説明

組成物、該組成物から得られる共重合体および光学フィルムならびに該光学フィルムの製造方法

【課題】波長分散係数αが1.00未満であり、広い波長域で一様の偏光変換が可能になる、ポリカーボネートとは異なる新しい熱可塑性樹脂からなる光学フィルム、該熱可塑性樹脂を製造するのに好適な組成物を提供し、同時に該熱可塑性樹脂を、ホスゲンを用いることがない方法で製造するための方法を提供する。
【解決手段】式(I)で表されるモノマーおよびアクリレートモノマーから選ばれる少なくとも1種のモノマーからなる重合体(1)、分子内に脂環式炭化水素基を有する多価(メタ)アクリレート(2)ならびに光重合開始剤(3)を含む組成物。


は水素原子またはメチル基を表し、Rは5〜20員環の芳香族性を有する基を少なくとも1つ有する原子団を表す。Xは、炭素数1〜6のアルキレン基またはポリアルキレンオキシ基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、該組成物から得られる共重合体および光学フィルムならびに該光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
位相差板を透過する光の波長450nmのレターデーション[Re(450)]と波長550nmのレターデーション[Re(550)]との比([Re(450)]/[Re(550)])は波長分散係数αと定義され、位相差板が広い波長域において一様の偏光変換を行うためには、位相差板の波長分散係数αが1.00未満である波長分散特性を有することが好ましい。
ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ノルボルネン系樹脂などの熱可塑性樹脂を一軸延伸または二軸延伸したものを位相差板として用いた場合には、位相差板の波長分散係数αは熱可塑性樹脂によって異なる値を示すものの、通常、1.00以上の値を示す。
好ましい波長分散特性を得るため、例えば、波長分散特性の異なる2枚の位相差板を積層することが提案されている(特許文献1)。また、λ/2板とλ/4板を積層することも提案されている(特許文献2)。しかしながら、2枚以上の位相差板を貼り合わせる場合にはコスト高となり、厚みが大きくならざるを得ず、また光学特性の角度依存性が大きいなどの問題点があった。
特許文献3には、正の屈折率異方性を有するモノマーと負の屈折率異方性を有するモノマーとを含む熱可塑性樹脂を延伸して得られた位相差板が、1.00未満の波長分散係数αを有することが開示されている。しかしながら、かかる熱可塑性樹脂としては、具体的には、ホスゲンとビスフェノールとからなるポリカーボネートしか開示されておらず、ホスゲンを用いることから、該ポリカーボネートの工業的な製造は必ずしも容易ではない。さらに、該ポリカーボネートに用いられる負の屈折率異方性を有するモノマーとしては、9−フルオレンとフェノールとの脱水縮合物である下記[F]および[G]が開示されているに過ぎない。
【0003】

【0004】
【特許文献1】特開平2−120804号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平5−100114号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】PCT/JP99/06057(特許請求の範囲、[0119]、[0131][表4]、[0137][表5]、[0148][表8])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、波長分散係数αが1.00未満であり、広い波長域で一様の偏光変換が可能になる、ポリカーボネートとは異なる新しい熱可塑性樹脂からなる光学フィルム、該熱可塑性樹脂を製造するのに好適な組成物を提供し、同時に該熱可塑性樹脂を、ホスゲンを用いることがない方法で製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明は、[1]〜[11]のいずれか記載の発明である。
[1]式(I)で表されるモノマーおよび式(II)で表されるモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなる重合体(1)、脂環式炭化水素基を有する多価(メタ)アクリレート(2)ならびに光重合開始剤(3)を含む組成物。
【0007】

(式(I)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは5〜20員環の芳香族性を有する基を少なくとも1つ有する原子団を表す。Xは、炭素数1〜6のアルキレン基またはポリアルキレンオキシ基を表す。該ポリアルキレンオキシ基におけるアルキレン基は炭素数2〜6であり、アルキレンオキシ単位の繰り返し数は1〜6である。)
【0008】

(式(II)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
【0009】
[2]式(I)で表されるモノマーが、式(I−1)〜式(I−3)で表されるモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーである[1]記載の組成物。

(式(I−1)〜式(I−3)中、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、nはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す。Rは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、またはグリシドキシ基を表し、lは0〜4の整数、kは0〜5の整数を表す。)
[3]式(II)で表されるモノマーが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーである[1]または[2]記載の組成物。
[4]脂環式炭化水素基を有する多価(メタ)アクリレート(2)が、式(III−1)または式(III−2)で表される多価(メタ)アクリレートである[1]〜[3]のいずれか記載の組成物。


(式(III−1)および式(III−2)中、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、Xは炭素数2〜6のアルキレン基を表す。該アルキレン基の水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基または水酸基に置換されていてもよく、該アルキレン基のメチレン基は、カルボニル基に置換されていてもよい。sは1または2の整数、tは0または1の整数、v、wはそれぞれ独立に0〜6の整数を表す。)
【0010】
[5][1]〜[4]のいずれか記載の組成物を光重合してなる共重合体。
[6][5]記載の共重合体を成膜化し、さらに延伸してなる光学フィルム。
[7]光学フィルムを透過する透過光の波長νnmにおける位相差値Re(ν)が、下記式を充足する[6]記載の光学フィルム。
Re(450)<Re(550)<Re(650)
【0011】
[8][5]記載の共重合体を成膜化し、さらに延伸する光学フィルムの製造方法。
[9]共重合体を含む溶液を平滑な面にキャストして溶媒を留去することによって成膜化する[8]記載の光学フィルムの製造方法。
[10][1]〜[4]のいずれか記載の組成物の光学フィルムとしての使用。
[11][6]または[7]記載の光学フィルムからなる位相差板。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組成物は、ポリカーボネートとは異なる新しい共重合体を与え、1種類の該共重合体からなる光学フィルムを与える。また、ホスゲンを用いることがなくとも、UV硬化や熱硬化などの簡便な方法で共重合体を製造することができる。
さらに得られた光学フィルムの波長分散係数αは1.00未満であり、該光学フィルムは、広い波長域で一様の偏光変換を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。「光学フィルム」とは、光を透過し得るフィルムであって、光学的な機能を有するフィルムをいう。光学的な機能とは、屈折、複屈折などを意味する。
本発明の組成物は、式(I)で表されるモノマー(以下、「モノマー(I)」という場合がある)および式(II)で表されるモノマー(以下、「モノマー(II)」という場合がある)からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなる重合体(1)を含有する。
【0014】
モノマー(I)におけるRは、水素原子またはメチル基を表す。モノマー(I)におけるRは5〜20員環の芳香族性を有する基を少なくとも1つ有する原子団を表す。該芳香族性を有する基は、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数5〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシドキシ基、炭素数2〜4のアシル基、カルボキシル基またはハロゲン原子が結合していてもよい。モノマー(I)におけるXは、炭素数1〜6のアルキレン基またはポリアルキレンオキシ基を表す。該ポリアルキレンオキシ基におけるアルキレン基は炭素数2〜6であり、アルキレンオキシ単位の繰り返し数は1〜6である。該芳香族性を有する基の具体例としては、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基またはアントラセニル基などの芳香族性炭化水素基、ピロール基、フラニル基、ピラジニル基、ピラゾール基、ピリジニル基またはチアゾール基などの芳香族性複素環基などが例示される。
【0015】
芳香族性を有する基を少なくとも1つ有する原子団は、複数の芳香族性を有する基が連結基を介して結合されてなる1価の原子団であってもよい。連結基としては、例えば、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基、エチレン基またはプロピレン基などの炭素数1〜6程度の炭化水素基、単結合、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基あるいは−CO−などが挙げられる。
具体的には、単結合で結合したビフェニル基またはイソプロピリデン基が結合した下記式(IV)で表される基などが例示される。

【0016】
芳香族性を有する基には、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基またはオクチル基などの炭素数1〜12のアルキル基、例えば、メトキシ基またはエトキシ基などの炭素数1〜12のアルコキシ基、例えば、フッ素原子、塩素原子または臭素原子などのハロゲン原子、例えば、アセチル基などのような炭素数2〜4のアシル基、水酸基、グリシルオキシ基あるいはカルボキシル基が結合していてもよい。
【0017】
モノマー(I)として、異なる複数のモノマーを併用してもよい。
モノマー(I)としては、特に下記式(I−1)〜下記式(I−3)で表されるモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。

式(I−1)中、Rは前記と同じ意味を表し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、またはグリシドキシ基を表す。kは0〜5の整数を表す。
【0018】

式(I−2)中、RおよびRは前記と同じ意味を表し、nは1〜20の整数を表す。lは0〜4の整数を表し、kは0〜5の整数を表す。
【0019】

(式(I−3)中、R、R、n、lおよびkは前記と同じ意味を表す。)
【0020】
モノマー(I)の具体例としては、ベンジルアクリレートまたはベンジルメタクリレート(I−1−1)の他、下記式(I−2−1)または下記式(I−3−1)で表されるモノマーが例示される。

【0021】
モノマー(I)の製造方法としては、例えば、芳香族性を有する基を与える化合物として、フェノール化合物を用い、該化合物にエチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを反応させて、R−X−OHを得て、さらにアクリル酸またはメタクリル酸などでエステル化する方法、例えば、芳香族性を有する基を与える化合物として、ハロゲン化ベンゼン化合物を用い、該化合物にアルキレンジオールを反応させて、R−X−OHを得て、さらにアクリル酸またはメタクリル酸などでエステル化する方法などが挙げられる。
【0022】
また、前記例示されたベンジルアクリレートおよびベンジルメタクリレート(I−1−1)は、和光純薬工業、メルク社またはアルドリッチ社などから市販されており、式(I−2)および式(I−3)で表される化合物は新中村化学工業(株)からNKエステルA−LEN−10[式(I−2−1)で表されるモノマー]およびNKエステルA−CMP−1E[式(I−3−1)で表されるモノマー]の商品名で市販されている。
【0023】
本発明の重合体(1)におけるモノマー(I)に由来する繰り返し単位の含有量は、例えば、5〜99モル%、好ましくは10〜95モル%、特に好ましくは20〜90モル%である。モノマー(I)に由来する繰り返し単位の含有量が5〜99モル%であると、光学フィルムの波長分散係数がより小さくなる傾向があることから好ましい。
【0024】
モノマー(II)におけるRは、水素原子またはメチル基を表す。
モノマー(II)におけるRは、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を表す。
モノマー(II)として、異なる複数のモノマーを併用してもよい。
【0025】
モノマー(II)の具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートまたはブチル(メタ)アクリレート等が例示され、特に(メタ)アクリル酸またはメチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0026】
本発明の重合体(1)におけるモノマー(II)に由来する繰り返し単位の含有量としては、前述するモノマー(I)に由来する繰り返し単位が含まれていれば、含有されなくてもよいが、例えば、1〜95モル%、好ましくは5〜90モル%、特に好ましくは10〜80モル%である。モノマー(II)が1〜95モル%であると、光学フィルムの波長分散係数がより小さくなる傾向があることから好ましい。
モノマー(I)に対するモノマー(II)の含有量は、モノマー(I)とモノマー(II)の合計量を100モルとする場合、1〜95モル%、好ましくは5〜90モル%、特に好ましくは10〜80モル%である。
【0027】
本発明の組成物に用いられる重合体(1)は、モノマー(I)およびモノマー(II)をそれぞれ1種以上含むことが好ましい。
さらにモノマー(I)およびモノマー(II)とは異なる少なくとも1種以上のモノマーを併用してもよい。
【0028】
重合体(1)には、モノマー(I)および/またはモノマー(II)と共重合可能なモノマー(以下、「共重合可能なモノマー」という場合がある)に由来する繰り返し単位が含有されていてもよい。共重合可能なモノマーとしては、オレフィン、ビニル化合物、1価の(メタ)アクリレートまたはアクリルアミドなどが用いられる。
【0029】
共重合可能なモノマーとして用いられるオレフィンとしては、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン化合物または炭素数5〜20の環状オレフィンが挙げられる。
炭素数3〜20のα−オレフィン化合物としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンまたは1−エイコセンのような炭素数3〜20の直鎖状α−オレフィンや、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテンまたは3−メチル−1−ブテンのような炭素数4〜20の分岐状α−オレフィンなどが挙げられる。
エチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィン化合物の中でも、エチレン、炭素数が3または4の直鎖状α−オレフィンであるプロピレンまたは1−ブテンが、得られる共重合体をフィルム状に成形した際の柔軟性に優れることから好ましく、特にエチレンが好ましい。
【0030】
環状オレフィンとは、炭素環内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物である。従って、環状オレフィンをモノマー(I)および/またはモノマー(II)と共重合して得られる共重合体の主鎖中に、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環またはそれらが2つ以上結合した環のような脂環式の環を導入し得る単量体である。具体的には、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、6−アルキルビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、5,6−ジアルキルビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン、1−アルキルビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エンまたは7−アルキルビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エンのような、メチル基、エチル基またはブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基が導入されたノルボンネン誘導体、ジメタノオクタヒドロナフタレンとも呼ばれているテトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]−3−ドデセン、8−アルキルテトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]−3−ドデセンまたは8,9−ジアルキルテトラシクロ[4,4,0,12,5,17,10]−3−ドデセンなどのジメタノオクタヒドロナフタレンの8位および/または9位に炭素数3以上のアルキル基が導入されたジメタノオクタヒドロナフタレン誘導体、分子内に1個または複数個のハロゲンが導入されたノルボルネンの誘導体、あるいは8位および/または9位にハロゲンが導入されたジメタノオクタヒドロナフタレンの誘導体などが挙げられる。
【0031】
共重合可能なモノマーとして用いられるビニル化合物としては、酢酸ビニル、(無水)マレイン酸またはマレイミドのほかに、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、o−エチルスチレンまたはp−エチルスチレンのようなアルキルスチレン、例えば、ヒドロキシスチレン、t−ブトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニルベンジルアセテート、o−クロロスチレンまたはp−クロロスチレンなどの、ベンゼン環に水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アシルオキシ基またはハロゲンなどが結合した置換スチレン、例えば、4−ビニルビフェニルまたは4−ヒドロキシ−4′−ビニルビフェニルなどのビニルビフェニル系化合物、ビニルナフタレンまたはビニルアントラセンなどの縮合環およびビニル基を有する化合物、N−ビニルフタルイミドなどの芳香族性炭化水素基、複素環基およびビニル基を有する化合物などが挙げられる。さらにビニル化合物としては、炭素数5〜20の脂環式構造を有するビニル化合物が挙げられる。
【0032】
脂環式構造を有するビニル化合物とは、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、ノルボルネニル基またはアダマンチル基などの炭素数3〜12程度の脂環式炭化水素基およびビニル基からなる化合物である。脂環式構造を有するビニル化合物をモノマー(I)および/またはモノマー(II)と共重合して得られる共重合体の主鎖に脂環式炭化水素基が結合している。
【0033】
共重合可能なモノマーとして用いられる1価の(メタ)アクリレートとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、アントラセニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートまたは1−アクリロイル−4−メトキシナフタレンが挙げられる。
共重合可能なモノマーとして用いられるアクリルアミドとしては、アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドまたはN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミド、例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミドまたは(メタ)アクリロイルモルホリン等のN,N−置換(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0034】
共重合可能なモノマーは、2種類以上の共重合可能なモノマーを併用してもよい。
本発明の重合体(1)における共重合可能なモノマーに由来する繰り返し単位の含有量としては、例えば、50モル%以下、好ましくは40モル%以下、特に好ましくは30モル%以下である。共重合可能なモノマーが50モル%以下であると、光学フィルムの波長分散係数がより小さくなる傾向があることから好ましい。
【0035】
重合体(1)の共重合形式としては、ランダム形式またはブロック形式などが挙げられるが、重合体(1)を構成する繰り返し単位がそれぞれドメインを形成しない程度にブロック形式が少量であると、得られる光学フィルムの透明性が向上することから好ましい。
【0036】
重合体(1)の調製方法としては、例えば、これらモノマーを10重量%以上、好ましくは20〜40重量%の濃度になるように有機溶媒に調製し、窒素雰囲気下にて、20〜100℃程度、好ましくは40〜90℃程度、特に好ましくは60〜80℃程度に加熱しながら、1〜24時間程度攪拌して、重合体(1)を含有する溶液を得る方法などが挙げられる。また、反応を制御するために、用いるモノマーや重合開始剤を重合中に添加したり、有機溶媒に溶解したのち添加してもよい。
また、重合体(1)にエチレンまたはプロピレンなどの気体の共重合可能なモノマーを用いる場合には、窒素に代えて、かかる共重合可能なモノマー雰囲気下、好ましくは、加圧下で製造すればよい。
【0037】
有機溶媒としては、例えば、トルエンまたはキシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;n−プロピルアルコールまたはイソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類;メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン類などが挙げられる。
【0038】
重合体(1)の調製に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)または2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などのアゾ系化合物;ラウリルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレートまたは(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシドなどの有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムまたは過酸化水素など無機過酸化物等が挙げられる。また、熱重合開始剤と還元剤を併用したレドックス系開始剤なども重合開始剤として使用し得る。
【0039】
本発明の組成物は、かくして得られた重合体(1)、脂環式炭化水素基を有する多価(メタ)アクリレート(2)(以下、「多価アクリレート(2)」という場合がある)および光重合開始剤(3)を含有する。
多価アクリレート(2)とは、脂環式炭化水素基に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基が結合した化合物である。
多価アクリレート(2)としては、特に脂環式炭化水素に2つの(メタ)アクリロイル基が結合したものが調製容易なことから好ましく、特に式(III−1)または式(III−2)で表されることが好ましい。
【0040】


式(III−1)および式(III−2)中、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、Xは炭素数2〜6のアルキレン基を表す。該アルキレン基の水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基または水酸基に置換されていてもよく、該アルキレン基のメチレン基は、カルボニル基に置換されていてもよい。sは1または2の整数、tは0または1の整数、v、wはそれぞれ独立に0〜6の整数を表す。特にXは、炭素数2のアルキレン基であることが好ましい。
式(III−1)で表される多価(メタ)アクリレートとしては、下記式(III−1−1)で表される多価(メタ)アクリレートが例示される。
【0041】

式(III−1−1)中、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、v、wはそれぞれ独立に0〜6の整数を表す。
さらに具体的には、たとえば下記式(V−1)および下記式(V−2)で表される多価アクリレートが例示される。
【0042】



式(V−1)および式(V−2)中、v、wは前記と同じ意味を表す。
【0043】
多価アクリレート(2)としては、式(III−1)および式(III−2)で表される多価(メタ)アクリレートの他に、下記式(V−3)および下記式(V−4)で表される多価アクリレートも例示される。


式(V−4)中、v、wは前記と同じ意味を表す。
【0044】
多価アクリレート(2)の製造方法として、脂環式炭化水素を有する原子団の水酸基に直接、(メタ)アクリル酸をエステル化させて得る方法や、脂環式炭化水素を有する原子団の水酸基にエチレンオキサイドを反応させて得られた末端水酸基に(メタ)アクリル酸をエステル化させて得る方法などが挙げられる。
【0045】
多価アクリレート(2)は、異なる2種類以上の多価アクリレートを併用してもよい。
本発明の多価アクリレート(2)の含有量は、重合体(1)と多価アクリレート(2)の合計量を100重量%とした場合、例えば、10〜90重量%、好ましくは20〜85重量%、特に好ましくは25〜80重量%である。多価アクリレート(2)が10〜90重量%であると、光学フィルムの波長分散係数がより小さくなる傾向があることから好ましい。
【0046】
本発明の組成物に含まれる光重合開始剤(3)としては、例えば、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、ヨードニウム塩またはスルホニウム塩等が挙げられ、より具体的には、イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てチバスペシャルティケミカルズ社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬社製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152またはアデカオプトマーSP−170(以上、全て旭電化)などを挙げることができる。
また、光重合開始剤の使用量は、例えば、本発明の組成物を構成する多価アクリレート(2)100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは、0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、透過率を低下することなく、モノマーを重合させることができる。
【0047】
本発明の組成物には、多価アクリレート(2)の重合を制御し、得られる光学フィルムの安定性を向上させるために、重合禁止剤を含有していてもよい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノンまたはアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類、ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類、ピロガロール類、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β−ナフチルアミン類およびβ−ナフトール類等を挙げることができる。
重合禁止剤の使用量は、例えば、組成物を構成する多価アクリレート(2)100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは、0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、透過率を低下することなく、多価アクリレート(2)を重合させることができる。
【0048】
本発明の組成物には、多価アクリレート(2)の重合を高感度化するために光増感剤を含有していてもよい。光増感剤としては、例えば、キサントンまたはチオキサントン等のキサントン類、アントラセンまたはアルキルエーテルなどの置換基を有するアントラセン類、フェノチアジンあるいはルブレンを挙げることができる。
光増感剤の使用量としては、多価アクリレート(2)100重量部に対して、例えば、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、透過率を低下することなく、高感度化に多価アクリレート(2)を重合させることができる。
【0049】
本発明の組成物には、レベリング剤が含有されていてもよい。レベリング剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、同SH7PA、同DC11PA、同SH21PA、同SH28PA、同29SHPA、同SH30PA、ポリエーテル変性シリコンオイルSH8400(トーレシリコーン(株)製)、KP321、KP322、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341(信越シリコーン製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF−4446、TSF4452、TSF4460(ジーイー東芝シリコーン(株)製)、フロリナート(商品名)FC430、同FC431(住友スリーエム(株)製)、メガファック(商品名)F142D、同F171、同F172、同F173、同F177、同F183、同R30(大日本インキ化学工業(株)製)、エフトップ(商品名)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(新秋田化成(株)製)、サーフロン(商品名)S381、同S382、同SC101、同SC105(旭硝子(株)製)、E5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、BM−1000、BM−1100(いずれも商品名:BM Chemie社製)、メガファック(商品名)R08、同BL20、同F475、同F477または同F443(大日本インキ化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0050】
レベリング剤を用いることにより、得られるフィルム(膜)を平滑化することができる。さらに、成膜化の製造過程で、組成物の流動性を制御したり、モノマーを重合して得られるフィルムの架橋密度を調整することができる。
レベリング剤の含有量の具体的な数値は、例えば、重合体(1)、脂環式炭化水素基を有する多価(メタ)アクリレート(2)、光重合開始剤(3)、必要に応じて含有される共重合可能なモノマーの合計100重量部に対して、0.001重量部〜0.1重量部であり、好ましくは、0.005重量部〜0.05重量部である。上記範囲内であれば、透過率を低下することなく、モノマーを重合させることができる。
【0051】
本発明の組成物には、可塑剤が含有されていてもよい。可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステルまたはグリコール酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェートまたはトリブチルホスフェートが含まれる。
前記カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルまたはクエン酸エステルが代表的である。前記フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)またはジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。前記クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチルまたはクエン酸アセチルトリブチルが例示される。
その他のカルボン酸エステルとしては、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチルまたは種々のトリメリット酸エステルが例示される。
【0052】
グリコール酸エステルとしては、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレートまたはブチルフタリルブチルグリコレートなどが例示される。また、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ジトリメチロールプロパンテトラプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート、ソルビトールトリアセテートトリプロピオネート、イノシトールペンタアセテートまたはソルビタンテトラブチレート等も好例として挙げられる。
【0053】
可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネートまたはソルビトールトリアセテートトリプロピオネート等が好ましく、特にトリフェニルホスフェート、ジエチルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネートまたはソルビトールトリアセテートトリプロピオネートが好ましい。
【0054】
可塑剤は1種でもよいし2種以上併用してもよい。可塑剤の添加量は、本発明のフィルム特性を大きく損ねない範囲で適宜、選択されればよく、本発明における組成物の固形分の総量に対して0.1〜30重量%程度である。
可塑剤の具体例は、特開平11−124445号公報記載の(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開平11−246704号公報記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号公報記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号公報記載のクエン酸エステル類または特開平11−90946号公報記載の置換フェニルリン酸エステル類として知られている。
【0055】
本発明の組成物には、3官能以上の多官能光重合性化合物が含有されていてもよい。3官能以上の多官能光重合性化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートまたはジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートなどが挙げられる。共重合可能なモノマーは、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。3官能以上の多官能光重合性化合物は、1種類でも2種類以上の3官能以上の多官能光重合性化合物を用いてもよい。
【0056】
本発明の共重合体は、組成物を光重合して得ることができる。
具体的には、モノマー(I)およびモノマー(II)からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなる重合体(1)、脂環式炭化水素基を有する多価(メタ)アクリレート(2)[多価アクリレート(2)]ならびに光重合開始剤(3)を混合し、必要に応じて、光増感剤、レベリング剤、可塑剤、3官能以上の多官能光重合性化合物および有機溶媒を混合することによって調製される。
共重合体を製造する際の有機溶媒の量が、重合体(1)、多価アクリレート(2)の合計濃度を10重量%以上、好ましくは20〜50重量%に調製されるように有機溶媒は用いられる。
有機溶媒としては、前記重合体(1)の製造方法に用いられた有機溶媒と同様の溶媒が用いられる。
【0057】
組成物を紫外光(UV)によって光重合して硬化することによって共重合体が得られる。紫外光の発生源としては、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、低圧、高圧、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、太陽光線などが例示される。紫外光の照射強度は、終始一定の強度でも行ってよいし、硬化途中で強度を変化させることにより、硬化後の物性を微調整することもできる。
【0058】
本発明の光学フィルムは、かくして得られた共重合体を成膜化(フィルム化)し、得られた膜状物をさらに延伸することによって製造される。共重合体の膜状物を形成する方法としては、例えば、共重合体を含む溶液を平滑な面にキャストして溶媒を留去する溶剤キャスト法、共重合体を含む溶液から有機溶剤を除去し、得られた共重合体を溶融押出機などでフィルム状に押出成形する溶融押出法などが挙げられる。特に溶剤キャスト法は共重合体を含む溶液をそのまま成膜化できることから好ましい。
【0059】
また、得られた膜状物を延伸する方法としては、例えばテンター法による延伸法、ロール間延伸による延伸法などが挙げられる。
延伸は、一軸延伸でも二軸延伸のいずれでもよく、縦延伸でも横延伸のいずれでもよい。特に生産性の観点から、一軸延伸が好ましく、特に一軸の縦延伸または一軸の横延伸が好ましい。
【0060】
かくして得られた光学フィルムは、波長分散係数αが1.00未満であり、光学フィルムを透過する光の波長νnmにおける位相差値Re(ν)は、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を充足するなど、300〜700nm可視領域全般で右上がりの分散を示すことから、広い波長域で一様の偏光変換を行うことができる。
本発明の光学フィルムは、広い波長域において一様の偏光変換が可能であるため、λ/2板またはλ/4板などの位相差板や、視野角向上フィルムなどとして用いられる。また光学フィルムがλ/4板であれば、それを直線偏光板と組み合わせて広波長域の円偏光板とすることができ、またλ/2板であれば、それを直線偏光板と組み合わせて広波長域の偏光回転素子とすることができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」および「部」は、特記ない限り、重量%および重量部である。
【0062】
(実施例1)
攪拌機、温度計および還流冷却器を備えた反応槽に、メチルメタクリレート120部、A−LEN−10(I−2−1)483部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1120部を混合し溶解させ、その後、70℃に昇温させた。その後、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル)1.48部を添加した後、同温度で7時間攪拌し、本発明の重合体(1)を含有するプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。得られた溶液100部に、下記式(III−1−2)で表される多価アクリレート(2)(新中村化学製、商品名:DCP)45部、光重合開始剤(3)(2-Methyl-1-4-(methylthio)pheny-2-morpholino-propan-1-one、イルガキュア907、チバスペシャリティケミカルズ社製)1.0部を混合溶解したのち、ポリエチレンテレフタレート製の離型フィルム上に、300μmのギャップのアプリケーターで塗布、100℃で30分乾燥し、UV照射(高圧水銀ランプ:1Pass当たり 200mJ/cm:365nm)して、本発明の共重合体を膜状物として得た。続いて該膜状物を温度調節オートグラフ延伸機を使用して1.8倍延伸し光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを、450nmから750nmの波長範囲において、自動複屈折計(KOBRA−WR、王子計測機器社製)を用いて波長分散特性を測定した。その光学フィルムは、フィルム厚:65μm、正の複屈折性で、Re(550)=120nm、Re(450)/Re(550)=0.96、Re(500)/Re(550)=0.98、Re(600)/Re(550)=1.02、Re(650)/Re(550)=1.05、Re(750)/Re(550)=1.06の光学特性であった。
【0063】

【0064】
(実施例2)
多価アクリレート(2)として、下記式(III−1−3)で表されるA−DCPを用いる以外には実施例1と同様にして光学フィルムを得た。その光学フィルムは、フィルム厚:59μm、正の複屈折性で、Re(550)=115nm、Re(450)/Re(550)=0.97、Re(500)/Re(550)=0.98、Re(600)/Re(550)=1.01、Re(650)/Re(550)=1.03、Re(750)/Re(550)=1.05の光学特性であった。
【0065】


(実施例3)
多価アクリレート(2)として、下記式(III−2−1)で表されるA−CHD−4Eを用いる以外には実施例1と同様にして光学フィルムを得た。その光学フィルムは、フィルム厚:68μm、正の複屈折性で、Re(550)=148nm、Re(450)/Re(550)=0.91、Re(500)/Re(550)=0.96、Re(600)/Re(550)=1.03、Re(650)/Re(550)=1.07、Re(750)/Re(550)=1.11の光学特性であった。
【0066】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の光学フィルムは、広い波長域において一様の偏光変換が可能であるため、λ/4板であれば、それを直線偏光板と組み合わせて広波長域の円偏光板とすることができ、またλ/2板であれば、それを直線偏光板と組み合わせて広波長域の偏光回転素子とすることができる。したがって、各種液晶表示装置、陰極線管(CRT)、タッチパネル、エレクトロルミネセンス(EL)ランプ等における反射防止フィルター、さらには液晶プロジェクターなどに使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるモノマーおよび式(II)で表されるモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなる重合体(1)、脂環式炭化水素基を有する多価(メタ)アクリレート(2)ならびに光重合開始剤(3)を含む組成物。

(式(I)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは5〜20員環の芳香族性を有する基を少なくとも1つ有する原子団を表す。Xは、炭素数1〜6のアルキレン基またはポリアルキレンオキシ基を表す。該ポリアルキレンオキシ基におけるアルキレン基は炭素数2〜6であり、アルキレンオキシ単位の繰り返し数は1〜6である。)

(式(II)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
【請求項2】
式(I)で表されるモノマーが、式(I−1)〜式(I−3)で表されるモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーである請求項1記載の組成物。


(式(I−1)〜式(I−3)中、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、nはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す。Rは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、またはグリシドキシ基を表し、lは0〜4の整数、kは0〜5の整数を表す。)
【請求項3】
式(II)で表されるモノマーが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーである請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
脂環式炭化水素基を有する多価(メタ)アクリレート(2)が、式(III−1)または式(III−2)で表される多価(メタ)アクリレートである請求項1〜3のいずれか記載の組成物。

(式(III−1)および式(III−2)中、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、Xは炭素数2〜6のアルキレン基を表す。該アルキレン基の水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基または水酸基に置換されていてもよく、該アルキレン基のメチレン基は、カルボニル基に置換されていてもよい。sは1または2の整数、tは0または1の整数、v、wはそれぞれ独立に0〜6の整数を表す。)
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の組成物を光重合してなる共重合体。
【請求項6】
請求項5記載の共重合体を成膜化し、さらに延伸してなる光学フィルム。
【請求項7】
光学フィルムを透過する透過光の波長νnmにおける位相差値Re(ν)が、下記式を充足する請求項6記載の光学フィルム。
Re(450)<Re(550)<Re(650)
【請求項8】
請求5記載の共重合体を成膜化し、さらに延伸する光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
共重合体を含む溶液を平滑な面にキャストして溶媒を留去することによって成膜化する請求項8記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか記載の組成物の光学フィルムとしての使用。
【請求項11】
請求項6または7記載の光学フィルムからなる位相差板。

【公開番号】特開2009−102500(P2009−102500A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274871(P2007−274871)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】