説明

細菌組成物

本発明は、長期の保存期間を有する細菌組成物、及びこのような組成物の製造方法に関する。本発明はさらに、細菌組成物を含んでなる食品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期の保存期間を有する細菌組成物、及びこのような組成物の製造方法に関する。本発明はさらに、細菌組成物を含んでなる食品に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の特許文献は、細菌製剤の貯蔵性を増加することを特許請求する特定の賦形剤又は担体で処方される細菌製剤を開示する。他の特許文献は、例えば水を結合するSiOを添加することによって、細菌製剤の水分活性(aw)を低下することに関して開示する。異なる形態における乾燥剤の使用もまた、水を除去するために使用される。
【0003】
US4956295では、シリカゲル吸収剤と混合された乾燥乳酸桿菌が開示される。混合物は、冷蔵なく貯蔵可能であることが特許請求される。
【0004】
US7122370B及びUS7229818Bには、一価のアルギン酸塩を有するプロバイオティクス細菌を含んでなる製剤が開示され、当該製剤は0.01〜0.07の水分活性を有し、そして酸性環境にさらされると、プロバイオティクス細菌を酸性環境の抗生物質作用から保護するアルギン酸ゲルが形成される。アルギン酸塩は、細菌と混合する前に、5%未満の水分含量まで乾燥される。
【0005】
EP1482811Bには、
a.生微生物の製剤とさらなる成分とを混合する段階,
b.混合物を0.3未満の水分活性まで乾燥する段階,
c.混合物を圧縮する段階,
d.コーティングする段階、及び
e.食品で混合する段階、
を含んでなる食品を得るための方法が開示される。
【0006】
US2005/0100559には、0.5未満の水分活性を有する乾燥した細菌組成物が開示される。
【0007】
US6953592Bには、水に接触すると、マトリックスの溶解又は分散を促進するのに十分な量で閉鎖細孔に捕捉されたガスを含有する、非起泡性、水溶性又は水分散性の炭水化物に基づくマトリックスが開示される。
【0008】
US2005/0266069では、複数のプロバイオティクス微粒子を含んでなる、腸を標的にする生存及び安定なプロバイオティクス製剤が特許請求され、微粒子は、1又は複数のプロバイオティクス細菌、セルロールの賦形剤、崩壊剤及び1又は複数の添加剤を含んでなるコア部分;並びに、5%未満の残留水レベル及び0.1〜0.5の水分活性(aw)を有する、胃液に耐性を示し得る腸溶コーティング、を各々含んでなる。
【0009】
WO 2005/063200には、2つのゾーンにプロバイオティクス微生物(例えば、ラクトバチルスGG(Lactobacillus GG))及び他の栄養上の活性成分を含んでなるプロバイオティクス錠剤が開示され;第1ゾーンはプロバイオティクス微生物を含んでなり、第2ゾーンは他の活性成分を少なくとも1つ含んでなる。第1ゾーン中の水分活性は、0.2以下である。全体水分含量が比較的に高いにもかかわらず微生物の良好な生存率が得られることが記載される。
【0010】
WO08048731Aには、LGG含有の製剤の水分活性を約0.16未満まで低下すること及び製剤の温度を25度又はそれ以下に維持することによって、LGG含有の粉末の栄養性製剤の保存期間を延長するための方法が特許請求される。
【0011】
US7037708Bには、少なくとも1つのラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)を含んでなる担体結合形態における組成物が開示され、これは、a)少なくとも約0.1mmの粒径を有し、そして、b)約10E10〜10E12cfu/gの少なくとも1つの微生物種を含んでなりc)0.15未満の水分活性(aw)を有し、且つd)圧縮される。培養物が発泡性添加剤を含んでよいことが開示される。
【0012】
しかしながら、これらの細菌製剤のいずれも商業的観点から、特にビフィドバクテリアの細胞に関して満足のいくものではない。従って、生細菌細胞の改善された安定性及び増大された送達を有する、改良された細菌細胞を含む組成物が必要である。
【0013】
特に、室温で長期間保存することがこれまで非常に困難であったビフィドバクテリア株を含んでなる安定した組成物の提供が必要である。
【発明の概要】
【0014】
本発明者は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)株の細胞及び炭酸塩、炭酸水素ナトリウムを含有する錠剤が、特に周囲からの湿気への暴露から保護する環境、例えば、密封されたアルミバック又はクロージャー(closure)、或いは密閉のガラス容器で保存される場合に、優れた安定性を有することを、驚くことに発見した。優れた安定性は、保護錠剤が高温に長期間曝露される場合に最も顕著である。
【0015】
さらに、本発明者は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)株の細胞を含む組成物への炭酸塩の添加が、保存中に通常生じる変色(赤色化)を驚くほどに防止又は軽減することを発見した。
【0016】
これらの驚くべき発見に基づいて、本発明は炭酸塩を組成物へ添加することによってビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)株の生細胞を含んでなる組成物の安定化(例えば、安定性の増加及び/又は変色の軽減/回避)のための方法に関する。特に、本発明は細菌細胞を含む組成物の色調安定性を改善するための方法に関し、当該方法は細菌細胞を炭酸塩と混合することを含んでなる。
【0017】
本発明は、細菌組成物の安定性/保存期間を改善するための方法として見なすことができ、従って本発明はまた改善された増大された/改善された/長期の安定性/保存期間を有する細菌組成物を調製するための方法に関し、当該方法は次の:a)好適にはビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する細菌細胞と、炭酸塩を含んでなる担体とを混合することによって、粉末を供する段階;及びb)錠剤又はペレットを形成するために当該粉末を任意に圧縮する段階、を含んでなる。
【0018】
本発明はまた、安定化された組成物、及び、食品中に組み込まれた、或いは食品と共にパッケージされ安定化された組成物を含む食品、に関する。
【0019】
詳細な説明
第一の態様では、本発明は細菌組成物を調製するため(例えば、細胞の生存及び/又は組成物の変色の軽減を改善するため)の方法に関し、当該方法は次の:a)細菌細胞と、炭酸の塩(炭酸塩)を含んでなる担体とを混合することによって粉末を供する段階;及びb)粉末を任意に圧縮する段階、を含んでなる。
【0020】
さらに、本発明は、i)組成物中の細菌細胞の生存時間を増加する、若しくはii)細菌組成物の変色を回避若しくは軽減する、又はiii)細菌組成物の保存期間を増加する、或いはiv)細菌組成物の安定性を増加するための方法に関し、当該方法は次の:
a)細菌細胞と、炭酸塩を含んでなる担体とを混合することによって粉末を供する段階;及び
b)上記粉末を任意に圧縮する段階、
を含んでなる。
【0021】
本発明の注目の実施形態では、当該方法は、細菌細胞を炭酸塩と混合することによって細菌細胞を含む組成物の(色調安定性を含む)安定性を改善するために使用される。
【0022】
混合する段階a)の目的は、細菌細胞を塩と接触させることであり、従って混合する順序は重要ではない、と理解されるべきである。よって、塩と混合する前及び/又は後並びに/或いは同時に、細菌細胞を担体と混合することができる。現在、全成分を同時に混合することが好適である。
【0023】
粉末を圧縮することによって、本発明の方法の製品は粉末、或いは錠剤又はペレット等の固形形態における細菌組成物となる。
【0024】
炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、セスキ炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、グリシン炭酸ナトリウム、炭酸L−リジン、炭酸アルギニン、非晶質の炭酸カルシウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びこれらの組合せから成る群から好適には選択され、そして現在最も好適な塩は炭酸水素ナトリウムである。
【0025】
a)の担体は、酸性成分、例えば有機酸等を、好適には粉末としてさらに含んでよい。
【0026】
酸性成分は、好適にはクエン酸、酒石酸、アマリン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸、コハク酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、及びこれらの組合せから成る群から選択される。
【0027】
本発明の実施形態では、方法は、乾燥段階、例えば凍結乾燥、真空乾燥、乾燥剤による乾燥等、或いは加温をさらに含んでよい。乾燥段階は、
i)混合する段階の前に実施する(すなわち、1又は複数の細菌細胞若しくは担体を乾燥する);及び/又は
ii)混合する段階の後に実施する(すなわち、混合物を乾燥する);並びに/或いは
iii)任意の圧縮する段階の後に実施する(すなわち、錠剤又はペレットを乾燥する)、
ことができる。
【0028】
細菌細胞は、好適には乳酸産生性及び/又はプロバイオティクスの細胞、例えば:ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、及びストレプトコッカス(Streptococcus)を含んでなる群から選択される属に属する細菌細胞である。現在、当該細菌細胞は:ラクトバチルスカゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルスアシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルスロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルスビヒダム(Lactobacillus bifidum)、ラクトバチルスガッセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルスジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルスファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルスパラカセイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルスクリスパツス(Lactobacillus crispatus)、ビフィドバクテリウムロンガム(Bifidobacterium Iongum)、ビフィドバクテリウムビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウムラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウムブレビス(Bifidobacterium brevis)、ビフィドバクテリウムアニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウムアドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウムインファンティス(Bifidobacterium infantis)、ストレプトコッカスサーモフィラス(Streptococcus thermophilus)及びラクトコッカスラクティス(Lactococcus lactis)、例えば:BB−12(登録商標)、LA−I、LA−5、BB−02、ビフィドバクテリウムアニマリス(Bifidobacterium animalis)DSM15954株、ビフィドバクテリウムロンガム亜種インファンティス(Bifidobacterium Iongum subsp. infantis)DSM15953株、ビフィドバクテリウムロンガム亜種ロンガム(Bifidobacterium Iongum subsp. Iongum)DSM15955株、エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)DSM15958株、ラクトバチルスアシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)DSM13241株、ラクトバチルスデルブリッキー亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)DSM15956株、ラクトバチルスヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)DSM14998株、ラクトバチルスヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)DSM14997株、ラクトコッカスラクティス(Lactococcus lactis)DSM14797株、ストレプトコッカスサーモフィラス(Streptococcus thermophilus)DSM15957株、ラクトバチルスファーメンタム(Lactobacillus fermentum)ATCC55845株、並びにラクトバチルスラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)ATCC55826株、並びにこれらの任意の変異体或いは多様体から成る群から選択される株に属する細菌細胞等、から成る群から選択される種に属することが好適である。現在、細菌細胞は、BB−12(登録商標)株の又はBB−12(登録商標)株を含まないビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)に属することが最も好適である。
【0029】
担体は、無機酸又はこの塩、有機酸又はこの塩、炭水化物、ラクトース、糖アルコール、水溶性繊維及びデンプンから成る群から選択される成分をさらに含んでよい。
【0030】
本発明の方法は、例えばコーティングする(例えば、当業者に周知の方法で本発明の錠剤/ペレットがコーティングされる)段階、並びに/或いは、例えばアルミニウム及び/又はポリマー製のシール可能な容器に、例えば粉末又は圧縮された粉末(錠剤/ペレット)を入れることを含んでなるパッケージング段階をさらに含んでよい。
【0031】
2.変色がない又は変色が軽減された細菌組成物を調製するための請求項1に記載の方法であって、次の:
a)細菌細胞と、炭酸塩を含んでなる担体とを混合することによって粉末を供する段階;及び
b)錠剤又はペレットを形成するために、粉末を任意に圧縮する段階、
を含んでなる方法。
【0032】
3.改善された細胞の生存及び/若しくは増加された保存期間、並びに/又は増大された安定性を有する細菌組成物を調製するための請求項1に記載の方法であって、次の:
a)細菌細胞と、炭酸塩を含んでなる担体とを混合することによって粉末を供する段階;及び
b)錠剤又はペレットを形成するために、粉末を任意に圧縮する段階、
を含んでなる方法。
【0033】
4.細菌細胞を含有する組成物における細胞の生存を改善するための請求項1に記載の方法であって、細菌細胞を炭酸塩と混合することを含んでなる方法。
【0034】
5.細菌細胞を含む組成物の色調安定性を改善するための請求項1に記載の方法であって、細菌細胞を炭酸塩と混合することを含んでなる方法。
【0035】
第二の態様において、本発明は、本発明の方法によって得ることが可能な組成物に関する。本発明の組成物は、細菌細胞及び炭酸塩を含んでなる担体を含んでなる。細菌細胞は、任意の上述の種又は株に属してよい。注目の本実施形態において、細胞はビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)のBB−12(登録商標)株に属する。組成物は、少なくとも10E5 CFU/mg、例えば少なくとも10E7 CFU/mg又は少なくとも10E9 CFU/mgを含んでよく、CFUは細菌細胞の細胞形成単位を表す。
【0036】
第三の態様では、本発明は、食品、飼料添加物、医薬品、栄養補助食品、又はプロバイオティクスとしての本発明の組成物の使用に関する。本発明の組成物を含んでなる食品或いは飼料製品はまた本発明の一態様であり、製品、例えば乳製品、例えば牛乳又は発酵乳等、及びフルーツジュース、例えばスムージー等を含んでなる。
【0037】
食品/飼料製品は、食品/飼料加工施設で、或いは消費者によって、本発明の組成物と混合してよい。従って、本発明はまた、食品/飼料製品及び本発明の組成物を含んでなるパーツのキット、例えば食品を有する容器及び本発明の組成物を有する容器を含んでなるキットに関する。
【0038】
他の態様では、本発明は、細菌組成物、特に(例えば、ビフィドバクテリウムロンガム(Bifidobacterium Iongum)、ビフィドバクテリウムビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウムラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウムブレビス(Bifidobacterium brevis)、ビフィドバクテリウムアニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウムアドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウムインファンティス(Bifidobacterium infantis)から成る群から選択される種に属する)ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する細菌細胞を含んでなる細菌組成物における、i)安定剤、例えば色調安定剤として、ii)保存期間を増加するため、iii)安定性を増加するため、或いはiv)細胞の生存を増加するため、の炭酸塩(例えば、上述の塩)の使用に関する。
【0039】
定義
本文脈において、用語「錠剤」は、圧縮された粉末を意味する。当該用語には、あらゆる物理的形態及びサイズ、例えば丸剤、ペレット、錠剤等が含まれる。
【0040】
用語「細菌組成物」は、細菌細胞、又は細胞培養を含んでなる組成物と理解されるべきである。細胞は、好適には生存している又は休止状態であり、組成物が少なくとも1グラムあたり10E5細胞形成単位を含むことがさらに好適である。細菌細胞は、同一株に属する、又は異なる株に属する細胞の混合物であってよい。
【0041】
本明細書において、用語「変異体」は、例えば遺伝子工学、放射線及び/又は薬品処理による、本発明の株由来の株として理解されるべきである。例えばプロバイオティクスとして、変異体が機能的に等価な変異体、例えば母株と実質的に同様の特性、又は母株の改善された特性を有する変異体であることが好適である。このような変異体は、本発明の一部である。特に、用語「変異体」は、本発明の株を化学変異原、例えばエタンメタンスルフォネート(EMS)若しくはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトログアニジン(NTG)等、UV光での処理を含む、任意の従来使用される突然変異処理へ供することによって得られる株、或いは自然発生的に生じる変異体を意味する。
【0042】
本文脈において、用語「多様体」は、例えばプロバイオティクスとして、例えば実質的に同様の、又は改善された特性を有する、本発明の株と機能的に等価である株として理解されるべきである。このような多様体は、適当なスクリーニング技術を使用して同定することができ、本発明の一部である。
【0043】
本発明を説明している文脈(特に次の請求項)での、用語「a」及び「an」並びに「the」並びに同様の指示対象の使用は、特に明細書において他に示す又は文脈で明らかに矛盾しない限り、単数及び複数のどちらも網羅すると解釈することができる。用語「を含んでなる」、「有している」、「含んでいる」及び「含有している」は、特に他に記載のない限り、無制限の(すなわち、「含んでいる、しかしながら限定されない」ということを意味している)用語として解釈することができる。明細書における値域の記述は、明細書において他に表示しない限り、範囲に含まれる個々の値をそれぞれ言及することを簡略化する方法として機能することを単に目的とし、そして個々の値は、明細書中でそれぞれ列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。明細書において説明される全方法は、明細書において他に表示しない又は文脈で他に明らかに矛盾しない限り、任意の適当な順序で実施することができる。任意の及び全ての実施例、又は明細書において供される例示的な言語(例えば、「このような」)の使用は、他に特許請求しない限り、本発明を明らかにすることを単に目的とし、そして本発明の範囲に制限を提起するものではない。本明細書中の用語は、特許請求されていない任意の要素が本発明の実施に必須である、ということを示すものとして解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】37℃で3ヶ月間保存した場合の、粉末H1069及びH1071中のBB−12(登録商標)の生存を示す。
【図2】室温で2週間後の、粉末混合物H1184 A (A)、H1184 B (B)、H1184 C (C)及びH1184 D (D)の写真を示す。
【実施例】
【0045】
実施例1:粉砕されたBB−12(登録商標)HA(5.1 % (w / w))及び賦形剤(炭酸水素ナトリウムを含まず、マンニトール; 10% (w / w), ラクトース; 84.4 % (w / w), ステアリン酸マグネシウム; 0.5 % (w / w))を含有する粉末混合物H1069、及び粉砕されたBB−12(登録商標)HA(5.1 % (w / w))及び賦形剤(炭酸水素ナトリウム; 30%(w/w)を含み、マンニトール; 10% (w / w), ラクトース; 54.4 % (w / w), ステアリン酸マグネシウム; 0.5 % (w / w))を含有する粉末混合物H1071、の2つの混合物を作製する。他の全成分は粉末で同等の濃度で残した状態で、賦形剤のラクトース部分を炭酸水素ナトリウムで置換することによって炭酸水素ナトリウムの濃度が得られる。
【0046】
粉末は、アルミニウムホイルバック(20〜30 g)にパックし、37℃で3ヶ月間保存した。パッケージング(0ヶ月)時、保存の1ヵ月後及び3ヶ月直後に、コロニー形成単位(cfu/g)及び水分活性(aw)の分析のためにバックを取り出した。
【0047】
結果:粉末H1069及びH1071の水分活性は、パッケージング直後、aw(H1069)=0.19及びaw(H1071)=0.19で等価であった。1ヶ月及び3ヶ月の保存後、粉末の水分活性はaw=0.27〜0.31まで増大された。BB−12(登録商標)の生存において、コロニー形成単位の結果は、0及び1ヶ月で等価のcfu/gを示したが、3ヵ月後では著しい差を示した(図 1)。
【0048】
結果:ブドウ糖賦形剤の炭酸水素ナトリウムでの置換は、保存の間にBB−12(登録商標)の生存の改善をもたらした。この結果は、保存中に炭酸水素ナトリウムが、粉末のビフィドバクテリウムアニマリス(Bifidobacterium animalis)の生存を改善したことを示す。
【0049】
実施例2:アスコルビン酸を含有するビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)の製剤において、炭酸水素ナトリウムが赤色の発色に影響を及ぼすか否かの試験
粉末混合物の内容(w/w)
H1184 A:24%の粉砕されたBB−12(登録商標)HA培養物, 51%のマンニトール及び25%のイヌリン
H1184 B:24%の粉砕されたBB−12(登録商標)HA培養物, 51%のマンニトール及び25%の炭酸水素ナトリウム
H1184 C:12%の粉砕されたBB−12(登録商標)HA培養物, 63%のマンニトール及び25%のイヌリン
H1184 D:12%の粉砕されたBB−12(登録商標)HA培養物, 63%のマンニトール及び25%の炭酸水素ナトリウム
【0050】
粉砕されたBB−12(登録商標)HA培養物には、凍結保護剤としてアスコルビン酸が含有される。アスコルビン酸は、発酵由来の残渣と反応し、そして赤色を発色する。温度及び湿度を上昇させることによって、反応は加速される。
【0051】
粉末は、気密性アルミニウムホイルバックで保存した。試験のために、粉末をアルミニウムホイルバックから5〜8gの量を取り出し、(aw測定で使用のためにRotronic社によって製造された)小型のプラスティック容器中に入れた。プラスティック容器を室温で保存し、2週間後に発色の違いが図2で確認された。粉末は、同様に約0.4のawを有した。図2から、A及びC粉末では色調が淡赤色に変化し、一方B及びD粉末では元来の淡黄色が維持されたことが示される。
【0052】
結果:粉末混合物中の炭酸水素ナトリウムの存在が、赤色の発色に影響を与える。粉末混合物中に炭酸水素ナトリウムが存在する場合、赤色は発色されない。
【0053】
本発明の好適な実施形態は明細書において説明され、これには本発明を実施するための本発明者に理解されるベストモードが含まれる。これらの好適な実施形態の変更は、上述の説明を読むことによって当業者に明らかとなるであろう。本発明者は、熟練した職人にこのような適当な変更を採用することを期待し、そして本発明者は本発明を明細書において具体的に記載される態様以外の態様でも実施することを目的とする。従って、本発明には、適用法によって許容される、明細書に添付の請求項に列挙される対象のあらゆる変更及び等価物が含まれる。さらに、明細書において他に表示しない又は明らかに文脈に矛盾しない限り、これらのあらゆる可能性のあるバリエーションの中の上述の成分の任意の組合せが本発明に包含される。
【0054】
引用文献
US2004175389、WO03075676、US2005100559、US6953592、WO03012819、WO05266069、WO05063200
【0055】
本特許文献の中で引用される全ての引用文献は、本明細書の中で全体において参照により組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(例えば、細胞の改善された安定性、改善された生存を有し、そして/あるいは変色がない又は変色が軽減された)細菌組成物の調製のための方法であって、
次の:
a)細菌細胞と、炭酸塩を含んでなる担体とを混合することによって粉末を供する段階;及び
b)錠剤又はペレットを形成するために上記粉末を任意に圧縮する段階、
を含んでなる方法。
【請求項2】
変色がない又は変色が軽減された細菌組成物を調製するための方法であって、
次の:
a)細菌細胞と、炭酸塩を含んでなる担体とを混合することによって粉末を供する段階;及び
b)錠剤又はペレットを形成するために上記粉末を任意に圧縮する段階、
を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞の改善された生存及び/又は増加された保存期間、並びに/或いは増大された安定性を有する細菌組成物を調製するための方法であって、
次の:
a)細菌細胞と、炭酸塩を含んでなる担体とを混合することによって粉末を供する段階;及び
b)錠剤又はペレットを形成するために上記粉末を任意に圧縮する段階、
を含んでなる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
細菌細胞を含む組成物中の細胞の生存を改善するための方法であって、上記細菌細胞を炭酸塩と混合することを含んでなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
細菌細胞を含む組成物の色調安定性を改善するための方法であって、上記細菌細胞を炭酸塩と混合することを含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記細菌組成物が、粉末、顆粒、錠剤又はペレットの形態である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記炭酸塩が、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、セスキ炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、グリシン炭酸ナトリウム、炭酸L−リジン、炭酸アルギニン、非晶質の炭酸カルシウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びこれらの組合せから成る群から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
a)の前記担体が、好適には粉末として、酸性成分、例えば有機酸等をさらに含んでなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記酸性成分が、クエン酸、酒石酸、アマリン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸、コハク酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、及びこれらの組合せから成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
乾燥段階、例えば凍結乾燥、真空乾燥、乾燥剤による乾燥、又は加温等をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記乾燥段階を:
i)前記混合する段階の前に実施する(すなわち、1又は複数の前記細菌細胞又は担体を乾燥する);及び/又は
ii)前記混合する段階の後に実施する(すなわち、前記混合物を乾燥する);並びに/或いは
iii)前記任意の圧縮する段階の後に実施する(すなわち、前記粉末、錠剤又はペレットを乾燥する)、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細菌細胞が、乳酸産生性且つ/又はプロバイオティクスの細胞である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記細菌細胞が、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)を含んでなる群から選択される属に属する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記細菌細胞が、ビフィドバクテリウムロンガム(Bifidobacterium Iongum)、ビフィドバクテリウムビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウムラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウムブレビス(Bifidobacterium brevis)、ビフィドバクテリウムアニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウムアドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウムインファンティス(Bifidobacterium infantis)から成る群から選択される種に属する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記細菌細胞が、ビフィドバクテリウムアニマリス(Bifidobacterium animalis)種、例えばビフィドバクテリウムアニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)等に属する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記細菌細胞が、BB−12(登録商標)、BB−02、ビフィドバクテリウムアニマリス(Bifidobacterium animalis)DSM15954株、ビフィドバクテリウムロンガム亜種インファンティス(Bifidobacterium Iongum subsp. infantis)DSM15953株、ビフィドバクテリウムロンガム亜種ロンガム(Bifidobacterium Iongum subsp. Iongum)DSM15955株、及びこれらの任意の変異体或いは多様体から成る群から選択される株に属する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記細菌細胞が、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)BB−12(登録商標)株に属する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記細菌細胞が、BB−12(登録商標)株を含まないビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)に属する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記担体が、無機酸又はこの塩、有機酸又はこの塩、炭水化物、ラクトース、糖アルコール、水溶性繊維及びデンプンから成る群から選択される成分をさらに含んでなる、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
コーティング段階をさらに含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
シール可能な容器、例えばアルミニウム及び/又はポリマー製の容器に前記粉末又は圧縮された粉末を入れることを例えば含んでなる、パッケージング段階をさらに含む、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法によって得ることが可能な組成物。
【請求項23】
細菌細胞及び炭酸塩を含んでなる担体を含んでなる組成物。
【請求項24】
前記細菌細胞が前記ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)種に属する、請求項22又は23に記載の組成物。
【請求項25】
前記細菌細胞が、ビフィドバクテリウムロンガム(Bifidobacterium Iongum)、ビフィドバクテリウムビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウムラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウムブレビス(Bifidobacterium brevis)、ビフィドバクテリウムアニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウムアドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウムインファンティス(Bifidobacterium infantis)から成る群から選択される種に属する、請求項22〜24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記細菌細胞が、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)BB−12(登録商標)株に属する、請求項22〜25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
少なくとも10E5 CFU/mg、例えば少なくとも10E7 CFU/mg又は少なくとも10E9 CFU/mgを含んでなる組成物であって、ここでCFUが前記細菌細胞の細胞形成単位である、請求項22〜26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
食品又は飼料添加物、医薬品、栄養補助食品、或いはプロバイオティクスとしての、請求項22〜27のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項29】
請求項22〜27のいずれか1項に記載の組成物を含んでなる食品又は飼料製品。
【請求項30】
乳製品、例えば牛乳又は発酵乳等である、請求項29に記載の製品。
【請求項31】
フルーツジュースである、請求項29に記載の製品。
【請求項32】
請求項22〜27のいずれか1項に記載の組成物、及び食品、例えば乳製品、例えば牛乳又は発酵乳、或いはフルーツジュース等を含んでなる、パーツのキット。
【請求項33】
食品を有する容器、及び請求項22〜27のいずれか1項に記載の組成物を有する容器を含んでなる、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
細菌組成物における色調安定剤としての炭酸塩の使用。
【請求項35】
細菌組成物における細胞の生存を増加するための炭酸塩の使用。
【請求項36】
細菌組成物の保存期間を増加するための炭酸塩の使用。
【請求項37】
細菌組成物の安定性を増加するための炭酸塩の使用。
【請求項38】
前記細菌組成物がビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する細菌細胞を含んでなる、請求項34〜37のいずれか1項に記載の使用。
【請求項39】
前記細菌細胞が、ビフィドバクテリウムロンガム(Bifidobacterium Iongum)、ビフィドバクテリウムビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウムラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウムブレビス(Bifidobacterium brevis)、ビフィドバクテリウムアニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウムアドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウムインファンティス(Bifidobacterium infantis)から成る群から選択される種に属する、請求項38に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−500643(P2012−500643A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524383(P2011−524383)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061085
【国際公開番号】WO2010/023248
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(503260310)セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ (23)
【Fターム(参考)】