説明

紫外線硬化型熱伝導性シリコーン組成物

【課題】硬化させても回路素子へ応力を与えず、硬化時に体積変化を起こさない熱伝導性シリコーン組成物を提供する。
【解決手段】
(A)一般式(I)
【化1】


(Xは−CH−又は−SiR−、Zは酸素原子又は二価の炭化水素基、RはH又はメチル基、R〜Rは一価炭化水素基。a、bは1〜3の整数)で示される基を分子中に平均0.2〜2個有するオルガノポリシロキサン、(B)光反応開始剤、及び(C)熱伝導性充填剤を含有する紫外線硬化型熱伝導性シリコーン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面部を硬化させても深部では硬さの上昇が起らず、体積の変化も起らない熱伝導性シリコーン組成物に関する。該シリコーン組成物は機械的応力、光学部品の光軸ずれの低減が求められる電機・電子部品の放熱に有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、パワートランジスタ、サイリスタ等の発熱性部品は熱の発生により特性が低下するため、設置の際、ヒートシンクを取り付けて熱を放散したり、機器の金属製のシャーシに熱を逃がしたりする対策が採られている。このとき、電気絶縁性と熱伝導性を向上させるため、発熱性部品とヒートシンクの間にシリコーンゴムに熱伝導性充填剤を配合した熱伝導性絶縁性シートや熱伝導性液状シリコーンゴム組成物が用いられる()。
【0003】
一方、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサ、DVDドライブ等の電子機器は高集積化が進み、装置内のLSI、CPU等の集積回路素子の発熱量が増加したため、従来の冷却方法では不十分な場合がある。特に、携帯用ノート型パーソナルコンピューターの場合、機器内部の空間が狭いので、大きなヒートシンクや冷却ファンを取り付けることができない。これらの機器ではプリント基板上に集積回路素子が搭載されており、熱伝導性絶縁シートでは集積回路素子の凹凸に追従できず、また、熱伝導性液状シリコーン組成物では硬化後の硬度が高すぎるためその応力によって集積回路素子を破壊してしまうことがある。さらには、DVDドライブ等の光ピックアップ部品の光軸を熱伝導性液状シリコーン組成物の硬化時の体積変化によって狂わせてしまうという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開昭47−32400号公報
【特許文献2】特開昭56−100849
【特許文献3】特開2000−256558
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、特に熱伝導性シリコーン組成物を硬化させても回路素子へ応力を与えず、また硬化時の体積変化によって光学部品の光軸が変化しない熱伝導性シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、下記の紫外線硬化型熱伝導性シリコーン組成物により上記課題を解決することができた。
【0007】
即ち、本発明は、
【0008】
(A)一般式(I)
【0009】
【化1】

【0010】

(ここでXは−CH−または−SiR−であり、Zは酸素原子または二価の炭化水素である。また、Rは水素原子またはメチル基、R、RおよびRは同一もしくは異種の非置換もしくは置換された一価炭化水素基である。さらに、a及びbは独立に1から3の整数である)で示される基を1分子中に平均0.2〜2個有するオルガノポリシロキサン
100質量部、
(B)光反応開始剤 0.01〜10質量部、及び
(C)熱伝導性充填剤 100〜4,000質量部
を含有することを特徴とする紫外線硬化型熱伝導性シリコーン組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の紫外線硬化型熱伝導性シリコーン組成物は、紫外線照射によってシリコーン組成物の表面のみが硬化するシリコーン組成物である。このシリコーン組成物は、紫外線照射により表面部のみを硬化させても深部の硬さ上昇が起らず、しかも硬化時に体積変化もほとんど起らない。したがって、放熱のために、例えば発熱性電子部品とヒートシンクの間などに介在させても該電子部品に応力を及ぼすことがなく、また光部品の光軸を変化させることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の組成物につき更に詳しく説明する。
−(A)成分−
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、分子中に下記一般式(I)で示される基、即ち、(メタ)アクリロイルオキシ含有シリル基を1分子中に平均0.2〜2個有するオルガノポリシロキサンである。
【0013】
【化2】

(I)
【0014】
一般式(I)において、Xは−CH−または−SiR−である。Rは水素原子またはメチル基である。R、R、およびRは独立に置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、好ましくは、脂肪族不飽和基を除く、通常、炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜8程度の1価炭化水素基である。ここで非置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基が挙げられ、置換1価炭化水素基としては、例えば、上述した非置換炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部もしくは全部をハロゲン原子で置換したクロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、およびシアノ基で置換した例えばシアノエチル基等のハロゲン置換炭化水素基およびシアノ置換炭化水素基などが挙げられる。Zは酸素原子または二価炭化水素基であり、例えば酸素原子、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などの炭素原子数1〜12、特に1〜10のアルキレン基が例示され、中でも酸素原子、エチレン基が好ましい。またaおよびbは独立に1〜3の整数である。
【0015】
(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、一般式(I)で示される(メタ)アクリロイルオキシ含有シリル基を分子鎖の片末端及び/又は両末端あるいは分子鎖中(即ち、非末端)のシロキサン単位中に有し、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましく、具体的には、下記のものが例示される。尚、下記の各式において主鎖を構成する繰り返し単位の配列はランダムである。
【0016】
CH=CHCOOCHSi(CHO−Si(CH−C
−Si(CH−(O−Si(CH148
−C−Si(CH−O−Si(CHCHOCOCH=CH
【0017】
(CH=CHCOOCHSi(CHO)−Si(CH)−C
−Si(CH−(O−Si(CH148
−C−Si(CH)−(O−Si(CHCHOCOCH=CH
【0018】
(CH=CHCOOCHSi(CHO)−Si(CH)−C
−Si(CH−(O−Si(CH198
−(O−Si(C22
−C−Si(CH)−(O−Si(CHCHOCOCH=CH
【0019】
(CH=CHCOOCHSi(CHO)−Si(CH)−C
−Si(CH−(O−Si(CH68
−(O−Si(CH)(CHCHCF))30
−C−Si(CH)−(O−Si(CHCHOCOCH=CH
【0020】
(CH=CHCOOCO)−Si(CH)−C
−Si(CH−(O−Si(CH198
−(O−Si(C22
−C−Si(CH)−(O−COCOCH=CH
【0021】
−(B)成分−
(B)成分の光反応開始剤としては、従来紫外線硬化型シリコーン組成物に使用されるものとして公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、4−クロロ−4’−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントーン、3,9−ジクロロキサントーン、3−クロロ−8−ノニルキサントーン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントーン、ジエチルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルフォリノ−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−オン、1−{4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル}−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、シクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0022】
(B)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01〜10質量部であり、特に0.1〜5質量部であることが好ましい。(B)成分の配合量が0.01質量部未満ではその添加効果が得がたく、10質量部を越えると、(B)成分の分解残査がシリコーン組成物に悪影響を与え易い。
【0023】
−(C)成分−
(C)成分の熱伝導性充填剤としては、金、銀、銅、アルミニウム等の金属の粉末、酸化銀、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉄等の金属酸化物の粉末、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物の粉末、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩の粉末、及び、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化炭素等の熱伝導性改良剤として公知の窒化物等が挙げられる。これらの1種単独でも2種以上を組合わせても用いることができる。特に熱伝導性充填剤としては、銀、銅、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウムが好ましい。
【0024】
(C)成分の配合量は、紫外線硬化型シリコーン組成物100質量部に対して100〜4,000質量部であり、特に200〜4,000質量部とすることが好ましい。熱伝導性充填剤が少なすぎる場合には熱伝導特性が不十分であり、熱伝導性充填剤が多すぎる場合には紫外線硬化型シリコーン組成物との混練りが不能となることがある。
【0025】
−その他の成分−
本発明の紫外線硬化型熱伝導性シリコーン組成物に、更に必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で各種の成分を配合することができる。
【0026】
例えば充填剤を配合してもよい。この充填剤としてはガラスウール、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、微粉マイカ、溶融シリカ粉末、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等の合成樹脂粉末が例示される。これらの充填剤の配合量は本発明の目的を損なわない限り任意とされ、またこれらは使用にあたり予め乾燥処理をして水分を除去しておくことが好ましい。これらの充填剤の表面は無処理であってもシランカップリング剤やオルガノポリシロキサン、脂肪酸等で処理されていてもよい。
【0027】
また、本発明の組成物には、添加剤として、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、酸化アンチモン、塩化パラフィン等の難燃剤などを配合することができる。
【0028】
更に、ポリエーテル等のチクソ性向上剤、防かび剤、抗菌剤、接着助剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン類等を配合することができる。
【0029】
本発明の紫外線硬化型熱伝導性シリコーン組成物は、上記各成分、更にはこれに充填剤及び上記各種添加剤を、乾燥雰囲気中において均一に混合することにより得ることができる。
【0030】
なお、本発明の紫外線硬化型熱伝導性シリコーン組成物の硬化条件については、紫外線照射装置やそれに準拠した方法にて硬化を行う。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例中の粘度は23℃での測定値を示したものである。
【0032】
[実施例1]
式:
【0033】
(CH=CHCOOCHSi(CHO)−Si(CH)−C
−Si(CH−(O−Si(CH198
−(O−Si(C))22
−C−Si(CH)−(O−Si(CHCHOCOCH=CH
で表される粘度3,000mm/sのオルガノポリシロキサン10質量部と、粘度3,000mm/sの分子鎖両末端がビニル基で封鎖されたジメチルジフェニルポリシロキサン90質量部に、光反応開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを2質量部、及び熱伝導性充填剤としてアルミナAS−30(昭和電工(株)製酸化アルミニウム粉)500質量部とアルミナAL−47−1(昭和電工(株)製酸化アルミニウム粉)250質量部を無水の状態で混合し、次いで脱泡混合処理を行って組成物を調製した。
【0034】
[実施例2]
式:
(CH=CHCOOCHSi(CHO)−Si(CH)−C
−Si(CH−(O−Si(CH198
−(O−Si(C))22
−C−Si(CH)−(O−Si(CHCHOCOCH=CH
で表される粘度3,000mm/sのオルガノポリシロキサン20質量部と、粘度3,000mm/sの分子鎖両末端がビニル基で封鎖されたジメチルジフェニルポリシロキサン80質量部に、光反応開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを2質量部、及び熱伝導性充填剤としてアルミナAS−30(昭和電工(株)製酸化アルミニウム粉)500質量部とアルミナAL−47−1(昭和電工(株)製酸化アルミニウム粉)250質量部を無水の状態で混合し、次いで脱泡混合処理を行って組成物を調製した。
【0035】
[実施例3]
式:
(CH=CHCOOCHSi(CHO)−Si(CH)−C
−Si(CH−(O−Si(CH198
−(O−Si(C))22
−C−Si(CH)−(O−Si(CHCHOCOCH=CH
で表される粘度3,000mm/sのオルガノポリシロキサン100質量部に、光反応開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを2質量部、及び熱伝導性充填剤としてアルミナAS−30(昭和電工(株)製酸化アルミニウム粉)500質量部とアルミナAL−47−1(昭和電工(株)製酸化アルミニウム粉)250質量部を無水の状態で混合し、次いで脱泡混合処理を行って組成物を調製した。
【0036】
[実施例4]
式:
(CH=CHCOOCO)−Si(CH)−C
−Si(CH−(O−Si(CH198
−(O−Si(C22
−C−Si(CH)−(O−COCOCH=CH
で表される粘度3,000mm/sのオルガノポリシロキサン20質量部と、粘度3,000mm/sの分子鎖両末端がビニル基で封鎖されたジメチルジフェニルポリシロキサン80質量部に、光反応開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを2質量部、及び熱伝導性充填剤としてアルミナ(AS−30)500質量部とアルミナ(AL−47−1)250質量部を無水の状態で混合し、次いで脱泡混合処理を行って組成物を調製した。
【0037】
[実施例5]
式:
CH=CHCOOCHSi(CHO−Si(CH−C
−Si(CH−(O−Si(CH148
−C−Si(CH−O−Si(CHCHOCOCH=CH
で表される粘度1,000mm/sのオルガノポリシロキサン20質量部と、粘度3,000mm/sの分子鎖両末端がビニル基で封鎖されたジメチルジフェニルポリシロキサン80質量部に、光反応開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを2質量部、及び熱伝導性充填剤として(アルミナAS−30)500質量部とアルミナ(AL−47−1)250質量部を無水の状態で混合し、次いで脱泡混合処理を行って組成物を調製した。
【0038】
上記実施例1〜5にて調製した組成物をガラスシャーレ(40mmφ×20mmH)に入れ、紫外線を照射し、組成物の硬化性を評価した。紫外線の照射には紫外線照射装置・ASE−20(日本電池(株)製:商品名)を使用し、照射量2.0J/cmとした。結果を表1に示す。
【0039】
[比較例1]
粘度700mm/sの分子鎖両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100質量部にフェニルトリ(イソプロペニルオキシ)シラン10質量部、3−アミノプロピルトリエトキシシラン1質量部、1,1,3,3−テトラメチル−2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]グアニジン0.8質量部、及び熱伝導性充填剤としてアルミナ(AS−30)500質量部とアルミナ(AL−47−1)250質量部を無水の状態で混合し、次いで脱泡混合処理を行って組成物を調製した。
【0040】
上記比較例1にて調製した組成物をガラスシャーレ(40mmφ×20mmH)に入れ、23℃/50%RHの温度湿度条件下で7日間放置して、組成物の硬化性を評価した。結果を表2に示す。
【0041】
[比較例2]
粘度600mm/sの分子鎖両末端がビニル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100質量部に、分子側鎖にSiH基を平均16個有する粘度100mm/sのメチルハイドロジェンポリシロキサン6質量部、塩化白金酸のビニルシロキサン錯体を、混合物全量に対して白金量が10ppmとなる量で添加し、エチニル−シクロヘキサノール/50%トルエン溶液を0.15質量部、及び熱伝導性充填剤としてアルミナ(AS−30)500質量部とアルミナ(AL−47−1)250質量部を無水の状態で混合し、次いで脱泡混合処理を行って組成物を調製した。
【0042】
上記比較例2にて調製した組成物をガラスシャーレ(40mmφ×20mmH)に入れ、120℃のオーブンで1時間加熱して、組成物の硬化性を評価した。結果を表2に示す。
【0043】
[比較例3]
式:
(CH=CHCOOCHSi(CHO)−Si(CH)−C
−Si(CH−(O−Si(CH198
−(O−Si(C22−C−Si(CH)−
−(O−Si(CHCHOCOCH=CH
で表される粘度3,000mm/sのオルガノポリシロキサン20質量部と、粘度3,000mm/sの分子鎖両末端がビニル基で封鎖されたジメチルジフェニルポリシロキサン80質量部に、光反応開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン2質量部、及び熱伝導性充填剤としてアルミナ(AS−30)60質量部とアルミナ(AL−47−1)30質量部を無水の状態で混合し、次いで脱泡混合処理を行って組成物を調製した。
【0044】
上記比較例3にて調製した組成物をガラスシャーレ(40mmφ×20mmH)に入れ、紫外線を照射し、組成物の硬化性を評価した。紫外線の照射には紫外線照射装置・ASE−20(日本電池(株)製:商品名)を使用し、照射量2.0J/cmとした。結果を表2に示す。
【0045】
[比較例4]
(CH=CHCOOCHSi(CHO)−Si(CH)−C
−Si(CH−(O−Si(CH198
−(O−Si(C22−C−Si(CH)−
−(O−Si(CHCHOCOCH=CH
で表される粘度3,000mm/sのオルガノポリシロキサン20質量部と、粘度3,000mm/sの分子鎖両末端がビニル基で封鎖されたジメチルジフェニルポリシロキサン80質量部に、光反応開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン2質量部、及び熱伝導性充填剤としてアルミナ(AS−30)3,000質量部とアルミナ(AL−47−1)1,500質量部を無水の状態で混合したが、オイル分に比して充填剤量が多過ぎるためうまく混練できず、均一な組成物を調製することはできなかった。
実施例、比較例の硬化物は以下の指標にて評価した。
【0046】
[表面硬化性]:指触により評価した。
○:表面が均一に硬化し、かつ表面にタック感なし。
×:表面の硬化が不均一、または表面にタック感あり。
【0047】
[深部硬化性]:硬化物を切断して露出した深部の切断面を指触により評価した。
○:切断面にタック感があり、未硬化である。
×:切断面にタック感がなく、硬化している。
【0048】
[体積変化]:組成物の硬化前後における体積を比較した。
○:体積変化なし。
△:体積変化小。
×:体積変化大。
【0049】
[熱伝導率]:23±2℃/50±5%RHで14日間放置して硬化させることにより、厚さ12mmのブロック体を作製した。このブロック体について熱伝導率計(商品名:Kemtherm QTM−D3迅速熱伝導率計、京都電子工業(株)製)を使用して熱伝導率を測定した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
表1及び表2の結果から、本発明の熱伝導性シリコーン組成物によれば、組成物を硬化しても回路素子へ応力を防止でき、また硬化時の体積変化による光部品の光軸を変化を回避することができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(I)
【化1】


(ここでXは−CH−または−SiR−であり、Zは酸素原子または二価の炭化水素である。また、Rは水素原子またはメチル基、R、RおよびRは同一もしくは異種の非置換もしくは置換された一価炭化水素基である。さらに、a及びbは独立に1から3の整数である)で示される基を1分子中に平均0.2〜2個有するオルガノポリシロキサン
100質量部、
(B)光反応開始剤 0.01〜10質量部、及び
(C)熱伝導性充填剤 100〜4,000質量部
を含有することを特徴とする紫外線硬化型熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項2】
(C)成分の熱伝導性充填剤が金属粉末、金属酸化物粉末、金属炭酸塩粉末、金属水酸化物粉末、及び窒化物粉末からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱伝導性充填剤であることを特徴とする請求項1に係る紫外線硬化型熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が金属粉末であり、その金属粉末が、銀、銅及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の粉末であることを特徴とする請求項2に係る紫外線硬化型熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項4】
前記(C)成分が金属酸化物粉末であり、その金属酸化物粉末が、酸化アルミニウム、酸化チタン、及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物の粉末であることを特徴とする請求項2に係る紫外線硬化型熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項5】
前記(C)成分が金属水酸化物粉末であり、その前記金属水酸化物粉末が水酸化アルミニウム粉末であることを特徴とする請求項2に係る紫外線硬化型熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項6】
前記(C)成分が窒化物粉末であり、その窒化物粉末が窒化ホウ素及び窒化アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の窒化物の粉末であることを特徴とする請求項2に係る紫外線硬化型熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の紫外線硬化型熱伝導性シリコーン組成物に紫外線を照射することにより硬化させて得られる硬化物。

【公開番号】特開2008−94877(P2008−94877A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275159(P2006−275159)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】