説明

経腸および非経口の栄養摂取のためならびに腹膜透析のための可溶性の高度に分岐したグルコースポリマー

本発明は、デンプンの酵素処理によって得られ、3.5%未満の還元糖含有量を有し、20%〜30%の間のα−1,6−グルコシド結合の比率、光散乱によって決定される20.10〜30.10ダルトンの間のMw、および25mOsm/kg未満のオスモル濃度を示す、可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーに関する。本発明は同様に、これらのポリマーを得る方法および医薬および食品業界における、より詳しくは経腸および非経口の栄養摂取の分野および腹膜透析の分野におけるこれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デンプンの酵素処理によって得られる可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーであり、3.5%未満、好ましくは2.5%未満、さらにより好ましくは1%未満の還元糖含有量を有し、20%〜30%の間のα−1,6−グルコシド結合の割合および20×10〜30×10ダルトン未満の間の極めて狭い範囲内で選択された重量平均分子量(Mw)を示すものに関する。
【0002】
本発明の可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーは低いオスモル濃度も示し、試験Aによって決定して25mOsm/kg未満、好ましくは5〜20mOsm/kgの間の値を有する。
【0003】
これらのポリマーは、その安定性、特にその熱安定性を増すために水素化するか、または異性化することもできる。
【0004】
これらの可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーは、さらに、低い粘度および長期間の冷温貯蔵後でさえ劣化がないことを示す。
【0005】
本発明は、このような可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーを製造する方法にも関する。
【0006】
本発明は、このような可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーを含む組成物にも関する。これらの組成物は、多くの工業用途、特に食品および医薬品工業で使用することができる。
【0007】
本発明のグルコースポリマーに関連して使用される「可溶性の」という形容詞は、これらのポリマーが水溶性であることを意味する。
【0008】
従来通り工業的に製造されるグルコースポリマーは、天然または合成のデンプンおよびこれらの誘導体の加水分解によって調製される。
【0009】
したがって、従来のデンプン加水分解物は、穀物からまたは塊茎からのデンプンの酸または酵素による加水分解によって製造される。これらは実際にはグルコースおよび極めて多様な分子量のグルコースポリマーの混合物である。
【0010】
(一定の重合度または平均DPで)工業的に製造されているこれらのデンプン加水分解物(デキストリン、マルトデキストリンなど)は、直鎖構造(α−1,4−グルコシド結合)および分岐鎖構造(α−1,6−グルコシド結合)の両方を含有しているサッカリドの幅広い分布を含む。
【0011】
これらのデンプン加水分解物、および特にマルトデキストリンは、輸送体または充填剤として、テクスチャ付与剤として、スプレー乾燥の支持体として、脂肪代替物として、膜形成剤として、凍結調節剤として、結晶化防止剤として、またはエネルギー源として一般に使用されている。
【0012】
マルトデキストリンのサッカリド組成は、これらの物理的および生物学的性質の両方を決定することが当業者に知られている。
【0013】
したがって、これらの吸湿性、これらの発酵性、これらの粘度、これらの甘味付与性、これらの安定性、これらのゲル化性およびこれらのオスモル濃度は、従来これらが使用される様々な分野によって評価され選択される基準である。
【0014】
したがって、これらのサッカリドの物理化学的挙動の基礎知識が、例えば、腹膜透析用溶液中へ、非経口および経腸流体中へまたは糖尿病患者用の食品中へこれらが組み込まれることを導く。
【0015】
結果として、これらの様々な使用のために様々な物理的および生物学的性質が要求される。
【0016】
例えば、これらのサッカリド吸収は胃からの排出速度および腸管吸着の速度によって決定され、これらの速度の調節は前記サッカリドのオスモル濃度によってもたらされることが分かっている。
【0017】
腸内工程では、マルトデキストリンは膵臓のα−アミラーゼによって加水分解されて、そのサイズが限界デキストリンまで低下し、次いで腸管粘膜に結合しているマルターゼ、スクラーゼおよびα−デキストリナーゼなどのいくつかの酵素が、直鎖および分岐鎖のサッカリドをグルコースまで加水分解し続ける。
【0018】
グルコース、マルトースおよびマルトトリオースは腸管バリアを容易に横断するが(受動拡散)、もっと大きいオリゴサッカリドでは同じことが起こらない。加えて、直鎖のオリゴサッカリドは分岐鎖のオリゴサッカリドよりも迅速に吸収される。
【0019】
続いて結腸の細菌が、小腸壁を横断しなかったすべての炭水化物を発酵させる。これらの細菌による過剰な発酵は、しばしば腹痛および鼓腸などの腸の障害に導く。
【0020】
また、オスモル濃度は小腸における水の吸収および分泌の速度に影響を及ぼすことが知られている。化合物のオスモル濃度が高いほど前記化合物は流体の腸内への進入を誘導して腸内の混乱を導き(浸透圧性下痢)、流体および電解質の損失を伴う。
【0021】
溶液のオスモル濃度は水1kg当たりに溶解しているモル量として規定され、これは同じ乾燥重量による濃度でも、通常のマルトデキストリンの浸透圧はこれの重合度(DP)が低下するにつれて増加することを意味する。
【0022】
高いオスモル濃度は、低分子量の物質が水と結合し、それが腸壁を横断する水および栄養素の輸送を困難にすることを意味する。血液のオスモル濃度は約300mOsm/kgであり、栄養素の輸送を促進する目的では、物質のオスモル濃度はこの値よりも顕著に低いことが望ましい。
【0023】
約720000ダルトンの平均分子量および約4%の分岐度を有する国際公開第95/22562号によるデキストリンは、20mOsm/kgのオスモル濃度を有すると記載されている。
【0024】
これらのデキストリンは、天然のデンプン、より詳しくはジャガイモ粉のデンプンの高温条件下、すなわち110〜140℃で1〜15時間の反応時間での酸処理によって調製され、α−1,6−およびβ−1,6−グルコシド結合の両方に相当する1,6−分岐の形成をもたらす。
【0025】
特殊なβ−グルコシド結合は、腸の酵素系によっては加水分解されず、消化不可能な残留物の蓄積をもたらし、それを結腸の望ましくない細菌が取り込む。
【0026】
非経口および経腸溶液の分野では、栄養溶液は患者を良好な状態に保ち、前記患者に自然の消化経路によって食物を与えることができない場合に栄養素を提供するように設計される。
【0027】
溶液を直接静脈内に提供する場合は、溶液は等張性でなければならす、したがってグルコースの摂取は限定される。
【0028】
MarchalらのFood Science Technology、1999年、345〜355頁の論文には、10000kJの1日当たりのエネルギーを提供するためには、ヒトの容量を大きく超える14リットルの等張性グルコース溶液(グルコースの5重量/容積%)を注入することが必要になると記載されている。
【0029】
もっと濃縮されたグルコースまたはフルクトース溶液(10〜20重量/容積%)の摂取は可能であるが、長期間には不可能であり、また注入が太い血管、例えば鎖骨下静脈中に行われることが条件となる。
【0030】
2〜5の間の重合度を有する直鎖のサッカリドを投与することも、これらのサッカリドが腎臓中のマルターゼによって加水分解されかつ解放されたグルコースは次いで再吸収されるので、可能である。したがって、短い直鎖オリゴサッカリドの使用は、患者に過剰給水することなく、等張性溶液中で十分なエネルギーを与えることを可能にする。
【0031】
さらに、7未満の重合度を有する直鎖オリゴサッカリドは溶液中で長期間安定であるので、必要なすべてのエネルギーをそうした長期間にわたって絶えず患者に供給することを可能にするように重合度を2〜7の間で変えることが従来選択されている。
【0032】
しかし、この解決策は完全に満足なものではなく、これは直鎖グルコシド構造の使用だけを想定している。
【0033】
経腸栄養摂取について言えば、それは経口で摂取することができるか、その代わりに胃または小腸の中へ管によって投与することができる飲物に関する。
【0034】
これらの経腸流体に関しては、主要な問題は、高過ぎるオスモル濃度に起因する下痢である。
【0035】
従来、この問題を改善するために、10〜20のデキストローズ当量(DE)を有する直鎖および分岐鎖サッカリドの複合混合物を含有するマルトデキストリンが使用される。しかし、これらのマルトデキストリンは、完全に満足なものではない。
【0036】
経腸および非経口の栄養摂取の専門家は、デンプン由来の製品中の分岐構造の生成におけるこれらの技術的問題に対する解決策を探索している。
【0037】
デンプンの主要な構成成分アミロペクチンは、分岐点を構成する直鎖のα−1,4−結合およびα−1,6−結合の周りに編成される。ミクロ構造の知識は、これらの2つの種類の結合が均一に分布しているのではなく、前記ミクロ構造ゾーンにおいてはα−1,6−結合の密度が高く、境界ゾーンはα−1,4−結合だけを含むことを明らかにしている。
【0038】
米国特許第4840807号、または特許出願JP第11/187708号においては、α−1,6−結合の密度が高いゾーンだけをゆっくり吸収される炭水化物源として抽出することが、α−1,6−結合はα−1,4−結合よりもゆっくり分解するという意味で、提案されている。
【0039】
こうして2つの群の生成物が開発されてきた。第1群はα−アミラーゼを単独で用いるα−1,4−結合ゾーンの分解によって調製される限界デキストリンおよびα−アミラーゼおよびα−アミラーゼの同時作用によるα−1,4−結合ゾーンの分解によって調製されるデキストリンに関する。
【0040】
これらの限界デキストリンのヒト消化酵素に対する抵抗は、消化を調節するために、また血糖値を制御するためにも(糖尿病患者の栄養物における使用)、これらを使用することを可能にする。この効果は腸管吸収の速度の遅れによるものと考えられている。
【0041】
しかし、これらの化合物には、極めて低い分子量を有するという欠点があり、それがある程度の粘度の製品を必要とする他の使用分野におけるこれらの使用を制限する。
【0042】
欧州特許第207676号は、連続的および移動式の腹膜透析における使用のためには、透明で無色の10%水溶液を形成し、5×10〜1×10ダルトンのMwおよび低い多分散指数すなわちIpを有するデンプン加水分解物が好ましいことを教示している。
【0043】
これは5×10〜5×10ダルトンの間の高分子量グルコースポリマーを主に含有し、DPが3以下のグルコースまたはオリゴサッカリドをごくわずかしか、または全く含まず、かつ1×10ダルトンを超えるMwのグルコースポリマーをごくわずかしか、または全く含まない組成物に反映されている。
【0044】
事実、この使用のためには、腹膜壁を迅速に横断する低分子量ポリマーまたはモノマーは、長時間持続する浸透圧勾配を創り出すためには価値がなく、またさらに、1×10ダルトンを超える極めて高分子量で浸透圧能力の全くないポリマーは、それらには生命体中で劣化したり沈殿したりするリスクがあるので避けられるか、禁止される。
【0045】
腹膜透析は透析溶液をカテーテルによって腹膜腔内に導入することにある。一定時間後に血液と透析液との間で溶質の交換が起こる。適切な浸透圧剤の使用は、過剰な水を血液から透析液へ排出し、かくして腎臓の欠陥を補填することを可能にする。
【0046】
過剰の水および過剰の溶液を生命体から除去するための従来の腹膜透析法(限外ろ過)は、浸透圧剤としてのグルコースの添加の故に血液に対して高浸透圧の透析溶液を腹膜腔内に注入することにある。
【0047】
理想的な半透膜を通過する流れは、主に、溶液中に存在する溶質分子のサイズとは無関係に、それらの全数(オスモル濃度)によって決まる。他方で、腹膜などの生体膜の場合は、流れは膜を横断しないか、ほとんど横断しない溶質だけに依存し、それ故に溶液の全オスモル濃度には必ずしも関連していない。
【0048】
加えて、溶質の膜を横断する能力は分子の形状、それらのイオン電荷およびそれらのサイズにも依存する。
【0049】
理想的な浸透圧剤の選択は微妙である:後者は水および有毒な物質を血液から腹膜を通過して透析溶液へ移動させるような浸透圧勾配を可能にしなければならない。それはまた、無毒性および生物学的に不活性でなければならず、同時にその生物によって代謝されうるものでなければならず、後者の一部分は血液中に取り込まれる。それは長時間にわたって限外ろ過勾配を維持するように、また血液中の分解不可能な望ましくない物質の蓄積を可能にしないように腹膜をあまり迅速に横断してはならない。
【0050】
本出願人会社はその欧州特許第667356号においてワックス状デンプンから完全に水溶性であり、2.8未満の低い多分散指数および5×10〜1×10ダルトンの間のMwを有するデンプン加水分解物を調製する方法を提案した。
【0051】
この方法は、酸性法によって、アミロペクチンだけからなるデンプンの乳液を加水分解すること、および次いでこの酸性加水分解を細菌のα−アミラーゼを使用する酵素加水分解によって完結させ、さらにこの加水分解物をアルカリ金属またはアルカリ土類金属形態のマクロ多孔性強カチオン性樹脂上のクロマトグラフィーに掛けることにある。
【0052】
イコデキストリンとも呼ばれるこの独特のデンプン加水分解物は、12000〜20000ダルトンの分子量を有する。イコデキストリンのグルコース単位の大部分(90%超)は、α−1,4−結合によって結合されており、α−1,6−分岐しているα−1,4−鎖の小画分(10%未満)を有する直鎖を形成している。
【0053】
イコデキストリンは、以前から透析用溶液中の浸透圧剤として使用されているグルコースの一日当たりの吸収の顕著な減少を可能にしたので、カロリー負荷が決定的な因子である糖尿病患者および/または肥満患者の治療のために現実の利便を提供している。
【0054】
浸透圧剤としてイコデキストリンを含有している (特にBaxter Healthcare Corp.からExtraneal(登録商標)の商標で販売されている) 腹膜透析溶液は、一般に長い一日一回の(移動式連続腹膜透析においては夜間のおよび自動化腹膜透析においては昼間の)交換用に使用される。
【0055】
しかし、このイコデキストリンは、より少ない血中グルコースを生成し、かつその浸透圧能力がより長く持続する浸透圧剤があって、透析処置手順の顕著な単純化をもたらす場合にはさらに改善されうると考えられる。
【0056】
要するに、透析物収率は向上し、透析バッグが交換される頻度はより低くなると考えられるので、それらが患者のクオリティオブライフの確実な向上を構成すると思われる。
【0057】
したがって、腹膜透析における理想的な炭水化物は、
水溶性であり、
低い粘度を有し、
劣化しない、すなわち前記炭水化物を構成している高分子の再編成によってゲルを形成せず、
全身的な循環において遅いグルコース出現速度を誘導し、
ゆっくり加水分解されるが、この加水分解の終わりにはこの生物の酵素によって完全に分解され、
長時間持続する浸透圧を及ぼす
ものでなければならない。
【0058】
すなわち、これら最後の二点に関して、腎不全を患っている患者の腹膜腔に溶液中で投与された浸透圧剤の結末は、腹水中におけるそれらの安定性、それらが血流中に吸収される程度およびそれらのアミラーゼによる加水分解の速度によって決定される。そういうわけで、先行技術の浸透圧剤すべてがあまりにも迅速に加水分解されるという欠点を有する。
【特許文献1】国際公開第95/22562号
【特許文献2】米国特許第4840807号
【特許文献3】特許出願第11/187708号
【特許文献4】欧州特許第207676号
【特許文献5】欧州特許第667356号
【特許文献6】欧州特許出願第1369432号
【特許文献7】欧州特許第606753号
【非特許文献1】Marchalら、Food Science Technology、1999年、345〜355頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0059】
上記のことすべてからの結果は、したがって特に安定性および溶解性に関して注目すべき性質を示すグルコースポリマーで、それらを含む製品により長い寿命および制御された消化性を与え、特に腹膜透析または経腸もしくは非経口の栄養摂取の分野において血糖調節剤として使用することが可能なものを得るというまだ満たされていない必要性が存在するということである。
【課題を解決するための手段】
【0060】
これまで調和させることが困難であると考えられていたこれらすべての目的を、酵素処理によって得られる新規の可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーを、多大な研究を費やして、想像し開発することによって調和させたことは本出願人会社の功績である。
【0061】
本発明による3.5%未満、好ましくは2.5%未満、さらにより好ましくは1%未満の還元糖含有量を有する可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーは、20000〜30000ダルトン未満の間の狭い範囲内で選択された重量平均分子量に対して、完全に限定的な、すなわち20%〜30%の間の、α−1,6−グルコシド結合の比率を有することを特徴とする。
【0062】
これらのポリマーは、(欧州特許第1369432号に記載の)試験Aによって決定される25mOsm/kg未満、好ましくは5〜20mOsm/kgの間の値を有するオスモル濃度を示す。
【0063】
上記で示した通り、本発明による可溶性の分岐グルコースポリマーは3.5%未満、好ましくは2.5%未満、さらにより好ましくは1%未満の低い還元糖含有量を有する。この還元糖含有量は、これらの範囲内で使用に関連する必要性によって調節することができる。例えば、腹膜内透析における使用のためには、3.5%までの還元糖含有量を有する製品を提案することが可能である。
【0064】
本発明による分岐グルコースポリマーの還元糖含有量は、当業者に知られている任意の方法、特に銅酒石酸液(cuprotartaric liquors)を還元する方法またはジニトロサリチル酸を用いる比色法によって決定することができる。
【0065】
本発明による可溶性の分岐グルコースポリマーのα−1,6−グルコシド結合の比率はプロトンNMR分析によって決定される。そのとき分岐度は、前記可溶性グルコースポリマーのグルコース残基のすべてのC1が有するグリコシドプロトンのすべてのシグナルに100の値を与えた場合の、他の無水グルコース単位にα−1,6−結合によって結合されている無水グルコース単位のC1が有するプロトンからのシグナル量に相当するパーセンテージとして表される。
【0066】
これらの条件下では、本発明による可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーは、20%〜30%の間のα−1,6−結合の比率を示す。
【0067】
このα−1,6−グルコシド結合の含有量は、本発明による高度に分岐したグルコースポリマーに、それらが由来するデンプンまたはデンプン誘導体と比較した分岐度に関して、特異な構造を与える。
【0068】
この特別に高いα−1,6−グルコシド結合の含有量は、本発明による高度に分岐したグルコースポリマーを消化困難とし、このことは経腸栄養吸収において消化調節剤としておよび血糖調節剤として、あるいは遅くなったグルコースをもたらす消化が望ましいすべての使用において、特に糖尿病患者において、スポーツをする人においてまたは高齢の個人においてそれらを使用することが可能であることに寄与する。
【0069】
したがって、これらを糖尿病患者またはその傾向がある個人に対して血糖の上昇を抑制する機能を有する食品、飲物、または栄養補完剤として効果的に提案することができる。
【0070】
本発明のグルコースポリマーの重量平均分子量(Mw)は、光散乱検出器と直列に設置され連結されたPSS Suprema 100およびPSS Suprema 1000カラムによるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定される。
【0071】
本発明の可溶性で高度に分岐したグルコースポリマーは、20000〜30000ダルトン未満の間、好ましくは20000〜28000ダルトンの間、特に好ましくは24000〜27000ダルトンの間の重量平均分子量(Mw)を示す。
【0072】
本発明によるこれらの分岐グルコースポリマーは、本出願人会社がすでにその欧州特許出願第1369432号に記載した可溶性の分岐グルコースポリマーとは全く異なる特定の分子量によって特徴付けられる新しいポリマーの一群を構成する。
【0073】
本発明による可溶性の分岐グルコースポリマーは、特に低いオスモル濃度も示す。
【0074】
本発明による可溶性の分岐グルコースポリマーのオスモル濃度の測定は、欧州特許出願第1369432号に記載されているものと同じ試験Aによって行われ、25mOsm/kg未満、好ましくは5〜20mOsm/kgの間のオスモル濃度値を与える。
【0075】
本出願人会社が知る限りでは、上記で示したような分岐度および重量平均分子量に対してこのようなオスモル濃度値を有するグルコースポリマーは存在しない。
【0076】
SanmatsuによってBLD 8の名称で販売されている、液化デンプンのα−アミラーゼを用いる処理によって得た限界デキストリンについて行われた他の測定は、40000〜50000ダルトンの間の分子量および8%〜9%の間のα−1,6−分岐度に対して、35mOsm/kg超のオスモル濃度値を示す。
【0077】
本発明の可溶性グルコースポリマーは、デンプンの酵素処理によって製造される。それらの製造の間に、それらは特にα−およびβ−1,2−、α−およびβ−1,3−、β−1,4−およびβ−1,6−結合などの特殊なグルコシド結合を導入する能力のある処理は何も受けない。
【0078】
本出願人会社によってその欧州特許出願第1369432号に記載されている可溶性の分岐グルコースポリマーに関しては、それらは確かに15mOsm/kg以下のオスモル濃度値を示すが、本発明のポリマーの重量平均分子量よりも高い35000〜200000ダルトンの間の重量平均分子量を有する。
【0079】
したがって、この25mOsm/kg未満、好ましくは5〜20mOsm/kgの間のオスモル濃度値は、本発明による可溶性の高度に分岐したポリマーに対して、それらを経腸および非経口の栄養摂取状況において好都合に使用することを可能にする諸性質を付与する。
【0080】
これらの低オスモル濃度およびこれらの分子量プロフィールは、これらの本発明による高度に分岐したグルコースポリマーを、本明細書の以下に例示する通り、腹膜透析における使用のための浸透圧剤としての完璧な候補とする。
【0081】
本出願人会社はまた、本発明による可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーが、先の欧州特許出願第1369432号の可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーよりも良好なα−アミラーゼ抵抗性を示すことに注目した。この抵抗性は、グルコースポリマーに対して、イコデキストリンなどの先行技術のポリマーと比較して顕著な利点を付与する。それはこれらのポリマーがそれほど多くの血糖を生成せず、かつα−アミラーゼを含有している媒体中で浸透圧能力の持続時間を引き延ばし、それ故にそれらが長い継続時間の透析処置において使用されることを可能にすることを意味する。
【0082】
最後に、本発明による可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーは、それらの安定性、特にそれらの熱安定性を増大させるために化学的または生物学的に好都合に改変することができる。
【0083】
したがって、これらのポリマーは、最終の還元性グルコース末端が非還元性のソルビトール末端で置換されたポリマーを得るために水素化することができる。
【0084】
このような転化は特に当業者に周知の接触水素化技法によって得ることができる。これらの技法は、例えば、還元糖の溶液、適切な事例では本発明の可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーの溶液を、ラネーニッケル触媒の存在下で、40〜70kg/cmの水素圧力および100〜150℃の温度の下に置くことにある。水素化は水素化された生成物が事実上還元能力を示さなくなるまで数時間続行する。
【0085】
本発明による可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーは、特に根粒菌、アルスロバクター、またはスルフォロブス属の細菌から抽出された、ポリマーの末端還元性マルトース結合を非還元性のα−αトレハロース結合に異性化する特異性を有する、酵素の作用を受けさせることもできる。
【0086】
このような異性化は、例えば、欧州特許第606753号に記載されている技法を使用して得ることができ、この特許の教示を参照により本明細書に組み入れる。それは可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーの溶液に、40〜55℃の温度および5〜10の間のpHで非還元性サッカリドを形成する酵素の作用を受けさせることにある。
【0087】
ここでこれら2つの方法、水素化または酵素異性化、のいずれもこれらの作用を受けた生成物を大幅には改変しないことに留意するべきである。
【0088】
本発明の可溶性の分岐グルコースポリマーは、以下の連続工程を含む方法によって調製することができる。
1) 10重量%〜30重量%の固形物含有量を有するワックス状デンプンの水溶液を調製する工程と、
2) 前記溶液をワックス状デンプン100g当たり30000〜50000U/mlの分岐酵素を2〜3ml用いて60℃〜80℃の間の温度で18〜24時間、次いでアミログルコシダーゼまたはα−アミラーゼから選択された糖化酵素、好ましくはアミログルコシダーゼを用いて続けて処理する工程と、
3) 得られた溶液を、低分子量画分、好ましくは9000未満の分子量を有する画分を除去し、他の画分、すなわち高分子量画分を回収するように分画する工程と、
4) このように得られた高度に分岐したグルコースポリマーを得る工程。
【0089】
特許請求されている方法において使用されるデンプンは、ワックス状デンプン、言い換えればアミロペクチンに富むデンプンである。
【0090】
しかし、ワックス状デンプン以外のデンプンに上記の方法を適用することによって本発明の可溶性のグルコースポリマーを得ることが可能である。一般に、前記デンプンはジャガイモから、高アミロペクチン含有量を有するジャガイモ(ワックス状ポテト粉)から、豆から、米から、キャッサバから、小麦から、トウモロコシから、アミロペクチンに富むトウモロコシまたは小麦(ワックス状トウモロコシまたは小麦)から、高アミロース含有量を有するトウモロコシから、アミロース、アミロペクチン、当業者には小麦デンプン「A」および小麦デンプン「B」として知られている粒子サイズカットなどのデンプンから作るかまたは得ることができるカットまたは画分から、ならびに上記の製品の混合物から得られる天然または合成のデンプンから選択することができる。
【0091】
デンプン誘導体は、このデンプンの1工程または複数工程の酵素的、化学的および/または物理的改変から誘導される改変されたデンプンを意味すると解釈することができる。
【0092】
デンプン誘導体は、具体的には、エーテル化、エステル化、架橋、酸化、アルカリ処理、酸加水分解および/または酵素的加水分解(マルトデキストリンおよびデキストリンに関与する)から成る知られている方法の少なくとも1つによって改変されたデンプンであればよい。
【0093】
本出願人会社は、本発明による高度に分岐したグルコースポリマーは、デンプンまたはすでに少なくとも1%に等しい分岐度を示すその誘導体から容易に合成することができることを見出した。
【0094】
本発明による高度に分岐したグルコースポリマーの調製は、すでに本出願人会社によって欧州特許出願第1269432号に記載されている操作条件を変更することによって行われる。
【0095】
欧州特許出願第1369432号において本出願人会社は、乾燥重量基準でデンプンまたはデンプン誘導体100g当たり精製分岐酵素(purified branching enzyme)50000〜500000Uを25〜95℃の間の温度で、好ましくは70〜95℃の間の温度で、18〜24時間使用することを推奨している。
【0096】
「分岐酵素」という用語は、グリコーゲン分岐酵素、デンプン分岐酵素、およびこれらの酵素の混合物からなる群から選択される分岐酵素を意味するものとする。
【0097】
本発明による新規の高度に分岐したグルコースポリマーを得るためには、本出願人会社は、好ましくはデンプン溶液、好ましくはワックス状デンプン溶液を、デンプン100g当たりに30000〜50000U/mlの分岐酵素2〜3mlを用いて60〜80℃の間の温度で18〜24時間処理することを推奨している。
【0098】
本発明による方法の第2工程も、アミログルコシダーゼまたはα−アミラーゼなどの糖化酵素、好ましくはアミログルコシダーゼを分岐酵素で前処理されたワックス状デンプン溶液に作用させることにある。
【0099】
例えばアミログルコシダーゼに関しては、反応条件(温度およびpH)は次の通りである:アミログルコシダーゼ(AGU)、例えばNovozymesからの270AUG/g のDextrozyme W型またはSolvay Enzymesからの300AGU/g のOptidex型をデンプン100g当たり0.15〜0.25ml、60℃の温度、およびpH4〜5で1〜3時間、好ましくは2時間。
【0100】
この処理の後、本発明の可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーが、主にグルコース、マルトースおよびイソマルトースから成るそれらの酵素分解生成物との混合物として得られる。
【0101】
本方法の第3工程は、例えば膜分離およびクロマトグラフィーの群から選択される、知られている技法を使用する分画を、本出願人会社によって欧州特許出願第1369432号に記載されているように高分子量画分を得、かつ低分子量画分を除去するように行うことにある。
【0102】
使用する方法が何であれ、得られるプロフィールは、本発明による可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーに相当する高分子量ポリサッカリド画分を、加水分解によって生成され1000ダルトン未満のモル質量を有し、本質的にグルコース、マルトースおよびイソマルトースから成る低分子量オリゴサッカリド画分から分離することを可能にする。
【0103】
したがって、本発明による方法の最終工程は、高度に分岐したグルコースポリマーに相当する20000〜30000ダルトン未満の間の分子量の画分を集めることにある。
【0104】
これらの画分は、そのままで合わせることができ、ポリマーをエタノールを加えることによって沈殿させ、精製し、かつ真空下あるいは噴霧によって乾燥することが、当業者に知られている任意の技法によってできる。
【0105】
本発明のポリマーの独特の物理化学的特徴は、これらを食品、製薬、美容術および皮膚科の各業界において、さらにより具体的には製薬において、経腸および非経口の栄養分野において、血糖調節分野において、腹膜透析分野において浸透圧剤として、および血漿代替物として使用することを可能にする。
【0106】
したがって、本発明の1つの主題は、上記の高度に分岐したグルコースポリマーを含有している組成物でもある。これらの組成物は、特に食品および医薬品用途においてヒトまたは動物に使用することを意図されるものである。
【0107】
この組成物は、一時しのぎの調製物用の固形形態、液体形態、例えば水溶液、または水もしくは任意の他の適当な希釈剤で希釈するための濃縮形態であってよい。
【0108】
本発明の1つの主題は、経腸および非経口の栄養摂取における、血糖調節剤としてのこのような組成物の使用でもある。
【0109】
腹膜透析という特定の分野に関しては、本出願人会社は、α−アミラーゼ抵抗性試験によって、本発明によるポリマーが、続いて例証する通り、これらのポリマーを浸透圧剤として使用する腹膜透析用溶液の調製に特に適当であることを見出している。
【0110】
留意するべきことは、こうして本出願人会社が技術的な先入観を克服したことであり、その先入観によれば、特に国際公開第2004/022602号で主張されているように、腹膜透析において使用することができるデンプンに基づく製品は、好ましくは11%〜18%の間のα−1,6−分岐度および10000〜200000の間の分子量を示さなければならない。
【0111】
本発明の1つの主題は、浸透圧剤として少なくとも1つの可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーを含む腹膜透析用溶液でもあり、このポリマーは
3.5%未満の還元糖含有量、
20%〜30%の間のα−1,6−グルコシド結合の比率、
光散乱によって決定される、20000〜30000ダルトン未満の重量平均分子量(Mw)、
を有するデンプンの酵素による処理によって得る。
【0112】
このような腹膜透析用溶液において、3.5%未満の還元糖含有量を有する可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーは、好ましくは
20%〜25%の間のα−1,6−グルコシド結合の比率
光散乱によって決定される、24000〜27000ダルトンの間の値を有する重量平均分子量(Mw)
を有する。
【0113】
本発明による腹膜透析用溶液は、電解質の血清から腹膜への移動による損失を防ぐように、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、または塩素などの生理的に許容される電解質も含むことができる。
【0114】
本発明による高度分岐ポリマーを水に溶解させることによって溶液を得る場合は、溶液は透明および無色でなければならない。溶液は、好ましくはエンドトキシン、ペプチドグルカンおよびβ−グルカン、ならびに出発原料またはそれを製造するために使用した酵素法調製物に由来する汚染物質も含まない。
【0115】
この効果に向けて、前記溶液で使用する高度に分岐したポリマーは、好ましくはあらゆる着色またはあらゆる望まれない汚染物質例えばたんぱく質、細菌、細菌毒素、繊維、金属の痕跡などを除去するように精製を行う。
【0116】
この精製工程は、当業者に知られている技法によって行うことができる。
【0117】
本発明による透析用溶液は、緩衝剤(特に乳酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩)および、アミノ酸、インスリン、ポリオール(例えばソルビトール、エリスリトール、マンニトール、マルチトールもしくはキシリトール、または水素化デンプン加水分解物)などの他の添加物も含むことができる。
【0118】
組成物へのポリオール、好ましくは上記の不純物(特にエンドトキシンおよび他の細菌起源の残留物)を含まない無発熱原性ポリオールの添加は、これらのより大きい浸透圧能力の故におよびこれらが還元性ではないので、溶液のオスモル濃度をグルコースやマルトースを用いるよりも好都合に増大させることを可能にする。
【0119】
最後に、本発明の可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーを含有する透析溶液を、グルコース、マルトースおよび/またはグルコースポリマーを用いて仕上げることも可能である。
【0120】
腹膜透析用のアミノ酸に基づく溶液は、グルコースおよびその誘導体と関連する加速された腹膜の老化の防止において確かな価値があるが、そのコストおよびアシドーシスの微妙な調節のリスクがその独占的および継続的な処方を制限している。
【0121】
したがって、腹膜透析用の同じ溶液中に様々な分子の混合物を作り上げることを想定することができる:グルコース、本発明による可溶性の高度に分岐したグルコースポリマー、およびアミノ酸。
【0122】
次いでこれらの様々な構成成分を、特にグルコースの分解生成物(GDP)または腹膜の安定性に対する有害影響の原因となるグルコースの前記アミノ酸への結合からもたらされる生成物(AGE)の生成を避けるために個別に滅菌する(区分化されたバッグの使用)ことが好ましい。
【0123】
さらに、本発明による透析用溶液は、それが含有する浸透圧剤が長時間持続する浸透圧を与え、かつゆっくりしたグルコース出現速度を誘導し、同時に劣化に対して安定であり、したがって上記で規定した主要な基準を満たすので、先行技術の製品と比較して好都合である。
【0124】
本発明の他の特徴および利点は、以下に記載する非限定的実施例を読むと明らかになるであろう。
【実施例1】
【0125】
デンプン乳液は、本出願人会社によってCleargum(登録商標)CB90の商標で販売されている約90の流動性レベルWFを有する酸液化ワックス状コーンスターチから調製する。
【0126】
これのために、25%の固形分を含有しているデンプンの懸濁液を、撹拌しながら、pHを7.5に調節して調製する。
【0127】
デンプンの完全な可溶化は、連続式クッカー中、145℃で3〜4分間行う。次いで溶液を70℃まで冷却し、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)から精製したグリコーゲン分岐酵素を(知られているプロトコール、さらに、当業者に従って)乾燥重量基準で基質100g当たり40000U/mlの酵素溶液2.5mlの流量で、連続的に加える。
【0128】
酵素反応は70℃、pH7で20時間行い、次いで90℃で1時間加熱することによって停止させた。
【0129】
アミログルコシダーゼ(NovozymesからのDextrozyme W 270AGU/g)を乾燥重量基準でデンプン100g当たり0.20ml用いる補完的処理を、60℃の温度および4.3のpHにした前述の反応媒体中で行う。
【0130】
インキュベーションは2時間行い、90℃で1時間加熱することによって反応を停止させる。
【0131】
次いで溶液をNorit SX+の2% com/dryの比率の活性炭で、pH5で1時間の処理によって精製し、次いでろ過する。
【0132】
次いで最終溶液を9000ダルトンのカットオフ限界(threshold)を有する膜(PCIからのES209膜)を通す限外ろ過によって分画し、残留液(retentate)を集めて噴霧する。
【0133】
下の表Iは、こうして得られた本発明による可溶性の分岐グルコースポリマーの物理化学的特徴の結果を与えている。
【0134】
【表1】

【0135】
[実施例2]
この実施例は半工業的条件下で行われた試験に言及する。
【0136】
1.5mのタンク中でCleargum(登録商標)CB 90、175kgを固形分含有量が13%に達するように水と混合する。pHを7に調節する。
【0137】
デンプンの完全な可溶化は、半工業的連続式クッカー中、約150℃において、流量400kg/hで数分間行う。次いで溶液を連続的に70℃まで冷却し、バチルス・ステアロサーモフィラスから精製されたグリコーゲン分岐酵素を、乾燥重量基準で基質100g当たり40000U/mlの酵素溶液2.5mlの流量で、連続的に加える。
【0138】
酵素反応は撹拌されたタンク中の70℃、pH7で、20時間行い、次いで90℃で1時間加熱することによって停止させる。
【0139】
乾燥重量基準でデンプン100g当たりアミログルコシダーゼ(Solvay EnzymesからのOptidex、300AGU/g)0.18mlを用いる補完的処理を、60℃の温度および4.3のpHにした前述の反応媒体中で行う。
【0140】
インキュベーションは2時間行い、90℃で1時間加熱することによって反応を停止させる。
【0141】
次いで溶液をNorit SX+の2% com/dryの比率の活性炭を用いてpH5で1時間の処理によって精製し、次いでろ過する。
【0142】
次いで最終溶液を9000ダルトンのカットオフ限界を有する膜(PCIからのES209膜)を通す限外ろ過によって分画する。
【0143】
次いで限外ろ過処理から得た溶液を、脱ミネラルに続いてNorit SX+の2% com/dryの比率の活性炭を用いるさらなる処理によって精製する。
【0144】
続いて最終溶液をろ過し、次いで当業者に知られている標準的条件下で噴霧する。
【0145】
下の表IIは、こうして得られた本発明による可溶性の分岐グルコースポリマーの物理化学的特徴の結果を与えている。
【0146】
【表2】

【0147】
[実施例3]
実施例1によって得た本発明による高度分岐ポリマーの水溶液を調製して、腹膜中の生成物の加水分解をシミュレートするために、膵臓起源のアミラーゼと接触させた。
【0148】
アミラーゼ加水分解の時間経過を、形成される還元糖および反応媒体中に出現するグルコースを測定することによって追跡する。
【0149】
この試験は、透析溶液用の浸透圧剤の選択において必須の基準である、このポリマーのアミラーゼ加水分解に対する抵抗性を評価することを可能にする。
【0150】
実施例1のポリマーは、イコデキストリン(先行技術の浸透圧剤)と比較して試験した。
【0151】
本出願人会社によって欧州特許第1369432号の教示に従って調製された他のポリマーも比較のために試験する。
【0152】
これらは前記欧州特許出願第1369432号の実施例3によって調製された製品“a”および“b”ならびに実施例2によって調製された製品Zである。
【0153】
イコデキストリンは説明の中で言及した欧州特許第667356号によって調製される。
【0154】
マルトースの制御を、酵素による消化のin vitroモデルを検証するために行う。
【0155】
アミラーゼによる消化のための操作条件は以下の通りである。
試験製品の0.6gを正確に秤取する、
マレイン酸Na緩衝液、0.1mol/lでpH7、150mlを加える、
製品が完全に溶解するまで撹拌する、
溶液の温度が37℃になるようフラスコを15分間水浴に入れる、
時間0分でサンプル1.5mlを採る(サンプルSI)、
ポルシンパンクレアチン(動物起源のα−アミラーゼ)0.15gを加える、
恒温水浴中37℃で撹拌しながら300分間インキュベートする、
時間15、30、45、60、90、120、180、240、300分で1.5mlのサンプルを採る、
サンプルを100℃の乾燥浴中に10分間入れて酵素反応を停止させる、
検討中の製品の血糖に対する影響をシミュレートするためにサンプルについてグルコースを分析する、
加水分解の反応速度を検討するためにサンプルについて還元糖を分析する。
【0156】
グルコースの分析のためには、比色法を使用し、Hitachi 704自動装置(Roche)で行う。使用する試薬は、GOD/PAP(グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ)酵素を含有している試薬である。
【0157】
使用する試薬の容積は500マイクロリットルであり、サンプルの容積は5マイクロリットルであり、反応温度は30℃である。
【0158】
還元糖の分析のために使用する方法は、ソモギネルソン法である。サンプル200マイクロリットルを栓をした管に入れ、標準溶液(酒石酸ナトリウムおよび硫酸銅試薬)200マイクロリットルを加える。
【0159】
混合物を沸騰させ、冷却後、ヒ素モリブデン試薬に続いて水を加える。
【0160】
得られた溶液をマイクロプレート中に置き、次いで吸光度をマイクロプレートリーダー中で、520ナノメートルの波長で読む。
【0161】
結果を次の表に示す。
【0162】
【表3】

【0163】
【表4】

【0164】
【表5】

【0165】
化合物“a”、“b”およびZで得られた結果によって本出願人会社は、その欧州特許出願第1369432号において、すでにそれらから、分岐度(α−1,6−結合の比率)が高いほどアミラーゼによる加水分解が低いと推論した。後者は分子量にも依存する。したがって、分岐度が高く分子量が低いほど分子がアミラーゼによって攻撃されることが少ない。
【0166】
本発明による可溶性の分岐グルコースポリマーはこの傾向を確かに有するが、しかし留意するべきことは、化合物Zよりは低いα−1,6−分岐度および事実上化合物Zの分子量の半分である分子量を有していながら、それは化合物Zと同等またはそれよりわずかに低くさえある加水分解度によって特徴付けられることである。
【0167】
したがって、本発明の可溶性の分岐グルコースポリマーは、分子量、分岐構造およびアミラーゼ抵抗性に関する挙動についての最良の妥協を構成している。
【0168】
さらに、腹膜透析における浸透圧剤としての対照化合物であるイコデキストリンと比較して、本発明による可溶性グルコ−スポリマーは、それらが明らかにイコデキストリンよりも大きい膵臓アミラーゼによる加水分解に対する抵抗性を示すので、イコデキストリンの改良された変形体を構成する。
【0169】
これは特に本発明の製品が、イコデキストリンに極めて近い分子量にしては、血液グルコース生成能力について確かな利点を示すことを意味する。
【0170】
この観察を確かめるために、本出願人会社は長時間持続する浸透圧能力を発揮するこれら2つの化合物の能力を比較することを目指した研究を、膵臓α−アミラ−ゼの作用後の生成物のモル質量の分布を決定することによって行った。
【0171】
現に、ある化合物がより迅速に小分子に加水分解されるほど、それが腹膜透析において長時間持続する浸透圧能力を発揮することができる可能性は少ないことは当業者には周知である。
【0172】
次の表はイコデキストリンおよび本発明による可溶性の分岐グルコースポリマーのモル質量分布を反映し、モル質量はα−アミラーゼを用いる消化の後で測定される。この分布は、分子量が1000ダルトンよりも大きい生成物の%として表されている。
【0173】
【表6】

【0174】
したがって、アミラーゼ消化300分間の後には、イコデキストリンの約62%が1000ダルトン未満の分子に加水分解され、本発明による可溶性グルコースポリマーは22%だけが加水分解されたと見られる。
【0175】
したがって、等価な分子量において、本発明による可溶性の分岐グルコースポリマーはイコデキストリンよりもずっと良好な挙動を示し、腹膜透析における使用のための極めて好都合な製品を構成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプンの酵素処理によって得られ、3.5%未満、好ましくは2.5%未満、さらにより好ましくは1%未満の還元糖含有量を有する可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーであって、
20%〜30%の間のα−1,6−グルコシド結合の比率、
光散乱によって決定される20000〜30000ダルトン未満の間の重量平均分子量(Mw)
を示すことを特徴とするポリマー。
【請求項2】
試験Aによって決定して25mOsm/kg未満、好ましくは5〜20mOsm/kgの間の値を有するオスモル濃度を示すことを特徴とする、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
還元性末端がトレハロースに転化されるか、水素化されるような方法で酵素異性化されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリマー。
【請求項4】
1) 10重量%〜30重量%の固形物含有量を有するワックス状デンプンの水溶液を調製し、
2) 前記溶液をワックス状デンプン100g当たり30000〜50000U/mlの分岐酵素を2〜3ml用いて60℃〜80℃の間の温度で18〜24時間、次いでアミログルコシダーゼまたはα−アミラーゼから選択された糖化酵素、好ましくはアミログルコシダーゼを用いて続けて処理し、
3) 前記得られた溶液を、低分子量画分を除去し、高分子量画分を回収するように分画し、
4) このように得られた高度に分岐したグルコースポリマーを得る
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーの調製方法。
【請求項5】
前記デンプン水溶液を
デンプン100g当たり30000〜50000U/mlの分岐酵素を2〜3ml用いて60〜80℃の間の温度で18〜24時間、
次いでデンプン100g当たりアミログルコシダーゼを0.15〜0.25ml用いて60℃の温度、4〜5のpHで、1〜3時間の間の時間、好ましくは2時間
処理することを特徴とする、請求項4に記載の可溶性の高度に分岐したグルコースポリマーの調製方法。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載のまたは請求項4または5に記載の方法によって得ることができる高度に分岐したグルコースポリマーを含有することを特徴とする、食品および医薬品の用途においてヒトおよび動物に使用することが意図される組成物。
【請求項7】
経腸および非経口の栄養摂取における、および血糖調節剤としての、請求項6に記載の組成物の使用。
【請求項8】
浸透圧剤として、少なくとも1つの、請求項1から3のいずれか一項に記載の可溶性の高度に分岐したポリマーを含むことを特徴とする、腹膜透析用溶液。
【請求項9】
3.5%未満の還元糖含有量を有する前記可溶性の高度に分岐したポリマーが、
20%〜25%の間のα−1,6−グルコシド結合の比率、
光散乱によって決定される24000〜27000ダルトンの間の重量平均分子量(Mw)
を示すことを特徴とする、請求項8に記載の透析用溶液。
【請求項10】
ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトールおよび水素化デンプン加水分解物からなる群から選択されるポリオールも含むことを特徴とする、請求項8または9に記載の腹膜透析用溶液。
【請求項11】
乳酸塩、酢酸塩およびグルコン酸塩などの緩衝剤も含むことを特徴とする、請求項10に記載の腹膜透析用溶液。
【請求項12】
グルコース、マルトースおよび/またはグルコースポリマーも含むことを特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載の腹膜透析用溶液。
【請求項13】
アミノ酸およびグルコースも含むことを特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載の腹膜透析用溶液。

【公表番号】特表2009−528040(P2009−528040A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556808(P2008−556808)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際出願番号】PCT/FR2007/000276
【国際公開番号】WO2007/099212
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(592097428)ロケット・フルーレ (58)
【Fターム(参考)】