説明

素子基板の製造方法

【課題】微細パターンの金属層が精度良く形成された素子基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる素子基板100は、無電解めっき法により形成された金属層を有する素子基板であって、基板10と、前記基板上に形成された金属層34と、を含み、前記金属層は、20nm以上100nm以下の線幅を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に金属配線等を形成する際、たとえばサブトラクティブ法によって形成される。サブトラクティブ法では、基板の全面に金属層を形成し、金属層上にフォトレジストを塗布してパターニングし、そのフォトレジストをマスクとして金属層をエッチングする。この方法では、真空装置が必要であった。また金属層のパターン精度がフォトレジストのパターン精度に依存することから、ナノレベルの微細パターンを精度良く形成することが困難であった。
【特許文献1】特開平10−65315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、微細パターンの金属層が精度良く形成された素子基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明にかかる素子基板は、
無電解めっき法により形成された金属層を有する素子基板であって、
基板と、
前記基板上に形成された金属層と、
を含み、
前記金属層は、10nm以上100nm以下の線幅を有する。
【0005】
本発明にかかる素子基板において、
前記金属層は、基板上においてストライプ状のパターンを有し、かつ10nm以上100nm以下の線幅を有することができる。
【0006】
本発明にかかる素子基板において、
前記金属層は、10nm以上80nm以下の線幅を有することができる。
【0007】
本発明にかかる素子基板において、
前記金属層の前記線幅と同一方向における間隔は、70nm以上140nm以下であることができる。
【0008】
本発明にかかる素子基板において、
前記金属層は、白金からなることができる。
【0009】
本発明にかかる素子基板において、
前記線幅は、当該線幅と同一方向における間隔より小さいことができる。
【0010】
本発明にかかる素子基板において、
前記金属層のアスペクト比は、1〜3であることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
1.素子基板の製造方法
図1〜図14は、素子基板(図15参照)の製造方法を示す図である。本実施の形態では、無電解めっきを適用して素子基板を製造する。
【0013】
(1)まず、基板10を用意する。基板10は、図2に示すように絶縁基板であってもよい。後述する工程により絶縁基板上に金属層を形成することによって、配線基板を製造することができる。あるいは、基板10は、可視光を透過する光透過性基板(例えば透明基板)であってもよい。後述する工程により光透過性基板上に金属層を形成することによって、たとえば偏光板のような光学素子基板を製造することができる。
【0014】
基板10は、たとえば無機系基板(例えば石英ガラス、シリコンウエハ、酸化物層)であってもよい。基板10は、単層のみならず、ベース基板上に少なくとも1層の絶縁層が形成されている多層のものも含む。本実施の形態では、基板10上に金属層を形成する。また基板10の表面には、凹凸がないことが好ましく、たとえば凹凸の高さが10nm未満であることが望ましい。
【0015】
(2)ついで、基板10上に第1のパターンの犠牲層22を形成する。犠牲層22の材質としては、容易に成形可能であって、かつ熱処理を施すことにより除去できる材質であれば特に限定されないが、条件を満たす材質としてはフォトレジスト、熱可塑性樹脂または光硬化性樹脂等の樹脂であることができ、300℃〜400℃でガス化するものが好ましい。具体的には、犠牲層22の材質として、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリスチレンを用いることができる。犠牲層22を形成する方法としては、公知の方法を用いることができるが、たとえば干渉露光法やナノインプリント技術を用いることができる。本実施の形態では、ナノインプリント技術を用いて犠牲層22を形成する場合について説明する。
【0016】
まず、図1に示すように、流動状態の樹脂材料22aを基板10に塗布する。樹脂材料22aとしては、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂等を用いることができる。塗布方法としては、スピンコート法、ディップコート等の公知の方法を用いることができる。
【0017】
次いで、ナノスタンパ12を基板10方向(図2の矢印方向)に押圧することにより、樹脂材料に第1のパターンを転写する。ここで第1のパターンの形状は、特に限定されないが、たとえば一定間隔をおいて配置された複数の線の周期パターンであることができる。樹脂材料22aが光硬化性樹脂の場合には、ナノスタンパ12は、光透過性のものを用いてもよい。
【0018】
次いで、樹脂材料22aを硬化させて、犠牲層22bを形成する。その後、ナノスタンパ12を犠牲層22bから剥離する(図3参照)。このようにして、図4に示すように、第1のパターンを有する犠牲層22bを形成することができる。
【0019】
犠牲層22bを用いて、後述する工程(3)に進んでも良いが、図5に示すように第1のパターンの隙間の犠牲層22bの一部をエッチバック等により除去してもよい。犠牲層22bがフォトレジストからなる場合には、アッシングにより一部を除去してもよい。ここでは、第1のパターンの隙間の犠牲層22bの一部とともに、第1のパターンの領域の犠牲層22bの上部も除去される。この除去工程を経ることによって、犠牲層22を形成することができる。
【0020】
ナノインプリント技術を用いて犠牲層22を形成する方法は以上であるが、上述したように干渉露光法を用いても犠牲層22を形成することができる。干渉露光法を用いる場合には、樹脂材料22aとしてフォトレジストを適用し、予め反射防止膜を基板10上に設けておくことが好ましい。
【0021】
(3)次に、基板10および犠牲層22の表面を洗浄する。基板10および犠牲層22の表面の洗浄は、ドライ洗浄でもよいし、ウエット洗浄でもよいが、ドライ洗浄がより好ましい。ドライ洗浄にすることによって、剥離等の犠牲層22に与えるダメージを防止することができる。
【0022】
ドライ洗浄は、図6に示すように、真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)18を用いて、窒素雰囲気下において、30秒〜900秒間、真空紫外線20を照射して行うことができる。基板10を洗浄することによって、基板10の表面に付着している油脂などの汚れを除去することができる。
【0023】
ウエット洗浄は、例えば、基板10をオゾン水(オゾン濃度10ppm〜20ppm)に室温状態で5分〜30分程度浸漬することで行うことができる。
【0024】
(4)次に、界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層24を基板10上に形成する。
【0025】
まず、図7に示すように、界面活性剤またはシラン系カップリング剤を溶解した触媒吸着溶液14に基板10を浸漬する。基板10の表面の液中表面電位が負電位の場合には、カチオン系界面活性剤を適用することが好ましい。カチオン系界面活性剤は、他の界面活性剤に比べて基板10に吸着しやすいからである。
【0026】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、アミノシラン系成分を含む水溶性界面活性剤や、アルキルアンモニウム系の界面活性剤(例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルジメチルアンモニウムブロマイド等)などを用いることができる。
【0027】
触媒吸着溶液14に含まれるシラン系カップリング剤としては、たとえばヘキサメチルジシラザンを用いることができる。浸漬時間は、例えば、1分〜10分程度とすることができる。
【0028】
次いで、触媒吸着溶液14から基板10を取り出し、超純水で洗浄する。その後、基板10を、例えば、室温下で自然乾燥、または、圧縮空気を吹き付けて水滴を除去した後、90℃〜120℃のオーブン内に10分〜1時間程度放置して乾燥させる。以上の工程により、図8に示すように、触媒吸着層24を基板10に設けることができる。このとき、界面活性剤としてカチオン系界面活性剤を適用した場合には、基板10の液中表面電位は吸着前よりも正電位側にシフトしている。
【0029】
(5)次に、触媒層31を触媒吸着層24上に形成する。まず、図9に示すように、触媒溶液30に基板10を浸漬する。触媒溶液30は、無電解めっきの触媒として機能する触媒成分を含む。触媒成分としては、たとえばパラジウムを用いることができる。
【0030】
たとえば、以下の手順により触媒溶液30を作製することができる。
(5a)純度99.99%のパラジウムペレットを塩酸と過酸化水素水と水との混合溶液に溶解させ、パラジウム濃度が0.1〜0.5g/lの塩化パラジウム溶液とする。
(5b)上述した塩化パラジウム溶液をさらに水と過酸化水素水で希釈することによりパラジウム濃度を0.01〜0.05g/lとする。
(5c)水酸化ナトリウム水溶液等を用いて、塩化パラジウム溶液のpHを4.5〜6.8に調整する。
【0031】
触媒溶液30に浸漬した後、基板10を水洗してもよい。水洗は、純水によって行われることができる。この水洗によって、触媒の残渣が後述する無電解めっき液に混入するのを防止することができる。
【0032】
以上の工程により、触媒層31が形成される。触媒層31は、図10に示すように、基板10および犠牲層22上の触媒吸着層24の上面に形成される。
【0033】
(6)次に、基板10上に金属層32をめっき析出させる(図12参照)。金属層32は、触媒層31が形成されている領域に形成される。具体的には、図11に示すように、金属を含む無電解めっき液36に基板10を浸漬させることによって、金属層33を析出させることができる。
【0034】
ここで無電解めっき液36は、基板10上にめっき粒子として析出する際、めっき粒子の平均粒径が20nm以下になるように調整されることが好ましく、4〜6nm程度になるように調整されることがより好ましい。めっき粒子のサイズを4〜6nmにすることによって、後述する熱処理工程(7)において、金属層32を構成する金属粒を移動しやすくすることができる。このような無電解めっき液36は、pH、温度、調整時間等をかえることにより調整することができる。また無電解めっき液36への基板10の浸漬時間が一定時間以上になると、めっき粒子の平均粒径が20nmより大きくなってしまうため、浸漬時間は、一定時間以内であることが好ましい。
【0035】
金属は、たとえば白金であることができる。無電解めっき液36としては、酸性で使用するタイプとアルカリ性で使用するタイプがあるが、無電解めっき液36の一例としてはアルカリ性で使用するタイプのものを適用する。無電解めっき液36は、上述した金属と、還元剤および錯化剤等を含む。具体的には、無電解めっき液36としては、市販の白金めっき液と還元剤液とを混合し、その後硫酸を用いてpH9.5〜pH10.5に調整した混合溶液を用いることができる。この混合溶液(温度40℃〜50℃)に基板10を5分〜15分程度浸漬することによって、10nm〜40nmの厚みを有する白金層を形成することができる。ここで析出する白金層の粒径は、約4〜6nm程度であることが好ましい。
【0036】
なお、金属としては、白金に限定されず、ニッケルや銅等を適用してもよい。このようにして、粒状の金属層32を形成することができる。また、金属層32の形成後、基板10を水洗してもよい。水洗は、純水によって行われてもよいし、水蒸気によって行われてもよいし、純水及び水蒸気の双方を用いて行われてもよい。
【0037】
(7)次に、基板10を加熱することにより、犠牲層22を除去して、第2のパターンの金属層34を形成する(図15参照)。熱処理は、たとえば高速昇温加熱(RTA)により、大気雰囲気中、300℃〜700℃で5分〜30分間程度行われることが好ましい。まず、この熱処理工程では、図13に示すように、犠牲層22が除去される。この犠牲層22の除去とともに、金属層32を構成するそれぞれの金属粒が犠牲層22の形成領域を埋めるように集合し、図14に示すような形状の金属層33が形成される。さらに加熱を続けると、さらに金属粒は、隙間を埋めるように凝集して、図15に示すように、金属密度の高い金属層34が形成される。このとき、触媒吸着層24は、加熱温度によっては分解されてもよいし、基板10上に残っていてもよい。
【0038】
金属層34の線幅は、金属層32の膜厚の2倍程度であることができる。従って、金属層32の膜厚を調整することによって、金属層34の線幅を制御することができる。金属層32の膜厚は、無電解めっき液36への基板10の浸漬時間等をかえることにより制御できる。また、金属層34の高さは、犠牲層22の高さを高くすることによって、高くすることができる。このようにして、犠牲層22の高さと、金属層32の膜厚によって、アスペクト比を容易に制御することができる。
【0039】
ここで上述した第1のパターンと第2のパターンについて説明する。第2のパターンは、第1のパターンに沿った形状であることができる。上述したように、第1のパターン状に形成された犠牲層22の領域に金属層32を構成する金属粒が凝集するため、金属層32の膜厚が一定値以上である場合には、第2のパターンが第1のパターンの領域内に設けられ、金属層32の膜厚が一定値未満である場合には、第1のパターンが第2のパターンの領域内に設けられることになり、金属層32の膜厚が一定値の場合には、第1のパターンは第2のパターンと同一になる。金属層32の膜厚がどのような値であっても、第1のパターンと第2のパターンは、重複する領域を有する。したがって、所望のパターンに犠牲層22を形成することにより、当該所望のパターンの金属層34を形成することができる。
【0040】
以上の工程により、図15に示すように、素子基板100を製造することができる。本実施の形態にかかる素子基板100の製造方法によれば、金属層32の膜厚を調整することにより、第2のパターンの線幅aを制御することができるため、犠牲層22の精度に依存することなく、高精度なパターンの金属層34を形成することができる。また、本実施の形態によれば、ウェットプロセスのみで金属層を形成することができるため、製造装置を簡易化することができ、コスト削減を図ることができる。
【0041】
2.素子基板
素子基板100は、基板10と、当該基板10上に設けられた金属層34とを含む。
【0042】
金属層34は、第2のパターンを有する。第2のパターンは、たとえば1次元または2次元の周期的なパターンであることができる。素子基板100は、光透過性基板上に第2のパターンを有することにより、偏光板等の光学素子基板として機能することができる。たとえば、素子基板100は、一定の間隔と一定の幅の直線状の金属層が繰り返し設けられている1次元の周期的なパターン(ストライプ状)であることができる。周期方向における幅が可視光の波長以下であり、かつ樹脂基板114が光透過性基板からなる場合には、素子基板100は、偏光板として機能することができる。
【0043】
上述した製造方法を用いることにより、金属層34の線幅aは、10nm以上100nm以下であることができ、より好ましくは、10nm以上80nm以下であることができる。また金属層34の高さcは、たとえば60nm以上140nm以下であることができる。このような微細パターンの金属層34を形成することにより、かかる素子基板100を適用した電子デバイスを高集積化させ、また素子の小型化を実現することができる。また、偏光板としても良好に機能することができる。
【0044】
具体的には、金属層34の線幅aを20nm程度にする場合には、上述した金属層32の膜厚を10nm程度にすればよい。また、金属層34の線幅aは、間隔bより小さく、間隔bは、70nm以上140nm以下であることが好ましい。こうすることにより、互いに隣り合う金属層34を確実に断線させることができる。
【0045】
3.電子デバイス
図16は、本実施の形態にかかる素子基板の製造方法によって製造される素子基板100を適用した電子デバイスの一例を示す。基板10が絶縁基板である場合には、素子基板100は、配線基板として機能することができる。電子デバイス1000は、配線基板としての素子基板100と、集積回路チップ90と、他の基板92とを含む。
【0046】
素子基板100に形成された配線パターンは、電子部品同士を電気的に接続するためのものであってもよい。素子基板100は、上述した製造方法によって製造される。図16に示す例では、素子基板100には、集積回路チップ90が電気的に接続され、素子基板100の一方の端部は、他の基板92(例えば表示パネル)に電気的に接続されている。電子デバイス1000は、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、EL(Electro luminescence)ディスプレイ装置などの表示装置であってもよい。
【0047】
また、光学素子基板としての素子基板100は、液晶ディスプレイ装置、プロジェクター装置等の偏光板として機能してもよい。
【0048】
4.実験例
次に本実施の形態にかかる実験例について説明する。
【0049】
4.1.実験例1
本実施の形態にかかる素子基板の製造方法により素子基板を形成した。実験例1では、ガラス基板を白金無電解めっき液に15分程度浸漬することにより、白金層を形成した。製造工程は以下のとおりである。
【0050】
(1)ガラス基板上にフォトレジスト膜を形成し、その後直描方式により約140nmピッチで約70nm幅の直線状に露光、現像することにより、約70nm幅の直線状のラインと約70nm間隔を有するストライプ状のフォトレジストパターンを形成した。
【0051】
(2)このガラス基板を1cm角に切り出し、カチオン系界面活性剤溶液(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)に浸漬した。次いで、このガラス基板をパラジウム触媒溶液に浸漬し、触媒層を形成した。
【0052】
(3)次に、触媒層が形成されたガラス基板を、40℃の白金無電解めっき液に15分程度浸漬し、約30nm程度の厚みの白金層を触媒層の形成されている領域に形成した。白金無電解めっき液としては、市販の白金めっき液(大研化学工業社製)と還元剤液(大研化学工業社製)とを混合して、硫酸によりpH10程度に調整したものを用いた。
【0053】
(4)その後、室温の純水を用いて水洗した。
【0054】
(5)次に、RTAにて熱処理を行った。熱処理は、大気雰囲気中で行い、熱処理温度は、500℃、600℃、700℃、および800℃のいずれかとし、熱処理時間は、10分または30分とした。
【0055】
工程(5)を行う前の白金層のSEM画像を図17に示す。また熱処理時間を10分として工程(5)を行った後の白金層のSEM画像を図18〜図21に示す。図18は、熱処理温度を500℃としたものを示し、図19は、熱処理温度を600℃としたものを示し、図20は、熱処理温度を700℃としたものを示し、図21は、熱処理温度を800℃としたものを示す。さらに熱処理時間を30分とし、熱処理温度を600℃としたものを図22に示す。これらのSEM画像に基づいて、パターン精度を評価した結果を表1に示す。表1において、パターン精度が最も良好な場合を◎とし、良好な場合を○とし、不良な場合を×とした。
【0056】
【表1】

【0057】
図17によれば、フォトレジスト上に白金層が形成されていることが確認された。約70nm幅のフォトレジスト上に膜厚約30nmの白金層が形成されているため、白金層の間隔は、約10nm程度であった。なお、基板面からの白金層の高さは、150nm〜200nmであった。図18〜図20および図22によれば、白金層は、約70nm〜80nm幅(線幅a)の直線状のラインと約70nm間隔(間隔b)を有するストライプ状であって、高さは約100nm、アスペクト比は約1.4であった。
【0058】
図18〜図20および図22では、白金層の間隔bが約70nm程度に広がり、フォトレジストが除去され、白金粒子がフォトレジストの形成されていた領域に凝集し、それぞれのラインが隣のラインと断線していることが確認された。また、熱処理時間を30分にすることによって、熱処理時間を10分とした場合と比べてパターン精度が向上した。従って、熱処理時間は、10分以上とすることが好ましく、30分以上にすることがより好ましい。また、熱処理温度を800℃にした白金層については、良好なパターン精度の白金層を得ることができなかった。よって、白金層を形成する場合には、熱処理温度を800℃未満することが好ましい。
【0059】
4.2.実験例2
本実施の形態にかかる素子基板の製造方法により素子基板を形成した。実験例2では、ガラス基板を白金無電解めっき液に5分程度浸漬することにより、白金層を形成した。製造工程は以下のとおりである。
【0060】
(1)ガラス基板上にフォトレジスト膜を形成し、その後直描方式により約140nmピッチで約70nm幅の直線状に露光、現像することにより、約70nm幅の直線状のラインと約70nm間隔を有するストライプ状のフォトレジストパターンを形成した。
【0061】
(2)このガラス基板を1cm角に切り出し、カチオン系界面活性剤溶液(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)に浸漬した。次いで、このガラス基板をパラジウム触媒溶液に浸漬し、触媒層を形成した。
【0062】
(3)次に、触媒層が形成されたガラス基板を、40℃の白金無電解めっき液に5分程度浸漬し、約10nm程度の厚みの白金層を触媒層の形成されている領域に形成した。白金無電解めっき液としては、市販の白金めっき液(大研化学工業社製)と還元剤液(大研化学工業社製)とを混合して、硫酸によりpH10程度に調整したものを用いた。
【0063】
(4)その後、室温の純水を用いて水洗した。
【0064】
(5)次に、RTAにて熱処理を行った。熱処理は、大気雰囲気中で行い、熱処理温度は、600℃とし、熱処理時間は、10分とした。
【0065】
工程(5)を行う前の白金層のSEM画像を図23に示す。また工程(5)を行った後の白金層のSEM画像を図24および図25に示す。図24は、白金層の上面図であり、図25は、白金層の拡大断面図である。図23によれば、フォトレジスト上に白金層が形成されていることが確認された。また図24によれば、白金層は、約20nm〜30nm幅の直線状のラインと約110〜120nm間隔を有するストライプ状であって、高さは約70nm、アスペクト比は約2.9であった。図24および図25では、白金層の間隔が約110nm以上に広がり、フォトレジストが除去され、白金粒子がフォトレジストの形成されていた領域に凝集し、それぞれのラインが隣のラインと完全に断線していることが確認された。
【0066】
5.本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、さらなる種々の変形が可能である。また本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施の形態にかかる素子基板の製造方法を示す図。
【図2】本実施の形態にかかる素子基板の製造方法を示す図。
【図3】本実施の形態にかかる素子基板の製造方法を示す図。
【図4】本実施の形態にかかる素子基板の製造方法を示す図。
【図5】本実施の形態にかかる素子基板の製造方法を示す図。
【図6】本実施の形態にかかる素子基板の製造方法を示す図。
【図7】本実施の形態にかかる素子基板の製造方法を示す図。
【図8】本実施の形態にかかる素子基板の製造方法を示す図。
【図9】本実施の形態にかかる素子基板の製造方法を示す図。
【図10】本実施の形態にかかる素子基板の製造方法を示す図。
【図11】本実施の形態にかかる素子基板の製造方法を示す図。
【図12】本実施の形態にかかる素子基板の製造方法を示す図。
【図13】本実施の形態にかかる素子基板の製造方法を示す図。
【図14】本実施の形態にかかる素子基板の製造方法を示す図。
【図15】本実施の形態にかかる素子基板を模式的に示す断面図。
【図16】本実施の形態にかかる素子基板を適用した電子デバイスの一例を示す図。
【図17】実験例1にかかる素子基板の製造方法を示すSEM画像を示す図。
【図18】実験例1にかかる素子基板を示すSEM画像を示す図。
【図19】実験例1にかかる素子基板を示すSEM画像を示す図。
【図20】実験例1にかかる素子基板を示すSEM画像を示す図。
【図21】実験例1にかかる素子基板を示すSEM画像を示す図。
【図22】実験例1にかかる素子基板を示すSEM画像を示す図。
【図23】実験例2にかかる素子基板の製造方法を示すSEM画像を示す図。
【図24】実験例2にかかる素子基板を示すSEM画像を示す図。
【図25】実験例2にかかる素子基板を示すSEM画像を示す図。
【符号の説明】
【0068】
10 基板、12 ナノスタンパ、14 触媒吸着溶液、18 光源、20 光、22、22b 犠牲層、22a 樹脂材料、24 触媒吸着層、30 触媒溶液、31 触媒層、32、33、34 金属層、36 無電解めっき液、90 集積回路チップ、92 他の基板、100 素子基板、1000 電子デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解めっき法により形成された金属層を有する素子基板であって、
基板と、
前記基板上に形成された金属層と、
を含み、
前記金属層は、10nm以上100nm以下の線幅を有する、素子基板。
【請求項2】
請求項1において、
前記金属層は、基板上においてストライプ状のパターンを有する、素子基板。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記金属層は、10nm以上80nm以下の線幅を有する、素子基板。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記金属層の前記線幅と同一方向における間隔は、70nm以上140nm以下である、素子基板。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記金属層は、白金からなる、素子基板。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記線幅は、当該線幅と同一方向における間隔より小さい、素子基板。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記金属層のアスペクト比は、1〜3である、素子基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−177489(P2008−177489A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11653(P2007−11653)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】