説明

組電池

【課題】長期的に電極端子と電極端子接続部材とが確実に接続された状態を維持できる。
【解決手段】電極端子4は、先端4aから電池容器11側に向って幅寸法が小さくなる円錐状に形成されると共に、先端4aから電池容器11側に延びて電極端子4の少なくとも先端4a側の部分を周方向に複数の分割体4cに分割する溝部12が形成され、かつ分割体4cが互いに近接離間するように弾性変形可能である。バスバー(電極端子接続部材)5は、電極端子4の先端4a側から電池容器11側に向って幅寸法が小さくなる円錐状の嵌合穴14が形成され、嵌合穴14にバスバー5が分割体4cを互いに近接させるように弾性変形させて嵌合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数配列された単電池間の電極端子をバスバーなどの電極端子接続部材で接続する組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組電池において単電池の電極端子とバスバーなどの電極端子接続部材との接続は、ボルト接合や溶接などによって行われている。
また、特許文献1に記載された配線接続部(電極端子)は、平面−(マイナス)状や+(プラス)状のスリット部が設けられていて、このスリット部に配線板(電極端子接続部材)が嵌め込まれている。
また、特許文献2に記載されたバッテリターミナルでは、バッテリ接続端子は、先端に向かうに従って縮径するテーパ形状のバッテリポストの外周に設けられていて、テーパ円筒状をなす導電性テーパ管と外面に雄ネジ部が形成された合成樹脂部とを一体成形し、かつ縦スリットが形成されている。そして、このバッテリ接続端子の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を内面に持つ合成樹脂製の絶縁キャップによってバッテリ接続端子を締め付けると、スリットを持つバッテリ接続端子が半径方向内側にすぼまり、導電性テーパ管がバッテリポストに密着して固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−60181号公報(例えば図23参照)
【特許文献2】特開2003−109578号公報(例えば図7参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術における電極端子と端子接続部材との接続構造には、以下のような問題点があった。すなわち、ボルト接合では、使用時の振動などによってボルトが緩んでしまうおそれがあった。このため、ボルト接合を用いた構造では、長期的に接続を確実に維持できないという問題があった。また、溶接によって固定する構造では、一度固定してしまうと着脱不能となってしまうとともに、振動により溶接部に割れが生じてしまうおそれがあった。
また、特許文献1に記載された配線接続部では、スリット部に配線板がはめ込まれる構造であるので、配線接続部のスリット部に単に配線板を嵌めこんだだけでは、配線接続部と配線板とが密着した状態で接続されているかは不明であり、使用時の振動などにより配線板が配線接続部から外れてしまうことが考えられる。
また、特許文献2に記載されたバッテリ接続端子は、絶縁キャップ側に向って径が小さくなるテーパ形状であるので、振動によりバッテリ接続端子と絶縁キャップとが外れてしまうことが考えられる。また、特許文献2に記載されたバッテリ接続端子では、ネジ構造を採用していて振動によって緩んでしまうおそれがあり、部材点数が多いものの結局ボルト接合の問題点を解消するには至らなかった。
【0005】
本発明は、上述する問題に鑑みてなされたもので、長期的に電極端子と電極端子接続部材とが確実に接続された状態を維持できる組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る組電池では、電極端子を有する単電池が隣接する他の単電池の電極端子と電極端子接続部材により接続された組電池において、前記電極端子は、先端から電池容器側に向って幅寸法が小さくなる錐状に形成され先端から前記電池容器側に延び少なくとも先端側の部分を複数の分割体に分割する溝部と、外周面に形成された凹部とを有し、前記電極端子接続部材は、前記分割体を互いに近接させた前記電極端子が押入され前記凹部と嵌合する嵌合穴を有することを特徴とする。
【0007】
本発明では、電極端子は、先端から電池容器側に向って幅寸法が小さくなる錐状に形成されると共に先端から電池容器側に延びて電極端子の少なくとも先端側の部分を周方向に複数の分割体に分割する溝部が形成され、かつ分割体が互いに近接離間するように弾性変形可能である。このため、電極端子に外側から内側に加力し、分割体を互いに近接させるように弾性変形させて溝部の幅を狭めると、電極端子の幅寸法を小さくすることができるので、電極端子接続部材の嵌合穴に電極端子を挿入して嵌合させることができる。
そして、電極端子への加力を解除することで、電極端子は分割体同士の離間距離を拡げるようにして内側から外側に広がり、電極端子接続部材の嵌合穴の内周面を押圧するようにして嵌合穴に嵌合されることとなる。ここで、電極端子と嵌合穴とが共に、電極端子の先端から電池容器側に向かうに従って幅寸法が小さくなる錐状であることにより、幅寸法が大きくなる先端側への電極端子から電極端子接続部材の脱落を防ぐことができるので、電極端子と電極端子接続部材との接続を確実に維持することができる。
【0008】
また、本発明に係る組電池では、前記電極端子は、外周面に前記電極端子接続部材と嵌合する凹部を有することが好ましい。
本発明では、電極端子は、外周面に電極端子接続部材と嵌合する凹部を有することにより、電極端子から電極端子接続部材が脱落することを防ぐと共に、電極端子に対する電極端子接続部材の位置決めが行いやすい。
【0009】
また、本発明に係る組電池では、前記電極端子の先端面に設置される基部と、前記基部から前記電極端子側に突出し前記溝部に嵌合される突起部と、前記基部と連結し前記電極端子接続部材を係止する係止部とを有する固定部材を備えることを特徴とする。
本発明では、電極端子の先端面に設置される基部と、基部から電極端子側に突出し前記溝部に嵌合される突起部と、基部と連結し電極端子接続部材を係止する係止部とを有する固定部材を備えることにより、突起部が溝部の幅を広げて電極端子を電極端子接続部材の嵌合穴の内周面に押圧すると共に、付勢部が電極端子接続部材を電極端子の幅寸法が大きくなる先端側に押圧するので、電極端子と電極端子接続部材の接続を更に維持することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長期的に電極端子と電極端子接続部材とが確実に接続された状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一の実施の形態による組電池の一例を示す図である。
【図2】単電池及びバスバーを示す斜視図である。
【図3】(a)〜(d)は図1のA−A線断面において、電極端子へのバスバーの装着を説明する図である。
【図4】第一の実施の形態による組電池の固定部材の一例を示す図で、図1のA−A線断面図である。
【図5】(a)〜(d)は本発明の第二の実施の形態による組電池の電極端子およびバスバーを説明する図である。
【図6】(a)、(b)は第一の実施の形態による組電子の電極端子の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第一の実施の形態による組電池について、図1乃至図4に基づいて説明する。
図1に示すように、第一の実施の形態による組電池1は、二次元的に複数配列された単電池2と、これらの単電池2を収容するケース3と、隣接する単電池2の電極端子4を接続するバスバー(電極端子接続部材)5と、電極端子4とバスバー5とを固定する固定部材6とから概略構成される。単電池2同士をバスバー5で接続する一例として、第一の単電池2の正極端子を第二の単電池2の負極端子とバスバー5で接続し、第一の単電池2の負極を第三の単電池2の正極とバスバー5で接続する。このようにして、隣接する単電池2がバスバー5で接続されることにより組電池1が構成される。
【0013】
図2に示すように、単電池2は、図示しない複数の電極板が収容された略直方体の電池容器11と、電池容器11の上面11aから上方に突出する正極および負極の電極端子4とを備える。
電極端子4は、弾性変形可能な導電性材料などによって、先端4a側から電池容器11側に向って径が小さくなる円錐状に形成されている。電極端子4を形成する弾性変形可能な導電性材料としては、ベリリウム銅やA6000系列のアルミ合金が例示できる。
【0014】
電極端子4には、先端4aから電池容器11の上面11a方向にわたり、電極端子4を周方向に4つの分割体4cに分割する平面視十字状の溝部12が形成されている。溝部12は所定の幅dを有していて、電極端子4を外周4b側から内側へ加力すると4つの分割対4cが弾性変形して互いに近接し溝部12の幅dが狭まり、電極端子4の外径を小さくすることができる。このとき、電極端子4は弾性変形可能であるので、電極端子4への外周4b側からの加力を解除すれば、4つの分割体4cは互いに離間し溝部12の幅dをもとに戻すことができる。
また、電極端子4には、その底部13に凹部13aが外周4b面の周方向に形成されている。
【0015】
バスバー5は、銅などの導電性材料で形成された板状の部材であり、両端側には正極および負極の電極端子4が厚さ方向に貫通して嵌合する嵌合穴14がそれぞれ形成されている。嵌合穴14の内周面14aは、バスバー5の上面から下面に向って径が小さくなる円錐状に形成されている。後述するように、電極端子4にバスバー5が装着されたとき、バスバー5の嵌合穴14と電極端子4の凹部13aが嵌合するように、内周面14aが形成されている。
【0016】
次に、電極端子4へのバスバー5の装着方法について説明する。
まず、図3(a)に示す電極端子4(例えば正極端子)を外周4b側から工具等で挟み、4つの分割体4cを互いに近接させて溝部12の幅dを狭め、図3(b)に示すように電極端子4の外径を小さくする。
【0017】
続いて、図3(c)に示すように、バスバー5の嵌合穴14を電極端子4に押入する。このとき、バスバー5を、嵌合穴14の円錐状の内周面14aの径が小さい面、すなわち、バスバー5の下面が電池容器11の上面11aと対向する向きとし、電極端子4の凹部13aと対向する位置まで押入する。
【0018】
そして、図3(d)に示すように、電極端子4を挟むことを止め、4つの分割体4cを互いに離間させて狭くした溝部12の幅dを広げることにより、バスバー5は、電極端子4の凹部13aと嵌合する。このとき、電極端子4は、4つの分割体4cの凹部13aが径方向外側に広がり、嵌合穴14の内周面14aを押圧し、バスバー5に装着されバスバー5と接続される。
そして、このバスバー5を隣接する単電池2の電極端子4(例えば負極端子)と、同様にして接続する。このようにして、隣接する単電池2の異なる電極端子間をバスバー5で接続することにより組電池1が構成される。
【0019】
次に、電極端子4にバスバー5が装着されて、この電極端子4とバスバー5とを固定する固定部材6について説明する。
図4に示すように、固定部材6は、電極端子4の先端4a面に配設される基部17と、基部17から電極端子4側に突出して、溝部12内に嵌合される突起部18と、基部17と連結しバスバー5を係止する複数の係止部19とを備えている。
【0020】
突起部18は、バスバー5が装着された状態の電極端子4の溝部12の幅dよりもやや大きい幅に形成されていて、突起部18が溝部12に嵌合させることによって、溝部12を押し広げる部材である。
係止部19は、基部17に複数設けられている。図4に示すように、この係止部19は、先端部19aがフック状に形成され、バスバー5の端部5aに先端部19aを引っ掛けることにより、基部17を係止する。このように、固定部材16は、係止部19により基部17とバスバー5を係合させることで、電極端子4とバスバー5を固定させることができる。
この固定部材6は、絶縁材料で形成されてもよいし、導電性材料で形成されてもよく、例えば電圧を計測する配線などを接続する接続端子としての機能を備えるものとしてもよい。
【0021】
次に、上述した第一の実施の形態による組電池の効果について図面を用いて説明する。
本実施の形態による組電池1によれば、電極端子4は、円錐状に形成されていると共に、電極端子4を周方向に4つの分割体4cに分割する溝部12が形成されて、分割体4cが互いに近接離間するように弾性変形可能であり、外周4bから内側への加力により溝部12の幅dを狭めて分割体4cを近接させることにより電極端子4の径寸法が縮小し、加力を止めることによりもとに戻る構成である。このため、バスバー5は、嵌合穴14の内径が嵌合穴14から電極端子4を取り外した状態での電極端子4の凹部13aの位置における外径よりも小さく設定されているので、電極端子4の溝部12の幅dを狭めた状態のとき電極端子4に挿入可能となり、また、狭めた溝部12の幅dを広げると電極端子4の凹部13aがバスバー5の嵌合穴14を押圧することで電極端子4と接続する。
このため、本実施例の組電池1では、電極端子4とバスバー5との接続を維持することができると共に、バスバー5が電極端子4から脱落することを防ぐ効果を奏する。
【0022】
また、電極端子4およびバスバー5に固定部材6を装着し、突起部18が溝部12の幅dを広げることによって、電極端子4がバスバー5を押圧すると共に、固定部材16が電極端子4とバスバー5を固定させるので、バスバー5が電極端子4から脱落することを防止できると共に、電極端子4とバスバー5との位置あわせも容易に行うことができる。
【0023】
次に、第二の実施の形態について、図5に基づいて説明するが、上述の第一の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第一の実施の形態と異なる構成について説明する。
図5(a)に示すように、第二の実施の形態による組電池21では、電極端子4の外周4bの先端4a側が面取りされていて傾斜面22が形成されている。また、バスバー5は、嵌合穴14の下部側も面取りされていて傾斜面23が形成されている。
嵌合穴14の内周面14aには、嵌合穴14の内側に突出する凸部24が周方向に一周するように形成されている。そして、電極端子4には、外周4b面に周方向に一周するようにこの凸部24と嵌合する凹部25が形成されている。
【0024】
第二の実施の形態による電極端子4へのバスバー5の装着は、図5(b)に示すように、電極端子4の傾斜面22とバスバー5の嵌合穴14の傾斜面23とを当接させながら、バスバー5を電池容器11の上面11a側に押し付ける。電極端子4の傾斜面22とバスバー5の嵌合穴14の傾斜面23とが互いに当接しながら押されるため、電極端子4の分割体4cが互いに近接して溝部12の幅dが狭まり、図5(c)に示すように、バスバー5の嵌合穴14に電極端子4が押入される。そして、図5(d)に示すように、下方に移動させたバスバー5は、凸部24が電極端子4の凹部25と嵌合することにより、電極端子4へ装着さされ接続される。
続いて、上述した第一の実施の形態と同様に、図示しない固定部材6を用いて電極端子4とバスバー5を固定する。
【0025】
第二の実施の形態による組電池1では、上述した第一の実施の形態と同様の効果を奏すると共に、電極端子4にバスバー5を装着させる際に、バスバー5を電極端子4側に押し込めば電極端子4の弾性変形を利用して溝部12の幅dを狭めることができるので、容易に装着することができる。
【0026】
以上、本発明による組電池の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施の形態では、電極端子4の溝部12は平面視十字状に形成されていて、電極端子4を4つの分割体4cに分割しているが、図6(a)、(b)に示すように、電極端子4を2つの分割体4cや3つの分割体4cに分割する溝部12を設けてもよく、他の個数の分割体4cに分割する溝部12を設けてもよい。
また、上述した実施の形態では、電極端子4は、円錐状に形成されているが、四角錐などの他の錐状に形成されていてもよく、バスバー5の嵌合穴14も電極端子4の形状に対応し円錐状に代わって他の錐状に形成されていてもよい。
また、上述した実施の形態では、電極端子4の溝部12は、先端4aから電池容器11の上面11a方向にわたって形成されているが、電極端子4の先端4a側の一部に溝部12が形成されていて分割体4cが弾性変形可能な構成としてもよい。
また、上述した実施の形態では、電極端子4は、ベリリウム銅やA6000系列のアルミ合金などによって形成されているが、このほかの弾性変形可能な導電性材料で形成されていてもよい。
また、上述した実施の形態では、固定部材6が設けられているが、固定部材6を設けなくてもよい。
また、上述した実施の形態では、電極端子4の外周4b面に凹部13a、凹部25が形成されているが、凹部13a、凹部25を設けずに、電極端子4の外周4b面とバスバー5の嵌合穴14の内周面14aとを接触させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1、21 組電池
2 単電池
4 電極端子
4a 先端
4c 分割体
5 バスバー(電極端子接続部材)
6 固定部材
12 溝部
13a、25 凹部
14 嵌合穴
17 基部
18 突起部
19 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極端子を有する単電池が隣接する他の単電池の電極端子と電極端子接続部材により接続された組電池において、
前記電極端子は、先端から電池容器側に向って幅寸法が小さくなる錐状に形成され先端から前記電池容器側に延び少なくとも先端側の部分を複数の分割体に分割する溝部と、外周面に形成された凹部とを有し、
前記電極端子接続部材は、前記分割体を互いに近接させた前記電極端子が押入され前記凹部と嵌合する嵌合穴を有することを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記電極端子は、外周面に前記電極端子接続部材と嵌合する凹部を有することを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記電極端子の先端面に設置される基部と、前記基部から前記電極端子側に突出し前記溝部に嵌合される突起部と、前記基部と連結し前記電極端子接続部材を係止する係止部とを有する固定部材を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−79456(P2012−79456A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221461(P2010−221461)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】