説明

組成物及び光学フィルム

【課題】高湿高温の条件で保管した場合の耐性(耐湿熱性)に優れた光学フィルム、及び、該光学フィルムの作製に好適な組成物を提供する。
【解決手段】本発明の組成物は、式(A)で表される化合物、酸化防止剤及び光重合開始剤を含むことを特徴とする。


[式(A)中、X1は、−S−等を表す。Y1は、芳香族炭化水素基等を表す。Q1及びQ2は、水素原子等を表す。D1及びD2は、−CO−O−等を表す。G1及びG2は、脂環式炭化水素基等を表す。L1及びL2は、1価の有機基等を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物及び光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置(FPD)には、偏光板、位相差板等の光学フィルムを含む部材が用いられている。このような光学フィルムとしては、重合性液晶化合物、光重合開始剤及び溶剤を含む組成物を用いて形成される光学フィルムが知られている。このような光学フィルムとして、例えば、広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムが提案されている(特許文献1([請求項12])参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−31223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の光学フィルムでは、高湿高温の条件で保管した場合の耐性(耐湿熱性)について必ずしも十分満足できるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することができた本発明の組成物は、式(A)で表される化合物、酸化防止剤及び光重合開始剤を含むことを特徴とする。
【0006】
【化1】


[式(A)中、X1は、−S−、−O−又は−NR1−を表す。R1は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
1は、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、又は、炭素数3〜12の芳香族複素環式基を表す。
1及びQ2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、1価の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR23又は−SR2を表し、Q1及びQ2は、互いに結合して芳香環又は芳香族複素環を形成していてもよい。R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
1及びD2は、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−CS−O−、−CR45−、−CR45−CR67−、−O−CR45−、−CR45−O−CR67−、−CO−O−CR45−、−O−CO−CR45−、−CR45−O−CO−CR67−、−CR45−CO−O−CR67−、−NR4−CR56−又は−CO−NR4−を表す。
4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
1及びG2は、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH2−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH(−)−は、−N(−)−で置き換っていてもよい。
1及びL2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、L1及びL2からなる群から選ばれる少なくとも1種が、重合性基を有する基を表す。]
【0007】
式(A)におけるL1が式(A1)で表される基であり、かつ、式(A)におけるL2が式(A2)で表される基であることが好ましい。
1−F1−(B1−A1k−E1− (A1)
2−F2−(B2−A2l−E2− (A2)
[式(A1)及び式(A2)中、B1、B2、E1及びE2は、それぞれ独立に、−CR1112−、−CH2−CH2−、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CS−O−、−O−CS−O−、−CO−NR11−、−O−CH2−、−S−CH2−又は単結合を表す。
1及びA2は、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH2−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH(−)−は、−N(−)−で置き換っていてもよい。
k及びlは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。kが2以上の整数である場合、複数のB1及びA1は互いに同一であっても異なっていてもよい。lが2以上の整数である場合、複数のB2及びA2は互いに同一であっても異なっていてもよい。
1及びF2は、炭素数1〜12の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
1及びP2は、水素原子又は重合性基を表し、少なくとも一方が重合性基である。
11及びR12は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
【0008】
前記光重合開始剤は、アルキルフェノン化合物が好ましい。前記アルキルフェノン化合物としては、式(C−1)で表される化合物が好適である。
【0009】
【化2】


[式(C−1)中、Q3は、水素原子又はメチル基を表す。]
【0010】
前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0011】
本発明には、前記組成物に含まれる重合性成分を重合してなる光学フィルム、前記組成物に含まれる重合性成分を重合してなる位相差フィルムも含まれ、また該光学フィルム及び該位相差フィルムからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する偏光板、該光学フィルム及び該位相差フィルムからなる群から選ばれる少なくとも1種を有するフラットパネル表示装置も含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐湿熱性に優れた光学フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る偏光板の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明に係る液晶表示装置の一例を示す断面模式図である。
【図3】本発明に係る有機EL表示装置の一例を示す断面模式図である。
【図4】本発明に係るカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.組成物
本発明の組成物は、式(A)で表される化合物(以下「化合物(A)」という場合がある)、酸化防止剤(B)及び光重合開始剤(C)を含む。
【0015】
1−1.化合物
本発明の組成物は、化合物(A)を含む。
【0016】
【化3】


[式(A)中、X1は、−S−、−O−又は−NR1−を表す。R1は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
1は、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、又は、炭素数3〜12の芳香族複素環式基を表す。
1及びQ2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、1価の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR23又は−SR2を表し、Q1及びQ2は互いに結合して芳香環又は芳香族複素環を形成していてもよい。R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
1及びD2は、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−CS−O−、−CR45−、−CR45−CR67−、−O−CR45−、−CR45−O−CR67−、−CO−O−CR45−、−O−CO−CR45−、−CR45−O−CO−CR67−、−CR45−CO−O−CR67−、−NR4−CR56−又は−CO−NR4−を表す。
4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
1及びG2は、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH2−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH(−)−は、−N(−)−で置き換っていてもよい。
1及びL2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、L1及びL2からなる群から選ばれる少なくとも1種が、重合性基を有する基を表す。]
【0017】
1で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0018】
1で表される芳香族炭化水素基としては、フェニル基等の単環系芳香族炭化水素基;ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等の多環系芳香族炭化水素基(縮合多環系芳香族炭化水素基を含む)が挙げられる。これらの中でも、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。Y1で表される芳香族複素環式基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基等の単環系芳香族複素環基;ベンゾチアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基等の多環系芳香族複素環基(縮合多環系芳香族複素環基を含む)等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも一つ含む芳香族複素環式基が挙げられる。これらの中でもフリル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基が好ましい。
【0019】
1で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環式基は置換基(以下、置換基Z1)を有していてもよい。置換基Z1としては、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基等が挙げられる。
【0020】
置換基Z1となる前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
置換基Z1となる前記アルキル基としては、前記R1として例示したアルキル基が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0021】
置換基Z1となる前記アルキルスルフィニル基としては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、イソブチルスルフィニル基、sec−ブチルスルフィニル基、tert−ブチルスルフィニル基、ペンチルスルフィニル基、ヘキシルスルフィニル基等が挙げられる。これらの中でも炭素数1〜4のアルキルスルフィニル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキルスルフィニル基がより好ましく、メチルスルフィニル基が特に好ましい。
【0022】
置換基Z1となる前記アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、tert−ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基等が挙げられる。これらの中でも炭素数1〜4のアルキルスルホニル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキルスルホニル基がより好ましく、メチルスルホニル基が特に好ましい。
【0023】
置換基Z1となる前記フルオロアルキル基としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。これらの中でも炭素数1〜4のフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1〜2のフルオロアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0024】
置換基Z1となる前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜2のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0025】
置換基Z1となる前記アルキルスルファニル基としては、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、プロピルスルファニル基、イソプロピルスルファニル基、ブチルスルファニル基、イソブチルスルファニル基、sec−ブチルスルファニル基、tert−ブチルスルファニル基、ペンチルスルファニル基、ヘキシルスルファニル基等が挙げられる。これらの中でも炭素数1〜4のアルキルスルファニル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキルスルファニル基がより好ましく、メチルスルファニル基が特に好ましい。
【0026】
置換基Z1となる前記N−アルキルアミノ基としては、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−イソプロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N−イソブチルアミノ基、N−sec−ブチルアミノ基、N−tert−ブチルアミノ基、N−ペンチルアミノ基、N−ヘキシルアミノ基等が挙げられる。これらの中でも炭素数1〜4のN−アルキルアミノ基が好ましく、炭素数1〜2のN−アルキルアミノ基がより好ましく、N−メチルアミノ基が特に好ましい。
【0027】
置換基Z1となる前記N,N−ジアルキルアミノ基としては、N,N−ジメチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N,N−ジイソブチルアミノ基、N,N−ジペンチルアミノ基、N,N−ジヘキシルアミノ基等が挙げられる。これらの中でも炭素数2〜8のN,N−ジアルキルアミノ基が好ましく、炭素数2〜4のN,N−ジアルキルアミノ基がより好ましく、N,N−ジメチルアミノ基が特に好ましい。
【0028】
置換基Z1となる前記N−アルキルスルファモイル基としては、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N−プロピルスルファモイル基、N−イソプロピルスルファモイル基、N−ブチルスルファモイル基、N−イソブチルスルファモイル基、N−sec−ブチルスルファモイル基、N−tert−ブチルスルファモイル基、N−ペンチルスルファモイル基、N−ヘキシルスルファモイル基等が挙げられる。これらの中でも炭素数1〜4のN−アルキルスルファモイル基が好ましく、炭素数1〜2のN−アルキルスルファモイル基がより好ましく、N−メチルスルファモイル基が特に好ましい。
【0029】
置換基Z1となる前記N,N−ジアルキルスルファモイル基としては、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−メチル−N−エチルスルファモイル基、N,N−ジエチルスルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N,N−ジイソプロピルスルファモイル基、N,N−ジブチルスルファモイル基、N,N−ジイソブチルスルファモイル基、N,N−ジペンチルスルファモイル基、N,N−ジヘキシルスルファモイル基等が挙げられる。これらの中でも炭素数2〜8のN,N−ジアルキルスルファモイル基が好ましく、炭素数2〜4のN,N−ジアルキルスルファモイル基がより好ましく、N,N−ジメチルスルファモイル基が特に好ましい。
【0030】
前記置換基Z1としては、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜2のアルキルスルホニル基、炭素数1〜2のフルオロアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキルスルファニル基、炭素数1〜2のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜4のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜2のアルキルスルファモイル基が好ましい。置換基Z1としては、特にハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシ基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メチルスルファニル基、N,N−ジメチルアミノ基又はN−メチルアミノ基が好ましい。
【0031】
1で表される置換基を有していてもよい単環系芳香族炭化水素基又は単環系芳香族複素環基としては、例えば式(Y−1)〜式(Y−6)で表される基が挙げられる。
【0032】
【化4】


[式(Y−1)〜式(Y−6)中、*は結合手を表し、Z1は前記置換基Z1と同じものを表し、好ましい基も前記と同様である。
a1は0〜5の整数、a2は0〜4の整数、b1は0〜3の整数、b2は0〜2の整数、R8は水素原子又はメチル基を表す。
なお、a1、a2、b1及びb2が2以上の整数である場合、複数のZ1は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0033】
1は、式(Y−1)又は式(Y−3)で表される基であることが、製造工程やコストの点で特に好ましい。
【0034】
1で表される多環系芳香族炭化水素基又は1価の多環系芳香族複素環基としては、例えば式(Y1−1)〜式(Y1−7)で表される基が挙げられる。
【0035】
【化5】


[式(Y1−1)〜式(Y1−7)中、*は結合手を表し、Z1は前記置換基Z1と同じものを表し、好ましい基も前記と同様である。
1及びV2は、それぞれ独立に、−CO−、−S−、−NR9−、−O−、−Se−又は−SO2−を表す。R9は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
1〜W5は、それぞれ独立に、−CH=又は−N=を表す。
ただし、V1、V2及びW1〜W5のうち少なくとも1つは、S、N、O又はSeを含む基を表す。
aは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。
bは、それぞれ独立に、0〜2の整数を表す。
なお、a、bが2以上の整数である場合、複数のZ1は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0036】
1及びV2は、それぞれ独立に、−S−、−NR9−又は−O−が好ましく、W1〜W5は、それぞれ独立に、−CH=又は−N=が好ましい。
また、V1、V2及びW1〜W5のうち少なくとも1つは、S、N又はOを含む基を表すことが好ましい。
aは0又は1であることが好ましく、bは0であることが好ましい。
【0037】
さらに、式(Y1−1)〜式(Y1−7)で表されるいずれかの基は、式(Y2−1)〜式(Y2−6)で表される基であることが好ましい。
【0038】
【化6】


[式(Y2−1)〜式(Y2−6)中、*、Z1、a、b、V1、V2及びW1は、前記と同じ意味を表す。]
【0039】
式(Y2−1)〜式(Y2−6)中のZ1としては、特に、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ニトロソ基、カルボキシ基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メチルスルファニル基、N,N−ジメチルアミノ基又はN−メチルアミノ基が好ましく、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が特に好ましい。
【0040】
1及びQ2で表される脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、3−メチルブチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、オクチル基、1−メチルヘプチル基、ノニル基、1−メチルオクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0041】
1及びQ2で表される脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられ、炭素数3〜12の環状アルキル基が好ましい。
【0042】
1及びQ2で表される芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−フルオレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基等が挙げられ、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0043】
1及びQ2で表される脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基はそれぞれ置換基を有していてもよい。該置換基としては、前記Y1として例示したものが挙げられる。R2及びR3で表される炭素数1〜6のアルキル基は、前記R1と同様の基から選択でき、中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0044】
ここで、Q1及びQ2は、互いに結合して芳香環又は芳香族複素環を形成していてもよい。Q1とQ2が形成する環構造としては、式(Q)で示されるものが好ましい。
【0045】
【化7】


[式(Q)中、X2は、式(A)中のX1として例示した基と同じ範囲から選ばれる基を表す。Y2は、式(A)中のY1として例示した基と同じ範囲から選ばれる基を表す。*は、結合手を表す。]
【0046】
前記X1、Y1、Q1及びQ2の組合せの具体例としては、例えば、式(ar−1)〜式(ar−135)で表されるものが挙げられる。
【0047】
【化8】

【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

【0050】
【化11】

【0051】
【化12】

【0052】
【化13】

【0053】
【化14】

【0054】
【化15】

【0055】
【化16】

【0056】
【化17】

【0057】
【化18】

【0058】
【化19】

【0059】
【化20】

【0060】
【化21】

【0061】
【化22】

【0062】
【化23】

【0063】
【化24】

【0064】
【化25】

【0065】
【化26】

【0066】
【化27】

【0067】
【化28】

【0068】
【化29】

【0069】
【化30】

【0070】
【化31】

【0071】
【化32】

【0072】
【化33】

【0073】
【化34】

【0074】
化合物(A)におけるX1、Y1、Q1及びQ2の組合せとしては、特に式(ar−86)が好ましい。上記の化合物であると、得られる光学フィルムにおいて位相差の逆波長分散性が高い傾向がある。そのため、正波長分散性を示す液晶化合物と混合して用いることで、光学フィルムの波長分散性を所望の値に調製しやすい。
【0075】
式(A)中のD1及びD2は、−O−CO−、−O−CS−、−O−CR45−、−NR4−CR56−又は−NR4−CO−が好ましく、より好ましくは*−O−CO−、*−O−CS−、*−O−CR45−、*−NR4−CR56−又は*−NR4−CO−(*はQ1及びQ2が結合しているベンゼン環との結合手を表わす。)、さらに好ましくは*−O−CO−、*−O−CS−又は*−NR4−CO−(*はQ1及びQ2が結合しているベンゼン環との結合手を表す。)である。
【0076】
4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
【0077】
1及びG2で表される2価の脂環式炭化水素基としては、単環式炭化水素基や、橋かけ環式炭化水素基が挙げられ、5員環又は6員環であることが好ましい。また、脂環式炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよいが飽和脂環式炭化水素基が好ましい。G1及びG2で表されるヘテロ原子を含んでもよい2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、式(g−1)〜式(g−10)で示されるものが挙げられる。
【0078】
【化35】

【0079】
1及びG2で表される2価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、置換基(以下、置換基Z2)で置換されていてもよい。前記置換基Z2としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のフルオロアルキル基;トリフルオロメトキシ基等の炭素数1〜4のフルオロアルコキシ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
【0080】
1及びG2としては、式(g−1)で表される6員環からなる2価の脂環式炭化水素基であることが好ましい。中でも、G1及びG2がともにシクロヘキサン−1,4−ジイル基であることがより好ましく、trans−シクロヘキサン−1,4−ジイル基であることが特に好ましい。
【0081】
式(A)中のL1及びL2はそれぞれ独立して1価の有機基であり、L1又はL2は、重合性基を有する1価の基である。
有機基L1は式(A1)で表される基であり、L2は式(A2)で表される基であることが好ましい。
1−F1−(B1−A1k−E1− (A1)
2−F2−(B2−A2l−E2− (A2)
[式(A1)及び式(A2)中、B1、B2、E1及びE2は、それぞれ独立に、−CR1112−、−CH2−CH2−、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CS−O−、−O−CS−O−、−CO−NR11−、−O−CH2−、−S−CH2−又は単結合を表す。
1及びA2は、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH2−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH(−)−は、−N(−)−で置き換っていてもよい。
k及びlは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。kが2以上の整数である場合、複数のB1及びA1は互いに同一であっても異なっていてもよい。lが2以上の整数である場合、複数のB2及びA2は互いに同一であっても異なっていてもよい。
1及びF2は、炭素数1〜12の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
1及びP2は、水素原子又は重合性基を表し、少なくとも一方が重合性基である。
11及びR12は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
【0082】
1及びA2で表される2価の脂環式炭化水素基としては、前記G1及びG2として例示したものと同様の範囲から選択でき、好ましい態様も前記G1及びG2と同様である。また、A1及びA2で表される2価の芳香族炭化水素基としては、単環式又は多環式(複数の芳香環が単結合で転結されている多環式及び縮合多環式を含む)が挙げられる。A1及びA2で表される2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、式(a−1)〜式(a−8)で表されるものが挙げられる。また、A1及びA2で表される芳香族炭化水素基としては、対称軸、対称面があるのが好ましい。
【0083】
【化36】

【0084】
1及びA2で表される脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、前記置換基Z2として例示したものと同じ範囲から選択できる。
【0085】
1及びA2としては、それぞれ独立に、単環の1,4−フェニレン基又はシクロヘキサン−1,4−ジイル基であることが好ましく、特に、化合物(A)の製造が容易なことから、1,4−フェニレン基であることが好ましい。さらに、A1及びA2としては、化合物(A)の製造が容易となる傾向にあることから、同種類の基であることが好ましい。
【0086】
1及びB2は、化合物(A)の製造が容易となる傾向にあることから同種類の基であることが好ましい。また、k、lが2以上の整数である場合、複数のB1及びB2は化合物(A)の製造がより容易となることから、A1のみと結合しているB1、及びA2のみと結合しているB2が、それぞれ独立に、−CH2−CH2−、−CO−O−、−CO−NH−、−O−CH2−又は単結合であることが好ましい。特に、高い液晶性を示すことから、−CO−O−であることが好ましい。さらに、F1と結合しているB1、及びF2と結合しているB2が、それぞれ独立に、−O−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NH−又は単結合であることがより好ましい。
【0087】
k及びlは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表すことが好ましく、k及びlは0〜2であることがより好ましい。k及びlの合計は、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。k及びlが上記の範囲であると、化合物(A)が液晶性を示しやすくなる傾向がある。
【0088】
1及びF2は、炭素数1〜12のアルカンジイル基であることが好ましく、直鎖のアルカンジイル基であることがより好ましい。特に、無置換のアルカンジイル基が好ましい。前記アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子に置換されていてもよい。また、該アルカンジイル基に含まれる−CH2−は、−O−又は−CO−に置換されていてもよい。
【0089】
1及びP2は、水素原子又は重合性基であり、少なくとも一方が重合性基である。得られる光学フィルムの硬度が優れる傾向にあることから、P1及びP2がともに重合性基であるとことが好ましい。
【0090】
ここで重合性基とは、化合物(A)を重合させることのできる置換基を意味し、具体的には、ビニル基、ビニルオキシ基、スチリル基、p−(2−フェニルエテニル)フェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等のエチレン性不飽和基を有する重合性基、カルボキシ基、アセチル基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、アミノ基、オキシラニル基、オキセタニル基、ホルミル基、イソシアナト基又はイソチオシアナト基等が例示される。
重合性基としては、光重合させるのに適したラジカル重合性基、カチオン重合性基が好ましく、特に取り扱いが容易な上に製造も容易となる傾向にあることから、アクリロイル基、メタクロイル基、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基が好ましい。中でも重合性基が、それぞれ独立に、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基であることが好ましく、特にアクリロイルオキシ基であることが好ましい。
【0091】
式(A)において、D1とD2、G1とG2及びL1とL2はそれぞれ同一であること、すなわち、−D1−G1−L1と−D2−G2−L2が同一構造を有することが好ましい。
【0092】
1が式(A1)で表される基である場合の*−D1−G1−L1(*は、Q1及びQ2が結合しているフェニレン環との結合手を示す。)の具体例、及び、L2が式(A2)で表される基である場合の*−D2−G2−L2(*は、Q1及びQ2が結合しているフェニレン環との結合手を示す。)の具体的例としては、下記式(R−1)〜式(R−134)で表される基等が挙げられる。
なお、式(R−1)〜式(R−134)におけるnは2〜12の整数を表し、好ましくは3〜10、さらに好ましくは4〜8である。
【0093】
【化37】

【0094】
【化38】

【0095】
【化39】

【0096】
【化40】

【0097】
【化41】

【0098】
【化42】

【0099】
【化43】

【0100】
【化44】

【0101】
【化45】

【0102】
【化46】

【0103】
【化47】

【0104】
【化48】

【0105】
化合物(A)は、式(1)及び式(2)を満たす化合物であることが好ましい。
(Nπ−4)/3<k+l+4 (1)
12≦Nπ≦22 (2)
[式(1)及び式(2)中、Nπは、式(A)において、−D1−G1−L1、−D2−G2−L2を除いた部分が有する芳香環に含まれるπ電子の数を表す。k及びlは、式(A1)及び(A2)におけるものと同じ意味を表す。]
【0106】
化合物(A)としては、例えば、下記化合物(i)〜化合物(xxvii)が挙げられる。なお、表1中のR1は、−D1−G1−L1を、R2は、−D2−G2−L2を表す。
【0107】
【表1】

【0108】
上記表1中、化合物(xvi)は、X1等の組合せが式(ar−39)で示される基である化合物、X1等の組合せが式(ar−40)で示される基である化合物、又は、X1等の組合せが式(ar−39)で示される基である化合物と式(ar−40)で示される基である化合物との混合物のいずれかであることを意味する。同様に、化合物(xxvi)は、X1等の組合せが式(ar−66)で示される基である化合物、X1等の組合せが式(ar−67)で示される基である化合物、又は、X1等の組合せが式(ar−66)で示される基である化合物と式(ar−67)で示される基である化合物との混合物のいずれかであることを意味する。化合物(xxvii)は、X1等の組合せが式(ar−68)で示される基である化合物、X1等の組合せが式(ar−69)で示される基である化合物、又は、X1等の組合せが式(ar−68)で示される基である化合物と式(ar−69)で示される基である化合物との混合物のいずれかであることを意味する。
【0109】
表1の化合物の具体例としては、例えば以下のような化合物が挙げられる。下記に化合物(i)、化合物(iii)、化合物(iv)、化合物(v)、化合物(viii)、化合物(ix)、化合物(x)、化合物(xv)、化合物(xvii)、化合物(xviii)、化合物(xix)、化合物(xx)、化合物(xxii)、化合物(xxiii)、化合物(xxiv)及び化合物(xxv)の代表的な構造式を例示する。以下の化学式は、全ての立体異性体を含むものとする。また、化合物(i)〜(xxv)は、シクロヘキサン−1,4−ジイル基が、全てtrans−シクロヘキサン−1,4−ジイル基であることが好ましい。
【0110】
【化49】

【0111】
【化50】

【0112】
【化51】

【0113】
【化52】

【0114】
【化53】

【0115】
【化54】

【0116】
【化55】

【0117】
【化56】

【0118】
【化57】

【0119】
【化58】

【0120】
【化59】

【0121】
【化60】

【0122】
【化61】

【0123】
さらに、化合物(A)としては、式(A1−1)〜式(A61−8)で表される化合物も挙げられる。該式中、*は結合手を表し、例えば式(A1−1)で表される化合物は、下記のように表される化合物である。
【0124】
【化62】

【0125】
【化63】

【0126】
【化64】

【0127】
【化65】

【0128】
【化66】

【0129】
【化67】

【0130】
【化68】

【0131】
【化69】

【0132】
【化70】

【0133】
【化71】

【0134】
【化72】

【0135】
【化73】

【0136】
【化74】

【0137】
【化75】

【0138】
【化76】

【0139】
【化77】

【0140】
【化78】

【0141】
【化79】

【0142】
【化80】

【0143】
【化81】

【0144】
【化82】

【0145】
【化83】

【0146】
【化84】

【0147】
【化85】

【0148】
【化86】

【0149】
【化87】

【0150】
【化88】

【0151】
【化89】

【0152】
【化90】

【0153】
【化91】

【0154】
【化92】

【0155】
【化93】

【0156】
【化94】

【0157】
【化95】

【0158】
【化96】

【0159】
【化97】

【0160】
【化98】

【0161】
【化99】

【0162】
【化100】

【0163】
【化101】

【0164】
【化102】

【0165】
【化103】

【0166】
【化104】

【0167】
【化105】

【0168】
【化106】

【0169】
【化107】

【0170】
【化108】

【0171】
【化109】

【0172】
【化110】

【0173】
【化111】

【0174】
【化112】

【0175】
【化113】

【0176】
【化114】

【0177】
【化115】

【0178】
【化116】

【0179】
【化117】

【0180】
【化118】

【0181】
【化119】

【0182】
【化120】

【0183】
【化121】

【0184】
【化122】

【0185】
【化123】

【0186】
化合物(A)は、Methoden der Organischen Chemie、Organic Reactions、Organic Syntheses、Comprehensive Organic Synthesis、新実験化学講座等に記載されている公知の有機合成反応(例えば、縮合反応、エステル化反応、ウイリアムソン反応、ウルマン反応、ウイッティヒ反応、シッフ塩基生成反応、ベンジル化反応、薗頭反応、鈴木−宮浦反応、根岸反応、熊田反応、檜山反応、ブッフバルト−ハートウィッグ反応、フリーデルクラフト反応、ヘック反応、アルドール反応等)を、その構造に応じて、適宜組み合わせることにより、製造することができる。
【0187】
例えば、化合物(A)のD及びDが*−O−CO−である場合には、まず、式(1−1)で表される化合物と式(1−2)で表される化合物とを反応させることにより、式(1−3)で表される化合物を得る。
【0188】
【化124】


[式中、X1、Y1、Q1、及びQ2は、式(A)中と同一の意味を表わす。]
【0189】
【化125】


[式中、G、E、A、B、F、P及びkは上記と同一の意味を表わす。]
【0190】
【化126】


[式中、X1、Y1、Q1、Q2、G、E、A、B、F、P及びkは上記と同一の意味を表わす。]
【0191】
次いで、得られた式(1−3)で示される化合物と式(1−4)で表される化合物とを反応させることにより化合物(A)を製造できる。
【0192】
【化127】


[式中、G、E、A、B、F、P及びlは上記と同一の意味を表わす。]
【0193】
式(1−1)で示される化合物と式(1−2)で示される化合物との反応、及び、式(1−3)で示される化合物と式(1−4)で示される化合物との反応は、縮合剤の存在下に実施することが好ましい。
【0194】
縮合剤としては、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメト−パラ−トルエンスルホネート、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(一部水溶性カルボジイミド:Water Soluble Carbodiimideとして市販されている)、ビス(2、6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ビスイソプロピルカルボジイミド等のカルボジイミド;2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物、2,2’−カルボニルビス−1H−イミダゾール、1,1’−オキサリルジイミダゾール、ジフェニルホスフォリルアジド、1−(4−ニトロベンゼンスルフォニル)−1H−1,2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート、N−(1,2,2,2−テトラクロロエトキシカルボニルオキシ)スクシンイミド、N−カルボベンゾキシスクシンイミド、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、2−ブロモ−1−エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリド、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロホスフェート、2−クロロ−1−メチルピリジニウムアイオダイド、2−クロロ−1−メチルピリジニウム パラ−トルエンスルホネート、2−フルオロ−1−メチルピリジニウム パラ−トルエンスルホネート、トリクロロ酢酸ペンタクロロフェニルエステ等が挙げられる。中でも、反応性、コスト、使用できる溶媒の点から、縮合剤としてはジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ビスイソプロピルカルボジイミド、2,2’−カルボニルビス−1H−イミダゾールが好ましい。
【0195】
化合物(A)の含有量は、固形分に対して、10〜99.9質量%が好ましく、20〜99質量%がより好ましく、50〜97質量%がさらに好ましく、80〜95質量%が特に好ましい。化合物(A)の含有量が前記の範囲であれば、広い波長域において一様の偏光変換が可能となる。ここで、固形分とは、本発明の組成物から後述する溶剤成分を除く量をいう。化合物(A)は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0196】
1−2.酸化防止剤(B)
本発明の組成物は、酸化防止剤(B)を含む。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤が挙げられる。中でも、光学フィルムの着色が少ないという点で、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0197】
前記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジシクロヘキシル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−アミル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−オクチル−4−n−プロピルフェノール、2,6−ジシクロヘキシル−4−n−オクチルフェノール、2−イソプロピル−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−2−エチル−6−tert−オクチルフェノール、2−イソブチル−4−エチル−6−tert−ヘキシルフェノール、2−シクロヘキシル−4−n−ブチル−6−イソプロピルフェノール、dl−α−トコフェロール、tert−ブチルヒドロキノン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデンビス(2−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、トリエチレングリコールビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチルベンジル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、トリス(4−tert−ブチル−2,6−ジメチル−3−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)テレフタレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,2−ビス[4−(2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイルオキシ))エトキシフェニル]プロパン、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリルエステル等が挙げられる。
【0198】
前記フェノール系酸化防止剤としては、市販品を使用してもよい。市販されているフェノール系酸化防止剤としては、例えば、スミライザー(登録商標)BHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)、スミライザーGM(2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート)、スミライザーGS(F)(2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート)、スミライザーGA−80(3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン)、スミライザーMDP−S(2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール))、スミライザーBBM−S(4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール))、スミライザーWX−R(4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール))、スミライザーL(S)(以上、全て住友化学(株)製)、イルガノックス(Irganox)(登録商標)1010(テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)、イルガノックス1035(2,2−チオ[ジエチルビス−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])、イルガノックス1076(β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリルエステル)、イルガノックス1098(N,N’−(1,6−ヘキサンジイル)ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド])、イルガノックス1135(3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチル)、イルガノックス1330(1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン)、イルガノックス1726(2,4−ビス(ドデシルチオメチル)−6−メチルフェノール)、イルガノックス1425WL、イルガノックス1520L(2,4−ビス(オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール)、イルガノックス245(3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジオールビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパノアート])、イルガノックス259(1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート])、イルガノックス3114(トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート)、イルガノックス565(6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−2,4−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン)、イルガノックス295、イルガノックス3125(トリス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート)(以上、全てBASFジャパン(株)製)、シアノックス1790(トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート)(Cyanox 1790、サイテック製)、ビタミンE(dl−α−トコフェロール)(エーザイ製)等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0199】
前記イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のジアルキルチオジプロピオネート;ブチルチオプロピオン酸の多価アルコールエステル、オクチルチオプロピオン酸の多価アルコールエステル、ラウリルチオプロピオン酸の多価アルコールエステル、ステアリルチオプロピオン酸の多価アルコールエステル(前記の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等が挙げられる)や、ペンタエリスリルテトラキス−3−ラウリルチオプロピオネート等のアルキルチオプロピオン酸の多価アルコールエステルが挙げられる。
【0200】
前記イオウ系酸化防止剤としては、市販品を使用してもよい。市販されているイオウ系酸化防止剤としては、例えば、スミライザーTPL−R(ジラウリル−3,3’−チオジプロピオナート)、スミライザーTPM(ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオナート)、スミライザーTPS(ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート)、スミライザーTP−D(ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオナート)、スミライザーMB(2−メルカプトベンズイミダゾール)(以上、全て住友化学(株)製)等が挙げられる。イオウ系酸化防止剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0201】
前記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、(オクチル)ジフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフエニル)ブタンジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)ジホスファイト、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、トリス(モノ・ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)ビス[4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)]−1,6−ヘキサンジオールジホスファイト、フェニル(4,4’−イソプロピリデンジフェノール)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス[4,4’−イソプロピリデンビス(2−tert−ブチルフェノール)]ホスファイト、ジ(イソデシル)フェニルホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(2−tert−ブチルフェノール)ビス(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)エチルフォスファイト、2−[{2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]−ジオキサホスフェピン−6−イル}オキシ]−N,N−ビス〔2−[{2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]−ジオキサホスフェピン−6−イル}オキシ]エチル〕エタンアミン、6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]−ジオキサホスフェピン等が挙げられる。
【0202】
前記リン系酸化防止剤としては、市販品を使用してもよい。市販されているリン系酸化防止剤としては、例えば、スミライザーGP(6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン)(住友化学(株)製)、イルガフォス(Irgafos)(登録商標)168(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)、イルガフォス12(2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2,]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン)、イルガフォス38(以上、全てBASFジャパン(株)製)、アデカスタブ329K、アデカスタブPEP36(サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)フォスファイト)、アデカスタブPEP−8(ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト)(以上、全てADEKA製)、Sandstab P−EPQ(クラリアント製)、ウェストン618、ウェストン619G、ウルトラノックス626(以上、全てGE製)等が挙げられる。リン系酸化防止剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0203】
前記アミン系酸化防止剤としては、例えば、N,N'−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N'−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N'−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジシクロヘキシル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ビス(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘプチル)−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、4−(p−トルエンスルファモイル)ジフェニルアミン、N,N'−ジメチル−N,N'−ジ−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N−アリルジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0204】
前記アミン系酸化防止剤としては、市販品を使用してもよい。市販されているアミン系酸化防止剤としては、例えば、スミライザーBPA(N,N'−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン)、スミライザーBPA−M1、スミライザー4ML(p−フェニレンジアミン誘導体)、スミライザー9A(アルカリ化ジフィニルアミン)等が挙げられる。アミン系酸化防止剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0205】
酸化防止剤(B)の含有量は、固形分に対して、好ましくは0.01質量%〜10質量%であり、より好ましくは0.1質量%〜5質量%である。上記範囲内であれば、組成物に含まれる重合性成分を重合する際に、化合物(A)の配向を乱すことをより抑制できる。
【0206】
1−3.光重合開始剤(C)
本発明の組成物は光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、光の作用により活性ラジカルを発生し、化合物(A)の重合を開始しうる化合物である。光重合開始剤としては、アルキルフェノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、オキシム化合物等が挙げられる。
【0207】
前記アルキルフェノン化合物としては、α−アミノアルキルフェノン化合物、α−ヒドロキシアルキルフェノン化合物、α−アルコキシアルキルフェノン化合物が挙げられる。前記α−アミノアルキルフェノン化合物としては、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルスルファニルフェニル)プロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−2−ベンジルブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−2−(4−メチルフェニルメチル)ブタン−1−オン等が挙げられ、好ましくは2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルスルファニルフェニル)プロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−2−ベンジルブタン−1−オン等が挙げられる。前記α−アミノアルキルフェノン化合物は、イルガキュア(登録商標)369、379EG、907(以上、BASFジャパン(株)製)、セイクオール(登録商標)BEE(精工化学社製)等の市販品を用いてもよい。
【0208】
前記α−ヒドロキシアルキルフェノン化合物としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパン−1−オンのオリゴマー等が挙げられる。前記α−ヒドロキシアルキルフェノン化合物は、イルガキュア184、2959、127(以上、BASFジャパン(株)製)、セイクオールZ(精工化学社製)等の市販品を用いてもよい。前記α−アルコキシアルキルフェノン化合物としては、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。前記α−アルコキシアルキルフェノン化合物は、イルガキュア651(以上、BASFジャパン(株)製)等の市販品を用いてもよい。
【0209】
前記アルキルフェノン化合物としては、α−アミノアルキルフェノン化合物が好ましく、式(C−1)で表される化合物がより好ましい。これらの化合物であると、得られる光学フィルムの耐熱性、耐湿熱性に優れる。
【0210】
【化128】


[式(C−1)中、Q3は、水素原子又はメチル基を表す。]
【0211】
前記ベンゾイン化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
前記ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等が挙げられる。
前記オキシム化合物としては、N−ベンゾイルオキシ−1−(4−フェニルスルファニルフェニル)ブタン−1−オン−2−イミン、N−ベンゾイルオキシ−1−(4−フェニルスルファニルフェニル)オクタン−1−オン−2−イミン、N−アセトキシ−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタン−1−イミン、N−アセトキシ−1−[9−エチル−6−{2−メチル−4−(3,3−ジメチル−2,4−ジオキサシクロペンタニルメチルオキシ)ベンゾイル}−9H−カルバゾール−3−イル]エタン−1−イミン等が挙げられる。イルガキュアOXE−01、OXE−02(以上、BASFジャパン社製)、N−1919(ADEKA社製)等の市販品を用いてもよい。
【0212】
前記光重合開始剤は、前記アセトフェノン化合物、前記ベンゾイン化合物、前記ベンゾフェノン化合物、前記オキシム化合物等を、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも光重合開始剤としてアセトフェノン化合物を用いることが好ましい。前記アセトフェノン化合物の使用量は、光重合開始剤全量に対して、90質量部以上であることが好ましく、光重合開始剤全量がアセトフェノン化合物であることがより好ましい。
【0213】
光重合開始剤(C)の含有量は、固形分に対して、好ましくは0.1質量%〜30質量%であり、より好ましくは0.5質量%〜10質量%である。上記範囲内であれば、組成物に含まれる重合性成分を重合する際に、化合物(A)の配向を乱すことをより抑制できる。
【0214】
1−4.液晶化合物(A’)
本発明の組成物は、化合物(A)とは異なる液晶化合物(A’)を含んでいてもよい。前記液晶化合物(A’)の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の3章 分子構造と液晶性の、3.2 ノンキラル棒状液晶分子、3.3 キラル棒状液晶分子に記載された化合物、特開2010−31223号公報、特願2010−121480号公報又は特願2010−094858号公報に記載された化合物等が挙げられる。なかでも、重合性基を有していてかつ液晶性を示す化合物が好ましい。前記液晶化合物(A’)は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0215】
前記液晶化合物(A’)としては、例えば、式(3)で表される化合物(以下「化合物(3)」という場合がある)等が挙げられる。
【0216】
11−E11−(B11−A11t−B12−G (3)
[式(3)中、A11は、置換基を有していてもよい芳香族複素環、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基を表す。
11及びB12は、それぞれ独立に、−C≡C−、−CH=CH−、−CH2−CH2−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−CS−、−O−CO−O−、−CR1314−、−CR1314−CR1516−、−O−CR1314−、−CR1314−O−CR1516−、−CO−O−CR1314−、−O−CO−CR1314−、−CR1314−O−CO−CR1516−、−CR1314−CO−O−CR1516−、−NR13−CR1415−、−CH=N−、−N=N−、−CO−NR16−、−OCH2−、−OCF2−、−CH2O−、−CF2O−、−CH=CH−CO−O−又は単結合を表す。R13〜R16は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
Gは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜13のアルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、炭素数1〜13のフルオロアルキル基、炭素数1〜13のN−アルキルアミノ基、シアノ基、ニトロ基又は−E12−P12を表す。
11及びE12は、炭素数1〜18のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる−CH2−は、−O−又は−CO−で置き換わっていてもよい。
11及びP12は、重合性基を表す。
tは、1〜5の整数を表す。tが2以上の整数である場合、複数のB11及びA11は、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0217】
11で表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環等が挙げられ、芳香族複素環としては、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環及びベンゾチアゾール環等が挙げられる。中でも、ベンゼン環、チアゾール環又はベンゾチアゾール環が好ましい。A11で表される芳香族炭化水素環又は芳香族複素環としては、例えば式(Ar−1)〜式(Ar−11)で表される2価の基が挙げられる。
【0218】
【化129】


[式(Ar−1)〜式(Ar−11)中、X3は、式(A)中のX1として例示した基と同じ範囲から選ばれる基を表す。X1が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。Y3は、式(A)中のY1として例示した基と同じ範囲から選ばれる基を表す。Z3は、式(A)中のZ1として例示した基と同じ範囲から選ばれる基を表す。
及びWは、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、メチル基又はハロゲン原子を表す。
mは、0〜6の整数を表す。
nは、0〜4の整数を表す。
oは、0〜2の整数を表す。
m、n、oが2以上の整数である場合、複数のZ3は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0219】
11で表される芳香族炭化水素環又は芳香族複素環としては、具体的に下記の基が例示される。
例えば、式(Ar−1)、式(Ar−7)で表される基の具体例としては、例えば、以下の基が挙げられる。
【0220】
【化130】

【0221】
11で表される脂環式炭化水素基の炭素数は、例えば3〜18であり、5〜12であることが好ましく、5又は6であることが特に好ましい。A11で表される脂環式炭化水素基としては、シクロヘキサン−1,4−ジイル基等が挙げられる。該脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、フルオロ基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、フルオロ基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0222】
11及びP12としては、化合物(A)のP1及びP2と同様の基が挙げられる。より低温での硬化が可能であることから光重合性基が好ましく、ラジカル重合性基又はカチオン重合性基が好ましく、特に取り扱いが容易な上、化合物(1)の製造も容易であることから、式(P−1)〜(P−5)で表される基が好ましい。
【0223】
【化131】


[式(P−1)〜(P−5)中、R17〜R21はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は水素原子を表す。*は、B11との結合手を表す。]
【0224】
11及びE12としては、炭素数1〜18のアルカンジイル基であり、直鎖状であるか分岐が1箇所である炭素数1〜12のアルカンジイル基が好ましい。
【0225】
化合物(1)としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0226】
【化132】

【0227】
液晶化合物(A’)の含有量は、例えば、液晶化合物(A’)と化合物(A)との合計量100質量部に対して、0〜90質量部であり、好ましくは0〜70質量部である、さらに好ましくは0〜40質量部である。
【0228】
本発明の組成物によりえられる光学フィルムの波長分散特性は、化合物(A)に由来する構造単位の含有量及び液晶化合物(A’)に由来する構造単位の含有量によって、決定することができる。光学フィルム中の化合物(A)に由来する構造単位の含有量を増加させると、より逆波長分散特性を示す。具体的には、化合物(A)に由来する構造単位の含有量が異なる組成物を2〜5種類程度調製し、それぞれの組成物について、同じ膜厚の光学フィルムを製造してその位相差値を求める。そして、結果から、化合物(A)に由来する構造単位の含有量と光学フィルムの位相差値との相関を求め、得られた相関関係から、上記膜厚における光学フィルムに所望の位相差値を与えるために必要な化合物(A)に由来する構造単位の含有量を決定すればよい。
【0229】
1−5.有機溶剤
本発明の組成物は、溶媒を含んでいてもよい。有機溶剤としては、化合物(A)等、組成物の構成成分を溶解し得る有機溶剤であり、重合反応に不活性な溶剤であればよく、具体的には、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル又はフェノール等のアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の非塩素系脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の非塩素系芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶剤;クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系溶剤;等が挙げられる。これら有機溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。上記有機溶剤の中でも、アルコール、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、非塩素系脂肪族炭化水素溶剤、非塩素系芳香族炭化水素溶剤が好ましい。特に本発明の組成物は相溶性に優れ、アルコール、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、非塩素系脂肪族炭化水素溶剤、非塩素系芳香族炭化水素溶剤等にも溶解し得ることから、クロロホルム等の塩素系溶剤を用いなくとも、溶解して塗工させることができる。
【0230】
なお、本発明の組成物を用いて光学フィルム等を作製する場合、成膜の容易性の観点から、組成物が有機溶剤を含有することが好ましい。この場合、溶剤の使用量は、本発明の組成物に対して、好ましくは50質量%〜98質量%であり、より好ましくは50質量%〜95質量%である。換言すると、本発明の組成物中の固形分濃度は、好ましくは2質量%〜50質量%であり、より好ましくは5〜50質量%である。
【0231】
本発明の組成物は、必要に応じて、光増感剤、レベリング剤、カイラル剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0232】
1−6.光増感剤
光増感剤としては、例えば、キサントン、チオキサントン等のキサントン類;アントラセン、アルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン類;フェノチアジン或いはルブレンを挙げることができる。
光増感剤を用いることにより、化合物(A)等の重合を高感度化することができる。また、光増感剤の使用量としては、化合物(A)100質量部に対して、例えば0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。
【0233】
1−7.レベリング剤
レベリング剤としては、有機変性シリコーンオイル系、ポリアクリレート系、パーフルオロアルキル系等が挙げられる。具体的には、例えば、DC3PA、SH7PA、DC11PA、SH28PA、SH29PA、SH30PA、ST80PA、ST86PA、SH8400、SH8700、FZ2123(以上、全て東レ・ダウコーニング(株)製)、KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341、X22−161A、KF6001(以上、全て信越化学工業(株)製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF−4446、TSF4452、TSF4460(以上、全てモメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ジャパン合同会社製)、フロリナート(fluorinert)(登録商標)FC−72、同FC−40、同FC−43、同FC−3283(以上、全て住友スリーエム(株)製)、メガファック(登録商標)R−08、同R−30、同R−90、同F−410、同F−411、同F−443、同F−445、同F−470、同F−477、同F−479、同F−482、同F−483(以上、いずれもDIC(株)製)、エフトップ(商品名)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(以上、全て三菱マテリアル電子化成(株)製)、サーフロン(登録商標)S−381、同S−382、同S−383、同S−393、同SC−101、同SC−105、KH−40、SA−100(以上、全てAGCセイミケミカル(株)製)、商品名E1830、同E5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、BM−1000、BM−1100、BYK−352、BYK−353、BYK−361N(いずれも商品名:BM Chemie社製)等が挙げられる。これらレベリング剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0234】
レベリング剤を用いることにより、位相差板を平滑化することができる。さらに位相差板の製造過程で、組成物(A)の流動性を制御したり、化合物(A)等を重合して得られる位相差板の架橋密度を調整したりすることができる。またレベリング剤の使用量は、化合物(A)100質量部に対して、例えば0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。
【0235】
1−8.カイラル剤
カイラル剤としては、公知のカイラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)を用いることができる。
カイラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もカイラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物又は面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファン及びこれらの誘導体が挙げられる。
例えば、特開2007−269640号公報、特開2007−269639号公報、特開2007−176870号公報、特開2003−137887号公報、特表2000−515496号公報、特開2007−169178号公報、特表平9−506088号公報で開示されているような化合物が挙げられ、好ましくはBASFジャパン(株)製のpaliocolor(登録商標) LC756が挙げられる。
カイラル剤の使用量は、たとえば化合物(A)100質量部に対して、例えば0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは1.0質量部〜25質量部である。上記範囲内であれば、組成物に含まれる重合性成分を重合する際に、化合物(A)の配向を乱すことをより抑制できる。
【0236】
2.光学フィルム
本発明の光学フィルムは、上述した本発明の組成物に含まれる重合性成分を重合してなるものである。本発明の光学フィルムは、光を透過し得るフィルムであって、光学的な機能を有するフィルムである。光学的な機能とは、屈折、複屈折等を意味する。
【0237】
本発明の光学フィルムは、可視光領域における透明性に優れ、様々な表示装置用部材として使用し得る。光学フィルムの厚さは、その位相差値によって適宜調節すればよいが、0.1μm〜10μmであることが好ましく、光弾性を小さくする点で0.2μm〜5μmであることがさらに好ましい。
【0238】
本発明の光学フィルムは1枚で用いてもよいが、本発明の光学フィルム複数枚を積層させて用いてもよいし、他のフィルムと組み合わせて用いてもよい。他のフィルムと組み合わせて用いることにより、位相差フィルム、視野角補償フィルム、視野角拡大フィルム、反射防止フィルム、偏光フィルム、円偏光フィルム、楕円偏光フィルム、輝度向上フィルム等に利用することができる。
【0239】
特に、本発明の光学フィルムは、化合物(A)の配向状態を変えて光学特性を変化させることにより、VA(vertical alignment)モード、IPS(in-plane switching)モード、OCB(optically compensated bend)モード、TN(twisted nematic)モード、STN(super twisted nematic)モード等種々の液晶表示装置用の位相差フィルムとして調整することができる。
【0240】
2−1.位相差フィルム
前記光学フィルムの一種である位相差フィルムは本発明の好適な実施態様の一つである。本発明の位相差フィルムは、本発明の組成物に含まれる重合性成分を重合してなるものである。前記位相差フィルムは、直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、逆に円偏光又は楕円偏光を直線偏光に変換したり、直線偏光の偏光方向を変換したりするために用いられる。
【0241】
前記位相差フィルムとしては、面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内の遅相軸と直交する方向(進相軸方向)の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとした場合、nx>ny≒nzのポジティブAプレート、nx≒ny>nzのネガティブCプレート、nx≒ny<nzのポジティブCプレート、nx≠ny≠nzのポジティブOプレート及びネガティブOプレートが挙げられる。
【0242】
前記位相差フィルムの位相差値は、用いられる表示装置により、30〜300nmの範囲から適宜選択すればよい。
前記位相差フィルムを広帯域λ/4板として用いる場合は、Re(549)は113〜163nm、好ましくは130〜150nmに調整すればよい。広帯域λ/2板として用いる場合は、Re(549)は250〜300nm、好ましくは265〜285nmに調整すればよい。位相差値が前記の値であると、広範の波長の光に対し、一様に偏光変換できる傾向があり、好ましい。ここで、広帯域λ/4板とは、各波長の光に対し、その1/4の位相差値を発現する位相差板であり、広帯域λ/2板とは、各波長の光に対し、その1/2の位相差値を発現する位相差板である。
【0243】
なお、本発明の組成物中の化合物(A)及び液晶化合物の含有量を適宜調整することにより、所望の位相差を与えるように膜厚を調製することができる。得られるフィルムの位相差値(リタデーション値、Re(λ))は、式(4)のように決定されることから、所望のRe(λ)を得るためには、Δn(λ)と膜厚dを適宜調整すればよい。
Re(λ)=d×Δn(λ) (4)
(式中、Re(λ)は、波長λnmにおける位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表す。)
【0244】
2−2.光学フィルムの製造方法
前記光学フィルムは、基材の上に組成物を塗布し、乾燥し、組成物に含まれる化合物(A)を重合することにより製造することができる。以下、光学フィルムの製造方法の一例を説明する。
【0245】
2−2−1.未重合フィルムの作製
基材の上に、組成物を塗布し、乾燥すると、未重合フィルムが得られる。該基材上には、配向膜が形成されていてもよい。未重合フィルムがネマチック相等の液晶相を示す場合、モノドメイン配向による複屈折性を有する。
【0246】
基材への塗布方法としては、例えば、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法、ダイコーティング法等が挙げられる。また、ディップコーター、バーコーター、スピンコーター等のコーターを用いて塗布する方法等が挙げられる。
【0247】
前記基材としては、例えば、ガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム、透光性フィルムが好ましい。前記透光性フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム及びポリフェニレンオキシドフィルム等が挙げられる。
【0248】
本発明の光学フィルムは、前記基材と積層した状態で使用してもよい。光学フィルムに前記基材を積層しておくことで、フィルムを貼合する際、フィルムの運搬、保管等を行う際等に、光学フィルムが破損することが抑制され、容易に取り扱うことができる。
【0249】
本発明の光学フィルムを製造する際には、前記基材上に配向膜を形成させた後、該配向膜の上に組成物を塗布することが好ましい。このような配向膜を用いれば、光学フィルムに対して延伸による屈折率制御を行う必要がないため、複屈折の面内ばらつきが小さくなる。そのため、フラットパネル表示装置(FPD)の大型化にも対応可能な大きな光学フィルムを提供できる。
【0250】
配向膜は、組成物の塗布時に溶解しない溶剤耐性を持つこと、溶剤の除去や液晶の配向の加熱処理に対する耐熱性をもつこと、ラビング時に、摩擦等による剥がれ等が起きないことが好ましく、配向性ポリマー又は配向性ポリマーを含有する組成物からなることが好ましい。
【0251】
前記配向性ポリマーとしては、例えば、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステル類等のポリマーを挙げることができる。これらの配向性ポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上混ぜたり、共重合体したりしてもよい。これらのポリマーは、脱水や脱アミン等による重縮合や、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合や開環重合等で容易に得ることができる。
【0252】
これらの配向性ポリマーは、溶剤に溶解して、塗布することができる。溶剤は、特に制限はないが、具体的には、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;トルエン及びキシレン等の芳香族溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶媒;あるいはクロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素系溶媒;等が挙げられる。これら有機溶媒は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0253】
また配向膜を形成するために、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標)(日産化学工業(株)製)及びオプトマー(登録商標)(JSR(株)製)等が挙げられる。
【0254】
前記基材上に配向膜を形成する方法としては、例えば、前記基材上に、市販の配向膜材料や配向膜の材料となる化合物を溶液にして塗布し、その後、アニールすることにより、前記基材上に配向膜を形成することができる。
【0255】
前記配向膜の厚さは、例えば、10nm〜10000nmであり、好ましくは10nm〜1000nmである。配向膜の厚さが上記範囲内であれば、該配向膜上で化合物(A)を所望の角度に配向させることができる。
【0256】
また、前記配向膜には、必要に応じて、ラビングもしくは偏光UV照射のような配向処理を施してもよい。これらの配向処理を施すことにより、化合物(A)を所望の角度及び方向により配向させることができる。また、ラビングもしくは偏光UV照射を行う時に、マスキングを行えば、得られる光学フィルムに配向パターンを作製することができる。配向膜をラビングする方法としては、例えば、ステージ上を搬送されている配向膜に、ラビング布が巻きつけられ回転しているラビングロールを接触させる方法が挙げられる。
【0257】
2−2−2.未重合フィルムの重合
得られた未重合フィルムに含まれる重合性成分を重合させることにより、光学フィルムが得られる。
光学フィルムは、化合物(A)の配向が固定されており、熱による複屈折の変化の影響を受けにくい。
【0258】
未重合フィルムを重合させる方法には、光重合法が用いられる。光重合法によれば、低温で未重合フィルムを重合させることができ、基材の耐熱性の選択幅が広がる。光重合反応は、未重合フィルムに、可視光、紫外光またはレーザー光を照射することにより行われる。取り扱いの点で、紫外光が特に好ましい。
【0259】
なお、溶剤の除去は、重合反応と並行して行ってもよいが、重合反応を行う前に、ほとんどの溶剤を除去することが、成膜性の点で好ましい。その除去方法としては、自然乾燥、通風乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥等の方法が挙げられる。加熱して溶剤を除去する際の温度は、0℃〜250℃が好ましく、より好ましくは50℃〜220℃、さらに好ましくは80℃〜170℃である。加熱時間は、10秒間〜60分間が好ましく、より好ましくは30秒間〜30分間である。加熱温度および加熱時間が上記範囲内であれば、基材として、耐熱性が必ずしも十分ではないものを用いることができる。
【0260】
化合物(A)を重合させた後、基材を剥離することにより、配向膜と本発明の光学フィルムとが積層されたフィルムが得られ、さらに、配向膜を剥離して、本発明の光学フィルムを得ることができる。また、他の基材を、本発明の光学フィルムに貼合し、先に積層していた基材を剥離する、あるいは、先に積層していた基材および配向膜を剥離することにより、転写を行うこともできる。
【0261】
3.偏光板
本発明の偏光板は、上述した光学フィルム又は位相差フィルムを少なくとも一つ有するものである。
本発明の偏光板としては、図1(a)〜図1(e)に示すように、(1)本発明の光学フィルム1と、偏光フィルム層2とが、直接積層された偏光板4a(図1(a));(2)本発明の光学フィルム1と偏光フィルム層2とが、接着剤層3を介して貼り合わされた偏光板4b(図1(b));(3)本発明の光学フィルム1と本発明の光学フィルム1’とを積層させ、さらに、本発明の光学フィルム1’と偏光フィルム層2とを積層させた偏光板4c(図1(c));(4)本発明の光学フィルム1と本発明の光学フィルム1’とを接着剤層3を介して貼り合わせ、さらに、本発明の光学フィルム1’上に偏光フィルム層2を積層させた偏光板4d(図1(d));及び、(5)本発明の光学フィルム1と本発明の光学フィルム1’とを接着剤層3を介して貼り合わせ、さらに、本発明の光学フィルム1’と偏光フィルム層2とを接着剤層3’を介して貼り合せた偏光板4e(図1(e))等が挙げられる。ここで接着剤とは、接着剤及び/又は粘着剤のことを総称していう。なお、図1の説明では、光学フィルムとしては、本発明の光学フィルムのみであってもよいし、本発明の光学フィルムに配向膜が積層しているものであってもよいし、本発明の光学フィルムに配向膜及び支持基材が積層しているものであってもよい。
【0262】
前記偏光フィルム層2は、偏光機能を有するフィルムであればよく、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性色素を吸着させて延伸したフィルム、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸して沃素や二色性色素を吸着させたフィルム等が挙げられる。
【0263】
また、偏光フィルム層は、必要に応じて、保護フィルムとなるフィルムを備えていてもよい。前記保護フィルムとしては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム及びポリフェニレンオキシドフィルム等が挙げられる。
【0264】
接着剤層3及び接着剤層3’に用いられる接着剤は、透明性が高く耐熱性に優れた接着剤であることが好ましい。そのような接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤あるいはウレタン系接着剤等が用いられる。
また、偏光板においては、図1(c)〜図1(e)に示すように、2以上の本発明の光学フィルムを直接または接着剤層を介して貼り合わせてもよい。
【0265】
4.フラットパネル表示装置
本発明のフラットパネル表示装置は、本発明の光学フィルム又は位相差フィルムを備えるものであり、例えば、本発明の光学フィルムと、液晶パネルとが貼り合わされた液晶パネルを備える液晶表示装置や、本発明の光学フィルムと、発光層とが貼り合わされた有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」ともいう)パネルを備える有機EL表示装置を挙げることができる。本発明のフラットパネル表示装置の実施形態として、液晶表示装置と、有機EL表示装置とについて、以下詳細に述べる。
【0266】
4−1.液晶表示装置
液晶表示装置としては、例えば、図2(a)及び図2(b)に示すような液晶表示装置等が挙げられる。図2(a)に示す液晶表示装置10aは、本発明の偏光板4と液晶パネル6とを、接着層5を介して貼り合わせてなるものであり、図2(b)に示す液晶表示装置10bは、本発明の偏光板4と本発明の偏光板4’とを液晶パネル6の両面に接着層5及び接着層5’を介して貼り合わせたものである。上記構成によれば、図示しない電極を用いて、液晶パネルに電圧を印加することにより、液晶分子の配向が変化し、白黒表示ができる。
【0267】
4−2.有機EL表示装置
有機EL表示装置としては、図3に示す有機EL表示装置等が挙げられる。上記有機EL表示装置としては、本発明の偏光板4と、有機ELパネル7とを、接着層5を介して貼り合わせてなる有機EL表示装置11が挙げられる。上記有機ELパネル7は、導電性有機化合物からなる少なくとも1層の層である。上記構成によれば、図示しない電極を用いて、有機ELパネルに電圧を印加することにより、有機ELパネルが有する発光層に含まれる化合物が発光し、白黒表示ができる。
なお、上記有機EL表示装置11において、偏光板4は、広帯域円偏光板として機能するものであることが好ましい。広帯域円偏光板として機能するものであると、有機EL表示装置11の表面において外光の反射を防止することができる。
【0268】
5.カラーフィルタ
本発明の光学フィルタは、カラーフィルタ層を積層して、カラーフィルタとして用いることもできる。カラーフィルタとしては、図4に示される構成が挙げられる。カラーフィルタ14は、本発明の光学フィルム12の上にカラーフィルタ層13が形成されてなる。カラーフィルタ層13とは、可視光領域の特定の光を吸収する機能を有する層であり、例えば、白色光を赤、青、緑等の色の光に変換する層である。
【0269】
カラーフィルタ14の製造方法の一例を説明する。まず、基材上に、配向膜材料を塗布し、ラビング処理又は偏光UV処理を施して、配向膜を形成する。次に得られた配向膜上に、得られる光学フィルムが所望の波長分散特性を示すように、化合物(A)の濃度が調整された本発明の組成物を、得られる光学フィルムが所望の位相差値になるよう厚みを調整しながら塗布して、膜を形成する。次に得られた本発明の光学フィルム12上に、カラーフィルタ層13を形成する。本発明の光学フィルム12は、化合物(A)が配向する向きが異なる領域を複数有するパターン化光学フィルムであってもよい。パターン化光学フィルムは、前記のラビング処理又は偏光UV処理を、マスクを介して行うことにより得ることができる。
【実施例】
【0270】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0271】
1.合成例
化合物(A11−1)は下記のスキームに従って合成した。
【0272】
【化133】

【0273】
1−1.「4,6−ジメチルベンゾフラン−2−カルボン酸の合成」
4,6−ジメチルサリチルアルデヒド146.6g、炭酸カリウム330.7gをN,N’―ジメチルアセトアミド700mLに分散させた。分散液を80℃に加温した後、ブロモ酢酸tert−ブチル190.5gを30分かけて滴下した。混合液を130℃で2時間反応させた。反応液を室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン600mLを加えて、純水1200mLで分液した。さらに有機層を2回1000mLの純水で洗浄し、有機層を回収した。無水硫酸ナトリウムで脱水後、エバポレータにて溶媒を留去した。残渣を酢酸240gに溶解させて、臭化水素酸水溶液72gを加えて、40℃で1時間攪拌した。室温まで放冷後、1N(1mol/L)−塩酸150gを加えて析出した白色粉末を濾取した。得られた白色粉末をさらに、1N−塩酸で洗浄した後、真空乾燥させることにより、4,6−ジメチルベンゾフラン−2−カルボン酸を81.7g黄色粉末として得た。収率は4,6−ジメチルサリチルアルデヒド基準で44%であった。
【0274】
1−2.「化合物(11−a)の合成」
4,6−ジメチルベンゾフラン−2−カルボン酸80g、2,5−ジメトキシアニリン96.6g及びクロロホルム400gを混合した。得られた懸濁液を氷浴にて冷却した後、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩88.7gとクロロホルム300gとの混合液を4時間かけて加えて、室温で48時間反応させた。得られた混合液を濃縮し、1N−塩酸、水−メタノールの混合溶液(水2体積部、メタノール1体積部)を加えて晶析させた。得られた沈殿を濾取し水−メタノールの混合溶液(水2体積部、メタノール1体積部)を加えた。析出した淡黄色沈殿を濾取し、水−メタノールの混合溶液(水2体積部、メタノール1体積部)で洗浄、真空乾燥して、淡黄色粉末として化合物(11−a)を124.2g得た。収率は4,6−ジメチルベンゾフラン−2−カルボン酸基準で91%であった。
【0275】
1−3.「化合物(11−b)の合成」
化合物(11−a)123g、2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチア−2,4−ジホスフェタン−2,4−ジスルフィド(ローソン試薬)9.2g及びトルエン1200gを混合し、得られた混合液を110℃に昇温して8時間反応させた。室温まで冷却後、1N−水酸化ナトリウム水溶液で分液した。有機層を回収し、n−ヘプタン800mLを加えた。析出した黄色沈殿を濾取、n−ヘプタンで洗浄、真空乾燥させることにより鮮黄色粉末として化合物(11−b)を109.2g得た。収率は化合物(11−a)基準で85%であった。
【0276】
1−4.「化合物(11−c)の合成」
化合物(11−b)60g、水酸化カリウム53.8g及び水1000gを混合し、得られた混合液を氷冷下で攪拌した。続いてフェリシアン化カリウム133g、メタノール51gを加え、反応させた。室温で36時間反応させて、析出した黄色沈殿を濾取した。濾取した沈殿をn−ヘプタン−トルエンの混合溶媒(n−ヘプタン3体積部、トルエン1体積部)で洗浄し、得られた黄色粉末を真空乾燥して、黄色固体として化合物(11−c)を51.3gを得た。収率は化合物(11−b)基準で86%であった。
【0277】
1−5.「化合物(11−d)の合成」
化合物(11−c)40g及び塩化ピリジニウム400g(10倍質量)を混合し、180℃に昇温して3時間反応させた。得られた混合液を氷に加え、得られた沈殿を濾取した。水で懸洗後、トルエンで洗浄、真空乾燥させて、化合物(11−d)を主成分とする黄色固体36.6gを得た。収率は化合物(11−c)基準で99%であった。
【0278】
1−6.「化合物(R−1a)の合成」
化合物(R−1a)は、特開2010−31223号公報の段落0244を参考に合成した。
【0279】
1−7.「化合物(A11−1)の合成」
化合物(11−d)35g、化合物(R−1a)98.8g、ジメチルアミノピリジン1.37g及びトルエン700mLを混合した。得られた混合液にN、N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド55.6gを氷冷下で加えた。得られた反応溶液を室温で終夜反応させ、シリカゲル濾過したのち、減圧濃縮した。残渣にメタノールを加えて結晶化させた。結晶を濾取し、クロロホルムに再溶解させ2.3gの活性炭を加えて、室温で一時間攪拌した。溶液を濾過して濾液をエバポレータにて体積が1/3になるまで減圧濃縮後、攪拌しながらメタノールを加えて、生成した白色沈殿を濾取し、ヘプタンで洗浄、真空乾燥して化合物(A11−1)を白色粉末として74.5g得た。収率は化合物(11−d)基準で60%であった。
【0280】
2.組成物の調製
表1に示す各成分を混合し、得られた溶液を80℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却して組成物を調製した。
【0281】
【表2】

【0282】
表中のA11−1、v−1、B−1、B−2、C−1〜C−10、BYK361Nは以下の化合物を表す。
【0283】
化合物(A);
A11−1:合成例1で得られた化合物(A11−1)
v−1:式(v−1)で表される化合物
【0284】
【化134】

【0285】
光重合開始剤(B);
B−1:式(B−1)で表される化合物(イルガキュア369;BASFジャパン(株)製)
【0286】
【化135】

【0287】
B−2:式(B−2)で表される化合物(イルガキュア819;BASFジャパン(株)製)
【0288】
【化136】

【0289】
酸化防止剤(C);
C−1:2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール(東京化成工業製)
C−2:スミライザーGM(フェノール系酸化防止剤;住友化学(株)製)
C−3:スミライザーGS−F(フェノール系酸化防止剤;住友化学(株)製)
C−4:スミライザーGA−80(フェノール系酸化防止剤;住友化学(株)製)
C−5:Irganox1010(フェノール系酸化防止剤;BASFジャパン(株)製)
C−6:Irganox3114(フェノール系酸化防止剤;BASFジャパン(株)製)
C−7:スミライザーTPL−R(イオウ系酸化防止剤;住友化学(株)製)
C−8:スミライザーTPM(イオウ系酸化防止剤;住友化学(株)製)
C−9:スミライザーGP(リン系酸化防止剤;住友化学(株)製)
C−10:Irganox168(リン系酸化防止剤;BASFジャパン(株)製)
レベリング剤;
BYK361N(ビックケミージャパン社製)
【0290】
3.光学フィルムの作製
ガラス基板に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業(株)製)の2質量%水溶液をスピンコート法により塗布した後、120℃で60分加熱乾燥し、ガラス基板上に厚さ89nmのポリビニルアルコール膜を得た。続いて、ポリビニルアルコール膜の表面にラビング処理を施した。得られたポリビニルアルコール膜に、組成物をスピンコート法により塗布し、ホットプレート上140℃で1分間乾燥させた。その後、80℃に加熱しながらUV露光装置(ユニキュア;ウシオ電機(株)製)を用いて2400mJ/cm2(365nm基準)を照射して、光学フィルムを得た。
【0291】
3−1.位相差値の測定
得られた光学フィルムの正面位相差値を、測定機(KOBRA−WR、王子計測機器社製)を用いて測定した。尚、基材に使用したガラス基板には、複屈折性が無いため、ガラス基板付きフィルムを測定機で計測することにより、ガラス基板上に作製した光学フィルムの正面位相差値を得ることができる。得られた光学測定正面位相差値は、波長451nm、549nm、及び628nmにおいて、それぞれ測定し、[Re(451)/Re(549)](αとする)及び[Re(628)/Re(549)](βとする)を算出した。
【0292】
3−2.色度の測定
紫外可視赤外分光光度計(UV−3150;島津製作所製)を用いて、得られた光学フィルムの透過率を測定した。測定した透過率とC光源の等色関数とから、L***(CIE)表色系における色度a*及びb*、並びにこれらの絶対値である|a*|及び|b*|を算出した。
【0293】
3−3.光学フィルムの耐湿熱性試験
得られた光学フィルムを、温度60℃湿度90%のオーブン中で1000時間保管した。保管前後の位相差値および色度を測定した。保管前のαに対する試験後のαの差を△α、保管前の|a*|に対する保管後の|a*|の差をΔ|a*|、保管前の|b*|に対する保管後の|b*|の差をΔ|b*|として算出した。△αが−0.2以上+0.2以下、かつΔ|a*|およびΔ|b*|が−3.0以上+3.0以下であれば、光学フィルムの耐湿熱性は良好であると判断できる。位相差値の測定結果を表2に、色度の測定結果を表3に示す。
【0294】
【表3】

【0295】
【表4】

【0296】
実施例の光学フィルムは、△α、Δ|a*|及びΔ|b*|が小さく、耐湿熱性に優れることが示された。また、実施例の中でも、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤を含有する実施例1〜6の光学フィルムは、特にΔ|b*|が小さく、耐湿熱性により優れることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0297】
本発明によれば、耐湿熱性に優れる光学フィルムを得ることができる。
【符号の説明】
【0298】
1、1’、12:本発明の光学フィルム、
2:偏光フィルム層、
3、3’:接着剤層、
4a、4b、4c、4d、4e、4、4’:本発明の偏光板、
5、5’:接着層、
6:液晶パネル、
7:有機ELパネル、
10a、10b:液晶表示装置、
11:有機EL表示装置、
13:カラーフィルタ層、
14:カラーフィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)で表される化合物、酸化防止剤及び光重合開始剤を含む組成物。
【化1】


[式(A)中、X1は、−S−、−O−又は−NR1−を表す。R1は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
1は、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、又は、炭素数3〜12の芳香族複素環式基を表す。
1及びQ2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、1価の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR23又は−SR2を表し、Q1及びQ2は、互いに結合して芳香環又は芳香族複素環を形成していてもよい。R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
1及びD2は、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−CS−O−、−CR45−、−CR45−CR67−、−O−CR45−、−CR45−O−CR67−、−CO−O−CR45−、−O−CO−CR45−、−CR45−O−CO−CR67−、−CR45−CO−O−CR67−、−NR4−CR56−又は−CO−NR4−を表す。
4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
1及びG2は、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH2−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH(−)−は、−N(−)−で置き換っていてもよい。
1及びL2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、L1及びL2からなる群から選ばれる少なくとも1種が、重合性基を有する基を表す。]
【請求項2】
前記光重合開始剤が、アルキルフェノン化合物である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(A)におけるL1が式(A1)で表される基であり、かつ、式(A)におけるL2が式(A2)で表される基である請求項1又は2に記載の組成物。
1−F1−(B1−A1k−E1− (A1)
2−F2−(B2−A2l−E2− (A2)
[式(A1)及び式(A2)中、B1、B2、E1及びE2は、それぞれ独立に、−CR1112−、−CH2−CH2−、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CS−O−、−O−CS−O−、−CO−NR11−、−O−CH2−、−S−CH2−又は単結合を表す。
1及びA2は、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH2−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH(−)−は、−N(−)−で置き換っていてもよい。
k及びlは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。kが2以上の整数である場合、複数のB1及びA1は互いに同一であっても異なっていてもよい。lが2以上の整数である場合、複数のB2及びA2は互いに同一であっても異なっていてもよい。
1及びF2は、炭素数1〜12の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
1及びP2は、水素原子又は重合性基を表し、少なくとも一方が重合性基である。
11及びR12は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
【請求項4】
前記アルキルフェノン化合物が、式(C−1)で表される化合物である請求項2又は3に記載の組成物。
【化2】


[式(C−1)中、Q3は、水素原子又はメチル基を表す。]
【請求項5】
前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤である請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物に含まれる重合性成分を重合してなる光学フィルム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物に含まれる重合性成分を重合してなる位相差フィルム。
【請求項8】
請求項6に記載の光学フィルム及び請求項7に記載の位相差フィルムからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する偏光板。
【請求項9】
請求項6に記載の光学フィルム及び請求項7記載の位相差フィルムからなる群から選ばれる少なくとも1種を有するフラットパネル表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−21068(P2012−21068A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159156(P2010−159156)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】