組立て物用クッション体の成形方法
【課題】本体あるいは可動体にクッション体を組付ける作業およびクッション体の部品管理を不要とする。
【解決手段】組立て物を構成する本体と、この本体に対して移動可能な可動体との接触時の衝撃を緩衝するために相互の接触部に設けられるクッション体の成形方法であって、本体あるいは可動体(蓋体16)の一方を基材とし、基材の接触部に相当する箇所に成形型(上型50あるいは下型52)を配置して該成形型と基材との間にキャビティ54を構成する。このキャビティ54に溶融状態の弾性材料を射出することにより、接触部に位置するクッション体を基材と結合された状態に成形する。
【解決手段】組立て物を構成する本体と、この本体に対して移動可能な可動体との接触時の衝撃を緩衝するために相互の接触部に設けられるクッション体の成形方法であって、本体あるいは可動体(蓋体16)の一方を基材とし、基材の接触部に相当する箇所に成形型(上型50あるいは下型52)を配置して該成形型と基材との間にキャビティ54を構成する。このキャビティ54に溶融状態の弾性材料を射出することにより、接触部に位置するクッション体を基材と結合された状態に成形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として車両用のコンソールボックスやグラブボックスといった組立て物を構成する本体(ボックス本体)と、この本体に対する可動体(蓋体)とが接触したときの衝撃や異音を緩和するためのクッション体の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているグラブボックスにおいては、インストルメントパネルに構成されている本体に対して開閉する蓋体側に、予め成形されクッション体(ゴム部品)が組付けられている。このゴム部品が、蓋体を閉ざしたときに本体と接触して衝撃や異音を緩和する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−78559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているグラブボックスに限らず、本体に対する可動体とが接触する箇所には複数個のクッション体を設けているのが一般的である。そして、クッション体を本体あるいは可動体に組付けるには、本体あるいは可動体に貫通して開けられている取付け孔に、クッション体と一体のアンカー部を強制的に挿通させており、作業性がわるい。また、多数のクッション体を管理することも必要である。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するもので、その目的は、本体あるいは可動体にクッション体を組付ける作業およびクッション体の部品管理を不要とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
組立て物を構成する本体と、この本体に対して移動可能な可動体との接触時の衝撃を緩衝するために相互の接触部に設けられるクッション体の成形方法であって、本体あるいは可動体の一方を基材とし、基材の接触部に相当する箇所に成形型を配置して該成形型と基材との間にキャビティを構成する。このキャビティに溶融状態の弾性材料を射出することにより、接触部に位置するクッション体を基材と結合された状態に成形する。
【0007】
好ましくは、成形型と基材との間に構成されるキャビティに対し、この基材となる本体あるいは可動体の非意匠面側から溶融状態の弾性材料を射出することである。
【0008】
より好ましくは、基材となる本体あるいは可動体の相互の接触部および隙間に相当する箇所に成形型を配置して該成形型と基材との間にキャビティを構成し、このキャビティに溶融状態の弾性材料を射出することにより、接触部に位置するクッション体および隙間に位置する皮膜を基材と結合された状態に成形することである。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、組立て物における本体あるいは可動体の一方を基材として衝撃緩衝用のクッション体を直接成形することにより、組立て物にクッション体を組付ける作業およびクッション体の部品管理が不要になる。
また、基材となる本体あるいは可動体の意匠面とは反対側から溶融状態の弾性材料を射出することにより、射出のゲート跡やバリあるいは弾性材料の焼き付き等が全て非意匠面側に生じ、意匠面の見栄えを良好に保持できる。
さらに、組立て物における本体あるいは可動体の一方を基材としてクッション体および皮膜を直接成形することにより、組立て物にクッション体および皮膜をそれぞれ個別に組付ける作業や部品管理が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両用のコンソールボックスを表した外観斜視図。
【図2】コンソールボックスの蓋体を表した外観斜視図。
【図3】コンソールボックスの蓋体の内側を表した平面図。
【図4】図3のA−A矢視方向の断面図。
【図5】二種類のクッション体を表したそれぞれの外観斜視図。
【図6】クッション体の成形設備を表した構成図。
【図7】一つの成形用キャビティの周辺を表した断面図。
【図8】図7の側断面図。
【図9】別の成形用キャビティの周辺を表した断面図。
【図10】実施の形態2における蓋体の一部を表した外観斜視図。
【図11】図10の蓋体にクッション体が設けられた状態の外観斜視図。
【図12】図11のB−B矢視方向の拡大断面図。
【図13】実施の形態2におけるクッション体の成形用キャビティを表した断面図。
【図14】図13の成形用キャビティにおける金型の変更例を表した断面図。
【図15】実施の形態2におけるクッション体の設置変更の二例を表した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
本発明の実施の形態1を表した図1〜図9においては、車両内装用の組立て物の一例としてコンソールボックス10を対象にしている。コンソールボックス10の本体12は、図1で示すように上面が開放された収納部14を備えており、この収納部14の上面開放部が蓋体16によって開閉されるようになっている。したがって、蓋体16が組立て物の本体12に対する可動体に相当する。なお、図1では蓋体16を開けた状態が示されており、この状態で収納部14の内部にアクセスすることができる。
【0012】
蓋体16は、その平面形状が長方形であって、長辺の一方側が本体12に対して開閉作動可能に結合されるヒンジ部18になっている(図2、図3)。また、蓋体16における長辺の他方側の縁部20は、本体12の上面開放部を蓋体16で閉ざしたときに本体12の対応箇所に接触して受止められる部分である。つまり、蓋体16の縁部20と、それを受止める本体12の対応箇所とが本発明の「本体と可動体との接触部」に相当する。
【0013】
蓋体16の縁部20には、その中央と左右両側との計3箇所においてクッション体30がそれぞれ設けられている(図2〜図4)。これらのクッション体30は、それぞれ適度の弾性を有するゴムやエラストマ等の素材で成形されている。そして、本体12の上面開放部を蓋体16で閉ざしたとき、相互の接触部での衝撃や異音は各クッション体30によって緩和される。
なお、図5(a)で示されている縁部20中央のクッション体30Aと、図5(b)で示されている左右両側のクッション体30Bとは個々の形状が異なる。しかし、これらのクッション体30A,30Bおよび後述の実施の形態2におけるクッション体30Cを説明するとき、特に区別する必要がなければ、これらをクッション体30として総称する。
【0014】
つづいて、蓋体16を基材としてクッション体30を直接成形する、いわゆるダイレクト成形のための設備について説明する。このダイレクト成形設備には、図6で示す射出ユニット40が使用される。この射出ユニット40は例えばハンディータイプであって、基材の任意の箇所に射出ユニット40を移動させて成形を行うことができる。
射出ユニット40は、そのボデー42の内部にホッパー46から送り込まれるペレット状の弾性材料を、このボデー42の先端付近で加熱して溶融させ、かつ、射出シリンダ43の作動によって溶融状態の弾性材料をボデー42の先端のノズル44から射出することができる。
【0015】
ダイレクト成形は、基材となる樹脂製品(一次成形品)の一部に金型を合わせることでキャビティを構成し、そこに別の樹脂成形品(二次成形品)を直接成形する成形手段である。このダイレクト成形によれば、一次成形品の金型に変更を加えることなく、一次成形品の自由な箇所へ二次成形品を成形することで、目標とする最終形状の成形品とすることができる。
【0016】
本実施の形態では、上述のように一次成形品である蓋体16を基材としてクッション体30をダイレクト成形するものである。蓋体16の縁部20には、図3あるいは図4で示す各クッション体30が成形される箇所において、蓋体16の表裏に貫通した貫通孔22がそれぞれ開けられている(図7〜図9)。これらの貫通孔22の位置において、縁部20の上面側には上型50が配置され、下面側には下型52が配置される。これらの上型50および下型52と貫通孔22とにより、図7〜図9で示す形状のキャビティ54が構成される。なお、図7および図8で示すキャビティ54がクッション体30Aの成形用であり、図9で示すキャビティ54がクッション体30Bの成形用である。
【0017】
上型50は射出ユニット40におけるボデー42の先端部に結合されており、この上型50側からキャビティ54に向けて溶融状態の弾性材料が射出される。また、図7〜図9で示す縁部20の下面側が蓋体16の意匠面であり、上面側が蓋体16の非意匠面である。したがって、上型50は蓋体16の非意匠面側に配置されており、この非意匠面側から溶融状態の弾性材料がキャビティ54に射出されることになる。この上型50で構成されるキャビティ54の一部は、クッション体30のアンカー部32(図5および図6)に相当する。
クッション体30Aのキャビティ54においては、図7で示すように縁部20の下面側から突出した突起24もキャビティ54の一部を構成している。これらの突起24は、図5で示すように矩形状をしているクッション体30Aを回り止めして所定の状態に保持する機能を果たす。
【0018】
クッション体30のダイレクト成形にあたっては、既に説明したように一次成形品である蓋体16を基材とし、その縁部20に開けられている各貫通孔22の位置において上型50および下型52を配置してキャビティ54をそれぞれ構成する(図7〜図9)。この後、射出ユニット40によって個々のキャビティ54に溶融状態の弾性材料を射出することにより、蓋体16の縁部20に3個のクッション体30が該縁部20と一体化された状態で成形される(図2〜図4)。
なお、基材である蓋体16がポリプロピレン製の場合に、クッション体30の弾性材料としてオレフィン系のエラストマを使用すると、相互の接着性がよく、蓋体16とクッション体30との一体化が高められる。
【0019】
このように、蓋体16の縁部20にクッション体30をダイレクト成形することで、予め成形されたクッション部品を蓋体16に組付ける作業および部品の管理が不要になる。また、蓋体16の非意匠面側からキャビティ54に射出することにより、射出のゲート跡やバリあるいは弾性材料の焼き付き等が非意匠面側に生じることなり、蓋体16の意匠面は見栄えの良い状態に保持される。
【0020】
本発明の実施の形態2を表した図10〜図15における車両内装用の組立て物についても、車両用のコンソールボックスやグラブボックス等を対象としている。図10および図11で示す蓋体16は、図12で示す本体12に対して開閉可能に結合され、この本体12および蓋体16が本発明の「本体および可動体」に相当する。蓋体16は、その内側面においてクッション体30Cが収まる枠部26を有する(図10、図11)。また、蓋体16の側面には、本体12との隙間に位置してその寸法公差を吸収する皮膜34が設けられている(図11、図12)。このクッション体30Cと皮膜34とは、蓋体16の側壁に開けられた貫通孔28によって一体につながっている(図12)。
【0021】
クッション体30および皮膜34は、実施の形態1と同様に蓋体16を基材としてダイレクト成形される。具体的には図13で示すように、蓋体16の枠部26を被うように上型50が配置され、これによって蓋体16と上型50との間にクッション体30Cおよび皮膜34を成形するためのキャビティ54が構成される。そして、上型50には実施の形態1と同様の射出ユニット40におけるボデー42の先端部が結合されており、この射出ユニット40からキャビティ54に溶融状態の弾性材料を射出することができる。これにより、蓋体16に対して図11および図12で示すようなクッション体30Cおよび皮膜34が該蓋体16と一体化された状態で成形される。
【0022】
皮膜34の成形には、図14で示すようにスライド型56を使用することも可能であり、それによって皮膜34の形状やサイズを任意に設定することができる。また、クッション体30Cと皮膜34とを、蓋体16の縁を乗り越えて一体化させることにより、貫通孔28を省略することも可能である。
さらに、図15で示すようにクッション体30Cおよび皮膜34を本体12側にダイレクト成形することもできる。なお、実施の形態2の成形設備においても、必要に応じて実施の形態1と同様に下型52を使用する場合もある。
【0023】
このように、実施の形態2においては、一次成形品である蓋体16に、クッション体30Aと皮膜34とをダイレクト成形することにより、これらを個別に組付けていた従来の作業と比べて工数が削減され、個々の部品の在庫も不要になる。皮膜34については、これまでのようなフェルト等を貼付けたものと異なり、蓋体16の開閉によって剥がれ落ちることがなく、かつ、意匠性を考慮した形状の選定も可能である。
【符号の説明】
【0024】
10 コンソールボックス(組立て物)
12 本体
16 蓋体
30 クッション体
50 上型
52 下型
54 キャビティ
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として車両用のコンソールボックスやグラブボックスといった組立て物を構成する本体(ボックス本体)と、この本体に対する可動体(蓋体)とが接触したときの衝撃や異音を緩和するためのクッション体の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているグラブボックスにおいては、インストルメントパネルに構成されている本体に対して開閉する蓋体側に、予め成形されクッション体(ゴム部品)が組付けられている。このゴム部品が、蓋体を閉ざしたときに本体と接触して衝撃や異音を緩和する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−78559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているグラブボックスに限らず、本体に対する可動体とが接触する箇所には複数個のクッション体を設けているのが一般的である。そして、クッション体を本体あるいは可動体に組付けるには、本体あるいは可動体に貫通して開けられている取付け孔に、クッション体と一体のアンカー部を強制的に挿通させており、作業性がわるい。また、多数のクッション体を管理することも必要である。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するもので、その目的は、本体あるいは可動体にクッション体を組付ける作業およびクッション体の部品管理を不要とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
組立て物を構成する本体と、この本体に対して移動可能な可動体との接触時の衝撃を緩衝するために相互の接触部に設けられるクッション体の成形方法であって、本体あるいは可動体の一方を基材とし、基材の接触部に相当する箇所に成形型を配置して該成形型と基材との間にキャビティを構成する。このキャビティに溶融状態の弾性材料を射出することにより、接触部に位置するクッション体を基材と結合された状態に成形する。
【0007】
好ましくは、成形型と基材との間に構成されるキャビティに対し、この基材となる本体あるいは可動体の非意匠面側から溶融状態の弾性材料を射出することである。
【0008】
より好ましくは、基材となる本体あるいは可動体の相互の接触部および隙間に相当する箇所に成形型を配置して該成形型と基材との間にキャビティを構成し、このキャビティに溶融状態の弾性材料を射出することにより、接触部に位置するクッション体および隙間に位置する皮膜を基材と結合された状態に成形することである。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、組立て物における本体あるいは可動体の一方を基材として衝撃緩衝用のクッション体を直接成形することにより、組立て物にクッション体を組付ける作業およびクッション体の部品管理が不要になる。
また、基材となる本体あるいは可動体の意匠面とは反対側から溶融状態の弾性材料を射出することにより、射出のゲート跡やバリあるいは弾性材料の焼き付き等が全て非意匠面側に生じ、意匠面の見栄えを良好に保持できる。
さらに、組立て物における本体あるいは可動体の一方を基材としてクッション体および皮膜を直接成形することにより、組立て物にクッション体および皮膜をそれぞれ個別に組付ける作業や部品管理が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両用のコンソールボックスを表した外観斜視図。
【図2】コンソールボックスの蓋体を表した外観斜視図。
【図3】コンソールボックスの蓋体の内側を表した平面図。
【図4】図3のA−A矢視方向の断面図。
【図5】二種類のクッション体を表したそれぞれの外観斜視図。
【図6】クッション体の成形設備を表した構成図。
【図7】一つの成形用キャビティの周辺を表した断面図。
【図8】図7の側断面図。
【図9】別の成形用キャビティの周辺を表した断面図。
【図10】実施の形態2における蓋体の一部を表した外観斜視図。
【図11】図10の蓋体にクッション体が設けられた状態の外観斜視図。
【図12】図11のB−B矢視方向の拡大断面図。
【図13】実施の形態2におけるクッション体の成形用キャビティを表した断面図。
【図14】図13の成形用キャビティにおける金型の変更例を表した断面図。
【図15】実施の形態2におけるクッション体の設置変更の二例を表した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
本発明の実施の形態1を表した図1〜図9においては、車両内装用の組立て物の一例としてコンソールボックス10を対象にしている。コンソールボックス10の本体12は、図1で示すように上面が開放された収納部14を備えており、この収納部14の上面開放部が蓋体16によって開閉されるようになっている。したがって、蓋体16が組立て物の本体12に対する可動体に相当する。なお、図1では蓋体16を開けた状態が示されており、この状態で収納部14の内部にアクセスすることができる。
【0012】
蓋体16は、その平面形状が長方形であって、長辺の一方側が本体12に対して開閉作動可能に結合されるヒンジ部18になっている(図2、図3)。また、蓋体16における長辺の他方側の縁部20は、本体12の上面開放部を蓋体16で閉ざしたときに本体12の対応箇所に接触して受止められる部分である。つまり、蓋体16の縁部20と、それを受止める本体12の対応箇所とが本発明の「本体と可動体との接触部」に相当する。
【0013】
蓋体16の縁部20には、その中央と左右両側との計3箇所においてクッション体30がそれぞれ設けられている(図2〜図4)。これらのクッション体30は、それぞれ適度の弾性を有するゴムやエラストマ等の素材で成形されている。そして、本体12の上面開放部を蓋体16で閉ざしたとき、相互の接触部での衝撃や異音は各クッション体30によって緩和される。
なお、図5(a)で示されている縁部20中央のクッション体30Aと、図5(b)で示されている左右両側のクッション体30Bとは個々の形状が異なる。しかし、これらのクッション体30A,30Bおよび後述の実施の形態2におけるクッション体30Cを説明するとき、特に区別する必要がなければ、これらをクッション体30として総称する。
【0014】
つづいて、蓋体16を基材としてクッション体30を直接成形する、いわゆるダイレクト成形のための設備について説明する。このダイレクト成形設備には、図6で示す射出ユニット40が使用される。この射出ユニット40は例えばハンディータイプであって、基材の任意の箇所に射出ユニット40を移動させて成形を行うことができる。
射出ユニット40は、そのボデー42の内部にホッパー46から送り込まれるペレット状の弾性材料を、このボデー42の先端付近で加熱して溶融させ、かつ、射出シリンダ43の作動によって溶融状態の弾性材料をボデー42の先端のノズル44から射出することができる。
【0015】
ダイレクト成形は、基材となる樹脂製品(一次成形品)の一部に金型を合わせることでキャビティを構成し、そこに別の樹脂成形品(二次成形品)を直接成形する成形手段である。このダイレクト成形によれば、一次成形品の金型に変更を加えることなく、一次成形品の自由な箇所へ二次成形品を成形することで、目標とする最終形状の成形品とすることができる。
【0016】
本実施の形態では、上述のように一次成形品である蓋体16を基材としてクッション体30をダイレクト成形するものである。蓋体16の縁部20には、図3あるいは図4で示す各クッション体30が成形される箇所において、蓋体16の表裏に貫通した貫通孔22がそれぞれ開けられている(図7〜図9)。これらの貫通孔22の位置において、縁部20の上面側には上型50が配置され、下面側には下型52が配置される。これらの上型50および下型52と貫通孔22とにより、図7〜図9で示す形状のキャビティ54が構成される。なお、図7および図8で示すキャビティ54がクッション体30Aの成形用であり、図9で示すキャビティ54がクッション体30Bの成形用である。
【0017】
上型50は射出ユニット40におけるボデー42の先端部に結合されており、この上型50側からキャビティ54に向けて溶融状態の弾性材料が射出される。また、図7〜図9で示す縁部20の下面側が蓋体16の意匠面であり、上面側が蓋体16の非意匠面である。したがって、上型50は蓋体16の非意匠面側に配置されており、この非意匠面側から溶融状態の弾性材料がキャビティ54に射出されることになる。この上型50で構成されるキャビティ54の一部は、クッション体30のアンカー部32(図5および図6)に相当する。
クッション体30Aのキャビティ54においては、図7で示すように縁部20の下面側から突出した突起24もキャビティ54の一部を構成している。これらの突起24は、図5で示すように矩形状をしているクッション体30Aを回り止めして所定の状態に保持する機能を果たす。
【0018】
クッション体30のダイレクト成形にあたっては、既に説明したように一次成形品である蓋体16を基材とし、その縁部20に開けられている各貫通孔22の位置において上型50および下型52を配置してキャビティ54をそれぞれ構成する(図7〜図9)。この後、射出ユニット40によって個々のキャビティ54に溶融状態の弾性材料を射出することにより、蓋体16の縁部20に3個のクッション体30が該縁部20と一体化された状態で成形される(図2〜図4)。
なお、基材である蓋体16がポリプロピレン製の場合に、クッション体30の弾性材料としてオレフィン系のエラストマを使用すると、相互の接着性がよく、蓋体16とクッション体30との一体化が高められる。
【0019】
このように、蓋体16の縁部20にクッション体30をダイレクト成形することで、予め成形されたクッション部品を蓋体16に組付ける作業および部品の管理が不要になる。また、蓋体16の非意匠面側からキャビティ54に射出することにより、射出のゲート跡やバリあるいは弾性材料の焼き付き等が非意匠面側に生じることなり、蓋体16の意匠面は見栄えの良い状態に保持される。
【0020】
本発明の実施の形態2を表した図10〜図15における車両内装用の組立て物についても、車両用のコンソールボックスやグラブボックス等を対象としている。図10および図11で示す蓋体16は、図12で示す本体12に対して開閉可能に結合され、この本体12および蓋体16が本発明の「本体および可動体」に相当する。蓋体16は、その内側面においてクッション体30Cが収まる枠部26を有する(図10、図11)。また、蓋体16の側面には、本体12との隙間に位置してその寸法公差を吸収する皮膜34が設けられている(図11、図12)。このクッション体30Cと皮膜34とは、蓋体16の側壁に開けられた貫通孔28によって一体につながっている(図12)。
【0021】
クッション体30および皮膜34は、実施の形態1と同様に蓋体16を基材としてダイレクト成形される。具体的には図13で示すように、蓋体16の枠部26を被うように上型50が配置され、これによって蓋体16と上型50との間にクッション体30Cおよび皮膜34を成形するためのキャビティ54が構成される。そして、上型50には実施の形態1と同様の射出ユニット40におけるボデー42の先端部が結合されており、この射出ユニット40からキャビティ54に溶融状態の弾性材料を射出することができる。これにより、蓋体16に対して図11および図12で示すようなクッション体30Cおよび皮膜34が該蓋体16と一体化された状態で成形される。
【0022】
皮膜34の成形には、図14で示すようにスライド型56を使用することも可能であり、それによって皮膜34の形状やサイズを任意に設定することができる。また、クッション体30Cと皮膜34とを、蓋体16の縁を乗り越えて一体化させることにより、貫通孔28を省略することも可能である。
さらに、図15で示すようにクッション体30Cおよび皮膜34を本体12側にダイレクト成形することもできる。なお、実施の形態2の成形設備においても、必要に応じて実施の形態1と同様に下型52を使用する場合もある。
【0023】
このように、実施の形態2においては、一次成形品である蓋体16に、クッション体30Aと皮膜34とをダイレクト成形することにより、これらを個別に組付けていた従来の作業と比べて工数が削減され、個々の部品の在庫も不要になる。皮膜34については、これまでのようなフェルト等を貼付けたものと異なり、蓋体16の開閉によって剥がれ落ちることがなく、かつ、意匠性を考慮した形状の選定も可能である。
【符号の説明】
【0024】
10 コンソールボックス(組立て物)
12 本体
16 蓋体
30 クッション体
50 上型
52 下型
54 キャビティ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組立て物を構成する本体と、この本体に対して移動可能な可動体との接触時の衝撃を緩衝するために相互の接触部に設けられるクッション体の成形方法であって、
本体あるいは可動体の一方を基材とし、基材の接触部に相当する箇所に成形型を配置して該成形型と基材との間にキャビティを構成し、このキャビティに溶融状態の弾性材料を射出することにより、接触部に位置するクッション体を基材と結合された状態に成形する組立て物用クッション体の成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載された組立て物用クッション体の成形方法であって、
成形型と基材との間に構成されるキャビティに対し、この基材となる本体あるいは可動体の非意匠面側から溶融状態の弾性材料を射出する組立て物用クッション体の成形方法。
【請求項3】
請求項1に記載された組立て物用クッション体の成形方法であって、
基材となる本体あるいは可動体の相互の接触部および隙間に相当する箇所に成形型を配置して該成形型と基材との間にキャビティを構成し、このキャビティに溶融状態の弾性材料を射出することにより、接触部に位置するクッション体および隙間に位置する皮膜を基材と結合された状態に成形する組立て物用クッション体の成形方法。
【請求項1】
組立て物を構成する本体と、この本体に対して移動可能な可動体との接触時の衝撃を緩衝するために相互の接触部に設けられるクッション体の成形方法であって、
本体あるいは可動体の一方を基材とし、基材の接触部に相当する箇所に成形型を配置して該成形型と基材との間にキャビティを構成し、このキャビティに溶融状態の弾性材料を射出することにより、接触部に位置するクッション体を基材と結合された状態に成形する組立て物用クッション体の成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載された組立て物用クッション体の成形方法であって、
成形型と基材との間に構成されるキャビティに対し、この基材となる本体あるいは可動体の非意匠面側から溶融状態の弾性材料を射出する組立て物用クッション体の成形方法。
【請求項3】
請求項1に記載された組立て物用クッション体の成形方法であって、
基材となる本体あるいは可動体の相互の接触部および隙間に相当する箇所に成形型を配置して該成形型と基材との間にキャビティを構成し、このキャビティに溶融状態の弾性材料を射出することにより、接触部に位置するクッション体および隙間に位置する皮膜を基材と結合された状態に成形する組立て物用クッション体の成形方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−166457(P2012−166457A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29572(P2011−29572)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】
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