説明

粒子捕集器および排気ガス浄化システム

【課題】排気ガスに含まれる有害物質の転換についての有効性を向上させる。
【解決手段】自動車用内燃機関(13)の排気ガスを浄化するための粒子捕集器(2)において、この粒子捕集器(2)が、自動車用内燃機関(13)の排気ガスを浄化するための開放形粒子捕集器として、部分的に構造化された少なくとも1つの金属箔(14)および金属繊維(6)から成る耐熱繊維板(1)を備え、該繊維板(1)が少なくとも1つの区域(3)にSCR触媒コンバータの触媒活性被覆(4)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用内燃機関の排気ガス浄化用粒子捕集器と、自動車用内燃機関の排気ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特にディーゼルエンジンの排気ガス浄化を考えたとき、排気ガス内の炭化水素(HC)と一酸化窒素(NO)は、公知のように、例えば場合により触媒活性表面を有する構成要素と接触させることで酸化できる。しかし酸素豊富条件下での窒素酸化物(NOx)の還元は困難である。例えばオットーエンジンで採用される三元触媒コンバータは、それだけではディーゼルエンジンにおいて所望の効果を発揮しない。このため、例えば選択的触媒還元法(SCR=Selective Catalytic Reduction)が開発されている。
【0003】
更に、蓄積触媒コンバータが窒素酸化物を還元する目的で実験されている。蓄積触媒コンバータの被覆は、通常の貴金属成分の他に、炭酸バリウムや酸化バリウムを含む。この結果、酸素余剰状態でのNOxの蓄積が可能である。排気ガス内の一酸化窒素(NO)が金属成分上で二酸化窒素(NO2)に酸化される。該二酸化窒素NO2はそれから硝酸バリウムを形成しつつ蓄積触媒コンバータに蓄積される。その蓄積時、バリウム粒上に硝酸塩層が生じ、NO2が更なる蓄積のためにその硝酸塩層を通過しなければならないので、硝酸塩層はNO2の蓄積を遅らせる。即ち、蓄積容量が制限されるので、蓄積触媒コンバータを定期的に再生せねばならない。再生は、例えば排気ガスの短時間の注油、即ち短時間の低化学量的条件下によって行われる。還元性の雰囲気で、硝酸塩は再び例えば炭酸塩に転換し、一酸化窒素が発生する。一酸化窒素は直ちに窒素に還元され、その再生が蓄積よりも速く進行する故、再生サイクルは蓄積サイクルより非常に短い。
【0004】
粒子放出量を減少すべく、セラミック基材で構成した粒子捕集器は公知である。該捕集器は、浄化すべき排気ガスを粒子捕集器に流入させる通路を備える。その互いに隣接する通路は互い違いに閉じられ、この結果排気ガスは入口側で通路に流入し、セラミック壁を通過し、隣の通路を通って出口側から流出する。そのようなフィルタは、発生する粒子粒度の全域にわたり約95%の有効性を示す。
【0005】
添加剤と特殊被覆による化学的相互作用に加えて、自動車用排気装置のフィルタの確実な再生が依然として問題となる。貫流すべき通路壁への微粒子の集積増大が、圧力損失を次第に高め、エンジン出力に不利に作用する故、粒子捕集器の再生が必要となる。再生は主に粒子捕集器又はその中に集めた煤粒子を、該粒子を気体成分に転換すべく短時間加熱する過程を含む。これは、例えば前置した発熱反応(例えば排気管に追加的に注入した燃料の酸化触媒コンバータ内での酸化("再燃焼"))により、排気ガスを粒子捕集器に付着した粒子を転換すべく十分な温度に短時間で到達させることでも可能である。もっとも、この粒子捕集器の大きな熱応力は、その寿命に不利に作用する。
【0006】
この熱的損耗を促進する不連続再生方式を回避すべく、フィルタの連続再生方式(CRT=Continuous Regeneration Trap)が開発されている。該方式では、粒子を200℃より高い温度で、NO2による酸化により燃焼させる。このために必要なNO2は、通常粒子捕集器の上流に配置した酸化触媒コンバータで発生させる。しかしこれをディーゼル燃料自動車に利用する場合、所望の二酸化窒素(NO2)に転換するに十分な量の一酸化窒素(NO)が排気ガス内に存在しないという問題がある。そのため従来の排気装置で、粒子捕集器の連続再生を行える保証はない。
【0007】
未転換粒子の他に、簡単には再生できない油や残留添加物も粒子捕集器に溜まることにも注意を要する。このため公知のフィルタは定期的な交換や洗浄を必要とする。
【0008】
最低反応温度と固有の滞在時間の他に、粒子をNO2で連続再生するのに十分な一酸化窒素を供給せねばならない。一酸化窒素(NO)と粒子の動的放出実験の結果、排気ガス内に全く或いはほんの僅かな一酸化窒素しか存在しないか、その逆のとき、粒子が放出されることが明らかになった。その結果、実際に連続再生されるフィルタは、両反応成分が所定の時点で同時にフィルタ内に必要量存在するよう、本質的に補償器又は蓄積器として機能せねばならない。更にフィルタは、低温始動直後に速やかに高温になるよう、できるだけ内燃機関の近くに配置すべきである。必要な二酸化窒素を用意すべく、フィルタに一酸化炭素(CO)と炭素水素(HC)を転換する、特に一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO2)に転換する酸化触媒コンバータを前置する必要がある。該コンバータとフィルタから成る装置をエンジン近傍に配置する際、その位置は、ディーゼルエンジン自動車なら通常燃焼室の過給圧力を高めるために用いる排気駆動式過給機の前が特に適する。
【0009】
この基本的な考えを考慮に入れると、自動車工業での実際の採用に対し、その位置と極端に大きな熱的、動的負荷の下で満足できるフィルタ効率を得るべく、フィルタをどのように構成するかが問題となる。特にフィルタに対する新たな構想を可能にする空間的条件を考慮せねばならない。自動車の床下に配置する従来のフィルタの場合、未転換粒子のフィルタ内での長い滞在時間、従って高い効率を保証すべく、できるだけ大きな容積が前提となるが、エンジン近傍に配置すると、十分な場所ないし空間を用意できない。
【0010】
更に、「開放形フィルタ装置」なる呼称で知られた新たな構想が示されている。このフィルタ装置は、フィルタ通路の、構造的に互い違いの閉鎖を省いたことを特徴とする。その場合、通路壁を少なくとも部分的に多孔質又は超多孔質性の材料で構成し、開放形フィルタの流路が転向構造物或いは案内構造物を有するようにしている。この構造は、流れないしその中に含まれる粒子を多孔質又は超多孔質の材料部分に向けて転向すべく作用する。その際粒子が妨害および/又は密着に伴い多孔質通路壁面および/又はその中に付着したままになることが発見された。これら作用の同時発生に対し、排気ガスの流れ分布内での圧力差が重要である。転向に伴い追加的な局所的負圧や過圧状態が生じ、これら圧力状態は、上述の圧力差を平衡させねばならない故、多孔質性通路壁によるフィルタ効果を生じる。
【0011】
粒子捕集器は、公知の閉鎖形濾過装置又はフィルタ装置と異なり、流れ盲通路を有さない開放形である。従って、この特性はかかる粒子フィルタの特徴付けにも使われ、そのため、例えばパラメータ「流れ自由度」が使用される。即ち20%の「流れ自由度」は、断面積で見たとき面積の約20%が見通せることを意味する。通路直径が0.8mmで、約93個/cm2の通路密度を有する粒子フィルタの場合、その流れ自由度は0.1mm2以上の面積に相当する。換言すれば、基本的に粒子が粒子捕集器を完全に通過でき、詳しくは本来除去すべき粒子(特にディーゼル燃料および/又はガソリン燃料に対して特徴づけられる粒度範囲)より大きな粒子も通過できるとき、「開放形」と呼ばれる。このためかかるフィルタは、運転中にたとえ粒子が凝集しても閉塞されない。粒子捕集器の「開放度」の適当な測定方法は、例えばどんな直径の球状粒子迄そのフィルタを通過できるかを検査することにある。ここでの用途の場合、特に直径が0.1mm又はそれ以上の球、好適に0.2mm以上の直径の粒子が通過できるとき、粒子ラップは「開いている」と言える。この種「開放形」フィルタ要素は、例えば独国実用新案第20117873号、同第20117659号明細書、国際公開第02/00326号、同第01/92692号および同第01/80978号パンフレットで公知である。従ってこれらの明細書の開示内容は本発明の明細書の記述に完全に組み入れられる。
【0012】
内部流れ案内面を備えたハニカム体の一般的な構成については、例えば独国実用新案第8908738号明細書を参照されたい。この明細書には、流体が貫流できる多数の通路の壁を形成する、少なくとも部分的に構造化され層状に配置された板金から成るハニカム体、特に自動車の触媒担体が記載されている。そこにはまた、通常の用途およびかかるハニカム体の通常の寸法づけに関し、流れが通路内をほぼ層流で流れること、即ち非常に小さな通路断面積しか利用していないことが記載されている。この条件の下で、通路壁に非常に厚い境界層が生じ、該層は通路内における核流と通路壁との接触を減少させる。通路の内部に排気ガス流の渦流を生じさせ、もって排気ガス流全体と通路の触媒活性表面との緊密な接触を保証すべく、通路の内部に洗流面を形成する折り返し部を設けることを提案している。これにより、排気ガスを主流れ方向に対し垂直に転向させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この種開放形粒子捕集器の実現に関し、本発明の課題は、排気ガスに含まれる有害物質の転換についての有効性を向上することにある。特にディーゼルエンジン付き自動車における排気装置を特に小形構造にすることにある。また、この種排気装置の製造、組立および点検を単純化し、もって安価にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する自動車用内燃機関の排気ガスを浄化するための粒子捕集器と、請求項15に記載の特徴を有する自動車用内燃機関の排気ガス浄化システムにより解決される。それらの他の有利な実施態様を従属請求項に示す。なおそこに記載した特徴は、個々に或いは目的に合わせたあらゆる任意の組合せにおいて生ずる。
【0015】
自動車用内燃機関の排気ガスを浄化するための粒子捕集器に対する、金属繊維から成る本発明による耐熱繊維板は、少なくとも1つの区域に、少なくとも部分的に酸化触媒コンバータおよび/又は三方触媒コンバータおよび/又はSCR触媒コンバータの被覆に相当する被覆が設けられていることを特徴とする。
【0016】
自動車用内燃機関の排気ガスを浄化するための本発明による粒子捕集器は、自動車用内燃機関の排気ガスを浄化するための開放形粒子捕集器として、部分的に構造化された少なくとも1つの金属箔および金属繊維から成る少なくとも1つの耐熱繊維板を備え、該繊維板が少なくとも1つの区域にSCR触媒コンバータの触媒活性被覆を備えることを特徴とする。
【0017】
この触媒活性被覆は以下に簡単に述べるような多くの利点を持つ。即ち、例えば排気ガスに含まれる有害物質を酸化、還元および/又は蓄積するために排気装置内に本来設けられた構成要素を小さな容積にし、又は全く省略できる。その結果、排気装置はかなり細く又は小形にでき、排気装置の単純な構成、簡単な保守と安価な製造が可能となる。また新たな共働作用も生じる。即ち、例えばこの繊維板で形成した粒子捕集器の内部で、付着した粒子の転換又は除去時に役立つ排気ガス成分が直接生ずる。即ち該排気ガス成分は、粒子が付着した繊維板の表面近くで直接発生し、蓄積される。従って、例えば粒子捕集器の再生温度もかなり低下し、例えば900℃以上から600℃以下に低下する。
【0018】
繊維板の少なくとも1つの区域への配置に関し、該区域を繊維板の全表面にわたり延ばし得ることに注意されたい。しかし複数の区域を設けてもよく、該区域は被覆および/又は部分的に非被覆となし得る。その際、場合によっては種々の被覆、互いに異なった区域形状或いは区域面積にしてもよい。また、少なくとも1つの区域が、耐熱繊維板の片側外側面ないし片側にしか存在しないようにもなし得る。
【0019】
酸化触媒コンバータの被覆の特性に関し、そのような触媒をそれ自体消費することなしに、所定反応の速度を高めるべく使用可能な点に注意されたい。適当な触媒物質により、排気ガス内のCO(一酸化窒素)およびHC(炭素水素)の酸化過程を低温で進行させ得る。一般に白金族の触媒物質を含むこの種の被覆により、ガス状の炭素水素と一酸化窒素は、ディーゼルエンジンの排気ガスの、250℃以上の排気ガス温度で既に酸化される。かかる酸化被覆の特殊性は、場合により煤粒子に付着する炭素水素の再燃焼を伴い、この結果粒子放出が一層減少する。従来、酸化促進被覆とフィルタ要素との1つのユニットへの組合せは、触媒活性物質が粒子による覆いの増大のために悪化することを気遣って実施されていなかった。本発明者は、当該技術分野の先入観を捨て、特に効果的な粒子捕集器の製造を可能にする耐熱繊維層を開発したのである。
【0020】
三種の有害物質成分CO、HC、NOx(窒素酸化物)を再燃焼により減少しようとするとき、これは繊維板を三元触媒コンバータ等の被覆で覆うことで達成される。効果的な触媒物質は、大きな表面に細かく分布した白金(Pt)、パラジウム(Pd)又はロジウム(Rh)を含む。ラムダ値が1である場合、COは二酸化炭素(CO2)に、HCはCO2と水(H2O)に酸化され、NOxは窒素(N2)に還元される。その場合、酸化触媒コンバータについて次の被覆を提案する。
【0021】
Pt/Pd=2/1
担体容積1リットル当たり0.93〜1.2グラムのPt
担体容積1リットル当たり0.46〜0.6グラムのPd
多機能触媒(還元)に関して、次の関係を適用することを提案する。
【0022】
Pt/Rh=5/1
担体容積1リットル当たり1.16〜1.5グラムのPt
担体容積1リットル当たり0.23〜0.3グラムのRh
ここで触媒担体容積とは、担体(ハニカム構造物等)の材料およびこの担体で形成された空洞や通路等を含む容積を意味する。
【0023】
SCR触媒コンバータの被覆は、場合により多層や多段に形成される。実用的な尿素SCR触媒系は、繊維板上に連続配置で着けた複数の被覆部分から成る。該部分は排気ガスの流れ方向に次のように配置される。即ち酸化触媒被覆(選択的)、加水分解被覆、SCR触媒被覆および場合により後置される酸化触媒の順である。
【0024】
選択的に前置する酸化触媒は、特にディーゼルエンジン自動車での低い排気ガス温度でSCR活性を高めるべく用いる。NOの部分的酸化による排気ガス内のNO2含有量の増大(最良値:50容積%)に伴い、約573K以下の温度範囲でのSCR反応の反応速度がかなり増大する。併せて触媒表面で、一酸化炭素の二酸化炭素への酸化と不完全燃焼炭化水素の二酸化炭素と水への反応が起る。かかる酸化被覆付き前置部を用いることなく、炭化水素の酸化を部分的にSCR触媒コンバータで行い、窒素酸化物を減少できる。
【0025】
加水分解触媒の被覆により、例えば470Kの低い温度で尿素水溶液を完全に分解できる。約470K以下での尿素の分解は、不完全分解のために望ましくない副生成物を生ずるので問題がある。SCR触媒コンバータの被覆は、窒素酸化物NOxをアンモニアで選択的に還元して、問題のない生成物、即ち窒素と水とに転換すべく使用する。
【0026】
耐熱繊維板の他の実施態様では、被覆はウォッシュコートを含む。その結果ウォッシュコートを備え、比較的平滑な表面を持つ被覆は大きな触媒活性表面を示す。亀裂の入った表面は、一方で触媒(例えば白金やロジウム)を固着するための十分大きな面を提供し、他方で貫流する排気ガスを渦巻かせるべく機能して触媒との特に緊密な接触を生じる。
【0027】
触媒を助勢する高表面ウォッシュコートの塗布は、公知の方式で、繊維板又は繊維板と金属箔とから成る将来の粒子捕集器を液状ウォッシュコート分散媒質に漬けるか、該媒質を繊維板に吹き付けることで行える。次に余分なウォッシュコート分散媒質を除き、繊維板上のウォッシュコートを乾燥させ、続いて、通常450℃以上の温度で焼成する。この焼成中に液状ウォッシュコート分散媒質の揮発成分が揮散し、この結果高比表面の触媒促進耐熱層が生ずる。所望の層厚を得るべく、必要ならこの過程を数回繰り返す。平均層厚さを0.001〜0.02mm、特に0.005〜0.012mmにするとよい。
【0028】
ウォッシュコートは、通常酸化アルミニウムと、例えば希土類酸化物、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化ゲルマニウムおよび酸化バリウム等の少なくとも1つの助触媒との混合物から成る。ウォッシュコート分散媒質は、ハニカム体への塗布時、通路全長にわたり所望の一様な層厚さを得るべく、良好な流動性を有さねばならない。
【0029】
この流動性を得るため、公知のウォッシュコート分散媒質は所定のpH値を有し、限られた固形物含有量しか許さない。しかし実験の結果、かかるウォッシュコート分散媒質が時間に依存した粘性を示すことが解っている。そのためウォッシュコート分散媒質は非常に速くゼリー状になり、一様な層厚の発生を妨げる。ゼリー状化は、ウォッシュコート分散媒質を動かす、即ち分散媒質又はこれで濡らされたフィルタ層を動かし、特に振動させることで遅らせ得る。
【0030】
繊維板の他の実施態様では、繊維板は多孔質の焼結および/又は繊維材料(例えば鋼)から成る。特にここでは、クロム、ニッケル、アルミニウムおよび/又はモリブデンを非常に多く含む耐熱耐食鋼が適する。その際、繊維板が0.082mm以下、特に0.01〜0.05mmの範囲の平均直径を持つ繊維を含むと特に好ましい。かかるフィルタ層が排気ガス流に高い動圧を発生するのを防止すべく、繊維板が、少なくとも50%、特に少なくとも75%、好適に少なくとも85%そして特に有利には少なくとも95%の多孔率を持つと望ましい。この関係で、繊維板が0.4〜0.05mmの平均長さを持つ繊維で製造されることに注意されたい。その際、太い繊維なら短い繊維長を選択するとよい。
【0031】
更に、繊維板がその最大外側面に対して実質的に平行な縦断面において複数の開口を有し、これら開口が平均して0.01〜0.5mm、特に0.05〜0.25mmの広がり寸法を有するとよい。ここで基本的には、繊維板がほぼ任意に配列した繊維を有することに注意されたい。これはここでは特に、もつれ層、織物或いは類似した構造物を意味する。その場合、規則的構造物もただ局所的に存在し、残りの箇所には無秩序な繊維配列が存在する。
【0032】
粒子やその凝集物に対し十分大きな空洞を提供すべく、ここではディーゼルエンジンの排気装置における用途に対し、或る大きさの孔寸法を用意することを提案する。その孔寸法を得るべく、ここでは開口と呼ぶ小穴ないし空洞の、小さな横断面を示す材料の縦断面を使う。それら全開口は、平均して上述した範囲の広がり寸法を有している。なおここで広がり寸法とは、縦断面で見た開口の全ての最大広がり寸法の平均値を意味する。開口の寸法は既に被覆された繊維板に関する故、その平均的な繊維間隔も関与し、これは0.6mm以下、特に0.05〜0.35mmに決めるとよい。
【0033】
また、繊維板が3mm以下、特に1.5mm以下、好適には0.5mm以下、望ましくは0.1mm以下の厚さを有するとよい。ここで述べた厚さは、自動車用内燃機関の排気ガスを浄化するための粒子捕集器に対する繊維板の利用に際し選択される。
【0034】
本発明の他の観点に基づき、自動車用内燃機関の排気ガスを浄化する粒子捕集器において、部分的に構造化された少なくとも1つの金属箔および上述の構造様式の少なくとも1つの耐熱繊維板を有し、好適には複数の金属箔と複数の繊維板を互い違いに重ね合わせ、特に絡み合わせてハウジング内に配置するとよい。その際、特に上述の「開放形」粒子捕集器が生ずる。従って独国実用新案第20117873号、同第20117659号明細書や国際公開第02/00326号、同第01/92692号、同第01/80978号パンフレットに記載された「開放形」粒子捕集器を形成すると特に有利である。
【0035】
また、粒子捕集器がその軸線に対しほぼ平行に延びる通路を形成し、その際案内面、好適には金属箔の案内面が少なくとも一部通路内に突出し、通路を経て貫流するガス流の繊維板に向けての転向を生じさせることを提案する。かかる案内面は、突出部、突起、ミクロ波形、羽根或いは類似した構造物で形成される。また、その案内面はそのような金属箔における孔の縁によっても形成できる。案内面自体が孔を有してもよい。
【0036】
他の実施態様では、粒子捕集器の容積に対する粒子捕集器の被覆量を、20〜300g/リットル、好適に50〜120g/リットルの範囲にする。ここで容積とは、金属箔、繊維板並びに形成された通路が占める容積を意味する。通常かかる容積は0.01〜1.5リットル、好適に0.3〜0.8リットルの範囲にある。
【0037】
更に、部分的に構造化された少なくとも1つの金属箔が複数の切欠き開口を有し、これら開口が少なくとも1つの構造化幅にわたって、好適にその2倍、特にその3倍にわたって延びているとよい。これは、例えばそのような切欠き開口が、構造化によって形成された隣接する複数の通路を互いに接続することを意味する。かくして、粒子捕集器の前に望ましくない大きな動圧を生ずることなしに、部分排気ガス流の、特に効果的な混合を保証できる。なおその際、切欠き開口が主に金属箔の平面内に延びていることに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に基づく粒子捕集器の詳細の概略斜視図。
【図2】本発明に基づく粒子捕集器の構成の更に詳細な斜視図。
【図3】自動車用内燃機関の排気装置の概略構成図。
【図4】本発明に基づく粒子捕集器の異なった実施例の概略斜視図。
【図5】本発明に基づく繊維板の実施例の概略縦断面図。
【図6】被覆された状態にある繊維板の縦断面図。
【0039】
以下、図を参照して本発明を詳細に説明する。なお図は本発明の特に有利な実施例を示し、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
図1は、例えば自動車用内燃機関の排気ガス処理に利用される粒子捕集器の詳細を斜視図で示す。本発明に基づく2枚の繊維板1があり、両板1間に金属箔14が存在する。繊維板1は被覆4が配置された区域3を有する。被覆4は酸化触媒コンバータ、三元触媒コンバータおよび/又はSCR触媒コンバータの被覆である。金属箔14も、少なくとも部分的に触媒活性被覆および/又は蓄積被覆を有する。通常隣接する繊維板は互いに接し、接合技術的に結合、特にろう付けされている。そのため、例えば繊維板1の部分、特に周縁を、ここで接合技術的に確実に結合可能とすべく、被覆しない必要がある。
【0041】
金属箔14の成形により、平形薄板(繊維板1)と波形薄板(金属箔14)から成るこの「サンドイッチ構造物」を排気ガスが流れ方向21に貫流可能となる。通路17に、部分ガス流に渦流を生じさせる案内面18を設けている。この結果、部分ガス流は被覆された繊維板1に向けて案内される。金属箔14の構造化は、ここでは所定の構造化幅36を持つ波形の構造化である。案内面18又はその下に位置する切欠き開口19は構造化幅36より大きく形成され、このため隣接する複数の通路17は切欠き開口19で互いに接続される。
【0042】
図2は、金属箔14と繊維板1の配置構造を詳細に示す。金属箔14と繊維板1は互い違いに配置され、金属箔14は繊維板1と関連して、排気ガスが流れ方向21に貫流できる通路17を形成している。通路17内に案内面18が突出し、この面18は金属箔14自体でスタンピング、プレス或いは他の方式で形成されている。この結果切欠き開口19が形成され、従って、通路17を通って流れるガスから周辺部分流が「はぎ取られ」、繊維板1に向けて案内される。かくして、粒子22も一緒に運ばれ、繊維板1に向けて導かれる。粒子22はそこで外側面9に例えば接着するか、或いは繊維板1の空洞、小穴や類似した開口内に溜まる。ここに示す繊維板1は無秩序に配置され被覆4を備えた多数の繊維6を有する。繊維板1は全体として3mm以下の厚さ12を持つ。
【0043】
図3は、自動車用内燃機関13の排気装置の構造を概略的に示す。内燃機関13で発生した排気ガスは、最終的に大気に放出される前に、排気管23を通して排気ガス処理用の種々の構成要素に導かれる。図3に示す排気装置は、排気ガスの流れ方向21に連続して次の構成要素を設けている。即ち、始動触媒コンバータ24、排気駆動式過給機25、酸化触媒コンバータ26、還元剤供給装置27、混合器28および本発明に基づく粒子捕集器2並びに主触媒コンバータ29である。
【0044】
始動触媒コンバータ24は特に小さな容積(例えば0.1リットル以下)を特徴とし、その小さな熱容量とエンジンへの近接とにより、エンジン始動後に非常に短時間で、早くも排気ガス内に含まれる有害物質の触媒転換が可能となる温度(例えば数秒後に230℃以上の温度)迄加熱される。粒子捕集器2の前での酸化触媒コンバータ26の再生機能については既に詳述した。還元剤供給装置27と混合器28は、例えば固形又は液状の尿素の供給に使われ、このためSCR法による有害物質の転換も可能となる。混合器28は案内面、格子、ハニカム体或いは類似した様式で形成される。しかし粒子フィルタ2自体で排気ガス流に渦流を生じさせ、又は導入した還元剤を細かく分布させられるので、粒子捕集器2の前の混合器28を省いてもよい。後置された主触媒コンバータ29は、通常特に1.5リットル以上の比較的大きな容積を有する。
【0045】
図4は粒子捕集器2の構造を概略的に斜視図で示す。自動車用内燃機関の排気ガスを浄化する粒子捕集器2は、構造化された金属箔14と耐熱繊維板1を有し、該金属箔14と繊維板1は粒子捕集器2の軸線16を中心に螺旋状に配置されている(金属箔および/又は繊維板の単純な積層、S状絡み合わせ又は巻回も可能)。金属箔14と繊維板1は粒子捕集器2を通り軸線16に対し略平行に延びる通路17を形成している。金属箔14と繊維板1から成る複合体はハウジング15内に収納され、ハウジング15に接合技術的に結合されている。図示の粒子捕集器2の場合、ハウジング15は粒子捕集器2ないし金属箔14および繊維板1の端面34から突出している。波形金属箔14の材料厚さ30は0.05mm以下、より好適には0.02mm以下の範囲にあるとよい。この際、特に材料厚さ30や、被覆4(図示せず)又は粒子捕集器2の他のパラメータが粒子捕集器2の全長31にわたり一定していない方がよい。即ち、例えば粒子捕集器2が第1長さ区域32において、第2区域33に比べて小さな熱容量、大きな多孔率、触媒活性被覆に関する大きな負荷容量、多量のないし大きな切欠き開口19や案内面18や繊維を有する。基本的には粒子捕集器2を2つ以上の長さ区域に分けてもよい。
【0046】
図示の粒子捕集器2は、ハウジング15の内部の繊維板1と金属箔14で塞がれた容積により定まる容積20を有し、該容積20は通路17の容積も含む。本発明による粒子捕集器2は、被覆4を20〜300g/リットルの範囲の量で設けている。この被覆量を全長31にわたり繊維板1の外側面9および/又は金属箔14に一様に配置できる。しかし繊維板1又は金属箔14の部分区域にだけ触媒活性被覆4を設けてもよい。また種々の長さ区域に、異なった種類或いは量の被覆4を設けてもよい。
【0047】
図5は、繊維板1の縦断面8を概略的に示す。図5から繊維板1を多数の繊維6で形成していることが解る。これら繊維6はここでは一部は規則正しく、一部は無秩序に互いに接続されている。繊維6は、好適には0.012〜0.035mmの範囲の直径7を有する。縦断面8における繊維6の配列によって開口10が生じている。この開口10は、実際に繊維板1の内部に形成された空洞の横断面となっている。
【0048】
図6も同様に繊維板1の縦断面8を概略的に示し、ここでは繊維6に被覆4を設けている。該被覆4はウォッシュコート5を有し、コート5は亀裂が入った表面のために触媒活性物質35を十分に貯蔵できる。この被覆4にも係らず、その縦断面8は依然として広がり寸法11を持つ開口10を有している。全開口10の広がり寸法11は平均して0.05〜0.4mmである。その場合、同時に約87%の多孔率が保たれる。
【0049】
本発明は、自動車用内燃機関の排気装置における粒子捕集器の効率を向上すべく、経費のかかる多くの技術実験により得られたものである。
【符号の説明】
【0050】
1 繊維板、2 粒子捕集器、3 区域、4 被覆、5 ウォッシュコート、6 繊維、7 繊維直径、8 繊維板縦断面、9 繊維板外側面、10 開口、11 広がり寸法、12 繊維板厚さ、13 内燃機関、14 金属箔、15 ハウジング、16 軸線、17 通路、18 案内面、19 切欠き開口、20 容積、21 流れ方向、22 粒子、23 排気管、24 始動触媒コンバータ、25 排気駆動式過給機、26 酸化触媒コンバータ、27 還元剤供給装置、28 混合器、29 主触媒コンバータ、30 金属箔材料厚さ、31 粒子捕集器全長、32 第1長さ区域、33 第2長さ区域、34 端面、35 物質、36 構造化幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用内燃機関(13)の排気ガスを浄化するための粒子捕集器(2)において、この粒子捕集器(2)が、自動車用内燃機関(13)の排気ガスを浄化するための開放形粒子捕集器として、部分的に構造化された少なくとも1つの金属箔(14)および金属繊維(6)から成る少なくとも1つの耐熱繊維板(1)を備え、該繊維板(1)が少なくとも1つの区域(3)にSCR触媒コンバータの触媒活性被覆(4)を備えることを特徴とする粒子捕集器。
【請求項2】
SCR触媒コンバータが繊維板(1)に連続配置で着けた複数の被覆部分を有することを特徴とする請求項1記載の粒子捕集器。
【請求項3】
複数の被覆部分が排気ガスの流れ方向に、加水分解触媒被覆(4)およびSCR触媒被覆(4)の順序で配置されていることを特徴とする請求項2記載の粒子捕集器。
【請求項4】
加水分解触媒被覆(4)の上流側またはSCR触媒被覆(4)の下流側に酸化触媒被覆(4)が配置されていることを特徴とする請求項3記載の粒子捕集器。
【請求項5】
複数の構造化された金属箔(14)と複数の繊維(1)とが互い違いに重ね合わせてハウジング(15)内に配置されていることを特徴とする請求項1から4の1つに記載の粒子捕集器。
【請求項6】
粒子捕集器(2)の軸線(16)に対し平行な複数の通路(17)が存在し、該通路(17)の少なくとも一部に金属箔(14)の案内面(18)が突出し、該案内面は通路(17)を貫流するガス流を繊維板(1)に向けて転向させることを特徴とする請求項1から5の1つに記載の粒子捕集器。
【請求項7】
粒子捕集器(2)の容積(20)に対し、被覆量が20〜300グラム/リットルの範囲にあることを特徴とする請求項1から6の1つに記載の粒子捕集器。
【請求項8】
少なくとも1つの部分的に構造化された金属箔(14)が複数の切欠き開口(19)を有し、該開口(19)が少なくとも1つの構造化幅(36)にわたって延びていることを特徴とする請求項1から7の1つに記載の粒子捕集器。
【請求項9】
被覆(4)がウォッシュコート(5)を含むことを特徴とする請求項1から8の1つに記載の粒子捕集器。
【請求項10】
繊維板(1)が多孔質性の焼結および/又は繊維材料を含むことを特徴とする請求項1から9の1つに記載の粒子捕集器。
【請求項11】
繊維板(1)が0.082mm以下の平均直径(7)を持つ繊維(6)を含むことを特徴とする請求項1から10の1つに記載の粒子捕集器。
【請求項12】
繊維板(1)が、少なくとも50%の多孔率を有することを特徴とする請求項1から11の1つに記載の粒子捕集器。
【請求項13】
繊維板(1)がその最大外側面(9)に対して実質的に平行な縦断面(8)において複数の開口(10)を有し、該開口(10)が平均して0.01〜0.5mmの広がり寸法(11)を有することを特徴とする請求項1から12の1つに記載の粒子捕集器。
【請求項14】
繊維板(1)が3mm以下の厚さ(12)を有することを特徴とする請求項1から13の1つに記載の粒子捕集器。
【請求項15】
排気管(23)を備えた自動車用内燃機関(13)の排気ガスシステムにおいて、排気ガスシステムが排気ガスの流れ方向(21)に、液体尿素供給用の還元剤供給装置(27)と請求項1から14の1つに記載の粒子捕集器(2)との順序で備えることを特徴とする排気ガスシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−149119(P2010−149119A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14447(P2010−14447)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【分割の表示】特願2004−556117(P2004−556117)の分割
【原出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【出願人】(500038927)エミテック ゲゼルシヤフト フユア エミツシオンス テクノロギー ミツト ベシユレンクテル ハフツング (156)
【Fターム(参考)】