説明

粉粒体の貯留装置

【課題】低温酸化等による発熱反応性を有する炭化物やRDFのような粉粒体を、広い設置面積を必要とせず、また管理に多くの手数を要することなく、低コストで安全に貯留して養生することができる貯留装置を提供する。
【解決手段】縦長の貯留槽体1の上端に投入口2、下端に排出口3を設け、その内部を上下方向に複数段に区画し、各段を粉粒体の貯留室5とする。各段の貯留室5には粉粒体を下段に落下させる開口6と、この開口へ粉粒体を移動させる移送手段7とを設け、粉粒体を順次下段に落下させる。また貯留槽体の側壁8には、各段の貯留室5から粉粒体を急速排出させる非常排出口9を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を原料とする炭化物やRDFのような低温酸化等による発熱反応性を有する粉粒体を安全に貯留しながら養生することができる粉粒体の貯留装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ごみ等の廃棄物の処理方法は埋設や焼却が主体であったが、最近では、燃料その他のエネルギー源として活用する技術が開発されている。ところが廃棄物を原料とする炭化物やRDFは低温酸化等による発熱反応性を有し、空中の酸素と反応して次第に温度が上昇し、発火する危険性がある。特に都市ごみを炭化炉で加熱して生産された炭化物はその表面に遊離基や官能基等を備えているため、炭化炉から排出された直後に出荷すると、搬送の途中や出荷先で発火するおそれがある。そこで数日間は貯留装置で養生を行い、発熱反応性を低下させてから出荷する必要がある。
【0003】
ところが炭化物を大型の貯留槽に貯留すると、粉粒体の容積当たりの放熱面積が減少するため、その内部に熱がこもって中心部が高温になり、最悪の場合には熱暴走して発火に至ることがある。そこでこの危険を避けるために小型の貯留槽を多数設置して分散貯留方式とすると、広い設置面積を必要とするのみならず、管理に手数がかかるという問題があった。
【0004】
上記の事情はRDFの場合も同様であって、大型の貯留槽にRDFを貯留すると発火する危険性がある。そこで特許文献1のように貯留槽の全体を窒素ガスで満たして空中の酸素との反応を防止する提案がなされているが、全体を気密構造としなければならないので設備コストが高くなり、また窒素ガスのコストがかかるという問題がある。しかも窒素ガス内で貯留しても発熱反応性は変化しないので、養生という目的は達成することができない。
【特許文献1】特開2005−178934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、低温酸化等による発熱反応性を有する炭化物やRDFのような粉粒体を、広い設置面積を必要とせず、また管理に多くの手数を要することなく、低コストで安全に貯留して養生することができる発熱反応性を有する粉粒体の貯留装置を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明の発熱反応性を有する粉粒体の貯留装置は、上端に投入口、下端に排出口を備えた縦長の貯留槽体の内部を、上下方向に複数段に区画し、各段を低温酸化等による発熱反応性を有する粉粒体の貯留室とするとともに、各段の貯留室には粉粒体を下段に落下させる開口と、この開口へ粉粒体を移動させる移送手段とを設け、さらに貯留槽体の側壁には、各段の貯留室から粉粒体を急速排出させる非常排出口を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
なお、移送手段がスクリューフィーダであり、その逆転方向の移送端に非常排出口が設けられた構造や、移送手段がサークルフィーダの回転羽根であり、貯留槽体の側壁に開閉可能なシュート式の非常排出口が設けられた構造とすることができる。また、貯留槽体の内部を区画する床板、スクリューフィーダのスクリュー軸、サークルフィーダの回転羽根のいずれか1つ以上を冷却可能な構造とすることが好ましく、貯留槽体に、粉粒体の温度センサと、粉粒体の温度制御手段と、移送手段の速度制御手段とを設けて低温酸化等の発熱反応をコントロールできるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の貯留装置は、炭化物やRDFのような粉粒体を上端の投入口から投入し、下端の排出口から排出することは通常のサイロ式の貯留装置と同様であるが、貯留槽体の内部が上下方向に複数段に区画されているので、粉粒体は各段の貯留室に小分けされた状態で貯留されることとなる。このため放熱面積を確保し易くなり、内部で熱暴走することを防止できる。特に貯留槽体の内部を区画する床板等を冷却可能な構造とすれば、より確実に熱暴走を防止できる。しかも特許文献1のような窒素ガスを必要としないので、ランイングコストを抑制することができる。
【0009】
また本発明の貯留装置は、各段の貯留室を上下多段に形成したので、広い設置面積は不要であり、また多数の小型の貯留槽を多数設置した場合に比較して、建設費が抑制でき、かつ管理が容易である。しかも仮に内部温度が異常に上昇した場合には、貯留槽体の側壁に設けた非常排出口から各段の貯留室内の粉粒体を急速排出することができるので、発火に至る危険を避けることができる。上端の投入口から投入された粉粒体は各段を順次移動する間に空中の酸素と接して養生され、出荷可能な安全な製品として取り出すことが可能となる。また、酸素供給源となり得る空気等の気体を貯留槽内に必要に応じて供給する気体供給装置を具備することによって、より低温酸化等の発熱反応を促進させ養生時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1と図2は本発明の第1の実施形態を示すもので、1は低温酸化等による発熱反応性を有する粉粒体を貯留するための縦長の貯留槽体であり、その上端には投入口2が設けられ、下端には排出口3が設けられている。貯留槽体1の内部は床板4によって上下方向に複数段に区画してあり、各段が貯留室5となっている。床板4は水平であっても後記の開口6に向けて僅かに傾斜させてもよい。貯留槽体1は水平断面が円形であっても角型であってもよいが、この実施形態では図2に示すような四角形である。段数は2段以上であれば任意である。
【0011】
各段の貯留室5には、粉粒体を下段に落下させる開口6と、この開口6へ粉粒体を移動させる移送手段7とを設けてある。この実施形態では移送手段7は複数本のスクリューコンベヤであり、開口6は床板4の一端に形成されている。なお各段毎に開口6の位置を変え、粉粒体が2段以上下まで垂直に落下しないようにしておくものとする。
【0012】
また貯留槽体1の側壁8には、貯留室5から粉粒体を急速排出させるための非常排出口9が各段毎に設けられている。この実施形態ではスクリューコンベヤの逆転方向の移送端を外方に突出させて非常排出口9を形成してある。このため、スクリューコンベヤを正転させたときには粉粒体は開口6に向かって移送されるが、非常時にスクリューコンベヤを逆転させると非常排出口9に向けて移送され、各段から一斉に外部に排出することが可能となる。
【0013】
このように構成された貯留装置は、上端の投入口2から投入された粉粒体を上段から下段に向かって順次移動させ、下端の排出口3から取り出すものであり、この間に粉粒体は徐々に低温酸化等の発熱反応が進行し、養生される。図1に示すように粉粒体は各段の貯留室5に分散されて貯留されるので、体積当たりの放熱面積を広く確保することができ、内部温度が異常に上昇する熱暴走が抑制され、安全な貯留が可能となる。しかも設置面積は小さくてよく、全体が単一の貯留槽体1の内部に収納されているため、多数の小型の貯留槽を多数設置した場合に比較して、建設費が抑制でき、かつ管理が容易である。
【0014】
また仮に内部温度の異常な上昇が検出された場合には、各段のスクリューコンベヤを逆転させることにより粉粒体を非常排出口9に向けて移送し、各段から一斉に外部に排出することができる。この場合の排出速度は、通常運転時のN倍以上(Nは段数)となるので、火災に至ることがない。また、異常上昇した区画からのみ緊急排出することが可能なため、排出時に水散布等によって冷却した場合に、燃料としての価値を失う粉粒体を少なくすることが可能である。
【0015】
なお図3に示すように、床板4に冷却パイプ10を設けて水冷構造としたり、あるいは床板4を中空として空冷可能な構造としたりすれば、各段における放熱効果を高めることができるので、低温酸化等の発熱反応の進行を抑制して内部温度が異常に上昇する熱暴走をより確実に防止することができる。また、冷却機構はスクリューフィーダのスクリュー軸や、サークルフィーダの回転羽根を利用したものとすることもできる。
【0016】
また図4に示すように、貯留槽体1の内部にレベルセンサ11、温度センサ12、酸素センサ13などを設けて粉粒体の状況を監視し、制御装置14によって粉粒体の温度制御手段である加熱装置15、冷却装置16を作動させることができるようにしておけば、低温酸化等の発熱反応の進行をより確実に制御することができる。この場合、加熱装置15としては電熱ヒーターや蒸気加熱装置を使用することができ、冷却装置16としては上記した水冷構造などを使用することができる。さらに制御装置14により移送手段7であるスクリューフィーダ等の作動速度を制御し、粉粒体の移動速度を制御できるようにしておけば、より好ましい。また新鮮な酸素供給源である気体(例えば空気)を供給する気体供給装置を具備すれば、低温酸化等の発熱反応を促進することが可能であり、より好ましい。
【0017】
図5以下に示す第2の実施形態では、貯留槽体1は円筒状であってその内部が床板4により上下多段に区画されている。図6に示すように床板4には粉粒体を下段に落下させる開口6と、非常排出用の開口17とが設けられている。これらは何れも床板4の外周付近にある。貯留槽体1の中心には回転軸18が設けられており、この回転軸18には各段の床板4の直上位置で回転する回転羽根19が設けられている。回転羽根19はその下面に傾斜した多数の送り板20を備えており、各送り板20の下面は床板4に至近位置に達している。送り板20は回転羽根19の正転時に粉粒体を外周方向に移動させる角度となっている。
【0018】
このため回転軸18を回転させると各段の粉粒体は送り板20によって外周方向に押され、開口6から下段に落下する。また非常排出用の開口17は貯留槽体1の側壁8を貫通して外部に延びるシュート式の非常排出口21に接続されている。この非常排出口21は開閉可能なバルブ22により常時は閉鎖されている。しかし内部温度の異常な上昇が検出された場合にバルブ22により各段に非常排出口21を開くと、開口17から落下した粉粒体は各段の非常排出口21から一斉に外部に排出される。この間にも回転軸18は回転させて粉粒体の排出を促進する。また、開口6には異常時に閉じるバルブ24が設置されており、下段の区画に異常な粉粒体が落下するのを防止することができる。バルブ22とバルブ23は一体の構造である切替ダンパとしても良い。
【0019】
なお、段数が多い場合には単一のモータ23により全段の回転羽根19を回転させることが困難となることがある。その場合には、回転軸18を上下に分割し、それぞれを別個のモータにより駆動するようにしてもよい。
【0020】
この第2の実施形態の貯留装置も、上端の投入口2から投入された粉粒体を上段から下段に向かって順次移動させ、下端の排出口3から取り出すこと、この間に粉粒体は徐々に低温酸化等の発熱反応が進行し、養生されること、内部温度が異常に上昇する熱暴走が抑制され、安全な貯留が可能となること、設置面積は小さくてよく、管理が容易であること、内部温度の異常な上昇が検出された場合には、粉粒体を各段から一斉に外部に排出できることは、全て前述の第1の実施形態と同じである。また図7に示すように床板4冷却構造としたり、図4に示したような制御機構を組み込めることも、第1の実施形態と同じである。
【0021】
以上に説明したように、本発明の貯留装置は廃棄物を原料とする炭化物やRDFのような低温酸化等による発熱反応性を有する粉粒体を安全に貯留しつつ徐々に低温酸化等を進行させて養生を行うことができ、排出された粉粒体は安全な製品として直ちに使用先に搬送可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態を示す縦断面図である。
【図2】移送手段を示す水平断面図である。
【図3】変形例を示す縦断面図である。
【図4】他の変形例を示す縦断面図である。
【図5】第2の実施形態を示す縦断面図である。
【図6】移送手段を示す水平断面図である。
【図7】変形例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 貯留槽体
2 投入口
3 排出口
4 床板
5 貯留室
6 開口
7 移送手段
8 側壁
9 非常排出口
10 冷却パイプ
11 レベルセンサ
12 温度センサ
13 酸素センサ
14 制御装置
15 加熱装置
16 冷却装置
17 非常排出用の開口
18 回転軸
19 回転羽根
20 送り板
21 非常排出口
22 バルブ
23 モータ
24 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に投入口、下端に排出口を備えた縦長の貯留槽体の内部を、上下方向に複数段に区画し、各段を発熱反応性を有する粉粒体の貯留室とするとともに、各段の貯留室には粉粒体を下段に落下させる開口と、この開口へ粉粒体を移動させる移送手段とを設け、さらに貯留槽体の側壁には、各段の貯留室から粉粒体を急速排出させる非常排出口を設けたことを特徴とする発熱反応性を有する粉粒体の貯留装置。
【請求項2】
移送手段がスクリューフィーダであり、その逆転方向の移送端に非常排出口が設けられたことを特徴とする請求項1記載の粉粒体の貯留装置。
【請求項3】
移送手段がサークルフィーダの回転羽根であり、貯留槽体の側壁に開閉可能なシュート式の非常排出口が設けられたことを特徴とする請求項1記載の粉粒体の貯留装置。
【請求項4】
貯留槽体の内部を区画する床板と、スクリューフィーダのスクリュー軸と、サークルフィーダの回転羽根との少なくとも一つを、冷却可能な構造としたことを特徴とする請求項2記載の粉粒体の貯留装置。
【請求項5】
貯留槽体に、粉粒体の温度センサと、粉粒体の温度制御手段と、移送手段の速度制御手段とを設けたことを特徴とする請求項1記載の粉粒体の貯留装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−302449(P2007−302449A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134630(P2006−134630)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】