説明

粒子転写膜の製造方法

【課題】従来に比べ、粒子の未転写部位が少ない粒子転写膜の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る転写膜の製造方法は、多数の孔部を表面に有する転写型の孔部内に保持された粒子を、粘着体の表面に一次転写する一次転写工程と、得られた粘着体表面の粒子を、高分子膜の表面に加熱・加圧により二次転写する二次転写工程とを有する。粘着体は、熱硬化性粘着材料より形成されていることが好ましい。また、二次転写工程において、加熱による温度が失われる前に、粘着体と高分子膜とを分離することが好ましい

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子転写膜の製造方法に関し、さらに詳しくは、異方性導電膜等に用いて好適な粒子転写膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、粒子を規則的に配列させ、その規則性を利用して、各種機能の実現が図られている。
【0003】
例えば、電気、電子機器等の分野では、接着剤シートに規則的に粒子を配列させることにより異方導電性を付与した異方性導電膜が使用されている。
【0004】
粒子を配列させる手法としては、従来、転写型を用いた転写法が広く利用されてきた。例えば、特許文献1には、異方性導電膜を製造する際に、導電性微粒子配列治具(転写型)の非貫通孔内に超音波振動により導電性微粒子を入れ、この導電性微粒子が配列した面に、加熱した状態の接着剤層を押しつける方法が開示されている。
【0005】
なお、転写型を用いずに粒子を配列させた異方性導電膜を製造する試みもなされている。
【0006】
例えば、特許文献2には、粘着剤シートの表面に単層で密に導電粒子を配列後、この粘着剤シートを延伸することで導電粒子に間隔を持たせた配列シートを作製し、この配列シートの導電粒子側に、バインダー樹脂を重ねて熱ロール等でバインダー樹脂中に導電粒子を埋め込んだ後、配列シートを剥離し、絶縁性接着剤をラミネートする方法が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−220669号公報
【特許文献2】特開2007−217503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、転写型を用いる従来技術は、以下の点で問題があった。
【0009】
すなわち、転写型を用いる場合、転写型の孔部内に粒子が完全に隠れてしまうと粒子を転写することができない。一方、転写型の孔部から過度に粒子を露出させると、孔部内に粒子を保持できず、粒子の配列等に支障が生じる。そのため、転写性と孔部内の粒子保持性とを考慮し、通常、粒子は、その頂部が孔部から僅かに突出された状態で孔部内に保持されることが多い。
【0010】
しかしながら、この状態の転写型を用いて高分子膜へ転写を行うと、粒子と高分子膜との接触面積が小さいため、未転写部位が発生しやすい。また、転写型から高分子膜への転写性を向上させるため転写時に過度の加熱を行うと、高分子膜に熱シワが生じる等して、高分子膜が熱変形する場合もある。高分子膜は、異方性導電膜等の製品の一部を構成する部材になるため、製造時の無理な加熱は行わない方が好ましい。このような理由により、従来技術によって転写性を向上させるのは困難な状況であった。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、従来に比べ、粒子の未転写部位が少ない粒子転写膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る転写膜の製造方法は、多数の孔部を表面に有する転写型の孔部内に保持された粒子を、粘着体の表面に一次転写する一次転写工程と、上記粘着体表面の粒子を、高分子膜の表面に加熱・加圧により二次転写する二次転写工程とを有することを要旨とする。
【0013】
ここで、上記粘着体は、熱硬化性粘着材料より形成されていることが好ましい。
【0014】
また、上記二次転写工程において、上記加熱による温度が失われる前に、上記粘着体と上記高分子膜とを分離することが好ましい。
【0015】
また、上記粘着体の粘着力は、ポリエチレンテレフタレートに対する25℃における剥離強度で0.1〜0.6N/25mm幅の範囲内にあることが好ましい。
【0016】
また、上記高分子膜は、二次転写温度において2×10Pa・s以下の粘度を有する材料より形成されていることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る粒子転写膜の製造方法では、上記一次転写工程を繰り返し行っても良い。
【0018】
また、上記粒子として導電性粒子を好適に用いることができる。
【0019】
本発明に係る粒子転写膜は、上述した粒子転写膜の製造方法により得られたものであることを要旨とする。
【0020】
本発明に係る異方性導電膜は、上述した粒子転写膜の製造方法(但し、粒子として導電性粒子を使用)により得られた粒子転写膜を用いたことを要旨とする。
【0021】
本発明に係る異方性導電膜の製造方法は、上述した粒子転写膜の製造方法(但し、粒子として導電性粒子を使用)により得られた粒子転写膜を用い、上記導電性粒子を高分子膜に埋め込んで保持させる工程と、上記機導電性粒子を保持させた高分子膜の片面に接着層を形成する工程とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る粒子転写膜の製造方法では、一次転写工程において、転写型の孔部内に保持された粒子を、粘着体の粘着性により粘着体表面に一次転写する。そのため、加熱を行わなくても、転写型から高い転写率で粒子を粘着体表面に一次転写することができる。また、粘着体表面に一次転写された粒子は、その底部で粘着体と貼り付いているが、その表面の大部分は露出された状態になっている。
【0023】
そして、二次転写工程では、この粘着体表面の粒子を、高分子膜の表面に加熱・加圧により二次転写する。そのため、加熱により軟化した高分子膜と粒子とがより広い接触面積にて接触し、粘着体側の粒子は、高分子膜側に二次転写される。
【0024】
したがって、本発明に係る粒子転写膜の製造方法によれば、転写型の孔部内に保持された粒子を直接、高分子膜に転写する場合等に比較して、粒子の未転写部位が少ない粒子転写膜を製造することができる。
【0025】
ここで、上記粘着体が熱硬化性粘着材料より形成されている場合には、二次転写時の加熱により粘着体の粘着性が低下する。そのため、加熱により軟化した高分子膜に粒子がより転写されやすくなり、二次転写性の向上に寄与しやすい。
【0026】
また、二次転写工程において、加熱による温度が失われる前に、粘着体と高分子膜とを分離する場合には、二次転写された粒子が粘着体側に付着して脱落するのを抑制しやすくなる。
【0027】
また、上記粘着体の粘着力が上記特定の範囲内にある場合には、一次転写時における転写型との離型性と、一次転写後における粒子の位置ズレの抑制効果とのバランスに優れる。
【0028】
また、上記高分子膜が二次転写温度において2×10Pa・s以下の粘度を有する材料より形成されている場合には、粒子が二次転写されやすく、二次転写後に冷却された後にも、粒子の位置ズレが生じ難くなる。
【0029】
また、上記一次転写工程を繰り返す場合には、上述の通り粒子の未転写部位が少ないため、繰り返し(バッチ)間における粒子の位置合わせ精度が向上し、粒子ピッチ間のズレが少ない長尺物の粒子転写膜を製造しやすくなる。
【0030】
また、上記粒子が導電性粒子である場合には、異方性導電膜に好適に用いることが可能な粒子転写膜が得られる。
【0031】
本発明に係る異方性導電膜は、本発明に係る製造方法により得られた粒子転写膜を用いている。そのため、粒子の未転写部位に起因する導通抵抗不良を低減させることができる。
【0032】
本発明に係る異方性導電膜は、本発明に係る製造方法により得られた粒子転写膜を用いている。そのため、粒子の未転写部位に起因する導通抵抗不良の少ない異方性導電膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本実施形態に係る粒子転写膜の製造方法(以下、「本製造方法」ということがある。)および本実施形態に係る異方性導電膜について詳細に説明する。
【0034】
1.本製造方法
本製造方法は、以下の一次転写工程と、二次転写工程とを少なくとも有している。以下、各工程毎に説明する。
【0035】
<一次転写工程>
本製造方法において、一次転写工程は、多数の孔部を表面に有する転写型の孔部内に保持された粒子を、粘着体の表面に一次転写する工程である。
【0036】
図1は、上記一次転写工程の具体例を模式的に示した図である。先ず、図1(a)に示すように、多数の孔部10a内に粒子12が保持された転写型10と、粘着体14とを準備する。なお、ここでは、粘着体14として、基材14a表面に粘着層14bが形成されたものを例示している。
【0037】
次に、図1(b)に示すように、転写型10の粒子保持面と粘着体14の粘着層14b面とを近接または当接させ、粘着体14の基材14a表面上にて加圧ロール15を転がす等して、粘着層14b表面に粒子12を粘着させる。
【0038】
この際、上記操作は、粒子配列を維持したまま一次転写しやすい等の観点から、非加熱で行うことが好ましい。また、上記加圧力は、転写型との粘着を抑制する、一次転写性に優れる等の観点から、好ましくは、0.1〜1MPa、より好ましくは、0.1〜0.5MPa、さらに好ましくは、0.1〜0.3MPaの範囲内にあると良い。
【0039】
次に、図1(c)に示すように、転写型10と粘着体14とを引き離す。これにより、転写型10の孔部10a内の粒子12が、粘着体14の表面に一次転写される。
【0040】
上記一次転写工程において、孔部内に粒子が保持された転写型や粘着体は、例えば、以下のようにして準備すれば良い。
【0041】
(転写型)
転写型としては、例えば、Si、セラミックス、ガラス、金属等の無機材料や、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の各種樹脂、ゴム等の有機材料などの各種材料に、エッチング法、電鋳法、光造形法等、材質に応じた孔部形成方法によって孔部を形成するなどして準備することができる。
【0042】
転写型は、平板状、フィルム状、シート状などの平面体形状であっても良いし、ベルト状などの形状であっても良い。また、ロール状などの曲面体形状であっても良い。転写型の材質等に応じて最適な形状を選択することができる。好ましくは、転写型の製造性、粒子保持性などの観点から、平面体形状であると良い。
【0043】
転写型が有する孔部は、孔部内に粒子を保持できれば、貫通孔であっても非貫通孔であっても良い。また、孔部は、貫通孔および非貫通孔の両方から構成されていても良い。孔部は、転写型の形状等を考慮して適宜選択することができる。例えば、転写型が平板状などの平面体形状であれば、非貫通孔、貫通孔の何れも選択可能である。転写型がロール等の曲面体形状であれば、非貫通孔を選択すると良い。
【0044】
孔部の形状としては、具体的には、例えば、四角柱、六角柱等の略多角柱状、四角錐、三角錐等の略角錐状、略円柱状、略半球状等を例示することができる。好ましくは、粒子保持性、孔部形成性などの観点から、略多角柱状、略円柱状等の形状が好ましい。
【0045】
孔部は、例えば、格子状、千鳥状、ハニカム状、縞状などに規則的に配列されて形成されていても良いし、ランダムに形成されていても良い。本製造方法により得られる粒子転写膜の用途等に応じて選択することができる。好ましくは、異方性導電膜用途等、粒子転写膜の利用価値が高くなるなどの観点から、孔部は、規則的に配列されていると良い。
【0046】
孔部は、粒子の頂部を孔部形成面より突出可能な深さに形成されていることが好ましい。粘着体の粘着面と優先的に接触することにより一次転写性が向上する、粒子保持性に優れる等の利点があるからである。
【0047】
具体的には、粒子の平均粒径に対する孔部の深さの比(=孔部の深さ/粒子の平均粒径)の上限は、粒子転写性等に優れるなどの観点から、好ましくは、1未満、より好ましくは、0.95以下、さらに好ましくは、0.9以下であると良い。
【0048】
一方、粒子の平均粒径に対する孔部の深さの比(=孔部の深さ/粒子の平均粒径)の下限は、粒子保持性、粒子導入のしやすさの確保などの観点から、好ましくは、0.5以上、より好ましくは、0.6以上、さらに好ましくは、0.75以上であると良い。
【0049】
孔部は、導入される粒子の粒径よりも若干大きな開口を有していると良い。孔部一つにつき、粒子が一つずつ導入されやすくなるし、粒子の導入性を確保しやすいからである。
【0050】
具体的には、粒子の平均粒径に対する孔部の開口の大きさの比(=孔部の開口の大きさ/粒子の平均粒径)の上限は、孔部一つにつき粒子が一つずつ導入されやすくなるなどの観点から、好ましくは、2未満、より好ましくは、1.8以下、さらに好ましくは1.6以下であると良い。
【0051】
一方、粒子の平均粒径に対する孔部の開口の大きさの比(=孔部の開口の大きさ/粒子の平均粒径)の下限は、粒子導入性の確保などの観点から、好ましくは、1以上、より好ましくは、1.05以上、さらに好ましくは、1.1以上であると良い。
【0052】
なお、上記孔部の深さとは、転写型表面をレーザー顕微鏡で観察し、任意に選択した孔部10個について測定した深さの平均値である。また、上記孔部の開口径は、転写型表面をレーザー顕微鏡で観察し、任意に選択した孔部10個について測定した各開口部分の直径の平均値である。また、上記粒子の平均粒径とは、粒度分布測定装置(セイシン企業製、「PITA−1」)またはこれと同等の装置にて測定される値である。
【0053】
転写型の孔部内に粒子を導入する方法は、特に限定されるものではなく、各種の方法を採用することが可能である。
【0054】
例えば、(1)乾燥した粒子粉末またはこれを溶媒中に分散させた分散液を転写型の孔部形成面上に散布または塗布した後、刷毛、ブラシ、ブレードなどを用いて孔部形成面の表面を擦り切るなどして、孔部内に粒子を導入することができる。
【0055】
また、(2)上記散布または塗布後、外部から振動や磁力(導電性粒子の場合)を加えたり、孔部の底部から粒子を吸引したりするなどして、孔部内に粒子を導入することができる。
【0056】
また、(3)上記分散液中に転写型を浸漬するなどして、孔部内に粒子を導入することができる。
【0057】
また、(4)転写型の孔部形成面と一定距離離間させて板状部材を配置し、形成された隙間に、上記分散液を導入し、転写型および/または板状部材をスライド移動させるなどして、孔部内に粒子を導入することができる。
【0058】
粒子を孔部内に物理的に押し込むので、孔部内に粒子を確実に保持させやすくなるなどの観点から、好ましくは、(1)の方法により孔部内に粒子を導入すると良い。より好ましくは、乾式で行うことができる、孔部一つにつき粒子を一つずつ導入しやすいなどの観点から、(1)の方法において乾燥した粒子粉末自体を用いて孔部内に粒子を導入すると良い。
【0059】
なお、粒子が導電性を有する場合には、粒子が孔部内に導入されやすくなるなどの観点から、(1)の方法において、孔部形成面と反対側から磁力により粒子を転写型に引きつけつつ、刷毛、ブラシ、ブレードなどを用いて孔部形成面の表面を擦り切るなどして、孔部内に粒子を導入すると良い。
【0060】
使用する粒子は、特に限定されるものではなく、本製造方法にて得られる粒子転写膜の用途等に応じて選択することができる。
【0061】
上記粒子としては、具体的には、例えば、各種樹脂粒子の表面に1層または2層以上の導電性層(金、銀、白金属、ニッケル、銅などの各種金属やその合金等による金属めっき層やスパッタ層等)を有する粒子;上記金属やその合金等からなる各種金属粒子;カーボン粒子等の導電性粒子、各種樹脂粒子;シリカ粒子等の絶縁性粒子などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0062】
(粘着体)
粘着体としては、図1に例示したように、基材表面に、非加熱状態で粘着性を示す各種粘着材料より形成された粘着層を有するものを好適に用いることができる。粘着性のない基材表面をロール等で加圧しやすいし、取扱い性にも優れるからである。
【0063】
上記基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、合成紙などを例示することができる。
【0064】
上記粘着材料としては、例えば、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、フェノール樹脂系、ポリエステル樹脂系等の熱硬化性粘着材料、光硬化性粘着材料等を例示することができる。
【0065】
上記粘着体の粘着層の厚み(粘着部分の厚み)は、粒子配列を維持したまま、一次転写しやすい等の観点から、好ましくは、粒子の平均粒径以上であると良い。
【0066】
上記粘着材料としては、上述した熱硬化性粘着材料が好適である。二次転写時の加熱により粘着体の粘着性が低下し、加熱により軟化した高分子膜に粒子がより転写されやすくなり、二次転写性の向上に寄与しやすくなる等の利点があるからである。
【0067】
粘着体の粘着力は、ポリエチレンテレフタレートに対する25℃における剥離強度で、その下限が、好ましくは、0.1N/25mm幅以上、より好ましくは、0.2N/25mm幅以上、さらに好ましくは、0.3N/25mm幅以上であると良い。一次転写後における粒子の位置ズレを抑制しやすいからである。
【0068】
一方、粘着体の粘着力は、ポリエチレンテレフタレートに対する25℃における剥離強度で、その上限が、好ましくは、0.6N/25mm幅以下、より好ましくは、0.5N/25mm幅以下、さらに好ましくは、0.4N/25mm幅以下であると良い。一次転写時における転写型との離型を行いやすいからである。なお、上記剥離強度は、後述の実施例にて説明する測定方法により測定される値である。
【0069】
<二次転写工程>
本製造方法において、二次転写工程は、粘着体表面の粒子を、高分子膜の表面に加熱・加圧により二次転写する工程である。
【0070】
図2は、上記二次転写工程の具体例を模式的に示した図である。先ず、図2(a)に示すように、上記一次転写工程を経て形成された、粒子12が一次転写された粘着体14と、高分子膜16とを準備する。なお、ここでは、高分子膜16は、基材16a表面に形成されている。
【0071】
そして、粘着体14の粒子転写面と高分子膜16の表面とを当接させ、この積層体を一対の加熱・加圧ロール18間に供給する。
【0072】
ここで、上記加熱温度は、高分子膜を十分に軟化させ、二次転写性を向上させる等の観点から、好ましくは、90〜140℃、より好ましくは、100〜130℃、さらに好ましくは、110〜120℃の範囲内にあると良い。
【0073】
また、上記加圧力は、高分子膜を十分に接触させ、二次転写性を向上させる等の観点から、好ましくは、0.1〜5MPa、より好ましくは、1〜5MPa、さらに好ましくは、3〜5MPaの範囲内にあると良い。
【0074】
次に、図2(b)に示すように、加熱・加圧ロール18間を通過させた後、粘着体14を引き剥がす。これにより、粘着体14に一次転写されていた粒子12が高分子膜16の表面に二次転写され、図2(c)に示すような粒子転写膜20が得られる。
【0075】
この際、粘着体14と高分子膜16との分離は、上述した二次転写時の加熱による温度が失われる前、つまり、上述した二次転写時に加熱による温度がついた状態で行われることが好ましい。二次転写された粒子が粘着体14側に付着して脱落するのを抑制しやすくなるからである。なお、粘着体14と高分子膜16との分離は、それぞれを巻き取り装置により巻き取ることで行うことができる。
【0076】
上記二次転写工程において、高分子膜は、高分子膜を構成する高分子材料を適当な固形分量、粘度となるように調製した塗液を、コーターなどの公知の塗工手段を用いて基材上に塗工し、必要に応じて乾燥させる方法、上記高分子材料を平坦な膜状にプレス成形する方法などにより準備することができる。
【0077】
高分子膜を構成する高分子の粘度は、二次転写温度において、好ましくは、2×10Pa・s以下、より好ましくは、1.5×10Pa・s以下、さらにより好ましくは、1×10Pa・s以下であると良い。粒子が二次転写されやすく、二次転写後に冷却された後にも、粒子の位置ズレが生じ難くなるからである。
【0078】
なお、上記粘度は、応力制御型レオメータ(例えば、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、「AR500」などが上市されている。)により測定される値である。
【0079】
上記高分子膜を構成する材料としては、具体的には、各種の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂やゴムなどを用いることができる。粒子転写膜の用途などに応じて適宜選択することができる。
【0080】
より具体的には、例えば、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ビスマレイミドトリアジン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を1種または2種以上含むゴムやエラストマーなどを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
【0081】
これら材料中には、硬化剤、硬化促進剤、改質剤、酸化防止剤、充填剤などの各種添加剤が、必要に応じて、1種または2種以上添加されていても良い。
【0082】
上記高分子膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、粒子転写膜の用途、粒子の粒径、高分子膜の膜強度、製造性などを考慮して決定することができる。
【0083】
例えば、粒子転写膜を異方性導電膜に利用する場合には、上記高分子膜の膜厚の上限としては、適正な抵抗値が得やすくなる、圧着時の粒子の動きなどの観点から、好ましくは、上記粒子の粒径の3/2倍以下、より好ましくは、上記粒子の粒径の1倍以下、さらに好ましくは、上記粒子の粒径の2/3倍以下などであると良い。
【0084】
一方、上記高分子膜の膜厚の下限としては、粒子の二次転写性、圧着時の粒子の動きなどの観点から、好ましくは、上記粒子の粒径の1/10倍以上、より好ましくは、上記粒子の粒径の1/5倍以上、さらに好ましくは、上記粒子の粒径の1/3倍以上などであると良い。
【0085】
<一次転写工程の繰り返し>
本製造方法は、基本的に上述した一次転写工程、二次転写工程を有している。ここで、上述した一次転写工程は、繰り返し行っても良い。
【0086】
図3は、一次転写工程を繰り返し行う場合を模式的に示した図である。図3(a)に示すように、図1にて説明した一次転写を行った後、転写型10の大きさ分だけ、粘着体14を供給・巻き取りして走行させる。そして、一次転写された粒子12と、新たに準備した転写型10の孔部10a内の粒子12との位置を、光学顕微鏡、画像解析装置などで確認し、同ピッチになるように位置合わせを行う。
【0087】
そして、上述した図1(b)に示したように、転写型10の粒子保持面と粘着体14の粘着層14b面とを近接または当接させ、粘着体14の基材14a表面上にて加圧ロール16を転がす等して、粘着層14b表面に粒子12を粘着させる。
【0088】
その後、図3(b)に示すように、転写型10と粘着体14とを引き離す。これにより、転写型10の孔部10a内の粒子12が、粘着体14の表面に一次転写される。
【0089】
このように、一次転写工程を繰り返す場合には、上述の通り粒子の未転写部位が少ないため、繰り返し(バッチ)間における粒子の位置合わせ精度が向上し、粒子ピッチ間のズレが少ない長尺物の粒子転写膜を製造しやすくなる利点がある。
【0090】
2.異方性導電膜
本実施形態に係る異方性導電膜は、上述した粒子転写膜の製造方法により得られた粒子転写膜をその一部として用いている。なお、この場合には、粒子は、基本的に導電性を有している。
【0091】
図4は、本実施形態に係る異方性導電膜の一例を模式的に示した断面図である。図4に示すように、異方性導電膜30は、粒子転写膜20(導電性粒子12、高分子膜16)と、接着層32とを有している。
【0092】
上述した異方性導電膜は、例えば、次のようにして製造することができる。粒子転写膜は、基本的には、高分子膜の一方面に粒子が転写されており、転写された粒子は、膜表面に突出している。
【0093】
この転写面に接着層を被覆すれば、上記異方性導電膜を製造することができる。
【0094】
また、転写された粒子の脱落などを抑制するなどの観点から、転写した粒子を高分子膜に埋め込んで確実に保持させ、その後、この膜の少なくとも一方面に接着層を形成することによっても、異方性導電膜を製造することができる。
【0095】
転写した粒子を高分子膜に埋め込んで保持させる方法としては、例えば、(1)粒子を加圧する方法、(2)高分子膜を加熱して軟化させ、粒子の自重により粒子を膜内に埋没させる方法などを例示することができる。これら方法は、互いに組み合わせて行っても良い。
【0096】
粒子を確実に膜に保持させやすいなどの観点から、(1)の方法が良い。より好ましくは、(1)の方法において、高分子膜を加熱しながら粒子を加圧すると良い。具体的には、ラミネート手法などを適用することができる。なお、上記加圧は、粒子の上にセパレータなどの介在物を任意に介して行うことができる。
【0097】
上記加圧を行う場合、その加圧力は特に限定されることはない。膜強度、型強度、膜厚、粒子の強度などを考慮して選択すれば良い。通常、0.01〜1MPa程度である。
【0098】
上記加熱を行う場合、その加熱温度は特に限定されることはない。加熱温度は、使用する高分子の種類、耐熱性などによっても異なるが、好ましくは、高分子のガラス転移温度+20℃〜+40℃程度の温度を選択すると良い。膜内に粒子を埋め込みやすくなるからである。
【0099】
粒子は、膜内にその全てが埋め込まれていても良いし、膜表面のうち、少なくとも一方面にその一部が露出していても良い。
【0100】
なお、上記粒子の埋め込み程度は、加圧力、加圧時間、加熱温度、加熱時間などを適宜調節することで可変させることができる。
【0101】
一方、上記接着層の形成方法としては、具体的には、例えば、接着層材料を適当な固形分量、粘度となるように調製した塗液を、コーターなどの公知の塗工手段を用いて粒子の保持面に塗工し、必要に応じて乾燥させる方法、上記方法などにより予め作製しておいた膜状の接着層を貼り合わせる方法などを例示することができる。
【0102】
上記接着層を構成する材料としては、具体的には、各種の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂やゴムなどを用いることができる。
【0103】
より具体的には、例えば、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ビスマレイミドトリアジン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シアネート系樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を1種または2種以上含むゴムやエラストマーなどを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
【0104】
なお、これら材料中には、硬化剤、硬化促進剤、改質剤、酸化防止剤、充填剤などの各種添加剤が、必要に応じて、1種または2種以上添加されていても良い。
【0105】
上記接着層を構成する材料としては、好ましくは、被接続物との密着性に優れるなどの観点から、熱硬化性樹脂を主に含んでいると良い。熱硬化性樹脂のうち、好ましくは、エポキシ系樹脂などである。
【0106】
なお、熱硬化性樹脂を用いる場合、当該熱硬化性樹脂は、半硬化されてプリプレグとされていても良い。
【0107】
上記接着層の厚みは、接着層と接着する被接続物が有する導体(ICチップのバンプなど)の高さ、被接続物同士(ICチップと配線基板など)の間に生じる隙間量などを考慮して決定することができる。
【0108】
上記接着層の厚みの上限は、好ましくは、接着層と接着する被接続物が有する導体の高さの3倍以下、より好ましくは、2倍以下、さらにより好ましくは、1.75倍以下であると良い。
【0109】
上記接着層の厚みの下限は、好ましくは、接着層と接着する被接続物が有する導体の高さの1倍以上、より好ましくは、1.2倍以上、さらにより好ましくは、1.3倍以上であると良い。
【実施例】
【0110】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0111】
1.粒子転写膜
<実施例1>
(転写型の準備)
ドライエッチング法を用いて、シリコン基板表面に、約8°に傾斜して千鳥状に規則的に配列した略円柱状の孔部(断面:直径5.5μmの略円形状、深さ:3.5μmの非貫通孔、ピッチ:9μm)を多数形成することにより、Si製の転写型を準備した。なお、孔部形成領域は、100mm×100mmである。
【0112】
(転写型の孔部内への粒子保持)
ジビニルベンゼン系架橋樹脂よりなる粒子の表面に、Niめっき層、Auめっき層が順に被覆された、平均粒径4μmの樹脂めっき粒子(積水化学工業(株)、「ミクロパールAU−204」)を、上記転写型の孔部形成面上に散布した。
【0113】
その後、孔部形成面と反対側に設置した永久磁石((株)西興産業製、フェライト磁石、1000ガウス)にて、樹脂めっき粒子を転写型に引きつけつつ、刷毛にて適当な押圧力をかけながら孔部形成面上を擦り切った。
【0114】
孔部形成面をマイクロスコープにて観察したところ、実質的に孔部一つにつき樹脂めっき粒子が一つずつ保持されていた。また、孔部内に保持された樹脂めっき粒子は、転写型の孔部形成面よりその頂部が僅かに突出されていた。
【0115】
以上により、規則的に配列された多数の各孔部内にそれぞれ一つずつ樹脂めっき粒子が保持された転写型を準備した。
【0116】
(粘着テープの準備)
粘着体として、以下の3種類の粘着テープ(1)〜(3)を準備した。
・粘着テープ(1):PET基材の表面に、アクリル系粘着剤層(厚み22μm)が形成された粘着テープ(フジモリ(株)製、「TFB4130」、粘着力=0.59N/25mm幅)。
・粘着テープ(2):PET基材の表面に、アクリル系粘着材料よりなる粘着層(厚み8μm)が形成された粘着テープ(きもと(株)製、「プロセーブMS75」、粘着力=0.19N/25mm幅)。
・粘着テープ(3):PET基材の表面に、アクリル系粘着材料よりなる粘着層(厚み8μm)が形成された粘着テープ(きもと(株)製、「プロセーブMS75」、粘着力=0.07N/25mm幅)。
【0117】
なお、上記準備した粘着テープの粘着力は、次のようにして求めた値である。すなわち、各粘着テープから25mm幅の試験片を採取し、採取した試験片を、ゴムロール(荷重2kg)にてPETフィルム(東レ(株)製、「ルミラー」)の表面処理がなされていない面に貼り合わせた。次いで、これを23℃、相対湿度50%の環境下に30分放置した後、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件でPETフィルムを剥離し、剥離強度(N/25mm)を求めた。3回測定した剥離強度の平均値を各粘着テープの粘着力とした。
【0118】
(高分子膜の準備)
接着性を有する高分子膜を以下の手順により準備した。すなわち、アルコール可溶ポリアミド系樹脂23.39質量部と、フェノキシ系樹脂(東都化成(株)製、「EFR−0010M30」)25.16質量部と、エポキシ系樹脂(東都化成(株)製、「FX289EK75」)4.9質量部と、エポキシ系樹脂(東都化成(株)製、「FX305EK70」)2.67質量部と、メラミン系樹脂(三和ケミカル(株)製、「ニカラックMX−750」)1.37質量部と、硬化剤(四国化成(株)製、「C11Z」)0.38質量部と、硬化剤(三菱ガス化学(株)製、「F−TMA」)0.57質量部と、メタノール24.26質量部と、トルエン48.05質量部と、メチルセロソルブ69.2質量部とを混合し、高分子溶液を調製した。
【0119】
次いで、コンマコーターを用い、連続的に供給されるベース基材(ポリエチレンテレフタレート、厚み38μm、リンテック(株)製「PET38X」)の離型面に、上記高分子溶液を塗工した。
【0120】
次いで、この塗工層を160℃で90秒間乾燥させ、ポリアミド系樹脂とフェノキシ系樹脂とを主成分とする樹脂よりなる平坦な高分子膜を形成した。その後、この高分子膜の表面に、セパレータ(ポリエチレンテレフタレート、厚み75μm、リンテック(株)製、「PET75C」)の離型面を合わせて巻き取った。
【0121】
これにより、ベース基材とセパレータとの間に挟持された、ポリアミド系樹脂とフェノキシ系樹脂とを主成分とする高分子膜(厚み1.5μm、幅100mm、20m)を準備した。なお、高分子膜を形成する樹脂材料の110℃における粘度は、1.0×10Pa・sであった。
【0122】
(粒子転写膜の作製)
先ず、粒子保持面を上向きにした状態で、転写型を基台上に載置・固定した。
【0123】
次いで、上記転写型の上方に、一対の支持ロール間に所定の張力で張った粘着テープ(1)を、粘着層が転写型と対向するように配置した。なお、粘着テープ(1)は、一方の供給源から連続的に供給され、他方の巻き取り源に連続的に巻き取り可能に設定されている。
【0124】
次いで、両支持ロールを下降させ、転写型の粒子保持面に粘着テープ(1)の粘着層を当接させ、粘着テープ(1)の基材表面に、室温下(非加熱下)、0.01〜1MPaの加圧力でゴムロールを押しつけ、当該ロールを0.5m/minで移動させることにより、室温加圧を行った。
【0125】
次いで、両支持ロールを上昇させ、転写型から粘着テープ(1)を引き離した。これにより、転写型の孔部内に保持されていた樹脂めっき粒子を、粘着テープ(1)の粘着層表面に一次転写させた。図5に一次転写後のSEM写真を示す。図5から分かるように、転写型の孔部の規則性を維持したまま、粘着テープ(1)の粘着層表面に樹脂めっき粒子を一次転写できていることが分かる。また、一次転写された樹脂めっき粒子は、その底部で粘着層表面に貼り付いており、その表面の大部分は露出された状態になっていることが分かる。
【0126】
次に、粘着テープ(1)の樹脂めっき粒子の転写面と、セパレータを剥離した高分子膜表面とを重ね合わせ、これを、加熱加圧ロールにより、温度110℃、加圧力5MPa、ロール速度0.2m/分の条件で、熱ラミネートした。次いで、上記熱ラミネート後、直ちに高分子膜から粘着テープ(1)を引き剥がした。
【0127】
これにより、粘着テープ(1)の粘着層表面に一次転写されていた樹脂めっき粒子を、高分子膜表面に二次転写し、実施例1に係る粒子転写膜を作製した。
【0128】
<実施例2>
実施例1に係る粒子転写膜の作製において、一次転写後に、転写型の大きさ分だけ、粘着テープ(1)を走行させた。
【0129】
次いで、樹脂めっき粒子が保持されている新たな転写型を基台上に載置・固定した。この際、粘着テープ(1)に一次転写されている樹脂めっき粒子と、新たな転写型に保持されている樹脂めっき粒子との位置を光学顕微鏡で確認し、同ピッチになるように位置合わせを行った。
【0130】
次いで、両支持ロールを下降させ、転写型の粒子保持面に粘着テープ(1)の粘着層を当接させ、それ以降、一次転写工程を繰り返し行った。そして、一次転写面にセパレータ(ポリエチレンテレフタレート、厚み50μm、リンテック(株)製、「PET5011」)の離型面を合わせながら、3インチコア管に巻き取った。これにより、粘着層表面に樹脂めっき粒子が転写された長尺物の粘着テープ(1)(長さ20m)を得た。
【0131】
以降は、この長尺物の粘着テープ(1)をセパレータを剥離しつつ巻き出し、実施例1と同様の熱ラミネートを行い(二次転写工程)、これにより、実施例2に係る長尺物の粒子転写膜(長さ20m)を作製した。
【0132】
<実施例3>
実施例1に係る粒子転写膜の作製において、粘着テープ(1)に代えて粘着テープ(2)を用いた以外は同様にして、実施例2に係る粒子転写膜を作製した。
【0133】
<実施例4>
実施例2に係る長尺物の粒子転写膜の作製において、粘着テープ(1)に代えて粘着テープ(2)を用いた以外は同様にして、実施例4に係る長尺物の粒子転写膜を作製した。
【0134】
<実施例5>
実施例1に係る粒子転写膜の作製において、粘着テープ(1)に代えて粘着テープ(3)を用いた以外は同様にして、実施例5に係る粒子転写膜を作製した。
【0135】
<実施例6>
実施例2に係る長尺物の粒子転写膜の作製において、粘着テープ(1)に代えて粘着テープ(3)を用いた以外は同様にして、実施例6に係る長尺物の粒子転写膜を作製した。
【0136】
<比較例1>
先ず、粒子保持面を上向きにした状態で、転写型を、基台上に載置・固定した。
【0137】
次いで、転写型の上方に、一対の支持ロール間に所定の張力で張った高分子膜を、高分子膜表面が転写型と対向するように配置した。
【0138】
次いで、両支持ロールを下降させ、転写型の粒子保持面に、セパレータを剥離した高分子膜表面を当接させ、高分子膜のベース基材表面に、温度130℃、0.01〜1MPaの加圧力でゴムロールを押しつけ、当該ロールを0.5m/minで移動させることにより、加熱加圧を行った。
【0139】
上記操作により、転写型の表面に高分子膜が貼り付いた状態になるので、高分子膜に空気を吹き付け、25℃まで冷却した。
【0140】
次いで、両支持ロールを上昇させ、転写型から高分子膜を引き離し、転写型の孔部内に保持されていた樹脂めっき粒子を直接、高分子膜表面に転写させた。
【0141】
これにより、高分子膜表面に樹脂めっき粒子が転写された、比較例1に係る粒子転写膜を作製した。
【0142】
<比較例2>
比較例1に係る粒子転写膜の作製において、転写後に、転写型の大きさ分だけ、高分子膜を走行させた。
【0143】
次いで、樹脂めっき粒子が保持されている新たな転写型を基台上に載置・固定した。この際、高分子膜に転写されている樹脂めっき粒子と、新たな転写型に保持されている樹脂めっき粒子との位置を光学顕微鏡で確認し、同ピッチになるように位置合わせを行った。
【0144】
次いで、両支持ロールを下降させ、転写型の粒子保持面に高分子膜表面を当接させ、それ以降、同じ操作を繰り返し行った。これにより、比較例2に係る長尺物の粒子転写膜(長さ20m)を作製した。
【0145】
2.評価
(転写性評価)
一次転写前後における転写型上の粒子残存状態をマイクロスコープにて観察した。そして、転写型からの転写率を次の計算より求めた。
転写率(%)=100−(一次転写後に転写型上に残存している粒子数)/(転 写型表面の孔部数)×100
また、二次転写後における粘着テープ上の粒子残存状態をマイクロスコープにて観察した。
【0146】
(一次転写後の巻き取りによる粒子位置ズレ)
繰り返し一次転写を行い、長尺の一次転写粒子付き粘着テープ、高分子膜を作製した実施例、比較例については、当該粘着テープ、高分子膜を巻き出し、巻き取りに起因する粒子の位置ズレをマイクロスコープにて観察した。その結果、粒子の配列がほとんど維持され、巻き取りによる粒子位置ズレが生じていなかった場合を、位置ズレ抑制効果が極めて高いとして「◎」、粒子位置ズレがわずかに生じた場合を、位置ズレ抑制効果があるとして「○」、粒子が全て位置ズレした場合を、位置ズレ抑制効果がないとして「×」と評価した。
【0147】
以上の結果を、各条件とともにまとめて表1に示す。
【0148】
【表1】

【0149】
3.結果
表1を相対比較すると以下のことが分かる。すなわち、比較例1、2では、転写型の孔部内に保持された粒子を、直接、高分子膜に転写している。そのため、高分子膜を軟化させるために加熱が必要になる上、加熱しても、転写率が低く、転写型からの転写性が悪いことが分かる。つまり、得られた粒子転写膜を用いて、例えば、異方性導電膜を作製した場合には、未転写部位に起因して導通性能の低下を招きやすくなることが分かる。
【0150】
これに対し、実施例では、何れも転写型の孔部内に保持された粒子を粘着テープに一次転写し、この一次転写された粒子を高分子膜に二次転写している。そのため、加熱を行わなくても、転写型から高い転写率で、かつ、粒子配列を維持したまま、粒子を粘着テープに一次転写可能なことが分かる。また、粘着テープに一次転写された粒子は、その底部で粘着テープに貼り付いており、その表面の大部分が露出されている。それ故、加熱により軟化した高分子膜とより多くの粒子表面で接触し、良好な転写性で高分子膜側に二次転写可能なことが分かる。したがって、得られた粒子転写膜を用いて、例えば、異方性導電膜を作製した場合には、従来よりも未転写部位が少ないため、これに起因する導通性能の低下を招き難いことが分かる。
【0151】
また、実施例同士を比較すると、粘着テープの粘着力が0.1N/25mm幅以上であれば、長尺の粒子転写膜を製造するにあたり、一次転写粒子付き粘着テープを長尺化し、これを巻き取りしても巻き取りによる粒子の位置ズレが生じ難いと言える。そのため、巻き取りによる粒子位置ズレの影響を回避して、粒子配列の良好な長尺な粒子転写膜を製造しやすくなることが分かる。また、粘着テープの粘着力が0.6N/25mm幅以下であれば、一次転写時に転写型との離型も良好にできることが分かる。
【0152】
4.異方性導電膜の作製
次に、得られた実施例に係る各粒子転写膜を用い、実施例に係る各異方性導電膜を以下の手順により作製した。
【0153】
先ず、粒子転写膜表面にセパレータ(ポリエチレンテレフタレート、厚み38μm、リンテック(株)製「PET38C」)を重ね、これを、温度140℃、加圧力0.1MPa、加熱加圧時間60秒の条件で、熱ラミネートした。
【0154】
これにより、高分子膜表面に転写された樹脂めっき粒子を、その規則的な配列を維持したまま膜内に埋め込んだ。
【0155】
次に、ジシクロペンタジエン型エポキシ系樹脂(大日本インキ(株)製、「エピクロンHP7200HH」)90質量部と、ニトリルゴム(NBR)(日本ゼオン(株)製、「ニポール1072J」)10質量部と、硬化剤(旭化成ケミカルズ(株)製、「ノバキュアHXA3932HP」)187質量部とを、固形分量が42%となるようにトルエンにて希釈し、接着剤溶液を調製した。
【0156】
次いで、コンマコーターを用い、連続的に供給されるベース基材(ポリエチレンテレフタレート、厚み38μm、リンテック(株)製「PET38C」)の離型面に、上記接着剤溶液を塗工した。
【0157】
次いで、この塗工層を110℃で90秒間乾燥させ、接着層(厚み20μm)を形成した。その後、この接着層の表面に、セパレータ(ポリエチレンテレフタレート、厚み38μm、リンテック(株)製、「PET38B」)の離型面を合わせて巻き取った。
【0158】
これにより、ベース基材とセパレータとの間に挟持された接着層を用意した。
【0159】
次に、上記セパレータを剥離して露出させた接着層の表面と、上記粒子転写膜の表面(転写面側)とを重ね合わせ、これを貼り合わせた。
【0160】
以上により、粒子転写膜の片面に接着層を形成した。
【0161】
上記の通りにして、粒子転写膜と接着層の2層構造からなる各異方性導電膜を作製した。
【0162】
以上、本発明の一実施形態、一実施例について説明したが、本発明は上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】本実施形態に係る粒子転写膜の製造方法における一次転写工程の具体例を模式的に示した図である。
【図2】本実施形態に係る粒子転写膜の製造方法における二次転写工程の具体例を模式的に示した図である。
【図3】本実施形態に係る粒子転写膜の製造方法において、一次転写工程を繰り返し行う場合を模式的に示した図である。
【図4】本実施形態に係る異方性導電膜の一例を模式的に示した断面図である。
【図5】実施例1における一次転写後のSEM写真を示した図である。
【符号の説明】
【0164】
10 転写型
10a 孔部
12 粒子
14 粘着体
14a 基材
14b 粘着層
15 加圧ロール
16 高分子膜
16a 基材
18 加熱・加圧ロール
20 粒子転写膜
30 異方性導電膜
32 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の孔部を表面に有する転写型の孔部内に保持された粒子を、粘着体の表面に一次転写する一次転写工程と、
前記粘着体表面の粒子を、高分子膜の表面に加熱・加圧により二次転写する二次転写工程と、
を有することを特徴とする粒子転写膜の製造方法。
【請求項2】
前記粘着体が熱硬化性粘着材料より形成されていることを特徴とする請求項1に記載の粒子転写膜の製造方法。
【請求項3】
前記二次転写工程において、前記加熱による温度が失われる前に、前記粘着体と前記高分子膜とを分離することを特徴とする請求項1または2に記載の粒子転写膜の製造方法。
【請求項4】
前記粘着体の粘着力は、ポリエチレンテレフタレートに対する25℃における剥離強度で0.1〜0.6N/25mm幅の範囲内にあることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の粒子転写膜の製造方法。
【請求項5】
前記高分子膜は、二次転写温度において2×10Pa・s以下の粘度を有する材料より形成されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の粒子転写膜の製造方法。
【請求項6】
前記一次転写工程を繰り返すことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の粒子転写膜の製造方法。
【請求項7】
前記粒子は、導電性粒子であることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の粒子転写膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7の何れかに記載の粒子転写膜の製造方法により得られた粒子転写膜。
【請求項9】
請求項7に記載の粒子転写膜の製造方法により得られた粒子転写膜を用いた異方性導電膜。
【請求項10】
請求項7に記載の粒子転写膜の製造方法により得られた粒子転写膜を用い、前記導電性粒子を高分子膜に埋め込んで保持させる工程と、
前記導電性粒子を保持させた高分子膜の片面に接着層を形成する工程と、
を有する異方性導電膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−33793(P2010−33793A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193016(P2008−193016)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】