説明

細胞賦活剤

【課題】優れた細胞賦活作用を有する細胞賦活剤を提供する。
【解決手段】シソ科植物であるサルビア・ヒスパニカ(Salvia hispanica)の種又はその抽出物を含むものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物由来の細胞賦活剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
老化は全身の臓器で進行しているが、その中でも目で見ることができる皮膚、とりわけ意識が集中しやすい顔面については、老化とともに発生するシワ及び小ジワ、たるみ、しみなどの老徴が世の多くの中高年齢者、とりわけ女性を悩ませている。最近では女性だけでなく男性でも若く見られたいという願望が強くなってきており、老化に伴って現れる皮膚の老徴現象を緩和することが望まれている。このような点から、見かけを若く保ったり、あるいは老化現象を緩和させてシワ、たるみ、しみなどを予防・改善することの必要性が叫ばれてきていた。
【0003】
皮膚老徴や機能低下の原因は様々あるが、ひとつの要因として線維芽細胞の関与が挙げられる。線維芽細胞は真皮内に存在し、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などを産生する細胞であり、コラーゲンを線維束にして真皮構造を形成するのに寄与することが知られている。この線維芽細胞が加齢や紫外線暴露によって損傷を受けたり減少したり等すると規則性をもった線維を生成できなくなり、シワやたるみといった肌老化が生じる。
従って、この線維芽細胞に対して賦活作用のある成分は、老化防止剤の有効成分として有用である。
このような知見に基づき、線維芽細胞の増殖を促し賦活させることによって、皮膚機能の維持や老化現象の遅延又は改善を図ることを目的として、細胞賦活作用を有する種々の成分、とりわけ肌への穏やかさを期待して植物をはじめとする天然物由来の成分が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、サクラソウ科サクラソウ属植物抽出物を有効成分とする細胞賦活剤が記載され、この成分は抗酸化作用も有するものであって、加齢や紫外線等の外来ストレスにより生じる皮膚の老化症状を効果的に予防・改善できるとされている。
特許文献2には、マンゴスチン、マンゴー等の果実抽出物を含む線維芽細胞賦活剤が記載され、皮膚老化防止や肌荒れの予防・改善に有効であるとされている。
特許文献3には、2分子以上の糖がβ1−4結合している水溶性糖類を含有する線維芽細胞賦活剤が記載されている。
特許文献4にはオヒルギ属(Bruguiera)植物抽出物を有効成分とする細胞賦活剤が記載されている。
特許文献5にはシノブゴケ科シノブゴケ属チャボシノブゴケ(Thuidium bipinnatulum)の抽出物を含有することを特徴とする細胞賦活剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3507055号(特開2003−252740)
【特許文献2】特開2006−249051
【特許文献3】特開2009−67758
【特許文献4】特許第4245862号
【特許文献5】特許第4567306号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これら特許文献1〜5に記載された発明では、いずれの有効成分も水溶性であるため皮膚表面から真皮へ有効に浸透するには難があり、線維芽細胞賦活作用についての市場の高い要求に答えるためには、より優れた線維芽細胞賦活作用を示す物質が望まれていた。
本発明はこのような従来の事情に対処してなされたもので、新しい植物由来の細胞賦活剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、このような現状に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、特定の植物に優れた細胞賦活作用があり、特に細胞賦活剤として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、シソ科植物であるサルビア・ヒスパニカ(Salvia hispanica)の種又はその抽出物を含むことを特徴とする細胞賦活剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の細胞賦活剤は、線維芽細胞を賦活させてコラーゲン、エラスチンなどの細胞外マトリックスの産生を促し、シワを含む皮膚老化を防止・抑制したり、皮膚損傷を修復することができるものである。また、天然物由来の成分を用いていることから、人又は動物に対して内服又は外用しても安全なものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】チアシードの酢酸エチル抽出物を用いた時の線維芽細胞賦活度(%)を示す図である。
【図2】チアシードのアセトン抽出物を用いた時の線維芽細胞賦活度(%)を示す図である。
【図3】チアシードのクロロホルム抽出物を用いた時の線維芽細胞賦活度(%)を示す図である。
【図4】チアシードのヘキサン抽出物を用いた時の線維芽細胞賦活度(%)を示す図である。
【図5】チアシードのメタノール抽出物を用いた時の線維芽細胞賦活度(%)を示す図である。
【図6】チアシードのエタノール抽出物を用いた時の線維芽細胞賦活度(%)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳述する。
本発明の細胞賦活剤は、真皮線維芽細胞を用いた細胞賦活試験で優れた線維芽細胞増殖促進能を有していることが見出された。本発明の細胞賦活剤は、医薬品(例えば皮膚外用剤、内服剤),医薬部外品,および化粧料の材料として好適である。また、飲食品(例えばサプリメント,飲料)にも適用することができる。
【0012】
本発明で用いられるサルビア・ヒスパニカ(Salvia hispanica)は、シソ科サルビア属のミント系植物で別名チアとも称されており、その種はチアシードと称される。本発明においては、サルビア・ヒスパニカ(Salvia hispanica)の種またはその抽出物が用いられ、特に種から得られるチアオイルであることが好ましい。
【0013】
サルビア・ヒスパニカ(Salvia hispanica)については、その種(チアシード)由来の油(チアオイル)とポリカチオン性のカゼインホスホペプチド複合物とを含む抗酸化組成物が知られている(国際公開WO2005/084452)。
しかしこの抗酸化組成物は、エマルジョンを形成している食品や化粧料等の中で起こる酸化反応を低減し、安定性を高めるための組成物であって、細胞賦活作用に直接繋がるものではない。サルビア・ヒスパニカ(Salvia hispanica)の種またはその抽出物に細胞賦活作用があるという報告はこれまでになく、本発明者らによって初めて見出されたものである。
【0014】
尚、本発明で使用するサルビア・ヒスパニカの種又はその抽出物とは、サルビア・ヒスパニカの種をそのまま又は乾燥したものを圧搾してチアオイルとしたもの、あるいはそのまま或いは圧搾後、またはこれらを乾燥後、溶媒で抽出したものを指す。
【0015】
抽出物の場合、抽出に用いられる抽出溶媒は、水以外の通常抽出に用いられる溶媒であれば何でもよいが、特に酢酸エチルエステル、アセトン、クロロホルム、ヘキサン、メタノール、エタノール、含水エタノールを単独あるいは組み合わせて用いることが好ましい。また前記溶媒は、室温乃至溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。更には、超臨界抽出や、これらより得られる成分を蒸留、活性炭処理、水蒸気蒸留やこれらを組合わせて処理したものを用いてもよい。また、得られた成分を、他の媒体(前述の溶媒や、珪酸カルシウム等の粉末)に転化、レシチンなどのリポソーム製剤や、カプセル化するなどして用いてもよい。
【0016】
本発明の細胞賦活剤はサルビア・ヒスパニカの種又はその抽出物(乾燥質量)からなるものであることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲において他の種々の成分を含有することが出来る。
【0017】
本発明に関わるサルビア・ヒスパニカの種由来の成分は、後記するように優れた線維芽細胞賦活効果を有する。したがって、本発明はサルビア・ヒスパニカの種由来の成分を有効成分とする老化防止用皮膚外用剤として用いるのが好適である。
【0018】
本発明における細胞賦活剤を老化防止用皮膚外用剤中に含ませる場合、前記細胞賦活剤の含有量は、好ましくは0.0001〜20質量%であり、より好ましくは0.001〜10質量%である。
【0019】
前記老化防止用皮膚外用剤は常法に従って製造することができる。
老化防止用皮膚外用剤を構成する成分としては、通常本発明の効果を損なわない範囲で、医薬部外品を含む化粧品や医薬品等の皮膚外用剤等に用いられる他の成分を、必要に応じて適宜配合することができる。更に、前記細胞賦活剤を他の薬効剤の一種又は二種以上と組み合わせて配合することによって、細胞賦活効果をより高めた、もしくは細胞賦活効果とともに他の薬効も奏する皮膚外用剤を調製することができる。他の薬効剤の例には、美白剤、紫外線防御剤、抗菌剤、抗炎症剤、他の細胞賦活剤、活性酸素除去剤、及び保湿剤などが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0020】
また、前記老化防止用皮膚外用剤には、本発明の細胞賦活剤以外の任意の成分を配合することができる。そのような成分としては、例えば、アミノ酸、脂質、糖、ホルモン、酵素、核酸などの生理活性物質等を挙げることができるが、これらに限定されることはない。また、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料や医薬部外品、皮膚外用剤等の製造に通常使用される成分、例えば、水(精製水、温泉水、深層水等)、油剤、界面活性剤、金属セッケン、ゲル化剤、粉体、アルコール類、水溶性高分子、皮膜形成剤、樹脂、包接化合物、香料、消臭剤、塩類、pH調整剤、清涼剤、植物・動物・微生物由来の抽出物、血行促進剤、収斂剤、抗脂漏剤、キレート剤、角質溶解剤、酵素、ホルモン類、他のビタミン類等を必要に応じて用いることができる。
【0021】
その他、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸およびその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、火棘の果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸およびその誘導体またはその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸、アルコキシサリチル酸および/またはその塩類等の他の美白剤、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類なども適宜配合することができる。
【0022】
前記老化防止用皮膚外用剤は肌に適用することでシワの形成の予防及び/又は形成されたシワの軽減・消失を図るための美容方法に利用できる。かかる美容方法における老化防止用皮膚外用組成物の用法、用量は特に限定されるものではなく、剤型や処置する肌のシワの状態により適宜決定されるが、典型的には、1日当たり数回、例えば1回〜5回、適量、例えば1cm2当たり0.1mlから1ml、肌に直接すり込むか、又は適量をガーゼ等に染み込ませてから肌に貼付して使用することができる。
【0023】
前記老化防止用皮膚外用剤の剤型としては、本発明の効果を発揮できるものであれば特に限定されず、例えば、石鹸、リップスティックなどの固体系、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水−油二層系、水−油−粉末三層系、軟膏、ゲル、エアゾール等任意の剤型をとることができる。但し、これらに限定されるものではない。
【0024】
前記老化防止用皮膚外用剤は、例えば、医薬部外品を含む化粧品、医薬品の分野で応用され、その製品形態としては、例えば、軟膏、クリーム、乳液、化粧水、エッセンス、ゼリー、ジェル、パック、マスク、ファンデーション、マイクロニードル等の任意の形態をとることができる。
【0025】
本発明の細胞賦活剤を飲食品や飼料等に配合する場合、植物体またはその抽出物の配合量(乾燥質量)は、それらの種類、目的、形態、利用方法などに応じて、適宜決めることができ、例えば、飲食品全量中に錠剤やカプセル剤等の場合は1〜90質量%が好ましく、その他の飲食品では0.001〜50質量%が好ましい。成人一日当たり植物またはその抽出物の摂取量が約1〜10g程度になるように調製することが好ましい。特に、保健用飲食品等として利用する場合には、本発明の有効成分を所定の効果が十分発揮されるような量で含有させることが好ましい。
【0026】
飲食品や飼料の形態としては、例えば、顆粒状、粒状、ペースト状、ゲル状、固形状、または、液体状に任意に成形することができる。これらには、飲食品等に含有することが認められている公知の各種物質、例えば、結合剤、崩壊剤、増粘剤、分散剤、再吸収促進剤、矯味剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤やpH調製剤などの賦形剤を適宜含有させることができる。
【0027】
本発明の細胞賦活剤を医薬製剤として用いる場合、該製剤は経口的にあるいは非経口的(静脈投与、腹腔内投与、等)に適宜に使用される。剤型も任意で、例えば錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口用固形製剤や、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤、または、注射剤などの非経口用液体製剤など、いずれの形態にも公知の方法により適宜調製することができる。これらの医薬製剤には、通常用いられる結合剤、崩壊剤、増粘剤、分散剤、再吸収促進剤、矯味剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤やpH調整剤などの賦形剤を適宜使用してもよい。
【0028】
本発明の細胞賦活剤を、皮膚外用剤、飲食品、医薬製剤等として用いる場合、線維芽細胞増殖機能が低下することによって生じる皮膚老化を防止・抑制して皮膚のたるみ・シワ、ハリ・弾力の低下などの症状や疾病の予防・治療等に好適に用いられる。食品に添加した場合には、かかる食品を摂取することで、抗老化効果、線維芽細胞賦活効果を内から発揮することが期待される。また、線維芽細胞賦活作用が促進されることにより皮膚損傷の修復に役立つものである。
また上記症状や病態等の治療、予防、改善等の生理機能をコンセプトとして、その旨を表示した皮膚外用剤、機能性飲食品、特定保健用食品等に応用することができる。
【0029】
尚、本発明の細胞賦活剤の皮膚外用剤又は飲食品などへの添加の方法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【実施例】
【0030】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。
最初に、本実施例で用いた植物抽出物の調製方法、線維芽細胞賦活効果に関する試験方法とその結果について説明する。
【0031】
1.試料の調製
(1)チアシードの酢酸エチル抽出物の調製
チアシードの圧搾物20.024gに酢酸エチル200mLを加え、室温で7日間浸漬後、ろ過した。ろ液の溶媒を留去し、オイル状の不揮発性抽出物5.43g(収率27.1質量%)を得た。
(2)チアシードのアセトン抽出物の調製
チアシードの圧搾物20.016gにアセトン200mLを加え、室温で7日間浸漬後、ろ過した。ろ液の溶媒を留去し、オイル状の不揮発性抽出物5.63g(収率28.2質量%)を得た。
(3)チアシードのクロロホルム抽出物の調製
チアシードの圧搾物18.851gにクロロホルム180mLを加え、室温で7日間浸漬後、ろ過した。ろ液の溶媒を留去し、オイル状の不揮発性抽出物4.78g(収率25.4質量%)を得た。
(4)チアシードのヘキサン抽出物の調製
チアシードの圧搾物20.019gにヘキサン200mLを加え、室温で7日間浸漬後、ろ過した。ろ液の溶媒を留去し、オイル状の不揮発性抽出物5.120g(収率25.6質量%)を得た。
(5)チアシードのメタノール抽出物の調製
チアシードの圧搾物20.074gにメタノール200mLを加え、室温で7日間浸漬後、ろ過した。ろ液の溶媒を留去し、オイル状の不揮発性抽出物2.023g(収率10.1質量%)を得た。
(6)チアシードのエタノール抽出物の調製
チアシードの圧搾物20.051gにエタノール200mLを加え、室温で7日間浸漬後、ろ過した。ろ液の溶媒を留去し、オイル状の不揮発性抽出物3.70g(収率18.5質量%)を得た。
【0032】
2.抽出液の線維芽細胞賦活試験
(1)試験方法
ヒト新生児由来の線維芽細胞を10%ウシ子牛血清(FBS)含有ダルベッコ変法イーグルMEM培地(DMEM、ニッスイ)中に接種し、続いて24穴プレートに播種し、37℃、二酸化炭素濃度5vol%の雰囲気中に静置した。細胞接着後、培地を低濃度血清(0.5%)を含む培地に交換し、1昼夜続けて培養した。
その後、前記で調製した抽出液を用いて、培地に対して試料濃度が0、0.005、0.01、及び0.1体積%となるように検体調製液を添加して混和した。培養3日目に各検体調製液で生育させた線維芽細胞の細胞数をアラマブルー溶液を用いて測定し、抽出液を添加していないものを対照として線維芽細胞賦活度を評価した。
また、このとき5%ウシ子牛血清(FBS)含有ダルベッコ変法イーグルMEM培地にて同条件にて培養した細胞を、増殖の陽性対照(%)とした。
【0033】
(2)アラマブルー溶液による評価結果
各検体調製液を添加して生育させた培地を、新鮮な培地に交換し、アラマブルー試薬を添加培地の10分の1量加えて培養後、励起波長544nm、蛍光波長590nmで測定し蛍光強度を求め、抽出液を添加していないもの(ジメチルスルホキシド溶媒のみのもの)を100%として線維芽細胞賦活度を評価した。その結果を図1〜6に示す。
【0034】
図1はチアシードの酢酸エチル抽出物を用いた時の線維芽細胞賦活度(%)である。陽性対照(%)は212%であった。
図2はチアシードのアセトン抽出物を用いた時の線維芽細胞賦活度(%)である。陽性対照(%)は242%であった。
図3はチアシードのクロロホルム抽出物を用いた時の線維芽細胞賦活度(%)である。陽性対照(%)は225%であった。
図4はチアシードのヘキサン抽出物を用いた時の線維芽細胞賦活度(%)である。陽性対照(%)は248%であった。
図5はチアシードのメタノール抽出物を用いた時の線維芽細胞賦活度(%)である。陽性対照(%)は286%であった。
図6はチアシードのエタノール抽出物を用いた時の線維芽細胞賦活度(%)である。陽性対照(%)は227%であった。
【0035】
図1〜6から分かるように、本発明によるサルビア・ヒスパニカの種(チアシード)からの抽出液は、ヒト新生児由来の線維芽細胞に対して高い細胞賦活能を有していることが認められた。従って、本発明の細胞賦活剤は、肌に適用することにより皮膚線維芽細胞に対する極めて優れた作用を発揮し、加齢、紫外線曝露等により生じる皮膚のシワ、たるみ等を効果的に予防・改善することができる。また、チアシード抽出物は、いずれの抽出溶媒を用いた時も優れた細胞賦活活性を有するものであり、抽出溶媒の種類によって最適濃度が異なるものであった。
【0036】
以下に本発明に係る細胞賦活剤の製剤例を示す。なお、いずれの外用剤も優れたシワ防止・改善効果を有していた。
【0037】
製剤例1:シワ防止・改善用クリーム
成分 配合量(質量%)
ステアリン酸 5.0
ステアリルアルコール 4.0
イソプロピルミリステート 18.0
グリセリンモノステアリン酸エステル 3.0
プロピレングリコール 10.0
本細胞賦活剤 0.01
(チアシードのヘキサン抽出物)
レチノール 0.05
苛性カリ 0.2
亜硫酸水素ナトリウム 0.01
防腐剤 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
【0038】
(製法)
イオン交換水にプロピレングリコールと苛性カリを加え溶解し加熱して70℃に保った(水相)。他の成分を混合し加熱融解して70℃に保った(油相)。水相に油相を徐々に加え、全部加え終わってからしばらくその温度に保ち反応を起こさせた。その後ホモミキサーで均一に乳化し、よくかきまぜながら30℃まで冷却して製造した。
【0039】
製剤例2:シワ防止・改善用クリーム
成分 配合量(質量%)
ステアリン酸 6.0
ソルビタンモノステアリン酸エステル 2.0
ポリオキシエチレン(20モル)
ソルビタンモノステアリン酸エステル 1.5
プロピレングリコール 10.0
本細胞賦活剤 0.1
(チアシードの酢酸エチル抽出物)
カルノシン 1.0
グリセリントリオクタノエート 10.0
スクワレン 5.0
亜硫酸水素ナトリウム 0.01
エチルパラベン 0.3
香料 適量
イオン交換水 残余
【0040】
(製法)
イオン交換水にプロピレングリコールを加え溶解し加熱して70℃に保つ(水相)。他の成分を混合し加熱融解して70℃に保った(油相)。水相に油相を加え、予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よくかきまぜながら30℃まで冷却して製造した。
【0041】
製剤例3:シワ防止・改善用クリーム
成分 配合量(質量%)
ステアリルアルコール 7.0
ステアリン酸 2.0
水添ラノリン 2.0
スクワラン 5.0
2−オクチルドデシルアルコール 6.0
ポリオキシエチレン(25モル)セチルアルコールエーテル 3.0
グリセリンモノステアリン酸エステル 2.0
プロピレングリコール 5.0
本細胞賦活剤 1.0
(チアシードのアセトン抽出物)
香料 適量
亜硫酸水素ナトリウム 0.03
エチルパラベン 0.3
イオン交換水 残余
【0042】
(製法)
イオン交換水にプロピレングリコールを加え溶解し加熱して70℃に保った(水相)。他の成分を混合し加熱融解して70℃に保った(油相)。水相に油相を加え予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よくかきまぜながら30℃まで冷却して製造した。
【0043】
製剤例4:シワ防止・改善用乳液
成分 配合量(質量%)
ステアリン酸 2.5
セチルアルコール 1.5
ワセリン 5.0
流動パラフィン 10.0
ポリオキシエチレン(10モル)モノオレイン酸エステル 2.0
ポリエチレングリコ−ル1500 3.0
トリエタノールアミン 1.0
本細胞賦活剤 0.005
(チアシードのメタノール抽出物)
レチノール 0.005
亜硫酸水素ナトリウム 0.01
エチルパラベン 0.3
カルボキシビニルポリマー 0.05
香料 適量
イオン交換水 残余
【0044】
(製法)
少量のイオン交換水にカルボキシビニルポリマーを溶解した(A相)。残りのイオン交換水にポリエチレングリコール1500とトリエタノールアミンを加え加熱溶解して70℃に保った(水相)。他の成分を混合し加熱融解して70℃に保った(油相)。水相に油相を加え予備乳化を行い、A相を加えホモミキサーで均一に乳化し、乳化後よくかきまぜながら30℃まで冷却して製造した。
【0045】
製剤例5:シワ防止・改善用乳液
成分 配合量(質量%)
(油相部)
ステアリルアルコール 1.5
スクワレン 2.0
ワセリン 2.5
脱臭液状ラノリン 1.5
月見草油 2.0
本細胞賦活剤 0.1
(チアシードのエタノール抽出物)
ミリスチン酸イソプロピル 5.0
グリセリンモノオレート 2.0
ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 2.0
酢酸トコフェロール 0.05
エチルパラベン 0.2
ブチルパラベン 0.1
エチルグリシン 1.0
香料 適量
(水相部)
亜硫酸水素ナトリウム 0.01
グリセリン 5.0
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
カルボキシビニルポリマー 0.2
水酸化カリウム 0.2
精製水 残余
【0046】
(製法)
油相部を70℃にて溶解した。水相部を70℃にて溶解し、水相部に油相部を混合し、乳化機で乳化後熱交換機で30℃まで冷却して製造した。
【0047】
製剤例6:シワ防止・改善用ゼリー
成分 配合量(質量%)
95%エチルアルコール 10.0
ジプロピレングリコール 15.0
ポリオキシエチレン(50モル)オレイルアルコールエーテル 2.0
カルボキシビニルポリマー 1.0
苛性ソーダ 0.15
L−アルギニン 0.1
本細胞賦活剤 0.001
(チアシードのエタノール抽出物)
メチルパラベン 0.2
香料 適量
イオン交換水 残余
【0048】
(製法)
イオン交換水にカルボキシビニルポリマーを均一に溶解し、一方、95%エタノールにサルコシン、ポリオキシエチレン(50モル)オレイルアルコールエーテルを溶解し、水相に添加した。次いで、その他の成分を加えた後、苛性ソーダ、L−アルギニンで中和させ増粘して製造した。
【0049】
製剤例7:シワ防止・改善用美容液
成分 配合量(質量%)
(A相)
エタノール(95%) 10.0
ポリオキシエチレン(20モル)オクチルドデカノール 1.0
本細胞賦活剤 1.0
(チアシードのクロロホルム抽出物)
メチルパラベン 0.15
パントテニールエチルエーテル 0.1
(B相)
水酸化カリウム 0.1
(C相)
グリセリン 5.0
ジプロピレングリコール 10.0
亜硫酸水素ナトリウム 0.03
カルボキシビニルポリマー 0.2
精製水 残余
【0050】
(製法)
A相、C相をそれぞれ均一に溶解し、C相にA相を加えて可溶化した。次いで、B相を加えた後充填を行い製造した。
【0051】
製剤例8:シワ防止・改善用パック
成分 配合量(質量%)
(A相)
ジプロピレングリコール 5.0
ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 5.0
(B相)
オリーブ油 5.0
酢酸トコフェノール 0.2
エチルパラベン 0.2
香料 0.2
(C相)
亜硫酸水素ナトリウム 0.03
本細胞賦活剤 0.1
(チアシードの酢酸エチル抽出物)
ポリビニルアルコール(ケン化度90、重合度2000) 13.0
エタノール 7.0
精製水 残余
【0052】
(製法)A相、B相、C相をそれぞれ均一に溶解し、A相にB相を加えて可溶化した。ついで、これをC相に加えた後充填を行い製造した。
【0053】
製剤例9:シワ防止・改善用軟膏
成分 配合量(質量%)
ポリオキシエチレン(30モル)セチルエーテル 2.0
グリセリンモノステアレート 10.0
流動パラフィン 10.0
ワセリン 40.0
セタノール 6.0
メチルパラベン 0.1
ブチルパラベン 0.1
グリセリンモノステアリン酸エステル 2.0
本細胞賦活剤 5.0
(チアシードのアセトン抽出物)
プロピレングリコール 10.0
イオン交換水 残余
香料 適量
【0054】
(製法)イオン交換水にプロピレングリコールを加え、溶解し加熱して70℃に保った(水相)。他の成分を70℃にて混合溶解した(油相)。上記水相に油相を添加し、ホモミキサーで均一に乳化し、冷却後充填を行い製造した。
【0055】
製剤例10:シワ防止・改善用クリーム
成分 配合量(質量%)
流動パラフィン 8.0
ワセリン 3.0
ジメチルポリシロキサン 2.0
ステアリルアルコール 3.0
ベヘニルアルコール 2.0
グリセリン 5.0
ジプロピレングリコール 4.0
トレハロース 1.0
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 4.0
モノイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 2.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1.0
親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
クエン酸 0.05
クエン酸ナトリウム 0.05
水酸化カリウム 0.015
油溶性甘草エキス 0.1
レチノールパルミテート(100万単位) 0.25
本細胞賦活剤 1.0
(チアシードの酢酸エチル抽出物)
酵母エキス 3.5
酢酸トコフェロール 0.1
パラオキシ安息香酸エステル 適量
フェノキシエタノール 適量
ジブチルヒドロキシトルエン 適量
エデト酸三ナトリウム 0.05
4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 0.01
パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 0.1
β−カロチン 0.01
ポリビニルアルコール 0.5
ヒドロキシエチルセルロース 0.5
カルボキシビニルポリマー 0.05
精製水 残余
香料 適量
【0056】
製剤例11:シワ防止・改善用クリーム
成分 配合量(質量%)
ワセリン 2.0
ジメチルポリシロキサン 2.0
エタノール 5.0
ベヘニルアルコール 0.5
バチルアルコール 0.2
グリセリン 7.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
ポリエチレングリコール20000 0.5
ホホバ油 3.0
スクワラン 2.0
ヒドロキシステアリン酸フィトステリル 0.5
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 1.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
水酸化カリウム 0.1
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.01
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05
グリチルレチン酸ステアリル 0.1
パントテニルエチルエーテル 0.1
ミシマサイコ根エキス 2.0
トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩 11.0
本細胞賦活剤 1.0
(チアシードの酢酸エチル抽出物)
カルノシン 3.5
酢酸トコフェロール 0.1
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
パラオキシ安息香酸エステル 適量
エデト酸三ナトリウム 0.05
4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 0.1
ジパラメトキシ桂皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.1
黄酸化鉄 適量
キサンタンガム 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.2
精製水 残余
【0057】
製剤例12:シワ防止・改善用クリーム
成分 配合量(質量%)
ワセリン 2.0
ジメチルポリシロキサン 2.0
エタノール 5.0
ベヘニルアルコール 0.5
バチルアルコール 0.2
グリセリン 7.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
ポリエチレングリコール20000 0.5
ホホバ油 3.0
スクワラン 2.0
ヒドロキシステアリン酸フィトステリル 0.5
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 1.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
水酸化カリウム 0.1
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.01
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05
グリチルレチン酸ステアリル 0.1
パントテニルエチルエーテル 0.1
シカクマメエキス 1.0
トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩 11.0
本細胞賦活剤 0.01
(チアシードのヘキサン抽出物)
酢酸トコフェロール 0.1
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
パラオキシ安息香酸エステル 適量
エデト酸三ナトリウム 0.05
4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 0.1
ジパラメトキシ桂皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.1
黄酸化鉄 適量
キサンタンガム 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.2
精製水 残余
【0058】
製剤例11:シワ防止・改善用クリーム
成分 配合量(質量%)
ワセリン 2.0
ジメチルポリシロキサン 2.0
エタノール 5.0
ベヘニルアルコール 0.5
バチルアルコール 0.2
グリセリン 7.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
ポリエチレングリコール20000 0.5
ホホバ油 3.0
スクワラン 2.0
ヒドロキシステアリン酸フィトステリル 0.5
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 1.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
水酸化カリウム 0.1
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.01
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05
グリチルレチン酸ステアリル 0.1
パントテニルエチルエーテル 0.1
4メトキシ安息香酸 3.0
トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩 11.0
本細胞賦活剤 0.03
(チアシードのクロロホルム抽出物)
カルノシン 3.5
酢酸トコフェロール 0.1
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
パラオキシ安息香酸エステル 適量
エデト酸三ナトリウム 0.05
4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 0.1
ジパラメトキシ桂皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.1
黄酸化鉄 適量
キサンタンガム 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.2
精製水 残余
【0059】
製剤例14:細胞賦活抽出液を含むマイクロニードル
特開2005−152180に記載の方法による製造方法であって、以下の組成によるものである。
マルトース 94.9 質量%
デキストラン 5.0
本細胞賦活剤 0.1
(チアシードのクロロホルム抽出物)
得られたマイクロニードルは、肌のハリ、弾力性を高める効果が高く、シワ防止・改善効果の高いマイクロニードルであった。
【0060】
製剤例15:錠剤 3000mg/日(6錠)
ショ糖エステル 200 6.7(質量%)
結晶セルロース 200 6.7
メチルセルロース 100 3.3
グリセリン 60 2.0
ヒアルロン酸 400 13.3
ビタミンE 60 2.0
ビタミンB6 40 1.3
α−リポ酸 40 1.3
本細胞賦活剤 1200 40.0
(チアシードエタノール抽出物)
セラミド(コンニャク抽出物) 100 3.3
L−プロリン 600 20.0
【0061】
製剤例16:ソフトカプセル 3000mg/日(6錠)
本細胞賦活剤 1060 35.3(質量%)
(チアシードエタノール抽出物)
トチュウエキス 100 3.3
ニンジンエキス 100 3.3
ローヤルゼリー 100 3.3
マカ 60 2.0
GABA 60 2.0
ミツロウ 120 4.0
ゼラチン 950 31.7
グリセリン 240 8.0
グリセリン脂肪酸エステル 210 7.0
【0062】
製剤例17:ソフトカプセル 3000mg/日(6錠)
本細胞賦活剤 1318 43.9(質量%)
(チアシードエタノール抽出物)
トコトリエノール 1000 33.3
レスベラトロール 2 0.1
ハス胚芽エキス 200 6.7
エラスチン 360 12.0
DNA 60 2.0
葉酸 60 2.0
【0063】
製剤例18:ドリンク 50mL/日
トチュウエキス 0.032 質量%
ニンジンエキス 0.032
ブドウ種子エキス 0.032
還元麦芽糖水飴 0.56
エリスリトール 0.16
クエン酸 0.04
香料 0.026
N−アセチルグルコサミン 0.02
ヒアルロン酸 0.01
ビタミンE 0.006
ビタミンB6 0.004
ビタミンB2 0.002
α−リポ酸 0.004
本細胞賦活剤(3g相当) 0.06
(チアシード含水エタノール抽出物)
セラミド(コンニャク抽出物) 0.008
L−プロリン 0.04
水 残余(全量50mL)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シソ科植物であるサルビア・ヒスパニカ(Salvia hispanica)の種又はその抽出物を含むことを特徴とする細胞賦活剤。
【請求項2】
0.0001〜20質量%の濃度にして外用として用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の細胞賦活剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−111727(P2012−111727A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263423(P2010−263423)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】