の上に、n側の光ガイド層としてn−InGaN層(インジウム(In)の組成は0.035程度)を0.184μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。
【0108】
次に、n−InGaN層の上に、活性層としてアンドープのud−InGaN層(インジウム(In)の組成は0.255程度)を3nm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。次に、活性層の上に、p側の光ガイド層としてアンドープのud−InGaN層(インジウム(In)の組成は0.025程度)を、0.075μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。次に、p側の光ガイド層としてのアンドープのud−InGaN層の上に、p−GaN層を0.200μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。次に、p−GaN層の上に、p型クラッド層としてp−InAlGaN層(インジウム(In)の組成は0.02程度であり、アルミニウム(Al)の組成は0.09程度)を0.40μm程度だけエピタキシャル成長させて形成した。
【0109】
次に、p型クラッド層の上(特に、第2のp−InAlGaN層の上)に、第1のp+GaN層とp型ドーパント濃度が同等以上の第2のp+GaN層から成るコンタクト層を形成した。まず、第2のp−InAlGaN層の上に、第1のp+GaN層を0.040μm程度だけエピタキシャル成長させて形成し、この後、この第1のp+GaN層の上に、この第1のp+GaN層よりもp型ドーパント濃度が高い第2のp+GaN層を0.010μm程度だけエピタキシャル成長させて形成した。以上のようにして、GaN基板の主面上で、窒化ガリウム系半導体のエピタキシャル積層を形成した。
【0110】
(実施例3)図4の(c)部に示される素子構造のレーザダイオード(窒化ガリウム系半導体レーザ素子11に対応)を製造した。窒化ガリウム系半導体の主面を有するGaN基板を準備し、有機金属気相成長法を用いて、このGaN基板の主面上で、窒化ガリウム系半導体のエピタキシャル積層を形成した。まず、第1のn−GaN層を、GaN基板の主面の上で1.1μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。そして、第1のn−GaN層の形成の後に、第1のn−GaN層の上に、n型クラッド層としてn−InAlGaN層(インジウム(In)の組成が0.02程度であり、アルミニウム(Al)の組成が0.09度)を1.2μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。
【0111】
次に、n−InAlGaN層の上に、第2のn−GaN層を0.250μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。次に、第2のn−GaN層の上に、n側の光ガイド層としてn−InGaN層(インジウム(In)の組成は0.03程度)を0.150μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。次に、n−InGaN層の上に、活性層としてアンドープのud−InGaN層(インジウム(In)の組成は0.255程度)を3nm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。
【0112】
次に、活性層の上に、p側の光ガイド層としてアンドープのud−InGaN層(インジウム(In)の組成は0.03程度)を、0.075μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。次に、p側の光ガイド層としてのアンドープのud−InGaN層の上に、p−GaN層を0.200μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。
【0113】
次に、p−GaN層の上に、p型クラッド層としてp−InAlGaN層(インジウム(In)の組成は0.02程度であり、アルミニウム(Al)の組成は0.09程度)を0.40μm程度だけエピタキシャル成長させて形成した。
【0114】
次に、p型クラッド層の上(特に、第2のp−InAlGaN層の上)に、第1のp+GaN層とp型ドーパント濃度が同等以上の第2のp+GaN層から成るコンタクト層を形成した。まず、第2のp−InAlGaN層の上に、第1のp+GaN層を0.040μm程度だけエピタキシャル成長させて形成し、この後、この第1のp+GaN層の上に、この第1のp+GaN層よりもp型ドーパント濃度が高い第2のp+GaN層を0.010μm程度だけエピタキシャル成長させて形成した。以上のようにして、GaN基板の主面上で、窒化ガリウム系半導体のエピタキシャル積層を形成した。
【0115】
(実施例4)図5の(a)部に示される素子構造のレーザダイオード(窒化ガリウム系半導体レーザ素子11に対応)を製造した。窒化ガリウム系半導体の主面を有するGaN基板を準備し、有機金属気相成長法を用いて、このGaN基板の主面上で、窒化ガリウム系半導体のエピタキシャル積層を形成した。まず、第1のn−GaN層を、GaN基板の主面の上で1.1μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。そして、第1のn−GaN層の形成の後に、第1のn−GaN層の上に、n型クラッド層としてn−InAlGaN層(インジウム(In)の組成が0.02程度であり、アルミニウム(Al)の組成が0.09度)を1.2μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。
【0116】
次に、n−InAlGaN層の上に、第2のn−GaN層を0.250μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。次に、第2のn−GaN層の上に、n側の光ガイド層としてn−InGaN層(インジウム(In)の組成は0.045程度)を0.190μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。次に、n−InGaN層の上に、活性層としてアンドープのud−InGaN層(インジウム(In)の組成は0.255程度)を3nm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。
【0117】
次に、活性層の上に、p側の光ガイド層としてアンドープのud−InGaN層(インジウム(In)の組成は0.02程度)を、0.075μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。次に、このアンドープのud−InGaN層の上に、p側の光ガイド層としてp−InGaN層(インジウム(In)の組成は0.02程度)を、0.025μm程度だけエピタキシャル成長させて形成した。次に、p側の光ガイド層としてのp−InGaN層の上に、p−GaN層を0.200μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。
【0118】
次に、p−GaN層の上に、p型クラッド層としてp−InAlGaN層(インジウム(In)の組成は0.015程度であり、アルミニウム(Al)の組成は0.07程度)を0.40μm程度だけエピタキシャル成長させて形成した。
【0119】
次に、p型クラッド層の上(特に、第2のp−InAlGaN層の上)に、第1のp+GaN層とp型ドーパント濃度が同等以上の第2のp+GaN層から成るコンタクト層を形成した。まず、第2のp−InAlGaN層の上に、第1のp+GaN層を0.040μm程度だけエピタキシャル成長させて形成し、この後、この第1のp+GaN層の上に、この第1のp+GaN層よりもp型ドーパント濃度が高い第2のp+GaN層を0.010μm程度だけエピタキシャル成長させて形成した。以上のようにして、GaN基板の主面上で、窒化ガリウム系半導体のエピタキシャル積層を形成した。
【0120】
(実施例5)図5の(b)部に示される素子構造のレーザダイオード(窒化ガリウム系半導体レーザ素子11に対応)を製造した。窒化ガリウム系半導体の主面を有するGaN基板を準備し、有機金属気相成長法を用いて、このGaN基板の主面上で、窒化ガリウム系半導体のエピタキシャル積層を形成した。まず、第1のn−GaN層を、GaN基板の主面の上で1.1μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。そして、第1のn−GaN層の形成の後に、第1のn−GaN層の上に、n型クラッド層としてn−InAlGaN層(インジウム(In)の組成が0.02程度であり、アルミニウム(Al)の組成が0.09度)を1.2μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。
【0121】
次に、n−InAlGaN層の上に、第2のn−GaN層を0.250μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。次に、第2のn−GaN層の上に、n側の光ガイド層としてn−InGaN層(インジウム(In)の組成は0.06程度)を0.150μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。次に、n−InGaN層の上に、活性層としてアンドープのud−InGaN層(インジウム(In)の組成は0.255程度)を3nm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。
【0122】
次に、活性層の上に、p側の光ガイド層としてアンドープのud−InGaN層(インジウム(In)の組成は0.02程度)を、0.075μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。次に、p側の光ガイド層としてのアンドープのud−InGaN層の上に、p−GaN層を0.200μm程度だけエピタキシャルに成長させて形成した。
【0123】
次に、p−GaN層の上に、p型クラッド層としてp−InAlGaN層(インジウム(In)の組成は0.015程度であり、アルミニウム(Al)の組成は0.07程度)を0.40μm程度だけエピタキシャル成長させて形成した。
【0124】
次に、p型クラッド層の上(特に、第2のp−InAlGaN層の上)に、第1のp+GaN層とp型ドーパント濃度が同等以上の第2のp+GaN層から成るコンタクト層を形成した。まず、第2のp−InAlGaN層の上に、第1のp+GaN層を0.040μm程度だけエピタキシャル成長させて形成し、この後、この第1のp+GaN層の上に、この第1のp+GaN層よりもp型ドーパント濃度が高い第2のp+GaN層を0.010μm程度だけエピタキシャル成長させて形成した。以上のようにして、GaN基板の主面上で、窒化ガリウム系半導体のエピタキシャル積層を形成した。
【0125】
実施例1〜実施例5のそれぞれにおいて、活性層の発振波長は、400nm以上550nm以下であるが、480nm以上550nm以下であることができ、更に、510nm以上540nm以下であることができる。
【0126】
実施例1〜実施例5のそれぞれにおいて、活性層は、単一の量子井戸層を含む単一量子井戸構造を有する、又は、複数の量子井戸層と複数の障壁層とを含む多重量子井戸構造を有する。
【0127】
実施例1〜実施例5のそれぞれにおいて、n側の光ガイド層(n−InGaN層)と活性層との界面は、c軸に沿って延びる基準軸に直交する面からm軸方向に傾斜しており、特に、63度以上80度未満の角度で傾斜していることができる。
【0128】
実施例1〜実施例5のそれぞれにおいて、GaN基板の主面の上に、n型クラッド層、n−GaN層、n側の光ガイド層、活性層、p側の光ガイド層、p−GaN層及びp型クラッド層が順に設けられている。実施例1〜実施例5のそれぞれにおいて、GaN基板の主面は、c軸に沿って延びる基準軸に直交する面からm軸方向に63度以上80度未満の角度で傾斜している。n側の光ガイド層(n−InGaN層)と活性層との界面が、c軸に沿って延びる基準軸に直交する面からm軸方向に63度以上80度未満の角度で傾斜しているので、緑色領域の発光に好適である。
【0129】
実施例1〜実施例5のそれぞれにおいて、n型クラッド層は、何れも、InAlGa1−x−yN(0<x<0.05,0<y<0.20)であり、p型クラッド層は、何れも、InAlGa1−x−yN(0≦x<0.05,0<y<0.20)である。
【0130】
実施例1〜実施例5のそれぞれにおいて、n側及びp側の光ガイド層のインジウム(In)の組成は、何れも、2%以上6%以下であるが、2%以上5%以下であることができ、更に、2%以上4.5%以下であることができる。n側及びp側の光ガイド層のインジウム(In)の組成は、高い程、n型クラッド層及びp型クラッド層との屈折率差が顕著となるが、結晶が脆くなる。GaN基板の主面が、c軸に沿って延びる基準軸に直交する面からm軸方向に63度以上80度未満の角度で傾斜している場合、インジウム(In)の組成が6%を超えると転位の発生が顕著となる。実施例1〜実施例5のそれぞれでは、n側及びp側の光ガイド層とn型クラッド層及びp型クラッド層との屈折率差を十分に得るために、n側及びp側の光ガイド層のインジウム(In)の組成を、特に、2%以上6%以下とすることができる。従って、光ガイド層とクラッド層との屈折率差が十分に得られると共に結晶の剛性も十分に確保できる。
【0131】
実施例1〜実施例5のそれぞれにおいて、n側の光ガイド層の膜厚は、n側の光ガイド層の膜厚とp側の光ガイド層の膜厚との合計の65%以上85%以下の範囲にある。例えば、実施例1及び実施例2の場合、n側の光ガイド層の膜厚は、n側の光ガイド層の膜厚とp側の光ガイド層の膜厚との合計の71%程度である。実施例3の場合、n側の光ガイド層の膜厚は、n側の光ガイド層の膜厚とp側の光ガイド層の膜厚との合計の67%程度である。
【0132】
実施例1〜実施例5のそれぞれにおいて、n型ドーパントは例えばシリコン(Si)であり、n型ドーパントのドーパント濃度は、5×1017cm−3程度である。n型ドーパントのドーパント濃度が、この値5×1017cm−3を下回ると、比較的大きな電気的抵抗が生じる。
実施例1〜実施例5のそれぞれにおいて、p型ドーパントは例えばマグネシウム(Mg)であり、p型ドーパントのドーパント濃度は、3×1018cm−3程度である。p型ドーパントのドーパント濃度が、この値3×1018cm−3を下回ると、比較的大きな電気的抵抗が生じる。
【0133】
実施例1〜実施例5のそれぞれにおいて、n側の光ガイド層としてのn−InGaN層の吸収係数は6cm−1程度であり、p側の光ガイド層としてのud−InGaN層の吸収係数は1cm−1程度であり、p−GaN層の吸収係数は30cm−1程度であった。エピ層の吸収係数は、例えば分光エリプソメトリーにより測定できる。
【0134】
実施例1〜実施例5のそれぞれにおいて、p側の光ガイド層としてのud−InGaN層は、p型ドーパントのマグネシウム(Mg)が活性層に拡散することを防止できる。マグネシウム(Mg)の拡散防止に必要なp側の光ガイド層としてのud−InGaN層の膜厚は0.075μm程度であり、p側の光ガイド層としてのud−InGaN層の膜厚が、この値0.075μmを超えると、p側の光ガイド層としてのud−InGaN層は、比較的に高い電気的抵抗を有する。
【0135】
実施例1〜実施例5のそれぞれにおいて、エピタキシャル積層の上には、幅10μm程度のストライプ窓を有する絶縁膜(例えばSiO膜)をウェットエッチングにより形成し、Pdからなるアノード電極(p側の電極)及びパッド電極を蒸着により形成した。この後に、裏面には、Alからなるカソード電極(n側の電極)及びパッド電極を蒸着により形成した。このように作製された実施例1〜実施例3のそれぞれにおける基板生産物を、600μm程度の間隔で、割断を行って分離して、レーザバーを作製し、レーザバーの共振器端面に、誘電体多層膜からなる反射膜を成膜した。割断面は、{20−21}面及び{11−20}面に対して垂直な面である。誘電体多層膜は、例えばSiO/TiOからなる。前端面の反射率は80%程度であり、後端面の反射率は95%程度である。
【0136】
実施例1に係るレーザダイオード及び実施例2に係るレーザダイオードにおいて、全InGaN層(n側及びp側の光ガイド層)の膜厚の合計に占めるn−InGaN層(n側の光ガイド層)の膜厚の比率と、閾値電流Jth(A/cm)との関係を図6に示す。図6のグラフG1は、実施例1に係るレーザダイオードにおいて、全InGaN層(n側及びp側の光ガイド層)の膜厚を一定(例えば250nm程度)とした上でn−InGaN層(n側の光ガイド層)の膜厚を変化させた場合に、全InGaN層の膜厚に占めるn−InGaN層の膜厚の比率と、閾値電流との関係を示す。図6のグラフG2は、実施例2に係るレーザダイオードにおいて、全InGaN層(n側及びp側の光ガイド層)の膜厚を一定(例えば250nm程度)とした上でn−InGaN層(n側の光ガイド層)の膜厚を変化させた場合に、全InGaN層の膜厚に占めるn−InGaN層の膜厚の比率と、閾値電流との関係を示す。グラフG1,G2を参照すると、n−InGaN層のインジウム(In)の組成が、2.5%(実施例1)及び3.5%(実施例2)の何れであっても、全InGaN層の膜厚に占めるn−InGaN層の膜厚の比率が0.65以上0.85以下(65%以上85%以下)の範囲にある場合に、閾値電流が比較的小さいことがわかる。
【0137】
図7に示すように、n−InGaN層(n側の光ガイド層)の膜厚が、ud−InGaN層(p側の光ガイド層)の膜厚よりも大きい程、活性層の位置のズレが大きくなり(n側とp側とが顕著に非対称となり)、活性層を通る光の割合(Γwell)及び導波路を通る光の減衰率(αint)が減少する。ここで、例えば、強度Intの光が導波路をk(cm)進んだ場合、この光の強度は、Int×eαint×kのように減衰する(“e”は、自然対数の底(Napier constant)である。)。しかし、実施例1及び実施例2のように、n−InGaN層(n側の光ガイド層)の膜厚が、n−InGaN層(n側の光ガイド層)の膜厚とud−InGaN層(p側の光ガイド層)の膜厚との合計の65%以上85%以下の範囲にあれば、図6に示すように、上記のn側とp側との間の非対称性による光のロスを好適に抑制できることが見出された。図7に示す結果は、実施例1おいて、ud−InGaN層(p側の光ガイド層)の膜厚を一定にした上で、n−InGaN層(n側の光ガイド層)の膜厚を変化させて得られたΓwell(%)及びαint(cm−1)の測定結果である。導波路の内部ロス(αint)は、例えばハッキパウリ法により測定できる。導波路の位置は、図1の(a)部に示す開口部39aの下に位置する。
【0138】
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【符号の説明】
【0139】
10…成長炉、11…窒化ガリウム系半導体レーザ素子、13…基板、13a…主面、13b…裏面、15…n型窒化ガリウム系半導体領域、15a…n型窒化ガリウム系半導体層、15b…n型クラッド層、15c…n型窒化ガリウム系半導体層、17…発光層、19…p型III族窒化物半導体領域、21…p型窒化ガリウム系半導体層、23…p型クラッド層、23a…p型クラッド層、23b…p型クラッド層、25a…コンタクト層、25b…コンタクト層、27…活性層、29…n側光ガイド層、31…p側光ガイド層、33…井戸層、35…障壁層、37…電極、39…絶縁膜、39a…開口、41…電極、51…基板、51a…主面、53…n型窒化ガリウム系半導体領域、53a…主面、55a…Siドープ窒化ガリウム系半導体層、55b…Siドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層、55c…Siドープ窒化ガリウム系半導体層、57…発光層、57a…主面、59a…光ガイド層、59b…活性層、59b−1…主面、59c…光ガイド層、61a…障壁層、61b…井戸層、63…p型III族窒化物半導体領域、63a…主面、65a…Mgドープ窒化ガリウム系半導体層、65b…Mgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層、65ba…Mgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層、65bb…Mgドープ窒化ガリウム系半導体クラッド層、65c…Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層、65d…Mgドープ窒化ガリウム系半導体コンタクト層、Ax…法線軸、CR…結晶座標系、Cx…基準軸、EP…エピタキシャル基板、EP1…エピタキシャル基板、J1…界面、JC…接触、S…座標系、Sc…面、VC…c軸部ベクトル、VN…法線ベクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウム系半導体レーザ素子であって、
n型の窒化ガリウム系半導体のn型クラッド層と、
前記n型クラッド層の上に設けられた窒化ガリウム系半導体の第1の光ガイド層と、
前記第1の光ガイド層の上に設けられた窒化ガリウム系半導体の活性層と、
前記活性層の上に設けられた窒化ガリウム系半導体の第2の光ガイド層と、
前記第2の光ガイド層の上に設けられたp型の窒化ガリウム系半導体のp型クラッド層と、
を備え、
前記活性層の発振波長は、400nm以上550nm以下であり、
前記第1及び第2の光ガイド層は、何れも、インジウムを含有し、
前記第1及び第2の光ガイド層のインジウムの組成は、何れも、2%以上6%以下であり、
前記第1の光ガイド層の膜厚は、前記第1の光ガイド層の膜厚と前記第2の光ガイド層の膜厚との合計の65%以上85%以下の範囲にあり、
前記第1の光ガイド層及び前記第2の光ガイド層は前記活性層に接している、
ことを特徴とする窒化ガリウム系半導体レーザ素子。
【請求項2】
前記n型クラッド層は、
InAlGa1−x−yN(0<x<0.05,0<y<0.20)であり、
前記p型クラッド層は、
InAlGa1−x−yN(0≦x<0.05,0<y<0.20)であることを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子。
【請求項3】
前記活性層は、単一の量子井戸層を含む単一量子井戸構造を有する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子。
【請求項4】
前記活性層は、複数の量子井戸層と複数の障壁層とを含む多重量子井戸構造を有する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子。
【請求項5】
前記第1の光ガイド層と前記活性層との界面は、c軸に沿って延びる基準軸に直交する面からm軸方向に傾斜している、ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子。
【請求項6】
前記第1の光ガイド層と前記活性層との界面は、前記基準軸に直交する面からm軸方向に63度以上80度未満の角度で傾斜している、ことを特徴とする請求項5に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子。
【請求項7】
窒化ガリウム系半導体の主面を有する基板を更に備え、
前記主面の上に、前記n型クラッド層、前記第1の光ガイド層、前記活性層、前記第2の光ガイド層及び前記p型クラッド層が順に設けられており、
前記主面は、前記基準軸に直交する面からm軸方向に63度以上80度未満の角度で傾斜している、ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子。
【請求項8】
前記活性層の発振波長は、480nm以上550nm以下である、ことを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子。
【請求項9】
前記活性層の発振波長は、510nm以上540nm以下である、ことを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子。
【請求項10】
前記第1の光ガイド層のインジウムの組成は、2%以上5%以下である、ことを特徴とする請求項1〜請求項9の何れか一項に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子。
【請求項11】
前記第1の光ガイド層のインジウムの組成は、2%以上4.5%以下である、ことを特徴とする請求項1〜請求項9の何れか一項に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子。
【請求項12】
前記第2の光ガイド層のインジウムの組成は、2%以上5%以下である、ことを特徴とする請求項1〜請求項11の何れか一項に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子。
【請求項13】
前記第2の光ガイド層のインジウムの組成は、2%以上4.5%以下である、ことを特徴とする請求項1〜請求項11の何れか一項に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子。
【請求項14】
窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法であって、
n型の窒化ガリウム系半導体のn型クラッド層を形成する工程と、
前記n型クラッド層の上に窒化ガリウム系半導体の第1の光ガイド層を形成する工程と、
前記第1の光ガイド層の上に窒化ガリウム系半導体の活性層を形成する工程と、
前記活性層の上に窒化ガリウム系半導体の第2の光ガイド層を形成する工程と、
前記第2の光ガイド層の上にp型の窒化ガリウム系半導体のp型クラッド層を形成する工程と、
を備え、
前記活性層の発振波長は、400nm以上550nm以下であり、
前記第1及び第2の光ガイド層は、何れも、インジウムを含有し、
前記第1及び第2の光ガイド層のインジウムの組成は、何れも、2%以上6%以下であり、
前記第1の光ガイド層の膜厚は、前記第1の光ガイド層の膜厚と前記第2の光ガイド層の膜厚との合計の65%以上85%以下の範囲にあり、
前記第1の光ガイド層及び前記第2の光ガイド層は前記活性層に接している、
ことを特徴とする窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項15】
前記n型クラッド層は、
InAlGa1−x−yN(0<x<0.05,0<y<0.20)であり、
前記p型クラッド層は、
InAlGa1−x−yN(0≦x<0.05,0<y<0.20)であることを特徴とする請求項14に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項16】
前記活性層は、単一の量子井戸層を含む単一量子井戸構造を有する、ことを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項17】
前記活性層は、複数の量子井戸層と複数の障壁層とを含む多重量子井戸構造を有する、ことを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項18】
前記第1の光ガイド層と前記活性層との界面は、c軸に沿って延びる基準軸に直交する面からm軸方向に傾斜している、ことを特徴とする請求項14〜請求項17の何れか一項に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項19】
前記第1の光ガイド層と前記活性層との界面は、前記基準軸に直交する面からm軸方向に63度以上80度未満の角度で傾斜している、ことを特徴とする請求項18に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項20】
窒化ガリウム系半導体の主面を有する基板を準備する工程を更に備え、
前記基板の主面の上に、前記n型クラッド層、前記第1の光ガイド層、前記活性層、前記第2の光ガイド層及び前記p型クラッド層が順に設けられ、
前記主面は、前記基準軸に直交する面からm軸方向に63度以上80度未満の角度で傾斜している、ことを特徴とする請求項18又は請求項19に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項21】
前記活性層の発振波長は、480nm以上550nm以下である、ことを特徴とする請求項14〜請求項20の何れか一項に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項22】
前記活性層の発振波長は、510nm以上540nm以下である、ことを特徴とする請求項14〜請求項20の何れか一項に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項23】
前記第1の光ガイド層のインジウムの組成は、2%以上5%以下である、ことを特徴とする請求項14〜請求項22の何れか一項に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項24】
前記第1の光ガイド層のインジウムの組成は、2%以上4.5%以下である、ことを特徴とする請求項14〜請求項22の何れか一項に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項25】
前記第2の光ガイド層のインジウムの組成は、2%以上5%以下である、ことを特徴とする請求項14〜請求項24の何れか一項に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項26】
前記第2の光ガイド層のインジウムの組成は、2%以上4.5%以下である、ことを特徴とする請求項14〜請求項24の何れか一項に記載の窒化ガリウム系半導体レーザ素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−12599(P2013−12599A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144653(P2011−144653)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】