紡績ユニット
【課題】巻取装置による紡績糸の綾振が糸欠点検出装置による欠点部の検出精度に影響を与える恐れがなく、更に、紡績糸に掛かる張力を適度に保つとともに、安定させることによって糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させるとした紡績ユニットを提供する。
【解決手段】繊維束Fを牽伸するドラフト装置5と、ドラフト装置5により牽伸された繊維束Fから紡績糸Yを製造する紡績装置6と、紡績装置6により製造された紡績糸Yの張力を安定させる張力安定装置8と、張力安定装置8から送り出された紡績糸Yをパッケージ91へと巻回する巻取装置9と、紡績糸Yの欠点部を検出可能とする糸欠点検出装置7と、を備える紡績ユニット1であって、糸欠点検出装置1は、紡績装置6と張力安定装置8との間に配置するとした。
【解決手段】繊維束Fを牽伸するドラフト装置5と、ドラフト装置5により牽伸された繊維束Fから紡績糸Yを製造する紡績装置6と、紡績装置6により製造された紡績糸Yの張力を安定させる張力安定装置8と、張力安定装置8から送り出された紡績糸Yをパッケージ91へと巻回する巻取装置9と、紡績糸Yの欠点部を検出可能とする糸欠点検出装置7と、を備える紡績ユニット1であって、糸欠点検出装置1は、紡績装置6と張力安定装置8との間に配置するとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績ユニットの技術に関する。より詳細には、紡績糸に生じた欠点部を高い精度で検出可能とする紡績ユニットの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、牽伸された繊維束を撚ることで紡績糸を製造し、この紡績糸を巻取装置によって巻回することでパッケージを作成するとした紡績ユニットが知られている。このような紡績ユニットには、紡績糸に生じた欠点部を検出可能とする糸欠点検出装置が備えられており、検出された欠点部を切断、除去することによって糸品質を整えるとしたものがあった(例えば特許文献1)。
【0003】
しかし、製造された紡績糸を送り出す糸送り装置が設けられ、該糸送り装置と巻取装置との間に糸欠点検出装置が配置された従来構成においては(例えば特許文献2)、巻取装置が紡績糸を綾振しながらパッケージへと巻回していくために紡績糸の糸道が変化することがある。その結果、糸欠点検出装置からの検出信号が不安定になることによって欠点部の検出が困難となる場合があった。
【0004】
また、上述した糸送り装置に加えて紡績糸の張力を安定させる張力安定装置が設けられ、該糸送り装置と張力安定装置との間に糸欠点検出装置が配置された従来構成においては(例えば特許文献3)、糸送り装置による紡績糸の送り出し速度に変動が生じることがあるために紡績糸に掛かる張力を高めておく必要があった。これにより、紡績糸に生じた欠点部の特徴が埋没することによって該欠点部の検出が困難となる場合があった。即ち、糸送り装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に常時、高い張力が掛かるため、毛羽の変化や結束不良のような欠点部については引張られることによって特徴が吸収されて検出することが困難となっていたのである。
【0005】
更に、パッケージと接するように配置された摩擦ローラを回転駆動することで該パッケージを従動回転させるとした従来構成においては(例えば特許文献4)、何らかの原因によって摩擦ローラの回転速度が変動したり、摩擦ローラとパッケージとの間に作用している摩擦力にバラツキが生じてパッケージの回転速度が変動したりすることがある。これにより、紡績糸に掛かる張力が急激に変化することとなり、紡績糸の切断や糸特性の変化を招く場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−303275号公報
【特許文献2】特開平11−268872号公報
【特許文献3】特開2009−155757号公報
【特許文献4】特開2004−169264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる問題を解決すべくなされたものであり、巻取装置による紡績糸の綾振が糸欠点検出装置による欠点部の検出精度に影響を与える恐れがなく、更に、紡績糸に掛かる張力を適度に保つとともに、安定させることによって糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させるとした紡績ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、この課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、第1の発明において、紡績ユニットは、ドラフト装置と、紡績装置と、張力安定装置と、巻取装置と、糸欠点検出装置と、を備える。ドラフト装置は、繊維束を牽伸する。紡績装置は、ドラフト装置により牽伸された繊維束から紡績糸を製造する。張力安定装置は、紡績装置により製造された紡績糸の張力を安定させる。巻取装置は、張力安定装置から送り出された紡績糸をパッケージへと巻回する。糸欠点検出装置は、紡績糸の欠点部を検出する。糸欠点検出装置は、紡績装置と張力安定装置との間に配置される。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、張力安定装置は、紡績糸を巻回するローラ部材と、ローラ部材に巻回された紡績糸を解舒する解舒部材と、を具備する。解舒部材は、紡績糸の解舒速度を適宜に調節することで紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力を安定させる。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、解舒部材は、張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が所定の値よりも高いときには紡績糸の解舒速度を増速させる。張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が所定の値以下であるときには解舒部材は紡績糸の解舒速度を減速させる。
【0012】
第4の発明は、第2又は第3の発明のいずれかにおいて、張力安定装置は、ローラ部材を回転させる動力部を具備する。動力部は、紡績糸の巻回速度を所定の値に維持することで紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力を安定させる。
【0013】
第5の発明は、第2から第4の発明のいずれかにおいて、張力安定装置は、紡績糸の巻回速度に対して解舒速度を適宜に調節することで紡績糸を一時的に貯溜する。
【0014】
第6の発明は、第1から第5の発明のいずれかにおいて、糸欠点検出装置は、紡績装置により製造された直後の紡績糸から欠点部を検出する。
【0015】
第7の発明は、第1から第6の発明のいずれかにおいて、糸欠点検出装置は、紡績装置による紡績テンションの下で欠点部を検出する。
【0016】
第8の発明は、第1から第7の発明のいずれかにおいて、糸欠点検出装置は、紡績糸に掛かる張力が張力安定装置によってのみ生じる位置に配置する。
【0017】
第9の発明は、第1から第8の発明のいずれかにおいて、紡績装置は、ドラフト装置により牽伸された繊維束を旋回気流によって撚ることで紡績糸を製造する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
第1の発明によれば、巻取装置が紡績糸を綾振しながらパッケージへと巻回しても糸欠点検出装置における紡績糸の糸道は変化することがないため、紡績糸に生じた欠点部の検出を安定して行なうことが可能となる。また、紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力を適度に保つとともに、安定させることができるため、紡績糸に生じた欠点部の特徴が埋没することを防止できる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【0020】
第2の発明によれば、張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が変動した場合であっても、紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力に対して影響を及ぼすことを防止できる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【0021】
第3の発明によれば、張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が増加した場合であっても、紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力に対して影響を及ぼすことを防止できる。また、張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が減少した場合であっても、紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力に対して影響を及ぼすことを防止できる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【0022】
第4の発明によれば、ローラ部材への紡績糸の巻回速度を一定に保つことができるため、紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力を適度に保つとともに、安定させることが可能となる。また、ローラ部材に紡績糸が複数回にわたって巻回されるため、ローラ部材と紡績糸の接触長を確保でき、該紡績糸のスリップを防ぐことが可能となる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【0023】
第5の発明によれば、張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が増加した場合であっても、ローラ部材に巻回されて貯溜されている紡績糸を送り出すことで紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力に対して影響を及ぼすことを防止できる。また、張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が減少した場合であっても、ローラ部材に紡績糸を巻回して貯溜することで紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力に対して影響を及ぼすことを防止できる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【0024】
第6の発明によれば、紡績装置によって製造された紡績糸について他の部材との接触等の影響を受ける前に欠点部の検出を行なうことができる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【0025】
第7の発明によれば、糸欠点検出装置は、紡績装置の紡績状態を適切に検出することができる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【0026】
第8の発明によれば、糸欠点検出装置における紡績糸に掛かる張力を適度に保つとともに、安定させることができるため、紡績糸に生じた欠点部の特徴が埋没することを防止できる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【0027】
第9の発明によれば、紡績装置からの紡績糸の送り出しが安定し、糸欠点検出装置における紡績糸に掛かる張力を適度に保つとともに、安定させることができるため、紡績糸に生じた欠点部の特徴が埋没することを防止できる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】紡績ユニット1を複数備えた紡績機100を示す図。
【図2】紡績ユニット1の全体構成を示す図。
【図3】紡績ユニット1に設けられる紡績装置6を示す図。
【図4】紡績ユニット1に設けられる糸欠点検出装置7を示す図。
【図5】紡績ユニット1に設けられる張力安定装置8を示す図。
【図6】糸継装置12の全体構成を示す概略図。
【図7】従来の第一紡績ユニット2の全体構成を示す図。
【図8】(8A)外乱を排除した糸欠点検出装置7の検出信号を示す図。(8B)従来の第一紡績ユニット2を構成する糸欠点検出装置7の検出信号を示す図。
【図9】従来の第二紡績ユニット3の全体構成を示す図。
【図10】(10A)外乱を排除した糸欠点検出装置7の検出信号を示す図。(10B)従来の第二紡績ユニット3を構成する糸欠点検出装置7の検出信号を示す図。
【図11】紡績ユニット1を構成する糸欠点検出装置7の検出信号を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1を用いて本発明の実施形態に係る紡績ユニット1を複数備えた紡績機100について説明する。
【0030】
紡績機100には、繊維束(以降「スライバ」という。)Fから紡績糸Yを製造する複数の紡績ユニット1が並設されており、糸継台車11や駆動装置、その他これらの動作を制御する制御装置などが備えられている。
【0031】
このような紡績機100において紡績糸Yの品質向上を図るには、一の紡績ユニット1にて製造された紡績糸Yが安定して一定の品質を確保できることが求められる。各紡績ユニット1にて製造されたそれぞれの紡績糸Yが平均して一定の品質を確保できることが求められる。
【0032】
このため、本紡績機100は、一の紡績ユニット1にて製造された紡績糸Yの糸太さの標準偏差が、所定の基準を満たすことを確認するとともに、各紡績ユニット1にて製造されたそれぞれの紡績糸Yの平均した糸太さの標準偏差が、所定の基準を満たすことを確認するものとしている。糸太さの標準偏差であるSD値は以下で表される。
【0033】
【数1】
【0034】
なお、式中のMは紡績糸Yの糸太さの平均値であり、以下で表される。
【0035】
【数2】
【0036】
このような式によって紡績糸Yの品質を確認し、欠点部を排除したパッケージ91を作成するには、紡績糸Yの糸太さの測定が正確であることが必要とされる。従って、紡績糸Yの糸太さを測定することで欠点部を検出する糸欠点検出装置7の検出精度が重要となるのである。
【0037】
なお、紡績糸Yの欠点部とは紡績糸Yの糸太さの異常部分をいう。例えば紡績糸Yの目標値となる番手に対して所定の割合以上となった部分を太糸部D1、紡績糸Yの目標値となる番手に対して所定の割合以下となった部分を細糸部D2と定義する。
【0038】
まず、図2、図3、図4、図5を用いて本発明の実施形態に係る紡績ユニット1の全体構成について説明する。
【0039】
紡績ユニット1において、スライバFならびに紡績糸Yの送り方向に沿って、スライバ供給ユニット4と、ドラフト装置5と、紡績装置6と、糸欠点検出装置7と、張力安定装置8と、巻取装置9がこの順序で配置されている。スライバ供給ユニット4は、主に貯溜されたスライバFを供給する。ドラフト装置5は、スライバFを牽伸することによって太さを均一にする。紡績装置6は、スライバFを撚ることで紡績糸Yを製造する。糸欠点検出装置7は、紡績糸Yの糸太さを測定して欠点部を検出する。張力安定装置8は、紡績糸Yに掛かる張力を安定させる。巻取装置9は、紡績糸Yを綾振しながらパッケージ91に巻回する。
【0040】
スライバ供給ユニット4は、紡績糸Yの原料となるスライバFを貯留するスライバケース41と、スライバFをドラフト装置5へ案内する図示しないスライバガイドと、から構成される。
【0041】
ドラフト装置5は、スライバFを牽伸して送り出すドラフトローラ対を複数備えたものである。本紡績ユニット1においては4組のドラフトローラ対を備えており、スライバFの送り方向に沿ってバックローラ対51と、サードローラ対52と、ミドルローラ対53と、フロントローラ対54と、が配置されている。
【0042】
前記4組のドラフトローラ対51・52・53・54は、図示しない駆動源により回転するボトムローラ51A・52A・53A・54Aと、該ボトムローラ51A・52A・53A・54Aと接触するように配置されて従動回転するトップローラ51B・52B・53B・54Bと、で構成される。また、各ドラフトローラ対51・52・53・54を構成するボトムローラ51A・52A・53A・54Aは、それぞれ同じ方向に回転され、従動回転するトップローラ51B・52B・53B・54Bも他のトップローラと同じ方向に回転するものとされる。
【0043】
これにより、ボトムローラ51A・52A・53A・54Aとトップローラ51B・52B・53B・54Bに挟持されたスライバFは、ドラフトローラ対51・52・53・54の回転に従って送り出されることとなる。また、各ドラフトローラ対51・52・53・54は、スライバFの送り方向に沿って順次、回転速度が速くなるように設定されている。
【0044】
このような構成により、スライバFは、各ドラフトローラ対51・52・53・54を通過するごとにその速度を増していき、隣接するドラフトローラ対との間で牽伸されることとなるのである。
【0045】
紡績装置6は、ドラフト装置5により牽伸されたスライバFを旋回気流によって撚ることで紡績糸Yを製造する空気紡績装置である。図3に示すように、紡績装置6は、主にドラフト装置5により牽伸されたスライバFが供給されるガイド部材61と、該ガイド部材61との間に紡績室62を構成するスピンドル部材63と、該スピンドル部材63との間に所定の隙間を設けて外嵌されるノズル部材64と、から構成される。なお、図中に示す矢印は、スライバFならびに紡績糸Yの送り方向と供給された空気の流れ方向とを示している。
【0046】
ガイド部材61は、紡績室62の一部を構成する部材であって、ドラフト装置5により牽伸されたスライバFを該紡績室62へ導くものである。図3では、ニードル状の部材がガイド部材61に設けられているが、ニードル状の部材を設けずにガイド部材61の下流側端部により、その機能を実現するようにしても良い。
【0047】
紡績室62は、ガイド部材61とスピンドル部材63との間に設けられた略円筒状の空間62aと、スピンドル部材63とノズル部材64との隙間に設けられた略円環状の空間62bと、から構成される空間である。紡績室62を構成する略円筒状の空間62aは、スライバFを構成する各繊維の一部を反転(二点鎖線参照。)させる空間であり、紡績室62を構成する略円環状の空間62bは、反転した繊維を空気の流れに沿って旋回(二点鎖線参照。)させる空間である。
【0048】
スピンドル部材63は、紡績室62の一部を構成する部材であって、該紡績室62において撚られてなる紡績糸Yを送り出すものである。スピンドル部材63には、紡績室62に連通するように糸通路63aが設けられており、該糸通路63aから紡績糸Yが送り出されることとなる。
【0049】
ノズル部材64は、紡績室62の一部を構成する部材であって、該紡績室62の内部に旋回気流を発生させるものである。ノズル部材64には、紡績室62に連通するように複数の空気噴射孔64aが設けられており、該空気噴射孔64aを介して空気が噴射されることによって紡績室62の内部に旋回気流が発生する。
【0050】
このような構成により、スライバFを構成する各繊維の一部を旋回気流によって反転、旋回(二点鎖線参照。)させることができ、こうして撚られてなる紡績糸Yが紡績装置6から送り出されるのである。そして、機械的な構成でスライバFを撚るのではなく、空気の気流によってスライバFを撚るために紡績糸Yの送り出しが安定し、送り出された紡績糸Yに掛かる張力を適度に保つとともに、安定させることが可能となる。即ち、紡績装置6は、スライバFを機械的に把持せずに空気流と繊維との抵抗によって紡績糸に張力を生じるため、いわゆる紡績テンションが安定して一定に維持されるのである。
【0051】
糸欠点検出装置7は、光源部71と、受光部72と、ケーシング部材73と、ガイド部材74と(図2参照。)、から構成される。光源部71は、紡績糸Yに光を照射する。受光部72は、光源部71から照射された光を受光する。ケーシング部材73は、光源部71ならびに受光部72を保持する。ガイド部材74は、紡績糸Yの糸道を規制する。なお、図中に示す矢印は、光源部71から照射された光の方向を示している。
【0052】
光源部71は、順方向に電圧を印加することによって発光する発光ダイオードである。発光ダイオードは、エレクトロルミネセンス効果によって発光する半導体素子であり、紡績糸Yに光を照射できるように配置されている。
【0053】
受光部72は、光信号によって電流の制御を可能とするフォトトランジスタである。フォトトランジスタは、受光量によってトランジスタのコレクタ電流を制御可能とする半導体素子である。受光部72は、光源部71によって照射された光を受光できるように配置されている。受光部72は、受光した光量に対応する電気信号を検出信号として出力する。
【0054】
ケーシング部材73は、光源部71ならびに受光部72を所定の位置に保持する部材である。ケーシング部材73には、紡績糸Yが通過する糸通路73aが設けられており、紡績糸Yを挟んで対向するように光源部71ならびに受光部72が配置されることとなる。
【0055】
ガイド部材74は、紡績糸Yの糸道を所定の位置に規制する糸掛け部材である。ガイド部材74は、ケーシング部材73の上流側と下流側にそれぞれ設けられており、糸欠点検出装置7における糸道の安定化を図っている(図2参照。)。
【0056】
このような構成により、受光部72が受光する光量は、光源部71から紡績糸Yへ照射された光のうち該紡績糸Yによって遮光された光量を除く値となる。これにより、糸欠点検出装置7は、受光部72が受光した光量から紡績糸Yの糸太さを測定することができる。更に糸欠点検出装置7は、糸太さに応じて変化する受光量を測定することによって紡績糸Yの欠点部を検出することができる。
【0057】
張力安定装置8は、紡績糸Yに掛かる張力を適度に保つとともに、安定させるものである。図5に示すように、張力安定装置8は、主に紡績糸Yを巻回するローラ部材81と、該ローラ部材81を回転させる動力部82と、ローラ部材81に巻回された紡績糸Yを解舒する解舒部材83と、から構成される。なお、図中に示す矢印は、紡績糸Yの送り方向を示している。
【0058】
ローラ部材81は、回転することによって紡績糸Yを巻回する略円筒形状の回転体である。ローラ部材81は、動力部82の回転軸82aに取り付けられており、該動力部82によって回転駆動される。そして、張力安定装置8に導かれた紡績糸Y、即ち、ローラ部材81に導かれた紡績糸Yは、該ローラ部材81の外周面に巻回されていくのである。これにより、ローラ部材81に複数回にわたって巻回された紡績糸Yは、該ローラ部材81との接触長が長く確保されてスリップの発生を防ぐことができるのである。
【0059】
ローラ部材81について更に詳細に説明すると、ローラ部材81の外周面は、解舒部材83を有する側を先端側、動力部82が配置されている側を基端側とすると、基端側から先端側に向かって順に基端側テーパ部と、円筒部と、先端側テーパ部と、を備えている。
【0060】
円筒部は、先端側が僅かに狭まる形状に構成されるとともに、両側のテーパ部に対して段差無く連続する形状になっている。ローラ部材81により紡績糸Yの十分な搬送力を得るためには、ローラ部材81の外周面に少なくとも10周以上は紡績糸Yが重なることなく巻き付いていることが好ましい。このため、ローラ部材81は、紡績糸Yを少なくとも10周以上は貯溜することができるような寸法に形成されている。また、図示しない糸貯溜センサがこのローラ部材81に対向するように備えられており、ローラ部材81に巻き付いている紡績糸Yの貯溜量を検知して、図示しないユニットコントローラに送信される。
【0061】
基端側テーパ部及び先端側テーパ部は、それぞれ端面側を大径側とする緩やかなテーパ状に形成されている。ローラ部材81の外周面において、基端側テーパ部は、供給された紡績糸Yを大径部分から小径部分に向かって円滑に移動させて中間の円筒部へ到達させることにより、紡績糸Yを円筒部の表面に整然と巻き付かせている。また、先端側テーパ部は、解舒の際に巻き付いている紡績糸Yが一度に抜けてしまう輪抜け現象を防止する機能を有している。更に先端側テーパ部は、紡績糸Yを小径部分から端面側の大径部分へ順送りに巻き戻して、紡績糸Yの円滑な引き出しを確保する機能を有している。
【0062】
動力部82は、電力を供給されることによって駆動する電動モータである。動力部82は、ローラ部材81を回転駆動させるとともに、ローラ部材81の回転速度を所定の値で一定に維持するものとしている。これにより、ローラ部材81への紡績糸Yの巻回速度を一定に保つことができるのである。
【0063】
解舒部材83は、ローラ部材81と一体又は独立して回転することで巻回された紡績糸Yの解舒を補助する糸掛け部材である。解舒部材83は、その一端部がローラ部材81の中心軸上に設けられた回転軸84に取り付けられており、その他端部がローラ部材81の外周面に向かって湾曲するように形成されている。そして、解舒部材83は、この湾曲した部位に紡績糸Yを掛けることで該紡績糸Yをローラ部材81の外周面に案内することを可能としている。解舒部材83が取り付けられた回転軸84の基部は、該回転軸84又はローラ部材81のいずれか一方に取り付けられた永久磁石と他方に取り付けられた磁気ヒステリシス材とによって相対回転に抗する抵抗トルクが発生するように構成されている。なお、解舒部材83とローラ部材81との間に抵抗トルクを加える方法は、このような磁気的機構に限らず、例えば摩擦力でも良く電磁的な機構でも良い。
【0064】
これにより、解舒部材83は、張力安定装置8から送り出された紡績糸Y、即ち、ローラ部材81から解舒された紡績糸Yに掛かる張力が低く、上述した抵抗トルクに打ち負ける場合にはローラ部材81と一体となって回転する。そして、解舒部材83は、該解舒部材83に掛けられている紡績糸Yをローラ部材81に巻き付けていくのである。このように、張力安定装置8は、ローラ部材81から紡績糸Yを解舒させつつ、解舒部材83を用いて紡績糸Yを巻き付ける動作を行なうため、解舒速度を減速させることができるのである。
【0065】
一方、解舒部材83は、張力安定装置8から送り出された紡績糸Y、即ち、ローラ部材81から解舒された紡績糸Yに掛かる張力が高く、上述した抵抗トルクに打ち勝つ場合にはローラ部材81から独立して回転する。そして、解舒部材83は、該解舒部材83によってローラ部材81に巻回されている紡績糸Yを解いていくのである。このように、張力安定装置8は、ローラ部材81から紡績糸Yを解舒させつつ、解舒部材83を用いて紡績糸Yを解いていく動作を行なうため、解舒速度を増速させることができるのである。
【0066】
また、張力安定装置8は、ローラ部材81への紡績糸Yの巻回速度に対して、上述のように解舒速度を調節することができるため、紡績糸Yをローラ部材81の外周面に巻回した状態で一時的に貯溜することができる。
【0067】
これにより、張力安定装置8から送り出された紡績糸Y、即ち、ローラ部材81から解舒された紡績糸Yに掛かる張力が増加したときには、ローラ部材81に巻回されて貯溜されている紡績糸Yを送り出すことができる。また、張力安定装置8から送り出された紡績糸Y、即ち、ローラ部材81から解舒された紡績糸Yに掛かる張力が減少したときには、ローラ部材81に紡績糸Yを巻回して貯溜することができるのである。
【0068】
このような構成により、張力安定装置8から送り出された紡績糸Y、即ち、ローラ部材81から解舒された紡績糸Yに掛かる張力が変動した場合であっても、紡績装置6から張力安定装置8へ架けられた紡績糸Yに掛かる張力に対して影響を及ぼすことを防止できるのである。
【0069】
巻取装置9は、紡績糸Yをボビン92の軸方向に綾振しながら巻回することで略円筒形状のパッケージ91を形成するものである。パッケージ91あるいはボビン92は、摩擦ローラ93の駆動力を受けて従動回転することにより、紡績糸Yをその外周面に巻き取っていくものとしている。
【0070】
このように、紡績ユニット1は、原料となるスライバFを牽伸することによって太さを均一とし、牽伸されたスライバFを撚ることで紡績糸Yを製造するとしている。そして、紡績ユニット1は、このようにして製造された紡績糸Yを巻き取ることによってパッケージ91を作成するのである。
【0071】
以上のように本紡績ユニット1は、張力安定装置8が糸欠点検出装置7の下流側に配置されることで、巻取装置9が紡績糸Yを綾振しながら巻回しても紡績糸Yの糸道の変化を吸収することが可能となる。また、例えば巻取装置9を構成する摩擦ローラ93がその回転速度を変動させた場合であっても、紡績糸Yに掛かる張力の変化を吸収することが可能となる。こうして、紡績装置6から張力安定装置8へ架けられた紡績糸Yの糸道を安定させることができ、紡績糸Yに掛かる張力を適度に保つとともに、安定させることが可能となるのである。これにより、本紡績ユニット1は、糸欠点検出装置7による欠点部の検出精度を向上させることができるのである。
【0072】
ここで、糸欠点検出装置7による欠点部の検出精度が向上することによって紡績糸Yの品質を向上させることができる理由について説明する。
【0073】
上述したように、糸欠点検出装置7は、糸太さに応じて変化する受光量を測定することによって紡績糸Yの欠点部を検出可能とするものである。糸欠点検出装置7には、図示しない切断装置が備えられており、欠点部を検出した際に直ちに紡績糸Yを切断する。その後、切断された紡績糸Yは、欠点部を切断、除去された後に糸継装置12によって継ぎ合わされ、再び一本の紡績糸Yとして巻回されていくのである。
【0074】
つまり、糸欠点検出装置7が紡績糸Yの欠点部を見逃した場合は、欠点部を含んだ紡績糸Yによってパッケージ91が作成されることとなり、糸欠点検出装置7が欠点部でない部分を欠点部であると誤判定した場合は、本来不要であった切断と継ぎ合わせが行なわれることとなる。このため、糸欠点検出装置7による欠点部の検出精度の向上が紡績糸Yの品質向上にとって重要となるのである。また、糸欠点検出装置7による欠点部の検出精度の向上が紡績糸Yの生産性向上にとっても重要となるのである。
【0075】
糸欠点検出装置7が欠点部を検出した際の紡績ユニット1の動作について説明する。図示しないユニットコントローラは、糸欠点検出装置7から糸欠点検出信号を受信すると、糸欠点検出装置7の直上流側に設けられた図示しない切断装置で紡績糸Yを直ちに切断し、更にドラフト装置5と紡績装置6等を停止させる。また、ユニットコントローラは、糸継台車11に制御信号を送信し、紡績糸Yが切断された紡績ユニット1まで走行させる。その後、ユニットコントローラは、紡績装置6等を再び起動し、糸継台車11の糸継装置12により糸継作業を行なわせる。糸継作業完了後、ユニットコントローラは、紡績ユニット1における巻取作業を再開させる。
【0076】
糸継台車11は、糸継装置12と、サクションパイプ13と、サクションマウス14と、を備えている(図1参照。)。糸継台車11は、ある紡績ユニット1で糸切れや糸切断が発生すると、紡績機100の下部に設けられた図示しないレール上を当該紡績ユニット1まで走行し、停止する。サクションパイプ13は、軸を中心に上下方向に回動しながら紡績装置6から送り出される糸端を吸い込みつつ捕捉して糸継装置12へ案内する。サクションマウス14は、軸を中心に上下方向に回動しながら巻取装置9に支持されたパッケージ91から糸端を吸引しつつ捕捉して糸継装置12へ案内する。糸継装置12は、このように案内された糸端同士の糸継作業を行なう。
【0077】
以下に、図6を用いて糸継装置12の全体構成について説明する。なお、図中に示す矢印は、糸継装置12を構成する各部材の可動方向を示している。
【0078】
糸継装置12は、主に張力安定装置8側の糸端YT(図中一点鎖線参照。)の解撚を行なう第一解撚ノズル121と、巻取装置9側の糸端YW(図中実線参照。)の解撚を行なう第二解撚ノズル122と、解撚されてほぐされた両糸端YT・YWを絡み合わせて継ぎ合わせる糸継ノズル123と、両糸端YT・YWをそれぞれの所定の位置に配置する一対の糸寄せレバー124と、張力安定装置8側の糸端YTの切断を行なう第一糸端カッター125aならびに巻取装置9側の糸端YWの切断を行なう第二糸端カッター125bと、両糸端YT・YWを継ぎ合わせる際に固定する一対の糸押さえレバー127と、から構成される。
【0079】
第一解撚ノズル121は、張力安定装置8側の糸端YTを吸い込んで解撚を行なうものである。第一解撚ノズル121は、第一吸引口121aを露出させた第一解撚パイプ121bを備え、該第一解撚パイプ121bは、その内部に解撚用エアを噴射する解撚用エア通路221と連通されている。解撚用エア流路221は、第一解撚パイプ121bの第一吸引口121a付近に該第一解撚パイプ121bの軸方向に傾けて連通されている。これにより、第一解撚ノズル121は、解撚用エア通路221から噴射された解撚用エアによって糸端YTを第一吸引口121aから吸い込むとともに、第一解撚パイプ121b内に形成された螺旋流によって繊維を解撚するのである。
【0080】
第二解撚ノズル122は、巻取装置9側の糸端YWを吸い込んで解撚を行なうものである。第二解撚ノズル122は、第二吸引口122aを露出させた第二解撚パイプ122bを備え、該第二解撚パイプ122bは、その内部に解撚用エアを噴射する解撚用エア通路222と連通されている。解撚用エア流路222は、第二解撚パイプ122bの第二吸引口122a付近に該第二解撚パイプ122bの軸方向に傾けて連通されている。これにより、第二解撚ノズル122は、解撚用エア通路222から噴射された解撚用エアによって糸端YWを第二吸引口122aから吸い込むとともに、第二解撚パイプ122b内に形成された螺旋流によって繊維を解撚するのである。
【0081】
糸継ノズル123は、解撚されてほぐされた張力安定装置8側の糸端YTと解撚されてほぐされた巻取装置9側の糸端YWとを絡み合わせて継ぎ合わせるものである。糸継ノズル123には、張力安定装置8側の糸端YTと巻取装置9側の糸端YWとを収容する収容部123aと両糸端YT・YWを収容部123aに案内するガイド傾斜部123bが形成されている。また、糸継ノズル123は、その内部に糸継用エアを噴射する糸継用エア通路223と連通されている。これにより、糸継ノズル123は、糸継用エア通路223から噴射された糸継用エアによって収容部123a内に旋回流を形成し、解撚されてほぐされた両糸端YT・YWを絡み合わせて継ぎ合わせるのである。
【0082】
糸寄せレバー124は、張力安定装置8側の糸端YTと巻取装置9側の糸端YWをそれぞれの所定の位置に配置するものである。糸寄せレバー124は、糸継ノズル123を挟むように対向して配置されており、それぞれ図示しない駆動装置によって移動される。そして、解撚動作前においては、糸寄せレバー124が移動することによって両糸端YT・YWの先端を糸継ノズル123の所定の位置に寄せる。また、解撚動作後においては、糸寄せレバー124が更に適当な位置まで移動することによって両糸端YT・YWの解撚部を収容部123a内の所定の位置に配置するのである。
【0083】
第一糸端カッター125aは、張力安定装置8側の糸端YTを解撚する前に該糸端YTを切断して適切な長さにするものである。また、第二糸端カッター125bは、巻取装置9側の糸端YWを解撚する前に該糸端YWを切断して適切な長さにするものである。そして、第一糸端カッター125aによって切断された糸端YTは、第一クランププレート126aによって固定され、第二糸端カッター125bによって切断された糸端YWは、第二クランププレート126bによって固定される。
【0084】
糸押さえレバー127は、糸寄せレバー124によって両糸端YT・YWの解撚部が収容部123a内の所定の位置に配置をされた後に、両糸端YT・YWを固定するものである。糸押さえレバー127は、図示しない駆動装置によって糸継ノズル123の両側面を沿うようにして移動する。そして、糸押さえレバー127は、該糸押さえレバー127と糸継ノズル123との間で挟持するようにして両糸端YT・YWを固定する。その後、上述したように、糸継ノズル123の内部に糸継用エアが噴射され、両糸端YT・YWを絡み合わせて継ぎ合わせるのである。
【0085】
なお、本実施形態において糸継装置12は、糸継台車11に設けられているが、各紡績ユニット1に糸継装置12を設ける構成としても良い。また、糸継装置12は、紡績装置6側の糸端と巻取装置9側の糸端を継げるものであれば良く、上記のような構成に限定されるものではない。
【0086】
以上が本発明の実施形態に係る紡績ユニット1ならびに糸継装置12の全体構成である。次に、本紡績ユニット1における糸欠点検出装置7の検出精度の優位性を示すため、従来の第一紡績ユニット2ならびに従来の第二紡績ユニット3について説明する。但し、上述した紡績ユニット1と同様の構成については同じ符号を付し、異なる部分を中心に説明する。
【0087】
図7は、従来の第一紡績ユニット2の全体構成を示す図である。第一紡績ユニット2において、スライバFならびに紡績糸Yの送り方向に沿って、スライバ供給ユニット4と、ドラフト装置5と、紡績装置6と、糸送り装置10と、糸欠点検出装置7と、巻取装置9がこの順序で配置されている。スライバ供給ユニット4は、主に貯溜されたスライバFを供給する。ドラフト装置5は、スライバFを牽伸することによって太さを均一にする。紡績装置6は、スライバFを撚ることで紡績糸Yを製造する。糸送り装置10は、製造された紡績糸Yを送り出す。糸欠点検出装置7は、紡績糸Yの糸太さを測定して欠点部を検出する。巻取装置9は、紡績糸Yを綾振しながらパッケージ91に巻回する。
【0088】
糸送り装置10は、紡績装置6により製造された紡績糸Yを巻取装置9へ送り出すものである。糸送り装置10は、デリベリローラ101ならびにニップローラ102などから構成されている。デリベリローラ101とニップローラ102によって挟持された紡績糸Yは、デリベリローラ101とニップローラ102の回転に従って送り出される。
【0089】
また、従来の第一紡績ユニット2には、本発明の実施形態に係る紡績ユニット1と異なる部分として張力安定装置8が備えられず、糸欠点検出装置7が糸送り装置10と巻取装置9との間に配置されている。これにより、糸欠点検出装置7は、糸送り装置10から送り出された紡績糸Yが巻取装置9に至るまでに欠点部の検出を行なうものとしている。
【0090】
しかし、巻取装置9によって紡績糸Yをパッケージ91へ巻回する際には、該紡績糸Yを綾振しながら巻回する必要がある。上記のような従来構成においては、糸欠点検出装置7による欠点部の検出精度に影響を及ぼす場合があった。
【0091】
具体的には、巻取装置9は、紡績糸Yをボビン92の軸方向に綾振しながらパッケージ91へ巻き取るために糸欠点検出装置7における紡績糸Yの糸道を変化させることがある。その結果、紡績糸Yの糸道が変化することに起因した検出信号の不安定化によって欠点部の検出が困難となる場合があった。
【0092】
また、従来の第一紡績ユニット2の巻取装置9は、摩擦ローラ93を回転駆動することでパッケージ91を従動回転させている。そのため、例えば摩擦ローラ93の回転速度が変動した場合に紡績糸Yに掛かる張力を変化させることがある。その結果、紡績糸Yの張力が変化することに起因した糸欠点検出装置7の検出信号の不安定化によって欠点部の検出が困難となる場合があった。
【0093】
ここで、紡績糸Yの糸道ならびに張力が変化することに起因した糸欠点検出装置7の検出信号の不安定化によって欠点部の検出が困難となる問題点について図8を用いて詳細に説明する。
【0094】
図8Aは、外乱を排除した糸欠点検出装置7を用いた場合の検出信号を示す図であり、図8Bは、本紡績ユニット2を構成する糸欠点検出装置7の検出信号を示す図である。なお、外乱を排除したとは、巻取装置9による紡績糸Yの綾振など、糸欠点検出装置7の検出精度に影響を及ぼす全ての外乱を排除した状態を意味する。
【0095】
図8A、図8Bの横軸は、所定の時刻からの時間経過を示している。即ち、糸欠点検出装置7を通過する紡績糸Yの長さ方向における任意の位置を示したものである。また、図8A、図8Bの縦軸は、糸欠点検出装置7を構成する受光部72からの検出信号である電圧値を示している。即ち、糸欠点検出装置7により検出された紡績糸Yの糸太さを示したものである。なお、図中に示した電圧値VAは平均糸太さ、電圧値VA−hは許容上限糸太さ、電圧値VA−lは許容下限糸太さに対応している。
【0096】
つまり、図8Aならびに図8Bは、糸欠点検出装置7を通過する紡績糸Yの長さ方向において、所定の間隔ごとに測定された紡績糸Yの糸太さを結んでなる糸太さの変化を示す図である。そして、紡績糸Yの糸太さが許容上限糸太さを越えた部分では太糸部D1が存在することを示し、許容下限糸太さを越えた部分では細糸部D2が存在することを示している。
【0097】
図8Aは、全ての外乱を排除した状態で測定された糸太さの変化を示すものであるため、誤差のない紡績糸Yの糸太さを捉えたものと仮定することができる。図8Aより、紡績糸Yの位置L1に許容上限糸太さを越えた部分である太糸部D1が存在し、紡績糸Yの位置L2に許容下限糸太さを越えた部分である細糸部D2が存在していることがわかる。
【0098】
一方、図8Bは、本紡績ユニット2を構成する糸欠点検出装置7によって測定された糸太さの変化を示すものである。このため、図8Bにおいては、糸欠点検出装置7における紡績糸Yの糸道の変化や張力の変化に起因した比較的大きな検出信号の変動が含まれる。これは、紡績糸Yの糸道や張力が変化したことによって受光部72の受光量が変化したことが原因であり、実際に図8Bに示すような糸太さの変化が生じているわけではない。
【0099】
従って、図8Bより、紡績糸Yの位置L1においては、許容上限糸太さを越えているために太糸部D1が存在すると判定されるが、紡績糸Yの位置L2においては、許容下限糸太さを越えていないために細糸部D2が存在すると判定されず、真の欠点部の検出信号が見逃されることとなる。
【0100】
これは、紡績糸Yの位置L2において糸欠点検出装置7における糸道が変化したこと、又は紡績糸Yの張力が変化したことにより、細糸部D2の実際の糸太さよりも太いとする検出信号が糸欠点検出装置7から出力されたことによる。これにより、紡績糸Yの位置L2に存在する細糸部D2は、許容下限糸太さを越えていないと誤判定されるのである。
【0101】
このように、従来の第一紡績ユニット2においては、巻取装置9が紡績糸Yを綾振しながらパッケージ91へと巻回するために糸欠点検出装置7における紡績糸Yの糸道が変化する。また、例えば巻取装置9を構成する摩擦ローラ93の回転速度が変動したときに糸欠点検出装置7における紡績糸Yの張力が変化することがある。そのため、これらに起因した糸欠点検出装置7の検出信号の不安定化によって紡績糸Yに生じた欠点部の検出が困難となる場合があった。
【0102】
更に、紡績機100において各紡績ユニット2を構成するそれぞれの糸送り装置10に相互差が生じた場合には、糸送り装置10から巻取装置9へ架けられた紡績糸Yに掛かる張力が同様とならないことがある。その結果、第一紡績ユニット2の相互にバラツキを生じることとなるため、紡績糸Yの品質を一定にすることが困難となる場合もあった。
【0103】
図9は、従来の第二紡績ユニット3の全体構成を示す図である。第二紡績ユニット3において、スライバFならびに紡績糸Yの送り方向に沿って、スライバ供給ユニット4と、ドラフト装置5と、紡績装置6と、糸送り装置10と、糸欠点検出装置7と、張力安定装置8と、巻取装置9がこの順序で配置されている。スライバ供給ユニット4は、主に貯溜されたスライバFを供給する。ドラフト装置5は、スライバFを牽伸することによって太さを均一にする。紡績装置6は、スライバFを撚ることで紡績糸Yを製造する。糸送り装置10は、製造された紡績糸Yを送り出す。糸欠点検出装置7は、紡績糸Yの糸太さを測定して欠点部を検出する。張力安定装置8は、紡績糸Yに掛かる張力を安定させる。巻取装置9は、紡績糸Yを綾振しながらパッケージ91に巻回する。
【0104】
第二紡績ユニット3には、本発明の実施形態に係る紡績ユニット1と異なる部分として糸送り装置10が備えられ、糸欠点検出装置7が糸送り装置10と張力安定装置8との間に配置されている。これにより、糸欠点検出装置7は、糸送り装置10から送り出された紡績糸Yが張力安定装置8に至るまでに欠点部の検出を行なうものとしている。
【0105】
このような従来構成においては、巻取装置9が紡績糸Yを綾振しながらパッケージ91へと巻回しても糸欠点検出装置7における紡績糸Yの糸道が変化することはない。また、例えば巻取装置9を構成する摩擦ローラ93の回転速度が変動しても、紡績糸Yの張力が変化することもない。しかし、糸送り装置10による紡績糸Yの送り出し速度に変動を生じることがあるために紡績糸Yに掛かる張力を高めておく必要があり、糸欠点検出装置7による欠点部の検出精度に影響を及ぼす場合があった。
【0106】
具体的には、デリベリローラ101とニップローラ102に挟持された紡績糸Yは、デリベリローラ101とニップローラ102の回転に従って張力安定装置8へ送り出されることとなる。糸送り装置10による送り出し速度の変動によって糸送り装置10から張力安定装置8へ架けられた紡績糸Yに掛かる張力に変化が生じる場合があった。そこで、張力安定装置8が紡績糸Yを引張ることで張力を高め、糸欠点検出装置7の検出精度の向上を図ったものがあった。しかし、紡績糸Yに掛かる張力の増加によって欠点部の特徴が埋没することがあり、結果として欠点部の検出が困難となる場合があったのである。
【0107】
ここで、紡績糸Yに掛かる張力の増加によって欠点部の特徴が埋没し、欠点部の検出が困難となる問題点について図10を用いて詳細に説明する。
【0108】
図10Aは、外乱を排除した糸欠点検出装置7を用いた場合の検出信号を示す図である。図10Bは、本紡績ユニット3を構成する糸欠点検出装置7の検出信号を示す図である。なお、外乱を排除したとは、上述したように、糸欠点検出装置7の検出精度に影響を及ぼす全ての外乱を排除した状態を意味するものである。
【0109】
図10Aならびに図10Bは、糸欠点検出装置7を通過する紡績糸Yの長さ方向において、所定の間隔ごとに測定された紡績糸Yの糸太さを結んでなる糸太さの変化を示す図である。上述した図8(A)、図8(B)と同様に、紡績糸Yの糸太さが許容上限糸太さを越えた部分では太糸部D1が存在することを示し、許容下限糸太さを越えた部分では細糸部D2が存在することを示している。
【0110】
図10Aは、全ての外乱を排除した状態で測定された糸太さの変化を示すものであるため、誤差のない紡績糸Yの糸太さを捉えたものと仮定することができる。図10Aより、紡績糸Yの位置L1に許容上限糸太さを越えた部分である太糸部D1が存在し、紡績糸Yの位置L2に許容下限糸太さを越えた部分である細糸部D2が存在していることがわかる。
【0111】
一方、図10Bは、本紡績ユニット3を構成する糸欠点検出装置7によって測定された糸太さの変化を示すものであるため、紡績糸Yに掛かる張力の増加によって欠点部の特徴が埋没したことによる検出信号の均等化が見られる。これは、紡績糸Yに掛かる張力が増加したことによって欠点部を含む紡績糸Yの糸太さが均一化したことが原因であり、実際に図10Bに示すような糸太さの均一化が実現しているわけではない。
【0112】
従って、図10Bより、紡績糸Yの位置L1においては、許容上限糸太さを越えていないために太糸部D1が存在すると判定されず、真の欠点部の検出信号が見逃されることとなる。なお、紡績糸Yの位置L2においては、許容下限糸太さを越えているために細糸部D2が存在すると判定される。
【0113】
これは、紡績糸Yが強く引張られたことによって紡績糸Yの位置L1に存在する太糸部D1が引き伸ばされたことによる。これにより、紡績糸Yの位置L1に存在する太糸部D1は、許容上限糸太さを越えていないと誤判定されるのである。
【0114】
このように、従来の第二紡績ユニット3においては、糸送り装置10による紡績糸Yの送り出し速度の変動によって紡績糸Yに掛かる張力に変化が生じるため、紡績糸Yを引張ることで張力を高めておく必要がある。しかし、糸欠点検出装置7からの検出信号の均等化によって紡績糸Yに生じた欠点部の検出が困難となる場合があった。
【0115】
更に、紡績機100において各紡績ユニット3を構成するそれぞれの糸送り装置10に相互差が生じた場合には、糸送り装置10から張力安定装置8へ架けられた紡績糸Yに掛かる張力が同様とならない。その結果、第二紡績ユニット3の相互にバラツキを生じることとなるため、紡績機100全体として紡績糸Yの品質を一定にすることが困難となる場合があったのである。
【0116】
以上が従来の第一紡績ユニット2ならびに従来の第二紡績ユニット3における欠点部の検出についての問題点である。以下に本発明の実施形態に係る紡績ユニット1における欠点部の検出精度の優位性について図11を用いて詳細に説明する。
【0117】
図11は、本発明の実施形態に係る紡績ユニット1を構成する糸欠点検出装置7の検出信号を示す図である。また、図中に示す破線は、従来の第一紡績ユニット2ならびに従来の第二紡績ユニット3を構成する糸欠点検出装置7の検出信号を示している。
【0118】
図11は、糸欠点検出装置7を通過する紡績糸Yの長さ方向において、所定の間隔ごとに測定された紡績糸Yの糸太さを結んでなる糸太さの変化を示す図である。図11は、紡績糸Yの糸太さが許容上限糸太さを越えた部分では太糸部D1が存在することを示し、許容下限糸太さを越えた部分では細糸部D2が存在することを示している。
【0119】
図11より、糸欠点検出装置7は、紡績糸Yに生じた欠点部の特徴を明確に捉えていることがわかる。これは、従来の第一紡績ユニット2のように、巻取装置9による紡績糸Yの綾振によって糸道が変化したり、例えば巻取装置9を構成する摩擦ローラ93の回転速度の変動によって紡績糸Yの張力が変化したりすることがないためである。また、従来の第二紡績ユニット3のように紡績糸Yに掛かる張力を高めておく必要がないためである。
【0120】
従って、図11より、紡績糸Yの位置L1においては、許容上限糸太さを越えているために太糸部D1が存在すると判定され、紡績糸Yの位置L2においては、許容下限糸太さを越えているために細糸部D2が存在すると判定される。
【0121】
このように、本発明の実施形態に係る紡績ユニット1においては、巻取装置9による紡績糸Yの綾振が糸欠点検出装置7による欠点部の検出精度に影響を与える恐れがない。更に、紡績糸Yに掛かる張力を適度に保つとともに、安定させることによって糸欠点検出装置7による欠点部の検出精度を向上させることができる。その結果、本発明の実施形態に係る紡績ユニット1は、製造する紡績糸Yの品質向上を図ることが可能となる。
【0122】
また、本発明の実施形態に係る紡績ユニット1は、紡績糸Yを送り出す糸送り装置10を用いないため、紡績機100において各紡績ユニット1のそれぞれの糸欠点検出装置7における紡績糸Yの張力、即ち、紡績装置6から張力安定装置8へ架けられた紡績糸Yに掛かる張力が相互にバラツキを生じることもない。従って、紡績糸Yの品質を一定にすることが可能となる。
【符号の説明】
【0123】
1 紡績ユニット
2 従来の第一紡績ユニット
3 従来の第二紡績ユニット
4 スライバ供給ユニット
5 ドラフト装置
6 紡績装置
7 糸欠点検出装置
8 張力安定装置
9 巻取装置
10 糸送り装置
11 糸継台車
12 糸継装置
D1 太糸部
D2 細糸部
F 繊維束(スライバ)
Y 紡績糸
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績ユニットの技術に関する。より詳細には、紡績糸に生じた欠点部を高い精度で検出可能とする紡績ユニットの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、牽伸された繊維束を撚ることで紡績糸を製造し、この紡績糸を巻取装置によって巻回することでパッケージを作成するとした紡績ユニットが知られている。このような紡績ユニットには、紡績糸に生じた欠点部を検出可能とする糸欠点検出装置が備えられており、検出された欠点部を切断、除去することによって糸品質を整えるとしたものがあった(例えば特許文献1)。
【0003】
しかし、製造された紡績糸を送り出す糸送り装置が設けられ、該糸送り装置と巻取装置との間に糸欠点検出装置が配置された従来構成においては(例えば特許文献2)、巻取装置が紡績糸を綾振しながらパッケージへと巻回していくために紡績糸の糸道が変化することがある。その結果、糸欠点検出装置からの検出信号が不安定になることによって欠点部の検出が困難となる場合があった。
【0004】
また、上述した糸送り装置に加えて紡績糸の張力を安定させる張力安定装置が設けられ、該糸送り装置と張力安定装置との間に糸欠点検出装置が配置された従来構成においては(例えば特許文献3)、糸送り装置による紡績糸の送り出し速度に変動が生じることがあるために紡績糸に掛かる張力を高めておく必要があった。これにより、紡績糸に生じた欠点部の特徴が埋没することによって該欠点部の検出が困難となる場合があった。即ち、糸送り装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に常時、高い張力が掛かるため、毛羽の変化や結束不良のような欠点部については引張られることによって特徴が吸収されて検出することが困難となっていたのである。
【0005】
更に、パッケージと接するように配置された摩擦ローラを回転駆動することで該パッケージを従動回転させるとした従来構成においては(例えば特許文献4)、何らかの原因によって摩擦ローラの回転速度が変動したり、摩擦ローラとパッケージとの間に作用している摩擦力にバラツキが生じてパッケージの回転速度が変動したりすることがある。これにより、紡績糸に掛かる張力が急激に変化することとなり、紡績糸の切断や糸特性の変化を招く場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−303275号公報
【特許文献2】特開平11−268872号公報
【特許文献3】特開2009−155757号公報
【特許文献4】特開2004−169264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる問題を解決すべくなされたものであり、巻取装置による紡績糸の綾振が糸欠点検出装置による欠点部の検出精度に影響を与える恐れがなく、更に、紡績糸に掛かる張力を適度に保つとともに、安定させることによって糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させるとした紡績ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、この課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、第1の発明において、紡績ユニットは、ドラフト装置と、紡績装置と、張力安定装置と、巻取装置と、糸欠点検出装置と、を備える。ドラフト装置は、繊維束を牽伸する。紡績装置は、ドラフト装置により牽伸された繊維束から紡績糸を製造する。張力安定装置は、紡績装置により製造された紡績糸の張力を安定させる。巻取装置は、張力安定装置から送り出された紡績糸をパッケージへと巻回する。糸欠点検出装置は、紡績糸の欠点部を検出する。糸欠点検出装置は、紡績装置と張力安定装置との間に配置される。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、張力安定装置は、紡績糸を巻回するローラ部材と、ローラ部材に巻回された紡績糸を解舒する解舒部材と、を具備する。解舒部材は、紡績糸の解舒速度を適宜に調節することで紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力を安定させる。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、解舒部材は、張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が所定の値よりも高いときには紡績糸の解舒速度を増速させる。張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が所定の値以下であるときには解舒部材は紡績糸の解舒速度を減速させる。
【0012】
第4の発明は、第2又は第3の発明のいずれかにおいて、張力安定装置は、ローラ部材を回転させる動力部を具備する。動力部は、紡績糸の巻回速度を所定の値に維持することで紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力を安定させる。
【0013】
第5の発明は、第2から第4の発明のいずれかにおいて、張力安定装置は、紡績糸の巻回速度に対して解舒速度を適宜に調節することで紡績糸を一時的に貯溜する。
【0014】
第6の発明は、第1から第5の発明のいずれかにおいて、糸欠点検出装置は、紡績装置により製造された直後の紡績糸から欠点部を検出する。
【0015】
第7の発明は、第1から第6の発明のいずれかにおいて、糸欠点検出装置は、紡績装置による紡績テンションの下で欠点部を検出する。
【0016】
第8の発明は、第1から第7の発明のいずれかにおいて、糸欠点検出装置は、紡績糸に掛かる張力が張力安定装置によってのみ生じる位置に配置する。
【0017】
第9の発明は、第1から第8の発明のいずれかにおいて、紡績装置は、ドラフト装置により牽伸された繊維束を旋回気流によって撚ることで紡績糸を製造する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
第1の発明によれば、巻取装置が紡績糸を綾振しながらパッケージへと巻回しても糸欠点検出装置における紡績糸の糸道は変化することがないため、紡績糸に生じた欠点部の検出を安定して行なうことが可能となる。また、紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力を適度に保つとともに、安定させることができるため、紡績糸に生じた欠点部の特徴が埋没することを防止できる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【0020】
第2の発明によれば、張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が変動した場合であっても、紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力に対して影響を及ぼすことを防止できる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【0021】
第3の発明によれば、張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が増加した場合であっても、紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力に対して影響を及ぼすことを防止できる。また、張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が減少した場合であっても、紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力に対して影響を及ぼすことを防止できる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【0022】
第4の発明によれば、ローラ部材への紡績糸の巻回速度を一定に保つことができるため、紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力を適度に保つとともに、安定させることが可能となる。また、ローラ部材に紡績糸が複数回にわたって巻回されるため、ローラ部材と紡績糸の接触長を確保でき、該紡績糸のスリップを防ぐことが可能となる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【0023】
第5の発明によれば、張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が増加した場合であっても、ローラ部材に巻回されて貯溜されている紡績糸を送り出すことで紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力に対して影響を及ぼすことを防止できる。また、張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が減少した場合であっても、ローラ部材に紡績糸を巻回して貯溜することで紡績装置から張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力に対して影響を及ぼすことを防止できる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【0024】
第6の発明によれば、紡績装置によって製造された紡績糸について他の部材との接触等の影響を受ける前に欠点部の検出を行なうことができる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【0025】
第7の発明によれば、糸欠点検出装置は、紡績装置の紡績状態を適切に検出することができる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【0026】
第8の発明によれば、糸欠点検出装置における紡績糸に掛かる張力を適度に保つとともに、安定させることができるため、紡績糸に生じた欠点部の特徴が埋没することを防止できる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【0027】
第9の発明によれば、紡績装置からの紡績糸の送り出しが安定し、糸欠点検出装置における紡績糸に掛かる張力を適度に保つとともに、安定させることができるため、紡績糸に生じた欠点部の特徴が埋没することを防止できる。これにより、糸欠点検出装置による欠点部の検出精度を向上させることができ、紡績糸の品質向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】紡績ユニット1を複数備えた紡績機100を示す図。
【図2】紡績ユニット1の全体構成を示す図。
【図3】紡績ユニット1に設けられる紡績装置6を示す図。
【図4】紡績ユニット1に設けられる糸欠点検出装置7を示す図。
【図5】紡績ユニット1に設けられる張力安定装置8を示す図。
【図6】糸継装置12の全体構成を示す概略図。
【図7】従来の第一紡績ユニット2の全体構成を示す図。
【図8】(8A)外乱を排除した糸欠点検出装置7の検出信号を示す図。(8B)従来の第一紡績ユニット2を構成する糸欠点検出装置7の検出信号を示す図。
【図9】従来の第二紡績ユニット3の全体構成を示す図。
【図10】(10A)外乱を排除した糸欠点検出装置7の検出信号を示す図。(10B)従来の第二紡績ユニット3を構成する糸欠点検出装置7の検出信号を示す図。
【図11】紡績ユニット1を構成する糸欠点検出装置7の検出信号を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1を用いて本発明の実施形態に係る紡績ユニット1を複数備えた紡績機100について説明する。
【0030】
紡績機100には、繊維束(以降「スライバ」という。)Fから紡績糸Yを製造する複数の紡績ユニット1が並設されており、糸継台車11や駆動装置、その他これらの動作を制御する制御装置などが備えられている。
【0031】
このような紡績機100において紡績糸Yの品質向上を図るには、一の紡績ユニット1にて製造された紡績糸Yが安定して一定の品質を確保できることが求められる。各紡績ユニット1にて製造されたそれぞれの紡績糸Yが平均して一定の品質を確保できることが求められる。
【0032】
このため、本紡績機100は、一の紡績ユニット1にて製造された紡績糸Yの糸太さの標準偏差が、所定の基準を満たすことを確認するとともに、各紡績ユニット1にて製造されたそれぞれの紡績糸Yの平均した糸太さの標準偏差が、所定の基準を満たすことを確認するものとしている。糸太さの標準偏差であるSD値は以下で表される。
【0033】
【数1】
【0034】
なお、式中のMは紡績糸Yの糸太さの平均値であり、以下で表される。
【0035】
【数2】
【0036】
このような式によって紡績糸Yの品質を確認し、欠点部を排除したパッケージ91を作成するには、紡績糸Yの糸太さの測定が正確であることが必要とされる。従って、紡績糸Yの糸太さを測定することで欠点部を検出する糸欠点検出装置7の検出精度が重要となるのである。
【0037】
なお、紡績糸Yの欠点部とは紡績糸Yの糸太さの異常部分をいう。例えば紡績糸Yの目標値となる番手に対して所定の割合以上となった部分を太糸部D1、紡績糸Yの目標値となる番手に対して所定の割合以下となった部分を細糸部D2と定義する。
【0038】
まず、図2、図3、図4、図5を用いて本発明の実施形態に係る紡績ユニット1の全体構成について説明する。
【0039】
紡績ユニット1において、スライバFならびに紡績糸Yの送り方向に沿って、スライバ供給ユニット4と、ドラフト装置5と、紡績装置6と、糸欠点検出装置7と、張力安定装置8と、巻取装置9がこの順序で配置されている。スライバ供給ユニット4は、主に貯溜されたスライバFを供給する。ドラフト装置5は、スライバFを牽伸することによって太さを均一にする。紡績装置6は、スライバFを撚ることで紡績糸Yを製造する。糸欠点検出装置7は、紡績糸Yの糸太さを測定して欠点部を検出する。張力安定装置8は、紡績糸Yに掛かる張力を安定させる。巻取装置9は、紡績糸Yを綾振しながらパッケージ91に巻回する。
【0040】
スライバ供給ユニット4は、紡績糸Yの原料となるスライバFを貯留するスライバケース41と、スライバFをドラフト装置5へ案内する図示しないスライバガイドと、から構成される。
【0041】
ドラフト装置5は、スライバFを牽伸して送り出すドラフトローラ対を複数備えたものである。本紡績ユニット1においては4組のドラフトローラ対を備えており、スライバFの送り方向に沿ってバックローラ対51と、サードローラ対52と、ミドルローラ対53と、フロントローラ対54と、が配置されている。
【0042】
前記4組のドラフトローラ対51・52・53・54は、図示しない駆動源により回転するボトムローラ51A・52A・53A・54Aと、該ボトムローラ51A・52A・53A・54Aと接触するように配置されて従動回転するトップローラ51B・52B・53B・54Bと、で構成される。また、各ドラフトローラ対51・52・53・54を構成するボトムローラ51A・52A・53A・54Aは、それぞれ同じ方向に回転され、従動回転するトップローラ51B・52B・53B・54Bも他のトップローラと同じ方向に回転するものとされる。
【0043】
これにより、ボトムローラ51A・52A・53A・54Aとトップローラ51B・52B・53B・54Bに挟持されたスライバFは、ドラフトローラ対51・52・53・54の回転に従って送り出されることとなる。また、各ドラフトローラ対51・52・53・54は、スライバFの送り方向に沿って順次、回転速度が速くなるように設定されている。
【0044】
このような構成により、スライバFは、各ドラフトローラ対51・52・53・54を通過するごとにその速度を増していき、隣接するドラフトローラ対との間で牽伸されることとなるのである。
【0045】
紡績装置6は、ドラフト装置5により牽伸されたスライバFを旋回気流によって撚ることで紡績糸Yを製造する空気紡績装置である。図3に示すように、紡績装置6は、主にドラフト装置5により牽伸されたスライバFが供給されるガイド部材61と、該ガイド部材61との間に紡績室62を構成するスピンドル部材63と、該スピンドル部材63との間に所定の隙間を設けて外嵌されるノズル部材64と、から構成される。なお、図中に示す矢印は、スライバFならびに紡績糸Yの送り方向と供給された空気の流れ方向とを示している。
【0046】
ガイド部材61は、紡績室62の一部を構成する部材であって、ドラフト装置5により牽伸されたスライバFを該紡績室62へ導くものである。図3では、ニードル状の部材がガイド部材61に設けられているが、ニードル状の部材を設けずにガイド部材61の下流側端部により、その機能を実現するようにしても良い。
【0047】
紡績室62は、ガイド部材61とスピンドル部材63との間に設けられた略円筒状の空間62aと、スピンドル部材63とノズル部材64との隙間に設けられた略円環状の空間62bと、から構成される空間である。紡績室62を構成する略円筒状の空間62aは、スライバFを構成する各繊維の一部を反転(二点鎖線参照。)させる空間であり、紡績室62を構成する略円環状の空間62bは、反転した繊維を空気の流れに沿って旋回(二点鎖線参照。)させる空間である。
【0048】
スピンドル部材63は、紡績室62の一部を構成する部材であって、該紡績室62において撚られてなる紡績糸Yを送り出すものである。スピンドル部材63には、紡績室62に連通するように糸通路63aが設けられており、該糸通路63aから紡績糸Yが送り出されることとなる。
【0049】
ノズル部材64は、紡績室62の一部を構成する部材であって、該紡績室62の内部に旋回気流を発生させるものである。ノズル部材64には、紡績室62に連通するように複数の空気噴射孔64aが設けられており、該空気噴射孔64aを介して空気が噴射されることによって紡績室62の内部に旋回気流が発生する。
【0050】
このような構成により、スライバFを構成する各繊維の一部を旋回気流によって反転、旋回(二点鎖線参照。)させることができ、こうして撚られてなる紡績糸Yが紡績装置6から送り出されるのである。そして、機械的な構成でスライバFを撚るのではなく、空気の気流によってスライバFを撚るために紡績糸Yの送り出しが安定し、送り出された紡績糸Yに掛かる張力を適度に保つとともに、安定させることが可能となる。即ち、紡績装置6は、スライバFを機械的に把持せずに空気流と繊維との抵抗によって紡績糸に張力を生じるため、いわゆる紡績テンションが安定して一定に維持されるのである。
【0051】
糸欠点検出装置7は、光源部71と、受光部72と、ケーシング部材73と、ガイド部材74と(図2参照。)、から構成される。光源部71は、紡績糸Yに光を照射する。受光部72は、光源部71から照射された光を受光する。ケーシング部材73は、光源部71ならびに受光部72を保持する。ガイド部材74は、紡績糸Yの糸道を規制する。なお、図中に示す矢印は、光源部71から照射された光の方向を示している。
【0052】
光源部71は、順方向に電圧を印加することによって発光する発光ダイオードである。発光ダイオードは、エレクトロルミネセンス効果によって発光する半導体素子であり、紡績糸Yに光を照射できるように配置されている。
【0053】
受光部72は、光信号によって電流の制御を可能とするフォトトランジスタである。フォトトランジスタは、受光量によってトランジスタのコレクタ電流を制御可能とする半導体素子である。受光部72は、光源部71によって照射された光を受光できるように配置されている。受光部72は、受光した光量に対応する電気信号を検出信号として出力する。
【0054】
ケーシング部材73は、光源部71ならびに受光部72を所定の位置に保持する部材である。ケーシング部材73には、紡績糸Yが通過する糸通路73aが設けられており、紡績糸Yを挟んで対向するように光源部71ならびに受光部72が配置されることとなる。
【0055】
ガイド部材74は、紡績糸Yの糸道を所定の位置に規制する糸掛け部材である。ガイド部材74は、ケーシング部材73の上流側と下流側にそれぞれ設けられており、糸欠点検出装置7における糸道の安定化を図っている(図2参照。)。
【0056】
このような構成により、受光部72が受光する光量は、光源部71から紡績糸Yへ照射された光のうち該紡績糸Yによって遮光された光量を除く値となる。これにより、糸欠点検出装置7は、受光部72が受光した光量から紡績糸Yの糸太さを測定することができる。更に糸欠点検出装置7は、糸太さに応じて変化する受光量を測定することによって紡績糸Yの欠点部を検出することができる。
【0057】
張力安定装置8は、紡績糸Yに掛かる張力を適度に保つとともに、安定させるものである。図5に示すように、張力安定装置8は、主に紡績糸Yを巻回するローラ部材81と、該ローラ部材81を回転させる動力部82と、ローラ部材81に巻回された紡績糸Yを解舒する解舒部材83と、から構成される。なお、図中に示す矢印は、紡績糸Yの送り方向を示している。
【0058】
ローラ部材81は、回転することによって紡績糸Yを巻回する略円筒形状の回転体である。ローラ部材81は、動力部82の回転軸82aに取り付けられており、該動力部82によって回転駆動される。そして、張力安定装置8に導かれた紡績糸Y、即ち、ローラ部材81に導かれた紡績糸Yは、該ローラ部材81の外周面に巻回されていくのである。これにより、ローラ部材81に複数回にわたって巻回された紡績糸Yは、該ローラ部材81との接触長が長く確保されてスリップの発生を防ぐことができるのである。
【0059】
ローラ部材81について更に詳細に説明すると、ローラ部材81の外周面は、解舒部材83を有する側を先端側、動力部82が配置されている側を基端側とすると、基端側から先端側に向かって順に基端側テーパ部と、円筒部と、先端側テーパ部と、を備えている。
【0060】
円筒部は、先端側が僅かに狭まる形状に構成されるとともに、両側のテーパ部に対して段差無く連続する形状になっている。ローラ部材81により紡績糸Yの十分な搬送力を得るためには、ローラ部材81の外周面に少なくとも10周以上は紡績糸Yが重なることなく巻き付いていることが好ましい。このため、ローラ部材81は、紡績糸Yを少なくとも10周以上は貯溜することができるような寸法に形成されている。また、図示しない糸貯溜センサがこのローラ部材81に対向するように備えられており、ローラ部材81に巻き付いている紡績糸Yの貯溜量を検知して、図示しないユニットコントローラに送信される。
【0061】
基端側テーパ部及び先端側テーパ部は、それぞれ端面側を大径側とする緩やかなテーパ状に形成されている。ローラ部材81の外周面において、基端側テーパ部は、供給された紡績糸Yを大径部分から小径部分に向かって円滑に移動させて中間の円筒部へ到達させることにより、紡績糸Yを円筒部の表面に整然と巻き付かせている。また、先端側テーパ部は、解舒の際に巻き付いている紡績糸Yが一度に抜けてしまう輪抜け現象を防止する機能を有している。更に先端側テーパ部は、紡績糸Yを小径部分から端面側の大径部分へ順送りに巻き戻して、紡績糸Yの円滑な引き出しを確保する機能を有している。
【0062】
動力部82は、電力を供給されることによって駆動する電動モータである。動力部82は、ローラ部材81を回転駆動させるとともに、ローラ部材81の回転速度を所定の値で一定に維持するものとしている。これにより、ローラ部材81への紡績糸Yの巻回速度を一定に保つことができるのである。
【0063】
解舒部材83は、ローラ部材81と一体又は独立して回転することで巻回された紡績糸Yの解舒を補助する糸掛け部材である。解舒部材83は、その一端部がローラ部材81の中心軸上に設けられた回転軸84に取り付けられており、その他端部がローラ部材81の外周面に向かって湾曲するように形成されている。そして、解舒部材83は、この湾曲した部位に紡績糸Yを掛けることで該紡績糸Yをローラ部材81の外周面に案内することを可能としている。解舒部材83が取り付けられた回転軸84の基部は、該回転軸84又はローラ部材81のいずれか一方に取り付けられた永久磁石と他方に取り付けられた磁気ヒステリシス材とによって相対回転に抗する抵抗トルクが発生するように構成されている。なお、解舒部材83とローラ部材81との間に抵抗トルクを加える方法は、このような磁気的機構に限らず、例えば摩擦力でも良く電磁的な機構でも良い。
【0064】
これにより、解舒部材83は、張力安定装置8から送り出された紡績糸Y、即ち、ローラ部材81から解舒された紡績糸Yに掛かる張力が低く、上述した抵抗トルクに打ち負ける場合にはローラ部材81と一体となって回転する。そして、解舒部材83は、該解舒部材83に掛けられている紡績糸Yをローラ部材81に巻き付けていくのである。このように、張力安定装置8は、ローラ部材81から紡績糸Yを解舒させつつ、解舒部材83を用いて紡績糸Yを巻き付ける動作を行なうため、解舒速度を減速させることができるのである。
【0065】
一方、解舒部材83は、張力安定装置8から送り出された紡績糸Y、即ち、ローラ部材81から解舒された紡績糸Yに掛かる張力が高く、上述した抵抗トルクに打ち勝つ場合にはローラ部材81から独立して回転する。そして、解舒部材83は、該解舒部材83によってローラ部材81に巻回されている紡績糸Yを解いていくのである。このように、張力安定装置8は、ローラ部材81から紡績糸Yを解舒させつつ、解舒部材83を用いて紡績糸Yを解いていく動作を行なうため、解舒速度を増速させることができるのである。
【0066】
また、張力安定装置8は、ローラ部材81への紡績糸Yの巻回速度に対して、上述のように解舒速度を調節することができるため、紡績糸Yをローラ部材81の外周面に巻回した状態で一時的に貯溜することができる。
【0067】
これにより、張力安定装置8から送り出された紡績糸Y、即ち、ローラ部材81から解舒された紡績糸Yに掛かる張力が増加したときには、ローラ部材81に巻回されて貯溜されている紡績糸Yを送り出すことができる。また、張力安定装置8から送り出された紡績糸Y、即ち、ローラ部材81から解舒された紡績糸Yに掛かる張力が減少したときには、ローラ部材81に紡績糸Yを巻回して貯溜することができるのである。
【0068】
このような構成により、張力安定装置8から送り出された紡績糸Y、即ち、ローラ部材81から解舒された紡績糸Yに掛かる張力が変動した場合であっても、紡績装置6から張力安定装置8へ架けられた紡績糸Yに掛かる張力に対して影響を及ぼすことを防止できるのである。
【0069】
巻取装置9は、紡績糸Yをボビン92の軸方向に綾振しながら巻回することで略円筒形状のパッケージ91を形成するものである。パッケージ91あるいはボビン92は、摩擦ローラ93の駆動力を受けて従動回転することにより、紡績糸Yをその外周面に巻き取っていくものとしている。
【0070】
このように、紡績ユニット1は、原料となるスライバFを牽伸することによって太さを均一とし、牽伸されたスライバFを撚ることで紡績糸Yを製造するとしている。そして、紡績ユニット1は、このようにして製造された紡績糸Yを巻き取ることによってパッケージ91を作成するのである。
【0071】
以上のように本紡績ユニット1は、張力安定装置8が糸欠点検出装置7の下流側に配置されることで、巻取装置9が紡績糸Yを綾振しながら巻回しても紡績糸Yの糸道の変化を吸収することが可能となる。また、例えば巻取装置9を構成する摩擦ローラ93がその回転速度を変動させた場合であっても、紡績糸Yに掛かる張力の変化を吸収することが可能となる。こうして、紡績装置6から張力安定装置8へ架けられた紡績糸Yの糸道を安定させることができ、紡績糸Yに掛かる張力を適度に保つとともに、安定させることが可能となるのである。これにより、本紡績ユニット1は、糸欠点検出装置7による欠点部の検出精度を向上させることができるのである。
【0072】
ここで、糸欠点検出装置7による欠点部の検出精度が向上することによって紡績糸Yの品質を向上させることができる理由について説明する。
【0073】
上述したように、糸欠点検出装置7は、糸太さに応じて変化する受光量を測定することによって紡績糸Yの欠点部を検出可能とするものである。糸欠点検出装置7には、図示しない切断装置が備えられており、欠点部を検出した際に直ちに紡績糸Yを切断する。その後、切断された紡績糸Yは、欠点部を切断、除去された後に糸継装置12によって継ぎ合わされ、再び一本の紡績糸Yとして巻回されていくのである。
【0074】
つまり、糸欠点検出装置7が紡績糸Yの欠点部を見逃した場合は、欠点部を含んだ紡績糸Yによってパッケージ91が作成されることとなり、糸欠点検出装置7が欠点部でない部分を欠点部であると誤判定した場合は、本来不要であった切断と継ぎ合わせが行なわれることとなる。このため、糸欠点検出装置7による欠点部の検出精度の向上が紡績糸Yの品質向上にとって重要となるのである。また、糸欠点検出装置7による欠点部の検出精度の向上が紡績糸Yの生産性向上にとっても重要となるのである。
【0075】
糸欠点検出装置7が欠点部を検出した際の紡績ユニット1の動作について説明する。図示しないユニットコントローラは、糸欠点検出装置7から糸欠点検出信号を受信すると、糸欠点検出装置7の直上流側に設けられた図示しない切断装置で紡績糸Yを直ちに切断し、更にドラフト装置5と紡績装置6等を停止させる。また、ユニットコントローラは、糸継台車11に制御信号を送信し、紡績糸Yが切断された紡績ユニット1まで走行させる。その後、ユニットコントローラは、紡績装置6等を再び起動し、糸継台車11の糸継装置12により糸継作業を行なわせる。糸継作業完了後、ユニットコントローラは、紡績ユニット1における巻取作業を再開させる。
【0076】
糸継台車11は、糸継装置12と、サクションパイプ13と、サクションマウス14と、を備えている(図1参照。)。糸継台車11は、ある紡績ユニット1で糸切れや糸切断が発生すると、紡績機100の下部に設けられた図示しないレール上を当該紡績ユニット1まで走行し、停止する。サクションパイプ13は、軸を中心に上下方向に回動しながら紡績装置6から送り出される糸端を吸い込みつつ捕捉して糸継装置12へ案内する。サクションマウス14は、軸を中心に上下方向に回動しながら巻取装置9に支持されたパッケージ91から糸端を吸引しつつ捕捉して糸継装置12へ案内する。糸継装置12は、このように案内された糸端同士の糸継作業を行なう。
【0077】
以下に、図6を用いて糸継装置12の全体構成について説明する。なお、図中に示す矢印は、糸継装置12を構成する各部材の可動方向を示している。
【0078】
糸継装置12は、主に張力安定装置8側の糸端YT(図中一点鎖線参照。)の解撚を行なう第一解撚ノズル121と、巻取装置9側の糸端YW(図中実線参照。)の解撚を行なう第二解撚ノズル122と、解撚されてほぐされた両糸端YT・YWを絡み合わせて継ぎ合わせる糸継ノズル123と、両糸端YT・YWをそれぞれの所定の位置に配置する一対の糸寄せレバー124と、張力安定装置8側の糸端YTの切断を行なう第一糸端カッター125aならびに巻取装置9側の糸端YWの切断を行なう第二糸端カッター125bと、両糸端YT・YWを継ぎ合わせる際に固定する一対の糸押さえレバー127と、から構成される。
【0079】
第一解撚ノズル121は、張力安定装置8側の糸端YTを吸い込んで解撚を行なうものである。第一解撚ノズル121は、第一吸引口121aを露出させた第一解撚パイプ121bを備え、該第一解撚パイプ121bは、その内部に解撚用エアを噴射する解撚用エア通路221と連通されている。解撚用エア流路221は、第一解撚パイプ121bの第一吸引口121a付近に該第一解撚パイプ121bの軸方向に傾けて連通されている。これにより、第一解撚ノズル121は、解撚用エア通路221から噴射された解撚用エアによって糸端YTを第一吸引口121aから吸い込むとともに、第一解撚パイプ121b内に形成された螺旋流によって繊維を解撚するのである。
【0080】
第二解撚ノズル122は、巻取装置9側の糸端YWを吸い込んで解撚を行なうものである。第二解撚ノズル122は、第二吸引口122aを露出させた第二解撚パイプ122bを備え、該第二解撚パイプ122bは、その内部に解撚用エアを噴射する解撚用エア通路222と連通されている。解撚用エア流路222は、第二解撚パイプ122bの第二吸引口122a付近に該第二解撚パイプ122bの軸方向に傾けて連通されている。これにより、第二解撚ノズル122は、解撚用エア通路222から噴射された解撚用エアによって糸端YWを第二吸引口122aから吸い込むとともに、第二解撚パイプ122b内に形成された螺旋流によって繊維を解撚するのである。
【0081】
糸継ノズル123は、解撚されてほぐされた張力安定装置8側の糸端YTと解撚されてほぐされた巻取装置9側の糸端YWとを絡み合わせて継ぎ合わせるものである。糸継ノズル123には、張力安定装置8側の糸端YTと巻取装置9側の糸端YWとを収容する収容部123aと両糸端YT・YWを収容部123aに案内するガイド傾斜部123bが形成されている。また、糸継ノズル123は、その内部に糸継用エアを噴射する糸継用エア通路223と連通されている。これにより、糸継ノズル123は、糸継用エア通路223から噴射された糸継用エアによって収容部123a内に旋回流を形成し、解撚されてほぐされた両糸端YT・YWを絡み合わせて継ぎ合わせるのである。
【0082】
糸寄せレバー124は、張力安定装置8側の糸端YTと巻取装置9側の糸端YWをそれぞれの所定の位置に配置するものである。糸寄せレバー124は、糸継ノズル123を挟むように対向して配置されており、それぞれ図示しない駆動装置によって移動される。そして、解撚動作前においては、糸寄せレバー124が移動することによって両糸端YT・YWの先端を糸継ノズル123の所定の位置に寄せる。また、解撚動作後においては、糸寄せレバー124が更に適当な位置まで移動することによって両糸端YT・YWの解撚部を収容部123a内の所定の位置に配置するのである。
【0083】
第一糸端カッター125aは、張力安定装置8側の糸端YTを解撚する前に該糸端YTを切断して適切な長さにするものである。また、第二糸端カッター125bは、巻取装置9側の糸端YWを解撚する前に該糸端YWを切断して適切な長さにするものである。そして、第一糸端カッター125aによって切断された糸端YTは、第一クランププレート126aによって固定され、第二糸端カッター125bによって切断された糸端YWは、第二クランププレート126bによって固定される。
【0084】
糸押さえレバー127は、糸寄せレバー124によって両糸端YT・YWの解撚部が収容部123a内の所定の位置に配置をされた後に、両糸端YT・YWを固定するものである。糸押さえレバー127は、図示しない駆動装置によって糸継ノズル123の両側面を沿うようにして移動する。そして、糸押さえレバー127は、該糸押さえレバー127と糸継ノズル123との間で挟持するようにして両糸端YT・YWを固定する。その後、上述したように、糸継ノズル123の内部に糸継用エアが噴射され、両糸端YT・YWを絡み合わせて継ぎ合わせるのである。
【0085】
なお、本実施形態において糸継装置12は、糸継台車11に設けられているが、各紡績ユニット1に糸継装置12を設ける構成としても良い。また、糸継装置12は、紡績装置6側の糸端と巻取装置9側の糸端を継げるものであれば良く、上記のような構成に限定されるものではない。
【0086】
以上が本発明の実施形態に係る紡績ユニット1ならびに糸継装置12の全体構成である。次に、本紡績ユニット1における糸欠点検出装置7の検出精度の優位性を示すため、従来の第一紡績ユニット2ならびに従来の第二紡績ユニット3について説明する。但し、上述した紡績ユニット1と同様の構成については同じ符号を付し、異なる部分を中心に説明する。
【0087】
図7は、従来の第一紡績ユニット2の全体構成を示す図である。第一紡績ユニット2において、スライバFならびに紡績糸Yの送り方向に沿って、スライバ供給ユニット4と、ドラフト装置5と、紡績装置6と、糸送り装置10と、糸欠点検出装置7と、巻取装置9がこの順序で配置されている。スライバ供給ユニット4は、主に貯溜されたスライバFを供給する。ドラフト装置5は、スライバFを牽伸することによって太さを均一にする。紡績装置6は、スライバFを撚ることで紡績糸Yを製造する。糸送り装置10は、製造された紡績糸Yを送り出す。糸欠点検出装置7は、紡績糸Yの糸太さを測定して欠点部を検出する。巻取装置9は、紡績糸Yを綾振しながらパッケージ91に巻回する。
【0088】
糸送り装置10は、紡績装置6により製造された紡績糸Yを巻取装置9へ送り出すものである。糸送り装置10は、デリベリローラ101ならびにニップローラ102などから構成されている。デリベリローラ101とニップローラ102によって挟持された紡績糸Yは、デリベリローラ101とニップローラ102の回転に従って送り出される。
【0089】
また、従来の第一紡績ユニット2には、本発明の実施形態に係る紡績ユニット1と異なる部分として張力安定装置8が備えられず、糸欠点検出装置7が糸送り装置10と巻取装置9との間に配置されている。これにより、糸欠点検出装置7は、糸送り装置10から送り出された紡績糸Yが巻取装置9に至るまでに欠点部の検出を行なうものとしている。
【0090】
しかし、巻取装置9によって紡績糸Yをパッケージ91へ巻回する際には、該紡績糸Yを綾振しながら巻回する必要がある。上記のような従来構成においては、糸欠点検出装置7による欠点部の検出精度に影響を及ぼす場合があった。
【0091】
具体的には、巻取装置9は、紡績糸Yをボビン92の軸方向に綾振しながらパッケージ91へ巻き取るために糸欠点検出装置7における紡績糸Yの糸道を変化させることがある。その結果、紡績糸Yの糸道が変化することに起因した検出信号の不安定化によって欠点部の検出が困難となる場合があった。
【0092】
また、従来の第一紡績ユニット2の巻取装置9は、摩擦ローラ93を回転駆動することでパッケージ91を従動回転させている。そのため、例えば摩擦ローラ93の回転速度が変動した場合に紡績糸Yに掛かる張力を変化させることがある。その結果、紡績糸Yの張力が変化することに起因した糸欠点検出装置7の検出信号の不安定化によって欠点部の検出が困難となる場合があった。
【0093】
ここで、紡績糸Yの糸道ならびに張力が変化することに起因した糸欠点検出装置7の検出信号の不安定化によって欠点部の検出が困難となる問題点について図8を用いて詳細に説明する。
【0094】
図8Aは、外乱を排除した糸欠点検出装置7を用いた場合の検出信号を示す図であり、図8Bは、本紡績ユニット2を構成する糸欠点検出装置7の検出信号を示す図である。なお、外乱を排除したとは、巻取装置9による紡績糸Yの綾振など、糸欠点検出装置7の検出精度に影響を及ぼす全ての外乱を排除した状態を意味する。
【0095】
図8A、図8Bの横軸は、所定の時刻からの時間経過を示している。即ち、糸欠点検出装置7を通過する紡績糸Yの長さ方向における任意の位置を示したものである。また、図8A、図8Bの縦軸は、糸欠点検出装置7を構成する受光部72からの検出信号である電圧値を示している。即ち、糸欠点検出装置7により検出された紡績糸Yの糸太さを示したものである。なお、図中に示した電圧値VAは平均糸太さ、電圧値VA−hは許容上限糸太さ、電圧値VA−lは許容下限糸太さに対応している。
【0096】
つまり、図8Aならびに図8Bは、糸欠点検出装置7を通過する紡績糸Yの長さ方向において、所定の間隔ごとに測定された紡績糸Yの糸太さを結んでなる糸太さの変化を示す図である。そして、紡績糸Yの糸太さが許容上限糸太さを越えた部分では太糸部D1が存在することを示し、許容下限糸太さを越えた部分では細糸部D2が存在することを示している。
【0097】
図8Aは、全ての外乱を排除した状態で測定された糸太さの変化を示すものであるため、誤差のない紡績糸Yの糸太さを捉えたものと仮定することができる。図8Aより、紡績糸Yの位置L1に許容上限糸太さを越えた部分である太糸部D1が存在し、紡績糸Yの位置L2に許容下限糸太さを越えた部分である細糸部D2が存在していることがわかる。
【0098】
一方、図8Bは、本紡績ユニット2を構成する糸欠点検出装置7によって測定された糸太さの変化を示すものである。このため、図8Bにおいては、糸欠点検出装置7における紡績糸Yの糸道の変化や張力の変化に起因した比較的大きな検出信号の変動が含まれる。これは、紡績糸Yの糸道や張力が変化したことによって受光部72の受光量が変化したことが原因であり、実際に図8Bに示すような糸太さの変化が生じているわけではない。
【0099】
従って、図8Bより、紡績糸Yの位置L1においては、許容上限糸太さを越えているために太糸部D1が存在すると判定されるが、紡績糸Yの位置L2においては、許容下限糸太さを越えていないために細糸部D2が存在すると判定されず、真の欠点部の検出信号が見逃されることとなる。
【0100】
これは、紡績糸Yの位置L2において糸欠点検出装置7における糸道が変化したこと、又は紡績糸Yの張力が変化したことにより、細糸部D2の実際の糸太さよりも太いとする検出信号が糸欠点検出装置7から出力されたことによる。これにより、紡績糸Yの位置L2に存在する細糸部D2は、許容下限糸太さを越えていないと誤判定されるのである。
【0101】
このように、従来の第一紡績ユニット2においては、巻取装置9が紡績糸Yを綾振しながらパッケージ91へと巻回するために糸欠点検出装置7における紡績糸Yの糸道が変化する。また、例えば巻取装置9を構成する摩擦ローラ93の回転速度が変動したときに糸欠点検出装置7における紡績糸Yの張力が変化することがある。そのため、これらに起因した糸欠点検出装置7の検出信号の不安定化によって紡績糸Yに生じた欠点部の検出が困難となる場合があった。
【0102】
更に、紡績機100において各紡績ユニット2を構成するそれぞれの糸送り装置10に相互差が生じた場合には、糸送り装置10から巻取装置9へ架けられた紡績糸Yに掛かる張力が同様とならないことがある。その結果、第一紡績ユニット2の相互にバラツキを生じることとなるため、紡績糸Yの品質を一定にすることが困難となる場合もあった。
【0103】
図9は、従来の第二紡績ユニット3の全体構成を示す図である。第二紡績ユニット3において、スライバFならびに紡績糸Yの送り方向に沿って、スライバ供給ユニット4と、ドラフト装置5と、紡績装置6と、糸送り装置10と、糸欠点検出装置7と、張力安定装置8と、巻取装置9がこの順序で配置されている。スライバ供給ユニット4は、主に貯溜されたスライバFを供給する。ドラフト装置5は、スライバFを牽伸することによって太さを均一にする。紡績装置6は、スライバFを撚ることで紡績糸Yを製造する。糸送り装置10は、製造された紡績糸Yを送り出す。糸欠点検出装置7は、紡績糸Yの糸太さを測定して欠点部を検出する。張力安定装置8は、紡績糸Yに掛かる張力を安定させる。巻取装置9は、紡績糸Yを綾振しながらパッケージ91に巻回する。
【0104】
第二紡績ユニット3には、本発明の実施形態に係る紡績ユニット1と異なる部分として糸送り装置10が備えられ、糸欠点検出装置7が糸送り装置10と張力安定装置8との間に配置されている。これにより、糸欠点検出装置7は、糸送り装置10から送り出された紡績糸Yが張力安定装置8に至るまでに欠点部の検出を行なうものとしている。
【0105】
このような従来構成においては、巻取装置9が紡績糸Yを綾振しながらパッケージ91へと巻回しても糸欠点検出装置7における紡績糸Yの糸道が変化することはない。また、例えば巻取装置9を構成する摩擦ローラ93の回転速度が変動しても、紡績糸Yの張力が変化することもない。しかし、糸送り装置10による紡績糸Yの送り出し速度に変動を生じることがあるために紡績糸Yに掛かる張力を高めておく必要があり、糸欠点検出装置7による欠点部の検出精度に影響を及ぼす場合があった。
【0106】
具体的には、デリベリローラ101とニップローラ102に挟持された紡績糸Yは、デリベリローラ101とニップローラ102の回転に従って張力安定装置8へ送り出されることとなる。糸送り装置10による送り出し速度の変動によって糸送り装置10から張力安定装置8へ架けられた紡績糸Yに掛かる張力に変化が生じる場合があった。そこで、張力安定装置8が紡績糸Yを引張ることで張力を高め、糸欠点検出装置7の検出精度の向上を図ったものがあった。しかし、紡績糸Yに掛かる張力の増加によって欠点部の特徴が埋没することがあり、結果として欠点部の検出が困難となる場合があったのである。
【0107】
ここで、紡績糸Yに掛かる張力の増加によって欠点部の特徴が埋没し、欠点部の検出が困難となる問題点について図10を用いて詳細に説明する。
【0108】
図10Aは、外乱を排除した糸欠点検出装置7を用いた場合の検出信号を示す図である。図10Bは、本紡績ユニット3を構成する糸欠点検出装置7の検出信号を示す図である。なお、外乱を排除したとは、上述したように、糸欠点検出装置7の検出精度に影響を及ぼす全ての外乱を排除した状態を意味するものである。
【0109】
図10Aならびに図10Bは、糸欠点検出装置7を通過する紡績糸Yの長さ方向において、所定の間隔ごとに測定された紡績糸Yの糸太さを結んでなる糸太さの変化を示す図である。上述した図8(A)、図8(B)と同様に、紡績糸Yの糸太さが許容上限糸太さを越えた部分では太糸部D1が存在することを示し、許容下限糸太さを越えた部分では細糸部D2が存在することを示している。
【0110】
図10Aは、全ての外乱を排除した状態で測定された糸太さの変化を示すものであるため、誤差のない紡績糸Yの糸太さを捉えたものと仮定することができる。図10Aより、紡績糸Yの位置L1に許容上限糸太さを越えた部分である太糸部D1が存在し、紡績糸Yの位置L2に許容下限糸太さを越えた部分である細糸部D2が存在していることがわかる。
【0111】
一方、図10Bは、本紡績ユニット3を構成する糸欠点検出装置7によって測定された糸太さの変化を示すものであるため、紡績糸Yに掛かる張力の増加によって欠点部の特徴が埋没したことによる検出信号の均等化が見られる。これは、紡績糸Yに掛かる張力が増加したことによって欠点部を含む紡績糸Yの糸太さが均一化したことが原因であり、実際に図10Bに示すような糸太さの均一化が実現しているわけではない。
【0112】
従って、図10Bより、紡績糸Yの位置L1においては、許容上限糸太さを越えていないために太糸部D1が存在すると判定されず、真の欠点部の検出信号が見逃されることとなる。なお、紡績糸Yの位置L2においては、許容下限糸太さを越えているために細糸部D2が存在すると判定される。
【0113】
これは、紡績糸Yが強く引張られたことによって紡績糸Yの位置L1に存在する太糸部D1が引き伸ばされたことによる。これにより、紡績糸Yの位置L1に存在する太糸部D1は、許容上限糸太さを越えていないと誤判定されるのである。
【0114】
このように、従来の第二紡績ユニット3においては、糸送り装置10による紡績糸Yの送り出し速度の変動によって紡績糸Yに掛かる張力に変化が生じるため、紡績糸Yを引張ることで張力を高めておく必要がある。しかし、糸欠点検出装置7からの検出信号の均等化によって紡績糸Yに生じた欠点部の検出が困難となる場合があった。
【0115】
更に、紡績機100において各紡績ユニット3を構成するそれぞれの糸送り装置10に相互差が生じた場合には、糸送り装置10から張力安定装置8へ架けられた紡績糸Yに掛かる張力が同様とならない。その結果、第二紡績ユニット3の相互にバラツキを生じることとなるため、紡績機100全体として紡績糸Yの品質を一定にすることが困難となる場合があったのである。
【0116】
以上が従来の第一紡績ユニット2ならびに従来の第二紡績ユニット3における欠点部の検出についての問題点である。以下に本発明の実施形態に係る紡績ユニット1における欠点部の検出精度の優位性について図11を用いて詳細に説明する。
【0117】
図11は、本発明の実施形態に係る紡績ユニット1を構成する糸欠点検出装置7の検出信号を示す図である。また、図中に示す破線は、従来の第一紡績ユニット2ならびに従来の第二紡績ユニット3を構成する糸欠点検出装置7の検出信号を示している。
【0118】
図11は、糸欠点検出装置7を通過する紡績糸Yの長さ方向において、所定の間隔ごとに測定された紡績糸Yの糸太さを結んでなる糸太さの変化を示す図である。図11は、紡績糸Yの糸太さが許容上限糸太さを越えた部分では太糸部D1が存在することを示し、許容下限糸太さを越えた部分では細糸部D2が存在することを示している。
【0119】
図11より、糸欠点検出装置7は、紡績糸Yに生じた欠点部の特徴を明確に捉えていることがわかる。これは、従来の第一紡績ユニット2のように、巻取装置9による紡績糸Yの綾振によって糸道が変化したり、例えば巻取装置9を構成する摩擦ローラ93の回転速度の変動によって紡績糸Yの張力が変化したりすることがないためである。また、従来の第二紡績ユニット3のように紡績糸Yに掛かる張力を高めておく必要がないためである。
【0120】
従って、図11より、紡績糸Yの位置L1においては、許容上限糸太さを越えているために太糸部D1が存在すると判定され、紡績糸Yの位置L2においては、許容下限糸太さを越えているために細糸部D2が存在すると判定される。
【0121】
このように、本発明の実施形態に係る紡績ユニット1においては、巻取装置9による紡績糸Yの綾振が糸欠点検出装置7による欠点部の検出精度に影響を与える恐れがない。更に、紡績糸Yに掛かる張力を適度に保つとともに、安定させることによって糸欠点検出装置7による欠点部の検出精度を向上させることができる。その結果、本発明の実施形態に係る紡績ユニット1は、製造する紡績糸Yの品質向上を図ることが可能となる。
【0122】
また、本発明の実施形態に係る紡績ユニット1は、紡績糸Yを送り出す糸送り装置10を用いないため、紡績機100において各紡績ユニット1のそれぞれの糸欠点検出装置7における紡績糸Yの張力、即ち、紡績装置6から張力安定装置8へ架けられた紡績糸Yに掛かる張力が相互にバラツキを生じることもない。従って、紡績糸Yの品質を一定にすることが可能となる。
【符号の説明】
【0123】
1 紡績ユニット
2 従来の第一紡績ユニット
3 従来の第二紡績ユニット
4 スライバ供給ユニット
5 ドラフト装置
6 紡績装置
7 糸欠点検出装置
8 張力安定装置
9 巻取装置
10 糸送り装置
11 糸継台車
12 糸継装置
D1 太糸部
D2 細糸部
F 繊維束(スライバ)
Y 紡績糸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束を牽伸するドラフト装置と、
前記ドラフト装置により牽伸された繊維束から紡績糸を製造する紡績装置と、
前記紡績装置により製造された紡績糸の張力を安定させる張力安定装置と、
前記張力安定装置から送り出された紡績糸をパッケージへと巻回する巻取装置と、
紡績糸の欠点部を検出可能とする糸欠点検出装置と、を備える紡績ユニットであって、
前記糸欠点検出装置は、前記紡績装置と前記張力安定装置との間に配置される、ことを特徴とする紡績ユニット。
【請求項2】
前記張力安定装置は、紡績糸を巻回するローラ部材と、
前記ローラ部材に巻回された紡績糸を解舒する解舒部材と、を具備し、
前記解舒部材は、紡績糸の解舒速度を適宜に調節することで前記紡績装置から前記張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力を安定させる、ことを特徴とする請求項1に記載の紡績ユニット。
【請求項3】
前記解舒部材は、前記張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が所定の値よりも高いときには紡績糸の解舒速度を増速させ、
前記張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が所定の値以下であるときには紡績糸の解舒速度を減速させる、ことを特徴とする請求項2に記載の紡績ユニット。
【請求項4】
前記張力安定装置は、前記ローラ部材を回転させる動力部を具備し、
前記動力部は、紡績糸の巻回速度を所定の値に維持することで前記紡績装置から前記張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力を安定させる、ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の紡績ユニット。
【請求項5】
前記張力安定装置は、紡績糸の巻回速度に対して解舒速度を適宜に調節することで紡績糸を一時的に貯溜する、ことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の紡績ユニット。
【請求項6】
前記糸欠点検出装置は、前記紡績装置により製造された直後の紡績糸の欠点部を検出する、ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の紡績ユニット。
【請求項7】
前記糸欠点検出装置は、前記紡績装置による紡績テンションでの紡績糸の欠点部を検出するように構成される、ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の紡績ユニット。
【請求項8】
前記糸欠点検出装置は、紡績糸に掛かる張力が前記張力安定装置によってのみ生じる位置に配置する、ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の紡績ユニット。
【請求項9】
前記紡績装置は、前記ドラフト装置により牽伸された繊維束を旋回気流によって撚ることで紡績糸を製造する、ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の紡績ユニット。
【請求項1】
繊維束を牽伸するドラフト装置と、
前記ドラフト装置により牽伸された繊維束から紡績糸を製造する紡績装置と、
前記紡績装置により製造された紡績糸の張力を安定させる張力安定装置と、
前記張力安定装置から送り出された紡績糸をパッケージへと巻回する巻取装置と、
紡績糸の欠点部を検出可能とする糸欠点検出装置と、を備える紡績ユニットであって、
前記糸欠点検出装置は、前記紡績装置と前記張力安定装置との間に配置される、ことを特徴とする紡績ユニット。
【請求項2】
前記張力安定装置は、紡績糸を巻回するローラ部材と、
前記ローラ部材に巻回された紡績糸を解舒する解舒部材と、を具備し、
前記解舒部材は、紡績糸の解舒速度を適宜に調節することで前記紡績装置から前記張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力を安定させる、ことを特徴とする請求項1に記載の紡績ユニット。
【請求項3】
前記解舒部材は、前記張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が所定の値よりも高いときには紡績糸の解舒速度を増速させ、
前記張力安定装置から送り出された紡績糸に掛かる張力が所定の値以下であるときには紡績糸の解舒速度を減速させる、ことを特徴とする請求項2に記載の紡績ユニット。
【請求項4】
前記張力安定装置は、前記ローラ部材を回転させる動力部を具備し、
前記動力部は、紡績糸の巻回速度を所定の値に維持することで前記紡績装置から前記張力安定装置へ架けられた紡績糸に掛かる張力を安定させる、ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の紡績ユニット。
【請求項5】
前記張力安定装置は、紡績糸の巻回速度に対して解舒速度を適宜に調節することで紡績糸を一時的に貯溜する、ことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の紡績ユニット。
【請求項6】
前記糸欠点検出装置は、前記紡績装置により製造された直後の紡績糸の欠点部を検出する、ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の紡績ユニット。
【請求項7】
前記糸欠点検出装置は、前記紡績装置による紡績テンションでの紡績糸の欠点部を検出するように構成される、ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の紡績ユニット。
【請求項8】
前記糸欠点検出装置は、紡績糸に掛かる張力が前記張力安定装置によってのみ生じる位置に配置する、ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の紡績ユニット。
【請求項9】
前記紡績装置は、前記ドラフト装置により牽伸された繊維束を旋回気流によって撚ることで紡績糸を製造する、ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の紡績ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−99192(P2011−99192A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56773(P2010−56773)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]