説明

純水製造方法及び純水製造装置

【課題】電気式脱イオン装置の目詰まりの発生や処理水の水質悪化を防止するとともに、電気式脱イオン装置の処理効率の低下や、装置の短命化を防止できる純水製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】電気式脱イオン装置14により脱イオンを行う純水製造処理と、電気式脱イオン装置14に熱水を供給して殺菌する熱水殺菌処理と、を交互に繰り返して行う純水製造方法であって、純水製造処理時における、電気式脱イオン装置14の濃縮室142内の被処理水の流れ方向を、脱塩室141の被処理水の流れ方向に対して向流方向とし、前記熱水殺菌処理時における、電気式脱イオン装置14の濃縮室142内の被処理水の流れ方向を、脱塩室141内の被処理水の流れ方向に対して並流方向とする、純水製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造処理と熱水殺菌処理とを交互に行う純水製造方法及び純水製造装置に係り、特に、電気式脱イオン装置の処理効率の低下を防止でき、かつ処理水質に優れた純水を得ることができる純水製造方法及び純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気脱イオン処理は、脱イオン処理を行った後の再生において、従来のイオン交換樹脂等のように再生に薬品を使用する必要がなく、薬品を廃棄処理する手間や装置等が不要であるため、現在では医薬品や食品、半導体製造等に用いる水処理において広く用いられるようになってきた。
【0003】
特に、医薬用や食用に用いられる純水の製造においては、より純度の高い純水を供給すべく厳格な生菌管理が要求されるため、電気式脱イオン装置を使用して純水の製造を行う際には、熱水殺菌処理を行いながら運転を行っている。
【0004】
例えば、電気式脱イオン装置を備えた医薬用純水の純水製造装置では、常温の被処理水を供給して脱イオン処理を行い、処理水の水質が維持できなくなる前に、電気式脱イオン装置に60℃以上の熱水を供給して殺菌し、再度、常温の被処理水を供給して脱イオン処理を行うという、純水の製造処理と熱水殺菌処理を交互に行うことにより、常時、所定の水質を維持した処理水を供給できるようにしていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−74109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような純水製造方法及び純水製造装置では、熱水殺菌処理後に常温の被処理水を供給すると、電気式脱イオン装置において、濃縮室の閉塞が生じる場合がある。
濃縮室の閉塞が生じると、濃縮水流量が低下して処理コストが見合わなくなったり、電気式脱イオン装置の短命化が生じたりするという問題がある。また、イオン交換膜のイオン除去性能が低下して、電気式脱イオン装置からの処理水導電率が医薬用純水基準に適合しなくなるという問題が発生することもある。
【0007】
また、電気式脱イオン装置としては、電極室(陰極、陽極)の間に複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配列して濃縮室と脱塩室とを交互に形成し、濃縮室、脱塩室、電極室に通水しながらイオン処理を行うものが知られている。
電気式脱イオン装置に供給された被処理水は、脱塩室内を通過しながら脱塩処理され、処理水は後段の装置に供給される。一方、電気式脱イオン装置において、被処理水から分離されたイオン等は、イオン交換膜を介して濃縮室に移動して、脱イオン装置の系外に排出される。
【0008】
しかしながら、上記電気式脱イオン装置では、脱塩室入口近傍では被処理水のイオン濃度が高いため、この領域の被処理水が濃縮室側に移動すると、高濃度のイオン水が濃縮室内に蓄積することがある。この場合、濃縮室内で目詰まりが生じたり、濃縮室から排出される処理水の水質が悪化するという問題がある。
このような問題を解決するために、濃縮室における通水を、脱塩室の通水方向とは反対方向で通水して、脱イオン処理を行う脱イオン方法が提案されている。
【0009】
上記の通水方式を採用した場合には、脱塩室入口側から濃縮室に流入した高濃度の被処理水は、濃縮室出口から即座に排出される。したがって、濃縮室出口近傍領域における、イオン等の蓄積が防止され、濃縮室における目詰まりの発生や、処理水の水質悪化を抑制することができる。
しかしながら、このような通水方式を採用した場合、脱塩室入口と濃縮室出口間の圧力差が過大となり、脱塩室と濃縮室間のイオン交換膜の変形が生じやすくなる。この場合、濃縮室の閉塞が発生し、上述したような、濃縮水流量の低下や、処理水導電率の上昇等の発生が顕著となるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明はこのような従来の問題に鑑みなされたもので、熱水殺菌処理工程を有する純水製造装置及び純水製造方法において、電気式脱イオン装置の目詰まりの発生や処理水の水質悪化を防止するとともに、電気式脱イオン装置の処理効率の低下や、装置の短命化を防止できる純水製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、本発明の純水製造方法及び純水製造装置により、上記問題を解決することができることを見出し、本発明を完成したものである。
【0012】
すなわち、本発明の純水製造方法は、電気式脱イオン装置により脱イオンを行う純水製造処理と、前記電気式脱イオン装置に熱水を供給して殺菌する熱水殺菌処理と、を交互に繰り返して行う純水製造方法であって、前記純水製造処理時における、前記電気式脱イオン装置の前記濃縮室内の被処理水の流れ方向を、前記脱塩室の被処理水の流れ方向に対して向流方向とし、前記熱水殺菌処理時における、前記電気式脱イオン装置の前記濃縮室内の被処理水の流れ方向を、前記脱塩室内の被処理水の流れ方向に対して並流方向とする、ことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の純水製造装置は、陰極と陽極との間に、複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを配列して脱塩室と濃縮室とを形成してなる電気式脱イオン装置を有し、純水製造処理と熱水殺菌処理とを交互に行う純水製造装置であって、前記電気式脱イオン装置が、前記純水製造処理時には、前記脱塩室の脱塩水出口に近い側から前記濃縮室内に被処理水を導入するとともに、前記濃縮室のうち前記脱塩室の被処理水入口に近い側から濃縮水を流出させ、前記熱水殺菌処理時には、前記脱塩室の被処理水入口に近い側から前記濃縮室内に被処理水を導入するとともに、前記濃縮室のうち脱塩室の脱塩水出口に近い側から濃縮水を流出させる、制御手段を有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明によれば、電気式脱イオン装置において、イオン濃度の高い被処理水が、脱塩室から濃縮室に供給されても、即座に排出されるため、濃縮室の目詰まりの発生や処理水の水質悪化が抑制される。
また、本発明によれば、熱水殺菌処理時と純水製造処理時とで、濃縮室の通水方向を切り替えるため、濃縮室の閉塞に伴う処理効率の低下や、電気式脱イオン装置の短命化を招くこともない。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明によれば、熱水殺菌処理工程を有する純水製造方法及び純水製造装置において、濃縮室の目詰まりに起因する電気式脱イオン装置の劣化や、濃縮水の水質悪化を防止し、且つ、濃縮室の閉塞に伴う処理効率の低下や、電気式脱イオン装置の短命化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態における純水製造装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態における純水製造装置の電気式脱イオン装置14周辺の構成を拡大して示す図である。
【図3】本発明の純水製造方法における電気式脱イオン装置周辺のフローを説明する図である。
【図4】純水製造処理時における電気式脱イオン装置の脱塩室及び濃縮室の被処理水及び処理水の圧力状態を示す図である。
【図5】熱殺菌処理時における電気式脱イオン装置の脱塩室及び濃縮室の被処理水及び処理水の圧力状態を示す図である。
【図6】本発明の純水製造方法の純水製造処理工程のフローを示す図である。
【図7】本発明の純水製造方法の昇温工程におけるフローを示す図である。
【図8】本発明の純水製造方法の均温工程におけるフローを示す図である。
【図9】本発明の純水製造方法の降温工程におけるフローを示す図である。
【図10】他の実施形態における、純水製造方法の処理フローを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の詳細、ならびにその他の特徴及び利点について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態における純水製造装置の概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態における純水製造装置1は、前処理水10を処理する活性炭吸着装置11と、この活性炭吸着装置11の後段に、原水タンク12が設置されており、活性炭吸着装置11、原水タンク12間は、開閉バルブB1を備えた供給配管L1によって接続されている。
原水タンク12の後段には、逆浸透膜装置13と、電気式脱イオン装置14と、が順次設置されており、更に電気式脱イオン装置14の後段には、処理水タンク15が設置されている。原水タンク12及び逆浸透膜装置13間、並びに逆浸透膜装置13及び電気式脱イオン装置14間は、それぞれ配管L1−1、配管L1−2により接続されている。さらに、電気式脱イオン装置14と処理水タンク15は、開閉バルブB2を備えた供給配管L2により接続されている。なお、開閉バルブB2は、第1の圧力調整バルブとしても機能する。
また、原水タンク12と逆浸透膜装置13との間には、蒸気ヒータ16が設けられている。図1では蒸気ヒータ16は原水タンク12と逆浸透膜装置13との間に設置されているが、特に限定されるものではなく、また、加熱は蒸気ヒータに限定されるものではなく電熱ヒータ等も使用可能である。
また、本実施形態では図示を省略するが、活性炭吸着装置11の前段、又は逆浸透膜装置13の前段に濁質除去処理をするための膜処理装置が設置されていてもよく、さらに逆浸透膜装置13と電気式脱イオン装置14との間には、逆浸透膜装置3で除去しきれなかった硬度成分を除去するための硬度除去装置が設置されていてもよい。
【0019】
逆浸透膜装置13の濃縮水出口配管は、濃縮水排出バルブB3を介して濃縮水排出配管L3に接続されている。濃縮水排出配管L3の濃縮水排出バルブB3の上流部と原水タンク12間には、後述する均熱工程において、濃縮水排出バルブB3を閉じるとともに、管路に設けた切換えバルブB4の開放により、逆浸透膜装置13の濃縮水を原水タンク12に還流させる還流配管L4が設けられている。
【0020】
電気式脱イオン装置14は、脱塩室141と濃縮室142と電極室143とから構成されており、脱塩水の供給配管L2の開閉バルブB2の上流部と原水タンク12間には、殺菌工程において、切換えバルブB5の開放により、高温の脱塩水を原水タンク12に還流させる還流配管L5が設けられている。なお、切換えバルブB5は、第2の圧力調整バルブとしても機能する。
また、濃縮室142の原水タンク12側出入口には配管L6が設けられており、濃縮室142の処理水タンク15側出入口には配管L7が設けられている。本実施形態では、後に詳述する構成により、配管L6から濃縮室142への被処理水の供給も、配管L7から濃縮室142への被処理水の供給も可能とされている。
【0021】
なお、原水タンク12と蒸気ヒータ16との間の配管には、第1のポンプP1が設けられ、蒸気ヒータ16と逆浸透膜装置13との間の配管には、第2のポンプP2が設けられている。
原水タンク12内の水は、これらのポンプにより上記各装置に順次通水され、後述するように加熱殺菌時には、還流配管を介して、熱水を系内に循環させるようになっている。なお、図1では原水タンク12と蒸気ヒータ16との間には、第1のポンプP1が介挿入され、蒸気ヒータ16と逆浸透膜装置13との間には、第2のポンプP2が介挿入されているが、いずれか一方でもよく、設置する場所も特に限定されない。
また、原水タンク12内、蒸気ヒータ16と逆浸透膜装置13との間の配管、電気式脱イオン装置14と処理水タンク15との間の配管には、それぞれ温度計T1、T2、T3が設けられており、加熱殺菌時には、各部の水温を検出して、図示を省略した制御手段により、昇温、均温、降温の各工程における各バルブの操作を行うとともに、蒸気ヒータ16を制御して各部の水温を所定の殺菌温度に維持するようになっている。
【0022】
このように、温度計T1〜T3は、加熱殺菌時に系内の水温が所定の殺菌温度であることを監視するとともに、所定の殺菌温度を維持するように図示を省略した制御手段により蒸気ヒータ16をフィードバック制御する温度センサーとして用いられる。
【0023】
本発明に使用される逆浸透膜装置13は、水温60℃以上の熱水を通水したときの、透過水の導電率が45μS/cm以下となるものが好ましく、脱塩率は85%以上のものが好ましい。
このような逆浸透膜装置13に装着される逆浸透膜131(図示省略)としては、例えば、Duratherm RO 2540 HF(70℃用)、Duratherm RO 4040 HF(70℃用)、Duratherm RO 8040 HF(70℃用)(いずれも米国GE社製、商品名)等が挙げられる。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態における純水製造装置の電気式脱イオン装置14周辺の構成を拡大して示す図である。
図2に示すように、電気式脱イオン装置14は、脱塩室141と濃縮室142と電極室143とから構成されており、配管L7は、開閉バルブB6を備えた配管L8と、Q1において接続しており、また、電極室143の電極水出口配管も、開閉バルブB7を備えた配管L9と接続している。
この配管L8及びL9は、それぞれ共通の還流配管L10に接続されており、還流配管L10は分岐して、一方の分岐管L10−1は原水タンク12に接続され、他方の分岐管L10−2は濃縮水排出口に開口している。分岐管L10−1、10−2には、それぞれ流路を原水タンク12側と濃縮水排出口側に切換えるバルブB8、B9が設けられている。
【0025】
逆浸透膜装置13及び脱塩室141間(Q3)、並びに濃縮室142の後方には、開閉バルブB10を備えた分岐配管L11が設けられており、分岐配管L11の処理水タンク15側端部は、Q1において配管L7、L8と接続している。この還流配管L11、配管L7及び配管L6により、濃縮142への第1の供給−排出ラインを形成している。
また、分岐配管L11のバルブB10上流側の位置(Q4)からは、切換えバルブB11を備えた分岐配管L12が設けられており、分岐配管L12は、Q2において、開閉バルブB12を備えた排出配管L13と接続されている。そして、上記分岐配管L11、分岐配管L12、配管L6及び配管L7によって、濃縮室142への第2の供給−排出ラインを形成している。
なお、切換えバルブB11は、第3の圧力調整バルブとしても機能する。
【0026】
なお、図1及び図2において、開閉バルブ(B1、B2、B6、B7、B10、B12)、濃縮水排出バルブ(B3)及び切換えバルブ(B4、B5、B8、B9、B11)は、加熱処理及び純水製造処理の各段階において、図示を省略した制御手段により開閉が行われる。
そして、開閉バルブB2と切換えバルブB5、開閉バルブB10と切換えバルブB11、濃縮水排出バルブB3と切換えバルブB4、切換えバルブB8とB9については、それぞれ同時に開閉制御が行われて、熱水の流路の切換えが行われる。
また、図1及び図2は本発明の一実施形態であり、本発明の効果を阻害しない範囲で、純水装置として用いられる構成に適宜変更して用いることができる。
【0027】
次に、図3(a)及び(b)に基づいて、本発明の製造装置1による純水製造方法の、電気式脱イオン装置周辺におけるフローを説明する。
図3(a)は、本発明の純水製造方法の純水製造時における電気式脱イオン装置周辺のフローを説明する図である。
図3(a)において、開閉バルブB6、切換えバルブB11は閉とし、開閉バルブB7、B10、B12を開として、不図示のポンプP1を駆動させる。
これによって、原水は、前段装置側(図1における前処理水10、原水タンク12、逆浸透膜装置13)から電気式脱イオン装置14側に供給され、このうち、Q3を経由し、配管L1−2から脱塩室141に供給された被処理水は、脱塩処理がなされた後、供給配管L2から後段装置側に供給される。
一方、ポイントQ3から還流配管L11側に流入した被処理水は、バルブB10を介して配管L7に流入し、濃縮室142の処理水タンク15側出入口から濃縮室142内に流入する。このため、濃縮室142内の被処理水は、脱塩室141内の被処理水の移動方向とは反対方向に移動する。
濃縮室142内を通過した処理水は、濃縮室142の原水タンク12側出入口から排出され、配管L6、排出配管L13より、開閉バルブB12を介して排水側に排出される。
また、電極室143からの電極水も、配管L9により、開閉バルブB7を介して排水側に排出される。
【0028】
このように、純水製造処理時には、濃縮室142内の被処理水を、脱塩室141内の被処理水の移動方向と反対方向に移動させることにより、脱塩室141における入口(供給口)が、濃縮室142における出口(排出口)と隣接する構成となる。すなわち、脱塩室141の入口近傍に存在する高イオン濃度の被処理水は、濃縮室142側に移動すると、濃縮室142出口から速やかに排出される。したがって、濃縮室142内にイオン等の不純物が蓄積することがなく、濃縮室142内における目詰まり等の発生を防止することができる。
また、上記のように、濃縮室142内の被処理水を、脱塩室141内の被処理水の移動方向と反対方向に移動させることにより、脱塩室141と濃縮室142の原水タンク12側出入口間の圧力差を、大きくすることができる。
図4は、純水製造処理時における、電気式脱イオン装置の脱塩室及び濃縮室の被処理水及び処理水の圧力状態を示す図である。
このように、脱塩室141と濃縮室142の原水タンク12側出入口間の圧力差が高められることにより、圧力調整バルブによる圧力を極度に大きくしなくても、純水製造時の収率を向上させることができる。
【0029】
図3(b)は、本発明の純水製造方法の熱水殺菌時における電気式脱イオン装置周辺のフローを説明する図である。
図3(b)において、開閉バルブB10、B12を閉、切換えバルブB11、開閉バルブB6を開とし、開閉バルブB7は開としたままで、不図示のポンプP1を駆動させる。
これによって、原水は、前段装置側から脱イオン装置14側に供給される。このうち、Q3を経由し、配管L1−2から脱塩室141に供給された被処理水は、脱塩処理がなされた後、供給配管L2から後段装置側に供給される。
一方、Q3を経由し、配管L1−2から還流配管L11側に流入した被処理水は、バルブB11を介して、配管L12から配管L6に流入し、濃縮室142の原水タンク12側出入口から濃縮室142内に流入する。このため、濃縮室142内の被処理水は、脱塩室141内の被処理水の移動方向と並行して移動する。
濃縮室142内を通過した処理水は、濃縮室142の処理水タンク15側出入口から排出され、配管L7、L8より、バルブB6を介して排水側に排出される。
また、電極室143からの電極水は、純水製造処理時と同様に、配管L9により、開閉バルブB7を介して排水側に排出される。
【0030】
このように、熱水殺菌処理時には、バルブの切換え動作によって、濃縮室142内の被処理水の移動方向を、脱塩室141内の被処理水の移動方向と並行する方向に切り替えることにより、濃縮室142と脱塩室141間の圧力差を大幅に低減することができる。図5は、熱殺菌処理時における、電気式脱イオン装置の脱塩室及び濃縮室の被処理水及び処理水の圧力状態を示す図である。
このため、特に熱水殺菌処理時に発生し易い、イオン交換膜の変形等が防止され、このイオン交換膜の濃縮室142側への張り出し、及びこれに伴う濃縮室142の閉塞が防止される。
【0031】
[純水製造方法]
次に、図6〜9に基づいて、本発明の製造装置1による純水製造方法について、その全体のフローを説明する。
本実施形態では、通常の純水製造処理を行った後に、製造装置1内の各装置に熱水を通水し、殺菌処理を行う方法を例に挙げて説明する。この熱水殺菌工程は、昇温工程、均温工程、降温工程から構成される。以下に、製造装置1による純水の製造方法について説明する。
【0032】
図6に基づいて、純水製造工程のフローを説明する。
初めに、不図示の前処理装置で処理された前処理水10を、開閉バルブB1を開として、原水タンク12内に供給する。次いで、開閉バルブB6、切換えバルブB4、B5、B8、B11を閉とし、開閉バルブB2、B3、B7、B10、B12、切換えバルブB9を開として、原水タンク12内の原水を、20〜30℃に温度設定した蒸気ヒータ16に、ポンプP1を駆動させて供給し、次いでこの原水を、ポンプP2を駆動して逆浸透膜装置13に供給し、逆浸透膜131によって脱塩処理する。
この際、逆浸透膜装置13で得られた濃縮水は、濃縮水排出バルブB3を介して系外に排出させる。
【0033】
逆浸透膜装置13の処理水は、配管L1−2から電気式脱イオン装置14に供給される。配管L1−2から脱塩室141に流入した被処理水は、脱塩室141内を処理水タンク15側に移動する。
脱塩室141で脱イオン処理がなされた処理水は、第1の圧力調整バルブである開閉バルブB2を介して、供給配管L2により処理水タンク15に供給される。第1の圧力調整バルブB2は、その開度によって、脱塩室141出口(排出口)における圧力を調整可能とされており、この圧力調整バルブB2によって、純水製造処理時における、脱塩室141出口(排出口)と濃縮室142入口(供給口)との圧力差を適宜調整することができる。
【0034】
一方、図3(a)において詳述したように、配管L1−2から分岐配管L11側に流入した被処理水は、バルブB10を介して、Q1から配管L7に流入し、濃縮室142の処理水タンク15側出入り口から濃縮室142内に流入する。
本実施形態において、開閉バルブB10の開度は、脱塩室141及び濃縮室142の処理水タンク15側出入口、すなわち脱塩室141の出口(排出口)と濃縮室142の入口(供給口)との間の圧力差を50kPa以上とするように、濃縮室142への供給水圧力を調整し、その開度を常時固定している。純水製造処理時には、濃縮室142への供給水は、圧力調整バルブB11を経由しないため、配管L7からの被処理水は、定常状態のまま濃縮室142に供給される。濃縮室142内の被処理水は、濃縮室142内を、原水タンク12側に移動する。
濃縮室142でイオン濃度の高まった濃縮水は、濃縮室142の原水タンク側出入口及び電極室143排出口から排出される。
濃縮室142から排出された濃縮水は、配管L6、排出配管L13により、開閉バルブB12を介して還流配管L10側に排出される。また、電極室143からの電極水も、配管L9により、開閉バルブB7を介して還流配管L10に排出される。還流配管L10に流入した濃縮水、電極水は、分岐管L10−2により、切換えバルブB9を介して系外に排出される。
【0035】
上記のように、本実施形態では、開度が固定された開閉バルブB10により、濃縮室142への供給水圧力が設定され、第1の圧力調整バルブ(開閉バルブ)B2によって脱塩室141からの処理水圧力が調整される。これにより、脱塩室141排出口と濃縮室142供給口との圧力差が、50kPa以上とされている。したがって、脱塩室141において、導電率が低く、水質の良好な処理水を得ることができる。
脱塩室141において、低導電率で、より水質の良好な処理水を得るためには、脱塩室141排出口と濃縮室142供給口との圧力差を、100kPa以上とすることが好ましい。
【0036】
次に、図7に基づいて、熱水殺菌工程における昇温工程のフローを説明する。
開閉バルブB1、B2、B10、B12及び切換えバルブB9を閉とし、開閉バルブB6、および切換えバルブB5、B8、B11を開とし、他のバルブの開閉状態は上記純水製造工程の状態のままにして、ポンプP1を駆動させる。これによって、原水タンク12内の原水を、60〜90℃の加熱温度に設定した蒸気ヒータ16に供給し、原水を加熱する。次いで、加熱された原水を、ポンプP2を駆動させて蒸気ヒータ16から逆浸透膜装置13に供給する。
本実施形態では、逆浸透膜装置13に備える逆浸透膜131として、被処理水の水温が60℃以上の状態で、脱塩率90%以上の脱塩処理を行う逆浸透膜を用いており、この逆浸透膜131によって脱塩処理が行われる。
逆浸透膜装置13から排出された濃縮水は、濃縮水排出バルブB3を介して系外に排出させる。
【0037】
蒸気ヒータ16による熱水状態で逆浸透膜装置13を通過した透過水は、上記のように、脱塩処理をなされているため、直接電気式脱イオン装置14に供給される。
図3(b)において詳述したように、配管L1−2から脱塩室141に供給された被処理水は、脱塩室141内を処理水タンク15側に移動する。
脱塩室141から排出される処理水は、還流配管L5より、第2の圧力調整バルブである切換えバルブB5を介して原水タンク12に還流される。第2の圧力調整バルブB5は、その開度によって、脱塩室141からの排出水の圧力を調整可能とされており、昇温工程時(熱水殺菌処理時)における、脱塩室141出口(排出口)と濃縮室142出口(排出口)との圧力差を調整することができる。
【0038】
一方、配管L1−2から分岐配管L11、L12に流入した被処理水は、第3の圧力調整バルブである切換えバルブB11を介して配管L6に流入し、濃縮室142の原水タンク12側から濃縮室142内に供給される。
第3の圧力調整バルブB11は、その開度によって、濃縮室142への供給水の圧力を調整可能とされている。これにより、上述した第2の圧力調整バルブB5と併せて、この圧力調整バルブB11によっても、昇温工程時(熱水殺菌処理時)における、脱塩室141出口(排出口)と濃縮室142出口(排出口)との圧力差を調整することができる。
濃縮室142内の被処理水は、濃縮室142内を処理水タンク15側に移動する。
濃縮室142の処理水タンク15側から排出される濃縮水、及び電極室143から排出される処理水は、それぞれ配管L8、L9により、開閉バルブB6、B7を介して還流配管L10側に排出され、その後分岐管L10−1により、切換えバルブB8を介して原水タンク12に還流される。
【0039】
上記のように、本実施形態では、第2の圧力調整バルブB5によって脱塩室141からの処理水圧力が調整され、第3の圧力調整バルブB11により、濃縮室142への供給水圧力が調整される。これにより、脱塩室141出口(排出口)と濃縮室142出口(排出口)との圧力差が、20kPa以下とされている。
このように、熱水殺菌処理時において、濃縮室142と脱塩室141間の圧力差を低くすることにより、イオン交換膜の変形等が防止され、このイオン交換膜の濃縮室142側への張り出し、及びこれに伴う濃縮室142の閉塞が防止される。
この状態で、系内の温度が60〜90℃に昇温するまで原水タンク12内の原水を循環させる。すなわち、原水タンク12内への新たな水の供給を行わず、原水タンク12内の水を循環して昇温させるため、系内の昇温に伴って、循環水の精製が進行する。
【0040】
次に、図8に基づいて、熱水殺菌工程における均温工程のフローを説明する。
開閉バルブB3を閉とし、切換えバルブB4を開として、他のバルブの開閉状態は上記昇温工程の状態のままにして、上記昇温工程と同様に、原水タンク12内の原水を、60〜90℃に設定した蒸気ヒータ16に供給し、原水の水温を60〜90℃に保持した状態でこの原水を蒸気ヒータ16から逆浸透膜装置13に供給する。
逆浸透膜装置13では、熱水状態で通水された原水が逆浸透膜131により脱塩処理されて濃縮水を得られるが、均温工程における系内の循環水は、既に昇温工程で脱塩処理されているため、この濃縮水は、系外に排出せず、切換えバルブB4を介して還流配管L4より原水タンク12に還流する。
なお、必要に応じて逆浸透膜装置13の濃縮水の一部を系外に排出するようにしてもよい。
【0041】
逆浸透膜装置13を熱水状態で通過した透過水は、上記昇温工程のときと同様にして、電気式脱イオン装置14に直接供給される。
すなわち、脱塩室141の被処理水は、配管L1−2によって、原水タンク12側から供給され、脱塩室141内を処理水タンク15側に移動する。脱塩室141から排出される処理水は、第2の圧力調整バルブである切換えバルブB5を介して原水タンク12に還流される。
【0042】
一方、濃縮室142の被処理水は、第3の圧力調整バルブである切換えバルブB11を介して、配管L6により原水タンク12側から供給され、濃縮室142内を処理水タンク15側に移動する。
濃縮室142、電極室143の処理水タンク15側から排出される処理水は、それぞれ配管L8、L9により、開閉バルブB6、B7を介して還流配管L10側に排出され、その後分岐管L10−1により、切換えバルブB8を介して原水タンク12に還流される。
なお、均温工程における、第2の圧力調整バルブB5及び第3の圧力調整バルブB11の開度は、昇温工程のときと同じ開度として行われ、脱塩室141出口(排出口)と濃縮室142出口(排出口)との圧力差は、20kPa以下とされている。
これにより、イオン交換膜の変形による、濃縮室142の変形を生じさせることなく、電気式脱イオン装置14内を熱水殺菌処理することができる。
なお、逆浸透膜装置13で得られる濃縮水も含め、製造装置1内の水をすべて循環させることにより、系内の熱をロスすることなく、熱水殺菌を効率的に行うことができる。この状態で、系内の各装置が十分に殺菌処理されるまで、原水タンク12内の原水を循環させる。循環回数としては、特に制限されるものではないが、通常は数回から数十回である。
【0043】
次に、図9に基づいて、熱水殺菌工程における降温工程のフローを説明する。
まず、切換えバルブB4、B8を閉とし、バルブB1、B3、B9を開として、他のバルブの開閉状態は上記均温工程の状態のままにして、活性炭吸着装置11によって吸着処理がなされた常温の原水を、原水タンク12内に供給する。
併せて、原水タンク12内の原水を、加熱動作を停止した蒸気ヒータ16に供給する。次いでこの原水を、上記均温工程のときと同様、逆浸透膜装置13に供給する。逆浸透膜装置13に供給された原水は、逆浸透膜131で脱塩処理され、逆浸透膜装置13で得られた濃縮水は、濃縮水排出バルブB3を介して系外に排出させる。
【0044】
逆浸透膜装置13を通過した透過水は、上記昇温工程、均温工程のときと同様にして、電気式脱イオン装置14に直接供給される。
すなわち、脱塩室141の被処理水は、配管L1−2によって、原水タンク12側から供給され、脱塩室141内を処理水タンク15側に移動する。
一方、濃縮室142の被処理水は、配管L6によって、原水タンク12側から供給され、濃縮室142内を処理水タンク15側に移動する。
【0045】
脱塩室141から排出される処理水は、第3の圧力調整バルブである切換えバルブB5を介して原水タンク12に還流されるが、逆浸透膜装置13の濃縮水及び電気式脱イオン装置14の濃縮水、電極水は、それぞれ還流配管L3並びに還流配管L10及び分岐管L10−2から系外に排出される。
この状態で、系内の温度が20〜30℃に降温するまで原水タンク12内の原水を循環させる。
なお、降温工程における第2の圧力調整バルブB5及び第3の圧力調整バルブB11の開度は、上記均温工程のときと同じ開度として行われ、脱塩室141出口(排出口)と濃縮室142出口(排出口)との圧力差が、20kPa以下とされている。
【0046】
このように、本発明の純水製造方法は、純水製造工程においては、濃縮室142の被処理水を、脱塩室141の通水方向と反対方向に通水するため、濃縮室142内におけるイオン濃度の上昇を防止し、濃縮室142の目詰まりの発生や、電気式脱イオン装置14の短命化を防止することができる。また、熱水殺菌処理時には、濃縮室142の通水方向を切り替えて、脱塩室141の通水方向と同一方向に通水することにより、脱塩室141と濃縮室142との圧力差を低減し、熱水殺菌処理時におけるイオン交換膜の変形や、これに伴う濃縮室の閉塞を防止できるため、濃縮水の流量低下、すなわち処理効率の低下や、脱イオン装置の短命化を防止することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、上述した逆浸透膜131を備えた逆浸透膜装置13を用いることにより、予め常温の原水を逆浸透膜131に通水して純水を製造し、次いでこの純水で原水タンク12内の原水を置換し、これを電気式脱イオン装置14に供給する工程を経ないで熱水殺菌工程を行うことができる。すなわち、熱水殺菌工程において、熱水状態で逆浸透膜131を通水させた透過水を、直接電気式脱イオン装置14に供給して熱水殺菌できるため、殺菌工程に要する時間を大幅に短縮し、殺菌処理に要する処理水やエネルギーを大幅に節減できる。
【0048】
以上、本発明の純水製造方法について説明したが、本発明の効果を損なわない範囲で、その実施順序等を適宜変更して行うことができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例により本発明をより詳細に説明する。
【0050】
図1に示した純水製造装置1を用いて原水(厚木市水)の処理を行った。
なお、装置構成について、純水製造装置1の前段の装置構成は、ノムラックス EP−10(野村マイクロ・サイエンス株式会社製、商品名)の前段部(逆浸透膜装置3)を用いた。
【0051】
図1における活性炭吸着装置11としては、ACボンベNCC−200AC(野村マイクロ・サイエンス株式会社製、商品名)を用い、これに装着する活性炭として、クラレコールKW(クラレケミカル株式会社製、商品名)を用いた。
また、逆浸透膜装置13としては、逆浸透膜131として、Duratherm RO 4040 HF(GE社製)を用いた逆浸透膜装置を用い、電気式脱イオン装置14としては、MK−3MiniHT(GE社製、商品名)を用いた。
【0052】
(実施例1)
[純水製造工程]
まず、純水製造装置1の各バルブB1〜B12の開閉状態を図6で説明した状態とし、原水タンク12内に貯留された原水を、膜処理装置、逆浸透膜装置13、硬度除去装置の順に通水した。硬度除去装置の処理水の導電率は、20μS/cm以下であった。次いでこの処理水を、電気式脱イオン装置14の供給水として供給した。この際、脱塩室141への供給水量は1.7L/min./cellとし、濃縮室142への供給水量は0.6L/min./cellとして通水し、電気式脱イオン装置14には、4.5Aの電流を印加した。また、濃縮室142への通水方向は、表1の純水製造工程1で示す方向とし、脱塩室141出入口A、B(図3(a)参照。)圧力、及び濃縮室142出入口C、D(図3(a)参照。)における圧力は、それぞれ表1の純水製造工程1で示す値とした。
この状態で、原水タンク12内の原水を900分間通水して、純水製造処理を行った。
【0053】
[熱水殺菌工程]
次に、一旦純水の製造を停止し、各バルブB1〜B12の開閉状態を図7で説明した状態として、原水タンク12内の原水を、膜処理装置に通水し、次いで、原水を85℃に加熱するように設定した蒸気ヒータ16に供給して加熱しながら通水した。次いで、加熱された原水(水温20〜85℃)を、逆浸透膜装置13、硬度成分除去装置の順に通水した。硬度除去装置の処理水の導電率は、45μS/cm以下であった。次いでこの処理水を、電気式脱イオン装置14に通水した。この状態で、系内の温度が85℃になるまで原水タンク12内の原水を60分循環させた。
その後、蒸気ヒータ16の温度を85℃に設定したまま、各バルブB1〜B12の開閉状態を図8に示す状態として、水温85℃の熱水を、純水製造装置1内に30分循環させて、熱水殺菌処理を行った。この際、電気式脱イオン装置14への供給水の水温は85℃であり、電気式脱イオン装置14から排出された排出水の水温は、84℃であった。
次いで、蒸気ヒータ16の加熱動作を停止したうえで、各バルブB1〜B12の開閉状態を図9に示す状態とし、前処理水10を原水タンク12に供給し、原水タンク12内の熱水と混合した。同時に、この混合水を、上記と同様に膜処理装置、蒸気ヒータ16、逆浸透膜装置13、硬度成分除去装置、電気式脱イオン装置14の順に通水し、原水が25〜30℃となるまで、純水製造装置1内に90分循環させた。
この際、濃縮室142への被処理水の通水方向、並びに脱塩室141出入口A、B(図3(b)参照。)圧力、及び濃縮室142出入口C、D(図3(b)参照。)圧力は、それぞれ表1の各熱水殺菌工程(昇温工程、均温工程、降温工程)に示す方向及び圧力値とした。
また、熱水殺菌工程(昇温工程、均温工程、降温工程)における電気式脱イオン装置14の脱塩室141の流量は、1.0L/min./cellであった。
【0054】
【表1】

【0055】
純水製造装置1において、上述した条件の下、純水製造処理工程1、確認工程1、熱水殺菌工程、及び確認工程2を、この順に5回繰り返して行った。
このうち確認工程1、2では、濃縮室142への通水方向を表1の「確認工程1」、「確認工程2」に示す方向とし、脱塩室141出入口A、B(図3(a)参照。)圧力及び濃縮室142出入口C、D(図3(a)参照。)圧力を、表1の「確認工程1」、「確認工程2」に示す圧力として、脱塩室141から排出される脱塩水流量及び濃縮室142から排出される濃縮水流量の測定を行った。確認工程1及び確認工程2は、それぞれ約30分間行った。
また、確認工程2の後、濃縮室142の通水方向を表1の「純水製造工程1」に示す方向とし、脱塩室141出入口A、B(図3(a)参照。)圧力及び濃縮室142出入口C、D(図3(a)参照。)圧力を表1の「純水製造工程1」に示す圧力として、純水製造工程1に移行したときの、脱塩室141出口水の導電率(μS/cm)を測定した。
各回(1回、3回、5回)における、脱塩水及び濃縮水の流量変化率(%)並びに脱塩室141出口水の導電率(μS/cm)を表3に示す。
なお、流量変化率(%)は、熱水殺菌処理前(熱水殺菌回数0回)の電気式脱イオン装置14を用いて純水製造処理を行ったときの脱塩室141、濃縮室142から排出される脱塩水、濃縮水の流量を基準として、確認工程2(熱水殺菌処理後)の脱塩水、濃縮水の流量の割合を百分率(%)で表したものである。
【0056】
(比較例1)
図10に示す構成の電気式脱イオン装置14を備えた純水製造装置2を用い、濃縮室142への通水方向を、表2の純水製造工程1に示す方向とし、脱塩室141出入口A、B圧力及び濃縮室142出入口C、D圧力を、表2の純水製造工程1に示す値としたこと以外は、実施例1の純水製造工程と同様の条件で、純水製造処理を行った。
その後、この純水製造装置2において、濃縮室142への通水方向を、表2の各熱水殺菌工程(昇温工程、均温工程、降温工程)に示す方向とし、脱塩室141出入口A、B圧力、及び濃縮室142出入口C、D圧力を表2の各熱水殺菌工程(昇温工程、均温工程、降温工程)に示す圧力値としたこと以外は、実施例1と同様の条件で、熱水殺菌処理を行った。
【0057】
【表2】

【0058】
純水製造装置2において、上述した条件の下、純水製造処理工程1、確認工程1、熱水殺菌工程、及び確認工程2を、この順に2回繰り返して行った。
このうち、確認工程1、2では、濃縮室142への通水方向を表1の「確認工程1」、「確認工程2」に示す方向とし、脱塩室141出入口A、B(図3(a)参照。)圧力及び濃縮室142出入口C、D(図3(a)参照。)圧力を、表1の「確認工程1」、「確認工程2」に示す圧力として、脱塩室141から排出される脱塩水流量及び濃縮室142から排出される濃縮水流量の測定を行った。確認工程1及び確認工程2は、それぞれ約30分間行った。
次いで、確認工程2の後、濃縮室142の通水方向を表1の「純水製造工程1」に
示す方向とし、脱塩室141出入口A、B(図3(a)参照。)圧力及び濃縮室142出入口C、D(図3(a)参照。)圧力を表1の「純水製造工程1」に示す圧力として、純水製造工程1に移行したときの、脱塩室141出口水の導電率(μS/cm)を測定した。
各回(1回、2回)における、脱塩水及び濃縮水の流量変化率(%)並びに脱塩室141出口水の導電率(μS/cm)を表3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
上記の結果から、純水製造処理時と熱水殺菌処理時との濃縮室の通水方向を、表1で示すように切り替えることにより、熱水殺菌処理後の純水製造処理時においても、脱塩室及び濃縮室の流量比率の変化が少なく、電気式脱イオン装置141の処理能力を低下させることなく使用できることがわかった。また、純水製造処理により得られる処理水質の低下も見られないことがわかった。
【符号の説明】
【0061】
1 純水製造装置
12 原水タンク
13 逆浸透膜装置
14 電気式脱イオン装置
141 脱塩室
142 濃縮室
143 電極室
15 処理水タンク
16 蒸気ヒータ
B1、B2、B6、B7、B10、B12 開閉バルブ
B3 濃縮水排出バルブ
B4、B5、B8、B9、B11 切換えバルブ
L1〜L2 供給配管
L3 濃縮水排出配管
L4〜L5 還流配管
L6〜L9 配管
L10 還流配管
L10−1〜L10−2 分岐管
L11〜L12 分岐配管
L13 排出配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気式脱イオン装置により脱イオンを行う純水製造処理と、前記電気式脱イオン装置に熱水を供給して殺菌する熱水殺菌処理と、を交互に繰り返して行う純水製造方法であって、
前記純水製造処理時における、前記電気式脱イオン装置の前記濃縮室内の被処理水の流れ方向を、前記脱塩室の被処理水の流れ方向に対して向流方向とし、前記熱水殺菌処理時における、前記電気式脱イオン装置の前記濃縮室内の被処理水の流れ方向を、前記脱塩室内の被処理水の流れ方向に対して並流方向とする、
ことを特徴とする純水製造方法。
【請求項2】
前記純水製造処理時における前記電気式脱イオン装置の前記脱塩室出口と前記濃縮室入口間の圧力差を50kPa以上とし、前記熱水殺菌処理時における前記脱塩室出口と前記濃縮室出口間の圧力差を20kPa以下とする
ことを特徴とする請求項1に記載の純水製造方法。
【請求項3】
前記熱水殺菌処理時に用いる熱水が、水温60℃以上の熱水である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の純水製造方法。
【請求項4】
前記逆浸透膜装置の被処理水の水温60℃以上における、前記逆浸透膜装置の透過水の導電率が45μS/cm以下の逆浸透膜装置を使用する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の純水製造方法。
【請求項5】
純水の製造を開始するにあたり系内を熱水により殺菌するための昇温、均温及び降温の各工程において、
(a)昇温工程では、前記加熱手段により前記原水タンクから前記逆浸透膜装置に供給される被処理水を60℃以上の温度に加熱するとともに、前記原水タンクへの原水の供給を止め、前記逆浸透膜装置の濃縮水を排出し、前記電気式脱イオン装置の脱塩水、濃縮水、電極水は前記原水タンクへ還流させる、
(b)均温工程では、前記加熱を継続しつつ、前記原水タンクへの原水の流入を止め、前記逆浸透膜装置の濃縮水および前記電気式脱イオン装置の濃縮水、電極水、脱塩水を原水タンクへ還流させる、
(c)降温工程では、前記加熱を停止するとともに、前記原水タンクへ原水を供給し、前記逆浸透膜装置の濃縮水および前記電気式脱イオン装置の濃縮水、電極水を放出し、前記電気式脱イオン装置の脱塩水は処理タンクへ還流させる、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の純水製造方法。
【請求項6】
陰極と陽極との間に、複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを配列して脱塩室と濃縮室とを形成してなる電気式脱イオン装置を有し、純水製造処理と熱水殺菌処理とを交互に行う純水製造装置であって、
前記電気式脱イオン装置が、前記純水製造処理時には、前記脱塩室の脱塩水出口に近い側から前記濃縮室内に被処理水を導入するとともに、前記濃縮室のうち前記脱塩室の被処理水入口に近い側から濃縮水を流出させ、前記熱水殺菌処理時には、前記脱塩室の被処理水入口に近い側から前記濃縮室内に被処理水を導入するとともに、前記濃縮室のうち脱塩室の脱塩水出口に近い側から濃縮水を流出させる、制御手段を有する
ことを特徴とする純水製造装置。
【請求項7】
前記電気式脱イオン装置が、前記脱塩室と前記濃縮室との間の圧力差を調整する圧力調整手段を有する、ことを特徴とする請求項6に記載の純水製造装置。
【請求項8】
前記圧力調整手段が、前記熱水殺菌処理時における、前記濃縮室への被処理水供給流路に設けた圧力調整バルブと、前記脱塩室の処理水流路に設けた圧力調整バルブである、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の純水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−40474(P2012−40474A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181734(P2010−181734)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】