説明

粘着シート及びその剥離方法

【課題】皮膚との一定期間の接着後に、粘着シートの表面から適切な液体を塗布した場合に、刺激がなく容易に剥離することができる粘着シートを提供する。
【解決手段】網目状パターンを持つ粘着剤層と、該粘着剤層を支持している基材とを有する粘着シートであって、
前記粘着剤層は、前記網目状パターンの開口部の合計面積が前記粘着シートの面積を基準として15〜60%であり、前記開口部の長手方向の目合い(A)が0.5〜15mm、横手方向の目合い(B)が0.5〜3mmであり、但し、前記目合い(A)及び(B)はそれぞれ前記網目の開口部を構成する四辺形の対角線の長さであり、
前記基材は透水性を有することを特徴とする、粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着シート及びその剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用粘着シートは、一般に、人体の皮膚に対して一定の期間にわたって直接貼付される。そのため医療用粘着シートには、透湿性や通気性が求められる。例えば、透湿性や通気性に乏しい医療用粘着テープを適用した場合、貼付されている皮膚の発汗が阻害されて、皮膚がむれてしまい、皮膚かぶれを誘発する場合がある。特に発汗の多い夏場などにはその傾向が顕著である。この問題を解決するために、たとえば、特許文献1(米国特許第5,641,506号明細書)は粘着剤を基材表面にパターン状に設けられた粘着剤層を備える接着性物品を開示している。
【0003】
医療用粘着シートは人体の皮膚に対して一定の期間にわたって直接貼付された後には必ず皮膚から剥離除去される。粘着シートを皮膚から剥離除去させる際には、痛みを感じることもしばしばであり、場合によっては剥離除去の際の機械刺激によって皮膚カブレを誘発することもある。そこで、特許文献2(特開平11−192297号公報)には、剥離時の痛みを緩和するため、水や親水性媒体の接触によって粘着性を発揮する湿潤粘着剤を皮膚面接触基剤層とする、医療用貼付剤を使用することが記載されている。この医療用貼付剤は、剥離除去時には透湿性基材を通して皮膚接触基材層に水や親水性媒体を供給することによって、凝集力や粘着力を低下させ、剥離している。
【0004】
しかしながら、上述する従来の水や親水性媒体を供給して剥離する医療用粘着シートは、図1の断面図に示すように、粘着剤層が基材の全面に均一に塗布されている。このため、透水性を有する基材1’上に粘着剤層2’を有する粘着シート10’を剥離除去する際に、粘着剤層2’の皮膚3’への接着力を低下させて皮膚刺激を低下させるために、基材1’上に水、消毒用アルコール又は除菌ローションなどの液剤(L’)を供給する場合、粘着剤層2’が液剤を遮蔽するために粘着剤層と皮膚の間に液剤を効率よく導くことができない。すなわち、透水性を有する基材1’を用いていたとしても、粘着剤層2’が全面に塗布されているために、液剤(L’)は図1中の界面(X’)より先、すなわち皮膚3’側に浸透して行くことができない。例えば、10×10cm程度の粘着シートの上から液剤を供給した場合、粘着シートと皮膚の界面に供給された液剤がその粘着シートの中央部へ到達するには、粘着シートの端部から徐々に浸透して行くのを待つほかなく、迅速性が必要な医療現場においては望ましいことではない。
【0005】
また、基材上から液剤を供給した場合に、粘着剤層が液剤を遮蔽するので、粘着剤層と基材の間に液剤が容易に入り込み、粘着剤層と基材の間の投錨力が低下してしまい、粘着シートを剥離除去しようとした際に、基材と粘着剤層の界面(図1、界面(X’))で剥離が発生し、皮膚には粘着剤層がそのまま残る場合がある。
【0006】
一方、従来のパターン状に粘着剤を設けた粘着シートでは、通気性を確保する程度の開口部の密度しかなく、液剤を透過させたときに、粘着剤層と皮膚との間の接着力を低下させるには不十分であった。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,641,506号明細書
【特許文献2】特開平11−192297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、皮膚との一定期間の接着後に、粘着シートの表面から適切な液剤を塗布した場合に、接着力を低下させ、刺激がなく容易に剥離することができる粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一つの態様によると、網目状パターンを持つ粘着剤層と、該粘着剤層を支持している基材とを有する粘着シートであって、
前記粘着剤層は、前記網目状パターンの開口部の合計面積が前記粘着シートの面積を基準として15〜60%であり、前記開口部の長手方向の目合い(A)が0.5〜15mm、横手方向の目合い(B)が0.5〜3mmであり、但し、前記目合い(A)及び(B)はそれぞれ前記網目の開口部を構成する四辺形の対角線の長さであり、
前記基材は透水性を有することを特徴とする、粘着シートを提供する。
【0010】
また、本発明は別の態様によると、少なくとも1種の、1〜18個の炭素原子を有するアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、50質量部以上100質量部以下、及び、
少なくとも1種の共重合性モノマー、0質量部を超え50質量部以下、
を含むフリーラジカル重合性組成物の重合生成物を含む粘着剤を有する上述の粘着シートの製造方法であって、
前記フリーラジカル重合性組成物に、300nmより長い波長の最大スペクトル出力を有する第一の放射線を露光し、部分重合組成物を形成する工程と、
得られた前記部分重合組成物を基材表面に網目状パターンとなるように塗工する工程と、
300nmよりも短い波長の最大スペクトル出力を有する第二の放射線源で、塗工された組成物を露光する工程と
を有する粘着シートの製造方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明は別の態様によると、皮膚上に付着した上述の粘着シート表面に、水、消毒用アルコール及び除菌ローションからなる群より選ばれる液剤を供給した後、前記粘着シートを剥離する、粘着シートの剥離方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粘着シート及びその剥離方法によれば、水、消毒用アルコール又は除菌ローションなどの液剤等を基材の上から塗布することで、粘着シートと皮膚との粘着力を低下させ、皮膚に刺激がなく容易に該粘着シートを剥離することができる。また、本発明の製造方法による粘着シートによれば、接着剤に十分な凝集力をもたせることで、液剤による凝集力の低下が抑制できるので、剥離時の糊残りを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明をその好適な態様に基づいて説明するが、本発明はその具体的な態様に限定されない。
本発明の粘着シートは、透水性のある基材の上に、細かい網目状パターンで塗布された粘着剤層を有するものである。図2は本発明の実施の形態の粘着シートの一態様の断面模式図を示している。粘着シート10を皮膚3に一定期間適用した後に、粘着シート10の基材1の上から水、消毒用アルコール又は除菌ローションなどの医療現場や家庭に常備されているような一般的な液剤(L)を塗布すると、基材1をとおして液剤(L)が浸透し、粘着剤層2の網目状パターンの開口部をとおして液剤(L)が皮膚へと到達し、粘着剤層2と皮膚3との界面(Y)において、粘着剤の接着力を低下させ、容易に剥離を行えるようになっている。
【0014】
図3は本発明の実施形態の粘着シートの粘着剤層の網目状パターンの上面図を示す。上述の効果を奏するためには、粘着シートの粘着剤のない部分、すなわち、網目の開口部の合計面積は粘着シートの面積を基準として15〜60%であり、より好ましくは、25〜50%である。粘着剤層の開口部の面積が60%を超えると、使用の間に十分な接着力が得られず、皮膚からの浮きはがれを生じる。一方、粘着剤層の開口部の面積が15%未満であると、水やアルコールなどの液剤を基材を通して塗布した場合に、短時間で十分な剥離接着低下が見られず、また、剥離時に皮膚への糊残りを生じることがある。網目の開口部の長手方向の目合い(A)は0.5〜15mmであり、好ましくは0.5〜10mmである。また、横手方向の目合い(B)は0.5〜3mmであり、好ましくは0.5〜2mmである。なお、本明細書中において、目合い(A)、(B)は網目の開口部を構成する四辺形の対角線の長さである。同じ開口率であれば、目合い(A),(B)は小さいほど、開口密度が増えるので、皮膚と粘着剤層との界面への液剤の浸透が促進されるが、0.5mm未満の目合いでは、製造工程において、粘着剤層を形成した後に、網目パターンを維持することが困難で、開口パターンがつぶれてしまうことがある。一方、目合い(A)が長くなると、相対的に開口部が長くなり、開口部がエッジにかかり易くなる。開口部がエッジにかかるとその部分から浮き剥がれが生じ易くなるため、目合い(A)は、15mmより短い方が望ましい。また、目合い(B)は3mmより大きくすると、粘着シートをテープ化した際の製品テープの縁部分に粘着剤がない部分が大きくなってしまい、また、テープの縁部分において皮膚からはがれるといった懸念がある。上記の開口部の面積及び目合いを達成するパターン幅は、0.4〜4mmであり、好ましくは1mm〜2mmである。
【0015】
本発明の粘着シートの粘着剤層を構成する粘着剤は医療用粘着剤の分野で公知の粘着剤を用いることができ、一般的には医療用のホットメルト塗布可能なアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。しかし、開口部の面積が広いので剥離時に糊残りを生じやすい形態であるので、粘着剤層は十分に高い凝集力を備えたものとすることが好ましい。なお、凝集力の付与に関しては後述する。
【0016】
ホットメルトアクリル系粘着剤としては、例えば、少なくとも1種の、1〜18個の炭素原子を有するアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステル(第一のモノマー)、50質量部以上100質量部以下、及び、少なくとも1種の共重合性モノマー(第二のモノマー)、0質量部を超え50質量部以下、
を含むフリーラジカル重合性組成物を重合させて得られた粘着剤が挙げられる。
【0017】
第一のモノマーは、アルキル基が1〜18個の炭素原子を有する、モノエチレン性不飽和(メタ)アクリル酸エステル(すなわち、アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレート)である。(メタ)アクリレートのアルキル基は、4〜14個の炭素原子を有することが好ましい。このアルキル基は、場合により、ヘテロ原子を含んでもよく、線状であっても分枝状であってもよい。ホモ重合したとき、これらのモノマーは、一般に約10℃未満であるガラス転移温度を有する本質的に粘着性のポリマーを生じる。好ましいこのような(メタ)アクリレートモノマーは、次の一般式
【0018】
【化1】

【0019】
(上式中、R1はH又はCH3であって、後者は、(メタ)アクリレートモノマーがメタクリレートモノマーである場合に相当し、R2は、直鎖又は分枝鎖の炭化水素基から選択され、場合により1個以上のヘテロ原子を含む。R2基内の炭素原子数は、4〜14個であることが好ましく、さらに好ましくは4〜8個である)を有する。
【0020】
第一のモノマーの例としては、2−メチルブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、4−メチル−2−ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−メトキシ−エチルアクリレート、2−エトキシ−エチルアクリレート、n−デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、及びイソノニルアクリレート等が挙げられるが、その限りではない。第一のモノマーとして使用することができる好ましい(メタ)アクリレートとしては、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、及びn−ブチルアクリレート等がある。第一のモノマーとして分類される様々なモノマーの組み合せを使用して、本発明の粘着剤層のホットメルト粘着剤成分を作ることができる。
【0021】
本発明の粘着剤層のホットメルトアクリル系粘着剤は、このホットメルトアクリル系粘着剤の総質量に基づいて、少なくとも50質量%の第一のモノマーを含み、好ましくは少なくとも85質量%の第一のモノマーを含み、さらに好ましくは、少なくとも90質量%、最も好ましくは、少なくとも95質量%の、第一のモノマーを含む。好ましくは、本発明の粘着剤層のホットメルトアクリル系粘着剤は、このホットメルトアクリル系粘着剤の総質量に基づいて、99質量%以下の第一のモノマーを含み、さらに好ましくは、98質量%以下、最も好ましくは、96質量%以下の、第一のモノマーを含む。
【0022】
モノエチレン性不飽和強化用モノマーである第二のモノマーは、コポリマーのガラス転移温度を上昇させる。本明細書で使用する「強化用」モノマーは、粘着剤のモジュラスを上昇させ、それによって、強度を高めるものである。好ましくは、第二のモノマーは、少なくとも約10℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有する。なお、ガラス転移温度(Tg)はJIS-K7121にしたがって測定される。さらに好ましくは、第二のモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、及びアクリレートを含む、強化用モノエチレン性不飽和遊離基共重合可能な(メタ)アクリル系モノマーである。第二のモノマーの例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、アセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N、N−ジエチルアクリルアミド、N−エチル−N−アミノエチルアクリルアミド、N−エチル−N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N、N−ジメチロールアクリルアミド、N,N−ジヒドロキシエチルアクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、及び1,1,3,3−テトラメチルブチルアクリルアミド等のアクリルアミド類が挙げられるが、それらに限定されない。第二のモノマーのその他の例としては、アクリル酸及びメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、2,2−(ジエトキシ)エチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート又はメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート又はメタクリレート、メチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、2−(フェノキシ)エチルアクリレート又はメタクリレート、ビフェニリルアクリレート、t−ブチルフェニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジメチルアダマンチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、フェニルアクリレート、N−ビニルピロリドン、及びN−ビニルカプロラクタムなどが挙げられる。第二のモノマーとして使用することができる好ましい強化用一官能価アクリル系モノマーとしては、アクリル酸及びメタクリル酸などがある。第二のモノマーとして分類される様々な強化用一官能価モノマーの組み合わせを使用して、本発明に使用されるホットメルトアクリル系粘着剤のコポリマーを作ることができる。
【0023】
好ましくは、粘着剤層のホットメルトアクリル系粘着剤は、このホットメルトアクリル系粘着剤の総質量に基づいて、少なくとも1質量%の第二のモノマーを含み、さらに好ましくは、少なくとも2質量%、最も好ましくは、少なくとも6質量%の、第二のモノマーを含む。好ましくは、本発明の粘着剤層のホットメルトアクリル系粘着剤は、このホットメルトアクリル系粘着剤の総質量に基づいて、15質量%以下の第二のモノマーを含み、さらに好ましくは、10質量%以下、最も好ましくは、5質量%以下の、第二のモノマーを含む。
【0024】
本発明の粘着剤層のホットメルトアクリル系粘着剤は、上記の第一のモノマー及び第二のモノマーに加え、これらと共重合可能な他のモノマー、例えばビニルエステル、及びN−ビニルラクタム類が存在していてもよい。その例としては、ポリスチレンマクロマー、ポリ(メチルメタクリレート)マクロマー、ポリ(メトキシ−エチレングリコール)マクロマー、4−(N、N−ジメチルアミド)ブチルアクリレート、N−ビニルピロリドン;N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニルラクタム類;及びN−ビニルホルムアミド等があるが、それらに限定されない。必要に応じて、これらのモノマーの様々な組み合せを使用することができる。好ましくは、この場合により存在しうるモノマーは、ホットメルトアクリル系粘着剤の2質量%〜20質量%の量で含まれることができる。
【0025】
上述のとおり、本発明で使用する粘着剤層は、粘着剤層の網目形状の維持のために十分な剪断強さ、剥離時の糊残りを防止するために十分な凝集強さを備えている。粘着剤に剪断強さや凝集強さを付与する方法として、たとえば、粘着剤に熱可塑性樹脂を含有させることである。このように、粘着剤層は、1つの好ましい態様において、少なくとも1種の粘着剤成分と、使用温度、例えば室温、或いは25℃〜40℃の温度で前記粘着剤成分と不混和性である少なくとも1種の熱可塑性樹脂成分とを含むブレンドである。
【0026】
熱可塑性樹脂成分は、常温において固体でありかつ粘着性を示さない熱可塑性樹脂、より好ましくは軟化点が25〜300℃の範囲にある熱可塑性樹脂より構成される。なお、軟化点はJIS-K7206に準拠して測定される。具体的には、この熱可塑性樹脂は、ポリビニル、ポリエステル、ポリウレタン、セルロース樹脂、ポリアミド及びアセタール樹脂からなる群より選ばれる。ポリビニルとしてはポリオレフィン及びアクリル樹脂が例示され、ポリオレフィンとしてはポリエチレン(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体が例示され、アクリル樹脂としてはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチルが例示される。ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートが例示される。セルロース樹脂としてはセルロースアセテートが例示される。この熱可塑性樹脂成分はホットメルト粘着剤中に均一に分散されることが好ましい。
【0027】
粘着剤層の剪断強さや凝集強さを改良するためのもう一つの方法は、粘着剤層を構成するコポリマー及び熱可塑性樹脂を架橋することである。架橋剤は、第一のモノマー及び第二のモノマー並びに他のモノマーと共重合されるものであることが好ましい。架橋剤は、化学的架橋(たとえば、共有結合)を生じさせることができる。あるいは、架橋剤は、たとえば、相分離又は酸塩基相互作用による強化ドメインの形成に起因する物理的架橋を生じさせることができる。適当な架橋剤は、米国特許第4,379,201号明細書、第4,737,559号明細書、第5,506,279号明細書、及び第4,554,324号明細書に開示されている。様々な架橋剤の組合わせを使用して、本発明で使用されるコポリマー成分を作ることができる。このような架橋剤としては、化学的架橋剤、物理的架橋剤及び金属架橋剤が挙げられる。
【0028】
化学架橋剤としては、たとえば、多価アジリジン等の熱架橋剤などがある。その1例は、しばしば「ビスアミド」と呼ばれる、1,1′−(1,3−フェニレンジカルボニル)−ビス−(2−メチルアジリジン)である。このような化学的架橋剤は、重合後に酸官能基を含む溶剤系粘着剤に加え、塗布された粘着剤の炉乾燥中に、熱によって活性化させることができる。
【0029】
この化学架橋剤は、米国特許第4,737,559号明細書に開示されているもの等の、オルト−芳香族ヒドロキシル基を含まない、共重合可能なモノエチレン性不飽和芳香族ケトンモノマーである。具体例としては、パラ−アクリルオキシベンゾフェノン、パラ−アクリルオキシエトキシベンゾフェノン、パラ−N−(メチルアクリルオキシエチル)−カルバモイルエトキシベンゾフェノン、パラ−アクリルオキシアセトフェノン、オルト−アクリルアミドアセトフェノン、アクリル化アントラキノン類等々がある。他の適当な架橋剤としては、架橋反応を実行するのに遊離基を頼みにする化学的架橋剤などがある。例えば、ペルオキシド類等の試薬は、遊離基の前駆体の役割を果たす。十分に加熱したとき、これらの前駆体は、ポリマー鎖の架橋反応をもたらす遊離基を生成する。
【0030】
熱架橋剤又は感光性架橋剤を別にして、架橋は、例えば、紫外線、X線、γ線又は電子線等の放射線又は高エネルギー電磁放射線を使用して行うことができる。
【0031】
物理架橋剤としては、ビニル官能基を含み、かつポリスチレン及びポリメチルメタクリレートを主成分とするもの等の、Tgの高いマクロマーが挙げられる。このようなビニル末端ポリマー架橋用モノマーは、高分子モノマー(すなわちマクロマー)と呼ばれることもある。このようなモノマーは周知であり、米国特許第3,786,116号明細書及び第3,842,059号明細書、並びにY.Yamashitaら、Polymer Journal, 14, 255-260 (1982)及びK.Itoら、Macromolecules, 13, 216-221 (1980)に開示されている方法で調製することができる。一般に、このようなモノマーは陰イオン重合又は遊離基重合で調製される。
【0032】
金属架橋剤としては、金属含有塩類又は他の金属含有化合物などが挙げられる。適当な金属としては、たとえば、亜鉛、チタンなどがある。金属含有化合物の例としては、酸化亜鉛、炭酸アンモニウム亜鉛、ステアリン酸亜鉛等々が挙げられる。
【0033】
これらの架橋剤を使用する場合、粘着剤を架橋させて十分な凝集強さを提供し、被着体に対して所望の最終的接着力特性をもたらすのに十分な量を意味する有効な量で、架橋剤を使用する。使用する場合、モノマー100部を基準にして0.1部〜10部の量で架橋剤を使用することが好ましい。
【0034】
粘着剤の特性を変えるために、その他の添加剤を、粘着剤成分及び熱可塑性樹脂成分に含めてもよく、あるいは、これらの成分の混合物の配合時又は塗布時に加えてもよい。このような添加剤としては、可塑剤、粘着付与剤、顔料、補強剤、強化剤、難燃剤、酸化防止剤、及び安定剤などがある。添加剤は、所望の最終用途特性を得るのに十分な量で加えられる。また、ガラス又はポリマーのバブル又はビーズ(発泡であっても未発泡であってもよい)、繊維、疎水性又は親水性シリカ、ポリエステル、ナイロン、及びポリプロピレン等の細かく粉砕したポリマー粒子等の充填剤を添加してもよい。
【0035】
また、モノマーの重合を促進するために遊離基開始剤を加えることが好ましい。使用される開始剤のタイプは、重合方法によって異なる。モノマーの重合可能な混合物を重合するのに有用な光開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル又はベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル類、2−メチル−2−ヒドロキシプリピオフェノン等の置換ベンゾインエーテル類、2−ナフタレン塩化スルホニル等の芳香族塩化スルホニル類、及び1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性な酸化物などがある。市販の光開始剤の一例は、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、Ciba Specialty Chemicals社から市販)である。適当な熱開始剤の例としては、AIBN(2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル))、tert−ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類、及びベンゾイルペルオキシド及びシクロヘキサンペルオキシド等のペルオキシド類などが挙げられる。一般に、開始剤は、共重合可能なモノマーの質量を基準にして、0.005質量%〜1質量%の量で存在する。
【0036】
また、コポリマーの分子量を調節するために、連鎖移動剤も場合により含む。連鎖移動剤は、遊離基重合を制御する物質であり、一般に、当技術分野で周知である。適当な連鎖移動剤としては、アルコール類(たとえば、メタノール、エタノール及びイソプロパノール)、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素;ラウリルメルカプタン、ブチルメルカプタン、エタンチオール、イソオクチルチオグリコラート(IOTG)、2−エチルヘキシルチオグリコラート、2−エチルヘキシルメルカプトプリピオネート、2−メルカプトイミダゾール、及び2−メルカプトエチルエーテル等のイオウ化合物及びそれらの混合物などがある。有用な連鎖移動剤の量は、望ましい連鎖移動剤の分子量及びタイプによって異なる。非アルコール連鎖移動剤は、一般に、総モノマー100部当たり0.001〜10質量部の量で使用され、好ましくは、0.01部〜0.5部、最も好ましくは0.02部〜0.20部の量で使用され、アルコール含有系の場合には、もっと多くてもよい。
【0037】
このコポリマーは、多種多様な従来の遊離基重合方法で重合することができる。適当な方法としては、米国特許第4,181,752号、第4,833,179号、第5,804,610号及び第5,382,451号に記載されているものなどがある。
【0038】
例えば、溶液重合方法では、第一のモノマー及び第二のモノマーを、適当な不活性な有機溶剤、及び使用する場合、遊離基共重合可能な架橋剤と一緒に、スターラー、温度計、コンデンサー、添加用ロート、及びサーモウォッチ(商標)温度モニタを備えた4つ口反応容器に入れる。このモノマー混合物を反応容器に入れた後、濃縮した熱遊離基開始剤溶液を添加用ロートに加える。次いで、反応容器全体及び添加用ロート及びそれらの内容物を、窒素でパージし、不活性な雰囲気を作る。いったんパージしたら、容器内の溶液を加熱して、添加した熱開始剤を分解し、反応中ずっと混合物を攪拌する。一般に、約20時間で、約98〜約99%の転換が得られる。必要に応じて溶剤を除去し、ホットメルト塗布可能な粘着剤を生成する。必要であれば、適当な不活性な有機溶剤は、反応物及び生成物に対して不活性な有機液体であってもよく、そうでなければ反応に悪影響を及ぼさない。このような溶剤としては、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、及びそれらの混合物などがある。溶剤の量は、反応物(モノマー、架橋剤、開始剤)及び溶剤の総質量に基づいて、一般に約30質量%〜約80質量%である。
【0039】
別の重合方法は、モノマー混合物の紫外線(UV)開始光重合である。この組成物は、適当な光開始剤及び架橋剤と共に、可撓性担体ウェブ上に塗布され、不活性な雰囲気、すなわち、窒素雰囲気等の無酸素雰囲気で重合される。十分に不活性な雰囲気を実現することができる。光活性な被覆層を、実質的に紫外線を通すプラスチックフィルムで覆い、一般に、約500ミリジュール/cm2の総線量を与える蛍光灯型の紫外線ランプを使用して、空気中で、そのフィルムを通して照射する。
【0040】
米国特許第4,619,979号明細書及び第4,843,134号明細書に記載されている、押出機内での連続遊離基重合;米国特許第5,637,646号明細書に記載の、バッチ反応器を使用した本質的に断熱的な重合方法;及び、米国特許第5,804,610号明細書に記載の、パッケージド・プレ接着剤組成物を重合するために説明された方法等の無溶媒重合方法を使用して、コポリマーを製造することも可能である。
【0041】
上述した熱可塑性樹脂成分を含む場合には、上述の粘着剤成分を重合により形成した後に、それらの成分を混合することで粘着剤層用組成物を得る。この組成物は、好ましくは、該ブレンドの少なくとも50質量%の量の粘着剤成分と、少なくとも3質量%の熱可塑性樹脂成分を含む。熱可塑性樹脂成分が不足すると、粘着剤層の剪断強さや凝集強さが足りなくなることがある。すなわち、本発明の粘着シートを皮膚から剥離除去する際において水、消毒用アルコール、除菌ローションなどの液剤を基材の上から供給した際に、これらの液剤によって粘着剤層の凝集力が低下し、皮膚に粘着剤が残る場合がある。反対に、この熱可塑性樹脂成分の比率が50質量%を上回ると、粘着剤層の凝集力は高まるが、感圧接着剤成分の比率が減少するために粘着シートと皮膚との接着力が減少し、十分な固定力が得られなくなることがある。
【0042】
粘着剤成分を紫外線開始光重合により製造する場合に、2段階照射法を用いることが特に好ましい。まず、モノマー混合物を第一の紫外線照射によって少なくとも部分的に重合して、比較的にホットメルト時の粘度が低い粘着剤成分を形成する。この粘着剤成分を上述の熱可塑性樹脂成分などの他の成分と混合し、ホットメルト塗布混合物を形成する。このホットメルト塗布混合物をシリコーン剥離処理などの剥離処理がなされたプラスティック基材上にダイコータによって塗布し、網目状パターンの粘着剤層を形成する。このような粘着剤層に対して、第二の紫外線照射を行い、十分な重合を行うことで最終の粘着剤層を得る。この粘着剤層に、透水性を有する基材を貼りあわせて、本発明の粘着シートを得る。なお、第一の紫外線照射は、好ましくは300nmより長い波長の最大スペクトル出力を有する第一の放射線源で露光して行う。また、第二の紫外線照射は、好ましくは300nmよりも短い波長の最大スペクトル出力を有する第二の放射線源で、塗工された組成物を露光して最終の粘着剤とする。2段階照射法を用いるならば、光開始剤は、第一の紫外線照射の波長範囲で吸収する第一の光開始剤と、第二の紫外線照射の波長範囲で吸収する第二の光開始剤の両方を用いるか、又は、両方の波長範囲で吸収する単一の光開始剤、たとえば、Irgacure 184(Ciba Specialty Chemicals社から市販)を用いることができる。
【0043】
本発明で用いる透水性を有する基材としては、編織布、不織布(スパンボンド、カード、サーマルボンド、スパンレース、ケミカルボンド及びニードルパンチ不織布)、紙、多孔性フィルム及び発泡体が挙げられる。このような基材であれば、剥離のために用いる液剤を基材を通して浸透させることができる。剥離のために使用する液剤としては、医療現場や一般家庭や職場に常備されているような、水、エタノールなどの消毒用アルコール、除菌ローション(例えば、ウエルパス(商品名)(丸石製薬(株))を好適に使用することができる。
【0044】
本発明の粘着シートは、例えばスポーツテーピング用テープ、サージカルテープ、バンソウコウなどに使用可能である。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。特に指示がないかぎり、百分率、部及び割合は質量基準とする。
実施例1
2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)96.5部、アクリル酸(AA)3.5部、光開始剤0.5部(Irugacure 184、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能)、イソオクチルチオグリコレート(IOTG)(連鎖移動剤)0.05部、アクリロキシベンゾフェノン(ABP)(架橋剤)0.05部、酸化防止剤0.5部(Irganox 1076、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能)を混合して、粘着剤成分を調製するためのモノマー混合物を形成した。次にこの混合物を不活性ガス下において、UV−A(300nmを超える最大スペクトル波長範囲)を40ワットの蛍光ブラックライトにて10分間照射して、部分的に重合した。
【0046】
次に、上述の部分的に重合した混合物97部と、ポリエチレン−酢酸ビニル(EVA)(熱可塑性樹脂成分)3部を、エクストルーダーにて混練した後、ホットメルトダイコータに供給し、149℃の温度において、下記の条件にてポリエステル製のライナー(片面シリコーン処理)の剥離面へ塗布して、網目状パターンを有する粘着剤層を得た。
【0047】
開口部面積:50%
粘着剤開口部の長手方向の目合い(A):2mm
粘着剤開口部の横手方向の目合い(B):1mm
塗布量:50g/m2
【0048】
粘着剤を上記条件にて塗布後、さらにUV−C(300nm未満の最大スペクトル波長範囲)を70mJの強度をもって粘着剤層に照射し、最終的な粘着剤組成物を得た。
さらに、透水性のあるレーヨン不織布(坪量50g/m2)に該パターン状に塗布された粘着剤層を貼りあわせて、本発明の粘着シートを得た。
【0049】
実施例2
下記の条件にて混合物をポリエステル製のライナー(片面シリコーン処理)の剥離面へ塗布すること以外、実施例1と同様にして本発明の粘着シートを得た。
【0050】
開口部面積:50%
粘着剤開口部の長手方向の目合い(A):8mm
粘着剤開口部の横手方向の目合い(B):2mm
塗布量:50g/m2
【0051】
比較例1
下記の条件にて混合物をポリエステル製のライナー(片面シリコーン処理)の剥離面へ塗布すること以外、実施例1と同様にして比較の粘着シートを得た。
【0052】
開口部面積:50%
粘着剤開口部の長手方向の目合い(A):20mm
粘着剤開口部の横手方向の目合い(B):2mm
塗布量:50g/m2
【0053】
比較例2
下記の条件にて混合物をポリエステル製のライナー(片面シリコーン処理)の剥離面へ塗布すること以外、実施例1と同様にして比較の粘着シートを得た。
【0054】
開口部面積:50%
粘着剤開口部の長手方向の目合い(A):20mm
粘着剤開口部の横手方向の目合い(B):4mm
塗布量:50g/m2
【0055】
実施例3
下記の条件にて混合物をポリエステル製のライナー(片面シリコーン処理)の剥離面へ塗布すること以外、実施例1と同様にして本発明の粘着シートを得た。
【0056】
開口部面積:25%
粘着剤開口部の長手方向の目合い(A):8mm
粘着剤開口部の横手方向の目合い(B):2mm
塗布量:50g/m2
【0057】
実施例4
下記の条件にて混合物をポリエステル製のライナー(片面シリコーン処理)の剥離面へ塗布すること以外、実施例1と同様にして本発明の粘着シートを得た。
【0058】
開口部面積:15%
粘着剤開口部の長手方向の目合い(A):8mm
粘着剤開口部の横手方向の目合い(B):2mm
塗布量:50g/m2
【0059】
比較例3
下記の条件にて混合物をポリエステル製のライナー(片面シリコーン処理)の剥離面へ塗布すること以外、実施例1と同様にして比較の粘着シートを得た。
【0060】
開口部面積:0%
塗布量:50g/m2
【0061】
比較例4
下記の条件にて混合物をポリエステル製のライナー(片面シリコーン処理)の剥離面へ塗布すること以外、実施例1と同様にして比較の粘着シートを得た。
【0062】
開口部面積:10%
粘着剤開口部の長手方向の目合い(A):8mm
粘着剤開口部の横手方向の目合い(B):2mm
塗布量:50g/m2
【0063】
比較例5
下記の条件にて混合物をポリエステル製のライナー(片面シリコーン処理)の剥離面へ塗布すること以外、実施例1と同様にして比較の粘着シートを得た。
【0064】
開口部面積:75%
粘着剤開口部の長手方向の目合い(A):8mm
粘着剤開口部の横手方向の目合い(B):2mm
塗布量:50g/m2
【0065】
実施例5
熱可塑性樹脂成分の比率を30部とすること以外、実施例1と同様にして本発明の粘着シートを得た。
【0066】
実施例6
熱可塑性樹脂成分の比率を50部とすること以外、実施例1と同様にして本発明の粘着シートを得た。
【0067】
実施例7
熱可塑性樹脂成分の比率を60部とすること以外、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0068】
上記のごとく作成された粘着シートについて、以下のような評価を行なった。これらの結果は表1に示す。
【0069】
1.評価試験
1.1.皮膚接着力(乾燥)
健常者の背中に2.5cm×7cmの大きさの粘着シートの粘着面が皮膚に触れるように貼付し、2kgローラを300mm/minの速度で貼付された粘着シートの上を1往復させて圧着した、圧着後、所定の時間(T24:圧着後24時間経過後)が経過した後に、粘着シートの浮き剥がれをチェックした後に、粘着シートを以下の条件にて剥離させたときの、剥離強度を求めた。なお、積分範囲は15mmから55mmとした。(測定単位:gf/25mm)
【0070】
1.1.1.剥離力
剥離角度:180度
剥離速度:150mm/min
【0071】
1.1.2.浮き剥がれ
目視にて浮いている面積(%)を評価した。
【0072】
1.2.皮膚接着力(湿潤)
健常者の背中に2.5cm×7cmの大きさの粘着シートの粘着面が皮膚に触れるように貼付し、2kgローラを300mm/minの速度で貼付された粘着シートの上を1往復させて圧着した、圧着後、所定の時間(T24:圧着後24時間経過後)が経過した後に、粘着シートの上面より消毒用エタノールもしくは速乾性擦式手指消毒剤〔商品名:ウエルパス(WELPAS)丸石製薬株式会社製〕を5mlスプレーし粘着シートを湿らせ、直ちに以下の条件にて剥離させたときの、剥離強度および皮膚に残った粘着剤の面積を求めた。なお、積分範囲は15mmから55mmとした。(測定単位:gf/25mm)
【0073】
1.2.1.剥離力
剥離角度:180度
剥離速度:150mm/min
【0074】
1.2.2.浮き剥がれ
目視にて面積(%)を評価した。
【0075】
2.結果
【表1】

【0076】
上記の評価の結果、透水性、通気性、透湿性に優れかつ、粘着シートを被着体より剥離除去する際に、粘着シートの上から病院や家庭で容易に入手可能な水もしくは消毒用アルコール、除菌ローションなどの液剤を供給し、本発明の粘着シートの粘着面と皮膚との間に前記液剤が短時間に浸透し粘着剤の皮膚への粘着力を迅速に弱めることによって、容易に該粘着シートを皮膚から糊残りすることなく、かつ剥離時の機械刺激を大幅に軽減して剥すことが可能な医療用粘着シートを提供することができることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】粘着剤層を基材の全面に均一に塗布した粘着シートの断面模式図を示す。
【図2】本発明の粘着シートの1態様の断面模式図を示す。
【図3】本発明の1つの態様の粘着シートの粘着剤層の網目状パターンの上面図を示す。
【符号の説明】
【0078】
1,1’ 基材
2,2’ 粘着剤層
3,3’ 皮膚
10,10’ 粘着シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網目状パターンを持つ粘着剤層と、該粘着剤層を支持している基材とを有する粘着シートであって、
前記粘着剤層は、前記網目状パターンの開口部の合計面積が前記粘着シートの面積を基準として15〜60%であり、前記開口部の長手方向の目合い(A)が0.5〜15mm、横手方向の目合い(B)が0.5〜3mmであり、但し、前記目合い(A)及び(B)はそれぞれ前記網目の開口部を構成する四辺形の対角線の長さであり、
前記基材は透水性を有することを特徴とする、粘着シート。
【請求項2】
前記基材は編織布、不織布、紙、多孔性フィルム及び発泡体からなる群より選ばれる、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層は、粘着剤成分と、使用温度で前記粘着剤成分と不混和性である熱可塑性樹脂成分とを含む混合成分を有し、前記混合成分は少なくとも50質量%の量の粘着剤成分と、少なくとも3質量%の熱可塑性樹脂成分を含む、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層は、少なくとも1種の、1〜18個の炭素原子を有するアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、50質量部以上100質量部以下、及び、
少なくとも1種の共重合性モノマー、0質量部を超え50質量部以下、
を含むフリーラジカル重合性組成物の重合生成物を含む粘着剤からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記フリーラジカル重合性組成物に、300nmより長い波長の最大スペクトル出力を有する第一の放射線を露光し、部分重合組成物を形成する工程と、
得られた前記部分重合組成物を基材表面に網目状パターンとなるように塗工する工程と、
300nmよりも短い波長の最大スペクトル出力を有する第二の放射線源で、塗工された組成物を露光する工程と
を有する請求項4に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項6】
皮膚上に付着した請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着シート表面に、水、消毒用アルコール及び除菌ローションからなる群より選ばれる液剤を供給した後、前記粘着シートを剥離する、粘着シートの剥離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−56805(P2008−56805A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235425(P2006−235425)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】