説明

粉粒体の排出装置

【課題】真空ホッパー内と同一の環境下を維持しながら粉粒体を計量・排出可能であって、しかも、粉粒体の噛み込みを防止してスムーズなスライド動作が可能な粉粒体の排出装置を提供する。
【解決手段】粉粒体Pを貯留して密閉可能な真空ホッパーHと、前記真空ホッパーH下端の排出口H1に連通される材料入口と、当該材料入口から水平方向に所定間隔Lをあけて開設された材料出口とを有する基板と、前記基板の下面を水平方向に摺動自在とし、上下方向に貫通する貫通孔が開設されたスライド板2と、前記スライド板の貫通孔に上端開口が固定され、前記スライド板に連動して水平移動されるスライド容器3と、前記スライド容器3の下端には、前記粉粒体は通さずに気体のみを流通可能な多孔体を備えると共に前記スライド容器3を密閉可能な蓋部と、前記蓋部に連通されて前記スライド容器3内の気体を吸気又は排気若しくはパージ可能な空気調節手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂原料等の粉粒体を真空状態を維持しながらスムーズに計量・排出可能な粉粒体の排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂原料等の粉粒体を計量するための計量・排出装置としては、いわゆるロータリーベーンフィーダーが知られているが、このロータリーベーンフィーダーは、放射状のベーンを有する回転体の回転により粉粒体を計量・排出するものであったため、回転体を回転させるモーターを出力軸の回転角度制御を精度よく行なうことが出来る高価なものとしなければならず、コスト高であるという欠点があった。また、ケーシングの入口から出口に至る間の、ベーンの間に常に粉粒体が滞留(存在)することになり、ロータリーベーンフィーダー内に残留する粉粒体の排出(清掃)をしなければならず、その作業が面倒であるという欠点があった。
【0003】
そこで、かかる欠点を解消すべく、本出願人は、合成樹脂原料等の粉粒体を計量・排出するためのスライド式による計量装置を既に出願し、その概要を図5に示している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この粉粒体の計量装置100は、上下方向に貫通する入口111、出口121を有する基板101と、この基板101の下面に水平動自在に設けられた、上下方向に貫通する貫通孔112を有するスライド板102と、この貫通孔112の縁部に、上端開口113の縁部が固定された計量容器103とを備えてなる。
【0005】
ここで、計量容器103には、内部容量が可変できると共に、気体の通過のみを許容する多孔体113を設け、また、スライド板102は、貫通孔112を入口111に重ねる位置と、出口121に重ねる位置との間で移動自在となされると共に、貫通孔112を出口121に重ねた状態で入口111を閉じるようにしている。
【0006】
そして、スライド板102の貫通孔112を入口111に重ねると、上方のホッパーHから粉粒体Pが自然落下し、計量容器103内が粉粒体Pで満たされる。
【0007】
次いで、スライド板102を駆動手段104でスライドさせて、貫通孔112を基板101の出口121に重ねる。
【0008】
この操作によって、入口111が閉塞されると同時にスライド板102の貫通孔112の上端までの粉粒体Pが計量容器103により計量されて、出口121側に移動する。
【0009】
その後、多孔体113から空気を流入して、出口121の前方に設けた成形機等(不図示)に向かう空気の流れを発生させれば、計量容器103内の粉粒体Pは出口121から空気の流れに乗って、前記成形機等(不図示)に空気輸送され、その後、スライド板102の貫通孔113を入口111に重ねる位置に移動し、以下、これを繰り返し行うものである。
【特許文献1】特願2000−338504号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このスライド式による粉粒体の計量装置100は、低コストに粉粒体Pを計量できる点では優れているが、粉粒体Pを計量する際に、ホッパーH及び計量容器103内を真空状態にしながら計量作業を行うことが要望されている。
【0011】
ここで、真空状態とは、ホッパーH及び計量容器103を密閉した状態で、その内部の空気をポンプ等で吸引して、計量容器103内が脱気された状態を意味する。
【0012】
ところが、このスライド式による粉粒体の計量装置100では、仮に、ホッパーHを真空状態にして計量容器103内に粉粒体Pを供給したとしても、計量容器103内の粉粒体Pを出口121から成形機等(不図示)に空気輸送する際には、この計量容器103内が大気状態に戻されてしまい、計量容器103内の真空状態を維持した状態での計量作業を行うことはできなかった。
【0013】
また、スライド式による粉粒体の計量装置100は、ホッパーHから粉粒体Pを計量容器103内に落下させた後に、スライド板102を出口121に向けてスライドさせるが、このスライド動作の際、基板101の入口111に残存されている粉粒体Pが、スライド板102の貫通孔112の上端縁に噛み込まれてしまい、この噛み込んだ粉粒体Pを粉砕しながらスライド板102をスライド動作すれば、駆動手段104に大きな負荷がかかるうえ、スムーズなスライド動作ができないという問題もあった。
【0014】
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするもので、真空状態を維持しながら粉粒体を計量・排出可能であって、しかも、粉粒体の噛み込みを防止してスムーズなスライド動作が可能な粉粒体の排出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、
請求項1に係る粉粒体の排出装置は、粉粒体を貯留して密閉可能な真空ホッパーと、 前記真空ホッパー下端の排出口に連通される材料入口と、当該材料入口から水平方向に所定間隔をあけて開設された材料出口とを有する基板と、前記基板の下面を水平方向に摺動自在とし、上下方向に貫通する貫通孔が開設されたスライド板と、前記スライド板の貫通孔に上端開口が固定され、前記スライド板に連動して水平移動されるスライド容器と、前記スライド容器の下端には、前記粉粒体は通さずに気体のみを流通可能な多孔体を備えると共に前記スライド容器を密閉可能な蓋部と、前記蓋部に連通されて前記スライド容器内の気体を吸気又は排気若しくはパージ可能な空気調節手段と、を備えてなる粉粒体の排出装置であって、前記スライド容器の上端開口から前記材料出口を通じて投入された粉粒体を排出した後、前記貫通孔が、前記基板で完全に閉塞される位置まで水平移動して一旦停止させると共に、スライド容器内をを真空若しくはパージ手段によって、前記真空ホッパー内と同一の環境下にしたり、若しくは、直接スライド容器の上端開口を前記材料入口に連通する位置まで水平移動するようにしたことを特徴とする。
【0016】
ここで、所定間隔とは、スライド板の貫通孔が、基板で完全に閉塞される長さを意味する。
【0017】
請求項2に係る粉粒体の排出装置は、請求項1において、基板の材料入口には、材料出口側の開口縁下方に排出空間部を形成してなり、スライド容器の上端開口を前記材料入口に連通する位置まで水平移動して、前記スライド容器内に所定量の粉粒体を貯留した後、スライド板を前記材料出口側に向けて水平移動し、前記排出空間部に前記粉粒体が流れ込まない安息角の形成される位置で前記スライド板を一旦停止させ、前記排出空間部に残留された前記粉粒体を落下させた後、前記スライド容器内の上端開口から前記材料排出口を通じて計量された粉粒体が排出されるようにしたことを特徴とする。
【0018】
請求項3に係る粉粒体の排出装置は、請求項1又は2の何れかにおいて、スライド容器は、粉粒体を貯留する容量を調節可能に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、次のような効果がある。
請求項1に係る粉粒体の排出装置によれば、材料入口と材料出口とを連接させずに所定間隔を設けているので、この所定間隔の位置でスライド容器を一旦停止させて当該スライド容器内を真空状態にしたうえで、材料入口に連通させることができる。
【0020】
そのため、スライド容器内の真空状態を維持したままで、当該スライド容器内に真空ホッパーからの粉粒体を投入することができ、真空ホッパー内の粉粒体が、大気に触れることがないため、粉粒体の酸化を防止できる。
【0021】
また、真空ホッパー内の粉粒体が、大気に触れることがないので、温度変化或いは湿度変化によって粉粒体の表面に結露が生じることも防止でき、更に、粉粒体が大気中の水分を吸湿して計量誤差が生じることも防止できる。
【0022】
請求項2に係る粉粒体の排出装置によれば、請求項1の効果に加え、基板には、更に、排出空間部を形成すると共に、スライド板が、安息角を生じる位置で一旦停止されるので、排出空間部に残留されている粉粒体を、貫通孔乃至スライド容器内に確実に落下させたうえで、スライド板を水平移動することができる。
【0023】
そのため、スライド板の貫通孔と、基板の材料入口との間に粉粒体が噛み込むことを確実に防止でき、スライド板のスムーズな移動を実行できる。
【0024】
請求項3に係る粉粒体の排出装置によれば、スライド容器の容量を調節可能にしているので、計量する粉粒体の形状、量等に応じてスライド容器の計量可能な容量を簡易に調節できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る粉粒体の排出装置を図面とともに説明する。
【実施例1】
【0026】
図1(a)は、本発明に係る粉粒体の排出装置Aの一実施例を正面から見た概略全体図を示し、図1(b)は、図1(a)の使用状態を側面から見た概略全体図を各々示しており、図2は、図1の点線枠で囲んだ本発明の要部を示した拡大断面図である。
【0027】
ここで、共通する部位には、同一の番号を付し、重複する説明は省略している。
【0028】
本発明に係る粉粒体の排出装置Aは、粉粒体Pを貯留して密閉可能な真空ホッパーHと、真空ホッパーH下端の排出口H1に連通される材料入口11と、材料入口11から水平方向に所定間隔Lをあけて開設された材料出口12とを有する基板1と、基板1の下面を水平方向に摺動自在とし、上下方向に貫通する貫通孔21が開設されたスライド板2と、スライド板2の貫通孔21に上端開口3aが固定され、スライド板2に連動して水平移動されるスライド容器3と、を備えてなり、このスライド容器3の下端には、粉粒体Pは通さずに気体のみを流通可能な多孔体31を備えると共に、スライド容器3を密閉可能な蓋部32と、この蓋部32に連通されてスライド容器3内の気体を吸引可能なポンプ等の空気調節手段5を設けている。
【0029】
以下、各部材について、詳説する。
【0030】
真空ホッパーHは、下端に向けて狭められた排出口H1を設けた筒状の容器本体H2と、この容器本体H2の上端を密閉する開閉可能な蓋体H3とより構成され、蓋体H3の適所には、ガラス等で遮蔽された窓部H4を設け、内部状態を確認可能にしている。
【0031】
真空ホッパーHの排出口H1下端には、当該排出口H1と連通される材料入口11を開設した基板1を設けている。
【0032】
この基板1には、材料入口11から水平方向に向けて同形の材料出口12を開設してなり、これら材料入口11と材料出口12とは、所定間隔Lを形成している。
【0033】
ここで、所定間隔Lとは、スライド板2の貫通孔21が完全に閉塞される長さを意味する。
【0034】
また、基板1の両端には、下方に延出された側板13が形成され、この側板13の下端内面には、長手方向に向けて凹んだレール部14を形成しており、このレール部14にスライド容器3の上端が係止されて、当該スライド容器3をスライド可能にしている。
【0035】
なお、材料出口12には、これに連通される排出管12aが連結されており、この排出管12aに備えられた吸引ポンプ12bによって、材料出口12から粉粒体Pを吸引して、排出管12aを通じて、前方の樹脂成形機(不図示)等に粉粒体Pを送給可能にしている。
【0036】
次に、基板1の下方内側には、この基板1の下面を水平方向に摺動自在とし、上下方向に貫通する貫通孔21が開設されたスライド板2を設けてなり、具体的には、スライド板2は、基板1下面と、レール部14上端に挟持され、基板1の長手方向に摺動可能にしている。
【0037】
スライド板2の貫通孔21は、材料入口11及び材料出口12と連通可能な略同形に開設しており、このスライド板2の基端には、既存の駆動手段4を連結し、この駆動手段4の伸縮動作によって、スライド板2を基板1の長手方向に移動可能にしている。
【0038】
そして、このスライド板2の貫通孔21には、上方が開放された有底筒状のスライド容器3の上端開口3aを連通させて固定しており、スライド容器3は、上記の通り、レール部14に沿いながら、このスライド板2に連動されて水平移動可能にしている。
【0039】
このスライド容器3の下端には、粉粒体Pは通さずに気体のみを流通可能な多孔体31を備えると共に、スライド容器3の底を密閉可能な蓋部32を設けている。
【0040】
また、蓋部32には、通気穴33が開設され、この通気穴33に連通され、スライド容器3内の気体を吸気又は排気可能な空気調節手段5を連結している。
【0041】
なお、スライド容器3の適所には、当該スライド容器3に貯留される粉粒体Pの貯留量を感知するセンサー34を設けている。
【0042】
また、本実施例で示すスライド容器3は、一定容量のものを示しているが、例えば、スライド容器3の上端開口3aと、スライド板2の貫通孔21とが螺合されるようにして、スライド軽量容器3を取替え可能に形成したり、或いは、スライド容器3の中間に伸縮可能な連結構造を設けて、計量される粉粒体Pの形状、容量等に応じてスライド容器3の容量を調節可能な構造にしても良い。
【0043】
以上のように構成された本発明に係る粉粒体の排出装置Aは、以下のように作用する。
【0044】
図3(a)〜(c)は、本発明に係る粉粒体の排出装置Aの要部を概略した動作図である。
【0045】
ここで、図3(a)は、真空ホッパーHから粉粒体Pがスライド容器3に供給される供給位置を示し、図3(b)は、スライド容器3内から粉粒体Pが排出される排出位置を示し、図3(c)は、スライド容器3に連動するスライド板2の貫通孔21が完全に閉塞され、スライド容器3内を真空状態にする位置を各々示している。
【0046】
なお、図面都合上、必要な部位にのみ番号を付しているが、その他の部位については、図1、図2と同一番号であるため、省略している。
【0047】
先ず、真空ホッパーHの蓋体H3を開放し、容器本体H2内に粉粒体Pを貯留してから、この蓋体H3を密閉し、真空ホッパーH内の空気を既設の空気調節手段(不図示)で脱気して真空状態にする。
【0048】
真空ホッパーHは、密閉された単なる容器であっても良く、この場合には、前記密閉された容器内に、既存の真空輸送手段を用いて粉粒体Pを貯留すれば良い。
【0049】
次に、スライド板2を移動し、その貫通孔21を材料入口11に重合すると共に、空気調節手段5でスライド容器3内の気体を排気すれば、真空状態に維持されている真空ホッパーH下端の排出口H1から材料入口11、貫通孔21を通じて、真空ホッパーH内の粉粒体Pが落下し、粉粒体Pをスライド容器3内に順次貯留する〔図3(a)参照。〕。
【0050】
スライド容器3内に所定量の粉粒体Pが貯留されると、これをセンサー34が検知して、スライド板2を、排出出口12に向けて移動する。
【0051】
ここで、センサー34は、粉粒体Pの所定量を計測可能であれば良く、既存の感知センサー或いは重量センサー等を用いる。
【0052】
なお、スライド容器3の移動初動時にも、このスライド容器3内には、粉粒体Pが貯留されるが、その粉粒体Pの量も加算したうえで、センサー34は所定量を計測している。
【0053】
そして、スライド板2の貫通孔21と、材料出口12が重合する位置でスライド板2の移動が停止されると共に、空気調節手段5でスライド容器3内に気体を吸気し、吸引ポンプ12bを作動すれば、スライド容器3内に貯留されている所定量の粉粒体Pが、排出管12aを通じて、前方の樹脂成形機(不図示)等に全て送給される〔図3(b)参照。〕。
【0054】
なお、吸引ポンプ12bは、粉粒体Pの排出時に必要となるが、次の排出時までの時間(タイミング)が短いならば、これを常時作動させておいても構わない。
【0055】
このようにして、スライド容器3内の計量された粉粒体Pを排出した後、スライド容器3の上端開口3aを、基板1の材料入口11に連通しない位置、換言すれば、スライド板2の貫通孔21が、所定間隔L内で完全に閉塞される位置まで水平移動して一旦停止させると共に、空気調節手段5でスライド容器3内の気体を排気すれば、スライド容器3内を真空ホッパーH内と同一の環境下にした真空状態にできる〔図3(c)参照。〕。
【0056】
そして、スライド容器3内を真空状態にした後、スライド板2の貫通孔21を材料入口11に重合させ、上記の要領にて、真空ホッパーHから粉粒体Pをスライド容器3内に順次貯留し、樹脂成形機(不図示)等に必要な量が送給されるまで、順次繰り返し行うのである〔図3(a)参照。〕。
【0057】
なお、スライド容器3の上端開口3aが、材料入口11に到達されるまでの間に、スライド容器3内が真空ホッパーH内と同一の環境下の真空状態にできるスピードで水平移動する場合、もしくは密閉可能なスライド容器3の容積が真空ホッパーHの容積に比べて小さく、スライド容器3が大気圧であっても直接真空ホッパーHに接続しても圧力変動がほとんど発生しない場合であれば、所定間隔L内でスライド容器3を一旦停止させることなく、連続して水平移動させても構わない。
【0058】
以上、説明した通り、本発明に係る粉粒体の排出装置Aによれば、材料入口11と材料出口12とを連接せずに所定間隔Lを形成することで、当該間隔L位置でスライド容器3を一旦停止させて当該スライド容器3内を真空ホッパーH内と同一の環境下にしたうえで、材料入口11に連通させることができる。
【0059】
そのため、スライド容器3内は、常に真空ホッパーH内と同一の環境下である真空状態を保持したままで、当該スライド容器3内に真空ホッパーHからの粉粒体Pを投入することができ、真空ホッパーH内の粉粒体Pが、大気に触れることがないので、粉粒体Pの酸化を防止できる。
【0060】
また、真空ホッパーH内の粉粒体Pが、大気に触れることがないので、温度変化或いは湿度変化によって粉粒体Pの表面に結露が生じることも防止でき、更に、粉粒体Pが大気中の水分を吸湿して計量誤差が生じることも防止できる。
【実施例2】
【0061】
図4(a)〜(d)は、本発明に係る粉粒体の排出装置Aの他の実施例を示す要部を概略した動作図である。
【0062】
ここで、図4(a)と図3(a)、図4(c)と図3(b)、図4(d)と図3(c)とは、同一の動作であるため、その説明は省略する。
【0063】
図4(c)は、本実施例の特徴とする動作状態であり、スライド容器3内から粉粒体Pが排出される排出位置を示し、図3(c)は、基板1の排出空間部6に粉粒体Pが流れ込まない安息角θが形成された位置での動作図を示している。
【0064】
なお、図1〜図3と共通する部位には、同一の番号を付して、その説明は省略し、本実施例の特徴についてのみ詳説する。
【0065】
この粉粒体の排出装置Aは、図2でも示すように、基板1の材料入口11には、材料出口12側(図中、左側)の開口縁下方に、段落ちされた排出空間部6を形成している点、及び、スライド容器3内に所定量の粉粒体Pを真空貯留した後、このスライド容器3を材料出口12側に向けて水平移動して、排出空間部6に粉粒体Pが流れ込まない安息角θを形成した位置で一旦停止する点に特徴がある。
【0066】
ここでは、材料入口11における材料出口12側の開口縁の略下半分だけを拡開して段落ち形成することで、排出空間部6を形成している。
【0067】
このような排出空間部6を形成すれば、図4(a)で示したスライド容器3内に所定量の粉粒体Pを真空貯留した後、このスライド容器3を材料出口12側に向けて水平移動すれば、図4(b)の点線で囲まれた拡大図に示すように、スライド板2の貫通孔21が基板1で完全に閉塞される手前の位置で、粉粒体Pが貫通孔21内に流れ込まない安息角θを形成した位置が生じる。
【0068】
本実施例では、この安息角θを形成した位置で、スライド板2を一旦停止し、数秒後、スライド板2を材料出口12側に向けて移動させるようにしている。
【0069】
そのため、スライド板2が一旦停止されたときに、排出空間部6に残留している落下途中の粉粒体Pは、排出空間部6を通じて貫通孔21に全て落下されるので、数秒後にスライド板2を排出出口12側に向けて移動させても、その移動によって基板1の排出空間部6と、スライド板2の貫通孔21との間に粉粒体Pが噛み込むことを確実に防止できる。
【0070】
そして、スライド板2は、粉粒体Pを噛み込むことなく、スムーズに排出出口12に移動され、以下、上述の要領で、スライド容器3内の粉粒体Pが排出出口12を通じて排出されるのである。
【0071】
このように本発明に係る粉粒体の排出装置Aによれば、排出空間部6を形成すると共に、スライド板2が、安息角θを生じる位置で一旦停止されるので、排出空間部6に残留されている粉粒体Pを、貫通孔2乃至スライド容器3内に確実に落下させたうえで、スライド板2を水平移動することができる。
【0072】
そのため、スライド容器3内を、常に真空状態を保持することができるうえ、スライド板2の貫通孔21と、基板1の材料入口11との間に粉粒体が噛み込むことを確実に防止でき、スライド板2のスムーズな移動をも実行できる。
【0073】
なお、本実施例で説明した排出空間部6を形成し、安息角θを形成した位置で、スライド板2を一旦停止して、粉粒体Pが噛み込むことを防止する構造は、スライド容器3内が真空状態に維持されない従来の装置にも適用することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る粉粒体の排出装置Aの一実施例を正面から見た概略全体図を示し、図1(b)は、図1(a)の使用状態を側面から見た概略全体図である。
【図2】図1の点線枠で囲んだ本発明の要部を示した拡大断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明に係る粉粒体の排出装置Aの要部を概略した動作図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明に係る粉粒体の排出装置Aの他の実施例を示す要部を概略した動作図である。
【図5】従来のスライド式による計量装置の要部を示した拡大断面図である。
【符号の説明】
【0075】
A 粉粒体の排出装置
H 真空ホッパー
H1 排出口
L 所定間隔
P 粉粒体
1 基板
11 材料入口
12 材料出口
2 スライド板
21 貫通孔
3 スライド容器
3a 上端開口
31 多孔体
32 蓋部
5 空気調節手段
6 排出空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を貯留して密閉可能な真空ホッパーと、
前記真空ホッパー下端の排出口に連通される材料入口と、当該材料入口から水平方向に所定間隔をあけて開設された材料出口とを有する基板と、
前記基板の下面を水平方向に摺動自在とし、上下方向に貫通する貫通孔が開設されたスライド板と、
前記スライド板の貫通孔に上端開口が固定され、前記スライド板に連動して水平移動されるスライド容器と、
前記スライド容器の下端には、前記粉粒体は通さずに気体のみを流通可能な多孔体を備えると共に前記スライド容器を密閉可能な蓋部と、
前記蓋部に連通されて前記スライド容器内の気体を吸気又は排気若しくはパージ可能な空気調節手段と、を備えてなる粉粒体の排出装置であって、
前記スライド容器の上端開口から前記材料出口を通じて投入された粉粒体を排出した後、前記貫通孔が、前記基板で完全に閉塞される位置まで水平移動して一旦停止させると共に、スライド容器内を真空若しくはパージ手段によって、前記真空ホッパー内と同一の環境下にしたり、若しくは、直接スライド容器の上端開口を前記材料入口に連通する位置まで水平移動するようにしたことを特徴とする粉粒体の排出装置。
【請求項2】
請求項1において、
基板の材料入口には、材料出口側の開口縁下方に排出空間部を形成してなり、
スライド容器の上端開口を前記材料入口に連通する位置まで水平移動して、前記スライド容器内に所定量の粉粒体を貯留した後、スライド板を前記材料出口側に向けて水平移動し、前記排出空間部に前記粉粒体が流れ込まない安息角の形成される位置で前記スライド板を一旦停止させ、前記排出空間部に残留された前記粉粒体を落下させた後、前記スライド容器内の上端開口から前記材料排出口を通じて計量された粉粒体が排出されるようにしたことを特徴とする粉粒体の排出装置。
【請求項3】
請求項1又は2の何れかにおいて、
スライド容器は、粉粒体を貯留する容量を調節可能に形成したことを特徴とする粉粒体の排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−127571(P2007−127571A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321879(P2005−321879)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000146054)株式会社松井製作所 (70)
【Fターム(参考)】