説明

紙製容器用蓋材

【課題】蓋シール時のカール及び紙の蒸発水分による発泡等の不具合のない紙製容器用蓋材を提供すること。
【解決手段】飲み口等の開口部を有する紙を主材料とする積層材料を成形して得られる紙製容器の開口部を密封する紙製蓋材であって、この蓋材が紙(11)の一方の面にはバリア性熱可塑性樹脂(12)が積層され、もう一方の面には押し出しラミネートにより熱可塑性樹脂(13)が等間隔をおいて複数本、簾状に積層されている。熱可塑性樹脂が簾状に積層された紙の透気度は、JIS P8117法で10秒以上、5000秒未満が良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙カップや円筒状紙容器など紙製容器用の蓋材に関するものであり、特には、蓋シール時のカール及び紙の蒸発水分による発泡等の不具合が無い紙製容器用蓋材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、飲み口等の開口部を有する紙を主体とした紙製容器の開口部を密封する蓋材で、アルミニウム等を用いないリサイクルが容易な蓋材に関しては、多数の発明・考案がなされている。
【0003】
例えば、アルミニウム箔等の金属の入っていない蓋構成で、発泡及びカールを防ぐため外側にプラスチックフィルムを施し、さらに微細孔を施した構成としたもの(特許文献1参照).アルミニウム箔等の金属の入っていない蓋構成で、打ち抜き適性及びカール防止させるために紙基材に合成樹脂製の合成紙を用いた構成としたもの(特許文献2参照).カール防止、シール性の安定化をはかるために紙の水分率を3.4%以下に調整した構成としたもの(特許文献3参照).基材紙容器と熱可塑性シーラントフィルムをアルミニウム粉末含有接着剤で貼り合わせ、アルミニウムを極力含まず、金属探知機にかけられる状態としたことを特徴としたもの(特許文献4参照).等がある。
【0004】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開2001−2113号公報。
【特許文献2】特開平10−324361号公報。
【特許文献3】特開平7−267271号公報。
【特許文献4】特開2000−219264号公報。
【0005】
しかし、特許文献1の発明は、微細孔を設ける工程が設備面、加工面で困難であり、加工速度が出にくく精度に欠ける.通常幅の制限がありコスト高になり易い.等の問題がある。
【0006】
また、特許文献2の発明は、合成紙を用いることによりコスト高になる.また、樹脂としてはポリエチレンやポリプロピレンとなり耐熱性に欠ける.等の問題がある。
【0007】
また、特許文献3の発明は、季節要因により、実加工上、紙水分率を管理することは難しい.等の問題がある。
【0008】
また、特許文献4の発明は、アルミニウム粉末を含有させることによる接着剤のコストアップ.ラミネート強度の管理が難しい.フィルムが無い状態でのインキやニスの耐熱性処方が別途必要となる.等の問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、飲み口等の開口部を有する紙を主体とした紙製容器の開口部を密封する蓋材で、アルミニウム等を用いない蓋材に関する以上のような問題に鑑みてなされたもので、
蓋シール時のカール及び紙の蒸発水分による発泡等の不具合が無い紙製容器用蓋材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1の発明は、飲み口等の開口部を有する紙を主材料とする積層材料を成形して得られる紙製容器の開口部を密封する紙製蓋材であって、前記蓋材が紙の一方の面にはバリア性熱可塑性樹脂が積層され、もう一方の面には押し出しラミネートにより熱可塑性樹脂が等間隔をおいて複数本、簾状に積層されていることを特徴とする紙製容器用蓋材である。
【0011】
このように請求項1に記載の発明によれば、蓋材は、紙の一方の面にはバリア性熱可塑性樹脂が積層され、もう一方の面には押し出しラミネートにより熱可塑性樹脂が等間隔をおいて複数本、簾状に積層されている構成からなるので、通気性があり、かつ、シール時の耐熱性、印刷保護性、耐水性を有する。また、紙の両面に熱可塑性樹脂をラミネートすることによりシール直前のカールを最小限に抑える効果を得ることが可能となる。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記紙のもう一方の面に等間隔をおいて複数本、簾状に積層される熱可塑性樹脂は、同じ幅で形成されていることを特徴とする紙製容器用蓋材である。
【0013】
このように請求項2に記載の発明によれば、紙のもう一方の面に等間隔をおいて複数本、簾状に積層される熱可塑性樹脂が同じ幅で形成されているので、蓋材は平均して通気できる。
【0014】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記熱可塑性樹脂が簾状に積層された紙の透気度がJIS P8117法で10秒以上、5000秒未満であることを特徴とする紙製容器用蓋材である。
【0015】
このように請求項3に記載の発明によれば、熱可塑性樹脂が簾状に積層された紙の透気度をJIS P8117法で10秒以上、5000秒未満にすることにより、通気性があり、かつ、シール時の耐熱性、印刷保護性、耐水性を有する蓋材とすることができる。
【0016】
熱可塑性樹脂が簾状に積層された紙の透気度が10秒未満では通気性が良過ぎて表面からの水の侵入(雰囲気中の水分)を防ぐことができず、5000秒以上であるとシール時(160〜240°Cを想定)の水分の抜けが悪く、蓋材が発泡してしまう危険性が高まる。そのため、簾状ラミネートの間隔を制御することにより、上記簾状に積層された紙の透気度を10〜5000秒に設定する必要がある。
【0017】
また、請求項4の発明は、請求項1、2又は3の発明において、前記紙に簾状に積層される熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリブチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする紙製容器用蓋材である。
【0018】
このように請求項4に記載の発明によれば、紙に簾状に積層される熱可塑性樹脂をポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリブチレンテレフタレート樹脂とすることにより、耐水性、耐熱性を付与することができ、シール時に易剥離性、防カール性を高めることができる。厚みとしては5〜30μm程度が好ましく用いられる。5μm未満では加工が難しく、30μ以上になると樹脂の価格が高くなりコスト的に不利になる。
【発明の効果】
【0019】
このように本発明の紙製容器用蓋材は、主材料が紙であり、片面にはバリア性熱可塑性
樹脂、もう片方には押出しラミネートにより簾状に熱可塑性樹脂を積層させたことにより、紙の収縮によるカールを防ぐことができ、また、耐熱性があり、通気性もあるためにシール時の水分蒸発による発泡を防ぐことができる。また、この蓋材は広幅で連続生産可能であるため、実生産上でも生産効率が良く、従来技術に比較してコスト面でも有利な蓋材となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
本発明の紙製容器用蓋材は、例えば、図1、図2に示すように、飲み口等の開口部を有する紙を主材料とする積層材料を成形して得られる紙製容器(20)の開口部(21)を密封する紙製蓋材(10)である。
【0021】
そして蓋材(10)の構成は、紙(11)の一方の面にはバリア性熱可塑性樹脂(12)が積層され、もう一方の面には押し出しラミネートにより熱可塑性樹脂(13)が等間隔で複数本、簾状に積層されていることを特徴としている。
【0022】
蓋材に使用する紙(11)は、坪量が20〜150g/m2 程度の上質紙、中質紙、晒クラフト紙、並びにコート紙、ノーコート紙を用いることができる。望ましくは35〜100g/m2 程度の坪量が、カール面、強度面で好ましく使用することができる。さらに、樹脂含浸、耐水性のある内添薬剤を用いることで、Cobb吸水度が0.1〜10g/m2 程度の耐水性を有する耐水紙であれば、吸湿による寸法安定性を持ち、よりカール等の変化に対して耐性が得られ好ましく使用することができる。
【0023】
紙(11)の一方の面に積層されるバリア性熱可塑性樹脂(12)は、シーラントとなる層で、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ナイロン、酸化ケイ素薄膜蒸着ポリエチレンテレフタレート、酸化アルミニウム薄膜蒸着ポリエチレンテレフタレート、アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、その他の熱可塑性樹脂フィルムの単膜あるいは積層体を用いることができ、紙製容器(20)のバリア性を高めることが可能となる。
【0024】
紙(11)のもう一方の面に熱可塑性樹脂(13)を簾状に積層するについては、エクストルーダーのダイス(D)を加工することにより可能となる。すなわち、紙(11)の幅方向で樹脂のある部分(a)とない部分(b)とを交互に連続的に設けることで、通気性を持たせることができ、シール時の紙中の水分蒸発はスムーズに起こり、発泡等の不具合を防ぐことができる。また、樹脂と樹脂の間隔は1〜5mm程度であることが好ましい(図3参照)。
【0025】
なお、紙のもう一方の面に等間隔をおいて複数本、簾状に積層される熱可塑性樹脂は、同じ幅で形成されても良い。また、樹脂のある部分(a)と樹脂のない部分(b)のそれぞれの幅は、通気性に合わせて同じ幅にも、あるいは異なる幅にも設定することができる。
【0026】
押出しラミネート加工可能な熱可塑性樹脂(13)としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種ポリオレフォン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ナイロン、ビニルアルコール共重合体等の各種樹脂を単層又は2種類以上の積層樹脂を用いることが可能である。また、紙面には印刷あるいはポリエチレンイミン等を代表とする接着性プライマーを用いることも可能であり、それらのシール時の保護層としてもこれらの樹脂は機能する。
この方法は、従来と比較して連続加工及び広幅での加工が可能で生産性にも優れる。
【0027】
以下実施例により本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
印刷層を設けた坪量80g/m2 の上質紙(11)を準備した。
別に厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムと厚さ30μmのポリエチレンフィルムをドライラミネート法により貼り合わせ、シーラント層となるバリア性熱可塑性樹脂フィルム(12)を作製した。
【0029】
ダイスに加工を施した押出し機を用いて、先に準備した上質紙(11)の印刷層面にポリエチレンテレフタレート樹脂を簾状に20μmの厚さになるように積層し、ポリエチレンテレフタレート樹脂が簾状に積層されたラミネート紙を作製した。
【0030】
このポリエチレンテレフタレート樹脂が簾状に積層されたラミネート紙の紙面と、先に準備したバリア性熱可塑性樹脂フィルム(12)のポリエチレンテレフタレートフィルム面とを対向させ、ドライラミネート法により貼り合わせ、〔外側〕簾状ポリエチレンテレフタレート樹脂(20μm)(13)/印刷層・上質紙(80g/m2 )(11)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)・ポリエチレンフィルム(30μm)(12)〔内側〕の層構成からなるテープ状の実施例1の紙製容器用蓋材(10)を作製した(図1参照)。
【実施例2】
【0031】
外側に簾状ポリエチレンテレフタレート樹脂(12)を設けなかった以外は実施例1と同じ構成の蓋材を作製し、実施例2の紙製容器用蓋材とした。すなわち、〔外側〕印刷層・上質紙(80g/m2 )(11)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)・ポリエチレンフィルム(30μm)(12)〔内側〕の層構成からなるテープ状の蓋材である。
【実施例3】
【0032】
実施例1において、外側の簾状ポリエチレンテレフタレート樹脂の代わりに、延伸したポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)をドライラミネート法で貼り合わせた蓋材を作製し、実施例3の紙製容器用蓋材とした。すなわち、〔外側〕ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/印刷層・上質紙(80g/m2 )(11)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)・ポリエチレンフィルム(30μm)(12)〔内側〕の層構成からなるテープ状の蓋材である。なお実施例2と実施例3は実施例1の比較例となる。
【0033】
このようにして作製した実施例1〜3のテープ状の蓋材を所望の大きさに打ち抜くと共に、紙製円筒状容器(20)の蓋部材の開口部(21)を覆うように230°C、1秒の条件で、液体充填雰囲気である60°Cの雰囲気下でシールを行った。そのシール結果はつぎの通りであった。
【0034】
すなわち、実施例1の蓋材は、カールや発泡がなく安定した蓋材シールが可能である。(判定;○)
実施例2の蓋材は、印刷インキのとられが認められ、外側にフィルムがない状態であり、蓋材が大きくカールした。(判定;×)
実施例3の蓋材は、水分の蒸発による発泡が認められ安定した蓋材シールができなかった(判定;×)。
【0035】
なお、紙製円筒状容器(20)の蓋部材の層構成は、〔外側〕ポリエチレン(40μm)/紙(290g/m2 )/ポリエチレン(55μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/酸化アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/ポリエチレン(60μm)〔内側〕である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の紙製容器用蓋材の層構成の一実施例を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の紙製容器用蓋材を紙製円筒状容器の開口部にシールする前の状態の一実施例を示す斜視説明図である。
【図3】ダイスに加工を施した押出機から熱可塑性樹脂が簾状に押し出される状態を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
10‥‥蓋材
11‥‥紙
12‥‥バリア性熱可塑性樹脂
13‥‥熱可塑性樹脂
20‥‥紙製容器、紙製円筒状容器
21‥‥開口部
a‥‥樹脂のある部分
b‥‥樹脂のない部分
D‥‥ダイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲み口等の開口部を有する紙を主材料とする積層材料を成形して得られる紙製容器の開口部を密封する紙製蓋材であって、
前記蓋材が紙の一方の面にはバリア性熱可塑性樹脂が積層され、もう一方の面には押し出しラミネートにより熱可塑性樹脂が等間隔をおいて複数本、簾状に積層されていることを特徴とする紙製容器用蓋材。
【請求項2】
前記紙のもう一方の面に等間隔をおいて複数本、簾状に積層される熱可塑性樹脂は、同じ幅で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紙製容器用蓋材。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が簾状に積層された紙の透気度が、JIS P8117法で10秒以上、5000秒未満であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の紙製容器用蓋材。
【請求項4】
前記紙に簾状に積層される熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリブチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の紙製容器用蓋材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−197072(P2007−197072A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20349(P2006−20349)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】