説明

粘着剤付き光学フィルム及び光学積層体

【課題】帯電防止性が高められ、耐久性にも優れる粘着剤層を光学フィルムの表面に設けた粘着剤付き光学フィルムを提供する。
【解決手段】光学フィルムの表面に粘着剤層を形成して粘着剤付き光学フィルムとする。その粘着剤層は、(A)式(I)の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、水酸基含有単量体に由来する構造単位とを含み、水酸基含有単量体由来の構造単位が樹脂全体100重量部あたり0.5〜5重量部で、重量平均分子量が500,000〜2,000,000である水酸基含有アクリル樹脂を主成分とするアクリル樹脂100重量部;(B)イオン性化合物0.01〜5重量部;(C)ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤0.05〜5重量部;及び(D)シラン系化合物0.03〜1重量部を含有する組成物から形成する。


式(I)中、R1は水素又はメチル、R2はC1-14のアルキル又はアラルキルを表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤付き光学フィルムに関するものである。本発明で対象とする光学フィルムとして、例えば、偏光フィルムや位相差フィルムを挙げることができる。本発明はまた、この粘着剤付き光学フィルムを用いた液晶表示用の光学積層体にも関係している。
【背景技術】
【0002】
偏光フィルムは、液晶表示装置に装着され、広く使用されており、偏光子の両面に透明保護フィルムが積層され、少なくとも一方の保護フィルムの表面に粘着剤層が形成され、その粘着剤層の上に剥離フィルムが貼着された状態で流通している。また、偏光子の両面に保護フィルムが貼合された状態の偏光フィルムに位相差フィルムを積層して楕円偏光フィルムとし、その位相差フィルム側に粘着剤層/剥離フィルムが貼着されることもある。さらに、位相差フィルムの表面に粘着剤層/剥離フィルムが貼着されることもある。液晶セルへの貼合前に、これらの偏光フィルム、楕円偏光フィルム、位相差フィルムなどから剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層を介して液晶セルに貼合することになる。このような偏光フィルム、楕円偏光フィルム又は位相差フィルムは、剥離フィルムを剥離して液晶セルに貼合する際、静電気が発生するため、その防止対策の開発が切望されている。
【0003】
その対策の一つとして、特許第 3012860号公報(特許文献1)には、偏光子フィルムの表面に保護フィルムが積層され、保護フィルムの表面に粘着剤層が設けられた偏光フィルムにおいて、粘着剤として、電解質塩とオルガノポリシロキサンからなるイオン導電性組成物及びアクリル系共重合体を含む組成物を用いることが提案されている。このような粘着剤を用いることにより、帯電防止性が発現されるものの、その性能が必ずしも十分とはいえず、また粘着耐久性においても十分な性能とはいえなかった。
【0004】
一方、特表 2004-536940号公報(特許文献2)には、感圧接着剤(粘着剤)に有機塩系の帯電防止剤を配合して、その粘着剤に帯電防止性を付与することが開示されている。さらに、特開 2004-114665号公報(特許文献3)には、総炭素数が4〜20の4級アンモニウムカチオンとフッ素原子含有アニオンとからなる塩を接着剤等に含有させて、制電性を付与することが記載されている。
【0005】
さて、上記したような粘着剤付き光学フィルムは、その粘着剤層側で液晶セルに貼合して液晶表示装置とされるが、この状態で高温又は高温高湿条件に置かれたり、高温環境と低温環境が繰り返されたりした場合、光学フィルムの寸法変化に伴って、粘着剤層に発泡を生じたり、光学フィルムと粘着剤層の間、又は粘着剤層と液晶セルガラスの間に浮きや剥れなどを生じたりすることがあるため、このような不具合を生じず、耐久性に優れることも求められる。また、高温にさらされた場合に、光学フィルムに作用する残留応力の分布が不均一となり、光学フィルムの外周部に応力集中が起こる結果、黒表示時に外周部が白っぽくなる白ヌケと呼ばれる現象を生じたり、色ムラを生じたりすることがあるため、このような白ヌケや色ムラの抑制も求められる。さらに、粘着剤付き光学フィルムを液晶セルに貼合する際、不備があった場合には、その光学フィルムを一旦剥がしてから、再度新しいフィルムを貼り直すことになるが、その剥離のときに粘着剤層が光学フィルムに伴って引き剥がされ、セルガラス上に粘着剤が残らず、曇り等も生じないような、いわゆるリワーク性も求められる。
【0006】
【特許文献1】特許第3012860号公報(=特開平6−313807号公報)
【特許文献2】特表2004−536940号公報(=WO 2003/011958)
【特許文献3】特開2004−114665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、帯電防止性が高められ、耐久性にも優れた粘着剤層を光学フィルムの表面に設けた粘着剤付き光学フィルムを提供することにある。本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定のアクリル樹脂を含有する粘着剤に対して、イオン性化合物、特定の架橋剤、及びシラン化合物をそれぞれ特定量配合し、この組成物を光学フィルムの表面に粘着剤層として設けることにより、帯電防止性及び耐久性に優れた粘着剤付き光学フィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によれば、光学フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなり、その粘着剤層は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有する組成物から形成されている粘着剤付き光学フィルムが提供される。
【0009】
(A)下式(I)

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は、それぞれ炭素数1〜10のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜14のアルキル基又はアラルキル基を表す)
で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位、及び、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の水酸基を有する不飽和単量体に由来する構造単位を含み、該水酸基を有する不飽和単量体に由来する構造単位の含有量が樹脂全体100重量部に対して0.5〜5重量部であり、重量平均分子量が 500,000〜2,000,000であるアクリル樹脂(これを「水酸基含有アクリル樹脂」と呼ぶ)を主成分とするアクリル樹脂100重量部、
(B)イオン性化合物0.01〜5重量部、
(C)ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤0.05〜5重量部、及び
(D)シラン系化合物0.03〜1重量部。
【0010】
このように本発明では、粘着剤を構成するアクリル樹脂(A)が極性官能基として水酸基を有する場合に、その粘着剤から形成される粘着剤層に帯電防止性を付与するためのイオン性化合物(B)とともに、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(C)、及びシラン系化合物(D)を組み合わせて、かつそれぞれを特定の割合で含有させることで、帯電防止性能と、高温又は高温高湿条件に置かれた場合や高温環境と低温環境が繰り返された場合の耐久性に優れた粘着剤付光学フィルムが得られることが見出された。特に、極性官能基として水酸基を有するアクリル樹脂(A)、イオン性化合物(B)、架橋剤(C)及びシラン系化合物(D)という組合せにおいて、架橋剤(C)として、ジイソシアネート系架橋剤の中でも脂肪族系のヘキサメチレンジイソシアネート系の化合物を用いた場合に、優れた結果が得られることが見出された。
【0011】
本発明の粘着剤付き光学フィルムにおいて、粘着剤層を構成するアクリル樹脂(A)の主成分となる水酸基含有アクリル樹脂は、さらに、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個のカルボキシル基とを有する不飽和カルボン酸に由来する構造単位を含むことができる。この場合、不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量は、樹脂全体100重量部に対して 0.1〜1重量部であることが好ましい。また、(不飽和カルボン酸に由来する構造単位の重量基準含有量)/(水酸基を有する不飽和単量体に由来する構造単位の重量基準含有量)の比が 0.6以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の粘着剤付き光学フィルムにおいて、粘着剤層を構成するイオン性化合物(B)は、例えば、そのカチオンが、リチウムカチオン、下式(II)で示されるピリジニウム系カチオン又は下式(III)で示される4級アンモニウムカチオンであることができる。
【0013】

【0014】
式(II)中、R3〜R7の一つは炭素数1〜6のアルキル基を表し、残りはそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R8は炭素数1〜12のアルキル基を表す。
【0015】

【0016】
式(III)中、R9は炭素数1〜12のアルキル基を表し、R10、R11及びR12はそれぞれ独立に炭素数6〜12のアルキル基を表す。
【0017】
一方、イオン性化合物(B)におけるアニオンは、フッ素原子を含むことが好ましく、その例として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンやヘキサフルオロホスフェートアニオンを挙げることができる。
【0018】
また本発明によれば、上記の粘着剤付き光学フィルムが、その粘着剤層側でガラス基板に積層されてなる光学積層体も提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の粘着剤付き光学フィルムは、光学部材の帯電を有効に抑制することができる。この粘着剤付き光学フィルムは、例えば、液晶セルのガラス基板に積層することで、液晶表示用の光学積層体を与える。この光学積層体は、高温条件下又は湿熱条件下に置かれた場合や高温環境と低温環境が繰り返された場合に、光学フィルム及びガラス基板の寸法変化に起因する応力を粘着剤層が吸収・緩和するため、局部的な応力集中が軽減され、ガラス基板に対する粘着剤層の浮きや剥れなどが抑制される。また、不均一な応力分布に起因する光学的欠陥が防止されることから、白ヌケが抑制される。さらに、粘着剤付き光学フィルムを一度ガラス基板に積層した後、なんらかの不都合があった場合に、その光学フィルムを粘着剤とともにガラス基板から剥離しても、剥離後のガラス基板の表面に糊残りや曇りが発生することが少なく、再び、ガラス基板として用いることができ、リワーク性に優れるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の粘着剤付き光学フィルムは、光学フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が形成されたものであり、その粘着剤層は、
(A)水酸基を有するアクリル樹脂、
(B)イオン性化合物、
(C)ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤、及び
(D)シラン系化合物
を含有する組成物から形成される。まず、粘着剤組成物を構成する各成分について説明する。
【0021】
[アクリル樹脂(A)]
本発明の粘着剤付き光学フィルムにおいて、粘着剤層の形成に用いられるアクリル樹脂(A)は、前記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位、及び、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の水酸基を有する不飽和単量体(以下、「水酸基含有単量体」と呼ぶことがある)に由来する構造単位を含み、水酸基含有単量体に由来する構造単位の含有量が樹脂全体100重量部に対して 0.5〜5重量部であり、重量平均分子量が 500,000〜2,000,000 の水酸基含有アクリル樹脂を主成分とする。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれでもよいことを意味し、他に、(メタ)アクリレートなどというときの「(メタ)」も同様の趣旨である。アクリル樹脂(A)は、ここで規定する水酸基含有アクリル樹脂だけで構成することもできるし、この水酸基含有アクリル樹脂に加え、それとは異なるアクリル樹脂(「第二のアクリル樹脂」とする)を含む混合物で構成することもできる。
【0022】
水酸基含有アクリル樹脂の主要な構造単位となる前記式(I)において、R1 は水素原子又はメチル基であり、R2 は炭素数1〜14のアルキル基又はアラルキル基、好ましくはアルキル基である。R2 で表されるアルキル基又はアラルキル基は、それぞれの基中の水素原子が炭素数1〜10のアルコキシ基によって置換されていてもよい。
【0023】
式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルとして、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ラウリルの如き、直鎖状のアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチルの如き、分枝状のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ラウリルの如き、直鎖状のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソオクチルの如き、分枝状のメタクリル酸アルキルエステルなどが例示される。
【0024】
2 がアルコキシ基で置換されたアルキル基である場合、すなわち、R2 がアルコキシアルキル基である場合の、式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルとして、具体的には、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチルなどが例示される。R2 がアラルキル基である場合の式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルとして、具体的には、アクリル酸ベンジルやメタクリル酸ベンジルなどが例示される。
【0025】
水酸基含有アクリル樹脂の製造にあたり、式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルは、ある1種類を用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。中でも、アクリル酸ブチルを少なくとも一つの単量体として用いるのが好ましい。そこで、水酸基含有アクリル樹脂を構成する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位がアクリル酸ブチル由来の単位を含有することは、好ましい形態である。
【0026】
水酸基含有アクリル樹脂のもう一つの構造単位となる水酸基含有単量体は、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の水酸基とを有する化合物であり、具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどが挙げられる。この水酸基含有単量体は、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルであるのが好適であり、ここでのアルキルは、炭素数1〜10程度、さらには2〜6程度であるのが好ましい。
【0027】
水酸基含有アクリル樹脂において、その不揮発分全体の重量を基準に、式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位は、通常 60〜99.5重量%、好ましくは 80〜99.5重量%含有される。また、水酸基含有単量体に由来する構造単位は、通常0.5〜5重量%、好ましくは0.8〜3重量%、さらに好ましくは1〜2重量%含有される。
【0028】
水酸基含有単量体に由来する構造単位は、アクリル樹脂(A)全体100重量部に対して、すなわち、アクリル樹脂(A)が水酸基含有アクリル樹脂だけで構成される場合はその100重量部に対して、また、水酸基含有アクリル樹脂及びそれとは異なる第二のアクリル樹脂で構成される場合はそれらの合計100重量部に対して、 0.5〜5重量部の割合で含有させる。アクリル樹脂(A)100重量部に対し、水酸基含有単量体に由来する構造単位の量が 0.5重量部以上であると、それを含む粘着剤層をガラス基板に貼合したときに、ガラス基板と粘着剤層との間の浮きや剥れが抑制される傾向にあることから好ましい。また、その量が5重量部以下であると、温度変化などにより光学フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白ヌケや色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。さらに、アクリル樹脂(A)100重量部に対し、水酸基含有単量体に由来する構造単位の量が 0.5〜5重量部の範囲にあれば、後述するイオン性化合物(B)との相溶性の観点からも好ましい。
【0029】
また、水酸基含有アクリル樹脂は、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個のカルボキシル基とを有する不飽和カルボン酸に由来する構造単位を含むことが好ましい。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などが挙げられる。不飽和カルボン酸に由来する構造単位は、水酸基含有アクリル樹脂の不揮発分の重量を基準に、通常0.1〜1重量%、好ましくは0.2〜0.8重量%、さらに好ましくは0.3〜0.6重量%含有される。
【0030】
不飽和カルボン酸に由来する構造単位はまた、アクリル樹脂(A)全体100重量部に対して、すなわち、アクリル樹脂(A)が水酸基含有アクリル樹脂だけで構成される場合はその100重量部に対して、また、水酸基含有アクリル樹脂及びそれとは異なる第二のアクリル樹脂で構成される場合はそれらの合計100重量部に対して、 0.1〜1重量部の割合で含有させるのが好ましい。アクリル樹脂(A)100重量部に対し、不飽和カルボン酸に由来する構造単位の量が 0.1重量部以上であると、それを含む粘着剤層をガラス基板に貼合したときに、ガラス基板と粘着剤層との間の浮きや剥れが抑制される傾向にあることから好ましい。一方、その量が1重量部以下であると、イオン性化合物(B)との相溶性の観点から、帯電防止性能が向上する傾向にあるので、好ましい。さらに、(不飽和カルボン酸に由来する構造単位の重量基準含有量)/(水酸基含有単量体に由来する構造単位の重量基準含有量)の比が 0.6以下の範囲にあれば、後述するヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(C)の反応性を制御する観点から好ましい。(不飽和カルボン酸に由来する構造単位の重量基準含有量)/(水酸基含有単量体に由来する構造単位の重量基準含有量)の比の下限は、不飽和カルボン酸に由来する構造単位が、アクリル樹脂(A)全体100重量部に対して 0.1重量部以上という規定から、自ずと定まる。
【0031】
水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基及びカルボキシル基以外の極性官能基を有する単量体に由来する構造単位をさらに含んでいてもよい。水酸基及びカルボキシル基以外の極性官能基としては、例えば、アミド基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、イソシアナト基、アルデヒド基などを挙げることができる。
【0032】
極性官能基がアミド基である単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−(N,N−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどが挙げられる。 極性官能基がエポキシ基である単量体としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどが挙げられる。 極性官能基がオキセタニル基である単量体としては、例えば、オキセタニル(メタ)アクリレート、3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。極性官能基がアミノ基である単量体としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アリルアミンなどが挙げられる。極性官能基がイソシアナト基である単量体としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。また、極性官能基がアルデヒド基である単量体としては、例えば、アクリルアルデヒドなどが挙げられる。これら水酸基及びカルボキシル基以外の極性官能基を有する単量体の使用量は、イオン性化合物(B)との相溶性の観点から、水酸基含有単量体100重量部に対して30重量部以下とするのが好ましい。
【0033】
水酸基含有アクリル樹脂は、前記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステル及び前記した水酸基含有単量体にそれぞれ由来する構造単位、さらには必要に応じて含有されるカルボキシル基その他の極性官能基を有する単量体に由来する構造単位に加えて、それら以外の単量体に由来する構造単位を有していてもよい。このような任意に使用しうる単量体として、例えば、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の5員環以上の複素環基とを有する複素環系単量体を挙げることができる。ここで、5員環以上の複素環基とは、炭素数5以上、好ましくは炭素数5〜7の脂環式炭化水素基において、そのうちの少なくとも一つのメチレン基が、イミノ基(−NH−)、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子で置換されている基をいう。
【0034】
複素環系単量体の具体例として、アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、テトラハイドロフルフリルアクリレート、テトラハイドロフルフリルメタクリレート、カプロラクトン変性テトラハイドロフルフリルアクリレートなどを挙げることができる。また、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどの如き、ヘテロ原子が3員環及び7員環を構成している単量体は、7員環の複素環基を持つことから、複素環系単量体として扱うことができる。さらに、2,5−ジヒドロフランなどの如く、オレフィン性二重結合が複素環基に含まれていてもよい。複素環系単量体として、異なる2種類以上の単量体を用いてもよい。複素環系単量体としては、中でも、N−ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン又はこれらの混合物が好適である。
【0035】
複素環系単量体に由来する構造単位を水酸基含有アクリル樹脂に含有させる場合、その量は、水酸基含有アクリル樹脂全量を基準に、通常30重量%程度までであり、好ましくは20重量%以下である。なお、水酸基含有アクリル樹脂に複素環系単量体に由来する構造単位を 0.1重量%以上含有させると、光学フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白ヌケや色ムラが抑制される傾向が出てくる。
【0036】
また、任意に使用しうる別の単量体として、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の脂環式構造を有する脂環式単量体を挙げることができる。脂環式構造は、通常炭素数5以上、好ましくは炭素数5〜7程度のシクロパラフィン構造又はシクロオレフィン構造であり、シクロオレフィン構造では、脂環式構造の中にオレフィン性二重結合を有する。具体的には、脂環式構造を有するアクリル酸エステルとして、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロドデシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、α−エトキシアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシルフェニルなどが挙げられ、脂環式構造を有するメタクリル酸エステルとして、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸シクロドデシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルフェニルなどが挙げられる。また、脂環式構造を分子内に複数有するアクリレートとして、ビスシクロヘキシルメチルイタコネート、ジシクロオクチルイタコネート、ジシクロドデシルメチルサクシネートなどが挙げられる。さらに、ビニル基を有するビニルシクロヘキシルアセテートなども、脂環式単量体となりうる。中でも、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジシクロペンタニルは、入手が容易なことから好ましい。脂環式単量体として、異なる2種以上の化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
脂環式単量体に由来する構造単位を水酸基含有アクリル樹脂に含有させる場合、その量は、水酸基含有アクリル樹脂全量を基準に、通常30重量%程度までであり、好ましくは15重量%以下である。なお、水酸基含有アクリル樹脂に脂環式単量体に由来する構造単位を 0.1重量%以上、さらには1重量%以上含有させると、ガラス基板と粘着剤層との間の浮きや剥れが抑制される傾向が出てくる。
【0038】
さらに別の単量体として、式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステル、複素環系単量体及び脂環式単量体のいずれとも異なるビニル系単量体を用いることもできる。かかるビニル系単量体としては、例えば、脂肪酸ビニルエステル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリル、共役ジエン化合物、芳香族ビニルなどが挙げられる。
【0039】
ここで、脂肪酸ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどが挙げられる。ハロゲン化ビニルとしては、塩化ビニル、臭化ビニルなどが例示され、ハロゲン化ビニリデンとしては、塩化ビニリデンなどが例示され、(メタ)アクリロニトリルとしては、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが例示される。共役ジエン化合物とは、分子内に共役二重結合を有するオレフィンであり、具体例としては、イソプレン、ブタジエン、クロロプレンなどが挙げられる。芳香族ビニルとは、芳香族環とビニル基を有する化合物であり、具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン、フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレンの如きスチレン系単量体、ビニルピリジンやビニルカルバゾールの如き含窒素芳香族ビニルなどが挙げられる。これらのビニル系単量体は、異なる2種以上の化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
以上のようなビニル系単量体に由来する構造単位を水酸基含有アクリル樹脂に含有させる場合、その量は、水酸基含有アクリル樹脂全量を基準に、通常5重量%以下、好ましくは 0.05重量%以下であるが、これらは、実質的に含有されないことがより好ましい。
【0041】
複素環系単量体に由来する構造単位、脂環式単量体に由来する構造単位及びビニル系単量体に由来する構造単位のうち複数を導入する場合であっても、それらの合計量は、水酸基含有アクリル樹脂全量を基準に、30重量%以下、さらには20重量%以下とするのが好ましい。
【0042】
以上説明した水酸基含有アクリル樹脂の製造方法としては、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法などが挙げられ、中でも溶液重合法が好ましい。溶液重合法の具体的な例としては、所望の単量体及び有機溶媒を混合して、単量体の濃度を50重量%以上、好ましくは50〜60重量%の混合液に調整したのち、窒素雰囲気下にて、単量体の合計100重量部あたり重合開始剤を 0.001〜5重量部程度添加し、40〜90℃程度、好ましくは50〜70℃程度にて8時間以上、好ましくは8〜12時間程度攪拌する方法などが挙げられる。
【0043】
重合開始剤としては、熱重合開始剤や光重合開始剤などが用いられる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンなどが挙げられる。熱重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2′−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)の如きアゾ系化合物;ラウリルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシドの如き有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素の如き無機過酸化物などが挙げられる。また、過酸化物と還元剤を併用したレドックス系開始剤なども、重合開始剤として使用しうる。
【0044】
重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンの如き芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチルの如きエステル類;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールの如き脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの如きケトン類などが挙げられる。
【0045】
水酸基含有アクリル樹脂の分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw )で 500,000〜2,000,000 の範囲とする。重量平均分子量が 500,000以上であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着剤層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましい。また、重量平均分子量が 2,000,000以下であると、その粘着剤層に貼合されている光学フィルムの寸法が温度変化などにより変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白ヌケや色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。重量平均分子量(Mw )と数平均分子量(Mn )の比(Mw/Mn)で表される分子量分布は、通常2〜10程度の範囲にある。
【0046】
本発明に用いる粘着剤は、アクリル樹脂(A)として、上記水酸基含有アクリル樹脂に加え、それと異なる第二のアクリル樹脂を含有してもよい。別途含有しうる第二のアクリル樹脂としては、例えば、前記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とし、GPCによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw )が、50,000〜300,000 程度の範囲にある、低分子量のものを挙げることができる。第二のアクリル樹脂は、水酸基などの極性官能基を有する不飽和単量体に由来する構造単位を有していてもよい。
【0047】
低分子量の第二のアクリル樹脂を用いる場合、その量は、アクリル樹脂(A)の不揮発分合計100重量部に対して、通常5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部程度である。換言すれば、本発明に用いるアクリル樹脂(A)は、前記した水酸基含有アクリル樹脂を主成分とし、その量が、アクリル樹脂(A)の不揮発分合計100重量部に対して50重量部以上である。全アクリル樹脂の不揮発分100重量部に対する第二のアクリル樹脂の量が5重量部以上であると、光学フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着層が追随して変動し、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白ヌケや色ムラが抑制されることがある。また、第二のアクリル樹脂の量が50重量部以下、換言すれば、前記した高分子量の水酸基含有アクリル樹脂の量が50重量部以上であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましい。
【0048】
粘着剤に用いるアクリル樹脂(A)は、そのアクリル樹脂のみ(水酸基含有アクリル樹脂だけを用いる場合はそのアクリル樹脂、また水酸基含有アクリル樹脂と第二のアクリル樹脂を混合して用いる場合はそれらの混合物)を酢酸エチルに溶かして不揮発分濃度20重量%に調整した溶液が、温度25℃において10Pa・s以下、さらには0.1〜7Pa・s の粘度を示すことが好ましい。この粘度が10Pa・s 以下であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着剤層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましい。粘度は、ブルックフィールド粘度計によって測定することができる。
【0049】
[イオン性化合物(B)]
本発明では、以上のようなアクリル樹脂(A)に加えて、イオン性化合物(B)を用いる。ここでいうイオン性化合物(B)とは、カチオンとアニオンの組合せで存在する化合物であり、カチオン及びアニオンはそれぞれ、無機のものであっても、有機のものであってもよいが、アクリル樹脂(A)との相溶性の観点からは、カチオン及びアニオンの少なくとも一方が有機基を含むイオン性化合物であるのが好ましい。
【0050】
イオン性化合物(B)を構成するカチオンとして、具体的には、リチウムカチオン、前記式(II)で示されるピリジニウム系カチオン、及び前記式(III) で示されるアンモニウムカチオンを挙げることができる。
【0051】
前記式(II)のピリジニウム系カチオンにおいて、ピリジン環を構成する炭素原子に結合するR3〜R7は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表すが、それらのうち少なくとも一つは炭素数1〜6のアルキル基であり、またピリジン環の窒素原子に結合するR8 は、炭素数1〜12のアルキル基を表す。式(II)で示されるピリジニウム系カチオンは、総炭素数が6以上、さらには8以上、とりわけ10以上であるのが、アクリル樹脂(A)との相溶性の観点から好ましい。また、その総炭素数は、36以下、さらには30以下であるのが好ましい。前記式(II)で示されるピリジニウム系カチオンの中でも、ピリジン環の4−位炭素原子に結合するR5 がアルキル基であり、ピリジン環の他の炭素原子に結合するR3、R4、R6及びR7がそれぞれ水素原子であるものは、好ましいカチオンの一つである。式(II)で示されるピリジニウム系カチオンの具体例としては、次のようなものを挙げることができる。
【0052】
N−メチル−4−ヘキシルピリジニウムカチオン、
N−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、
N−ブチル−2,4−ジエチルピリジニウムカチオン、
N−ブチル−2−ヘキシルピリジニウムカチオン、
N−ヘキシル−2−ブチルピリジニウムカチオン、
N−ヘキシル−4−メチルピリジニウムカチオン、
N−ヘキシル−4−エチルピリジニウムカチオン、
N−ヘキシル−4−ブチルピリジニウムカチオン、
N−オクチル−4−メチルピリジニウムカチオン、
N−オクチル−4−エチルピリジニウムカチオンなど。
【0053】
前記式(III)のアンモニウムカチオンにおいて、R9は炭素数1〜12のアルキル基を表し、R10、R11及びR12はそれぞれ独立に炭素数6〜12のアルキル基を表す。したがって、式(III) で示されるカチオンは、テトラアルキルアンモニウムカチオンである。式(III) で示されるテトラアルキルアンモニウムカチオンは、総炭素数が20以上、さらには22以上であるのが、アクリル樹脂(A)との相溶性の観点から好ましい。また、その総炭素数は、36以下、さらには30以下であるのが好ましい。式(II)で示されるテトラアルキルアンモニウムカチオンの具体例としては、次のようなものを挙げることができる。
【0054】
テトラヘキシルアンモニウムカチオン、
テトラオクチルアンモニウムカチオン、
トリヘキシルメチルアンモニウムカチオン、
トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、
トリデシルメチルアンモニウムカチオン、
トリヘキシルエチルアンモニウムカチオン、
トリオクチルエチルアンモニウムカチオンなど。
【0055】
一方、イオン性化合物(B)を構成するアニオン成分は、イオン性液体になることを満足するものであるのが好ましく、それ以外は特に制限されないが、例えば、次のようなものを挙げることができる。
【0056】
クロライドアニオン〔Cl-〕、
ブロマイドアニオン〔Br-〕、
ヨーダイドアニオン〔I-〕、
テトラクロロアルミネートアニオン〔AlCl4-〕、
ヘプタクロロジアルミネートアニオン〔Al2Cl7-〕、
テトラフルオロボレートアニオン〔BF4-〕、
ヘキサフルオロホスフェートアニオン〔PF6-〕、
パークロレートアニオン〔ClO4-〕、
ナイトレートアニオン〔NO3-〕、
アセテートアニオン〔CH3COO-〕、
トリフルオロアセテートアニオン〔CF3COO-〕、
メタンスルホネートアニオン〔CH3SO3-〕、
トリフルオロメタンスルホネートアニオン〔CF3SO3-〕、
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CF3SO22-〕、
トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン〔(CF3SO23-〕、
ヘキサフルオロアーセネートアニオン〔AsF6-〕、
ヘキサフルオロアンチモネートアニオン〔SbF6-〕、
ヘキサフルオロニオベートアニオン〔NbF6-〕、
ヘキサフルオロタンタレートアニオン〔TaF6-〕、
(ポリ)ハイドロフルオロフルオライドアニオン〔F(HF)n-〕(nは1〜3程度)、
チオシアンアニオン〔SCN-
ジシアナミドアニオン〔(CN)2-〕、
パーフルオロブタンスルホネートアニオン〔C49SO3-〕、
ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン〔(C25SO22-〕、
パーフルオロブタノエートアニオン〔C37COO-〕、
(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミドアニオン〔(CF3SO2)(CF3CO)N-〕など。
【0057】
これらの中でも特に、フッ素原子を含むアニオン成分は、低融点のイオン性化合物が得られることから好ましく用いられ、とりわけ、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンやヘキサフルオロホスフェートアニオンが好ましい。
【0058】
本発明に用いられるイオン性化合物の具体例は、上記カチオン成分とアニオン成分の組合せから適宜選択することができる。具体的なカチオン成分とアニオン成分の組合せであるイオン性化合物として、次のようなものが挙げられる。
【0059】
リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
リチウム ヘキサフルオロホスフェート、
リチウム ヨーダイド(ヨウ化リチウム)、
N−メチル−4−ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N−ブチル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N−ヘキシル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N−オクチル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N−メチル−4−ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−ブチル−2−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−ヘキシル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−オクチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−メチル−4−ヘキシルピリジニウム パークロレート、
N−ブチル−2−メチルピリジニウム パークロレート、
N−ヘキシル−4−メチルピリジニウム パークロレート、
N−オクチル−4−メチルピリジニウム パークロレート、
テトラヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリヘキシルメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリオクチルメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
テトラヘキシルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリヘキシルメチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリオクチルメチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、
テトラヘキシルアンモニウム パークロレート、
トリヘキシルメチルアンモニウム パークロレート、
トリオクチルメチルアンモニウム パークロレートなど。
【0060】
イオン性化合物(B)は、前述したとおり、極性官能基として水酸基を有するアクリル樹脂(A)を含む組成物から形成される粘着剤層に帯電防止性を付与するとともに、粘着剤としての諸物性を保つうえで有効である。
【0061】
[架橋剤(C)]
以上のようなアクリル樹脂(A)及びイオン性化合物(B)に加え、架橋剤(C)として、ヘキサメチレンジイソシアネート系の化合物を配合する。ヘキサメチレンジイソシアネートは、アクリル樹脂(A)中、特に水酸基含有アクリル樹脂中の水酸基含有単量体に由来する構造単位と架橋し得るイソシアナト基(−NCO)を分子内に2個有している。本発明で用いるヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(C)とは、ヘキサメチレンジイソシアネート自体のほか、ヘキサメチレンジイソシアネートを生成しうる化合物を含む意味である。ヘキサメチレンジイソシアネートを生成しうる化合物として、具体的には、グリセロールやトリメチロールプロパンの如きポリオールにヘキサメチレンジイソシアネートを反応させて得られるアダクト体や、ヘキサメチレンジイソシアネートを二量体、三量体等にしたものを挙げることができる。三量体には、3分子のヘキサメチレンジイソシアネートが、それぞれの片末端イソシアナト基の部分で水和・脱炭酸して形成されるビュレット体や、3分子のヘキサメチレンジイソシアネートが、それぞれの片末端イソシアナト基の部分でイソシアヌレート環を形成したイソシアヌレート体などがある。
【0062】
このようなヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(C)を、前述した極性官能基として水酸基を有するアクリル樹脂(A)及びイオン性化合物(C)、並びに後述するシラン系化合物(D)と組み合わせることにより、その粘着剤組成物が適用された光学フィルムを液晶セルガラスに貼り合わせた光学積層体が、高温条件下又は高温高湿条件下に置かれた場合や、高温環境と低温環境が繰り返された場合を含む各種環境下での耐久性を高めるという効果が得られる。一方、芳香族系の架橋剤だけを用いた場合には、特に高温環境と低温環境が繰り返された場合の耐久性が十分でない。
【0063】
このように本発明では、架橋剤(C)として、ヘキサメチレンジイソシアネート系の化合物を用いることが必須であるが、その他の架橋剤を併用することも可能である。併用しうる他の架橋剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート以外のイソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、金属キレート化合物、アジリジン系化合物などを挙げることができる。
【0064】
ヘキサメチレンジイソシアネート以外のイソシアネート系化合物は、分子内に少なくとも2個のイソシアナト基(−NCO)を有する化合物であり、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどが挙げられる。また、これらのイソシアネート化合物を、グリセロールやトリメチロールプロパンなどのポリオールに反応せしめたアダクト体や、イソシアネート化合物を二量体、三量体等にしたものも、架橋剤となりうる。
【0065】
エポキシ系化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物であり、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N′−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0066】
金属キレート化合物は、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウムなどの多価金属に、アセチルアセトンやアセト酢酸エチルが配位したものなどでありうる。
【0067】
アジリジン系化合物は、エチレンイミンとも呼ばれる1個の窒素原子と2個の炭素原子からなる3員環の骨格を分子内に少なくとも2個有する化合物であり、例えば、ジフェニルメタン−4,4′−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、イソフタロイルビス−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートなどが挙げられる。
【0068】
[シラン系化合物(D)]
以上のようなアクリル樹脂(A)、イオン性化合物(B)及びヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(C)に加えて、本発明ではシラン系化合物(D)を配合する。シラン系化合物(D)を含有させることにより、粘着剤層とガラス基板との密着性を向上させることができる。とりわけ、架橋剤(C)を配合する前のアクリル樹脂(A)に、シラン系化合物(D)を含有させておくことが好ましい。
【0069】
シラン系化合物(D)は、ケイ素原子に加水分解性の基が少なくとも1個結合した化合物であることができ、その具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシドキシプロピルエトキシジメチルシランなどを挙げることができる。2種以上のシラン系化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0070】
シラン系化合物は、シリコーンオリゴマータイプのものであってもよい。シリコーンオリゴマーを(モノマー)オリゴマーの形式で示すと、例えば、次のようなものを挙げることができる。
【0071】
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、メルカプトプロピル基含有のコポリマー;
【0072】
メルカプトメチルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
メルカプトメチルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
メルカプトメチルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
メルカプトメチルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、メルカプトメチル基含有のコポリマー;
【0073】
3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−メタクリロキシイルオプロピルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、メタクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;
【0074】
3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、アクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;
【0075】
ビニルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
ビニルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
ビニルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
ビニルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
ビニルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
ビニルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
ビニルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
ビニルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、ビニル基含有のコポリマー;
【0076】
3−アミノプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、
3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー
の如き、アミノ基含有のコポリマーなど。
【0077】
これらのシラン系化合物は、多くの場合、液体である。
【0078】
[粘着剤組成物]
本発明では、以上説明したような、アクリル樹脂(A)に、イオン性化合物(B)、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(C)及びシラン系化合物(D)をそれぞれ特定割合で配合し、粘着剤組成物とする。
【0079】
イオン性化合物(B)の配合量は、アクリル樹脂(A)の不揮発分100重量部(2種類以上用いる場合はその合計重量、以下同じ)に対して、 0.01〜5重量部の範囲とする。アクリル樹脂(A)の不揮発分100重量部に対してイオン性化合物(B)を 0.1重量部以上含有させると、帯電防止性能が向上することから好ましく、またその量が5重量部以下であると、イオン性化合物(B)がブリードアウトしにくいことから好ましい。イオン性化合物(B)の配合量は、アクリル樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、さらには0.2重量部以上、とりわけ 0.3重量部以上であり、また好ましくは3重量部以下、さらには1.5重量部以下である。
【0080】
ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(C)の配合量は、アクリル樹脂(A)の不揮発分100重量部に対し、 0.05〜5重量部の範囲とする。アクリル樹脂(A)の不揮発分100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(C)を 0.05重量部以上含有させると、粘着剤層の耐久性が向上する傾向にあることから好ましく、またその量が5重量部以下であると、粘着剤付き光学フィルムを液晶表示装置に適用したときの白ヌケが目立たなくなることから好ましい。ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(C)の配合量は、アクリル樹脂(A)100重量部に対し、好ましくは 0.2重量部以上、さらには0.3重量部以上であり、また好ましくは3重量部以下、さらには1.5重量部以下である。
【0081】
ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(C)に加えて、それ以外の架橋剤を併用する場合、その量は、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤を含む架橋剤全体のうち、50重量%以下にとどめるべきである。またこの場合、架橋剤全体の量は、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤の量として説明したのと同様、アクリル樹脂(A)の不揮発分100重量部に対して、0.05〜5重量部の範囲とするのが好ましい。
【0082】
シラン系化合物(D)の配合量は、アクリル樹脂(A)の不揮発分100重量部に対して、 0.03〜1重量部の範囲とする。アクリル樹脂(A)の不揮発分100重量部に対してシラン系化合物(D)を 0.03重量部以上含有させると、粘着剤層とガラス基板との密着性が向上することから好ましい。またその量が1重量部以下であると、粘着剤層からシラン系化合物がブリードアウトすることが抑制される傾向にあることから好ましい。シラン系化合物(D)の配合量は、アクリル樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.05重量部以上、さらには0.1重量部以上であり、また好ましくは 0.8重量部以下、さらには0.5重量部以下である。
【0083】
以上説明した粘着剤にはさらに、架橋触媒、耐候安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機フィラーなどを配合してもよい。中でも、粘着剤に架橋剤とともに架橋触媒を配合すれば、粘着剤層を短時間の熟成で調製することができ、得られる粘着剤付き光学フィルムにおいて、光学フィルムと粘着剤層との間に浮きや剥れが発生したり粘着剤層内で発泡が起こったりすることを抑制でき、またリワーク性も一層良好になることがある。架橋触媒としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、トリメチレンジアミン、ポリアミノ樹脂、メラミン樹脂の如きアミン系化合物などを挙げることができる。
【0084】
粘着剤を構成するこれらの各成分は、溶剤に溶かした状態で粘着剤組成物とされ、適当な基材上に塗布し、乾燥させて、粘着剤層とされる。
【0085】
[粘着剤付き光学フィルム]
本発明の粘着剤付き光学フィルムは、光学フィルムの少なくとも一方の面に、以上のような粘着剤組成物から形成される粘着剤層を設けたものである。ここで用いる光学フィルムとは、光学特性を有するフィルムであり、例えば、偏光フィルム、位相差フィルムなどが挙げられる。
【0086】
偏光フィルムとは、自然光などの入射光に対して、偏光を出射する機能を持つ光学フィルムである。偏光フィルムには、ある方向の振動面を有する直線偏光を吸収し、それと直交する振動面を有する直線偏光を透過する性質を有する直線偏光フィルム、ある方向の振動面を有する直線偏光を反射し、それと直交する振動面を有する直線偏光を透過する性質を有する偏光分離フィルム、偏光フィルムと後述する位相差フィルムを積層した楕円偏光フィルムなどがある。偏光フィルム、特に直線偏光フィルム(偏光子とか、偏光子フィルムとか呼ばれることもある)の好適な具体例として、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素や二色性染料などの二色性色素が吸着配向されているものが挙げられる。
【0087】
位相差フィルムとは、光学異方性を示す光学フィルムであって、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリイミド、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリビニリデンフルオライド/ポリメチルメタクリレート、液晶ポリエステル、アセチルセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリ塩化ビニルなどからなる高分子フィルムを 1.01〜6倍程度に延伸することにより得られる延伸フィルムなどが挙げられる。中でも、ポリカーボネートフィルムや環状ポリオレフィン系フィルムを一軸延伸又は二軸延伸した高分子フィルムが好ましい。一軸性位相差フィルム、広視野角位相差フィルム、低光弾性率位相差フィルムなどと称されるものがあるが、いずれに対しても適用可能である。
【0088】
また、液晶性化合物の塗布・配向によって光学異方性を発現させたフィルムや、無機層状化合物の塗布によって光学異方性を発現させたフィルムも、位相差フィルムとして用いることができる。このような位相差フィルムには、温度補償型位相差フィルムと称されるもの、また、新日本石油(株)から“LCフィルム”の商品名で販売されている、棒状液晶がねじれ配向したフィルム、同じく新日本石油(株)から“NHフィルム”の商品名で販売されている棒状液晶が傾斜配向したフィルム、富士フイルム(株)から“WVフィルム”の商品名で販売されている円盤状液晶が傾斜配向したフィルム、住友化学(株)から“VACフィルム”の商品名で販売されている完全二軸配向型のフィルム、同じく住友化学(株)から“new VAC フィルム”の商品名で販売されている二軸配向型のフィルムなどがある。
【0089】
さらに、これら光学フィルムに保護フィルムが貼着されたものも、光学フィルムとして用いることができる。保護フィルムとしては、透明な樹脂フィルムが用いられ、その透明樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースに代表されるアセチルセルロース系樹脂、ポリメチルメタクリレートに代表されるメタクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスルホン樹脂などが挙げられる。保護フィルムを構成する樹脂には、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などの紫外線吸収剤が配合されていてもよい。保護フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルムなどのアセチルセルロース系樹脂フィルムが好適に用いられる。
【0090】
上で説明した光学フィルムの中でも、直線偏光フィルムは、それを構成する偏光子、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光子フィルムの片面又は両面に、保護フィルムが貼着された状態で用いられることが多い。また、前述した楕円偏光フィルムは、直線偏光フィルムと位相差フィルムを積層したものであるが、その偏光フィルムも、偏光子フィルムの片面又は両面に、保護フィルムが貼着された状態であることが多い。このような楕円偏光フィルムに、本発明による粘着剤層を形成する場合は、通常、その位相差フィルム側に粘着剤層が形成される。
【0091】
本発明により粘着剤層が設けられる光学フィルムの好適な例として、アセチルセルロース系保護フィルム/ポリビニルアルコール系偏光子/アセチルセルロース系保護フィルムの構成からなる偏光フィルムを含む光学フィルム、また、非晶性環状ポリオレフィン系樹脂フィルム/ポリビニルアルコール系偏光子/保護フィルムの構成からなる偏光フィルムを含む光学フィルムを挙げることができる。前者では、その少なくとも一方の外側に、粘着剤層が設けられる。また後者では、その非晶性環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの外側に粘着剤層を設けるのが好ましい。
【0092】
ここで、非晶性環状ポリオレフィン系樹脂とは、ノルボルネンや多環ノルボルネンの如き環状オレフィンをモノマーとする樹脂であり、これら環状オレフィンの開環重合体に水素添加して水素化度を飽和させたものや、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体などであってよい。なかでも、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂が有利に使用される。また、極性基が導入されていてもよい。市販の非晶性環状ポリオレフィン系樹脂としては、JSR(株)から販売されている“アートン”(ARTON) 、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオネックス”(ZEONEX)及び“ゼオノア”(ZEONOR)、三井化学(株)から販売されている“APO”及び“アペル”(いずれも商品名)などがある。かかる非晶性環状ポリオレフィン系樹脂は、光弾性係数が小さく、温度変化等に伴う位相差変化が生じにくいため、液晶表示装置としたときの白抜けを抑制するのに有効である。
【0093】
粘着剤付き光学フィルムは、例えば、剥離フィルムの上に、上記の粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層にさらに光学フィルムを積層する方法、光学フィルムの上に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、その粘着剤面に剥離フィルムを貼り合わせて保護し、粘着剤付き光学フィルムとする方法などにより、製造できる。ここで用いる剥離フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等の各種樹脂からなるフィルムを基材とし、この基材の粘着剤層との接合面に、シリコーン処理の如き離型処理が施されたものなどであることができる。
【0094】
粘着剤層の厚みは特に限定されないが、通常は30μm 以下であるのが好ましく、また10μm 以上であるのが好ましく、さらに好ましくは10〜20μm である。粘着剤層の厚みが30μm 以下であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましく、またその厚みが10μm 以上であると、そこに貼合されている光学フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜けや色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。従来から一般に、液晶セルガラスに貼着される粘着剤層の厚みは、25μm が標準とされていたが、本発明においては、その厚みを20μm 以下としても、粘着剤層として十分な性能を発揮する。
【0095】
本発明の粘着剤付き光学フィルムは、ガラス基板に貼着して光学積層体とした後、なんらかの不都合があってその光学フィルムをガラス基板から剥離する場合に、粘着剤層は光学フィルムに伴って剥離され、粘着剤層と接していたガラス基板の表面に、曇りや糊残りなどがほとんど発生しないことから、剥離後のガラス基板に再び、粘着剤付き光学フィルムを貼り直すことが容易である。すなわち、いわゆるリワーク性に優れている。
【0096】
[光学積層体]
本発明の粘着剤付き光学フィルムは、その粘着剤層でガラス基板に積層して、光学積層体とすることができる。粘着剤付き光学フィルムをガラス基板に積層して光学積層体とするには、例えば、上記のようにして得られる粘着剤付き光学フィルムから剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層をガラス基板の表面に貼り合わせればよい。ここで、ガラス基板としては、例えば、液晶セルのガラス基板、防眩用ガラス、サングラス用ガラスなどを挙げることができる。中でも、液晶セルの前面側(視認側)のガラス基板に粘着剤付き光学フィルム(上偏光フィルム)を積層し、液晶セルの背面側のガラス基板に別の粘着剤付き光学フィルム(下偏光フィルム)を積層してなる光学積層体は、液晶表示装置として使用し得ることから好ましい。ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダライムガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラスなどが挙げられる。
【0097】
本発明の光学積層体は、液晶表示装置の液晶セルとして用いることができる。本発明の光学積層体から形成される液晶表示装置は、例えば、ノート型、デスクトップ型、PDA(Personal Digital Assistance )などを包含するパーソナルコンピュータ用液晶ディスプレイ、テレビ、車載用ディスプレイ、電子辞書、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、電子卓上計算機、時計などに用いることができる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、使用量ないし含有量を表す「部」及び「%」は、特に断りのない限り重量基準である。
【0099】
以下の例において、不揮発分は、 JIS K 5407 に準じた方法で測定した値である。具体的には、粘着剤溶液を任意の重量でシャーレにとり、防爆オーブンにて115℃で2時間乾燥させた後の残留不揮発分重量を、最初に測りとった溶液の重量に対する割合で表したものである。また重量平均分子量の測定は、GPC装置に、カラムとして東ソー(株)製の“TSK gel GMHHR-H(S)”2本を直列につないで配置し、溶出液としてテトラヒドロフランを用いて、試料濃度5mg/ml、試料導入量100μl 、温度40℃、流速1ml/分の条件で、標準ポリスチレン換算により行った。
【0100】
まず、本発明で規定する高分子量の水酸基含有アクリル樹脂を製造した例を示す。
【0101】
[重合例1]
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に、酢酸エチル 81.8部、アクリル酸ブチル98.8部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル1.0部、及びアクリル酸0.2部の混合溶液を仕込み、 窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら、内温を55℃に上げた。その後、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤) 0.14部を酢酸エチル10部に溶かした溶液を全量添加した。開始剤添加1時間後に、単量体を除くアクリル樹脂の濃度が35%になるよう、添加速度17.3部/hr で酢酸エチルを連続的に反応器に添加しながら、内温54〜56℃で12時間保温し、最後に酢酸エチルを添加して、アクリル樹脂の濃度が20%となるように調節した。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mw が 1,470,000、Mw/Mn が4.2であった。これをアクリル樹脂A1とする。アクリル樹脂A1中の水酸基含有単量体であるアクリル酸2−ヒドロキシエチルに由来する構造単位は1%であり、またカルボキシル基含有単量体であるアクリル酸に由来する構造単位は 0.2%である。
【0102】
[重合例2]
単量体組成を、アクリル酸ブチル98.3部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル1.5部及びアクリル酸 0.2部に変更した以外は、重合例1と同様にしてアクリル樹脂の酢酸エチル溶液を得た。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mw が 1,240,000、Mw/Mn が3.8であった。これをアクリル樹脂A2とする。アクリル樹脂A2中の水酸基含有単量体であるアクリル酸2−ヒドロキシエチルに由来する構造単位は 1.5%であり、またカルボキシル基含有単量体であるアクリル酸に由来する構造単位は 0.2%である。
【0103】
[重合例3]
単量体組成を、アクリル酸ブチル98.4部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル1.0部及びアクリル酸 0.6部に変更した以外は、重合例1と同様にしてアクリル樹脂の酢酸エチル溶液を得た。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mw が 1,250,000、Mw/Mn が4.3であった。これをアクリル樹脂A3とする。アクリル樹脂A3中の水酸基含有単量体であるアクリル酸2−ヒドロキシエチルに由来する構造単位は1%であり、またカルボキシル基含有単量体であるアクリル酸に由来する構造単位は 0.6%である。
【0104】
[重合例4]
単量体組成を、アクリル酸ブチル99.0部及びアクリル酸4−ヒドロキシブチル1.0部に変更した以外は、重合例1と同様にしてアクリル樹脂の酢酸エチル溶液を得た。得られたアクリル樹脂は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが1,790,000、Mw/Mn が5.5であった。これをアクリル樹脂A4とする。アクリル樹脂A4中の水酸基含有単量体であるアクリル酸4−ヒドロキシブチルに由来する構造単位は1%である。
【0105】
次に、上で製造したアクリル樹脂を用いて粘着剤を調製し、光学フィルムに適用した実施例及び比較例を示す。以下の例では、イオン性化合物として次のものを用いた。各化合物の記号は、後で参照するために付したものである。いずれの化合物も、常温において液体であった。
【0106】
化合物1:リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(下式の構造を有する)

【0107】
化合物2:N−ヘキシル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(下式の構造を有する)

【0108】
化合物3:N−ヘキシル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート(下式の構造を有する)

【0109】
化合物4:トリオクチルメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(下式の構造を有する)

【0110】
また、架橋剤及びシラン系化合物として、次のものを用いた(いずれも商品名)。
【0111】
〈架橋剤〉
タケネート D160N:ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)、三井化学ポリウレタン(株)から入手。後掲の表1及び表2では、この化合物を「HDI」 と略記する。
タケネート D110N:キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)、三井化学ポリウレタン(株)から入手。後掲の表1及び表2では、この化合物を「XDI」 と略記する。
コロネートL:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)、日本ポリウレタン工業(株)から入手。後掲の表1及び表2では、この化合物を「TDI」 と略記する。
【0112】
〈シラン系化合物:いずれも液体〉
KBE402:3−グリシドキシプロピルジエトキシメチルシラン、信越化学工業(株)から入手。
X-41-1805 :メルカプト基を有するシランオリゴマー、信越化学工業(株)から入手。
KBM303:3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業(株)から入手。
【0113】
[実施例1〜4及び比較例1〜3]
(a)粘着剤の製造
重合例1〜4で得たアクリル樹脂A1〜A4をそれぞれ不揮発分換算で100部用い、これに、上に示したイオン性化合物、架橋剤及びシラン系化合物を、それぞれ表1に示す割合で混合し、粘着剤組成物を調製した。ただし、表1中、架橋剤の配合量(部)は、固形分の量である。
【0114】
【表1】

【0115】
(b)粘着剤付き光学フィルムの作製
上の各粘着剤組成物を、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名“PET 3811”、リンテック(株)から入手;セパレーターと呼ぶ)の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが20μm となるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、シート状の粘着剤を得た。次いで、ヨウ素が吸着配向したポリビニルアルコール偏光子の両面をトリアセチルセルロースからなる保護フィルムで挟んだ3層構造の偏光フィルムの片面に、上で得たシート状粘着剤のセパレーターと反対側の面(粘着剤面)をラミネーターにより貼り合わせたのち、温度23℃、相対湿度65%の条件で7日間熟成させて、粘着剤付き偏光フィルムを得た。
【0116】
(c)粘着剤付き光学フィルムの帯電防止性評価
得られた粘着剤付き偏光フィルムのセパレーターを剥離した際に、粘着剤の表面抵抗値を表面固有抵抗測定装置〔三菱化学(株)製の“Hirest-up MCP-HT450 ”(商品名)〕にて測定し、帯電防止性を評価した。表面抵抗値が1011Ω/□オーダー又はそれ以下であれば、良好な帯電防止性が得られる。
【0117】
(d)光学積層体の作製及び評価
上記(b)で作製した粘着剤付き偏光フィルムからセパレーターを剥がした後、その粘着剤面を液晶セル用ガラス基板〔コーニング社製の“1737”(商品名)〕の両面にクロスニコルとなるように貼着し、光学積層体を作製した。この光学積層体につき、温度80℃の乾燥条件下で96時間保管する耐熱試験を行った後、白ヌケの発現状態を目視で観察した。また、温度80℃の乾燥条件下で300時間保管する耐熱試験を行った場合と、温度60℃、相対湿度90%で300時間保管する耐湿熱試験を行った場合と、70℃に加熱した状態から−30℃に降温し、次いで70℃に昇温する過程を1サイクル(1時間)として、これを100サイクル繰り返す耐ヒートショック試験を行った場合のそれぞれについて、試験後の光学積層体を目視で観察した。結果を以下の基準で分類し、表2にまとめた。
【0118】
〈白ヌケの発現状態〉
一方の偏光フィルム側から光を入射させたときの白ヌケの発現状態を、以下の4段階で評価した。
【0119】
◎:白ヌケが全くみられない。
○:白ヌケがほとんど目立たない。
△:白ヌケがやや目立つ。
×:白ヌケが顕著に認められる。
【0120】
〈熱、湿熱及びヒートショック(表2では「HS」と記す)に対する耐久性〉
これらの評価は、以下の4段階で行った。
【0121】
◎:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が全くみられない。
○:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がほとんどみられない。
△:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がやや目立つ。
×:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が顕著に認められる。
【0122】
(e)粘着剤付き光学フィルムのリワーク性評価
リワーク性の評価は次のように行った。まず、前記の粘着剤付き偏光フィルムを25mm×150mmの大きさの試験片に裁断した。次に、この試験片からセパレーターを剥がし、その粘着剤側で、貼付装置〔フジプラ(株)製の“ラミパッカー”(商品名)〕を用いて液晶セル用ガラス基板に貼り付け、50℃、5kg/cm2(490.3kPa )で20分間オートクレーブ処理を行った。引き続き23℃で24時間保管した後、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中にて、この貼着試験片から偏光フィルムを300mm/分の速度で180°方向に剥離し、ガラス板表面の状態を観察して、以下の基準で分類した。結果を、併せて表2に示した。
【0123】
◎:ガラス板表面に曇り等が全く認められない。
○:ガラス板表面に曇り等がほとんど認められない。
△:ガラス板表面に曇り等が認められる。
×:ガラス板表面に粘着剤の残りが認められる。
【0124】
【表2】

【0125】
表1及び表2からわかるように、本発明で規定するところの水酸基を有するアクリル樹脂(A)に、イオン性化合物(B)、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(C)及びシラン化合物(D)を配合した実施例1〜4は、表面抵抗値が低くなることから帯電防止性に優れるとともに、白ヌケが起こりにくく、また、耐熱性、耐湿熱性、耐ヒートショック性及びリワーク性のいずれにおいても、ほぼ満足できる結果が得られた。
【0126】
これに対し、イオン性化合物を配合していない比較例1は、表面抵抗値が高いことから帯電防止性が望めない。水酸基を有するアクリル樹脂に、イオン性化合物を配合するが、本発明で規定するヘキサメチレンジイソシアネートとは異なるキシリレンジイソシアネート系又はトリレンジイソシアネート系の架橋剤を配合した比較例2及び3は、良好な帯電防止性を示すものの、耐湿熱性及び耐ヒートショック性の少なくとも一方において、不十分な結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の粘着剤付き光学フィルムは、高い帯電防止性が付与され、また大型化しても白ヌケが起こりにくく、耐久性にも優れることから、液晶表示装置に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が形成されてなる粘着剤付き光学フィルムであって、該粘着剤層は、
(A)下式(I)

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は、それぞれ炭素数1〜10のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜14のアルキル基又はアラルキル基を表す)
で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位、及び、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の水酸基を有する不飽和単量体に由来する構造単位を含み、該水酸基を有する不飽和単量体に由来する構造単位の含有量が樹脂全体100重量部に対して0.5〜5重量部であり、重量平均分子量が 500,000〜2,000,000である水酸基含有アクリル樹脂を主成分とするアクリル樹脂100重量部、
(B)イオン性化合物0.01〜5重量部、
(C)ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤0.05〜5重量部、及び
(D)シラン系化合物0.03〜1重量部
を含有する組成物から形成されていることを特徴とする粘着剤付き光学フィルム。
【請求項2】
水酸基含有アクリル樹脂は、さらに分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個のカルボキシル基とを有する不飽和カルボン酸に由来する構造単位を含み、該不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量が樹脂全体100重量部に対して 0.1〜1重量部であり、かつ(不飽和カルボン酸に由来する構造単位の重量基準含有量)/(水酸基を有する不飽和単量体に由来する構造単位の重量基準含有量)の比が 0.6以下である請求項1に記載の粘着剤付光学フィルム。
【請求項3】
イオン性化合物(B)は、そのカチオンが、リチウムカチオン、下式(II)

(式中、R3〜R7の一つは炭素数1〜6のアルキル基を表し、残りはそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R8は炭素数1〜12のアルキル基を表す)
で示されるピリジニウム系カチオン、及び下式(III)

(式中、R9 は炭素数1〜12のアルキル基を表し、R10、R11及びR12はそれぞれ独立に炭素数6〜12のアルキル基を表す)
で示される4級アンモニウムカチオンから選ばれる請求項1又は2に記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項4】
イオン性化合物(B)は、そのアニオンがフッ素原子を含む請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項5】
アニオンは、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン又はヘキサフルオロホスフェートアニオンである請求項4に記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項6】
光学フィルムは、アセチルセルロース系保護フィルム/ポリビニルアルコール系偏光子/アセチルセルロース系保護フィルムの構成からなる偏光フィルムを含み、その外側に前記粘着剤層が形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項7】
光学フィルムは、非晶性環状ポリオレフィン系樹脂フィルム/ポリビニルアルコール系偏光子/保護フィルムの構成からなる偏光フィルムを含み、その非晶性環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの外側に前記粘着剤層が形成されている請求項1〜5のいずれかにに記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項8】
粘着剤層は、10〜30μm の厚みを有する請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項9】
粘着剤層の表面に剥離フィルムが貼着されている請求項1〜8のいずれかに記載の粘着剤付き光学フィルム。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の粘着剤付き光学フィルムが、その粘着剤層側でガラス基板に貼合されてなることを特徴とする光学積層体。

【公開番号】特開2009−58859(P2009−58859A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227446(P2007−227446)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】