説明

管状体およびその製造方法

【課題】座屈強度および耐折性にすぐれ、かつ摺動性に優れた定着ベルトとして使用可能な管状体およびその製造方法を提供。
【解決手段】ポリテトラフルオロエチレンなどに代表されるフッ素樹脂フィラー、及び解壁され、特定の平均粒子径(0.01μm〜5μm)を有し、且つ4級アンモニウム塩で処理された親油性モンモリロナイトを含むポリイミド前駆体分散溶液を調整し、該前駆体分散液で管状管に成型し、その後イミド化触媒の使用によりイミド化を実施。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真画像形成装置において、定着ベルト等として使用可能な管状体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より電子写真方式で像を形成記録する電子写真記録装置としては、複写機やレーザービームプリンタ、ファクシミリやこれらの複合機が知られている。この種の装置では、画像形成の高速化や省エネルギー化を目的として、エンドレスベルトを用いた定着方式が採用されている。
【0003】
そのようなベルト定着方式等に用いるエンドレスベルトとして、例えば下記特許文献1及び2には、ポリイミド樹脂からなる管状体の表面にフッ素樹脂層を形成した複合管状体が提案されている。また、下記特許文献3には、ポリイミド樹脂層にクレイを含有させた管状体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−130149号公報
【特許文献2】特開平7−9634号公報
【特許文献3】特開2005−84159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンドレスベルトを2本のロールに係回し、回転させる場合、またはエンドレスベルトの外周面に駆動ロールを当接し、ベルト自体の強度によりベルトを回転させる場合に、ベルトは蛇行したり、片側に寄りが生じる。機械的に蛇行制御等を行なうものもあるが、定着ベルトは一般的に両端に非回転部材を配置して回転させている。このとき、ベルトが十分な弾性率を有していないと、しわの発生や座屈を生じるという問題がある。
【0006】
また、ベルトは頻繁に屈曲を繰り返すために十分な耐折性を有することが求められる。特に非回転部材と接触する端部は、座屈強度と耐折性が要求されている。
【0007】
さらに、近年のプリント速度の高速化によって、非回転部材に掛かる応力も増大している。また、ベルトはより短時間の間に屈曲を繰り返さなければならない。更に、プリント速度の高速化が求められている反面、低消費電力化も要求されている。ベルトにおいては、内面の摺動性を低減させると、非回転部材との間で駆動する際に生ずる摩擦抵抗を下げることができ、同時に非回転部材に掛かる応力をより低減させることができるために、この両方の要求を満たすことが要求されている。また、近年の著しいOA機器の低価格化に伴って、構成部品のコストダウンも要求されている。
【0008】
しかしながら、従来提案のエンドレスベルトでは、上記の要求を十分に満たすものは得られていない。従って、本発明の目的は、座屈強度および耐折性にすぐれ、かつ摺動性に優れた定着ベルトとして使用可能な管状体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を行った結果、ポリイミド樹脂からなる管状体にフッ素樹脂フィラー及びモンモリロナイトを含有させることによって座屈強度、耐折性および摺動性に優れた管状物を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)フッ素樹脂フィラー及びモンモリロナイトを含むポリイミド樹脂からなる管状体。
(2)フッ素樹脂フィラーの含有量が、ポリイミド樹脂100重量部に対して2重量部〜15重量部である、(1)記載の管状体。
(3)モンモリロナイトの含有量が、ポリイミド樹脂100重量部に対して1重量部〜30重量部である、(1)または(2)記載の管状体。
(4)モンモリロナイトが、へき開したものである(1)〜(3)のいずれかに記載の管状体。
(5)モンモリロナイトの平均粒径が0.01μm〜5μmである(1)〜(3)のいずれかに記載の管状体。
(6)モンモリロナイトが、親油性モンモリロナイトである(1)〜(5)のいずれかに記載の管状体。
(7)親油性モンモリロナイトが、4級アンモニウム塩で処理されたモンモリロナイトである(6)記載の管状体。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の管状体を基材層とし、該基材層の外周面にフッ素樹脂からなる表面層が形成された管状体。
(9)基材層と表面層との間に耐熱性中間弾性層を有する(8)記載の管状体。
(10)親油性モンモリロナイトを極性溶媒に分散させ、分散液1とする工程と、該分散液1にフッ素樹脂フィラーを添加して分散させ、分散液2とする工程と、該分散液2を用いてポリイミド前駆体溶液を調製する工程と、該ポリイミド前駆体溶液を用いて管状体に成型する工程と、成型後の管状体をイミド化する工程とを有する管状体の製造方法。
(11)親油性モンモリロナイトを極性溶媒に分散させる工程と、該分散液を用いてポリイミド前駆体溶液を調製する工程と、該ポリイミド前駆体溶液にフッ素樹脂フィラーを添加して分散させる工程と、該フッ素樹脂フィラーを分散させたポリイミド前駆体溶液を用いて管状体に成型する工程と、成型後の管状体をイミド化する工程とを有する管状体の製造方法。
(12)ポリイミド前駆体溶液は、ポリアミド酸1モル当量に対し、0.1モル当量から3モル当量のイミド化触媒を含有する(10)または(11)記載の管状体の製造方法。
(13)前記イミド化触媒は、イソキノリン、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、N-メチルイミダゾールからなる群から少なくとも1つ選ばれる(12)記載の管状体の製造方法。
(14)極性溶媒が非プロトン性極性溶媒である、(10)〜(13)のいずれかに記載の管状体の製造方法。
(15)(1)〜(9)のいずれかに記載の管状体からなる定着ベルト。
(16)(15)記載の定着ベルトを備えた定着装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフッ素樹脂フィラー及びモンモリロナイトを含むポリイミド樹脂からなる管状体によれば、座屈強度、耐折性および摺動性に優れた管状体を達成できる。特に、フッ素樹脂フィラーとモンモリロナイトの組み合わせによって、座屈強度および耐折性を確保しながら、必要な管状体の厚みを下げることが可能となり、高価なポリイミド樹脂の使用量を削減することが可能となる。更に、管状体の厚みを下げることにより、熱源をベルト内部に配置するタイプの定着装置に使用する際に、効果的な熱伝達が可能となる。
【0012】
なお、ポリイミド樹脂からなる管状体にモンモリロナイトを含有させると高い弾性率が得られる反面、摩擦抵抗が増大し、管状体を定着装置の定着ベルトとして使用する際、駆動時に発生する応力の増大を招き、より大きな駆動トルクが必要となり、消費電力も増大する傾向となる。しかし、フッ素樹脂フィラーの含有量をポリイミド樹脂100重量部に対して2重量部〜15重量部とする好ましい態様であれば、座屈強度および耐折性を確保しながら、優れた摺動性を有する管状体を実現できる。
【0013】
さらに、モンモリロナイトの含有量をポリイミド樹脂100重量部に対して1重量部〜30重量部とする好ましい態様であれば、より優れた座屈強度および耐折性の管状体を実現できる。
【0014】
また、モンモリロナイトがへき開したモンモリロナイトであることにより、モンモリロナイトが細粒化して分散性が向上し、均一に分散された状態でモンモリロナイトを管状体に含有させることが可能となる。よって、座屈強度および耐折性により優れた管状体を得ることができる。なお、へき開とは、モンモリロナイトが一定の面に沿って割れることを意味し、モンモリロナイトは極性溶媒によって容易にへき開し、平均粒径が0.01μm〜5μmの粒状物となる。
【0015】
また、モンモリロナイトが親油性モンモリロナイトである好ましい態様であれば、親油性モンモリロナイトがポリイミド酸前駆体溶液中でより良好な分散性を示すので、均一に分散された状態でモンモリロナイトを管状体に含有させることができ、より優れた座屈強度および耐折性の管状体を実現できる。なお、親油性モンモリロナイトは、モンモリロナイトに親油性を付与する処理(親油性処理)を行なったものであり、4級アンモニウム塩で親油性処理されたものがより好ましい。
【0016】
4級アンモニウム塩で親油性処理されたモンモリロナイトとは、モンモリロナイトの層間に存在する交換性陽イオンが4級アンモニウムイオンとカチオン交換され親油性処理されたものである。4級アンモニウム塩で親油性処理されたモンモリロナイトは極性溶媒中でのへき開がより進行しやすく、へき開を十分に進めて細粒化させることができ、さらに分散性を向上させることができる。従って、4級アンモニウム塩で親油性処理されたモンモリロナイトの使用によって、より均一に分散された状態でモンモリロナイトを管状体に含有させることができ、より優れた座屈強度および耐折性の管状体を実現できる。
【0017】
なお、親油性モンモリロナイトは、所謂「親油性粘土」の一種として公知の材料であり、市販品をそのまま使用することができる。
【0018】
本発明の管状体が、フッ素樹脂フィラー及びモンモリロナイトを含むポリイミド樹脂からなる管状体(基材層)の外周面にフッ素樹脂からなる表面層を有する態様であれば、定着ベルトとして用いる場合に、紙やトナーに対する離型性に優れた構成となる。
【0019】
また、基材層と表面層との間にさらに耐熱性中間弾性層を有する態様であれば、トナー定着に関して、よりソフトにトナーを紙に押圧し、トナーのかすれや汚れの発生などをより防止できる構成となる。
【0020】
本発明の管状体は、親油性モンモリロナイトを極性溶媒に分散させ、分散液1とする工程と、該分散液1にフッ素樹脂フィラーを添加して分散させ、分散液2とする工程と、該分散液2を用いてポリイミド前駆体溶液を調製する工程と、該ポリイミド前駆体溶液を用いて管状体に成型する工程と、成型後の管状体をイミド化する工程とを経る方法か、或いは、親油性モンモリロナイトを極性溶媒に分散させる工程と、該分散液を用いてポリイミド前駆体溶液を調製する工程と、該ポリイミド前駆体溶液にフッ素樹脂フィラーを添加して分散させる工程と、該フッ素樹脂フィラーを分散させたポリイミド前駆体溶液を用いて管状体に成型する工程と、成型後の管状体をイミド化する工程とを経る方法によって製造することができる。すなわち、ポリイミド前駆体溶液を調製する前に、モンモリロナイトを極性溶媒に分散させておくことにより、モンモリロナイトが十分にへき開し、細粒化されるため、モンモリロナイトの分散性が向上し、均一に分散された状態でモンモリロナイトを管状体に含有させることが可能となり、座屈強度および耐折性に優れた管状体を得ることができる。
【0021】
本発明の定着ベルトは、上記の管状体からなることで、優れた座屈強度、耐折性および摺動性を有し、また、本発明の定着装置は、かかる定着ベルトを備えることから、電子写真画像形成装置におけるプリント速度の高速化及び低消費電力化に十分に対応でき、しかも、シワや通紙不良等を発生することのない安定な定着作業を長期間持続できるものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその好適な実施形態に即してより詳しく説明する。
本発明の管状体は、フッ素樹脂フィラー及びモンモリロナイトを含むポリイミド樹脂からなる管状体である。なお、本発明における「管状体」とは、専ら、電子写真記録装置の定着装置に組み込む定着ベルト等に使用するベルト状の成型物(エンドレスベルト)を意味する。
本発明において、ポリイミド樹脂はその前駆体であるポリアミド酸がイミド転化したものである。そして、ポリアミド酸は、テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体と、ジアミンとを略等モルで有機溶媒中で反応させて得ることができる。
テトラカルボン酸二無水物としては、下記の一般式(1)で表されるものがあげられる。
【0023】
【化1】

【0024】
〔式(1)中、Rは4価の有機基であり、芳香族、脂肪族、環状脂肪族、芳香族と脂肪族とを組み合わせたもの、またはそれらの置換された基である。〕
【0025】
テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
【0026】
また、このようなテトラカルボン酸二無水物と反応させるジアミンの具体例としては、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジクロロベンジジン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3′−ジメチルベンジジン、3,3′−ジメトキシベンジジン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ−第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロポキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピペラジン、H2 N(CH2 3 O(CH2 2 OCH2 NH2 、H2 N(CH23 S(CH2 3 NH2 、H2 N(CH2 3 N(CH3 )(CH2 3 NH2 等があげられる。
【0027】
これらテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体と、ジアミンとは、それぞれ、いずれか1種又は2種以上を適宜に選定し、反応させることができるが、テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、これらの中でも、フィルムの耐久性に影響する弾性率の観点から、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、ジアミンも、同様の観点から、これらの中でもp−フェニレンジアミンが好ましい。
【0028】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンの反応には有機極性溶媒が使用される。特に、その官能基がテトラカルボン酸二無水物またはジアミンと反応しない双極子を有し、系に対して不活性であり、かつ生成物であるポリアミド酸に対して溶媒として作用し、さらに反応成分の少なくとも一方、好ましくは両者に対して溶媒として作用しなければならないことから、非プロトン性極性溶媒が好ましく、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラメチル尿素等が挙げられるが、これらは単独で使用してもよいし、併せて用いても差し支えない。中でも、N,N−ジアルキルアミド類が好ましく、特にN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の低分子量のものがより好ましい。これらは蒸発、置換または拡散によりポリアミド酸およびポリアミド酸成形品から容易に除去することができる。
【0029】
上記有機極性溶媒にクレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、ベンゾニトリル、ジオキサン、ブチロラクトン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等を単独でもしくは併せて混合することもできる。ただし、生成するポリアミド酸の加水分解による低分子量化を防ぐため、水の使用は避けることが好ましい。
【0030】
また、ポリアミド酸溶液には触媒を添加することも可能である。この場合、触媒の添加量としては、ポリアミド酸前駆体溶液のポリアミド酸1モル当量に対して0.1〜3モル当量、好ましくは0.2〜1モル当量である。触媒の添加量が0.1モル当量以下の場合は触媒の効果が十分ではなく、3モル当量以上添加してもそれ以上の効果は期待できないからである。触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、イソキノリン、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、ルチジンなどの第3級アミン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7などの有機塩基が例示される。なかでも、沸点200℃以上、かつ酸解離定数pkaが4以上9以下の3級アミン類、イソキノリン、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール等は特に効果が高く、好ましい。
【0031】
本発明で使用するフッ素樹脂フィラーとしては、分子内にフッ素原子を有するものであればよく、特に限定されない。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はその変性物、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体(TFE/VdF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、クロロトリフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体(CTFE/VdF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)などが挙げられ、これらの中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。
【0032】
フッ素樹脂フィラーは1種か又は2種以上を併用してもよく、フッ素樹脂フィラーの含有量は、ポリイミド樹脂100重量部に対して2重量部〜15重量部が好ましく、特に好ましくは3重量部〜12重量部である。2重量部未満の場合、併用するモンモリロナイトとの関係で良好な摺動性が得られ難く、15重量部以上の場合は、管状体の弾性率や耐折性が低下するため好ましくない。また、上記フッ素樹脂フィラーの平均粒径は0.1〜8μmが好ましく、より好ましくは、0.5〜5μmである。
【0033】
このような範囲内であると、粒子の凝集も少なく、均一に分散するため、熱伝導性や強度のばらつきがなくなり、定着ベルトとしての強度を保つことができるので好適である。
なお、上記平均粒径が0.1μm未満であると、粒子の凝集により、得られた管状体の内周面および外周面に凹凸が生じやすいため好ましくない。逆に、8.0μmを超えると、粒子が大きくなるため、得られた管状体の内周面および外周面に、粒子に起因した凹凸が生じやすくなるため好ましくない。
【0034】
本発明で使用するモンモリロナイトは天然物若しくは合成物のいずれも使用可能である。また、モンモリロナイトは、極性溶媒、特に非プロトン性極性溶媒に対し分散性を有するものが好ましく使用でき、ポリイミド前駆体を得る際に使用する溶媒に対し分散性を有するものがより好ましい。
【0035】
具体的には、親油性モンモリロナイトを好ましく使用でき、特に4級アンモニウム塩で親油性処理されたモンモリロナイト、すなわちモンモリロナイトの層間に存在する交換性陽イオンが4級アンモニウムイオンとカチオン交換され、親油性処理されたものを好ましく使用できる。かかる親油性処理は例えば4級アンモニウムイオンを含む溶液中にモンモリロナイトを添加し、モンモリロナイトと4級アンモニウムイオンを接触させることにより行われる。ここで、親油性処理に使用可能な4級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、トリオクチルアンモニウム塩、ジステアリルジベンジルアンモニウム塩、ジメチルジステアリルアンモニウム塩、トリメチルステアリルアンモニウム塩等が挙げられる。また、4級アンモニウムイオンを含む溶液に使用する溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。
【0036】
この親油性モンモリロナイトを極性溶媒に分散させると、モンモリロナイトの層間に存在する4級アンモニウムイオンが極性溶媒を引き寄せ、層間が押し広げられた結果、層間を境にへき開が生ずる。このへき開は、親油性処理によりモンモリロナイトの層間の交換性陽イオンが4級アンモニウムイオンとより多くカチオン交換される程、へき開が進行し、モンモリロナイトが細粒化される。
【0037】
本発明において、モンモリロナイトはへき開によって細粒化したものが好適であり、へき開後の平均粒径が0.01μm〜5μmであるのが好ましい。従って、極性溶媒に分散可能で、へき開し得るものであれば、へき開前の平均粒径が50〜60μmのモンモリロナイトを使用することも可能である。
【0038】
親油性モンモリロナイトを、ポリイミド前駆体溶液を得る際に使用する極性溶媒に事前に分散させておくことにより、へき開を進行させることができ、ポリイミド前駆体溶液中に比較的容易に均一に分散させることができる。
【0039】
なお、親油性処理が不十分でへき開が不足した場合、モンモリロナイトが極性溶媒中で沈殿し、粒子径が5μm以上のへき開が不足したモンモリロナイトの粒子が残存し、管状体の内周面および外周面に、この粒子に起因した凹凸が生じやすくなる。
【0040】
本発明において、モンモリロナイトの含有量は、ポリイミド樹脂100重量部に対して1重量部〜30重量部が好ましく、より好ましくは2.5重量部〜10重量部である。かかる好ましい範囲内にあると、管状体に十分な弾性率が付与され、強度と耐折性にすぐれた管状物を得ることができる。
【0041】
モンモリロナイトの含有量がポリイミド樹脂100重量部に対して1重量部未満であると、管状体の弾性率が不足し、十分な強度と耐折性が得られないため好ましくない。逆に、30重量部を超えると、管状体の耐折性が低下し、亀裂や割れが生じやすいものとなるため好ましくない。
【0042】
本発明の管状体は種々の用途に適用でき、その厚み(肉厚)は特に限定されず、具体的用途に応じて適宜設定できる。例えば、本発明の管状体を、電子写真記録装置の定着装置に組み込む定着ベルトとして使用する場合の厚み(肉厚)は30〜90μmである。従来の定着ベルトの厚みは40μm以上が一般的であるが、本発明の管状体は、フッ素樹脂フィラーとモンモリロナイトの組み合わせによって、40μmよりも薄厚でも十分な座屈強度および耐折性を確保でき、高価なポリイミド樹脂の使用量を削減することが可能となる。なお、厚みが30μmを超えて小さくなると、座屈強度および/又は耐折性を確保することが困難になるので、厚みの下限は30μm以上にするのが好ましい。
【0043】
また、本発明の管状体は、以上説明したフッ素樹脂フィラー及びモンモリロナイトを含むポリイミド樹脂からなる管状体を基材層として、その外周面にフッ素樹脂からなる表面層を形成した管状体を含む。当該フッ素樹脂表面層の厚みは、通常、7〜30μm程度である。
【0044】
かかる態様の管状体の場合、定着ベルトとして用いる場合に、紙やトナーに対する離型性に優れた構成となる。また、基材層とフッ素樹脂表面層との接着性向上のために、例えば、ポリアミド酸やフッ素樹脂等からなる厚みが0.1〜2μm程度のプライマー層を設けてもよい。
【0045】
また、基材層とフッ素樹脂表面層間に耐熱性中間弾性層を設けることもできる。該耐熱性中間弾性層としては、例えば、シリコーンゴム層を挙げることができる。かかる耐熱性中間弾性層の厚みは特に限定されず、管状体の具体的用途に応じて適宜設定できるが、例えば、管状体を電子写真記録装置の定着装置に組み込む定着ベルトに使用する場合、かかる耐熱性中間弾性層の厚みは一般に150〜300μm程度である。
【0046】
次に、本発明の管状体の製造方法について説明する。
モンモリロナイトを溶媒に分散させ、モンモリロナイトが分散された溶媒にフッ素樹脂フィラーを分散させ、更にテトラカルボン酸二無水物(x)とジアミン(y)を略等モル添加して、テトラカルボン酸二無水物(x)とジアミン(y)を反応させ、ポリイミド前駆体溶液を得る。ここで、テトラカルボン酸二無水物(x)とジアミン(y)の反応時間は、0.5〜10時間程度が好ましい。0.5時間未満であると反応が不十分となり、10時間を超えてもそれ以上の反応が期待されないからである。
なお、フッ素樹脂フィラーは、テトラカルボン酸二無水物(x)とジアミン(y)の反応後に添加することも可能である。
また、モンモリロナイトを溶媒に分散させた状態で、またはポリイミド前駆体溶液を得た後に、超音波処理またはナノマイザー処理等の分散処理を行うことによってへき開を進めることができる。
【0047】
また、反応時におけるモノマー濃度〔上記溶媒中における(x)+(y)の濃度〕は種々の要因に応じて設定できるが、通常5〜30重量%である。また、反応温度は80℃以下に設定することが好ましい。
【0048】
また、このようにして有機極性溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させると、その反応の進行に伴い溶液の粘度が上昇するが、本発明においては対数粘度(η)が0.5以上となったポリイミド前駆体溶液を用いることが好ましい。
【0049】
すなわち、対数粘度(η)が0.5以上のポリイミド前駆体溶液を用いて形成した場合、熱劣化に対する信頼性(耐熱性)が対数粘度0.5未満のものと比較して特に優れているという利点がある。
【0050】
なお、上記対数粘度(η)は毛細管粘度計を用いてポリイミド前駆体溶液と溶媒の落下時間を各々測定し、下記の数式により算出される値である。
【0051】
【数1】

【0052】
このようなポリイミド前駆体溶液は、使用する際に、粘度が高い場合には適当な溶媒で希釈して粘度を低くして用いる。
【0053】
例えば、ポリイミド前駆体溶液の粘度は、塗布厚み、シリンダーの内径、溶液温度、走行体の形状等に応じて設定されるが、通常、10〜10000ポイズ(塗布作業時の温度でB型粘度計にて測定)に設定される。
【0054】
本発明の管状体は、上記の方法で得られたポリイミド前駆体溶液を適宜展開してフィルム(ベルト)状に成形することにより得ることができる。
【0055】
すなわち、例えば、成形用円筒状金型の内周面に上記の方法で得られたポリイミド前駆体溶液を塗布し、塗布後、加熱してイミド転化が終了してから円筒状金型より剥離し、管状体を得る。
または、成型用円筒状金型の内周面にポリイミド前駆体溶液を塗布後、塗布皮膜が少なくともそれ自身支持できるまで乾燥させ、固形状態とした後、円筒状金型から円筒状の塗布被膜を剥離し、得られた円筒状の塗布被膜の内部に円筒状焼成型を挿入してイミド転化が終了するまで加熱後、円筒状焼成型を引き出し、管状体を得ることができる。
【0056】
ここで、ポリイミド前駆体溶液は、成型用円筒状金型の内周面に塗布する際に、溶液粘度が高い場合には適当な溶媒で希釈して粘度を低くして用いることができる。例えば、ポリイミド前駆体溶液の粘度は、塗布厚、塗布方法、塗布条件、溶液温度等に応じて設定されるが、通常0.1〜10000ポイズ(塗布作業時の温度でB型粘度計にて測定した粘度)に設定される。
【0057】
また、成形用円筒状金型としては、従来から管状体の製造に用いられるものであればどのようなものであっても差し支えなく、材質としては耐熱性の観点から、金属、ガラス、セラミックス等各種のものが例示される。
【0058】
円筒状金型へのポリイミド前駆体溶液の塗布方法としては、ポリイミド前駆体溶液中に、円筒状金型を浸漬させて円筒状金型の内面に塗布膜を形成しこれを円筒状ダイス等で成膜する方法や、円筒状金型内面の片端部にポリアミド酸溶液を供給した後、この円筒状金型の内径に対し一定の遊間を有する走行体(弾丸状、球状)を走行させる方法、円筒状金型の内面にポリイミド前駆体溶液を供給後、円筒状金型を軸周りに回転させ、遠心力により均一な皮膜とする方法等が挙げられる。
【0059】
ここで、上述の走行体を走行させる方法としては、自重走行法(円筒状金型を垂直に立て、走行体をその自重により下方に走行させる方法)の他、圧縮空気やガス爆発力を利用する方法、牽引ワイヤ等により牽引する方法等が挙げられる。
【0060】
上記ポリイミド前駆体溶液を塗布した後の加熱温度は、80〜200℃程度の低温で加熱して溶媒を除去した後、250〜400℃程度に昇温してイミド転化を終了する多段加熱法等が用いられる。また、低温加熱後にそれ自身支持できる固形状態になった管状体を剥離して、プライマー層やフッ素樹脂層を形成した後、高温加熱を行ってもよい。加熱時の所要時間は加熱時間に応じて適宜設定されるが、通常低温加熱およびその後の高温加熱ともに20〜60分程度である。このような多段加熱法を用いれば、イミド転化に伴い発生する閉環水や溶媒の蒸発に起因する管状体における微小ボイドの発生を防止することができる。
【0061】
このようにして得た管状体を円筒状金型より剥離する方法としては、例えば円筒状金型端部の周壁面に予め設けられた微小貫通孔に空気を圧送する方法等が挙げられる。なお、管状体を形成する円筒状金型内周面等に予めシリコーン樹脂等による離型処理を施しておけば、管状体の剥離作業性が向上し好ましい。
【0062】
また、フッ素樹脂表面層を形成する方法として、溶融押出により得たフッ素樹脂のチューブ状シームレスベルトを管状体外周面に被着する方法、フッ素樹脂溶液(ディスパージョンを含む)を管状体外周面に被覆する方法等により形成される。
溶液状のフッ素樹脂溶液を被覆する方法としては、例えばスプレーコート、スピンコート、ロールコート、刷毛塗り等の方法が考えられる。このとき、外層にボイドが発生するのを防ぐために、管状体の外周面にフッ素樹脂溶液を塗布後、フッ素樹脂溶液中の溶媒を除去し、フッ素樹脂の融点以上に昇温してフッ素樹脂層を形成することができる。また、この時管状体のイミド転化を同時に行ってもよい。
【0063】
また、プライマー層はプライマー溶液を、例えばロールコート、刷毛塗り、スプレーコート等により塗布することにより得られる。
【0064】
また、耐熱性中間弾性層は、二液性シリコーンゴム液を、円状ダイスで均一に塗布し加熱することにより形成される。
【0065】
[モンモリロナイトの平均粒径]
本発明において、「モンモリロナイトの平均粒径」には、仕込みの平均粒径(すなわち、ポリイミド前駆体溶液中に添加する前のモンモリロナイトの平均粒径)と、フィルム(ベルト)中での平均粒径(すなわち、モンモリロナイトがへき開して細粒化した後の平均粒径)とがある。
(1)仕込みの平均粒径は、適当な溶媒中に一次粒子状に分散させたモンモリロナイトを動的光散乱式粒径分布測定装置LB−500((株)堀場製作所製)によって測定された、一次粒子の算術平均径(体積基準)である。
(2)フィルム(ベルト)中での平均粒径は、ポリアミド酸溶液から成膜されたフィルムの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して計測した粒径分布から求めた、算術平均径(個数基準)を意味する。測定断面を任意の倍率で撮影し、その画像において、任意の100μm四方に相当する領域内を算出対象とした。なお、モンモリロナイトの粒径はヘイウッド径(粒子断面と同面積の円を想定したときの該円の直径)として測定した。
【0066】
[フッ素樹脂フィラーの平均粒径]
本発明において、「フッ素樹脂フィラーの平均粒径」は、仕込みの平均粒径であり、上記モンモリロナイトのそれと同様にして測定した。
【実施例】
【0067】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0068】
溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンに、4級アンモニウム塩で親油性処理したモンモリロナイト(平均粒径:30μm、ホージュン社製、商品名:エスベン)を添加し、超音波分散(42kHz:1hr)を行いながら同時に攪拌処理(100rpm)を行った。次に、得られた分散液にフッ素樹脂フィラー(喜多村社製のPTFE、平均粒径5μm)を加えた後に、p−フェニレンジアミンと3,3‘,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を等mol量添加し、これを溶解させ、窒素雰囲気下において室温(23℃)で攪拌しながら10時間反応させて、1900ポイズ(温度25℃、B型粘度計で測定)のポリアミド酸溶液を得た。
なお、添加量は、ポリイミド樹脂100重量部に対して親油性モンモリロナイト3重量部、フッ素樹脂フィラー4重量部となるように添加した。
次に、内径30.5mmの円筒状金型の内面に、上記ポリアミド酸溶液を塗布後、直径29.7mmの弾丸状走行体をその自重により落下させ、その後、塗膜中の気泡を除く脱泡処理を行い、均一な塗膜面を得た。
次いで該金型を150℃から段階的に加熱して溶媒を除去後、室温で金型から剥離し、厚みが80μmの管状体を得た。
得られた管状体の外周面に、スプレーによってプライマー溶液としてポリアミド酸NMP溶液を0.3μm塗布し、乾燥後、更に、フッ素樹脂層としてPFAディスパージョンを10μm塗布した。
次に、耐熱成形型を管状体の内部に挿入し、400℃で20分間焼成を行い、閉環水の除去及びイミド転化を完結させて、ポリイミド樹脂層の厚みが80μmであり、フッ素樹脂層の厚みが10μmであり、全体の厚みが90μmのフッ素樹脂層を有する管状体を作製した。
管状体中のモンモリロナイトの平均粒径は1μmであった。
また、管状体の引張弾性率をJISK−7127(1999)で測定すると5500MPaであった。
また管状体を市販のデジタル複合機の定着器ユニットを流用した評価装置に定着ベルトとしてセットして、プリント速度24ppm下で連続して通紙試験を行った。
通紙試験は良好で目的枚数(6万枚)まで座屈、しわ、折れ等の問題は生じなかった。
また、駆動時の負荷トルクは6.0kgfcmであった。
【実施例2】
【0069】
ポリイミド樹脂100重量部に対して4級アンモニウム塩で親油性処理したモンモリロナイト(平均粒径:30μm、ホージュン社製、商品名:エスベン)が30重量部、フッ素樹脂フィラー(喜多村社製のPTFE、平均粒径5μm)が15重量部となるよう添加し、2000ポイズ(温度25℃、B型粘度計で測定)のポリアミド酸溶液を得た。また、管状体の厚みを60μm(ポリイミド樹脂層の厚みが50μm、フッ素樹脂層の厚みが10μm)とした。それ以外は実施例1と同様に管状体を作製した。
管状体中のモンモリロナイトの平均粒径は1μmであった。
また、管状体の引張弾性率を実施例1と同様の方法で測定したところ6000MPaであった。
また管状体を市販のデジタル複合機の定着器ユニットを流用した評価装置に定着ベルトとしてセットして、プリント速度24ppm下で連続して通紙試験を行った。
通紙試験は良好で目的枚数(6万枚)まで座屈、しわ、折れ等の問題は生じなかった。
また、駆動時の負荷トルクは5.8kgfcmであった。
【比較例1】
【0070】
モンモリロナイトを添加せず、フッ素樹脂フィラー(喜多村社製のPTFE、平均粒径5μm)を、ポリイミド樹脂100重量部に対して、15重量部となるように添加し、2000ポイズ(温度25℃、B型粘度計で測定)のポリアミド酸溶液を得た。それ以外は実施例1と同様に管状体を作製した。
得られた管状体の引張弾性率を実施例1と同様の方法で測定したところ4600MPaであった。
また管状体を市販のデジタル複合機の定着器ユニットを流用した評価装置に定着ベルトとしてセットして、プリント速度24ppm下で連続して通紙試験を行った。
通紙試験中に、寄りシワが発生し、片側寄りに寄る座屈を生じて目的枚数(6万枚)まで到達しなかった。
また、駆動時の負荷トルクは5.5kgfcmであった。
【比較例2】
【0071】
フッ素樹脂フィラーを添加せず、4級アンモニウム塩で親油性処理したモンモリロナイト(平均粒径30μm、ホージュン社製、商品名:エスベン)を、ポリイミド樹脂100重量部に対して、0.5重量部となるように添加し、1900ポイズ(温度25℃、B型粘度計で測定)のポリアミド酸溶液を得た。それ以外は実施例1と同様にして管状体を作製した。
管状体中のモンモリロナイトの平均粒径は1μmであった。
また、管状体の引張弾性率を実施例1と同様の方法で測定したところ5500MPaであった。
また管状体を市販のデジタル複合機の定着器ユニットを流用した評価装置に定着ベルトとしてセットして、プリント速度24ppm下で連続して通紙試験を行った。
通紙試験中に片側寄りに寄る座屈を生じて目的枚数(6万枚)まで到達しなかった。
また、駆動時の負荷トルクは7kgfcmであった。
【比較例3】
【0072】
フッ素樹脂フィラーを添加せず、4級アンモニウム塩で親油性処理したモンモリロナイト(平均粒径30μm、ホージュン社製、商品名:エスベン)を、ポリイミド樹脂100重量部に対して、33重量部となるように添加し、2100ポイズ(温度25℃、B型粘度計で測定)のポリアミド酸溶液を得た。それ以外は実施例1と同様に管状体を作製した。
管状体中のモンモリロナイトの平均粒径は1μmであった。
また、管状体の引張弾性率を実施例1と同様の方法で測定したところ6300MPaであった。
また管状体を市販のデジタル複合機の定着器ユニットを流用した評価装置に定着ベルトとしてセットして、プリント速度24ppm下で連続して通紙試験を行った。
通紙試験中に片側寄りに寄る端部裂けを生じて目的枚数(6万枚)まで到達しなかった。
また、駆動時の負荷トルクは8kgfcmであった。
【比較例4】
【0073】
ポリイミド樹脂100重量部に対して、4級アンモニウム塩で親油性処理したモンモリロナイト(平均粒径30μm、ホージュン社製、商品名:エスベン)が3重量部、フッ素樹脂フィラー(喜多村社製のPTFE、平均粒径5μm)が1重量部となるように添加し、2000ポイズ(温度25℃、B型粘度計で測定)のポリアミド酸溶液を得た。それ以外は実施例1と同様に管状体を作製した。
管状体中のモンモリロナイトの平均粒径は1μmであった。
また、管状体の引張弾性率を実施例1と同様の方法で測定したところ5300MPaであった。
また管状体を市販のデジタル複合機の定着器ユニットを流用した評価装置に定着ベルトとしてセットして、プリント速度24ppm下で連続して通紙試験を行った。
通紙試験では目的枚数(6万枚)まで到達したが、端部から微細な裂け目が生じていた。
また、駆動時の負荷トルクは7.8kgfcmであった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の管状体は、座屈強度、耐折性および摺動性に優れた管状体であり、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真画像形成装置における定着ベルト等に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂フィラー及びモンモリロナイトを含むポリイミド樹脂からなる管状体。
【請求項2】
フッ素樹脂フィラーの含有量が、ポリイミド樹脂100重量部に対して2重量部〜15重量部である、請求項1記載の管状体。
【請求項3】
モンモリロナイトの含有量が、ポリイミド樹脂100重量部に対して1重量部〜30重量部である、請求項1または2記載の管状体。
【請求項4】
モンモリロナイトが、へき開したものである請求項1〜3のいずれか1項記載の管状体。
【請求項5】
モンモリロナイトの平均粒径が0.01μm〜5μmである請求項1〜3のいずれか1項記載の管状体。
【請求項6】
モンモリロナイトが、親油性モンモリロナイトである請求項1〜5のいずれか1項記載の管状体。
【請求項7】
親油性モンモリロナイトが、4級アンモニウム塩で処理されたモンモリロナイトである請求項6記載の管状体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の管状体を基材層とし、該基材層の外周面にフッ素樹脂からなる表面層が形成された管状体。
【請求項9】
基材層と表面層との間に耐熱性中間弾性層を有する請求項8記載の管状体。
【請求項10】
親油性モンモリロナイトを極性溶媒に分散させ、分散液1とする工程と、該分散液1にフッ素樹脂フィラーを添加して分散させ、分散液2とする工程と、該分散液2を用いてポリイミド前駆体溶液を調製する工程と、該ポリイミド前駆体溶液を用いて管状体に成型する工程と、成型後の管状体をイミド化する工程とを有する管状体の製造方法。
【請求項11】
親油性モンモリロナイトを極性溶媒に分散させる工程と、該分散液を用いてポリイミド前駆体溶液を調製する工程と、該ポリイミド前駆体溶液にフッ素樹脂フィラーを添加して分散させる工程と、該フッ素樹脂フィラーを分散させたポリイミド前駆体溶液を用いて管状体に成型する工程と、成型後の管状体をイミド化する工程とを有する管状体の製造方法。
【請求項12】
ポリイミド前駆体溶液は、ポリアミド酸1モル当量に対し、0.1モル当量から3モル当量のイミド化触媒を含有する請求項10または11記載の管状体の製造方法。
【請求項13】
前記イミド化触媒は、イソキノリン、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、N-メチルイミダゾールからなる群から少なくとも1つ選ばれる請求項12記載の管状体の製造方法。
【請求項14】
極性溶媒が非プロトン性極性溶媒である、請求項10〜13のいずれか1項記載の管状体の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の管状体からなる定着ベルト。
【請求項16】
請求項15記載の定着ベルトを備えた定着装置。

【公開番号】特開2010−195888(P2010−195888A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40661(P2009−40661)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】