説明

紙製品および天然繊維を含侵するための組成物、そのための方法、プロセスおよび組立て

紫外線および可視光線を用いて硬化することができる組成物が開示される。さらに、開示されている組成物は、以下に限定されないが、紙製品および天然繊維織物など繊維質基材への塗布に適する。さらに、該組成物を繊維質基材または繊維質基材の少なくとも一部に塗布し、その塗布した組成物を硬化して部分的または完全に硬化した組成物を得るための方法が開示される。その上、完全に硬化した組成物を組み込む、例えば紙を含む製造物品が開示され、かかる製造物品は、長期間浸水した際の、構造的完全性、印刷物および明るさの保持を含めた水への耐性を示す。これらの硬化性組成物を組み込む方法、プロセス、製造ライン、組立て、および工場もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本明細書で開示されるのは、紙および繊維に基づく製品が水への耐性を示すようにする、組成物、方法、プロセスおよび組立て(assemblage)である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
様々な消費者製品、科学製品、および工業製品が、天然繊維、例えば紙などから構成されている。浸水した場合、これらの製品は、裂けまたは破れを引き起こし得る構造的強度の減少を示す。さらに、これらの製品上のインキまたは鉛筆の筆跡は、浸水したときに退色したり、にじんだりあるいは筋状になったりする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(要旨)
本明細書で公開するのは、長期間にわたる浸漬を含む浸水をさせたときに、望ましい風合い、性能特性および耐久性を有しかつ保持する多孔質製品および/または繊維質製品である。本繊維質製品は、少なくとも1日間浸水させた後に以下の特徴の少なくとも1つを示す:(a)構造完全性の保持;(b)構造強度の保持;(c)インキまたは鉛筆の筆跡の保持;(d)印刷物の保持;(e)明るさの保持;および(f)カビ、藻、白カビ、細菌、および/または真菌の増殖に対する耐性。上記の特徴の少なくとも2つ、上記の特徴の少なくとも3つ、上記の特徴の少なくとも4つ、上記の特徴の少なくとも5つ、または上記の特徴のすべてを示す繊維質製品もまた記載されている。少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも7日間および少なくとも10日間に及ぶ浸水後に以下の特徴の少なくとも1つを示すかまたは保持する繊維質製品もまた記載されている。水への暴露として、浸漬、ミスチング、吹きつけ、浸透、またはそれらの組み合わせが挙げられる繊維質製品もまた記載されている。多孔質および/または繊維質製品を防水加工するための、組成物、方法、方策、技術、組立ておよび工場もまた、本明細書には記載されている。さらなる実施形態において、当該防水加工した多孔質および/または繊維質製品は、長期間にわたる暴露を含めて、水にさらしたときに、望ましい風合い、性能特性および耐久性を保持する。
【0004】
本繊維質製品は、本件で提供される組成物、一部硬化した組成物、および完全に硬化した組成物を含む。繊維質基材に塗布し、場合によっては硬化プロセスが続き、上記の特徴の少なくとも1つを有する繊維質製品を製造することができる組成物もまた本明細書には示されている。
【0005】
硬化したとき上記の特徴の少なくとも1つを有する繊維質製品を製造するために繊維質製品に組成物を塗布および/または含浸させる方法もまた記載されている。組成物を多孔質および/または繊維質製品に遠心力で塗布して、その組成物が、少なくとも一部は、その多孔質および/または繊維質製品に含浸するようにする方法もまた記載されている。本明細書に記載の組成物を多孔質および/または繊維質製品上または中に高圧噴霧器を用いて塗布し、さらなる実施形態においては、その吹き付けた表面にローラーをかける方法もまた記載されている。本明細書に記載の組成物の多孔質および/または繊維質製品上または中への塗布に続いて、該組成物は、化学線への露光を用いて硬化させる。本繊維質製品を生産するための製造方法および組立てもまた提供される。
【0006】
本明細書に記載の一態様は、
(a)ナノフィラー;
(b)少なくとも1つの光開始剤;
(c)少なくとも1つの単官能性モノマー;
(d)界面活性剤;
(e)希釈剤;および
(f)場合によって、顔料分散体(pigment dispersion)および第2の光開始剤
を含む組成物である。一実施形態において、本組成物は、少なくとも1つの上記の特徴を有する繊維質製品を製造するために繊維質基材に塗布し、場合によっては硬化プロセスを後に続ける。
【0007】
本明細書に記載の別の態様は、(a)多孔質および/または繊維質基材、および(b)
(i)ナノフィラー;
(ii)少なくとも1つの光開始剤;
(iii)少なくとも1つの単官能性モノマー;
(iv)界面活性剤;
(v)希釈剤;および
(vi)場合によって、顔料分散体および第2の光開始剤
を含む組成物を含む多孔質および/または繊維質基材である。
【0008】
本明細書に記載の別の態様は、少なくとも1つの特徴:(a)ペンおよび/またはインキの筆記の保持;(b)印刷物の保持;(c)明るさの保持;および/または(d)有機溶媒(例えば、アルコール、メチルエチルケトンなど)の吸収を阻止する能力を示す多孔質および/または繊維質製品である。いくつかの態様において、かかる繊維質および/または多孔質製品は、その多孔質および/または繊維質製品中に少なくとも一部が含浸されている硬化した組成物を含む。
【0009】
本明細書に記載の別の態様は、カビ、白カビ、藻、細菌、および/または真菌の増殖に抵抗する多孔質および/または繊維質製品である。いくつかの態様において、かかる繊維質および/または多孔質製品は、その多孔質および/または繊維質製品中に少なくとも一部が含浸されている硬化した組成物を含む。
【0010】
本明細書に記載の別の態様は、少なくとも1日間浸水させた後に少なくとも1つの特徴:(a)構造強度の保持;(b)インキまたは鉛筆の筆跡の保持;(c)印刷物の保持;および/または(d)明るさの保持を示す多孔質および/または繊維質製品である。
【0011】
本明細書に記載のさらに別の態様は、本多孔質および/または繊維質製品を製造する方法であり、前記方法は、(a)繊維質および/または多孔質基材を調製する工程;(b)前記繊維質および/または多孔質基材に組成物を塗布して繊維質および/または多孔質製品を産生する工程;および(c)前記繊維質および/または多孔質製品を硬化する工程を含み、前記組成物は:
(i)ナノフィラー;
(ii)少なくとも1つの光開始剤;
(iii)少なくとも1つの単官能性モノマー;
(iv)界面活性剤;
(v)希釈剤;および
(vi)場合によって、顔料分散体および第2の光開始剤
を含む。上記製造方法によって生産された繊維質製品もまた提供される。
【0012】
本明細書に記載のさらに別の態様は、本製品および/または繊維質製品を製造するための組立てであり、前記組立ては、(a)多孔質および/または繊維質基材を用意する手段;(b)組成物を前記多孔質および/または繊維質基材に塗布して多孔質および/または繊維質製品を生産する手段;および(c)前記多孔質および/または繊維質製品を硬化する手段を含み、ここで前記組成物は:
(i)ナノフィラー;
(ii)少なくとも1つの光開始剤;
(iii)少なくとも1つの単官能性モノマー;
(iv)界面活性剤;
(v)希釈剤;および
(vi)場合によって、顔料分散体および第2の光開始剤
を含む。製造に対する上記組立てによって生産された多孔質および/または繊維質製品もまた提供される。
【0013】
本明細書に記載のさらに別の態様は、本多孔質および/または繊維質製品を用いる様々な方法である。本多孔質および/または繊維質製品についての応用例としては、ラベル、書籍、新聞紙、雑誌、地図、野外教範、包装材料、紙皿、衣類、梱包材、防湿層、ガーデンマーカー、水中マーキング、スポーツ用品、ジムバッグ、名刺、段ボール、シャワーカーテンなどが挙げられる。さらなる応用としては、泥水、湖沼水、河川水、水道水、海水、下水および浄水を含む任意の発生源からの水を含む水性溶液の吸収を阻止するための本多孔質および/または繊維質製品の使用が挙げられる。さらなる応用として、有機溶媒、例えばアルコール、メチルエチルケトンなどの吸収を阻止するための本多孔質および/または繊維質製品の使用が挙げられる。
【0014】
(参考としての援用)
本明細書中に言及されている全ての出版物、特許および特許出願は、それぞれの出版物、特許または特許出願が、参照により合体されるべく、あたかも具体的かつ個別に示されているのと同程度に全体として参照により本明細書に援用される。
【0015】
本方法、プロセス、組立て、装置および組成物の特徴と利点のよりよい理解は、本発明者らの方法、プロセス、組成物、装置および組立ての原理が活用される実施態様を説明する以下の詳細な説明、および添付の図1〜3の図面を参照することによって得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
I.若干の用語
本明細書で使用される用語「化学線」とは、重合反応を生ずることができる任意の放射線源を指し、ほんの一例としては、紫外線、近紫外線、および可視光線などを指す。
【0017】
本明細書で使用される用語「共光開始剤」とは、別の1つまたは複数の光開始剤と組み合わせることができる光開始剤を指す。
【0018】
本明細書で使用される用語「硬化」とは、コーティング組成物の少なくとも一部の重合を指す。
【0019】
本明細書で使用される用語「硬化性の」とは、コーティング組成物が少なくとも一部は重合することができることを指す。
【0020】
本明細書で使用される用語「硬化ブースター」とは、硬化プロセスを後押しまたは別の言い方をすれば高めるまたは部分的に高める1つまたは複数の作用物質を指す。
【0021】
本明細書で使用される用語「繊維質基材」とは、天然繊維であり、天然繊維を含有し、または天然繊維から誘導される任意の物体を指し、かかる物体としては以下の(a)〜(g)を包含する:
(a)任意の坪量もしくはメートル坪量、かさ、厚さまたは厚み、流れおよび横方向、平滑度の様々なタイプの紙製品、例えば、以下のものに限定されないが、研磨紙、吸収紙、無酸紙、耐酸紙、粘着紙、エアフィルター紙、エアメールペーパー、アルバム紙、アルブミン紙、中性紙、アルミホイルラミネート加工紙、弾薬紙、防錆紙、アンティーク紙、記録紙、アート紙、アスファルトラミネート紙、青緑色すの目紙、袋用紙、銀行券もしくは紙幣用紙、自記気圧計用紙、原紙、インディアペーパー(bible paper)、ブレード包装紙、包肉用紙、吸い取り紙、青写真用紙、板紙(board)、ボンド紙、書籍用紙、ボール紙、ブリストル紙、ビジネスフォーム用紙、カーボン紙、段ボール、カートリッジ紙、カタログ用紙、チェックまたは小切手用紙、チップボール、シガレットペーパー、ざら紙(また工業用紙)、コーヒーのフィルター用紙、カラーファースト紙、色画用紙、段ボール紙、コピー用紙もしくはレーザー紙、段ボール、コットンペーパーもしくはラグペーパー、上表紙、クレープ紙、カットシート、登録簿用紙、書類用紙、画用紙、すき合わせ板紙、転写紙、電気グレード紙、封筒用紙、繊維板、濾紙、ファインペーパー、蛍光紙、厚紙、上質紙、ガスケットボード、グラシン紙、光沢紙、グレーボード、グリーンペーパー、ざら紙、手すき紙、インデックス用紙、工業用紙、断熱板、アイボリー紙、袋用クラフト紙、クラフト紙、クラフトライナー、ラベル用紙、すの目紙、ラミネートした段ボール原紙、帳簿用紙、軽量紙、リンネル紙、ライナー、段ボール原紙、複写用紙、マニラ紙、中質紙(mechanical paper)、ミルボード、新聞印刷用紙、オフセット印刷用紙、包装紙、板紙(paperboard)、耐久用紙、印画紙、ポスター用紙、パルプボード、ラグペーパー、わら紙、安全紙、衛生紙、衛生ティッシュペーパー、証券用紙、サイズ紙、段ボール板、収入印紙を貼った書類、黄板紙、荷札用紙、ティーバッグ用紙、テキスト用紙、薄葉紙、ティッシュペーパー、透明紙、ユニオンクラフト、硫酸紙、模造皮紙、壁紙、水彩画用紙、パラフィン紙、薬包紙、原稿用紙、職業別電話帳など;
(b)様々なタイプの製品を含有するパルプ;
(c)様々なタイプの梱包材、例えば、以下に限定されないが、封筒、袋、箱、荷物、ラベルなど;
(d)様々なタイプのマーカー、例えば、以下に限定されないが、ガーデンマーカー、水中マーカー、土壌マーカーなど;
(e)様々なタイプの天然繊維織物、例えば、以下に限定されないが、綿、羊毛、リンネル、カシミヤ、麻、ラムパイ(rampie)、絹など;
(f)様々なタイプの天然繊維編物、例えば、以下に限定されないが、綿、羊毛、リンネル、麻、ラムパイ、絹など;および
(g)非繊維成分を有する繊維質基材、例えば、以下に限定されないが、ボタン、ジッパー、飾りピン、ステープル、クリップ、ロッドなど。
【0022】
用語「フィラー」は、コーティングの物理的、力学的、熱的、または電気的性質を変性するために加える比較的不活性な物質を指す。
【0023】
本明細書で使用される用語「無機顔料」とは、粒子状で使用中実質的に不揮発性である材料を指し、塗料およびプラスチック業界において、不活性成分、増量剤、フィラーなどとして一般的に分類されるような材料が挙げられる。
【0024】
本明細書で使用される用語「照射」とは、表面を化学線にさらすことを指す。
【0025】
本明細書で使用される用語「混練」とは、吹付けに適する粉末を得るために粉体コーティング用配合物をプレミックスし、溶融し、粉砕するプロセスを指す。
【0026】
本明細書で使用される用語「モノマー類」とは、オリゴマーおよび互いに連結することができる単一分子を含有する物質を指す。
【0027】
本明細書で使用される用語「光開始剤」とは、紫外光を吸収し、その光のエネルギーを使用してコーティングの乾燥した層の形成を促進する化合物を指す。
【0028】
本明細書で使用される用語「重合可能な顔料分散体」とは、コーティング組成物中に分散している重合性樹脂に結合している顔料を指す。
【0029】
本明細書で使用される用語「重合性樹脂」または「活性化樹脂」とは、反応性官能基を所有する樹脂を指す。
【0030】
本明細書で使用される用語「顔料」とは、不溶性または一部可溶性であり、着色するために使用される化合物を指す。
【0031】
本明細書で使用される用語「明るさの保持」とは、材料がその明るさの少なくとも約90%を保持する能力を指す。明るさの保持によって材料の変退色、例えば暗色化または黄変などが回避される。明るさの保持を測定するための代表的な試験としては、分光光度試験、例えば、明るさ(波長=457nm)および/または輝度(波長=555nm)に対する光吸収試験などが挙げられる。
【0032】
本明細書で使用される用語「インキまたは鉛筆の筆跡の保持」とは、インキまたは鉛筆の筆跡を材料上に少なくとも約90%保持する能力を指す。インキまたは鉛筆の筆跡の保持によって材料上のにじみ、退色および/または筋が回避される。インキまたは鉛筆の筆跡の保持を測定するための代表的な試験としては、分光光度試験、例えば、インキ除去性(IE)試験および有効残留インキ濃度(ERIC)試験などが挙げられる。
【0033】
本明細書で使用される用語「印刷物の保持」とは、印刷物を材料上に少なくとも約90%保持する能力を指す。代表的な印刷物としては、様々なインキ印刷物、例えば、ラベル、ロゴなどが挙げられる。印刷物の保持によって、材料上のにじみ、退色および/または筋が回避される。印刷物の保持を測定するための代表的な試験としては、様々な分光測光試験が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される用語「構造強度の保持」とは、材料がその物理的および構造的完全性、強度、または耐久性の少なくとも約90%を保持する能力を指す。構造強度の保持によって、裂け、剥がれ、または破れが防がれる。構造強度の保持を測定するための代表的な力学的試験としては、例えば、手動検査、耐折強度、および引張り強度が挙げられる。構造強度の保持を測定するために分光測光試験も採用することができる。
【0035】
本明細書で使用される用語「鉛筆および/またはインキの筆記の保持」とは、材料が、どんな鉛筆またはどんなインキのもと、例えばペンまたはプリンターによっても、その筆記される能力の少なくとも約90%を保持する能力を指す。筆記性は、材料の吸収性に依存する。
【0036】
本明細書で使用される用語「ビヒクル」とは、溶剤系配合物の液体部分を指し、溶媒と樹脂の両方を合体することができる。
【0037】
II.組成物
本明細書に記載の一態様は、
(a)ナノフィラー;
(b)少なくとも1つの光開始剤;
(c)少なくとも1つの単官能性モノマー;
(d)界面活性剤;
(e)希釈剤;および
(f)場合によって、顔料分散体および第2の光開始剤
を含む組成物である。一実施形態において、本明細書において提供される組成物は、所望の特性を有する繊維質製品を生産するために繊維質基材に塗布される。
【0038】
本組成物は、ナノフィラーを、該組成物の全体重量の20〜60重量%(重量/重量)の量で含む。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、本組成物は、少なくとも1つの光開始剤を0.5〜10%(重量/重量)の量で含む。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、本組成物は、少なくとも1つの単官能性モノマーを2〜80%(重量/重量)の量で含む。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、本組成物は、希釈剤を2〜22%(重量/重量)の量で含む。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、本組成物は、0.01〜2.0%(重量/重量)の量の界面活性剤を含む。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、本組成物は、1〜12%(重量/重量)の量の顔料分散体と0.5〜5%(重量/重量)の量の第2の光開始剤を含む。
【0039】
本明細書に記載の組成物は、様々な繊維質基材に塗布して繊維質製品を生産することができる。本明細書に記載の組成物は、可視光線、近可視光線、紫外(UV)線、およびそれらの組み合わせの様々な光源によって硬化する。紫外線は、紫外線A波、紫外線B波、紫外線C波、紫外線D波、またはそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0040】
コーティングの柔軟性は、収縮し、ゆがみ、あるいはまた形を変える、例えば、以下に限定はされないが織物および布地などの物体に塗布されたときに、ここでの組成物にとって重要な特性である。コーティングの柔軟性は、物体が収縮し、ゆがみ、または形を変えるときに該組成物が亀裂を生じることなく収縮またはゆがむことを可能とし、一方で、コーティングの接着性は、物体が収縮し、ゆがみ、または形を変えるときに該コーティングがその物体に結合したままでいることを可能にする。本明細書に記載の組成物のいくつかの実施形態を、所望の特性を得て最適化するために使用することができる。
【0041】
A.ナノフィラー
本組成物は、ナノフィラーを含む。ナノフィラーは、不溶性無機粒子、または不溶性有機粒子のいずれかであり得る。他の無機化合物を使用することもできるが、無機ナノフィラーは一般に金属酸化物である。無機ナノフィラーの例としては、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、硫酸バリウム、酸化ビスマス、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、硫酸カルシウム、酸化セリウム、酸化クロム、酸化銅、インジウムスズ酸化物、酸化鉄、クロム酸鉛、チタン酸ニッケル、酸化ニオブ、希土類酸化物、シリカ、二酸化ケイ素、酸化銀、酸化スズ、二酸化チタン、クロム酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、二酸化ジルコニウム、および酸化ジルコニウムが挙げられる。また、有機ナノフィラーは、一般に適当な大きさの粒子に粉砕したポリマー物質である。ナノメートルサイズの有機ナノフィラーの例としては、以下に限定はされないが、ナノポリテトラフルオロエチレン、アクリレートナノ粒子コロイド、メタクリレートナノ粒子コロイド、およびそれらの組み合わせが挙げられる、とはいっても、ポリテトラフルオロエチレン、アクリレート、メタクリレート、およびそれらの組合せのミクロンサイズのフィラーも使用することができる。
【0042】
一実施形態において、本組成物はナノアルミナを含む。ナノアルミナは、一例として、200nm未満を含むナノメートルサイズであり、約5〜40ナノメートルの範囲内の分離した球状粒子である高純度の酸化アルミニウムから成る。ナノアルミナは、優れた光学的透明度、光沢および物理的性質を与える。ナノアルミナに基づく組成物は、優れた光学的透明性を必要とする耐摩耗性のコーティングの用途、例えば眼鏡など;半導体を含む精密研磨用途;および改良された温度管理が含まれるナノコンポジットの用途における使用が考えられる。さらに、ナノアルミナの混和により、改良された耐衝撃性、耐摩耗性および耐スクラッチ性を有する組成物を生じさせることができる。
【0043】
別の実施形態において、本組成物は、ナノ二酸化ケイ素を含む。例として約200nm未満を含むナノメートルサイズを有するナノ二酸化ケイ素、さらなる例として平均粒径5〜40nmのナノ二酸化ケイ素を、組成物中に組み込むことができる。ナノ二酸化ケイ素の添加は、改良された強靭性、硬度および耐摩耗性および耐スクラッチ性を与えることができる。ナノケイ素を組成物中に組み込む場合に得られるその他の性質および特性としては:それがガス、水蒸気および溶媒に対するバリア効果として作用すること、それが増大した耐候性および抑制された熱劣化性を有すること、それが減少した硬化収縮および反応熱、減少した熱膨張および内部応力、増大した裂け抵抗、破壊靭性および弾性率を示し、多数の無機基材(例えば、ガラス、アルミニウム)に対する改良された接着性を有し、より親水性の表面による増大した無機不純物(例えばすす)に対する汚れ抵抗性を有し、その他の望ましい性質、例えば、熱安定性、汚染抵抗性、熱伝導性、誘電特性を有すること、が挙げられる。
【0044】
典型的なナノ二酸化ケイ素としては、Hanse Chemie(ゲーストアハト、ドイツ)によるNanocryl(登録商標)Cの品名で販売されているもの、例えば、Nanocryl(登録商標)C350、Nanocryl(登録商標)C130、Nanocryl(登録商標)C140、Nanocryl(登録商標)C145、Nanocryl(登録商標)C146、Nanocryl(登録商標)C150、Nanocryl(登録商標)C153、Nanocryl(登録商標)C155、Nanocryl(登録商標)C165が挙げられる。一実施形態において、本組成物にはNanocryl(登録商標)C155が含まれる。
【0045】
ナノフィラーとして使用することができるその他の材料としては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、ケイ酸塩、フェライトおよびチタン酸塩が挙げられる。例えば、かかるナノフィラーの例としては、以下に限定はされないが、ナノ酸化ジルコニウム、ナノ二酸化ジルコニウム、ナノ炭化ケイ素、ナノ窒化ケイ素、ナノサイアロン(ケイ素アルミニウムオキシニトリド)、ナノ窒化アルミニウム、ナノ酸化ビスマス、ナノ酸化セリウム、ナノ酸化銅、ナノ酸化鉄、ナノチタン酸ニッケル、ナノ酸化ニオブ、ナノ希土類酸化物、ナノ酸化銀、ナノ酸化スズ、およびナノ酸化チタンが挙げられる。これらの材料は、高温において比較的高い力学的強度を有する。
【0046】
別法では、本明細書に記載の組成物において使用されるナノフィラーは、ポリエチレンワックスと共に調製されるアモルファス二酸化ケイ素、有機表面処理による合成アモルファスシリカ、未処理アモルファス二酸化ケイ素、アルキル第四級ベントナイト、コロイダルシリカ、アクリレート化コロイダルシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛、ニオブ、チタニア窒化アルミニウム、酸化銀、酸化セリウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。二酸化ケイ素は、1つまたは複数のポリエチレンワックスおよびCiba Specialty Chemicals(540 ホワイトプレーンズロード、タリタウン、ニューヨーク州、米国)によるIRGANOX(登録商標)を含む表面処理がされている合成および天然両方の二酸化ケイ素からなる群から選択される。
【0047】
本明細書に記載の組成物中のナノフィラーの平均粒径は、例として約20μm未満と、さらなる例として平均粒径が1〜10μmの分離した粒子のものを含み、その一方で、ナノフィラー粒子の平均粒径は、例として約200nm未満と、さらなる例として平均粒径が5〜50nmの分離した粒子のものを含む。一実施形態において、ナノフィラー粒子は、10、20、30、または40nmの平均直径を有する。さらには、別の実施形態において、ナノフィラー粒子の粒径分布は、1nm〜60nm、例えば5nm〜30nmの範囲である。
【0048】
ナノフィラーは、組成物中に20〜60%(重量/重量)、例えば25〜55%(重量/重量)、30〜50%(重量/重量)、または30〜40%(重量/重量)の範囲の量で存在する。一実施形態において、本組成物は、33〜36%(重量/重量)を含む。
【0049】
フィラーの添加は、組成物に粘度などの一定のレオロジー特性を与えるが、ナノスケールのフィラーの添加は、ミクロンスケールのフィラーと比較すると劇的に異なる効果をコーティングの力学的性質に与える。かくして、組成物の力学的性質は、ミクロンサイズのフィラーとナノフィラーの量を変動させることによって操作することができる。
【0050】
ナノフィラーのおかげで改良される性質としては、引っ張り強さ、弾性率、熱たわみ温度、バリア性、耐紫外線性、耐磨耗およびスクラッチ性、および伝導性の改良が挙げられる。一定のナノフィラー、例えばナノアルミナおよびナノシリコンなどの組み込みによって、光学透明性、光沢、色相または物理的性質に著しく影響することのない、好ましい長期にわたるコーティングを提供することができる。これらの改良された性質は、主としてナノスケールのフィラーの小さい粒度と大きい表面積によるものであり得る。
【0051】
B.光開始剤
さらなるまたは代わりとなる実施形態において、本組成物は、少なくとも1つの光開始剤を含む。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、本組成物は、少なくとも2つの光開始剤を含む。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、本組成物は、少なくとも3つの光開始剤を含む。
【0052】
一般に、光開始剤は、組成物中のモノマーが紫外光等の化学線源にさらされたときに迅速に重合を開始するために加える。その光開始剤は、UV源、例えば、強いUV−C波(200〜280nm)を生ずる中圧の水銀アーク光源、UV−A波(315〜400nm)を生ずるドープした水銀放電ランプ、またはドーパントまたはランプのタイプの組み合わせに依存するUV−B波(280〜315nm)などのスペクトル特性に適合させることができる。組成物中の光開始剤または光開始剤の組み合わせによって、様々なUV源(1つまたは複数)を採用することができる。
【0053】
フリーラジカルとして分類されるものを含めた任意の適当なタイプの光開始剤を、組成物中に使用することができる。その光開始剤は、液体または固体の形態であることができる。さらには、重合を開始するために使用するUV源の種々のスペクトル特性を網羅する光開始剤の組み合わせを使用することができる。
【0054】
該光開始剤は、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、ESACURE(登録商標)KTO、IRGACURE(登録商標)184、IRGACURE(登録商標)500、DARACUR(登録商標)1173、Lucirin(登録商標)TPO、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−l−(4−(l−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。さらに、該光開始剤は、ホスフィンオキシドタイプの光開始剤、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−l−フェニル−プロパン−l−オン(DAROCUR(登録商標)1173(540、米国ニューヨーク州タリタウン、ホワイトプレーンロードのCiba Specialty Chemicalsから))、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンおよび4−メチルベンゾフェノン、ESACURE(登録商標)KTO46(Lamberti S.p.A.、Gallarate(VA)、イタリア)、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−l−(4−(l−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、アミンアクリレート、チオキサントン、ベンジルメチルケタール、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。さらには、該光開始剤は、2−ヒドロキシ−2−メチル−l−フェニル−プロパン−l−オン(DAROCUR(登録商標)1173(540 ホワイトプレーンロード、タリタウン、ニューヨーク州、米国のCiba Specialty Chemicalsから))、ホスフィンオキシドタイプの光開始剤、IRGACURE(登録商標)500、819、または1700(Ciba Specialty Chemicals、540 ホワイトプレーンロード、タリタウン、ニューヨーク州、米国)、アミンアクリレート、チオキサントン、ベンジルメチルケタール、およびそれらの混合物から選択することができる。
【0055】
本発明の実際での使用に適するその他の光開始剤としては、以下に限定はされないが、l−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチル−l−プロパノン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−l−4−(メチルビニル)フェニルプロパノン)}、2−ヒドロキシ2−メチル−l−フェニルプロパン−1オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびベンゾフェノンならびにそれらの混合物が挙げられる。さらに他の有用な光開始剤としては、例えば、ビス(n,5,2,4−シクロペンタジエン−l−イル)−ビス2,6−ジフルオロ−3−(lH−ピロール−l−イル)フェニルチタニウムおよび2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノンが挙げられる。これらの化合物は、それぞれIRGACURE(登録商標)784およびIRGACURE(登録商標)369(両方とも、Ciba Specialty Chemicals、540 ホワイトプレーンロード、タリタウン、ニューヨーク州、米国、から)である。一方でさらに別の有用な光開始剤としては、例えば、2−メチル−l−4(メチルチオ)−2−モルホリノプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシ)フェニル−2−ヒドロキシ−2−(メチルプロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンベンゾフェノン、(シクロペンタジエニル)(1−メチルエチル)ベンゼン−ヘキサフルオロリン酸鉄、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−1−アセトフェン−オン2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、安息香酸、4−(ジメチルアミノ)−エチルエーテル、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0056】
さらなるまたは代わりとなる実施形態において、本組成物は、α−ヒドロキシケトンを含む少なくとも1つの光開始剤、例えば1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを含む。別のまたは代わりとなる実施形態において、本組成物は、ベンゾフェノンを含む少なくとも1つの光開始剤を含む。別のまたは代わりとなる実施形態において、本組成物は、ベンゾイルジアリールホスフィン、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドなどを含む少なくとも1つの光開始剤を含む。
【0057】
一実施形態において、本組成物は、光開始剤の組み合わせを含む。一実施形態において、本組成物は、IRGACURE(登録商標)184およびIRGACURE(登録商標)500を含む。別の実施形態において、本組成物は、IRGACURE(登録商標)184、IRGACURE(登録商標)500、およびLucirin(登録商標)TPOを含む。
【0058】
該光開始剤(1つまたは複数)は、組成物中に0.5〜10%(重量/重量)の範囲、例えば、1〜9%(重量/重量)、3〜8%(重量/重量)、または4〜6%(重量/重量)などの量で存在する。
【0059】
別の実施形態において、本組成物は、光開始剤の組み合わせを含み、そこでは各光開始剤は、0.5〜5%(重量/重量)の範囲、例えば、1〜4%(重量/重量)、または2〜3%(重量/重量)などの量で存在する。さらに別の実施形態において、本組成物は、IRGACURE(登録商標)184を、2〜6%(重量/重量)の範囲、例えば、2、3、4、5、または6%(重量/重量)の量およびIRGACURE(登録商標)500を、0.5〜4%(重量/重量)の範囲、例えば、0.5、1、2、3、または4%(重量/重量)の量で含む。
【0060】
一実施形態において、本組成物は、顔料分散体およびベンゾイルジアリールホスフィンオキシドを含む第2の光開始剤を含む。顔料の存在は、UVおよび可視光領域の両方の放射線を吸収してタイプによっては光開始剤の効果を減少し得るが、ホスフィンオキシドタイプの光開始剤は、ほんの一例として、黒でありUV硬化性のコーティング材料を含む着色した組成物中で有効である。ホスフィンオキシドは、また、白色のコーティングに対しても光開始剤としての使用が見込まれる。一実施形態において、組成物は、顔料分散体と2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドとを含む光開始剤、例えば、Lucirin(登録商標)TPOを含む。
【0061】
一実施形態において、本組成物は、0.5〜5%(重量/重量)の範囲、例えば、1〜4%(重量/重量)または2〜3%(重量/重量)などの量で存在するベンゾイルジアリールホスフィンオキシドを含む光開始剤を含む。一実施形態において、ベンゾイルジアリールホスフィンオキシドを含むその光開始剤は、組成物中に約0.5、1、2、3、または4%(重量/重量)の量で存在し得る。
【0062】
C.モノマー
本組成物は、少なくとも1つの単官能性モノマーを含む。一実施形態において、本組成物は、モノマーの組み合わせを含む。化学線源、例えば紫外光にさらし、光開始剤が存在すると、組成物中のモノマーは迅速に重合してオリゴマーを形成する。かくして、重合の程度によって、ここでの組成物は、モノマー、オリゴマー、またはモノマーとオリゴマーを含み得る。
【0063】
本組成物の力学的性質、例えば、硬度、低収縮率、高いガラス転移温度(Tg)、望ましい弾性、および柔軟性は、提供されるモノマーおよびオリゴマーのタイプに依存する。ほんの一例として、ポリエステルアクリレートは、良好な耐摩耗性を強靭性と共に兼ね備え、一方、ウレタンアクリレートとポリエーテルアクリレートは、柔軟性、弾性および硬度を提供することができる。かくして、本明細書に記載の組成物は、硬度、耐摩耗性、耐スクラッチ性、および耐衝撃性のある組成物を得るために、様々な特性を与えるオリゴマーおよびモノマーを組み合わせる。
【0064】
モノマーは、2−フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、アクリル酸エステル誘導体、メタクリル酸エステル誘導体、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2−フェノキシエチルアクリル酸エステル、および架橋剤、例えば、以下に限定されないが、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートなど、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0065】
モノマー(1つまたは複数)は、該組成物中に、2〜80%(重量/重量)の範囲、例えば、5〜75%(重量/重量)、10〜60%(重量/重量)、または20〜50%(重量/重量)の量で存在する。モノマー(1つまたは複数)は、約5、10、20、30、40、50、60、70、または80%(重量/重量)の量で存在することができる。
【0066】
一実施形態において、本組成物は、2−フェノキシエチルアクリレートを、4〜40%(重量/重量)の範囲、例えば、10〜30%(重量/重量)、10〜25%(重量/重量)、または10〜15%(重量/重量)の量で含む。一実施形態において、本組成物は、1,4-ブタンジオールジメタクリレートを、4〜40%(重量/重量)の範囲、例えば、10〜30%(重量/重量)、10〜25%(重量/重量)、または10〜15%(重量/重量)の量で含む。一実施形態において、本組成物は、テトラヒドロフルフリルアクリレートを、10〜40%(重量/重量)の範囲、例えば、15〜30%(重量/重量)または20〜25%(重量/重量)の量で含む。
【0067】
別の実施形態において、本組成物は、単官能性モノマーの組み合わせを含む。さらに別の実施形態において、本組成物は、2−フェノキシエチルアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの単官能性モノマーを含む。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、本組成物は、2−フェノキシエチルアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、およびテトラヒドロフルフリルアクリレートを含む。
【0068】
一実施形態において、本組成物は、それぞれが4〜40%(重量/重量)の範囲、例えば、10〜30%(重量/重量)、10〜25%(重量/重量)、または10〜15%(重量/重量)の量で存在するモノマーの組み合わせを含む。一実施形態において、本組成物は、それぞれが4〜40%(重量/重量)の範囲の量で存在する、2−フェノキシエチルアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、およびテトラヒドロフルフリルアクリレートを含む。
【0069】
D.界面活性剤
本組成物は、少なくとも1つの界面活性剤を含む。界面活性剤は、組成物に望ましい性質、例えば、改良された滑り、耐スクラッチ性、フロー、レベリング性、剥離性、および脱泡性などを与えるために採用される。
【0070】
界面活性剤の例としては、以下に限定はされないが、ポリマー類、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、スチレン−メタクリル酸タイプのコポリマー、スチレン−アクリル酸タイプのコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレンタイプのコポリマー、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、およびポリグルタミン酸−γ−メチルエステルなど、ならびに変性剤、例えばシランカップリング剤およびアルコールなどが挙げられる。さらなる界面活性剤としては、オレフィン類、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンなど;ビニル類、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエステル、ポリスチレンなど;アクリルホモポリマーおよびコポリマー;フェノール樹脂;アミノ樹脂;アルキッド、エポキシ、シロキサン、ナイロン、ポリウレタン、フェノキシ、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエステル(適宜塩素化されている)、ポリエーテル、アセタール、ポリイミド、およびポリオキシエチレンなどが挙げられる。さらなる典型的な界面活性剤としては、UV硬化性組成物と相溶性のある架橋したならびに非架橋のアクリレート、例えば架橋性シリコーンアクリレートが挙げられる。
【0071】
典型的な界面活性剤としては、Degussa AG(Essen、ドイツ)によりTEGO(登録商標)Radの名称のもとで製造されているものが挙げられ、TEGO(登録商標)Rad 2100、2200、2250、2300、2500、2600、2650、および2700が挙げられる。
【0072】
該界面活性剤(1つまたは複数)は、組成物中に、0.01〜2.0%(重量/重量)の範囲の、例えば、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、または2.0%(重量/重量)の量で存在する。
【0073】
E.希釈剤
本組成物は、少なくとも1つの希釈剤を含む。一実施形態において、その希釈剤は、オリゴマーを希釈するのに適している。別の実施形態において、本組成物は、化学線源、例えば紫外光にさらしたとき、フリーラジカルの形成を通してポリマーを生成する反応性希釈剤を含む。
【0074】
本組成物への添加に適する反応性希釈剤は、以下の性質の少なくとも1つを示す:(a)高いUV反応性;(b)低い収縮率;(c)硬度と柔軟性の良好なバランス;(d)重合後の高いUV安定性;(e)良好な粘度低下;および/または(f)低い毒性および刺激。
【0075】
典型的な希釈剤としては、以下に限定はされないが、イソボルニルアクリレート、イソデシルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジ−トリメチロールプロパントリアクリレート(Di−TMPTA)、プロポキシル化TMPTA(PO6−TMPTA)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、本組成物中に採用することができる希釈剤は、本明細書に記載および掲げられている単官能性または多官能性モノマーとしても分類される。
【0076】
本組成物は、少なくとも1つの希釈剤を2〜20%(重量/重量)の範囲の、例えば5〜18%(重量/重量)、7〜15%(重量/重量)、または10〜12%(重量/重量)の量で含む。一実施形態において、本組成物は、イソボルニルアクリレートを、2〜20%(重量/重量)の範囲の、例えば5〜18%(重量/重量)、7〜15%(重量/重量)、または10〜12%(重量/重量)の量で含む。
【0077】
F.顔料および顔料分散体
本組成物は、少なくとも1つの顔料または顔料分散体を場合によって含むことができる。顔料は、一般的には塗料またはインキ中に使用されるビヒクル中に懸濁される不溶性の白、黒、または着色した物質であり、また、エフェクト顔料、例えば、マイカ、アルミニウムなどのメタリック顔料、および乳白色顔料も含むことができる。顔料は、装飾および/または保護機能を提供するためにコーティング中で使用されるが、それらの不溶性のために、顔料は、液体のコーティングおよび/または乾燥した塗膜における様々な問題に対する潜在的要因であり得る。顔料に起因すると考えられるいくつかのフィルム欠陥の例としては、凝集体による望ましくない光沢、曇り、顔料退色、顔料のフロキュレーションおよび/または沈降、顔料混合物の分離、脆弱性、水分感受性、カビ生育感受性、ならびに/または熱不安定性が挙げられる。
【0078】
本明細書に記載の組成物中には様々な有機顔料を使用することができ、以下に限定はされないが、カーボンブラック、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、フラバントロン顔料、インダンスレン顔料、アントラピリジン顔料、ピラントロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料およびキナクリドン顔料が挙げられる。
【0079】
本明細書に記載の組成物中には様々な無機顔料を使用することができ、例えば、それらは以下に限定はされないが、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄(弁柄、黄色酸化鉄および黒色酸化鉄)、群青、紺青、酸化クロムおよび水酸化クロム、硫酸バリウム、酸化スズ、カルシウム、二酸化チタン(ルチル型およびアナターゼ型チタン)、硫酸塩、タルク、マイカ、シリカ、ドロマイト、硫化亜鉛、酸化アンチモン、二酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、クロム酸鉛、クロム酸亜鉛、チタン酸ニッケル、クレー、例えばカオリンクレーなど、白雲母および絹雲母などである。
【0080】
さらなるまたは代わりとなる実施形態において、本組成物は、活性化樹脂に結合している少なくとも1つの顔料を含んで成る重合可能な顔料分散体を含み、その活性化樹脂は、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、およびビニル樹脂からなる群から選択され、顔料は、カーボンブラック、ルチル型二酸化チタン、赤の有機顔料、フタロブルー顔料、弁柄顔料、イソインドリン黄色顔料、フタログリーン顔料、キナクリドンバイオレット、カルバゾールバイオレット、マストーンブラック(masstone black)、淡いレモンイエロウの酸化鉄、淡いオーガニックイエロウ(light organic yellow)、透明な黄色酸化鉄、ジアリーライドオレンジ、キナクリドンレッド、オーガニックスカーレット(organic scarlet)、淡いオーガニックレッド(light organic red)、および濃いオーガニックレッド(deep organic red)からなる群から選択される。これらの重合可能な顔料分散体は、不溶性顔料粒子をあるタイプの樹脂中に分散しており、顔料粒子を重合したマトリクス内に閉じ込めている他の顔料分散体とは区別できる。本明細書に記載の組成物および方法で使用される顔料分散体は、それらがアクリル樹脂に結合するように処理した顔料を有しており、その結果、その顔料分散体は、UV照射にさらしたときに重合可能である。
【0081】
「理想的な」分散体は、一次粒子の均一な懸濁液である。しかしながら、無機顔料は、それらが組み込まれている樹脂としばしば非混和性であり、これは一般に顔料が均一に分散することの失敗をもたらす。その上、乾燥顔料は、安定な顔料分散体の生産が得られる前に湿潤させ、脱凝集させなければならない一次粒子、凝集体、および塊の混合物を含むので、混練工程が必要であり得る。特定の顔料含有コーティング組成物における分散の度合いは、その組成物の適用性ならびに硬化フィルムの光学特性に影響を及ぼす。分散の改良は、光沢、色の濃さ、明るさ、および光沢保持の改良をもたらす。
【0082】
本組成物は、場合によって、少なくとも1つの顔料または顔料分散体を、1〜12%(重量/重量)の範囲の、例えば3〜10%(重量/重量)、または5〜8%(重量/重量)の量で含む。
【0083】
G.さらなる作用物質
本件における組成物は、場合によって、接着促進剤、腐食防止剤、硬化ブースター、および/またはフィラーを、所望の化学的および力学的性質を得るために含むことができる。
【0084】
組成物は、必ずしもナノフィラーではないさらなるフィラー、例えば、ポリエチレンワックスと共に調製されるアモルファス二酸化ケイ素、有機表面処理による合成アモルファスシリカ、IRGANOX(登録商標)、未処理アモルファス二酸化ケイ素、アルキル第四級ベントナイト、コロイダルシリカ、アクリル化コロイダルシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛、ニオビア、チタニア窒化アルミニウム、酸化銀、酸化セリウム、およびそれらの組み合わせなどをさらに含むことができる。さらに、そのフィラー粒子の平均粒径は、10マイクロメートル未満、または5マイクロメートル未満、または1マイクロメートル未満でさえある。
【0085】
III.組成物を使用する方法
本明細書に記載の組成物は、繊維質基材に塗布して繊維質製品を生産することができる。本組成物を含む繊維質基材は、化学線源、例えば紫外光にさらして硬化を達成することができる。かくして、本明細書に記載の方法の一態様は、繊維質製品を製造する方法ということになり、前記方法は、(a)繊維質基材を調製する工程;(b)前記繊維質基材に組成物を塗布して繊維質製品を生産する工程;および(c)前記繊維質製品を硬化する工程を含み、前記組成物は:
(i)ナノフィラー;
(ii)少なくとも1つの光開始剤;
(iii)少なくとも1つの単官能性モノマー;
(iv)界面活性剤;
(v)希釈剤;および
(vi)場合によって、顔料分散体および第2の光開始剤
を含む。
【0086】
A.繊維質基材
天然繊維から構成されるかまたは誘導される任意のタイプの基材が適当な繊維質基材である。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、その繊維質基材は製造の品物である。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、その繊維質基材は製造の品物の一部である。本発明に適合する繊維質基材は、十分な吸上げ作用(毛管作用)を有し、その結果塗布したときに組成物はその繊維質基材に接着する。
【0087】
典型的な繊維質基材としては、全てのタイプの天然織物、例えば、綿および羊毛織物;綿および羊毛の編物などの天然の編物;あらゆる厚さの紙、例えば、ティッシュペーパー、封筒、新聞紙、雑誌用紙、書籍用紙、名刺、原稿用紙および段ボールなどが挙げられる。
【0088】
コーティングする前に、紙の基材は、場合によって、鉛筆などの筆跡、ステープル、クリップ、ミシン目、および/または折り目を含み得る。織物基材は、場合によって、筆跡、折り目、ボタン、ジッパーなどを含み得る。繊維質基材は、以下に限定はされないが、正方形、長方形、角のある形のもの、円形のものなどを含む任意の大きさまたは形状のものであり得る。
【0089】
繊維質基材は、本組成物をその繊維質基材上に塗布することを容易にするのに足りる任意のやり方で用意することができる。一実施形態において、繊維質基材は、スピンドル上にすなわち巻物で用意することができる。別の実施形態において、繊維質基材は、コンベヤーベルト上またはトレー上に平らに置くことができる。さらに別の実施形態において、繊維質基材は、1列に吊り下げられて移動する。
【0090】
繊維質基材は、以下の(a)〜(g)を含む:
(a)様々なタイプの紙製品、例えば、以下に限定はされないが、ステーショナリーペーパー、原稿用紙、色画用紙、段ボール紙、封筒、紙袋、紙箱、包装紙、紙ラベル、紙標識、新聞紙、書籍用紙、雑誌用紙、名刺、食品を保持または包むために適する紙、フリーザーラップ、紙飲料カップ、カード用紙など;
(b)様々なタイプの製品を含有するパルプ、例えば、ドライ壁および石膏壁板などの壁板;
(c)様々なタイプの梱包材、例えば、以下に限定されないが、封筒、袋、箱、パッケージ、ラベルなど;
(d)様々なタイプのマーカー、例えば、以下に限定されないが、ガーデンマーカー、水中マーカー、土壌マーカーなど;
(e)様々なタイプの天然繊維織物、例えば、以下に限定されないが、綿、羊毛、リンネル、カシミヤ、麻、ラムパイ、絹など;
(f)様々なタイプの天然繊維編物、例えば、以下に限定されないが、綿、羊毛、リンネル、麻、ラムパイ、絹など;および
(g)非繊維成分を有する繊維質基材、例えば、以下に限定されないが、ボタン、ジッパー、飾りピン、ステープル、クリップ、ロッドなど。
【0091】
B.繊維質基材への組成物の塗布
繊維質基材に組成物を塗布する方法の一態様において、本組成物は、繊維質製品を生産するために、繊維質基材に塗布される。組成物は、吹付け塗り、はけ塗り、ロール塗り、浸漬塗り、ブレードコーティング、カーテンコーティングまたはそれらの組み合わせを用いて繊維質基材に塗布することができる。例えば、吹付け塗りの手段としては、以下に限定はされないが、高容量低圧(HVLP)スプレーシステム、エアアシステッド/エアレススプレーシステム、または静電スプレーシステムの使用を挙げることができる。
【0092】
一実施形態において、本明細書に記載の組成物は、最大25psiまで、最大30psiまで、最大35psiまで、最大40psiまで、最大45psiまで、最大50psiまで、最大55psiまで、最大60psiまで、最大65psiまで、最大70psiまで、最大80psiまで、最大90psiまで、および最大100psiまでの圧力を含む高圧で繊維質製品に吹き付けられる。組成物のそのような高圧の塗布によって、その組成物の繊維質製品内への含浸が促進される。さらなる実施形態においては、本明細書に記載の組成物の上記の塗布に続いて、その組成物の分布および/または含浸を支援するために紙がローラーに通される。一実施形態において、そのローラーは硬いアクリルのローラーである。さらなる実施形態において、そのローラーは、高品位で均一な製品を産出する。一実施形態において、その繊維質製品は、紙、カード用紙、または段ボールである。さらなる実施形態において、上記方法は、繊維質製品の1平方インチ当り0.02グラムを超えない組成物の使用を可能にする。
【0093】
一実施形態において、該組成物は、繊維質基材上に、例えば回転レンズを用いるなどして、強制的に塗布するか遠心力で塗布する。別の実施形態においては、そのレンズは、スピナーまたはレシプロケーターを用いて回転させる。回転レンズを用いる組成物の塗布は、浸漬、ワイヤーを巻いたドローダウンロッド、またはその他のドローダウン法による塗布よりも有利である。回転レンズを用いる組成物の塗布は、組成物を、浸漬、ワイヤーを巻いたドローダウンロッド、またはその他のドローダウン法によって塗布する繊維質製品より望ましい性質を有する繊維質製品を産出する。
【0094】
そのレンズは、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、フルオロポリマー、シリコーンポリマー、CR−39ポリカーボネート、またはそれらの組み合わせから作製することができる。一実施形態において、そのレンズは、ポリカーボネートでできている、例えばポリカーボネートのコンタクトレンズなどである。そのレンズは、以下に限定はされないが、回転を達成する条件に合ったスピナーまたはレシプロケーターを含む任意の手段によって回転させることができる。別の実施形態において、そのレンズはレシプロケーターを用いて回転させる。レンズは、繊維質基材への塗布を達成するのに適した任意のスピードで回転させることができる。例えば、そのレンズは、約10、20、30、40、50、60、80、100、120、150、または200の1分間当りの回転数(rpm)で回転させることができる。別法では、回転を達成するための組立ておよび手段は、標準化したスピード設定、例えば低速、中間速、高速などを持つことができる。組成物は、スピナーまたはレシプロケーターなどの回転を達成するための組立てまたは手段に対して標準化された任意のスピード設定の下で、繊維質基材に塗布することができる。
【0095】
一実施形態においては、計量した組成物を、繊維質基材に塗布するためのレンズに供給する。組成物は、注入器またはポンプによりレンズに供給することができる。別の実施形態においては、組成物をレンズに着実に供給する注入器またはポンプが採用される。
【0096】
レンズに供給される組成物の量はレンズのタイプ、形状および大きさならびに利用される繊維質基材に依存する。低い吸上げ作用を有する小さい基材と比較して寸法がより大きくより高い吸上げ作用を有する繊維質基材にはより大量の組成物を塗布する。ほんの一例として、組成物は、基材の1平方インチ当り0.01から2.0グラムの範囲の、例えば約0.02〜1.5、0.05〜1.0、または0.05〜0.1g/inの量で繊維質基材に塗布すればよい。
【0097】
繊維質基材は、様々な量の本組成物で被覆することができる。例えば、繊維質基材は、本組成物で部分的に被覆するかまたは全体的に被覆することができる。
【0098】
一実施形態において、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載の任意の方法を用いて繊維質製品の両面に塗布する。別の実施形態においては、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載の任意の方法を用いて繊維質製品の1面に塗布し、硬化の後および/または硬化の途中における製品のカールを防ぐために、該組成物は好ましくは繊維質製品の裏面に塗布する。
【0099】
一実施形態においては、紙基材の巻物を引き伸ばし、レシプロケーターにより回転しているレンズの周りを通す。さらなるまたは代わりとなる実施形態においては、回転しているレンズが、組成物を含んでおり、その組成物は、回転しているレンズを介して紙基材の表面に外向きに塗布される。
【0100】
さらなるまたは代わりとなる複数の実施形態において、紙基材の表面は、未硬化のコーティングにより部分的に覆われるようになるかまたは完全に覆われるようになる。さらなるまたは代わりとなる複数の実施形態において、未硬化の被覆表面を有する紙基材は、非繊維質の物体、例えば、以下に限定はされないが、金属物体、ガラス繊維物体、セラミック物体、ガラス物体、プラスチック物体、またはそれらの組み合わせを含む。さらなるまたは代わりとなる複数の実施形態において、非繊維物体の表面は、未硬化のコーティングにより部分的に覆われるようになるかまたは完全に覆われるようになる。
【0101】
さらなるまたは代わりとなる複数の実施形態において、該組成物は、1回の適用で、または複数回の適用で塗布される。さらなるまたは代わりとなる複数の実施形態において、該組成物は、単一のレンズまたは複数のレンズにより塗布される。さらなるまたは代わりとなる複数の実施形態においては、複数の組成物が、繊維質基材に塗布される。さらなるまたは代わりとなる複数の実施形態においては、複数の組成物が、繊維質基材に同時にまたは順次塗布される。
【0102】
さらなるまたは代わりとなる複数の実施形態において、該組成物は、繊維質基材に、大気温度で、または大気温度より高いかもしくは低い温度で塗布される。
【0103】
本発明の一態様は、繊維質製品を製造するための組立てに達し、ここで前記組立ては本組成物を繊維質基材に塗布するための手段を含む。一実施形態において組立ては、本組成物を繊維質基材の表面に、吹付け塗り、カーテンコーティング、浸漬塗り、ロール塗り、はけ塗り、または発射するための手段を含む。しかしながら、レンズを用いる強力な適用または遠心力適用が最も効果的な適用の方法であり、回転しているレンズを介して適量に計量した組成物を供給することによって達成することができる。特定の理論によって拘束されることを望むものではないが、回転しているレンズによる組成物の適用は、組成物の繊維質基材中への含浸を促進することおよび組成物の含浸が望ましい特徴、すなわち(a)ペンおよび/またはインキの筆記の保持;(b)印刷物の保持;および/または(c)明るさの保持を与えることが考えられる。
【0104】
C.繊維質基材を含む組成物の硬化
本明細書に記載の一態様は、本組成物を含む繊維質基材を硬化するための方法、プロセス、装置および組立てである。硬化は、熱または化学線にさらすことによって達成することができる。化学線は、可視光線、近可視光線、紫外(UV)線、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。さらに、紫外線は、UV−A波、UV−B波、UV−C波、UV−D波、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0105】
一般に、UV硬化性組成物は、光のすべての必要な周波数を網羅することを満たす単一または混合物の光開始剤を用いて調製する。これらは、対象物の完全な硬化を確保するように調製した光または光の組と共に機能するように使用する。重合、特にアクリレートの二重結合の転化および誘導時間は、オリゴマー、光開始剤、抑制剤、および顔料、ならびにUVランプの放射照度およびスペクトル出力を選択することによって影響され得る。クリヤーコート配合物と比較して、顔料の存在は、顔料による紫外線の吸収のために硬化をはるかに複雑にする可能性がある。したがって、光開始剤の吸収特性をUV源のスペクトル出力と調和させることに加えて様々な波長のUV源を使用することが、顔料着色した配合物の硬化を可能にする。
【0106】
UV硬化に使用される光源としては、アークランプ、例えば、カーボンアークランプ、キセノンアークランプなど、水銀灯、タングステンハライドランプ、レーザー、日光、太陽灯、および紫外線放出性蛍光体による蛍光灯が挙げられる。中圧水銀ランプおよび高圧キセノンランプは、ほとんどの市販の光開始剤によって吸収される波長の様々な輝線を有する。さらに、水銀アークランプは、鉄およびガリウムでドープすることができる。また、レーザーは、単色性(単一波長)であり、アークランプを使用する場合弱すぎるか利用できない波長で吸収する光開始剤を励起するために使用することができる。例えば、中圧水銀アークランプは、254nm、265nm、295nm、301nm、313nm、366nm、405/408nm、436nm、546nm、および577/579nmに強い輝線を有する。それ故、350nmに吸収の最大を有する光開始剤は、中圧水銀アークランプを用いては効果的に励起されないが、355nm Nd:YVO4(バナデート)固体レーザーを用いて効果的に開始することができる。250〜450nmの範囲の様々なスペクトル出力を備えた市販のUV/可視光源は、硬化目的に直接使用することができるけれども、波長の選択は、光学バンドパスフィルターまたはロングパスフィルターの使用により達成することができる。それ故、本明細書に記載されているように、ユーザーは、最適な光開始剤吸収特性を旨く利用することができる。
【0107】
光源にかかわらず、ランプの発光スペクトルは、光開始剤の吸収スペクトルを重複しなければならない。光開始剤吸収スペクトルの2つの態様を考える必要がある。吸収される波長と吸収の強さ(モル吸光係数)である。ほんの一例として、DAROCUR(登録商標)4265(Ciba Specialty Chemicals 540 ホワイトプレーンズロード、タリタウン、ニューヨーク州、米国、から)中の光開始剤HMPP(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−l−オン)およびTPO(ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)は、270〜290nmおよび360〜380nmに吸収ピークを有しており、一方、DAROCUR(登録商標)1173(Ciba Specialty Chemicals 540 ホワイトプレーンズロード、タリタウン、ニューヨーク州、米国、から)は、245nm、280nm、および331nmに吸収ピークを有しており、一方、ESACURE(登録商標)KTO−46(Lamberti S.p.A.、Gallarate(VA)、イタリア、から)は、245nmと378nmの間に吸収ピーク有しており、IRGACURE(登録商標)907(Ciba Specialty Chemicals 540 ホワイトプレーンズロード、タリタウン、ニューヨーク州、米国、から)中のMMMPは、350nmで吸収し、IRGACURE(登録商標)500(これはIRGACURE(登録商標)184(Ciba Specialty Chemicals 540 ホワイトプレーンズロード、タリタウン、ニューヨーク州、米国、から)とベンゾフェノンのブレンドである)は、300nmと450nmの間で吸収する。
【0108】
配合物中への顔料の添加は、得られるコーティングの不透明度を増し、硬化能力に対する影響を有し得る。その上、その添加された顔料は、入射する硬化性の放射線を吸収することができ、それによって光開始剤の性能に影響を及ぼす。したがって、不透明な顔料着色したコーティングの硬化性は、存在する顔料、個々の配合、照射条件、および基材の反射に依存し得る。それ故、それぞれの顔料および光開始剤のUV/可視吸収特性の考慮を、顔料着色したコーティングのUV硬化を最適化するために役立てることができる。一般に、顔料着色した配合物を硬化するために使用する光開始剤は、長波長(300nm〜450nm)の間に、透明な配合物を硬化するために使用するものより高いモル吸光係数を有する。顔料の存在は、UVおよび可視光領域の放射線を吸収することができ、それによって放射線硬化に適する吸収を減少するけれども、ホスフィンオキシドタイプの光開始剤、例えばこれに限定はされないが、ビスアシルホスフィンオキシドは、ほんの一例として黒を含む顔料着色したUV硬化性コーティング材料において有効である。ホスフィンオキシドは、また、白のコーティングに対する光開始剤としての使用も見込まれ、本明細書に記載の組成物に対する通しの有効な硬化を可能にする。
【0109】
水銀ガス放電ランプは、それが強いスペクトル線UV−C(200〜280nm)波を有する非常に有効なランプであるので硬化に対して最も広く使用されているUV源であるが、それはUV−A(315〜400nm)およびUV−B(280〜513nm)の領域におけるスペクトル放射線も有する。水銀圧は、UV−A、UV−BおよびUV−C領域におけるこのランプのスペクトル効率に強く影響する。その上、銀、ガリウム、インジウム、鉛、アンチモン、ビスマス、マンガン、鉄、コバルトおよび/またはニッケルの少量を水銀に金属ヨウ化物または臭化物として添加する(ドーピングする)ことによって、その水銀スペクトルは、主としてUV−A領域においてであるが、UV−BおよびUV−C領域においても強く変化させることができる。ドープしたガリウムは、403および417nmで強いスペクトル線を与え;一方鉄によるドーピングは、358〜388nmのUV−A領域でスペクトル放射強度を2倍引き上げるものの、ヨウ化物の存在のためにUV−BおよびUV−C放射は3〜7倍減少する。上で述べたように、コーティング配合物中の顔料の存在は、入射光を吸収することができ、それによって光開始剤の励起に影響を及ぼす。したがって、顔料分散体と共に使用されるUV源および使用される光開始剤、光開始剤混合物または光開始剤/共開始剤混合物を調整することが必要である。例えば、ほんの一例として、鉄をドープした水銀アークランプ(発光358〜388nm)は、光開始剤ESACURE(登録商標)KTO−46(Lamberti S.p.A.、Gallarate(VA)、イタリア、から)(245と378nmの間で吸収)と共に使用するのが理想的である。
【0110】
異なるスペクトル特性またはいくつかのスペクトルの重複が存在して十分に異なる複数のランプを、光開始剤の混合物または光開始剤と共開始剤との混合物を励起するために使用することができる。例えば、ほんの一例として、純粋な水銀アークランプ(発光200〜280nm)と組み合わせた鉄をドープした水銀アークランプ(発光358〜388nm)の使用である。励起光源を適用する順序は、高められたコーティング特性、例えば、ほんの一例として、硬度、平滑性、光沢、接着性、耐摩耗性、耐スクラッチ性、耐衝撃性および耐食性などを得るために付随的に使用することができる。コーティングした表面の長波長光源による最初の露光は、それがナノフィラー粒子を適当な位置に捕捉して表面近くで重合を開始し、それによって平滑で付着力のあるコーティングを与えるので有利である。これに続いてより高いエネルギーの短波長放射線にさらすことによって、最初の重合段階により適切な位置にセットされた残りのフィルムの急速な硬化が可能となる。
【0111】
各ランプのタイプに対する露光の時間は、本明細書に記載の組成物の硬化を増進するために操作することができる。木製の物体の表面をコートするために使用される本明細書に記載の組成物を硬化するために使用する1つの取り組みは、コートした表面を、長波長のドープした水銀アークランプに、短波長の水銀アークランプに露光するよりも短時間露光することである。しかしながら、この露光の仕組みは、硬化したコーティングが皺になる/縮れる原因となり得る。それ故、他の露光の仕組みは、短波長の水銀アークランプおよび長波長のドープした水銀アークランプの両方に対して同じ露光時間をかけ、別法では、長波長のドープした水銀アークランプへの露光時間が、短波長の水銀アークランプに対する露光の時間より長いことがあり得る。一実施形態において、本組成物を含む繊維質基材は、水銀アークランプに露光される。
【0112】
さらなるまたは代わりとなる実施形態において、繊維質製品を化学線に露光する時間は、2分未満である。さらなる実施形態において、繊維質製品を化学線に露光する時間は、1分未満である。さらなる実施形態において、繊維質製品を化学線に露光する時間は、15秒未満である。
【0113】
繊維質製品は、場合によって化学線の2つの光源に露光することができる。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、最初の化学線放射工程と2回目の化学線放射工程の間の時間は、2分未満である。さらなる実施形態において、最初の化学線放射工程と2回目の化学線放射工程の間の時間は、1分未満である。さらなる実施形態において、最初の化学線放射工程と2回目の化学線放射工程の間の時間は、15秒未満である。
【0114】
さらなるまたは代わりとなる実施形態において、最初の化学線放射工程の時間の長さは、2回目の化学線放射工程の時間の長さより短い。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、最初の化学線放射工程の時間の長さは、2回目の化学線放射工程の時間の長さより長い。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、最初の化学線放射工程の時間の長さは、2回目の化学線放射工程の時間の長さと同等である。
【0115】
実施形態には、硬化によって以下の特徴、すなわち、(a)ペンおよび/またはインキの筆記の保持;(b)印刷物の保持;および/または(c)明るさの保持の少なくとも1つ、2つ、または3つを示す本組成物を含む繊維質製品が含まれる。
【0116】
さらなるまたは代わりとなる実施形態において、硬化した繊維質製品は、少なくとも1日水にさらした後、以下の特徴、すなわち、(a)構造強度の保持;(b)インキまたは鉛筆の筆跡の保持;(c)印刷物の保持;および/または(d)明るさの保持、の少なくとも1つ、2つ、3つ、または4つを示す。
【0117】
本発明の一態様は、繊維質製品を製造するための組立てに達し、ここで前記組立ては本組成物を含む繊維質基材を硬化する手段を含む。一実施形態において、組立ては、可視光線、近可視光線、紫外(UV)線、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化学線を提供することができる少なくとも1つの光を含む照射のステーションを含む。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、この照射のステーションは、UV−A波、UV−B波、UV−C波、UV−D波、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される化学線を提供することができる少なくとも1つの光源を含む。
【0118】
D.組立て、加工ライン、および工場
本明細書に記載されているさらなる態様は、本組成物を生産するための方法であり、そこではそれが提供され、その方法は、成分、例えば、ほんの一例として、少なくとも1つのナノフィラー、少なくとも1つの光開始剤、少なくとも1つの単官能性モノマー、少なくとも1つの界面活性剤、希釈剤、ならびに場合によって少なくとも1つの顔料分散体および第2の光開始剤などを添加し、それら成分を一緒に混合する手段を用いて均質な組成物を形成する工程を含む。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、該組成物は、適当な容器、例えば、これに限定はされないが、缶の中で混合し、またはその中に移すことができる。
【0119】
別の態様は、繊維質基材の表面の少なくとも一部に組成物を塗布するための組立てであり、本組成物を該基材に塗布する手段と、その塗布した組成物を含む繊維質基材に塗布した表面を完全にまたは部分的に硬化させるために化学線の光源で照射する手段とを含む。本方法および組立てによって生産される繊維質製品は、以下の特徴、すなわち、(a)ペンおよび/またはインキの筆記の保持;(b)印刷物の保持;および/または(c)明るさの保持の少なくとも1つ、2つ、または3つを示す。さらに、本方法および組立てによって生産される繊維質製品は、少なくとも1日水にさらした後、以下の特徴、すなわち、(a)構造強度の保持;(b)インキまたは鉛筆の筆跡の保持;(c)印刷物の保持;および/または(d)明るさの保持、の少なくとも1つ、2つ、3つ、または4つを示す。
【0120】
一実施形態において、組立ては、本組成物の成分を混合するための手段を含む。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、組立ては、繊維質基材を調製する手段を含む。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、組立ては、本組成物を繊維質基材に塗布する手段を含む。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、組立ては、塗布した組成物を含む繊維質基材を硬化する手段を含む。
【0121】
繊維質基材は、本組成物を繊維質基材に塗布する工程を容易にするのに十分な任意のやり方で調製することができる。一実施形態において、繊維質基材は、スピンドル上にすなわち巻物で用意することができる。別の実施形態において、繊維質基材は、コンベヤーベルト上またはトレー上に平らに置くことができる。さらに別の実施形態において、繊維質基材は、1列に吊り下げられて移動する。
【0122】
該繊維質基材を硬化するための手段は、本組成物を含む基材を、照射ステーションにおいて表面を部分的にまたは完全に硬化するために照射する工程を含み得る。一実施形態において、照射と硬化は、物体を移送する必要がないように単一のステーションで遂行される。なおさらなる実施形態において、該組成物を塗布するための手段は、適用ステーションにあり、その場合該物体は、適用ステーションから照射ステーションに移動させなければならない。なおもさらなる実施形態において、かかる組立ては、物体を適用ステーションから照射ステーションに移動する手段を含む。さらになおさらなる実施形態において、その移動させる手段は、コンベヤーベルトを含む。
【0123】
さらなるまたは代わりとなる実施形態において、その照射ステーションは、適用ステーションへの化学線の露光を制限するための手段を含む。なおもさらなるまたは代わりとなる実施形態において、組立ては、基材を少なくとも1つの軸の周りに回転させるための手段をさらに含む。なおもさらなるまたは代わりとなる実施形態において、組立ては、組成物を塗布すべき基材を移動可能なユニットに取り付ける搭載ステーションをさらに含む。さらなる実施形態において、その移動可能なユニットは、基材を少なくとも1つの軸の周りに回転させることができる。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、その移動可能なユニットは、該基材を適用ステーションから照射ステーションに移動させることができる。
【0124】
なおさらなるまたは代わりとなる実施形態において、かかる組立ては、完全に硬化した繊維質製品を移動可能なユニットから取り除く除去ステーションをさらに含む。さらなる実施形態において、完全に硬化した繊維質製品は移動可能なユニットから取り除く前に冷却する必要はない。
【0125】
さらなるまたは代わりとなる実施形態において、該適用ステーションは、繊維質基材の表面に付着していない組成物を再生利用するための手段をさらに含む。なおさらなる実施形態において、その再生利用される組成物は異なる基材にその後塗布される。
【0126】
さらなるまたは代わりとなる実施形態において、該組立ては、可視光線、近可視光線、紫外(UV)線、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される化学線の光源を含む。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、該組立ては、複数の化学線の光源を含む。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、該照射ステーションは、反射鏡の配列を含む。
【0127】
さらなる実施形態において、プロセスは、適用工程の前に繊維質基材を回転可能なスピンドルに取り付ける工程をさらに含む。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、かかるプロセスは、該物体を回転可能なスピンドルに取り付けた後にその物体を適用ステーションの近くに位置付けるために、搬送手段を移動させる工程をさらに含む。さらなる実施形態において、かかるプロセスは、適用ステーションにおいて該物体を保持しているスピンドルが回転するとき、本組成物を塗布する工程をさらに含む。さらなる実施形態において、該搬送手段は、コンベヤーベルトを含む。
【0128】
さらなるまたは代わりとなる実施形態において、該照射ステーションは、第1の化学線光源および第2の化学線光源が入っている硬化チャンバーを含む。
【0129】
さらなる実施形態において、かかるプロセスは、完全に硬化した製品を搬送手段によって硬化チャンバーの外側に移動させ、そこで該製品を、貯蔵または輸送のために包装する工程をさらに含む。
【0130】
さらなるまたは代わりとなる実施形態において、該照射ステーションは、反射鏡の配列を含み、その結果適用された表面が3次元で硬化される。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、該照射ステーションは、光源の配列を含み、その結果コーティングされた表面が3次元で硬化される。さらなる実施形態において、各光源は、異なるスペクトル波長範囲を放つ。さらなる実施形態において、その異なる光源は、部分的に重複するスペクトル波長範囲を有する。
【0131】
別の態様は、基材を搬送手段に取り付ける工程;適用ステーションにおいて本組成物を繊維質基材の表面に塗布する工程;その塗布した基材を搬送手段によって照射ステーションに移動させる工程;照射ステーションにおいて化学線を照射して塗布した表面を部分的または完全に硬化する工程を含むプロセスを含む繊維質基材の表面の少なくとも一部に本組成物を塗布するための製造ラインであり、そのなかで、該繊維質製品は、硬化すると、以下の特徴、すなわち、(a)ペンおよび/またはインキの筆記の保持;(b)印刷物の保持;および/または(c)明るさの保持の少なくとも1つ、2つ、または3つを示す。別法または併用法では、本製造ラインにより生産される繊維質製品は、少なくとも1日水にさらした後、以下の特徴、すなわち、(a)構造強度の保持;(b)インキまたは鉛筆の筆跡の保持;(c)印刷物の保持;および/または(d)明るさの保持、の少なくとも1つ、2つ、3つ、または4つを示す。
【0132】
別の態様は、基材を搬送手段に取り付ける工程を含むプロセスを含む繊維質基材の表面の少なくとも一部に本組成物を塗布するための少なくとも1つのプロセスライン;本組成物を適用ステーションにおいて繊維質基材の表面に塗布するための少なくとも1つのプロセスライン;その塗布した基材を搬送手段によって照射ステーションに移動するための少なくとも1つのプロセスライン;照射ステーションにおいて、その塗布した表面に化学線を照射し、部分的または完全に硬化するための少なくとも1つのプロセスラインを含む繊維質製品を生産するための設備または工場であり、そのなかで、該繊維質製品は、硬化すると、以下の特徴、すなわち、(a)ペンおよび/またはインキの筆記の保持;(b)印刷物の保持;および/または(c)明るさの保持の少なくとも1つ、2つ、または3つを示す。別法または併用法では、本製造ラインにより生産される繊維質製品は、少なくとも1日水にさらした後、以下の特徴、すなわち、(a)構造強度の保持;(b)インキまたは鉛筆の筆跡の保持;(c)印刷物の保持;および/または(d)明るさの保持、の少なくとも1つ、2つ、3つ、または4つを示す。
【0133】
E.繊維質製品
本明細書において提供される繊維質製品は、本組成物を含む繊維質基材である。さらなるまたは代わりとなる実施形態においては、繊維質製品の全表面または一部だけの表面が、本組成物を含む。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、本組成物は、繊維質基材に対して控えめに塗布するか大量に塗布することができる。さらなるまたは代わりとなる実施形態において、本組成物を含む繊維質製品は、硬化させないか、部分的に硬化させるか、または完全に硬化させることができる。
【0134】
本発明の一態様において、本組成物は硬化すると該繊維質製品に以下の特徴、すなわち、(a)ペンおよび/またはインキの筆記の保持;(b)印刷物の保持;および/または(c)明るさの保持の少なくとも1つ、2つ、または3つを与える。一実施形態において、繊維質製品は、以下の特徴、すなわち、(a)ペンおよび/またはインキの筆記の保持;(b)印刷物の保持;および/または(c)明るさの保持の少なくとも1つ、2つ、または3つを示す。
【0135】
本発明の別の態様において、本組成物は、硬化すると水にさらした後の繊維質製品に以下の特徴、すなわち、(a)構造強度の保持;(b)ペンおよび/またはインキの筆記の保持;(c)印刷物の保持;および/または(d)明るさの保持の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを提供する。
【0136】
さらなるまたは代わりとなる実施形態において、繊維質製品は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、45、50、55、および60日間水にさらした後、以下の特徴、すなわち、(a)構造強度の保持;(b)ペンおよび/またはインキの筆記の保持;(c)印刷物の保持;および/または(d)明るさの保持を示す。
【0137】
さらなるまたは代わりとなる実施形態において、繊維質製品は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、45、50、55、および60日間水にさらした後、以下の特徴、すなわち、(a)構造強度の保持;(b)ペンおよび/またはインキの筆記の保持;(c)印刷物の保持;および/または(d)明るさの保持を示す。
【0138】
水への暴露は、部分的または完全な水への暴露とすることができる。別法では、水への暴露としては、水分、例えば、霧、霞、および加圧水蒸気などへの暴露を挙げることができる。別法では、水への暴露は、水を含む天候、例えば、雨、霧雨、雪、みぞれ、霧、雹などとすることができる。別法では、水への暴露は、物体の水中への部分的または完全な浸水とすることができる。別法では、水への暴露は、連続的、継続的、または断続的であり得る。例えば、水にさらされる物体は、水中に沈めるか、水たまりの中に横たえることができる。
【0139】
任意のタイプの水への暴露が、本発明の範囲内であるものとみなされる。純水、イオン水、脱イオン水、濾過水、塩水、雨水、鉱水、河川水、泥水、富化水、水道水、および湧き水は、すべて本発明の範囲内に包含される。
【0140】
F.硬化紙製品の例
1つの非限定の例においては、新聞紙グレードの紙に本明細書に記載の方法を用いて本明細書に記載の組成物を含浸/塗布して硬化させる。その新聞紙に次に標準的な技術を用いて印刷する。その得られた新聞紙は、数日または数週間にわたって水に連続してさらしたときでさえも、(a)構造強度;(b)印刷物;および/または(d)明るさを保持する。同様の手順が、同様の性質を備えた、雑誌、書籍(料理の本を含む)、地図、フィールドガイド、名刺、封筒、包装材料および段ボールを産出する。さらなる実施形態において、得られた繊維質製品は、標準的なレーザープリンター、インクジェットプリンター、またはタイプライターを用いるさらなる印刷に適する紙である。さらに、適用される印刷は、墨インキ、白インキまたは任意の色インキ(およびそれらの組み合わせ)であり得る。得られる印刷した紙製品は、数日または数週間にわたって水に連続してさらしたときでさえも、(a)構造強度;(b)印刷物;および(d)明るさを保持する。
【0141】
別の非限定の例において、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載されているような食品グレードの紙に本明細書に記載されているように塗布/含浸され、得られた製品は食品を包むために使用される。得られる食品グレードの紙は、数日または数週間にわたって食品に連続してさらしたときでさえも、(a)構造強度;(b)印刷物;および(d)明るさを保持する。ほんの一例として、食品としては、水、飲料、アイスクリーム、ビール、ワイン、スープ、およびコーヒーが挙げられる。
【0142】
別の非限定の例において、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載されているような紙に本明細書に記載されているように塗布/含浸され、得られた製品は丸められ持ち運びのできるホワイトボードとして使用される。すなわち、乾式消去マーカー(dry−erase markers)は、その紙製品に容易に書き込むことができ、得られた筆跡は標準的な乾式消去インク消しを用いて消すことができる。その丸められ持ち運びのできるホワイトボードは、構造強度、筆記性または耐久性を失うことなく多数回使用することができる。
【0143】
別の非限定の例において、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載されているようなシャワーカーテン上に本明細書に記載されているように塗布/含浸され、得られた製品はシャワーカーテンとして使用される。得られたシャワーカーテンはカビおよび白カビの増殖に抵抗する。
【0144】
III.繊維質製品の試験
本組成物は、優れた耐久性を持っており、物理的磨耗または様々な気象条件への暴露に遭遇する繊維質製品の表面に適する。固体コーティングの様々な力学的性質およびそれらについての様々な試験方法が、参照により全体として本明細書に組み込まれている「Mechanical Properties of Solid Coatings」、Encyclopedia of AnalyticalChemistry、 John Wiley & Sons、2000年、に記載されている。以下の試験についての記述は、ほんの一例として提供されるものである。
【0145】
例えば、本明細書に記載の組成物および方法は、以下の性質、すなわち、(a)ペンおよび/またはインキの筆記の保持;(b)印刷物の保持;および(c)明るさの保持の少なくとも1つにおいて改良を示す改良された硬化製品を提供する。
【0146】
例えば、本明細書に記載の組成物および方法は、以下の性質、すなわち、(a)構造強度の保持;(b)インキまたは鉛筆の筆跡の保持;(c)印刷物の保持;(d)明るさの保持の少なくとも1つにおいて改良を示す改良された硬化製品を提供する。
【0147】
明るさの保持により、材料の変色、例えば暗色化または黄変が防止される。明るさの保持を測定するための典型的な試験としては、分光光度試験、例えば、明るさ(波長=457nm)および/または輝度(波長=555nm)についての光吸収試験などが挙げられる。
【0148】
インキまたは鉛筆の筆跡の保持とは、インキまたは鉛筆の筆跡が材料上に保持される能力を指す。インキまたは鉛筆の筆跡の保持により、材料上のにじみ、退色および/または筋が回避される。インキまたは鉛筆の筆跡の保持を測定するための典型的な試験としては、分光光度試験、例えば、インキ除去性(IE)試験および有効残留インキ濃度(ERIC)試験などが挙げられる。
【0149】
印刷物の保持とは、印刷物が材料上に保持される能力を指す。典型的な印刷物としては、様々なインキ印刷物、例えば、ラベル、ロゴなどが挙げられる。印刷物の保持により、材料上のにじみ、退色および/または筋が回避される。印刷物の保持を測定するための典型的な試験としては、様々なスペクトル測光試験が挙げられる。
【0150】
構造強度の保持とは、材料がその物理的および構造的完全性、強度、または耐久性を保持する能力を指す。構造強度の保持によって、裂け、剥がれ、または破れが防がれる。構造強度の保持を測定するための典型的な力学的試験としては、例えば、手動検査、耐折強度、および引張り強度が挙げられる。構造強度の保持を測定するためにはスペクトル測光試験も採用することができる。
【0151】
鉛筆および/またはインキの筆記の保持とは、材料がどんなタイプの鉛筆またはどんなインキの出所、例えばペンまたはプリンターによるときも、そこに筆記することができるその能力を保持することができることを指す。筆記性は、材料の吸収性に依存する。
【0152】
カビ、細菌、および/または真菌の増殖に対する耐性とは、材料がこれらカビ、細菌、および/または真菌などの増殖を阻害または鈍化する能力を指す。この特性は、コーティングおよび/または硬化した繊維質製品上にカビ、細菌、および/または真菌を画線し、そのカビ、細菌、および/または真菌の増殖を、コーティングしておらず、かつ/または硬化してない繊維質製品に対して比較することにより試験することができる。本明細書に記載のコーティングし、硬化した繊維質製品は、構造の完全性および/または構造強度を保持していることに加え、その繊維質製品が、水中で、カビ、細菌、および/または真菌にさらされたときでさえ、カビ、細菌、および/または真菌の増殖に同様に抵抗する。
【実施例】
【0153】
(実施例1):クリヤー組成物についての配合
図1に示されているように、クリヤー組成物についての実施形態は、21.45%のテトラヒドロフルフリルアクリレート;11.98%のイソボルニルアクリレート;12.56%の1,4−ブタンジオールジメタクリレート;13.62%の2−フェノキシエチルアクリレート;34.91%のNanocryl C−155(Hansiechemie、ドイツ、から入手可);2.00%のIrgacure 500(Ciba Specialty Chemicalsから入手可);3.43%のIrgacure 184(Ciba Specialty Chemicalsから入手可);および0.05%のTego Rad 2100(Tego Chemieから入手可)を混合することにより調製する。これらの成分は、均一な組成物が生成するまでヘリカルミキサーによって十分に混合する。
【0154】
クリヤー組成物についてのさらなる実施形態は、以下の成分を混合することによって調製する:
テトラヒドロフルフリルアクリレート 11〜31重量/重量%
イソボルニルアクリレート 2〜22重量/重量%
1,4−ブタンジオールジメタクリレート 3〜40重量/重量%
2−フェノキシエチルアクリレート 4〜40重量/重量%
Nanocryl C−155 25〜50重量/重量%
Irgacure 184 2〜10重量/重量%
Irgacure 500 0.5〜10重量/重量%
TEGO(登録商標)Rad 2100 0.01〜2.0重量/重量%。
【0155】
(実施例2):顔料着色組成物についての配合
顔料着色組成物についての実施形態は、21.45%のテトラヒドロフルフリルアクリレート;11.98%のイソボルニルアクリレート;12.56%の1,4−ブタンジオールジメタクリレート;13.62%の2−フェノキシエチルアクリレート;34.91%のNanocryl C−155(Hansiechemie、ドイツ、から入手可);2.00%のIrgacure 500(Ciba Specialty Chemicalsから入手可);3.43%のIrgacure 184(Ciba Specialty Chemicalsから入手可);および0.05%のTego Rad 2100(Tego Chemieから入手可);1〜12%のPC 9003、および0.5〜5.0%のLucerin TPOを混合することにより調製する。これらの成分は、均一な組成物が生成するまでヘリカルミキサーによって十分に混合する。
【0156】
顔料着色組成物についてのさらなる実施形態は、以下の成分を混合することによって調製する:
テトラヒドロフルフリルアクリレート 11〜31重量/重量%
イソボルニルアクリレート 2〜22重量/重量%
1,4−ブタンジオールジメタクリレート 3〜40重量/重量%
2−フェノキシエチルアクリレート 4〜40重量/重量%
Nanocryl C−155 25〜45重量/重量%
Irgacure 184 2〜6重量/重量%
Irgacure 500 0.5〜4.0重量/重量%
TEGO(登録商標)Rad 2100 0.01〜2.0重量/重量%
PC 9003 1〜12重量/重量%
Lucerin TPO 0.5〜5重量/重量%。
【0157】
(実施例3):クリヤー組成物を製造するために用いる手順
1つのさらなる実施形態は、本組成物を製造するために用いられる手順である。組成物の成分は、酸素の存在が早まった重合を防止するので空気のもとで混合する。照射光は最低限に保つのが好ましく、特にナトリウム蒸気光の使用は避けるべきである。しかしながら、暗室用照明の使用は選択肢であり得る。モノマーおよびコーティング混合物と接触する組成物の製造で使用されるコンポーネント、例えば混合容器および混合翼などは、ステンレス鋼製またはプラスチック、好ましくはポリエチレンもしくはポリプロピレン製であるべきである。ポリスチレンおよびPVCは、モノマーおよび混合物がそれらを溶解するので避けるべきである。さらに、モノマーおよび混合物の、軟鋼、銅の合金、酸、塩基、および酸化性物質との接触は避けるべきである。その上に、真鍮取付け具は、それらが早まった重合またはゲル化を引き起こすので避けなければならない。組成物の適切な混合は、1/3馬力(hp)のミキサーおよび50ガロンの円筒形タンクを用いて1〜3時間後に得ることができる。最大5ガロンまでのより少ない量は、実験室用ミキサー(1/15〜1/10hp)を用いて3時間後に適切に混合することができる。円形の壁の容器は、これによって材料の角への蓄積および不完全な混合に伴う何らかのその後の問題が避けられるので望ましい。もう1つの条件は、混合翼を混合容器の底からミキサーの直径の半分の間隔を離して設置すべきであることである。モノマーを最初に混合容器に入れ、必要に応じて、そのモノマーを操作し易くするために穏やかに温める。モノマーは、120°Fを超えて加熱すべきではなく、それ故、加温が必要な場合、温度制御された加熱オーブンまたは加熱マントルの使用が推奨される。クリヤーコーティングの形成に対しては加熱しないことが必要である。バンドヒーターは避けるべきである。コロイド懸濁液を次に任意の順序で加え、続いて任意のエステル/モノマー接着促進剤を加える。光開始剤は、完全な組成物が光にさらされる時間を最小限にすることを確保するために最後に加える。混合容器は露光から守られているために、混合は、そのとき、全ての成分が加えられた後に行う。混合後は気泡が存在し、組成物は濁って見えるかもしれない。これらの泡は急速に消散し、均一な組成物が残る。最後の工程として、コーティング組成物を混合容器から取り出す前に、何らかの未溶解物質が存在しないかどうかを見るために混合容器の底をこする。これは、十分な混合が起こったことを確保するための予防措置として行う。組成物が完全に混合されている場合、そのコーティング組成物はバッグフィルターを用いる1ミクロンのフィルターを通して濾過する。該組成物はそのとき使える状態である。
【0158】
(実施例4):顔料着色組成物を製造するために用いる手順
さらなる一実施形態は、顔料着色組成物に対する製造手順である。ここでは、層流を生じ、ミキサーの羽根に対して顔料分散体を効率的に届けるために、十分な馬力と構造をもつミキサーが使用される。400mLを下まわる小さい実験室の量に対しては、実験室用ミキサーまたはブレンダーで十分であり、また一方、最高半ガロンまでの量に対しては、1/15〜1/10hpの実験室用ミキサーが使用できるが、混合には数日かかる。商業用の量に対しては、250ガロンの円形壁と円錐形の底のタンクで、少なくとも30hpのヘリカルミキサーまたは鋸歯状ミキサーを使用することができる。顔料着色組成物を製造するためには、クリヤー組成物を最初に混合する(実施例3参照)。顔料分散体混合物は、透明組成物に加える前に予め混合し、これによって正確な色を得ることが確保される。顔料分散体の予備混合は、その間防塵マスクを着用して密閉容器中で顔料分散体を震盪することにより容易に達成される。フィラー、予備混合した顔料/顔料分散体、および固体の光開始剤を次にクリヤー組成物に加え、1.5〜2時間混合する。混合の完了は、ドローダウンを実施し、未溶解の顔料についてチェックすることによって判定する。これは少量の顔料着色した混合物を混合タンクの底から取り出し、表面に薄いコーティングを塗布することによって達成される。この薄いコーティングは、そのとき、溶解していない顔料が少しでも存在しないかについて試験される。その混合物は、次に100メッシュのフィルターを通過させる。十分に混合された顔料着色組成物は未溶解顔料を殆ど示さない。
【0159】
(実施例5):紙の表面に組成物を塗布し、その紙を硬化するためのプロセス
A.シート状の紙への組成物の塗布
実施例1および2に記載されているような組成物をシート状の紙の表面に塗布するための実施形態が図2に示されている。そのシート状の紙は、組成物が入っている回転しているレンズに隣接して位置付けられている。この実施形態において、そのレンズは、時計と反対回りの方向に回転するスピンドルによって回転させる。レンズが回転すると組成物はシート状の紙の上に投げ出される。計測された量の組成物が、注入器またはポンプによって、紙の表面が組成物で覆われるまでレンズに連続的に加えられる。
【0160】
一実施形態において、8.5”×11”の静止した紙に実施例1の組成物を大量に塗布して計量した。塗布した紙と塗布してない紙の間の重量の違いを計算した。紙の1平方インチ当り0.057gの量の組成物が塗布され、それは8.5”×11”のシートに対して約5.55gの組成物に相当した。
【0161】
一実施形態において、8.5”×11”の静止した紙に、より少量の実施例1の組成物を塗布して計量した。塗布した紙と塗布してない紙の間の重量の違いを計算した。紙の1平方インチ当り0.04425gの量の組成物が塗布され、それは8.5”×11”のシートに対して約4.14の組成物に相当した。
【0162】
一実施形態において、8.5”×11”の静止した紙に、実施例2の組成物であって、9.3%の白色顔料分散体を含む前記組成物を塗布した。塗布した紙と塗布してない紙の間の重量の違いを計算した。紙の1平方インチ当り0.04025gの量の組成物が塗布され、それは8.5”×11”のシートに対して約3.74gの組成物に相当した。より少ない組成物が表面に塗布されたその他のシートも得た。
【0163】
B.紙の巻物への組成物の塗布
実施例1および2に記載されているような組成物を、巻物状の紙の表面に塗布する実施形態が図3に示されている。その紙の巻物は、回転しているレンズに隣接して位置付けされており、レンズのそばを通り過ぎて引き伸ばされている。そのレンズには組成物が入っており、計測された量の組成物が、注入器またはポンプによって、レンズに連続的に加えられる。そのレンズは、時計回りまたは時計と反対回りの方向に回転するスピンドルによって回転することができる。そのレンズが回転すると、組成物は紙の巻物に投げ出される。計測された量の組成物が、レンズに連続的に加えられ、紙の表面が該組成物で覆われるまでその紙に塗布される。
【0164】
C.組成物をコーティングした紙の硬化
組成物をシート状の紙または巻物の紙に塗布した後、紙は、次に、UV照射の光源にさらして硬化を達成する。図3に示されているように、組成物を含む巻物の紙は、UV光源のそばを通り過ぎて引き伸ばされる。
【0165】
実施例1の組成物については、硬化を達成するために、コーティングした紙への露光は、1つの水銀アークランプに対するもので十分である。実施例2の組成物については、硬化を達成するために、コーティングした紙への露光は、2つの水銀アークランプに対するもので十分であり、ここで1つのランプは水銀アークランプであり得、他のランプは、適切な硬化を確保するために、鉄をドープした水銀アークランプであり得る。一般に、ドープした水銀アークランプに対する露光の時間は、純粋な水銀アークランプに対する露光の時間より短い。ランプは両方とも消され、硬化紙は次に除去される。
【0166】
(実施例6):硬化紙の典型的な性質
実施例5によって製造した硬化紙は、組成物を含まない紙と同程度の鉛筆およびインキの両方に対する筆記性を示した。組成物の存在は、鉛筆またはインキが硬化紙に吸収される性能を損なわなかった。実施例5によって製造した硬化紙は、組成物を含まない紙と同程度の明るさおよび光度を示した。組成物を含まない紙と比較して、実施例5によって硬化した印刷した紙は、組成物が塗布された後およびその紙が硬化された後、印刷物を保持した。
【0167】
実施例5によって製造した硬化紙にインキと鉛筆の両方で書き込み、大気温度の水道水の桶の中に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、25、30、35、40、45、50、55、および60日間連続して浸したままにした。目視検査によれば、インキおよび鉛筆の筆跡は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、25、30、35、40、45、50、55、および60日間連続した浸漬の後も、硬化紙に保持された。インキまたは鉛筆の筆跡の明らかなにじみ、筋または退色は起こらなかった。
【0168】
目視検査によれば、硬化紙の明るさおよび光度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、25、30、35、40、45、50、55、および60日間の連日の浸漬の後も保持された。明らかな変色、カビの発生、または黄変は起こらなかった。
【0169】
目視および物理的検査によれば、硬化紙の構造強度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、25、30、35、40、45、50、55、および60日間の連日の浸漬の後も保持された。明らかな、裂け、剥がれ、または破れは起こらなかった。
【0170】
目視検査によれば、硬化紙の印刷物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、25、30、35、40、45、50、55、および60日間の連日の浸漬の後も保持された。印刷物の明らかなにじみ、筋または退色は起こらなかった。
【0171】
一時的に不透明な紙を透明に変え、利用者が封筒の中身を、それを一切開けることなく見ることを可能にする市販の「封筒X線スプレー(Envelope X−RAY Spray)」を、本明細書に提示した方法によって製造した硬化紙に塗布した。その硬化紙は、「封筒X線スプレー(Envelope X−RAY Spray)」を塗布した後も透明には変化しなかった。それに対して、該組成物を含まない紙は、そのスプレーの塗布後約30秒後に透明に変化した。さらに、本明細書に示す硬化紙は、有機溶媒、例えばアルコールおよびメチルエチルケトンなどの吸収に抵抗することができる。
【0172】
本発明は、実施形態に関連して説明してきたが、発明の範囲を説明した特定の形態に限定することを意図したのではなく、それどころか、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内に含まれ得る、代替物、修正物、および同等物を対象とすることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】図1は、繊維質基材に本明細書に記載の組成物を塗布するための1つの可能なプロセスのフローチャートである。
【図2】図2は、本明細書に記載の組成物を繊維質基材に塗布し、その組成物を硬化するための1つの典型的な方法および組立ての説明図である。
【図3】図3は、本明細書に記載の組成物を繊維質基材に塗布し、その組成物を硬化するためのもう1つの典型的な方法および組立ての説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)SiOまたはAlから選択されるナノフィラー;
(b)α−ヒドロキシケトンを含む少なくとも1つの光開始剤;
(c)アクリレートを含む少なくとも1つの単官能性モノマー;
(d)アクリレートを含む、オリゴマーのための希釈剤;
(e)架橋性のシリコーンアクリレートを含む界面活性剤;および
(f)場合によって、顔料分散体およびベンゾイルジアリールホスフィンオキシドを含む第2の光開始剤
を含む組成物。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、約20nmの平均直径および約5nmから約30nmの範囲の粒径分布を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(b)の光開始剤が、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記(b)の光開始剤が、Irgacure 184およびベンゾフェノンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記(c)の単官能性モノマーが、テトラヒドロフルフリルアクリレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記(c)の単官能性モノマーが、1,4−ブタンジオールジメタクリレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記(c)の単官能性モノマーが、2−フェノキシエチルアクリレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記(c)の単官能性モノマーが、テトラヒドロフルフリルアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、および2−フェノキシエチルアクリレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記(d)の希釈剤が、イソボルニルアクリレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
テトラヒドロフルフリルアクリレート 11〜31重量/重量%
イソボルニルアクリレート 2〜22重量/重量%
1,4−ブタンジオールジメタクリレート 3〜40重量/重量%
2−フェノキシエチルアクリレート 4〜40重量/重量%
Nanocryl C−155 25〜50重量/重量%
Irgacure 184 2〜10重量/重量%
Irgacure 500 0.5〜10重量/重量%
TEGO(登録商標)Rad 2100 0.01〜2.0重量/重量%
に相当する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
テトラヒドロフルフリルアクリレート 11〜31重量/重量%
イソボルニルアクリレート 2〜22重量/重量%
1,4−ブタンジオールジメタクリレート 3〜40重量/重量%
2−フェノキシエチルアクリレート 4〜40重量/重量%
Nanocryl C−155 25〜45重量/重量%
Irgacure 184 2〜6重量/重量%
Irgacure 500 0.5〜4.0重量/重量%
TEGO(登録商標)Rad 2100 0.01〜2.0重量/重量%
PC 9003 1〜12重量/重量%
Lucerin TPO 0.5〜5重量/重量%
に相当する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
テトラヒドロフルフリルアクリレート 21.45重量/重量%
イソボルニルアクリレート 11.98重量/重量%
1,4−ブタンジオールジメタクリレート 12.56重量/重量%
2−フェノキシエチルアクリレート 13.62重量/重量%
Nanocryl C−155 34.91重量/重量%
Irgacure 184 3.43重量/重量%
Irgacure 500 2.00重量/重量%
TEGO(登録商標)Rad 2100 0.05重量/重量%
に相当する、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
(a)紙基材、および
(b)以下:
(i)SiOまたはAlから選択されるナノフィラー;
(ii)α−ヒドロキシケトンを含む少なくとも1つの光開始剤;
(iii)アクリレートを含む少なくとも1つの単官能性モノマー;
(iv)アクリレートを含む、オリゴマーのための希釈剤;
(v)架橋性のシリコーンアクリレートを含む界面活性剤;および
(vi)場合によって、顔料分散体およびベンゾイルジアリールホスフィンオキシドを含む第2の光開始剤、
を含む組成物
を含む紙製品。
【請求項14】
前記組成物が、前記紙基材の表面の中に含浸されている、請求項13に記載の紙製品。
【請求項15】
前記組成物が、前記紙基材の中および/または上で硬化される、請求項13に記載の紙製品。
【請求項16】
前記紙製品が、水にさらした後に、(a)構造強度の保持;(b)インキまたは鉛筆の筆跡の保持;(c)印刷物の保持;(d)明るさの保持からなる群から選択される特徴の少なくとも1つを示す、請求項15に記載の紙製品。
【請求項17】
前記紙製品が、水にさらした後に、(a)構造強度の保持;(b)インキまたは鉛筆の筆跡の保持;(c)印刷物の保持;(d)明るさの保持からなる群から選択される特徴の少なくとも2つを示す、請求項16に記載の紙製品。
【請求項18】
前記紙製品が、水にさらした後に、(a)構造強度の保持;(b)インキまたは鉛筆の筆跡の保持;(c)印刷物の保持;(d)明るさの保持からなる群から選択される特徴の少なくとも3つを示す、請求項17に記載の紙製品。
【請求項19】
前記紙製品が、水に、少なくとも1、3、7、11、14、21、25、30、35、40、45、50、55、または60日間さらされる、請求項16に記載の紙製品。
【請求項20】
ラベル、梱包材、新聞紙、防湿層、ガーデンマーカー、または水中マーキングである、請求項21に記載の紙製品。
【請求項21】
紙製品を製造する方法であって、該方法が、(a)紙基材を提供する工程;(b)該紙基材に組成物を塗布する工程;および(c)該組成物を含む該紙基材を硬化する工程を含み、該組成物が:
(i)SiOまたはAlから選択されるナノフィラー;
(ii)α−ヒドロキシケトンを含む少なくとも1つの光開始剤;
(iii)アクリレートを含む少なくとも1つの単官能性モノマー;
(iv)アクリレートを含む、オリゴマーのための希釈剤;
(v)架橋性のシリコーンアクリレートを含む界面活性剤;および
(vi)場合によって、顔料分散体およびベンゾイルジアリールホスフィンオキシドを含む第2の光開始剤
を含む、方法。
【請求項22】
工程(b)が:
(i)レンズに前記組成物を提供すること;および
(ii)(i)のレンズを回転させて該組成物を前記紙基材に塗布すること、
を含み、工程(c)が、該紙基材を紫外光の少なくとも1つの光源にさらすことを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、前記紙基材中に一部含浸される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
請求項21に記載の方法によって生産される紙製品。
【請求項25】
水にさらされて、(a)構造強度の95〜100%の保持;(b)インキまたは鉛筆の筆跡の95〜100%の保持;(c)印刷物の95〜100%の保持;(d)明るさの95〜100%の保持からなる群から選択される特徴の少なくとも1つ、2つ、3つ、または4つを示す、請求項22に記載の紙製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−509023(P2009−509023A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532199(P2008−532199)
【出願日】平成17年9月23日(2005.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/034299
【国際公開番号】WO2007/040493
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(508086885)エコロジー コーティングス, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】