説明

粘性流体封入ダンパー

【課題】駆動機構として回転体を備える駆動装置に対する安定した支持力と優れた振動減衰性を発揮することのできるダンパーを提供する。
【解決手段】粘性流体封入ダンパー1は、厚肉の筒状支持部8で駆動装置の自重を支持し、筒状支持部8の上端部とベローズ部7の連結部7dに設けた滑材10によって駆動装置の側方変位をスムーズに行えるようにし、その側方変位をベローズ部7の弾性変形と、それによる粘性流体3の攪拌抵抗によって減衰させる。こうした防振メカニズムを採用することで、従来の防振ゴムでは不可能であった高い振動減衰性能を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駆動装置、特にエンジン、モータ、発電機、圧縮機等の回転体の駆動により振動を発生する駆動装置の振動減衰に好適な粘性流体封入ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン、モータ、発電機、圧縮機等のように駆動機構として回転体を備える駆動装置では、回転体の回転始動、運転(連続回転)、回転停止の駆動サイクルを繰り返すことで加振源となり騒音を発生することから振動対策や防音対策の必要性が高い。その一例として特許文献1にはゴム材料を金型成形した座金状の防振ゴムで駆動装置(冷却ファン)を防振支持する例が開示されている。また、特許文献2には緩衝ゴムで駆動装置(圧縮機)を防振支持する例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−270975号公報
【特許文献2】特開平10−238928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところがこうした従来の防振ゴムでは必ずしも十分な防振性能を発揮できていない。即ち、前述のような駆動機構として回転体を備える駆動装置には、回転体の回転数に応じた振動が発生するため、駆動装置はその影響を受け、始動、停止等の回転数が大きく変化する際に側方(回転半径方向)へ大きな変位を生じる。こうした駆動装置の側方変位を効果的に減衰させるには、従来のゴム材料を金型成形した防振ゴムの場合、防振ゴム自体の硬度を柔らかくすることが有効であるものの、駆動装置の自重を支える支持力が低下して歪みやすくなり駆動装置の取付状態が不安定になるおそれがある。このように駆動機構として回転体を備える駆動装置に対する防振性能を高めつつ支持力を低下させずに安定した取付状態を得るにはダンパーの構造を抜本的に見直す必要がある。
【0005】
以上のような従来技術を背景になされたのが本発明である。その目的は駆動機構として回転体を備える駆動装置に対する安定した支持力と優れた振動減衰性を発揮することのできる新しいダンパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明は以下のとおり構成される。
【0007】
(1)本発明は、中空の密閉容器と、密閉容器に充填した粘性流体とを備えており、振動を発生し側方変位する駆動装置の環状取付部と駆動装置を支持する支持体との間に取付けられて駆動装置を防振支持する粘性流体封入ダンパーについて、前記密閉容器が、前記環状取付部が載置されて駆動装置の自重を弾性支持する厚肉のゴム状弾性体でなる筒状支持部と、筒状支持部の内側に設けられ側方変位する前記環状取付部を受けて弾性変形する薄膜状のゴム状弾性体でなるベローズ部と、側方変位する前記環状取付部と接触して滑り性を高める滑材とを備えることを特徴とする。
【0008】
前記密閉容器は、前記環状取付部が載置されて駆動装置の自重を弾性支持する厚肉のゴム状弾性体でなる筒状支持部を備える。このため駆動装置が重量物であっても確実に支持することができる。また自重の支持のみならず駆動装置の駆動サイクルで発生する上下方向での振動も減衰させることができる。
前記密閉容器は、筒状支持部の内側に設けられ側方変位する前記環状取付部を受けて弾性変形する薄膜状のゴム状弾性体でなるベローズ部を備える。このため駆動装置の駆動サイクルで発生する側方変位による振動や衝撃を薄膜状の柔らかいベローズ部によって緩衝するとともに減衰させることができる。
前記密閉容器は、側方変位する前記環状取付部と接触して滑り性を高める滑材を備える。このように滑材によって重量物である駆動装置の環状取付部の側方変位を容易にすることで、環状取付部をスムーズにベローズ部に突き当てて駆動装置の振動や衝撃をさらに効果的に減衰することができる。
【0009】
(2)前記本発明については、ベローズ部の外周面に環状取付部に向けて突出し密接する外部突起を設ける。
駆動装置の環状取付部はベローズ部と離れているよりも常時接触している方が、側方変位の開始時点からベローズ部と粘性流体による減衰効果を発揮できるため好ましい。しかしながら環状取付部とベローズ部とが寸分違わずちょうど接触するように製造することは加工精度や公差を考慮すると難しい。そこで本発明ではベローズ部に外部突起を設け、それを環状取付部に密着させることで、製造上の加工精度や公差に拘わらず常時密着状態を得るようにし優れた振動減衰効果を発揮することができるようにしている。
【0010】
(3)前記本発明については、ベローズ部の内周面に密閉容器の内部に向けて突出する内部突起を設ける。
本発明では駆動装置の環状取付部が大きく側方変位した際に内部突起が突っ張ってベローズ部の過剰な潰れ変形を阻止し、ベローズ部の内部に粘性流体が存在する内部空間を確保し続けることができる。したがってベローズ部が大きく弾性変形しても、粘性流体の攪拌抵抗による振動減衰効果を発揮することができる。
【0011】
(4)前記本発明については、滑材が樹脂粉末、無機粉末、樹脂フィルム、粘性液体、ゲル状弾性体の何れかとすることができる。
本発明によればこれらの滑材を使った簡易な方法で駆動装置の側方変位をスムーズに行わせることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による粘性流体封入ダンパーによれば、筒状支持部によって駆動装置に対する支持力を発揮することができる。また、側方変位する駆動装置の環状取付部をベローズ部で受け止めてベローズ部の弾性変形と粘性流体の攪拌抵抗によって振動を減衰し、滑材でその環状取付部の側方変位をスムーズに行わせることで、従来の防振ゴムでは不可能であった振動減衰性能を発揮することができる。よって、本発明の粘性流体封入ダンパーは駆動機構として回転体を備える駆動装置の防振に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態による粘性流体封入ダンパーの中央縦断面図。
【図2】図1の粘性流体封入ダンパーの使用状態参考図。
【図3】図1の粘性流体封入ダンパーの説明図で、分図(A)は設置状態説明図、分図(B)は動作説明図。
【図4】図1で示す滑材の他の実施形態を示す図1のSA部相当の拡大断面図。
【図5】図1で示すベローズ部の他の実施形態を示す説明図。
【図6】図1で示すベローズ部の他の実施形態を示す図1SA部相当の拡大断面図。
【図7】図1で示すベローズ部の他の実施形態を示す図1SA部相当の拡大断面図。
【図8】図1の粘性流体封入ダンパーの他の実施形態を示す中央縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態による粘性流体封入ダンパーを説明する。
【0015】
粘性流体封入ダンパー1の構成〔図1〕
本実施形態の粘性流体封入ダンパー1は中空の密閉容器2に粘性流体3を封入して構成され、密閉容器2は容器本体4の開口端を蓋体5で密閉したものである。
【0016】
容器本体4は内周側から軸受け部6、ベローズ部7、筒状支持部8、環状端部9により構成される。
【0017】
軸受け部6は、本実施形態では硬質樹脂にて有底の円筒状に形成されている。その中心軸上には内周面にネジ溝が形成された軸孔6aが形成されている。軸受け部6の外周面には段部6bが形成されており、その外周側にベローズ部7の内周側端部が一体に連結している。軸受け部6の外周面は、段部6bの下側の大径部6cではベローズ部7の内周側の内側面と面一に形成されており、段部6bの上側の小径部6dではベローズ部7の内周側の外側面(後述の内周部7a)と隙間6eを介して離間している。
【0018】
ベローズ部7はゴム状弾性体でなる柔らかい薄膜状に形成されており、内周から外周にかけて円筒状の内周部7a、円環状の上面部7b、円筒状の側方支持部7c、円環状の連結部7dが形成されている。
内周部7aは前述のとおり軸受け部6の小径部6dと隙間6eを介して離間して形成されている。上面部7bは内周部7aの上端位置から外方に水平に屈曲する環状平面として形成されている。側方支持部7cは、上面部7bの外周側端部から下方に垂下する円筒状の弾性薄膜として形成されている。側方支持部7cの高さは後述する駆動装置の環状取付部の板厚よりも十分大きく形成されている。連結部7dは側方支持部7cの下端位置から外方に水平に屈曲する環状平面として形成されている。
前述のとおり本実施形態のベローズ部7と軸受け部6の間には隙間6eが形成されており、ベローズ部7の内周部7aの下端部と軸受け部6の大径部6cとを連結する構造としているが、例えばベローズ部7の上端部(後述の上面部7b)と軸受け部6の上端部とを連結する構造と比較すると、次のような利点がある。
第1に、ベローズ部7が長くなるため、作用する負荷に対するベローズ部7の弾性変形余裕が大きくなりベローズ部7と軸受け部6との連結箇所にかかる負荷を軽減してベローズ部7の端部が軸受け部6から剥がれにくくすることができる。
第2に、隙間6eがあることによって、後述する駆動装置11の環状取付部11bの押圧された際に、ベローズ部7全体が大きく倒れるように変形することが可能となって振動減衰性能を向上することができる。
【0019】
筒状支持部8は円筒状に形成されて容器本体4の大径の外周壁を構成し、ゴム状弾性体にて厚肉に形成されている。即ち駆動装置の自重を腰折れしたり過度に歪むことなく支持することのできる厚みで形成されている。筒状支持部8の下端部には硬質樹脂で形成された環状端部9が一体形成されている。環状端部9は容器本体5の開口端であり、後述の蓋体5と相互に固着される。その固着方法として本実施形態では超音波融着される。
【0020】
蓋体5は硬質樹脂の成形体にて形成されており、外周から内周にかけて円環状のフランジ部5a、円筒状の筒状部5b、円板状の上面部5cが形成されている。
フランジ部5aは、容器本体4の環状端部9と相互に固着されることで、容器本体4の開口端を液密に封止する。その固着方法として本実施形態では超音波融着を行い、それらの界面には接合面が形成されている。またフランジ部5aには粘性流体封入ダンパー1を固定する2つの取付孔5dが形成されている。
筒状部5bは円筒状に形成されており、蓋体5を容器本体4に固着する際に、筒状支持部8の内周面下端側に挿入されて内側から当接し支持する。これにより筒状支持部8の支持力を内側から増強することができ、過剰に歪んだり腰折れすることなく駆動装置の重量を確実に支持できるようにしている。
【0021】
10は滑材であり、本実施形態では筒状支持部8の上端部とベローズ部7の連結部7dの上面部とを被覆するように設けられている。筒状支持部8には後述する駆動装置の環状取付部が載置され、それらの界面に滑材10を介在させることで、環状取付部をスムーズにベローズ部7の側方支持部7cに向けて滑らせることができるようになる(後述)。
【0022】
粘性流体封入ダンパー1の各部の材質
容器本体4のベローズ部7、筒状支持部8はゴム状弾性体で形成される。そのゴム状弾性体としては、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム等の合成ゴムを使用することができる。この中でも本実施形態では、振動減衰性、耐ガス透過性、耐摩耗性等に優れるブチルゴムを使用する。なお、ブチルゴム等の合成ゴムの他には熱可塑性エラストマーを使用することもでき、この場合インサート成形に代えて二色成形で成形してもよい。
【0023】
容器本体4の軸受け部6、環状端部9、蓋体7は硬質樹脂にて形成される。具体的にはポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂で形成することができる。
【0024】
そして本実施形態では容器本体4を、軸受け部6、ベローズ部7、環状端部9をインサート成形により一部品として成形する。また、密閉容器2の外周側では容器本体4の環状端部9と蓋体7のフランジ5aとを超音波融着により強固に固着した接合面を形成する。
【0025】
滑材10としては、樹脂粉末、無機粉末、樹脂フィルム、粘性液体、ゲル状弾性体を使用することができる。具体的には、樹脂粉末の材質としてはフッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等を、無機粉末の材質としてはアルミナ、シリカ、窒化ホウ素、モリブデン等を使用することができる。樹脂フィルムの材質としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂等を用いることができ、前述の樹脂粉末や無機粉末のように脱落による滑性低下のおそれがない点でより好ましい。粘性液体としては、粘性のあるオイル状の液体を用いることができ、具体的にはパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族オイル、α−オレフィン系オイル等の鉱物油系オイルや、ひまし油、なたね油等の植物系オイルや、シリコーン系オイル等を使用することができる。ゲル状弾性体の材質としては、例えばシリコーン系ゲル、アクリル系ゲル等を使用することができる。
【0026】
粘性流体3としては、液体及び液体に反応・溶解しない固体粒子を添加したものが用いられる。なかでも耐熱性、信頼性、防振特性や制振特性等の要求特性に応じてシリコーンオイル及びシリコーンオイルに反応・溶解しない固体粒子を分散させたものを使用できる。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等を使用できる。反応・溶解しない固体粒子としては、シリコーンレジン粉末、ポリメチルシルセスキオキサン粉末、湿式シリカ粒、乾式シリカ粒等や、これらの表面処理品等を使用可能で、それらを単独で又は数種類を組み合わせて使用することも可能である。
【0027】
粘性流体封入ダンパー1の使用形態〔図2、図3〕
本実施形態の粘性流体封入ダンパー1は、例えば図2で示すように使用される。
11は駆動装置であり、具体的には例えばエンジン、モータ、発電機、圧縮機等の回転体の駆動により振動を発生する駆動装置である。駆動装置11は回転体の回転始動、運転(連続回転)、回転停止の駆動サイクルが切り替わる際に、側方への大きな変位(水平方向への変位)を生じる。この側方変位による振動を粘性流体封入ダンパー1で減衰させる。
そのために駆動装置11の筐体11aには板片状の環状取付部11bが突出して形成されており、その中央には係合孔11cが板厚を貫通して形成されている。なお、本実施形態の環状取付部11bは無端環状のものを例示しているが、有端環状のものでもよい。
そして粘性流体封入ダンパー1のベローズ部7の側方支持部7cの外周に、環状取付部11bの係合孔11cを係合させて、上からワッシャーネジのような固定部材12を差し込んで軸受け部6の軸孔6aと螺合させることで、粘性流体封入ダンパー1と駆動装置11とを固定する。
また、粘性流体封入ダンパー1自体は、蓋体5の取付孔5dにネジのような固定部材13を挿通し、固定部材13を駆動装置11を設置する「支持体」としての構造部材14に対して固定する。
【0028】
粘性流体封入ダンパー1の作用・効果〔図3〕
既に説明した作用・効果に加えて本実施形態の粘性流体封入ダンパー1は、以下の作用・効果を発揮することができる。
【0029】
粘性流体封入ダンパー1の密閉容器2の筒状支持部8は厚肉のゴム状弾性体で形成されている。このため駆動装置11の重量を確実に支持する支持力を発揮することができる。また自重の支持だけでなく、駆動装置11の駆動サイクルで発生する上下方向での振動も減衰させることができる。
【0030】
密閉容器2のベローズ部7には、側方変位する駆動装置11を環状取付部11bの係合孔11cと当接して弾性変形し受け止める側方支持部7cが形成されている。このため駆動装置11の駆動サイクルで発生する振動による側方変位を薄膜状の柔らかい側方支持部7cの弾性変形によって緩衝するとともに、弾性変形による粘性流体3の攪拌抵抗によって減衰させることができる(図3(B))。
【0031】
密閉容器2には、筒状支持部8の上端部とベローズ部7の連結部7dの上面部とを被覆する滑材10を備える。この滑材10は側方変位する環状取付部11bの滑り性を高める。こうして重量物である駆動装置11を側方変位させる際の環状取付部11bと密閉容器2との間に生じる摺動抵抗を減らすことで、環状取付部11bをスムーズにベローズ部7の側方支持部7cに突き当てて駆動装置11の振動や衝撃をさらに効果的に減衰させることが可能となる。
【0032】
以上のように本実施形態の粘性流体封入ダンパー1では、筒状支持部8の上端部とベローズ部7の連結部7dに設けた滑材10によって駆動装置11の側方変位をスムーズにし、その側方変位をベローズ部7の弾性変形と、それによる粘性流体3の攪拌抵抗によって減衰させる防振メカニズムを採用することで、従来の防振ゴムでは不可能であった、高い振動減衰性能を発揮することができる。
【0033】
粘性流体封入ダンパー1の細部構造の他の実施形態〔図4〜図8〕
(1)滑材10の他の実施形態〔図4〕
滑材10については、例えば筒状支持部8の上端部にのみ設けるものとして構成してもよい(図4(A))。また、滑材10としては、ゲル状弾性体を使用することができ、この場合0.5mm以上の厚みのものを使用するのが好ましい(図4(B))。さらに滑材10としては樹脂フィルムを使用することができる(図4(C))。
なお、以上の例では筒状支持部8の上端部とベローズ部7の連結部7dとの間に段差を形成する構成としている。この縦壁となる段差があることで、側方変位する環状取付部11bとの摺動によって滑材10が筒状支持部8の上端部を超えて外側に脱落しないように、滑材10を高さの低い連結部7dに留めることができる。しかしながら例えば滑材10として樹脂フィルムを使用する場合であれば、例えば図4(D)で示すように段差のない面一に形成してもよい。
【0034】
(2)ベローズ部7の他の実施形態(1)〔図5〕
ベローズ部7の外周面(側方支持部7c)については、凹凸の無い円筒形状のものを例示したが、図5で示すように環状取付部11bの係合孔11cに向けて断面球面状に突出し、係合孔11cの孔縁と全周にわたって密接する「外部突起」としての膨出部7eを設けることができる。
駆動装置11の環状取付部11bは、ベローズ部7と離れているよりも常時接触している方が、側方変位の開始時点からベローズ部7と粘性流体3による減衰効果を発揮できるため好ましい。しかしながら環状取付部11bの係合孔11cとベローズ部7の側方支持部7cとが寸分違わずちょうど接触するように製造することは加工精度や公差を考慮すると難しく、両者の間に隙間dができてしまうことがある(図5(A)(C))。
こうした隙間dの発生を解消するために、ベローズ部7に膨出部7eを設けるようにし(図5(C))、それを環状取付部11bの係合孔11cに食い込ませるように密着させる(図5(B)(D))。これによって製造上の加工精度や公差に拘わらず常時密着状態を得るようにし優れた振動減衰効果を発揮することができるようにしている。
【0035】
(3)ベローズ部7の他の実施形態(2)〔図6〕
図5では球面状に突出する膨出部7eを例示したが、例えば図6で示すように側方支持部7cを傾斜面として形成してもよい。これによっても隙間dの発生を解消することができる。また、側方支持部7cを傾斜面とすることで環状取付部11bを上から押さえ付けることができるので、上下方向の振動減衰性能を高めることが可能である。
【0036】
(4)ベローズ部7の他の実施形態(3)〔図7〕
ベローズ部7については内周面に密閉容器2の内部に向けて突出する内部突起7fを設けることができる。
内部突起7fの無い前記実施形態では、駆動装置11の環状取付部11bが大きく側方変位することで、側方支持部7cが内周部7aと接触してしまう程、ベローズ部7が大きく潰れ変形してしまう場合がある。そうするとベローズ部7の内部から減衰効果を発揮する粘性流体3が押し出されてしまい、ベローズ部7の内部における減衰効果が低下するおそれがある。
そこで本実施形態では内部突起7fを設け、大きく側方変位した場合でも内部突起7fが突っ張ってベローズ部7の過剰な潰れ変形を阻止し、ベローズ部7の内部に粘性流体3が存在する内部空間を確保し続けることができるようにしている。したがって大きな側方変位によりベローズ部7が弾性変形しても、粘性流体3の攪拌抵抗による振動減衰効果を発揮することができる。
こうした内部突起7fは、例えば側方支持部7cの内側面に形成したり(図7(A))、内周部7aの内側面に設けることができる(図7(B))。また、図7(C)で示すように、側方支持部7cに外側面に前述の膨出部7eを、内側面に内部突起7fを形成してもよい。さらに図7(D)で示すように側方支持部7cに外側面に前述の膨出部7eを、内周部7aに内部突起7fを設ける構成としてもよい。
なお、内部突起7fは内周部7aの全周にわたって断面球状に膨出する形状として形成しているが、上記と同様の作用・効果を発揮できれば他の形状でもよい。
【0037】
(5)軸受け部6の他の実施形態〔図8〕
軸受け部6については底面が蓋体5の上面部5cと離間するものを例示したが、例えば図8で示すように接触するものとして構成してもよい。この構成によれば軸受け部6の剛性が高くなり固定部材の取付けが容易になる。また、粘性流体3への剪断が掛かりやすくなることから、振動抑制効果を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明にかかる粘性流体封入ダンパーは、エンジン、モータ、発電機、圧縮機等のように駆動機構として回転体を備える駆動装置に適した振動減衰効果を発揮するので、駆動装置や駆動装置を備える機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 粘性流体封入ダンパー
2 密閉容器
3 粘性流体
4 容器本体
5 蓋体
5a フランジ部
5b 筒状部
5c 上面部
5d 取付孔
6 軸受け部
6a 軸孔
6b 段部
6c 大径部
6d 小径部
6e 隙間
7 ベローズ部
7a 内周部
7b 上面部
7c 側方支持部
7d 連結部
7e 膨出部(外部突起)
7f 内部突起
8 筒状支持部
9 環状端部
10 滑材
11 駆動装置
11a 筐体
11b 環状取付部
11c 係合孔
12、13 固定部材
14 構造部材(支持体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の密閉容器と、
密閉容器に充填した粘性流体とを備えており、
振動を発生し側方変位する駆動装置の環状取付部と駆動装置を支持する支持体との間に取付けられて駆動装置を防振支持する粘性流体封入ダンパーにおいて、
前記密閉容器は、
前記環状取付部が載置されて駆動装置の自重を弾性支持する厚肉のゴム状弾性体でなる筒状支持部と、
筒状支持部の内側に設けられ側方変位する前記環状取付部を受けて弾性変形する薄膜状のゴム状弾性体でなるベローズ部と、
側方変位する前記環状取付部と接触して滑り性を高める滑材とを備えることを特徴とする粘性流体封入ダンパー。
【請求項2】
ベローズ部の外周面に環状取付部に向けて突出し密接する外部突起を設ける請求項1記載の粘性流体封入ダンパー。
【請求項3】
ベローズ部の内周面に密閉容器の内部に向けて突出する内部突起を設ける請求項1または請求項2記載の粘性流体封入ダンパー。
【請求項4】
滑材が樹脂粉末、無機粉末、樹脂フィルム、粘性液体、ゲル状弾性体の何れかである請求項1〜請求項4何れか1項記載の粘性流体封入ダンパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−53701(P2013−53701A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193173(P2011−193173)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】