説明

経口又は非経口抗糖尿病薬による治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の糖尿病の治療

本発明は或る種のDPP-4 阻害剤が経口及び/又は非経口抗糖尿病薬による治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の、代謝性疾患、特に糖尿病の治療及び/又は予防に特に適しているという知見に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経口及び/又は非経口抗糖尿病薬(特にスルホニル尿素又はグリニド薬のようなインスリン分泌促進物質)による治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の、代謝性疾患、特に糖尿病(特に2型真性糖尿病)及びこれらに関連する疾患を治療及び/又は予防するための或る種のDPP-4阻害剤(インヒビター)だけでなく、前記治療及び/又は予防におけるこれらのDPP-4阻害剤の使用に関する。必要により一種以上のその他の活性物質と一緒に、本明細書に特定されたDPP-4阻害剤を含むこれらの患者の代謝性疾患(特に糖尿病)を治療及び/又は予防するための医薬組成物がまた意図されている。
【背景技術】
【0002】
2型真性糖尿病はインスリン耐性及び損なわれたインスリン分泌の二重の内分泌作用を伴なう複雑な病態生理学から生じる普通の慢性かつ進行性の疾患である。2型糖尿病の治療は典型的には食事及び運動で始まり、経口抗糖尿病の単一療法が続き、通常の単一療法は初期に或る患者で血液グルコースを調節し得るが、それは高い二次無効の率と関連している。血糖調節を維持することについての単一薬療法の制限は、少なくとも或る患者で、かつ多種の経口薬を組合せて血液グルコース(これは単一薬による長期治療中に持続し得ない)の減少を得ることにより時間の制限された期間にわたって、解消されるかもしれない。入手し得るデータは2型糖尿病の殆どの患者では単一療法が無効となり、多種の薬による治療が必要とされるであろうという結論を支持する。
しかし、2型糖尿病は進行性疾患であるので、組み合わせ療法への良好な初期応答を有する患者でさえもが用量の増大又はインスリンによる更なる治療を最終的に必要とするであろう。何とならば、血液グルコースレベルが時間の長期にわたって安定に維持するのに非常に困難であるからである。こうして、既存の組み合わせ療法は血糖調節を増進する潜在性を有するが、制限(特に長期効力に関して)がない訳ではない。更に、多くの結果は低血糖症についてのリスクが従来の組み合わせ療法で増大するかもしれず、また多種の薬物の必要がまた患者のコンプライアンスを低下するかもしれないことを示す。加えて、多種の抗高血糖薬を服用することは患者が服用しているかもしれないその他の薬物との薬物動力学的相互作用の潜在性を増大する。
【0003】
こうして、多くの患者について、これらの既存の薬物療法は治療にもかかわらず血糖調節の進行性の劣化をもたらし、特に長期にわたって血糖を充分に調節せず、こうして進行性又は後期の2型糖尿病(通常の経口又は非経口抗糖尿病薬にもかかわらず不適当な血糖調節の糖尿病、薬物の二次無効及び/又はインスリンの適応を有する糖尿病を含む)で代謝調節を得ること、かつ維持することが出来なくなる。
それ故、高血糖の徹底的な治療は慢性の損傷の発生を低減し得るが、2型糖尿病の多くの患者は、一部、通常の抗高血糖治療薬の長期効力、寛容性及び投薬の不便の制限のために、不適に治療されたままである。
治療無効(therapeutic failure)のこの高い発生率は2型糖尿病の患者における高率の長期高血糖関連合併症又は慢性損傷(微小血管及び大血管合併症、例えば、糖尿病性腎症、網膜症もしくは神経障害、又は心血管合併症を含む)の重大な寄与因子である。
治療(例えば、第一選択もしくは第二選択、及び/又は単一療法もしくは(初期もしくは追加)組み合わせ療法)に通常使用される経口抗糖尿病薬として、メトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド及びα-グルコシダーゼ阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
治療(例えば、第一選択もしくは第二選択、及び/又は単一療法もしくは(初期もしくは追加)組み合わせ療法)に通常使用される非経口抗糖尿病薬として、GLP-1 又はGLP-1 類似体、及びインスリン又はインスリン類似体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0004】
しかしながら、これらの通常の抗糖尿病薬又は抗高血糖薬の使用は種々の不利な作用(副作用)と関連し得る。例えば、メトホルミンは乳酸アシドーシス又は胃腸副作用と関連し得る。スルホニル尿素、グリニド及びインスリン又はインスリン類似体は低血糖及び体重増加と関連し得る。チアゾリジンジオンは浮腫、骨破損、体重増加及び心不全/心臓作用と関連し得る。また、アルファ-グルコシダーゼブロッカー及びGLP-1 又はGLP-1 類似体は胃腸の不利な作用(例えば、消化不良、放屁もしくは下痢、又は吐気もしくは嘔吐)と関連し得る。
スルホニル尿素(SU)だけでなく、グリニドは、非グルコース依存様式で膵臓のベータ細胞からのインスリン分泌を刺激し、2型糖尿病(特に非肥満患者及び/又はメトホルミン治療に不適当、もしくは無効となった患者に適応される)の第一選択又は第二選択(単一又は組み合わせ)治療として一般に、また頻繁に使用される。しかしながら、上記のように、或る患者は特に長期治療でこれらの通常の経口抗糖尿病薬に常に良く応答するとは限らず、スルホニル尿素薬による治療にもかかわらず不十分な血糖調節又は血糖調節の劣化を示すかもしれない。また、長期スルホニル尿素治療の患者は経時の膵臓のベータ細胞機能の低下又は消耗を経験する。
スルホニル尿素単独(単一療法)が血液グルコースレベルを調節するのに有効ではない症状であるこれらの患者について、その他の経口薬(例えば、メトホルミン/チアゾリジンジオン)又はSU組み合わせ治療(追加及び初期の二重及び三重のSU組み合わせ治療)、特にスルホニル尿素とメトホルミン及び/又はチアゾリジンジオンとの組み合わせへの変更が、疾患段階、及び/又はインスリンとの組み合わせもしくは(最終的に)インスリンへの移行に応じて適応されるかもしれない(例えば、疾患段階に応じて、毎日1回の基底インスリン、毎日2回のプレミックスインスリン又は毎日多回のインスリン)。しかしながら、組み合わせ治療でさえも、或る患者は、組み合わせ治療にもかかわらず特に経時の、不十分な血糖調節又は血糖調節の劣化を示すかもしれない。
【0005】
こうして、経時の効力の絶え間ない損失がグリニド及びスルホニル尿素を含むインスリン分泌促進物質の使用による重大な関心事である(SU二次無効)。更に、スルホニル尿素はインスリンの血漿レベルを増大し、低血糖(これは、体重増加の他に、特に腎臓障害と関連して、かつ/又は老人の患者で、それらの重大な不利な作用の一つである)を生じるかもしれない。こうして、SU薬では、一方で、効力に関して、しばしば増大されたスルホニル尿素用量が必要とされるかもしれず、他方で、安全性/寛容性に関して、しばしば減少されたスルホニル尿素用量が必要とされるかもしれず、こうしてSU薬では不満足な折衷をしばしば必要とする。
それ故、進行性又は後期2型真性糖尿病のこれらの患者(通常の経口及び/又は非経口の抗糖尿病薬、例えば、メトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド及び/又はα-グルコシダーゼ阻害剤、及び/又はGLP-1 もしくはGLP-1 類似体、及び/又はインスリンもしくはインスリン類似体では不適な血糖調節の患者を含む)について有効な、安全かつ寛容し得る抗糖尿病治療薬を提供するようにとの要望が当業界で存する。
更に、経口抗糖尿病治療の二次無効を有する糖尿病の患者のために適切な血糖調節を提供するようにとの要望が当業界に存する。
更に、経口抗糖尿病治療の二次無効の予防(予防又は進行の遅延を含む)を提供するようにとの要望が当業界に存する。
更に、(通常の)抗糖尿病治療と関連する不利な作用のリスクの防止又は軽減を提供するようにとの要望が当業界に存する。
真性糖尿病の治療の監視において、HbA1c 値、ヘモグロビンB鎖の非酵素的グリコシル化の産物が、格別重要である。その生成は血糖レベル及び赤血球の寿命に実質的に依存するので、“血糖記憶”の意味のHbA1c が先の4-12週の平均血糖レベルを反映する。HbA1c レベルが長時間にわたって一層徹底的な糖尿病治療 (即ち、サンプル中の全ヘモグロビンの< 6.5 %) により良く調節されていた糖尿病患者は糖尿病性微小血管障害から有意に良好に保護される。糖尿病に利用可能な治療は糖尿病患者に1.0-1.5%のオーダーのそれらのHbA1c レベルの平均の改善を与え得る。HbA1C レベルのこの低下は全ての糖尿病患者でそれらを< 7.0 % 、好ましくは< 6.5 % 、更に好ましくは< 6 % のHbA1cの所望の目標範囲にするのに充分ではない。
【0006】
血糖調節中に、HbA1c レベルの改善に加えて、2型真性糖尿病患者に推奨されるその他の治療目標は正常又はできるだけ正常付近への絶食血漿グルコース(FPG) レベル及び食後の血漿グルコース(PPG) レベルの改善である。食前(絶食)血漿グルコースの推奨される所望の目標範囲は90-130 mg/dL (もしくは70-130 mg/dL) 又は<110 mg/dLであり、食後2時間の血漿グルコースのそれは<180 mg/dL 又は<140 mg/dLである。
本発明の意味内で、経口又は非経口抗糖尿病薬による治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者として、前記薬物による治療にもかかわらず7.0 〜10% (又は7.5 〜11%、もしくは7.5 〜10%) のHbA1C 値を有する患者が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の意味内の経口抗糖尿病治療の二次無効を有する糖尿病患者の具体例は
- メトホルミン治療が禁忌される患者、例えば、ラベルによるメトホルミン治療に対する一つ以上の禁忌を有する患者、例えば、
腎臓疾患、腎障害又は腎不全(例えば、地方で認可されたメトホルミンの製品情報により特定されるような)、
脱水、
不安定又は急性の鬱血性心不全、
急性又は慢性代謝性アシドーシス、及び
遺伝性ガラクトースイントレランス
から選ばれた少なくとも一つの禁忌のある患者、並びに
- メトホルミンに起因する一つ以上の寛容できない副作用、特にメトホルミンと関連する胃腸副作用を患う患者、例えば、
吐気、
嘔吐、
下痢、
腸のガス、及び
ひどい腹部の不快
から選ばれた少なくとも一つの胃腸副作用を患っている患者
を含むメトホルミン治療に不適当な患者を表す。
【0007】
本発明の治療を受け易いかもしれない患者の具体例として、通常のメトホルミン治療が適切ではない糖尿病患者、例えば、メトホルミンに対する低下された寛容性、非寛容性もしくは禁忌のため又は(軽度に)損なわれ/低下された腎臓機能のために低減された用量のメトホルミン治療を要する糖尿病患者(例えば、60-65才以上の老人の患者を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
更に、不利な作用についての増大された感受性のために、老人の患者(60-70才以上)の治療は腎臓機能の慎重な監視によりしばしば伴なわれるべきである。クレアチニンクレアランスの測定が腎臓機能が低下されないことを示さない限り、メトホルミンは特に80才以上の老人の個体に通常推奨されない。こうして、メトホルミン治療に不適の患者として、例えば、60-65才以上、また特に80才以上の老人の患者がまた挙げられるかもしれないが、これらに限定されない。
本発明の意味内の経口抗糖尿病治療の二次無効を有する糖尿病患者の更なる具体例は腎臓疾患、腎不全、又は、例えば、上昇した血清クレアチニンレベル(例えば、それらの年齢に正常の上限より上の血清クレアチニンレベル、例えば、男性で130 - 150 μモル/l以上、又は1.5 mg/dl以上 (136 μモル/l以上) 、また女性で1.4 mg/dl 以上(124 μモル/l以上)) 又は異常なクレアチニンクレアランス(例えば、30-60ml/分以下の糸球体濾過率 (GFR))により示唆されるような腎臓機能の不十分もしくは障害(軽度、中等度及び重度の腎臓障害を含む)を有する患者を表す。
【0008】
この状況において、更に詳しい例について、軽度の腎臓障害が、例えば、50-80 ml/分のクレアチニンクレアランス(男性で1.7 mg/dL 以下、また女性で1.5 mg/dL以下の血清クレアチンレベルにほぼ相当する) により示唆されるかもしれず、中等度の腎臓障害が、例えば、30-50ml/分のクレアチニンクレアランス(男性で1.7 mg/dLより大〜3.0 mg/dL 以下、また女性で1.5 mg/dLより大〜2.5 mg/dL以下の血清クレアチンレベルにほぼ相当する) により示唆されるかもしれず、また重度の腎臓障害が、例えば、30ml/分未満のクレアチニンクレアランス(男性で3.0 mg/dL より大、また女性で2.5 mg/dLより大の血清クレアチンレベルにほぼ相当する) により示唆されるかもしれない。末期段階の腎臓疾患の患者は透析を必要とする。
酵素DPP-4 (ジペプチジルペプチダーゼIV) (またCD26として知られている)はそれらのN末端にプロリン又はアラニン残基を有する幾つかのタンパク質のN末端からのジペプチドの開裂をもたらすことが知られているセリンプロテアーゼである。この性質のために、DPP-4阻害剤はペプチドGLP-1 を含む生理活性ペプチドの血漿レベルに干渉し、真性糖尿病の治療に有望な薬物であると考えられる。
例えば、DPP-4阻害剤及びそれらの使用、特に代謝性(糖尿病性)疾患におけるそれらの使用が、WO 2002/068420, WO 2004/018467, WO 2004/018468, WO 2004/018469, WO 2004/041820, WO 2004/046148, WO 2005/051950, WO 2005/082906, WO 2005/063750, WO 2005/085246, WO 2006/027204, WO 2006/029769 もしくはWO2007/014886; 又はWO 2004/050658, WO 2004/111051, WO 2005/058901 もしくはWO 2005/097798; 又はWO 2006/068163, WO 2007/071738 もしくはWO 2008/017670; 又はWO 2007/128721 もしくはWO 2007/128761に開示されている。
更なるDPP-4 阻害剤として、下記の化合物が挙げられる:
−下記の構造式Aを有するシタグリプチン(MK-0431) は (3R)-3-アミノ-1-[3-(トリフルオロメチル)-5,6,7,8-テトラヒドロ-5H-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7-イル]-4-(2,4,5-トリフルオロフェニル)ブタン-1-オン(また (2R)-4-オキソ-4-[3-(トリフルオロメチル)-5,6-ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル]-1-(2,4,5-トリフルオロフェニル)ブタン-2-アミンと称される)である。
【0009】
【化1】

【0010】
一実施態様において、シタグリプチンはそのリン酸二水素塩、即ち、シタグリプチンホスフェートの形態である。更なる実施態様において、シタグリプチンホスフェートは結晶性無水物又は一水和物の形態である。この実施態様のクラスはシタグリプチンホスフェート一水和物を表す。シタグリプチン遊離塩基及びその医薬上許される塩が米国特許第6,699,871号及びWO 03/004498の実施例7に開示されている。結晶性シタグリプチンホスフェート一水和物がWO 2005/003135 及びWO 2007/050485に開示されている。
例えば、この化合物又はその塩を製造し、製剤化し、又は使用する方法についての詳細について、これらの書類がこうして参考にされる。
シタグリプチンの錠剤製剤が商品名Januvia(登録商標)として市販されている。シタグリプチン/メトホルミン組み合わせの錠剤製剤が商品名Janumet(登録商標)として市販されている。
−下記の構造式Bを有するビルダグリプチン(LAF-237) は(2S)-{[(3-ヒドロキシアダマンタン-1-イル)アミノ]アセチル}ピロリジン-2-カルボニトリル(また(S)-1-[(3-ヒドロキシ-1-アダマンチル)アミノ]アセチル-2-シアノ-ピロリジンと称される)である。
【0011】
【化2】

【0012】
ビルダグリプチンは米国特許第6,166,063号及びWO 00/34241の実施例1に詳しく開示されている。ビルダグリプチンの特別な塩がWO 2007/019255に開示されている。ビルダグリプチンの結晶形態だけでなく、ビルダグリプチン錠剤製剤がWO 2006/078593に開示されている。ビルダグリプチンはWO 00/34241 又はWO 2005/067976に記載されたように製剤化し得る。改良された放出のビルダグリプチン製剤がWO 2006/135723に記載されている。
例えば、この化合物又はその塩を製造し、製剤化し、又は使用する方法についての詳細について、これらの書類がこうして参考にされる。
ビルダグリプチンの錠剤製剤が商品名Galvus(登録商標)として市販されていると予想される。ビルダグリプチン/メトホルミン組み合わせの錠剤製剤が商品名Eucreas(登録商標)として市販されている。
−下記の構造式Cを有するサクサグリプチン(BMS-477118) は(1S,3S,5S)-2-{(2S)-2-アミノ-2-(3-ヒドロキシアダマンタン-1-イル)アセチル}-2-アザビシクロ [3.1.0]ヘキサン-3-カルボニトリル(また(S)-3-ヒドロキシアダマンチルグリシン-L-シス-4,5-メタノプロリンニトリルと称される)である。
【0013】
【化3】

【0014】
サクサグリプチンは米国特許第6,395,767号及びWO 01/68603の実施例60に詳しく開示されている。
一実施態様において、サクサグリプチンはWO 2004/052850に開示されたようにそのHCl塩又はそのモノ-安息香酸塩の形態である。更なる実施態様において、サクサグリプチンは遊離塩基の形態である。更に別の実施態様において、サクサグリプチンはWO 2004/052850に開示されたような遊離塩基の一水和物の形態である。サクサグリプチンのHCl塩及び遊離塩基の結晶形態がWO 2008/131149に開示されている。サクサグリプチンの調製方法がまたWO 2005/106011及びWO 2005/115982に開示されている。サクサグリプチンはWO 2005/117841に記載されたように錠剤で製剤化し得る。
例えば、この化合物又はその塩を製造し、製剤化し、又は使用する方法についての詳細について、これらの書類がこうして参考にされる。
−下記の構造式Eを有するアログリプチン(SYR-322) は2-({6-[(3R)-3-アミノピペリジン-1-イル]-3-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピリミジン-1-イル}メチル)ベンゾニトリルである。
【0015】
【化4】

【0016】
アログリプチンはUS 2005/261271、EP 1586571 及びWO 2005/095381に詳しく開示されている。一実施態様において、アログリプチンは夫々WO 2007/035629 に開示されたようにその安息香酸塩、その塩酸塩又はそのトシレート塩の形態である。この実施態様のクラスはアログリプチン安息香酸塩を表す。アログリプチン安息香酸塩の多形がWO 2007/035372に開示されている。アログリプチンの調製方法がWO 2007/112368に、また詳しくはWO 2007/035629に開示されている。アログリプチン (即ち、その安息香酸塩)はWO 2007/033266に記載されたように錠剤に製剤化され、投与し得る。アログリプチンとメトホルミン又はピオグリタゾンの製剤が夫々WO 2008/093882 又はWO 2009/011451に記載されている。
例えば、この化合物又はその塩を製造し、製剤化し、又は使用する方法についての詳細について、これらの書類がこうして参考にされる。
−(2S)-1-{[2-(5-メチル-2-フェニル-オキサゾール-4-イル)-エチルアミノ]-アセチル}-ピロリジン-2-カルボニトリルもしくはその医薬上許される塩、好ましくはメシレート、又は(2S)-1-{[1,1,-ジメチル-3-(4-ピリジン-3-イル-イミダゾール-1-イル)-プロピルアミノ]-アセチル}-ピロリジン-2-カルボニトリルもしくはその医薬上許される塩。
これらの化合物及びそれらの調製方法がWO 03/037327に記載されている。前者の化合物のメシレート塩だけでなく、その結晶性多形がWO 2006/100181 に開示されている。後者の化合物のフマル酸塩だけでなく、その結晶性多形がWO 2007/071576に開示されている。これらの化合物がWO 2007/017423に記載されたように医薬組成物中に製剤化し得る。
例えば、これらの化合物又はその塩を製造し、製剤化し、又は使用する方法についての詳細について、これらの書類がこうして参考にされる。
−(S)-1-((2S,3S,11bS)-2-アミノ-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド [2,1-a]イソキノリン-3-イル)-4-フルオロメチル-ピロリジン-2-オン又はその医薬上許される塩:
【0017】
【化5】

【0018】
この化合物及びその調製方法がWO 2005/000848に開示されている。この化合物(特にその二塩酸塩)の調製方法がまたWO 2008/031749、WO 2008/031750 及びWO 2008/055814に開示されている。この化合物はWO 2007/017423に記載されたように医薬組成物中に製剤化し得る。
例えば、この化合物又はその塩を製造し、製剤化し、又は使用する方法についての詳細について、これらの書類がこうして参考にされる。
−(3,3-ジフルオロピロリジン-1-イル)-((2S,4S)-4-(4-(ピリミジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)ピロリジン-2-イル)メタノン (またゴソグリプチンと称される) 又はその医薬上許される塩:
この化合物及びその調製方法がWO 2005/116014 及びUS 7291618に開示されている。
例えば、この化合物又はその塩を製造し、製剤化し、又は使用する方法についての詳細について、これらの書類がこうして参考にされる。
−(1((3S,4S)-4-アミノ-1-(4-(3,3-ジフルオロピロリジン-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)ピロリジン-3-イル)-5,5-ジフルオロピペリジン-2-オン又はその医薬上許される塩:
【0019】
【化6】

【0020】
この化合物及びその調製方法がWO 2007/148185 及びUS 20070299076に開示されている。例えば、この化合物又はその塩を製造し、製剤化し、又は使用する方法についての詳細について、これらの書類がこうして参考にされる。
−(2S,4S)-1-{2-[(3S,1R)-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)シクロペンチルアミノ]-アセチル}-4-フルオロピロリジン-2-カルボニトリル (またメログリプチンと称される) 又はその医薬上許される塩
【0021】
【化7】

【0022】
この化合物及びその調製方法がWO 2006/040625 及びWO 2008/001195に開示されている。詳しくは、特許請求された塩として、メタンスルホン酸塩及びトルエンスルホン酸塩が挙げられる。例えば、この化合物又はその塩を製造し、製剤化し、又は使用する方法についての詳細について、これらの書類がこうして参考にされる。
−(R)-2-[6-(3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-3-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピリミジン-1-イルメチル]-4-フルオロ-ベンゾニトリル又はその医薬上許される塩:
【0023】
【化8】

【0024】
この化合物及びその調製方法がWO 2005/095381、US 2007060530、WO 2007/033350、WO 2007/035629、WO 2007/074884、WO 2007/112368、WO 2008/114807、WO 2008/114800 及びWO 2008/033851に開示されている。詳しくは、特許請求された塩として、コハク酸塩 (WO 2008/067465)、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、(R)-マンデル酸塩及び塩酸塩が挙げられる。例えば、この化合物又はその塩を製造し、製剤化し、又は使用する方法についての詳細について、これらの書類がこうして参考にされる。
−5-{(S)-2-[2-((S)-2-シアノ-ピロリジン-1-イル)-2-オキソ-エチルアミノ]-プロピル}-5-(1H-テトラゾール-5-イル)-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ [a,d]シクロヘプテン-2,8-ジカルボン酸ビス-ジメチルアミド又はその医薬上許される塩:
【0025】
【化9】

【0026】
この化合物及びその調製方法がWO 2006/116157 及びUS 2006/270701に開示されている。例えば、この化合物又はその塩を製造し、製剤化し、又は使用する方法についての詳細について、これらの書類がこうして参考にされる。
−3-{(2S,4S)-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)ピペラジン-1-イル]ピロリジン-2-イルカルボニル}チアゾリジン (またテネリグリプチンと称される) 又はその医薬上許される塩:
この化合物及びその調製方法がWO 02/14271に開示されている。特別な塩がWO 2006/088129及びWO 2006/118127 に開示されている(とりわけ、塩酸塩、臭化水素酸塩を含む)。この化合物を使用する組み合わせ治療がWO 2006/129785 に記載されている。例えば、この化合物又はその塩を製造し、製剤化し、又は使用する方法についての詳細について、これらの書類がこうして参考にされる。
【0027】
−[(2R)-1-{[(3R)-ピロリジン-3-イルアミノ]アセチル}ピロリジン-2-イル]ボロン酸 (またジュトグリプチンと称される) 又はその医薬上許される塩:
この化合物及びその調製方法がWO 2005/047297 、WO 2008/109681 及びWO 2009/009751に開示されている。特別な塩がWO 2008/027273に開示されている (クエン酸塩、酒石酸塩を含む)。この化合物の製剤化がWO 2008/144730に記載されている。例えば、この化合物又はその塩を製造し、製剤化し、又は使用する方法についての詳細について、これらの書類がこうして参考にされる。
−(2S,4S)-1-[2-[(4-エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル)アミノ]アセチル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボニトリル又はその医薬上許される塩:
この化合物及びその調製方法がWO 2005/075421、US 2008/146818 及びWO 2008/114857に開示されている。例えば、この化合物又はその塩を製造し、製剤化し、又は使用する方法についての詳細について、これらの書類がこうして参考にされる。
−2-({6-[(3R)-3-アミノ-3-メチルピペリジン-1-イル]-1,3-ジメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-5H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-5-イル}メチル)-4-フルオロベンゾニトリルもしくはその医薬上許される塩、又は6-[(3R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-5-(2-クロロ-5-フルオロ-ベンジル)-1,3-ジメチル-1,5-ジヒドロ-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2,4-ジオンもしくはその医薬上許される塩:
これらの化合物及びそれらの調製方法が夫々WO 2009/084497 及びWO 2006/068163に開示されている。例えば、この化合物又はその塩を製造し、製剤化し、又は使用する方法についての詳細について、これらの書類がこうして参考にされる。
疑いを避けるために、先に引用された以上の書類の夫々の開示が参考として本明細書に特別に含まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の範囲内で、本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤が進行性又は後期2型糖尿病患者(経口及び/又は非経口抗糖尿病薬にもかかわらず不十分な血糖調節の患者及び/又はインスリンの適応を有する患者を含む)で、代謝性疾患、特に糖尿病(特に2型真性糖尿病)及びそれに関連する症状(例えば、糖尿病合併症)を治療及び/又は予防(進行を防止もしくは遅延し、又は発症を遅延することを含む)するのにそれらを特に適するようにする、予期しない性質、特に有利な性質を有することが今驚くべきことにわかった。
こうして、本発明はメトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド及びα-グルコシダーゼ阻害剤から選ばれた一種以上の通常の経口抗糖尿病薬による治療(単一薬物、二重又は三重薬物を含む)にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の治療における使用のための本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】示された化合物による生後5週の雌のdb/dbマウスの54日の治療後のHbA1c値及びグルコース値を示す(左のバー: ビヒクル; 中間のバー: BI 1356; 右のバー:グリベンクラミド)。
【図2】示された化合物による生後5週の雌のdb/dbマウスの54日の治療後のHbA1c値及びグルコース値を示す(左のバー: ビヒクル; 中間のバー: BI 1356; 右のバー: グリベンクラミド)。
【図3】OGTT試験(経口的ブトウ糖負荷試験)中のインスリンの増加を示す(左のバー: ビヒクル; 中間のバー: BI 1356; 右のバー: グリベンクラミド)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
別の実施態様において、本発明はメトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド、アルファ-グルコシダーゼブロッカー、GLP-1 及びGLP-1 類似体、並びにインスリン及びインスリン類似体から選ばれた一種、2種又は3種の通常の経口又は非経口抗糖尿病薬による治療(単一薬物、二重又は三重薬物を含む)にもかかわらず、例えば、メトホルミン、スルホニル尿素、ピオグリタゾンもしくは(基底)インスリンによる単一治療にもかかわらず、又はメトホルミン/ピオグリタゾン、メトホルミン/スルホニル尿素、メトホルミン/(基底)インスリン、スルホニル尿素/ピオグリタゾン、スルホニル尿素/(基底)インスリンもしくはピオグリタゾン/(基底)インスリン組み合わせによる二重組み合わせ治療にもかかわらず、不十分な血糖調節の患者の治療における使用のための本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤を提供する。
更に、本発明はスルホニル尿素による単一治療にもかかわらず、又はメトホルミン/スルホニル尿素、スルホニル尿素/ピオグリタゾン又はスルホニル尿素/(基底)インスリン組み合わせによる二重組み合わせ治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の治療における使用のための本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤を提供する。
特に、本発明はスルホニル尿素薬による治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の治療における使用のための本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤を提供する。
更に、本発明はスルホニル尿素薬による治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の代謝性疾患、特に2型真性糖尿病の治療及び/又は予防における使用のための本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤を提供する。
更に、本発明はスルホニル尿素二次無効を有する糖尿病の治療及び/又は予防における使用のための本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤を提供する。
更に、本発明はスルホニル尿素薬による治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の代謝性疾患、特に2型真性糖尿病の治療及び/又は予防のための医薬組成物の製造のための本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤の使用を提供する。
【0031】
更に、本発明はスルホニル尿素薬による治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の代謝性疾患、特に2型真性糖尿病の治療及び/又は予防における使用のための医薬組成物を提供し、前記医薬組成物が本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤そして必要により一種以上の医薬上許される担体及び/又は希釈剤を含む。
更に、本発明はスルホニル尿素薬による治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の代謝性疾患、特に2型真性糖尿病の治療及び/又は予防における使用のためのパーツのキットを含む固定又は非固定組み合わせを提供し、前記組み合わせが本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤そして必要により一種以上のその他の活性物質、例えば、本明細書に挙げられたもののいずれかを含む。
更に、本発明はスルホニル尿素薬による治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の代謝性疾患、特に2型真性糖尿病の治療及び/又は予防のための医薬組成物の製造のための、一種以上のその他の活性物質、例えば、本明細書に挙げられたもののいずれかと組み合わせての本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤の使用を提供する。
更に、本発明はスルホニル尿素薬による治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の代謝性疾患、特に2型真性糖尿病の治療及び/又は予防における使用のための医薬組成物を提供し、前記医薬組成物が本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤そして必要により一種以上のその他の活性物質、例えば、本明細書に挙げられたもののいずれか、例えば、活性成分の別々の、連続的の、同時の、同時発生的の又は経時の使用のためのものを含む。
更に、本発明はスルホニル尿素薬による治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の代謝性疾患、特に2型真性糖尿病の治療及び/又は予防方法を提供し、前記方法がそれを要する対象(特にヒト患者)に有効量の本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤を、必要により単独で又は、例えば、別々に、連続的に、同時に、同時発生的に又は経時に、有効量の一種以上のその他の活性物質、例えば、本明細書に挙げられたもののいずれかと組み合わせて投与することを含む。
【0032】
加えて、本発明はメトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド、アルファ-グルコシダーゼブロッカー、GLP-1 又はGLP-1 類似体、並びにインスリン又はインスリン類似体から選ばれた一種、2種又は3種の通常の抗高血糖薬による治療にもかかわらず(例えば、適用可能な場合には、寛容される最大の経口用量による治療にもかかわらず)(例えば、メトホルミン、スルホニル尿素、ピオグリタゾンもしくは(基底)インスリンによる単一治療にもかかわらず、又はメトホルミン/ピオグリタゾン、メトホルミン/スルホニル尿素、メトホルミン/(基底)インスリン、スルホニル尿素/ピオグリタゾン、スルホニル尿素/(基底)インスリンもしくはピオグリタゾン/(基底)インスリン組み合わせによる二重組み合わせ治療にもかかわらず)不十分な血糖調節の患者における使用のための、必要によりメトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン)、グリニド、アルファ-グルコシダーゼブロッカー、GLP-1 又はGLP-1 類似体、並びにインスリン又はインスリン類似体から選ばれた一種又は2種の通常の抗高血糖薬と(追加又は初期の)組み合わせての、本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤を提供する。
本発明の更なる実施態様において、前記通常の抗高血糖薬単独で不十分に調節されている2型糖尿病患者の(第二選択)治療における使用のための、必要によりメトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン)、グリニド、アルファ-グルコシダーゼブロッカー、GLP-1 及びGLP-1 類似体、並びにインスリン及びインスリン類似体から選ばれた一種の通常の抗高血糖薬と組み合わせての、本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤が提供される。
本発明の更なる実施態様において、前記通常の抗高血糖薬の二重組み合わせで不十分に調節されている2型糖尿病患者の(第三選択)治療における使用のための、必要によりメトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン)、グリニド、アルファ-グルコシダーゼブロッカー、GLP-1 及びGLP-1 類似体、並びにインスリン及びインスリン類似体から選ばれた2種の通常の抗高血糖薬と組み合わせての、本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤が提供される。
【0033】
本発明の更なる実施態様において、通常の抗高血糖薬単独による不十分な血糖調節の2型糖尿病患者の治療における使用のための、メトホルミン、ピオグリタゾン、スルホニル尿素、及びインスリンからなる群から選ばれた通常の抗高血糖薬と組み合わせての、本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤が提供される。
本発明の更なる実施態様において、2種の通常の抗高血糖薬による不十分な血糖調節の2型糖尿病患者の治療における使用のための、下記の組み合わせ:メトホルミンとピオグリタゾン、メトホルミンとスルホニル尿素、メトホルミンとインスリン、スルホニル尿素とピオグリタゾン、スルホニル尿素とインスリン、及びピオグリタゾンとインスリンからなる群から選ばれた2種の通常の抗高血糖薬と組み合わせての、本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤が提供される。
特に、本発明は寛容される最大用量のスルホニル尿素による単一治療にもかかわらず不十分な血糖調節の2型糖尿病患者の治療における使用のためのスルホニル尿素と組み合わせての本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤を提供する。
更に、本発明はスルホニル尿素とメトホルミンによる二重組み合わせ治療にもかかわらず不十分な血糖調節の2型糖尿病患者の治療における使用のためのスルホニル尿素及びメトホルミンと組み合わせての本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤を提供する。
更に、本発明はスルホニル尿素とピオグリタゾンによる二重組み合わせ治療にもかかわらず不十分な血糖調節の2型糖尿病患者の治療における使用のためのスルホニル尿素及びピオグリタゾンと組み合わせての本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤を提供する。
更に、本発明はスルホニル尿素とインスリンによる二重組み合わせ治療にもかかわらず不十分な血糖調節の2型糖尿病患者の治療における使用のためのスルホニル尿素及びインスリンと組み合わせての本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤を提供する。
更に、本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤は経口抗糖尿病薬、特にスルホニル尿素薬による治療にもかかわらず不十分な血糖調節(SU二次無効)の糖尿病患者における下記の方法の一つ以上に有益であり得る。
−代謝障害を予防し、その進行を遅くし、遅延し、又は治療するため、
−血糖調節を改善し、かつ/又は絶食血漿グルコース、食後の血漿グルコース及び/又はグリコシル化ヘモグロビンHbA1cの低減のため、
−真性糖尿病の合併症からなる群から選ばれた症状又は疾患を予防し、その進行を遅くし、遅延し、又は治療するため、
−体重を減少し、もしくは体重の増加を予防し、又は体重の減少を促進するため、
−膵臓のベータ細胞の変性を予防もしくは措置し、かつ/又は膵臓のベータ細胞の機能を改善及び/又は回復し、かつ/又は膵臓のインスリン分泌の機能を刺激及び/又は回復するため、かつ/又は
−インスリン感受性を維持及び/又は改善し、かつ/又は高インスリン血症及び/又はインスリン耐性を治療又は予防するため。
【0034】
経口抗糖尿病治療の二次無効を有する患者で本発明の治療を受けやすいこのような代謝性疾患又は障害の例として、1型糖尿病、2型糖尿病、不適なグルコーストレランス、インスリン耐性、高血糖症、高脂血症、高コレステロール血症、異常脂血症、メタボリック症候群X、肥満、高血圧、慢性全身性炎症、網膜症、神経障害、腎症、アテローム硬化症、内皮機能不全及び骨多孔症が挙げられるが、これらに限定されない。
更に、本発明は、特にメトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン)、グリニド、アルファ-グルコシダーゼブロッカー、GLP-1 及びGLP-1 類似体、並びにインスリン及びインスリン類似体から選ばれた通常の一種以上の経口又は非経口抗糖尿病薬による単一又は二重もしくは三重治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者で下記の目的の一つ以上のための薬物の製造のための、必要により一種以上のその他の活性物質、例えば、本明細書に挙げられたもののいずれかと組み合わせての、本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤の使用を提供する。
−代謝障害又は疾患、例えば、1型真性糖尿病、2型真性糖尿病、損なわれたグルコーストレランス(IGT)、損なわれた絶食血液グルコース(IFG)、高血糖症、食後の高血糖症、過剰体重、肥満、異常脂血症、高脂血症、高コレステロール血症、高血圧、アテローム硬化症、内皮機能不全、骨多孔症、慢性全身性炎症、非アルコール性脂肪肝症(NAFLD)、網膜症、神経障害、腎症及び/又はメタボリック症候群を予防し、その進行を遅くし、遅延し、又は治療し、
−血糖調節を改善し、かつ/又は絶食血漿グルコース、食後の血漿グルコース及び/又はグリコシル化ヘモグロビンHbA1cの低減のため、
−損なわれたグルコーストレランス(IGT)、損なわれた絶食血液グルコース(IFG)、インスリン耐性及び/又はメタボリック症候群から2型真性糖尿病までを予防し、その進行を遅延又は反転し、
−真性糖尿病の合併症、例えば、微小血管疾患及び大血管疾患、例えば、腎症、微小又は大アルブミン尿症、タンパク質尿症、網膜症、白内障、神経障害、学習又は記憶障害、神経変性疾患又は認知障害、心血管疾患又は脳血管疾患、組織虚血、糖尿病性の足又は潰瘍、アテローム硬化症、高血圧、内皮機能不全、心筋梗塞、急性冠症候群、不安定なアンギーナペクトリス(pectoris)、安定なアンギーナペクトリス、末梢動脈閉塞症、心筋症、心不全、心拍障害、血管再狭窄、及び/又は卒中を予防し、そのリスクを軽減し、その進行を遅くし、遅延し、又は治療し、
−体重を減少し、もしくは体重の増加を予防し、又は体重の減少を促進し、
−膵臓のベータ細胞の変性及び/又は膵臓のベータ細胞の機能の低下を予防、遅延もしくは措置し、かつ/又は膵臓のベータ細胞の機能を改善及び/又は回復し、かつ/又は膵臓のインスリン分泌の機能を刺激及び/又は回復し、
−肝臓脂肪症、非アルコール性肝脂肪症(NASH)及び/又は肝線維症を含む非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)を予防し、遅くし、遅延又は治療し、
−通常の(経口)高血糖薬単一又は組み合わせ治療に一次又は二次無効の2型糖尿病を予防し、その進行を遅くし、遅延又は治療し、
−適当な治療効果に必要とされる通常の抗高血糖薬の用量の減少を得、
−通常の抗高血糖薬と関連する不利な作用のリスクを軽減し、かつ/又は
−インスリン感受性を維持及び/又は改善し、かつ/又は高インスリン血症及び/又はインスリン耐性を治療又は予防する。
【0035】
本発明の特別な実施態様はスルホニル尿素二次無効を有する2型糖尿病患者で血糖調節を得るため、及び/又は維持するための本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤に関する。
本発明の別の特別な実施態様はSU二次無効の糖尿病の予防(その進行の予防又は遅延を含む)における使用のための本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤に関する。
本発明の別の特別な実施態様はSU抗糖尿病治療と関連する不利な作用、例えば、低血糖及び/又は体重増加のリスクを予防又は軽減する際の使用のため(又は更には体重損失を得る際の使用のため)の本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤に関する。
本発明の別の特別な実施態様はスルホニル尿素二次無効の糖尿病の治療における使用のための本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤に関するものであり、前記DPP-4 阻害剤がスルホニル尿素単一薬物又は二重薬物による追加又は初期の組み合わせ治療に(例えば、メトホルミンを用い、又は用いないSU薬物への併用治療として)、又は、必要により一種以上のその他の治療薬、例えば、メトホルミン及び/又はチアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン)と組み合わせて、スルホニル尿素薬物の置換として使用される。
本発明の別の特別な実施態様はスルホニル尿素薬物(例えば、メトホルミンと一緒又は一緒ではないグリベンクラミド、グリピジド又はグリメプリド)による治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者(例えば、7.5%から10%まで、又は7.5%から11%までのHbA1c を有する)でHbA1c 及び/又はFPG を改善し(例えば、基準線からの平均の減少)、グルコース変動幅を減少し、かつ/又はインスリン分泌を改善する際の使用のためのDPP-4 阻害剤に関する。
【0036】
本発明のその他の局面は以上及び以下の説明から明らかになる。
本発明の意味内のDPP-4 阻害剤として、以上及び以下に挙げられるこれらのDPP-4 阻害剤のいずれか、好ましくは経口活性DPP-4 阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の実施態様は経口抗糖尿病治療の二次無効を有する2型糖尿病患者の代謝性疾患(例えば、2型真性糖尿病)の治療及び/又は予防における使用のためのDPP-4 阻害剤に関するものであり、前記患者が更に腎臓疾患、腎不全又は腎臓障害を患っており、特に前記DPP-4 阻害剤が正常な腎臓機能の患者についてと同じ用量レベルで前記患者に投与されることを特徴とし、こうして、例えば、前記DPP-4 阻害剤が損なわれた腎臓機能のための下方の投薬調節を必要としない。
本発明の別の実施態様は経口抗糖尿病治療の二次無効を有する2型糖尿病患者の代謝性疾患(特に2型真性糖尿病)の治療及び/又は予防における使用のためのDPP-4 阻害剤に関するものであり、前記患者がまたメトホルミン治療に無効であり、もしくは不適当であり、又はメトホルミンに対する非寛容性もしくは禁忌、例えば、先に、もしくは以下に特定された非寛容性もしくは禁忌のいずれかのためにメトホルミン用量減少を必要とする。
本発明の前記目的のために(特に損なわれた腎臓機能の患者のために)示唆し得るDPP-4 阻害剤はこのようなDPP-4 阻害剤であってもよく、その活性代謝産物が比較的広い(例えば、100倍より大きい)治療ウインドーを有し、かつ/又は、特に、肝臓代謝もしくは胆汁中排泄により主として排泄されることが好ましい。
更に詳しくは、本発明の上記目的(特に損なわれた腎臓機能の患者)に特に適したDPP-4 阻害剤はこのような経口投与されるDPP-4 阻害剤であってもよく、これは比較的広い(例えば、> 100 倍)治療ウインドーを有し、かつ/又は以下の薬物動力学的性質(好ましくはその治療経口用量レベルにおける)の一つ以上を満足する:
−DPP-4 阻害剤は実質的に、又は主として肝臓により排泄され(例えば、投与された経口用量の> 80 % 又は更には> 90 %)、かつ/又は腎臓排泄が実質的な排除経路に相当せず、又はほんのわずかな排除経路に相当する (例えば、排除後に放射能標識炭素 (14C) 物質経口用量により測定して投与された経口用量の< 10 %、好ましくは< 7 %);
−DPP-4 阻害剤は親薬物として主として変化されないで排泄され(例えば、放射能標識炭素 (14C) 物質の経口投薬後に尿及び糞中の排泄放射能の平均> 70%、もしくは> 80%、又は、好ましくは90%)、かつ/又は代謝により実質的にない程度又はほんのわずかな程度まで排除される (例えば、< 30%、もしくは< 20%、又は、好ましくは10%);
−DPP-4 阻害剤の一種以上の(主)代謝産物が薬理学上不活性である。例えば、主代謝産物が標的酵素DPP-4 に結合せず、必要により、それが親化合物と較べて迅速に排除される (例えば、≦ 20 時間、又は、好ましくは≦ 約16時間、例えば、15.9時間の終末半減期で) 。
【0037】
DPP-4 阻害剤の更なる性質(これらは本発明の上記目的に魅力的であるかもしれない)は、下記の一つ以上であるかもしれない:定常状態の迅速な到達(例えば、治療経口用量レベルによる治療の2日目〜4日目に定常状態血漿レベル(例えば、定常状態血漿濃度の > 90%) に達する)、殆ど蓄積のないこと(例えば、治療経口用量レベルで平均蓄積比RA,AUC ≦ 1.4 で)、及び/又は好ましくは毎日1回投与される場合に、DPP-4 抑制についての長い持続作用を保存すること(例えば、治療経口用量レベルでほぼ完全な (> 90%) DPP-4 抑制、治療経口薬物用量の毎日1回の摂取後の24時間間隔にわたって> 80% 抑制)、治療用量レベルにおける≧ 80 % (治療の初日で既に) の食後2時間の血液グルコース変動幅の有意な減少、及び投与された用量の1%未満であり、定常状態で3-6% 以上に増大しない、初日に尿中に排泄される未変化の親化合物の累積量。
こうして、本発明はまた代謝性疾患(特にメトホルミン治療がメトホルミンに対する非寛容性又は禁忌のために不適である患者、更に特別に腎臓疾患、腎不全又は腎臓障害の患者の2型真性糖尿病)の治療及び/又は予防における使用のためのDPP-4 阻害剤に関するものであり、前記DPP-4 阻害剤が腎臓により実質的な程度に排泄されず、又はほんのわずかな程度(例えば、投与された経口用量の< 10 %、好ましくは< 7 %) に排泄される(例えば、排除後に放射能標識炭素 (14C) 物質経口用量により測定して) ことを特徴とする。
更に、本発明はまた代謝性疾患(特にメトホルミン治療がメトホルミンに対する非寛容性又は禁忌のために不適である患者、更に特別に腎臓疾患、腎不全又は腎臓障害の患者の2型真性糖尿病)の治療及び/又は予防における使用のためのDPP-4 阻害剤に関するものであり、前記DPP-4 阻害剤が実質的に、又は主として肝臓により排泄される(例えば、排除後に放射能標識炭素 (14C) 物質経口用量により測定して)ことを特徴とする。
【0038】
更に、本発明はまた代謝性疾患(特にメトホルミン治療がメトホルミンに対する非寛容性又は禁忌のために不適である患者、更に特別に腎臓疾患、腎不全又は腎臓障害の患者の2型真性糖尿病)の治療及び/又は予防における使用のためのDPP-4 阻害剤に関するものであり、
前記DPP-4 阻害剤が主として親化合物として未変化で排泄され(例えば、放射能標識炭素(14C) 物質の経口投薬後の尿及び糞中に排泄される放射能の平均> 70%、もしくは> 80%、又は、好ましくは90 %)、
前記DPP-4 阻害剤が代謝により実質的な程度に排除されず、又はほんのわずかな程度に排除され、かつ/又は
前記DPP-4 阻害剤の主代謝産物が薬理学上不活性であり、又は比較的広い治療ウインドーを有することを特徴とする。
第一の実施態様(実施態様A)において、本発明の状況におけるDPP-4 阻害剤は下記の式のあらゆるDPP-4 阻害剤又はその医薬上許される塩である。
式(I)
【0039】
【化10】

もしくは式 (II)
【化11】

又は式 (III)
【化12】

或いは式 (IV)
【化13】

【0040】
式中、R1は([1,5]ナフチリジン-2-イル)メチル、(キナゾリン-2-イル)メチル、(キノキサリン-6-イル)メチル、(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル、2-シアノ-ベンジル、(3-シアノ-キノリン-2-イル)メチル、(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル、(4-メチル-ピリミジン-2-イル)メチル、又は(4,6-ジメチル-ピリミジン-2-イル)メチルを表し、かつR2は3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル、(2-アミノ-2-メチル-プロピル)-メチルアミノ又は(2-(S)-アミノ-プロピル)-メチルアミノを表す。
【0041】
第二の実施態様(実施態様B)において、本発明の状況におけるDPP-4 阻害剤は
シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、アログリプチン、
(2S)-1-{[2-(5-メチル-2-フェニル-オキサゾール-4-イル)-エチルアミノ]-アセチル}-ピロリジン-2-カルボニトリル、
(2S)-1-{[1,1,-ジメチル-3-(4-ピリジン-3-イル-イミダゾール-1-イル)-プロピルアミノ]-アセチル}-ピロリジン-2-カルボニトリル、
(S)-1-((2S,3S,11bS)-2-アミノ-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-3-イル)-4-フルオロメチル-ピロリジン-2-オン、
(3,3-ジフルオロピロリジン-1-イル)-((2S,4S)-4-(4-(ピリミジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)ピロリジン-2-イル)メタノン、
(1((3S,4S)-4-アミノ-1-(4-(3,3-ジフルオロピロリジン-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)ピロリジン-3-イル)-5,5-ジフルオロピペリジン-2-オン、
(2S,4S)-1-{2-[(3S,1R)-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)シクロペンチルアミノ]-アセチル}-4-フルオロピロリジン-2-カルボニトリル、
(R)-2-[6-(3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-3-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピリミジン-1-イルメチル]-4-フルオロ-ベンゾニトリル、
5-{(S)-2-[2-((S)-2-シアノ-ピロリジン-1-イル)-2-オキソ-エチルアミノ]-プロピル}-5-(1H-テトラゾール-5-イル)-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-2,8-ジカルボン酸ビス-ジメチルアミド、
3-{(2S,4S)-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)ピペラジン-1-イル]ピロリジン-2-イルカルボニル}チアゾリジン、
[(2R)-1-{[(3R)-ピロリジン-3-イルアミノ]アセチル}ピロリジン-2-イル]ボロン酸、
(2S,4S)-1-[2-[(4-エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル)アミノ]アセチル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボニトリル、
2-({6-[(3R)-3-アミノ-3-メチルピペリジン-1-イル]-1,3-ジメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-5H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-5-イル}メチル)-4-フルオロベンゾニトリル、及び
6-[(3R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-5-(2-クロロ-5-フルオロ-ベンジル)-1,3-ジメチル-1,5-ジヒドロ-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-2,4-ジオン
からなる群から選ばれたDPP-4 阻害剤又はその医薬上許される塩である。
【0042】
第一の実施態様(実施態様A)に関して、好ましいDPP-4 阻害剤は下記の化合物及びそれらの医薬上許される塩のいずれか又は全てである。
・1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2004/018468、実施例2(142)と比較のこと):
【0043】
【化14】

【0044】
・1-[([1,5]ナフチリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2004/018468、実施例2(252) と比較のこと):
【化15】

【0045】
・1-[(キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2004/018468、実施例2(80) と比較のこと):
【化16】

【0046】
・2-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-3-(ブト-2-インイル)-5-(4-メチル-キナゾリン-2-イルメチル)-3,5-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-d]ピリダジン-4-オン (WO 2004/050658、実施例136と比較のこと):
【化17】

【0047】
・1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(2-アミノ-2-メチル-プロピル)-メチルアミノ]-キサンチン (WO 2006/029769、実施例2(1) と比較のこと):
【化18】

【0048】
・1-[(3-シアノ-キノリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2005/085246、実施例1(30) と比較のこと):
【化19】

【0049】
・1-(2-シアノ-ベンジル)-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2005/085246、実施例1(39) と比較のこと):
【化20】

【0050】
・1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(S)-(2-アミノ-プロピル)-メチルアミノ]-キサンチン (WO 2006/029769、実施例2(4) と比較のこと):
【化21】

【0051】
・1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2005/085246、実施例1(52) と比較のこと):
【化22】

【0052】
・1-[(4-メチル-ピリミジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2005/085246、実施例1(81) と比較のこと):
【化23】

【0053】
・1-[(4,6-ジメチル-ピリミジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2005/085246、実施例1(82) と比較のこと):
【化24】

【0054】
・1-[(キノキサリン-6-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2005/085246、実施例1(83) と比較のこと):
【化25】

【0055】
これらのDPP-4 阻害剤は構造の匹敵するDPP-4 阻害剤とは区別される。何とならば、それらが格別の効力及び有利な薬理学的性質とともに長く持続する作用、受容体選択性並びに有利な副作用プロフィールを併有し、又はその他の医薬活性物質と組み合わされた場合に予期しない治療上の利点もしくは改善をもたらすからである。それらの調製が挙げられた刊行物に開示されている。
本発明の実施態様Aの上記DPP-4 阻害剤の中の更に好ましいDPP-4 阻害剤は1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、特にその遊離塩基(これはまたBI 1356として知られている)である。
特にことわらない限り、本発明によれば、先に、また以下に挙げられる活性化合物(DPP-4 阻害剤を含む)の定義はそれらの医薬上許される塩だけでなく、これらの水和物、溶媒和物及び多形をまたふくむことが理解されるべきである。これらの塩、水和物及び多形に関して、本明細書に言及されているものが特に参考にされる。
実施態様Aに関して、本発明の実施態様AのDPP-4 阻害剤の合成方法が当業者に知られている。有利なことに、本発明の実施態様AのDPP-4 阻害剤は文献に記載された合成方法を使用して調製し得る。こうして、例えば、式 (I)のプリン誘導体が WO 2002/068420、WO 2004/018468、WO 2005/085246、WO 2006/029769 又はWO 2006/048427に記載されたように得られ、これらの開示が本明細書に含まれる。式(II)のプリン誘導体が、例えば、WO 2004/050658 又はWO 2005/110999に記載されたように得られ、これらの開示が本明細書に含まれる。
式(III) 及び(IV)のプリン誘導体が、例えば、WO 2006/068163、WO 2007/071738 又はWO 2008/017670に記載されたように得られ、これらの開示が本明細書に含まれる。先に詳しく挙げられている、これらのDPP-4 阻害剤の調製が、それに関連して挙げられた刊行物に開示されている。特別なDPP-4 阻害剤の多形結晶変化及び製剤が夫々WO 2007/128721 及びWO 2007/128724に開示されており、これらの開示が本明細書にそのまま含まれる。メトホルミン又はその他の組み合わせパートナーとの特別なDPP-4 阻害剤の製剤がPCT/EP2009053978に記載されており、その開示が本明細書にそのまま含まれる。BI 1356 / メトホルミンの二重組み合わせの典型的な用量は2.5/500 mg、2.5/850 mg 及び2.5/1000 mgである。
実施態様Bに関して、実施態様BのDPP-4 阻害剤の合成方法が科学文献及び/又は公開された特許書類、特に本明細書に引用されたものに記載されている。
【0056】
温血脊椎動物、特にヒトにおける医薬適用について、本発明の化合物は、夫々の場合に1日1〜4回で、体重1kg当り0.001〜100mg、好ましくは体重1kg当り0.1-15mgの用量で通常使用される。この目的のために、化合物は、必要によりその他の活性物質と合わされて、一種以上の不活性の通常の担体及び/又は希釈剤、例えば、トウモロコシ澱粉、ラクトース、グルコース、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、クエン酸、酒石酸、水、水/エタノール、水/グリセロール、水/ソルビトール、水/ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール、カルボキシメチルセルロース又は脂肪物質、例えば、硬質脂肪又はこれらの好適な混合物と一緒に通常のガレン製剤、例えば、単純錠剤又は被覆錠剤、カプセル、粉末、懸濁液又は座薬に混入し得る。
本明細書に特定されたDPP-4 阻害剤を含む本発明の医薬組成物はこうして当業界で記載された医薬上許される製剤化賦形剤を使用して当業者により調製される。このような賦形剤の例として、希釈剤、バインダー、担体、充填剤、滑剤、流動促進剤、結晶化遅延剤、崩壊剤、可溶化剤、着色剤、pH調節剤、表面活性剤及び乳化剤が挙げられるが、これらに限定されない。
実施態様Aの化合物に適した希釈剤の例として、セルロース粉末、リン酸水素カルシウム、エリスリトール、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、マンニトール、前ゼラチン化澱粉又はキシリトールが挙げられる。これらの希釈剤の中で、マンニトール、低置換ヒドロキシプロピルセルロース及び前ゼラチン化澱粉が強調されるべきである。
実施態様Aの化合物に適した滑剤の例として、タルク、ポリエチレングリコール、ベヘン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、水添ヒマシ油又はステアリン酸マグネシウムが挙げられる。これらの滑剤の中で、ステアリン酸マグネシウムが強調されるべきである。
【0057】
実施態様Aの化合物に適したバインダーの例として、コポビドン(ビニルピロリドンとその他のビニル誘導体の共重合体)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC) 、ポリビニルピロリドン(ポビドン) 、前ゼラチン化澱粉、又は低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC) が挙げられる。これらのバインダーの中で、コポビドン及び前ゼラチン化澱粉が強調されるべきである。
実施態様Aの化合物に適した崩壊剤の例として、トウモロコシ澱粉又はクロスポビドンが挙げられる。これらの崩壊剤の中で、トウモロコシ澱粉が強調されるべきである。
本発明の実施態様AのDPP-4 阻害剤の医薬製剤を調製するのに適した方法は
・好適な錠剤形成賦形剤による粉末混合物中の活性物質の直接錠剤形成;
・好適な賦形剤による造粒及びその後の好適な賦形剤との混合並びにその後の錠剤形成だけでなく、フィルム被覆; 又は
・カプセルへの粉末混合物もしくは顆粒の充填
である。
好適な造粒方法は
・強力ミキサー中の湿式造粒続いて流動床乾燥;
・ワンポット造粒;
・流動床造粒; 又は
・好適な賦形剤を用いる乾式造粒(例えば、ロール圧縮による)及びその後の錠剤形成もしくはカプセルへの充填
である。
【0058】
本発明の実施態様AのDPP-4 阻害剤の例示の組成物は第一の希釈剤マンニトール、付加的なバインダー特性を有する第二の希釈剤としての前ゼラチン化澱粉、バインダーコポビドン、崩壊剤トウモロコシ澱粉、及び滑剤としてのステアリン酸マグネシウムを含み、コポビドン及び/又はトウモロコシ澱粉は任意であってもよい。
本発明のDPP-4 阻害剤の投薬形態、製剤及び投与の詳細について、科学文献及び/又は公開された特許書類、特に本明細書に引用されたものが参考にされる。
第一の実施態様(実施態様A)に関して、実施態様Aにおける本明細書に挙げられたDPP-4 阻害剤の典型的に必要とされる用量は静脈内投与される場合には0.1 mg 〜10mg、好ましくは0.25mg〜5 mgであり、また経口投与される場合には0.5 mg〜100 mg、好ましくは2.5 mg〜50mg又は0.5 mg〜10mg、更に好ましくは2.5 mg〜10mg 又は1 mg〜5 mgであり、夫々の場合に1日1〜4回投与される。こうして、例えば、1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの用量は経口投与される場合には1日当り患者当り0.5 mg〜10mg、好ましくは1日当り患者当り2.5 mg〜10 mg又は1 mg〜5 mgである。
実施態様Aにおける本明細書に挙げられたDPP-4 阻害剤を含む医薬組成物で調製された投薬形態は0.1-100 mg の用量範囲の活性成分を含む。こうして、例えば、1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの特別な用量は0.5 mg、1 mg、2.5 mg、5 mg及び10mgである。
【0059】
第二の実施態様(実施態様B)に関して、哺乳類、例えば、約70kgの体重のヒトに投与すべき実施態様Bにおける本明細書に挙げられたDPP-4 阻害剤の用量は一般に1日当りヒト当り活性部分約0.5 mg〜約350 mg、例えば、約10mg〜約250 mg、好ましくは20-200 mg、更に好ましくは20-100 mg、又は好ましくは1〜4回の単一用量(これらは、例えば、同じサイズのものであってもよい)に分けられた、1日当りヒト当り約0.5 mg〜約20 mg、好ましくは2.5-10 mgであってもよい。単一用量は、例えば、DPP-4 阻害剤活性部分10、25、40、50、75、100 、150 及び200 mgを含む。
DPP-4 阻害剤シタグリプチンの用量は通常活性部分25〜200 mgである。シタグリプチンの推奨される用量は毎日1回で活性部分(遊離塩基無水物)について計算して100 mgである。シタグリプチン遊離塩基無水物(活性部分)の単位用量は25、50、75、100 、150 及び200 mgである。シタグリプチンの特別な単位用量(例えば、錠剤当り)は25、50及び100 mgである。シタグリプチン遊離塩基無水物に対するシタグリプチンリン酸塩一水和物の均等量、即ち、夫々32.13 、64.25 、96.38 、128.5 、192.75、及び257 mgが医薬組成物中に使用される。シタグリプチン25及び50mgの調節された用量が腎不全の患者に使用される。シタグリプチン/メトホルミンの二重組み合わせの典型的な用量は50/500mg及び50/1000 mgである。
DPP-4 阻害剤ビルダグリプチンの用量範囲は通常毎日10〜150 mg、特に毎日25〜150 mg、25〜100 mgもしくは25〜50mg又は50〜100 mgである。毎日の経口用量の特別な例は25、30、35、45、50、55、60、80、100 又は150 mgである。一層特別な局面において、ビルダグリプチンの毎日の投与は25〜150 mg又は50〜100 mgであってもよい。別の更に特別な局面において、ビルダグリプチンの毎日の投与は50又は100 mgであってもよい。その活性成分の適用は1日3回まで、好ましくは1日1回又は2回起こってもよい。特別な用量はビルダグリプチン50mg又は100 mgである。ビルダグリプチン/メトホルミンの二重組み合わせの典型的な用量は50/850 mg及び50/1000 mgである。
【0060】
アログリプチンはアログリプチン5 mg/日〜250 mg/日、必要により10mg〜200 mg、必要により10mg〜150 mg、また必要により10mg〜100 mgの毎日の用量(夫々の場合にアログリプチンの遊離塩基形態の分子量を基準とする)で患者に投与されてもよい。こうして、使用し得る特別な投薬量として、1日当りアログリプチン10mg、12.5mg、20mg、25mg、50mg、75 mg及び100 mgが挙げられるが、これらに限定されない。アログリプチンはその遊離塩基形態で、又は医薬上許される塩として投与されてもよい。
サキサグリプチンは2.5 mg/日〜100 mg/日、必要により2.5 mg〜50mgの毎日の用量で患者に投与されてもよい。使用し得る特別な投薬量として、1日当りサキサグリプチン2.5 mg、5 mg、10mg、15mg、20mg、30mg、40mg、50mg及び100 mgが挙げられるが、これらに限定されない。サキサグリプチン/メトホルミンの二重組み合わせの典型的な用量は2.5/500 mg 及び2.5/1000mgである。
本発明のDPP-4 阻害剤の特別な実施態様は低用量レベル、例えば、1日当り患者当り用量レベル< 100 mg 又は< 70 mg、好ましくは1日当り患者当り< 50mg、更に好ましくは< 30mg又は< 20mg、更に一層好ましくは1 mgから10mgまで (必要とされる場合、1〜4回の単一用量、特に1回又は2回の単一用量に分けられ、これらは同じサイズのものであってもよい)、特に1 mgから5 mgまで (更に特別には5 mg)で治療上有効であるこれらの経口投与されるDPP-4 阻害剤に関するものであり、好ましくは1日1回経口投与され、更に好ましくは食物と共に、又は一緒ではなく1日のいずれかの時間に投与される。こうして、例えば、毎日の経口量5 mg のBI 1356 が毎日1回の投薬養生法(即ち、毎日1回5 mg のBI 1356)で、又は毎日2回の投薬養生法(即ち、毎日2回の2.5 mg のBI 1356)で食物と共に、又は一緒ではなく1日のいずれかの時間に投与し得る。
【0061】
本発明の意味内で強調すべき特に好ましいDPP-4 阻害剤は1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (またBI 1356として知られている) である。BI 1356 は高い効力、作用の24時間の期間、及び広い治療ウインドーを示す。12日間にわたって毎日1回1, 2.5, 5 or 10 mg のBI 1356の多くの経口用量を受ける2型糖尿病の患者では、BI 1356は有利な薬力学的プロフィール及び薬物動態学的プロフィール(下記の表1を参照のこと)とともに定常状態の迅速な到達(例えば、全ての用量グループで治療の2日目〜5日目に定常状態血漿レベル(13日目の前投薬血漿濃度の> 90%)に達する)、殆ど蓄積のないこと(例えば、1mg より上の用量で平均蓄積比RA,AUC ≦ 1.4 )及びDPP-4 抑制に関する長く持続する作用を保存すること(例えば、5 mg及び10mg用量レベルでほぼ完全な (> 90%) DPP-4 抑制、即ち、定常状態で夫々92.3及び97.3% の抑制、そして薬物摂取後24時間間隔で> 80%抑制)だけでなく、≧ 2.5 mgの用量で≧ 80 % (既に1日目に)の食後2時間の血液グルコース変動幅の有意な減少を示し、1日目に尿中に排泄される未変化の親化合物の累積量が投与された用量の1%未満であり、12日目に3-6%以下に上昇する(腎臓クレアランスCLR,ss が投与された経口用量について約14から約70 mL/分までであり、例えば、5 mgの用量につき、腎臓クレアランスが約70 ml/分である)。2型糖尿病のヒトでは、BI 1356が偽薬のような安全性及び寛容性を示す。約≧ 5 mg の低用量で、BI 1356 は真の毎日1回の経口薬物としてDPP-4 抑制の完全な24時間の期間で作用する。治療経口用量レベルで、BI 1356 は主として肝臓により排泄され、腎臓によりほんのわずかな程度(投与された経口用量の< 7% )で排泄される。BI 1356は主として胆汁を介して未変化で排泄される。腎臓により排除されるBI 1356 の比率は用量の増加につれてほんの非常にわずかに経時増加し、その結果、おそらく患者の腎臓機能に基づいてBI 1356の用量を変更する必要がないであろう。BI 1356 の非腎臓排除はその低い蓄積潜在性及び広い安全限界と組み合わせて腎不全及び糖尿病性腎症の高い流行を有する患者集団でかなり有益であるかもしれない。
表1: 定常状態(12日目)におけるBI 1356 の薬物動態学的パラメーターの幾何平均 (gMean) 及び幾何変化率 (gCV)
【0062】
【表1】

【0063】
異なる代謝性機能障害がしばしば同時に生じるので、幾つかの異なる活性成分を互いに組み合わせることが実にしばしば適応される。こうして、診断された機能障害に応じて、DPP-4 阻害剤が夫々の障害に通例の活性物質、例えば、その他の抗糖尿病物質、特に血糖レベル又は血液中の脂質レベルを低下し、血液中のHDL レベルを上昇し、血圧を低下し、又はアテローム硬化症もしくは肥満の治療に適応される活性物質の中から選ばれた一種以上の活性物質と組み合わされる場合に改善された治療結果が得られるかもしれない。
上記DPP-4 阻害剤はまた、単一療法におけるそれらの使用の他に、その他の活性物質と連係して使用されてもよく、これらにより改善された治療結果が得られる。このような組み合わされた治療は物質の自由な組み合わせとして、又は固定された組み合わせの形態で、例えば、錠剤もしくはカプセル中で与えられてもよい。これに必要とされる組み合わせパートナーの医薬製剤は医薬組成物として商業上得られてもよく、又は通常の方法を使用して当業者により製剤化されてもよい。医薬組成物として商業上得られてもよい活性物質が多くの場所で従来技術、例えば、年間に現れる薬物のリスト、医薬工業の連邦協会の"Rote Liste (登録商標)" 、又は"Physicians' Desk Reference"として知られている処方薬物に関する製造業者の情報の年間にアップデートされる編纂物に記載されている。
【0064】
抗糖尿病組み合わせパートナーの例はメトホルミン;スルホニル尿素、例えば、グリベンクラミド、トルブタミド、グリメピリド、グリピジド、グリキドン、グリボルヌリド及びグリクラジド;ナテグリニド;レパグリニド;チアゾリジンジオン、例えば、ロシグリタゾン及びピオグリタゾン; PPARガンマモジュレーター、例えば、メタグリダーゼ; PPAR-ガンマアゴニスト、例えば、GI 262570 ;PPAR-ガンマアンタゴニスト; PPAR-ガンマ/アルファモジュレーター、例えば、テサグリタザール、ムラグリタザール、アレグリタザール、インデグリタザール及びKRP297 ;PPAR-ガンマ/アルファ/デルタモジュレーター; AMPK-アクチベーター、例えば、AICAR ;アセチル-CoA カルボキシラーゼ(ACC1及びACC2)阻害剤;ジアシルグリセロール-アセチルトランスフェラーゼ (DGAT)阻害剤;膵臓ベータ細胞GCRPアゴニスト、例えば、SMT3-受容体-アゴニスト及びGPR119; 11β-HSD-阻害剤;FGF19 アゴニスト又は類似体;アルファ-グルコシダーゼブロッカー、例えば、アカルボース、ボグリボース及びミグリトール;アルファ2-アンタゴニスト;インスリン及びインスリン類似体、例えば、ヒトインスリン、インスリンリスプロ、インスリングルシリン、r-DNA-インスリンアスパルト、NPH インスリン、インスリンデテミル、インスリン亜鉛懸濁液及びインスリングラルギン;胃酸抑制ペプチド (GIP);プラムリンチド、ダバリンチド;アミリン及びアミリン類似体又はGLP-1 及びGLP-1 類似体、例えば、エキセンジン-4、例えば、エキセナチド、エキセナチドLAR 、リラグルチド、タスポグルチド、AVE-0010、LY-2428757、LY-2189265、セマグルチド又はアルビグルチド;SGLT2-阻害剤、例えば、KGT-1251 ;タンパク質チロシン-ホスファターゼの阻害剤;グルコース-6-ホスファターゼの阻害剤;フラクトース-1,6-ビスホスファターゼモジュレーター;グリコーゲンホスホリラーゼモジュレーター;グルカゴン受容体アンタゴニスト;ホスホエノールピルベートカルボキシナーゼ(PEPCK) 阻害剤;ピルベートデヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK) 阻害剤;チロシン-キナーゼの阻害剤 (50mg〜600 mg) 、例えば、PDGF-受容体-キナーゼ (EP-A-564409, WO 98/35958, US 5093330, WO 2004/005281, 及びWO 2006/041976を参照のこと) ;グルコキナーゼ/調節タンパク質モキレーター(グルコキナーゼアクチベーターを含む));グリコーゲンシンターゼキナーゼ阻害剤; SH2-ドメイン含有イノシトール5-ホスファターゼ型 2 (SHIP2) の阻害剤;IKK 阻害剤、例えば、高用量サリチレート;JNK1阻害剤;タンパク質キナーゼC-シータ阻害剤;ベータ3アゴニスト、例えば、リトベグロン、YM 178、ソラベグロン、タリベグロン、N-5984、GRC-1087、ラファベグロン、FMP825;アルドースレダクターゼ阻害剤、例えば、AS 3201 、ゼナレスタット、フィダレスタット、エパルレスタット、ラニレスタット、NZ-314、CP-744809 及びCT-112;SGLT-1又はSGLT-2阻害剤、例えば、ダパグリフロジン、セルグリフロジン、アチグリフロジン、ラルナグリフロジン又はカナグリフロジン (又はWO 2009/035969からの式 (I-S) 又は (I-K) の化合物); KV 1.3チャンネル阻害剤;GPR40 モジュレーター;SCD-1 阻害剤; CCR-2 アンタゴニスト;ドーパミン受容体アゴニスト(ブロモクリプチンメシレート [シクロセット]);並びにその他のDPP IV阻害剤である。
【0065】
メトホルミンは約100mgから500mgまで、もしくは200mg〜850mg (1日1-3 回) 、又は1日1回もしくは2回約300mg〜1000mg、或いは約100mg〜1000mgもしくは好ましくは1日1回もしくは2回500mg〜1000mg又は1日1回約500mg〜2000mgの用量の遅延放出メトホルミンの種々の投薬養生法を使用して1日当り約500 mgから2000mgまで、2500 mgまで変化する用量で通常与えられる。特別な用量はメトホルミン塩酸塩250 、500 、625 、750 、850 及び1000 mgであってもよい。
ピオグリタゾンの用量は1日1回通常約1-10mg、15mg、30mg、又は45mgである。
ロシグリタゾンは1日1回(又は分けられた2回)4〜8mgの用量で通常与えられる(典型的な用量は2、4及び8mgである)。
グリベンクラミド(グリブリド)は1日1回(又は分けられた2回)2.5-5 mgから20 mgまでの用量で通常与えられ(典型的な用量は1.25、2.5 及び5 mgである)、又は微粉砕グリベンクラミドは1日1回(又は分けられた2回)0.75-3 mgから12mgの用量で与えられる(典型的な用量は1.5 、3、4.5 及び6 mgである)。
グリピジドは1日1回2.5 mgから10-20 mgまで (分けられた2回で40mgまで)の用量で通常与えられ(典型的な用量は5 mg及び10mgである)、又は延長放出グリピジドは1日1回5 mgから10mgまで (20mgまで) の用量で与えられる(典型的な用量は2.5 、5及び10mgである)。
グリメピリドは1日1回1-2 mgから4 mgまで (8 mgまで) の用量で通常与えられる(典型的な用量は1 、2 及び4 mgである)。
グリベンクラミド/メトホルミンの二重組み合わせは毎日1回1.25/250 mgから毎日2回10/1000 mg までの用量で通常与えられる(典型的な用量は1.25/250、2.5/500 及び5/500 mgである)。
グリピジド/メトホルミンの二重組み合わせは毎日2回2.5/250 mgから10/1000 mg までの用量で通常与えられる(典型的な用量は2.5/250、2.5/500 及び5/500 mgである)。
グリメピリド/メトホルミンの二重組み合わせは毎日2回1/250 mgから4/1000 mg までの用量で通常与えられる。
ロシグリタゾン/グリメピリドの二重組み合わせは毎日1回もしくは2回4/1 mgから毎日2回4/2 mg までの用量で通常与えられる(典型的な用量は4/1、4/2、4/4、8/2及び8/4 mgである)。
ピオグルタゾン/グリメピリドの二重組み合わせは毎日1回30/2 mgから30/4 mg までの用量で通常与えられる(典型的な用量は30/4及び45/4 mgである)。
ロシグリタゾン/メトホルミンの二重組み合わせは毎日2回1/500 mgから4/1000 mg までの用量で通常与えられる(典型的な用量は1/500 、2/500 、4/500 、2/1000及び4/1000 mgである)。
ピオグリタゾン/メトホルミンの二重組み合わせは毎日1回又は2回15/500 mgから毎日3回15/850 mg までの用量で通常与えられる(典型的な用量は15/500 及び15/850 mgである)。
【0066】
非スルホニル尿素インスリン分泌促進物質ナテグリニドは食事とともに60mgから120 mg までの用量で通常与えられ(360 mg/日まで、典型的な用量は60及び120 mgである)、レパグリニドは食事とともに0.5 mgから4 mgまでの用量で通常与えられる(16 mg/日まで、典型的な用量は0.5 、1 及び2 mgである)。レパグリニド/メトホルミンの二重組み合わせは1/500 及び2/850 mgの用量で利用できる。
アカルボースは食事とともに25mgから100 mgまでの用量で通常与えられる(300 mg/日まで、典型的な用量は25、50及び100 mgである)。ミグリトールは食事とともに25mgから100 mgまでの用量で通常与えられる (300 mg/日まで、典型的な用量は25、50及び100 mgである)。
単一療法又は二重もしくは三重(追加又は初期)組み合わせ療法に典型的に使用される通常の抗糖尿病薬及び抗高血糖薬として、メトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド、アルファ-グルコシダーゼブロッカー、GLP-1 及びGLP-1 類似体だけでなく、インスリン及びインスリン類似体、例えば、本明細書に例として示されたこれらの薬剤(これらの組み合わせを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
血液中の脂質レベルを低下する組み合わせパートナーの例はHMG-CoA-レダクターゼ阻害剤、例えば、シムバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、ピタバスタチン及びロスバスタチン;フィブレート、例えば、ベザフィブレート、フェノフィブレート、クロフィブレート、ゲムフィブレート、エトフィブレート及びエトフィリンクロフィブレート;ニコチン酸及びその誘導体、例えば、アシピモックス;PPAR-アルファアゴニスト;PPAR-デルタアゴニスト;アシル-コエンザイムAの阻害剤;コレステロールアシルトランスフェラーゼ (ACAT; EC 2.3.1.26) 、例えば、アバシミベ;コレステロール吸収阻害剤、例えば、エゼチミブ;胆汁酸に結合する物質、例えば、コレスチラミン、コレスチポール及びコレセベラム;胆汁酸輸送の阻害剤;HDL 変調活性物質、例えば、D4F 、逆D4F 、LXR 変調活性物質及びFXR 変調活性物質;CETP阻害剤、例えば、トルセトラピブ、JTT-705 (ダルセトラピブ) 又はWO 2007/005572からの化合物12 (アナセトラピブ) ;LDL 受容体モジュレーター;及びApoB100 アンチセンスRNA である。
アトルバスタチンの用量は通常1日1回1 mgから40mgまで、又は10mgから80mgまでである。
血圧を低下する組み合わせパートナーの例はベータ-ブロッカー、例えば、アテノロール、ビソプロール、セリプロロール、メトプロロール及びカルベジロール;利尿薬、例えば、ヒドロクロロチアジド、クロルタリドン、キシパミド、フロセミド、ピレタニド、トラセミド、スピロノラクトン、エプレレノン、アミロリド及びトリアムテレン;カルシウムチャンネルブロッカー、例えば、アムロジピン、ニフェジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン、ラシジピン、レルカニピジン、マニジピン、イスラジピン、ニルバジピン、ベラパミル、ガロパミル及びジルチアゼム;ACE 阻害剤、例えば、ラミプリル、リシノプリル、シラザプリル、キナプリル、カプトプリル、エナラプリル、ベナゼプリル、ペリンドプリル、フォシノプリル及びトランドラプリルだけでなく、アンギオテンシンII受容体ブロッカー (ARB)、例えば、テルミサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、ロサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン及びエプロサルタンである。
テルミサルタンの用量は通常1日当り20mgから320 mgまで、又は40mgから160 mgまでである。
【0068】
血液中のHDL レベルを増大する組み合わせパートナーの例はコレステリルエステル移入タンパク質(CETP)阻害剤;内皮リパーゼの阻害剤;ABC1のレギュレーター;LXRアルファアンタゴニスト;LXRベータアゴニスト;PPAR-デルタアゴニスト; LXRアルファ/ベータレギュレーター、及びアポリポタンパク質A-I の発現及び/又は血漿濃度を増大する物質である。
肥満の治療のための組み合わせパートナーの例はシブトラミン;テトラヒドロリプスタチン (オルリスタット) ;アリザイム;デクスフェンフルラミン;アキソカイン;カンナビノイド受容体1アンタゴニスト、例えば、CB1 アンタゴニストリモノバント;MCH-1 受容体アンタゴニスト;MC4 受容体アゴニスト;NPY5アンタゴニストだけでなくNPY2 アンタゴニスト;ベータ3-AR アゴニスト、例えば、SB-418790 及びAD-9677; 5HT2c 受容体アゴニスト、例えば、APD 356 (ロルカセリン); ミオスタチン阻害剤; Acrp30及びアジポネクチン;ステロイルCoA デサチュレート (SCD1) 阻害剤;脂肪酸シンターゼ(FAS) 阻害剤;CCK 受容体アゴニスト;グレリン受容体モジュレーター;Pyy 3-36;オレキシン受容体アンタゴニスト;及びテソフェンシンだけでなく、ブプロピオン/ナルトレキソン、ブプロピオン/ゾニサミド、トピラメート/フェンテルミン及びプラムリンチド/メトレレプチンの二重組み合わせである。
【0069】
アテローム硬化症の治療のための組み合わせパートナーの例はホスホリパーゼA2阻害剤;チロシン-キナーゼの阻害剤 (50mg〜600 mg) 、例えば、PDGF-受容体-キナーゼ (EP-A-564409、WO 98/35958、US 5093330、WO 2004/005281、及びWO 2006/041976を参照のこと) ;oxLDL 抗体及びoxLDL ワクチン;apoA-1ミラノ; ASA ;並びにVCAM-1阻害剤である。
本発明は本明細書に記載された特別な実施態様によりその範囲を限定されるべきではない。本明細書に記載されたものに加えて本発明の種々の変更が本開示から当業者に明らかになるかもしれない。このような変更が特許請求の範囲内に入ることが意図されている。
本明細書で引用された全ての特許出願が参考として本明細書にそのまま含まれる。
本発明の更なる実施態様、特徴及び利点が以下の実施例から明らかになるかもしれない。以下の実施例は本発明の原理を例として説明するのに利用できるが、それを限定するものではない。
【実施例】
【0070】
<動物モデル:>
グリベンクラミドのようなスルホニル尿素(SU)は糖尿病治療に最も頻繁に使用される薬物の一種である。SUによる長期治療は上昇した基底インスリン分泌及び減少したグルコース刺激インスリン分泌を生じる。これらの特性は低血糖及び治療の二次無効の発生に重要な役割を果たすかもしれない。Db/dbマウスはインスリン耐性及び高レベルの血漿グルコースを示す2型糖尿病の動物モデルに相当する。加えて、動物の年齢と相関して、老化db/dbマウスの膵臓β-細胞が高められたインスリン分泌により高グルコース変動幅を保障することができない。それ故、このモデルはDPP-4 阻害剤 (例えば、BI 1356) と比較してグリベンクラミド誘発治療の二次無効を研究するのに適している。
<方法>
<動物及び収容>
生後5週の雌のdb/db マウスを、ドイツのチャールズ・リバーから得る。動物を温度及び湿度が制御された部屋に12:12 L/D サイクル(04:00 AM に照明そして04:00 PMに消灯) のもとに5-6 匹の動物のグループで収容する。全ての動物が規則的なげっ歯類食物 (アルトロミン規格#1324 食物, デンマーク) 及び随時の水に自由に接近する。
<生体内実験>
3 mlのシリンジ (luer-lockTM, ベクトン) に連結された胃チューブを使用して、化合物溶液を経口強制飼養により実験日0-59に08.00 AMに毎日投与する。12匹の動物のグループを使用する:ビヒクル、0.5% ナトロソール;BI 1356 3 mg/kg;グリベンクラミド3 mg/kg 。体重、食物摂取及び水摂取を最初の2週について毎日、そして残りの期間について週2回記録する。54日目の実験時に血液グルコースレベル及びHbA1c レベルを半給餌状態で測定し、59日目にOGTT (2 g/kg) を行なう。
<HbA1c 、インスリン及び血液グルコースの監視(モニタリング)>
“給餌”血液グルコースレベル及びHbA1c レベルの測定のための血液サンプリングを54日目に10.00 AMに行なう。その血液サンプリングの前に、動物を血液サンプリングの2時間前に食物のないきれいなケージに移す。59日目に、OGTT (2g/kg) を動物の一夜の絶食の後に行ない、インスリンをt=15 分に検出する。
血液グルコース:夫々のデータ点につき、血液10μlを尾の先端からミクロキャピラリーチューブに抜き取り、バイオセンSライングルコースアナライザーを使用して測定する。
インスリン:夫々のデータ点につき、血液100μlを尾の静脈から抜き取り、EDTAチューブに集める。マウス内分泌イムノアッセイパネル (LINCOplexTM)を使用してインスリンを測定し、Luminex100TM システム(LincoResearch, ミズーリー, USA)を使用して分析する。
HbA1c:は、全自動アナライザー上の標準酵素アッセイキット(バイエル)を使用して測定される。
【0071】
<結果>
図1及び図2は示された化合物による生後5週の雌のdb/dbマウスの54日の治療後のHbA1c値及びグルコース値を示す。DPP-4 阻害剤BI 1356 は対照と較べてHbA1c値だけでなく、グルコース値を改善する。対照的に、3 mg/kg の濃度のスルホニル尿素グリベンクラミドは対照及びBI 1356 と較べてグルコース値だけでなく、HbA1c 値を損なう。
図3はOGTT試験(経口的ブトウ糖負荷試験)中のインスリンの増加を示す。BI 1356 で治療された動物のみがインスリンのアップレギュレーションで増大されたグルコースレベルに応答することができる。
図1 (左のバー: ビヒクル; 中間のバー: BI 1356; 右のバー:グリベンクラミド):
図2 (左のバー: ビヒクル; 中間のバー: BI 1356; 右のバー: グリベンクラミド):
図3 (左のバー: ビヒクル; 中間のバー: BI 1356; 右のバー: グリベンクラミド):
【0072】
こうして、β-細胞及びSU誘発治療の二次無効に相当する動物では、DPP-4 阻害剤BI 1356 はインスリン分泌並びにHbA1c 及びグルコースの低下に関してグリベンクラミドより優れている。
<臨床:>
臨床試験を使用して、本発明の目的のための本発明のDPP-4 阻害剤の使用可能性を試験し得る。
例えば、ランダム化二重盲検偽薬対照平行グループ試験において、本発明のDPP-4 阻害剤 (例えば、毎日1回経口投与されるBI 1356 5mg) の安全性及び効力を一種又は二種の通常の抗高血糖薬、例えば、スルホニル尿素薬による治療にもかかわらず不十分な血糖調節 (HbA1c 7.0 % から10% まで又は7.5 % から10% もしくは11%まで) の2型糖尿病の患者で試験する。
スルホニル尿素薬による研究では、本発明のDPP-4 阻害剤対スルホニル尿素のバックグラウンド治療に加えられた偽薬の効力及び安全性を調べる(2週の偽薬導入期;18週の二重盲検治療、続いて研究投薬終結後の1週のフォローアップ;スルホニル尿素薬によるバックグラウンド治療を全試験期間(未変化の用量における、偽薬導入期を含む)中に投与する)。
治療が成功したか否かは、初期値及び/又を偽薬グループの値と比較して、HbA1c 値を求めることにより調べられる。初期値及び/又は偽薬値と比較されたHbA1c 値の有意な変化がその治療についてのDPP-4 阻害剤の効力を実証する。また、治療が成功したか否かは、初期値及び/又は偽薬グループの値と比較して、絶食血漿グルコース値を求めることにより調べられる。絶食グルコースレベルが有意に低下することにより、その治療の効力が実証される。また、目標応答 (即ち、治療下のHbA1c < 7%) に対する治療の発生により、治療の効力が実証される。
患者の状態及び基準線からの妥当な変化、例えば、不利なイベント(例えば、低血糖エピソード等)又は体重増加の発生及び強さを分析することにより、治療の安全性及び寛容性が調べられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド、アルファ-グルコシダーゼブロッカー、GLP-1 又はGLP-1 類似体、及びインスリン又はインスリン類似体から選ばれた一種以上の通常の経口又は非経口抗糖尿病薬を用いた治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の代謝性疾患の治療及び/又は予防のための、下記式(I)〜(IV)のいずれかのDPP-4 阻害剤又はその医薬上許される塩:
式 (I)
【化1】

もしくは式(II)
【化2】

又は式 (III)
【化3】

或いは式(IV)
【化4】

[式中、R1は([1,5]ナフチリジン-2-イル)メチル、(キナゾリン-2-イル)メチル、(キノキサリン-6-イル)メチル、(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル、2-シアノ-ベンジル、(3-シアノ-キノリン-2-イル)メチル、(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル、(4-メチル-ピリミジン-2-イル)メチル、又は(4,6-ジメチル-ピリミジン-2-イル)メチルを表し、かつR2は3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル、(2-アミノ-2-メチル-プロピル)-メチルアミノ又は(2-(S)-アミノ-プロピル)-メチルアミノを表す]。
【請求項2】
メトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド及びアルファ-グルコシダーゼ阻害剤から選ばれた一種以上の経口抗糖尿病薬を用いた治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の代謝性疾患の治療及び/又は予防のための請求項1記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項3】
スルホニル尿素薬を用いた治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の代謝性疾患の治療及び/又は予防のための請求項1又は2記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項4】
スルホニル尿素薬単独による治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の代謝性疾患の治療及び/又は予防のための請求項1又は2記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項5】
スルホニル尿素薬及びメトホルミンを用いた組み合わせ治療にもかかわらず不十分な血糖調節の患者の代謝性疾患の治療及び/又は予防のための請求項1又は2記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項6】
スルホニル尿素二次無効を有する2型糖尿病患者の血糖調節を得るため、及び/又は維持するために用いられる請求項1から5のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項7】
前記通常の一種以上の抗糖尿病薬と組み合わせて使用される、請求項1から6のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項8】
前記スルホニル尿素と組み合わせて、及び任意に一種以上のその他の治療薬、例えば、メトホルミン及び/又はチアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン)と組み合わせて使用される、請求項1から7のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項9】
前記DPP-4 阻害剤が前記スルホニル尿素の代替として用いられ、及び任意に一種以上のその他の治療薬、例えば、メトホルミン及び/又はチアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン)と組み合わせて使用される、請求項1から6のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項10】
前記スルホニル尿素がグリベンクラミド、グリピジド及びグリメピリドから選ばれる、請求項1から9のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項11】
前記DPP-4 阻害剤が、メトホルミンを用いて又は用いないで、グリベンクラミド、グリピジド及びグリメピリドから選ばれた前記スルホニル尿素を用いた追加又は初期組み合わせ療法に使用される、請求項1から8のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項12】
前記患者でHbA1c 、FPG 及び/又はPPG を改善し、グルコース変動幅を減少し、及び/又はインスリン分泌を改善するために用いられる、請求項1から11のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項13】
第一又は第二選択スルホニル尿素治療の適応を有する患者における、HbA1c 低下及びインスリン分泌改善などの糖尿病の治療のために用いられる、請求項1から12のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項14】
スルホニル尿素+メトホルミン又はスルホニル尿素+チアゾリジンジオン又はスルホニル尿素+インスリンなどの二重スルホニル尿素組み合わせ治療の適応を有する患者の糖尿病の治療に用いられる、請求項1から12のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項15】
メトホルミン、スルホニル尿素及びチアゾリジンジオン、もしくはメトホルミン、スルホニル尿素及びインスリン、又はスルホニル尿素、チアゾリジンジオン及びインスリンの三重の組み合わせ治療の適応を有する患者の糖尿病の治療に用いられる、請求項1から12のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項16】
インスリン治療の適応を有する患者の糖尿病の治療に用いられる、請求項1から12のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項17】
前記患者が、スルホニル尿素薬による治療にもかかわらず7.5 〜11% 又は7.0 〜 10% 又は7.5 〜10% の不適なHbA1c 値に悩まされている、請求項1から16のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項18】
前記患者における、低血糖及び/又は体重増加などのSU抗糖尿病治療と関連する副作用のリスクを予防又は軽減するために用いられる、請求項1から17のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項19】
前記患者における、SU二次無効による糖尿病の進行を予防又は遅延ために用いられる、請求項1から18のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項20】
前記患者がメトホルミンに対する非寛容性又は禁忌のためにメトホルミン治療に適さず、又は減少された用量のメトホルミン治療を要する患者、例えば、腎臓障害のある患者、及び/又は老人の患者である、請求項1から19のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項21】
ピオグリタゾン又はメトホルミンとの組み合わせにおける使用のための請求項1から20のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項22】
下記からなる群から選択される請求項1〜21のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤又はこれらの医薬上許される塩:
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、
1-[([1,5]ナフチリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、
1-[(キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、
2-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-3-(ブト-2-インイル)-5-(4-メチル-キナゾリン-2-イルメチル)-3,5-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-d]ピリダジン-4-オン、
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(2-アミノ-2-メチル-プロピル)-メチルアミノ]-キサンチン、
1-[(3-シアノ-キノリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、
1-(2-シアノ-ベンジル)-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(S)-(2-アミノ-プロピル)-メチルアミノ]-キサンチン,
1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、
1-[(4-メチル-ピリミジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、
1-[(4,6-ジメチル-ピリミジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン及び
1-[(キノキサリン-6-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン。
【請求項23】
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンである、請求項1から22のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項24】
投与された経口用量の10%未満、好ましくは7%以下が腎臓を介して排泄されることを特徴とする、糖尿病患者の経口治療用のDPP-4 阻害剤。
【請求項25】
主として胆汁を介して未変化で排泄されることを特徴とする、請求項24記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項26】
投与された経口用量の80%より多く、好ましくは90%以上が親薬物として未変化で排泄されることを特徴とする、請求項24又は25記載のDPP-4 阻害剤。
【請求項27】
その主代謝産物が薬理学上不活性であることを特徴とする、請求項24から26のいずれか1項記載のDPP-4 阻害剤。

【公表番号】特表2012−505859(P2012−505859A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531494(P2011−531494)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063511
【国際公開番号】WO2010/043688
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】