説明

粒子ビーム装置および方法

【課題】粒子ビームを用いて試料の構造に関する情報を得るための検査方法において、試料から放出された電子およびx線から試料に関する情報を得ることができる検出方法および検査装置を提案する。
【解決手段】検査方法は、試料に粒子ビームを集束するステップと、試料に隣接して配置した少なくとも1つの検出器を作動するステップと、少なくとも1つの検出器によって生成した検出信号を異なった強度間隔に割り当てるステップと、強度間隔に割り当てた検出信号に基づいて、検出器に入射した電子に関連した少なくとも1つの第1信号成分を決定するステップと、強度間隔に割り当てた検出信号に基づいて、検出器に入射したX線に関連した少なくとも1つの第2信号成分を決定するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、ドイツ国で2009年8月7日に提出された「粒子ビーム装置および検査方法」と称する特許出願第102009036701.2号明細書の優先権を主張し、その開示内容全体は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、粒子ビーム、例えば電子ビームおよびイオンビームを用いた粒子ビーム装置、および粒子ビームを用いて試料の構造に関する情報を獲得するための検査方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の粒子ビーム顕微鏡は、一次粒子ビームを生成するための粒子ビーム源および電子検出器を備える。このような粒子ビーム顕微鏡の例は、電子ビーム源を有する電子顕微鏡およびイオンビーム源を有するイオン顕微鏡を含む。電子顕微鏡は、試料に入射した一次粒子ビームによって生成されたX線を検出するためのX線検出器を有している場合もある。X線は、試料に含まれる化学素子を示す特徴的なX線を含み、X線検出器によって生成された検出信号を分析することによって試料の元素組成を決定することができる。分析は、検出したX線のエネルギー分析を含む。このような方法は、エネルギー分散型X線分光法(EDX)として既知である。
【0004】
X線検出器を有する従来の電子顕微鏡は、米国特許出願公開第20060138325号明細書(特許文献1)により既知である。この顕微鏡のX線検出器は、試料から発せられ、試料に集束した一次電子ビームによって試料で発生したX線を検出する。一次電子ビームは、試料から放出される二次電子を生成するので、X線検出器は、二次電子がX線検出器で検出信号を発生させることを防止する電子トラップを含む。電子トラップは、電磁式電子トラップを備えていてもよい。
【0005】
電子検出とX線検出と複合的に用いて検出方法および検出装置を改善することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第20060138325号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、試料から放出する電子およびX線の両方から試料に関する情報を獲得することができる検出方法および検出装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来の粒子ビーム装置では、試料から放出する電子およびX線を検出するために別個の検出器を用いる。しかしながら、試料の近傍に両方の検出器を配置することは不可能である。なぜなら、X線検出器の磁気式電子トラップは一次粒子ビームの集束に影響を及ぼすか、または空間を占有し、試料の近傍に電子検出器を配置することを妨げるからである。また試料の近傍に電子検出器とX線検出器とを交代で配置し、試料の近傍に配置したX線検出器を用いて試料の第1検査を行い、試料の近傍に配置した電子検出器を用いて第2検査を行うことも考慮されてきた。しかしながら、2つの検出器は集束された一次電子に異なる影響を及ぼし、2つの検査で得た試料の構造に関する情報を結びつけることが困難となるといった問題が生じた。
【0009】
本発明の実施形態では、電子およびX線の両方を検出できる1つの検出器が用いられ、この検出器は試料の近傍に配置される。検出器は、入射電子およびX線に対応した検出信号を生成する。多数の検出信号を分析することにより、検出器に入射した電子に関する信号成分を、検出器に入射したX線に関する信号成分から分離することが可能である。
【0010】
本発明の実施形態では、検出信号の分析は、検出信号の強度スペクトルまたはエネルギースペクトルを分析するステップを含む。
【0011】
本発明の実施形態では、検出信号の分析は、強度間隔に割り当てた検出信号に基づいて、検出器によって生成された検出信号を複数の異なる強度間隔に割り当てるステップと、検出器に入射した電子に関連した少なくとも1つの第1信号成分を決定するステップと、強度間隔に割り当てた検出信号に基づいて、検出器に入射したX線に関連した少なくとも1つの第2信号成分を決定するステップとを含む。
【0012】
本明細書では、検出器によって生成された検出信号は強度に関して変化するように構成されていてもよいものとし、強度は検出事象の強度に関係する。検出事象が検出器に入射した電子である場合、強度は検出器に入射した電子の動的エネルギーに関係する。したがって、検出信号の強度は、検出した電子の動的エネルギーを表す。同様に、検出事象が検出器に入射したX線である場合、検出信号の強度は、入射したX線のエネルギーを表す。
【0013】
様々な検出信号は強度に関して異なる。なぜなら、これらの検出信号は、検出器のタイプに応じて、電圧、電流、電気抵抗、電荷量または検出器の出力時の他の異なる効果を生じるからである。異なる電圧、電流、抵抗、電荷量およびその他の効果を検出器の出力部に接続した電気回路によって増幅し、変換し、さらに処理することができる。
【0014】
本発明の実施形態では、検出器の検出信号は強度間隔に割り当てられている。強度間隔は、検出事象のエネルギー間隔に対応していてもよい。強度間隔は部分的にオーバーラップしてもよいし、または強度間隔は相互に関連していなくてもよい。
【0015】
本発明の実施形態では、それぞれの強度間隔に計数器を割り当て、各強度間隔内の強度を有する検出信号の数を数える。
【0016】
本発明の実施形態では、マルチチャンネル分析器を用いて、検出信号を強度間隔に割り当てることができる。
【0017】
各強度間隔に割り当てた検出信号を計数することによって検出事象のエネルギースペクトルを決定することができ、例えば、強度間隔の増大する強度に応じて計数を表示する。
【0018】
エネルギースペクトルは、2つの事象、すなわち、検出器への電子の入射および検出器へのX線の入射を表す。入射電子は、数keVの最大値および幅を有する広いスペクトルピークをもたらす。入射X線は、1keV未満の最大値および幅を有する1つ以上のスペクトルピークをもたらす。電子事象およびX線事象の異なるスペクトル特性によるエネルギースペクトルの分析に基づいて、検出器に入射した電子に関連した信号成分を、検出器に入射したX線に関連した信号成分から分離することができることが明らかである。エネルギースペクトルの概念は、X線に関連した信号成分からの電子に関連した信号成分の分離を理解するためにたいへん役立つが、実際にエネルギースペクトルを明確に決定することは不要である。エネルギースペクトルを決定することなしに、異なる強度間隔への検出信号の割り当てに基づいて、対応した分析を直接に行うことが可能である。
【0019】
本発明の実施形態では、試料に含まれる少なくとも1つの化学元素は、検出器に入射したX線に関連した少なくとも1つの信号成分、および、強度間隔に割り当てた検出信号に基づいて決定される。エネルギースペクトルとしての表示では、X線に関連した信号素子の狭い最大値は、粒子ビームを集束した位置における試料に化学元素が存在することを示す。エネルギースペクトルの最大値を分析することによって試料のこの位置に存在する化学倹素を決定することが可能である。エネルギースペクトルを計算することなしに、異なる強度間隔に検出信号を割り当てることによって試料の位置に存在する化学元素を決定することが可能である。
【0020】
本発明の実施形態では、続いて、集束した粒子ビームは試料の複数の異なる位置に向けられる。本発明の特別な実施形態によれば、集束した粒子ビームは試料を横断してスキャンされる。
【0021】
本発明の他の実施形態では、上記のような方法を異なる場所でそれぞれ実施し、粒子ビームを集束するそれぞれの位置について、複数の検出信号が強度間隔に割り当てられ、電子に関連した信号成分をX線に関連した信号成分から分離する。電子に関連した信号成分は試料の電子顕微鏡画像を表し、X線に関連した信号成分は試料の元素組成の画像またはマップを表す。これらの画像は、個別に表示するか、または相互に重ねて表示することができる。
【0022】
本発明の実施形態では、試料に隣接して複数の検出器が配置されている。複数の検出器は、試料に対する位置に関して異なっていてもよい。例えば、異なる検出器が、試料に対して異なる立体角をカバーしてもよい。異なった検出器の検出信号から得た情報を用いて、試料の3次元構造を決定してもよい。
【0023】
複数の検出器は、電子およびX線を検出するための検出感度に関して異なっていてもよい。本発明の実施形態では、検出器と試料との間に薄膜が配置されており、薄膜は、電子およびX線の透過特性に関して異なっている。本発明の実施形態では、薄膜は厚さまたは化学組成に関して異なっている。
【0024】
本発明の上記特徴および他の有利な特徴が、添付の図面を参照した以下の例示的な実施形態の詳細な説明により明らかである。全ての可能な実施形態が、本明細書に記載の全ての、またはいずれかの利点を必ずしも示すわけではないことを述べておく。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、粒子ビームを用いて試料の構造に関する情報を獲得するための検査方法および検査装置において、試料から放出した電子およびx線から、試料に関する情報を得ることができる検出方法および検出装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】一実施形態による粒子ビーム装置を示す概略図である。
【図2】図1に示した粒子ビーム装置の検出器を示す図3のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図2に示した検出器を底部から見た平面図である。
【図4】図2および図3に示した検出器の薄膜における電子の透過率を示すグラフである。
【図5】図2および図3に示した検出器の薄膜におけるX線の透過率を示すグラフである。
【図6】図2および図3に示した検出器による計数率を示すグラフである。
【図7】電子およびX線による計数率を示すグラフである。
【図8】一実施形態による検査方法を示すフローチャートである。
【図9】別の実施形態による粒子ビーム装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に示す例示的な実施形態では、機能および構造が類似した構成素子にはできるだけ類似した参照番号を付す。したがって、特定の実施形態における個別の構成素子の特徴を理解するためには、他の実施形態および発明の概要を参照されたい。
【0028】
図1は、粒子ビーム装置1の例示的な実施形態を示す。粒子ビーム装置1は、一次電子ビーム13を生成するために、カソード7および引出・抑制電極9を有する電子ビーム源5を備える。一次粒子ビーム13は、コンデンサレンズ11、電子検出器17に設けた開口15および一次粒子ビーム13を物体平面23に集束するための対物レンズ19を横断する。検査すべき物体25の表面は物体平面23に配置されている。
【0029】
対物レンズ19は、リング状上側極片31およびリング状下側極片32を有するリング状ヨークに設けたリングコイル27を備え、リング状ギャップが上側極片31と下側極片32との間に形成されている。電子ビーム13を生成するための磁界がこのギャップに生成される。
【0030】
粒子ビーム装置1は、対物レンズ19内に突入して対物レンズを部分的に貫通するビーム管35をさらに含む。終端電極37がビーム管35の底部に設けられている。端子電極36が終端電極37と物体平面との間に配置されており、終端電極37と端子電極36との間に生成された静電界は、一次電子ビーム13に集束力をもたらす。電極36および37の間の静電界によって生じた集束力および極片31および32の間の磁界によって生じた集束力は、共に粒子ビーム装置1の対物レンズ19の集束力をもたらす。
【0031】
コントローラ39は、端子電極36、終端電極37,カソード7、および引出・抑制電極9に適宜な電圧を供給し、電子ビームを物体平面に集束するために設けられている。
【0032】
これらの電圧は、位置21で物体25に入射した場合に一次電子ビームの電子が所定の動的エネルギーを有するように選択することができる。コントローラ39は地電位に相当する電圧または地電位とは異なる電圧を端子電極36に供給することが特に可能である。
【0033】
対物レンズ19はさらに偏光器41を含み、偏光器41は同様にコントローラ39によって制御され、コントローラ39は、一次電子ビーム13を偏向し、一次電子ビーム13が物体平面23で物体25に入射する位置21を変化させる。一次電子ビーム13を偏向することによって、特に物体25の表面の一部を横断して一次電子ビームを体系的に走査することが可能である。
【0034】
物体25に入射した一次粒子ビームは、物体25から放出する二次電子をもたらす。このような二次電子の一部はビーム管35に進入し、電子検出器17によって検出される。本発明においては、「二次電子」という用語は、一次電子ビームを物体に向けることによって物体から放出され、電子検出器17によって検出することのできるあらゆる種類の電子を含む。二次電子は、特に後方散乱電子を含み、後方散乱電子は、物体に入射した一次粒子の動的エネルギーに相当するか、または幾分小さい動的エネルギーを有する。さらに「二次電子」という用語は、物体の表面からの放出時に、物体に入射した一次粒子の動的エネルギーよりも実質的に小さい動的エネルギーを有する二次電子を含む。図1では、電子検出器17に入射した二次電子の例示的な軌跡を符号43で示している。
【0035】
粒子ビーム装置1は、対物レンズ19と物体平面23との間に配置した検出器47をさらに備える。検出器47は、一次電子ビームおよび二次電子43が検出器47を横断することを可能とする中央開口49を備える。検出器47は、対物レンズの主軸12から半径方向の間隔をおいて配置した複数の検出面51を備える。検出器47は、物体平面に入射した一次電子ビーム13によって生成された二次電子およびX線の両方を検出するように構成されている。位置21で一次電子ビームによって生成され、検出器47に入射した二次電子またはX線の例示的な軌跡を図1に参照番号53で示す。
【0036】
検出器47の構成を図2に断面図で示し、図3に底部から見た平面図で示す。検出器47はリング状キャリアを備え、このリング状キャリアは、一次粒子ビーム13および二次電子43を通過させる開口49を提供する中央孔を有する上部プレート55を含む。4つの半導体検出器がプレート55の底面の取り付けられており、それぞれの半導体検出器57の検出面59は物体平面23に向けられている。薄膜または窓61がそれぞれの半導体検出器57の検出面59の前方に取り付けられている。薄膜61は、半導体検出器57の検出面59における二次電子の入射を少なくとも部分的に防止する機能を有する。図2に示す例示的な実施形態では、薄膜61は検出面59からわずかな距離をおいて配置されている。しかしながら、薄膜は、半導体検出器の検出面に薄膜層として接触しているか、または直接に取り付けられ、半導体検出器によって支持されていてもよい。
【0037】
半導体検出器は、ドイツ、ベルリンのブルカーAXSマイクロアナリシス社(Bruker AXS Microanalysis GmbH)からXflash(登録商標) QUADの製品名で入手可能な検出器等のシリコンドリフト検出器であってもよい。
【0038】
薄膜61は、容易に取り外し、他の薄膜と交換することができるように、半導体検出器またはリング構造部に着脱可能に取り付けることもできる。図2および図3に示す例示的な実施形態は、プレート55に設けた軸線方向の突起63を有する。突起63は、薄膜61を支持し、検出器47に取り付けるように構成した半径方向延在部65備える。例えば薄膜61は、半径方向延在部65と、プレート55に設けた軸線方向に延在する環状突起66との間にクランプすることができる。
【0039】
図2および図3に示した実施形態では、X線検出器57は、開口49の周囲に分配した4つの四分円の形態で配置した4つの別個の半導体検出器57を備える。4つの半導体検出器57は、それぞれが同じ形態および同じ特性を有し、4つの半導体検出器57の検出信号はコントローラ39によって別個に受信される。
【0040】
図2および図3に示した実施例では、検出器の検出表面はリング状であり、一次ビームにより横断され、物体45の表面における粒子ビーム13が入射する位置21の近傍に配置されている。しかしながら、他の形態の検出器を使用することも可能である。例えば、検出器の検出表面は、電子ビーム13を取り囲むことなしに、位置21の近傍に配置することもできる。この場合、検出器は電子およびX線を検出するために位置21の近傍に配置した複数の別個の検出面を備えていてもよい。複数の検出面の前方に異なる薄膜を配置し、それぞれの検出器におけるX線の検出効果に対して電子の検出効果を変化させることもできる。さらに検出面は位置21に対して異なる立体角をカバーしてもよく、異なる検出器の検出信号を分析することにより、試料の3次元構造を決定することが可能となる。
【0041】
また4つの検出器57は全て、電子およびX線について同じ検出特性を有していてもよい。この場合、これらの検出器は、試料における位置21に対して異なる立体角をカバーする点において異なっている。検出器は、位置21における試料の面の配向に応じて信号を検出する。検出器の検出信号は、試料の3次元構造を決定するために使用してもよい。このような3次元構造の決定に関する背景技術情報が文献"Three-Dimensional Characterization of Microstructures in a SEM", Wlodzimierz Drzazga et al., Meas. Sci. Technol. 17 (2006), pages 28-31に記載されている。
【0042】
図示の実施例では、4つの半導体検出器の検出面59の前方に配置した4つの薄膜61は、異なる特性を有する。種類の異なる2つの薄膜が設けられている。図3に参照番号61で示した2つの薄膜は、図3に参照番号61′で示した他の2つの薄膜よりも大きい二次電子透過性を有している。
【0043】
異なる二次電子透過性を有する種類の異なる2つの薄膜は、検出器における二次電子の検出率を変更するために設けられている。
【0044】
薄膜61は、X線透過率が高くなるように低い原子番号を有する元素を含む材料から作製することもできる。全ての薄膜を同じ材料から異なった厚さで作製し、異なった二次電子透過率を提供するようにしてもよい。薄膜は、例えばポリエステルから作製することもできる。適宜なポリエステルの例は、ポリエチレンテレフタレート-ポリエステル等のテレフタレート-ポリエステルを含む。適宜な薄膜は、米国、ウィルミントン、デュポン社からマイラーの商品名で入手可能である。薄膜の適宜な厚さは、例えば0.2μm〜50μm、特に1.0μm〜10μmの範囲内である。他の適宜な薄膜が、米国、オーレム、モックステック社からAP3.3の商品名で入手可能である。例えばベリリウムにより、さらに他の薄膜を作製することができる。
【0045】
図4および図5を参照して以下に説明する例示的な実施形態では、より大きい電子透過率を有する薄膜がAP3.3材からなる1μmの厚さを有する膜によって提供され、低い電子透過率を有する薄膜が、マイラー材からなる厚さ6μmの膜によって提供される。
【0046】
図4は、数値シミュレーションによって得られる2つの薄膜における電子の動的エネルギーに関係した電子透過率を示すグラフである。
【0047】
図5は、数値シミュレーションによって得られる2つの薄膜におけるX線の動的エネルギーに関係した電子透過率を示すグラフである。
【0048】
図6を参照して説明する以下の実施例では、より大きい電子透過率を有する膜は、マイラー材からなる厚さ1μmの膜によって提供され、同じマイラー材からなる厚さ6μmの膜によって提供される。
【0049】
図6は、図1に示した粒子ビーム装置1の検出器47を使用した実施例で測定した計数率を示すグラフである。この実施例では、一次電子ビームはマンガン(Mn)からなる試料に向けられる。図6に示すグラフは、前方に薄膜を配置した半導体検出器によって所定時間内に記録された検出事象数および前方に厚膜を配置した半導体検出器によって所定時間内に記録された検出事象数を示す。それぞれのグラフは、試料に入射した一次ビームの動的エネルギーに関係してプロットされている。
【0050】
図6から明らかなように、電子は厚膜のエネルギースペクトルには実質的に寄与しない。なぜなら、このスペクトルは、実質的にマンガンの狭いピーク特性しか含まず、低エネルギーでは少量の制動放射しか見られないからである。薄膜については、スペクトルは、特徴的なX線および上記制動放射の成分ならびに検出器によって検出された後方散乱電子に関連した付加的成分など多数の成分を含む。後方散乱電子は約9keVで広域最大値を示し、一次ビームの粒子のエネルギーは本実施例では15keVなので、14keVを超えると実質的に事象は計数されない。
【0051】
電子およびX線のスペクトル特性が異なるため、検出面の前方に薄膜を配置した検出器によって検出した検出事象のスペクトルの分析に基づいて電子およびX線を相互に分離することが可能である。薄膜によって得たスペクトルにおける狭いピークを同定し、スペクトルから狭いピークを差し引いて、主に後方散乱電子に関連した成分のみが残るようにすることが可能である。制動放射に関連した成分を考慮することによりこの結果をさらに改善することができる。この成分は、シミュレーションにより比較的高精度に予測し、スペクトルから差し引くことができ、残りのスペクトルは、さらに高い精度で後方散乱電子に関連した信号成分に対応する。
【0052】
図7は、図6に示した薄膜のスペクトルをこのような分析の結果を示す。図7の実線はX線スペクトルを示し、図7の破線は後方散乱電子スペクトルを示す。
【0053】
スペクトルが表す化学元素を決定するためにX線スペクトルをさらに分析することができる。試料の元素組成に関するX線スペクトルの分析に関連した背景技術情報は、L. Reimer著, "Scanning Electron Microscopy", Second Edition, Springer 1998の第10.1章および第10.2章から得られる。
【0054】
図7に示した後方散乱電子のスペクトルにおける総体または総和は従来の電子顕微鏡で使用する後方散乱電子(BSE)信号に対応する。
【0055】
偏向器41を制御することにより、粒子ビーム13を試料の異なった複数の位置に向けることが可能であり、エネルギースペクトルをこれらそれぞれの位置で記録することができ、それぞれのエネルギースペクトルは、電子に関連した信号成分およびX線に関連した信号成分を含む。それぞれの位置についてエネルギースペクトルを分析し、BSE信号を獲得し、複数の位置におけるBSE信号に基づいて試料の電子顕微鏡画像を生成し、表示することができる。同様に、それぞれの位置について記録したエネルギースペクトルからX線に関する信号成分を獲得することができる。X線に関連した信号成分から元素組成を決定することができる。複数の位置における化学組成に関する情報を用いて試料の化学組成のマップを作成することができる。このようなマップは、カラー表示のモニターなどの表示手段に表示することができ、異なる色は異なる化学元素を表す。化学組成のマップを電子顕微鏡画像に重ねて表示することも可能である。検出器が、一次電子ビームの入射する位置21における異なる立体角をカバーする複数の検出面を有している場合、複数の検出面の異なる信号成分から試料の3次元表面を決定することも可能である。3次元構造を表示手段に表示することもでき、元素組成に応じて3次元構造の表示を色付けすることが可能である。
【0056】
検査方法の一実施形態を図8に示したフローチャートを参照して以下に要約する。この方法は、集束した粒子ビームによって試料の表面の走査手段を決定するステップを含む。例えば、蛇行路に沿って集束ビームを走査し、ライン毎に走査することができる。走査を開始する試料における位置の初期値を初期ステップ101で決定する。位置は試料のx,y座標に基づいて、または他の適宜な座標系に基づいて決定することができる。開始位置の決定に続いて、ステップ109で次の位置が決定されるまでステップ103,105および107を繰り返し行い、次の位置についてステップ103,105および107を再び行う。試料の走査が終了した場合、ステップ109は、103,105,107および109の繰り返しの終了を含んでいてもよい。ステップ103では、集束した粒子ビームが試料における位置x,yに向けられる。ステップ105では、この位置に関連したエネルギースペクトルS(x,y)が検出器の検出信号の読出しにより記録される。エネルギースペクトルS(x,y)は、位置O(x,y)から放出した電子に関する信号成分および位置O(x,y)から放出したX線に関する信号成分を含む。ステップ107では、記録したスペクトルS(x,y)が記憶手段111、例えばコンピュータのディスクドライブに記憶される。
【0057】
記憶されたスペクトルは、ステップ101〜ステップ109に従った走査の終了後または走査中に分析される。このために、コンピュータはステップ201で第1スペクトルを読出し、ステップ209で後続のスペクトルを読出し、走査中に記録したすべてのスペクトルが分析されるまで、読み出したスペクトルをステップ211〜ステップ221で分析する。エネルギースペクトルをステップ211で分析し、スペクトルに含まれる信号成分を決定する。ここでは、ステップ213で後方散乱電子に関連した信号成分をエネルギースペクトルから抽出し、ステップ217でX線に関連した信号成分をエネルギースペクトルから抽出する。
【0058】
ステップ213は、後方散乱電子に関する信号成分を統合し、位置O(x,y)に関連したBSE値を決定することを含む。ステップ215で、BSE値BSE(x,y)を記憶手段111に記憶する。ステップ219で、X線に関連した信号成分R(x,y)を分析し、位置O(x,y)における化学元素の量Cを決定する。ステップ221で、決定した量C(x,y)を記憶手段111に記憶する。ステップ101〜109におけるスペクトルの記録手順およびステップ201〜221におけるスペクトルの分析手順は、図8に示したフローチャートでは独立して行う。しかしながら、ステップ105で記録したスペクトルを記憶手段111に記憶することなしに分析ステップ211に直接に伝達することも可能である。
【0059】
ステップ301で、異なる位置O(x、y)に関連したBSE値BSE(x,y)に基づいて、走査した試料の電子顕微鏡画像を生成することが可能である。ステップ303で、値C(x,y)から画像を生成し、この画像は、試料における化学元素の分布を示す。ステップ301および303で生成した画像は、粒子ビーム装置のディスプレイ81(図1)に表示することができる。さらにステップ301および303で生成された画像を重ね、ステップ305で共通の画像を形成し、このような画像をディスプレイ81に表示することが可能である。このような表示は、異なる色を異なる化学元素iに関連付け、異なる色の強度として量Cを表示することによって行うことができる。
【0060】
検出器が、粒子ビームが入射した位置に対して異なった立体角をカバーする複数の検出表面を有する場合、ステップ307で試料の3次元構造を決定することが可能である。ステップ309で、試料の3次元構造の画像を試料の化学組成に重ねる。これもまた、異なる色を異なる化学元素に関連付け、これらの色に応じて3次元画像を色付けすることによって行うことができる。
【0061】
検査方法および検査装置の実施形態により、後方散乱電子およびX線の同時検出が可能となる。後方散乱電子に関連した信号成分およびX線に関連した信号成分を、一次電子ビームが入射した位置により規定された試料における同じ位置に関連付けることができる。ここでは、後方散乱電子は一般にX線が放出する容積よりも小さいこの位置周辺の容積から放出する。これは、一般にBSE画像がEDX画像よりも良好な空間解像度を有する理由である。しかしながら、本発明の実施形態によれば、検出したEDX画像の空間解像度を改善することが可能である。例えば、第1化学元素からなる試料が、第2化学元素により形成された狭い帯域を含み、この狭い帯域の幅が、EDX画像の空間解像度よりも小さいが、BSE画像の空間解像度よりも大きい場合、第2化学元素に関連した検出信号が、BSE画像から決定した幅を有する狭い帯域にのみ由来し得るということをBSE画像から結論付けることができる。この情報はEDX画像を改善するために使用することができ、狭い帯域の幅が、減少して画像に表示された第2化学元素に対応する。
【0062】
X線は、後方散乱電子より大きい試料容積から放出するので、試料の表面の下側に位置し、後方散乱電子のみを用いた場合には検出されないであろう試料の欠陥を検出することも可能である。さらにBSE画像を分析することによって、試料における欠陥が潜在的に存在する領域を同定し、この領域に関連した対応X線スペクトルを分析することによってこのような欠陥の有無を確認することが可能である。
【0063】
図9は、物体の製造方法で使用することのできる粒子ビーム装置71の概略図である。粒子ビーム装置71は、図1に示した粒子ビーム装置に類似した構成を有している。粒子ビーム装置1は粒子ビーム源5を備え、粒子ビーム源5は、レンズ11,29を介して位置21で集束させることのできる粒子ビーム13を生成する。粒子ビーム装置71は、同様に位置21で二次粒子ビーム72を集束させるように構成した第2粒子ビーム装置73をさらに備える。図示の実施例では、粒子ビーム装置73は、イオンビーム75を形成し、加速させるイオン源77および電極79、ビーム偏光器81、ならびに位置21でイオンビーム75を集束させ、位置21の周辺領域にわたってビームを走査するための集束コイルまたは集束電極83を備えるイオンビーム装置である。粒子ビーム75および13は、異なる入射角で試料21における共通の領域に入射し、偏光器81および41を制御することによって、これら領域にわたってそれぞれ走査することができる。粒子ビーム75,13の方向がなす角度は、例えば45°である。2つの粒子ビーム75,13を提供する従来の装置の実施例が、米国特許出願公開第2005/0184251号明細書、米国特許第6,855,938号明細書に記載されており、その全開示内容は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0064】
図9を参照して説明した粒子ビーム装置は、粒子ビーム75を使用して試料21から薄板または薄層22を製造する方法で使用することができる。薄い材料板または薄層22は、透過型電子顕微鏡を用いた後続の検査で試料として使用することができる。このために、薄層は1000nm未満、500nm未満または200nm未満の厚さを有していることが望ましい。このような薄い材料板または薄層の従来の製造方法が、国際公開第2008/051937号または国際公開2008/051880号明細書により既知であり、その全開示内容は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0065】
このような方法では、薄層22は、試料25のバルク材料からエッチングにより製造される。エッチングは、リザーバ84から供給管85を介して薄層22に向けて反応性ガスを供給するステップを含む。反応性ガスは薄膜に隣接したイオンビーム75によって活性化され、試料22におけるイオンビーム75が入射する位置に隣接した領域で試料22と反応する。このような反応により、試料の材料は試料から解放され、粒子ビーム装置の真空システムを介して除去される。したがって、イオンビーム装置73を作動し、供給管85を介して反応ガスを供給することにより、試料における選択した領域から材料を除去することが可能である。粒子ビーム装置1を用いて、処理中の薄層もしくは試料22の電子顕微鏡画像を獲得することにより、このようなプロセスを観察するこができ、このような電子顕微鏡画像は、連続的に記録するか、または所定数のエッチングステップ後に記録することができる。このようなプロセスでは、粒子ビーム装置1は結像手段として使用される。
【0066】
このような方法で、後方散乱電子に関連した検出信号成分およびX線に関連した検出信号成分に基づいて処理中の薄層の厚さを決定することができる。このために、粒子ビーム13は薄膜の表面における所定位置に向けられる。発生した後方散乱電子の強度は薄層の厚さを表す。なぜなら、薄膜の比較的厚い部分に入射し、横断するビームの粒子は、薄膜の比較的薄い部分に入射し、横断する粒子ビームよりも大量の後方散乱電子を生成するからである。しかしながら、後方散乱電子の量は、薄膜の厚さのみならず、薄膜の化学組成にも関係している。なぜなら、異なる化学元素は、粒子ビーム13の照射時に異なる量の後方散乱電子を生成するからである。本実施形態では、粒子ビーム13の入射位置における薄層の化学組成は、X線に関連した検出信号成分を分析することにより決定することができる。
【0067】
したがって、薄層の表面における所定位置に粒子ビームを配向し、X線に関連した信号成分の分析に基づいて、試料における粒子ビームの入射位置で薄層の化学組成を決定することが可能である。化学組成に関する情報は、後方散乱電子の強度を分析し、ビーム13の入射位置における薄層の厚さを最終的に決定するために用いることができきる。決定した薄層の厚さに基づいて、粒子ビーム装置73を作動させ、その位置から材料をさらに除去するべきか否かを決定することが可能である。
【0068】
薄層の化学組成は位置によって変化するので、化学組成を考慮して全ての位置における薄層の厚さを比較的高精度で決定することが可能である。
【0069】
上述の製造方法では、材料の除去は、検出した電子強度および検出したX線強度に基づいて制御される。図1〜図7を参照して上述したように、検出した電子強度および検出したX線強度を獲得するために検出器を使用することができる。このような検出器が図9に符号47で示されており、粒子ビーム装置71は、矢印91で示したアクチュエータによって側方に変位させることのできるプレート89をさらに備える。プレート89は、図9に示すように選択的に、検出器47の前方に位置決めすることができる。粒子ビームが入射した位置22から見た場合に、検出器47の前方位置で、プレート89は検出器47を覆う。この場合、プレート89は、粒子ビーム装置73の作動により試料から放出した小さい粒子が検出器49に入射し、検出器49を損傷することを防止する。このような保護プレート89に対して代替的または付加的に、粒子ビーム装置73の作動時に試料に隣接した測定位置から検出器47を取り外すことも可能である。
【0070】
上記実施例では、電子強度およびX線強度の双方を検出するために検出器47を使用する。しかしながら、別個の検出器、すなわち、電子を検出するために最適化されており、実質的にX線を検出しない電子検出器と、X線を検出するための最適化されており、実質的に電子を検出しない別個のX線検出器を使用することも可能である。
【0071】
図9を参照して上述した粒子ビーム装置は、材料を除去するため、および材料の除去を観察するために別個の粒子ビームシステムを使用する。しかしながら、集束イオンビームおよび反応性ガス供給を組み合わせたものとは異なる装置を使用して材料除去を行うことも可能であり、材料除去を行う装置と、材料除去を監視するために結像を行うシステムとを分離することができ、この場合、材料除去用装置と結像用装置との間で試料を前後に搬送することができる。
【0072】
所定の例示的な実施形態に関して本発明を説明したが、多くの代替的な形態、改良形態、変化形態が当業者には自明である。したがって、本明細書に記載した本発明の例示的な実施形態は、明示的なものであり、決して限定的なものではない。以下の請求項に記載の本発明の精神および本発明の範囲から逸脱することなしに多くの変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 粒子ビーム装置
5 電子ビーム源
7 カソード
9 引出・抑制電極
11 コンデンサレンズ
13 一次粒子ビーム
15 開口
17 電子検出器
19 対物レンズ
21 位置
22 試料
23 物体平面
25 物体
27 リングコイル
31 上側極片
32 下側極片
35 ビーム管
36 端子電極
37 終端電極
39 コントローラ
41 偏光器
43 二次電子
47 検出器
49 中央開口
51 検出面
53 軌跡
55 プレート
57 検出器
59 検出面
61,61′ 薄膜
63 突起
65 半径方向延在部
66 環状突起
71,73 粒子ビーム装置
75 イオンビーム
77 イオン源
79 電極
81 ディスプレイ
83 集束電極
84 リザーバ
85 供給管
89 プレート
91 矢印
101,103,105,107,109 ステップ
111 記憶手段
201,209,211,213,217,219,221 ステップ
301,303,305,307,309 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に粒子ビームを集束するステップと、
試料に隣接して配置した少なくとも1つの検出器を作動するステップと、
前記少なくとも1つの検出器によって生成した検出信号を異なる複数の強度間隔に割り当てるステップと、
前記強度間隔に割り当てた前記検出信号に基づいて、前記検出器に入射した電子に関連した少なくとも1つの第1信号成分を決定するステップと、
前記強度間隔に割り当てた前記検出信号に基づいて、前記検出器に入射したX線に関連した少なくとも1つの第2信号成分を決定するステップと
を含むことを特徴とする検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の検出方法において、
前記検出信号の強度に関係して前記検出信号をスペクトルとして表した場合、前記第1信号成分をスペクトルの広いピークに対応させ、前記第2信号成分をスペクトルの狭いピークに対応させる検査方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の検出方法において、
少なくとも1つの前記第2信号成分に基づいて、試料に含まれる少なくとも1つの化学元素を決定するステップをさらに含む検査方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の検査方法において、
試料の異なる複数の位置に前記粒子ビームを集束させるステップをさらに含む検査方法。
【請求項5】
請求項4に記載の検査方法において、
試料の複数の位置それぞれについて、少なくとも1つの前記第1信号成分に基づいて決定される少なくとも1つの第1の値を記録し、少なくとも1つの前記第2信号成分に基づいて決定される少なくとも1つの第2の値を記録するステップをさらに含む検査方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の検査方法において、
試料の電子顕微鏡画像を表す第1マップと、試料の元素組成の画像を表す第2マップとを生成するステップをさらに含む検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載の検査方法において、
前記第1マップと前記第2マップとを相互に重ねてディスプレイ手段に表示するステップをさらに含む検査方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の検査方法において、
少なくとも1つの検出器として半導体検出器を用いる検査方法。
【請求項9】
請求項8に記載の検査方法において、
前記半導体検出器としてシリコンドリフト検出器を用いる検査方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の検査方法において、
試料と少なくとも1つの前記検出器との間に少なくとも1つの薄膜を配置する検査方法。
【請求項11】
請求項10に記載の検査方法において、
第1検出器および第2検出器を作動し、試料と前記第1検出器との間に第1薄膜を配置し、試料と前記第2検出器との間に第2薄膜を配置し、前記第1薄膜と前記第2薄膜とが厚さおよび元素組成の少なくともいずれかに関して異なるようにする検査方法。
【請求項12】
請求項11に記載の検査方法において、
前記第2薄膜の厚さを、前記第1薄膜の厚さよりも少なくとも1.1倍大きくする検査方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の検査方法において、
前記第2薄膜における化学元素の濃度を、前記第1薄膜における化学元素の濃度よりも少なくとも1.1倍大きくする検査方法。
【請求項14】
請求項11から13までのいずれか一項に記載の検査方法において、
前記第1検出器によって生成した検出信号を複数の異なる第1強度間隔に割り当てるステップと、
前記第2検出器によって生成した検出信号を複数の異なる第2強度間隔に割り当てるステップと、
前記第1および第2強度間隔に割り当てた前記検出信号に基づいて、前記第1および第2検出器に入射した電子に関連した少なくとも1つの第1信号成分を決定するステップと、
前記第1および第2強度間隔に割り当てた前記検出信号に基づいて、前記第1および第2検出器に入射したX線に関連した少なくとも1つの第2信号成分を決定するステップとを含む検査方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか一項に記載の検査方法において、
前記複数の検出器を作動し、前記異なった検出器の前記検出信号から決定した前記信号成分に基づいて、試料の3次元構造を決定するステップを含む検出方法。
【請求項16】
一次粒子ビームを生成するように構成された粒子ビーム源と、
物体平面に前記一次粒子ビームを集束するように構成された対物レンズと、
少なくとも1つの検出器を備え、前記対物レンズと前記物体平面との間に配置された検出装置と、
前記少なくとも1つの検出器の出力信号を分析し、電子強度を表す第1の値および元素組成を表す第2の値を出力するように構成されたコンピュータと
を備えることを特徴とする粒子ビーム装置。
【請求項17】
請求項1から15までのいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されていることを特徴とする粒子ビーム装置。
【請求項18】
小型の物体を製造する方法において、
物体の1つの領域に粒子ビームを集束するステップと、
前記物体に隣接して配置された少なくとも1つの検出器を作動するステップと、
前記少なくとも1つの検出器から受信した検出信号に基づいて、前記粒子ビームにより前記物体から放出した電子量を決定するステップと、
前記少なくとも1つの検出器から受信した検出信号に基づいて、前記粒子ビームにより前記物体から放出したX線量を決定するステップと、
決定した電子量およびX線量に基づいて前記物体から材料を除去するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、
材料の除去が、前記物体の前記領域にイオンビームを集束させるステップを含む方法。
【請求項20】
請求項18または19に記載の方法において、
材料の除去が、前記物体の前記領域に反応性ガスを供給するステップを含む方法。
【請求項21】
請求項18から20までのいずれか一項に記載の方法において、
前記物体の厚さを1μm未満とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−40384(P2011−40384A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−178163(P2010−178163)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(504020452)カール・ツァイス・エヌティーエス・ゲーエムベーハー (36)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss NTS GmbH
【Fターム(参考)】